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特開2022-82180生分解性樹脂組成物、生分解性成形体、ポリアミド樹脂の廃棄方法、および、組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082180
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】生分解性樹脂組成物、生分解性成形体、ポリアミド樹脂の廃棄方法、および、組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220525BHJP
   C08K 3/11 20180101ALI20220525BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20220525BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220525BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/11 ZBP
C08G69/26
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193585
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】岡島 裕矢
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩介
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB04
4J001EA06
4J001EA14
4J001EB04
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB10
4J001EB35
4J001EB36
4J001EB37
4J001EB46
4J001EC04
4J001EC07
4J001EC08
4J001EC09
4J001EC13
4J001EC14
4J001EC47
4J001EE28D
4J001FA03
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA01
4J001GB02
4J001GB03
4J001GC04
4J001GE13
4J001JA05
4J001JA07
4J001JA10
4J001JA12
4J001JA13
4J001JB01
4J002CL011
4J002CL021
4J002CL031
4J002CL051
4J002EG046
4J002FD196
4J002GA00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J200AA04
4J200AA06
4J200AA08
4J200BA03
4J200BA05
4J200BA29
4J200DA01
4J200DA09
4J200DA16
4J200DA17
4J200DA22
4J200DA23
4J200DA24
4J200DA28
(57)【要約】
【課題】 生分解性に優れた樹脂組成物、生分解性成形体、ポリアミド樹脂の廃棄方法、および、組成物の提供。
【解決手段】 ポリアミド樹脂と、コバルト塩とを含み、ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位とを含み、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%である、生分解性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂と、コバルト塩とを含み、
前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、
前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、
前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン由来の構成単位と前記炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位のモル比率が、20:80~80:20である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸であり、前記炭素数2~20の脂肪族ジアミンが1,6-ヘキサメチレンジアミンである、請求項3または4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、20~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン由来の構成単位と前記炭素数4~10のラクタム由来の構成単位のモル比率が、20:80~75:25である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸であり、前記炭素数4~10のラクタムがε-カプロラクタムである、請求項6または7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン構造の質量比率が5~60質量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物;ここで、キシリレンジアミン構造の質量比率とは、[(ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン構造の質量)/(ポリアミド樹脂全体の質量)]×100より算出される値である。
【請求項10】
前記コバルト塩が、コバルトのカルボン酸塩を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記コバルト塩が、ステアリン酸コバルトを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記コバルト塩の含有量は、コバルト原子基準で、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~2000質量ppmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂組成物を、55℃、相対湿度90%の環境下に28日間保存したときに、樹脂組成物の数平均分子量の減少率((保存後のポリアミド樹脂のMn/保存前のポリアミド樹脂のMn)×100)が20%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記樹脂組成物を、コンポスト環境下で90日保存した後の生分解度が5%以上である、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物;ここで、生分解度(%)は、[(コンポスト環境下で90日間保存中の総CO発生量)/(組成式から算出される理論二酸化炭素発生量)]×100である。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された生分解性成形体。
【請求項16】
前記成形体が漁網である、請求項15に記載の成形体。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物、あるいは、請求項15または16に記載の成形体を、生分解させることを含む、ポリアミド樹脂の廃棄方法。
【請求項18】
ポリアミド樹脂の分解物と、コバルト塩とを含む、組成物であって、
前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、
