(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082315
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
G05D 16/06 20060101AFI20220525BHJP
F16K 17/30 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G05D16/06 R
F16K17/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193804
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】391060029
【氏名又は名称】株式会社ダンレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095245
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】岩元 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 高弘
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA04
3H060BB10
3H060CC03
3H060DC05
3H060DC12
3H060DD02
5H316BB08
5H316DD01
5H316DD02
5H316EE12
5H316GG01
5H316JJ01
5H316KK02
5H316KK05
(57)【要約】
【課題】 一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、逃がし弁機構の開弁圧のばらつきが抑制された減圧弁を提供する。
【解決手段】 一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、逃がし弁機構が備えるバネの付勢力調整機構を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、ピストンヘッドの他端部に一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、更に第1バネ付勢力調整機構を備えることを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
第2バネ付勢力調整機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
第1バネ付勢力調整機構は、第1バネに係合する調節ネジであることを特徴とする請求項1又は2に記載の減圧弁。
【請求項4】
工具を用いて調節ネジを回動駆動して第1バネ付勢力を調整することを特徴とする請求項3に記載の減圧弁。
【請求項5】
手動で調節ネジを回動駆動して第1バネ付勢力を調整することを特徴とする請求項3に記載の減圧弁。
【請求項6】
調節ネジの緩み止め機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の減圧弁。
【請求項7】
第1バネは円錐台形状のコイルバネであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、ピストンヘッドの他端部に一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成した減圧弁が、特許文献1に開示されている。
特許文献1の減圧弁には、減圧弁機構と逃し弁機構とを一体化できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された減圧弁において、減圧弁機構の作動時には、ピストンヘッドの他端部に配設された第2弁体又は第2弁座とその周囲のピストンヘッド他端部が、筒体の一端部に配設された第2弁座又は第2弁体とその周囲の筒体一端部に、第1バネの付勢力で当接してピストンヘッドと筒体とが一体となって往復動するので、第1バネと第2バネの付勢力の合力によって減圧弁機構の設定圧が決定される。
二次側通路の内圧である二次圧が減圧弁機構の閉弁圧まで上昇すると、第1弁体が第1弁座に当接して減圧弁機構は閉弁状態になる。この時、第2弁体とその周囲のピストンヘッド他端部と、第2弁座とその周囲の筒体一端部、との当接部には減圧弁機構閉弁時の第1バネの付勢力から第1弁体と第1弁座の当接部に働く押圧力を差し引いた押圧力が作用している。
二次圧が更に上昇して、第2弁体とその周囲のピストンヘッド他端部と、第2弁座とその周囲の筒体一端部、との当接部に働く押圧力が零になると、逃がし弁機構が開弁する。従って、逃し弁機構の開弁圧は、減圧弁機構閉弁時の第1バネの付勢力から第1弁体と第1弁座の当接部に働く押圧力を差し引いた押圧力により決定される。
