(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082314
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】破砕装置及び破砕方法
(51)【国際特許分類】
B02C 18/14 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
B02C18/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193802
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】牧 和久
【テーマコード(参考)】
4D065
【Fターム(参考)】
4D065CA12
4D065CB01
4D065CC01
4D065CC08
4D065DD05
4D065EA08
4D065EB20
4D065EC02
4D065ED06
4D065ED39
4D065EE04
4D065EE07
4D065EE15
4D065EE16
4D065EE17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する際、破砕部の運転に支障を来すことなく、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することのできる破砕装置及び破砕方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、液体を吸収して膨潤する被処理物の破砕処理において、破砕部及び破砕部の運転を制御する制御部を備え、制御部により破砕部の運転中において液体を介在させないこと及び/又は破砕部の正転運転及び逆転運転を行うことができる破砕装置及び破砕方法を提供する。これにより、被処理物の膨潤を抑制し、破砕部の運転を円滑に進行することができる。また、薬品の供給を伴わない破砕部の運転が可能となり、破砕部の腐食による交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕装置であって、
前記被処理物を破砕する破砕部と、
前記破砕部の運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記破砕部の運転中、液体を介在させないことを特徴とする、破砕装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記破砕部の正転運転及び逆転運転を制御することを特徴とする、請求項1に記載の破砕装置。
【請求項3】
液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕装置であって、
前記被処理物を破砕する破砕部と、
前記破砕部の運転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記破砕部の正転運転及び逆転運転を制御することを特徴とする、破砕装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記破砕部の運転中、液体を介在させないことを特徴とする、請求項3に記載の破砕装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被処理物の投入を停止した後、前記破砕部の洗浄動作時に液体を導入することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被処理物の投入を停止した後、前記破砕部の運転を一定時間継続することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の破砕装置。
【請求項7】
液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕方法であって、
前記被処理物を破砕する破砕部を駆動する破砕工程と、
前記破砕工程時に、破砕部に対し液体を介在させない運転制御工程と、を備えることを特徴とする、破砕方法。
【請求項8】
液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕方法であって、
前記被処理物を破砕する破砕部を駆動する破砕工程と、
前記破砕工程時に、破砕部の正転運転及び逆転運転を制御する運転制御工程と、を備えることを特徴とする、破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を破砕するための破砕装置及び破砕方法に関するものである。更に詳しくは、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕するための破砕装置及び破砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭や工場から排出される廃棄物を処理する手段の一つとして、廃棄物を破砕する破砕装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転軸の周囲に設けられた複数の破砕刃(回転刃と固定刃)を備えた廃プラスチック類を破砕する破砕装置が記載されている。また、特許文献1には、この破砕装置に洗浄水を噴射する洗浄水の噴射装置を設け、破砕対象物の洗浄とともに、破砕衝撃による熱や火花の発生を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、破砕部として破砕刃を備える破砕装置において、破砕部の運転を円滑に行うため、洗浄水を供給することは知られている。