前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、
前記構成単位の合計が100モル%を超えることはなく、
前記組成物の数平均分子量が1000未満である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂組成物、生分解性成形体、ポリアミド樹脂の廃棄方法、および、組成物に関する。特に、生分解可能なポリアミド樹脂およびその分解物に関する。
【0002】
ポリアミド樹脂は、物理的および化学的特性に優れている。このため、電気電子機器部品、食品や医薬品の包装材料等、各種用途に幅広く使用されている。例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂に有機酸コバルトなどの遷移金属塩を配合した層を設け、ポリアミド樹脂を触媒酸化して酸素を吸収することにより、ガスバリア性に加えて酸素吸収性を付与した、いわゆるハイバリア容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-321774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、ポリアミド樹脂を各種用途に用いることは行われているが、近年の環境保全に対する取り組みの一環として、ポリアミド樹脂を生分解できることが求められる。特に、ポリアミド6やポリアミド66といった汎用脂肪族ポリアミド樹脂を含む樹脂組成物が生分解性能を有していれば利用価値が高い。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリアミド樹脂を用いた樹脂組成物であって、生分解性に優れた樹脂組成物、生分解性成形体、樹脂組成物の廃棄方法、成形体の廃棄方法、および、組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、特定の種類のポリアミド樹脂に、コバルト塩を配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂と、コバルト塩とを含み、前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、生分解性樹脂組成物。
<2>前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、<1>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン由来の構成単位と前記炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位のモル比率が、20:80~80:20である、<3>に記載の樹脂組成物。
<5>前記炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸であり、前記炭素数2~20の脂肪族ジアミンが1,6-ヘキサメチレンジアミンである、<3>または<4>に記載の樹脂組成物。
<6>前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、20~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはない、<1>に記載の樹脂組成物。
<7>前記ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン由来の構成単位と前記炭素数4~10のラクタム由来の構成単位のモル比率が、20:80~70:30である、<6>に記載の樹脂組成物。
<8>前記炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸であり、前記炭素数4~10のラクタムがε-カプロラクタムである、<6>または<7>に記載の樹脂組成物。
<9>前記ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン構造の質量比率が5~60質量%である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;ここで、キシリレンジアミン構造の質量比率とは、[(ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン構造の質量)/(ポリアミド樹脂全体の質量)]×100より算出される値である。
<10>前記コバルト塩が、コバルトのカルボン酸塩を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>前記コバルト塩が、ステアリン酸コバルトを含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>前記コバルト塩の含有量は、コバルト原子基準で、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、10~2000質量ppmである、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>前記樹脂組成物を、55℃、相対湿度90%の環境下に28日間保存したときに、樹脂組成物の数平均分子量の減少率((保存後のポリアミド樹脂のMn/保存前のポリアミド樹脂のMn)×100)が20%以下である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<14>前記樹脂組成物を、コンポスト環境下で90日保存した後の生分解度が5%以上である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;ここで、生分解度(%)は、[(コンポスト環境下で90日間保存中の総CO発生量)/(組成式から算出される理論二酸化炭素発生量)]×100である。
<15><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された生分解性成形体。
<16>前記成形体が漁網である、<15>に記載の成形体。
<17><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物、あるいは、<15>または<16>に記載の成形体を、生分解させることを含む、ポリアミド樹脂の廃棄方法。
<18>ポリアミド樹脂の分解物と、コバルト塩とを含む、組成物であって、前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはなく、前記組成物の数平均分子量が1000未満である、組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリアミド樹脂を用いた樹脂組成物であって、生分解性に優れた樹脂組成物、生分解性成形体、樹脂組成物の廃棄方法、成形体の廃棄方法、および、組成物を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、ppmは質量ppmを意味する。
【0008】
本実施形態の生分解性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と、コバルト塩とを含み、前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはないことを特徴とする。このような構成とすることにより、生分解性に優れた樹脂組成物を提供可能になる。この理由は以下の通りであると推測される。
