(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081914
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193144
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】荻本 裕基
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC31
3D131LA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイヤ使用時にタイヤが変形しても、インナーライナーから電子部品ユニットが剥離するような不具合の発生を抑制することができるタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤは、インナーライナー29と、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられた電子部品ユニット50と、インナーライナー29と電子部品ユニット50とを接合する加硫接着剤60と、を備え、電子部品ユニット50は、電子部品と、電子部品の少なくとも一部を覆う可撓性フィルム45を有し、加硫接着剤60は、厚みが30μm以下である。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーライナーと、
前記インナーライナーのタイヤ内腔面に貼り付けられた電子部品ユニットと、
前記インナーライナーと前記電子部品ユニットとを接合する加硫接着剤と、を備え、
前記電子部品ユニットは、電子部品と、前記電子部品の少なくとも一部を覆う可撓性フィルムを有し、
前記加硫接着剤は、厚みが30μm以下である、タイヤ。
【請求項2】
前記加硫接着剤の硬度は、前記インナーライナーの硬度以上であり、かつ前記可撓性フィルムの硬度以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記電子部品は、ICチップと、アンテナとを有し、前記アンテナは、フレキシブル基板に所定のパターンでプリントされた導電性部材により構成されたプリントアンテナである、請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記アンテナは長手方向を有し、
前記電子部品ユニットは、前記アンテナの長手方向が、タイヤの周方向に対応する方向に向かうような向きで配置されている、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記電子部品ユニットは、前記インナーライナーと密着した状態で形成された屈曲形状を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記屈曲形状は、タイヤ内腔側またはタイヤ外表面側に突出する突部である、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記屈曲形状の段差寸法は、前記加硫接着剤の厚みより大きい、請求項5または請求項6に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグ等の電子部品を備えるタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに配置されたRFIDタグと、外部機器としてのリーダとが通信を行うことにより、タイヤの製造管理、使用履歴管理等を行うことができる。例えば特許文献1には、RFID部品と接着層とを備えるタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される技術によれば、RFID装置のような電子部品ユニットをタイヤへ組み込むことができる。ここで、RFIDタグユニット等の電子部品ユニットをインナーライナーのタイヤ内腔面に貼り付ける場合においては、タイヤ使用時にタイヤが変形したときに、電子部品ユニットがインナーライナーから剥がれる等の不具合が発生しないようにするための考慮を行う必要がある。しかしながら、特許文献1に示される技術においては、その点の考慮が不十分である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ使用時にタイヤが変形しても、インナーライナーから電子部品ユニットが剥離するような不具合の発生を抑制することができるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤは、インナーライナーと、前記インナーライナーのタイヤ内腔面に貼り付けられた電子部品ユニットと、前記インナーライナーと前記電子部品ユニットとを接合する加硫接着剤と、を備え、前記電子部品ユニットは、電子部品と、前記電子部品の少なくとも一部を覆う可撓性フィルムを有し、前記加硫接着剤は、厚みが30μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤ使用時にタイヤが変形しても、インナーライナーから電子部品ユニットが剥離するような不具合の発生を抑制することができるタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図3A】本実施形態の電子部品ユニットを説明するための図である。
【
図3B】
図3AのIIIB-IIIB断面を示す断面図である。
【
図3C】
図3AのIIIC-IIIC断面を示す断面図である。
【
図4A】インナーライナーに貼り付けられた電子部品ユニットを示す図である。
【
図5】ビードコアとRFIDタグの距離と、通信距離との関係を示す図である。
【
図6】タイヤが変形した場合における、インナーライナーのタイヤ内腔面の動きを説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係るタイヤの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図10A】第3実施形態に係るタイヤにおける、インナーライナーに貼り付けられた電子部品ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0010】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
【0011】
なお、
図1の断面図は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
なお、上述の内容は、
図2、8、9についても同様である。
【0013】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、ビード11の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール12と、サイドウォール12の各々のタイヤ径方向外側に連なって踏面(路面との接地面)13Cを構成するタイヤの周方向に延びる環状のトレッド13と、を備える。
【0014】
図2に、
図1に示される本実施形態のタイヤ1における、ビード11およびサイドウォール12のタイヤ径方向内側領域周辺の拡大断面図を示す。
【0015】
ビード11は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを備える。
【0016】
ビードコア21は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、ホイールのリム100に固定する役目を果たす部材である。
【0017】
ビードフィラー22は、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出する、先端先細り形状のゴム部材である。ビードフィラー22は、タイヤ径方向外側端22Aと、タイヤ径方向内側端22Bを有する。ビードフィラー22のタイヤ径方向内側端22Bは、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aと接触している。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー22は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードフィラー22を構成するゴムのモジュラスは、少なくとも後述のインナーライナー29を構成するゴムおよびサイドウォールゴム30を構成するゴムのモジュラスよりも高い。ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0018】