【0006】
一方、破砕対象物として、液体を吸収して膨潤するものが含まれることがある。このような破砕対象物を破砕処理する際、特許文献1に記載されるように、破砕時に液体を存在させると、破砕対象物が膨潤してしまい、破砕部の運転、特に破砕刃ののみ込み性に支障を来すことがある。ここで、「のみ込み」とは、破砕部の運転時における現象の一つを指す言葉であり、特に、複数軸を有し、破砕刃が対向するように設けられた破砕部の運転時における現象を指す言葉である。具体的には、破砕部の運転において、破砕対象物が破砕部に投入され、破砕刃の上に乗ると、破砕刃の回転によって刃先が破砕対象物に引っ掛かり、破砕対象物は対向して設けられた破砕刃の間に移動し、両側から破砕刃に挟まれて破砕される。この現象が、「のみ込み」と呼ばれるものである。また、破砕刃の刃先の大きさに対して破砕対象物が大きい、あるいは引っ掛かりにくい場合、のみ込みが起こらず、破砕対象物がその場に滞留し、破砕刃だけが回転している状態になることを「のみ込み性が悪い」と表現することがある。一般に、破砕刃ののみ込み性が悪くなることで、破砕部における破砕処理効率が低下するため、破砕刃ののみ込み性への影響は抑制する必要がある。
【0007】
破砕対象物の膨潤による破砕刃ののみ込み性への影響を抑制し、破砕刃ののみ込み性を改善するため、洗浄水中に薬品(酸、塩類等)を添加し、破砕対象物の膨潤を抑制することも行われている。しかし、薬品を用いることにより破砕刃など破砕部を構成する部品の腐食が進行し、破砕部の部品に係る交換頻度が高くなる等、ランニングコストが増大するという問題が生じる。
【0008】
本発明の課題は、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する際、破砕部の運転に支障を来すことなく、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することのできる破砕装置及び破砕方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕装置において、破砕部及び破砕部の運転を制御する制御部を備え、薬品を用いない破砕部の運転を行うことで、破砕部の腐食による交換頻度を低減させた破砕処理を行うことができることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の破砕装置及び破砕方法である。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の破砕装置は、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕装置であって、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の運転を制御する制御部と、を備え、制御部は、破砕部の運転中、液体を介在させないことを特徴とする。
この破砕装置によれば、破砕部の運転時に液体が存在しない状態とすることで、被処理物の膨潤を抑制した破砕処理が可能となる。また、薬品を用いる必要がないので、破砕部の腐食が抑制される。このため、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【0011】
また、本発明の破砕装置の一実施態様としては、上記制御部は、破砕部の正転運転及び逆転運転を制御するという特徴を有する。
この特徴によれば、破砕部の運転時に液体を用いず、かつ破砕部の運転について正転運転及び逆転運転の切り替えを行うことで、破砕した被処理物が破砕部上に残存することを抑制し、破砕部による破砕処理を円滑に進行させることが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の破砕装置の別の実施態様としては、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕装置であって、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の運転を制御する制御部と、を備え、制御部は、破砕部の正転運転及び逆転運転を制御するという特徴を有する。
この破砕装置によれば、破砕部の運転について正転運転及び逆転運転の切り替えを行うことで、破砕部上で被処理物が堆積することを抑制し、破砕部による破砕処理を円滑に進行させることが可能となる。また、破砕処理において特に薬品を必要としないため、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【0013】
