(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081863
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220525BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20220525BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G03G21/00 384
G03G21/00 378
G03G15/20 510
G03G15/00 445
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193059
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】福江 修平
(72)【発明者】
【氏名】植木 俊介
【テーマコード(参考)】
2H033
2H072
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA14
2H033AA15
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA16
2H033CA35
2H033CA39
2H072AA32
2H072AB20
2H072CA01
2H072CB01
2H072CB02
2H270LB13
2H270LC02
2H270MA34
2H270MA40
2H270MB07
2H270MB25
2H270MB32
2H270MB43
2H270PA83
2H270QA44
2H270SA15
2H270SC11
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】印刷速度の低下を抑えつつ、シートのカールを抑制することを目的とする。
【解決手段】制御部は、シートの片面に印刷を行う場合には、転写部でシートの第1面に現像剤像を転写せずにシートを定着部に搬送する空印刷処理と、空印刷処理が実行されたシートが搬送部によって転写部に再搬送された後に、転写部でシートの第1面とは反対側の第2面に現像剤像を転写して、定着部でシートの第2面に現像剤像を定着させる本印刷処理とを有するカール抑制処理を実行可能である。制御部は、複数のシートの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には(例えば、片面Bモード)、第1シート(仮想ページ「2」)に対して空印刷処理を実行した後に連続して、第1シートの次に供給部によって送り出される第2シート(仮想ページ「4」)に対して空印刷処理を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを収容する収容部と、
前記収容部からシートを送り出す供給部と、
前記供給部によって送り出されたシートに現像剤像を転写する転写部と、
加熱および加圧によってシートに現像剤像を定着させる定着部と、
前記定着部を通過したシートを表裏反転して前記転写部に再搬送可能な搬送部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
シートの片面に印刷を行う場合には、
前記転写部でシートの第1面に現像剤像を転写せずにシートを前記定着部に搬送する空印刷処理と、
前記空印刷処理が実行されたシートが前記搬送部によって前記転写部に再搬送された後に、前記転写部でシートの前記第1面とは反対側の第2面に現像剤像を転写して、前記定着部でシートの前記第2面に現像剤像を定着させる本印刷処理と、を有するカール抑制処理を実行可能であり、
複数のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、第1シートに対して前記空印刷処理を実行した後に連続して、前記第1シートの次に前記供給部によって送り出される第2シートに対して前記空印刷処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、2枚のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、前記第2シートに対して前記空印刷処理を実行した後、前記第1シート、前記第2シートの順で、各シートに対して前記本印刷処理を順次実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
3枚以上のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、
前記第2シートに対して前記空印刷処理を実行した後、前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行し、
前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行した後、前記第2シートの次に前記供給部によって送り出される第3シートに対して前記空印刷処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
3枚以上のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、
前記第2シートに対して前記空印刷処理を実行した後に連続して、前記第2シートの次に前記供給部によって送り出される第3シートに対して前記空印刷処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
4枚以上のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、
前記第3シートに対して前記空印刷処理を実行した後、前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行し、
前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行した後、前記第3シートの次に前記供給部によって送り出される第4シートに対して前記空印刷処理を実行することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、ユーザによって前記カール抑制処理を実行することが選択された場合に、前記カール抑制処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、ユーザによって入力されたシートの種類を示す情報が所定種類を示す情報である場合に、前記カール抑制処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記定着部は、
ヒータにより加熱される加熱部と、
前記加熱部との間でシートを挟んでニップ部を形成する加圧部と、
前記ニップ部のニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧よりも低い第2ニップ圧とに変更可能なニップ圧変更機構と、を備え、
前記制御部は、前記空印刷処理を実行する場合には、前記ニップ圧を前記第2ニップ圧にすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記加圧部は、
無端状のベルトと、
前記加熱部との間で前記ベルトを挟む第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材と、を備え、
前記制御部は、
前記ニップ圧を前記第1ニップ圧とする場合には、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方と前記加熱部との間で前記ベルトを挟む状態となるように前記ニップ圧変更機構を制御し、