樹脂を生分解させるため、例えば、コンポスト環境下に長期間放置すると、微生物が樹脂に作用し、樹脂の分子量を低下させる。その結果、微生物がさらに樹脂の内部まで入り込みやすくなり、生分解が進行し、オリゴマー、モノマー、さらには、さらなる低分子に分解する。しかしながら、ポリアミド樹脂は、一般的に、アミド結合の結合度が強く、また、通常、結晶性樹脂であるため、微生物の影響を受けにくく、分子量低下が起こりにくい。そのため、ポリアミド樹脂は、微生物による分解が進行しにくい。本実施形態では、ポリアミド樹脂として、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、ならびに、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、炭素数2~20の脂肪族ジアミン、炭素数4~10のラクタム、および、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸の少なくとも1種を含む脂肪族モノマーに加え、キシリレンジアミンを用いて合成されたポリアミド樹脂を用いることにより、生分解を効果的に進行させている。すなわち、キシリレンジアミンを原料モノマーの一部として用いることにより、最初にキシリレンジアミンのNH-CH-ベンゼン環の部位が、コバルトによって酸化分解され、ベンジル部位とNHの間で切断されると推測された。結果として、ポリアミド樹脂の分子量低下が促進され、生分解を促進できたと推測される。
以下、本実施形態の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0009】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはないものである。
このように、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、ならびに、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、炭素数2~20の脂肪族ジアミン、炭素数4~10のラクタム、および、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸の少なくとも1種を含む脂肪族モノマーに加え、キシリレンジアミンを用いて合成されたポリアミド樹脂を用いることにより、生分解を効果的に進行させることができる。
ここで、キシリレンジアミン、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸、炭素数2~20の脂肪族ジアミン、炭素数4~10のラクタム、および、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位(以下、「構成単位X」ということがある)の合計は、100モル%を超えることはないが、前記構成単位Xの合計は、ポリアミド樹脂を構成する全構成単位中、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、97~100モル%であることがさらに好ましく、99~100モル%であることが一層好ましい。
【0010】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン由来の構成単位を含む。キシリレンジアミンを含むことにより、ポリアミド樹脂の生分解を効果的に進行させることができる。
キシリレンジアミンは、0~100モル%のメタキシリレンジアミンと0~100モル%のパラキシリレンジアミンを含むことが好ましく、10~100モル%のメタキシリレンジアミンと0~90モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがより好ましく、30~100モル%のメタキシリレンジアミンと0~70モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがさらに好ましく、70~100モル%のメタキシリレンジアミンと0~30モル%のパラキシリレンジアミンを含むことが一層好ましい。メタキシリレンジアミンを含むことにより、結晶化が遅延し、成形性がより向上する傾向にある。また、キシリレンジアミンにおいて、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が95モル%以上を占めることが好ましく、99モル%以上を占めることがさらに好ましく、100モル%であることが一層好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における、全構成単位中のキシリレンジアミン(好ましくは、メタキシリレンジアミン)由来の構成単位の割合は、10~40モル%である。前記全構成単位中のキシリレンジアミン由来の構成単位の割合の上限値は、38モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であってもよい。また、前記全構成単位中のキシリレンジアミン由来の構成単位の割合の下限値は、15モル%以上であってもよく、さらには20モル%以上であってもよい。
【0011】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含む。生分解性樹脂組成物ないしその成形体として高い強度を得るためには、ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸に由来するアミノ基とカルボキシル基のモルバランスを保つことが望ましい。このようなジカルボン酸を含むことにより、キシリレンジアミンを導入した場合もアミノ基とカルボキシル基のモルバランスが保たれ、生分解性樹脂組成物ないしその成形体の強度が向上するという効果がより向上する傾向にある。炭素数がより少ない場合は熱安定性に劣る傾向にあり、炭素数がより多い場合は生分解性樹脂組成物ないしその成形体が劣る傾向にある。
炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸が例示され、アジピン酸が好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における、全構成単位中の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)由来の構成単位の割合は、5~50モル%であるが、10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、22モル%以上であることがさらに好ましい。上限としては、40モル%以下であることが好ましく、37モル%以下であることがより好ましく、32モル%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より生分解性に優れた樹脂組成物が得られる。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0012】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含んでいてもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸が例示され、フタル酸化合物が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における、全構成単位中の芳香族ジカルボン酸(好ましくはイソフタル酸)由来の構成単位の割合は、0~30モル%であり、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以下であってもよい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0013】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を含んでいてもよい。
炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11-ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸、1,13-トリデカンニ酸、1,14-テトラデカン二酸、1,15-ペンタデカン二酸、1,16-ヘキサデカンニ酸、1,17-ヘプタデカンニ酸、1,18-オクタデカンニ酸、1,19-ノナデカンニ酸、1,20-エイコサン二酸、1,21-ヘンエイコサン二酸、1,22-ドコサン二酸が例示され、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸が好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における全構成単位中の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の割合は、0~40モル%であり、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが一層好ましく、1モル%以下であってもよい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0014】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含んでいてもよい。
炭素数2~20の脂肪族ジアミンは、炭素数3~20の脂環式ジアミンであってもよいが、炭素数2~20の直鎖または分岐の脂肪族ジアミンであることが好ましく、炭素数2~20のα,ω-直鎖脂肪族ジアミンであることがより好ましく、炭素数3~10のα,ω-直鎖脂肪族ジアミンであることがさらに好ましい。
炭素数2~20の脂肪族ジアミンとしては、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカンが例示され、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミンが好ましく、1,6-ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における、全構成単位中の炭素数2~20の脂肪族ジアミン(好ましくは1,6-ヘキサメチレンジアミン)由来の構成単位の割合は、0~40モル%である。本実施形態で用いるポリアミド樹脂が、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含む場合、その割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、15モル%以上であることがさらに好ましい。また、上限値としては、35モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、25モル%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0015】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位を含んでいてもよい。
炭素数4~10のラクタムとしては、炭素数4~8のラクタムであることが好ましく、炭素数6のラクタム(ε-カプロラクタム)であることがより好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における、全構成単位中の炭素数4~10のラクタム(好ましくはε-カプロラクタム)由来の構成単位の割合は、0~80モル%である。本実施形態で用いるポリアミド樹脂が、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位を含む場合、その割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましく、25モル%以上であることが一層好ましく、30モル%以上であることがより一層好ましく、37モル%以上であることがさらに一層好ましい。また、上限値としては、77モル%以下であることが好ましく、65モル%以下であることがより好ましく、55モル%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含んでいてもよい。
炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸としては、アミノブタン酸、アミノペンタン酸、アミノカプロン酸、アミノカプリル酸が例示され、アミノカプロン酸が好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂における、全構成単位中の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の割合は、0~80モル%であり、60モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることが一層好ましく、5モル%以下であることがさらに一層好ましく、1モル%以下であってもよい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0017】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、また、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は10~80モル%である。前記下限値は、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、25モル%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、生分解度がより向上する傾向にある。また、前記上限値は、77モル%以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、強度がより増加する傾向にある。
【0018】
次に、本実施形態で用いるポリアミド樹脂の好ましい実施形態について説明する。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂の第一の実施形態は、10~40モル%のキシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)由来の構成単位と、10~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来(好ましくは1,6-ヘキサメチレンジアミン)の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはないものである。
ポリアミド樹脂の第一の実施形態においては、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはないものが好ましい。
ポリアミド樹脂の第一の実施形態においては、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の合計(好ましくはキシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位の合計)がポリアミド樹脂を構成する全構成単位中、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、97~100モル%であることがさらに好ましく、99~100モル%であることが一層好ましい。
【0019】
