(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081981
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】砂防施設の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193254
(22)【出願日】2020-11-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】399035386
【氏名又は名称】株式会社本久
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】小布施 栄
(57)【要約】
【課題】本件発明は、砂防ソイルセメントを内部材として使用する砂防施設において、シート部材を介在させることにより、劣化要因となる外部からの水の侵入を遮断し、また、内部材の急激な乾湿の繰り返しを抑制し、内部材と内部材表面部の良好な水和反応を促すことにより、前記内部材の品質向上及び劣化を低減することができる砂防施設の構築方法を提供する。
【解決手段】本発明は、上方から流出する土砂群を堰き止める堤防状をなす砂防施設1の構築方法であって、前記砂防施設1は、外側面に敷設される外部保護壁枠2と、前記外部保護壁枠2内側に打設される内部材4と、前記打設した内部材4の天端面を保護する天端面保護部材5と、打設される内部材4と前記外部保護壁枠2との間に介在されるシート部材6と、を有し、前記外部保護壁枠2は、前記外部保護壁枠2を構成する外部保護部材3を連結して構成したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から流出する土砂群を堰き止める堤防状をなす砂防施設の構築方法であって、
前記砂防施設は、外側面に敷設される外部保護壁枠と、前記外部保護壁枠内側に打設される内部材と、前記打設した内部材の天端面を保護する天端面保護部材と、打設される内部材と前記外部保護壁枠との間に介在されるシート部材と、を有し、
前記外部保護壁枠は、前記外部保護壁枠を構成する外部保護部材を連結して構成した、
ことを特徴とする砂防施設の構築方法。
【請求項2】
上方から流出する土砂群を堰き止める堤防状をなす砂防施設の構築方法であって、
前記砂防施設は、外側面に敷設される外部保護壁枠と、前記外部保護壁枠内側に打設する内部材と、前記打設した内部材の天端面を保護する天端面保護部材と、打設される内部材と前記外部保護壁枠及び天端面保護部材との間に介在されたシート部材と、を有し、
前記外部保護壁枠は、前記外部保護壁枠を構成する外部保護部材を連結して構成した、
ことを特徴とする砂防施設の構築方法。
【請求項3】
前記シート部材は、あらかじめ前記外部保護部材の内側面に取り付けた、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の砂防施設の構築方法。
【請求項4】
構築した砂防施設の内部材は、前記シート部材の介在により劣化が低減される、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の砂防施設の内部材劣化低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防施設の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
砂防ソイルセメントは、コンクリートに比べて圧縮強度が3N/mm2と低く、厳寒な地域では耐久性に懸念があるとされている。特に、砂防ソイルセメントの流動タイプでは水セメント比が大きいため、発現強度が小さければ小さいほど凍結融解に対する抵抗性については懸念が大きいとの問題がある。
【0003】
このため、砂防ソイルセメントを内部材とする砂防堰堤では外気の影響が大きい場合には、例えばコンクリートや鋼材による外部保護部材を用いて施設構築することが前提となっており、凍結融解による劣化が起こっても、剥離(ポップアウト)に伴う体積減少(必要断面の確保)を生じさせないという観点のもと砂防ソイルセメントの活用が推進されている。
【0004】
しかしながら、これらの対策は砂防ソイルセメントにおける劣化進行の抑制といった根本的な課題解決に至っているとはいえない。
現状では、凍結融解や外部からの水の侵入による劣化防止対策としては、(1)内部材の圧縮強度の向上や、(2)外部保護部材の設置による断面確保の維持、といった対策がある。
