IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081883
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】半導体装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20220525BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20220525BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20220525BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/40
H01L25/04 Z
H01L25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193096
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 隆一
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AD04
5F173AH03
5F173AR66
5F173MA02
5F173MB02
5F173MD58
5F173MD59
(57)【要約】
【課題】光トランシーバを構成する半導体素子(レーザダイオード)を備えた半導体装置の性能向上を図る。
【解決手段】第1半導体素子(レーザダイオード)LD1と、第2半導体素子(レーザダイオード)LD2を、第1半導体素子LD1のアノードと電気的に接続された配線WL1Aと、この第1配線WL1Aに沿って配置され、かつ、第2半導体素子LD2のカソードと電気的に接続された配線WL1Bとの間において、直列に接続する。このとき、第1半導体素子LD1および第2半導体素子LD2のそれぞれは、発光層を有する積層パターンと、この積層パターンを覆う複数の半導体層と、を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板、前記半導体基板に形成された第1半導体素子、および前記半導体基板に形成された第2半導体素子を有する半導体チップと、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された第1配線と、
前記第1配線に沿って配置され、かつ、前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された第2配線と、
を含み、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のそれぞれは、
第1端面、前記第1端面とは反対側の第2端面、前記第1端面と前記第2端面との間に位置する第1側面、前記第1端面と前記第2端面との間に位置し、かつ、前記第1側面とは反対側の第2側面、および上面を有し、前記半導体基板上に形成された積層パターンと、
前記積層パターンの前記第1側面を覆う第1半導体層と、
前記積層パターンの前記第2側面を覆う第2半導体層と、
前記積層パターンの前記上面を覆う第3半導体層と、
を有し、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のそれぞれの前記積層パターンは、
前記半導体基板上に形成された、第1導電型の第4半導体層と、
前記第4半導体層上に形成され、かつ、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第5半導体層と、
前記第4半導体層と前記第5半導体層との界面に形成された発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれの屈折率は、前記第4半導体層および前記第5半導体層のそれぞれの屈折率よりも小さく、
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子は、前記第1配線と前記第2配線との間において、直列に接続されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体チップは、さらに、
前記半導体基板と前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のそれぞれとの間に形成された半導体領域と、
第1絶縁層を介して前記第1半導体素子の前記第3半導体層上に形成された第3配線と、
前記半導体領域と接するように、第2絶縁層を介して前記第2半導体素子の前記第3半導体層上に形成された第4配線と、
を有し、
前記第2半導体素子のアノードは、前記半導体領域および前記第4配線を介して、前記第1半導体素子のカソードと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された前記第3配線は、第1ボンディングワイヤを介して、前記第1配線と電気的に接続され、
前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された前記半導体領域は、第2ボンディングワイヤを介して、前記第2配線と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記積層パターンは、パッシベーション膜を介して、前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれに覆われている、半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記半導体基板のうちの前記積層パターンの直下に位置する領域には、前記半導体領域と接するように、凹凸が形成されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記半導体基板は、
その上に前記第1半導体素子の前記積層パターンおよび前記第2半導体素子の前記積層パターンのそれぞれが形成された主面と、
前記主面とは反対側の裏面と、
前記裏面に形成されたカソード電極と、
を有し、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された前記第3配線は、第1ボンディングワイヤを介して、前記第1配線と電気的に接続され、
前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された前記半導体領域は、前記カソード電極を介して、前記第2配線と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記積層パターンは、パッシベーション膜を介して、前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれに覆われている、半導体装置。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記半導体基板のうちの前記積層パターンの直下に位置する領域には、前記半導体領域と接するように、凹凸が形成されている、半導体装置。
【請求項9】
第1半導体基板、前記第1半導体基板に形成された第1半導体素子を有する第1半導体チップと、
第2半導体基板、前記第2半導体基板に形成された第2半導体素子を有する第2半導体チップと、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された第1配線と、
前記第1配線に沿って配置され、かつ、前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された第2配線と、
を含み、
前記第1半導体素子は、
第1端面、前記第1端面とは反対側の第2端面、前記第1端面と前記第2端面との間に位置する第1側面、前記第1端面と前記第2端面との間に位置し、かつ、前記第1側面とは反対側の第2側面、および第1上面を有し、前記第1半導体基板上に形成された第1積層パターンと、
前記第1積層パターンの前記第1側面を覆う第1半導体層と、
前記第1積層パターンの前記第2側面を覆う第2半導体層と、
前記第1積層パターンの前記第1上面を覆う第3半導体層と、
を有し、
前記第2半導体素子は、
第3端面、前記第3端面とは反対側の第4端面、前記第3端面と前記第4端面との間に位置する第3側面、前記第3端面と前記第4端面との間に位置し、かつ、前記第3側面とは反対側の第4側面、および第3上面を有し、前記第2半導体基板上に形成された第2積層パターンと、