タイヤ1の内部には、一対のビード11間を架け渡されたカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、タイヤ1の骨格となるプライを構成しており、一対のビード11間を、一対のサイドウォール12およびトレッド13を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0019】
カーカスプライ23は、一方のビード11から他方のビード11に延び、トレッド13とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、サイドウォール12の領域において、プライ本体24に重ね合わされている。プライ折り返し部25は、端部25Aを有する。本実施形態においては、プライ折り返し部25の端部25Aは、サイドウォール12の領域に位置している。
【0020】
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。
【0021】
なお、本実施形態のカーカスプライ23は、1層のプライ本体24を備える1層構造のカーカスプライ23である。しかしながら、カーカスプライ23は、複数層のプライ本体24を備える複数層構造のカーカスプライ23であってもよい。
【0022】
ビード11は、リムストリップゴム32をさらに備える。
【0023】
リムストリップゴム32は、ビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23を覆うように設けられている。より詳細には、リムストリップゴム32は、ビードコア21周辺のカーカスプライ23のタイヤ幅方向内側、タイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側を覆うように設けられている。リムストリップゴム32は、プライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置された第1の端部32Aと、プライ本体24のタイヤ幅方向内側に配置された第2の端部32Cと、を有する。ここで、第1の端部32Aは、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aを構成する。リムストリップゴム32は、その一部が、タイヤ1の外壁面を構成する。また、リムストリップゴム32は、ホイールにタイヤ1が装着される際に、そのタイヤ幅方向外側およびタイヤ径方向内側が、ホイールのリム100と接触するゴム部材である。リムストリップゴム32を構成するゴムのモジュラスは、少なくとも後述のインナーライナー29を構成するゴムおよびサイドウォールゴム30を構成するゴムのモジュラスよりも高い。
【0024】
サイドウォール12は、カーカスプライ23の幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム30を備える。
【0025】
サイドウォールゴム30は、タイヤ1の外壁面を構成するゴム部材である。サイドウォールゴム30は、タイヤ径方向外側端30Aと、タイヤ径方向内側端30Bを有する。このサイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0026】
トレッド13は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されたベルトとしてのスチールベルト26と、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ27と、キャッププライ27のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴム28と、を備える。
【0027】
スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド13と路面の接地状態が良くなる。本実施形態のスチールベルト26は、内側のスチールベルト261および外側のスチールベルト262による2層構造で構成されている。しかしながら、スチールベルト26は、1層構造であってもよいし、3層以上の構造であってもよい。なお、スチールコードを用いたスチールベルト26に替えて、アラミド繊維を用いたタイヤコード等を用いたベルトを用いてもよい。なお、本実施形態の2層構造のスチールベルト26は、内側のスチールベルト261が外側のスチールベルト262よりも幅広である。したがって、内側のスチールベルト261のタイヤ幅方向外側端が、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aを構成する。
【0028】
キャッププライ27は、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置された部材であり、ベルト補強層としての機能を有する。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。本実施形態のキャッププライ27は、外側のキャッププライ271および内側のキャッププライ272による2層構造で構成されている。内側のキャッププライ272は、タイヤ幅方向外側領域のみに存在し、タイヤ幅方向中央部は中抜きされている。しかしながら、内側のキャッププライ272は、中抜き部を有しない外側のキャッププライ271と同様の構造のキャッププライであってもよい。また、キャッププライ27は、1層構造であってもよいし、3層以上の構造であってもよい。本実施形態においては、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。
【0029】
トレッドゴム28は、踏面(路面との接地面)13Cを構成する部材である。トレッドゴム28は、タイヤ幅方向外側端28Aを有する。トレッドゴム28の踏面13Cには、複数の溝で構成されるトレッドパターン(不図示)が設けられている。
【0030】
ビード11、サイドウォール12、トレッド13において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0031】
ここで、
図1に示されるように、サイドウォール12のサイドウォールゴム30は、トレッド13に向かって延出している。一方、トレッド13のトレッドゴム28は、サイドウォール12に向かって延出している。その結果、カーカスプライ23の一部領域のタイヤ外表面側において、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが積層された状態となっている。より詳細には、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28とが共に存在する領域、すなわちサイドウォール12とトレッド13の移行領域において、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが、順に積層された状態となっている。
【0032】
図1および
図2に示されるように、ビード11およびサイドウォール12におけるカーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32と、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側に配置されたサイドウォールゴム30とが配置されている。リムストリップゴム32のタイヤ幅方向外側の表面およびサイドウォールゴム30のタイヤ幅方向外側の表面は、タイヤ1の外表面を形成している。
【0033】
本実施形態においては、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりも、タイヤ径方向外側に配置されている。これにより、リム装着部付近で局所的な変形が生じることをより効果的に抑制することができる。
【0034】
図1および
図2に示されるように、ビード11とサイドウォール12の移行領域付近においては、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、リムストリップゴム32とサイドウォールゴム30とが、順に積層された状態となっている。また、この移行領域付近には、タイヤ幅方向外側に突出する頂部33Aを有してタイヤ周方向に環状に連続して延びるリムプロテクタ33が設けられている。本実施形態においては、リムストリップゴム32とサイドウォールゴム30の境界部分にリムプロテクタ33の頂部33Aが設けられている。すなわち、リムプロテクタ33の頂部33Aの位置は、サイドウォールゴム30のタイヤ径方向内側端30Bの位置と一致している。リムプロテクタ33は、外傷からリムを保護する機能を有する。
【0035】