ポリアミド樹脂の第一の実施形態においては、特に、ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン由来の構成単位と炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位のモル比率が、20:80~80:20であることが好ましく、30:70~75:25であることがより好ましく、40:60~70:30であることがさらに好ましく、45:55~65:35が一層好ましい。
【0020】
ポリアミド樹脂の第一の実施形態においては、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン(好ましくは1,6-ヘキサメチレンジアミン)由来構成単位と、必要に応じて含まれる炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の共重合体であってもよいし、これらの構成単位を含む2種以上のポリアミド樹脂であってもよいが、共重合体が好ましい。
ポリアミド樹脂の第一の実施形態において、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位とを含むポリアミド樹脂(A)(例えば、MXD6)と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来構成単位とを含むポリアミド樹脂(B)(例えば、ポリアミド66やポリアミド610)のブレンド物、あるいは、同量の原料モノマーから構成される共重合体(例えば、MXD6/PA66、MXD6/PA610)のモル比率((A):(B))は、80:20~20:80であることが好ましく、80:20~30:70であることがより好ましく、70:30~40:60であることがさらに好ましく、60:50~40:50であることが一層好ましい。このような範囲とすることにより、生分解性により優れた生分解性樹脂組成物ないしその成形体が得られる傾向にある。
【0021】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂の第二の実施形態は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、10~40モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)由来の構成単位と、20~80モル%の炭素数4~10のラクタム(好ましくはε-カプロラクタム)由来の構成単位を含み、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはないものである。
ポリアミド樹脂の第二の実施形態においては、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位の合計がポリアミド樹脂を構成する全構成単位中、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、97~100モル%であることがさらに好ましく、99~100モル%であることが一層好ましい。
【0022】
ポリアミド樹脂の第二の実施形態においては、特に、ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン由来の構成単位と前記炭素数4~10のラクタム由来の構成単位のモル比率が、10:90~70:30であることが好ましく、20:80~70:30であることがより好ましく、30:70~65:35であることがさらに好ましく、60:40~50:50であることが一層好ましい。
【0023】
ポリアミド樹脂の第二の実施形態においては、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸)由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム(好ましくはε-カプロラクタム)由来の構成単位の共重合体であってもよいし、これらの構成単位を含む2種以上のポリアミド樹脂のブレンド物であってもよいが、共重合体が好ましい。
ポリアミド樹脂の第二の実施形態においては、キシリレンジアミン由来の構成単位と、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位とを含むポリアミド樹脂(A)(例えば、MXD6)と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位を含むポリアミド樹脂(C)(例えば、ポリアミド6)のブレンド物、あるいは、同量の原料モノマーから構成される共重合体(例えば、MXD6/PA6)のモル比率((A):(C))は、20:80~75:25であることが好ましく、30:70~75:25であることがより好ましく、30:70~65:35であることがさらに好ましく、35:65~65:35であることが一層好ましく、60:40~50:50であることがより一層好ましい。このような範囲とすることにより、生分解性により優れた生分解性樹脂組成物ないしその成形体が得られる傾向にある。
【0024】
また、本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、上記ポリアミド樹脂の第一の実施形態と第二の実施形態をみたすものであってもよい。例えば、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とポリアミド樹脂(C)のブレンド物、あるいは、同量の原料モノマーから構成される共重合体であってもよい。ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)とポリアミド樹脂(C)のモル比率は、ポリアミド樹脂(A):(ポリアミド樹脂(B)+(C))のモル比率が、80:20~20:80であることが好ましく、80:20~30:70であることがより好ましく、80:20~40:60であることがさらに好ましく、80:20~50:50であることが一層好ましく、80:20~51:49であることがより一層好ましく、65:35~41:49であることがさらに一層好ましい。
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、少なくとも第一の実施形態を満たすことが好ましい。
【0025】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン由来の構成単位、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位以外の構成単位や末端基を含んでいてもよい。本実施形態では、ポリアミド樹脂の好ましくは90質量%以上が、より好ましくは95質量%以上が、さらに好ましくは98質量%以上が、キシリレンジアミン由来の構成単位、炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位、炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位、または、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位から構成される。
【0026】
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン構造の質量比率が5~60質量%であることが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂の低分子量化と分解生成物の生分解性をバランスよく向上させることができる。ここで、キシリレンジアミン構造の質量比率とは、[(ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン構造の質量)/(ポリアミド樹脂全体の質量)]×100より算出される値である。キシリレンジアミン構造とは、「-HN-CH-ベンゼン環-CH-NH-」で表される部分をいう。
