(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008211
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】衛生シールド
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220105BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 Z
A62B18/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103409
(22)【出願日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/031029
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(31)【優先権主張番号】P 2020106919
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020119579
(32)【優先日】2020-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020136074
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020193916
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520034174
【氏名又は名称】高野 朗
(72)【発明者】
【氏名】高野 朗
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA08
2E185CC36
2E185CC73
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装着者の肌に適度に接触でき、装着者のフィット感を向上させることができ、位置ずれが生じにくい衛生シールドを提供する。
【解決手段】衛生シールドは、装着者の顔の少なくとも一部を覆う形状に形成された受止部12と、受止部を支持する支持体13と、耳掛け部16を有し、且つ支持体を固定する装着部14と、装着者の顔の顎に接触可能な顎受け部17を有しており、顎受け部は、伸縮性を有し、装着者が装着部を顔の所定位置に当接させ且つ耳掛け部を耳に掛け止めした場合に、受止部の位置が装着者の口を覆う位置で保持されるように、顎受け部が、離間間隔を伸縮する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の顔の少なくとも一部を覆う形状に形成された受止部と、前記受止部を支持する支持体と、前記支持体を固定する装着部と、を備えた衛生シールドであって、
前記装着部は、前記装着部の長手方向に沿った一方端側と他方端側に定められた第1の端部と第2の端部に、前記装着者の前記顔の耳に掛け止め可能に形成された耳掛け部を有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に、前記装着者の前記顔の顎に接触可能に形成されており前記装着部の長手方向に沿って延びる顎受け部を有し、且つ、前記第1の端部と前記顎受け部との間に定められた第1の部分と、前記第2の端部と前記顎受け部との間に定められた第2の部分とで、前記支持体を接合しており、
前記顎受け部は、伸縮性を有し、
前記支持体と前記第1の部分とが接合された部分として第1の接続部が形成され、
前記支持体と前記第2の部分とが接合された部分として第2の接続部が形成されており、
前記装着者が前記装着部を前記顔の所定位置に当接させ且つ前記耳掛け部を前記耳に掛け止めした場合に、前記受止部の位置が前記装着者の前記顔の口を覆う位置で保持されるように、前記顎受け部が、前記第1の接続部と前記第2の接続部との離間間隔を伸縮する、
衛生シールド。
【請求項2】
前記支持体は、前記受止部の下端縁に沿って前記受止部を取り付けられる固定部を有しており、
前記支持体のうち、前記第1の部分で接合される位置と前記第2の部分で接合される位置が、前記固定部の長手方向に沿って前記固定部よりも外側に位置している、
請求項1に記載の衛生シールド。
【請求項3】
前記受止部は、複数のフィルム部材を備え、且つ、前記複数のフィルム部材を個別に取り外し可能な状態で重ね合わせた構造を有する、
請求項1又は2に記載の衛生シールド。
【請求項4】
前記受止部は、単数枚のフィルム部材で形成されている、
請求項1又は2に記載の衛生シールド。
【請求項5】
前記装着部は、一体の伸縮性シートで形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【請求項6】
前記装着部は、紙系素材を有し且つ伸縮性を有する積層シートで形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【請求項7】
前記装着部は、前記顎受け部の長手方向に沿った第1の伸縮率のほうが前記顎受け部の幅方向に沿った第2の伸縮率よりも大きい、
請求項5又は6に記載の衛生シールド。
【請求項8】
前記支持体は、折り曲げ可能に形成されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【請求項9】
前記第1の接続部及び前記第2の接続部では、前記装着部のほうが前記支持体よりも前記装着者の肌面に位置する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【請求項10】
装着者の顔の少なくとも一部を覆う形状に形成された受止部と、前記受止部を支持する支持体と、前記支持体を固定する装着部と、を備えた衛生シールドであって、
前記装着部は、前記装着者の前記顔の顎に接触可能に形成された顎受け部と、前記顎受け部の長手方向の一方端側の第1の部分と、前記顎受け部の長手方向の他方端側の第2の部分とを有し、且つ、前記第1の部分と前記第2の部分で前記支持体を接合しており、
前記顎受け部は、伸縮性を有し、
前記支持体と前記第1の部分とが接合された部分として第1の接続部が形成され、
前記支持体と前記第2の部分とが接合された部分として第2の接続部が形成されており、
前記装着者が前記装着部を前記顔の所定位置に当接させた場合に、前記受止部の位置が前記装着者の前記顔の口を覆う位置で保持されるように、前記顎受け部が、前記第1の接続部と前記第2の接続部との離間間隔を伸縮する、
衛生シールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用マスクやフェイスシールド等に用いられる衛生シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば衛生用マスクやフェイスシールド等のような衛生シールドが広く知られている。衛生用マスクとしては、布製の生地や不織布を用いて形成されたものが従来から知られている。フェイスシールドとしては、ポリカーボネート等のような強度を有する透明樹脂板を用いて形成したものが従来から知られている。一般に、衛生用マスクは、主に病院や介護施設等のような医療分野、食品分野などでは従来から広く利用されていた。近年はウイルスや雑菌・細菌への感染予防の目的で、衛生用マスクは、分野を問わず日常的に利用されるようになってきている。しかし、従来から知られている衛生用マスクは、不織布やガーゼが装着者の口や鼻に触れることが多い。このため、装着者が衛生用マスクを装着した状態では呼吸がしにくい問題があった。また、衛生用マスクには、声がこもりやすく会話がしにくいという問題があった。また、このような衛生用マスクは、不透明な生地等を用いて形成されているために装着者の口元が見えず、表情までをも確認することが容易でない。このため、衛生用マスクには、コミュニケーションを取りづらくなるといった問題もあった。
【0003】
このような問題を解決するために、下記に示す特許文献1に開示された他者保護用の衛生マスクや、特許文献2に開示された樹脂マスクもある。特許文献1に開示されている他者保護用の衛生マスクは、装着者の口と鼻とを露出させた状態で、口や鼻から飛散する唾液や雑菌、ウイルスなどを含む飛沫が広範囲に拡散するのを軽減することができるように構成されている。この特許文献1に開示されている衛生マスクは、装着者の顎に沿うように形成された樹脂製のボディと、このボディの前方上側に着脱可能に形成され、ボディによって支持されるカバー体とを有しており、装着時にはカバー体が装着者の口や鼻の前方に配置されるように構成されている。また、特許文献2に開示されている樹脂マスクは、横長形状の樹脂板をナス形やU字形に湾曲させることにより形成されている。また、この樹脂マスクは復元力を有するように形成されており、装着者が両端を広げて装着することにより、該装着者の頬に密着して装着することができ、シート本体が口と鼻の前方に位置するように配置され、口等から飛散する飛沫等の拡散を遮断することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5096632号公報
【特許文献2】実用新案登録第3169951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に開示されたマスクは、装着者の顔に樹脂製のボディやマスクを構成する樹脂シートが装着者の顔に直接触れるため、装着者にとって肌触りが悪く、フィット感を感じにくく、不快に感じやすかった。また、それだけではなく、装着時に汗を吸収しないため蒸れが生じたり、透明樹脂シートで形成されたマスクが全体的に曇りがちになったりして、見た目も衛生的に感じられないといった問題もあった。
