(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081873
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂硬化物の剥離剤
(51)【国際特許分類】
C11D 3/43 20060101AFI20220525BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20220525BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20220525BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20220525BHJP
C09D 9/04 20060101ALI20220525BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220525BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220525BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220525BHJP
【FI】
C11D3/43
C11D1/75
C11D1/72
C11D3/20
C09D9/04
C09D7/65
C09D7/63
C09D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193077
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 祐司
(72)【発明者】
【氏名】船木 亮佑
【テーマコード(参考)】
4H003
4J038
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AC15
4H003DA09
4H003DB01
4H003EB07
4H003EB08
4H003ED02
4H003ED31
4H003FA04
4H003FA28
4J038DF012
4J038JA35
4J038JB08
4J038JB27
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA09
4J038RA16
(57)【要約】
【課題】基材上に付着しているエポキシ樹脂硬化物を好適に剥離できる剥離剤を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂硬化物の剥離剤は、有機溶媒としてN-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンから選ばれる少なくとも一種と、界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルと、酸と、水とを含む。前記有機溶媒、前記界面活性剤、前記酸および前記水の合計100質量%において、前記界面活性剤、前記酸および前記水を合計で、3質量%以上40質量%以下の量で含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒としてN-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンから選ばれる少なくとも一種と、界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルと、酸と、水とを含む、
エポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
【請求項2】
前記有機溶媒、前記界面活性剤、前記酸および前記水の合計100質量%において、前記界面活性剤、前記酸および前記水を合計で、3質量%以上40質量%以下の量で含む、
請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
【請求項3】
前記アルキルジメチルアミンオキシドにおいて、アルキル基の炭素数が、6以上18以下である、
請求項1または2に記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、オキシエチレン単位の繰り返し数が、5以上12以下であり、アルキル基の炭素数が、11以上18以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
【請求項5】
前記酸が、有機酸である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、硬化性樹脂の硬化物が付着した固体基材から、硬化性樹脂の硬化物を除去するための剥離剤が記載されている。この剥離剤は、一般式(1)で表されるアミド化合物(A)を含む。
R1O-CH2CH2CON(CH3)2 (1)
なお、一般式(1)中、R1は炭素原子数1~4のアルキル基である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の剥離剤を用いた場合は、基材上に付着しているエポキシ樹脂硬化物が充分に剥離できない問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、基材上に付着しているエポキシ樹脂硬化物を好適に剥離できる剥離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤は、有機溶媒としてN-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンから選ばれる少なくとも一種と、界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルと、酸と、水とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤によれば、基材上に付着しているエポキシ樹脂硬化物を好適に剥離できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0009】
実施形態の剥離剤(実施形態のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤)は、有機溶媒としてN-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンから選ばれる少なくとも一種と、界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルと、酸と、水とを含む。
【0010】
時計外装部品には、文字、数字、円、三角形等のマークを表すため、その表面に設けられた凹部に、エポキシ樹脂硬化物を含む着色層または夜光層が形成されていることがある。このような時計外装部品は、組み立てや運搬の際に、表面に傷が付く場合がある。この場合は、一度着色層または夜光層を剥離し、表面研磨などを行った後、改めて着色層または夜光層を形成し、時計外装部品として再利用する。実施形態の剥離剤は、傷が付いた時計外装部品を再利用する際などに、時計外装部品(基材)上に付着している着色層または夜光層(エポキシ樹脂硬化物)を剥離するために、好適に用いられる。
【0011】
なお、上記時計外装部品としては、具体的には、時計バンド、時計ケース、ベゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズが挙げられる。また、上記時計外装部品は、通常、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、黄銅などの金属により形成される。また、上記時計外装部品を形成する金属には、表面硬化処理が施されていてもよい。表面硬化処理方法としては、金属元素を含む被膜を形成する方法、イオン注入、イオン窒化、ガス窒化により金属自身を硬化する方法が挙げられる。
