IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-検出器 図1
  • 特開-検出器 図2
  • 特開-検出器 図3
  • 特開-検出器 図4
  • 特開-検出器 図5
  • 特開-検出器 図6
  • 特開-検出器 図7
  • 特開-検出器 図8
  • 特開-検出器 図9
  • 特開-検出器 図10
  • 特開-検出器 図11
  • 特開-検出器 図12
  • 特開-検出器 図13
  • 特開-検出器 図14
  • 特開-検出器 図15
  • 特開-検出器 図16
  • 特開-検出器 図17
  • 特開-検出器 図18
  • 特開-検出器 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081982
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】検出器
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/02 20060101AFI20220525BHJP
   H01J 40/06 20060101ALI20220525BHJP
   H01J 43/02 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01J49/02 500
H01J49/02 200
H01J40/06
H01J43/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193255
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】高塚 清香
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩之
(57)【要約】
【課題】アバランシェダイオードを含み、荷電粒子又は光を検出する検出器の応答を、検出器の応答を律速するアバランシェダイオードの構造を変えることなく、高速化する。
【解決手段】アバランシェダイオード駆動回路は、第1コンデンサC1及び第1抵抗R1を含む。第1コンデンサC1及び第1抵抗R1は、いずれもアバランシェダイオード220に直列に、かつ、互いに並列に接続される。第1コンデンサC1の静電容量は、アバランシェダイオード220の静電容量の10倍以下である。アバランシェダイオード220の見かけの静電容量が小さくなり、アバランシェダイオード駆動回路を含む検出器全体の応答が高速化される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子又は光を検出する検出器であって、
前記荷電粒子に起因して生成された電子、前記光に起因して生成された光電子、又は前記光電子の増倍によって生成された電子が入射する電子入射面を有するアバランシェダイオードと、
前記アバランシェダイオードを駆動する駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、第1コンデンサと第1抵抗とを有し、
前記第1コンデンサ及び前記第1抵抗は、いずれも前記アバランシェダイオードに直列に接続され、
前記第1コンデンサと前記第1抵抗とは、互いに並列に接続される、
検出器。
【請求項2】
前記第1コンデンサの静電容量は、前記アバランシェダイオードの静電容量の10倍以下である、請求項1に記載の検出器。
【請求項3】
前記第1コンデンサの静電容量は、前記アバランシェダイオードの静電容量以下である、請求項2に記載の検出器。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記アバランシェダイオード、前記第1コンデンサ及び前記第1抵抗に並列に接続された第2コンデンサをさらに有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項5】
前記第1抵抗の抵抗値は、30kΩ以上500kΩ以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項6】
前記第1コンデンサ及び前記第1抵抗は、前記アバランシェダイオードのP側又はN側に接続される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項7】
前記第1コンデンサ及び前記第1抵抗は、前記アバランシェダイオードのP側に接続され、
前記駆動回路は、前記アバランシェダイオードのN側に接続されたACカプラーとしての第3コンデンサをさらに有する、
請求項6に記載の検出器。
【請求項8】
前記荷電粒子が入射する入力面と前記荷電粒子に起因して生成された前記電子を出射する出力面とを有するマイクロチャネルプレートと、
フォーカス電極と、をさらに備え、
前記マイクロチャネルプレートの前記出力面から出射した前記電子が、前記フォーカス電極によって集束されて、前記アバランシェダイオードの前記電子入射面に入射する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の検出器。
【請求項9】
前記光を前記光電子に変換する光電変換部をさらに備え、
前記光電子又は前記光電子の増倍によって生成された前記電子が前記アバランシェダイオードの前記電子入射面に入射する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン、電子などの荷電粒子、又は光を検出する検出器に関する。本開示に係る検出器は、例えば質量分析に用いられる。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型質量分析に用いられる荷電粒子検出器、例えばイオン検出器として、マイクロチャネルプレートとアバランシェダイオードとを含む検出器が知られている(特許文献1)。マイクロチャネルプレートは、イオン、電子などの荷電粒子の入射に応答して電子を放出する電子増倍素子である。アバランシェダイオードは、放出された電子を捕獲して電気信号として出力する素子である。以下、マイクロチャネルプレートを「MCP」と表記し、アバランシェダイオードを「AD」と表記する。