前記ニップ圧を前記第2ニップ圧とする場合には、前記第1ニップ形成部材と前記加熱部との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記加熱部との間で前記ベルトを挟まない状態となるように前記ニップ圧変更機構を制御することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を定着させる定着部を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、湿度が所定値以上である場合に、給紙手段から給紙されたシートの第1面に現像剤の転写を行わずに定着装置で加熱・加圧を行う調湿運転を実行した後、シートの第2面に現像剤を転写して定着を行う印刷処理を実行することで、シートのカールを抑制するものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、複数枚のシートを印刷する場合、1枚目のシートに対して調湿運転・印刷処理を実行した後、次のシートに対して調湿運転・印刷処理を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、複数のシートを印刷する場合には、調湿運転と印刷処理とを交互に繰り返し行うため、印刷速度が低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、印刷速度の低下を抑えつつ、シートのカールを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、シートを収容する収容部と、前記収容部からシートを送り出す供給部と、前記供給部によって送り出されたシートに現像剤像を転写する転写部と、加熱および加圧によってシートに現像剤像を定着させる定着部と、前記定着部を通過したシートを表裏反転して前記転写部に再搬送可能な搬送部と、
制御部と、を備える。
前記制御部は、シートの片面に印刷を行う場合には、前記転写部でシートの第1面に現像剤像を転写せずにシートを前記定着部に搬送する空印刷処理と、前記空印刷処理が実行されたシートが前記搬送部によって前記転写部に再搬送された後に、前記転写部でシートの前記第1面とは反対側の第2面に現像剤像を転写して、前記定着部でシートの前記第2面に現像剤像を定着させる本印刷処理と、を有するカール抑制処理を実行可能である。
前記制御部は、複数のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、第1シートに対して前記空印刷処理を実行した後に連続して、前記第1シートの次に前記供給部によって送り出される第2シートに対して前記空印刷処理を実行する。
【0007】
この構成によれば、第1シートに対して空印刷処理が実行されてから本印刷処理が実行されるまでの間に、次の第2シートに対して空印刷処理を実行できるので、印刷速度の低下を抑えつつ、シートのカールを抑制することができる。
【0008】
また、前記制御部は、2枚のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、前記第2シートに対して前記空印刷処理を実行した後、前記第1シート、前記第2シートの順で、各シートに対して前記本印刷処理を順次実行してもよい。
【0009】
この構成によれば、第1シートと第2シートを2枚連続して印刷するので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0010】
また、前記制御部は、3枚以上のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、前記第2シートに対して前記空印刷処理を実行した後、前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行し、前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行した後、前記第2シートの次に前記供給部によって送り出される第3シートに対して前記空印刷処理を実行してもよい。
【0011】
この構成によれば、第2シートに対して空印刷処理が実行されてから本印刷処理が実行されるまでの間に、第1シートに対する本印刷処理と第3シートに対する空印刷処理とを実行できるので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0012】
また、前記制御部は、3枚以上のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、前記第2シートに対して前記空印刷処理を実行した後に連続して、前記第2シートの次に前記供給部によって送り出される第3シートに対して前記空印刷処理を実行してもよい。
【0013】
この構成によれば、第1シートに対して空印刷処理が実行されてから本印刷処理が実行されるまでの間に、第2シートおよび第3シートに対して空印刷処理を実行できるので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0014】
また、前記制御部は、4枚以上のシートの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合には、前記第3シートに対して前記空印刷処理を実行した後、前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行し、前記第1シートに対して前記本印刷処理を実行した後、前記第3シートの次に前記供給部によって送り出される第4シートに対して前記空印刷処理を実行してもよい。
【0015】
この構成によれば、第3シートに対して空印刷処理が実行されてから第2シートに対して本印刷処理が実行されるまでの間に、第1シートに対する本印刷処理と第4シートに対する空印刷処理とを実行できるので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0016】
また、前記制御部は、ユーザによって前記カール抑制処理を実行することが選択された場合に、前記カール抑制処理を実行してもよい。
【0017】
この構成によれば、ユーザによってカール抑制処理の実行の可否を選択することができる。
【0018】
また、前記制御部は、ユーザによって入力されたシートの種類を示す情報が所定種類を示す情報である場合に、前記カール抑制処理を実行してもよい。
【0019】
この構成によれば、シートの種類が所定種類の場合に、カールを抑制することができる。
【0020】
また、前記定着部は、ヒータにより加熱される加熱部と、前記加熱部との間でシートを挟んでニップ部を形成する加圧部と、前記ニップ部のニップ圧を、第1ニップ圧と、前記第1ニップ圧よりも低い第2ニップ圧とに変更可能なニップ圧変更機構と、を備え、前記制御部は、前記空印刷処理を実行する場合には、前記ニップ圧を前記第2ニップ圧にしてもよい。
【0021】
この構成によれば、空印刷処理を実行する場合にはニップ圧が小さな第2ニップ圧となるので、空印刷処理時において定着部にかかる負荷を小さくすることができるので、空印刷処理の回数が増えることに起因する定着部の劣化を抑えることができる。
【0022】
また、前記加圧部は、無端状のベルトと、前記加熱部との間で前記ベルトを挟む第1ニップ形成部材および第2ニップ形成部材と、を備え、前記制御部は、前記ニップ圧を前記第1ニップ圧とする場合には、前記第1ニップ形成部材および前記第2ニップ形成部材の両方と前記加熱部との間で前記ベルトを挟む状態となるように前記ニップ圧変更機構を制御し、前記ニップ圧を前記第2ニップ圧とする場合には、前記第1ニップ形成部材と前記加熱部との間で前記ベルトを挟み、かつ、前記第2ニップ形成部材と前記加熱部との間で前記ベルトを挟まない状態となるように前記ニップ圧変更機構を制御してもよい。
【0023】
この構成によれば、空印刷処理を実行する場合にはニップ幅およびニップ圧が小さくなるので、空印刷処理の回数が増えることに起因する定着部の劣化をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、印刷速度の低下を抑えつつ、シートのカールを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカラープリンタを示す断面図である。
【
図4】ニップ状態が強ニップ状態であるときの、切替機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
【
図5】ニップ状態が中ニップ状態であるときの、切替機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
【
図6】ニップ状態が弱ニップ状態であるときの、切替機構を示す断面図(a)と、ニップ部周りの構造を示す断面図(b)である。
【
図7】第1両面印刷モード、第2両面印刷モード、第1カール抑制モード、第2カール抑制モードにおいて使用される各テーブルを示す図(a)~(d)である。
【
図9】カール抑制処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、本体筐体2と、当該本体筐体2の内部に配置されたシート供給部3、画像形成部4、定着部80、搬送部9および制御部100とを備えている。
【0027】
本体筐体2は、上面に排出トレイ21を有している。
【0028】
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、シートSを収容する収容部31と、収容部31からシートSを画像形成部4に送り出す供給部32とを備えている。
