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  • 特開-複速レゾルバ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081850
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】複速レゾルバ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
G01D5/20 110H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193043
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】赤須 基紀
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA43
2F077CC02
2F077FF34
2F077PP26
2F077VV01
(57)【要約】
【課題】複数の回転検出部のそれぞれにおいて個別に出力電圧を調整可能な複速レゾルバを提供する。
【解決手段】複速レゾルバ100は、回転トランス用のステータ110に巻回されたステータ巻線111、回転トランス用のロータ120に巻回された第1ロータ巻線121、及び第2ロータ巻線122を有する回転トランス部Aと、回転検出部用のロータ130に巻回され、第1ロータ巻線121に接続された第1ロータ巻線131、及び回転検出部用のステータ140に巻回された第1ステータ巻線141を有する第1回転検出部B1と、ロータ130に巻回され、第2ロータ巻線122に接続された第2ロータ巻線132、及びステータ140に巻回された第2ステータ巻線142を有する第2回転検出部B2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転トランス用ステータ(110)に巻回された回転トランス用ステータ巻線(111)、回転トランス用ロータ(120)に巻回された回転トランス用第1ロータ巻線(121)、及び前記回転トランス用ロータ(120)に巻回された回転トランス用第2ロータ巻線(122)を有する回転トランス部(A)と、
回転検出部用ロータ(130)に巻回され、前記回転トランス用第1ロータ巻線(121)に接続された回転検出部用第1ロータ巻線(131)、及び回転検出部用ステータ(140)に巻回された回転検出部用第1ステータ巻線(141)を有する第1回転検出部(B1)と、
前記回転検出部用ロータ(130)に巻回され、前記回転トランス用第2ロータ巻線(122)に接続された回転検出部用第2ロータ巻線(132)、及び前記回転検出部用ステータ(140)に巻回された回転検出部用第2ステータ巻線(142)を有する第2回転検出部(B2)と、
を備える複速レゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複速レゾルバに関し、特に、回転トランス部と複数の回転検出部とを用いた複速レゾルバにおいて、複数の回転検出部の出力電圧を個別に調整するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複速レゾルバとしては、特許文献1に示されるものが知られている。この従来の複速レゾルバ100Aの構成を図3に示す。
【0003】
図3において、複速レゾルバ100Aには、回転トランス用ステータ巻線111及び回転トランス用ロータ巻線121aを有する回転トランス部Aと、回転検出部用第1ロータ巻線131及び回転検出部用第1ステータ巻線141を有する第1回転検出部B1と、回転検出部用第2ロータ巻線132及び回転検出部用第2ステータ巻線142を有する第2回転検出部B2とが設けられている。
【0004】
ここで、第1回転検出部B1と第2回転検出部B2とはそれぞれ独立して設けられ、1XとnXとの複速の回転検出を行うように構成されている。すなわち、1Xは1倍、nXはn倍の比で電気的に回転を検出する方式であり、従来の1/n減速比を有するギヤ機構を用いたものと同等となるように、それぞれの巻線が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6-47820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示す構成において、回転検出部用第1ロータ巻線131と、回転検出部用第2ロータ巻線132とは、それぞれ接続線121bと接続線121cとを介して、回転トランス用ロータ巻線121aに対して共通に接続され、励磁信号の供給を受けている。この構成によると、1つの回転トランス部によって第1回転検出部B1と第2回転検出部B2との両方に励磁信号を供給できる利点を有する。
【0007】
しかし、このような共通接続のため、第1回転検出部B1の出力電圧調整のために回転検出部用第1ロータ巻線131の巻数を調整した場合、回転検出部用第1ロータ巻線131と回転検出部用第2ロータ巻線132との合成インダクタンスに変化を生じて、第2回転検出部B2の出力電圧にも変化が生じていた。