(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081988
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 11/08 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
A61M11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193263
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596132019
【氏名又は名称】株式会社荒川樹脂
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】姫野 貴和
(72)【発明者】
【氏名】井上 和博
(72)【発明者】
【氏名】小菅 惠美子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 好久
(57)【要約】
【課題】
デバイス全体をプラスチック化し、構造・機能面・操作性を簡素化することで誤操作防止を図り、使用性を向上させ、鼻腔内への安定した製剤投与を達成するとともに、廃棄性を向上させ、コストダウンを図ることができる鼻腔内製剤投与デバイスを提供する。
【解決手段】カプセル載置部と、前記カプセル載置部に空気を送るため、内部に空気が収容され、前記カプセル載置部と連通されてなる押圧ポンプ部と、前記カプセル載置部に装着可能とされてなり、前記カプセル載置部と連通されてなる、鼻腔内に挿入される製剤噴出ノズル部と、前記カプセル載置部に設けられた前記カプセルの下部に穿孔せしめるための第1の鋭角突起と、前記製剤噴出ノズル部に設けられた前記カプセルの上部に穿孔せしめるための第2の鋭角突起と、を有してなる、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての部材がプラスチックで構成されてなるオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスであり、
内部に粉末製剤が封入されたカプセルが載置されるカプセル載置部と、
前記カプセル載置部に空気を送るため、内部に空気が収容され、前記カプセル載置部と連通されてなる押圧ポンプ部と、
前記カプセル載置部に装着可能とされてなり、前記カプセル載置部と連通されてなる、鼻腔内に挿入される製剤噴出ノズル部と、
前記カプセル載置部に設けられた前記カプセルの下部に穿孔せしめるための第1の鋭角突起と、
前記製剤噴出ノズル部に設けられた前記カプセルの上部に穿孔せしめるための第2の鋭角突起と、
を有してなる、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項2】
前記第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起のそれぞれに、軸方向に空気が流れるための空気流路溝が形成されてなる、請求項1記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項3】
前記第1の鋭角突起が、第1の鋭角角錐先端部と前記第1の鋭角角錐先端部よりも大きな角とされてなる第1の径大角錐基部とを有する第1の角錐状突起であり、前記第2の鋭角突起が、第2の鋭角角錐先端部と前記第2の鋭角角錐先端部よりも大きな角とされてなる第2の径大角錐基部とを有する第2の角錐状突起とされてなる、請求項1又は2項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項4】
前記第1の鋭角突起の中腹部の少なくとも一部に前記第1の鋭角突起を径大にせしめる第1の段部が設けられてなり、前記第2の鋭角突起の中腹部の少なくとも一部に前記第2の鋭角突起を径大にせしめる第2の段部が設けられてなり、前記カプセルの上下部に穿孔されたそれぞれの孔が前記第1の段部及び第2の段部によって拡げられるように構成されてなる、請求項1~3いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項5】
前記カプセル載置部に前記カプセルを載置せしめ、前記製剤噴出ノズル部を前記カプセル載置部に装着することで前記カプセルの下部と上部のそれぞれに穿孔せしめられ、前記押圧ポンプ部を押圧することで前記製剤噴出ノズル部から前記粉末製剤が鼻腔内へ投与されてなる、請求項1~4いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項6】
前記カプセル載置部に前記カプセルを載置せしめ、前記製剤噴出ノズル部を前記カプセル載置部に装着することで前記カプセルの下部と上部のそれぞれに穿孔せしめ、前記製剤噴出ノズル部を回転させることで、前記カプセルに穿通せしめられた第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起が回転せしめられ、前記カプセルの上下部に穿孔されたそれぞれの孔へのより多くの空気の流通が確保されてなる、請求項1~5いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項7】
