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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082079
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20220525BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/53 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193433
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA14
3B200BB03
3B200BB04
3B200BB05
3B200BB09
3B200BB17
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB12
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、液戻り量が少なく、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートと吸収体とを具備した吸収性物品であって、吸収体は、高吸収性シートと親水性シートとを有し、高吸収性シートは、連続多孔質体シートと複合型不織布シートと高吸収性ポリマーとを有し、高吸収性ポリマーは、第一連続多孔質体シートと第二連続多孔質体シートの層間に封入されている第一高吸収性ポリマーと、第二連続多孔質体シートと複合型不織布シートの層間に封入されている第二高吸収性ポリマーとを含み、第一高吸収性ポリマーの吸収倍率が40g/g未満で、かつ通液速度が30ml/分以上であり、第二高吸収性ポリマーの吸収倍率が40g/g以上で、かつ通液速度が10ml/分以下である、吸収性物品を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間にフラッフパルプを含有しない吸収体とを具備した吸収性物品であって、
前記吸収体は、高吸収性シートと、前記高吸収性シートの全体を包む親水性シートとを有し、
前記高吸収性シートは、ポリウレタン製の連続多孔質体シートと、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布シートと、各シートの層間に封入された高吸収性ポリマーとを有し、
前記高吸収性シートは、着用者の肌当接面側から第一連続多孔質体シート、第二連続多孔質体シート、前記複合型不織布シートの順に積層され、
前記高吸収性ポリマーは、前記第一連続多孔質体シートと前記第二連続多孔質体シートの層間に封入されている第一高吸収性ポリマーと、前記第二連続多孔質体シートと前記複合型不織布シートの層間に封入されている第二高吸収性ポリマーとを含み、
前記第一高吸収性ポリマーの吸収倍率が40g/g未満で、かつ通液速度が30ml/分以上であり、
前記第二高吸収性ポリマーの吸収倍率が40g/g以上で、かつ通液速度が10ml/分以下であることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記連続多孔質体シートは、坪量が30g/m以上300g/m以下であり、かつ見かけ密度が100kg/m以上200kg/m以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記連続多孔質体シートは、骨格表面が親水性であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記複合型不織布シートの引張試験における強度が、テンシロンでの試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記スパンボンド不織布の材質は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群から1つ又は2つ以上の組み合わせを選択されるものであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウェブとを水流交絡処理する水流交絡工程において、ウォータージェットを噴射するウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であり、かつ前記ウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第二高吸収性ポリマーと接する前記複合型不織布シートの面が、前記ウォータージェットが当たって水流交絡された面であることを特徴とする、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記第一高吸収性ポリマーの吸収倍率(1A)に対する前記第二高吸収性ポリマーの吸収倍率(2A)の比率(2A/1A)が1.2以上であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記第二高吸収性ポリマーの通液速度(2S)に対する前記第一高吸収性ポリマーの通液速度(1S)の比率(1S/2S)が5以上であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m以上300g/m以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体及び該吸収体を備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されている。
【0003】
近年は吸収性物品を着けていることが目立たない、また着用時に違和感がなく、着けている感がない製品が望まれているため、吸収性物品の大部分を占める吸収体を薄型にした吸収性物品の態様が多く提案されている。
【0004】
そのような吸収性物品として、例えば特許文献1には、表面シートと吸収体との間にセカンドシートが配されている吸収性物品において、吸収体が0.12g/cmより高い密度を有し、セカンドシートが1.5×10N以上の毛管力を有する吸収性物品が開示されており、吸収体の密度とセカンドシートの毛管力を最適化することにより、吸収体の薄さと優れた吸収力とを高いレベルで両立して、装着時に安心と、快適な装着感を与えることができる、と記載されている。
