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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082330
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】手動工具用治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/00 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
B25B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193824
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】永峯 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田島 辰吉
(57)【要約】
【課題】ハンマーによる打撃を伴うボルト・ナットの締め付け・緩め作業を安全且つ効率良く行うことができ、汎用性にも優れた手動工具用治具を提供する。
【解決手段】手動工具用治具100は、基端部10b側に握持部11を有する棒状の本体部10と、スパナやレンチなどのネジ回転操作用の手動工具のグリップ部51を着脱可能に装着するため本体部10の先端部10a側に設けられた工具把持部12と、を備え、本体部10の先端部10a寄りの部分には、弾性的に湾曲可能な可撓部13が設けられ、可撓部13と工具把持部12との間には、本体部10の長さ方向と交差する支軸を中心に工具把持部12を回動可能に保持する回動アーム15が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部側に握持部を有する棒状の本体部と、スパナやレンチなどのネジ回転操作用の手動工具のグリップ部を着脱可能に装着するため前記本体部の先端部側に設けられた工具把持部と、を備えた手動工具用治具。
【請求項2】
前記本体部の少なくとも一部に、湾曲可能な可撓部を設けた請求項1記載の手動工具用治具。
【請求項3】
前記可撓部と前記工具把持部との間に、前記本体部の長さ方向と交差する支軸を中心に前記工具把持部を回動可能に保持する回動アームを設けた請求項1または2記載の手動工具用治具。
【請求項4】
前記本体部の長手方向のサイズを変更可能な伸縮機構を設けた請求項1~3の何れかの項に記載の手動工具用治具。
【請求項5】
前記工具把持部が、前記手動工具のグリップ部が挿通可能な把持部材と、前記把持部材内に挿通された前記グリップ部に対して接触離隔可能な状態で前記把持部材に螺着された係止ネジと、を有する請求項1~4の何れかの項に記載の手動工具用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパナやレンチなどのネジ回転操作用の手動工具を用いてボルトやナットを締め付けたり、緩めたりするとき、ボルトやナットに係合された手動工具を一定姿勢に保持するために使用する手動工具用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
スパナやレンチなどの手動工具を用いてボルトやナットを締め付けたり、緩めたりする場合、通常は、スパナやレンチなどのグリップ部を作業者が手で握持して作業を行っているが、ボルトやナットなどを強力に締め付けたり、強力に締め付けられたボルトやナットなどを緩めたりする必要があるときは、スパナやレンチなどのグリップ部をハンマーで打撃することがある。
【0003】
ボルトやナットなどに係合させたスパナやレンチなどのグリップ部をハンマーで打撃する作業を一人の作業者で行う場合、作業者は、一方の手でグリップ部を握持し、他方の手にハンマーを持って打撃作業を行うことが多いが、打撃によってスパナやレンチなどがボルトやナットから外れたり、グリップ部を握持している手を誤ってハンマーで打撃したりすることがある。
【0004】
また、前記打撃作業を二人の作業者で行う場合も同様であり、打撃によってスパナやレンチなどがボルトやナットから外れたり、ハンマーによる打撃を行っている作業者が、誤って、グリップ部を握持している他方の作業者の手をハンマーで打撃したりすることがある。特に、作業場所が狭隘である場合、振り下ろし中のハンマーが近傍の物体に触れ、本来の振り下ろし軌道から外れてしまい、他方の作業者の手を打撃する可能性がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するため、打撃作業中のスパナを固定、保持する手段として「ボルト・ナットの着脱用補助用治具」が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
一方、本発明に関連すると考えられる従来技術として、例えば、特許文献3に記載された「消火栓ボックスの作業用工具セット」などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-108488号公報
【特許文献2】特開2014-108489号公報
【特許文献3】登録実用新案第3169542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載された「ボルト・ナットの着脱補助用治具」を使用すれば打撃スパナを固定、保持することができるが、打撃作業が完了するたびに、次のボルト・ナットに装着しなければならないので、煩雑である。また、前記「ボルト・ナットの着脱補助用治具」を使用する場合、ボルト・ナットの締結部分においてボルトの先端部がナットの端面から所定長さ突出している状態でなければ装着できないので、作業現場の状況によっては使用できないことがあり、汎用性に欠ける面があるのは否めない。
【0009】