前記カプセル載置部が前記押圧ポンプ部に取り外し可能に取り付けられてなる、請求項1~6いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項8】
前記カプセル載置部、前記製剤噴出ノズル部、第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起が、硬質プラスチックで構成されてなり、前記押圧ポンプ部が、軟質プラスチックで構成されてなる、請求項1~7いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項9】
前記オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスがディスポーザブルである、請求項1~8いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【請求項10】
前記オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスが透明であり、内部が視認可能とされてなる、請求項1~9いずれか1項記載のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル内に封入した粉末製剤を鼻腔内に投与するのに用いられる鼻腔内製剤投与デバイスに関し、特に全ての部材がプラスチックで形成されたオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鼻腔内製剤投与デバイスとして、粉末製剤が充填されたカプセルを鼻腔内製剤投与デバイス内部にセットする際にカプセルの穿孔を行うと共に針をカプセルに挿入した状態のままで投与を行うタイプの鼻腔内製剤投与デバイスがある。このタイプでは金属製の中空針が主流であり、金属製の中空針で空気、薬剤の流通孔を確保している。また、例えば特許文献1に記載のものもあるが、特許文献1に記載されたような中空針をプラスチックで作製すると、強度的に問題がある。
【0003】
また、鼻腔内製剤投与デバイスとして、粉末製剤が充填されたカプセルを鼻腔内製剤投与デバイス内部にセットし、穴あけ具のピンでカプセルに貫通穴をあけた後に、ピンを元の位置に戻し、投与を行うタイプの鼻腔内製剤投与デバイスなどもある。このようなタイプの鼻腔内製剤投与デバイスとしては、例えば特許文献2に記載のものがある。
【0004】
上記した特許文献1や特許文献2に記載の鼻腔内製剤投与デバイスは、何れも構造、機能面、操作性が複雑であり、改良の余地があった。また、このような構造、機能面、操作性が複雑な鼻腔内製剤投与デバイスが従来は一般的であった。
【0005】
従来の鼻腔内製剤投与デバイスは、いずれも、プラスチックと金属等の異種素材から構成されていた。このような、プラスチックと金属等の異種素材で構成される構造では、デバイスの廃棄性にも問題があった。さらに、このような異種素材を使用することで、デバイスの構造が複雑化し、コストが高くなるという問題があった。また、鼻腔内製剤投与デバイスの針をプラスチックで作製した場合、針のように細長く先の尖ったものだと強度的に折れるおそれもある。もし途中で折れてしまうとプラスチックの破片が製剤に混入してしまうおそれがあるので、折れるおそれのない構造のものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-243164
【特許文献2】特開平8-206210
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、デバイス全体をプラスチック化し、構造・機能面・操作性を簡素化することで誤操作防止を図り、使用性を向上させ、鼻腔内への安定した製剤投与を達成するとともに、廃棄性を向上させ、コストダウンを図ることができる鼻腔内製剤投与デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の鼻腔内製剤投与デバイスは、全ての部材がプラスチックで構成されてなるオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスであり、内部に粉末製剤が封入されたカプセルが載置されるカプセル載置部と、前記カプセル載置部に空気を送るため、内部に空気が収容され、前記カプセル載置部と連通されてなる押圧ポンプ部と、前記カプセル載置部に装着可能とされてなり、前記カプセル載置部と連通されてなる、鼻腔内に挿入される製剤噴出ノズル部と、前記カプセル載置部に設けられた前記カプセルの下部に穿孔せしめるための第1の鋭角突起と、前記製剤噴出ノズル部に設けられた前記カプセルの上部に穿孔せしめるための第2の鋭角突起と、を有してなる、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスである。
【0009】
前記第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起のそれぞれに、軸方向に空気が流れるための空気流路溝が形成されてなるのが好適である。
【0010】