前記キシリレンジアミン構造の質量比率の下限値は、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、16質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、酸化分解による樹脂の低分子量化がより進行しやすい傾向にある。また、前記キシリレンジアミン構造の質量比率の上限値は、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、生分解を受けにくい芳香族系の分解生成物を減らすことで、樹脂としての生分解度がより向上する傾向にある。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂の含有量は、樹脂組成物中、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、99質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、ポリアミド樹脂の物性を十分に発揮できる傾向にある。上限値としては、コバルト塩以外のすべての成分がポリアミド樹脂となる量である。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
<コバルト塩>
本実施形態の樹脂組成物は、コバルト塩を含む。コバルト塩を含むことにより、本実施形態の樹脂組成物をコンポスト環境下等においたときに生分解を促進する。特に、コバルト塩はコンポスト環境下に置く前は、ポリアミド樹脂に悪影響を殆ど与えないため、樹脂組成物の使用時には、樹脂組成物が本来的に有している性能(特に、強度)を阻害しにくい点で好ましい。
コバルト塩の種類は特に定めるものではなく、2価の塩および3価の塩のいずれであってもよいが、2価の塩が好ましい。
コバルト塩はコバルトのカルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩を用いることにより、ベンジル位の酸化分解による低分子量化がより効果的に促進される傾向にある。そして、ポリアミド樹脂を低分子化することで、その後に微生物による生分解が促進される。
コバルトのカルボン酸塩の場合、カルボン酸は、脂肪族カルボン酸であることが好ましい。前記脂肪族カルボン酸は、コバルトによる樹脂の酸化分解挙動に顕著な影響を与えないため、特に定めるものではないが、直鎖または分岐の脂肪族カルボン酸のいずれも好ましく採用でき、直鎖の脂肪族カルボン酸であることがより好ましい。脂肪族カルボン酸の炭素数は、コバルトによる樹脂の酸化分解挙動に顕著な影響を与えないため、特に定めるものではないが、2以上であることが好ましく、10以上であってもよく、また、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、24以下であることがさらに好ましい。特に、炭素原子の数が偶数である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
脂肪族カルボン酸の具体例としては、酢酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ネオデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリシン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸が例示され、物性面から、酢酸、ネオデカン酸、ステアリン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
本実施形態におけるコバルト塩は、ステアリン酸コバルトが好ましい。ステアリン酸コバルトは、(C1735COO)Coが好ましい。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物におけるコバルト塩(好ましくはステアリン酸コバルト)の含有量は、コバルト原子基準で、ポリアミド樹脂100質量部に対し、10質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましく、80質量ppm以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、より効果的にポリアミド樹脂が生分解を受けやすい分子量まで分解させることができる。また、本実施形態の樹脂組成物におけるコバルト塩の含有量は、コバルト原子基準で、ポリアミド樹脂100質量部に対し、2000質量ppm以下であることが好ましく、1800質量ppm以下であることがより好ましく、1500質量ppm以下であることがさらに好ましく、1200質量ppm以下であることが一層好ましく、1000質量ppm以下であることがより一層好ましく、800質量ppm以下であることがさらに一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリアミド樹脂調製時の劣化や外観不良を効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、コバルト塩を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物には、本実施形態の目的・効果を損なわない範囲で、ポリアミド樹脂およびコバルト塩以外の他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分の具体例としては、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤、表面活性化剤、染色剤等が例示される。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落0130~0155の記載、特開2010-281027号公報の段落0021の記載、特開2016-223037号公報の段落0036の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ポリアミド樹脂以外の他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、熱可塑性ポリエーテルイミド等が例示される。本実施形態の樹脂組成物では、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、例えば、本実施形態の樹脂組成物において、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂の質量の5質量%以下であることをいう。
また、本実施形態の樹脂組成物は、ガラス樹脂組成物、炭素繊維等の充填材を含んでいてもよいが、実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、充填材の配合量が、本実施形態の樹脂組成物の3質量%以下であることをいう。
また、本実施形態の樹脂組成物はプラズマ処理を行うことで、任意の表面性を付与することができる。この詳細は、特開平06-182195号公報の0019~0022の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0031】
<樹脂組成物の特性、物性>
