(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082065
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
G03G15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193404
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】村田 諭是
(72)【発明者】
【氏名】垣ケ原 豊
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅光
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA45
2H033BE07
2H033CA16
2H033CA22
2H033CA30
2H033CA37
(57)【要約】
【課題】シートの先端が第1電極と第2電極の間に到達した際などにおいて、噴霧量が乱れるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置は、定着液を静電噴霧によりシート上の現像剤像に向けて噴霧することで、シート上に現像剤像を定着させる定着装置と、制御部を備える。定着装置は、現像剤像に向けて定着液を噴霧するノズルと、ノズル内の定着液に電圧を印加する第1電極と、第1電極との間で電位差を形成することでノズルから定着液を噴霧させる第2電極を有する。制御部は、シートの抵抗値を取得する取得処理(S3,S6,S7)と、取得処理によって取得した抵抗値に基づいて、電位差の目標値である第1目標電位差を設定する設定処理(S8)と、少なくともシートの先端がノズルからの定着液の噴霧範囲内に到達する際に、電位差が第1目標電位差となるように電圧を印加する第1電圧処理(S10)を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着液を静電噴霧によりシート上の現像剤像に向けて噴霧することで、シート上に現像剤像を定着させる定着装置であって、
現像剤像に向けて定着液を噴霧するノズルと、
前記ノズル内の定着液に電圧を印加する第1電極と、
前記第1電極との間で電位差を形成することで前記ノズルから定着液を噴霧させる第2電極と、を有する定着装置と、
前記電位差を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
シートの抵抗値を取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得した前記抵抗値に基づいて、前記電位差の目標値である第1目標電位差を設定する設定処理と、
少なくともシートの先端が前記ノズルからの定着液の噴霧範囲内に到達する際に、前記電位差が前記第1目標電位差となるように電圧を印加する第1電圧処理と、を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
シートの後端が前記噴霧範囲から外れる際に、前記電位差が、シートが前記噴霧範囲内に存在しないときの電位差に相当する第2目標電位差となるように電圧を印加する第2電圧処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
シートが前記噴霧範囲外である場合、または、前記噴霧範囲のすべてがシートの先端と後端の間に位置する場合には、前記第1電極を流れる電流が一定となるように電圧を制御する第3電圧処理を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着装置よりもシートの搬送方向上流に設けられ、シート上に現像剤像を転写する転写装置をさらに備え、
前記制御部は、
前記取得処理において、前記転写装置に流れる電流に基づいて前記抵抗値を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記取得処理において、
シートが前記転写装置を通過していないときに前記転写装置に流れる電流と、シートが前記転写装置を通過しているときに前記転写装置に流れる電流とに基づいて前記抵抗値を算出することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ノズルよりもシートの搬送方向上流に、シートを吸着させるための吸着プレートをさらに備え、
前記制御部は、
前記第1電圧処理において、前記第1電極、前記第2電極および前記吸着プレートの少なくとも1つに印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
複数枚のシートを印刷する場合には、最初に印刷する1枚目のシートに対してのみ、前記取得処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
シートを収容する供給トレイであって、本体筐体に着脱可能な供給トレイと、
前記供給トレイの着脱を検知するトレイ検知部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記トレイ検知部からの信号に基づいて前記供給トレイが着脱されたと判定してから最初に印刷する1枚のシートに対してのみ、前記取得処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着液を静電噴霧によりシート上の現像剤像に向けて噴霧する定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着液を噴霧するノズルと、ノズル内の定着液に電圧を印加する第1電極と、ノズルの先端に対向し、第1電極との間で電位差を形成する第2電極と、第1電極と第2電極の間の電位差を温度に応じて変更する制御部と、を備える画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者は、第1電極に流れる電流が一定となるように電圧を制御する定電流制御を実行している際に、シートの先端が第1電極と第2電極の間に到達した際など、第1電極と第2電極の間の抵抗値が急激に変化すると、第1電極を流れる電流が急激に変化して、噴霧量が乱れることを発見した。