前記第1の鋭角突起が、第1の鋭角角錐先端部と前記第1の鋭角角錐先端部よりも大きな角とされてなる第1の径大角錐基部とを有する第1の角錐状突起であり、前記第2の鋭角突起が、第2の鋭角角錐先端部と前記第2の鋭角角錐先端部よりも大きな角とされてなる第2の径大角錐基部とを有する第2の角錐状突起とされてなるのが好適である。
【0011】
前記第1の鋭角突起の中腹部の少なくとも一部に前記第1の鋭角突起を径大にせしめる第1の段部が設けられてなり、前記第2の鋭角突起の中腹部の少なくとも一部に前記第2の鋭角突起を径大にせしめる第2の段部が設けられてなり、前記カプセルの上下部に穿孔されたそれぞれの孔が前記第1の段部及び第2の段部によって拡げられるように構成されてなるのが好適である。
【0012】
前記カプセル載置部に前記カプセルを載置せしめ、前記製剤噴出ノズル部を前記カプセル載置部に装着することで前記カプセルの下部と上部のそれぞれに穿孔せしめられ、前記押圧ポンプ部を押圧することで前記製剤噴出ノズル部から前記粉末製剤が鼻腔内へ投与されてなるのが好適である。
【0013】
前記カプセル載置部に前記カプセルを載置せしめ、前記製剤噴出ノズル部を前記カプセル載置部に装着することで前記カプセルの下部と上部のそれぞれに穿孔せしめ、前記製剤噴出ノズル部を回転させることで、前記カプセルに穿通せしめられた第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起が回転せしめられ、前記カプセルの上下部に穿孔されたそれぞれの孔へのより多くの空気の流通が確保されてなるのが好適である。
【0014】
前記カプセル載置部が前記押圧ポンプ部に取り外し可能に取り付けられてなるのが好適である。
【0015】
前記カプセル載置部、前記製剤噴出ノズル部、第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起が、硬質プラスチックで構成されてなり、前記押圧ポンプ部が、軟質プラスチックで構成されてなるのが好適である。
【0016】
前記オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスがディスポーザブルであるのが好適である。
【0017】
前記オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスが透明であり、内部が視認可能とされてなるのが好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、デバイス全体をプラスチック化し、構造・機能面・操作性を簡素化することで誤操作防止を図り、使用性を向上させ、プラスチックが混入する恐れがなく鼻腔内への安定した製剤投与を達成するとともに、廃棄性を向上させ、コストダウンを図ることができるという著大な効果を奏する。また、本発明によれば、デバイス全体をプラスチック化することで、ディスポーザブル使用が可能という効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスの一つの実施の形態を示す斜視分解図である。
【
図2】本発明に係るオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスの一つの実施の形態を示す正面図である。
【
図3】
図2のA-A線断面図であって、カプセルが収納されていない状態を示す断面図である。
【
図6】
図2のA-A線断面図であって、カプセルが収納されている状態を示す断面図である。
【
図7】本発明に係るオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスの第1の鋭角突起及び第2の鋭角突起の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【
図8】本発明に係るオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスの第1の鋭角突起又は第2の鋭角突起でカプセルに穿孔をする様子を示す模式図である。
【
図9】本発明に係るオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスにおいて、製剤噴出ノズル部を回転させる様子を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。同一部材は同一符号で示される。
【0021】
図1~
図3及び
図6において、符号10は本発明に係るオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス(以下、単に「鼻腔内製剤投与デバイス」と称することがある)の一つの実施の形態を示す。
【0022】