【0003】
このような検出器において、ADの応答特性を高速化することが望まれている。例えば、質量分析における質量分解能は、イオン検出器の応答特性に依存するので、質量分析における質量分解能を向上させるためには、イオン検出器の応答特性を向上させる必要がある。具体的には、イオン検出器の応答を高速化する必要がある。
【0004】
MCPとADとを含むイオン検出器の応答速度は、ADの応答速度によって律速される。したがって、イオン検出器の応答特性を向上させるために、ADの応答を高速化することが試みられている。
【0005】
ADの応答を高速化するために、ADの静電容量を小さくすることが知られている。ADの静電容量は、ADの活性層の面積に比例し、厚さに反比例するので、ADの活性層を厚くすれば、ADの静電容量を小さくして、その応答を高速化することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-16918号公報
【特許文献2】特開2007-250585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ADの活性層を厚くすれば、ADの静電容量を小さくすることができる。その一方で、活性層が厚くなった分、AD内で発生したキャリア(電子及びホール)の走行距離が長くなり、キャリアの走行時間も長くなる。その結果、誘導電流の時間波形が広がってしまい、それが応答速度の低下を招く。したがって、AD自体の応答の高速化には限界がある。
【0008】
本開示は、上述の課題を解決し、ADを用いて荷電粒子又は光を検出する検出器の応答の高速化を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る検出器は、荷電粒子又は光を検出する検出器であって、荷電粒子に起因して生成された電子、光に起因して生成された光電子、又は光電子を増倍して生成された電子が入射する電子入射面を有するADと、ADを駆動する駆動回路と、を備える。駆動回路は、第1コンデンサと第1抵抗とを有する。第1コンデンサ及び第1抵抗は、いずれもADに直列に接続され、第1コンデンサと第1抵抗とは、互いに並列に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る検出器によれば、ADを用いて荷電粒子又は光を検出する検出器の応答の高速化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係るイオン検出器の回路構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るイオン検出器の構造の一例を示す切り欠き斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るイオン検出器のADの構造の一例を模式的に示す断面図である。
図4】第1の実施形態に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例を示す回路図である。
図5】比較例のAD駆動回路の等価回路を示す回路図である。
図6】第1の実施形態に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例の等価回路を示す回路図である。
図7】ADの応答波形の一例を示す波形図である。
図8】電子入射面の実効的な直径が1mmのADの応答波形をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図9】電子入射面の実効的な直径が3mmのADの応答波形をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図10】電子入射面の実効的な直径が3mmのADの電極間の電位差の時間変化をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図11】電子入射面の実効的な直径が3mmのADの応答波形をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図12】電子入射面の実効的な直径が5mmのADの電極間の電位差の時間変化をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図13】電子入射面の実効的な直径が5mmのADの応答波形をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図14】第1の実施形態の第1の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例を示す回路図である。
図15】第1の実施形態の第2の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例を示す回路図である。
図16】第2の実施形態に係るイオン検出器の回路構成の一例を示す回路図である。
図17】第2の実施形態に係るイオン検出器の外観の一例を示す図である。
図18】第2の実施形態に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例を示す回路図である。
