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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081921
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/551 20060101AFI20220525BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20220525BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61F13/551 200
A61F13/56 100
A61F13/514 400
A61F13/514 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193163
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】永島 真里子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA11
3B200BA12
3B200CA11
3B200CA13
3B200DA27
3B200DD09
3B200DE02
3B200DE03
(57)【要約】
【課題】使用済み吸収性物品を普通のゴミ箱に廃棄しても外観が気にならず、臭気の拡散が少ないとともに、体液の漏れをなくす。また、フラップ部を身体の動きに追従しやすくする。
【解決手段】吸収体4の両側部のサイドフラップ部SFにそれぞれ、ウイング状フラップ部W及び/又はヒップホールド用フラップ部Wが形成される。ウイング状フラップ部W及び/又はヒップホールド用フラップ部Wが伸縮性を有するとともに、この伸縮性が、生理用ナプキン1の前後方向に沿う方向又はウイング状フラップ部W及び/又はヒップホールド用フラップ部Wの前後部それぞれから最幅広部21、22に行くに従って生理用ナプキン1の幅方向外側に傾斜する方向に高く、これと直交する方向に低く形成されており、裏面シート2の外面側の前端部及び後端部のいずれか一方又は両方に粘着剤層23が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の非肌当接面側に配置された裏面シートと、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向の全長に亘って配置されたサイドシートとを備え、
前記吸収体の両側部にそれぞれ、前記吸収体よりも側方に延出している前記裏面シートと前記サイドシートとが接合されたサイドフラップ部が形成されるとともに、前記サイドフラップ部に、装着時に下着のクロッチ部分に折り返して使用する左右対のウイング状フラップ部及び吸収性物品の後部側に位置し、装着時に着用者の臀部を覆う左右対のヒップホールド用フラップ部のいずれか一方又は両方が形成され、
前記ウイング状フラップ部及びヒップホールド用フラップ部のいずれか一方又は両方が伸縮性を有するとともに、この伸縮性が、吸収性物品の前後方向に沿う方向又は該ウイング状フラップ部若しくは該ヒップホールド用フラップ部の前後部それぞれから該ウイング状フラップ部若しくは該ヒップホールド用フラップ部内で前記吸収体の側縁からの延出量が最も大きな最幅広部に行くに従って吸収性物品の幅方向外側に傾斜する方向に高く、これと直交する方向に低く形成されており、前記裏面シートの外面側の前端部及び後端部のいずれか一方又は両方に粘着剤層が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記裏面シートが白色以外の色に着色されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
伸縮性が高い方向と直交する方向に沿うとともに、伸縮性が高い方向に間隔を空けて複数のエンボス部又は接着部が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記エンボス部又は接着部の幅方向内側が、前記吸収体と重なる部位まで延在している請求項3記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記裏面シート及びサイドシートがそれぞれ伸縮性を有する素材で形成され、前記サイドシートの伸縮性が前記裏面シートの伸縮性より高い請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
伸縮性が高い方向が、前記最幅広部に近づくに従って、徐々に幅方向外側への傾斜が大きくなるように形成されている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
所定の方向に相対的に高い伸縮性が付与された部位の吸収性物品前後方向の長さは、吸収性物品を前後方向に小さく丸めたときの周囲の長さの2/3以上である請求項1~6いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳細には両側のフラップ部が所定の方向に伸縮自在に形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、勤務形態が多様化する中で、リモートワーク等による在宅時間の増加に伴い、平日の昼間でも自宅のトイレを使用する頻度が増加している。このため、生理期間中は、自宅のトイレのサニタリーボックスが使用済み生理用ナプキンで直ぐに一杯になってしまい、頻繁にサニタリー袋を交換する必要があり、それが面倒であった。