すなわち、回転トランス部を用いた複速レゾルバにおいて、複数の回転検出部のそれぞれの出力電圧を個別に調整できない問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためにされたもので、回転トランス部を用いた複速レゾルバにおいて、複数の回転検出部のそれぞれの出力電圧を個別に調整可能な複速レゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の複速レゾルバは、回転トランス用ステータに巻回された回転トランス用ステータ巻線、回転トランス用ロータに巻回された回転トランス用第1ロータ巻線、及び回転トランス用ロータに巻回された回転トランス用第2ロータ巻線を有する回転トランス部と、回転検出部用ロータに巻回され、回転トランス用第1ロータ巻線に接続された回転検出部用第1ロータ巻線、及び回転検出部用ステータに巻回された回転検出部用第1ステータ巻線を有する第1回転検出部と、回転検出部用ロータに巻回され、回転トランス用第2ロータ巻線に接続された回転検出部用第2ロータ巻線、及び回転検出部用ステータに巻回された回転検出部用第2ステータ巻線を有する第2回転検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複速レゾルバによれば、回転トランス部には回転トランス用第1ロータ巻線と回転トランス用第2ロータ巻線とが設けられているため、回転検出部用第1ロータ巻線は回転トランス用第1ロータ巻線から励磁信号の供給を受け、回転検出部用第2ロータ巻線は回転トランス用第2ロータ巻線から励磁信号の供給を受ける。ここで、回転トランス用第1ロータ巻線と回転トランス用第2ロータ巻線とのそれぞれを別の巻数にすることができるため、互いに影響を与えることなく、第1回転検出部の出力電圧と第2回転検出部の出力電圧とを個別かつ容易に調整できる。すなわち、回転トランス部を用いた場合に、複数の回転検出部のそれぞれの出力電圧を個別に調整可能な複速レゾルバを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る複速レゾルバにおける巻線の配線図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る複速レゾルバのロータ、ステータ及び巻線の配置を示す構成図である。
図3】従来の複速レゾルバにおける巻線の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複速レゾルバの実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1における複速レゾルバ100について、図1及び図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態1に係る複速レゾルバ100における巻線の配線図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る複速レゾルバ100のロータ、ステータ及び巻線の配置を示す構成図である。
【0015】
[複速レゾルバの構成]
まず、複速レゾルバ100の構成について、図1に示されるそれぞれの巻線の配線について、図2に示されるステータ及びロータの構成を参照しつつ説明する。
【0016】
複速レゾルバ100は、主に、回転トランス部Aと、第1回転検出部B1と、第2回転検出部B2とを備えている。
[回転トランス部Aの構成]
回転トランス部Aには、図2に示すように、回転トランス用ステータ110と、回転トランス用ロータ120とが設けられている。回転トランス用ステータ110は、筐体105に取り付けられている。回転トランス用ロータ120は、回転可能な回転軸101に取り付けられ、回転トランス用ステータ110の内側において回転軸101と共に回転するよう構成されている。回転軸101は、一対の軸受け103によって、筐体105に対して回転可能に取り付けられている。
【0017】
回転トランス用ステータ110には、回転トランス用ステータ巻線111が巻回されている。回転トランス用ロータ120には、回転トランス用第1ロータ巻線121と、回転トランス用第2ロータ巻線122とが巻回されている。
そして、回転トランス用ステータ110、回転トランス用ステータ巻線111、回転トランス用ロータ120、回転トランス用第1ロータ巻線121、及び回転トランス用第2ロータ巻線122により、回転トランス部Aが構成されている。回転トランス用ステータ巻線111のR1-R2相に外部から励磁信号が入力されると、回転トランス用第1ロータ巻線121と回転トランス用第2ロータ巻線122とのそれぞれに、励磁信号が生じる。
【0018】
[回転検出部B1,B2の構成]
回転検出部B1,B2には、図2に示すように、回転検出部用ロータ130と回転検出部用ステータ140とが設けられている。
回転検出部用ロータ130は、回転トランス用ロータ120が取り付けられている回転軸101に取り付けられ、回転検出部用ステータ140の内側において回転軸101と共に回転するよう構成されている。回転検出部用ステータ140は、回転トランス用ステータ110が取り付けられている筐体105に取り付けられている。
【0019】
回転検出部用ロータ130には、回転検出部用第1ロータ巻線131と、回転検出部用第2ロータ巻線132とが巻回されている。回転検出部用ステータ140には、回転検出部用第1ステータ巻線141と、回転検出部用第2ステータ巻線142とが巻回されている。そして、回転検出部用ロータ130、回転検出部用第1ロータ巻線131、回転検出部用ステータ140、及び回転検出部用第1ステータ巻線141により、第1回転検出部B1が構成されている。また、回転検出部用ロータ130、回転検出部用第2ロータ巻線132、回転検出部用ステータ140、及び回転検出部用第2ステータ巻線142により、第2回転検出部B2が構成されている。
【0020】
回転検出部用第1ロータ巻線131には、回転トランス用第1ロータ巻線121に生じた励磁信号が、接続線121bを介して供給される。回転検出部用第2ロータ巻線132には、回転トランス用第2ロータ巻線122に生じた励磁信号が、接続線122bを介して供給される。