図19】第3の実施形態に係る光検出器の回路構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に係る検出器は、荷電粒子又は光を検出する検出器であって、荷電粒子に起因して生成された電子、光に起因して生成された光電子、又は光電子を増倍して生成された電子が入射する電子入射面を有するADと、ADを駆動する駆動回路と、を備える。駆動回路は、第1コンデンサと第1抵抗とを有する。第1コンデンサ及び第1抵抗は、いずれもADに直列に接続され、第1コンデンサと第1抵抗とは、互いに並列に接続される。
【0013】
この検出器は、ADを駆動する駆動回路がADに直列に接続された第1コンデンサを有するので、見かけ上、静電容量が小さいADが接続されていることになる。また、第1抵抗が第1コンデンサに並列に接続されるので、第1コンデンサがADに直列に接続されても、ADに電圧を印加することが可能である。そのため、AD及び駆動回路を含む検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0014】
上記の検出器において、第1コンデンサの静電容量は、ADの静電容量の10倍以下であってもよい。この場合、AD及び駆動回路を含む検出器全体としての応答を高速化する効果を大きくすることができる。
【0015】
上記の検出器において、第1コンデンサの静電容量は、ADの静電容量以下であってもよい。この場合、AD及び駆動回路を含む検出器全体としての応答を高速化する効果をさらに大きくすることができる。
【0016】
上記の検出器において、駆動回路は、AD、第1コンデンサ及び第1抵抗に並列に接続された第2コンデンサをさらに有してもよい。この場合、ADの電子入射面と接地電位との間にリターンパスが形成され、ADへの連続的な電子入射に伴って発生する電子入射面での電圧降下に起因する出力電圧のDC成分の変動をキャンセルすることができる。また、ADから出力される高速信号がリターンパスを介してADまで低インピーダンスで戻ることが可能になる。
【0017】
上記の検出器において、第1抵抗の抵抗値は、30kΩ以上500kΩ以下であってもよい。この場合、ADの電極間の電位差の変動を抑えることができ、また、応答波形の対称性を保つことができる。
【0018】
上記の検出器において、第1コンデンサ及び第1抵抗は、ADのP側又はN側に接続されてもよい。いずれの場合でも、AD及び駆動回路を含む検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0019】
上記の検出器において、第1コンデンサ及び第1抵抗は、ADのP側に接続され、駆動回路は、ADのN側に接続されたACカプラーとしての第3コンデンサをさらに有してもよい。この場合、交流成分を信号として取り出すことができるので、例えば、両極性のイオンが検出対象となり得る質量分析に用いることができる。
【0020】
上記の検出器は、荷電粒子が入射する入力面と荷電粒子に起因して生成された電子を出射する出力面とを有するマイクロチャネルプレートと、フォーカス電極と、をさらに備え、マイクロチャネルプレートの出力面から出射した電子が、フォーカス電極によって集束されて、ADの電子入射面に入射してもよい。この場合、荷電粒子がマイクロチャネルプレートの入力面に入射したことに起因して生成された電子が、マイクロチャネルプレートで増倍されて出力面から出射され、フォーカス電極で集束されてADの電子入射面に入射するので、荷電粒子を高感度かつ高分解能で検出することができる。
【0021】
上記の検出器は、光を光電子に変換する光電変換部をさらに備え、光電子又は光電子の増倍によって生成された電子がADの電子入射面に入射してもよい。この場合、光が光電変換部に入射したことに起因して生成された光電子、又は光電子の増倍によって生成された電子がADの電子入射面に入射するので、光を高感度かつ高分解能で検出することができる。
【0022】
本開示の検出器の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本開示の検出器の第1の実施形態に係るイオン検出器1Aの回路構成の一例を示す図である。第1の実施形態に係るイオン検出器1Aは、電子増倍部としてのMCPユニット100と、メッシュ状の加速電極150と、一対のフォーカス電極(電子レンズ)160、170と、ADカバー180と、信号出力部200としてのAD220と、信号出力端子110と、を備える。
【0024】
MCPユニット100は、入力面102aと出力面102bとを有するMCP102を含み、MCP102の側面は絶縁性材料からなる絶縁リングによって取り囲まれる。MCP102は、入力面102aに荷電粒子が入射すると、その荷電粒子に応答して電子を発生させ、その電子を増倍して出力面102bから出射させる。MCP102は、一例として、鉛ガラスを主成分とする薄型円盤状の構造体である本体を含み、本体には、円環状の外周部を除いて厚さ方向(入力面102aから出力面102bに向かう方向)に沿って延びた複数の貫通孔であるチャネルが形成されている。また、入力面102aの外周部、及び出力面102bの外周部には、電極が形成されている。
【0025】
加速電極150は、MCP102とAD220との間、例えばMCP102とフォーカス電極160との間に配置され、MCP102の出力面102bから出射した電子を加速する。
【0026】
一対のフォーカス電極160、170は、MCP102とAD220との間、例えば加速電極150とAD220との間に配置され、加速電極150によって加速された電子をAD220に向けて集束させる。
【0027】
ADカバー180は、AD220に向けて集束した電子がAD220を搭載するプリント配線基板221に当たって、プリント配線基板221がチャージアップすることを防止する。