【0012】
実施形態の剥離剤は、時計外装部品表面上のエポキシ樹脂硬化物と接触させると、エポキシ樹脂硬化物を膨潤させることができる。なお、エポキシ樹脂硬化物の一部は、溶解されてもよい。そして、時計外装部品表面とエポキシ樹脂硬化物との密着力が低下し、最終的には、時計外装部品表面から、エポキシ樹脂硬化物が剥がれ落ちる。このように、エポキシ樹脂硬化物を好適に、すなわち簡便に剥離できる。また、剥離の際に、時計外装部品を腐食または変質させない利点もある。
【0013】
ところで、従来、時計用外装部品からの風防ガラスの回収においては、接着剤を加熱するか、または物理的処理(研磨など)を施していた。風防ガラスには傷が付かないので上記の方法により回収して再利用できる。しかしながら、中留などの時計用外装部品に具備されているエポキシ樹脂硬化物の除去を行う場合には、除去する際に傷が付いたり、高温にできなかったりする問題がある。これに対して、実施形態の剥離剤によれば、上述のように、エポキシ樹脂硬化物を好適に剥離できる。
【0014】
実施形態の剥離剤は、有機溶媒としてN-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンから選ばれる少なくとも一種を含む。すなわち、有機溶媒として、N-メチルピロリドンのみを用いてもよく、N-エチルピロリドンのみを用いてもよく、N-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンを併用してもよい。実施形態の剥離剤を用いる際には、上記有機溶媒がエポキシ樹脂硬化物に浸透し、膨潤させることができる。また、上記有機溶媒は時計外装部品を腐食または変質させない利点もある。
【0015】
実施形態の剥離剤は、界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。実施形態の剥離剤を用いる際には、上記2種類の界面活性剤を併用しているため、時計外装部品表面から、膨潤したエポキシ樹脂硬化物が剥がれ落ちやすくなる。これは、上記2種類の界面活性剤が、時計外装部品表面と膨潤したエポキシ樹脂硬化物との間に入り込み、このエポキシ樹脂硬化物の剥離を促進するためと考えられる。また、上記界面活性剤は、剥離剤を中性付近に調整しておくと、時計外装部品を腐食または変質させない利点もある。
【0016】
アルキルジメチルアミンオキシドにおいて、アルキル基の炭素数は、好ましくは6以上18以下、より好ましくは10以上14以下である。いいかえると、アルキルジメチルアミンオキシドは、下記式(A)で表される。
RaN(CH3)2O (A)
ここで、Raはアルキル基を表し、このアルキル基の炭素数は、好ましくは6以上18以下、より好ましくは10以上14以下である。炭素数が上記範囲にあると、膨潤したエポキシ樹脂硬化物がより剥がれ落ちやすくなる。アルキルジメチルアミンオキシドは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。すなわち、アルキル基の炭素数が異なるアルキルジメチルアミンオキシドを併用してもよい。アルキルジメチルアミンオキシドとしては、より好ましくはラウリルジメチルアミンオキシド(CAS番号:1643-20-5)、デシルジメチルアミンオキサイド(CAS番号:2605-79-0)、テトラデシルジメチルアミンオキサイド(CAS番号:3332-27-2)が用いられる。なお、本明細書において、アルキルジメチルアミンオキシドには、実施形態の剥離剤中で、カチオンとなっているものも含む。
【0017】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数は、好ましくは11以上18以下である。また、オキシエチレン単位の繰り返し数は、好ましくは5以上12以下である。いいかえると、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、下記式(B)で表される。
RbO-(CH2CH2O)n-H (B)
ここで、Rbはアルキル基を表し、このアルキル基の炭素数は、好ましくは11以上18以下である。また、nは、好ましくは5以上12以下である。アルキル基の炭素数やオキシエチレン単位の繰り返し数が上記範囲にあると、膨潤したエポキシ樹脂硬化物がより剥がれ落ちやすくなる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。すなわち、アルキル基の炭素数が異なるポリオキシエチレンアルキルエーテルを併用してもよい。また、オキシエチレン単位の繰り返し数が異なるポリオキシエチレンアルキルエーテルを併用してもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、より好ましくは、ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテル(CAS番号:68131-40-8)、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(CAS番号:9002-92-0)、ポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(CAS番号:9004-98-2)が用いられる。
【0018】
実施形態の剥離剤は、酸を含む。アルキルジメチルアミンオキシドの水溶液は、通常、アルカリ性である。実施形態の剥離剤がアルカリ性であると、時計外装部品を腐食または変質させる恐れがある。したがって、時計外装部品が腐食または変質しないよう、実施形態の剥離剤の液性を中性付近、すなわち、pHを6~8に調整するため、実施形態の剥離剤に酸を用いている。なお、本明細書において、酸には、実施形態の剥離剤中で、H+イオンを放出しているものも含む。
【0019】
酸としては、具体的には、塩酸、硝酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸が挙げられる。酸は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。酸としては、pH調整のしやすさから、より好ましくは有機酸が用いられる。また、安全性から、さらに好ましくはクエン酸が用いられる。
【0020】
実施形態の剥離剤は、水を含む。後述のように、実施形態の剥離剤の調製には、通常、アルキルジメチルアミンオキシドの水溶液および酸の水溶液が用いられる。このため、実施形態の剥離剤には、これら水溶液由来の水が含まれている。
【0021】
実施形態の剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤(2種類の界面活性剤の合計)、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で3質量%以上40質量%以下の量で含むことが好ましい。いいかえると、有機溶媒、界面活性剤(2種類の界面活性剤の合計)、酸および水の合計100質量%において、有機溶媒を60質量%以上97質量%以下の量で含むことが好ましい。有機溶媒が上記の量で含まれていると、エポキシ樹脂硬化物を好適に膨潤させることができる。
【0022】
実施形態の剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤(2種類の界面活性剤の合計)、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤(2種類の界面活性剤の合計)を0.5質量%以上29質量%以下の量で含むことが好ましい。界面活性剤が上記の量で含まれていると、膨潤したエポキシ樹脂硬化物がより剥がれ落ちやすくなる。
【0023】