また、本発明の破砕装置の一実施態様としては、上記制御部は、破砕部の運転中、液体を介在させないという特徴を有する。
この特徴によれば、破砕部の運転について正転運転及び逆転運転の切り替えを行い、かつ破砕部の運転時に液体が存在しない状態とすることで、被処理物の膨潤を抑制した破砕処理が可能となる。
【0014】
さらに、本発明の破砕装置の一実施態様としては、制御部は、被処理物の投入を停止した後、破砕部の洗浄動作時に液体を導入するという特徴を有する。
この特徴によれば、破砕部の洗浄動作時においては液体を導入し、破砕部を洗浄することで、洗浄効果を高めることができる。これにより、被処理物の破砕時には液体による膨潤などの影響を避け、破砕部の洗浄時には液体による高い洗浄効果を得ることが可能となることから、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減させることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の破砕装置の一実施態様としては、制御部は、被処理物の投入を停止した後、破砕部の運転を一定時間継続するという特徴を有する。
この特徴によれば、破砕後、破砕部上に破砕された被処理物が残存することを抑制し、破砕部の洗浄効果を高めることができる。また、次の破砕処理に円滑に移行することができる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の破砕方法は、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕方法であって、被処理物を破砕する破砕部を駆動する破砕工程と、破砕工程時に、破砕部に対し液体を介在させない運転制御工程と、を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、破砕部の運転時に液体が存在しない状態とすることで、被処理物の膨潤を抑制した破砕処理が可能となる。また、薬品を用いる必要がないので、破砕部の腐食が抑制される。このため、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するための本発明の破砕方法の別の態様としては、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する破砕方法であって、被処理物を破砕する破砕部を駆動する破砕工程と、破砕工程時に、破砕部の正転運転及び逆転運転を制御する運転制御工程と、を備えることを特徴とする。
この特徴によれば、破砕部の運転について正転運転及び逆転運転の切り替えを行うことで、破砕部上で被処理物が堆積することを抑制し、破砕部による破砕処理を円滑に進行させることが可能となる。また、破砕処理において特に薬品を必要としないため、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕する際、破砕部の運転に支障を来すことなく、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することのできる破砕装置及び破砕方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施態様の破砕装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の実施態様の破砕装置の運転制御を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施態様の破砕装置の他の運転制御を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施態様の破砕装置の他の運転制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る破砕装置及び破砕方法の実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係る破砕方法の説明については、本発明に係る破砕装置の運転制御に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する破砕装置及び破砕方法については、本発明に係る破砕装置及び破砕方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の破砕装置は、被処理物を破砕する装置であって、被処理物を破砕することができる破砕部を備えるものであればよい。本発明の破砕装置に係る破砕部の構造の一例としては、例えば、回転する破砕刃を有する構造として、一軸型破砕機のほか、二軸型破砕機、三軸型破砕機のような複数軸を備える破砕機や、同軸心型破砕機と呼ばれるものが挙げられる。本発明の破砕装置により、いずれの構造においても、破砕処理を円滑に進行させるとともに、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストの低減が可能となる。