(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082297
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】湿気硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20220525BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220525BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193776
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河田 円
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CH05W
4J002CH05X
4J002DA036
4J002DA037
4J002DE086
4J002DE087
4J002DE136
4J002DE137
4J002DE236
4J002DE237
4J002DJ006
4J002DJ007
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002DJ036
4J002DJ037
4J002DJ046
4J002DJ047
4J002DL006
4J002DL007
4J002EX038
4J002FA106
4J002FA107
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD158
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】各種被着体に対して優れた密着性を有すると共に、被着体からの簡易除去性を併せ持った硬化物を生成する湿気硬化性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の湿気硬化性組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)と、分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)と、平均粒子径が0.5μm以下である充填剤(C1)、及び平均粒子径が1μm以上である充填剤(C2)を含む充填剤(C)とを含有し、上記充填剤(C2)に対する上記充填剤(C1)の質量比[上記充填剤(C1)の質量/上記充填剤(C2)の質量]が、0.5以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)と、
分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)と、
平均粒子径が0.5μm以下である充填剤(C1)、及び平均粒子径が1μm以上である充填剤(C2)を含む充填剤(C)とを含有し、
上記充填剤(C2)に対する上記充填剤(C1)の質量比[上記充填剤(C1)の質量/上記充填剤(C2)の質量]が、0.5以下であることを特徴とする湿気硬化性組成物。
【請求項2】
分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の主鎖骨格が、ポリアルキレンオキサイドを含むことを特徴とする請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項3】
分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の主鎖骨格が、ウレタン結合を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項4】
分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)に対する、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の質量比[上記ポリアルキレンオキサイド(A)の質量/上記重合体(B)の質量]が、20未満である請求項1~3のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項5】
分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、脱水剤(D)を1質量部以上且つ30質量部以下含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドを含む変成シリコーン系の湿気硬化性組成物は、硬化時に毒物を発生せず安全性を有していると共に、硬化して得られる硬化物が弾性及び耐久性に優れていることから、シーリング材や接着剤として広く用いられている。
【0003】
近年では、湿気硬化性組成物は、その用途が徐々に拡大しつつあり、建築物を筆頭に車両や電化製品にも用いられている。
【0004】
これまで湿気硬化性組成物によって接着される被着体は、無機系の被着体が主であった。しかしながら、用途の拡大に伴い被着体の材質も多様化している。そのため、湿気硬化性組成物には、硬化後に各種被着体に対して高い密着性を発揮できることが求められている。
【0005】
そこで、特許文献1では、変成シリコーンとシリル化ウレタンポリマーを併用することによって、硬化後の湿気硬化性組成物の密着性が向上できることが開示されている。
【0006】
しかしながら、近年では環境問題への配慮の高まりから、被着体にはリユースやリサイクルできることが求められている。被着体をリユースやリサイクルする際に、被着体に湿気硬化性組成物の硬化物が付着していると、上記硬化物が異物や不純物となり、被着体のリユースやリサイクルが困難となる場合がある。そのため、湿気硬化性組成物の硬化物には被着体からの簡易除去性を有していることも求められている。特許文献1の湿気硬化性組成物では、硬化後の密着性が高過ぎるため、簡易除去性が低いという問題を有している。
【0007】
湿気硬化性組成物の硬化物の被着体への密着性が高過ぎるため、簡易除去性が低い場合、被着体から上記硬化物を剥離除去する際に、被着体を破壊してしまうことが多い。さらに、被着体上の上記硬化物をスクレーパーなどの道具を用いて剥離除去しようとすると、上記硬化物の剥離除去に要する時間が長くなるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、各種被着体に対して優れた密着性を有すると共に、被着体からの簡易除去性を併せ持った硬化物を生成する湿気硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の湿気硬化性組成物は、
分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)と、
分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)と、