【0029】
画像形成部4は、シートSに現像剤像を転写して画像を形成する機能を有し、露光装置5と、4つのプロセスカートリッジ6と、転写部7とを備えている。
【0030】
露光装置5は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源やポリゴンミラーなどを備えている。露光装置5は、光ビームを感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0031】
プロセスカートリッジ6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、現像ローラ63とを備えている。4つのプロセスカートリッジ6内には、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色の現像剤が収容されている。
【0032】
転写部7は、供給部32によって送り出されたシートSに現像剤像を転写する機能を有している。転写部7は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、無端状のベルトであり、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設されている。搬送ベルト73の内側には、転写ローラ74が対応する感光体ドラム61との間で搬送ベルト73を挟持するように配置されている。
【0033】
帯電器62は、感光体ドラム61の表面を帯電する。その後、露光装置5は、感光体ドラム61の表面を露光して、感光体ドラム61の表面に静電潜像を形成する。
【0034】
現像ローラ63は、感光体ドラム61上に形成された静電潜像に現像剤を供給する。これにより、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、搬送ベルト73によってシートSが、感光体ドラム61と転写ローラ74の間に搬送されると、感光体ドラム61上の現像剤像がシートSに転写される。
【0035】
定着部80は、加熱および加圧によってシートSに現像剤像を定着させる装置である。定着部80の詳細については後述する。
【0036】
搬送部9は、定着部80から排出されたシートSを本体筐体2外または表裏反転した状態で再び画像形成部4に向けて搬送するように構成されている。搬送部9は、第1搬送経路91と、第2搬送経路92と、再搬送経路93と、第1搬送ローラ94と、第2搬送ローラ95と、第1スイッチバックローラSR1と、第2スイッチバックローラSR2と、複数の再搬送ローラ96と、回動可能な第1フラッパFL1および第2フラッパFL2とを備えている。
【0037】
第1搬送経路91は、定着部80から排出されたシートを排出トレイ21に向けて案内する経路である。第2搬送経路92は、定着部80から排出されたシートを、第1搬送経路91とは異なるルートで排出トレイ21に向けて案内する経路である。再搬送経路93は、後述する第1スイッチバックローラSR1等により本体筐体2内に引き込まれたシートSを、画像形成部4の上流側の供給部32に案内する経路である。再搬送ローラ96は、再搬送経路93内のシートSを供給部32に向けて搬送するローラであり、再搬送経路93に設けられている。
【0038】
第1搬送ローラ94は、定着部80に設けられている。第1搬送ローラ94は、現像剤像が熱定着されたシートSを、第2フラッパFL2に向けて搬送する。
【0039】
第2搬送ローラ95、第1スイッチバックローラSR1および第2スイッチバックローラSR2は、正逆回転可能なローラである。第2搬送ローラ95、第1スイッチバックローラSR1および第2スイッチバックローラSR2は、正回転時に本体筐体2の外、詳しくは排出トレイ21に向けてシートSを搬送し、逆回転時に本体筐体2内にシートSを引き込む。
【0040】
第2搬送ローラ95および第1スイッチバックローラSR1は、第1搬送経路91に設けられている。第1スイッチバックローラSR1は、第2搬送ローラ95よりも排出トレイ21の近くに配置されている。第2スイッチバックローラSR2は、第2搬送経路92に設けられている。
【0041】
搬送部9では、第1フラッパFL1と第2フラッパFL2の位置が適宜切り替えられることで、シートSを定着部80から第1搬送経路91または第2搬送経路92に向けて搬送したり、シートSを第1搬送経路91または第2搬送経路92から再搬送経路93に搬送することが可能となっている。
【0042】
図2に示すように、定着部80は、第1定着部材81と、加圧部の一例としての第2定着部材82とを備えている。第1定着部材81は、ヒータ110と、加熱部の一例としてのローラ120を有している。
【0043】
ヒータ110は、ハロゲンランプであり、通電によって発光するとともに発熱し、輻射熱によってローラ120を加熱する。ヒータ110は、ローラ120の回転軸線に沿ってローラ120の内側を通るように配置されている。ここで、ローラ120の回転軸線に沿う方向は、第1定着部材81の軸方向であり、以下、単に「軸方向」とも称する。
【0044】
ローラ120は、筒状のローラであり、ヒータ110によって加熱される。ローラ120は、金属などからなる素管121と、素管121の外周面を覆う弾性層122とを有している。弾性層122は、シリコンゴムなどのゴムからなる。
【0045】
ローラ120の軸方向における両端部は、後述するフレームFL、詳しくはサイドフレーム83(
図3参照)に回転可能に支持されており、モータから駆動力が入力されることで
図2の反時計回りに回転駆動する。
【0046】
第2定着部材82は、第1定着部材81に対して近接・離間する方向である所定方向に直線的に移動可能となっている。所定方向は、軸方向に直交している。第2定着部材82は、後述するニップ圧変更機構300(
図3参照)によって第1定着部材81に向けて付勢されている。
【0047】
また、第2定着部材82は、無端状のベルト130と、ニップ形成部材Nと、ホルダ140と、ステイ200と、ベルトガイドGと、摺動シート150とを有している。
【0048】
ベルト130は、シートSに現像剤像を定着させる際に、ローラ120との間でシートSを挟む部材である。ベルト130は、長尺筒状の部材であり、可撓性を有している。図示は省略するが、ベルト130は、金属や樹脂などからなる基材と、基材の外周面を覆う離型層とを有している。ベルト130は、ローラ120が回転したときにローラ120またはシートSとの摩擦によって
図2の時計回りに従動回転する。ベルト130の内周面には、グリスなどの潤滑剤が付けられている。ベルト130の内側には、ニップ形成部材N、ホルダ140、ステイ200、ベルトガイドGおよび摺動シート150が配置されている。
【0049】
ニップ形成部材Nは、ローラ120との間でベルト130を挟んでニップ部NPを形成する部材である。ニップ形成部材Nは、第1ニップ形成部材N1と、第2ニップ形成部材N2とを備えている。
【0050】
第1ニップ形成部材N1は、第1パッドP1と、第1固定板B1とを有している。
第1パッドP1は、直方体状の部材である。第1パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第1パッドP1は、ローラ120との間でベルト130を挟んで上流ニップ部NP1を形成する。
【0051】
なお、以下の説明では、上流ニップ部NP1および後で詳述するニップ部NPにおけるベルト130の移動方向を単に「移動方向」という。なお、本実施形態において、移動方向は、ローラ120の外周面に沿った方向であるが、この方向は、おおよそ所定方向と軸方向に直交する方向に沿った方向であるため、所定方向と軸方向に直交する方向として図示することとする。なお、移動方向は、ニップ部NPでのシートSの搬送方向と同じ方向である。また、以下の説明では、移動方向の上流、下流を、単に「上流、下流」とも称する。
【0052】
第1パッドP1は、第1固定板B1のローラ120側の面に固定されている。第1パッドP1は、第1固定板B1の上流端よりも移動方向の上流側に僅かに突出している。これにより、第1パッドP1はホルダ140と上流側で接触する。
【0053】
第1固定板B1は、第1パッドP1よりも硬い部材、例えば金属などからなる。
【0054】
第2ニップ形成部材N2は、第1ニップ形成部材N1に対して移動方向の下流側に間隔を空けて配置されている。つまり、第2ニップ形成部材N2は、シートSの搬送方向において、第1ニップ形成部材N1から離れている。第2ニップ形成部材N2は、第2パッドP2と、第2固定板B2とを有している。
【0055】