【0005】
そこで、本発明は、シートの先端が第1電極と第2電極の間に到達した際などにおいて、噴霧量が乱れるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、定着液を静電噴霧によりシート上の現像剤像に向けて噴霧することで、シート上に現像剤像を定着させる定着装置と、制御部と、を備える。
前記定着装置は、現像剤像に向けて定着液を噴霧するノズルと、前記ノズル内の定着液に電圧を印加する第1電極と、前記第1電極との間で電位差を形成することで前記ノズルから定着液を噴霧させる第2電極と、を有する。
前記制御部は、前記電位差を制御する。前記制御部は、シートの抵抗値を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得した前記抵抗値に基づいて、前記電位差の目標値である第1目標電位差を設定する設定処理と、少なくともシートの先端が前記ノズルからの定着液の噴霧範囲内に到達する際に、前記電位差が前記第1目標電位差となるように電圧を印加する第1電圧処理と、を実行する。
【0007】
この構成によれば、シートの先端が噴霧範囲内に到達する際には、第1電極と第2電極間の電位差が、抵抗値に基づいて設定した目標電位差となるので、シートの先端が噴霧範囲内に突入することによる第1電極と第2電極間を流れる電流の急変を抑制することができ、噴霧量が乱れるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記制御部は、シートの後端が前記噴霧範囲から外れる際に、前記電位差が、シートが前記噴霧範囲内に存在しないときの電位差に相当する第2目標電位差となるように電圧を印加する第2電圧処理を実行してもよい。
【0009】
この構成によれば、シートの後端が噴霧範囲から外れることによる第1電極と第2電極間を流れる電流の急変を抑制することができ、噴霧量が乱れるのを抑制することができる。
【0010】
また、前記制御部は、シートが前記噴霧範囲外である場合、または、前記噴霧範囲のすべてがシートの先端と後端の間に位置する場合には、前記第1電極を流れる電流が一定となるように電圧を制御する第3電圧処理を実行してもよい。
【0011】
この構成によれば、定電流制御により噴霧量を安定させることができる。
【0012】
また、前記画像形成装置は、前記定着装置よりもシートの搬送方向上流に設けられ、シート上に現像剤像を転写する転写装置をさらに備え、前記制御部は、前記取得処理において、前記転写装置に流れる電流に基づいて前記抵抗値を算出してもよい。
【0013】
この構成によれば、転写装置を利用してシートの抵抗値を取得するので、例えばシートの抵抗値を取得する他の装置を利用する場合と比べ、コストの低下を図ることができる。また、定着装置にシートが到達する前に、抵抗値を取得することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記取得処理において、シートが前記転写装置を通過していないときに前記転写装置に流れる電流と、シートが前記転写装置を通過しているときに前記転写装置に流れる電流とに基づいて前記抵抗値を算出してもよい。
【0015】
この構成によれば、転写装置を利用してシートの抵抗値を良好に取得することができる。
【0016】
また、前記画像形成装置は、前記ノズルよりもシートの搬送方向上流に、シートを吸着させるための吸着プレートをさらに備え、前記制御部は、前記第1電圧処理において、前記第1電極、前記第2電極および前記吸着プレートの少なくとも1つに印加する電圧を制御してもよい。
【0017】
また、前記制御部は、複数枚のシートを印刷する場合には、最初に印刷する1枚目のシートに対してのみ、前記取得処理を実行してもよい。
【0018】
この構成によれば、例えば複数枚のシートのすべてに対して取得処理を実行する場合と比べ、1枚目のシートに対してのみ取得処理を行い、残りのシートについては1枚目で取得した抵抗値を流用することができるので、スループットの低下を抑えることができる。
【0019】
また、前記画像形成装置は、シートを収容する供給トレイであって、本体筐体に着脱可能な供給トレイと、前記供給トレイの着脱を検知するトレイ検知部と、をさらに備え、前記制御部は、前記トレイ検知部からの信号に基づいて前記供給トレイが着脱されたと判定してから最初に印刷する1枚のシートに対してのみ、前記取得処理を実行してもよい。
【0020】
この構成によれば、供給トレイ内には通常同じ種類のシートが収容されるため、供給トレイが着脱されてから最初に印刷する1枚目のシートのみに対して取得処理を行えば、残りのシートについては1枚目で取得した抵抗値を流用することができ、スループットの低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シートの先端が第1電極と第2電極の間に到達した際などにおいて、噴霧量が乱れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタを示す図である。
【
図2】噴霧範囲内にシートがないときの定着装置の状態を示す断面図(a)と、
図2(a)の状態のときの第1電極等を含む回路を示す図(b)である。
【
図3】シートの先端が噴霧範囲に到達したときの定着装置の状態を示す断面図(a)と、
図3(a)の状態のときの第1電極等を含む回路を示す図(b)である。
【
図4】シートの後端が吸着プレートから外れたときの定着装置の状態を示す断面図(a)と、