前記第2積層パターンの前記第3側面を覆う第4半導体層と、
前記第2積層パターンの前記第4側面を覆う第5半導体層と、
前記第2積層パターンの前記第1上面を覆う第6半導体層と、
を有し、
前記第1積層パターンは、
前記第1半導体基板上に形成された、第1導電型の第7半導体層と、
前記第7半導体層上に形成され、かつ、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第8半導体層と、
前記第7半導体層と前記第8半導体層との界面に形成された第1発光層と、
を有し、
前記第2積層パターンは、
前記第2半導体基板上に形成された、前記第1導電型の第9半導体層と、
前記第9半導体層上に形成された、前記第2導電型の第10半導体層と、
前記第9半導体層と前記第10半導体層との界面に形成された第2発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれの屈折率は、前記第7半導体層および前記第8半導体層のそれぞれの屈折率よりも小さく、
前記第4半導体層、前記第5半導体層および前記第6半導体層のそれぞれの屈折率は、前記第9半導体層および前記第10半導体層のそれぞれの屈折率よりも小さく、
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子は、前記第1配線と前記第2配線との間において、直列に接続されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記第1半導体チップは、さらに、
前記第1半導体基板と前記第1半導体素子との間に形成された第1半導体領域と、
第1絶縁層を介して前記第1半導体素子の前記第3半導体層上に形成された第3配線と、
前記第1半導体領域と接するように、第2絶縁層を介して前記第2半導体素子の前記第3半導体層上に形成された第4配線と、
を有し、
前記第2半導体チップは、さらに、
前記第2半導体基板と前記第2半導体素子との間に形成された第2半導体領域と、
第3絶縁層を介して前記第2半導体素子の前記第6半導体層上に形成された第5配線と、
前記第2半導体領域と接するように、第4絶縁層を介して前記第2半導体素子の前記第6半導体層上に形成された第6配線と、
を有し、
前記第2半導体素子のアノードは、前記第1半導体領域および第7配線を介して、前記第1半導体素子のカソードと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された前記第3配線は、第1ボンディングワイヤを介して、前記第1配線と電気的に接続され、
前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された前記第2半導体領域は、第2ボンディングワイヤを介して、前記第2配線と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置において、
前記第1積層パターンは、第1パッシベーション膜を介して、前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれに覆われており、
前記第2積層パターンは、第2パッシベーション膜を介して、前記第4半導体層、前記第5半導体層および前記第6半導体層のそれぞれに覆われている、半導体装置。
【請求項13】
請求項11に記載の半導体装置において、
前記第1半導体基板のうちの前記第1積層パターンの直下に位置する領域には、前記第1半導体領域と接するように、凹凸が形成され、
前記第2半導体基板のうちの前記第2積層パターンの直下に位置する領域には、前記第2半導体領域と接するように、凹凸が形成されている、半導体装置。
【請求項14】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップは、互いに隣り合って配置され、
前記第7配線は、第3ボンディングワイヤである、半導体装置。
【請求項15】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記第1半導体基板は、
その上に前記第1積層パターンが形成された第1主面と、
前記第1主面とは反対側の第1裏面と、
前記第1裏面に形成された第1カソード電極と、
を有し、
前記第2半導体基板は、
その上に前記第2積層パターンが形成された第2主面と、
前記第2主面とは反対側の第2裏面と、
前記第2裏面に形成された第2カソード電極と、
を有し、
前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップは、前記第7配線上において互いに隣り合って配置され、
前記第2半導体チップは、前記第2半導体素子の上面を前記第7配線の上面側に向けて配置され、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された前記第3配線は、第1ボンディングワイヤを介して、前記第1配線と電気的に接続され、
前記第1カソード電極の下面は前記第7配線の前記上面に接続され、
第5配線の上面は、前記第7配線の前記上面に接続され、
前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された前記第2半導体領域は、前記第2カソード電極および第2ボンディングワイヤを介して、前記第2配線と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項16】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記第1半導体基板は、
その上に前記第1積層パターンが形成された第1主面と、
前記第1主面とは反対側の第1裏面と、
前記第1裏面に形成された、前記第7配線である第1カソード電極と、
を有し、
前記第2半導体基板は、
その上に前記第2積層パターンが形成された第2主面と、
前記第2主面とは反対側の第2裏面と、
前記第2裏面に形成された第2カソード電極と、
を有し、
前記第1半導体チップは、前記第2半導体チップ上に配置され、
前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された前記第3配線は、第1ボンディングワイヤを介して、前記第1配線と電気的に接続され、
前記第1カソード電極の下面は、前記第5配線の上面に接続され、
前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された前記第2半導体領域は、前記第2カソード電極を介して、前記第2配線と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項17】
ステムと、
前記ステム上に形成された誘電体基板と、
半導体基板と、前記半導体基板に形成された第1半導体素子と、前記半導体基板に形成された第2半導体素子と、を有し、かつ、前記誘電体基板上に搭載された第1半導体チップと、
前記誘電体基板上に形成され、かつ、前記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された第1配線と、
前記誘電体基板上に形成され、かつ、前記第1配線に沿って配置され、かつ、前記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された第2配線と、
フレキシブル基板を介して前記誘電体基板と結合された実装基板と、
前記実装基板上に搭載された第2半導体チップと、
を有する電子装置であって、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のそれぞれは、
第1端面、前記第1端面とは反対側の第2端面、前記第1端面と前記第2端面との間に位置する第1側面、前記第1端面と前記第2端面との間に位置し、かつ、前記第1側面とは反対側の第2側面、および上面を有し、前記半導体基板上に形成された積層パターンと、
前記積層パターンの前記第1側面を覆う第1半導体層と、
前記積層パターンの前記第2側面を覆う第2半導体層と、
前記積層パターンの前記上面を覆う第3半導体層と、
を有し、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子のそれぞれの前記積層パターンは、