なお、以下の実施態様においては、破砕部として回転する破砕刃を有する二軸型破砕機の構造を有するものについて説明するが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明の破砕装置により破砕される被処理物は、液体を吸収して膨張する性質を有するものが含有されていればよく、特に限定されない。本発明の破砕対象となる被処理物の例としては、吸水性を有する繊維や吸水性高分子等を含むものが挙げられる。被処理物の具体的な製品の一例としては、繊維やSAP(高吸水性高分子)を含む衛生用品(紙おむつ、生理用品、ペット用シートなど)、廃水・廃油などを吸着する水油吸着用製品、綿など吸水性を有する繊維からなる布製品等が挙げられる。特に、本発明においては、SAPのように液体を吸収したときの膨張率が高いものを、被処理物として好適に用いることができる。
【0023】
[破砕装置]
図1は、本発明の実施態様における破砕装置の構造を示す概略説明図(側面から見た断面図)である。なお、
図1中の一点破線の矢印は、制御可能に接続されるものを示している。
【0024】
本発明の実施態様に係る破砕装置1は、被処理物Tを破砕するための破砕部10と、破砕部10の運転を制御する制御部20を備えている。
【0025】
図1に示すように、破砕部10はケーシング30内に収容されている。また、ケーシング30には、上部(図示上側)に被処理物Tが投入される投入口31が形成され、下部(図示下側)に被処理物を排出する排出口32が形成されている。
【0026】
(破砕部)
破砕部10は、被処理物Tを破砕するためのものである。本実施態様における破砕部10としては、回転する破砕刃を有する二軸型破砕機と呼ばれる構造を例示している。
本実施態様の破砕部10における回転軸の配置は、垂直型、水平型いずれの配置としてもよい。
【0027】
図1に示すように、破砕部10は、水平方向(紙面垂直方向)に延びる2つの回転軸11a、11bの周囲に、複数の破砕刃12a、12bを配設し、その刃同士が互いに噛合するように並設されている。また、破砕部10は、破砕刃12a、12bを回転駆動するための駆動部13を備えている。
なお、駆動部13としては、電動モータ、油圧モータ、水圧モータ、空気圧モータエンジン等が挙げられる。
【0028】
破砕部10は、駆動部13が駆動されることで、破砕刃12a、12bが被処理物Tを巻き込む方向に回転し、投入口31から投入される被処理物Tを、破砕刃12a、12bの間に挟み込んで破砕し、排出口32から排出する。
なお、
図1に示すように、本実施態様の破砕部10は、駆動部13が所定の出力で駆動し、破砕刃12aが右回りに回転し、破砕刃12bが左回りに回転することで、被処理物Tを破砕するものである。また、このときの破砕部10の運転状態を、破砕部10の正転運転と呼ぶ。一方、破砕刃12aが左回りに回転し、破砕刃12bが右回りに回転することを、破砕部10の逆転運転と呼ぶ。破砕部10の逆転運転により、破砕刃上における被処理物Tの堆積を抑制することが可能となる。
【0029】
以下、破砕部10の各構成について説明する。
【0030】
回転軸11a及び11bは、駆動部13の駆動動力が伝達されることにより回転する軸部材である。ここで、回転軸11a及び11bに対する駆動部13からの駆動動力の伝達手段は、特に限定されない。例えば、回転軸11aを駆動軸、回転軸11bを従動軸とし、駆動部13と回転軸11a(駆動軸)を接続し、回転軸11a(駆動軸)と回転軸11b(従動軸)をベルトや歯車などで連結することが挙げられる。このとき、駆動部13の駆動動力は回転軸11a(駆動軸)に伝達され、その後、回転軸11a(駆動軸)から回転軸11b(従動軸)に駆動動力が伝達される。また、他の例としては、回転軸11a及び11bをそれぞれ駆動部13に接続することが挙げられる。このとき、それぞれの回転軸11a及び11bに対し、駆動部13の駆動動力が直接伝達される。
なお、本実施態様における破砕装置1は、後述する制御部20により破砕部10の駆動を制御するものである。また、回転軸11a及び11bはそれぞれ駆動部13と接続し、回転軸ごとに独立した制御を可能としてもよい。
【0031】
また、回転軸11a及び11bは、それぞれ破砕刃12a及び12bを固定することができる構造であればよく、具体的な形状については特に限定されない。例えば、回転軸11a及び11bと、破砕刃12a及び12bとが嵌合可能となる構造を有するものなどが挙げられる。
【0032】
破砕刃12a及び12bは、被処理物Tの破砕を行う部材である。破砕刃12a及び12bは、それぞれ回転軸11a及び11bに対して複数枚が積層するように設けられている。この積層した破砕刃12a及び12bにより、被処理物Tの破砕・切断が行われる。
破砕刃12a及び12bの構造は特に限定されない。例えば、
図1に示すように、円周方向に凸状部分を有する構造物を複数設けるもののほか、円周方向に鋭角部分を有する構造物を複数設けるものなどが挙げられる。
【0033】