実施形態の剥離剤は、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを14質量部以上41質量部以下の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを59質量部以上86質量部以下の量で含むことが好ましい。アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルそれぞれが上記の量で含まれていると、膨潤したエポキシ樹脂硬化物がより剥がれ落ちやすくなる。
【0024】
なお、酸は、実施形態の剥離剤のpHが6~8の範囲に入る量で用いることが好ましい。
【0025】
実施形態の剥離剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、たとえば紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面改質剤が挙げられる。その他の成分を用いる場合は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量部に対して、その他の成分を合計で0.1質量部以上3.0質量部以下の量で含んでいてもよい。
【0026】
実施形態の剥離剤は、たとえば以下のようにして調製することができる。まず、アルキルジメチルアミンオキシドの水溶液にポリオキシエチレンアルキルエーテルを加えて混合し、次いで、酸の水溶液を加え、pHを調整し、界面活性剤組成物を得る。次に、得られた界面活性剤組成物と有機溶媒とを混合する。このようにして、実施形態の剥離剤が調製できる。
【0027】
実施形態の剥離剤は、時計外装部品表面に付着しているエポキシ樹脂硬化物を剥離する際には、たとえば以下のように用いられる。実施形態の剥離剤と時計外装部品表面に付着しているエポキシ樹脂硬化物とを接触させる。具体的には、実施形態の剥離剤に、エポキシ樹脂硬化物が付着している時計外装部品を浸漬する。浸漬中は、実施形態の剥離剤を攪拌したり、実施形態の剥離剤に対して超音波振動を与えたりしてもよい。
【0028】
時計外装部品表面からエポキシ樹脂硬化物が剥離できるまで浸漬しておけばよいが、浸漬時間は、たとえば1時間以上36時間以下、好ましくは1時間以上6時間以下である。また、浸漬中、実施形態の剥離剤は室温のままとしておいてもよいが、剥離を促進させるため、40℃以上70℃以下に加熱することが好ましい。
【0029】
なお、膨潤したエポキシ樹脂硬化物に対して、ブラシ、へらなどを用いて、時計外装部品表面からの剥離を促進してもよい。実施形態の剥離剤によれば、この場合も、簡単にエポキシ樹脂硬化物を剥離できる。
【0030】
実施形態の剥離剤によれば、上記のように、時計外装部品表面に付着しているエポキシ樹脂硬化物を剥離可能である。このエポキシ樹脂硬化物としては、エポキシ樹脂を硬化剤によって硬化した硬化物であれば、特に限定されない。
【0031】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤などが挙げられる。実施形態の剥離剤は、アミン系硬化剤を用いて硬化されたエポキシ樹脂硬化物の場合に、より好適に剥離できる。なお、エポキシ樹脂硬化物を作製するいずれかの段階で、さらに、硬化促進剤、レベリング剤、表面改質剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、反応希釈剤などが配合されていてもよい。
【0032】
ここで、実施形態の剥離剤によって特に好適に剥離できるエポキシ樹脂硬化物について説明する。このようなエポキシ樹脂硬化物は、下記2液型エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物である。
【0033】
<2液型エポキシ樹脂組成物>
2液型エポキシ樹脂組成物は、エポキシ当量が1500以上であり、軟化点が80℃以上であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)と、エポキシ当量が200以下であり、25℃で液状であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)と、着色剤または蓄光剤と、沸点が140℃以上である有機溶媒とを含む主剤組成物(A)と;N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンと、沸点が140℃以上である有機溶媒とを含む硬化剤組成物(B)とを有する。上記主剤組成物(A)に含まれる上記着色剤または上記蓄光剤は、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)および上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)ならびに上記N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、150質量部以上300質量部以下の量で含まれている。上記主剤組成物(A)に含まれる上記有機溶媒および上記硬化剤組成物(B)に含まれる上記有機溶媒は、合計で、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)および上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)、上記着色剤または上記蓄光剤ならびに上記N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下の量で含まれている。
【0034】
2液型エポキシ樹脂組成物としては、具体的には、着色剤として白色顔料を含み、通常、蓄光剤を含まない2液型エポキシ樹脂組成物(2液型エポキシ樹脂組成物(1));蓄光剤を含み、通常、着色剤を含まない2液型エポキシ樹脂組成物(2液型エポキシ樹脂組成物(2))が挙げられる。以下に、2液型エポキシ樹脂組成物(1)、(2)について詳細に説明する。
【0035】
〔2液型エポキシ樹脂組成物(1)〕
2液型エポキシ樹脂組成物(1)は、主剤組成物(A)および硬化剤組成物(B)を有する。主剤組成物(A)は、エポキシ当量が1500以上であり、軟化点が80℃以上であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)と、エポキシ当量が200以下であり、25℃で液状であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)と、着色剤として白色顔料と、沸点が140℃以上である有機溶媒とを含む主剤組成物(A)とを含む。硬化剤組成物(B)は、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンと、沸点が140℃以上である有機溶媒とを含む。上記白色顔料は、主剤組成物(A)中に、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、150質量部以上300質量部以下の量で含まれている。主剤組成物(A)に含まれる上記有機溶媒および硬化剤組成物(B)に含まれる上記有機溶媒は、合計で、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)、上記白色顔料ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下の量で含まれている。
【0036】
2液型エポキシ樹脂組成物(1)によれば、上記白色顔料を有するため、時計部品の凹部に、白色層を薄く形成できる。上記白色層は、その上に、夜光層または着色層を形成するための下地層として好適に用いられる。本明細書において、この白色層を下地層ともいう。
【0037】