前記半導体基板上に形成された、第1導電型の第4半導体層と、
前記第4半導体層上に形成され、かつ、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第5半導体層と、
前記第4半導体層と前記第5半導体層との界面に形成された発光層と、
を有し、
前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層のそれぞれの屈折率は、前記第4半導体層および前記第5半導体層のそれぞれの屈折率よりも小さく、
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子は、前記第1配線と前記第2配線との間において、直列に接続され、
前記第2半導体チップには、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子を駆動する駆動回路が設けられている、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および電子装置に関し、例えば、レーザダイオードを含む半導体装置および電子装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-212837号公報)および特許文献2(特開2020-43251号公報)には、光トランシーバに用いられる送信用小型光デバイス(TOSA:Transmitter optical sub assembly)が記載されている。また、特許文献3(特開2015-153955号公報)には、直列に接続された複数の光起電力ダイオードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-212837号公報
【特許文献2】特開2020-43251号公報
【特許文献3】特開2015-153955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、光トランシーバに用いられる送信用小型光デバイスにおいては、信号のナイキスト周波数が増加するにしたがって、レーザダイオードの特性インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとの不整合による多重反射に起因する信号品質の劣化が顕在化する。このため、信号品質の向上を図る観点から、レーザダイオードの特性インピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスとを整合することが望まれている。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る半導体装置は、半導体基板に形成された第1半導体素子(レーザダイオード)と、上記半導体基板に形成された第2半導体素子(レーザダイオード)が、上記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された第1配線と、この第1配線に沿って配置され、かつ、上記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された第2配線との間において、直列に接続されているものである。ここで、上記第1半導体素子および第2半導体素子のそれぞれは、発光層を有する積層パターンと、この積層パターンを覆う複数の半導体層と、を有している。
【0007】
また、他の実施の形態に係る半導体装置は、第1半導体チップの第1半導体基板に形成された第1半導体素子(レーザダイオード)と、第2半導体チップの第2半導体基板に形成された第2半導体素子(レーザダイオード)が、上記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された第1配線と、この第1配線に沿って配置され、かつ、上記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された第2配線との間において、直列に接続されているものである。ここで、上記第1半導体素子および第2半導体素子のそれぞれは、発光層を有する積層パターンと、この積層パターンを覆う複数の半導体層と、を有している。
【0008】
さらに、他の実施の形態に係る電子装置は、ステムと、このステム上に形成された誘電体基板と、半導体基板と、この半導体基板に形成された第1半導体素子(レーザダイオード)と、この半導体基板に形成された第2半導体素子(レーザダイオード)と、を有し、かつ、上記誘電体基板上に搭載された第1半導体チップと、上記誘電体基板上に形成され、かつ、上記第1半導体素子のアノードと電気的に接続された第1配線と、上記誘電体基板上に形成され、かつ、上記第1配線に沿って配置され、かつ、上記第2半導体素子のカソードと電気的に接続された第2配線と、フレキシブル基板を介して上記誘電体基板と結合された実装基板と、上記実装基板上に搭載された第2半導体チップと、を有している。ここで、上記第1半導体素子と上記第2半導体素子は、上記第1配線と上記第2配線との間において、直列に接続されている。また、上記第1半導体素子および第2半導体素子のそれぞれは、発光層を有する積層パターンと、この積層パターンを覆う複数の半導体層と、を有している。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能向上を図ることができる。
【0010】
また、他の実施の形態によれば、半導体装置の性能向上を図ることができる。
【0011】
さらに、他の実施の形態によれば、半導体装置の性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】関連技術1における光トランシーバの模式的な構成を示す等価回路図である。
図2】関連技術2における光トランシーバの模式的な構成を示す等価回路図である。
図3】実施の形態1における光トランシーバの模式的な構成を示す等価回路図である。
図4】送信用小型光デバイスである半導体装置の概略構成を示す図である。
図5】実施の形態1における半導体チップと基板上の配線とを含む平面図である。
図6】実施の形態1における半導体チップと基板上の配線とを含む断面図である。
図7】実施の形態1における半導体チップを示す平面図である。
図8図7のA-A線における断面図である。
図9図7のB-B線における断面図である。
図10】実施の形態1における半導体チップの電流経路を説明する断面図である。
図11】実施の形態1の変形例における半導体チップと基板上の配線とを含む平面図である。
図12】実施の形態1の変形例における半導体チップと基板上の配線とを含む断面図である。
図13】実施の形態1の変形例における半導体チップを示す平面図である。
図14図13のA-A線における断面図である。
図15図13のB-B線における断面図である。
図16】実施の形態2における半導体チップと基板上の配線とを含む平面図である。
図17】実施の形態2における半導体チップと基板上の配線とを含む断面図である。
図18】実施の形態2における半導体チップを示す平面図である。
図19図18のA-A線における断面図である。
図20図18のB-B線における断面図である。
図21】実施の形態2の変形例1における半導体チップを示す平面図である。
図22図21のA-A線における断面図である。
図23図21のB-B線における断面図である。
図24】実施の形態2の変形例1における半導体チップと基板上の配線とを含む平面図である。
図25】実施の形態2の変形例1における半導体チップと基板上の配線とを含む断面図である。
図26】実施の形態2の変形例2における半導体チップと基板上の配線とを含む平面図である。
図27】実施の形態2の変形例2における半導体チップと基板上の配線とを含む断面図である。
図28】実施の形態3における電子装置の一部を構成するステムとフレキシブル基板とを模式的に示す斜視図である。
図29】実施の形態3における電子装置を構成するステムの詳細な構成を示す図である。
図30】実施の形態3における電子装置を構成する誘電体基板上に搭載された半導体チップを模式的に示す断面図である。
図31】実施の形態3における電子装置である光トランシーバの送信部の模式的な実装構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0014】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、光トランシーバから成る電子装置について説明する。光トランシーバとは、電気信号を光信号に変換して光信号を送信するとともに、光信号を受信して電気信号に変換する機能を有する電子装置である。