【0028】
AD220は、プリント配線基板221の上面(出力面102b側の面)に搭載され、加速電極150及び一対のフォーカス電極160、170を挟んでMCP102の出力面102bと対向する。プリント配線基板221の下面(信号出力端子110側の面)にはSMAジャック120Aが取り付けられる。AD220は、一対のフォーカス電極160、170によって集束された電子を捕獲して電気信号として出力する。
【0029】
MCPユニット100の入力面102aは、電源910に接続され、電位Va(例えば-7kV)に設定される。入力面102aと出力面102bとの間には、電源920により電位差Vb(例えば500V~1kV)が確保される。出力面102bは、出力面102bと接地配線との間において互いに直列に接続された抵抗Ra(例えば40MΩ)及び抵抗Rb(例えば20MΩ)を介して接地される。出力面102bの電位(すなわち、出力面102bと接地との電位差)は、抵抗Ra及び抵抗Rbにより分圧される。抵抗Raと抵抗Rbとの間に位置するノードN1には加速電極150が接続される。一対のフォーカス電極のうち出力面102b側に位置するフォーカス電極160は、MCP102の出力面102bと同電位に設定される。
【0030】
一対のフォーカス電極のうちAD220側に位置するフォーカス電極170は、抵抗Rc(例えば1kΩ)を介して、電位Vd(例えば0~400V)に設定される電源940に接続される。ADカバー180は、フォーカス電極170と同電位に設定される。
【0031】
電源940は、抵抗Rd(例えば1kΩ)、第1コンデンサであるコンデンサC1、及び第1抵抗である抵抗R1を介してAD220のP側電極に接続される。コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220のP側電極及び抵抗Rdに直列に接続され、かつ、互いに並列に接続される。なお、AD220のP側電極は、AD220のP+型半導体層とオーミック接触する電極であり、AD220は、P側に電子入射面を有する。詳細は後述する。
【0032】
コンデンサC1及び抵抗R1と抵抗Rdとの間に位置するノードN2は、第2コンデンサであるコンデンサC2(例えば10nF)を介してSMAジャック120Aの側面に接続され、SMAジャック120Aの側面は接地される。信号出力端子110も終端抵抗Re(例えば50Ω)を介して接地される。したがって、AD220の電子入射面と接地されたSMAジャック120Aの側面との間に、リターンパスが形成される。AD220への電子入射が続くとAD220の電子入射面で電圧降下が発生する。この場合、AD220から信号出力端子110に出力される信号(出力電圧)には、この電圧降下に起因したDC成分の変動が反映されることになる。そこで、AD220の電子入射面とSMAジャック120Aの側面との間にコンデンサC2が配置されることにより、出力信号に反映されるDC成分の変動がキャンセルされる。また、コンデンサC2は、AD220から信号出力端子110に出力される高速信号が、リターンパスを介してAD220まで低インピーダンスで戻ることを可能にする。
【0033】
図2は、第1の実施形態に係るイオン検出器1Aの構造の一例を示す切り欠き斜視図である。イオン検出器1Aは、MCPユニット100と、図示しないメッシュ状の加速電極150と、一対のフォーカス電極160、170と、AD220を搭載したプリント配線基板221とを備え、これらが互いに固定されている。
【0034】
MCPユニット100は、MCP102と、入力側電極103と、出力側電極104とを備える。MCP102の側面は、前述のとおり絶縁リングによって取り囲まれている。MCP102の円環状の外周部及び絶縁リングは、入力側電極103と出力側電極104とによって挟持される。入力側電極103は、MCP102の入力面102aに入射する荷電粒子を通過させるための開口103aを有する。同様に、出力側電極104は、MCP102の出力面102bから出射する電子を通過させるための開口を有する。入力側電極103の開口103aの中心軸及び出力側電極104の開口の中心軸は、MCP102の中心軸と一致する。
【0035】
図示しない加速電極150は、第1絶縁スペーサ151と第2絶縁スペーサ152とによって挟持される。
【0036】
入力側電極103と、MCP102の側面を取り囲む絶縁リングと、出力側電極104と、第1絶縁スペーサ151とは、固定ネジ130によって互いに固定される。これによって、MCPユニット100と加速電極150とが互いに固定される。
【0037】
フォーカス電極160は、筒状の導電性部材であり、その中心軸は、MCP102の中心軸と一致する。フォーカス電極160は、その一端が第2絶縁スペーサ152に固定される。フォーカス電極160の他端には、筒の内側に向けてせり出した円環部161が設けられる。フォーカス電極160の他端は、フォーカス電極170の一端と対向する。
【0038】
フォーカス電極170は、筒状の導電性部材であり、その中心軸は、MCP102の中心軸と一致する。フォーカス電極170の一端には、フランジ部171が設けられる。
【0039】
ADカバー180は、円盤状の導電部材であり、フォーカス電極170の他端を塞ぐように設けられる。ADカバー180には、MCPユニット100の方向に突出した円形の突出部181が形成される。突出部181は、MCP102の出力面102bから出射し、一対のフォーカス電極160、170によって集束された電子SEを通過させるための開口182を有する。突出部181の中心軸は、MCP102の中心軸と一致する。開口182の中心軸は、MCP102の中心軸からMCP102のバイアス方向に沿ってずれている。
【0040】