【0006】
また、特許文献1に開示されたマスクでは、使用時において口と鼻の前方に位置するカバー体が装着者の顔に対して上下方向へ位置ずれすることを抑制する観点で改善の余地がある。また、特許文献2に開示されたマスクでは、使用時においてシート本体が装着者の顔に対して前後方向への位置ずれすることを抑制する観点で改善の余地がある。このように、特許文献1,2に開示されたマスクには、使用時の位置ずれを抑制する観点で改善の余地がある。なお、位置ずれとは、装着者の意図しない、装着者とマスクとの相対的な位置又は向きの変化を示すものとする。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、装着時に適切な位置にフィットしやすくかつ位置ずれも低減できる衛生シールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の(1)から(10)を要旨とする。
(1) 装着者の顔の少なくとも一部を覆う形状に形成された受止部と、前記受止部を支持する支持体と、前記支持体を固定する装着部と、を備えた衛生シールドであって、
前記装着部は、前記装着部の長手方向に沿った一方端側と他方端側に定められた第1の端部と第2の端部に、前記装着者の前記顔の耳に掛け止め可能に形成された耳掛け部を有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に、前記装着者の前記顔の顎に接触可能に形成されており前記装着部の長手方向に沿って延びる顎受け部を有し、且つ、前記第1の端部と前記顎受け部との間に定められた第1の部分と、前記第2の端部と前記顎受け部との間に定められた第2の部分とで、前記支持体を接合しており、
前記顎受け部は、伸縮性を有し、
前記支持体と前記第1の部分とが接合された部分として第1の接続部が形成され、
前記支持体と前記第2の部分とが接合された部分として第2の接続部が形成されており、
前記装着者が前記装着部を前記顔の所定位置に当接させ且つ前記耳掛け部を前記耳に掛け止めした場合に、前記受止部の位置が前記装着者の前記顔の口を覆う位置で保持されるように、前記顎受け部が、前記第1の接続部と前記第2の接続部との離間間隔を伸縮する、
衛生シールド。
【0009】
(2)前記支持体は、前記受止部の下端縁に沿って前記受止部を取り付けられる固定部を有しており、
前記支持体のうち、前記第1の部分で接合される位置と前記第2の部分で接合される位置が、前記固定部の長手方向に沿って前記固定部よりも外側に位置している、
上記(1)に記載の衛生シールド。
【0010】
(3)前記受止部は、複数のフィルム部材を備え、且つ、前記複数のフィルム部材を個別に取り外し可能な状態で重ね合わせた構造を有する、
上記(1)又は(2)に記載の衛生シールド。
【0011】
(4)前記受止部は、単数枚のフィルム部材で形成されている、
上記(1)又は(2)に記載の衛生シールド。
【0012】
(5)前記装着部は、一体の伸縮性シートで形成されている、
上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【0013】
(6)前記装着部は、紙系素材を有し且つ伸縮性を有する積層シートで形成されている、
上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【0014】
(7)前記装着部は、前記顎受け部の長手方向に沿った第1の伸縮率のほうが前記顎受け部の幅方向に沿った第2の伸縮率よりも大きい、
上記(5)又は(6)に記載の衛生シールド。
【0015】
(8)前記支持体は、折り曲げ可能に形成されている、
上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【0016】
(9)前記第1の接続部及び前記第2の接続部では、前記装着部のほうが前記支持体よりも前記装着者の肌面に位置する、
上記(1)から(8)のいずれか1項に記載の衛生シールド。
【0017】
(10)装着者の顔の少なくとも一部を覆う形状に形成された受止部と、前記受止部を支持する支持体と、前記支持体を固定する装着部と、を備えた衛生シールドであって、
前記装着部は、前記装着者の前記顔の顎に接触可能に形成された顎受け部と、前記顎受け部の長手方向の一方端側の第1の部分と、前記顎受け部の長手方向の他方端側の第2の部分とを有し、且つ、前記第1の部分と前記第2の部分で前記支持体を接合しており、
前記顎受け部は、伸縮性を有し、
前記支持体と前記第1の部分とが接合された部分として第1の接続部が形成され、
前記支持体と前記第2の部分とが接合された部分として第2の接続部が形成されており、
前記装着者が前記装着部を前記顔の所定位置に当接させた場合に、前記受止部の位置が前記装着者の前記顔の口を覆う位置で保持されるように、前記顎受け部が、前記第1の接続部と前記第2の接続部との離間間隔を伸縮する、
衛生シールド。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる衛生シールドは、前記装着者が前記装着部を前記顔の所定位置に当接させ且つ前記耳掛け部を前記耳に掛け止めした場合に、前記受止部の位置が前記装着者の前記顔の口を覆う位置で保持されるように、顎受け部が、前記第1の接続部と前記第2の接続部との離間間隔を伸縮するため、位置ずれが生じにくくなる。
【0019】
また、本発明に係る衛生シールドは、顎受け部が伸縮性を有しており、前記第1の接続部と前記第2の接続部との離間間隔を伸縮するため、装着者の肌に適度に接触するものとなり、装着者のフィット感を向上させることができる。また、装着部が伸縮性シートで形成されている場合には、耳掛け部も伸縮性シートで形成され、耳の肌触り感も向上させることができるので、長時間連続して衛生シールドを装着しても、耳に装着することによる違和感や痛みを感じることなく使用し続けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態にかかる衛生シールドとしての衛生用マスクの一実施例の外観斜視図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる衛生シールドとしての衛生用マスクの側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る衛生用マスクを装着した状態の説明図である。
【
図4】第1の実施形態に係る衛生用マスクを装着した状態の説明図である。
【
図8】
図8Aは、支持部を形成する部材の一実施例を示す平面展開図である。
図8Bは、装着部を形成する部材の一実施例を示す平面展開図である。
【
図9】第1の実施形態にかかる衛生シールドとしての衛生用マスクの一実施例の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる衛生シールドについて図面が参照されつつ以下に説明が記載される。説明は、以下の順序で行われる。
【0022】
1 第1の実施形態
2 第2の実施形態
【0023】
[1 第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る衛生シールドは、口部からの飛散物の飛散を防止するための機能を有し、衛生用マスクの機能を有するものとして用いることができる。第1の実施形態の説明においては、衛生シールドが衛生用マスクである場合を例として説明が行われる。このとは、後述する第2の実施形態についての説明においても同様である。
【0024】
[1-1 衛生用マスクの構成]
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1は、
図1及び
図2に示すように、装着者Mの顔に装着可能に形成される。衛生用マスク1は、受止部12と、支持体13と、装着部14とを備える。受止部12を支持する支持体13は、装着部14に接続されている。
【0025】
(受止部)
受止部12は、飛沫等の各種飛散物を受け止めるためのものである。受止部12は、装着者Mの例えば口から飛散する飛沫や食べ物のカス等、飛散物を受け止め、ウイルスや雑菌・細菌を周囲に拡散することを防止するのみならず、装着者Mの周囲に存在する人から飛散された飛散物をも受け止めやすく、装着者Mが飛散物に感染することをも防止しやすくなっている。
【0026】
受止部12は、支持体13とともに折り畳み可能に形成されてよい。例えば流通時には折り畳んだ状態にしておき、使用時には折り畳んだ状態から
図1に示すように開いた状態にすることができるようになっていてもよい。
【0027】
受止部12は、装着者Mの顔の少なくとも一部を覆う形状に形成されている。受止部12は、装着者Mが装着したときに、装着者Mの口部周辺前方の位置に配置させることができるように構成される。受止部12は、装着者Mの口から飛散する飛沫等の飛散物や鼻から噴出される異物などを受け止めることのできる大きさ及び形状となるように形成されている。受止部12は、少なくとも装着者Mの口を前方から覆うことのできる大きさ及び形状に形成されていることが好ましい。受止部12は、装着者Mの口及び鼻を前方から覆うことのできる大きさ及び形状に形成されていることがより好ましい。
【0028】
(支持体による受止部の支持の態様)
