(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081910
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】側面弾性材セット治具
(51)【国際特許分類】
E01B 29/02 20060101AFI20220525BHJP
E01B 19/00 20060101ALI20220525BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
E01B29/02
E01B19/00 B
E01B37/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193139
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000143765
【氏名又は名称】株式会社佐藤工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】曾我 周作
(72)【発明者】
【氏名】野中 泰志
(72)【発明者】
【氏名】池田 和弥
(72)【発明者】
【氏名】平田 一弘
【テーマコード(参考)】
2D056
2D057
【Fターム(参考)】
2D056CA01
2D057BA11
2D057CA03
(57)【要約】
【課題】軌道スラブの設置凹部に対するコンクリート枕木の設置に際して、コンクリート枕木に取り付けられている側面弾性材を脱落させることなく、簡単な操作で正確にコンクリート枕木を設置することができる安価な側面弾性材セット治具を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の側面弾性材セット治具45は、吊持ユニット39の吊下げフック37が係止される吊下げ金具41と、側面弾性材7Bをコンクリート枕木5に取り付けた状態で保持する側面弾性材押さえ機構43と、を備え、前記側面弾性材押さえ機構43は、コンクリート枕木5の上面に当接して保持する保持機枠63と、保持機枠63と一体に設けられ、左右一対のガイド長穴64を有する昇降案内板65と、ガイド長穴64に沿って昇降する左右一対の可動押さえ板67と、を備えるものである。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道スラブの設置凹部に対して、側面弾性材を取り付けた状態のコンクリート枕木を、位置調整して組み付ける場合に使用される側面弾性材セット治具において、
吊持ユニットの吊下げフックが係止される吊下げ金具と、
前記側面弾性材を前記コンクリート枕木に取り付けた状態で保持する側面弾性材押さえ機構と、を備え、
前記側面弾性材押さえ機構は、
前記コンクリート枕木の上面に当接して保持する保持機枠と、
前記保持機枠と一体又は一体的に設けられ、左右一対のガイド長穴を有する昇降案内板と、
前記ガイド長穴に沿って昇降する左右一対の可動押さえ板と、を有するものであることを特徴とする側面弾性材セット治具。
【請求項2】
前記左右一対のガイド長穴は、上方が広がるように傾斜姿勢で設けられたものであり、
前記左右一対の可動押さえ板は、前記左右一対のガイド長穴に伴って上方に移動するに従って離間し、下方に移動するに従って接近するものであることを特徴とする請求項1記載の側面弾性材セット治具。
【請求項3】
前記保持機枠は、前後左右の四方を囲む側部機枠と、該側部機枠によって囲まれた空間の底部に取り付けられる底板と、を備えたものであり、
前記側部機枠の前面板と後面板は、前記昇降案内板の左右の案内部を連結している連結部を兼用するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の側面弾性材セット治具。
【請求項4】
前記昇降案内板は、斜め上方に向けて延びる左右の案内部と、該左右の案内部の下部を連結している連結部と、を備えたものであり、
前記昇降案内板は、前記コンクリート枕木の軌間幅方向の外側に配置される外側昇降案内板と、該軌間幅方向の内側に配置される内側昇降案内板の2種類からなるものであり、
前記外側昇降案内板と前記内側昇降案内板の少なくとも一方は、前記連結部の左右に、前記側面弾性材の上面に当接して該側面弾性材の上方への移動を規制する、下方に向けて延びる凸部が設けられたものであることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項記載の側面弾性材セット治具。