【0003】
使用済み生理用ナプキンをサニタリーボックスではなく普通のゴミ箱に捨てることができれば、サニタリー袋の交換頻度が減り、負担を軽減できるが、蓋などがない普通のゴミ箱に廃棄すると、外観が悪い、排泄物の臭気が拡散して部屋が臭くなる、吸収された体液が漏れる、などの懸念があり、そのままでは普通のゴミ箱に廃棄することができなかった。
【0004】
従来より、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際に排泄物による汚れを外部から視認しにくくした吸収性物品が開発されている。例えば、下記特許文献1には、前後方向において吸収部の前方側および後方側の少なくとも一方側に隣接する低吸収部と、前記低吸収部に備えられた後処理用のテープ部材とを有し、使用後の吸収性物品を丸めて廃棄する際に、経血等の排泄物の含有量が少ない低吸収部が、最も外側に位置するように丸められた後、当該低吸収部に配置されたテープ部材によって粘着固定することにより、排泄物の含有量の少ない低吸収部が吸収部を覆うように丸められ、排泄物による汚れを外部から視認しにくくした吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-141878号公報
【特許文献2】特開2017-64028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された吸収性物品では、使用済み吸収性物品を前後方向に小さく丸めた状態で、排泄物による汚れが外部から視認しにくくなっているものの、一見して吸収性物品を丸めたものであることが分かりやすいとともに、開口した両側部から臭気の拡散及び排泄物の漏れが発生しやすいため、そのまま普通のゴミ箱に廃棄することはできない。
【0007】
ところで、吸収性物品は、下着にしっかりと固定できるように、側方に突出した幅広のウイング状フラップ部やヒップホールド用フラップ部を備えたものが多く市場に提供されている。また、例えば、上記特許文献2などに開示されるように、裏面シートを、吸収性物品の長手方向に伸縮可能な伸縮性シートによって構成するとともに、少なくとも前記吸収体が介在する本体部分に、前記伸縮性シートの伸縮力が作用した伸縮部と、前記伸縮性シートに非伸縮化加工を施すことにより伸縮性シートの伸縮力をなくした非伸縮部とを吸収性物品の長手方向に交互に配置することにより、各伸縮部による伸縮力が独立的に作用し、各部に応じた伸縮力を発揮して、歩行時や立ち座りの動作時等において着用者の身体の動きに追従しやすくし、フィット性に富むようにした吸収性物品なども提案されている。
【0008】
ところが、上記特許文献2記載の吸収性物品では、特に、側方のフラップ部において、身体の動きに対する追従性が不充分で、着用中の身体の動きによってズレが生じて漏れの原因となるおそれがあった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、使用済み吸収性物品を普通のゴミ箱に廃棄しても外観が気にならず、臭気の拡散が少ないとともに、体液の漏れが生じない吸収性物品を提供することにある。また、フラップ部を身体の動きに追従しやすくした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために第1の態様として、吸収体と、前記吸収体の非肌当接面側に配置された裏面シートと、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向の全長に亘って配置されたサイドシートとを備え、
前記吸収体の両側部にそれぞれ、前記吸収体よりも側方に延出している前記裏面シートと前記サイドシートとが接合されたサイドフラップ部が形成されるとともに、前記サイドフラップ部に、装着時に下着のクロッチ部分に折り返して使用する左右対のウイング状フラップ部及び吸収性物品の後部側に位置し、装着時に着用者の臀部を覆う左右対のヒップホールド用フラップ部のいずれか一方又は両方が形成され、
前記ウイング状フラップ部及びヒップホールド用フラップ部のいずれか一方又は両方が伸縮性を有するとともに、この伸縮性が、吸収性物品の前後方向に沿う方向又は該ウイング状フラップ部若しくは該ヒップホールド用フラップ部の前後部それぞれから該ウイング状フラップ部若しくは該ヒップホールド用フラップ部内で前記吸収体の側縁からの延出量が最も大きな最幅広部に行くに従って吸収性物品の幅方向外側に傾斜する方向に高く、これと直交する方向に低く形成されており、前記裏面シートの外面側の前端部及び後端部のいずれか一方又は両方に粘着剤層が設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記第1の態様では、サイドフラップ部に、ウイング状フラップ部及びヒップホールド用フラップ部のいずれか一方又は両方が形成され、このウイング状フラップ部及びヒップホールド用フラップ部のいずれか一方又は両方が伸縮性を有するとともに、この伸縮性が、吸収性物品の前後方向に沿う方向又は該ウイング状フラップ部若しくは該ヒップホールド用フラップ部の前後部それぞれから最幅広部に行くに従って吸収性物品の幅方向に傾斜する方向に高く、これと直交する方向に低く形成されている。