受止部12の下部は支持体13に支持されている。支持体13による支持の態様は、例えばヒートシールにより受止部12と支持体13とを接合することや、これら受止部12と支持体13とを超音波接合、高周波接合、ホットメルト接着剤等による接合、両面テープ等のような粘着性を有するテープ状の部材を用いた接合などを挙げることができる。このような種々の態様で受止部12を支持体13により支持させることができる。また、支持の態様としては、このような接合や接着のみならず、支持体13によって挟持することによって受止部12を支持してもよい。また、受止部12を溶着等により支持体13に支持させる場合、接合の態様は点状接合等のような部分的な接合でもよいし、受止部12と支持体13との当接部を全体的に接合してもよい。なお、下記に示すように、受止部12は透光性を有する複数のフィルム部材を相互に剥離可能に重ね合わせて形成されているため、これら複数のフィルム部材が剥離可能に支持体13に支持されていればよい。
【0029】
後述するように、支持体13が紙系素材により形成されている場合には、紙系素材の表面にヒートシール等による接合が可能な塗料等を塗布しておくことにより、受止部12に支持体13が接合しやすくなる。
【0030】
(フィルム部材)
第1実施形態にかかる衛生用マスク1においては、受止部12は、透光性を有する複数枚のフィルム部材15(例えば3枚から5枚)を相互に剥離可能に重ね合わせて形成されている。すなわち、受止部12は、複数のフィルム部材15(複数枚のフィルム部材15)を個別に取り外し可能な状態で重ね合わせた構造を有する。これら複数のフィルム部材15は、相互に剥離可能であれば、相互に接合されていてもよいし、接合されていなくてもよい。また、フィルム部材15は、例えばミシン目線を設けられることや、切込みを設けられることにより、相互に剥離可能に形成されていてもよい。なお、「相互に剥離可能」とは、複数のフィルム部材15が一枚ずつ剥離できることを意味している。
【0031】
(フィルム部材の材質)
フィルム部材15は、樹脂材料を用いる場合においては、例えばポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルシアノアクリレート、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ナイロン、ポリカーボネート;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ乳酸、エステル化デンプン等のデンプン系樹脂、酢酸セルロース、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、キトサン/セルロース/デンプン、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチ
レンサクシネート/カーボネート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等の天然分解性樹脂混合物;天然分解性バイオマス樹脂や天然分解性バイオマス樹脂の混合物;フッ素樹脂、シリコーン樹脂、紫外線硬化樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、アクリル-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等、上記樹脂を構成するモノマーの共重合体、天然樹脂、パラフィン、ゼラチン、セロファン、ポリメチルペンテン等からなるフィルムを用いることができる。これらの中でも、フィルム部材15としては、天然分解性樹脂、天然分解性バイオマス樹脂天然樹脂等の天然分解性樹脂フィルムが用いられることが好ましく、フィルムとして疎水性の高いものが用いられることがより好ましい。
【0032】
フィルム部材15としてフィルム素材が用いられる場合には、フィルム部材15は、透光性のよいものが用いられることが好ましく、透明性の高い一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを用いられることが好ましく、特にフィルム部材15として二軸延伸フィルム(OPP)が好ましく用いられる。半透明のフィルム素材が用いられる場合、半透明のフィルム素材は乳白色のようなものであってもよいし、色付きのものであってもよい。透光性のよいフィルムをフィルム部材15に用いると、装着者Mの口元や全体的な表情を視認しやすくすることができる。
【0033】
フィルム部材15の厚さは250μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。さらには、フィルム部材15の厚さは、80μm以下であることがさらにより好ましい。
【0034】
フィルム部材15には塗工剤が塗布されていてもよい。塗工剤としては、上記した合成樹脂、天然分解性樹脂、天然分解性バイオマス樹脂、天然樹脂を例示することができる。また、塗工剤は、松ヤニ、漆、コハク、ゼラチン、カゼイン、鼈甲、キチン、キトサン、牡蠣、ガム等天然高分子類の溶液や分散液からなる塗料を例示することができる。塗料は、例えば、水系インクをはじめとする各種のインク等が挙げられる。
【0035】
受止部12を構成する複数のフィルム部材15は、すべて同じ素材や厚みのものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。また、受止部12は、最外面に位置するフィルム部材15として他のフィルム部材15よりも硬質な材料で形成し、他のフィルム部材15を保護する保護部材として構成してもよい。この場合、保護部材の大きさを他のフィルム部材15よりも大きく形成してもよく、また、保護部材の形状を任意に変更してもよい。さらに、受止部12は、最外側に位置するフィルム部材15まで使用した後にフィルム部材15を除去することなく、衛生用マスク1を廃棄することが容易となるように、構成されてもよい。
【0036】
(支持体)
支持体13は、受止部12を支持する。より具体的には、第1の実施形態にかかる衛生用マスク1では支持体13は、受止部12の下端縁部に沿って受止部12を支持している。支持体13には、受止部12を支持する部分として固定部30が形成されている。固定部30は、
図1や
図8Aに示すように、受止部12の下端縁に沿った方向を長手方向とする細長な部分となっている。
図1,
図8Aの例では、固定部30は、支持体13のうち幅方向W13に沿って全体の部分で構成されているが、支持体13のうち幅方向W13に沿った一部で構成されてもよい。なお、受止部12の下端縁部とは、受止部12の下端縁だけでなく受止部12の下端縁からやや内側の領域部分を含む概念として定義される。
図8Aは、支持体13を形成する部材13Mの平面展開図である。平面展開図は、衛生用マスク1から対象となる部材(
図8Aの場合には、支持体13を形成する部材13M)を取り出して平面上に展開した状態を示す図として定めることができる。
図8Aでは、説明の便宜上、支持体13を形成する部材13Mの各部を示す符号として、衛生用マスク1の状態で対応する符号を付している。例えば、
図8Aにおける符号30は、衛生用マスク1の状態で固定部30に対応する。なお、
図8Aについて述べた平面展開図の定義と、符号の定め方については、
図8Bについても同様である。
図8Bの場合は、対象となる部材は、装着部14の部材14Mである。
【0037】
支持体13による受止部12を支持する態様としては、上記した通り種々の態様がある。支持体13は、受止部12を構成するフィルム部材15が相互に剥離可能な状態で支持することができるように構成されている。支持体13は、装着部14の後述する第1の部分31A及び第2の部分31Bに接続されている。
図1、
図2の例では、支持体13のうち、装着部14の第1の部分31Aで接合される位置と第2の部分31Bで接合される位置が、固定部30の長手方向L13(
図8A中、符号L13の矢印で示す)に沿って固定部30よりも外側に位置している。これは、例えば、
図1に示すように支持体13が受止部12の下端縁の固定部30から長手方向L13に沿って外方向へさらに延びた部分を有することで実現できる。この場合、装着部14に受止部12が接触しにくくなり、装着者Mが衛生用マスク1を取り扱う際に、装着者Mの手で装着部14が把持されても、装着者Mの手が受止部12に接触しにくくなり、受止部12の汚染を抑えることができる。
【0038】
(支持体の材質)
支持体13は、可撓性を有する素材で形成されていることが好ましく、折り曲げ可能に形成されていることが好ましい。この観点から、支持体13は、紙系素材により構成されていることが好ましい。支持体13を構成する紙系素材としては、繊維原料のスラリーを網上に抄き取り、乾燥ないし押圧乾燥、抄紙してシート状にして得られる、いわゆる紙であってよい。また、その紙系素材は、パルプ系繊維等からなる原料シートを粉砕機で粉砕して得られる粉砕パルプ等の開繊繊維原料を空気流によって積繊し、積繊体の繊維相互をバインダーで固定して得られるいわゆるエアレイドシート等でもよい。また、紙系素材としては、紙やエアレイドシート等を複数枚積層したもの等も挙げられる。
【0039】
紙系素材は、パルプのみからなるものに限定されない。紙系素材は、非パルプ系の天然繊維や合成繊維、再生繊維等の繊維含むものであってもよい。支持体13の素材に用いられる紙系素材としては、パルプを50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましく、さらに80質量%以上含むものが好ましいが、特にパルプ100質量%からなるものが好ましい。
【0040】