本実施形態のタイヤ1は、電子部品ユニット50を有する。電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられている。本実施形態の電子部品ユニット50は、例えばRFIDタグユニットである。
【0036】
図3A~
図3Cは、電子部品ユニット50を説明するための図である。
図3Aは、電子部品ユニット50を、一方の面から見た図である。
図3Bは、
図3AのIIIB-IIIB断面を示す断面図である。
図3Cは、
図3AのIIIC-IIIC断面を示す断面図である。
【0037】
電子部品ユニット50は、電子部品40と、電子部品40の少なくとも一部を覆う可撓性フィルム45と、を備える。なお、
図3Aにおいては、電子部品40は、可撓性フィルム45を構成する後述の第1の可撓性フィルム451に覆われているため、かくれ線で示されている。
【0038】
電子部品40は、フレキシブル基板41と、ICチップ42と、アンテナ43と、を備える。本実施形態の電子部品40は、例えばRFIDタグである。
【0039】
フレキシブル基板41は、柔軟性を有するフィルム状の基板である。フレキシブル基板41の材料としては、例えばポリイミド樹脂が用いられる。
【0040】
本実施形態のICチップ42は、RFIDチップである。ICチップ42は、フレキシブル基板41に実装されている。ICチップ42は、通信回路および記憶部を備える。ICチップ42の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0041】
アンテナ43は、フレキシブル基板41に所定のパターンでプリントされた導電性部材により構成されたプリントアンテナである。この所定のパターンは、例えば、直線状、波状、渦巻き状であってもよい。アンテナ43は、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。アンテナ43は、ICチップ42と電気的に接続されている。アンテナ43を構成する材料は、例えば銅などの導電性部材であってもよい。アンテナ43として、このようなプリントアンテナを用いることにより、電子部品40および電子部品ユニット50の厚みを薄くすることができる。
【0042】
なお、アンテナ43は、プリントアンテナに限らず、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状のアンテナ等、各種のアンテナであってもよい。この場合は、電子部品40は、フレキシブル基板41を有していなくてもよい、すなわち、電子部品40は、ICチップ42およびアンテナ43によって構成されていてもよい。
【0043】
このように、本実施形態の電子部品40は、少なくともICチップ42と、アンテナ43と、を備えている。これにより、電子部品40は、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。本実施形態の電子部品40は、パッシブ型のトランスポンダであってもよい。
【0044】
本実施形態の可撓性フィルム45は、第1の可撓性フィルム451と、第2の可撓性フィルム452と、を有する。第1の可撓性フィルム451は、電子部品40の一方の面(表面)を覆う。第2の可撓性フィルム452は、電子部品40の他方の面(裏面)を覆う。すなわち、電子部品40は、可撓性フィルム45を構成する第1の可撓性フィルム451および第2の可撓性フィルム452によって挟み込まれている。なお、電子部品40の一方の面(表面)は、フレキシブル基板41の表面であり、ICチップが実装されている実装面である。フレキシブル基板41の表面には、アンテナ43もプリントされている。一方、電子部品40の他方の面(裏面)は、フレキシブル基板41の裏面であり、ICチップ42の非実装面である。
【0045】
なお、本実施形態に示すように、電子部品40は、第1の可撓性フィルム451および第2の可撓性フィルム452によって構成されている可撓性フィルム45によって完全に覆われていることが好ましい。しかしながら、電子部品40は、その少なくとも一部が、可撓性フィルム45によって覆われていればよい。例えば、可撓性フィルム45を第1の可撓性フィルム451のみによって構成し、電子部品40の一方の面(表面)、すなわち、フレキシブル基板41の実装面のみが、第1の可撓性フィルム451によって覆われる態様としてもよい。これによっても、電子部品40が保護される。
【0046】
可撓性フィルム45を構成する第1の可撓性フィルム451および第2の可撓性フィルム452は、樹脂フィルムである。第1の可撓性フィルム451および第2の可撓性フィルム452は、例えばポリイミドフィルムであることが好ましい。ポリイミドフィルムは、耐熱性に優れ、適度な可撓性およびバネ性を有するため、電子部品40を保護する部材として好適である。
【0047】
第1の可撓性フィルム451の厚みt1および第2の可撓性フィルム452の厚みt2はそれぞれ、50μm以上750μm以下であることが好ましい。可撓性フィルム45全体の厚みt3、すなわち第1の可撓性フィルム451と第2の可撓性フィルム452を重ね合わせた部分の厚みt3は、100μm以上1500μm以下であることが好ましい。これにより、電子部品40を適切に保護しつつ、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの形状の変化に追従する適度な可撓性を持たせることができる。なお、可撓性フィルム45を1枚の可撓性フィルム、例えば第1の可撓性フィルム451のみにより構成する場合は、可撓性フィルム45の厚みは、50μm以上750μm以下であってもよい。可撓性フィルム45全体の厚みは、50μm以上1500μm以下であってもよい。
【0048】
図4Aおよび
図4Bは、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられた電子部品ユニット50を示す図である。
図4Aは、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられた電子部品ユニット50を、タイヤ内腔からタイヤ外表面側に向かって見たときの図である。
図4Bは
図4AのIVB-IVB断面を示す断面図である。
【0049】
図4Bに示すように、電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに、加硫接着剤60を介して貼り付けられている。
【0050】
加硫接着剤60は、ゴム成分に加硫促進剤および受酸剤を配合したものであってもよい。例えば、加硫接着剤60は、高分子材料、有機材料およびフィラーを組成として、キシレン等の有機溶剤系に分散させたものであってもよい。高分子材料、有機材料としては、ハロゲン系ポリマー等が用いられる。フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ等が用いられる。
【0051】
インナーライナー29と電子部品ユニット50を接合する加硫接着剤60の厚みは、30μm以下であることが好ましい。加硫接着剤60の厚みが30μmを超えると、加硫後の加硫接着剤60の可撓性が低下し、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの形状の変化に追従しにくくなる。加硫接着剤60の厚みを30μm以下とすることで、加硫接着剤60の適度な可撓性が確保され、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの形状の変化に追従しやすくなる。これにより、タイヤ使用時にタイヤ1が変形しても、インナーライナー29から電子部品ユニット50が剥離するような不具合の発生を抑制することができる。加硫接着剤60の厚みは、より好ましくは、10μm以上30μm以下である。厚みを10μm以上とすることで、接着力が高まり、電子部品ユニット50の端部等が部分的に剥がれてしまうような状況の発生を抑制することができる。
【0052】
なお、加硫接着剤60の厚みは、可撓性フィルム45の厚みよりも薄いことが好ましい。これにより、加硫接着剤60自体の可撓性の低さを原因として、電子部品ユニット50が、インナーライナー29から剥離するような不具合の発生を抑制することができる。
【0053】
ここで、加硫接着剤60の加硫後の硬度は、インナーライナー29の硬度以上であり、かつ可撓性フィルム45の硬度以下であることが好ましい。これにより、硬さの勾配が緩やかとなり、衝撃緩衝効果が得られる。よって、タイヤ1が繰り返し変形しても、電子部品40にかかる応力が抑制され、電子部品40の耐久性を高めることができる。
【0054】
このように、電子部品40を2枚の可撓性フィルム451、452によって挟み込むことにより、厚みが薄く、かつ、その後の貼り付け作業のしやすい電子部品ユニット50を形成することができる。
【0055】