図4(a)の状態のときの第1電極等を含む回路を示す図(b)である。
【
図5】シートの後端が噴霧範囲から外れたときの定着装置の状態を示す断面図(a)と、
図5(a)の状態のときの第1電極等を含む回路を示す図(b)である。
【
図8】変形例に係る制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのレーザプリンタ1は、本体筐体2と、シートPを供給するためのフィーダ部3と、シートPに画像を形成するための画像形成部4と、制御部100とを備えている。本体筐体2は、画像形成部4から排出されたシートPが載置される排出トレイ21を有している。
【0024】
フィーダ部3は、シートPを収容する供給トレイ31と、供給トレイ31内のシートPを画像形成部4に向けて給紙する供給機構32とを備えている。供給トレイ31は、本体筐体2に着脱可能となっている。
【0025】
本体筐体2は、供給トレイ31の着脱を検知するトレイ検知部22と、シートセンサ23とを備えている。トレイ検知部22は、例えば光センサなどで構成されている。シートセンサ23は、例えば、搬送されるシートPに押されて揺動する揺動レバーと、揺動レバーの揺動を検出する光センサとを備えている。本実施形態では、シートPの通過中、つまりシートPによって揺動レバーが倒されているときには、シートセンサ23がONになっているものとする。シートPの非通過中、つまりシートPによって揺動レバーが倒されていないときには、シートセンサ23がOFFになっているものとする。なお、揺動レバーの姿勢と、シートセンサ23のON・OFFの関係は、逆であってもよい。
【0026】
画像形成部4は、スキャナユニット5と、プロセスカートリッジ6と、転写装置TMと、定着装置7とを備えている。
【0027】
スキャナユニット5は、本体筐体2内の上部に設けられ、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えている。このスキャナユニット5では、レーザビームを、後述する感光ドラム61の表面上に出射する。
【0028】
プロセスカートリッジ6は、本体筐体2に着脱可能となっている。プロセスカートリッジ6は、感光ドラム61と、図示しない帯電器と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部62と、トナー収容部62内のトナーを感光ドラム61に供給する供給ローラ63および現像ローラ64を備えている。
【0029】
転写装置TMは、シートP上にトナー像を転写する装置であり、定着装置7よりもシートPの搬送方向上流に設けられている。転写装置TMは、転写ローラTRと、転写ローラTRに転写電圧を印加する図示せぬ電圧印加部とを備えている。
【0030】
プロセスカートリッジ6では、図示せぬ帯電器が、回転する感光ドラム61の表面を一様に帯電する。スキャナユニット5は、感光ドラム61の表面にレーザビームを出射して、感光ドラム61の表面を露光することで、感光ドラム61の表面に画像データに基づく静電潜像を形成する。
【0031】
次いで、回転駆動される現像ローラ64が、感光ドラム61の静電潜像にトナーを供給して、感光ドラム61の表面上にトナー像を形成する。その後、感光ドラム61の表面上に担持されたトナー像は、シートPが感光ドラム61と転写ローラTRの間で搬送される際に、シートPに転写される。トナー像が形成されたシートPは、感光ドラム61と転写ローラTRによって定着装置7に向けて搬送される。
【0032】
定着装置7は、定着液を静電噴霧によりシートP上のトナー像に向けて噴霧する定着ヘッド71と、定着液が噴霧されたシートPを加熱するヒータHとを主に備えている。定着ヘッド71およびヒータHは、感光ドラム61および転写ローラTRによって搬送されたシートPのトナー像に定着液を付与して加熱することで、トナー像をシートPに定着させる。なお、定着装置7の構成については、後で詳述する。
【0033】
シートPの搬送方向において、ヒータHの下流側には、ヒータHで加熱されたシートPを下流側に搬送するためのローラ81~83が設けられている。ヒータHで加熱されたシートPは、ローラ81~83によって搬送されることで、排出トレイ21上に排出される。
【0034】
次に、定着装置7の構成について詳細に説明する。
図2(a)に示すように、定着装置7は、定着液を噴霧するための定着ヘッド71と、定着ヘッド71の下でシートPと対向するように配置される第2電極72と、定着ヘッド71から噴霧された定着液を回収する回収容器75とを備えている。第2電極72および回収容器75は、定着ヘッド71と向かい合う位置に設けられている。
【0035】
定着液としては、良好に静電噴霧を行い、かつ、定着を行うために、トナーを溶解させる溶質を誘電率の高い溶媒に分散させたものを使用することが出来る。誘電率の高い溶媒として、安全な水を用いることができる。つまり、本実施形態では、トナーを溶解させる溶質を水に分散するタイプ、いわゆる、水中油滴型のエマルジョンでトナーの溶解を行っている。つまり、溶媒としての水に対して不溶または難溶な溶質を水に分散した定着液を用いている。溶質としては、脂肪族モノカルボン酸エステル系として、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、脂肪族ジカルボン酸エステル系として、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、脂肪族トリカルボン酸エステル系として、oアセチルクエン酸トリエチル、oアセチルクエン酸トリブチル、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキル系として、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、炭酸エステル系として、炭酸エチレン、炭酸プロピレンを使用することができる。これらの溶質はトナーを軟化させる機能を有する。