【請求項5】
前記可動押さえ板は、前記コンクリート枕木の軌間幅方向の外側に配置される外側可動押さえ板と、該軌間幅方向の内側に配置される内側可動押さえ板の2種類からなるものであり、
前記2種類の可動押さえ板は、前記ガイド長穴と係合する係合ロッドと、該ガイド長穴とは係合しない連結ロッドと、を使用して一体に連結されて可動枠を構成するものであり、
前記可動枠は、左右対称に一対設けられたものであることを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項記載の側面弾性材セット治具。
【請求項6】
前記保持機枠は、前記側面弾性材の上面に当接して、該側面弾性材の上方への移動を規制する回動押さえ板が回動自在に設けられたものであることを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1項記載の側面弾性材セット治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート枕木を軌道スラブの設置凹部に設置する、コンクリート枕木の設置作業で使用される側面弾性材セット治具に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線等の軌道を敷設する場合には、列車走行に伴う振動及び騒音の低減を考慮する必要がある。そして、振動及び騒音を低減できる軌道構造としては、バラスト軌道が最も効果が高いとされている(特許文献1等参照)。また、新幹線等の軌道を敷設する場合に考慮しなければならない他の事由として、効率的な施工が可能で保守作業が少なくて済むことが挙げられる。そして、効率的な施工が可能で保守作業が少なくて済む軌道構造としては、スラブ軌道が最も効果が高いとされている(特許文献2等参照)。
【0003】
さらに、振動及び騒音の低減効果と保守作業性との両方に優れた軌道構造として、軌道スラブとコンクリート枕木との間に弾性材を介在させて組み合わせた弾性枕木埋込み形スラブ軌道(以下、弾直スラブ軌道と称する)も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-144206号公報
【特許文献2】特開2004-332275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、弾直スラブ軌道の敷設に当たっては、軌道スラブとコンクリート枕木を現場に持ち込み、位置合わせして組み立てる現場作業が行われる場合が多く、施工速度の点では必ずしも満足の行く工法とはなっていない。また、敷設現場での作業は大掛かりな装置や機材を現場に持ち込んでの作業になるため施工コストの増大を招いていることも問題になっている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、従来現場において行っていた軌道スラブとコンクリート枕木との組み立てを工場等で事前に行うプレキャスト化を実現し、軌道スラブの設置凹部に対してコンクリート枕木を設置する際、側面弾性材の脱落を防止してコンクリート枕木に側面弾性材を取り付けた状態を維持して簡単な操作で正確なコンクリート枕木の設置を行うことができる安価な側面弾性材セット治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明における側面弾性材セット治具は、軌道スラブの設置凹部に対して、側面弾性材を取り付けた状態のコンクリート枕木を、位置調整して組み付ける場合に使用される側面弾性材セット治具において、
吊持ユニットの吊下げフックが係止される吊下げ金具と、
前記側面弾性材を前記コンクリート枕木に取り付けた状態で保持する側面弾性材押さえ機構と、を備え、
前記側面弾性材押さえ機構は、
前記コンクリート枕木の上面に当接して保持する保持機枠と、
前記保持機枠と一体又は一体的に設けられ、左右一対のガイド長穴を有する昇降案内板と、
前記ガイド長穴に沿って昇降する左右一対の可動押さえ板と、を有するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の側面弾性材セット治具によれば、軌道スラブの設置凹部にコンクリート枕木を設置する際、コンクリート枕木に取り付けた側面弾性材の取付け状態を維持しながらコンクリート枕木を設置することが可能になる。これにより、弾直スラブの組み立てが円滑に実行できるようになる。また、ゴム、スプリング、ネジ等を使用せず、操作が簡単でシンプルな構成の側面弾性材押さえ機構の採用により、コンクリート枕木のような重量物の設置を作業者の経験等によることなく、だれでも簡単、正確に行うことができる。また、構造が簡単で安価な側面弾性材セット治具を提供することができる。