本発明に係る鼻腔内製剤投与デバイス10は、全ての部材がプラスチックで構成されてなるオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスであり、内部に粉末製剤が封入されたカプセル12が載置されるカプセル載置部14と、前記カプセル載置部14に空気を送るため、内部に空気が収容され、前記カプセル載置部14と連通されてなる押圧ポンプ部16と、前記カプセル載置部14に装着可能とされてなり、前記カプセル載置部14と連通されてなる、鼻腔内に挿入される製剤噴出ノズル部18と、前記カプセル載置部14に設けられた前記カプセル12の下部20に穿孔せしめるための第1の鋭角突起22と、前記製剤噴出ノズル部18に設けられた前記カプセルの上部24に穿孔せしめるための第2の鋭角突起26と、を有してなる、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイスである。
【0023】
本発明に係る鼻腔内製剤投与デバイス10は、定量の粉末製剤を鼻腔内に投与可能とする投与デバイスであり、図示例では、大別すると、上部の前記製剤噴出ノズル部18と、中間部のカプセル載置部14、下部の押圧ポンプ部の3部材から構成されており、全てがプラスチックで成形加工されている。
【0024】
前記製剤噴出ノズル部18は、ドーム状基部28の上端部には鼻腔内製剤投与筒30が設けられており、点鼻する際には、前記鼻腔内製剤投与筒30を鼻腔内に挿入して点鼻する。前記カプセル載置部14のカプセル収納部32は、前記鼻腔内製剤投与筒30と平行して設けられており、前記カプセル載置部14の下方外縁部には周方向に係合突起リブ34が設けられている。前記カプセル載置部14と前記押圧ポンプ部16を当接せしめていずれかを回転させることで、前記押圧ポンプ部16の上方外縁部に形成された係合溝36と前記係合突起リブ34が係合せしめられ、前記押圧ポンプ部16に前記カプセル載置部14が取り外し可能に取り付けられ、前記押圧ポンプ部16と前記カプセル載置部14とが一体化される構造となっている。前記カプセル収納部32の内径及び前記鼻腔内製剤投与筒30の内径は粉末製剤が封入されたカプセルの外径と近似した径とされている。
【0025】
前記製剤噴出ノズル部18の鼻腔内製剤投与筒30の内部には、前記第2の鋭角突起26が下方を向いて設けられており、前記第2の鋭角突起26の基部周辺に複数の流通孔38(図示例では3つ)が形成されている(
図3、
図4や
図6など参照)。より具体的には、前記鼻腔内製剤投与筒30の任意高さに筒径方向を横切る平板を設け、前記平板に複数の貫通孔及び第2の鋭角突起26を設けた構成とされている。
【0026】
前記カプセル載置部14の外周面には、複数の係合リブ40が軸方向に設けられており、前記製剤噴出ノズル部18のドーム状基部28の内周面が前記カプセル載置部14の外周面に係合せしめられることで、前記カプセル載置部14に前記製剤噴出ノズル部18が装着せしめられる構造となっている。
【0027】
前記カプセル載置部14のカプセル収納部32の内部には、前記第1の鋭角突起22が上方を向いて設けられており、前記第1の鋭角突起22の基部周辺には複数の開口部流通孔42(図示例では3つ)が形成されている(
図3、
図5や
図6など参照)。なお、図示例では、前記第1の鋭角突起22の基部周辺の開口部流通孔42の方が、前記第2の鋭角突起26の基部周辺に複数の流通孔38よりも少し大きく形成されている。より具体的には、前記カプセル収納部32の底部に筒径方向を横切る平板を設け、前記カプセル収納部32の底部近傍に複数の貫通孔及び前記平板に第1の鋭角突起22を設けた構成とされている。
【0028】
また、前記第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26の構造を
図7に示す。前記第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26は基本的には同一の構造であり、前記第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26のそれぞれに、軸方向に空気が流れるための空気流路溝44が複数個所(図示例では3つ)に形成されている。図示例では前記第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26のそれぞれの外周面に軸方向に空気が流れるための前記空気流路溝44を設けた例を示した。図示例では前記第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26は中実の鋭角突起の例を示した。このように、空気流路溝付きの第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26とすることにより、前記開口部流通孔42及び流通孔38を通る空気及び粉末製剤が、前記第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26の周囲を流通しやすいように構成されている。
【0029】
さらに、
図7によく示されるように、前記第1の鋭角突起22は、第1の鋭角角錐先端部46と前記鋭角角錐先端部46よりも大きな角とされてなる第1の径大角錐基部48とを有する第1の角錐状突起である。ここで、前記第1の鋭角角錐先端部46よりも大きな角とされてなる第1の径大角錐基部48というのは、第1の鋭角角錐先端部46の底角θ1よりも第1の径大角錐基部48の底角θ2の方が大きいという意味である。
【0030】
また、