第1弁体の形状や物性、第1弁座の形状、ピストンヘッドとシリンダの同軸性等には製品毎のばらつきがあるので、減圧弁閉弁時の第1バネの付勢力や第1弁体と第1弁座の当接部に働く押圧力がばらつき、ひいては逃がし弁機構の開弁圧が製品毎にばらつく。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、製品毎の逃がし弁機構の開弁圧のばらつきが抑制された減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては、一次側通路と二次側通路との境界部の流路面積を可変調整する止水機能を有する減圧弁機構と、二次側通路の内圧に応じて開閉する逃し弁機構とを備え、減圧弁機構と逃し弁機構とは中心軸線を共有するリフト弁機構である減圧弁であって、ボディと、ボディの一部によって形成されたシリンダと、シリンダ内で往復摺動するピストンヘッドと、ピストンヘッドとシリンダ内周面との摺接部をシールするシール部材と、ピストンヘッドの一端部から延びてシリンダの一端部からシリンダ外の二次側通路へ突出するピストンロッドと、シリンダの前記一端部が形成する第1弁座と、ピストンロッドのシリンダ外へ突出した一端部に固定されて第1弁座と対峙する第1弁体と、シリンダ周壁のピストンロッドに対峙する部位に形成された開口と、ピストンヘッドを閉弁方向へ付勢する第1バネと、ピストンヘッドの他端部に一端部が対峙する筒体と、前記筒体に中心部が固定されたダイアフラムと、ボディの一部により形成されダイアフラムに対峙しダイアフラムとシリンダとピストンヘッドと協働して二次側通路に連通する感圧室を形成するダイアフラムケースと、ダイアフラムを感圧室側へ押圧する第2バネと、第2バネと前記筒体の他端部とを収容すると共にダイアフラムケースと協働してダイアフラムの周縁部を挟持するバネケースと、前記筒体の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体と、ピストンヘッドの他端部に配設され前記筒体の前記一端部に配設された第2弁座又は第2弁体に対峙する第2弁体又は第2弁座を備え、第1弁体と第1弁座とが減圧弁機構の弁体と弁座とを形成し、第2弁座と第2弁体とが逃し弁機構の弁座と弁体を形成し、更に第1バネ付勢力調整機構を備えることを特徴とする減圧弁を提供する。
第1バネ付勢力調整機構を用いて第1バネの付勢力を製品毎に調整することにより、逃し弁機構開弁圧を直接調整し、逃し弁機構開弁圧の製品毎のばらつきを抑制することができる。第1バネの付勢力の調整量は小さく、また第2バネの付勢力は第1バネの付勢力に比べて遥かに大きいので、第1バネの付勢力の調整による第2バネの付勢力への影響は微少であり、減圧弁の設定圧への影響は微少である。
本発明の好ましい態様においては、減圧弁は、第2バネ付勢力調整機構を備える。
第2バネ付勢力調整機構を用いて第2バネの付勢力を微調整して、第1バネと第2バネの付勢力の合力に対する第1バネの付勢力の調整による影響を除去することができる。
本発明の好ましい態様においては、第1バネ付勢力調整機構は、第1バネに係合する調節ネジである。
調節ネジを進退させて第1バネの付勢力を調整することができる。
本発明の好ましい態様においては、工具を用いて調節ネジを回動駆動して第1バネ付勢力を調整する。
本発明の好ましい態様においては、手動で調節ネジを回動駆動して第1バネ付勢力を調整する
工具を用いて、或いは手動で調節ネジを回動駆動できる。
本発明の好ましい態様においては、減圧弁は調節ネジの緩み止め機構を備える。
調節ネジの緩みを防止し、ひいては逃し弁開弁圧の経時変化を防止できる。
本発明の好ましい態様においては、第1バネは円錐台形状のコイルバネである。
第1バネを、座金に当接する一端部を他端部に比べて大径にした円錐台形状のコイルバネとすることにより、座金と第1バネとの当接面積が増加して、第1バネの作動が安定する
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施例に係る減圧弁の減圧弁機構開弁時且つ逃し弁機構閉弁時の断面図である。(a)は全体断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【
図2】本発明の実施例に係る減圧弁の減圧弁機構閉弁時且つ逃し弁機構閉弁時の断面図である。(a)は全体断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【
図3】本発明の実施例に係る減圧弁の減圧弁機構閉弁時且つ逃し弁機構開弁時の断面図である。(a)は全体断面図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【