AD220を搭載したプリント配線基板221は、ADカバー180に取り付けられ、ADカバー180によって覆われる。
【0041】
図3は、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのAD220の構造の一例を模式的に示す断面図である。AD220は、N側電極222、N+型半導体層223、N-型半導体層224、P型半導体層(アバランシェ増倍層)225、P+型半導体層226、P側電極227、絶縁膜228、及びパッシベーション膜229を含む。N側電極222は、N+型半導体層223の裏面に設けられている。N-型半導体層224及びP型半導体層225は、N+型半導体層223の表面側に、例えばイオン注入によって形成されている。N+型半導体層223の厚さ方向において、N-型半導体層224は、N+型半導体層223とP型半導体層225との間に位置する。N-型半導体層224及びP型半導体層(アバランシェ増倍層)225は、活性層を構成する。P+型半導体層226は、P型半導体層225の表面に設けられ、P型コンタクト層として機能する。絶縁膜228は、N+型半導体層223、N-型半導体層224、P型半導体層225、及びP+型半導体層226からなる半導体構成物の表面を覆う。絶縁膜228は、電子を通過させるための開口を有する。P側電極227は、絶縁膜228上において、絶縁膜228の開口を囲むように配置されている。P側電極227は、絶縁膜228に形成された別の開口を通じて、P+型半導体層226とオーミック接触を形成する。パッシベーション膜229は、絶縁性の膜であって、P側電極227及び絶縁膜228を覆う。AD220は、P側(P+型半導体層226側)がMCP102の出力面102bに向くように、プリント配線基板221の上面に搭載される。すなわち、AD220は、P側に電子入射面を有する。
【0042】
図4は、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのAD駆動回路の一例を示す回路図である。上述のとおり、AD220のP側電極は、抵抗Rd、第1コンデンサであるコンデンサC1、及び第1抵抗である抵抗R1を介して電源940に接続される。コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220及び抵抗Rdに直列に接続され、かつ、互いに並列に接続される。コンデンサC1及び抵抗R1と抵抗Rdとの間に位置するノードN2は、リターンパスを形成するために、第2コンデンサであるコンデンサC2及びSMAジャック120Aの側面を介して接地される。AD220のN側電極は、信号出力端子110に接続される。
【0043】
図5図7を参照して、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのAD駆動回路の動作を説明する。図5は、比較例のAD駆動回路の等価回路を示す回路図である。図6は、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのAD駆動回路の一例の等価回路を示す回路図である。図7は、AD220の応答波形の一例を示す波形図である。図5及び図6において、AD220は、等価回路によって、すなわち、静電容量CADを有するコンデンサC4と電流源S1とが互いに並列に接続された回路によって表される。
【0044】
比較例のAD駆動回路(図5)において、AD220のP側電極は、抵抗Rdのみを介して、ADバイアスを印加する電源940に接続され、AD220のN側は、信号出力端子110に接続される。このAD駆動回路において、仮にAD220の誘導電流が0≦t≦T(t:時刻、T:誘導電流の持続時間)で一定値uであるとすると、AD220の応答波形vは、式(1)及び式(2)で表される。ここで、Rは、負荷のインピーダンスを表し、Cは、AD220を含み、誘導電流が流れる回路の実効的な静電容量を表す。
【数1】

【数2】
【0045】
上記の式で表されるAD220の応答波形は、図7に示される。図7に示された白丸は式(1)に対応し、黒丸は式(2)に対応する。上記の式と図7に示された応答波形とを参照すれば分かるように、応答波形の半値幅を狭めて応答を高速化するためには、静電容量Cを小さくするか、誘導電流の持続時間Tを短くする必要がある。
【0046】
第1の実施形態に係るイオン検出器1AのAD駆動回路(図6)においては、静電容量Cを有するコンデンサC1及び抵抗R1が追加される。コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続される。したがって、AD220の静電容量CAD(AD220の等価回路に含まれるコンデンサC4の静電容量)とコンデンサC1の静電容量Cとから合成される合成静電容量Cは、式(3)で表されるように、AD220の静電容量CADより小さくなる。
【数3】
【0047】
これは、図6に示されたAD駆動回路においては、図5に示された比較例のAD駆動回路に比べて、見かけ上、静電容量が小さいAD220が接続されていることを意味する。一方、使用するAD220が両方のAD駆動回路において同じであれば、AD220の活性層の厚さ、AD220内で発生したキャリアの走行距離及び走行時間、並びにAD220の誘導電流も、両方の駆動回路において同じである。そのため、図5に示されたAD駆動回路の代わりに図6に示されたAD駆動回路を用いても、誘導電流が広がることはなく、それが応答速度の低下を招くこともない。また、抵抗R1がコンデンサC1に並列に接続されるので、コンデンサC1がAD220に直列に接続されても、AD220に電圧を印加することが可能である。
【0048】
したがって、第1の実施形態に係るイオン検出器1Aによれば、AD220及びAD駆動回路を含むイオン検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0049】