本実施形態の樹脂組成物は、恒温状況下においたときに、分子量が低下することが好ましい。具体的には、55℃、相対湿度90%の環境下に28日間保存したときに、樹脂組成物の数平均分子量の減少率((保存後のポリアミド樹脂のMn/保存前のポリアミド樹脂のMn)×100)が20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、7%以下であることが一層好ましい。また、前記減少率の下限値は、0%が理想であり、0.01%以上であっても十分に要求性能を満たす。
本実施形態の樹脂組成物は、生分解性を有している。生分解性とは、微生物などによって、最終的に水と二酸化炭素に分解されうる性能をいい、例えば、コンポスト環境下に一定期間保存したとき、分子量の低下が認められるものが含まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、コンポスト環境下で90日保存した後の生分解度が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、35%以上であることが一層好ましく、60%以上であることがより一層好ましい。生分解度の上限は100%が理想であるが、例えば80%以下でも十分に要求性能を満たすものである。ここで、生分解度(%)は、[(コンポスト環境下で90日間保存中の総CO発生量)/(組成式から算出される理論二酸化炭素発生量)]×100である。
本実施形態の樹脂組成物は、数平均分子量が8,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。数平均分子量の上限は、特に定めるものではないが、例えば100,000以下であり、さらには50,000以下である。ここでの数平均分子量は生分解前のものである。
【0032】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法が採用される。
例えば、ポリアミド樹脂、コバルト塩、ならびに、必要に応じ配合される他の成分をV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調製した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。
【0033】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常180~360℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、ストランド切れ等押出不良の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。
【0034】
<成形体>
本実施形態の樹脂組成物は、成形して生物分解性成形体として用いられる。生物分解性成形体は、部品であってもよいし、完成品であってもよい。
本実施形態における、成形体の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0035】
本実施形態の成形体は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品(例えば、釣り糸)、農林水産業用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム、衣類等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
特に、本実施形態の樹脂組成物ないし成形体は、生分解性に優れることから、食品包装用フィルムや濾布、レジャースポーツ用品(例えば、釣り糸)、漁網に好ましく用いられ、漁網により好ましく用いられる。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物および本実施形態の生分解性成形体は生分解させることによって、廃棄できる。本実施形態の樹脂組成物および生分解性成形体は、微生物の作用によって、分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水になって自然界へ循環させることができる。よって、自然破壊することなく、自然に廃棄することができる点で有益である。すなわち、本明細書では、本実施形態の樹脂組成物または生分解性成形体を生分解させることを含む、ポリアミド樹脂の廃棄方法も開示する。
【0037】
本実施形態の生分解性樹脂組成物は55℃、相対湿度90%で28日間保存されることによって、数平均分子量が小さくなる。数平均分子量が小さくなった後の組成物(低Mn組成物)は、ポリアミド樹脂の分解物と、コバルト塩とを含む、組成物であって、前記ポリアミド樹脂は、10~40モル%のキシリレンジアミン由来の構成単位と、5~50モル%の炭素数4~7のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~30モル%の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、0~40モル%の炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、0~80モル%の炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位を含み、前記炭素数8~22のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位と、炭素数2~20の脂肪族ジアミン由来の構成単位と、炭素数4~10のラクタム由来の構成単位と、炭素数3~9の脂肪族アミノカルボン酸由来の構成単位の合計は、10~80モル%であり、前記構成単位の合計が100モル%を超えることはなく、前記組成物の数平均分子量が1000未満である、組成物である。前記低Mn組成物の数平均分子量は、950以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましい。前記数平均分子量の下限は、小さければ小さいほどよいが、150以上が実際的であり、300以上でも十分に要求する性能を満たすものである。
【実施例0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0039】
・ 原料
<MXD6/PA6共重合体、70/30(質量比)の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、精秤したアジピン酸(32.3mol)およびε-カプロラクタム(35.4mol)を入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下で170℃まで昇温し、アジピン酸およびε-カプロラクタムを溶解させ均一な流動状態とした。これに、メタキシリレンジアミン(32.3mol)を撹拌下に160分を要して滴下した。この間、反応系内圧は常圧とし、内温を連続的に250℃まで昇温させ、またメタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミン滴下終了後、250℃の液温を保持して10分間反応を継続した。その後、反応系内圧を600Torrまで10分間で連続的に減圧し、その後、20分間反応を継続した。この間、反応温度を260℃まで連続的に昇温させた。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.3MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとして取出し、水冷後ペレット形状に切断し、溶融重合品のペレットを得た。得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に、室温で仕込んだ。タンブラーを回転しながら槽内を減圧状態(0.5~10Torr)とし、流通熱媒を150℃まで加温し、ペレット温度130℃まで昇温してその温度で3時間保持した。その後、再び窒素を導入して常圧にし、冷却を開始した。ペレットの温度が70℃以下になったところで、槽からペレットを取り出し、固相重合品を得た。