かかる吸収性物品を使用した後の使用済み吸収性物品を廃棄する手順として、排泄物が付着した肌当接面側を内側にして使用済み吸収性物品を前後方向に小さく丸めた後、両側に突出するサイドフラップ部のうち、所定の方向に伸縮性が付与されたウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部の最幅広部を手で摘まんで外側に引っ張る。このとき、本発明に係る吸収性物品では、外側に引っ張った前記ウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部が伸縮性を有するとともに、この伸縮性が、吸収性物品の前後方向に沿う方向又は所定の外側に傾斜する方向に高く、これと直交する方向に低く形成されているため、ウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部の伸縮性によってウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部が容易に前後方向又は斜め方向に引き伸ばされ、引き伸ばされたウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部によって、小さく丸めた吸収性物品の開口する側部を閉塞することができるようになる。このウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部によって側部の開口を閉塞した状態で、ウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部を、前記裏面シートの外面側の前端部及び後端部のいずれか一方又は両方に設けられた粘着剤層に止着する。これによって、両側部がウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部によって閉塞された俵形の外形となるため、普通のゴミ箱に廃棄しても、一見して使用済み吸収性物品であることが分かりにくいとともに、開口する両側部からの臭気の拡散や吸収された体液の漏れが抑えられ、普通のゴミ箱に廃棄できるようになる。
【0012】
更に、前記ウイング状フラップ部若しくはヒップホールド用フラップ部は任意方向に伸縮性を有するのではなく、所定の方向、すなわち、吸収性物品の装着時に、身体の動きに対する追従性を確保する方向に伸縮性が高く設定され、必要方向以外の方向には伸縮性が低く抑えられている。これによって、装着性が良好になるとともに、装着時におけるズレが生じにくくなるため、吸収性物品が身体に良好にフィットし、体液の漏れが防止できるようになる。
【0013】
第2の態様として、前記裏面シートが白色以外の色に着色されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記第2の態様では、使用済み吸収性物品を排泄物が付着した肌当接面側を内側にして前後方向に小さく丸めた状態で、外面の裏面シートによって外観が白色以外の色となるため、これをそのまま普通のゴミ箱に廃棄したとき使用済み吸収性物品であることがより一層気付きにくくなる。
【0015】
第3の態様として、伸縮性が高い方向と直交する方向に沿うとともに、伸縮性が高い方向に間隔を空けて複数のエンボス部又は接着部が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記第3の態様では、伸縮性を所定の方向に高くするための手段として、伸縮性が高い方向と直交する方向に沿うとともに、伸縮性が高い方向に間隔を空けて複数のエンボス部又は接着部を設けている。これによって、前記エンボス部又は接着部による非伸縮部が形成され、このエンボス部又は接着部に沿う方向には、伸縮性が低下するのに対し、これと直交する方向には、隣り合うエンボス部又は接着部間のシート部分が伸縮することにより伸縮性が維持されている。したがって、前記エンボス部又は接着部が延びる方向と直交する方向には伸縮性が相対的に高く、前記エンボス部又は接着部が延びる方向には伸縮性が相対的に低くなる。
【0017】
第4の態様として、前記エンボス部又は接着部の幅方向内側が、前記吸収体と重なる部位まで延在している請求項3記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記第4の態様では、前記エンボス部又は接着部の幅方向内側を、吸収体と重なる部位まで延在させることにより、前記エンボス部又は接着部が吸収体の側縁から連続的にサイドフラップ部に延出するため、このエンボス部又は接着部によってサイドフラップ部が補強され、装着時や、使用済み吸収性物品を小さく丸めてサイドフラップ部を引っ張ったときなどに、エンボス部又は接着部の内側端部に応力が集中してサイドフラップ部が千切れるのが防止できるようになる。
【0019】
第5の態様として、前記裏面シート及びサイドシートがそれぞれ伸縮性を有する素材で形成され、前記サイドシートの伸縮性が前記裏面シートの伸縮性より高い請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記第5の態様では、前記裏面シート及びサイドシートをそれぞれ伸縮性を有する素材で形成し、前記サイドシートの伸縮性を前記裏面シートの伸縮性より高くしているため、使用済み吸収性物品を肌当接面側を内側にして前後方向に小さく丸めた状態で、サイドフラップ部の所定部位を側方に引っ張ったとき、内周側に配置されたサイドシートの収縮力が大きく作用して、サイドフラップ部が内側に丸まりやすくなり、吸収性物品本体の側部がサイドフラップ部で確実に覆われるようになる。