第2パッドP2は、直方体状の部材である。第2パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第2パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んで下流ニップ部NP2を形成する。第2パッドP2は、移動方向において、第1パッドP1から離れている。
【0056】
このため、上流ニップ部NP1と下流ニップ部NP2との間には、第2定着部材82からの圧力が直接作用しない中間ニップ部NP3が存在する。この中間ニップ部NP3では、ベルト130はローラ120に接触するものの、ローラ120との間でベルト130を挟む部材が存在しないため、圧力はほとんど加わらない。従って、シートSは、ローラ120によって加熱されつつ、ほぼ加圧されることなく中間ニップ部NP3を通過する。本実施形態では、上流ニップ部NP1の上流端から下流ニップ部NP2の下流端までの領域、即ち、ベルト130の外周面とローラ120とが接触する全ての領域をニップ部NPと称する。つまり、本実施形態では、ニップ部NPは、第1パッドP1および第2パッドP2からの押圧力が加わらない部分を含む。
【0057】
第2パッドP2は、第2固定板B2のローラ120側の面に固定されている。第2パッドP2は、第2固定板B2の下流端よりも移動方向の下流側に僅かに突出している。これにより、第2パッドP2はホルダ140と下流側で接触する。
図6に示すように、所定方向において、第2パッドP2の寸法は、第1パッドP1の寸法よりも小さい。
【0058】
第2固定板B2は、第2パッドP2よりも硬い部材、例えば金属などからなる。所定方向において、第2固定板B2の寸法は、第1固定板B1と同じである。
【0059】
なお、第1パッドP1の硬さは、ローラ120の弾性層122の硬さよりも大きい。また、第2パッドP2の硬さは、第1パッドP1の硬さよりも大きい。つまり、第1パッドP1は、第2パッドP2よりも柔らかい。
【0060】
ここで、硬さとは、ISO7619-1に規定されているデュロメータ硬さのことである。デュロメータ硬さは,規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、第1パッドP1のデュロメータ硬さは6~10、第2パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0061】
なお、シリコンゴムの硬さは、製造時に添加する添加物(シリカ系充填剤やカーボン系充填剤)の比率を変えることで調整することができる。具体的には、添加物の比率を大きくすると、ゴムの硬さが大きくなる。また、シリコン系のオイルを添加することで、硬さを小さくすることもできる。ゴムの製法としては、液状射出成型や押出成型を採用することができる。一般的には、低硬度ゴムは、液状射出成型が適しており、高硬度ゴムは、押出成形が適している。
【0062】
ホルダ140は、ニップ形成部材Nを保持する部材である。つまり、第1ニップ形成部材N1と第2ニップ形成部材N2は、1つのホルダ140によって支持されている。ホルダ140は、ステイ200で支持されている。
【0063】
ホルダ140は、第1ニップ形成部材N1の第1定着部材81とは反対の面を支持する第1支持面141Aと、第2ニップ形成部材N2の第1定着部材81とは反対の面を支持する第2支持面141Bとを有する。第1支持面141Aと第2支持面141Bは、所定方向において同じ位置に位置する。
【0064】
これにより、
図6に示すように、第1ニップ形成部材N1が第2ニップ形成部材N2よりも第1定着部材81側に突出する。言い換えると、第1ニップ形成部材N1の第1定着部材81側の面である第1先端面N11は、所定方向において、第2ニップ形成部材N2の第1定着部材81側の面である第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。詳しくは、各ニップ形成部材N1,N2が第1定着部材81に圧接されていない状態において、第1先端面N11は第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。
【0065】
ここで、
図6の状態は、第1ニップ形成部材N1の第1先端面N11の一部のみが第1定着部材81に圧接された状態であり、第1先端面N11の他部と第2先端面N21には圧力は、加わっていない。そのため、第1先端面N11の他部と第2先端面N21の位置は、各ニップ形成部材N1,N2が第1定着部材81に圧接されていない状態のときと同じ位置となる。つまり、第1先端面N11の他部は、第2先端面N21よりも第1定着部材81の近くに位置する。言い換えると、所定方向において、第1先端面N11の圧力が加わっていない部分と第1定着部材81の外周面との最短距離D1は、圧力が加わっていない第2先端面N21と第1定着部材81の外周面との最短距離D2よりも小さい。
【0066】
ステイ200は、ホルダ140に対してニップ形成部材Nと反対側に位置してホルダ140を支持する部材である。ステイ200は、金属などからなる。ステイ200の軸方向の端部には、樹脂などからなる緩衝部材BF(
図4参照)が取り付けられている。緩衝部材BFは、金属製のステイ200と、後述する金属製のアーム310(
図4参照)とが擦れ合うのを抑制するための部材である。
【0067】
ベルトガイドGは、ベルト130の内周面131をガイドする部材である。ベルトガイドGは、耐熱性を有する樹脂などからなる。ベルトガイドGは、上流ガイドG1と、下流ガイドG2とを有している。
【0068】
摺動シート150は、各パッドP1,P2とベルト130との摩擦抵抗を低減するための矩形のシートである。摺動シート150は、ニップ部NPにおいて、ベルト130の内周面131と各パッドP1,P2との間で挟まれている。摺動シート150は、弾性変形可能な材料からなる。なお、摺動シート150の材料は、どのようなものであってもよいが、本実施形態では、ポリイミドを含有した樹脂シートを採用している。
【0069】
図3に示すように、定着部80は、フレームFLと、ニップ圧変更機構300とをさらに備えている。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームであり、金属などからなる。フレームFLは、第1定着部材81および第2定着部材82に対して軸方向の両側に配置されるサイドフレーム83およびブラケット84と、各サイドフレーム83に接続される接続フレーム85とを備えている。
【0070】
サイドフレーム83は、第1定着部材81および第2定着部材82を支持するフレームである。サイドフレーム83は、後述する第1バネ320の一端部と係合するバネ係合部83Aを有している。
【0071】
ブラケット84は、第2定着部材82を所定方向に移動可能に支持する部材であり、サイドフレーム83に固定されている。詳しくは、軸方向の両側に配置されるブラケット84は、ホルダ140の軸方向の端部142を所定方向に移動可能に支持する第1長孔84Aを有している。第1長孔84Aは、所定方向に延びる長孔である。
【0072】
ここで、第1長孔84Aは、ガイドとしての溝に相当する。ホルダ140の軸方向の各端部142は、軸方向の両側の第1長孔84Aに挿入され、第2定着部材82は所定方向に移動可能に支持される。なお、ガイドとしての溝としては、底付きの溝であってもよい。
【0073】
ニップ圧変更機構300は、ニップ部NPのニップ圧を変更可能な機構である。ニップ圧変更機構300は、制御部100によって駆動され、第1定着部材81および第2定着部材82のニップ状態を、強ニップ状態と、強ニップ状態よりもニップ圧が低い中ニップ状態と、中ニップ状態よりもニップ圧が低い弱ニップ状態とに切替可能となっている。ここで、強ニップ状態、中ニップ状態および弱ニップ状態では、いずれの状態でも、各パッドP1,P2の少なくとも一方と第1定着部材81との間でベルト130が挟まれている。
【0074】
図4(a)に示すように、ニップ圧変更機構300は、アーム310と、第1バネ320と、第2バネ330と、カム340とを備えている。アーム310、第1バネ320、第2バネ330およびカム340は、フレームFLの軸方向の一端側と他端側にそれぞれ設けられている。
【0075】
アーム310は、緩衝部材BFを介してステイ200を第1定着部材81に向けて押圧するための部材である。アーム310は、第2定着部材82を支持するとともに、サイドフレーム83に回動可能に支持されている。
【0076】
アーム310は、アーム本体311と、カムフォロア350とを有している。アーム本体311は、金属などからなるL形状の板状部材である。
【0077】