【0036】
また、エマルジョンを良好に形成するために界面活性剤を加えても良く、界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を使用することができる。アニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類、ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類を使用することができる。カチオン系界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩を使用することができる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル類を使用することができる。
【0037】
定着ヘッド71は、定着液を内部に収容する収容部73と、収容部73に連通し、トナー像に向けて定着液を噴霧する第1ノズルN1および第2ノズルN2と、収容部73内および各ノズルN1,N2内の定着液に電圧を印加する第1電極74とを備えている。第1ノズルN1および第2ノズルN2の先端部分は、下方に向かう程、徐々に縮径している。第1ノズルN1は、シートPの幅方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0038】
第2ノズルN2は、シートPの幅方向に間隔を空けて複数設けられている。第2ノズルN2は、シートPの搬送方向において、第1ノズルN1の下流に位置する。また、第2ノズルN2は、シートPの幅方向において、第1ノズルN1とは異なる位置に位置する。
【0039】
第1電極74は、収容部73の上壁を上から下に貫通するように設けられ、下端部が収容部73内の定着液内に配置され、上端部が、図示せぬハーネスを介して、
図2(b)に示す第1電圧供給部E1に接続されている。第1電極74には、正の電圧が印加されている。
【0040】
第2電極72は、第1電極74との間で電位差を形成することで各ノズルN1,N2から定着液を噴霧させるための電極であり、各ノズルN1,N2の先端から所定距離離れて、各ノズルN1,N2の先端に対向して配置されている。ここで、所定距離は、シートPの厚さよりも大きな距離であり、実験やシミュレーション等によって静電噴霧を好適に行うことが可能な距離に設定されている。第2電極72には、
図2(b)に示す第2電圧供給部E2によって、負の電圧が印加されている。
【0041】
第1電極74に電圧が印加されるとノズルN1,N2の先端付近の空間に電界が形成される。すると、ノズルN1,N2の先端では、定着液が電界に引っ張られていわゆるテイラーコーンが形成される。このテイラーコーンの先端から定着液が引きちぎられることによって微細な液滴が生成される。
ノズルN1,N2から噴霧された液滴状の定着液は、正に帯電している。これに対し、シートPは実質的にゼロ電位状態になっている。このため、液滴状の定着液は、クーロン力によってシートPに向かって飛んでゆき、シートPやトナー像に付着する。
【0042】
回収容器75は、シートPを吸着させるための吸着プレート76を備えている。吸着プレート76は、金属板などの導電性部材からなり、
図3(b)に示す第3電圧供給部E3によって、負の電圧が印加されている。これにより、吸着プレート76は、電気的な力でシートPを引き寄せて、シートPを支持することが可能となっている。
【0043】
吸着プレート76は、定着ヘッド71へ向けてシートPをガイドするガイド面76Aを有している。ガイド面76Aは、搬送方向において、感光ドラム61の下流、かつ、定着ヘッド71の上流に設けられている。
【0044】
制御部100は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えている。制御部100は、第1電極74と第2電極72間の電位差を制御することで、ノズルN1,N2からの定着液の噴霧量を制御している。なお、本実施形態では、一例として、第2電極72に印加する電圧-V2と吸着プレート76に印加する電圧-V3を固定値とし、第1電極74に印加する電圧V1のみを制御することで、電位差を制御することとする。
【0045】
制御部100は、印刷中において、原則、第1電極74を流れる電流Itが一定の目標値IAとなるように電圧V1を制御する定電流制御を実行する。詳しくは、制御部100は、図示せぬ電流センサにより電流Itを検出し、検出した電流Itが目標値IAとなるように、電圧V1を制御する。
【0046】
ここで、ノズルN1,N2から第2電極72に噴霧される定着液は、帯電しているため、第1電極74と第2電極72間で流れる電流に相当する。そして、この電流が流れる回路は、搬送されるシートPの位置によって、以下のように変化する。
【0047】
図2(a),(b)に示すように、ノズルN1,N2からの定着液の噴霧範囲内にシートPが存在しない場合には、帯電された定着液がノズルN1,N2からそのまま第2電極72に向かうため、第1電極74を流れた電流Itは、空気の抵抗R1,R2を介して第2電極72に流れていく。ここで、抵抗R1は、シートPが通る通過位置PPからノズルN1,N2までの範囲にある空気の抵抗値である。抵抗R2は、通過位置PPから第2電極72までの範囲にある空気の抵抗値である。
【0048】
図3(a),(b)に示すように、シートPが吸着プレート76に接触した状態で定着液の噴霧範囲内に入っている場合には、第1電極74と第2電極72との間にシートPが抵抗として入るとともに、吸着プレート76がシートPを介して第1電極74等と電気的に接続される。これにより、抵抗R1と抵抗R2の間に、シートPの体積抵抗に相当する第1シート抵抗R3が入るとともに、抵抗R1と吸着プレート76の間にシートPの表面抵抗に相当する第2シート抵抗R4が入ることになる。
【0049】