2液型エポキシ樹脂組成物(1)は、通常、主剤組成物(A)および硬化剤組成物(B)を独立して有する。上記下地層を形成する際には、具体的には、主剤組成物(A)および硬化剤組成物(B)を混合して、エポキシ樹脂混合組成物を調製してから使用する。なお、凹部に塗布した上記エポキシ樹脂混合組成物を硬化させ、硬化物からなる上記下地層が形成される。硬化物中では、上記有機溶媒は蒸発して除去されている。また、2液型エポキシ樹脂組成物(1)は、上記下地層の形成に好ましいポットライフを有する。
【0038】
主剤組成物(A)は、主剤として、2種類のエポキシ樹脂、すなわちビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)とを含む。
【0039】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ当量が1500以上であり、好ましくは、1500以上10000以下である。本明細書において、エポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)を意味する。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)は、軟化点が80℃以上であり、好ましくは80℃以上150℃以下である。したがって、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)は、25℃では固体である。なお、軟化点は、JIS K 7234に記載の環球法によって求められる。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)は、エポキシ当量が200以下であり、好ましくは、160以上200以下である。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)は、25℃で液状である。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
このようなビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)を組み合わせて用いると、時計部品の凹部に下地層を形成する際、凹部の隅々まで均一に白色顔料を行き渡らせることができる。このため、時計部品の凹部に均一な薄い下地層を形成できる。上記下地層を設けておくと、その上に形成した着色層の色がきれいな色に視認できるようになる。また、上記下地層を設けておくと、その上に形成した夜光層は、下地層による反射率の向上によって、明るく視認できるようになる。上記下地層は、薄く形成できるため、凹部が薄い場合に特に好適である。
【0042】
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)は、エポキシ当量が上記範囲にあるため、上記下地層を形成する際の硬化時に、凹部からの上記エポキシ樹脂混合組成物のはみ出しを抑えられると考えられる。
【0043】
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)の2種類を用いると、硬化物の架橋密度が高くなり、信頼性の高い上記下地層が得られる。
【0044】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)は、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であっても、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であってもよい。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いると、上記下地層の形成時に、さらに凹部の隅々まで均一に白色顔料を行き渡らせることができる。すなわち、時計部品の凹部により均一な薄い下地層を形成できる。
【0045】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)100質量部に対して、好ましくは300質量部以上500質量部以下の量で用いる。ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)を上記の量で用いると、上記下地層の形成時に、さらに凹部の隅々まで均一に白色顔料を行き渡らせることができる。すなわち、時計部品の凹部により均一な薄い下地層を形成できる。
【0046】
また、主剤組成物(A)は、白色顔料を含む。上記白色顔料としては、具体的には、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、鉛白、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸バリウムが挙げられる。上記白色顔料は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
これらのうちで、好ましい白さを有し、隠ぺい力があり、また、凹部の隅々まで均一に広がりやすいため、酸化チタンが好適に用いられる。酸化チタンを用いた上記下地層の上に着色層を設けた場合、よりきれいな色に視認できるようになる。また、酸化チタンを用いた上記下地層の上に夜光層を設けた場合、より明るく視認できるようになる。
【0048】
上記白色顔料は、平均粒径D50が0.15μm以上0.50μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいう。市販品についてはカタログ値を採用してもよい。平均粒径D50が上記範囲にあると、時計部品の凹部の隅々まで均一に行き渡りやすくなる。したがって、上記白色顔料をそれほど多く用いなくても、優れた隠ぺい力を発揮できる。
【0049】
また、主剤組成物(A)は、有機溶媒を含む。上記有機溶媒は、沸点が140℃以上であり、好ましくは、140℃以上200℃以下である。上記有機溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。沸点が上記範囲にあると、時計部品の凹部に、上記エポキシ樹脂混合組成物を塗布しやすい。また、上記エポキシ樹脂混合組成物の硬化時に、適度な速さで蒸発し、均一な薄い下地層を形成できる。沸点が低すぎると、蒸発が速く、均一に塗布できない場合がある。一方、沸点が高すぎると、蒸発し難く、上記下地層が形成し難い場合がある。
【0050】
上記有機溶媒としては、具体的には、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート、エチレングリコールが挙げられる。
【0051】
また、主剤組成物(A)は、さらにレベリング剤、表面改質剤などのその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
硬化剤組成物(B)は、硬化剤としてN,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミンを含む。N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミンを用いると、上記エポキシ樹脂混合組成物を好適に硬化できる。
【0053】
また、硬化剤組成物(B)は、有機溶媒を含む。上記有機溶媒は、主剤組成物(A)に含まれる有機溶媒と同様である。
【0054】
また、硬化剤組成物(B)は、さらにレベリング剤、表面改質剤などのその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
2液型エポキシ樹脂組成物(1)において、上記白色顔料は、主剤組成物(A)中に、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、150質量部以上300質量部以下の量で含まれている。上記白色顔料を上記の量で用いると、上記下地層の形成時に、さらに凹部の隅々まで均一に白色顔料を行き渡らせることができる。すなわち、時計部品の凹部により均一な薄い下地層を形成できる。