なお、電子部品ユニット50は、電子部品ユニット50の長手方向、すなわちアンテナ43の長手方向が、タイヤ1の周方向に対応する方向に向かうような向きで配置されている。すなわち、アンテナ43の長手方向が、タイヤ1の周方向またはタイヤ1の周方向に対して接線の方向、すなわち
図1、
図2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に設けられている。このような方向となるように電子部品ユニット50を配置することにより、タイヤ使用時にタイヤ1が変形しても、電子部品40に応力がかかりにくい。
【0056】
電子部品ユニット50は、少なくともその一部が、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mm以上離れたタイヤ径方向位置に配置される。
図1および
図2を用いて説明すると、本実施形態の電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cにおいて、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に所定の距離L1離れたタイヤ径方向位置P1よりも、タイヤ径方向外側に配置される。ここで、所定の距離L1は5.0mmである。なお、電子部品40の全ての部分が、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mm以上離れたタイヤ径方向位置に配置されることが好ましい。
【0057】
図5は、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aと電子部品40としてのRFIDタグの離間距離に対する通信距離の関係を調べた結果を示している。なお、縦軸の通信距離は、最長通信距離を100として通信距離を指数化したものである。この値としては40以上であれば好ましく、より好ましくは60以上である。
【0058】
ビードコア21は、ある。
図5より、電子部品40を、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aから5.0mm以上離して配置すると、好ましい通信距離が得られることが分かる。なお、
図5からは、電子部品40を、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aから10mm以上離して配置すると、より好ましい通信距離が得られることも分かる。
【0059】
以上のように、電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cにおいて、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mm以上離れたタイヤ径方向位置に配置されることが好ましい。これにより、金属製のビードコアの悪影響による通信性能の低下を抑制することができる。
【0060】
さらに、電子部品ユニット50は、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mmだけ離れたタイヤ径方向位置P1よりもタイヤ径方向外側であって、かつビード最大厚み部Tを構成するインナーライナー29のタイヤ内腔面の位置P2よりもタイヤ径方向内側に配置されることが好ましい。例えば、電子部品ユニット50の少なくとも一部が、ビード最大厚み部Tを構成するインナーライナー29のタイヤ内腔面の位置P2よりもタイヤ径方向内側に配置される。すなわち、電子部品ユニット50の少なくとも一部が、
図1および
図2に示される範囲L2の領域内に配置される。より好ましくは、電子部品40の全ての部分が、範囲L2の領域内に配置される。ここで、ビード最大厚み部Tとは、
図1および
図2に示すタイヤ幅方向断面視において、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから法線を引いたときに、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cからタイヤ外表面までの距離(厚み)が一番長くなる部分である。本実施形態においては、リムプロテクタ33の頂部33A(サイドウォールゴム30のタイヤ径方向内側端30B)を通過する厚み部分が、ビード最大厚み部Tとなっている。
【0061】
図6は、タイヤ1が変形した場合における、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの動きを説明するための図である。
図6の左側の図は、
図1と同様、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図である。この図における太線29C1は、前述の無負荷状態におけるインナーライナー29のタイヤ内腔面29Cを示す線である。
【0062】
図6の真ん中の図は、タイヤ1が変形した場合における、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの形状の変化を説明するための図である。前述の無負荷状態におけるタイヤ内腔面29Cを示す線は、この図においても太線29C1で示されている。そして、トレッド13に路面から強い力がかかるなどして、タイヤ1がタイヤ幅方向に広がって偏平形状になったときのタイヤ内腔面29Cを示す線が、二点鎖線29C2で示されている。さらに、トレッド13に路面から強い力がかかった後、その力から開放されて、その反動によりタイヤ1がタイヤ径方向に伸びるような形状になったときのタイヤ内腔面29Cを示す線が、二点鎖線29C3で示されている。
【0063】
この図に示されるように、サイドウォール12における、タイヤ最大幅部の近傍領域R1においては、タイヤ1の変形に伴って、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの曲率が大きく変化する。したがって、この領域R1に電子部品ユニット50を貼り付けた場合、タイヤ1の変形に伴って、電子部品ユニット50を圧縮するような力および引っ張るような力が生じやすい。すなわち、インナーライナー29から電子部品ユニット50を剥離させるような力が生じやすい。
【0064】
一方、
図1および
図2に示される範囲L2に対応する領域である
図6の領域R2は、本実施形態において、電子部品ユニットが配置される領域である。この領域R2においては、タイヤ1が変形しても、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの曲率が比較的変化しにくい。すなわち、
図6の右側の図に示すように、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの動きは、倒れ込むような動きが主となる。したがって、この領域R2に電子部品ユニット50を貼り付けた場合、タイヤ1が変形しても、電子部品ユニット50を圧縮するような力および引っ張るような力が生じにくい。すなわち、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくい。
【0065】
さらに、前述のとおり、電子部品ユニット50は、アンテナ43の長手方向が、タイヤ1の周方向に対応する方向に向かうような向きで配置されている。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくい。
【0066】
なお、本実施形態においては、電子部品ユニット50は、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。電子部品ユニット50の少なくとも一部が、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることにより、電子部品ユニット50が、高モジュラスのゴムにより構成されるリムストリップゴム32のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくくなる。なお、電子部品40の全ての部分が、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることが好ましい。
【0067】
なお、本実施形態においては、電子部品ユニット50は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。電子部品ユニット50の少なくとも一部が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることにより、電子部品ユニット50が、高モジュラスのゴムにより構成されるビードフィラー22のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくくなる。なお、電子部品40の全ての部分が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることが好ましい。