【0021】
第6の態様として、伸縮性が高い方向が、前記最幅広部に近づくに従って、徐々に幅方向外側への傾斜が大きくなるように形成されている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記第6の態様では、使用済み吸収性物品を小さく丸めた状態で、サイドフラップ部の最も幅広の部位を指で摘まんで側方に引っ張ったとき、引っ張る方向とサイドフラップ部の伸縮性が高い方向とがほぼ一致し、より大きくサイドフラップ部を延伸させることができるとともに、小さく丸めた吸収性物品の側部をより確実に閉塞できるようになる。
【0023】
第7の態様として、所定の方向に相対的に高い伸縮性が付与された部位の吸収性物品前後方向の長さは、吸収性物品を前後方向に小さく丸めたときの周囲の長さの2/3以上である請求項1~6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記第7の態様では、所定の方向に相対的に高い伸縮性が付与されたウイング状フラップ部やヒップホールド用フラップ部の基端部の長さを、所定の長さ以上確保することにより、使用済み吸収性物品を小さく丸めた状態で、最幅広部を引っ張ったとき、使用済み吸収性物品の側部全体をより確実に覆うことができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、使用済み吸収性物品を普通のゴミ箱に廃棄しても外観が気にならず、臭気の拡散が少なくできるとともに、体液の漏れが生じなくなる。また、フラップ部が身体の動きに追従しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4】使用済み生理用ナプキンを廃棄する手順を示す斜視図である。
図5図4(B)のV-V線矢視図である。
図6】変形例に係る生理用ナプキン1の後部側の展開図である。
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の後部側の展開図である。
図8】他の形態例(その1)に係る生理用ナプキン1の展開図である。
図9】他の形態例(その2)に係る生理用ナプキン1の展開図である。
図10】他の形態例(その3)に係る生理用ナプキン1の展開図である。
図11】他の形態例(その4)に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイドシート7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その前後端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。前記フラップ部のうち、前記吸収体4の両側部においてそれぞれ、吸収体4よりも側方に延出している裏面シート2とサイドシート7とが接合された部分を、以下、サイドフラップ部SFという。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0029】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記吸収体4が介在する本体部分の裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1をショーツに固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0030】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0031】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0032】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0033】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイドシート7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着され、当該サイドシート7と裏面シート2との積層シート部分により、吸収体4の両側部に吸収体4が介在しない前記サイドフラップ部SFを形成している。
【0035】
このサイドフラップ部SFは、ほぼ着用者の体液排出部Hに相当する側部位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のウイング状フラップ部W、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のヒップホールド用フラップ部W、Wを形成する。これらウイング状フラップ部W、Wおよびヒップホールド用フラップ部W、Wの外面側(裏面シート2の外面側)にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップ部W、Wを基端部の折返し線RL(図1参照。)位置にて反対側(裏面シート2側)に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップ部Wをショーツの内面に止着し、装着時に着用者の臀部を覆うようになっている。前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wはそれぞれ、吸収体4の側縁からの幅方向の延出量が最も大きくなる最幅広部21、22を備えている。図1に示される生理用ナプキン1では、ウイング状フラップ部Wの最幅広部21は、ウイング状フラップ部Wの前後方向の長さの約半分の位置に設けられ、ヒップホールド用フラップ部Wの最幅広部22は、ヒップホールド用フラップ部Wの前後方向の長さの半分の位置より後部側位置に設けられているが、これに限るものではなく任意の位置に設けることができる。なお、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの幅方向外側の外形線が生理用ナプキン1の前後方向に平行な直線からなる場合、最幅広部21、22は、この直線部分のほぼ中央部とすることができる。