また、特許文献2には、不織布及び吸収性ポリマーを含んで構成される上部吸収層と、親水性多孔体及び吸収性ポリマーを含んで構成される下部吸収層と、を有し、下部吸収層は実質的に縦長であり、下部吸収層の幅方向中央部は、下部吸収層の他の部位に比して、吸収性ポリマーの分布量が少ない吸収性物品が開示されており、下部吸収層に親水性多孔質を用い、吸収性ポリマーの分布を最適化することにより、液拡散性、液保持性を高く保持しつつ、厚みが薄く、吸収速度を速くすることができる、と記載されている。
【0005】
一方、ウレタン発泡体を使用した吸収体としては、特許文献3には、第1表面と第2表面とを有する基材層、第1表面と第2表面とを有する吸収性ポリマー材料層、第1表面と第2表面とを有する接着剤層を有し、吸収性ポリマー材料層は接着剤層と基材層との間に含まれ、吸収性ポリマー材料層の第2表面は、基材層の第1表面に接触し、吸収性ポリマー材料層の第1表面は接着剤層の第2表面に接触しているものであり、基材層は発泡体材料層を備える吸収性コアが開示されており、基材層上に安定して取り付けられた層中に吸収性ゲル材料を有する発泡体層を組み込むことによって、フィット性が良く快適であり、コア吸収能力の利用率を維持できる、と記載されている。
また、特許文献4には、1又は複数のプラスチック発泡体層及び/又はラテックス発泡体層と、水及び水性の液体を吸収するための粒子状超吸収性ポリマーとからなる層状体において、超吸収性ポリマーが発泡プラスチック及び/又は発泡ラテックス層の上に直接、それらの間に、又はその下に、量的に及び/又は場所的に予め決められ固定された面的な配置状態で構成されていること、並びに発泡プラスチック及び/又は発泡ラテックス層:超吸収性ポリマーの量的比率が1:500乃至50:1、好ましくは1:50乃至25:1、最も好ましくは1:5乃至10:1である層状体が開示されており、水及び水性の液体に対し吸収能が高められており、特に荷重下においてそうである、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-067897号公報
【特許文献2】特開2009-131349号公報
【特許文献3】特開2014-140770号公報
【特許文献4】特表平09-509909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸収性物品を上記の態様で薄型化、軽量化する場合、ある程度の吸収性能を犠牲にしなければならない。特に、吸収体面積の狭い軽失禁用製品や尿取りパッドにおいては十分な吸収性能が保たれない。
また、吸収の速さと液戻り(逆戻り)量の少なさは、吸収性能の指標としてどちらも重要であるが、薄型の吸収性物品においては両者を高い次元で満たすことは難しい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、液戻り量が少なく、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行い、ポリウレタン製の連続多孔質体シートとスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化してある複合型不織布シートの層間に高吸収性ポリマーを含む高吸収性シートを備え、さらに特定の吸収倍率と通液速度を有する二種類の高吸収性ポリマー粒子を採用することで、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、液戻り量が少なく、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品とすることができ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートと、上記トップシートと上記バックシートとの間にフラッフパルプを含有しない吸収体とを具備した吸収性物品であって、上記吸収体は、高吸収性シートと、上記高吸収性シートの全体を包む親水性シートとを有し、上記高吸収性シートは、ポリウレタン製の連続多孔質体シートと、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布シートと、各シートの層間に封入された高吸収性ポリマーとを有し、上記高吸収性シートは、着用者の肌当接面側から第一連続多孔質体シート、第二連続多孔質体シート、上記複合型不織布シートの順に積層され、上記高吸収性ポリマーは、上記第一連続多孔質体シートと上記第二連続多孔質体シートの層間に封入されている第一高吸収性ポリマーと、上記第二連続多孔質体シートと上記複合型不織布シートの層間に封入されている第二高吸収性ポリマーとを含み、上記第一高吸収性ポリマーの吸収倍率が40g/g未満で、かつ通液速度が30ml/分以上であり、上記第二高吸収性ポリマーの吸収倍率が40g/g以上で、かつ通液速度が10ml/分以下であることを特徴とする、吸収性物品である。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、上記連続多孔質体シートは、坪量が30g/m以上300g/m以下であり、かつ見かけ密度が100kg/m以上200kg/m以下であることを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、上記連続多孔質体シートは、骨格表面が親水性であることを特徴とするものである。
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記複合型不織布シートの引張試験における強度が、テンシロンでの試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下であることを特徴とするものである。
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記スパンボンド不織布の材質は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群から1つ又は2つ以上の組み合わせを選択されるものであることを特徴とするものである。