【0019】
<改善の検討>
まず、本実施の形態1における光トランシーバについて説明する前に、関連技術1および関連技術2におけるトランシーバに存在する改善の余地について説明する。
【0020】
ここで、本明細書でいう「関連技術」は、新規に発明者が見出した課題を有する技術であって、公知である従来技術ではないが、新規な技術的思想の前提技術(未公知技術)を意図して記載された技術である。
【0021】
図1は、関連技術1における光トランシーバの模式的な構成を示す等価回路図である。図1に示すように、関連技術1における光トランシーバは、送信部1aを備えている。
【0022】
送信部1aは、伝送線路を構成する2つの配線WL1、および、これらの配線WL1同士の間に電気的に接続された半導体素子(レーザダイオード)LD3を含む半導体装置SA1と、半導体素子LD3を駆動するための駆動回路DRVを含む半導体装置SA2とを有している。これにより、半導体装置SA1に含まれる半導体素子LD3は、半導体装置SA2に含まれる駆動回路DRVによって制御される。すなわち、駆動回路DRVは、電気信号に基づいて、半導体素子LD3を直接変調するように構成されており、これによって、半導体素子LD3からは、電気信号に基づいて直接変調された光信号が出力される。配線WL1と半導体素子LD3とは、ノードN1を介して接続されている。図1では、半導体素子LD3から出力された光信号OSを白い矢印で示している。
【0023】
つまり、半導体素子LD3は、直接変調型レーザダイオードである。直接変調型レーザダイオードは、半導体素子に印加する電流量を変調させて出力光強度を変調させるものである。なお、これに対して、半導体素子に光吸収素子を一体化させ、光吸収量を変調させて出力光強度を変調させる間接変調型もある。このようにして、光トランシーバの送信部1aが構成されている。
【0024】
半導体素子LD3から出力された光信号は、受信部(図示しない)を構成するフォトダイオードに入力される。これにより、フォトダイオードでは、光信号が光電変換されて、電流信号が生成される。この電流信号は、アンプに入力され、電圧信号に変換される。半導体素子LD3とフォトダイオードとの間の光通信は、図4を用いて後述する光ファイバOFを介して行われる。光ファイバOFは、半導体装置SA1のY方向における先端に設けられた孔部である光ファイバ接続部OFC内に嵌合されることで、半導体装置SA1に接続される。駆動回路DRV(レーザドライバ)、半導体素子LD3(レーザダイオード)および光ファイバ接続部から成る送信用小型光デバイス(TOSA)は、電気信号を光信号に変換して光ファイバに送信する機能を有する装置である。
【0025】
半導体素子LD3を単体で見た場合、その寄生抵抗が小さいほど電流が効率よく光に変換される。このため、直接変調型半導体素子の入力抵抗は低い値に設定される。半導体素子LD3の差動インピーダンスは、例えば約10Ωである。これに対し、極端に低いインピーダンスを有する伝送線路は製造困難であり、非常に小さな外来電圧ノイズに対しても大きな電流ノイズを誘起する。直接変調型半導体素子は電流量を変調させるデバイスなので、このような電流ノイズはS/N比(シグナル/ノイズ比)を低下させる。そこで、例えば差動50Ω伝送線路が選択される。なお、送信部がシングルエンドで用いられる場合には25Ω伝送線路が選択される。すなわち、1つの配線WL1のシングルエンドインピーダンスは例えば約25Ωであり、図1に示すノードN1よりも左側の2つの配線WL1の合計の差動インピーダンスは例えば約50Ωである。
【0026】
直接変調型レーザダイオードを用いた送信用小型光デバイスでは、ノードN1を境界として、伝送線路と半導体素子LD3との間で差動インピーダンスの不整合が生じており、これにより、配線WL1を流れてきた電気信号の一部は、半導体素子LD3に入力する前に反射する。
【0027】
この結果、当該差動インピーダンスの不整合に起因して、電気信号の品質低下(電気信号の波形劣化)が生じる。すなわち、電気信号のS/N比が小さくなる。言い換えれば、電気信号のS/N比が劣化する。このことは、光トランシーバの性能低下を招く。
【0028】
変調信号がたとえば10Gbpsなどと比較的低速な場合、インピーダンス不整合による信号反射は致命的ではない。しかし、信号変調速度がたとえば50~100Gbpsと高速な場合、または、信号反射に弱い多値変調方式が用いられる場合は、インピーダンス不整合による信号反射およびS/N比の劣化が問題となる。
【0029】
上記の差動インピーダンスの不整合は、半導体素子LD3の差動インピーダンスが、配線WL1の差動インピーダンスに比べて大幅に低いことが主要因である。
【0030】
そこで、図2を用いて説明するように、直列抵抗を加えて、所謂終端抵抗を用いることが考えられる。図2は、関連技術2における光トランシーバの模式的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、関連技術2における光トランシーバの構成は、1つの配線WL1と半導体素子LD3との間に終端抵抗R1を直列に接続している点にある。このように、終端抵抗R1を用いると、図2に破線で示した箇所、つまり配線WL1と半導体素子LD3との間での信号反射を抑制可能である。この構造では、信号反射を低減させればよいので、終端抵抗R1の抵抗値は、50Ωと10Ωとの差である40Ωとする必要はなく、例えば10Ω程度でも有効に作用する。
【0031】
ここで、終端抵抗R1は、反射信号とともに主信号をも減衰させる(信号が熱に変換される)ことが問題となる。例えば、半導体素子LD3の入力抵抗と終端抵抗R1がともに10Ωであれば、駆動回路DRVから供給される信号エネルギーの半分が熱となって失われる。つまり、半導体素子LD3に入射されるエネルギーが半分になる。このため、光出力信号出力が低下し、信号反射が大きい場合と同様に信号のS/N比が劣化する。よって、関連技術1に比べて、関連技術2の半導体素子LD3から発生する光信号のS/N比は、それほど向上しない。また、変調信号振幅の絶対値が小さければ、光ファイバ内での減衰により、長距離伝送が困難となる。
【0032】
上記のように、半導体素子LD3を直接変調する光トランシーバでは、伝送線路と半導体素子とのインピーダンス不整合が改善の余地として存在する。また、終端抵抗を設けた場合に、終端抵抗により信号エネルギーが熱へと変換され、S/N比が劣化するという改善の余地が存在する。
【0033】
そこで、本実施の形態1では、上述した改善の余地に対して工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0034】
<実施の形態1における電子装置(光トランシーバ)の構成>
図3は、本実施の形態1における光トランシーバの模式的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、本実施の形態1における光トランシーバは、送信部1aと、受信部(図示しない)とを備えている。
【0035】
送信部1aは、半導体装置SA1、SA2を有している。半導体装置SA1は、配線WL1と、この配線WL1と電気的に接続された半導体素子(レーザダイオード)LD1、LD2とを備えており、半導体装置SA2は、半導体素子LD1、LD2を駆動するための駆動回路DRVを備えている。具体的に、半導体素子LD1、LD2は、1つの半導体チップに形成されており、半導体装置SA1には、配線WL1と、半導体素子LD1、LD2が形成された半導体チップとが内蔵されている。半導体素子LD1、LD2の相互間は、金属配線MWを介して電気的に接続されている。
【0036】
一方、駆動回路DRVは、他の半導体チップに形成されており、半導体装置SA2には、駆動回路DRVが形成された半導体チップが内蔵されている。そして、光トランシーバの送信部1aにおいては、半導体装置SA1と半導体装置SA2とが電気的に接続されている。これにより、半導体装置SA1に含まれる半導体チップCHP1に形成されている半導体素子LD1、LD2は、半導体装置SA2に含まれる半導体チップに形成されている駆動回路DRVによって制御される。すなわち、駆動回路DRVは、電気信号に基づいて、半導体素子LD1、LD2を直接変調するように構成されており、これによって、半導体素子LD1、LD2のそれぞれからは、電気信号に基づいて直接変調された光信号が出力される。図3では、半導体素子LD3から出力された光信号OSを白い矢印で示している。