【0036】
一方、前記サイドシート7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部の長手方向中間部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が伸長状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された非起立部分を形成している。これによって、図2に示されるように、長手方向中間部の前記糸状弾性伸縮部材9…の配置範囲が、前記糸状弾性伸縮部材9…の収縮力により肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが左右対で形成される。
【0037】
図1に示されるように、前記表面シート3の肌当接面側には、所定の形態で圧搾溝10が形成されている。前記圧搾溝10は、表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、表面シート3及び吸収体4を一体的に裏面シート2側に窪ませた凹溝である。前記圧搾溝10は、少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って左右対で設けられている。
【0038】
〔使用済み生理用ナプキンを廃棄するための構造について〕
本生理用ナプキン1は、使用済み生理用ナプキンを小さく丸めて普通のゴミ箱にそのまま廃棄しても外観が気にならず、臭気の拡散や体液の漏れを抑制した独自の構造を備えている。以下、その構造について詳細に説明する。
【0039】
本生理用ナプキン1では、前記ウイング状フラップ部Wが伸縮性を有するとともに、このウイング状フラップ部Wの伸縮性が、生理用ナプキン1の前後方向に沿う方向又は各ウイング状フラップ部Wの前後部それぞれから前記最幅広部21に行くに従って生理用ナプキン1の幅方向外側に傾斜する方向に高く(以下、この方向を「伸縮性が高い方向P」という。)、これと直交する方向に低く形成されている。また、前記ヒップホールド用フラップ部Wについても同様に、ヒップホールド用フラップ部Wが伸縮性を有するとともに、このヒップホールド用フラップ部Wの伸縮性が、生理用ナプキン1の前後方向に沿う方向又は各ヒップホールド用フラップ部Wの前後部それぞれから前記最幅広部22に行くに従って生理用ナプキン1の幅方向外側に傾斜する方向(伸縮性が高い方向P)に高く、これと直交する方向に低く形成されている。
【0040】
前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wが伸縮性を有するには、前記裏面シート2及びサイドシート7がそれぞれ伸縮性を有する素材、例えば、伸縮性のフィルム、不織布、織布、編布、ウレタンフォームなどをシート状に加工したものなどを用いればよい。特に、前記裏面シート2として、伸縮性フィルムを用いるのが好ましい。この伸縮性フィルムは、伸縮性を有するプラスチックフィルムであり、具体的にはウレタン系フィルム、オレフィン系エラストマーなどのフィルムからなるものである。前記サイドシート7としては、肌触りをよくするため、伸縮性の不織布、織布、編布、ウレタンフォームなどを用いるのが好ましい。
【0041】
前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wの伸縮性を所定の方向に高く、これと直交する方向に低く形成するには、図1に示されるように、伸縮性が高い方向Pと直交する方向に沿うとともに、伸縮性が高い方向Pに間隔を空けて複数のエンボス部20、20…を配置するのがよい。これにより、伸縮性が高い方向Pに作用する引張力に対しては、隣り合うエンボス部20、20間の裏面シート2及びサイドシート7が伸縮して伸縮性が確保される一方で、これと直交する方向に作用する引張力に対しては、非伸縮化加工された前記エンボス部20…によって伸縮性が低下する。前記エンボス部20は、所定の幅を有する線状又は帯状のヒートシール部であり、幅方向外側の端縁は生理用ナプキン1の外縁まで延びているのが好ましく、幅方向内側の端縁は特に限定せず、前記立体ギャザーBSの外側折り返し端部に重ならない位置としてもよいし、後段で詳述するように吸収体4と重なる位置まで延在させてもよい。
【0042】
前記エンボス部20以外のサイドフラップ部SFは、接着剤のスプレー塗布のような離散的な塗布方法によって、前記裏面シート2とサイドシート7とを接着してもよいし、接着しなくてもよい。
【0043】
なお、前記エンボス部20に代えて、スロットコータなどによって接着剤を連続的に塗布した接着部を裏面シート2とサイドシート7との間に介在させてもよい。この接着部も、前記エンボス部20と同様に、非伸縮部となるため、この接着部が沿う方向に対して伸縮性が低下する。