図4】本発明の実施例に係る減圧弁のピストンヘッドに係合する逃し弁機構の構成部材である第2弁体の構造図である。(a)は上面図であり、(b)は(a)のb-b断面図であり、(c)は(a)のc-c矢視図であり、(d)は(a)のd-d矢視図であり、(e)は(c)のe-e断面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る減圧弁のピストンヘッドの構造図である。(a)は逃し弁機構の構成部材が係合する側の端面図であり、(b)は(a)のb-b矢視図であり、(c)は(a)のc-c断面図であり、(d)は(a)のd-d断面図であり、(e)は(a)のe-e断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る減圧弁の逃し弁機構を構成する第2弁体のピストンヘッドへの組み付け手順を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係る減圧弁の部分拡大断面図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係る減圧弁の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施例に係る減圧弁を説明する。
図1に示すように、減圧弁1はボディ2を備えている。ボディ2は、一次側通路2aと二次側通路2bとが内部に形成されると共に、シリンダ2cとダイアフラムケース2dとを有している。
減圧弁1は、シリンダ2c内で往復摺動するピストンヘッド3と、ピストンヘッド3とシリンダ2c内周面との摺接部をシールするオーリング4と、ピストンヘッド3の一端部から延びてシリンダ2cの一端部からシリンダ2c外の二次側通路2bへ突出するピストンロッド5と、シリンダ2cの前記一端部が形成する第1弁座6と、ピストンロッド5のシリンダ2c外へ突出した一端部に固定されて第1弁座6と対峙する第1弁体7と、第1弁体7に係合してピストンヘッド3を閉弁方向へ付勢するコイルバネである第1バネ8と、座金8a'を介して第1バネに係合する第1バネ調節ネジ8aと、ボディ2の二次側通路2bを形成する部位に水密に圧入固定されて第1弁体7、第1バネ8、座金8a'、第1バネ調節ネジ8aを収容すると共に第1バネ調節ネジ8aと螺合するバネ押さえ9と、シリンダ2c周壁のピストンロッド5に対峙する部位に形成された開口10と、ピストンヘッド3の他端部に一端部が対峙する筒体11と、筒体11の前記一端部の近傍部に中心部が固定されたダイアフラム12と、ボディ2の一部により形成されダイアフラム12に対峙しダイアフラム12とシリンダ2cとピストンヘッド3と協働して二次側通路2bに連通する感圧室13を形成する前述のダイアフラムケース2dと、ダイアフラム12を感圧室13側へ押圧するコイルバネである第2バネ14と、
座金14a'に螺合し、座金14a'を介して第2バネ14に係合する第2バネ調節ネジ14aと、第2バネ14と座金14a'と第2バネ調節ネジ14aと筒体11の長手方向中央部と他端部とを収容し、第2バネ調節ネジ14aが中心軸線回りに回転可能に且つ水密に且つ抜け止めされて挿通されると共にダイアフラムケース2dと協働してダイアフラム12の周縁部を挟持するバネケース15と、筒体11の前記一端部に配設された第2弁座16と、ピストンヘッド3の他端部に配設された第2弁体18、より具体的には第3バネ17を介してピストンヘッド3の他端部に係合し第2弁座16に対峙する第2弁体18と、を備えている。
第1バネ8のバネ定数は第2バネ14のバネ定数よりも小さな値に設定され、第3バネ17のバネ定数は第1バネ8のバネ定数よりも小さな値に設定されている。
【0008】
筒体11は、感圧室13内に配設された一端部を有する第1部分11aと、バネケース15内に配設されて第1部分11aに連結固定された第2部分11bとを備えている。第1部分11aと第2部分11bとが協働してダイアフラム12の中心部を挟持している。第1部分11aの感圧室13内に配設された一端部には前述のごとく第2弁座16が配設されると共に、前記一端部はシリンダ2cに往復摺動可能に外嵌合しており、当該嵌合部位に複数の開口11a’が形成されている。第2部分11bの第1部分11a寄りの端部は第2バネ14用のバネ押さえを形成し、第1部分11aから離隔した端部はバネケースの筒部15aに往復摺動可能に内嵌合している。
バネケース15から排水筒19が延びている。
【0009】
シリンダ2c、ピストンヘッド3、第1弁座6、第1弁体7、第1バネ8、ダイアフラム12、第2バネ14等によって減圧弁機構αが形成されている。
筒体11、第2弁座16、第2弁体18、第3バネ17、ピストンヘッド3、第1バネ8等により逃し弁機構βが形成されている。減圧弁機構αと逃し弁機構βとは中心軸線Xを共有するリフト弁機構である
【0010】
図4に示すように、第2弁体18は、有底筒状のケース18aとケース18aに嵌合固定されたシール部材18bとを有している。ケース18aの開放端部の外周側面に径方向への環状膨出部18cが形成されている。互いに周方向に180度の間隔を隔ててケース18aの外周側面から一対の腕部18dが径方向外方へ延びている。ケース18aの底壁に第3バネ17の一端部を収容する環状溝18eが形成されている。
図5に示すように、ピストンヘッド3の他端部に、第2弁体18を収容する大径凹部3aと、大径凹部3aに連続して第3バネ17の他端部を収容する小径凹部3bとが形成されている。大径凹部3aには、中心軸線Xを間に挟んで対向してピストンヘッド3の他端から延びる一対の第1縦溝3a