コンデンサC1の静電容量CがAD220の静電容量CADより大きくなるにつれて、合成静電容量CがAD220の静電容量CADに近づくので、AD220の見かけの静電容量を小さくする効果は小さくなる。また、抵抗R1の抵抗値がAD220の抵抗値と同程度以上になると、抵抗R1で大きな電圧降下が生じる。電源940からAD220に印加される電圧は、その電圧降下分だけ小さくなるので、AD220の駆動に必要な電圧を印加できなくなる可能性がある。
【0050】
図8及び図9は、抵抗R1の抵抗値を100kΩとし、コンデンサC1の静電容量Cを様々な値にしたときのAD220の応答波形をシミュレーションした結果の一例を示す図である。図8は、電子入射面の実効的な直径が1mmのAD220(CAD=5.8pF)に関する結果を示し、図9は、電子入射面の実効的な直径が3mmのAD220(CAD=24pF)に関する結果を示す。なお、図8及び図9には、コンデンサC1及び抵抗R1がないときの応答波形も併せて示される。図中の線G1は、C=CADの場合を示し、線G2は、C=2CADの場合を示し、線G3は、C=5CADの場合を示し、線G4は、C=10CADの場合を示し、線G5は、コンデンサC1及び抵抗R1がない場合を示す。
【0051】
電子入射面の実効的な直径が1mmのAD220(図8)では、応答波形の半値幅(半値全幅FWHM)は、C=CADの場合(線G1)は420ps(ピコ秒)、C=2CADの場合(線G2)は460ps、C=5CADの場合(線G3)は480ps、C=10CADの場合(線G4)は490ps、コンデンサC1及び抵抗R1がない場合(線G5)は510psである。
【0052】
電子入射面の実効的な直径が3mmのAD220(図9)では、応答波形の半値幅は、C=CADの場合(線G1)は840ps、C=2CADの場合(線G2)は1130ps、C=5CADの場合(線G3)は1220ps、C=10CADの場合(線G4)は1300ps、コンデンサC1及び抵抗R1がない場合(線G5)は1400psである。
【0053】
図8及び図9に示された応答波形から、少なくともコンデンサC1の静電容量CがADの静電容量CADの10倍以下の場合に、応答が高速化されることが分かる。
【0054】
図10図13は、コンデンサC1の静電容量Cを2pFとし、抵抗R1の抵抗値Rを様々な値にしたときのAD220の電極間の電位差の時間変化及びAD220の応答波形を、波高10mVの誘導電流が周波数10MHzで発生するという条件でシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【0055】
図10は、電子入射面の実効的な直径が3mmのAD220(CAD=24pF)の電極間の電位差の時間変化に関する結果を示し、図11は、同じAD220の応答波形に関する結果を示す。図12は、電子入射面の実効的な直径が5mmのAD220(CAD=85pF)の電極間の電位差の時間変化に関する結果を示し、図13は、同じAD220の応答波形に関する結果を示す。
【0056】
図10及び図12中の線L1は、R=10kΩの場合を示し、線L2は、R=100kΩの場合を示し、線L3は、R=500kΩの場合を示し、線L4は、R=1MΩの場合を示し、線L5は、R=10MΩの場合を示す。
【0057】
図11及び図13中の線M1は、R=100kΩの場合を示し、線M2は、R=30kΩの場合を示し、線M3は、R=10kΩの場合を示し、線M4は、R=1kΩの場合を示す。
【0058】
実際の測定から、ADゲインの変動を10%以下に抑えるには、AD220の電極間の電位差の変動を5V以下に抑える必要があることが分かっている。図10及び図12に示されたAD220の電極間の電位差の時間変化から、抵抗R1の抵抗値を500kΩ以下にすれば、AD220の電極間の電位差の初期値(300V)からの低下が5V以下に抑えられることが分かる。したがって、AD220の電極間の電位差の変動を抑えるために、抵抗R1の抵抗値は、例えば500kΩ以下である。また、図11及び図13に示されたAD220の応答波形から、抵抗R1の抵抗値が30kΩ以上であれば、応答波形の対称性が保たれていることが分かる。したがって、応答波形の対称性を保つために、抵抗R1の抵抗値は、例えば30kΩ以上である。
【0059】
第1の実施形態に係るイオン検出器1AのAD駆動回路においては、コンデンサC1及び抵抗R1がAD220のP側に接続される。しかし、コンデンサC1及び抵抗R1は、AD220のN側に接続されてもよい。
【0060】
図14は、第1の実施形態の第1の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例を示す回路図である。第1の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路は、第1コンデンサであるコンデンサC1及び第1抵抗である抵抗R1がAD220のN側に接続されている点で、第1の実施形態に係るイオン検出器のAD駆動回路と異なる。第1の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路においても、コンデンサC1及び抵抗R1がいずれもAD220に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続されるので、AD駆動回路に接続されたAD220の静電容量が、見かけ上、図5に示された比較例のAD駆動回路に接続されたAD220の静電容量より小さい。したがって、AD220及びAD駆動回路を含むイオン検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0061】