【0044】
図1に示されるように、前記伸縮性が高い方向Pと、生理用ナプキン1の幅方向線Xとの2つの線によって形成される角のうち、幅方向外側の角度Aは、90~150°とするのがよい。これに伴い、前記伸縮性が高い方向Pに直交して設けられるエンボス部20と、生理用ナプキン1の幅方向線Xとの成す角度Bは、0~60°となる。この角度範囲で伸縮性が高い方向Pを形成することにより、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの最幅広部21、22を手で摘まんで幅方向外側に引っ張ったとき、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの全体が前後方向又は斜め方向に伸長するようになる。前記角度Aが90°より小さいと、最幅広部21、22を手で摘まんで外側に引っ張ったとき、前記エンボス部20の非伸縮性によってウイング状フラップ部W、ヒップホールド用フラップ部Wが伸縮しにくくなるため好ましくない。一方、前記角度Aが150°より大きいと、最幅広部21、22を中心とした狭い領域が幅方向に伸長するだけでウイング状フラップ部W、ヒップホールド用フラップ部Wの全体が伸縮しにくくなるため好ましくない。
【0045】
また、前記エンボス部20の幅Cは任意であるが、あまり小さすぎると伸縮性が高い方向Pと低い方向の明確な差が生じにくく、大きすぎると全体の伸縮性が低下し、肌触りが悪化するため、0.3~3mmとするのがよい。また、隣り合うエンボス20、20の間隔Dも任意であるが、あまり狭すぎると伸縮性が低下するとともに、肌触りが悪化し、大きすぎると伸縮性が高い方向Pと低い方向の明確な差が生じにくいため、1~15mmとするのがよい。
【0046】
更に、本生理用ナプキン1では、図1に示されるように、前記裏面シート2の外面側の前端部及び後端部のいずれか一方又は両方に、図示例では前端部と後端部の両方に、粘着剤層23が設けられている。この粘着剤層23は、使用済み生理用ナプキンを肌当接面側を内側にして前後方向に小さく丸めたとき、その巻き終わりの端部の外面に配置されるものであり、両側に突出するサイドフラップ部SFの所定部位を手で摘まんで幅方向外側に引っ張った後、内側に折り返して止着するためのものである。前記粘着剤層23は、生理用ナプキン1の幅方向に延びる帯状に形成されており、吸収体4の幅と同等以下の範囲に形成するのが好ましい。前記粘着剤層23は、生理用ナプキン1の個装状態で、生理用ナプキン1の本体部分に設けられたズレ止め粘着剤層とともに剥離シートによって剥離可能に覆われており、ショーツへの装着時に前記剥離シートを剥がしてショーツの内面に止着される。
【0047】
前記粘着剤層23は、生理用ナプキン1の前端部又は後端部のみに設けてもよいし、前端部と後端部の両方に設けてもよい。また、ウイング状フラップ部W、Wのみが所定の方向に高い伸縮性を有する生理用ナプキン1では、前記粘着剤層23は生理用ナプキン1の前端部のみに配置するのが好ましく、ヒップホールド用フラップ部Wにも所定の方向に高い伸縮性が付与された生理用ナプキン1では、前記粘着剤層23は少なくとも生理用ナプキン1の後端部に配置するのが好ましい。
【0048】
以上の構成からなる生理用ナプキン1をショーツに装着して使用した後、排泄物が吸収された使用済み生理用ナプキンをショーツから取り外して廃棄するには、次の手順で行う。
【0049】
先ずはじめに、図4(A)に示されるように、排泄物が付着した肌当接面側(表面シート3側)を内側にして、前後方向に小さく丸めることにより、吸収体4の側方に延出するサイドフラップ部SFが前後方向に小さく丸められた状態とする。前後方向に丸める際は、図4に示されるように、巻き終わりの端部に前記粘着剤層23が配置されるようにする。
【0050】
次いで、図4(B)に示されるように、ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wのうち、外周側に位置するものの最幅広部21、22を指で摘まんで幅方向外側に引っ張る。このとき、本生理用ナプキン1では、ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wが伸縮性を有するとともに、この伸縮性が、生理用ナプキン1の前後方向に沿う方向又はウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wの前後部それぞれから最幅広部21、22に行くに従って生理用ナプキン1の幅方向外側に傾斜する方向に高く、これと直交する方向に低く形成されているため、前記最幅広部21、22を幅方向外側に引っ張ることにより、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの全体が最幅広部21、22に向けて引き伸ばされるように変形する。
【0051】
その後、図4(C)に示されるように、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wを引き伸ばした状態で、幅方向内側に折り返して、小さく丸めた生理用ナプキン1の開口する側部を閉塞するとともに、前記粘着剤層23に止着して、その状態を保持する。
【0052】
しかる後、図4(D)に示されるように、反対側の側部も同様にして閉塞する。
【0053】