【0009】
また、本発明の側面弾性材セット治具において、前記左右一対のガイド長穴は、上方が広がるように傾斜姿勢で設けられたものであり、
前記左右一対の可動押さえ板は、前記左右一対のガイド長穴に伴って上方に移動するに従って離間し、下方に移動するに従って接近するものであってもよい。
【0010】
このような態様の側面弾性材セット治具を採用すれば、別途の動力や付勢手段等を設けなくても、可動押さえ板がガイド長穴に沿って昇降するだけで、可動押さえ板による側面弾性材の保持と保持解除とを簡単に切り替えることができる。従って、操作が簡単で使い易く安価な側面弾性材セット治具を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明の側面弾性材セット治具において、前記保持機枠は、前後左右の四方を囲んだ側部機枠と、該側部機枠によって囲まれた空間の底部に取り付けられる底板と、を備えたものであり、
前記側部機枠の前面板と後面板は、前記昇降案内板の左右の案内部を連結している連結部を兼用するものである態様も好ましい態様の1つである。
【0012】
このような態様の側面弾性材セット治具を採用すれば、部品の有効利用により部品点数を減らして軽量、コンパクトで安価な側面弾性材セット治具を提供することができる。
【0013】
またさらに、本発明の側面弾性材セット治具において、前記昇降案内板は、斜め上方に向けて延びる左右の案内部と、該左右の案内部の下部を連結している連結部と、を備えたものであり、
前記昇降案内板は、前記コンクリート枕木の軌間幅方向の外側に配置される外側昇降案内板と、該軌間幅方向の内側に配置される内側昇降案内板の2種類からなるものであり、
前記外側昇降案内板と前記内側昇降案内板の少なくとも一方は、前記連結部の左右に、前記側面弾性材の上面に当接して該側面弾性材の上方への移動を規制する、下方に向けて延びる凸部が設けられたものであってもよい。
【0014】
このような態様の側面弾性材セット治具を採用すれば、連結部を介して一体化することによって左右の案内部の機械的強度が向上し、可動押さえ板の確実な保持が可能になる。また、昇降案内板に下方に向けて延びる凸部を設けることによって、コンクリート枕木を設置凹部に設置する際の側面弾性材の上方への移動も規制することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の側面弾性材セット治具において、前記可動押さえ板は、前記コンクリート枕木の軌間幅方向の外側に配置される外側可動押さえ板と、該軌間幅方向の内側に配置される内側可動押さえ板の2種類からなるものであり、
前記2種類の可動押さえ板は、前記ガイド長穴と係合する係合ロッドと、該ガイド長穴とは係合しない連結ロッドと、を使用して一体に連結されて可動枠を構成するものであり、
前記可動枠は、左右対称に一対設けられたものであってもよい。
【0016】
このような態様の側面弾性材セット治具を採用すれば、軌間幅方向に離間して配置される外側可動押さえ板と内側可動押さえ板を、係合ロッドと連結ロッドとによって一体化して可動枠を構成し、さらにこの可動枠を左右対称に一対設けることによって外側可動押さえ板と内側可動押さえ板の単体時の機械的強度を大幅に向上させることが可能になる。これにより、コンクリート枕木のような重量物の設置に際しても、変形のおそれが少ない枠構造を有し、円滑な昇降が可能な可動押さえ板を備える側面弾性材セット治具を提供することが可能になる。
【0017】
また、本発明の側面弾性材セット治具において、前記保持機枠は、前記側面弾性材の上面に当接して、該側面弾性材の上方への移動を規制する回動押さえ板が回動自在に設けられたものであってもよい。
【0018】