紙系素材は、合成樹脂や天然樹脂のフィルムや不織布、木箔等の木質系素材等、さらにはアルミ箔等の素材との複合材料も用いることができるが複合材料とする場合、複合材料全体としてパルプを50質量%以上含有することが好ましく、特に80質量%以上のパルプを含むものが好ましい。パルプ含有分が高いほど、紙系素材が分解されやすくなるために好ましい。
【0041】
パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ等から得られるものが挙げられる。パルプは、赤松、トド松、エゾ松、ダグラスファー、ヘムロック、スプルース等の針葉樹パルプ、ブナ、ナラ、カバ、ユーカリ、ポプラ、アルダー等の広葉樹パルプ、針葉樹パルプと広葉樹パルプとの混合物等の木材パルプ、ケナフ、バガスパルプ、タケパルプ、シリアルパルプ、ワラパルプ、アバカパルプ、木綿パルプ等の非木材パルプ、古紙パルプ等を用いることができる。針葉樹パルプは広葉樹パルプに比べて繊維長が長いため、針葉樹パルプ等の繊維長の長いパルプを用いた紙材料は、繊維相互の絡み具合が高まり、また針葉樹パルプ等を用いた原料シートを粉砕した粉砕パルプも、広葉樹パルプからなる原料シートを粉砕した粉砕パルプに比べて繊維長が長いため、繊維相互の絡み合いにより紙系素材の強度が向上する。
【0042】
紙系素材としては、耐水紙等のあらかじめ耐水性が付与された素材を用いたり、少なくとも支持体13の表面側(非肌側)に位置する面にコート層を設けたものを用いてもよい。コート層は、紙系素材にフィルムを貼着したり、塗工剤を塗布することにより設けることができる。コート層は、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂であるポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等、ポリエチレンテレフタラート、セロファン、ナイロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエートデンプン系樹脂等により形成することができ、ポリヒドロキシアルカノエート、デンプン系樹脂等の天然分解性樹脂で形成すると、天然分解性が向上するため好ましい。
【0043】
(装着部)
装着部14は、衛生用マスク1を装着者Mの顔に装着するとともに、装着時には受止部12が装着者Mの顔の前方に位置するように調整するためのものである。装着者Mに装着する方法としては、例えば装着者Mの耳に引っ掛けて装着する態様が好適に採用される。
【0044】
装着部14は、
図8Bに示すように、支持体13との接続を解除して、折り曲げることなく平面上に展開された場合に、細長い形状を有している。この場合に定められる装着部14の長手方向L14が、装着部14を支持体13に接続した後においても装着部14の長手方向であるものと定める。
図8Bは、装着部14を形成する部材14Mの平面展開図である。また、
図8Bにおいて、符号W14は、装着部14の幅方向を示す。
図1等の例では、
図8Bに示す装着部14の長手方向L14、幅方向W14は、それぞれ後述する顎受け部17の長手方向、幅方向におおむね一致する。
【0045】
(耳掛け部)
図1に示すように、装着部14は、耳掛け部16を有する。装着部14の長手方向L14に沿った一方端側と他方端側に定められた第1の端部32Aと第2の端部32Bに、装着者Mの顔の耳Eに掛け止め可能に形成された耳掛け部16を有している。耳掛け部16は、装着者Mの顔の耳Eに掛け止め可能であればその構造を特に限定されない。
図1の例に示す耳掛け部16は、装着部14に開口形成された耳掛け孔16aを備えており、耳掛け孔16aは、装着者Mの顔の耳Eが入り、かつ顔の耳Eに引っ掛けることができる形状および大きさ(掛け止め可能な形状および大きさ)に形成されている。衛生用マスク1は、耳掛け部16を装着者Mの耳に引っ掛けることで装着者Mに装着される。なお、第1の端部32Aは、装着部14の一方端と、その一方端から他方端に向かった所定の位置とで挟まれた領域で定められる。第2の端部32Bは、装着部14の他方端と、その他方端から先に述べた一方端に向かった所定の位置とで挟まれた領域で定められる。
【0046】
(顎受け部)
装着部14には、装着者Mの下顎部に装着するための顎装着部として顎受け部17を有している。また、顎受け部17は、装着者Mの顔の顎に接触可能に形成された顔当て部として機能する。顎受け部17は、装着部14の長手方向L14に沿った第1の端部32Aと第2の端部32Bとの間に形成されている。顎受け部17の形状は、装着時に装着者Mの顎の位置に装着できるような形状とされている。具体的に、顎受け部17は、装着部14の長手方向L14に沿って延びる一部分で形成され、細長い形状を有している。
図1、
図2に示す顎受け部17は、装着時に装着者Mの下顎側の下方(首の近く)に位置させながら装着できるように形成されている。ただし、このことは、顎受け部17が、装着時に装着者Mの下顎側の前方(下唇の下側近傍)に位置させることができるように形成されることを禁止するものではない。また、顎受け部17が、装着者Mの上顎側の前方(上唇の上側近傍)に位置させるようにことを禁止するものではない。
【0047】
(第1の部分と第2の部分)
装着部14は、第1の端部32Aと顎受け部17との間に定められた第1の部分31Aと、第2の端部32Bと顎受け部17との間に定められた第2の部分31Bとを有している。したがって、装着部14において第1の部分31Aと第2の部分31Bの間に顎受け部17が形成されている。
【0048】
そして、装着部14は、第1の部分31Aと第2の部分31Bで支持体13に接合されている。すなわち、顎受け部17は、装着部14において両端側に形成されている耳掛け部16の間であって、装着部14に対して支持体13を接続される箇所(第1の部分31A)と箇所(第2の部分31B)との間に形成される。
図1、
図2の例では、顎受け部17の一方端側の位置に第1の部分31Aが形成されており、他方端側に第2の部分31Bが形成されている。ただし、
図1,
図2の例は一例であり、
図1、
図2の例に示す位置以外の位置を第1の部分31Aと第2の部分31Bとして装着部14に支持体13を接続する箇所が決定されることを禁止するものではない。
【0049】
(装着部の素材)
装着部14の素材は、
図5、
図6に示すように、薄膜体間に弾性体を接合して伸縮性を付与した伸縮性シートSHである。これを素材として用いて装着部14が形成されている。
図5、
図6は、装着部14が伸縮性シートSHで形成されている場合における、装着部14のそれぞれ断面図と平面図である。したがって、
図5及び
図6は、それぞれ伸縮性シートSHの断面図と平面図にも対応する。
【0050】
(伸縮性シート)
伸縮性シートSHにおける薄膜体は、樹脂フィルム、紙、不織布のいずれか、又はこれらの複合体により構成されている。また、この伸縮性シートSHの表面には、
図6に示すように、縮長時に皺40が形成されている。伸縮性シートSHにおいて、縮長時とは、線状弾性体5の伸張力(すなわち伸長力)が解除され、線状弾性体5に復元力が作用した場合を示すものとする。
【0051】
伸縮性シートSHは、例えば、
図5に示すような構成を有する。この構成は、例えば、次に示すような工程を実施することで形成することができる。例えば、第1の紙系シート3と第2の紙系シート4との間に複数の線状弾性体5からなる弾性体層6を伸張した(すなわち伸長した)状態で配置する。次に第1の紙系シート3、第2の紙系シート4の表裏面側に、それぞれ第1の不織布シート7と第2の不織布シート8を設ける。そして各シートと線状弾性体5とを接合した後、線状弾性体5の伸張力を解除する。これにより紙系素材を有し且つ伸縮性を有する積層シートとして伸縮性シートSHが形成される。
図5の例では、積層シートは、第1の紙系シート3と第2の紙系シート4、第1の不織布シート7と第2の不織布シート8の積層構造を示している。この積層構造に線状弾性体5を設けた構成で伸縮性シートSHが形成される。なお、線状弾性体5の伸張力を解除した際、線状弾性体5に復元力が作用することで伸縮性シートSHは縮長時の状態となり、伸縮性シートSHに皺40が形成される。第1の紙系シート3の弾性体層6側及び第2の紙系シート4の弾性体層6側には、それぞれコート剤塗布層2が設けられている。
【0052】
(第1の紙系シート及び第2の紙系シート)
第1の紙系シート3及び第2の紙系シート4は、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ等のパルプを主体とする繊維シートで、パルプを好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含むもの、特にパルプ100質量%からなるものが好ましい。これら第1の紙系シート3及び第2の紙系シート4は、パルプ系繊維材料のスラリーを網上に抄き取り、乾燥ないし押圧乾燥、抄紙してシート状にして得られる、いわゆる湿式抄造紙を用いることができる。なお、パルプ系繊維原料としてのパルプには、上記したものを任意に選択して用いることができる。
【0053】
第1の紙系シート3、第2の紙系シート4としては、目付量5g/m2から120g/m2のものを用いることができるが、5g/m2から60g/m2のものが好ましく、10g/m2から40g/m2のものがさらに好ましく、10g/m2から30g/m2のものが特に好ましい。第1の紙系シート3、第2の紙系シート4としては、繊維長の長い針葉樹パルプを用いたもの、例えばティッシュペーパー用の紙、繊維長の短い広葉樹パルプを用いた、例えばトイレットペーパー用の紙等を用いることができるが、繊維長の長い針葉樹パルプを主体としたものが好ましく、ティッシュペーパー用の紙が好適に用いられる。第1の紙系シート3、第2の紙系シート4は、それぞれティッシュペーパー用の紙等を複数枚重ねて、あるいは折り重ねたものを用いてもよい。