以上の工程を経ることにより、使用済み生理用ナプキンは、小さく丸められ、両側部が閉塞した俵形の外形となるため、一見して使用済み生理用ナプキンと分かりにくく、トイレのサニタリーボックスではなく普通のゴミ箱に廃棄しても外観が気にならない。また、両側部がウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wによって閉塞されているため、臭気の拡散や体液の漏れが生じずに、普通のゴミ箱に廃棄することができる。したがって、トイレのサニタリーボックスが使用済み生理用ナプキンで直ぐに一杯になることがなく、頻繁にサニタリー袋を交換する手間が省ける。
【0054】
更に、前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wは、任意の方向に伸縮性を有するのではなく、所定の方向、すなわち、生理用ナプキン1の装着時に、身体の動きに対する追従性を確保しやすい方向に伸縮性が高く設定され、必要方向以外の方向には伸縮性が低く設定されている。具体的には、ショーツのクロッチ部分に折り返して使用するウイング状フラップ部Wは、幅方向に対する伸縮力が大きすぎると、ショーツクロッチ部の側部がめくれ、肌面に対するフィット性が低下するおそれがあるため好ましくないが、本生理用ナプキン1のように前後方向又は斜め方向に伸縮性が高く、これと直交する方向に伸縮性が低く形成されていると、歩行時や寝返りの際に脚を前後させたときなど、クロッチ部分のねじり変形が生じるような動作に対しても追従性が確保されやすく、良好なフィット性が維持できるようになる。また、着用者の臀部を覆うヒップホールド用フラップ部Wは、脚の曲げ伸ばしや、立ち座り、前傾と直立などの動作に対して追従しやすい前後方向又は斜め方向に伸縮しやすくなっているため、良好なフィット性が維持できる。このように、本生理用ナプキン1では、良好な装着性が得られるとともに、装着時におけるズレが生じにくいため、生理用ナプキン1が身体に確実にフィットし、漏れが防止できるようになる。
【0055】
次に、上記生理用ナプキン1の変形例について説明すると、前記裏面シート2は白色でもよいが、白色以外の色に着色することにより、小さく丸めて廃棄する際の外観がより一層生理用ナプキンと気付かれにくくなるのでよい。ここで、「白色」とは、CIE-L表色系におけるL値が80以上、好ましくは85以上であることを意味する。また、白色以外の色は特に限定されず、黒色、茶色、赤色、青色、緑色などの単色の他、2色以上の色からなる色分け模様を有していても良い。
【0056】
他の変形例として、ともに伸縮性を有する素材で形成された裏面シート2及びサイドシート7について、前記サイドシート7の伸縮性を裏面シート2の伸縮性より高くしてもよい。これにより、使用済み生理用ナプキンを肌当接面側を内側にして前後方向に小さく丸めた状態で、側方に突出するウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの最幅広部21、22を側方に引っ張ったとき、図5に示されるように、内側に配置されたサイドシート7の収縮力が大きく作用することにより、サイドフラップ部SFが内側に丸まりやすくなり、小さく丸めた使用済み生理用ナプキンの開口する側部がサイドフラップ部SFによって確実に覆われるようになる。前記裏面シート2は、JIS L1096の伸縮織物及び編物の伸縮性に関する伸び率のB法(織物の定荷重法)による伸び率が20%~40%のものを使用するのが好ましい。ショーツの伸び率は種類によって様々であるが、一般的に約20%~40%の伸び率のものが多いため、この一般的なショーツの伸び率とほぼ同等の伸び率のものを用いることにより、ショーツと同じように伸縮してフィット性が向上するとともに、ズレが軽減できるようになる。また、前記サイドシート7は、前記伸び率がこれより大きなものを使用するのが好ましく、具体的には、30%~50%のものを使用するのがよい。
【0057】
図1に示される形態例では、伸縮性の高い方向Pは、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの前後部それぞれから最幅広部21、22にかけて真っ直ぐに延びる直線で形成されているが、図6に示されるように、伸縮性が高い方向Pが、最幅広部21、22に近づくに従って、徐々に幅方向外側への傾斜角が大きくなるように形成してもよい。すなわち、伸縮性が高い方向Pが、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの前後部それぞれから最幅広部21、22に近づくに従って、徐々に幅方向外側に湾曲又は屈曲する曲線又は折れ線によって形成することができる。この曲線又は折れ線からなる伸縮性が高い方向Pの各部にそれぞれ直交する方向に、前記エンボス部20が設けられている。これに伴い、前記エンボス部20と生理用ナプキン1の幅方向線Xとの成す角も、最幅広部21、22に近づくに従って、徐々に大きくなっている。これによって、使用済み生理用ナプキンを小さく丸めた状態で、ウイング状フラップ部W又はヒップホールド用フラップ部Wの最幅広部21、22を指で摘まんで側方に引っ張ったとき、引っ張る方向とフラップ部が伸びる方向とがほぼ一致し、フラップ部の全体がより大きく引き伸ばされ、小さく丸めた使用済み生理用ナプキンの側部がより確実に閉塞できるようになる。
【0058】
