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特開2022-81851魚の内蔵から、乳酸発酵技術により、発酵、分解、分離して抽出した魚油(ラクトフィッシュオイルと称す)の製造方法
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  • 特開-魚の内蔵から、乳酸発酵技術により、発酵、分解、分離して抽出した魚油(ラクトフィッシュオイルと称す)の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081851
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】魚の内蔵から、乳酸発酵技術により、発酵、分解、分離して抽出した魚油(ラクトフィッシュオイルと称す)の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
A23D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193044
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】398052678
【氏名又は名称】告田 政秋
(71)【出願人】
【識別番号】599177330
【氏名又は名称】告田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】告田 政秋
(72)【発明者】
【氏名】告田 幸子
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DG14
4B026DL06
4B026DL09
4B026DP01
4B026DP10
4B026DX01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】動物性たんぱく質や脂肪を多く含む原料を、乳酸発酵スターター用いて乳酸発酵させることにより魚油を製造する方法を提供する。
【解決手段】新鮮な魚の内蔵と、乳酸発酵スターターをミンチし混合した後、嫌気性発酵の条件下にて、乳酸発酵、酵素分解、油脂分の分離を密閉容器内で進めた後、油脂分を抽出する、魚油の製造方法。乳酸発酵スターターの主原料を生のサトイモとして、乳酸発酵の環境下、発酵促進により液状化して、pHを略4.0まで下げ発酵終了とする、該魚油の製造方法。前記嫌気性発酵の条件を非加熱で行う該魚油の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な魚の内蔵と、乳酸発酵スターターをミンチし混合した後、嫌気性発酵の条件下にて、乳酸発酵、酵素分解、油脂分の分離を密閉容器内で進んだ後、油脂分を抽出して得られることを特徴とする魚油の製造方法。
【請求項2】
乳酸発酵スターターの主原料を生のサトイモとして、乳酸発酵の環境下、発酵促進により液状化して、pHを略4.0まで下げ発酵終了とすることを特徴とする請求項1に記載の魚油の製造方法。
【請求項3】
前記嫌気性発酵の条件を非加熱で、乳酸発酵を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の魚油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の内蔵を、乳脂発酵スターターとミンチして混合した後、密閉容器内で嫌気性発酵の環境下・乳酸発酵にて乳酸・酢酸を生成しpHを4.0前後まで低下させ、自己消化酵素の働きで、内臓を形成しているタンパク質が分解して、油脂分が分離し、液化が進み比重の軽い油脂分が浮いて集まって、抽出した、魚油(ラクトフィッシュオイル)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚の内蔵は、脂肪分を多く含み、不飽和脂肪酸が多く常温で液状である。
魚に含まれる不飽和脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系(オメガ3系)多価不飽和脂肪酸を含んでおり、サプリメント等の原料に必要な成分である。また、魚の内蔵脂肪のエネルギー換算では、9300Kcal(38910J/g)の分析値(2009年11月)により、原油に相当する値を呈しバイオマス燃料としても期待が見込まれる原料である。
【0003】
しかし、魚の内蔵脂肪・魚油に含まれる、不飽和脂肪酸は酸化しやすく、最終的には分解されアルデヒド類、アルコール類やカルボン酸などになることが知られている。その為、酸化防止剤等の添加で保存性を確保しているのが現状である。 魚の内蔵の処理方法は、魚あらとして内蔵・頭・中骨等をクッカー(蒸気圧)で蒸煮後、スクリュウープレスで分離して得た魚油が大半である。この製造方法は、熱を加えるため、魚の本来持っている酵素を死活させている。その結果酸化しやすい性質と考えられる。
【0004】
今回、魚あらとして内蔵・頭・中骨等をそれぞれの部位ごとに出る量を養殖ハマチ・ブリで調査した結果、内蔵が50%であった。その部位ごとの成分を分析した結果、内蔵は乾物当たり88.66%と非常に多い分析値であった。
【0005】
【特許文献1】特表2001-509470号公報
【特許文献2】特許第5224018号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの乳酸発酵技術は、食品に関して、牛乳をヨーグルトや白菜をキムチ等での活用、家畜の飼料分野では、牧草をサイレージ等に於ける活用等がある。乳酸発酵技術は、乳酸菌の添加・特に食品分野では、選抜された機能性乳酸菌による機能性食品の開発が主流である。動物性たんぱく質や高脂肪を多く含む原料の乳酸発酵技術は、乳酸発酵はしない。従って、これらの問題を解決する技術が求められる。