また、破砕刃12a及び12bを積層する際、積層する破砕刃の間にはスペーサーを設ける(不図示)。これにより、破砕刃を所定間隔で積層することが容易となる。なお、破砕刃とスペーサーは一体に設けられてもよく、別体としてもよい。ここでいう「一体」とは、1つのカッター部61と1つのスペーサー部62を組み合わせて一体化したもののほか、カッター部61とスペーサー部62を交互に複数枚積層した組み合わせを一体化したものや、複数のカッター部61と複数のスペーサー部62の組み合わせを一体化したもの等が挙げられる。これにより、例えば、破砕刃とスペーサーを一体とした場合、部品点数を少なくし、破砕刃の強度を増し、組み立てに係る作業性を高めることができる。一方、破砕刃とスペーサーを別体とした場合、破砕刃やスペーサーの仕様に変更が生じた場合や、いずれかに不具合などによる交換が必要となった場合に、交換に係る対応が容易となる。
【0034】
破砕刃12a及び12bの材質は、特に限定されないが、例えば、工具鋼、クロムモリブデン鋼やステンレス鋼等の金属材料、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素等のセラミックス材料等が挙げられる。強度が高く破損しにくいという観点から、工具鋼、クロムモリブデン鋼やステンレス鋼等の金属材料を用いることが好ましい。
【0035】
また、破砕部10には、被処理物Tの破砕に直接関わるもの以外の構造を設けるものとしてもよい。例えば、
図1に示すように、破砕刃12a及び12bを洗浄するための洗浄部14を設けるものとすることが挙げられる。これにより、破砕刃12a及び12b上に被処理物Tの破砕物が残存することを抑制して、破砕刃12a及び12bの破砕性能を維持し、破砕処理を円滑に進行することが可能となる。
【0036】
図1に示すように、洗浄部14としては、液体を貯留する貯留部14aと、液体を破砕刃12a及び12bに向けて供給する供給部14bを備えるものが挙げられる。
貯留部14aに貯留される液体(洗浄水)は、破砕刃12a及び12bの表面に付着した被処理物Tの破砕物や被処理物T由来の夾雑物(異物)などを排出口32から排出することができるものであればよく、特に限定されない。洗浄水としては、例えば、天然水や水道水のほか、他の処理施設から排出された処理水などが挙げられる。また、本実施態様における洗浄水は、特に薬品添加を必要としないが、薬品添加を排除するものではない。例えば、高吸水性高分子を不活性化する薬品(酸や塩類など)を添加した洗浄水を用いることが挙げられる。
また、供給部14bは、後述する制御部20により液体の供給・停止が可能となる流量制御機構(制御弁など)を設けるものとする。これにより、洗浄部14からの液体供給のタイミングについて制御部20で制御することが可能となる。
【0037】
(制御部)
制御部20は、破砕部10の運転に係る制御を行うものである。
制御部20は、破砕部10に対し、配線等により直接接続されるものであってもよく、無線等の通信技術を介して間接的に接続されるものであってもよい。
【0038】
本実施態様の制御部20は、破砕時に被処理物Tが液体を吸収して膨潤することを抑制するとともに、破砕処理を円滑に進行するために、破砕部10の運転制御を行うものである。
制御部20により制御する工程としては、破砕部10における破砕工程や液体の介在に係る工程が挙げられる。ここで、液体の介在に係る工程とは、破砕部10における液体の存在有無に係る操作を行う工程を指し、例えば、破砕部10に対して液体を導入する工程などが挙げられる。また、制御部20の制御対象としては、駆動部13や洗浄部14が挙げられる。
【0039】
破砕工程の制御とは、破砕部10の破砕刃12a、12bの駆動・停止、減速・加速、回転方向の制御を指すものである。特に、破砕部10の破砕刃12a及び12bの回転方向の制御を指し、より具体的には、破砕部10の正転運転及び逆転運転の切り替えを行うことが挙げられる。
破砕工程を制御する手段としては、特に限定されない。例えば、オンオフのスイッチ機構、インバータ等により、破砕部10の駆動部13の出力を制御する手段が挙げられる。
【0040】
制御部20による破砕部10の正転運転及び逆転運転の切り替えに係るタイミングについては特に限定されない。例えば、一定時間ごとに破砕部10の正転運転及び逆転運転の切り替えを行うものとしてもよく、正転運転及び逆転運転の切り替えを判断する判断部を設けるものとしてもよい。
判断部としては、破砕部10の駆動部13の出力増減を検出する手段や、破砕部10における過負荷を検出する手段を備えるものが挙げられる。そして、駆動部13の出力変化や過負荷検知によって正転運転及び逆転運転の切り替えに係る判断を行い、破砕部10の駆動部13に対する制御を行う。これにより、破砕部10の運転状態に応じ、正転運転及び逆転運転の切り替えを適切なタイミングで行うことが可能となる。
【0041】
また、液体の介在に係る工程の制御とは、洗浄部14からの液体の供給に係る制御だけではなく、破砕装置1の系外から導入される液体の導入に係る制御を指すものである。