1と、縦溝3a
1の終端部から延びる周溝3a
2と、周溝3a
2の途上で中心軸線Xを間に挟んで対向し周溝3a
2からピストンヘッド3の他端へ向けて延びる一対の第2縦溝3a
3とが形成されている。第2縦溝3a
3はピストンヘッド3の他端に達することなく終端している。周溝3a
2の一部は大径凹部3aの周壁を貫通してスリットを形成している。
第2弁体18の腕部18dと、一端部が第2弁体18に係合し他端部がピストンヘッド3の小径凹部3bに係合する第3バネ17と、ピストンヘッド3の第1縦溝3a
1、周溝3a
2、第2縦溝3a
3とで、第2弁体18とピストンヘッド3他端部との間の押して捩じるバヨネット式接続機構が構成されている。
【0011】
第2弁体18をピストンヘッド3の他端部に取り付ける際には、
図6(a)に示すように小径凹部3bに第3バネ17を挿入し、一対の腕部18dを一対の第1縦溝3a
1に正対させ、環状膨出部18cを大径凹部3aの周側面に摺接させつつ、第2弁体18を大径凹部3aに挿入し、環状溝18eを第3バネ17に当接させ、第3バネ17を押圧しつつ更に第2弁体18を大径凹部3aに押し込み、腕部18dが周溝3a
2の一方の側壁に当接すると押し込みを止め、
図6(b)に示すように、第2弁体18を捩じって周溝3a
2に沿って中止軸線X周りに回転させる。回転時には、第2弁体18は第3バネ17の付勢力を受け、腕部18dが周溝3a
2の他方の側壁に押しつけられる。第2弁体18が回転を続けて
図6(c)に示すように腕部18dが第2縦溝3a
3に対峙する回転位置に到達すると、第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体18は、
図6(d)に示すように、腕部18dを第2縦溝3a
3に係合させつつ、ピストンヘッド3の他端へ向けて移動し、腕部18dが第2縦溝3a
3の終端部に当接して停止する。前記手順で第2弁体18がピストンヘッド3の他端部に取り付けられる。
【0012】
減圧弁1の作動を説明する。
二次側通路2bに図示しない配管を介して接続された図示しない吐水装置が閉鎖され、前記配管内の水流が停止している時は、
図2に示すように、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは閉弁している。逃し弁機構βも二次側通路2bの内圧(以下二次圧と呼ぶ)が開弁圧に達していないかぎり、第1バネ8の付勢力を受けた第2弁体18のシール部材18bが第2弁座16に当接して閉弁している。第2弁体18のシール部材18bが第2弁座16に当接して逃し弁機構βが閉弁している時、第2弁体18の腕部18dは第2縦溝3a
3の延在途上に在り第2縦溝3a
3の終端部には当接していない。
二次側通路2bと感圧室13とは連通しているので、二次圧がダイアフラム12に印加される。一次圧はオーリング4がピストンヘッド3とシリンダ2cとの摺接部をシールすることにより、感圧室13には伝達されず、ダイアフラム12には印加されない。
【0013】
前記吐水装置が開放されると、二次圧が低下し、ダイアフラム12に印加される二次圧による閉弁方向の付勢力が減少して、
図1に示すように、第1弁体7が第1弁座6から離れ、減圧弁機構αは開弁する。第1弁体7と第1弁座6との間に形成された環状隙間を水道水が流れる際に圧力損失が発生し、水道水は減圧される。
減圧弁機構αの作動時には、ピストンヘッド3の他端部に配設された第2弁体18とその周囲のピストンヘッド3他端部が、筒体11の一端部に配設された第2弁座16とその周囲の筒体11一端部に、第1バネ8の付勢力で当接してピストンヘッド3と筒体11とが一体となって往復動するので、第1バネ8と第2バネ14の付勢力の合力によって減圧弁機構αの設定圧が決定される。第3バネ17は内部バネであり、一体化したピストンヘッド3と筒体11に外力を及ぼさないので、減圧弁機構の設定圧には影響を与えない。
減圧弁機構αの作動中に、何らかの原因で二次圧が上昇すると、第2バネ14の付勢力に抗してダイアフラム12が第1弁座6から遠ざかる方向へ弾性変形し、ダイアフラム12に固定された筒体11がピストンヘッド3から遠ざかる方向へ移動し、第1バネ8の付勢力を受けたピストンヘッド3が、ひいては第1弁体7が筒体11に追随して移動し、第1弁体7が第1弁座6に接近する。この結果、第1弁座7と第1弁体6との間の環状隙間が狭まり、前記環状隙間を水道水が通過する際の圧力損失が増加する。この結果、二次圧が下降する。従って、減圧弁機構αにより、二次圧は所定の設定圧に維持される。
【0014】
減圧弁機構αの作動中に、二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧まで上昇すると、第1弁体7が第1弁座6に当接して減圧弁機構αは
図2の閉弁状態になる。この時、第2弁体18とその周囲のピストンヘッド3他端部と、第2弁座16とその周囲の筒体11一端部、との当接部には減圧弁機構α閉弁時の第1バネ8の付勢力から第1弁体7と第1弁座6の当接部に働く押圧力を差し引いた押圧力が作用している。