サイドフレーム83は、アーム本体311を回動可能に支持するボス83Xを有している。アーム本体311は、サイドフレーム83のボス83Xに回動可能に支持される一端部311Aと、第1バネ320が連結される他端部311Bと、第2定着部材82を支持する係合穴311Cとを有している。係合穴311Cは、一端部311Aと他端部311Bの間に配置され、緩衝部材BFと係合している。
【0078】
また、アーム本体311は、カム340に向けて延びるガイド突起312をさらに有している。ガイド突起312は、カムフォロア350を移動可能に支持している。
【0079】
カムフォロア350は、カム340に接触可能となっている。カムフォロア350は、樹脂などからなり、ガイド突起312に嵌合される筒状部351と、筒状部351の一端に設けられる接触部352と、筒状部351の他端に設けられるフランジ部353とを有している。
【0080】
筒状部351は、ガイド突起312によって、当該ガイド突起312の延びる方向に移動可能に支持されている。接触部352は、筒状部351のカム340側の端部の開口を塞ぐ壁であり、カム340とガイド突起312の先端の間に配置されている。フランジ部353は、筒状部351の他端から、カムフォロア350の移動方向に直交する方向に突出している。
【0081】
そして、筒状部351とアーム本体311の間には、第2バネ330が配置されている。これにより、アーム本体311は、第1バネ320によって付勢されるとともに、第2バネ330によって付勢可能となっている。
【0082】
第1バネ320は、第2定着部材82に対して第1付勢力を付与することで、ニップ部NPに荷重を付与するバネである。詳しくは、第1バネ320は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第1付勢力を付与している。第1バネ320は、金属などからなる引張コイルバネであり、一端がサイドフレーム83のバネ係合部83Aに連結され、他端がアーム本体311の他端部311Bに連結されている。
【0083】
第2バネ330は、第2定着部材82に対して第1付勢力とは逆向きの第2付勢力を付与可能なバネである。詳しくは、第2バネ330は、アーム本体311を介して第2定着部材82に対して第2付勢力を付与可能となっている。第2バネ330は、金属などからなる圧縮コイルバネであり、圧縮コイルバネで囲まれる空間内にガイド突起312が挿入された状態で、筒状部351とアーム本体311の間に配置されている。
【0084】
カム340は、カムフォロア350を介してアーム310を押圧することで、第2定着部材82を所定方向に移動させる部材である。また、カム340は、第2バネ330の伸縮状態を、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与されない第1伸縮状態と、第2付勢力が第2定着部材82に対して付与される第2伸縮状態と、第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態とに変更可能とする機能も有する。カム340は、制御部100で制御されることで、
図4(a)に示す第1カム位置と、
図5(a)に示す第2カム位置と、
図6(a)に示す第3カム位置との間で回動可能となっている。
【0085】
カム340は、樹脂などからなり、第1部位341と、第2部位342と、第3部位343とを有している。第1部位341、第2部位342および第3部位343は、カム340の外周面上に位置している。
【0086】
第1部位341は、カム340が第1カム位置に位置するときに、カムフォロア350に最も近い部位である。
図4(a)に示すように、カム340が第1カム位置に位置するときに、第1部位341は、カムフォロア350から離れている。
【0087】
第2部位342は、カム340が第2カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第2部位342は、
図5(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約90度回動した際にカムフォロア350と接触する部位である。第2部位342からカム340の回動中心までの距離は、第1部位341からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0088】
第3部位343は、カム340が第3カム位置に位置するときに、カムフォロア350に接触する部位である。より詳しくは、第3部位343は、
図6(a)に示すように、カム340が第1カム位置から図示時計回りに約270度回動した部位、言い換えると、第2カム位置から図示時計回りに約180度回動した際に、カムフォロア350と接触する部位である。第3部位343からカム340の回動中心までの距離は、第2部位342からカム340の回動中心までの距離よりも大きい。
【0089】
カム340が第1カム位置に位置するときには、カム340がカムフォロア350から離れていることにより、第2バネ330の伸縮状態は第1伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、
図4(a)に示す第1姿勢となっている。
【0090】
詳しくは、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第1伸縮状態にしているときには、カム340がカムフォロア350から離れているため、第2バネ330の第2付勢力は、アーム本体311を介して第2定着部材82に付与されず、第1バネ320の第1付勢力のみがアーム本体311を介して第2定着部材82の各パッドP1,P2に付与されている。このように第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されていないときには、ニップ状態は、強ニップ状態であり、ニップ圧は、強ニップ圧となる。
【0091】
カム340は、
図4(a)に示す第1カム位置から
図5(a)に示す第2カム位置に回動すると、カムフォロア350と接触して、カムフォロア350をアーム本体311に対して所定量移動させる。これにより、カム340が第2カム位置に位置するときには、第2バネ330の伸縮状態は、第1伸縮状態よりも変形した第2伸縮状態となる。
【0092】
カム340が第2カム位置に位置するときには、カム340でカムフォロア350が支持されるため、第2バネ330の第2付勢力がアーム本体311を介して第2定着部材82に第1付勢力とは逆向きに付与される。そのため、第1バネ320によって第2定着部材82に対して第1付勢力が付与され、且つ、第2バネ330によって第2定着部材82に対して第2付勢力が付与されているときには、ニップ状態は、中ニップ状態であり、ニップ圧が強ニップ圧よりも小さい中ニップ圧となる。ここで、強ニップ圧または中ニップ圧は、第1ニップ圧に相当する。
【0093】
なお、カム340が第2バネ330の伸縮状態を第2伸縮状態にしているときには、アーム本体311は、前述した第1姿勢のままとなっている。ここで、第2パッドP2は、ローラ120に対して押し付けられている状態、即ち、第2パッドP2に対して荷重が加わっている状態では、その荷重の大小に関わらず、ほぼ変形しない。そして、第2パッドP2がほぼ変形しないため、第2パッドP2を支持するステイ200、さらにはステイ200を支持するアーム310の姿勢も、荷重の大小によらずほぼ一定に保たれる。また、第1パッドP1の位置は、第2パッドP2の位置で決まるため、第2パッドP2がほぼ変形せず、その位置も変形しない状態では、第1パッドP1の位置も変わらない。従って、強ニップ(強ニップ圧)と中ニップ(中ニップ圧)では、どちらの場合でも全ニップ幅(上流ニップ部NP1の入口から下流ニップ部NP2の出口までの長さ)は変わらず、アーム310の姿勢もほぼ一定に保たれる。
【0094】
このように第2バネ330の伸縮状態が第1伸縮状態および第2伸縮状態のいずれの状態であっても、アーム本体311の姿勢が第1姿勢となるため、
図4(b)および
図5(b)に示すように、ニップ圧が強ニップ圧であるときと中ニップ圧であるときの両方の状態において、第1パッドP1および第2パッドP2は、ローラ120との間でベルト130を挟んでいる。
【0095】
カム340は、
図5(a)に示す第2カム位置から
図6(a)に示す第3カム位置に回動する場合には、カムフォロア350をアーム本体311に対してさらに移動させた後、カムフォロア350を介してアーム本体311を押圧する。これにより、第2バネ330の伸縮状態が第2伸縮状態よりも変形した第3伸縮状態となるとともに、アーム本体311が第1姿勢から当該第1姿勢と異なる第2姿勢に回動する。
【0096】