【0056】
また、2液型エポキシ樹脂組成物(1)において、主剤組成物(A)に含まれる上記有機溶媒および硬化剤組成物(B)に含まれる上記有機溶媒は、合計で、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)、上記白色顔料ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下の量で含まれている。上記有機溶媒を上記の量で用いると、上記下地層の形成時に、さらに凹部の隅々まで均一に白色顔料を行き渡らせることができる。
【0057】
主剤組成物(A)に含まれる上記有機溶媒の量および上記有機溶媒および硬化剤組成物(B)に含まれる上記有機溶媒の量は、主剤組成物(A)および硬化剤組成物(B)それぞれが取扱い易くなるよう、適宜設定することができる。たとえば、硬化剤組成物(B)に含まれる上記有機溶媒の量が少なすぎると、2液型エポキシ樹脂組成物(1)を使用する際に、硬化剤組成物(B)の必要量が少なくなりすぎ、量り取り難くなる場合がある。
【0058】
2液型エポキシ樹脂組成物(1)において、主剤組成物(A)のエポキシ当量に対するN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの活性水素当量が0.9~1.2(モル比)となるように、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)およびN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンを配合することが好ましい。ここで、主剤組成物(A)のエポキシ当量は、主剤組成物(A)に含まれるビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)からなる混合物のエポキシ当量である。主剤組成物(A)に含まれるビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)の具体的な種類、混合割合から求められる。
【0059】
また、2液型エポキシ樹脂組成物(1)において、上記その他の成分を用いる場合、主剤組成物(A)に含まれる上記その他の成分および硬化剤組成物(B)に含まれる上記その他の成分は、合計で、たとえば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)、上記白色顔料ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、0質量部を超え5質量部以下の量で含まれている。
【0060】
主剤組成物(A)は、上述した成分を上述した量で混合して得られる。硬化剤組成物(B)についても同様にして得られる。主剤組成物(A)および硬化剤組成物(B)は、上述した成分の混合後に、ろ過することが好ましい。上記エポキシ樹脂混合組成物を塗布する際には、通常ノズルが用いられる。このノズルに該混合組成物が詰まらないようにするためである。
【0061】
なお、2液型エポキシ樹脂組成物(1)について、上記では、着色剤として白色顔料を含む場合について説明したが、白色顔料の代わりに、他の着色剤が含まれていてもよい。
【0062】
上記他の着色剤は、無機系顔料および有機系顔料のいずれでもよい。上記他の着色剤としては、たとえば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン顔料、アゾイエローレーキ、アゾレーキレッド、モノアゾイエロー等のアゾ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、群青、コバルト、弁柄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、カーボンブラックが挙げられる。上記他の着色剤は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
他の着色剤を含む場合は、時計部品の凹部に、着色剤に応じた色を有する着色層を薄く形成できる。
【0064】
〔2液型エポキシ樹脂組成物(2)〕
2液型エポキシ樹脂組成物(2)は、主剤組成物(A)および硬化剤組成物(B)を有する。主剤組成物(A)は、エポキシ当量が1500以上であり、軟化点が80℃以上であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)と、エポキシ当量が200以下であり、25℃で液状であるビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)と、蓄光剤と、沸点が140℃以上である有機溶媒とを含む。硬化剤組成物(B)は、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンと、沸点が140℃以上である有機溶媒とを含む。上記蓄光剤は、主剤組成物(A)中に、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、150質量部以上300質量部以下の量で含まれている。主剤組成物(A)に含まれる上記有機溶媒および硬化剤組成物(B)に含まれる上記有機溶媒は、合計で、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)、上記蓄光剤ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下の量で含まれている。
【0065】
2液型エポキシ樹脂組成物(2)によれば、上記蓄光剤を有するため、時計部品の凹部に、夜光層を薄く形成できる。上記夜光層では、明るい場所での光照射により、該層に含まれる蓄光剤にエネルギーが蓄積される。そして、暗転時に、そのエネルギーが光として放出される。すなわち、暗い場所でも蓄光剤の発光によって夜光層が認識できるようになる。2液型エポキシ樹脂組成物(2)について、以下に、実施形態1と異なる点を説明し、実施形態1と同じ点は説明を省略する。
【0066】
上記蓄光剤は、太陽光や人工光などに含まれる紫外線や可視光などの光が照射されると、その光を吸収して蓄える。その後、光照射を停止しても、すなわち暗い場所でも、所定の時間発光し続ける。上記蓄光剤は、上記特性を有する限り、特に制限はない。上記蓄光剤としては、たとえば、硫化物系蓄光剤、アルミン酸系蓄光剤が挙げられる。硫化物系蓄光剤としては、具体的にはCaS:Bi、CaSrS:Bi、ZnCdS:Cuなどが挙げられる。アルミン酸系蓄光剤としては、具体的にはRMg2Al16O27:Eu、RMg2Al16O27:Eu,Mn、RMg2Al10O17:Eu、RMg2Al10O17:Eu,Mn(RはSrまたはBaであり、これらを組み合わせてもよい。)、SrAl2O4:Eu、SrAl2O4:Eu,Dy、Sr4Al14O25:Eu、Sr4Al14O25:Eu,Dy、CaAl2O4:Eu,Ndなどが挙げられる。これらのうちで、残光輝度および残光時間の観点から、アルミン酸系蓄光剤がより好適に用いられる。蓄光剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
上記蓄光剤は、平均粒径D50が5μm以上30μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるメジアン径D50をいう。市販品についてはカタログ値を採用してもよい。平均粒径D50が上記範囲にあると、時計部品の凹部の隅々まで均一に行き渡りやすくなる。したがって、上記蓄光剤をそれほど多く用いなくても、夜光層が認識しやすくなる。
【0068】