【0068】
次に、本実施形態のタイヤ1の製造方法について説明する。
図7は、本実施形態のタイヤ1の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態のタイヤ1の製造方法は、タイヤ構成部材を準備するタイヤ構成部材準備工程S11と、タイヤ構成部材を組みつけて生タイヤを成型する成型工程S12と、成型された生タイヤに塗装を行う塗装工程S13と、成形後に塗装された生タイヤを加硫する加硫工程S14と、加硫されたタイヤを検査する検査工程S15と、を含む。
【0069】
また、成型工程S12で成型される生タイヤに電子部品ユニット50が取り付けられている状態とする上で、本実施形態のタイヤ1の製造方法は、電子部品ユニット50を準備する電子部品ユニット準備工程S21と、電子部品ユニット50に加硫接着剤を塗布する接着剤塗布工程S22と、接着剤が塗布された電子部品ユニット50を乾燥させて、所定時間以上乾燥させた乾燥済み電子部品ユニット50を準備する乾燥工程S23と、乾燥済み電子部品ユニット50をタイヤ構成部材としてのゴム部材に取り付ける電子部品ユニット取り付け工程S24と、をさらに含む。
【0070】
まず、タイヤ構成部材準備工程S11~検査工程S15の流れについて説明する。
【0071】
タイヤ構成部材準備工程S11において、タイヤ1を構成するゴム部材を含むタイヤ構成部材が準備される。このとき、ビードフィラー22、トレッドゴム28、インナーライナー29、サイドウォールゴム30、リムストリップゴム32といったゴム部材は、加硫前の生ゴムの状態である。
【0072】
成型工程S12においては、タイヤ1を構成するゴム部材を含むタイヤ構成部材が組みつけられ、生タイヤが成型される。
【0073】
塗装工程S13においては、成型工程S12によって成型された生タイヤの内面に離型剤が塗布される。これにより、この後の加硫工程S14において、ブラダとタイヤがくっつくのを防止する。
【0074】
加硫工程S14において、成型工程S12によって成型後、塗装工程S13によって塗装された生タイヤが加硫装置によって加硫される。生タイヤは、加硫装置内で、熱と圧力が加えられることにより加硫される。なお、加硫時においては、生タイヤの内部空間(内腔)に袋状の押圧部材であるブラダが配置される。ブラダは、内部に高温、高圧の加圧媒体が供給されることにより、生タイヤの内部空間内で膨張する。
【0075】
検査工程S15において、加硫工程S14によって加硫されたタイヤが検査される。検査項目としては、例えば、ユニフォミティ、ダイナミックバランス、外観検査等の検査項目が挙げられる。
【0076】
次に、電子部品ユニット50を生タイヤに取り付けるための工程である、電子部品ユニット準備工程S21~電子部品ユニット取り付け工程S24を説明する。
【0077】
電子部品ユニット準備工程S21において、電子部品ユニット50が準備される。本実施形態においては、電子部品40と、電子部品40の少なくとも一部を覆う可撓性フィルム45とを有する電子部品ユニット50が準備される。
【0078】
接着剤塗布工程S22において、電子部品ユニット50に、硬化前の加硫接着剤60が塗布される。例えば、電子部品40の裏面(フレキシブル基板41の裏面)を覆う第2の可撓性フィルム452(
図4B参照)に、加硫接着剤60が塗布される。加硫接着剤60は、刷毛塗りやディッピング等により塗布される。例えば、ディッピングの回数を規定することにより、塗布する膜厚をコントロールすることができる。加硫接着剤60は、好ましくは、加硫後の厚みが10μm以上30μm以下となるように塗布される。
【0079】
乾燥工程S23において、硬化前の加硫接着剤60が塗布された電子部品ユニット50を乾燥させる。これにより、電子部品ユニット50に塗布された加硫接着剤60が、塗布された薄膜の状態で乾燥する。この乾燥工程S23により、所定時間以上乾燥させた乾燥済み電子部品ユニット50を準備する。この所定時間は、加硫接着剤60の厚みが30μm以下の場合、例えば1時間である。すなわち、本実施形態においては、乾燥工程S23において、1時間以上乾燥させた電子部品ユニット50が、乾燥済み電子部品ユニット50となる。
【0080】
電子部品ユニット取り付け工程S24において、加硫前のゴム部材に乾燥済み電子部品ユニット50が取り付けられる。この電子部品ユニット取り付け工程S24は、成型工程S12の最中またはその前後に実施される。例えば、電子部品ユニット50は、まだ組みつけられる前のゴム部材に取り付けられてもよいし、生タイヤとなる途中段階の組みつけ中のゴム部材に取り付けられてもよい。また、電子部品ユニット50は、組みつけられて生タイヤとなった後のゴム部材に取り付けられても良い。これにより、成型工程S12によって組みつけられた生タイヤに電子部品ユニット50が取り付けられている状態となる。
【0081】
前述の塗装工程S13後の加硫工程S14において、乾燥済み電子部品ユニット50が取り付けられたゴム部材を含む生タイヤが加硫される。これにより、電子部品ユニット50とゴム部材とが接合される。
【0082】
なお、乾燥工程S23によって乾燥させた加硫接着剤60は、加硫前のゴム部材に対して仮接着しやすい。よって電子部品ユニット50を貼り付ける作業の作業性を高めることができる。また、乾燥させた加硫接着剤60は、その後の加硫工程S14でゴム部材と一体化する。すなわち、加硫工程S14において、熱と圧力が加えられることにより、ゴム部材と加硫接着剤60は一緒に加硫されて、接合される。よって、電子部品ユニット50とゴム部材の間の接合強度を高めることができる。
【0083】
なお、乾燥工程S23において、加硫接着剤60が塗布された電子部品ユニット50は、常温環境下で乾燥されてもよい。ただし、加硫接着剤60が塗布された電子部品ユニット50は、60℃以上80℃以下の雰囲気中で乾燥されることが好ましい。なお、90℃を超える雰囲気中で乾燥されると、加硫接着剤60に配合されている加硫促進剤が反応を開始するため、好ましくない。
【0084】
なお、乾燥工程S23においては、複数の電子部品ユニット50を乾燥させておくことが好ましい。そして、電子部品ユニット取り付け工程S24においては、複数の電子部品ユニット50の中から、所定時間以上乾燥させた乾燥済み電子部品ユニット50をピックアップして、ゴム部材に取り付けることが好ましい。これにより、乾燥工程S23を設けた場合であっても、生産タクトの低下を抑制することができる。
【0085】
なお、電子部品ユニット取り付け工程S24においては、乾燥済み電子部品ユニット50が、乾燥時間が所定時間を経過していない電子部品ユニット50とは区別されてピックアップされることが好ましい。
【0086】
例えば、乾燥工程S23においては、加硫接着剤60が塗布された状態の複数の電子部品ユニット50は、所定のエリア内に配置される。所定のエリアは、作業台であってもよいし、温度管理を行うための恒温槽であってもよい。そして、乾燥工程S23に投入した電子部品ユニット50の投入時間などの目印を電子部品ユニット50の近くに付することなどにより、乾燥済み電子部品ユニット50と、乾燥時間が所定時間を経過していない電子部品ユニット50とを、区別してもよい。
【0087】
なお、本実施形態においては、電子部品ユニット取り付け工程S24において、乾燥済み電子部品ユニット50は、加硫前のインナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられる。
【0088】
なお、本実施形態に示されるように、電子部品ユニット取り付け工程S24を終えた後、塗装工程S13を行った後に、加硫工程S14を行う場合、インナーライナー29の内腔面29Cと電子部品ユニット50との間には離型剤が存在せず、かつブラダと電子部品ユニット50との間には離型剤が存在する状況となる。よって、ブラダと電子部品ユニット50がくっついてしまうような加硫不良の発生が抑制される。さらに、電子部品ユニット50がインナーライナー29から剥離するような密着不良の発生が抑制される。
【0089】
なお、本実施形態においては、電子部品ユニット50として、RFIDタグユニットがタイヤ1に設けられているが、タイヤに設けられる電子部品ユニット50は、RFIDタグユニットに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品を有する電子部品ユニットであってもよい。電子部品ユニット50がタイヤ1から剥離することは好ましくない。また、電子部品40は、導電性の部材が近くにあると、電子部品40の性能変化が生じ、電子部品40の特性を維持することが困難となる可能性がある。また、電子部品40は、過度な応力がかかることにより、破損する可能性がある。よって、種々の電子部品40をタイヤに設ける場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品40は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0090】