平均粒子径が0.5μm以下である充填剤(C1)、及び平均粒子径が1μm以上である充填剤(C2)を含む充填剤(C)とを含有し、
上記充填剤(C2)に対する上記充填剤(C1)の質量比[上記充填剤(C1)の質量/上記充填剤(C2)の質量]が、0.5以下であることを特徴とする。
【0011】
[ポリアルキレンオキサイド(A)]
本発明の湿気硬化性組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を含有している。加水分解性シリル基を含有するポリアルキレンオキサイド(A)は、水の存在下にて、加水分解性シリル基の加水分解性基が加水分解してシラノール基(-SiOH)を生成する。そして、シラノール基同士が脱水縮合して架橋構造が形成される。したがって、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)によれば、雰囲気中の湿気により硬化することができる湿気硬化性組成物を提供することが可能となる。分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)を単に「ポリアルキレンオキサイド(A)」ということがある。
【0012】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0013】
ポリアルキレンオキサイド(A)の加水分解性シリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基、トリクロロシリル基などのハロゲンが結合したハロゲン化シリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基が好ましく、メチルジメトキシシリル基が好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)において、加水分解性シリル基は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0014】
ポリアルキレンオキサイド(A)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1~4個が好ましく、1~3個がより好ましく、1~2個がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の平均個数が1個以上であると、湿気硬化性組成物の硬化性が向上する。また、ポリアルキレンオキサイド(A)における加水分解性シリル基の平均個数が4個以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の機械的強度又はゴム弾性が向上する。
【0015】
なお、ポリアルキレンオキサイド(A)における、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド(A)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0016】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、分子中に加水分解性シリル基を有している。ポリアルキレンオキサイド(A)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)が主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していると、湿気硬化性組成物の硬化物のゴム弾性を向上させることができる。
【0017】
主鎖とは、分子中において、50質量%以上を占める重合体単位をいう。重合体単位は、単量体が重合することによって形成されたものをいう。なお、重合体単位を構成する単量体は、重合体単位中に2分子以上含まれているものをいう。重合体単位が複数の単量体から構成されている場合、重合体単位は、ランダム重合又はブロック重合の何れから構成されたものであってもよい。複数の重合体単位が互いに結合して分子鎖を形成し、その分子鎖が、分子中の50質量%以上を占めている場合、互いに結合した重合体単位の全体を主鎖とする。複数の重合体単位が結合して分子鎖を形成している場合、重合体単位間に存在する分子構造は主鎖に含まれるものとする。
【0018】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)としては、主鎖が、一般式:-(R1-O)n-(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0019】
ポリアルキレンオキサイド(A)の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられ、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。
【0020】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、分子中にウレタン結合(-NHCOO-)及びウレア結合(-NHCONH-)を含有していないことが好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)がウレタン結合及びウレア結合を有していないことによって、湿気硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上し、これにより各種被着体への密着性が向上する。
【0021】
ポリアルキレンオキサイド(A)は、主鎖骨格がポリアルキレンオキサイドであり、主鎖骨格の両末端に加水分解性シリル基を有し、且つ分子中にウレタン結合及びウレア結合を有していないことが好ましい。このようなポリアルキレンオキサイド(A)は、硬化前は液状であり、湿気硬化性組成物の硬化物に良好なゴム弾性を付与することができる。
【0022】
ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量は、50000以下が好ましく、40000以下がより好ましく、30000以下が特に好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量は、5000以上が好ましく、8000以上がより好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が50000以下であると、湿気硬化性組成物の粘度が低くなり、ハンドリング性が向上する。ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量が5000以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の硬度が向上して、これにより上記硬化物が高い接着強度を有する。
【0023】
ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、1.6以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下が特に好ましい。ポリアルキレンオキサイド(A)の分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、1.0以上が好ましく、1.1以上が特に好ましい。分子量分布が1.6以下であるポリアルキレンオキサイド(A)によれば、湿気硬化性組成物の硬化物が強靭となり、接着強度が向上する。分子量分布が1.0以上であるポリアルキレンオキサイド(A)によれば、湿気硬化性組成物の取り扱い性が向上する。
【0024】
なお、本発明において、ポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、ポリアルキレンオキサイド(A)6~7mgを採取し、採取したポリアルキレンオキサイド(A)を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo-DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリアルキレンオキサイド(A)の濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0025】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてポリアルキレンオキサイド(A)をBHTを含むo-DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0026】
ポリアルキレンオキサイド(A)における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o-DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500~8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0027】
分子中に加水分解性シリル基を含有するポリアルキレンオキサイド(A)は、市販されているものを用いることができる。ポリアルキレンオキサイド(A)としては、分子中に加水分解性シリル基を含有するポリアルキレンオキサイド(A)であれば、特に限定なく用いることができる。主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドであり、主鎖骨格の両末端に加水分解性シリル基を有し、且つ分子中にウレタン結合及びウレア結合を有していないポリアルキレンオキサイド(A)としては、例えば、株式会社カネカ製 商品名「サイリル EST280」、旭硝子社製 商品名「エクセスター6250」及び「エクセスター3430」などが挙げられる。
【0028】
[重合体(B)]
本発明の湿気硬化性組成物は、分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)を含有する。
【0029】
重合体(B)は、分子中に加水分解性シリル基を有している。重合体(B)が分子中に加水分解性シリル基を有することで、重合体(B)とポリアルキレンオキサイド(A)との間にも架橋構造を形成することが可能となり、これにより湿気硬化性組成物の硬化物の表面に重合体(B)がブリードアウトして被着体を汚染したり密着性が低下したりするのを防ぐことが出来る。
【0030】
さらに、重合体(B)は、分子中にウレタン結合(-NHCOO-)及びウレア結合(-NHCONH-)のうち少なくとも一方を有する。重合体(B)は、分子中にウレタン結合及びウレア結合のうちいずれか一方のみを有していてもよく、分子中にウレタン結合及びウレア結合の双方を有していてもよい。ウレタン結合またはウレア結合に含まれる窒素原子によって、重合体(B)の極性を高くすることができる。このような重合体(B)をポリアルキレンオキサイド(A)と併用して用いることによって、湿気硬化性組成物の硬化物の各種被着体に対する密着性が向上する。
【0031】
なお、分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)を単に「重合体(B)」ということがある。
【0032】
重合体(B)の加水分解性シリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基、トリクロロシリル基などのハロゲンが結合したハロゲン化シリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基及びトリアルコキシシリル基が好ましく、メチルジメトキシシリル基及びトリメトキシシリル基が好ましい。重合体(B)において、加水分解性シリル基は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0033】
重合体(B)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1個以上が好ましく、1.5個以上がより好ましい。重合体(B)において、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、4個以下が好ましく、3.5個以下がより好ましい。重合体(B)における加水分解性シリル基の平均個数が1個以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物表面に重合体(B)がブリードアウトすることを低減できる。また、重合体(B)における加水分解性シリル基の平均個数が4個以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物が硬くなり過ぎずに適度な柔軟性を保持する。
【0034】
なお、重合体(B)中における、1分子中における加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められる重合体(B)中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められる重合体(B)の数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0035】
重合体(B)は、分子中に加水分解性シリル基を有している。重合体(B)は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有していることがより好ましい。重合体(B)が主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していると、加水分解性シリル基の反応性が向上し、湿気硬化性組成物の硬化物表面に重合体(B)がブリードアウトすることを低減できる。
【0036】
重合体(B)としては、主鎖が、一般式:-(R2-O)m-(式中、R2は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、mは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。重合体(B)の主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0037】