【0037】
以上のことから、本実施の形態1における光トランシーバ(電子装置)は、半導体素子LD1、LD2を駆動する駆動回路DRVが形成された半導体チップと、当該半導体チップと電気的に接続された半導体装置SA1とを備える。ここで、半導体装置SA1は、配線WL1と、配線WL1と電気的に接続された半導体素子LD1、LD2が形成された第2半導体チップとを有する。このようにして、本実施の形態1における光トランシーバの送信部1aが構成されている。
【0038】
図示はしないが、光トランシーバの受信部は、フォトダイオードと、このフォトダイオードと接続される配線と、当該配線と電気的に接続されたアンプAMPとを含む半導体装置SA3と、この半導体装置SA3と電気的に接続された信号処理回路とを有している。このように構成されている受信部においては、光信号がフォトダイオードに入力されると、フォトダイオードでは、光信号が光電変換されて、電流信号が生成される。この電流信号は、アンプに入力して、電圧信号に変換される。このようにして光トランシーバの受信部が構成されている。
【0039】
図4は、送信用小型光デバイスである半導体装置SA1の概略構成を示す図である。図3および図4に示すように、半導体装置SA1は、半導体素子LD1、LD2が形成された半導体チップCHP1およびモニタ用フォトダイオードMDが形成された半導体チップCHP7実装されたステムSTMと、このステムSTMと接続されたフレキシブル基板FSと、レンズLSが配置されたレンズホルダLHとファイバスタブFSBとを内蔵するレセプタクルRPから構成されている。このように構成されている半導体装置SA1は、光ファイバOFと接続され、最終的に光通信システムに組み込まれている。
【0040】
半導体装置SA1の一部を構成するステムSTMとフレキシブル基板FSの具体的な構造については、実施の形態3において後述する。
【0041】
<本実施の形態の特徴>
以下に、本実施の形態の特徴である半導体装置の構造について、図5図10を用いて説明する。図5は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む平面図である。図6は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む断面図である。図7は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップを示す平面図である。図8は、図7のA-A線における断面図である。図9は、図7のB-B線における断面図である。図10は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップの電流経路を説明する断面図である。
【0042】
本実施の形態の半導体装置は、複数の半導体素子(ここでは2つ)を直列に接続して、半導体素子のもつ製造上不可避な寄生抵抗を終端抵抗の代わりに使うものである。複数の半導体素子のそれぞれはお互いに終端抵抗として作用する。追加された半導体素子はその寄生抵抗により熱も発生させるが、光信号も発生させる。したがって、追加分の光をレンズで集光させることにより、エネルギーの無駄を省ける。なお、本実施の形態では、図3に示す半導体素子LD1が、1つのレーザダイオードとして機能するだけでなく、図2で説明した終端抵抗R1(すなわち、抵抗素子)としても機能する。
【0043】
図5に示すように、半導体素子を備えた半導体チップCHP1が実装された伝送基板SB1が、レンズLS(図4参照)を備えた金属ケースの台座に固定されている。伝送基板SB1の主面上に、互いにY方向に沿って配置された配線(信号線、差動信号線)WL1A、WL1Bのそれぞれは、半導体チップCHP1に接続されている。光信号は半導体素子の端面から放射上に発生するので、レンズLSによって集光されて光ファイバのガイド部分まで導かれる。その後、光信号は光ファイバに入り、長距離の光信号伝送がなされる。
【0044】
図6に示すように、伝送基板SB1は、セラミック製の2層構造を有している。伝送基板SB1の底面は、接地用の裏面電極で覆われている。伝送基板SB1上には、配線WLAを介して、2つの半導体素子LD1、LD2を直列接続となるように集積した半導体チップCHP1が取り付けられている。半導体チップCHP1の表面の電極(アノード電極とカソード電極)と配線WL1A、WL1Bのそれぞれとが、ボンディングワイヤBWにより接続されている。つまり、配線WL1Aは、半導体素子LD1のアノードと電気的に接続され、配線WL1Bは、半導体素子LD2のカソードと電気的に接続されている。光信号OS(レーザ光)は半導体チップCHP1の端面から発生し、主に、図5および図7に白い矢印で示す方向(Y方向)に放射される。
【0045】
図7図9に示すように、半導体チップCHP1には、2つの半導体素子LD1、LD2が形成されている。半導体素子LD1、LD2は、波長選択用回折格子、電流ブロック層およびMQW(multiple quantum well)によるp/n接合を備えたBH-DFB(buried-heterojunction distributed feedback)レーザである。電流ブロック層とは、MQWに注入される電流断面積を制限して発光領域に注入される電流密度を上昇させるための電流障壁である。
【0046】
具体的には、半導体チップCHP1は、半導体基板SBを有しており、半導体素子LD1、半導体基板SBに形成されている。半導体基板SBは、例えばInP(インジウムリン)から成る。半導体基板SBは、主面MSと、主面MSの反対側の裏面BSとを備えている。半導体基板SBの主面MS上には、N型の半導体領域NRが形成されている。半導体領域NRは、例えばInGaAsP(インジウムガリウムヒ素リン)から成る。半導体領域NR上には、N型の半導体層CNと、P型の半導体層CPが順に積層されている。つまり、半導体領域NRは、半導体基板SBと、半導体素子LD1および半導体素子LD2のそれぞれとの間に形成されている。また、図8に示すように、半導体層CNと半導体層CPとは互いに接しており、この半導体層CNと半導体層CPとの界面(境界)であるPN接合部には、発光層ELが形成されている。発光層ELは、例えば、AlGaInAs(アルミニウムガリウムインジウムヒ素)から成る半導体層である。半導体層CNおよび半導体層CPのそれぞれは、例えばInPから成るエピタキシャル成長層(半導体層)である。
【0047】
半導体層CNおよび半導体層CPと、それらの境界の発光層ELとから成る積層パターンP1、P2のそれぞれは、MQWを構成しており、例えばX方向およびZ方向に沿う断面において、台形の断面形状を有する。すなわち、積層パターンP1、P2のそれぞれは、PN接合を有し、レーザダイオードを構成している。積層パターンP1、P2のそれぞれの側面(傾斜面)SSおよび上面USは、パッシベーション膜PFにより連続的に覆われている。パッシベーション膜PFは、例えばInPから成るエピタキシャル成長層であり、絶縁物ではなく半導体から成る。X方向における積層パターンP1、P2のそれぞれの両側の側面SSは、パッシベーション膜PFを介して形成された電流ブロック層(半導体層)CBにより覆われている。電流ブロック層CBは、例えばInPから成るエピタキシャル成長層である。電流ブロック層CBには、例えばFe(鉄)が導入されている。
【0048】
なお、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。半導体基板SBの主面MSはX方向およびY方向に沿う面である。
【0049】
半導体層CP上には、パッシベーション膜PFを介してクラッド層(半導体層)CLが形成されている。つまり、積層パターンP1、P2のそれぞれは、パッシベーション膜PFを介して、電流ブロック層CBおよびクラッド層CLのそれぞれにより覆われている、