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記スパンボンド不織布と上記パルプ繊維ウェブとを水流交絡処理する水流交絡工程において、ウォータージェットを噴射するウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であり、かつ上記ウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下であることを特徴とするものである。
(7)本発明の第7の態様は、(6)に記載の吸収性物品であって、上記第二高吸収性ポリマーと接する上記複合型不織布シートの面が、上記ウォータージェットが当たって水流交絡された面であることを特徴とするものである。
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記第一高吸収性ポリマーの吸収倍率(1A)に対する上記第二高吸収性ポリマーの吸収倍率(2A)の比率(2A/1A)が1.2以上であることを特徴とするものである。
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記第二高吸収性ポリマーの通液速度(2S)に対する上記第一高吸収性ポリマーの通液速度(1S)の比率(1S/2S)が5以上であることを特徴とするものである。
(10)本発明の第10の態様は、(1)から(9)のいずれかに記載の吸収性物品であって、上記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m以上300g/m以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、液戻り量が少なく、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の吸収性物品の平面図である。
図2図1のY-Y線における断面図である。
図3図2における高吸収性シート部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。
【0014】
また、本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1としては、特に軽失禁用製品、尿取りパッドが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0015】
<吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図であり、図2は、図1のY-Y線における断面図である。本発明の吸収性物品1は、液透過性のトップシート10と液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20との間にフラッフパルプを含有しない吸収体30とを具備する。
なお、吸収性物品1は、長手方向の寸法は100mm以上800mm以下、幅方向の寸法は50mm以上500mm以下であることが好ましい。吸収性物品1の各寸法を上記の範囲に調整することにより、軽失禁用製品、尿取りパッド等に適した吸収性物品1を得ることができる。
【0016】
また、吸収性物品1には、着用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、図1及び図2に示すように吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザー50を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー50の外端は、バックシート20に固定され、その内端はトップシート10に固定され、その中央はトップシート10に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー50が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、ポリエチレンフィルム、又はそれらのシートを組み合わせて接合したシートなどが使用できる。強度及び加工性の点から、立体ギャザー50の坪量は、10g/m以上30g/m以下であることが好ましい。
【0017】
<トップシート>
トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、18g/m以上400g/m以下であることが好ましく、20g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導するために必要とされる、吸収体30を覆う形状であればよい。
【0018】
<バックシート>
バックシート20は、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、通気性又は非通気性の不透液性のプラスチックフィルムを使用できる。
【0019】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、12g/m以上40g/m以下であることが好ましく、15g/m以上35g/m以下であることがより好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0020】
<吸収体>
本発明の吸収性物品1において、吸収体30の長手方向の寸法は、50mm以上750mm以下であることが好ましく、80mm以上700mm以下であることがより好ましい。また、吸収体30の幅方向の寸法は、20mm以上450mm以下であることが好ましく、30mm以上400mm以下であることがより好ましい。
なお、上述のように吸収体30はフラッフパルプを含有しない。これは、フラッフパルプは嵩が大きく、吸収体30を薄くするのに適切でないためである。
【0021】
(高吸収性シート)
図2に示すように、吸収体30は、高吸収性シート60と、高吸収性シート60の全体を包む親水性シート70とを有する。
このうち、高吸収性シート60は、ポリウレタン製の連続多孔質体シート80と、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布シート90と、各シートの層間に封入された高吸収性ポリマー(以下、SAPとも称する)100とを有する。
【0022】
より具体的には、高吸収性シート60は、図3の拡大図に示すように、着用者の肌当接面側から第一連続多孔質体シート81、第二連続多孔質体シート82、複合型不織布シート90の順に積層されている。