なお、本実施形態の構成および製造方法は、種々のタイプのタイヤに対応可能である。例えば、ビードコア21を包み込むように設けられる補強繊維層としてのフリッパーを備えるタイヤにも適用可能である。フリッパーは、ビード11の剛性を高める部材であり、フリッパーを設けることにより、ビード11とリムとの圧着性が高まる。フリッパーは、ビードコア21と、ビードコア21周り設けられたカーカスプライ23との間に挟まれるようにして配置される。フリッパーは、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側の少なくとも一部およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側の少なくとも一部を覆うように配置される。フリッパーは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維を含む有機繊維コード層により構成される。
【0091】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0092】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、インナーライナー29と、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられた電子部品ユニット50と、インナーライナー29と電子部品ユニット50とを接合する加硫接着剤60と、を備え、電子部品ユニット50は、電子部品40と、電子部品40の少なくとも一部を覆う可撓性フィルム45を有し、加硫接着剤60は、厚みが30μm以下である。このように、加硫接着剤60の厚みを30μm以下とすることで、加硫接着剤60の適度な可撓性が確保され、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cの形状の変化に追従しやすくなる。これにより、タイヤ使用時にタイヤ1が変形しても、インナーライナー29から電子部品ユニット50が剥離するような不具合の発生を抑制することができる。
【0093】
(2)本実施形態に係るタイヤ1の加硫接着剤60の硬度は、インナーライナー29の硬度以上であり、かつ可撓性フィルム45の硬度以下である。これにより、硬さの勾配が緩やかとなり、衝撃緩衝効果が得られる。よって、タイヤ1が繰り返し変形しても、電子部品40にかかる応力が抑制され、電子部品40の耐久性を高めることができる。
【0094】
また、本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0095】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、一方のビード11から他方のビード11に延びるカーカスプライ23と、カーカスプライ23のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー29と、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられた電子部品ユニット50と、を備え、電子部品ユニット50は、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mm以上離れたタイヤ径方向位置に配置されている。これにより、金属製のビードコアの悪影響による電子部品40の通信性能の低下といった、電子部品ユニット50の不具合の発生を抑制することができる。また、電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられる態様であるため、製造が容易である。
【0096】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ幅方向断面視において、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから法線を引いたときに、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cからタイヤ外表面までの距離が最も長くなる部分をビード最大厚み部Tとしたとき、電子部品ユニット50は、ビード最大厚み部Tを構成するインナーライナー29のタイヤ内腔面の位置P2よりもタイヤ径方向内側に配置されている。このような領域に電子部品ユニット50を貼り付けた場合、タイヤ1が変形しても、電子部品ユニット50を圧縮するような力および引っ張るような力が生じにくい。すなわち、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくい。
【0097】
(3)本実施形態に係る電子部品ユニット50は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。これにより、電子部品ユニット50が、高モジュラスのゴムにより構成されるビードフィラー22のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくい。
【0098】
(4)本実施形態に係るビード11は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側に配置されたリムストリップゴム32をさらに有し、電子部品ユニット50は、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。これにより、電子部品ユニット50が、高モジュラスのゴムにより構成されるリムストリップゴム32のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくい。
【0099】
(5)本実施形態に係るタイヤ1の電子部品ユニット50は、電子部品40と、電子部品の少なくとも一部を覆う可撓性フィルム45を有する。これにより、電子部品ユニット50の厚みを薄くすることができる。また、電子部品ユニットの取り扱いが容易となる。
【0100】
また、本実施形態のタイヤ1によれば、以下の構成を有する。
【0101】
(1)本実施形態に係るタイヤ1の電子部品40は、ICチップ42と、アンテナ43とを有し、アンテナ43は、フレキシブル基板41に所定のパターンでプリントされた導電性部材により構成されたプリントアンテナである。これにより、電子部品40および電子部品ユニット50の厚みを薄くすることができる。
【0102】
(2)本実施形態に係るタイヤ1の電子部品40のアンテナ43は長手方向を有し、電子部品ユニット50は、アンテナ43の長手方向が、タイヤ1の周方向に対応する方向に向かうような向きで配置されている。これにより、タイヤ使用時にタイヤ1が変形しても、電子部品40に応力がかかりにくい。
【0103】
また、本実施形態のタイヤ1の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0104】
(1)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、タイヤ1を構成するゴム部材と、ゴム部材に取り付けられる電子部品ユニット50と、を備えるタイヤ1の製造方法であって、電子部品ユニット50に加硫接着剤60を塗布する接着剤塗布工程と、加硫接着剤60が塗布された電子部品ユニット50を乾燥させて、所定時間以上乾燥させた乾燥済み電子部品ユニット50を準備する乾燥工程と、加硫前のゴム部材に、乾燥済み電子部品ユニット50を取り付ける電子部品ユニット取り付け工程と、乾燥済み電子部品ユニット50が取り付けられたゴム部材を含む生タイヤを加硫する加硫工程と、を含む。これにより、電子部品ユニット50を貼り付ける作業が良好となる。乾燥させた加硫接着剤60は、ゴム部材に対して仮接着しやすい。よって電子部品ユニット50を貼り付ける作業の作業性を高めることができる。また、乾燥させた加硫接着剤60は、その後の加硫工程でゴム部材と一体化する。よって、電子部品ユニット50とゴム部材の間の接合強度を高めることができる。
【0105】
(2)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、乾燥工程において、加硫接着剤60が塗布された複数の電子部品ユニット50を乾燥させ、電子部品ユニット取り付け工程において、加硫接着剤60が塗布された複数の電子部品ユニット50の中から、所定時間以上乾燥させた乾燥済み電子部品ユニット50をピックアップしてゴム部材に取り付ける。これにより、乾燥させる工程を設けた場合であっても、生産タクトの低下を抑制することができる。