重合体(B)の主鎖骨格は、ポリアルキレンオキサイドを含んでいることが好ましい。これにより湿気硬化性組成物の硬化物に柔軟性を付与することができ、湿気硬化性組成物の硬化物の各種被着体に対する密着性が向上する。
【0038】
重合体(B)の主鎖骨格に含まれるポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、重合体(B)の主鎖骨格は、ポリプロピレンオキサイドを含んでいることが好ましい。
【0039】
重合体(B)中におけるアルキレンオキサイド単位(R2-O)の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより好ましい。重合体(B)中におけるアルキレンオキサイド単位(R2-O)の含有量は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。アルキレンオキサイド単位の含有量が50質量%以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物に柔軟性を付与することができ、湿気硬化性組成物の硬化物の各種被着体に対する密着性が向上する。アルキレンオキサイド単位の含有量が99質量%以下であると、湿気硬化性組成物が硬化後に適度な硬度を有する硬化物を形成することができ、これにより上記硬化物の簡易除去性が向上する。
【0040】
重合体(B)の主鎖骨格中におけるアルキレンオキサイド単位(R2-O)の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がより好ましい。重合体(B)の主鎖骨格中におけるアルキレンオキサイド単位(R2-O)の含有量は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。アルキレンオキサイド単位の含有量が50質量%以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物に柔軟性を付与することができ、湿気硬化性組成物の硬化物の各種被着体に対する密着性が向上する。アルキレンオキサイド単位の含有量が99質量%以下であると、湿気硬化性組成物が硬化後に適度な硬度を有する硬化物を形成することができ、これにより上記硬化物の簡易除去性が向上する。
【0041】
重合体(B)の主鎖は、上述した一般式:-(R2-O)m-で表される繰り返し単位以外に、ウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を含んでいてもよく、ウレタン結合及びウレア結合を含んでいなくてもよい。重合体(B)の主鎖は、ウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を含んでいることが好ましく、ウレタン結合を含んでいることがより好ましい。主鎖中にウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を含む重合体(B)によれば、湿気硬化性組成物の硬化物の各種被着体に対する密着性が向上する。
【0042】
重合体(B)は、主鎖末端のうち少なくとも一方にウレタン結合又はウレア結合を介して加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端にウレタン結合又はウレア結合を介して加水分解性シリル基を有していることが好ましく、主鎖の両末端にウレア結合を介して加水分解性シリル基を有していることが好ましい。重合体(B)が主鎖末端の少なくとも一方にウレタン結合又はウレア結合を介して加水分解性シリル基を有していると、加水分解性シリル基の反応性が向上し、湿気硬化性組成物の硬化物表面における重合体(B)のブリードアウトを低減できる。
【0043】
重合体(B)が主鎖末端の少なくとも一方にウレタン結合又はウレア結合を介して加水分解性シリル基を有している場合、加水分解性シリル基と、ウレタン結合又はウレア結合との間に、アルキレン基が介在していることが好ましい。アルキレン基が介在していることによって、湿気硬化性組成物の硬化物の柔軟性が向上する。
【0044】
加水分解性シリル基とウレタン結合又はウレア結合との間に介在するアルキレン基は、-CnH2n-(nは自然数である)で表され、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基などが挙げられ、炭素数が1~6のアルキレン基が好ましく、炭素数が1~5のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1~4のアルキレン基がより好ましく、炭素数が1~3のアルキレン基がより好ましい。
【0045】
重合体(B)の製造方法としては、特に制限されない。例えば、ポリアルキレンオキサイドを含む主鎖の両末端にウレタン結合を介して加水分解性シリル基を有している重合体(B)は、ポリアルキレンオキサイド鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0046】
ポリアルキレンオキサイド鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーとしては、ポリエチレンオキサイドグリコール(ポリオキシエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイドグリコール(ポリオキシプロピレングリコール)、ポリブチレンオキサイドグリコール(ポリオキシブチレングリコール)、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール(ポリオキシテトラメチレングリコール)、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイドグリコール(ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール)、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイドグリコール(ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレングリコール)などが挙げられる。
【0047】
アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物としては、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートブチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、及び1-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