このうち、第一連続多孔質体シート81及び第二連続多孔質体シート82はいずれも公知のウレタンフォームの単層シート等が使用できる。また、坪量はいずれも30g/m以上300g/m以下であり、かつ見かけ密度がいずれも100kg/m以上200kg/m以下であることが好ましい。さらに、第一連続多孔質体シート81及び第二連続多孔質体シート82は、骨格表面が親水性であることが好ましい。
【0023】
また、複合型不織布シート90において、スパンボンド不織布の坪量が7g/m以上20g/m以下であることが好ましく、パルプ繊維ウェブの坪量が30g/m以上70g/m以下であることが好ましい。また、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとの重量構成比は10/90wt%以上40/60wt%以下であることが好ましい。
なお、複合型不織布シート90の引張試験における強度が、テンシロンでの試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な力が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下であることが好ましい。
【0024】
スパンボンド不織布の材質は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群から1つ又は2つ以上の組み合わせを選択されるものであることが好ましいが、中でもポリプロピレンがより好ましい。
【0025】
スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化する際に、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとを水流交絡処理する水流交絡工程を経るが、当該工程においてウォータージェットを噴射するウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であり、かつウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下であることが好ましい。また、後述する第二高吸収性ポリマー102と接する複合型不織布シート90の面が、ウォータージェットが当たって水流交絡された面であることが好ましい。
【0026】
ポリウレタン製の連続多孔質体シート80は、着用時においては後述する高吸収性ポリマー100の硬さを感じにくく、また、複合型不織布シート90は水流交絡面に形成されたウォータージェットによる凹凸面が第二高吸収性ポリマー102に接しており、更にブロック状に形成された空間に高吸収性ポリマー100が配置されていることによって、高吸収性ポリマー100のズレや移動が抑えられて、体液の吸収後も厚さや触感を長手方向、幅方向でより均一に保つことができるため、吸収性物品1の着用感が向上することになる。
【0027】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー100は、第一連続多孔質体シート81と第二連続多孔質体シート82の層間に封入されている第一高吸収性ポリマー101と、第二連続多孔質体シート82と複合型不織布シート90の層間に封入されている第二高吸収性ポリマー102とを含む。このとき、第一高吸収性ポリマー101と第二高吸収性ポリマー102は吸収倍率と通液速度が異なるものを用いる。
具体的には、第一高吸収性ポリマー101は通液速度の高い高通液タイプを用い、第二高吸収性ポリマー102は吸収倍率の高い高吸収タイプを用いることが好ましい。より具体的に数値として表すと、第一高吸収性ポリマー101の吸収倍率が40g/g未満で、かつ通液速度が30ml/分以上であり、また、第二高吸収性ポリマー102の吸収倍率が40g/g以上で、かつ通液速度が10ml/分以下であることが好ましい。
肌当接面側と非肌当接面側に異なる性質のSAPを配置することによって、特に肌当接面側の第一高吸収性ポリマー101を高通液タイプに、非肌当接面側の第二高吸収性ポリマー102を高吸収タイプにして配置することによって、体液の吸収を厚さ方向から長手方向及び幅方向の流れに向かわせ、拡散性を向上しながら吸収量を高めることができる吸収性物品1が得られる。
【0028】
なお、第一高吸収性ポリマー101の吸収倍率は20g/g以上38g/g以下であることが好ましく、通液速度は30ml/分以上50ml/分以下であることが好ましい。また、第二高吸収性ポリマー102の吸収倍率は42g/g以上80g/g以下であることが好ましく、通液速度は2ml/分以上10ml/分以下であることが好ましい。
【0029】
ここでいう高吸収性ポリマー100の吸収倍率とは、高吸収性ポリマー100(第一高吸収性ポリマー101及び第二高吸収性ポリマー102)を無加圧下で大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨張させ、その後遠心分離機を用いて150Gにて脱水した後の吸収倍率(単位:g/g)である。
また、高吸収性ポリマー100の通液速度とは、予め大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中にて膨潤させた高吸収性ポリマー100(第一高吸収性ポリマー101及び第二高吸収性ポリマー102)のゲル間を、0.3psiの加圧状態で通過する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の通液速度(単位:ml/分)である。より詳細には、通液速度の測定方法は、特開2017-070497号公報の段落[0037]に準拠して測定することができる。
【0030】
また、第一高吸収性ポリマー101の吸収倍率(1A)に対する第二高吸収性ポリマー102の吸収倍率(2A)の比率(2A/1A)が1.2以上であることが好ましく、第二高吸収性ポリマー102の通液速度(2S)に対する第一高吸収性ポリマー101の通液速度(1S)の比率(1S/2S)が5以上であることが好ましい。各比率を上記の数値範囲内にすることで、体液の拡散性をより向上させることができる。
なお、比率(2A/1A)は1.4以上2以下であることがより好ましく、比率(1S/2S)は5.5以上10以下であることがより好ましい。