【0106】
(3)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、電子部品ユニット取り付け工程において、乾燥済み電子部品ユニット50が、乾燥時間が所定時間を経過していない電子部品ユニット50とは区別されてピックアップされる。これにより、乾燥させる工程を設けた場合であっても、生産タクトの低下を抑制することができる。
【0107】
(4)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法は、接着剤塗布工程において、加硫接着剤60が、加硫工程後の厚みが10μm以上30μm以下となるように塗布され、乾燥工程における所定時間が、1時間以上の時間である。これにより、その後の電子部品ユニット取り付け工程において電子部品ユニット50を貼り付けやすい状態となるように、加硫接着剤を乾燥させることができる。
【0108】
(5)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法において、ゴム部材はインナーライナー29であり、電子部品ユニット取り付け工程において、乾燥済み電子部品ユニット50は、加硫前のインナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに貼り付けられる。これにより、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cに電子部品ユニット50を適切に取り付けることができる。
【0109】
(6)本実施形態に係るタイヤ1の製造方法において、アンテナ43は長手方向を有し、電子部品ユニット取り付け工程において、電子部品ユニット50は、アンテナ43の長手方向が、タイヤ1の周方向に対応する方向に向かうように、ゴム部材に取り付けられる。これにより、タイヤ使用時にタイヤ1が変形しても、電子部品40に応力がかかりにくい。
【0110】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤ1について、
図8、
図9を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。本実施形態のタイヤ1は、金属補強層としてのスチールサイドプライ37を備える。
【0111】
図8は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図9は、
図8に示される本実施形態のタイヤ1における、ビード11およびサイドウォール12のタイヤ径方向内側領域周辺の拡大断面図である。
【0112】
本実施形態のタイヤ1は、プライ折り返し部25とビードフィラー22との間に、金属補強層としてのスチールサイドプライ37を備える。また、チェーハー31が、リムストリップゴム32とは別体の部材として分離して設けられている。また、サイドウォール12とトレッド13の移行領域における、トレッドゴム28とサイドウォールゴム30との積層順序が異なる。本実施形態においては、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、サイドウォールゴム30と、トレッドゴム28とが、順に積層された状態となっている。
【0113】
チェーハー31は、ビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23を覆うように設けられている。より詳細には、チェーハー31は、ビードコア21周辺のカーカスプライ23のタイヤ幅方向内側、タイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側を覆うように設けられている。チェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置された第1の端部31Aと、カーカスプライ23のプライ本体24のタイヤ幅方向内側に配置された第2の端部31Cと、を有する。チェーハー31の第1の端部31Aは、カーカスプライ23のプライ折り返し部25とリムストリップゴム32との間に挟まれるように配置されている。チェーハー31の第2の端部31Cは、カーカスプライ23のプライ本体24とインナーライナー29との間に挟まれるように配置されている。チェーハー31は、例えば繊維を練り込んだゴムや、モジュラスの高いゴムにより構成されており、タイヤ1を構成する構成部材の中で、比較的強度が高い。例えば、後述のインナーライナー29やサイドウォールゴム30よりも強度が高い。
【0114】
本実施形態のリムストリップゴム32は、チェーハー31およびカーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置されており、ホイールにタイヤ1が装着される際に、そのタイヤ幅方向外側が、ホイールのリム100と接触する。リムストリップゴム32は、タイヤ径方向外側端32Aと、タイヤ径方向内側端32Bを有する。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。このように、本実施形態においては、チェーハー31が、リムストリップゴム32とは別体の部材として分離して設けられている。
【0115】
金属補強層としてのスチールサイドプライ37は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25と、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側との間に配置されている。スチールサイドプライ37は、ビード11を補強する機能を有する。スチールサイドプライ37は、タイヤ径方向外側端37Aと、タイヤ径方向内側端37Bを有する。本実施形態においては、スチールサイドプライ37のタイヤ径方向外側端37Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側であって、プライ折り返し部25の端部25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。スチールサイドプライ37は、ビードコア21のタイヤ幅方向外側とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分と、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分と、を有する。本実施形態においては、スチールサイドプライ37はさらに、プライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分を有する。
【0116】
本実施形態のスチールサイドプライ37は、金属繊維を含む金属繊維コード層により構成されている。より詳細には、スチールサイドプライ37は、複数の金属繊維を撚り合わせて形成した複数の金属コードと、複数の金属コードを被覆して一体化するトッピングゴムとを含んで構成される。
【0117】
本実施形態においても、電子部品ユニット50は、少なくともその一部が、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mm以上離れたタイヤ径方向位置に配置される。
図8および
図9を用いて説明すると、本実施形態の電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cにおいて、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に所定の距離L1離れたタイヤ径方向位置P1よりも、タイヤ径方向外側に配置される。ここで、所定の距離L1は5.0mmである。なお、電子部品40の全ての部分が、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aからタイヤ径方向外側に5.0mm以上離れたタイヤ径方向位置に配置されることが好ましい。
【0118】
本実施形態においては、電子部品ユニット50は、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cにおける、スチールサイドプライ37のタイヤ径方向外側端37Aのタイヤ径方向位置P3よりもタイヤ径方向内側に配置されている。例えば、電子部品ユニット50の少なくとも一部が、スチールサイドプライ37のタイヤ径方向外側端37Aのタイヤ径方向位置P3よりもタイヤ径方向内側に配置される。すなわち、電子部品ユニット50の少なくとも一部が、
図8および