上記蓄光剤は、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)およびビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)ならびにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの合計100質量部に対して、180質量部以上300質量部以下の量で含まれていることが好ましい。上記蓄光剤を上記の量で用いると、夜光層がより認識しやすくなる。
【0069】
このように、2液型エポキシ樹脂組成物(1)によれば、時計外装部品に、下地層または着色層として機能するエポキシ樹脂硬化物を形成できる。具体的には、時計外装部品の凹部に2液型エポキシ樹脂組成物(1)から調製したエポキシ樹脂混合組成物を付着させる。たとえば、ノズルを用いて塗布する。次いで、たとえば70℃以上100℃以下で、1時間以上6時間以下加熱して、上記有機溶媒を蒸発させながら、硬化反応を進ませて、下地層または着色層を形成する。なお、上記有機溶媒を完全に蒸発させるために、さらに、130℃以上170℃以下で、30分以上1時間以下加熱してもよい。
【0070】
また、2液型エポキシ樹脂組成物(2)によれば、時計外装部品に、夜光層として機能するエポキシ樹脂硬化物を形成できる。具体的には、上述した2液型エポキシ樹脂組成物(1)の場合と同様に、エポキシ樹脂硬化物を形成できる。
【0071】
そして、実施形態の剥離剤によれば、2液型エポキシ樹脂組成物(1)によって形成された着色層として機能するエポキシ樹脂硬化物、または2液型エポキシ樹脂組成物(2)によって形成された夜光層として機能するエポキシ樹脂硬化物を特に好適に除去できる。さらに、実施形態の剥離剤によれば、2液型エポキシ樹脂組成物(1)によって形成された下地層として機能するエポキシ樹脂硬化物と、2液型エポキシ樹脂組成物(2)によって形成された夜光層として機能するエポキシ樹脂硬化物とが積層されている場合も、両者を特に好適に除去できる。
【0072】
上記では、時計外装部品表面に付着したエポキシ樹脂硬化物を剥離する場合について説明した。実施形態の剥離剤は、これに限らず、金属により形成された装身具表面に付着したエポキシ樹脂硬化物の剥離にも好適に用いられる。上記装身具としては、具体的には、指輪、ネックレス、ペンダント、イヤリングが挙げられる。
【0073】
以上より、本発明は以下に関する。
〔1〕 有機溶媒としてN-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンから選ばれる少なくとも一種と、界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルと、酸と、水とを含む、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
上記剥離剤によれば、基材上に付着しているエポキシ樹脂硬化物を好適に剥離できる。
〔2〕 上記有機溶媒、上記界面活性剤、上記酸および上記水の合計100質量%において、上記界面活性剤、上記酸および上記水を合計で、3質量%以上40質量%以下の量で含む、〔1〕に記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
上記成分が上記の量で含まれていると、エポキシ樹脂硬化物を好適に膨潤させることができる。
〔3〕 上記アルキルジメチルアミンオキシドにおいて、アルキル基の炭素数が、6以上18以下である、〔1〕または〔2〕に記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
アルキル基の炭素数が上記範囲にあると、膨潤したエポキシ樹脂硬化物がより剥がれ落ちやすくなる。
〔4〕 上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、オキシエチレン単位の繰り返し数が、5以上12以下であり、アルキル基の炭素数が、11以上18以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
オキシエチレン単位の繰り返し数やアルキル基の炭素数が上記範囲にあると、膨潤したエポキシ樹脂硬化物がより剥がれ落ちやすくなる。
〔5〕 上記酸が、有機酸である、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂硬化物の剥離剤。
有機酸を用いると、pH調整がしやすい。
【0074】
[実施例]
以下実施例に基づいて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
[実施例1-1]
ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液(濃度35質量%、商品名:ユニセーフ(登録商標)A-LM、日油株式会社製)47.7gに、ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテル(商品名:エマルゲン(登録商標)707、花王株式会社製)47.6gを加えて攪拌した。これに、さらに、クエン酸(東京化成工業株式会社製)0.97gを水51.7gに溶解させたクエン酸水溶液4.77gを加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。ここで、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを26質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを74質量部の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0076】
[実施例1-2]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、1質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、0.65質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0077】
[実施例1-3]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、3質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、1.9質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0078】
[実施例1-4]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、5質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、3.2質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0079】
[実施例1-5]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、10質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、6.4質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0080】
[実施例1-6]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、15質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、9.6質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0081】