【0005】
前記(1)に示す内部材の圧縮強度を向上させることは、凍結によるひび割れの発生と剥離の抵抗性が大きくなるため、6N/mm2以上の強度があれば凍結融解対策としては有効であるといわれている。しかしながら、砂防ソイルセメントに必要とされる圧縮強度は3N/mm2前後であることが一般的であり、経済性の観点から強度増加による対策がなされていないことが実状である。
【0006】
また、前記(2)に示す外部保護部材の設置による劣化対策は、いわば、内部材の凍結融解による劣化を許容した対策であり、内部材の劣化は経年に伴い進行するおそれがある。また、外部保護部材は、ある程度の外部からの水の侵入を遮断できるが、内部材の収縮や締固め不足によって隙間を生じやすいことに加え、外気の影響を受けやすいため、内部材表面部の劣化懸念は払しょくされない。
【0007】
さらに、常時流水や地下浸透水等外部からの水の侵入による劣化防止については、特に対策が講じられているわけではなく、施工現場ごと施工者の配慮(例えば打継処理や礫集中に留意した施工方法など)にゆだねられているほか、常時流水が多い現場では採用の是非を検討するといった対策がなされているのが現状であり、具体的な劣化抑制対策に関する技術は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件発明は、前記従来の課題を解決するために創案されたものであり、砂防ソイルセメントを内部材として使用する例えば砂防堰堤などの砂防施設において、砂防施設を構成する内部材と外部保護部材及び天端保護部材との間にシート部材を介在させることにより、劣化要因となる外部からの水の侵入を遮断し、また、内部材の急激な乾湿の繰り返しを抑制し、内部材と内部材表面部の良好な水和反応を促すことにより、前記内部材の品質向上及び劣化を低減することができる砂防施設の構築方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
上方から流出する土砂群を堰き止める堤防状をなす砂防施設の構築方法であって、
前記砂防施設は、外側面に敷設される外部保護壁枠と、前記外部保護壁枠内側に打設される内部材と、前記打設した内部材の天端面を保護する天端面保護部材と、打設される内部材と前記外部保護壁枠との間に介在されるシート部材と、を有し、
前記外部保護壁枠は、前記外部保護壁枠を構成する外部保護部材を連結して構成した、
ことを特徴とし、
または、
上方から流出する土砂群を堰き止める堤防状をなす砂防施設の構築方法であって、
前記砂防施設は、外側面に敷設される外部保護壁枠と、前記外部保護壁枠内側に打設する内部材と、前記打設した内部材の天端面を保護する天端面保護部材と、打設される内部材と前記外部保護壁枠及び天端面保護部材との間に介在されたシート部材と、を有し、
前記外部保護壁枠は、前記外部保護壁枠を構成する外部保護部材を連結して構成した、
ことを特徴とし、
または、
前記シート部材は、あらかじめ前記外部保護部材の内側面に取り付けた、
ことを特徴とし、
または、
構築した砂防施設の内部材は、前記シート部材の介在により劣化が低減される、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、砂防ソイルセメントを内部材として使用する例えば砂防堰堤などの砂防施設において、砂防施設を構成する内部材と外部保護部材及び天端保護部材との間にシート部材を介在させることにより、劣化要因となる外部からの水の侵入を遮断し、また、内部材の急激な乾湿の繰り返しを抑制し、内部材と内部材表面部の良好な水和反応を促すことにより、前記内部材の品質向上及び劣化を低減することができるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の構成を説明する説明図(1)である。
【
図2】本発明の構成を説明する説明図(2)である。
【
図3】シート部材を介在させることの有用性を試験観察した試験観察結果を説明する説明である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、
図1に基づいて本発明の構成を説明する。
符号1は、山部などの上方から流出する岩、土砂などの土砂群や流木などを堰き止める堤防状をした砂防施設を示している。前記砂防施設1としては、例えば砂防堰堤や渓流保全工などがある。
【0014】