また、Co2排出量削減の課題で、熱を加えない非加熱処理方法による未利用資源の再利用に関して、従来の技術の再検討が課題とされている。
【0007】
従来の魚油の製造方法は、魚あらとして内蔵・頭・中骨等をクッカー(蒸気圧)で蒸煮後、スクリュウープレスで分離して得た魚油が大半である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
魚の内臓は、ハマチ・ブリの養殖魚を対象にした調査の結果、魚あらの魚腸骨100対して、内臓は50%を占めており、脂肪の含有量も乾物換算で88%という結果であった。
そこで、本発明は生のサトイモを、乳酸発酵の環境下、発酵促進により液状化して、pH4.0程度まで下げ得た乳酸発酵スターターと新鮮な魚の内蔵をミンチ・混合した後、嫌気性発酵の条件下にて、乳酸発酵・酵素分解・油脂分の分離を密閉容器内で進んだ後、油脂分を抽出して得た魚油の調製方法を特徴とする。今回の発酵に関する温度は、熱を加えない非加熱で行える乳酸発酵で、熱に弱い酵素の働きを十分に活用できるように、自然界の温度帯(10℃前後でも可能、氷点下では凍ってしまうので無理)での調製方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、魚の内蔵は脂肪分を多く含み、不飽和脂肪酸が多く常温で液状である。
魚に含まれる不飽和脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系(オメガ3系)多価不飽和脂肪酸を含んでおり、サプリメント等の原料に必要な成分である。また、魚の内蔵脂肪のエネルギー換算では、9300Kcal(38910J/g)の分析値(2009年11月)により、原油に相当する値を呈しバイオマス燃料としても期待が見込まれる原料である。これまで、乳酸発酵技術において、動物性たんぱく質や高脂肪を多く含む原料は乳酸発酵しない。そこで、独自に開発した乳酸発酵スターターSTMTを用いた、乳酸発酵技術により得た魚油(ラクトフィッシュオイル)はCo2排出量削減の課題で、熱を加えない非加熱処理方法による未利用資源の再利用に関しても問題の解決が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の分類系統図
【実施例0011】
本発明の実施の形態を以下に説明する。
新鮮な魚の内臓の調達には、養殖魚業者から全量引きとり、その内訳及び成分分析、発酵品質に関する分析結果を表に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
表1は、鹿児島県の養殖魚業者、黒瀬水産からブリ、カンパチの魚あらの引取実績表により、内臓が占める割合は、魚あら100に対して50%であった。
【0014】
【表2】
【0015】
表2は、魚あらの各部位別の一般成分及びで、乳酸発酵処理後の一般成分を、現物中と乾物換算の値を示す。魚あらの内臓は、脂肪の割合が乾物換算で80%以上と非常に多く含まれている。
【0016】
【表3】
【0017】
表3は、発酵開始からの経時的変化を有機酸の生成に関して分析した結果である。発酵開始から約1か月で、乳酸が1,000m/リットル及び酢酸が100m/リットルを生成し、pHが4.63と下がり、大腸菌群が陰性の結果、乳酸発酵処理のプロセスを得ていることが確認出来た。
【0018】
【表4】
【0019】
表4は、乳酸発酵処理に関する経時的変化を示す。その結果、3週間程度でpHが4.52と下がり、大腸菌群が陰性(-)の値を示した。
【0020】
【表5】
【0021】
乳酸発酵スターターに関する分析結果を示す。
表5は、原料のサトイモの分析値で、可溶性炭水化物(WSC)の値が乾物換算で21.3%と高い数値であった。サイレージ(乳酸発酵飼料)に用いられる原料は、10%程度
である。
【0022】
【表6】
【0023】
表6は、サトイモのみを無添加とし、サトイモにフスマ・ヨーグルトを各添加して得た乳酸発酵に関する結果を示す。その結果、サトイモのみ(無添加)評価が高かった結果であった。
【0024】
【表7】
【0025】
表7は、表6同様に調整した、乾物回収率及びガス損失率を示す。その結果、サトイモのみの無添加が、評価が高かった。
【0026】
【表8】
【0027】
乳酸発酵処理技術に関する分析結果を示す。
表8は、各種残差物に於ける乳酸発酵処理に関する発酵品質の分析結果を示す。その結果、オカラや焼酎廃液、水産物残差(魚あら)は全て乳酸発酵を行った結果であった。
【0028】
【表9】
【0029】
表9は、表8の一般成分の分析結果を示す。
【0030】
【表10】
【0031】
表10は、2009年宮崎県えびの市内でぶり・カンパチの内臓を乳酸発酵処理技術で分離して得た魚油の熱量に関する分析結果を示す。その結果、9,300&#13193;で原油なみの熱量であった。
【0032】
【表11】
【0033】
表11は、表10で分析した魚油の保存試験でビン容器にて11年間の分析結果を示す。その結果、9,190&#13193;で若干下回った値であったが、大きく熱量を下げる結果ではなかった。
【0034】
【表12】
【0035】
表12は、表11で分析した魚油の酸化・過酸化物価の分析結果を示す。
【0036】
【表13】
【0037】
表13は、表11で分析した魚油の脂肪酸組成の分析結果を示す。
図1