詳しくは、カム340を第2カム位置から第3カム位置に回動させていく過程における最初の段階では、カムフォロア350の接触部352がガイド突起312の先端に近づくように、カムフォロア350がアーム本体311に対して移動する。接触部352がガイド突起312の先端に接触すると、第2バネ330の伸縮状態が第3伸縮状態となる。このようにカム340が第2バネ330の伸縮状態を第3伸縮状態にしているときには、カムフォロア350の一部である接触部352がカム340とガイド突起312の間に挟まれる。その後、カム340をさらに回動させると、カム340が接触部352を介してガイド突起312を押圧するので、アーム本体311が第1バネ320の付勢力に抗して第1姿勢から第2姿勢に回動する。
【0097】
これにより、アーム本体311が第2姿勢であるときには、第2定着部材82は、アーム本体311が第1姿勢であるときの位置(
図5(b)の位置)よりもローラ120から離れた位置(
図6(b)の位置)に配置される。このように第2定着部材82のローラ120に対する位置が変わることで、アーム本体311が第2姿勢であるときには、
図6(b)に示すように、ニップ部NPの幅が第1姿勢のときよりも小さくなるとともに、ニップ圧が中ニップ圧よりも小さな弱ニップ圧となる。つまり、カム340によってアーム310の姿勢が変わるため、ニップ圧及びニップ幅が変わるようになっている。詳しくは、アーム310が第2姿勢であるときには、ニップ状態は、第1パッドP1とローラ120との間でのみベルト130が挟まれ、第2パッドP2とローラ120との間ではベルト130を挟まない弱ニップ状態となっている。これにより、アーム310が第2姿勢であるときには、上流ニップ圧と上流ニップ幅が小さくなり、下流ニップ圧は無くなる。また、弱ニップ状態では、第1バネ320の付勢力がアーム本体311およびカムフォロア350の接触部352を介してカム340で受けられるので、第1パッドP1には第1バネ320の付勢力が加わらないようになっている。つまり、弱ニップ状態では、第1パッドP1の変形のみでニップ部NPが形成されている。なお、弱ニップ圧は、第1ニップ圧よりも低い第2ニップ圧に相当する。
【0098】
制御部100は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えている。制御部100は、シートSの片面に印刷を行う場合には、シートSのカールを抑制するためのカール抑制処理を実行可能となっている。
【0099】
カール抑制処理は、空印刷処理と、本印刷処理と、を有している。空印刷処理は、転写部7でシートSの第1面に現像剤像を転写せずにシートSを定着部80に搬送する処理である。本印刷処理は、空印刷処理が実行されたシートSが搬送部9によって転写部7に再搬送された後に、転写部7でシートSの第1面とは反対側の第2面に現像剤像を転写して、定着部80でシートSの第2面に現像剤像を定着させる処理である。ここで、第1面とは、両面印刷時において、最初に感光体ドラム61に接触する面をいい、第2面とは、シートSの再搬送後に感光体ドラム61に接触する面をいう。
【0100】
具体的に、制御部100は、カール抑制処理を、両面印刷処理と似た手順で実行する。以下、両面印刷処理について説明した後、カール抑制処理について説明する。
【0101】
制御部100が実行可能な両面印刷処理には、第2フラッパFL2を制御して2つの搬送経路91,92を用いて両面印刷する第1両面印刷モードと、第2フラッパFL2を制御せずに第1搬送経路91のみを用いて両面印刷する第2両面印刷モードと、の2つのモードがある。ここで、2つのモードは、例えば機種ごとに設定されていてもよい。例えば、第1機種における制御部100では、第1両面印刷モードが設定され、第2機種における制御部100では、第2両面印刷モードが設定されていてもよい。また、2つのモードは、例えばユーザによって選択可能であり、所定の機種における制御部100が、第1両面印刷モードと第2両面印刷モードを選択的に実行可能となっていてもよい。
【0102】
制御部100は、第1両面印刷モードを実行する場合には、
図7(a)に示す第1テーブルに基づいて、印刷するページの順序を決定する。また、制御部100は、第2両面印刷モードを実行する場合には、
図7(b)に示す第2テーブルに基づいて、印刷するページの順序を決定する。また、制御部100は、両面印刷処理を行う場合において、偶数ページを印刷する際に、収容部31内のシートSを画像形成部4に送り出すように構成されている。
【0103】
第1テーブルおよび第2テーブルの両面モードの欄に示す「両面A」は、1枚のシートSの両面のみに対して両面印刷処理を実行するモードである。両面Aモードにおいて、制御部100は、所定のシートSの第1面に2ページ目に相当する画像を形成した後、当該所定のシートSの第2面に1ページ目に相当する画像を形成する。つまり、制御部100は、印刷するページ数が2ページである場合には、印刷するページの順序を、2,1の順とする。
【0104】
第1テーブルおよび第2テーブルの両面モードの欄に示す「両面B」は、2枚のシートSの両面に対して両面印刷を実行するモードである。両面Bモードにおいて、制御部100は、収容部31からピックアップした1枚目のシートSの第1面に対して2ページ目に相当する画像を印刷した後、収容部31からピックアップした2枚目のシートSの第1面に対して4ページ目に相当する画像を印刷する。その後、制御部100は、表裏反転した1枚目のシートSの第2面に対して1ページ目に相当する画像を印刷し、表裏反転した2枚目のシートSの第2面に3ページ目に相当する画像を印刷する。つまり、制御部100は、印刷するページ数が4ページである場合には、印刷するページの順序を、2,4,1,3の順とする。
【0105】
第1テーブルの両面モードの欄に示す「両面C」は、3枚以上のシートSの両面に対して両面印刷を実行するモードである。このモードでは、印刷するページ数が6ページ以上である場合には、印刷するページの順序を、2,4,6,1,・・・の順とする。具体的に、制御部100は、2ページ、4ページ、6ページ、1ページの順で両面印刷を行っていき、その後は、偶数ページ、奇数ページ、偶数ページの順で、印刷を行う。両面印刷の最後は、奇数ページの印刷である。なお、両面印刷の最後においては、奇数のページが連続して複数回印刷されることがある。この理由としては、第1面が印刷された2つのシートS間に新たなシートSを入れる必要がなくなることなどが挙げられる。
【0106】
第2テーブルの両面モードの欄に示す「両面D」は、3枚以上のシートSの両面に対して両面印刷を実行するモードである。このモードでは、第2搬送経路92を使わない関係上、第1テーブルにおける「両面C」とは異なるページ順で印刷が行われる。このモードでは、印刷するページ数が6ページ以上である場合には、印刷するページの順序を、2,4,1,6,・・・の順とする。具体的に、制御部100は、2ページ、4ページ、1ページ、6ページの順で両面印刷を行っていき、その後は、奇数ページ、偶数ページ、奇数ページの順で、印刷を行う。両面印刷の最後は、奇数ページの印刷である。なお、両面Cモードと同様に、両面印刷の最後においては、奇数のページが連続して複数回印刷されることがある。
【0107】
制御部100が実行可能なカール抑制処理には、第2フラッパFL2を制御して2つの搬送経路91,92を用いて片面印刷する第1カール抑制モードと、第2フラッパFL2を制御せずに第1搬送経路91のみを用いて片面印刷する第2カール抑制モードと、の2つのモードがある。ここで、2つのモードは、前述した両面印刷モードと同様に、例えば機種ごとに設定されていてもよいし、例えばユーザによって選択可能であってもよい。
【0108】
制御部100は、第1カール抑制モードを実行する場合には、
図7(c)に示す第1カール抑制テーブルに基づいて、仮想ページの順序を決定する。また、制御部100は、第2カール抑制モードを実行する場合には、
図7(d)に示す第2カール抑制テーブルに基づいて、仮想ページの順序を決定する。
【0109】
ここで、仮想ページは、片面印刷時における各シートSの第1面および第2面が、感光体ドラム61に送られて接触する順番を決めるための仮想的なページであり、両面印刷を行うときのページに対応している。具体的には、N枚目のシートSの第1面に対して、「2N」の仮想ページが割り当てられ、N枚目のシートSの第2面に対して、「2N-1」の仮想ページが割り当てられている。例えば、印刷枚数が2枚の場合、1枚目のシートSの第1面が、仮想ページの2に対応し、1枚目のシートSの第2面が、仮想ページの1に対応し、2枚目のシートSの第1面が仮想ページの4に対応し、2枚目のシートSの第2面が仮想ページの3に対応している。制御部100は、両面印刷を行うときのページの順序の決定方法と同様の方法で、仮想ページの順序を決定している。
【0110】