そして前記砂防施設1は、前記砂防施設1の外側面に外部保護壁枠2が敷設されている。前記外部保護壁枠2は、複数枚の略方形状をした外部保護部材3を連結して構成されており、前記外部保護部材3は、コンクリート、コンクリート製の二次製品、鋼板等の鋼製部材、金属製メッシュ型枠、土砂型枠あるいは土嚢を用いた型枠などが用いられる。
【0015】
符号4は、前記外部保護壁枠2の内側に打設される内部材を示している。前記内部材4としては、砂防ソイルセメントの転圧タイプあるいは流動タイプのいずれも用いることができる。
【0016】
そして、符号5は前記打設した内部材4の天端面に敷設される天端面保護部材である。前記天端面保護部材5は、コンクリート、コンクリート製の二次製品、鋼板等の鋼製部材などが用いられる。
【0017】
図1から理解されるように、前記内部材4と前記外部保護壁枠2及び天端面保護部材5との間には、シート状をなすシート部材6が介在されている。前記シート部材6は、ビニールシート、フィルムシート、防水シートあるいは遮水シートなどが用いられる。
【0018】
ここで、前記シート部材6を用いることの有用性を様々な条件下で試験観察した結果を説明する。
【0019】
(試験観察1)
図3に供試体A~Dについて、外部保護部材3の有無、シート部材6の有無及び内部材4の圧縮強度を各々異なった条件で養生し、11月から翌年6月の約7か月後の供試体A~Dの状態を試験観察した結果を示す。
【0020】
供試体Aは外部保護部材3を敷設せず、内部材4が剥き出し(暴露)の状態、供試体Bは外部保護部材3を敷設していないが、内部材4の上からシート部材6を被覆した状態、供試体Cは低強度(1.2N/mm2)の内部材の側面に外部保護部材3を敷設し、前記外部保護部材3の上からシート部材6を被覆した状態、供試体Dは高強度(16.9N/mm2)の内部材の側面に外部保護部材3を敷設し、前記外部保護部材3の上からシート部材6を被覆した状態で養生した。
【0021】
本試験観察した期間は厳冬期における養生期間であったが、供試体Bの表面状態は供試体Aの表面状態と比較して、凍結によるひび割れは微小であった。また、試験観察後の供試体Bのコア強度は4.7 N/mm2あり、厳冬期においてもシート部材6を被覆した程度の養生方法であったとしても、前記内部材4の強度を増進することが確認できた。
【0022】
また、供試体Cに用いた内部材4の圧縮強度は、1.2N/mm2と低強度であったが、供試体Cの表面状態は供試体Aの表面状態と比較して、凍結によるひび割れなどの劣化は極微小であった。
さらに、供試体Dに用いた内部材4の圧縮強度は、コンクリート並みに高い16.9N/mm2と高強度とすると、凍結による劣化は全く観察されなかった。
【0023】
上記試験観察1結果から、外部保護部材3を敷設せずシート部材6を被覆するだけでも、内部材4を直接外気に触れさせない、特に外部からの水分の乾湿を遮断することにより凍上に伴うひび割れ等が発生しないようにすることができ、これにより良好な表面状態を形成することができ、また前記内部材4の強度を増進することができるとの有用な結果が得られた。
【0024】
また、厳冬期における養生期間であるにも関わらず、前記外部保護部材3の上からシート部材6を被覆することにより、圧縮強度が低強度である内部材4を用いたとしても、凍結によるひび割れは極微小であり、表面剥離等を伴う劣化を抑制することができるとの有用な結果が得られた。
【0025】
(試験観察2)
上記試験観察1の後、前記試験観察1で用いた供試体Bについて、内部材4を被覆していたシート部材6を剥がし前記内部材4が露出した状態(暴露状態)で約1年間放置した場合の前記供試体Bの表面劣化状態を試験観察した。
【0026】
試験観察2の結果、シート部材6を剥がし前記内部材4が露出した供試体Bは、供試体Bの表面に亀甲状ひび割れや、剥離による体積減少が生じ、表面状態が著しく劣化していた。
【0027】
上記試験観察2結果より、シート部材6の有無が内部材4の劣化に大きく作用するとの有用な結果が得られた。これは、シート部材6で内部材4を被覆することにより、外部からの水分の侵入を遮断することができ、また内部材4の吸水や乾湿の繰り返しを抑制することができるためであると考えられる。
【0028】
(試験観察3)
上記試験観察2の結果を受けて、屋外に生成した内部材4のみを設置し、前記内部材4自体の吸水や乾湿のよる劣化進行を約2年7か月間試験観察した。なお、本試験観察3で用いた内部材4はソイルセメントを用いて生成されたものであって、ソイルセメント片は礫や砂などの土砂にソイルセメント材と水、必要に応じて粉末粘土からなる細粒分を混入して生成されたものである。