液体の供給に係る工程を制御する手段としては、特に限定されない。例えば、洗浄部14の供給部14bにおける液体の供給・停止を行う手段や、破砕刃12a及び12bの回転駆動により発生する熱などを冷却するために系外から導入される冷却水の供給・停止を行う手段などが挙げられる。
【0042】
本実施態様における制御部20は、破砕工程の制御及び液体の介在に係る工程の制御のうち、いずれか片方を実行するものであってもよく、両方を実行するものであってもよい。
例えば、液体の介在に係る工程を制御することにより、被処理物Tの膨潤を抑制した破砕処理が可能となる。このため、破砕工程の制御を行うことなく、従来よりも破砕処理を円滑に進行することができる。
また、破砕装置1に投入される被処理物Tの投入量が少ない場合、破砕工程の制御のみで、破砕処理を円滑に進行することが可能となる。
さらに、破砕工程の制御及び液体の介在に係る工程の制御の両方を行うことが特に好ましい。これにより、破砕時に被処理物Tが液体を吸収して膨潤することを抑制するとともに、破砕処理をより一層円滑に進行することが可能となる。
【0043】
なお、制御部20に係る構成は、制御装置として独立したものとしてもよい。この制御装置は、既設の破砕装置に適用することができる。これにより、破砕装置全体を更新することなく、簡素な取り付け作業によって、本発明の破砕装置及び破砕方法を提供することができる。
【0044】
(破砕装置の運転制御)
以下、本発明に係る実施態様として、制御部20による破砕部10の運転制御について、例示して説明する。なお、各運転制御における説明及びフローチャートについては、実施態様の例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0045】
まず、破砕部10における液体の介在に係る工程(液体の導入に係る工程)の運転制御について、
図2を参照して説明する。なお、
図2は、本運転制御のフローチャートを示している。
【0046】
投入口31を介し、破砕部10に被処理物Tが投入されるとともに、破砕部10の駆動部13が駆動し、破砕刃12a及び12bが正転運転する。なお、被処理物Tの投入と駆動部13の駆動開始のタイミングは、同じとしてもよく、どちらかを先に行うものとしてもよい。
正転運転中、制御部20は、洗浄部14からの液体の供給や系外からの液体の導入を全て停止する。これにより、被処理物Tは液体を吸収して膨潤することがなく、破砕刃12a及び12bの回転駆動(のみ込み性)に影響を与えることなく破砕処理が進行する。
そして、一定時間の正転運転後、又は一定量の被処理物Tの投入後に、被処理物Tの投入を停止する。
【0047】
また、投入した被処理物Tが排出口32から排出され、いわゆるバッチ処理が完了した時点で、制御部20は、洗浄部14からの液体の供給を開始し、破砕部10の洗浄動作を行う。
このとき、破砕部10の運転は停止するものとしてもよいが、運転を継続することが好ましい。これにより、破砕部10の洗浄効果を高めることが可能となる。また、次の破砕処理に円滑に移行することができる。
そして、一定時間経過後、破砕部10の運転を停止し、洗浄動作を完了させる。
さらに、一定時間が経過した後、次の破砕処理を開始する。
【0048】
以上のように、破砕部10の運転中に、液体の導入に係る工程を制御することで、破砕時に液体が入らない状態とすることができ、被処理物Tの膨潤を抑制した破砕処理が可能となる。また、薬品を用いる必要がないので、破砕部10の腐食が抑制される。このため、破砕部10の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【0049】
また、破砕部10における破砕工程の運転制御について、
図3を参照して説明する。なお、
図3は、本運転制御のフローチャートを示している。
【0050】
投入口31を介し、破砕部10に被処理物Tが投入されるとともに、破砕部10の駆動部13が駆動し、破砕刃12a及び12bが正転運転する。なお、被処理物Tの投入と駆動部13の駆動開始のタイミングは、同じとしてもよく、どちらかを先に行うものとしてもよい。
制御部20は、正転運転開始後、一定時間ごと、あるいは判断部による判断結果に基づき、正転運転から逆転運転に切り替える。正転運転から逆転運転に切り替えた後、逆転運転を一定時間あるいは一定回数行う。この切り替え動作は、バッチ処理中に1回のみ行うものとしてもよいが、
図3に示すように、所定時間内で複数回繰り返すことが好ましい。これにより、被処理物Tは破砕刃12a及び12b上、特に破砕刃12a及び12bの噛合箇所において被処理物Tが堆積することを抑制し、破砕刃12a及び12bの回転駆動(のみ込み性)に影響を与えることなく破砕処理が進行する。
そして、一定時間の運転後、又は一定量の被処理物Tの投入後に、被処理物Tの投入を停止する。さらに、投入した被処理物Tが排出口32から排出され、バッチ処理が完了する。
【0051】
また、バッチ処理完了後、破砕部10の運転は停止するものとしてもよいが、運転を継続し、洗浄動作を行うことが好ましい。特に、正転運転及び逆転運転の切り替えについても継続して行うことが好ましい。これにより、破砕部10上に被処理物Tが残存することを抑制し、次の破砕処理に円滑に移行することができる。