得られたポリアミド樹脂におけるキシリレンジアミン構造の質量比率は、38.1質量%である。
【0040】
<MXD6/PA6共重合体、56/44(質量比)の合成>
上記MXD6/PA6共重合体、70/30(質量比)の合成例において、原料のアジピン酸を24.8mol、ε-カプロラクタムを50.5mol、メタキシリレンジアミンを24.7molに変更した他は同様にして合成した。
得られたポリアミド樹脂におけるキシリレンジアミン構造の質量比率は、30.3質量%である。
【0041】
<MXD6/PA6共重合体、28/72(質量比)の合成>
上記MXD6/PA6共重合体、70/30(質量比)の合成例において、原料のアジピン酸を11.6mol、ε-カプロラクタムを76.8mol、メタキシリレンジアミンを11.6molに変更した他は同様にして合成した。
得られたポリアミド樹脂におけるキシリレンジアミン構造の質量比率は、15.2質量%である。
【0042】
<MXD6/PA66共重合体、56/44(質量比)の合成>
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下槽および窒素ガス導入管を備えたジャケット付反応缶に、精秤したアジピン酸(50.0mol)を入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下で170℃まで昇温し、アジピン酸を溶解させ均一な流動状態とした。これに、メタキシリレンジアミン(26.8mol)およびヘキサメチレンジアミン(23.2mol)を混合したジアミン混合液を撹拌下に160分を要して滴下した。この間、反応系内圧は常圧とし、内温を連続的に250℃まで昇温させ、またメタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および冷却器を通して系外に除いた。メタキシリレンジアミン滴下終了後、250℃の液温を保持して10分間反応を継続した。その後、反応系内圧を600Torrまで10分間で連続的に減圧し、その後、20分間反応を継続した。この間、反応温度を260℃まで連続的に昇温させた。反応終了後、反応缶内を窒素ガスにて0.3MPaの圧力を掛けポリマーを重合槽下部のノズルよりストランドとして取出し、水冷後ペレット形状に切断し、溶融重合品のペレットを得た。得られたペレットを熱媒加熱の外套を有するタンブラー(回転式の真空槽)に、室温で仕込んだ。タンブラーを回転しながら槽内を減圧状態(0.5~10Torr)とし、流通熱媒を150℃まで加温し、ペレット温度130℃まで昇温してその温度で3時間保持した。その後、再び窒素を導入して常圧にし、冷却を開始した。ペレットの温度が70℃以下になったところで、槽からペレットを取り出し、固相重合品を得た。
得られたポリアミド樹脂におけるキシリレンジアミン構造の質量比率は、30.3質量%である。
【0043】
PA6:ポリアミド6:宇部興産社製、PA6「1022B」
PA66:ポリアミド66:東レ社製、PA66「CM3001―N」
ステアリン酸コバルト(StCo):関東化学社製、品番:07423-02
【0044】
2.実施例1~4、比較例1~6
<樹脂組成物の製造(コンパウンド)>
後述する表1または表2に示す組成となるように、ポリアミド樹脂とステアリン酸コバルトをそれぞれ秤量し、タンブラーにてブレンドし、二軸押出機(芝浦機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融し、ペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、260℃とした。表1、表2において、ステアリン酸コバルト(StCo)の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対するコバルト原子の量(質量ppm)である。
【0045】
<55℃で28日保存後の分子量の減少>
得られたポリアミド樹脂ペレットを55℃、相対湿度90%で28日間保存した。保存前後の数平均分子量を測定した。
また、「28日後のMn(%)」とは、ポリアミド樹脂の数平均分子量の減少率を示す指標であり、(保存後のポリアミド樹脂のMn/保存前のポリアミド樹脂のMn)×100で表される値である。
【0046】
数平均分子量(Mn)は以下ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法に従って測定した。
GPC測定は、昭和電工社製Shodex GPC SYSTEM-11にて行った。溶媒にはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、サンプルのポリアミド樹脂10mgを10gのHFIPに溶解させて測定に用いた。測定条件は、測定カラム同社製GPC標準カラム(カラムサイズ300×8.0mmI.D.)のHFIP-806Mを2本、リファレンスカラムHFIP-800を2本用い、カラム温度40℃、溶媒流量1.0mL/minとした。標準試料にはPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を使用し、データ処理ソフトは同社製SIC-480IIを使用して数平均分子量(Mn)を求めた。
【0047】
<生分解度>
生分解度はJIS K 6953-1(好気コンポスト系生分解試験法)に従い測定した。樹脂組成物(ペレット)10gと乾燥質量60gのコンポストと混合し、含水率を45~50質量%とした。この混合物を58±2℃、相対湿度100%のコンポスト環境下に置き、空気を水で飽和させて二酸化炭素を除いた気体を通気し、90日間生分解試験を行った。発生した二酸化炭素量を測定し、理論二酸化炭素発生量の総量から、下記式に従って生分解度を算出した。
生分解度(%)=[(コンポスト環境下で90日間保存中の総CO発生量)/(組成式から算出される理論二酸化炭素発生量)]×100
組成式から算出される理論二酸化炭素発生量は、あらかじめCHN分析計で測定した試験材料の全有機炭素量(TOC)と試料量10gから下記式に従って算出した。
理論二酸化炭素発生量(g)=[(試験材料の全有機炭素量(TOC)/100]×3.67×10
コンポストは、八幡物産製YK-11を用いた。二酸化炭素量の測定は、非分散型赤外線分析計(LI-COR製 LI-830)を用いた。CHN分析計はパーキンエルマー製PE2400シリーズIIを用いた。
【0048】
【表1】
【表2】
【0049】
表1および表2において、MXDAはメタキシリレンジアミンを、ε-CLは、ε-カプロラクタムを、HDAはヘキサメチレンジアミンを示している。
表1および表2におけるStCoは、ポリアミド樹脂100質量部に対するコバルト原子の量(質量ppm)で示している。
【0050】
上記表1から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物(実施例1~4)は、55℃、相対湿度90%で28日間保存することにより、コバルト塩が作用し、ポリアミド樹脂の数平均分子量が効果的に低下した。さらに、コンポスト環境下で90日間保存後することにより、コバルト塩による酸化分解の作用に加え、生分解により、ポリアミド樹脂の分解がより効果的に進行した。
これに対し、上記表2から明らかなとおり、キシリレンジアミン由来の構成単位を含まない場合(比較例1、2)やコバルト塩を含まない場合(比較例3~6)、55℃、相対湿度90%で28日間保存しても、ポリアミド樹脂の数平均分子量の低下は殆ど認められなかった。さらに、生分解も進行しなかった。