このような態様の側面弾性材セット治具を採用すれば、昇降案内板における連結部に設けた凸部との組み合わせにより、コンクリート枕木を設置凹部に設置する際の側面弾性材の上方への移動を一層確実に規制することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来現場において行っていた弾直スラブの組み立てを工場内で行うプレキャスト化を実現することが可能になる。また、軌道スラブの設置凹部に対して側面弾性材を取り付けたコンクリート枕木を設置するに際して、コンクリート枕木から側面弾性材を脱落させることなく、設置凹部に対するコンクリート枕木の位置出しを位置調整しながら正確に、そして円滑、安全、安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】弾直スラブ軌道の構造を示す分解斜視図である。
【
図2】コンクリート枕木の設置装置の一例を示す正面図である。
【
図3】
図2に示すコンクリート枕木の設置装置を示す側面図である。
【
図4】
図2に示すコンクリート枕木の設置装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の側面弾性材セット治具の一例を示す側面図である。
【
図6】本発明の側面弾性材セット治具の一例を示す平面図である。
【
図9】本発明の側面弾性材セット治具の一例を示す斜視図である。
【
図11】側面弾性材の2種の態様を示す横断面図である。
【
図12】他の態様のコンクリート枕木を使用した弾直スラブを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、弾直スラブ軌道の構造を示す分解斜視図である。
図1に示すように、弾直スラブ軌道1は、軌道スラブ3とコンクリート枕木5の間に弾性材7を介在させて組み合わせたものであり、弾性枕木埋込み形スラブ軌道の略称である。具体的には、上面に突起9が設けられたコンクリート道床11と、レール13の敷設方向Yの両端部に凹部15、15が形成されたスラブ版17、及びコンクリート道床11の上面とスラブ版17の底面との間に介在される填充層19を備えた軌道スラブ3と、敷設方向Yに所定の間隔Tをあけて設けられる設置凹部21に対して、その一部が埋め込まれた状態で設置されるコンクリート枕木5と、コンクリート枕木5上に所定の軌間幅Wで設置される一対のレール13と、レール13をコンクリート枕木5上に連結して固定するレール締結装置23と、設置凹部21の軌間幅方向(前後方向とも称する)Xの両端部に設けられる底面弾性材7Aと、コンクリート枕木5の軌間幅方向Xの両端部の左右側面に設けられる側面弾性材7Bと、を備えることによって弾直スラブ軌道1は構成されている。
【0023】
本実施形態では、設置凹部21が、スラブ版17の上面に間隔Tをあけて6つ形成された軌道スラブ3が使用されている。軌道スラブ3の長さLは、例えば4mに設定されている。これに加えてこれら6つの設置凹部21に埋め込まれる6本のコンクリート枕木5と、これら6つの設置凹部21に対して2つずつ計12個取り付けられる底面弾性材7Aと、これら6本のコンクリート枕木5に対して4つずつ計24個取り付けられる側面弾性材7Bと、を備えることによって弾直スラブ2が構成されている。
【0024】
次に、
図2~
図4を用いて、コンクリート枕木の設置装置の具体的構成について説明する。
図2は、コンクリート枕木の設置装置25の一例を示す正面図である。
図3は、
図2に示すコンクリート枕木の設置装置25の側面図であり、
図4は、
図2に示すコンクリート枕木の設置装置25の平面図である。
【0025】
コンクリート枕木の設置装置25(以下、設置装置25と称することがある)は、軌道スラブ3の設置凹部21に対して、側面弾性材7Bを取り付けた状態のコンクリート枕木5を、位置調整して組み付ける場合に使用される装置である。
【0026】
図2~
図4に示すように、具体的には、上部フレーム27、中間フレーム29及び脚部フレーム31を備え、軌道スラブ3を囲むように軌道スラブ3上に設置される移動可能な支持架台33と、手動式のチェーンブロック35及び吊下げフック37を備え、支持架台33の上部フレーム27に対して複数組取り付けられる吊持ユニット39と、吊持ユニット39の吊下げフック37が係止される吊下げ金具41、及び側面弾性材7Bをコンクリート枕木5に取り付けた状態で保持する側面弾性材押さえ機構43を備えた、本発明の側面弾性材セット治具45と、を有するものである。
【0027】
本実施形態では、吊持ユニット39と側面弾性材セット治具45は、それぞれ前後6組ずつ計12組設けられている。これら前後6組ずつ設けられる吊持ユニット39と側面弾性材セット治具45は、軌道スラブ3に形成されている6つの設置凹部21の敷設方向Yの間隔Tに合わせて所定ピッチで取り付けられている。