具体的には、1枚のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を行う片面Aモードでは、両面Aモードのページ順序と同様に、仮想ページの順序が、2,1の順となっている。2枚のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を行う片面Bモードでは、両面Bモードのページ順序と同様に、仮想ページの順序が、2,4,1,3の順となっている。3枚以上のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を行う片面Cモードでは、両面Cモードのページ順序と同様に、仮想ページの順序が、2,4,6,1,・・・の順となっている。3枚以上のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を行う片面Dモードでは、両面Dモードのページ順序と同様に、仮想ページの順序が、2,4,1,6,・・・の順となっている。
【0111】
制御部100は、カール抑制処理を行う場合において、仮想ページが偶数である際に、収容部31内のシートSを画像形成部4に送り出すように構成されている。また、制御部100は、仮想ページが偶数である場合には空印刷処理を実行し、仮想ページが奇数である場合には本印刷処理を実行するように構成されている。これにより、片面Aモードで片面印刷を行う場合には、制御部100は、仮想ページの2ページ目に相当するシートSの第1面に画像を形成せず、仮想ページの1ページ目に相当するシートSの第2面に対して、片面印刷の実際の1ページ目に相当する画像を形成するので、1ページ分の片面印刷が行われることになる。
【0112】
片面Bモード、片面Cモードまたは片面Dモードで片面印刷を行う場合、つまり複数のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、制御部100は、1枚目のシートSである第1シート(仮想ページ「2」)に対して空印刷処理を実行した後に連続して、第1シートの次に供給部32によって送り出される第2シート(仮想ページ「4」)に対して空印刷処理を実行する。片面Bモードで片面印刷を行う場合、つまり2枚のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、制御部100は、第2シート(仮想ページ「4」)に対して空印刷処理を実行した後、第1シート(仮想ページ「1」)、第2シート(仮想ページ「3」)の順で、各シートSに対して本印刷処理を順次実行する。
【0113】
3枚以上のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合、詳しくは、片面Dモードで片面印刷を行う場合には、制御部100は、第2シート(仮想ページ「4」)に対して空印刷処理を実行した後、第1シート(仮想ページ「1」)に対して本印刷処理を実行し、第1シートに対して本印刷処理を実行した後、第2シートの次に供給部32によって送り出される第3シート(仮想ページ「6」)に対して空印刷処理を実行する。
【0114】
3枚以上のシートSの片面印刷時に前記カール抑制処理を実行する場合、詳しくは、片面Cモードで片面印刷を行う場合には、制御部100は、第2シート(仮想ページ「4」)に対して空印刷処理を実行した後に連続して、第2シートの次に供給部32によって送り出される第3シート(仮想ページ「6」)に対して空印刷処理を実行する。また、片面Cモードで4枚以上のシートSを片面印刷する場合には、制御部100は、第3シート(仮想ページ「6」)に対して空印刷処理を実行した後、第1シート(仮想ページ「1」)に対して本印刷処理を実行し、第1シートに対して本印刷処理を実行した後、第3シートの次に供給部32によって送り出される第4シート(仮想ページ「8」)に対して空印刷処理を実行する。
【0115】
制御部100は、ユーザによって入力されたシートSの種類を示す情報が所定種類を示す情報である場合に、カール抑制処理を実行可能となっている。本実施形態では、本体筐体2の外表面に設けられる操作パネルや操作ボタンをユーザが操作することで、種類情報が制御部100に入力されることとする。具体的には、ユーザは、データを記憶したUSBメモリを本体筐体2に接続してUSBメモリ内のデータを印刷する場合に、操作パネルや操作ボタンを操作して、種類情報などを入力する。
【0116】
また、本実施形態では、制御部100は、シートSの種類を示す情報が所定種類である場合には、カール抑制処理を実行するか否かを選択させる情報を操作パネルを介してユーザに報知する機能を有している。そして、制御部100は、ユーザによってカール抑制処理を実行することが選択された場合に、カール抑制処理を実行するように構成されている。
【0117】
また、制御部100は、空印刷処理を実行する場合には、本印刷処理を実行する場合よりもニップ圧を低くする機能を有している。詳しくは、例えば弱ニップ状態以外の状態で印刷を行う際に、制御部100は、空印刷処理を実行する場合には、ニップ状態が弱ニップ状態となるようにニップ圧変更機構300を制御し、本印刷処理を実行する場合には、ニップ状態が中ニップ状態または強ニップ状態となるようにニップ圧変更機構300を制御する。
【0118】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。
制御部100は、片面印刷を実行する旨の印刷指令を受けた場合には、
図8に示す片面印刷処理を実行する。片面印刷処理において、制御部100は、まず、シートSの種類が所定種類であるか否かを判定する(S1)。
【0119】
ステップS1においてシートSの種類が所定種類であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、カール抑制処理を実行するか否かを選択させるための選択画面を操作パネルに表示する(S2)。選択画面は、例えば、「カール抑制処理を実行しますか?」というメッセージと、カール抑制処理の実行を選択するための「Yes」、「No」のボタン画像を表示した画面とすることができる。
【0120】
ステップS2の後、制御部100は、カール抑制処理を実行することが選択されたか否かを判定する(S3)。ステップS3においてカール抑制処理を実行することが選択されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、カール抑制処理を実行して(S4)、本処理を終了する。なお、カール抑制処理については、後で詳述する。
【0121】
ステップS1またはステップS3においてNoと判定した場合には、制御部100は、通常の印刷処理、つまりシートSの第1面に画像を形成した後、シートSを表裏反転させずに、そのまま排出トレイ21に排出する印刷処理を実行して(S5)、本処理を終了する。
【0122】
図9に示すように、カール抑制処理において、制御部100は、まず、印刷枚数とカール抑制テーブルに基づいて、仮想ページの順序を決定する(S21)。ステップS21の後、制御部100は、仮想ページが、偶数ページであるか否かを判定する(S22)。
【0123】
ステップS22において仮想ページが偶数ページであると判定した場合には(Yes)、制御部100は、ニップ圧を弱ニップ圧に設定して(S23)、ニップ圧変更機構300を適宜制御する。ステップS23の後、制御部100は、空印刷処理を実行する(S24)。
【0124】
ステップS24の後、制御部100は、印刷が終了したか否かを判定する(S25)。ステップS25において、制御部100は、Yesと判定した場合には、本処理を終了し、Noと判定した場合には、ステップS22の処理に戻り、次の仮想ページが偶数ページであるか否かを判定する。
【0125】
ステップS22において仮想ページが偶数ページでないと判定した場合には(No)、制御部100は、ニップ圧を、シートSの種類に対応したニップ圧に設定して(S26)、ニップ圧変更機構300を適宜制御する。ステップS26の後、制御部100は、本印刷処理を実行して(S27)、ステップS25の処理に進む。
【0126】
次に、制御部100の動作の一例について詳細に説明する。
本体筐体2に接続したUSBメモリ内のデータを片面印刷する場合において、ユーザが操作パネル等を操作して、印刷モードを片面印刷に選択し、シートの種類を所定種類に選択して印刷を実行するボタンを押すと、データとユーザによって選択された情報を含む印刷指令が、制御部100に出力される。制御部100は、印刷指令を受けると、
図8に示す片面印刷処理を実行する。
【0127】
片面印刷処理において、制御部100は、シートの種類が所定種類であることからステップS1でYesと判定する。その後、制御部100は、カール抑制処理を実行するか否かを選択させる選択画面を操作パネルに表示する(S2)。