図7によく示されるように、前記第2の鋭角突起26は、第2の鋭角角錐先端部50と前記鋭角角錐先端部50よりも大きな角とされてなる第2の径大角錐基部52とを有する第2の角錐状突起とされている。ここで、前記第2の鋭角角錐先端部50よりも大きな角とされてなる第2の径大角錐基部52というのは、第2の鋭角角錐先端部50の底角θ1よりも第2の径大角錐基部52の底角θ2の方が大きいという意味である。
【0031】
図示の例では、前記第1の鋭角突起22及び前記第2の鋭角突起26は、三角錐状突起とした例を示した。
【0032】
また、図示した実施の形態では、
図7によく示される如く、前記第1の鋭角突起22の中腹部の少なくとも一部に前記第1の鋭角突起22を径大にせしめる第1の段部54が設けられている。そして、同様に、前記第2の鋭角突起26の中腹部の少なくとも一部に前記第2の鋭角突起26を径大にせしめる第2の段部56が設けられている。
【0033】
前記第1の段部54及び第2の段部56が設けられていることにより、
図8に示すように、前記カプセル12の上下部に穿孔されたそれぞれの孔が前記段部54,56によって拡げられるように構成されている。
【0034】
図8に、第1の鋭角突起22又は第2の鋭角突起26でカプセル12に穿孔をする様子を示す。カプセル12の上部24又は下部20の端面は、第1の鋭角角錐先端部46又は第2の鋭角角錐先端部50によりまず亀裂が入れられて、穿孔状態P1のようになる。そして、さらに第1の鋭角突起22又は第2の鋭角突起26が押し込まれると、傾斜面が亀裂をさらに裂くので孔が拡がって穿孔状態P2のようになる。そして、前記第1の段部54又は第2の段部56によって、前記第1の鋭角突起22又は第2の鋭角突起26の空気流路溝44を塞いでしまうカプセル12の亀裂部分がめくり上げられて、穿孔状態P3となる。図示例では、前記第1の段部54又は第2の段部56として、台座状の段部を設けた例を示した。
【0035】
プラスチックの鋭角突起は、金属の針とは異なり、穿通時に鋭角突起とカプセルの接触部内面に捲れが生じ易く、この捲れが角錐状のプラスチックの鋭角突起に設けた空気流路溝に干渉し、安定した空気や薬剤の流通を確保できないことがある。これを解決するためには、図示のように、第1の鋭角突起22又は第2の鋭角突起26の下部に台座状の前記第1の段部54又は第2の段部56を設け、第1の鋭角突起22又は第2の鋭角突起26で開けた孔を更に拡げる効果により流路を確保するのが好適である。そして、図示例では、上記のように流路を確保しつつ、下部の押圧ポンプ部16を指で押圧し、前記押圧ポンプ部16内の空気をポンプ上方の穿孔されたカプセル12内へ送り、カプセル12内の粉末製剤を巻き込むことにより上部の鼻腔内製剤投与筒30に粉末製剤が移動し、前記鼻腔内製剤投与筒30を介して鼻腔内へと粉末製剤を投与できる構造となっている。
【0036】
また、図示例では、前記カプセル載置部14、前記製剤噴出ノズル部18、第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起26が、硬質プラスチックで構成されてなり、前記押圧ポンプ部16が、軟質プラスチックで構成されている。なお、ここで硬質又は軟質プラスチックとは、JIS K6900で定義されたプラスチックの分類を指す。前記押圧ポンプ部16を指で押圧して空気を送ることから、前記押圧ポンプ部16は軟質プラスチックで構成されるのが好ましい。また、本発明の実施の形態であるオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10は、透明であり、内部が視認可能とされている。内部が視認可能であれば半透明でも本発明の透明に含まれる。より具体的には、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10では、前記押圧ポンプ部16が半透明とされていて、他の部材は半透明ではない透明とされている。なお、図示例では、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10の前記押圧ポンプ部16を半透明、他の部材を半透明ではない透明とした例を示したが、それらに限定するものではなく、不透明や着色されたプラスチックを用いてもよい。プラスチックとしては、公知の樹脂、特に合成樹脂を種々適用できるが、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、PET樹脂、ポリカーボネート、AS樹脂、塩ビ(軟質・硬質)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ABS樹脂、フェノール樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、などを適用できる。
【0037】
なお、オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10は、使用がおわったら廃棄することができるディスポーザブルタイプのデバイスである。デバイス全体をプラスチック化することでコストダウンが図れるので、ディスポーザブルとすることが可能である。
【0038】