【0028】
以下、設置装置25の構成部材について具体的に説明する。
【0029】
支持架台33は、例えばH形鋼等の形鋼材を矩形枠状に組み合わせて水平に配置した上部フレーム27を備えている。上部フレーム27を構成している前後の形鋼材の上面には、吊下げ用の係止穴を備えた吊下げ金具47が4個設けられている。これら4個の吊下げ金具47は、クレーンの吊下げフック、あるいは吊下げフックに係止されるワイヤ等を係止させ、支持架台33を上方に吊り上げて移動させる場合に使用するものであり、第2の移動手段に相当する。
【0030】
また、上部フレーム27を構成している前後の形鋼材の下面には、後述する吊持ユニット39を吊り下げるための係止穴を備えた係止金具51が、間隔Tに対応した所定ピッチで前後に6つずつ計12個設けられている。そして、これらの係止金具51を利用して手動式のチェーンブロック35が計12組、間隔Tに対応した所定ピッチで中間フレーム29を挟んで、その前後に6組ずつ振り分けられて設けられている。
【0031】
支持架台33は、H形鋼等の形鋼材を矩形枠状に組み合わせて水平に配置した、上部フレーム27より一回り小さな中間フレーム29を備えている。中間フレーム29は、上部フレーム27に対して設けられる複数本の梁材と、これらの梁材から2本ずつ鉛直方向下方に延びる吊下げ杆と、によって構成される支持部材49によって、支持架台33の中間付近の高さに吊り下げられた状態で支持されている。
【0032】
中間フレーム29を構成している前後の形鋼材の下面には、吊持したコンクリート枕木5の上部側面に当接してコンクリート枕木5の敷設方向Yの移動を規制する左右一対の引込みガイド53が、間隔Tに対応した所定ピッチで前後6組ずつ計12組設けられている。なお、引込みガイド53の内側の下部は斜めに傾斜した案内面になっていて、コンクリート枕木5が左右一対の引込みガイド53の中心に導かれるように案内している。また、引込みガイド53の内側の上部は、垂直面になっていて、コンクリート枕木5の上部側面に直接当接してその移動を規制する規制面になっている。この他、本実施形態では、左右一対の引込みガイド53の間の中間フレーム29の下面には、例えば厚さ10mmの合成ゴム製の弾性板材55が貼設されている。
【0033】
さらに支持架台33は、上部フレーム27の4隅のコーナ部において、鉛直方向下方に向けて延びる4本の脚部フレーム31を備えている。この脚部フレーム31もH形鋼等の形鋼材によって構成されており、その下端にはフリーキャスター等によって構成される車輪57が設けられている。この車輪57は、工場内の床面上を転がって、支持架台33が自由に移動できるように構成するものであり、第1の移動手段に相当する。
【0034】
吊持ユニット39は、手動式のチェーンブロック35と吊下げフック37を備えている。チェーンブロック35は、上部フレーム27の下面に取り付けられている係止金具51に係止される本体59と、この本体59から下方に向けて繰り出されて上下する連結チェーン61と、連結チェーン61の手前に配置されるループ状の操作チェーン62と、を備えている。吊下げフック37は、連結チェーン61の下端に取り付けられている。
【0035】
次いで、
図5~
図9も参照しつつ、本発明の側面弾性材セット治具45の具体的構成について説明する。
【0036】
図5は、本発明の側面弾性材セット治具45を示す側面図であり、
図6は、本発明の側面弾性材セット治具45を示す平面図である。
図7は、
図6中のA-A矢視図であり、
図8は、
図6中のB-B断面図である。また、
図9は、本発明の側面弾性材セット治具45を示す斜視図である。
【0037】
図5~
図9に示すように、本発明の側面弾性材セット治具45は、吊持ユニット39の吊下げフック37が係止される吊下げ金具41と、側面弾性材7Bをコンクリート枕木5に取り付けた状態で保持する側面弾性材押さえ機構43と、を備えている。
【0038】
側面弾性材押さえ機構43は、コンクリート枕木5の上面に当接して保持する保持機枠63と、保持機枠63と一体に設けられ、左右一対のガイド長穴64を有する昇降案内板65と、ガイド長穴64に沿って昇降する左右一対の可動押さえ板67と、を備えている。
【0039】
左右一対のガイド長穴64は、上方に向かうに従い広がるように傾斜姿勢で設けられている。このため、左右一対の可動押さえ板67は、上方に移動するに従って離間し、下方に移動するに従って接近する。
【0040】