【0031】
高吸収性ポリマー100としては、体液を吸収し、かつ、液戻りを防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、吸収倍率及び通液速度の観点から、第一高吸収性ポリマー101はポリアクリル酸ナトリウム系、第二高吸収性ポリマー102はポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、高吸収性ポリマー100の坪量は30g/m以上300g/m以下であることが好ましい。
【0032】
(親水性シート)
親水性シート70は、トップシート10と同様に、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布など公知の親水性不織布等を使用できる。
強度、加工性及び液戻り量の点から、親水性シート70の坪量は、10g/m以上50g/m以下であることが好ましく、12g/m以上30g/m以下であることがより好ましい。親水性シート70の形状としては特に制限はないが、吸収した体液を漏れなく吸収体30へと誘導し、かつ吸収体30が隙間から脱落しないために必要とされる、吸収体30の全体を覆う形状であればよい。
【0033】
(接合部)
図1及び図2に示すように、本発明の吸収性物品1において、第一連続多孔質体シート81と第二連続多孔質体シート82、第二連続多孔質体シート82と複合型不織布シート90は、それぞれ部分的に接合部40において相互に接合されていることが好ましい。接合部40で各シート間を部分的に接合し、各シート間がブロック状に高吸収性ポリマー100を含む空間を形成することによって、繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収体30及び吸収体30を備える吸収性物品1を得ることができる。
各シート間の接合は、図1に示すようにシート外周及び幅方向の数か所を直線状に接合する形式が好ましいが、各シート間がブロック状に高吸収性ポリマー100を含む空間を形成するのであれば、これ以外の形式でもかまわない。このとき、接合方法は、ホットメルト、ヒートシール、超音波シール等の公知の方法を適宜用いることができる。
【0034】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが、当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0035】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例及び比較例)
トップシート(エアースルー不織布、坪量20g/m)とバックシート(通気性ポリエチレンフィルム、坪量35g/m)を用意し、その間に吸収体を設置する形で実施例1の吸収性物品を作製した。吸収体は肌当接面側から2枚の連続多孔質体シート(いずれもウレタンフォームシート、坪量80g/m)とスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布シート(スパンボンド不織布の坪量15g/m、パルプ繊維ウェブの坪量40g/m、いずれも1枚当たり)を順番に積層し、そして、2枚の連続多孔質体シートの層間に高通液タイプの高吸収性ポリマー(吸収倍率:35g/g、通液速度:35ml/分)、非肌当接面側(中間層)の連続多孔質体シートと複合型不織布シートとの層間に高吸収タイプの高吸収性ポリマー(吸収倍率:45g/g、通液速度:8ml/分)をそれぞれ5gずつ配置し、各シート間を接合することで作製した。
また、比較例1は第一高吸収性ポリマー及び第二高吸収性ポリマーのいずれも高通液タイプを、比較例2は第一高吸収性ポリマー及び第二高吸収性ポリマーのいずれも高吸収タイプを用い、比較例3は中間層にシートを配置せず、第一高吸収性ポリマーに高吸収タイプ、第二高吸収性ポリマーに高通液タイプを使用した。それ以外の条件は全て実施例と同じとした。なお、実施例及び各比較例において、各シートの長手方向の寸法は420mm、幅方向の寸法は150mmとし、吸収性物品の長手方向の寸法は480mm、幅方向の寸法は200mmとすることで統一した。
【0037】
実施例及び各比較例について、以下の項目の評価を行った。
総吸収量:生理食塩水中に5分間浸漬した後、金網上で30秒間水切りし、吸収前後の重量差を計測した。
繰り返し吸収速度:底面140×1000mm、外径40mm、内径35mm、重量1400gの治具を用いて、荷重下120mlの生理食塩水を10分間隔で3回注水し、3回目の注水分120mlを吸収する時間を測定した。
液戻り:吸収速度3回測定終了後、10分後に35gf/cmの荷重条件で、55mm径のろ紙に1分間で液戻り吸収した水分量を測定した。
拡散長さ:吸収速度3回測定終了後の、生理食塩水を吸収した部分の最大長さを測定した。
着用感(装着から交換まで):20名のモニターテストを実施し、下記の基準で着用感を評価した。
○:「着用感が良い」が16人以上20人以下であった。
△:「着用感が良い」が11人以上15人以下であった。
×:「着用感が良い」がいないか、1人以上10人以下であった。
結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すように、実施例1の吸収性物品は総吸収量、繰り返し吸収速度、液戻り及び拡散長さのいずれにも優れたものであり、着用感も良好であった。一方で比較例1の吸収性物品は総吸収量が少なくて液戻り量が多く、比較例2の吸収性物品は繰り返し吸収速度が遅く、拡散長さも短く、かつ着用感に劣り、比較例3の吸収性物品は着用感に劣るものであった。
以上より、本発明の吸収性物品は、特に繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、液戻り量が少なく、体液の拡散に優れた、吸収性及び着用感の良好な吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 吸収性物品
10 トップシート
20 バックシート
30 吸収体
40 接合部
50 立体ギャザー
60 高吸収性シート
70 親水性シート
80、81、82 連続多孔質体シート
90 複合型不織布シート
100、101、102 高吸収性ポリマー
図1
図2
図3