[実施例1-7]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、28質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、18質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0082】
[実施例1-8]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、30質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、19質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0083】
[実施例1-9]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、40質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、26質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0084】
[実施例1-10]
界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン中に加える際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、45質量%の量で含むように加えた。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、29質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0085】
[実施例2-1]
上記剥離剤がアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを14質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを86質量部の量で含むように、上記ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液、上記ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテルおよび上記クエン酸水溶液を用いて界面活性剤組成物を調製した。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含んでいた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0086】
[実施例2-2]
上記剥離剤がアルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを41質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを59質量部の量で含むように、上記ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液、上記ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテルおよび上記クエン酸水溶液を用いて界面活性剤組成物を調製した。これ以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含んでいた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0087】
[実施例3-1]
デシルジメチルアミンオキシド水溶液(商品名:カデナックス(登録商標)DM10D-W、ライオン株式会社製)に、ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテル(商品名:エマルゲン(登録商標)707、花王株式会社製)を加えて攪拌した。これに、さらに、クエン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解させたクエン酸水溶液を加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。ここで、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを26質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを74質量部の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0088】
[実施例3-2]
テトラデシルジメチルアミンオキサイド水溶液(商品名:カデナックス(登録商標)DM14D-N、ライオン株式会社製)に、ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテル(商品名:エマルゲン(登録商標)707、花王株式会社製)を加えて攪拌した。これに、さらに、クエン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解させたクエン酸水溶液を加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。ここで、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを26質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを74質量部の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0089】
[実施例3-3]
ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液(濃度35質量%、商品名:ユニセーフ(登録商標)A-LM、日油株式会社製)に、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(商品名:エマルゲン(登録商標)108、花王株式会社製)を加えて攪拌した。これに、さらに、クエン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解させたクエン酸水溶液を加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。ここで、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを26質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを74質量部の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0090】
[実施例3-4]
ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液(濃度35質量%、商品名:ユニセーフ(登録商標)A-LM、日油株式会社製)に、ポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(商品名:エマルゲン(登録商標)408、花王株式会社製)を加えて攪拌した。これに、さらに、クエン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解させたクエン酸水溶液を加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。ここで、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを26質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを74質量部の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0091】