吊下げ金具41は、矩形平板状をしたベース板69の上面に係止穴を有するブラケット71を立ち上げた形状のものである。ベース板69に設けた貫通穴に固定ボルト73を貫通させ、保持機枠63によって保持されている部位のコンクリート枕木5に予め形成されているネジ穴に螺合させる。これにより、コンクリート枕木5は、保持機枠63と吊下げ金具41と一体になって、吊持ユニット39によって吊持される。
【0041】
保持機枠63は、前後左右の四方を衝立状の板材によって囲まれた側部機枠75と、側部機枠75によって囲まれた空間の底部に取り付けられる底板77と、を備えている。本実施形態では、側部機枠75の前面板と後面板を、昇降案内板65の左右の案内部79L、79Rを連結している連結部81と兼用する形で使用している。
【0042】
昇降案内板65は、斜め上方に向けて延びる左右の案内部79L、79Rと、これらの下部を連結している連結部81と、を備える正面視凹字形をした板状の部材である。昇降案内板65は、コンクリート枕木5の軌間幅方向Xの外側に配置される外側昇降案内板65Aと、コンクリート枕木5の軌間幅方向Xの内側に配置される内側昇降案内板65Bの2種類が設けられている。
【0043】
このうち外側昇降案内板65Aの連結部81の左右には、下方に向けて延びる凸部83、83が設けられている。この凸部83、83は、後述する可動押さえ板67が上昇する際に側面弾性材7Bを引き連れて上方に移動させることがないように、側面弾性材7Bの上面を押さえ付けているものである。
【0044】
また、左右の案内部79L、79Rには、ガイド長穴64が形成されている。外側昇降案内板65Aと内側昇降案内板65Bの前後のガイド長穴64、64に係合する2本の係合ロッド85、86を介して、左右の可動押さえ板67が、斜め上方に向けて離間しながら上昇し、斜め下方に向けて接近しながら下降する。
【0045】
可動押さえ板67は、コンクリート枕木5の軌間幅方向Xの外側に配置される外側可動押さえ板67Aと、コンクリート枕木5の軌間幅方向Xの内側に配置される内側可動押さえ板67Bの2種類を有している。さらにこれら2種類の可動押さえ板67A、67Bを、2本の係合ロッド85、86と、ガイド長穴64とは係合しない1本の連結ロッド87と、をボルト84(
図6参照)によって一体的に締結したものが可動枠89となる。この可動枠89が、ガイド長穴64に沿って昇降するように構成されている。可動枠89は、左右対称に一対設けられており、これらを区別するときには左側のものを89L、右側のものを89Rとして識別する。
【0046】
可動押さえ板67は、昇降案内板65の左右の案内部79L、79Rに沿って延びる長尺の板状の部材である。また、2本の係合ロッド85、86と1本の連結ロッド87とに接続される接続部91を上部に有し、下部に側面弾性材7Bに直接当接してコンクリート枕木5側に押さえる押さえ部93が設けられている。押さえ部93は、コンクリート枕木5の両端の膨らんだ頭部5aの形状に伴う幅寸法の変化に対応するため、外側可動押さえ板67Aでは、ガイド長穴64の延長線上に直線的に延びている。一方、内側可動押さえ板67Bでは、その膨らみ分、外方にオフセットしてからガイド長穴64と平行に斜め下方に向けて直線的に延びる屈曲した形状に形成されている。
【0047】
さらに、側面弾性材セット治具45には、可動押さえ板67が上昇する際の側面弾性材7Bの上方への移動を、より確実に防止するために、回動押さえ板95が側部機枠75の左右の側板に対して回動自在に設けられている。具体的には、側板の外方に所定長さの円筒スリーブ状のスペーサ97を介して、例えば「へ」の字状に配置された2枚の翼片を有する回動押さえ板95が、ボルト、ナット99によって緩く締結することによって設けられている。
【0048】
このように構成される側面弾性材セット治具45は、吊持ユニット39と同様、支持架台33の中間フレーム29を挟んで、その前後に6組ずつ計12組が設けられている。
【0049】
次に、
図10及び
図11も参照しつつ、底面弾性材7Aと側面弾性材7Bの構成と配置を説明する。
図10は、側面弾性材7Bを示す斜視図であり、
図11は、側面弾性材7Bの2種の態様を示す横断面図である。
【0050】
図1,
図2及び
図4等に示すように、底面弾性材7Aは、例えば厚さ10mmの矩形状の板状の部材であり、硬質の合成ゴム等によって形成されている。底面弾性材7Aは、コンクリート枕木5の前後の膨らんだ頭部5aに対応した位置の軌道スラブ3の設置凹部21の底面に配置されている。