クラッド層CLは、半導体層CP上から電流ブロック層CB上に亘って形成されている。クラッド層CLは、例えばInPから成るエピタキシャル成長層である。積層パターンP1、パッシベーション膜PFおよび電流ブロック層CBから成る積層構造は、半導体素子LD1を構成している。また、X方向における半導体素子LD1の一方の隣には、半導体素子LD1と同じ構造を有する半導体素子LD2が形成されている。ただし、半導体素子LD1が積層パターンP1を有しているのに対し、半導体素子LD2は積層パターンP2を有している。このように、半導体基板SB上、つまり半導体領域NR上には、半導体素子LD1、LD2がX方向に並んで配置されている。
【0050】
半導体素子LD1、LD2のそれぞれの半導体層CNの直下の半導体基板SBの主面MSには、半導体領域NRに接するように、周期構造GRが形成されている。周期構造GRは、図9に示すように、半導体基板SBの主面MSに形成された凹凸が繰り返し並ぶ構造である。これらの凹凸は、エッチング法により半導体基板SBの主面MSに形成できる。周期構造GRは、発光層ELにおいて共振させる光の波長を選択するために設けられるものである。
【0051】
半導体素子LD1、LD2のそれぞれは、少なくとも、半導体層CNおよび半導体層CPの接合部(PN接合)である発光層ELと、レーザ共振器と、光閉じ込め構造とを備えている。レーザ共振器とは、積層パターンP1、P2のそれぞれの内部において光を共振させるための構造であり、少なくとも、図7および図9に示す反射面RFを有している。反射面RFは、Y方向における、半導体チップCHP1の両側の端面(側面)である。つまり、積層パターンP1、P2のそれぞれは、Y方向における一方の反射面RFと、当該反射面RFとは反対側の反射面RFとを有している。この反射面RFは、半導体層の劈開面でもあり、図示しないが、この反射面RFである端面上には、薄膜メタルがコーティングされている。また、周期構造GRもレーザ共振器の一部であるといえる。積層パターンP1、P2のそれぞれのX方向における両側の側面SSは、いずれも、Y方向における両側の反射面RF同士の間に位置する。
【0052】
光閉じ込め構造とは、物質の屈折率の違いを利用して、積層パターンP1、P2のそれぞれの内部に光を閉じ込めるための構造である。光閉じ込め構造は、積層パターンP1、P2のそれぞれをX方向(横方向)およびZ方向(上下方向)で挟む要素により構成されている。つまり、光閉じ込め構造は少なくとも、半導体基板SB、電流ブロック層CBおよびクラッド層CLを有している。積層パターンP1、P2のそれぞれはZ方向において半導体基板SBとクラッド層CLとにより挟まれている。つまり、積層パターンP1、P2のそれぞれのX方向における両側の側面SSは、電流ブロック層CBにより覆われている。積層パターンP1、P2のそれぞれの上面USは、クラッド層CLにより覆われている。積層パターンP1、P2のそれぞれを囲む半導体基板SB、電流ブロック層CBおよびクラッド層CLのそれぞれの屈折率は、半導体層CN、CPのいずれの屈折率よりも小さい。このため、発光層ELで生じた光は、半導体基板SB、電流ブロック層CBおよびクラッド層CLと積層パターンP1、P2のそれぞれとの間で反射し、積層パターンP1、P2のそれぞれの内部に閉じ込められて増幅する。
【0053】
上記のように、半導体素子LD1、LD2はX方向に並んで配置されている。また、X方向における半導体素子LD1の隣の領域のうち、半導体素子LD2と反対側の領域には、半導体領域NR上に順に積層された電流ブロック層CBおよびクラッド層CLから成る第1積層膜F1が形成されている。また、X方向における半導体素子LD2の隣の領域のうち、半導体素子LD1と反対側の領域には、半導体領域NR上に順に積層された電流ブロック層CBおよびクラッド層CLから成る第2積層膜F2が形成されている。第1積層膜F1、半導体素子LD1、LD2および第2積層膜F2のそれぞれの表面(側面および上面)は、絶縁層ILにより覆われている。
【0054】
第1積層膜F1および半導体素子LD1のそれぞれの上には、金属膜から成る配線W1が形成されている。つまり、配線W1は、半導体素子LD1のクラッド層CL上に絶縁層ILを介して形成されている。配線W1は、半導体素子LD1を構成するクラッド層CLの上面上の絶縁層ILに形成された開口部内に埋め込まれ、当該クラッド層CLに電気的に接続されている。また、半導体素子LD2の上には、隣り合う半導体素子LD1および半導体素子LD2の相互間の半導体領域NRの上面に接し、金属膜から成る配線W2が形成されている。つまり、配線W2は、半導体素子LD2のクラッド層CL上に絶縁層ILを介して形成されている。配線W2は、半導体素子LD2を構成するクラッド層CLの上面上の絶縁層ILに形成された開口部内に埋め込まれ、当該クラッド層CLに電気的に接続されている。半導体素子LD1の半導体層CNと、半導体素子LD2の半導体層CPとは、半導体領域NR、配線W2および半導体素子LD2のクラッド層CLを介して電気的に接続されている。つまり、金属配線である配線W2を介して、半導体素子LD1、LD2が直列に接続されている。また、第2積層膜F2の上には、第2積層膜F2および半導体素子LD2の相互間の半導体領域NRの上面に接し、金属膜から成る配線W3が形成されている。つまり、配線W1は、第2積層膜F2のクラッド層CL上に絶縁層ILを介して形成されている。
【0055】
配線W1は、半導体領域NRおよび他の配線W2、W3とは離間している。配線W1の上面には、ボンディングワイヤBWが接続され、配線W2の上面には、他のボンディングワイヤBWが接続されている。配線W1は、ボンディングワイヤBWを介して配線WL1A(図5参照)に電気的に接続されており、配線W3は、ボンディングワイヤBWを介して配線WL1B(図5参照)に電気的に接続されている。
【0056】
次に、図10を用いて、半導体チップにおける電流の流れについて説明する。図10では、電流の流れる経路を太い矢印で示している。半導体素子LD2のアノードは半導体領域NRおよび配線W2を介して、半導体素子LD1のカソードと電気的に接続されている。また、半導体素子LD1のアノードと電気的に接続された配線W1は、ボンディングワイヤBWを介して、配線WL1Aと電気的に接続され、半導体素子LD2のカソードと電気的に接続された半導体領域NRは、他のボンディングワイヤを介して、配線WL1Bと電気的に接続されている(図5参照)。
【0057】
配線WL1A(図5参照)からボンディングワイヤBWを介して配線W1に流れ込んだ電流は、半導体素子LD1のクラッド層CLから半導体層CNに向かって流れた後、半導体領域NRから配線W2へ流れる。これは、不純物を有する半導体領域NRおよび半導体素子LD2の半導体層CNなどよりも、金属膜から成る配線W2の方が抵抗値が低いためである。続いて、電流は配線W2から半導体素子LD1のクラッド層CLへ流れた後、半導体素子LD2の半導体層CNに向かって流れた後、半導体領域NRから配線W3へ流れる。その後、電流はボンディングワイヤBWを介して配線WL1Bへ流れる。
【0058】
半導体素子LD1、LD2のそれぞれにおいて、クラッド層CLから半導体層CN側に電流が流れる際、電流が積層パターンP1、P2以外の経路を流れることのないように、電流ブロック層CBが設けられている。
【0059】
半導体素子LD1、LD2に流れる電流の量を駆動回路DRVで変調させることにより、変調された光信号が得られる。半導体素子LD1、LD2のどちらも寄生抵抗を有する。このため、半導体素子LD1、LD2は互いに直列終端抵抗として動作する。半導体素子LD1、LD2から出た光は図4に示すレンズLSにより集光されて光ファイバOFへと至る。
【0060】
本実施の形態では、半導体基板SB上で2つの半導体素子LD1、LD2が直列に接続されている。半導体素子LD1、LD2に電流が注入されると、積層パターンP1、P2(MQW)の発光層(発光領域)ELから発生した光が、Y方向における積層パターンP1、P2のそれぞれの両側の端面(反射面RF)にて反射を繰り返すことにより、所望の波長にてレーザ発振を起こす。反射面RFは、薄膜メタルがコーティングされた劈開面である。なお、各図において、当該薄膜メタルは図示していない。
【0061】
ここでは、両側の反射面RFのうち、一方の反射面RFにおける反射率を、他方の反射面RFにおける反射率よりも低く設定する。このような反射率の差は、一方の反射面RFを覆う薄膜メタルに、他方の反射面RFを覆う薄膜メタルよりも反射率が低い材料を用いることより、設けることができる。また、このような反射率の差は、一方の反射面RF上に薄膜メタルをコーティングしないことでも、設けることができる。両側の反射面RFのうちどちらかの反射率を下げておけば、レーザ光が当該反射面RFより取り出される。レーザ光を、半導体基板SBの主面MSに対して垂直な方向においても閉じ込めることを目的として、発光層よりも誘電率(屈折率)が低いクラッド層CLと呼ばれる領域を要する。