図15は、第1の実施形態の第2の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路の一例を示す回路図である。第2の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路は、第1の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路と同様に、第1コンデンサであるコンデンサC1及び第1抵抗である抵抗R1がAD220のN側に接続されているが、抵抗R1が直接接地されている点で、第1の変形例のイオン検出器のAD駆動回路と異なる。第2の変形例に係るイオン検出器のAD駆動回路においても、コンデンサC1及び抵抗R1がいずれもAD220に直列に接続され、かつ、終端抵抗Re及び接地配線を通じて互いに並列に接続されるので、AD220及びAD駆動回路を含むイオン検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0062】
図16は、本開示の検出器の第2の実施形態に係るイオン検出器1Bの回路構成の一例を示す回路図である。第2の実施形態に係るイオン検出器1Bは、両極性のイオンが検出対象となり得る質量分析に用いられる。第2の実施形態に係るイオン検出器1Bは、AD220と信号出力端子110との間に、交流成分を信号として取り出すためのACカプラー(コンデンサ等により構成される交流結合回路)500を有する。
【0063】
すなわち、第2の実施形態に係るイオン検出器1Bは、電子増倍部としてのMCPユニット100と、メッシュ状の加速電極150と、一対のフォーカス電極160、170と、信号出力部200としてのAD220と、ACカプラー500と、信号出力端子110と、を備える。
【0064】
MCPユニット100は、入力面102aと出力面102bとを有するMCP102を含む。MCP102は、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのMCP102と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0065】
加速電極150は、MCP102とAD220との間、例えばMCP102とフォーカス電極160との間に配置され、MCP102の出力面102bから出射した電子を加速する。
【0066】
一対のフォーカス電極160、170は、MCP102とAD220との間、例えば加速電極150とAD220との間に配置され、加速電極150によって加速された電子をAD220に向けて集束させる。
【0067】
AD220は、プリント配線基板221の上面(出力面102b側の面)に搭載され、加速電極150及び一対のフォーカス電極160、170を挟んでMCP102の出力面102bと対向する。プリント配線基板221の下面(信号出力端子110側の面)にはSMAジャック120Aが取り付けられる。AD220は、一対のフォーカス電極160、170によって集束された電子を捕獲して電気信号として出力する。
【0068】
ACカプラー500の一方の側(AD220側)には、SMAプラグ120Bが取り付けられる。ACカプラー500の他方の側(信号出力端子110側)には、SMAジャック120Cが取り付けられる。
【0069】
MCPユニット100の入力面102aは、電源910に接続され、電位Va(例えば+10kV又は-10kV)に設定される。入力面102aと出力面102bとの間には、電源920により電位差Vb(例えば0V~1kV)が確保される。出力面102bとSMAプラグ120Bの側面との間には、電源930により電位差Vc(例えば0V~4kV)が確保される。出力面102bとSMAプラグ120Bとの間に設定される電位差Vcは、出力面102bとSMAプラグ120Bの側面との間において互いに直列に、かつ電源930と並列に接続された抵抗Ra(例えば40MΩ)、抵抗Rb(例えば20MΩ)及びツェナーダイオード(以下、「ZD」と表記する。)250により分圧される。ZD250は、抵抗RbとSMAプラグ120Bの側面との間に例えば200~400Vの電位差を確保する。抵抗Raと抵抗Rbとの間に位置するノードN1には加速電極150が接続される。一対のフォーカス電極のうち出力面102b側に位置するフォーカス電極160は、MCPの出力面102bと同電位に設定される。AD220側に位置するフォーカス電極170は、抵抗RbとZD250との間に位置するノードN3に、抵抗Rc(例えば1kΩ)を介して接続される。
【0070】
また、抵抗RbとZD250との間に位置するノードN3は、抵抗Rd(例えば1kΩ)、第1コンデンサであるコンデンサC1、及び第1抵抗である抵抗R1を介してAD220のP側電極に接続される。コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220のP側電極及び抵抗Rdに直列に接続され、かつ、互いに並列に接続される。
【0071】
コンデンサC1及び抵抗R1と抵抗Rdとの間に位置するノードN2は、第2コンデンサであるコンデンサC2(例えば10nF)を介してSMAジャック120Cの側面に接続され、SMAジャック120Cの側面は接地される。信号出力端子110も終端抵抗Re(例えば50Ω)を介して接地される。したがって、AD220の電子入射面と接地されたSMAジャック120Cの側面との間に、リターンパスが形成される。AD220への電子入射が続くとAD220の電子入射面で電圧降下が発生する。この場合、AD220から信号出力端子110に出力される信号(出力電圧)には、この電圧降下に起因したDC成分の変動が反映されることになる。そこで、AD220の電子入射面とSMAジャック120Cの側面との間にコンデンサC2が配置されることにより、出力信号に反映されるDC成分の変動がキャンセルされる。また、コンデンサC2は、AD220から信号出力端子110に出力される高速信号が、リターンパスを介してAD220まで低インピーダンスで戻ることを可能にする。