図4(a),(b)に示すように、シートPの後端が吸着プレート76から外れた時点においては、第1電極74等から吸着プレート76が電気的に切り離されるので、回路の抵抗が、
図3(b)の状態から第2シート抵抗R4および第3電圧供給部E3が取り除かれた
図4(b)の状態となる。
図5(a),(b)に示すように、シートPの後端が定着液の噴霧範囲から外れた時点では、回路の抵抗が、
図4(b)の状態から第1シート抵抗R3が取り除かれた
図5(b)の状態となる。
【0050】
このように回路の抵抗がシートPの位置によって変化するため、例えば定電流制御を印刷中に常時実行する場合には、以下に示す問題が生じる。
【0051】
図3(a),(b)に示すように、シートPの先端が定着液の噴霧範囲内に到達した時点においては、回路の抵抗が、
図2(b)の状態から
図3(b)の状態に変わるため、電流Itが急激に低下する。これにより、定着液の噴霧量も急激に低下して、シートPの先端付近での定着が良好に行われないおそれがある。そのため、本実施形態では、制御部100は、シートPの先端が定着液の噴霧範囲内に到達した時点を含む微小な時間の間、定電流制御とは異なる制御を実行している。
【0052】
図4(a),(b)に示すように、シートPの後端が吸着プレート76から外れた時点においては、回路の抵抗が、
図3(b)の状態から
図4(b)の状態に変わるため、電流Itが低下するおそれがある。ただし、このときの電流Itの低下は、定着に影響がでない可能性が高いため、本実施形態では、このときの制御は、定電流制御のままとする。
【0053】
図5(a),(b)に示すように、シートPの後端が定着液の噴霧範囲から外れた時点においては、回路の抵抗が、
図4(b)の状態から
図5(b)の状態に変わるため、電流Itが急激に増加する。これにより、噴霧された定着液の粒が大きくなることで、噴霧量が乱れ、シートPの後端付近での定着が良好に行われないおそれがある。そのため、本実施形態では、制御部100は、シートPの後端が定着液の噴霧範囲から外れた時点を含む微小な時間の間、定電流制御とは異なる制御を実行している。
【0054】
具体的に、制御部100は、取得処理と、設定処理と、第1電圧処理と、第2電圧処理と、第3電圧処理とを実行可能となっている。
【0055】
取得処理は、シートPの抵抗値を取得する処理である。制御部100は、取得処理において、転写装置TMに流れる電流に基づいてシートPの抵抗値を算出して取得している。詳しくは、制御部100は、取得処理において、シートPが転写装置TMを通過していないときに転写装置TMに流れる第1転写電流と、シートPが転写装置TMを通過しているときに転写装置TMに流れる第2転写電流とに基づいて、シートPの抵抗値を算出している。
【0056】
より詳しくは、制御部100は、取得処理において、第1転写電流と第2転写電流の差に基づいて、シートPの体積抵抗に相当する第1シート抵抗R3の抵抗値を算出する。また、制御部100は、取得処理において、第1シート抵抗R3の抵抗値と、所定の計算式またはテーブルとを用いて、シートPの表面抵抗に相当する第2シート抵抗R4の抵抗値を算出する。また、制御部100は、複数枚のシートPを印刷する場合には、最初に印刷する1枚目のシートPに対してのみ、取得処理を実行するように構成されている。
【0057】
設定処理は、取得処理によって取得したシートPの抵抗値に基づいて、第1電極74と第2電極72間の電位差の目標値である第1目標電位差を設定する処理である。なお、本実施形態では、電圧-V2,-V3を固定値としているので、制御部100は、電圧V1の第1目標電圧値を、第1目標電位差として設定している。設定処理において、制御部100は、取得処理において取得したシート抵抗R3,R4と、固定値である抵抗R1,R2および電流の目標値IAとに基づいて、電圧V1の第1目標電圧値を設定する。ここで、抵抗R1,R2および目標値IAは、実験等によって予め適正な値に設定して、ROM等の記憶部に固定値として予め記憶させておけばよい。なお、目標値IAの代わりに、別の電流目標値を用いて第1目標電位差を設定してもよい。この場合、電流目標値は、シートPの先端が噴霧範囲内に到達した時点における噴霧量の変化によって画質が乱れない程度の値に設定され、実験やシミュレーション等によって予め決めてもよい。
【0058】
第1電圧処理は、シートPの先端が定着液の噴霧範囲内に到達する際に、実行する処理である。第1電圧処理において、制御部100は、電流センサで検出する電流を参照することなく、電圧V1を、設定処理で設定した第1目標電圧値に変更して、第1電極74に印加する。言い換えると、制御部100は、第1電圧処理において、第1電極74と第2電極72間の電位差が第1目標電位差となるように、第1電極74および第2電極72に電圧を印加する。
【0059】
第2電圧処理は、シートPの後端が噴霧範囲から外れる際に、実行する処理である。第2電圧処理において、制御部100は、電流センサで検出する電流を参照することなく、電圧V1を、シートPが噴霧範囲内に存在しないときの定電流制御での電圧値と同じ値である第2目標電圧値に変更して、第1電極74に印加する。言い換えると、制御部100は、第2電圧処理において、第1電極74と第2電極72間の電位差が、シートPが噴霧範囲内に存在しないときの電位差に相当する第2目標電位差となるように、第1電極74、第2電極72および吸着プレート76に電圧を印加する。ここで、第2目標電圧値は、実験等によって予め適正な値に設定して、ROM等の記憶部に固定値として予め記憶させておけばよい。
【0060】
第3電圧処理は、前述した定電流制御を実行する処理である。制御部100は、シートPが噴霧範囲外である場合、または、噴霧範囲のすべてがシートPの先端と後端の間に位置する場合に第3電圧処理を実行する。より詳しくは、制御部100は、印刷中において、第1電圧処理および第2電圧処理を実行しない期間は、すべて第3電圧処理を実行する。