ポリアルキレンオキサイドを含む主鎖の両末端にウレタン結合を介して加水分解性シリル基を有している重合体(B)を合成するには、ポリアルキレンオキサイド鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを混合して混合物を得、この混合物を撹拌して上記プレポリマーのヒドロキシ基と、上記化合物のイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を形成させることにより行うことができる。また、上記混合物を加熱しながら撹拌することにより、反応を促進させることができる。
【0049】
重合体(B)の数平均分子量は5000以上が好ましく、6000以上がより好ましい。重合体(B)の数平均分子量は50000以下が好ましく、40000以下がより好ましい。重合体(B)の数平均分子量が5000以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の機械的強度及び伸び性をさらに向上させることができる。重合体(B)の数平均分子量が50000以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着力及び取り扱い性をさらに向上させることができる。
【0050】
重合体(B)の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。重合体(B)の数平均分子量の具体的な測定方法としては、上述したポリアルキレンオキサイド(A)の数平均分子量の測定方法と同様の方法が用いられる。
【0051】
本発明の湿気硬化性組成物において、分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)に対する、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の質量比[ポリアルキレンオキサイド(A)の質量/重合体(B)の質量]は、20未満が好ましく、15以下がより好ましい。本発明の湿気硬化性組成物において、分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)に対する、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)の質量比[ポリアルキレンオキサイド(A)の質量/重合体(B)の質量]は、0.1以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上がより好ましい。上記質量比[ポリアルキレンオキサイド(A)の質量/重合体(B)の質量]が20未満であると、湿気硬化性組成物の硬化物が柔軟になり過ぎず、上記硬化物の各種被着体に対する密着性を維持しつつ簡易除去性を改善することが出来る。上記質量比[ポリアルキレンオキサイド(A)の質量/重合体(B)の質量]が1以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の各種被着体に対する密着性が向上する。
【0052】
[充填剤(C)]
本発明の湿気硬化性組成物は、充填剤(C)を含有する。
【0053】
充填剤(C)としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどが挙げられる。充填剤(C)は単独でも用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましい。
【0054】
本発明の湿気硬化性組成物では、平均粒子径が異なる少なくとも2種類の充填剤(C)を組み合わせて用いる。充填剤(C)は、平均粒子径が0.5μm以下である充填剤(C1)、及び平均粒子径が1μm以上である充填剤(C2)を含む。
【0055】
なお、平均粒子径が0.5μm以下である充填剤(C1)を単に「充填剤(C1)」ということがある。また、平均粒子径が1μm以上である充填剤(C2)を単に「充填剤(C2)」ということがある。
【0056】
そして、本発明の湿気硬化性組成物において、充填剤(C2)に対する充填剤(C1)の質量比[充填剤(C1)の質量/充填剤(C2)の質量]を、0.5以下とする。このように充填剤(C1)及び充填剤(C2)を、所定の質量比で組合せて用いることにより、湿気硬化性組成物の硬化物の伸び性及び硬度の双方を適度な範囲にすることができ、これにより各種被着体に対する密着性及び簡易除去性が両立された上記硬化物が得られる。
【0057】
充填剤(C1)の平均粒子径は、0.5μm以下であるが、0.4μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましい。充填剤(C1)の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましい。充填剤(C1)の平均粒子径が0.5μm以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の伸び性が向上し、各種被着体への密着性も向上する。充填剤(C1)の平均粒子径が0.01μm以上であると、湿気硬化性組成物の粘度の過度な上昇を抑制し、湿気硬化性組成物の取り扱い性が向上する。
【0058】
充填剤(C2)の平均粒子径は、1μm以上であるが、1.1μm以上が好ましく、1.2μm以上がより好ましい。充填剤(C2)の平均粒子径は、20μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。充填剤(C2)の平均粒子径が1μm以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の硬度が向上し、これにより上記硬化物の簡易除去性が向上する。充填剤(C2)の平均粒子径が20μm以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の硬度を適度な範囲に維持し、上記硬化物の簡易除去性が向上する。
【0059】
なお、充填剤(C)の平均粒子径は、充填剤(C)の比重、及び充填剤(C)1g当たりの比表面積を用いて下記式に基づいて算出された値をいう。充填剤(C)1g当たりの比表面積は、JIS Z8830(2013年)に準拠して測定することができる。充填剤(C)1g当たりの比表面積の測定には、例えば、島津製作所社から商品名「SS-100型」にて市販されている粉体比表面積測定装置を用いることができる。
充填剤(C)の平均粒子径(μm)
=6×10000/(比重×比表面積)
【0060】
充填剤(C)は、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩などの表面処理剤によって表面処理されていてもよい。表面処理剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0061】
脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0062】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリルなどが挙げられる。
【0063】
脂肪酸金属塩としては、例えば、上記脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられ、ラウリン酸のナトリウム塩、ミリスチン酸のナトリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩、ステアリン酸のナトリウム塩又はオレイン酸のナトリウム塩が好ましい。
【0064】
平均粒子径が0.5μm以下である充填剤(C1)は、表面処理剤によって表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、上述した脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩などが挙げられるが、なかでも、脂肪酸が好ましい。表面処理剤によって表面処理された充填剤(C1)によれば、湿気硬化性組成物の硬化物に適度な伸びを付与することが出来、剥離強度を向上させることができる。
【0065】
平均粒子径が1μm以上である充填剤(C2)は、表面処理剤によって表面処理されていてもよく、表面処理剤によって表面処理されていなくてもよい。
【0066】
湿気硬化性組成物中における充填剤(C)の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がより好ましく、150質量部以上が特に好ましい。湿気硬化性組成物中における充填剤(C)の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、400質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、250質量部以下が特に好ましい。充填剤(C)の含有量が10質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の伸び性及び硬度の双方を適度な範囲にすることができ、これにより各種被着体に対する密着性及び簡易除去性が両立された上記硬化物が得られる。充填剤(C)の含有量が400質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の伸び性及び硬度の双方を適度な範囲にすることができ、これにより各種被着体に対する密着性及び簡易除去性が両立された上記硬化物が得られる。
【0067】
湿気硬化性組成物において、充填剤(C2)に対する充填剤(C1)の質量比[充填剤(C1)の質量/充填剤(C2)の質量]が、0.5以下であるが、0.45以下が好ましい。湿気硬化性組成物において、充填剤(C2)に対する充填剤(C1)の質量比[充填剤(C1)の質量/充填剤(C2)の質量]が、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましい。上記質量比[充填剤(C1)の質量/充填剤(C2)の質量]が0.5以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の伸び性及び硬度の双方を適度な範囲にすることができ、これにより各種被着体に対する密着性及び簡易除去性が両立された上記硬化物が得られる。上記質量比[充填剤(C1)の質量/充填剤(C2)の質量]が0.05以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物の伸び性及び硬度の双方を適度な範囲にすることができ、これにより各種被着体に対する密着性及び簡易除去性が両立された上記硬化物が得られる。
【0068】
[脱水剤(D)]
湿気硬化性組成物は、脱水剤(D)を含有していることが好ましい。脱水剤(D)を用いることにより湿気硬化性組成物の硬化物の簡易除去性を向上させることができる。
【0069】
脱水剤(D)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。脱水剤(D)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、シラン化合物が好ましく、ビニルトリメトキシシランがより好ましい。
【0070】
湿気硬化性組成物中における脱水剤(D)の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、3.5質量部以上がより好ましく、4質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。湿気硬化性組成物中における脱水剤(D)の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。脱水剤(D)の含有量が3質量部以上であると、湿気硬化性組成物を長期保存することができ、さらに、湿気硬化性組成物の硬化物の簡易除去性が向上する。脱水剤(D)の含有量が30質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物において密着性を維持しながら簡易除去性が向上する。
【0071】
[シランカップリング剤]
本発明の湿気硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有していることが好ましい。シランカップリング剤を用いることにより、湿気硬化性組成物の硬化物が各種被着体に対してより優れた密着性を発揮することができる。
【0072】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、イソシアネートシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、カルボキシシランカップリング剤、ハロゲンシランカップリング剤、カルバメートシランカップリング剤、アルコキシシランカップリング剤、及び酸無水物シランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、アミノシランカップリング剤、及びエポキシシランカップリング剤が好ましく、アミノシランカップリング剤がより好ましい。シランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0073】
アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含有している化合物を意味する。アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0074】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-プロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。
【0075】
エポキシシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、エポキシ基を含有する官能基とを含む化合物を意味する。エポキシシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0076】
湿気硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.5質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化物が各種被着体に対してより優れた密着性を発揮することができる。シランカップリング剤の含有量が20質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物に、簡易除去性の低下を抑制しつつ、各種被着体に対する優れた密着性を付与することができる。
【0077】
[シラノール縮合触媒]
本発明の湿気硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、ポリアルキレンオキサイド(A)や重合体(B)が有する加水分解性シリル基が加水分解することなどにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si-OH)を意味する。
【0078】
シラノール縮合触媒としては、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5-エンなどのシクロアミジン系化合物;ジブチルアミン-2-エチルヘキソエートなどが挙げられる。また、他の酸性触媒や塩基性触媒もシラノール縮合触媒として用いることができる。なかでも、有機錫系化合物が好ましく、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)がより好ましい。なお、シラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0079】
湿気硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。湿気硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。シラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、湿気硬化性組成物の硬化性が向上する。シラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、湿気硬化性組成物の硬化物の接着強度が向上する。
【0080】
[他の添加剤]
本発明の湿気硬化性組成物は、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、揺変剤、顔料、染料、抗菌剤、防カビ剤、沈降防止剤及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0081】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。湿気硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)及び分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B)の総量100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0082】
本発明の湿気硬化性組成物は、空気中の湿気や、被着体に含まれている湿気によって迅速に硬化し、各種被着体に対して優れた密着性を有する硬化物を形成することができる。さらに、本発明では、湿気硬化性組成物の硬化物において機械物性を適度な範囲とすることで、上記硬化物の被着体に対する優れた密着性を保持しながら、上記硬化物に簡易除去性を付与することができる。したがって、本発明の湿気硬化性組成物の硬化物によって接着が行われた被着体を改修する際などに、被着体を損傷させることなく、上記硬化物を被着体から容易に除去することができる。したがって、上記硬化物が除去された後の被着体は、リユースやリサイクルすることができ、破棄物の量を低減することが可能となる。したがって、本発明の湿気硬化性組成物は、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤、感圧接着剤、シーラントなどの様々な用途に用いることができる。
【0083】
本発明の湿気硬化性組成物は、上述した通り、硬化後に各種被着体に対して優れた密着性を発揮することができる。被着体の材質としては、特に限定されず、例えば、ステンレス、アルミ、銅、鉄などの金属;ナイロン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリカーボネート、オレフィン系樹脂(エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂など)、フッ素樹脂、ポリアセタールなどの合成樹脂;天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴムなどのゴム;コンクリート、モルタル、天然石、タイル、ガラス、陶磁器などの無機材料などが挙げられる。
【0084】
湿気硬化性組成物は、例えば、床構造の構築に用いられる。例えば、床構造は、床基盤上に敷設された床下地材上に、湿気硬化性組成物からなる硬化物を介して床仕上げ材が接着一体化されることによって構築される。床構造は、床基盤と、上記床基盤上に敷設されている床下地材と、上記床下地材上に形成されており且つ上記床下地材と接着一体化している湿気硬化性組成物の硬化物と、上記硬化物上に敷設されており且つ上記硬化物と接着一体化している床仕上げ材とを含んでいる。
【0085】
床仕上げ材を構成する部材としては、例えば、合板及びミディアム・デンシティ・ファイバーボードなどの木質系材料、タイル、ポリ塩化ビニルシート、及び石材などが挙げられる。
【0086】
床下地材を構成する部材としては、例えば、合板、パーチクルボード、木根太、石膏ボード、スレート板、及びコンクリート板などが挙げられる。
【発明の効果】
【0087】
本発明の湿気硬化性組成物は、上述の如き構成を有しているので、雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、各種被着体に対して優れた密着性を有すると共に、被着体からの簡易除去性を併せ持った硬化物を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0089】
実施例及び比較例の湿気硬化性組成物の製造において下記の原料を使用した。
【0090】
[ポリアルキレンオキサイド(A)]
・分子中に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド(A)(分子中にウレタン結合及びウレア結合を有しない、主鎖骨格:ポリプロピレンオキサイド、主鎖の両末端にメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、数平均分子量:15000、分子量分布:1.1、旭硝子社製 製品名「エクセスター6250」)