【0054】
(コート剤塗布層)
コート剤塗布層2を形成するコート剤としては、例えばエマルジョン塗料やインキを用いることができる。エマルジョン塗料やインキとしては、フッ素樹脂;アクリル酸系重合体、メタクリル酸系重合体、アクリル酸-マレイン酸樹脂、アクリル酸-スチレン-ウレタン樹脂等のアクリル酸系共重合体等のアクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系樹脂を水に溶解ないし分散させたもの等を用いることができ、コート剤塗布層2が疎水性を有するものが好ましく、通常アクリル系重合体の塗料やインキが用いられる。コート剤は、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、スピンコート、スプレーコート、スクリーンコート等の各種塗工方法により塗布することができる。このようにしてコート剤を塗布することによりコート剤塗布層2を形成することができる。
【0055】
コート剤塗布層2は、第1の紙系シート3、第2の紙系シート4の表面に部分的に形成しても全面的に形成してもよく、また表面又は裏面のいずれかのみに形成しても、両面に形成してもよい。コート剤塗布層2は、疎水性コート剤の種類によっても異なるが、アクリル系塗料の場合、塗布量が固形分換算値で3g/m2から10g/m2、好ましくは4g/m2から9g/m2、さらに好ましくは5g/m2から7g/m2となるように形成する。コート剤塗布層は、抗菌性物質を添加したコート剤を塗布する等により抗菌性を備えることができる。抗菌性物質としては、天然抗菌性物質が好ましい。抗菌性物質としては、例えば、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ヒノキチオール、ε―ポリリジン、レンギョウ抽出物、イチジク葉抽出物、オレガノ抽出物、柑橘種子抽出物、桑抽出物、シソ抽出物、シナモン抽出物、ショウガ抽出物、タデ抽出物、緑茶抽出物、ブドウ果皮抽出物、紅麹抽出物、グレープフルーツ抽出物、ホッコシ抽出物、モウソウチク抽出物、モミガラ抽出物、リゾチーム、エタノール、ニンニク抽出物、ハッカ油、ホタテ貝粉末や牡蛎粉末等の貝殻粉末、焼成貝粉末、キチン、キトサン等や、金、銀、銅等の抗菌性を有する金属やこれらの金属化合物の粉末等が挙げられる。
【0056】
抗菌性物質は、コート剤塗布層2に含有される場合に限られない。抗菌性物質を含有する薬剤を、第1の紙系シート3、第2の紙系シート4、第1の不織布シート7、第2の不織布シート8等の表面に塗布して抗菌性層を形成してもよい。第1の紙系シート3、第2の紙系シート4や第1の不織布シート7、第2の不織布シート8の製造過程等において、これらシートの中に抗菌性物質を含有する薬剤を含浸させてもよい。抗菌性物質を含有する薬剤を伸縮性シートSH素材に塗布してもよく、また含浸させてもよい。
【0057】
(弾性体層)
弾性体層6は、第1の紙系シート3、第2の紙系シート4との間に配置した複数の線状弾性体5によって形成されている。
【0058】
(線状弾性体)
線状弾性体5としては種々の弾性素材が用いられるが、線状弾性体5がスパンデックス繊維と呼ばれるポリウレタン系のものであることが好適である。線状弾性体5は、200から950デシテックス程度のものを用いることができるが、好ましくは250から800デシテックス、より好ましくは280から600デシテックス、さらに好ましくは300から500デシテックスのものを用いるとよい。弾性体層6において複数の線状弾性体5を配置する際の間隔は、2mmから10mmが好ましく、より好ましくは2mmから8mm、さらに好ましくは2mmから6mm、特に好ましくは3mmから5mmである。
【0059】
線状弾性体5の表面にホットメルト接着剤等の接着剤を塗布し、線状弾性体5を伸張した状態で線状弾性体5が第1の紙系シート3と第2の紙系シート4との間に接合されることで、弾性体層6が形成される。また、これにより装着部14には、線状弾性体5の長さ方向に対して伸縮性が付与される。
【0060】
弾性体層6においては、複数の線状弾性体5は、それぞれ太さ、弾性力等が同一のものを均一のピッチで配されてもよい。
【0061】
弾性体層6においては、太さ、弾性力の異なる線状弾性体5が用いられてよく、また、線状弾性体5が各線状弾性体5の間のピッチを異ならせた条件で配置されてもよい。そして、このような線状弾性体5の配置により、装着部14の部位によって引張弾性力を異ならせるようにしてもよい。例えば、装着部14の上下端部付近に位置する線状弾性体5の弾性力が他の部分よりも強くなるようにすると、装着部14の周辺部でのフィット性をより高めることができる。
【0062】
(弾性体層を形成する他の構成)
弾性体層6は、複数の線状弾性体5によって構成する場合に限られない。弾性体層6は、発泡ウレタンシート等の面状弾性体を用いることも可能である。ただし、後述する装着部14の伸縮性の観点からは、複数の線状弾性体5で弾性体層6が形成されていることが好ましい。
【0063】
(不織布シート)
装着部14を形成する伸縮性シートSHは、第1の紙系シート3、弾性体層6、第2の紙系シート4を積層した積層体の、第1の紙系シート3の表面側に第1の不織布シート7が積層され、第2の紙系シート4の表面側に第2の不織布シート8が積層された構成を有する。不織布シートとは、JIS L0222に不織布として定義されている。すなわち、不織布シートは、「繊維が一方向又はランダムに配向されており、交絡、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨フェルトを除く。」という条件を満たすものである。装着部14に用いられる不織布シートとしては、例えばスパンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレス不織布、サーマルボンド不織布、レジンボンド不織布、ナノファイバー不織布等が挙げられ、またメルトブローン不織布を挙げることができる。
【0064】
メルトブローン不織布等のようなフィルター機能の高い高価な素材を用いなくても、不織布は、優れたフィルター機能を発揮しうるため、装着部14においては、通常は、比較的安価なスパンボンド不織布が用いられてよい。
【0065】
不織布シートとしては、合成繊維等の非パルプ系繊維を主体とする繊維からなるものが用いられる。不織布シートは、非パルプ系繊維を50質量%以上含むものが好ましく、70質量%以上のものがより好ましく、80質量%以上含むものがさらに好ましい。非パルプ系繊維としては、羊毛、蚕糸、綿等の天然繊維、ナイロン、ビニロン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維等が挙げられるが、合成繊維が好適に用いられる。
【0066】
第1の不織布シート7、第2の不織布シート8は、同一若しくは異なる種類の不織布シートを重ねて用いることができ、第1の不織布シート7と、第2の不織布シート8とで異なる素材からなるものを用いてもよい。第1の不織布シート7及び第2の不織布シート8は、目付量が8g/m2から30g/m2のものを、1枚又は2枚重ねて構成することが好ましい。
【0067】
第1の不織布シート7、第2の不織布シート8には、前記した抗菌性物質を含有させてよい。また、第1の不織布シート7、第2の不織布シート8には、表面に抗菌性物質を含む抗菌性層を設けてもよい。
【0068】
(接着剤層)
第1の不織布シート7、第1の紙系シート3、線状弾性体5よりなる弾性体層6、第2の紙系シート4、第2の不織布シート8は、接着剤層9,10を介して接合一体化されている。接着剤層9,10を形成する接着剤としては、ホットメルト接着剤が好ましい。ホットメルト接着剤としては、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、合成ゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アモルファスポリアルファオレフィン系等を用いることができる。ホットメルト接着剤は、紙系シート、不織布シートの表面にスプレー供給等により面状供給して各シート相互を接合することが好ましい。弾性体層6を構成する線状弾性体5は、該線状弾性体5の表面に塗布したホットメルト接着剤を介して第1の紙系シート3と第2の紙系シート4との間に接合することが好ましい。ホットメルト接着剤等の接着剤は、不織布シートと紙系シートとの間には3g/m2から9g/m2の量で面状に供給されて接合することが好ましく、紙系シート、弾性体層6、紙系シートとの間には5g/m2から13g/m2の量で面状に供給されて各シートを接合することが好ましい。
【0069】
第1の紙系シート3、第2の紙系シート4、弾性体層6、第1の不織布シート7、第2の不織布シート8の相互間をホットメルト接着剤で接合するに際し、線状弾性体5を伸張させた状態で紙系シートに挟み込み、各シート(第1の紙系シート3、第2の紙系シート4、弾性体層6、第1の不織布シート7、第2の不織布シート8)を接合すると、引張状態が解除された際の線状弾性体5の復元力によって線状弾性体5が収縮し、線状弾性体5に接合されている第1の紙系シート3と第2の紙系シート4は、線状弾性体5の収縮に伴って表面に皺40が生じ、第1の紙系シート3と接合されている第1の不織布シート7、第2の紙系シート4と接合されている第2の不織布シート8の表面にも皺40が形成される。この結果、装着部14は全体として線状弾性体5の長さ方向に伸縮性が付与されるとともに、装着部14の表面に微細な凹凸の皺40が形成され、不織布シートや紙シートの繊維間隙が縮まった状態となる。