図9に示される範囲L3の領域内に配置される。より好ましくは、電子部品40の全ての部分が、範囲L3の領域内に配置される。これにより、電子部品ユニット50が、スチールサイドプライ37のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくくなる。
【0119】
なお、本実施形態においても、電子部品ユニット50は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。電子部品ユニット50の少なくとも一部が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることにより、電子部品ユニット50が、高モジュラスのゴムにより構成されるビードフィラー22のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくくなる。なお、電子部品40の全ての部分が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることが好ましい。
【0120】
なお、本実施形態においても、電子部品ユニット50は、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。電子部品ユニット50の少なくとも一部が、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることにより、電子部品ユニット50が、高モジュラスのゴムにより構成されるリムストリップゴム32のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくくなる。なお、電子部品40の全ての部分が、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aのタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されることが好ましい。
【0121】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0122】
(1)本実施形態のタイヤ1は、プライ折り返し部25とビードフィラー22との間に、金属補強層としてスチールサイドプライ37が設けられ、電子部品ユニット50は、スチールサイドプライ37のタイヤ径方向外側端37Aのタイヤ径方向位置P3よりもタイヤ径方向内側に配置されている。これにより、電子部品ユニット50が、スチールサイドプライ37のタイヤ幅方向内側またはその近傍に配置されることになるため、電子部品ユニット50の周辺のインナーライナー29の変形が少なくなる。よって、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cから電子部品ユニット50が剥離するような力が生じにくくなる。
【0123】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るタイヤ1について、
図10A、
図10Bを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。本実施形態の電子部品ユニット50は、インナーライナー29と密着した状態で形成された屈曲形状を有する。
【0124】
図10Aは、本実施形態に係るタイヤにおける、インナーライナー29に貼り付けられた電子部品ユニット50を示す図である。
図10Bは、
図10AのXB-XB断面を示す断面図である。
【0125】
本実施形態の電子部品ユニット50は、インナーライナー29と密着した状態で形成された屈曲形状を有する。
図10Bには、この屈曲形状として、タイヤ外表面側に突出する突部50Dが形成されている。すなわち、インナーライナー29にめり込むように形成された突部50Dが形成されている。これにより、インナーライナー29と電子部品ユニット50との密着力が向上し、電子部品ユニット50の剥離を抑制することができる。
【0126】
なお、屈曲形状の段差寸法t5は、加硫接着剤60の厚みより大きい方が好ましい。これにより、インナーライナー29と電子部品ユニット50との密着力がさらに向上する。また、屈曲形状の段差寸法t5は、電子部品ユニット50を構成する可撓性フィルム45の厚みよりも大きくてもよい。これにより、インナーライナー29と電子部品ユニット50との密着力がさらに向上する。
【0127】
次に、電子部品ユニット50に屈曲形状を形成する工程について説明する。この屈曲形状は、加硫工程S14において形成される。
【0128】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、電子部品ユニット取り付け工程S24において、加硫前のゴム部材に乾燥済み電子部品ユニット50が取り付けられる。これにより、加硫工程S14の前において、生タイヤに電子部品ユニット50が取り付けられた状態となる。
【0129】
加硫工程S14において、電子部品ユニット50が取り付けられた生タイヤが加硫装置によって加硫される。
【0130】
この加硫時においては、生タイヤの内部空間(内腔)に袋状の押圧部材であるブラダが配置される。ブラダは、内部に高温、高圧の加圧媒体が供給されることにより、生タイヤの内部空間内で膨張する。これにより、インナーライナー29のタイヤ内腔面29Cは、加熱されながら、外金型の方向(タイヤ外表面側)に押圧される。
【0131】
ここで、ブラダの外表面に、所定の高さの突条を設ける。これにより、このブラダの突条が、インナーライナー29の内腔面29Cに貼り付けられた電子部品ユニット50を押圧する。その結果、加硫後において、電子部品ユニット50には、屈曲形状としての突部50Dが形成される。また、インナーライナー29の内腔面29Cには、溝部29Dが形成される。なお、ブラダに設けられる突条の高さは、電子部品ユニット50の屈曲形状の段差寸法が所望の寸法となるように設定されている。
【0132】
なお、屈曲形状は、タイヤ内腔側に突出する突部であってもよい。これによっても、インナーライナー29と電子部品ユニット50との密着力が向上し、電子部品ユニット50の剥離を抑制することができる。この場合は、ブラダの外表面に溝を設ける。これにより、電子部品ユニット50に、インナーライナー29と密着した状態で形成された屈曲形状として、タイヤ内腔側に突出する突部を形成することができる。なお、電子部品ユニット50に形成する屈曲形状は突部に限らず、いわゆる段曲げ(Z曲げ)形状等であってもよい。
【0133】
このようにして、電子部品ユニット50に屈曲形状を形成することが可能となる。
【0134】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0135】
(1)本実施形態の電子部品ユニット50は、インナーライナー29と密着した状態で形成された屈曲形状を有する。これにより、インナーライナー29と電子部品ユニット50の密着力が向上し、電子部品ユニット50の剥離を抑制することができる。
【0136】
(2)本実施形態の電子部品ユニット50の屈曲形状は、タイヤ内腔側またはタイヤ外表面側に突出する突部である。これにより、インナーライナー29と電子部品ユニット50の密着力が向上し、電子部品ユニット50の剥離を抑制することができる。
【0137】
(3)本実施形態の電子部品ユニット50の屈曲形状の段差寸法は、加硫接着剤60の厚みより大きい。これにより、インナーライナー29と電子部品ユニット50の密着力をより向上させることができる。
【0138】
(4)本実施形態のタイヤ1の製造方法は、加硫工程において、電子部品ユニット50の少なくとも一部に屈曲形状を形成する。これにより、工程を追加することなく、電子部品ユニット50の少なくとも一部に屈曲形状を形成することができる。
【0139】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1 タイヤ
11 ビード
12 サイドウォール
13 トレッド
21 ビードコア
21A タイヤ径方向外側端
22 ビードフィラー
22A タイヤ径方向外側端
23 カーカスプライ
24 プライ本体
25 プライ折り返し部
26 スチールベルト
27 キャッププライ
28 トレッドゴム
29 インナーライナー
29C タイヤ内腔面
30 サイドウォールゴム
32 リムストリップゴム
32A 第1の端部(タイヤ径方向外側端)
37 スチールサイドプライ(金属補強層)
37A タイヤ径方向外側端
40 電子部品(RFIDタグ)
41 フレキシブル基板
42 ICチップ(RFIDチップ)
43 アンテナ
45 可撓性フィルム
451 第1の可撓性フィルム
452 第2の可撓性フィルム
50 電子部品ユニット(RFIDタグユニット)
50D 突部
60 加硫接着剤
T ビード最大厚み部