【0061】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。
図6に示すように、制御部100は、まず、印刷指令があるか否かを判定する(S1)。ステップS1において印刷指令がないと判定した場合には(No)、制御部100は、本処理を終了する。ステップS1において印刷指令があると判定した場合には(Yes)、制御部100は、感光ドラム61を帯電させるとともに、転写ローラTRに転写電圧を印加し、さらに第3電圧処理を実行する(S2)。これにより、感光ドラム61と転写ローラTRの間に、シートPが存在しないときの転写電流である第1転写電流が流れるとともに、定着ヘッド71からの定着液の噴霧が定電流制御により開始される。
【0062】
ステップS2の後、制御部100は、第1転写電流を測定する(S3)。ステップS3の後、制御部100は、供給トレイ31から画像形成部4にシートPを供給する(S4)。なお、ステップS4の後の所定のタイミングで、制御部100は、感光ドラム61を露光する処理を行うが、露光処理については公知の方法を用いればよいので、説明は省略する。
【0063】
ステップS4の後、制御部100は、第1目標電位差としての電圧V1の第1目標電圧値が既に設定済みであることを示す設定済フラグF1が0であるか否かを判定する(S5)。ステップS5においてF1=0であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、シートPが転写ローラTRを通過しているときに、感光ドラム61と転写ローラTRの間に流れる転写電流を第2転写電流として測定する(S6)。具体的に、制御部100は、シートセンサ23がONになってから第1経過時間が経過した場合に、シートPが転写ローラTRを通過していると判定して、第2転写電流を測定する。
【0064】
ステップS6の後、制御部100は、第1転写電流と第2転写電流に基づいてシートPの抵抗値を算出する(S7)。ステップS7の後、制御部100は、シートPの抵抗値に基づいて、第1目標電位差としての電圧V1の第1目標電圧値を設定する(S8)。
【0065】
ステップS8の後、制御部100は、設定済フラグF1を1にする(S9)。ステップS9の後、または、ステップS5でNoと判定した場合には、制御部100は、定着処理を実行する(S10)。なお、定着処理については、後で詳述する。
【0066】
ステップS10の後、制御部100は、印刷が終了したか否かを判定する(S11)。ステップS11において印刷が終了していないと判定した場合、つまり次に印刷するシートPがある場合には(No)、制御部100は、ステップS4の処理に戻る。ステップS11において印刷が終了したと判定した場合には(Yes)、制御部100は、目標電位差としての第1目標電圧値と設定済フラグF1をリセットして(S12)、本処理を終了する。
【0067】
図7に示すように、定着処理において、制御部100は、まず、シートセンサ23がOFFからONに切り替わってから第2経過時間が経過したか否かを判定することで、シートPの先端が噴霧範囲に到達したか否かを判定する(S31)。ステップS31においてシートPの先端が噴霧範囲に到達したと判定した場合には(Yes)、制御部100は、定電流制御である第3電圧処理から、電圧V1を第1目標電圧値にする第1電圧処理に切り替える(S32)。
【0068】
ステップS32で第1電圧処理に切り替えてから微小な所定時間後に、制御部100は、第1電圧処理から第3電圧処理に切り替える(S33)。ステップS33の後、制御部100は、シートセンサ23がONからOFFに切り替わってから第3経過時間が経過したか否かを判定することで、シートPの後端が噴霧範囲から外れたか否かを判定する(S34)。
【0069】
ステップS34においてシートPの後端が噴霧範囲から外れたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、第3電圧処理から、電圧V1を第2目標電圧値にする第2電圧処理に切り替える(S35)。ステップS35で第2電圧処理に切り替えてから微小な所定時間後に、制御部100は、第2電圧処理から第3電圧処理に切り替えて(S36)、本処理を終了する。
【0070】
次に、制御部100の動作の一例について詳細に説明する。
複数枚のシートPを印刷する場合には、制御部100は、まず、ステップS2の処理を行うことで、感光ドラム61と転写ローラTRの間に転写電流を流すとともに、
図2(a)に示すように定着ヘッド71からの定着液の噴霧を開始する。その後、制御部100は、1枚目のシートPの供給を開始する前に、第1転写電流を測定する(S3)。
【0071】
その後、制御部100は、1枚目のシートPの供給を開始し(S4)、設定済フラグF1が0であるか否かを判定する(S5)。1枚目のシートPが印刷される前においては、設定済フラグF1は0であるため、制御部100は、ステップS5でYesと判定する。
【0072】
その後、制御部100は、シートPが転写ローラTRを通過しているときに、第2転写電流を測定する(S6)。そして、制御部100は、第1転写電流と第2転写電流に基づいて、シートPの抵抗値の算出と、第1目標電位差としての第1目標電圧値の設定とを行って、設定済フラグF1を1にする(S7-S9)。
【0073】
その後、
図3(a)に示すように、シートPの先端が噴霧範囲に到達すると、制御部100は、定電流制御である第3電圧処理を終了して、電圧V1を第1目標電圧値にする第1電圧処理を実行する(S31,S32)。これにより、回路の抵抗が
図2(b)の状態から
図3(b)の状態に変化した瞬間に、電圧V1が
図3(b)の状態の抵抗に対応した第1目標電圧値に変更されるので、電流が急激に低下することが抑制され、噴霧量が乱れることが抑制される。
【0074】