本発明のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10は、前記カプセル載置部14に前記カプセル12を載置せしめ、前記製剤噴出ノズル部18を前記カプセル載置部14に装着することで前記カプセル12の下部20と上部24のそれぞれに穿孔せしめられ、前記押圧ポンプ部16を押圧することで前記製剤噴出ノズル部18から前記粉末製剤が鼻腔内へ投与される構造である。鼻腔内製剤投与デバイス10を使用する患者は前記押圧ポンプ部16を押圧すると共に排出されてくる前記粉末製剤を吸引する。
【0039】
また、本発明のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10は、前記カプセル載置部14に前記カプセル12を載置せしめ、前記製剤噴出ノズル部18を前記カプセル載置部14に装着することで前記カプセル12の下部20と上部24のそれぞれに穿孔せしめ、前記製剤噴出ノズル部18を回転させると、前記カプセル12に穿通せしめられた第1の鋭角突起22及び第2の鋭角突起が回転せしめられ、前記カプセルの上下部に穿孔されたそれぞれの孔へのより多くの空気の流通が確保される。従って、鼻腔内製剤投与デバイス10のより好適な使用方法としては、前記製剤噴出ノズル部18を前記カプセル載置部14に装着した後、前記製剤噴出ノズル部18を回転させることである。前記製剤噴出ノズル部18を回転させる場合には、回転させる角度に特別の限定はないが、前記製剤噴出ノズル部18を回転させる角度としては、例えば1°以上でもよく、90°以上が好ましく、120°以上がより好ましい。また、回転させる角度の上限にも特別の限定はなく360°以上回転させてもよいが、例えば270°以下がより好ましい。
【実施例0040】
以下に、実施例として、本発明のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10の噴霧性評価の実験例を記載するが、本発明は、以下の実験例の記載に限定されるものではない。
【0041】
<実験例1>
本発明のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10を用いて、粉末製剤が封入されたカプセル12を、カプセルのキャップ側が上向きとなるように前記カプセル載置部14に載置し、第1の鋭角突起22を押し込むことで、前記カプセル12の下部20に穿孔した。そして、前記鼻腔内製剤投与デバイス10を90度横倒しして、カプセルのボディ側に前記製剤噴出ノズル部18を前記カプセル載置部14に装着して嵌合し第2の鋭角突起26を押し込むことで、カプセル12の上部24に穿孔せしめた。前記押圧ポンプ部16を押圧して空気を送って前記製剤噴出ノズル部18からの前記粉末製剤の排出率を評価した。同様の実験を10回繰り返した。
【0042】
実験例1では、粉末製剤の平均の排出率が79.3%と高かった。本発明では、使用性を向上させると共に、鼻腔内への安定した製剤投与が達成できたことがわかる。
【0043】
<実験例2>
本発明のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10を用いて、実験例1と同じ市販の粉末製剤が封入されたカプセル12を、カプセルのキャップ側が上向きとなるように前記カプセル載置部14に載置し、第1の鋭角突起22を押し込むことで、前記カプセル12の下部20に穿孔した。そして、前記鼻腔内製剤投与デバイス10を90度横倒しして、カプセルのボディ側に前記製剤噴出ノズル部18を前記カプセル載置部14に装着して嵌合し第2の鋭角突起26を押し込み、カプセル12の上部24に穿孔せしめた。その後、前記製剤噴出ノズル部18を180度回転させた後、前記押圧ポンプ部16を押圧して空気を送って前記製剤噴出ノズル部18からの前記粉末製剤の排出率を評価した。同様の実験を10回繰り返した。
【0044】
実験例2では、粉末製剤の平均の排出率が93.8%と極めて高かった。本発明では、使用性を向上させると共に、鼻腔内への安定した製剤投与が達成できたことがわかる。そして、前記製剤噴出ノズル部18を回転させた実験例2では、特に鼻腔内への安定した製剤投与が達成できたことがわかる。
【0045】
このようにして、本発明のオールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス10では、デバイス全体をプラスチック化することで、構造・機能面・操作性を簡素化することで誤操作防止を図り、使用性を向上させ、鼻腔内への安定した製剤投与を達成するとともに、廃棄性を向上させ、コストダウンを図ることができる。
10:オールプラスチック製鼻腔内製剤投与デバイス、12:カプセル、14:カプセル載置部、16:押圧ポンプ部、18:製剤噴出ノズル部、20:カプセルの下部、22:第1の鋭角突起、24:カプセルの上部、26:第2の鋭角突起、28:ドーム状基部:30:鼻腔内製剤投与筒、32:カプセル収納部、34:係合突起リブ、36:係合溝、38:流通孔、40:係合リブ、42:開口部流通孔、44:空気流路溝、46:第1の鋭角角錐先端部、48:第1の径大角錐基部、50:第2の鋭角角錐先端部、52:第2の径大角錐基部、54:第1の段部、56:第2の段部、P1~P3:穿孔状態、θ1,θ2:底角。