【0029】
試験観察3の結果、ソイルセメント片が吸水し、またソイルセメント片の乾湿により、ソイルセメント材と礫や砂などの土砂との分離が進行し、土砂化が細かくなっていき、最終的には土砂化が観察された。
【0030】
これは、目視できない微細なひび割れや礫などの輪郭付近に間隙が存在している可能性があり、ひび割れや間隙からの水の侵入や吸水、乾湿が繰り返さることにより、土砂化の進行が早まる可能性があると考察される。
【0031】
上記考察からシート部材6を被覆することにより、目視では観察できない微細なひび割れや礫などの輪郭付近の間隙から吸水や乾湿を抑制することができれば、ひいては土砂化の進行を抑制できることが示唆された。
【0032】
(試験観察4)
転圧により作製した供試体を、作製してから約8か月後に脱型し、供試体の表面状態を確認した。なお、前記供試体は一軸圧縮強度が5N/mm2程度の内部材4を用いている。
【0033】
試験観察4の結果、従来であれば、転圧により作製した供試体の表面状態は粗くなりがちであるが、本試験観察4で用いた供試体の表面状態は、供試体表面の水和が進み、緻密な表面状態となっていることが観察された。
【0034】
その後、試験観察4で用いた脱型した供試体を暴露した状態で屋外に設置し、現在まで約4年以上、前記供試体の表面状態を観察しているが、供試体自体に影響を与えるような大きなひび割れや剥離などは観察されず、外観上の劣化は観察されていない。
このことから、内部材4を脱型しないことにより、前記内部材4の表面状態の緻密さが向上し、品質維持の効果が高まることが示唆された。
【0035】
(試験観察5)
上記試験観察4の結果から、圧縮強度が5N/mm2以上の内部材4であれば、ある程度の圧縮強度を有しているため、前記内部材4表面状態が著しく劣化することは少ないことが示唆された。しかしながら、砂防施設などに用いられる内部材4、例えば砂防ソイルセメントなどは、一般的には3N/mm2前後の圧縮強度が要望されており、5N/mm2未満の圧縮強度を用いた場合、表面状態の劣化は大きく進行すると考えられる。
【0036】
上記の状況を鑑みて、試験観察5では内部材4の圧縮強度が3N/mm2前後である4.2N/mm2の供試体を作製し、前記供試体の半分をシート部材6で被覆し、もう半分を暴露した状態で屋外に設置し、約1年後、約2年後の経過観察を行った。
【0037】
まず約1年後の試験観察5の結果、暴露した状態で設置した供試体の半分については凍結融解の影響でひび割れなどの劣化が観察された。一方、シート部材6で被覆した供試体の半分については、凍結融解の影響を受けておらず、ひび割れなどの劣化も観察されず、健全な状態であった。
【0038】
つぎに、約2年後の試験観察5の結果、暴露した状態で設置した供試体の半分については劣化が進行し、破断分離した状態であった。一方、シート部材6で被覆した供試体の半分については、ひび割れなどの劣化は観察されず、健全な状態であった。
【0039】
また、暴露した状態で設置した供試体の半分が劣化により破断分離した後、シート部材6で被覆した半分の供試体の破断面を観察すると、乾湿の影響により乾燥した部分に多くのひび割れが観察された。これは、破断面については前記シート部材6で被覆されていないため、乾湿の影響を大きく受けたものと考えられる。
【0040】
上記約1年後および約2年後の試験観察5の結果から、5N/mm2未満の圧縮強度であったとしても、内部材4にシート部材6を被覆することにより、屋外に設置したとしても外気の影響、特に乾湿の影響を大きく受けず、前記内部材4の品質は維持されることが確認された。
【0041】
上述の試験観察1乃至5から、シート部材6を被覆することにより内部材4表面からの急激な水分の蒸発を防ぐことができ、かつ内部材4表面が良好な養生状態を維持することが可能となることが示唆された。
なお、上記試験観察1乃至5では、シート部材6を被覆する方法で用いているが、この方法に限定されるものではなく、例えばシート部材6を介在するなどの方法により用いてもよい。
【0042】
また、前記内部材4として用いられる砂防ソイルセメントは、母材に砂礫を用いることが多いため、前記シート部材6を被覆するあるいは介在させることにより、外部からの水の侵入を遮断し、内部材4の乾湿の繰り返しを抑制することができ、また、シート部材6の養生効果による表面状態の緻密化と相まって、凍上に伴うひび割れを抑制することができることが示唆された。
【0043】