第1電圧処理の開始後、制御部100は、所定のタイミングで第1電圧処理を終了して、再び第3電圧処理を実行する(S33)。これにより、定電流制御により安定した噴霧量で、シートPに定着液を噴霧することができる。
【0075】
その後、
図5(a)に示すように、シートPの後端が噴霧範囲から外れると、制御部100は、定電流制御である第3電圧処理を終了して、電圧V1を第2目標電圧値にする第2電圧処理を実行する(S35)。これにより、回路の抵抗が
図4(b)の状態から
図5(b)の状態に変化した瞬間に、電圧V1が
図5(b)の状態の抵抗に対応した第2目標電圧値に変更されるので、電流が急激に増加することが抑制され、噴霧量が乱れることが抑制される。
【0076】
第2電圧処理の開始後、制御部100は、所定のタイミングで第2電圧処理を終了して、再び第3電圧処理を実行する(S36)。その後、2枚目のシートPについて印刷を行う場合には(S11:No→S4)、1枚目のシートPの印刷時において既に第1目標電圧値が設定済みなので(F1=1)、制御部100は、ステップS5でNoと判定して、1枚目のときと同様に定着処理を実行する(S10)。
【0077】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
シートPの先端が噴霧範囲内に到達したときに、第1電極74と第2電極72間の電位差が、シートPの抵抗値に基づいて設定した目標電位差となるので、シートPの先端が噴霧範囲内に突入することによる電流の急変を抑制することができ、噴霧量が乱れるのを抑制することができる。
【0078】
シートPの後端が噴霧範囲から外れたときに、第1電極74と第2電極72間の電位差が、シートPが噴霧範囲内に存在しないときの電位差に相当する第2目標電位差となるので、シートPの後端が噴霧範囲から外れることによる電流の急変を抑制することができ、噴霧量が乱れるのを抑制することができる。
【0079】
シートPが噴霧範囲外である場合、または、噴霧範囲のすべてがシートPの先端と後端の間に位置する場合には、定電流制御である第3電圧処理を実行するので、定電流制御により噴霧量を安定させることができる。
【0080】
転写装置TMを利用してシートPの抵抗値を取得するので、例えばシートPの抵抗値を取得する他の装置を利用する場合と比べ、コストの低下を図ることができる。また、定着装置7にシートPが到達する前に、シートPの抵抗値を取得することができる。
【0081】
シートPが転写装置TMを通過していないときに転写装置TMに流れる電流と、シートPが転写装置TMを通過しているときに転写装置TMに流れる電流とに基づいてシートPの抵抗値を算出するので、転写装置TMを利用してシートPの抵抗値を良好に取得することができる。
【0082】
複数枚のシートPを印刷する場合には、最初に印刷する1枚目のシートPに対してのみ取得処理を実行することで、例えば複数枚のシートPのすべてに対して取得処理を実行する場合と比べ、2枚目以降のシートPについては1枚目で取得した抵抗値を流用することができるので、スループットの低下を抑えることができる。
【0083】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の部材や処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0084】
前記実施形態では、複数枚のシートPを印刷する場合における1枚目のシートPに対してのみ取得処理を実行したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部100は、複数枚のうち2枚目以降の各シートPに対しても取得処理を実行してもよい。また、例えば、制御部100は、トレイ検知部22からの信号に基づいて供給トレイ31が着脱されたと判定してから最初に印刷する1枚のシートPに対してのみ、取得処理を実行してもよい。具体的には、制御部100は、
図8に示す処理を実行するように構成されていてもよい。
【0085】
図8に示す処理は、
図6に示す処理の一部を変更したものである。具体的に、
図8に示す処理は、
図6に示す処理に対して、ステップS5,S9を取り除き、新たなステップS51~S56を追加したものである。
【0086】
図8に示す処理において、制御部100は、まず、供給トレイ31が着脱されたか否かを判定する(S51)。ここで、トレイ検知部22が例えば光センサである場合には、トレイ検知部22は、例えば、供給トレイ31が本体筐体2から離脱されたときに発光部の光が受光部で受光されるON状態となり、供給トレイ31が本体筐体2に装着されたときに発光部の光が供給トレイの一部で遮蔽されるOFF状態となる。制御部100は、トレイ検知部22のON・OFFの状態に基づいて、供給トレイ31の着脱を判定する。なお、着脱の判定は、装着されたことのみを判定してもよいし、離脱されたことのみを判定してもよいし、離脱された後、装着されたことを判定してもよい。
【0087】
ステップS51において供給トレイ31が着脱されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、第1目標電位差としての第1目標電圧値をリセットする(S52)。ステップS52の後、制御部100は、供給トレイ31が着脱されたことを示す着脱フラグF2を1に設定する(S53)。
【0088】
ステップS53の後、または、ステップS51でNoと判定した場合には、制御部100は、ステップS1の処理を実行する。ステップS1でYesと判定した場合には、制御部100は、ステップS2の処理を実行した後、着脱フラグF2が1であるか否かを判定する(S54)。ステップS54においてF2=1であると判定した場合には(Yes)、供給トレイ31が着脱されてから最初にシートPを印刷する状況であるため、制御部100は、シートPの供給を開始する前に第1転写電流を測定して(S3)、シートPの供給を行う(S4)。ステップS54においてF2=1でないと判定した場合には(No)、供給トレイ31が着脱されてから2枚目以降のシートPを印刷する状況であるため、制御部100は、第1転写電流の測定をせずに、シートPの供給を行う(S4)。