【0070】
(他の構成)
装着部14を形成する素材としては、さらに他の構成が設けられてもよい。例えば、装着部14は、第1の紙系シート3と第2の紙系シート4との間に、吸湿剤を挟持配置させてもよい。これら第1の紙系シート3と第2の紙系シート4との間に吸湿剤を配置させておくと、装着者Mの肌と装着部14の内面側との間に湿気がこもりにくくなり、衛生用マスク1の使用時における不快な湿り感を低減することができる。
【0071】
吸湿剤としては、高吸水性ポリマー(SAP)、高吸水性ポリマー繊維(SAF)、シリカゲル、塩化マグネシウム系吸湿剤(ドライマックス(商品名)等)、塩化マグネシウム系吸湿剤(カラハリドライ(商品名)、EX-DRY(商品名)等)、天然ゼオライト、合成ゼオライト、モンモリナイト、アロフェン等のシリカアルミナゲル系吸湿剤、ベントナイト、白土等の粘土系吸湿剤等が挙げられる。SAPやSAFとしては、アクリル酸系ポリマー、スルホン酸系ポリマー、ビニルアルコール-アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース等からなるものが挙げられる。
【0072】
(支持体と装着体との接続)
支持体13は、
図2に示すように、衛生用マスク1を折り畳んだ状態において、装着部14の長手方向に対して斜めに接続されている。この斜めにする角度は任意に設定してよいが、このように斜めに接続することによって、装着者Mが衛生用マスク1を装着したときに、装着者Mの口や鼻周辺の前方に配置するように調整しやすくすることができる。支持体13と装着部14は、支持体13よりも装着部14の方が装着者Mの肌面側に位置するように、互いに接続されていることが好ましい。すなわち、後述する第1の接続部及び第2の接続部では、装着部14のほうが支持体13よりも装着者Mの肌面側に位置することが好ましい。この場合、衛生用マスク1を装着者Mが装着した場合に、装着者Mの肌面には衛生用マスク1の装着部14が接触するため、支持体13が肌面に対してすべり性を有する素材で形成されていたとしても、衛生用マスク1の位置ずれを抑制することができる。
【0073】
(接続部(第1の接続部と第2の接続部))
支持体13は、上述したように細長い形状に形成されている。支持体13を構成する部材の長手方向両端は、装着部14の表面と接続している。第1の実施形態にかかる衛生用マスク1には、支持体13と装着部14を接続する接続部60が形成されている。装着部14には支持体13の両端部が接続されているため、接続部60が2か所に形成されている。2か所の接続部60について、支持体13と第1の部分31Aとが接合された部分として第1の接続部60Aが形成される。また、支持体13と第2の部分31Bとが接合された部分として第2の接続部60Bが形成されている。これら支持体13と装着部14との接続の態様は従来から公知の方法を任意に採用してよく、ヒートシールによる接合や超音波接合、高周波接合、ホットメルト接着剤等の各種接着剤による接合その他の従来から公知の方法であってよい。
【0074】
装着部14は、2か所に形成された接続部60同士(第1の接続部60Aと第2の接続部60B)の間に亘るように形成されており、
図1の例では、この接続部60と接続部60との間における装着部14の長さは接続部60と接続部60との間における支持体13の長さよりも短くなるように形成されている。接続部60と接続部60との間に関する「装着部14の所定部分の長さと支持体13の長さの関係」が、上記した関係となっていることで、接続部60と接続部60との間における装着部14をより確実に顎受け部17として機能させやすくなり、装着時に装着者Mの下顎下部に配置されるように形成されるようになる。
【0075】
(装着部の伸縮性)
伸縮性シートSHを素材として装着部14を形成する場合、
図5、
図6に示す線状弾性体5の伸縮方向Pが、耳掛け部16の方向に沿うようにして、装着部14が両耳方向(装着部14の第1の端部32Aから耳Eに向かう方向及び第2の端部32Bから耳Eに向かう方向)に伸縮できるように構成すると、装着部14の表面に多数の凹凸条の皺40が形成されることと相俟って、衛生用マスク1を装着したときにおける装着者の顔に対するフィット性が抜群に向上し、衛生用マスク1の装着性が良好となる。また、このように線状弾性体5を配置した状態で装着部14を形成することにより、例えば耳掛け部16のように他の部分に比べて大きく伸張される部分でも、伸張後のヨレの発生を大きく低減させることができる。
【0076】
また、装着部14が伸縮性シートSHで形成されている場合、装着部14の部分である顎受け部17は、伸縮性を有している。顎受け部17はその長手方向(装着部14の長手方向L14)に沿った伸縮方向を有している。第1の実施形態においては、顎受け部17の伸縮性により、装着者Mと衛生用マスク1との接触が適度に緊密化にする。すなわち、まず衛生用マスク1の装着時においては、装着者Mが衛生用マスク1の装着部14を顔の所定位置に当接させ且つ耳掛け部を前記耳に掛け止めする。
図1の例に示す衛生用マスク1の使用時においては、装着者Mが装着部14の顎受け部17を顔の顎の位置に当接させ、さらに耳掛け部16を耳に掛け止めする。この場合に、受止部12の位置が装着者Mの顔の口を覆う位置で保持されるように、顎受け部17が、第1の接続部60Aと第2の接続部60Bとの離間間隔WDを伸縮する。これにより第1の接続部60Aと第2の接続部60Bで、装着者Mと衛生用マスク1との位置ずれが生じにくいように装着者Mと衛生用マスク1の相互の接触が適度に緊密化する。この効果をより向上させる観点から、顎受け部17の長手方向(装着部14の長手方向L14)が伸縮性シートSHの伸縮方向Pにおおむね一致していることが好ましい。
【0077】
(伸縮容易性)
また、装着部14が伸縮性シートSHで形成されている場合、装着部14は、顎受け部17の長手方向(装着部14の長手方向L14)に沿った伸縮率(第1の伸縮率)のほうが顎受け部17の幅方向(装着部14の幅方向W14)に沿った伸縮率(第2の伸縮率)よりも大きいことが好適である。
【0078】
第1の伸縮率が大きいことで、衛生用マスク1の装着時においては、顎受け部17が、第1の接続部60Aと第2の接続部60Bとの離間間隔WDを適度に伸縮することができ、衛生用マスク1は、装着者Mの左右方向から装着者Mの肌面にフィットすることができる。
【0079】
第2の伸縮率が第1の伸縮率よりも小さいことで、衛生用マスク1の装着時に、顎に対する顎受け部17の配置を定めた後、顎受け部17の伸縮による顔の前後方向(
図3において前後方向K)への顎受け部17の位置の移動が生じにくくなる。このため、衛生用マスク1の前後方向Kの位置ずれが生じにくくなる。またこれに伴い、上下方向に対しても衛生用マスク1の位置ずれが生じにくくなる。
【0080】
図5、
図6に示す装着部14では、装着部14を形成する伸縮性シートSHの伸縮方向Pの伸縮率が、伸縮方向Pに対して直交する方向(直交方向Q)の伸縮率よりも大きい。したがって、顎受け部17の長手方向(装着部14の長手方向L14)が伸縮性シートSHの伸縮方向Pにおおむね一致し、顎受け部17の幅方向(装着部14の幅方向W14)が伸縮性シートSHの直交方向Qにおおむね一致していることが好ましい。この場合、顎受け部17の第1の伸縮率が第2の伸縮率よりも大きくなり、衛生用マスク1の位置ずれが上記したように抑制される。
【0081】
(伸縮率)
装着部14についての伸縮率は、伸張時の長さと縮長時の長さの比率で特定することができる。縮長時の長さに対する伸張時の長さが大きいほど、伸縮率が大きい(伸縮容易性が相対的に高い(伸び縮みすることができる))。伸張時の長さに対する縮長時の長さが小さいほど、伸縮率が小さい(伸縮容易性が相対的に低い(伸び縮みしにくい))。伸張時とは、元に戻ることができる程度に装着部14を延ばした状態を示しており、縮長時は、伸張時の状態から解放された後の装着部14の状態を示すものとする。
【0082】
(装着部と皺の向きの関係)
伸縮性シートSHの皺40については、
図6に示すように、伸縮性シートSHの伸張に伴って皺40を形成する部分が広がり、皺の深さが浅くなり、伸縮性シートSHの縮長に伴って皺40を形成する部分が狭まり、皺40の深さが深くなる。装着部14においては、皺40を形成する部分の拡張短縮の生じる方向(伸縮方向P)が、おおむね装着部14の長手方向L14に揃えられていることが好ましい。この場合、顎受け部17から耳掛け部16まで装着部14の長手方向L14に伸び縮みしやすくなり、伸び縮みする方向が大きく変動しないため、衛生用マスク1を装着しやすくなる。
【0083】
また、皺40を形成する部分の拡張短縮の生じる方向に対して直交する方向が、おおむね装着部14の幅方向W14に揃えられていることが好ましい。この場合、顎受け部17から耳掛け部16まで装着部14の幅方向W14に伸び縮みしにくくなり、衛生用マスク1の顔に対して前後方向の位置ずれを生じにくくなる。
【0084】
さらに、装着部14は、
図1、
図2、
図8Aに示すようにベルト状の幅を有する部材で形成されることが好適である。これにより、顔に対して面接触しやすくなり、衛生用マスク1の顔に対して前後方向の位置ずれを生じにくくなる。
【0085】
(摘み部)
受止部12を構成する複数のフィルム部材15は、