その結果、前記内部材4として用いられる砂防ソイルセメントの品質を保持することができ、また、前記内部材4の乾湿の繰り返しが抑制され、内部材4表面は水和反応が促進され緻密な状態となり品質向上につながるのである。
【0044】
次に、本発明の構築方法について説明する。
まず、略方形状をした外部保護部材3を敷設し、複数枚の前記外部保護部材3を連結して外部保護壁枠2を形成する。この際、構築する砂防施設1の外側面が傾斜角度を有する場合は、前記外部保護部材3を傾斜した角度で敷設することにより、前記砂防施設1に傾斜面を設けることができる。
【0045】
そして、前記外部保護壁枠2を形成した後、前記外部保護壁枠2の内側面にシート部材6を取り付け、シート部材6を取り付けた後、前記外部保護壁枠2内側に内部材4を打設する。
【0046】
あるいは、外部保護壁枠2を構成する外部保護部材3の内側面にあらかじめシート部材6を取り付けておき、シート部材6が取り付けられた前記外部保護部材3を敷設し、前記外部保護壁枠2を形成することもできる。
【0047】
なお、前記シート部材6は、前記外部保護部材3の内側面全体を容易に取り付けることができるため遮水効果が高いことに加え、止水板のように内部材4に埋設するものではないため、砂防施設1の一体性を損なわないといった特徴がある。
【0048】
ここで、前記外部保護部材3及び外部保護壁枠2の内側面にシート部材6を取り付ける方法としては、例えば貼着、圧着、あるいは被覆するなどの方法が考えられる。
【0049】
そして、
図2(b)から理解されるように、上下方向に前記シート部材6を取り付ける際には、シート部材6とシート部材6とのつなぎ目が重なり合うようにし、上方のシート部材6のつなぎ目が下方のシート部材6のつなぎ目の上となるように重ね合わせる。そして、つなぎ目の重ね合わせた部分には、気密粘着性テープや気密防水粘着性テープなどの粘着性テープ7を用いて、前記上方のシート部材6のつなぎ目と下方のシート部材6を張り合わせる(
図2(a)参照)。
【0050】
これにより、天端面保護部材5あるいは側面保護壁部2を敷設していたとしても浸水してくる水を遮断することができ、また上方のシート部材6のつなぎ目を下方のシート部材6のつなぎ目の上に重ね合わせることにより、上方から流れてくる雨水などを内部材4に流入することなく下方に流すことができる。
【0051】
また、シート部材6とシート部材6との重ね合わせた部分を粘着性テープ7で張り合わせることにより、内部材4の収縮や締固め不足により隙間が生じたとしても外気の影響を最小限に抑えることでき、その結果前記内部材4の劣化を抑制することができる。
また、アンカー部分などの切断部分についても粘着性テープ7で張り合わせることにより外部からの水が浸入しないよう設置する。
【0052】
次に、形成した外部保護壁枠2の内側に内部材4を打設する。前記内部材4は、砂防ソイルセメントの転圧タイプあるいは流動タイプのいずれも用いることができる。
【0053】
従来は、凍結融解対策としては6N/mm2以上の圧縮強度があれば有効であるといわれているが、砂防ソイルセメントに必要とされる圧縮強度は3N/mm2前後であることが一般的であるため、凍結融解対策としては不十分であった。
【0054】
しかし、上述の試験観察結果からも明らかなように、圧縮強度が3N/mm2前後の砂防ソイルセメントを用いたとしても、前記シート部材6を介在させることにより内部材4を打設し養生する際の適切な温度管理や湿潤状態を保持することができるため、十分凍結融解対策となるのである。また、圧縮強度を高くするために混合する材料の配分を変更するため経済的な負担を抑えることができるのである。
【0055】
次に、打設した内部材4の天端面に天端面保護部材5を敷設する。前記天端面保護部材5と内部材4との間にもシート部材6を介在させ、シート部材6とシート部材6とを重ね合わせた部分については粘着性テープ7を張り合わせることにより、前記内部材4への水の侵入を遮断し、前記内部材4の急激な水分の蒸発を防止することができる。
【0056】
本発明の砂防施設1の構築方法により、上流からの流水の内部への侵入、特に打ち継ぎ目や礫間に水ミチが形成されることによる劣化や弱部の形成懸念が解消され、外部保護壁枠2及び天端面保護部材5と内部材4との間の遮水を行う目的も併せ、シート部材6を設置することで砂防施設1の長期的な品質維持が可能となるのである。
【符号の説明】
【0057】
1 砂防施設
2 外部保護壁枠
3 外部保護部材
4 内部材
5 天端面保護部材
6 シート部材
7 粘着性テープ