【0072】
ACカプラー500は、AD220のN側電極と信号出力端子110との間に接続された、交流成分を信号として取り出すための信号コンデンサPC1(例えば150pF)を含む。AD220のN側電極と信号コンデンサPC1との間に位置するノードN4は、AD220のN側電極の電位を固定するために、抵抗520(例えば1kΩ~10MΩ)を介してSMAプラグ120Bの側面に接続される。
【0073】
図17は、第2の実施形態に係るイオン検出器1Bの外観の一例を示す図である。MCPユニット100、一対のフォーカス電極160、170、信号出力部の一部を構成するプリント配線基板221、及びACカプラー500がスペーサを介して固定される。
【0074】
図18は、第2の実施形態に係るイオン検出器1BのAD駆動回路の一例を示す回路図である。上述のとおり、AD220のP側電極は、抵抗Rd、第1コンデンサであるコンデンサC1、及び第1抵抗である抵抗R1を介して抵抗RbとZD250との間に位置するノードN3(図16)に接続され、ADバイアスが印加される。コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220及び抵抗Rdに直列に接続され、かつ、互いに並列に接続される。コンデンサC1及び抵抗R1と抵抗Rdとの間に位置するノードN2は、リターンパスを形成するために、第2コンデンサであるコンデンサC2及びSMAジャック120Cの側面を介して接地される。AD220のN側電極は、ACカプラー500の信号コンデンサPC1を介して信号出力端子110に接続される。また、AD220のN側電極は、抵抗520を介して電源930(図16)に接続される。
【0075】
第2の実施形態に係るイオン検出器1BのAD駆動回路も、コンデンサC1及び抵抗R1を有する。そして、コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続されるので、AD駆動回路に接続されたAD220の見かけの静電容量が小さい。したがって、第2の実施形態に係るイオン検出器1Bによれば、AD220及びAD駆動回路を含むイオン検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0076】
本開示の検出器の第1の実施形態及び第2の実施形態として、イオン検出器を示したが、本開示の検出器の実施形態は、光検出器でもよい。
【0077】
図19は、本開示の検出器の第3の実施形態に係る光検出器1Cの回路構成の一例を示す回路図である。第3の実施形態に係る光検出器1Cは、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのMCPユニット100、加速電極150、フォーカス電極160、及びこれらに電位を設定する電源及び抵抗に代えて、光電変換部300を備える。光電変換部300は、受光面302aと出力面302bとを有し、受光面302aに光が入射すると、その光に応答して光電子を発生させ、その光電子を出力面302bから出射させる。AD220は、その光電子を捕獲して電気信号として出力し、その結果、光が検出される。
【0078】
第3の実施形態に係る光検出器1CのAD駆動回路も、コンデンサC1及び抵抗R1を有する。そして、コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続されるので、AD駆動回路に接続されたADの見かけの静電容量が小さい。したがって、第3の実施形態に係る光検出器1Cによれば、AD220及びAD駆動回路を含む光検出器全体としての応答を高速化することができる。
【0079】
第3の実施形態に係る光検出器1Cは、第1の実施形態に係るイオン検出器1AのMCPユニット100、加速電極150、フォーカス電極160、及びこれらに電位を設定する電源及び抵抗に代えて、光電変換部300を備える。しかし、第1の実施形態に係るイオン検出器1Aに光電変換部300を追加することによって、光検出器としてもよい。すなわち、光電変換部300の出力面302bから出射した光電子を、MCP102の入力面102aに入射させるようにしてもよい。MCP102は、光電変換部300の出力面302bから出射した光電子が入力面102aに入射すると、その光電子に応答して電子を増倍させ、その電子を出力面102bから出射させる。MCP102の出力面102bから出射した電子は、加速電極150で加速され、フォーカス電極160で集束される。AD220は、フォーカス電極160によって集束された電子を捕獲して電気信号として出力し、その結果、光が検出される。
【0080】
同様に、第2の実施形態に係るイオン検出器1Bに光電変換部300を追加することによって、光検出器としてもよい。
【0081】
いずれの光検出器のAD駆動回路も、コンデンサC1及び抵抗R1を有する。そして、コンデンサC1及び抵抗R1は、いずれもAD220に直列に接続され、かつ、互いに並列に接続される。したがって、AD220及びAD駆動回路を含む光検出器全体としての応答を高速化することができる。
【符号の説明】
【0082】
100…MCPユニット(電子増倍部)、200…信号出力部、220…AD(信号出力部)、300…光電変換部、500…ACカプラー、C1…第1コンデンサ、C2…第2コンデンサ、R1…第1抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19