図1に示される形態例では、前記エンボス部20の幅方向内側の端縁は、立体ギャザーBSの外側折り返し端部に重ならない部位で止めてあるが、図7に示されるように、吸収体4と重なる部位まで延在させてもよい。エンボス部20の幅方向内側を吸収体4と重なる部位まで延在させることにより、サイドフラップ部SFが吸収体4の側縁から連続的に延出するエンボス部20によって補強されるため、装着時や、使用済み生理用ナプキンを小さく丸めてサイドフラップ部SFを引っ張ったときなどに、エンボス部20の内側端部に応力が集中してサイドフラップ部SFが千切れるのが防止できる。幅方向内側を吸収体4と重なる部位まで延在させたエンボス部20を施す際は、図7(B)に示されるように、前記立体ギャザーBSの肌側への起立部分を形成するサイドシート7の内方側の外側折り返し部分にはエンボスがかからないように、外側折り返し部分を外側に折り返す前の下層側部分のみに施すのが好ましい。
【0059】
他の変形例として、図1に示されるように、所定の方向に相対的に高い伸縮性が付与された部位の生理用ナプキン1の前後方向の長さL1、L2はそれぞれ、生理用ナプキン1を前後方向に小さく丸めたときの周囲の長さMの2/3以上であるのが好ましい。前記L1、L2はそれぞれ、ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wにおける前記エンボス部20が設けられた範囲のナプキン前後方向の長さであり、ウイング状フラップ部Wの基端部のナプキン前後方向の長さ、ヒップホールド用フラップ部Wの基端部のナプキン前後方向の長さのことである。すなわち、使用済み生理用ナプキンを前後方向に小さく丸めたとき、周方向に対して一定の範囲にウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wが形成されることにより、側部の開口が確実に閉塞できるようにしている。生理用ナプキン1を前後方向に小さく丸めたときの周囲の長さMは、次式から求めた値とほぼ一致する。
【0060】
【数1】
ここで、T:生理用ナプキン1の厚み、F:生理用ナプキン1の全長である。
【0061】
〔他の形態例〕
上記形態例では、ウイング状フラップ部Wの後部側にヒップホールド用フラップ部Wが形成され、前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wの両方が所定の方向に伸縮性を有するように形成されていたが、図8図11に示されるように、前記ウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wは少なくともいずれか一方が形成されていればよく、所定方向への伸縮性もいずれか一方に付与されていればよい。
【0062】
図8は、サイドフラップ部SFにウイング状フラップ部Wのみが形成され、ヒップホールド用フラップ部Wが形成されない生理用ナプキン1であり、前記ウイング状フラップ部Wに前記エンボス部20が設けられることにより所定の方向に伸縮性が付与されている。本形態例では、図示例のように、前記粘着剤層23を前端部のみに配置し、使用済み生理用ナプキンを後端側から前後方向に巻き始めるようにすると、資材の節約及び丸めた後における両側部の包み易さの点で好ましいが、これに限るものではない。
【0063】
図9は、サイドフラップ部SFにヒップホールド用フラップ部Wのみが形成され、ウイング状フラップ部Wが形成されない生理用ナプキン1であり、前記ヒップホールド用フラップ部Wに前記エンボス部20が設けられることにより所定の方向に伸縮性が付与されている。本形態例では、図示例のように、前記粘着剤層23を後端部のみに配置し、使用済み生理用ナプキンを前端側から前後方向に巻き始めるようにすると、資材の節約及び丸めた後における両側部の包み易さの点で好ましいが、これに限るものではない。
【0064】
図10は、サイドフラップ部SFにウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wが形成された生理用ナプキン1であり、前記ウイング状フラップ部Wのみに前記エンボス部20が設けられることにより所定の方向に伸縮性が付与され、ヒップホールド用フラップ部Wには前記エンボス部20が設けられていない。本形態例では、図示例のように、前記粘着剤層23を前端部のみに配置し、使用済み生理用ナプキンを後端側から前後方向に巻き始めるようにすると、資材の節約及び丸めた後における両側部の包み易さの点で好ましいが、これに限るものではない。
【0065】
図11は、サイドフラップ部SFにウイング状フラップ部W及びヒップホールド用フラップ部Wが形成された生理用ナプキン1であり、前記ヒップホールド用フラップ部Wのみに前記エンボス部20が設けられることにより所定の方向に伸縮性が付与され、ウイング状フラップ部Wには前記エンボス部20が設けられていない。本形態例では、図示例のように、前記粘着剤層23を後端部のみに配置し、使用済み生理用ナプキンを前端側から前後方向に巻き始めるようにすると、資材の節約及び丸めた後における両側部の包み易さの点で好ましいが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0066】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイドシート、9…糸状弾性伸縮部材、10…圧搾溝、20…エンボス部、21・22…最幅広部、23…粘着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11