【0091】
[重合体(B)]
・分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B1)(主鎖骨格:ポリアルキレンオキサイド、主鎖骨格にウレタン結合及びウレア結合を有していない、主鎖の両末端にウレタン結合を介してメチルジメトキシシリル基を有する、1分子中のメチルジメトキシシリル基の平均個数:2.0個、メチルジメトキシシリル基とウレタン結合との間にメチレン基を有する、数平均分子量:30000、分子量分布:1.6、旭化成ワッカーシリコーン社製 商品名「GENIOSIL STP-E35」)
・分子中に加水分解性シリル基を有し且つウレタン結合及びウレア結合のうち少なくとも一方を有する重合体(B2)(主鎖骨格がポリアルキレンオキサイドを含む、主鎖骨格にウレタン結合又はウレア結合を有している、主鎖の両末端にウレア結合を介してトリメトキシシリル基を有する、1分子中のトリメトキシシリル基の平均個数:3.0個、トリメトキシシリル基とウレア結合との間にn-プロピレン基を有する、数平均分子量:35000、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 商品名「SPUR3030」)
【0092】
[充填剤(C)]
・充填剤(C1)(コロイダル炭酸カルシウム、平均粒子径:0.1μm、脂肪酸による表面処理がされている、神島化学工業社製 製品名「PLS505」)
・充填剤(C2)(重質炭酸カルシウム、平均粒子径:4.0μm、表面処理剤による表面処理がされていない、東洋ファインケミカル社製 製品名「ホワイトン P-30」)
【0093】
[脱水剤(D)]
・脱水剤(D)(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業社製 製品名「KBM-1003」)
【0094】
[シランカップリング剤]
・アミノシランカップリング剤(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製 製品名「KBM-603」)
【0095】
[シラノール縮合触媒]
・シラノール縮合触媒(ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、日東化成社製 製品名「ネオスタンS-303」)
【0096】
(実施例1~10、比較例1~4)
ポリアルキレンオキサイド(A)、重合体(B1)、重合体(B2)、充填剤(C1)、充填剤(C2)、脱水剤(D)、アミノシランカップリング剤、シラノール縮合触媒を、それぞれ表1に示した配合量となるように、密封した攪拌機中で減圧しながら均一に混合して湿気硬化性組成物を作製した。
【0097】
(剥離強度)
湿気硬化性組成物の常態剥離強度(N/25mm)をJIS A5536(2017年)の5.3.3 e)1)の90度剥離試験に準拠して測定した。具体的には、床仕上げ材としてタキロン社から製品名「タキストロンPRENTO PRE-81」にて市販されているシートを用いた。床下地材として厚さ5mmのスレート板(JIS A5536(2017年)の表7)を用いた。
【0098】
(密着性)
下記要領に従って、2枚の被着体を湿気硬化性組成の硬化物によって接着一体化させて試験体を作製し、試験体から被着体を剥離させた後の凝集破壊率を評価した。被着体としては、モルタル板、繊維強化プラスチック(FRP)板(ガラス繊維を含むABS)、又は硬質ポリ塩化ビニル(硬質PVC)板を用いた。試験体中の2枚の被着体は、それぞれ同じ材質のものを用いた。
【0099】
被着体を2枚用意した。それぞれの被着体は、一辺が40mmである平面正方形状であった。一方の被着体の表面に湿気硬化性組成物を塗工し、塗工した湿気硬化性組成物上に他方の被着体を重ね合わせて積層体を作製した。次に、積層体を23℃、相対湿度50%の環境下に1週間静置して湿気硬化性組成物を硬化させて、2枚の被着体を湿気硬化性組成物の硬化物によって接着一体化させて試験体を作製した。試験体中の湿気硬化性組成物の硬化物は、一辺が40mmである平面正方形状であった。
【0100】
そして、試験体中の一方及び他方の被着体のそれぞれを、上記被着体が相互に離間する方向に且つ湿気硬化性組成物の硬化物との接着面に対して垂直となる方向に引っ張ることにより、試験体から他方の被着体を剥離させた。剥離後、一方の被着体表面において、凝集破壊した湿気硬化性組成物の硬化物によって被覆されている面積S(mm2)を求め、下記式に基づいて、凝集破壊率を算出し、下記基準に従って評価した。結果を表1の「モルタル板」、「FRP板」、及び「硬質PVC板」のそれぞれの欄に示す。
凝集破壊率(%)
=100×S/[一方の被着体表面全体の面積(1600mm2)]
【0101】
A:凝集破壊率が100%であり、且つ双方の被着体が破壊しなかった。
B:凝集破壊率が50%以上100%未満であり、且つ双方の被着体が破壊しなかった。
C:凝集破壊率が20%以上50%未満であり、且つ双方の被着体が破壊しなかった。
D:凝集破壊率が20%未満であり、且つ双方の被着体が破壊しなかった。
E:少なくとも一方の被着体が破壊した。
【0102】
なお、湿気硬化性組成物の硬化物の密着性が高いほど、試験体から他方の被着体を剥離させる際に上記硬化物自体が破壊(凝集破壊)して、一方の被着体表面において凝集破壊した上記硬化物が多く残存するため、凝集破壊率が高くなる。また、湿気硬化性組成物の硬化物の密着性が低いほど、試験体から他方の被着体を剥離させる際に被着体と硬化物との界面で剥離(界面破壊)が生じ、一方の被着体表面において凝集破壊した上記硬化物が残存する割合が低下するため、凝集破壊率が低くなる。
【0103】
(簡易除去性)
コンクリートモルタル板(縦300mm×横1800mm×厚み20mm)の表面に、湿気硬化性組成物を平面長方形状(縦60mm、横150mm、厚さ5mm)に塗布し、23℃環境下にて1週間養生させ硬化物を得た。そして、スクレーパーにより硬化物をその長さ方向における一端から他端へ向かってコンクリートモルタル板から剥離し、全ての硬化物をコンクリートモルタル板から剥離することに要した時間t(秒)を測定し、下記基準に基づいて評価した。結果を表1の「簡易除去性」の欄に示す。
○・・・時間tが30秒以内であった。
△・・・時間tが30秒を超え且つ60秒以内であった。
×・・・時間tが60秒を超えた。
【0104】
本発明の湿気硬化性組成物は、雰囲気(空気)中の湿気により硬化して、各種被着体に対して優れた密着性を有すると共に、被着体からの簡易除去性を併せ持った硬化物を生成することができる。したがって、このような湿気硬化性組成物は、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤、感圧接着剤、シーラントなどの様々な用途に用いることができる。