【0062】
また、赤外線波長では標準的に酸化し易いAl(アルミニウム)を含有した化合物半導体が使われるために、ここでは、酸化防止のためのパッシベーション膜PFおよび絶縁層ILなどを形成している。
【0063】
<本実施の形態の効果>
本実施の形態では、関連技術2に記載のように終端抵抗を設けるのではなく、代わりに、2つの半導体素子を直列に接続している。このように、関連技術1に比べて追加で設けた半導体素子は寄生抵抗を有するため、直列に接続された2つの半導体素子を用いることで、終端抵抗を設ける場合と同様に、差動インピーダンスの不整合を解消できる。つまり、複数の半導体素子が有する寄生抵抗が直列終端抵抗として作用することにより、信号反射が抑制されて高速信号波形が改善される。このとき、追加で設けた半導体素子の寄生抵抗によるエネルギー減少も起こる。ただし、終端抵抗として抵抗器を設けるのではなく半導体素子を用いることで、熱の発生を抑え、かつ、光信号を増加させられる。つまり、関連技術2に比べ、半導体素子が複数存在することで光信号が増加するので、エネルギーの無駄が減少し、S/N比が改善する。
【0064】
以上より、2つの半導体素子が有する寄生抵抗により、互いに直列終端がなされ、かつその実質的な終端抵抗から光信号が取り出される。よって、関連技術2のように単なる終端抵抗を使う場合に比較して、信号のエネルギーが無駄にならず、S/N比が改善する。よって、光トランシーバを備えた半導体装置の性能向上を図ることができる。
【0065】
<変形例>
本変形例の半導体装置について、図11図15を用いて説明する。図11は、本変形例の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む平面図である。図12は、本変形例の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む断面図である。図13は、本変形例の半導体装置である半導体チップを示す平面図である。図14は、図13のA-A線における断面図である。図15は、図13のB-B線における断面図である。
【0066】
図11図15に示すように、半導体チップCHP2およびこれを搭載した伝送基板SB1などの構成は、図5図9を用いて説明した構造と同様である。ただし、本変形例の半導体装置は、半導体チップCHP2の裏面にカソード電極を形成している点で、図5図9を用いて説明した構造とは異なる。
【0067】
すなわち、図14に示すように、半導体チップCHP2を構成する半導体基板NSBの裏面には、カソード電極CEが形成されている。また、半導体基板NSBは、図8に示す半導体基板SBに比べて抵抗の低い高濃度のN型半導体基板である。また、半導体基板NSB内には、半導体基板NSBの主面から所定の深さに亘って、半導体基板NSBよりも導電性が低い半導体領域SBEが形成されている。半導体領域SBEは、X方向に並ぶ第1積層膜F1、半導体素子LD1および半導体素子LD2のそれぞれの直下の領域を連続的に覆うように形成されている。ただし、X方向における半導体素子LD2の隣の領域のうち、半導体素子LD1と反対側の領域、つまり第2積層膜F2の直下において、半導体領域SBEは形成されておらず、高濃度の半導体基板NSBの主面と半導体領域NRとが互いに接している。また、第2積層膜F2上には配線W3(図8参照)は形成されていない。
【0068】
ここでは、半導体素子LD2のカソードと電気的に接続された半導体領域NRは、カソード電極CEを介して、配線WL1B(図11参照)と電気的に接続されている。本変形例の半導体素子LD1、LD2に電流が流れる場合、半導体素子LD2内を通って半導体領域NRに流れた電流は、下方に高抵抗の半導体領域SBEが無い領域(第2積層膜F2の下)から半導体基板NSB内に流れ、その後カソード電極CEを介して配線WL1Bへ流れる。
【0069】
ここでは、半導体基板NSBの裏面全体がカソード電極CEで覆われているため、2つの差動信号配線のうちの一方(ここでは配線WL1B)の上に設置して導通をとり、アノード電極である配線W1のみにボンディングワイヤBWを接続している。これにより、インピーダンス制御がし難いボンディングワイヤを1つだけに減らせるため、設計が容易になる。また、ボンディングワイヤを減らすことで、ボンディングワイヤの寄生インダクタンスが半分に低減できる。また、ボンディングワイヤを減らすことで、インピーダンスばらつきも低減できる。
【0070】
(実施の形態2)
1つの半導体チップに複数の半導体素子を形成する場合、それらの半導体素子がいずれも良品である必要がある。これに対し、本実施の形態では、2つの半導体素子をそれぞれ別々の半導体チップに形成し、それらの半導体チップを並べて直列に接続するものである。
【0071】
本実施の形態の半導体装置について、図16図20を用いて説明する。図16は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む平面図である。図17は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む断面図である。図18は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップを示す平面図である。図19は、図18のA-A線における断面図である。図20は、図18のB-B線における断面図である。
【0072】
図16および図17に示すように、ここでは、半導体素子LD1を備えた半導体チップCHP3と、半導体素子LD2を備えた半導体チップCHP4とを直列に接続している。半導体チップCHP3、CHP4は、X方向において隣り合って1つの配線WLA上に配置されている。半導体チップCHP3、CHP4のそれぞれの構造は同じであるため、以下では半導体チップCHP3の構造について説明する。
【0073】
図18図20に示すように、半導体チップCHP3は、第1積層膜F1および第2積層膜F2を備え、第1積層膜F1および第2積層膜F2の相互間に1つの半導体素子LD1を備えている。つまり、半導体チップCHP3は、搭載された半導体素子が1つのみである点で、半導体チップCHP1(図8参照)と異なる。半導体チップCHP3のカソード電極である配線W3に接続されたボンディングワイヤBWは、半導体チップCHP4(図17参照)のアノード電極である配線W1に接続されている。つまり、半導体素子LD2のアノードは、半導体領域NRおよびボンディングワイヤBWを介して、半導体素子LD1のカソードと電気的に接続されている。これにより、金属配線であるボンディングワイヤBWを介して、2つの半導体素子LD1、LD2が直列に接続されている。
【0074】
本実施の形態では、伝送基板上に別々の半導体チップを2つ搭載している。このため、良品の半導体チップだけを集めて半導体装置を構成できる。これにより、半導体装置の信頼性を向上できる。また、半導体装置の製造コストを低減できる。
【0075】
<変形例1>
2つの半導体素子を別々の半導体チップに形成する場合、カソード電極は半導体基板の裏面に形成されていてもよい。
【0076】
本変形例の半導体装置について、図21図25を用いて説明する。図21は、本変形例の半導体装置である半導体チップを示す平面図である。図22は、図21のA-A線における断面図である。図23は、図21のB-B線における断面図である。図24は、本変形例の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む平面図である。図25は、本変形例の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む断面図である。
【0077】
半導体チップCHP5、CHP6のそれぞれの構造は同じであるため、以下では半導体チップCHP5の構造について説明する。
【0078】
図21図23に示すように、半導体チップCHP5の構造は、半導体基板SBの下面がカソード電極CEにより覆われている点と、基板として、導電性を高めた高濃度の半導体基板NSBが用いられている点で、図19に示す半導体チップCHP3と異なる。
【0079】