図1、
図2に示すように、摘み部R1,R2を形成されていてもよい。摘み部R1,R2が形成されていると、衛生用マスク1の使用時に、摘み部R1,R2を摘んでフィルム部材15を容易に剥離することができる。したがって、衛生用マスク1の取り扱いやすさが向上する。摘み部R1,R2は、それぞれのフィルム部材15に対して形成することが好ましい。この場合、複数のフィルム部材15のうち、一のフィルム部材15には摘み部R1が形成され、他の一枚のフィルム部材15には摘み部R2が形成される。
図1、
図2に示す例では、摘み部を有するフィルム部材15が2枚剥離可能に設けられている例を用いているが、摘み部を有するフィルム部材15を設ける数は限定されない。また、摘み部は、設けられるすべてのフィルム部材15のそれぞれに形成してもよいし、設けられるフィルム部材15の一部にのみ形成してもよいが、上記した取扱性を向上させるという点からは、全てのフィルム部材15のそれぞれに摘み部を形成することが好ましい。例えば、受止部12が3枚のフィルム部材15を重ね合わせている場合に、装着者Mの肌面に近い方のフィルム部材15から1枚又は2枚に限り摘み部が設けられてよい。また、受止部12が3枚のフィルム部材15の全てに摘み部が設けられてもよい。ただし、このことは、衛生用マスク1が摘み部を有する場合に限定するものではない。衛生用マスク1は、
図9に示すように摘み部R1、R2を省略したものでもよい。
図9は、衛生用マスク1が摘み部R1、R2の構成を省略されている場合の一実施例を示す図である。
【0086】
(空間部)
衛生用マスク1は、顎受け部17と受止部12との間には空間部18が形成されている。この空間部18が形成されていると、装着者Mが衛生用マスク1を装着したときに、受止部12が装着者Mの頬、口等から離れて装着時の不快感を大きく軽減することができる。また、この空間部18を形成することによって、この衛生用マスク1を装着した装着者Mが呼吸をするときに吐いた息を空間部18から逃がしたり、逆に装着者Mが息を吸うときに衛生用マスク1の外からの空気を取り込んだりすることができる。そのため、装着者Mの顔と受止部12との間に、息に含まれる水分による湿気がこもりにくくすることができ、受止部12のフィルム部材15が湿気によって曇ったりすることを防止することも可能になる。また、支持体13と装着部14との間に不織布やマスク生地等を張架してもよく、装着者Mへの良好な装着性を保ったまま、空間部18の下側から飛沫等が飛散するのをより効果的に防止することも可能になる。
【0087】
[1-2 作用及び効果]
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1の作用効果について説明する。
図3に示すのは、第1の実施形態に係る衛生用マスク1を装着者Mが装着した様子を表す図であり、
図4に示すのは、この衛生用マスク1を装着者Mの下顎の下方へ移動させたときの様子を表す図である。まず、
図3に示すように、装着者Mは、耳に耳掛け部16を引っ掛けるとともに、顎受け部17を下顎の下面と沿うように配置させることにより、衛生用マスク1を装着する。このとき、顎受け部17は、顎受け部17の長手方向に沿って伸縮性を有しており、また装着者Mの顔の幅よりも短くなるように形成されているため、装着するときに顎受け部17を形成する繊維シートが伸張した状態となる。また、装着すると、顎受け部17が元の長さに戻ろうとするため、装着部14の肌面側の面が装着者の顔に沿うようにフィットする。
【0088】
装着者Mが装着しているときは、顎受け部17の装着位置を調整すると、装着者Mの顔面に対する受止部12の装着位置を調整しやすくすることができ、装着位置の自由度を向上させることができる。特に、人によって装着者Mの顔の大きさや輪郭は異なっているため、顎受け部17において衛生用マスク1の装着位置を調整可能にすることで、確実に該装着者Mの口や鼻の前方位置に受止部12を位置させることができ、飛散物等の拡散などを低減することが可能になる。
【0089】
また、顎受け部17の幅方向の伸縮性が小さい場合、装着者Mが装着した後、装着者Mの顔の動き等によって衛生用マスク1に前後方向に力がかかっても顎受け部17が前後方向に伸縮しにくいため、衛生用マスク1の前後方向の位置ずれを抑制することができる。
【0090】
また、上記したようにこの装着部14は表面に細かい皺が多数形成されているので、非常に肌触りがよく、かつ長時間装着している間にも装着者の汗などに起因する蒸れ等のような、装着していて不快に感じることを低減することができるため、例えば一日中装着するような場面においても、装着者が快適に装着することが可能になる。
【0091】
衛生用マスク1は、装着部14が上記した不織布シートなどの繊維シートで形成されているため非常に柔軟性を有している。そのため、例えば
図4に示すように受止部12を装着者Mの下顎の下方まで
図4中の矢印A方向にずらす動作においても、受止部12の動きに対して装着部14をフレキシブルに追随させることができる。そのため、例えば会議中にコーヒー等の飲料を飲んだり、また屋内で他人と対面して着席しながら食事をするときなど、飛沫等の飛散物が拡散することによる影響のある可能性が高い場合は、
図3に示すように受止部12を装着者Mの口や鼻の前方に位置させ、飲食物を口に入れる場合などには
図4に示すように受止部12を装着者Mの下顎よりも下方にずらすといった動作を、衛生用マスク1をその都度着脱せずに行うことができる。そのため、近年、複数人で集まる場合などにおいて生じるリスクが高まってきている飛沫感染のおそれを大きく低減することが、簡単な動作を行うことにより可能になる。また、下顎に対する顎受け部17の位置を調整することによって、受止部12の位置調整も簡単に行うことができるので、汎用性にも富んでおり、人によって大きさや輪郭の異なる顔に対しても適切な位置に受止部12を位置させることが可能になる。また、この衛生用マスク1は、装着者Mと受止部12との間に空間部18が形成されるので、装着時に口や鼻の周囲が蒸れやすくなったり、装着時に感じがちな口や鼻周辺を全体的に覆った感覚をも生じさせることがないようにすることも可能になる。
【0092】
さらに、装着部14は、表面に細かい皺が多数形成されているため、装着者Mに対する肌触りが非常によい。また、装着者Mの肌面と装着部14との間に、皺による隙間が多数形成されているので、装着時に装着者Mが汗をかいた場合であっても、装着者Mの肌と装着部14との間に熱や湿気がこもるおそれも少なく、装着時に感じる不快感を大きく低減することができ、長時間にわたって衛生用マスク1を快適に装着することが可能になる。また、この装着部14は、薄膜体の間に弾性体を接合した伸縮性シートSHからなるため、耳に触れる感触も柔らかく、従来のゴム紐などのようなもので耳掛け部を形成した衛生用マスクに比べて、装着者Mの耳Eに対する負担も大きく軽減することができる。そのため、衛生用マスク1によれば、従来の衛生用マスクを長時間装着した場合に問題となる「耳に痛みが発生すること」や、「耳のうち衛生用マスクのゴム紐等に接する部分が擦れて傷つくこと」を、効果的に抑制することができる。
【0093】
また、衛生用マスク1は、透光性を有するフィルム部材15からなる受止部12が支持体13を介して装着部14に取り付けられており、かつ受止部12も装着時における装着者Mの口や鼻の前方位置に位置することのできる大きさ及び形状に形成されている。そのため、装着者Mは、衛生用マスク1を装着した場合においても良好な視界を維持した状態で装着しつつ、かつ飛散物の拡散等を低減することが可能になる。
【0094】
ところで、従来の衛生用マスクや樹脂マスクといったマスクを複数回にわたって使用する場合、1回且つ比較的短時間の使用(標準的使用と呼ぶ)毎に拭き取り作業をマスクに施すことで、マスクに付着した唾などの飛沫や食べ物のカス等といった不潔な飛散物を除去する必要がある。標準的使用毎の拭き取り作業時には、飛散物等が付着したマスクに人が触れて、ウイルスや雑菌・細菌に感染するといったリスクも増加するおそれがある。拭き取り作業を繰り返し行っているうちにマスクに傷が入り、その傷に雑菌や汚れ等が蓄積しやすくなる。マスクを繰り返し使用しているうちに蓄積された汚れ等により、マスクを装着することで装着者にとって不衛生な状態になる問題がある。
【0095】
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1は、装着者の口や鼻等から飛散した飛散物を受止部で受け止めることができるため、飛散物を周囲に拡散して周囲の人に対するウイルス等の飛沫感染のおそれを大幅に低減させることができる。
【0096】
また、第1の実施形態にかかる衛生用マスク1は、複数の薄いフィルム部材15を相互に剥離可能に重ね合わせて受止部を形成している。このため、飛散物等が受止部12に付着したりして汚れた場合や、いったん外した衛生用マスク1を再度装着する場合などにおいては、肌面側のフィルム部材15を剥離して除去することにより、飛散物等が付着していないきれいな状態のフィルム部材15が最も肌面に近接するようにして、さらに衛生用マスク1を装着することができる。フィルム部材15の汚れが過度である場合、拭き取りでは汚れが十分には除去できない場合等についても、同様に、肌面側のフィルム部材15を剥離して除去することにより、さらに衛生用マスク1を装着することができる。そのため、装着者Mは、常に衛生的な状態にある衛生用マスク1を装着することができるようになる。また、衛生用マスク1によれば、周囲の人に装着者Mが衛生的な印象を与えることが可能となり、逆に周囲の人も装着者Mに対して衛生的な印象を持ちやすくすることが可能になる。なお、このことは、衛生用マスク1を再度装着する場合に、肌面側のフィルム部材15を剥離しないことを禁止するものではない。受止部12を構成するフィルム部材15のうち、装着時に最も肌面に近接しているフィルム部材15の汚れが少ない場合には、汚れを拭き取り除去して再使用してもよい。