【0051】
図10に示すように、側面弾性材7Bは、コンクリート枕木5の膨らんだ頭部5aの形状に沿うように屈曲した形状の板状の部材である。また、
図11(a)に示すように、軌道スラブ3側に軟質ゴム層101を配し、コンクリート枕木5側に硬質ゴム層103を配した2層の合成ゴム製の部材である。
【0052】
図10及び
図11(a)に示すように、硬質ゴム層103には、例えば円錐台形状の凸部105が3つ設けられており、これらの凸部105は、コンクリート枕木5に形成されている3つの凹部5cに嵌まるように構成されている。なお、
図5及び
図6に示すように、外側可動押さえ板67A及び内側可動押さえ板67Bの側面弾性材7Bに対する作用位置は、両端の凸部105が設けられている部位に設定されている。また、回動押さえ板95の側面弾性材7Bに対する作用位置は、中央の凸部105が設けられている部位近傍の側面弾性材7Bの上面に設定されている。
【0053】
図11(a)に示すように、側面弾性材7Bは、予め所定の形状に成形しておいた軟質ゴム層101を硬質ゴム層103に貼り合わせて製作する。また、
図11(b)に示すように、硬質ゴム層103と軌道スラブ3との間にできる隙間に樹脂を注入して軟質ゴム層101を形成することで側面弾性材7Bを製作することも可能である。
【0054】
次に、このようにして構成される本発明の側面弾性材セット治具45を使用することによって実行される弾直スラブの組立手順について具体的に説明する。
【0055】
最初に、6本のコンクリート枕木5に12組の側面弾性材セット治具45をセットし、操作チェーン62を操作して、コンクリート枕木5を上方に吊り上げていく。この際、コンクリート枕木5を左右一対の引込みガイド53によって案内し、コンクリート枕木5の上面が中間フレーム29下面の弾性板材55に当接し、コンクリート枕木5の上部側面が引込みガイド53の上部の規制面によって保持される状態までコンクリート枕木5を吊り上げて保持させる。
【0056】
次いで、第1の移動手段である車輪57や第2の移動手段である吊下げ金具47を使用して、コンクリート枕木5を設置する軌道スラブ3が存する所定の位置に設置装置25を移動させる。
【0057】
また、
図3に示すように、コンクリート枕木5の設置に先立って、軌道スラブ3の、例えば前方の端面に片端当て治具107をボルト等によって取り付けておいてもよい。なお、片端当て治具107の当て面には必要に応じて、一例として厚さ5mm程度のゴム当て109が取り付けられる。この片端当て治具107は、コンクリート枕木5の端面と軌道スラブ3の端面とを揃える位置合わせの目的で必要に応じて使用される。
【0058】
次に、作業者は前後のチェーンブロック35の操作チェーン62を操作して基準となる最初の1本のコンクリート枕木5を下降させて行く。この時、軌道スラブ3とコンクリート枕木5に位置ずれがある場合には、コンクリート枕木5と支持架台33を含めた設置装置25全体の位置を移動させる。あるいは、手動式のチェーンブロック35により吊り上げているコンクリート枕木5の位置を微調整しながら、コンクリート枕木5を軌道スラブ3の設置凹部21に導いて行く。このように、手動式のチェーンブロック35を採用しているため、細かな位置調整や下降させる速さの微妙な調整にも対応することができる。
【0059】
図7及び
図8に示すように、コンクリート枕木5が設置凹部21への進入を開始すると、可動押さえ板67は、設置凹部21側傍の軌道スラブ3の上面に当接し、それ以上の下降が規制される。以後はコンクリート枕木5と一体の保持機枠63と昇降案内板65のみが下降し、コンクリート枕木5の底面が設置凹部21底面に貼設されている底面弾性材7Aに当接したところでその下降は停止する。
【0060】
なお、この状態に至ると、可動押さえ板67の押さえ部93による側面弾性材7Bの押さえは解除されている。また、可動押さえ板67は、軌道スラブ3の上面に当接後のコンクリート枕木5の下降によって、昇降案内板65に対して相対的に上昇することになる。しかしながら、凸部83と回動押さえ板95によって側面弾性材7Bの上方への移動は規制され、側面弾性材7Bの凸部105は、コンクリート枕木5の凹部5cに嵌まったままで、良好な取付け状態を維持したままコンクリート枕木5の設置が完了する。
【0061】