なお、制御部20は、バッチ処理が完了した時点で、洗浄部14からの液体の供給を開始するものとしてもよい。これにより、破砕部10の洗浄効果を高めることが可能となる。
さらに、
図3では図示を省略しているが、一定時間経過後、破砕部10の運転を停止して、洗浄動作を完了させる。
そして、一定時間経過後、次の破砕処理を開始する。
【0052】
以上のように、破砕部10の破砕工程を制御し、破砕部10の運転について正転運転及び逆転運転の切り替えを行うことで、破砕部上で被処理物が堆積することを抑制し、破砕部による破砕処理を円滑に進行させることが可能となる。また、破砕処理において特に薬品を必要としないため、破砕部の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【0053】
さらに、破砕部10における破砕工程及び液体の介在に係る工程の両方に対する運転制御について、
図4を参照して説明する。なお、
図4は、本運転制御のフローチャートを示している。
【0054】
投入口31を介し、破砕部10に被処理物Tが投入されるとともに、破砕部10の駆動部13が駆動し、破砕刃12a及び12bが正転運転する。なお、被処理物Tの投入と駆動部13の駆動開始のタイミングは、同じとしてもよく、どちらかを先に行うものとしてもよい。
正転運転開始後、制御部20は、洗浄部14からの液体の供給や系外からの液体の導入を全て停止する。また、制御部20は、正転運転開始後、一定時間ごと、あるいは判断部による判断結果に基づき、正転運転から逆転運転に切り替える。正転運転から逆転運転に切り替えた後、逆転運転を一定時間あるいは一定回数行う。この切り替え動作は、バッチ処理中に1回のみ行うものとしてもよいが、
図4に示すように、複数回繰り返すことが好ましい。この間、制御部20は液体の導入を停止し続ける。これにより、被処理物Tは破砕時に液体を吸収して膨潤することがなく、かつ破砕刃12a及び12b上、特に破砕刃12a及び12bの噛合箇所において被処理物Tが堆積することを抑制することができる。このため、破砕刃12a及び12bの回転駆動(のみ込み性)に影響を与えることなく破砕処理が円滑に進行する。
そして、一定量の被処理物Tの投入後、又は、一定時間の運転後に、被処理物Tの投入を停止する。
【0055】
さらに、投入した被処理物Tが排出口32から排出され、いわゆるバッチ処理が完了した時点で、制御部20は、洗浄部14からの液体の供給を開始し、破砕部10の洗浄動作を行う。
このとき、破砕部10の運転は停止するものとしてもよいが、運転を継続することが好ましい。特に、正転運転及び逆転運転の切り替えについても継続して行うことが好ましい。これにより、破砕部10の洗浄効果を高めることが可能となる。また、次の破砕処理に円滑に移行することができる。
なお、
図4では図示を省略しているが、一定時間経過後、破砕部10の運転を停止して、洗浄動作を完了させる。
そして、一定時間経過後、次の破砕処理を開始する。
【0056】
以上のように、破砕部10の破砕工程及び液体の導入に係る工程の両方に対する運転制御を行うことで、破砕した被処理物Tが破砕部10上に残存することを抑制し、破砕部10による破砕処理を円滑に進行させることが可能となる。また、薬品を用いる必要がないので、破砕部10の腐食が抑制される。このため、破砕部10の交換頻度を下げ、ランニングコストを低減することができる。
【0057】
図2~
図4に例示したフローチャートに基づく制御部20による破砕部10の運転制御については、制御プログラムとして制御部20により全て自動で実行されるものであってもよく、作業員の手動操作を含むものであってもよい。なお、作業員の労力を低減する観点から、制御プログラムによる自動制御とすることがより好ましい。
【0058】
なお、上述した実施態様は破砕装置及び破砕方法の一例を示すものである。本発明に係る破砕装置及び破砕方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る破砕装置及び破砕方法を変形してもよい。
【0059】
例えば、本実施態様の破砕装置において、破砕部の破砕刃に付着した付着物の掻き取りを行うための構造を設けるものとしてもよい。このような構造の一例としては、破砕刃あるいはスペーサーに対向するようにスクレーパーを設けるものが挙げられる。これにより、制御部の運転制御と併せて、破砕部の運転を円滑に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の破砕装置及び破砕方法は、液体を吸収して膨潤する被処理物を破砕処理するために利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 破砕装置、10 破砕部、11a,11b 回転軸、12a,12b 破砕刃、13 駆動部、14 洗浄部、14a 貯留部、14b 供給部、20 制御部、30 ケーシング、31 投入口、32排出口、T 被処理物