【0097】
このように、第1の実施形態にかかる衛生用マスク1によれば、飛散物等が付着したフィルム部材を剥離することで、衛生的な状態を維持しながら繰り返し使用することが可能となる。また、最後のフィルム部材まで使用した後は、衛生用マスクをそのまま廃棄することができるので、最後まで簡単かつ衛生的に使用することができる。
【0098】
次に、第1の実施形態にかかる衛生用マスク1の変形例について説明する。
【0099】
[1-3 変形例]
(変形例1)
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1においては、装着部14を構成する伸縮性シートSHが、
図7に示すような積層構造を有してもよい(この例を変形例1とよぶ)。
図7は、装着部14の実施例の一つを示す断面図である。
図7の断面図は、変形例1における伸縮性シートSHの断面図にも対応する。変形例1においては、装着部14を構成する伸縮性シートSHは、不織布シートを第1の紙系シート3、第2の紙系シート4の一方の表面側(第1の紙系シート3の表面側)のみに有している。
【0100】
伸縮性シートSHを除く他の構成については、上記に示す第1の実施形態と同様でよい。
【0101】
装着部14は、コート剤塗布層2を設けた第1の紙系シート3と、コート剤塗布層2を設けた第2の紙系シート4とが、それぞれのコート剤塗布層2側の間にホットメルト接着剤等によって形成された接着剤層10を介して接合され、第1の紙系シート3の表面側に不織布シートをホットメルト接着剤等からなる接着剤層9を介して接合して形成されている。
【0102】
装着部14は、第1の実施形態や変形例1で説明した構成の他にも種々の積層態様を有するものを用いられてよい。例えば、不織布-ゴム-不織布からなる積層態様、紙-ゴム-紙からなる積層態様、不織布-ゴム-紙からなる積層態様、不織布-ゴム-紙-不織布からなる積層態様など、種々の態様があり、またこれら以外の種々の態様がある。これらの積層態様のうち、例えば紙-ゴム-紙の積層態様や、不織布-ゴム-不織布の積層態様のように、表裏が対称的な積層態様が装着部14として採用されている場合には、装着部14を大きく伸張させた後のヨレの発生をより大きく低減することができる点で好ましい。
【0103】
(変形例2)
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1において、装着部14は、エンボス加工等による柔軟化処理を施されたものであってもよい(この例を変形例2と呼ぶ)。
【0104】
(エンボス加工)
この装着部14には、必要によりエンボス加工等による柔軟化処理を施してもよい。エンボス加工は、装着部14の両面側を、エンボスロールを用いて押圧して行ってもよいが、エンボスロールと平ロールとの間で装着部14を押圧して行ってもよい。また、エンボスロールは、表面に複数の凹凸を有する者を用いても、装着部14の長手方向に対する凹凸条を有するエンボスロール(縦エンボスロール)や、装着部14の幅方向に対する凹凸条を有するエンボスロール(横エンボスロール)を用いてもよく、これらを組み合わせてエンボス加工を行ってもよい。
【0105】
(変形例3)
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1において、装着部14を形成する伸縮性シートSH素材の紙系シートの表面には、印刷模様等の模様が施されてもよい。紙系シートの表面には容易に印刷模様等を施すことができる。伸縮性シートSHが、不織布シートと接する側の紙系シートの表面に印刷模様を施されている場合、不織布シートを通して印刷模様が透視される。このため、伸縮性シートSHを用いた装着部14の意匠性、ひいては衛生用マスク1の意匠性も向上させることができる。紙系シートに施す印刷模様は、全面に印刷しても部分的に印刷してもよい。紙系シートに平面印刷された印刷模様は、引き延ばされた状態で紙系シート間に挟み込み接合された弾性体が、伸張前の状態に復元して紙系シートに縮みが生じて多数の皺が形成された状態となると、印刷模様も弾性体の伸縮方向に縮んだ模様として表出される。このため、紙系シートの表面に施す印刷模様間が粗な状態であっても、紙系シートが縮んだ状態では印刷模様は密になる。したがって、紙系シートが縮んだ状態の印刷模様に、平面印刷した印刷模様とは異なる印象を与える模様を表出することができる。
【0106】
(変形例4)
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1において、受止部12を構成する相互に剥離可能な複数のフィルム部材のうち、装着時に最も非肌側に位置するフィルム部材が他のフィルム部材よりも上下方向の長さ(高さ)が長くなるように形成されていてもよい(変形例4)。変形例4によれば、飛散物を受止部で受け止める範囲を広げることができ、飛散物を周囲に拡散して周囲の人に対するウイルス等の飛沫感染のおそれをより大幅に低減させることができる。
【0107】
(変形例5)
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1の上記の説明においては、装着部14が一体的な部材で形成されており、その部材に耳掛け部16と顎受け部17が形成されている。第1の実施形態にかかる衛生用マスク1は、この場合に限定されない。第1の実施形態にかかる衛生用マスク1は、装着部14は、耳掛け部16を形成する第1部材と、顎受け部17を形成する第2部材との組み合わせで形成されていてもよい(変形例5)。この場合、装着部14は、例えば、
図8Bに示す部材を、耳掛け部16を含む部分と顎受け部17を含む部分に分断したものを一例として挙げることができる。この場合、耳掛け部16を含む部分が第1部材に対応し、顎受け部17を含む部分が第2部材に対応する。そして、装着部14は、第1の部材を中心として第1の部材の長手方向(顎受け部17の長手方向)に沿った両側に第2の部材を配置した組み合わせで構成されることになる。第1部材と第2部材の材質は、それぞれ個別に第1の実施形態で示す伸縮性シートSHを用いられてよい。なお、変形例5での装着部14の長手方向及び幅方向は、顎受け部17の長手方向及び幅方向に揃えられている。装着部の長手方向に沿った一方端側と他方端側は、第2の部材の端部を例示することができる。
【0108】
[2 第2の実施形態]
第1の実施形態にかかる衛生用マスク1においては、受止部12が単数枚のフィルム部材で形成されてもよい(これを第2の実施形態と呼ぶ)。第2の実施形態にかかる衛生用マスクは、受止部12が単数枚のフィルム部材で構成されている他については、第1の実施形態と同様でよい。
【0109】
受止部12は、一枚のフィルムシートで形成されたものに限定されない。受止部12は、複数のフィルム部材15を積層させて一枚のフィルムシートとして形成されていてもよい。また、複数枚のフィルム部材15を積層させる場合には、その積層する枚数は特に限定されるものではない。それぞれのフィルム部材15の材質や素材、厚さが同じでも異なっていてもよい。複数のフィルム部材15を積層させて形成する場合には、複数のフィルム部材15が分離することのないよう形成されていることが好ましい。複数のフィルム部材15を互いに分離しないようにした構造は、特に限定されない。例えば、複数のフィルム部材15を互いに分離しないようにした構造は、従来から公知の方法を任意に選択して用いてよい。例えば、複数のフィルム部材15を接着剤等により貼り合わせることで複数のフィルム部材15が分離しないようにされてもよい。熱などによって複数のフィルム部材15が面接合されてもよい。また、これら以外の方法であってもよい。
【0110】
なお、本明細書では、衛生用マスクは口や鼻の周辺を覆うように形成した場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、衛生用マスクは上記した以外の構成であってもよい。
【0111】
本発明に係る衛生シールドについて、衛生用マスクの例を用いて詳細に説明したが、本発明に係る衛生シールドは衛生用マスク1に限定されるものではなく、例えばフェイスシールドやアイマスク等として構成してもよい。
【0112】
また、上記したのは、本発明に係る衛生シールドの一実施例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 :衛生用マスク
2 :コート剤塗布層
3 :第1の紙系シート
4 :第2の紙系シート
5 :線状弾性体
6 :弾性体層
7 :第1の不織布シート
8 :第2の不織布シート
9 :接着剤層
10 :接着剤層
12 :受止部
13 :支持体
14 :装着部
15 :フィルム部材
16 :耳掛け部
16a :耳掛け孔
17 :顎受け部
18 :空間部
30 :固定部
31A :第1の部分
31B :第2の部分
32A :第1の端部
32B :第2の端部
40 :皺
60 :接続部
60A :第1の接続部
60B :第2の接続部
A :矢印
E :耳
L13 :長手方向
L14 :長手方向
M :装着者
P :伸縮方向
Q :直交方向
R1 :摘み部
R2 :摘み部
W13 :幅方向
W14 :幅方向
WD :離間間隔