以下、同様の操作を繰り返してすべてのコンクリート枕木5の設置を行うが、最初に設置したコンクリート枕木5によって軌道スラブ3に対する設置装置25の位置は定まっている。このため、後続のコンクリート枕木5の設置は円滑に実行される。
【0062】
そして、すべてのコンクリート枕木5の設置が完了した後、固定ボルト73をコンクリート枕木5から取り外して設置装置25との接続を解除する。これにより、弾直スラブ2の一連の組み立てが完了する。また、側面弾性材7Bと軌道スラブ3との間に隙間が生じている場合には、適宜その隙間に樹脂を注入して、埋めることも可能である。
【0063】
そして、このようにして構成される本発明の側面弾性材セット治具45によれば、従来現場において行っていた軌道スラブ3とコンクリート枕木5の組み立てを工場等で事前に行うことができる。このため、現場で行う弾直スラブ軌道1の敷設が円滑に実行されるようになる。
【0064】
また、軌道スラブ3の設置凹部21に対してコンクリート枕木5を設置する際、側面弾性材押さえ機構43により側面弾性材7Bがしっかりと保持されているから側面弾性材7Bをコンクリート枕木5から脱落させることなく、コンクリート枕木5の設置を円滑に実行することが可能になる。また、手動式のチェーンブロック35を使用した吊持ユニット39を採用すれば、コンクリート枕木5及び側面弾性材セット治具45の位置調整も容易になる。
【0065】
本発明の側面弾性材セット治具45は、前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、前述した実施形態では長さ4mの軌道スラブ3を使用して6本のコンクリート枕木5を設置し得る設置装置25に適用したが1~5本用、あるいは7本または8本用等、コンクリート枕木5の設置本数の異なる設置装置25に適用することも可能である。
【0066】
また、前述した実施形態では、外側昇降案内板65Aの連結部81のみに凸部83を設けたが、内側昇降案内板65Bの連結部81のみに凸部83を設けることも可能である。また、外側昇降案内板65Aと内側昇降案内板65Bの双方に凸部83を設けることも可能である。なお、前述した実施形態では、手動式のチェーンブロック35を用いているが、電動式のチェーンブロックを用いてもよい。
【0067】
さらに、外側可動押さえ板67Aと内側可動押さえ板67Bとの間に設けた係合ロッド85に代えて、外側可動押さえ板67Aと内側可動押さえ板67Bのそれぞれに設けた図示しない係合コロを採用し、これらの係合コロをガイド長穴64に係合させることによって、外側可動押さえ板67Aと内側可動押さえ板67Bを昇降させるようにすることも可能である。
【0068】
また、前述した実施形態では、脚部フレーム31の下端に取り付ける車輪57として、工場内の床面を自由に移動できるフリーキャスターを使用したが、工場内の床面に敷設した図示しないレール上を移動する方式の車輪57とすることも可能である。
【0069】
さらに、前述した実施形態では、頭部5aと連結部が一体化されたコンクリート一体構造のコンクリート枕木5を使用したが、
図12に示すように、コンクリート製の2つの頭部5aを、例えば鋼材によって形成される連結杆5bで連結した構造のRC2ブロック式のコンクリート枕木5Aを使用することも可能である。また、このようなコンクリート枕木5の構造の違い等に対応して吊下げ金具41の構造も適宜変更することができる。
【0070】
また、上部フレーム27に対して、係止金具51を敷設方向Yや軌間幅方向(前後方向)Xに移動可能とし、吊持ユニット39の吊持位置を調整できる態様としてもよい。また、中間フレーム29の大きさや形状を可変することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 弾直スラブ軌道
2 弾直スラブ
3 軌道スラブ
5 コンクリート枕木
7 弾性材
11 コンクリート道床
17 スラブ版
21 設置凹部
25 コンクリート枕木の設置装置
37 吊下げフック
39 吊持ユニット
41 吊下げ金具
43 側面弾性材押さえ機構
45 側面弾性材セット治具
53 引込みガイド
63 保持機枠
64 ガイド長穴
65 昇降案内板
67 可動押さえ板
73 固定ボルト
75 側部機枠
77 底板
79 案内部
81 連結部
83 凸部
84 ボルト
85 係合ロッド
86 係合ロッド
87 連結ロッド
89 可動枠
91 接続部
93 押さえ部
95 回動押さえ板
105 凸部
X 軌間幅方向(前後方向)
Y 敷設方向
W 軌間幅
T 間隔
L 長さ