図24および図25に示すように、ここでは、半導体素子LD1を備えた半導体チップCHP5と、半導体素子LD2を備えた半導体チップCHP6とを直列に接続している。半導体チップCHP5、CHP6は、X方向において隣り合って1つの配線WLA上に配置されている。半導体チップCHP5、CHP6のそれぞれの裏面にはカソード電極CEが形成されている。半導体チップCHP5の裏面側のカソード電極CEの下面は、配線WLAの上面に接続されている。これに対し、半導体チップCHP6は上下が逆さとなっており、半導体チップCHP6のアノード電極である配線W1の上面は配線WLAの上面に接続されている。つまり、半導体チップCHP5は、半導体チップCHP5を構成する半導体層CPが半導体層CNの上に位置する向きで配置されているのに対し、半導体チップCHP6は、半導体チップCHP6を構成する半導体層CPが半導体層CNの下に位置する向きで配置されている。言い換えれば、半導体チップCHP6は、半導体素子LD2の上面USを配線WLAの上面側に向けて配置されている。このため、金属配線である配線WLAを介して、半導体素子LD1、LD2が直列に接続される。半導体素子LD2のカソードと電気的に接続された半導体領域NRは、半導体チップCHP6のカソード電極CEおよびボンディングワイヤBWを介して、配線WL1Bと電気的に接続されている。
【0080】
本変形例では、2つの半導体素子を別々の半導体チップに設けているため、図16図20を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得られる。
【0081】
<変形例2>
前記変形例1で説明した半導体チップCHP5、CHP6は、図26および図27に示すように、上下に重ねることで直列に接続してもよい。図26は、本変形例の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む平面図である。図27は、本変形例の半導体装置である半導体チップと、基板上の配線とを含む断面図である。
【0082】
ここでは、配線WL1B上に半導体チップCHP6が搭載され、半導体チップCHP6上に半導体チップCHP5が配置され、半導体チップCHP5の下面が半導体チップCHP6の上面に接続されている。半導体チップCHP5のアノード電極はボンディングワイヤBWにより配線WL1Aに電気的に接続されている。半導体チップCHP5の裏面のカソード電極CEは、半導体チップCHP6の上部のアノード電極である配線W1に電気的に接続されている。つまり、半導体チップCHP5の裏面のカソード電極CEの下面は、半導体チップCHP6の配線W1の上面に接続されている。半導体チップCHP6のカソード電極CEは、配線WL1Bに電気的に接続されている。このようにして、金属配線である半導体チップCHP5のカソード電極CEおよび半導体チップCHP6のアノード電極である配線W1(図22参照)を介して、半導体チップCHP5の半導体素子LD1と半導体チップCHP6のLD2とが直列に接続されている。
【0083】
本変形例では、2つの半導体素子を別々の半導体チップに設けているため、図16図20を用いて説明した半導体装置と同様の効果を得られる。また、インピーダンス制御がし難いボンディングワイヤを1つだけに減らせるため、設計が容易になる。また、ボンディングワイヤを減らすことで、インピーダンスばらつきも低減できる。
【0084】
(実施の形態3)
図28は、半導体装置SA1の一部を構成するステムSTMとフレキシブル基板FSとを模式的に示す斜視図である。図28において、ステムSTMとフレキシブル基板FSとは、半導体装置SA1内の高周波信号(高速信号)が伝搬する経路に対応した部位である。ステムSTMには、半導体素子LD1、LD2が形成された半導体チップCHP1が実装されている一方、フレキシブル基板FSには、DC/RF信号線が形成されている。
【0085】
次に、図29は、ステムSTMの詳細な構成を示す図である。ステムSTMには、例えば、窒化アルミニウム(AlN)から成る誘電体基板DS1が配置されている。この誘電体基板DS1の表面には、配線WL1Aと、配線WL1Bと、配線WL1Aと配線WL1との間に位置する配線WLAが形成されている。また、配線WLAの上には、半導体素子LD1、LD2を有する半導体チップCHP1が搭載されている。また、配線WL1Aと半導体チップCHP1とは、ボンディングワイヤBWで接続されているとともに、DC/RF信号注入用ピンPN1と接続されている。一方、配線WL1Bと半導体チップCHP1とは、ボンディングワイヤBWで接続されているとともに、配線WL1Bは、DC/RF信号注入用ピンPN2と接続されている。
【0086】
また、図29に示すように、ステムSTMには、半導体素子LD1、LD2からの光出力をフィードバック制御するためのモニタ用フォトダイオードMDが形成された半導体チップCHP7を有し、この半導体チップCHP7は、誘電体基板DS2上に搭載されている。そして、図29に示すように、モニタ用フォトダイオードMDが形成された半導体チップCHP7は、モニタ用ピンPN3とワイヤWR2を介して接続されているとともに、モニタ用ピンPN4とワイヤWR3を介して接続されている。
【0087】
誘電体基板DS1および誘電体基板DS2は、例えば、窒化アルミニウムから構成されるが、誘電体基板DS1および誘電体基板DS2は、ヒートシンクとしての観点と、特性インピーダンスの設計の観点で材料を選択可能である。このため、例えば、誘電体基板DS1や誘電体基板DS2は、室温での熱伝導率が100W/(m・K)以上の誘電体材料を用いることもできる。また、配線WL1Aおよび配線WL1Bは、マイクロストリップラインから構成できる。例えば、配線WL1Aおよび配線WL1Bの特性インピーダンス(シングルエンド)は、25Ωであり、配線WL1Aおよび配線WL1Bの特性インピーダンス(差動インピーダンス)は、50Ωである。
【0088】
続いて、図30は、誘電体基板上に搭載された半導体チップとチップ抵抗とを模式的に示す断面図である。図30に示すように、ステムSTMに配置された誘電体基板DS1上には、配線WL1Aと配線WL1Bとが形成されている。配線WL1A、WL1Bのそれぞれと、半導体チップCHP1とは、ボンディングワイヤBWを介して電気的に接続されている。
【0089】
図31は、本実施の形態の電子装置である光トランシーバの送信部1aの模式的な実装構成を示す図である。図31に示すように、送信部1aは、伝送線路TL1が形成された実装基板PCBを有し、この実装基板PCB上に駆動回路DRVが内蔵された半導体装置SA2が搭載されている。このとき、図31に示すように、駆動回路DRVが内蔵された半導体装置SA2は、実装基板PCBに形成された伝送線路TL1と電気的に接続されている。さらに、実装基板PCBに形成された伝送線路TL1は、半導体素子LD1、LD2を含む半導体装置SA1が搭載されたフレキシブル基板FSと電気的に接続されている。この結果、半導体素子LD1、LD2が内蔵された半導体装置SA1と、駆動回路DRVが内蔵された半導体装置SA2とは、伝送線路TL1を介して、電気的に接続されている。
【0090】
上記のように、前記実施の形態1で説明した、2つの半導体素子を備えた半導体チップは、ステム上に形成された誘電体基板に取り付けて用いることができる。ここでは、フレキシブル基板を介して誘電体基板と結合された実装基板上に搭載された半導体装置に、各半導体素子を駆動する駆動回路が設けられている。このような電子装置に当該半導体チップを搭載することで、光トランシーバの性能を向上し、かつ、電子装置の性能を向上できる。
【0091】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0092】
例えば、前記実施の形態1、2では、レーザダイオードである半導体素子が、N型半導体層と、当該N型半導体層上に形成されたP型半導体層とから成る場合について説明したが、このN型半導体層およびP型半導体層の位置は逆であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
CHP1~CHP7 半導体チップ
CN、CP 半導体層
DRV 駆動回路
LD1~LD3 半導体素子(レーザダイオード)
SA1、SA2 半導体装置
TL1 伝送線路
W1~W3、WL1、W1LA、W1LB、WLA 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31