回転検出部用第1ステータ巻線141のS1-S3相及びS2-S4相には、回転検出部用ロータ130の回転角θに応じた2相の1倍角信号1Xが出力される。回転検出部用第2ステータ巻線142のS5-S7相及びS6-S8相には、回転検出部用ロータ130の回転角θに応じた2相のn倍角信号nXが出力される。
なお、1倍角信号1Xとは、回転軸101の1回転において、1周期出力される第1回転検出信号である。また、n倍角信号nXとは、回転軸101の1回転において、n周期出力される第2回転検出信号である。
【0021】
[複速レゾルバ100の特徴]
ここで、実施の形態1の複速レゾルバ100の特徴について、以下に説明する。
なお、以下の説明において、第1回転検出部B1において得られる第1回転検出信号の電圧を、第1回転検出部B1の出力電圧と言う。また、第2回転検出部B2において得られる第2回転検出信号の電圧を、第2回転検出部B2の出力電圧と言う。
実施の形態1の複速レゾルバ100において、回転トランス部Aの回転トランス用ステータ巻線111のR1-R2相に外部から励磁信号が入力されると、回転トランス用第1ロータ巻線121と回転トランス用第2ロータ巻線122とのそれぞれに、独立して励磁信号が生じる。
【0022】
回転トランス用第1ロータ巻線121に生じた励磁信号は、接続線121bを介して、第1回転検出部B1の回転検出部用第1ロータ巻線131に供給される。回転トランス用第2ロータ巻線122に生じた励磁信号は、接続線122bを介して、第2回転検出部B2の回転検出部用第2ロータ巻線132に供給される。
【0023】
このため、第1回転検出部B1の出力電圧の調整のために、回転検出部用第1ロータ巻線131の巻数を調整した場合でも、第2回転検出部B2の出力電圧には変化を生じない。また、回転トランス用第1ロータ巻線121の巻数を調整した場合でも、第2回転検出部B2の出力電圧には変化を生じない。
同様に、第2回転検出部B2の出力電圧の調整のために、回転検出部用第2ロータ巻線132の巻数を調整した場合であっても、第1回転検出部B1の出力電圧には変化を生じない。また、第2回転検出部B2の出力電圧調整のために、回転トランス用第2ロータ巻線122の巻数を調整した場合であっても、第1回転検出部B1の出力電圧には変化を生じない。
従って、回転トランス部A、第1回転検出部B1、及び第2回転検出部B2を備えた複速レゾルバ100において、第1回転検出部B1と第2回転検出部B2とのそれぞれの出力電圧を、個別に調整することが可能になる。
また、回転トランス用第1ロータ巻線121と回転トランス用第2ロータ巻線122との巻数を調整すればよいため、第1回転検出部B1と第2回転検出部B2とのそれぞれの出力電圧の調整を容易に行えるようになる。
【0024】
[その他の実施の形態]
図2において、1組の回転検出部用ロータ130と回転検出部用ステータ140とを備える構成を示したが、これに限定されず、回転検出部B1用の回転検出部用ロータ及び回転検出部用ステータと、回転検出部B2用の回転検出部用ロータ及び回転検出部用ステータとを、それぞれ設けてもよい。
【0025】
実施の形態1の複速レゾルバ100として、第1回転検出部B1と、第2回転検出部B2との2系統の回転検出部を備える具体例を示したが、3以上のn系統の回転検出部を備えてもよい。この場合、回転トランス部Aにもn個のロータ巻線を設け、回転トランス部Aのn個のロータ巻線と、回転検出部B1~Bnのn個のロータ巻線とを、それぞれを接続線により接続すればよい。
【0026】
[実施の形態により得られる効果]
以上説明したように、本発明の実施の形態1の複速レゾルバ100によると、以下のような効果を得ることができる。
複速レゾルバ100において、回転トランス部Aには、回転トランス用第1ロータ巻線121と回転トランス用第2ロータ巻線122とが設けられ、回転検出部用第1ロータ巻線131は回転トランス用第1ロータ巻線121から励磁信号の供給を受け、回転検出部用第2ロータ巻線132は回転トランス用第2ロータ巻線122から励磁信号の供給を受ける。
【0027】
ここで、回転トランス用第1ロータ巻線121と回転トランス用第2ロータ巻線122とのそれぞれを別の巻数にすることができるため、互いに影響を与えることなく、第1回転検出部B1と第2回転検出部B2とのそれぞれの出力電圧を、個別かつ容易に調整できる。従って、第1回転検出部B1と第2回転検出部B2とのそれぞれの出力電圧を個別に調整可能な複速レゾルバを提供できる。また、回転トランス用第1ロータ巻線と回転トランス用第2ロータ巻線とのそれぞれを別の巻数にすることができるため、互いに影響を与えることなく、第1回転検出部と第2回転検出部とのそれぞれの出力電圧を容易に調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の複速レゾルバ100は、回転トランス部Aを用いて、複数の回転検出部B1,B2により1倍角信号1Xとn倍角信号nXとを出力する用途に使用することができる。この場合、複速レゾルバ100は、1倍角信号1Xとn倍角信号nXとの電圧を個別に調整することが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
100,100A 複速レゾルバ、101 回転軸、105 筐体、110 回転トランス用ステータ、111 回転トランス用ステータ巻線、120 回転トランス用ロータ、121 回転トランス用第1ロータ巻線、121b 接続線、122 回転トランス用第2ロータ巻線、122b 接続線、130 回転検出部用ロータ、131 回転検出部用第1ロータ巻線、132 回転検出部用第2ロータ巻線、140 回転検出部用ステータ、141 回転検出部用第1ステータ巻線、142 回転検出部用第2ステータ巻線、A 回転トランス部、B1 第1回転検出部、B2 第2回転検出部。
図1
図2
図3