二次圧が減圧弁機構αの閉弁圧を超えて更に上昇すると、ダイアフラム12が第1弁座6から遠ざかる方向へ更に弾性変形し、筒体11がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動する。筒体11がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動すると、第2弁体18周囲のピストンヘッド3他端部と第2弁座16周囲の筒体11一端部との当接部に働いていた押圧力が零になる一方、第1バネ8の残存付勢力である第3バネ17の付勢力を受けた第2弁体18は、第2弁座16との間の押圧力を減少させつつ第2弁座16との当接状態を維持して筒体11の移動に追随する。弱い第3バネ17に支持された第2弁体18が第2弁座16に当接することにより、筒体11とピストンヘッド3の同軸性のばらつき等による第2弁体18と第2弁座16の片当たりが防止され、弁機構βの閉弁状態が支障なく維持される。その後、腕部18dが第2縦溝3a
3の終端部に当接して第2弁体18の逃し弁機構βの閉弁方向の移動が規制される。
【0015】
二次圧が更に上昇すると、筒体11がピストンヘッド3から更に遠ざかる方向へ移動し、第1バネ8の残存付勢力である第3バネ17の付勢力が零になり、第2弁体18と第2弁座16との間の押圧力が零になり、第2弁座16が第2弁体18のシール部材18bから離れ、逃し弁機構βが開弁し、感圧室13が、ひいては二次側通路2bが、筒状部材11の第1部分11aに形成された開口11a’と、第2弁座16と第2弁体18の間の隙間と、筒状部材11の第1部分11aと第2部分11bの中央穴と、バネケース15の内部空間と、排水筒19と、を介して外部環境に連通する。この結果、
図3(b)に多数の矢印で示すように、感圧室13内、ひいては二次側通路2b内の水がバネケース15の内部空間へ流入し、排水筒19を介して外部環境に放出され、二次圧が低下して、二次側通路2bに接続された水回り機器の損傷が防止される。
【0016】
上記説明から分かるように、逃し弁機構βの開弁圧は、減圧弁機構α閉弁時の第1バネ8の付勢力から第1弁体7と第1弁座6の当接部に働く押圧力を差し引いた押圧力によって決定される。第1弁体7の形状や物性、第1弁座6の形状、ピストンヘッド3とシリンダ2cの同軸性等には製品毎のばらつきがあるので、減圧弁機構αの閉弁時の第1バネ8の付勢力や第1弁体7と第1弁座6の当接部に働く押圧力がばらつき、ひいては逃がし弁機構βの開弁圧が製品毎にばらつく可能性がある。然しながら、本実施例に係る減圧弁1においては、工具を用いて第1バネ調節ネジ8aを回動駆動することにより第1バネ8の付勢力を製品毎に調整して、逃がし弁機構βの開弁圧を直接調整できるので、逃がし弁機構βの開弁圧の製品毎のばらつきを抑制することができる。
第1バネ8の付勢力の調整量は小さく、また第2バネ14の付勢力は第1バネ8の付勢力に比べて遥かに大きいので、第1バネ8と第2バネ14の付勢力の合力に対する第1バネ8の付勢力の調整による影響は微少であり、減圧弁機構αの設定圧への影響は微少である。
尚、第2バネ調節ネジ14aは、第2バネ14の付勢力を調整して減圧弁機構αの設定圧を調整するためのものであるが、第2バネ調節ネジ14aを用いて第1バネ14の付勢力を微調整して、第1バネ8と第2バネ14の付勢力の合力に対する第1バネ8の付勢力の調整による影響を除去しても良い。
【0017】
図7に示すように、第1バネ調節ネジ8aにハンドル8bとロックナット8cとを取り付け、ハンドル8bを手動で回動駆動して第1バネ8の付勢力を調整し、ロックナット8cを用いて第1バネ調節ネジ8aをロックしても良い。ハンドル8bを利用することにより第1バネ調節ネジ8aの回動駆動が容易になり、ロックナット8cを利用することにより、第1バネ調節ネジ8aの緩みを防止でき、ひいては逃し弁機構βの開弁圧の経時変化を防止できる。
上記実施例では
図1に示すように、第1バネ8を円筒形状のコイルバネとしたが、第1バネ8を、
図8に示すように、座金8a'に当接する一端部が弁体7に当接する他端部に比べて大径に形成され円錐台形状のコイルバネとしても良い。座金8a'との当接面積が増加して、第1バネ8の作動が安定する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、逃し弁機構を備える減圧弁に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 減圧弁
2 ボディ
2a 一次側通路
2b 二次側通路
2c シリンダ
2d ダイアフラムケース
3 ピストンヘッド
6 第1弁座
7 第1弁体
8 第1バネ
8a 第1バネ調節ネジ
8b ハンドル
8c ロックナット
11 筒体
12 ダイアフラム
13 感圧室
14 第2バネ
14a 第2バネ調節ネジ
15 バネケース
16 第2弁座
17 第3バネ
18 第2弁体
19 排水筒
α 減圧弁機構
β 逃し弁機構