[実施例3-5]
N-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)の代わりに、N-エチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。なお、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含んでいた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を合計で、13質量%の量で含んでいた。ここで、アルキルジメチルアミンオキシドおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルの合計を100質量部とした場合、アルキルジメチルアミンオキシドを26質量部の量で含み、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを74質量部の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0092】
[比較例1-1]
ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec-C11-15)エーテル(商品名:エマルゲン(登録商標)707、花王株式会社製)に、クエン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解させたクエン酸水溶液を加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を13質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0093】
[比較例1-2]
ラウリルジメチルアミンオキシド水溶液(濃度35質量%、商品名:ユニセーフ(登録商標)A-LM、日油株式会社製)に、クエン酸(東京化成工業株式会社製)を水に溶解させたクエン酸水溶液を加えて攪拌した。これにより、pH=6~8に調整された界面活性剤組成物を得た。この界面活性剤組成物をN-メチルピロリドン(東京化成工業株式会社製)中に加えて、エポキシ樹脂硬化物の剥離剤を得た。この際、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤、酸および水を合計で、20質量%の量で含むように加えた。また、上記剥離剤は、有機溶媒、界面活性剤、酸および水の合計100質量%において、界面活性剤を13質量%の量で含んでいた。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0094】
[比較例1-3]
N-メチルピロリドンの代わりにブチルエチルケトンを用いた以外は、実施例1-1と同様にして剥離剤を得た。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0095】
[比較例1-4]
N-メチルピロリドンの代わりにアセトンを用いた以外は、実施例1-1と同様にして剥離剤を得た。なお、最終的に得られたエポキシ樹脂硬化物の剥離剤のpHも6~8に調整されていた。
【0096】
[評価方法]
評価には、下記2種類のエポキシ樹脂硬化物が付着した基材(評価用基材(1)、(2))を用いた。
<評価用基材(1)>
原料基材として、シチズン プロマスター アルティクロン MRKモデル(シチズン時計株式会社製)の尾錠を用いた。この尾錠は、ガス窒化により表面硬化処理が施されたチタンで構成されており、表面に「CITIZEN」のロゴタイプを表す凹部が設けられていた。
〔2液型エポキシ樹脂組成物(夜光層形成用2液型エポキシ樹脂組成物)の調製〕
主剤組成物(A)の調製には以下の成分を用いた。
主剤:ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名1009、エポキシ当量2,400~3,300、軟化点128℃)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名807、エポキシ当量160~175、25℃で液状)
蓄光剤:根本特殊化学株式会社製、N夜光G-300M、平均粒径25μm、SrAl2O4:Eu,Dy
有機溶媒:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A1)57.0質量部と、ビスフェノール型エポキシ樹脂(A2)12.84質量部と、蓄光剤200.0質量と、有機溶媒124.2質量部とを混合し、得られた混合物をろ過して、液状の主剤組成物(A)を調製した。
また、硬化剤組成物(B)の調製には以下の成分を用いた。
硬化剤:N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン
有機溶媒:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート
硬化剤6.36質量と、有機溶媒28.27質量部とを混合し、得られた混合物をろ過して、液状の硬化剤組成物(B)を調製した。
このようにして、主剤組成物(A)と硬化剤組成物(B)とを有する夜光層形成用2液型エポキシ樹脂組成物を得た。
〔夜光層の形成〕
まず、夜光層形成用2液型エポキシ樹脂組成物の主剤組成物(A)394.04質量部と、硬化剤組成物(B)34.63質量部とを混合して、エポキシ樹脂混合組成物を得た。ここで、主剤組成物(A)のエポキシ当量に対するN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンの活性水素当量は1.0(モル比)となっていた。
次に、上記凹部に、ディスペンサーで、エポキシ樹脂混合組成物を塗布した。次いで、塗布したエポキシ樹脂混合組成物を80℃で1時間加熱し、有機溶媒を蒸発させながら硬化させて、夜光層を形成した。
【0097】
<評価用基材(2)>
原料基材として、評価用基材(1)の場合と同じ基材を使用した。
〔夜光層の形成〕
二液性エポキシ樹脂(本剤・硬化剤セット)(株式会社スリーボンド製、商品名TB2086M)を用いた。まず、本剤100質量部に、評価用基材(1)の場合と同じ蓄光剤50質量部を加えた。次いで、本剤および硬化剤を混合して、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を用いて、上記凹部に夜光層を形成した。具体的には、上記凹部に、ディスペンサーで、樹脂組成物を塗布した。次いで、塗布した樹脂組成物を150℃で30分間加熱して、硬化させ、夜光層を形成した。
【0098】
<評価方法>
容器に入れた剥離剤に、上記のようにして作製した評価用基材(1)を浸漬した。浸漬中、剥離剤の温度は40℃とした。ここで、評価用基材(1)は、浸漬中、凹部が設けられた面が地面側に向くような向きで、また、当該面が地面と平行になるように保持した。浸漬してから評価用基材(1)から夜光層が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
評価用基材(1)の代わりに評価用基材(2)を用いた場合も同様にして、夜光層が剥がれ落ちるまでの時間を測定した。
【0099】
[評価結果]
下記表1に評価結果を示す。具体的には、表1に、評価用基材(1)、(2)を用いた場合の夜光層が剥がれ落ちるまでの時間を示す。
【0100】
【0101】
なお、比較例1-1では、評価基材(1)、(2)の場合ともに、浸漬してから36時間後にも、夜光層が剥がれ落ちていなかった。比較例1-2~1-4においても、比較例1-1と同様の結果であった。