【0089】
ステップS4の後、制御部100は、再び着脱フラグF2が1であるか否かを判定する(S55)。ステップS55においてF2=1であると判定した場合には(Yes)、供給トレイ31が着脱されてから最初にシートPを印刷する状況であるため、制御部100は、ステップS6~S8の処理を実行して、第2転写電流の測定、シートPの抵抗値の算出および第1目標電位差としての第1目標電圧値の設定を行う。ステップS8の後、制御部100は、着脱フラグF2をリセットして(S56)、ステップS10の処理を実行する。ステップS55においてF2=1でないと判定した場合には(No)、供給トレイ31が着脱されてから2枚目以降のシートPを印刷する状況であるため、制御部100は、ステップS6~S8,S56の処理を飛ばして、ステップS10の処理を実行する。
【0090】
この形態によれば、以下の効果を得ることができる。
供給トレイ31内には通常同じ種類のシートPが収容されるため、供給トレイ31が着脱されてから最初に印刷する1枚目のシートPのみに対して取得処理を行えば、残りのシートPについては1枚目で取得した抵抗値を流用することができ、スループットの低下を抑えることができる。
【0091】
前記実施形態では、転写装置TMに流れる電流に基づいてシートPの抵抗値を算出したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シートの抵抗値は、実験やシミュレーション等によって、シートの種類に応じて予め設定されている固定値であってもよい
【0092】
前記実施形態では、各電圧処理において、第1電極74に印加する電圧V1のみを制御したが、本発明はこれに限定されない。制御部100は、各電圧処理において、第1電極74、第2電極72および吸着プレート76の少なくとも1つに印加する電圧を制御すればよい。
【0093】
前記実施形態では、吸着プレート76を備える構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、吸着プレートはなくてもよい。
【0094】
前記実施形態では、シートPの後端が吸着プレート76から外れたときでも、定電流制御である第3電圧処理を継続したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図4(b)に示す抵抗R1~R3と電流の目標値IAとに基づいて、電圧V1の第3目標電圧値を設定し、シートPの後端が吸着プレート76から外れたときに、定電流制御である第3電圧処理を終了して、電圧V1を第3目標電圧値に変更してもよい。
【0095】
前記実施形態では、原則、定電流制御である第3電圧処理を実行することとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、定電流制御を行わずに、第1電圧処理または第2電圧処理を実行してもよい。具体的には、例えば、印刷中において常時第1電圧処理を実行してもよい。また、例えば、シートPを供給トレイ31からピックアップしてからシートPの後端が噴霧範囲から外れる前までの間、第1電圧処理を実行し、シートPの後端が噴霧範囲から外れた後、第2電圧処理を実行してもよい。
【0096】
前記実施形態では、第2電極72および吸着プレート76に、第1電極74に印加する電圧とは逆極性の電圧を印加したが、本発明はこれに限定されず、第2電極72および吸着プレート76に、第1電極74に印加する電圧と同極性の電圧であって、第1電極74に印加する電圧よりも小さな電圧を印加してもよい。また、第2電極72および吸着プレート76の少なくとも一方を、接地してもよい。
【0097】
前記実施形態では、転写ローラTRを備えた転写装置TMを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、転写装置は、転写電圧が印加される導電性ブラシや導電性板バネなどを備えるものであってもよい。
【0098】
画像形成装置は、前記実施形態に限定されず、例えば、カラープリンタ、複写機、複合機などであってもよい。
【0099】
前記実施形態では、定着液の噴霧の後、シートを加熱することで、シート上にトナー像を定着させたが、本発明はこれに限定されず、定着液の噴霧のみでシート上にトナー像を定着させてもよい。
【0100】
前記実施形態では、第2電極72を、各ノズルN1,N2の先端に対向するように配置したが、本発明はこれに限定されず、ノズルが突出する方向から見て、ノズルと第2電極が重ならないように第2電極を配置してもよい。この場合であっても、シートが、第2電極の直上に位置し、且つ、ノズルの先端に対向したときに、ノズル内の定着液とシートとの間に電位差が形成されて、静電噴霧を行うことができる。
【0101】
シートは、例えば、厚紙、はがき、薄紙などの用紙であってもよいし、OHPシートであってもよい。
【0102】
前記実施形態では、第1電極74を収容部73の内部に配置したが、本発明はこれに限定されず、例えばノズルおよび収容部を金属等の導電性部材で形成して、ノズルまたは収容部に対して電圧を印加してもよい。なお、この場合には、電圧が印加されるノズルまたは収容部が、第1電極として機能する。また、収容部を樹脂等の非導電性の部材で形成し、ノズルを金属等の導電性の部材で形成し、ノズルに電圧を印加するようにしてもよい。なお、この場合には、ノズルが第1電極として機能する。
【0103】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 レーザプリンタ
7 定着装置
72 第2電極
74 第1電極
100 制御部
N1 第1ノズル
N2 第2ノズル
P シート