【0128】
選択画面においてユーザがカール抑制処理を実行しないことを選択すると(S3:No)、制御部100は、通常の印刷処理を実行する。これにより、シートSが画像形成部4に再搬送されないので、シートSのカールの抑制よりも、シートSを高い印刷速度で印刷することを優先させることができる。
【0129】
選択画面においてユーザがカール抑制処理を実行することを選択すると(S3:Yes)、制御部100は、カール抑制処理を実行する(S4)。
図9に示すカール抑制処理において、制御部100は、印刷枚数とカール抑制テーブルに基づいて仮想ページの順序を決定する(S21)。
【0130】
具体的には、例えば、カール抑制テーブルとして、
図7(c)に示す第1カール抑制テーブルが設定されている場合において、印刷枚数が4枚である場合には、制御部100は、仮想ページの順序を、2,4,6,1,8,3,5,7の順に決定する。その後、制御部100は、仮想ページの偶数ページに対応したシートSを画像形成部4に送り込む場合にはニップ圧を弱ニップ圧にして空印刷処理を実行し、仮想ページの奇数ページに対応したシートSを画像形成部4に送り込む場合にはニップ圧をシートSの種類に対応したニップ圧にして本印刷処理を実行する(S23~S27)。これにより、4枚のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、1~3枚目のシートSの各第1面に連続して空印刷処理が実行された後、1枚目のシートSの第2面に本印刷処理が実行される。次いで、4枚目のシートSの第1面に空印刷処理が実行された後、2~4枚目のシートSの各第2面に本印刷処理が実行される。
【0131】
また、例えばシートの種類が強ニップ圧または中ニップ圧で印刷する種類である場合には、制御部100は、空印刷処理を実行する場合にはニップ圧を弱ニップ圧とし、本印刷処理を実行する場合にはニップ圧を強ニップ圧または中ニップ圧とする。なお、シートの種類が弱ニップ圧で印刷する種類である場合には、制御部100は、ニップ圧の変更は行わず、空印刷処理および本印刷処理のどちらの処理も弱ニップ圧で実行する。
【0132】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
複数のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、1枚目のシートSである第1シートに対して空印刷処理が実行されてから本印刷処理が実行されるまでの間に、2枚目のシートSである第2シートに対して空印刷処理を実行できるので、印刷速度の低下を抑えつつ、シートSのカールを抑制することができる。
【0133】
2枚のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、片面Bモードにより、第1シートおよび第2シートに対して連続して本印刷処理による画像形成を行うので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0134】
片面Dモードによって3枚以上のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、第2シートに対して空印刷処理(仮想ページ「4」)が実行されてから本印刷処理(仮想ページ「3」)が実行されるまでの間に、第1シートに対する本印刷処理(仮想ページ「1」)と3枚目のシートSである第3シートに対する空印刷処理(仮想ページ「6」)とを実行するので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0135】
片面Cモードによって3枚以上のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、第1シートに対して空印刷処理(仮想ページ「2」)が実行されてから本印刷処理(仮想ページ「1」)が実行されるまでの間に、第2シートおよび第3シートに対して空印刷処理(仮想ページ「4,6」)を実行するので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0136】
片面Cモードによって4枚以上のシートSの片面印刷時にカール抑制処理を実行する場合には、第3シートに対して空印刷処理(仮想ページ「6」)が実行されてから第2シートに対して本印刷処理(仮想ページ「3」)が実行されるまでの間に、第1シートに対する本印刷処理(仮想ページ「1」)と第4シートに対する空印刷処理(仮想ページ「8」)とを実行するので、印刷速度の低下を抑えることができる。
【0137】
ユーザによってカール抑制処理の実行の可否を選択することができるので、ユーザがカール抑制を優先したい場合にはカール抑制処理を実行してシートSのカールを抑制することができ、ユーザが印刷速度を優先したい場合には通常の片面印刷を行うことができる。
【0138】
制御部100が、ユーザによって入力されたシートSの種類を示す情報に基づいて、カール抑制処理を実行するので、ユーザが入力したシートSの種類に基づいて、シートSのカールを抑制することができる。
【0139】
空印刷処理を実行する場合にはニップ圧を弱ニップ圧にするので、空印刷処理時において定着部80にかかる負荷を小さくすることができ、空印刷処理の回数が増えることに起因する定着部80の劣化を抑えることができる。
【0140】
特に、本実施形態では、ニップ圧を弱ニップ圧にする場合に、第1パッドP1とローラ120との間でのみベルト130を挟むので、ニップ幅およびニップ圧を小さくすることができ、空印刷処理の回数が増えることに起因する定着部80の劣化をより抑えることができる。
【0141】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0142】
前記実施形態では、シートの種類を示す情報の入力を本体筐体2の操作パネル等を操作することで行うこととしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ユーザがパソコンなどの端末を操作することでシートの種類を示す情報の入力が行われてもよい。
【0143】
前記実施形態では、カール抑制処理の選択画面を表示して、ユーザにカール抑制処理を実行するかの選択を行わせたが、本発明はこれに限定されず、選択画面の表示などは行わなくてもよい。つまり、ユーザによって入力されたシートの種類を示す情報が所定種類を示す情報である場合には、ユーザにカール抑制処理の実行を選択させることなく、制御部がカール抑制処理を実行してもよい。
【0144】
前記実施形態では、ニップ状態を、強ニップ状態、中ニップ状態、弱ニップ状態の3段階に切り替えるように構成したが、本発明はこれに限定されず、ニップ状態を、強ニップ状態と弱ニップ状態の2段階で切り替えるように構成してもよいし、強ニップ状態と弱ニップ状態を含む4段階以上で切り替えるように構成してもよい。前記実施形態では、空印刷処理を実行する場合には、本印刷処理を実行する場合よりもニップ圧を低くしたが、本発明はこれに限定されず、本印刷処理を実行する場合のニップ圧と同じにしてもよい。
【0145】
前記実施形態では、カラープリンタ1に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えばモノクロのプリンタ、複写機、複合機などに本発明を適用してもよい。
【0146】
前記実施形態では、第2定着部材82を第1定着部材81に対して移動させる構成としたが、本発明はこれに限定されず、第1定着部材を第2定着部材に対して移動させてもよい。
【0147】
ヒータは、どのようなヒータであってもよく、例えばカーボンヒータなどとすることができる。また、ヒータの数は、複数であってもよい。
【0148】
前記実施形態では、ニップ形成部材をパッドと固定板とで構成したが、本発明はこれに限定されず、ニップ形成部材は、例えばパッドのみで構成されていてもよい。
【0149】
前記実施形態では、第2バネ330とカムフォロア350を設けたが、本発明はこれに限定されず、第2バネとカムフォロアはなくてもよい。つまり、カムでアーム本体を直接押圧する構成としてもよい。
【0150】
前記実施形態では、第1パッドP1および第2パッドP2をゴムで構成したが、本発明はこれに限定されず、パッドは、例えば、加圧時においても弾性変形しない樹脂や金属などの硬質材料から構成されていてもよい。
【0151】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0152】
1 カラープリンタ
7 転写部
9 搬送部
31 収容部
32 供給部
80 定着部
100 制御部
S シート