引用文献3に記載された「消火栓ボックスの作業用工具セット」は、消火栓ボックス内におけるボルト・ナットの締め付け・取り外し作業専用の工具セットであるため、ハンマー打撃作業によりボルト・ナットを締め付けたり、緩めたりする作業への転用は困難である。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ハンマー打撃を伴うボルト・ナットの締め付け・緩め作業を安全且つ効率良く行うことができ、汎用性にも優れた手動工具用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る手動工具用治具は、基端部側に握持部を有する棒状の本体部と、スパナやレンチなどのネジ回転操作用の手動工具のグリップ部を着脱可能に装着するため前記本体部の先端部側に設けられた工具把持部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記手動工具用治具においては、前記本体部の少なくとも一部に、湾曲可能な可撓部を設けることが望ましい。
【0013】
前記手動工具用治具においては、前記可撓部と前記工具把持部との間に、前記本体部の長さ方向と交差する支軸を中心に前記工具把持部を回動可能に保持する回動アームを設けることが望ましい。
【0014】
前記手動工具用治具においては、前記本体部の長手方向のサイズを変更可能な伸縮機構を設けることが望ましい。
【0015】
前記手動工具用治具においては、前記工具把持部が、前記手動工具のグリップ部が挿通可能な把持部材と、前記把持部材内に挿通された前記グリップ部に対して接触離隔可能な状態で前記把持部材に螺着された係止ネジと、を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ハンマー打撃を伴うボルト・ナットの締め付け・緩め作業を安全且つ効率良く行うことができ、汎用性にも優れた手動工具用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態である手動工具用治具を示す一部省略側面図である。
図2図1中の矢線A方向から見た手動工具用治具の一部省略平面図である。
図3図1に示す手動工具用治具の先端部分を示す一部省略拡大図である。
図4図3中の矢線B方向から見た手動工具用治具の一部省略正面図である。
図5図1に示す手動工具用治具の使用状態を示す一部省略斜視図である。
図6図1に示す手動工具用治具の使用状態を示す一部省略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図6に基づいて、本発明の実施形態である手動工具用治具100について説明する。
【0019】
図1図2に示すように、手動工具用治具100は、基端部10b側に握持部11を有する棒状の本体部10と、スパナやレンチなどのネジ回転操作用の手動工具50のグリップ部51を着脱可能に装着するため本体部10の先端部10a側に設けられた工具把持部12と、を備えている。本体部10の先端部10a寄りの部分には、弾性的に湾曲可能な可撓部13が設けられている。可撓部13と工具把持部12との間には、本体部10の長さ方向と交差する支軸14(図3参照)を中心に工具把持部12を回動可能に保持する回動アーム15が設けられている。
【0020】
手動工具用治具100の本体部10は、円管状の基端部材16と丸棒状の先端部材17とを組み合わせて形成され、本体部10の長手方向のサイズを変更可能な伸縮機構を有している。具体的には、先端部材17の基端部17b側の部分が基端部材16の先端部16a側の開口から基端部材16内にスライド可能に挿入され、基端部材16の先端部16a寄りの部分に、基端部材16内に挿入された先端部材17に対して接触離隔可能な状態で蝶ネジ18が螺着されている。蝶ネジ18を緩めれば、先端部材17は基端部材16に対し矢線X方向にスライド可能であり、蝶ネジ18を締め付ければ先端部材17は基端部材16に固定される。
【0021】
図3に示すように、可撓部13は先端部材17の先端部17a(図2参照)の延長上に有底筒状体13bを介して連接されている。可撓部13は弾性的に湾曲可能な材料(例えば、天然ゴム材、合成ゴム材あるいは弾性変形可能な合成樹脂材料など)で形成され先端部材17の軸心周りの全方向に湾曲可能である。可撓部13の先端側には有底筒状体13aを介して連接部材19が連結されている。
【0022】
可撓部13の基端側及び先端側はそれぞれ有底筒状体13b,13a内に挿入され、有底筒状体13b,13aを径方向に貫通するリベット13d,13cによって固定されている。リベット13d,13cの代わりにボルト・ナットを採用すれば、可撓部13の基端側及び先端側はそれぞれ有底筒状体13b,13aに対して着脱可能となる。
【0023】
図3に示すように、連接部材19の先端側には座金19aが固着され、回動アーム15の基端側には座金15aが固着されている。座金19aと座金15aとの間にゴムシート20を挟み、座金19a、ゴムシート20及び座金15aをボルト21で連通し、ナット22で締め付けることにより、連接部材19と回動アーム15とが連結されている。ナット22を緩めれば、回動アーム15はボルト21の軸部(支軸14)を中心に回動可能となり、ナット22を締め付ければ回動アーム15は固定される。
【0024】
本実施形態では、座金19a,15aの間にゴムシート20を挟持しているので、ボルト21とナット22を適度に締め付けた状態でボルト21とナット22とを固着すれば、その状態で回動アーム15はボルト21の軸部(支軸14)を中心に回動可能であり、ゴムシート20の摩擦作用により、回動アーム15は任意の位置(角度)にて安定保持される。
【0025】
図3図4に示すように、回動アーム15の先端側に固着された工具把持部12は、手動工具50のグリップ部51が挿通可能な把持部材12aと、把持部材12a内に挿通されたグリップ部51に対して接触離隔可能な状態で把持部材12aに螺着された係止ネジ12bと、を有している。把持部材12aは、金属板を断面が「コ」字状をなすように折り曲げ、「コ」字の開口部分を閉塞するようにナット12cを固着し、ナットcに係止ネジ12bを螺着することによって形成されている。
【0026】
手動工具50のグリップ部51を把持部材12a内に挿通し、係止ネジ12bを締め付ければ工具把持部12に手動工具50が固定される。係止ネジ12bの軸部12dは把持部材12a内に向かって進退可能であるため、手動工具50のグリップ部51のサイズが変わっても対応可能である。係止ネジ12bは蝶ネジであるが、これに限定するものではない。
【0027】
次に、図5図6に基づいて、図1図2に示す手動工具用治具100の使い方などについて説明する。
【0028】
図5は、手動工具用治具100を使用してボルト・ナットの締め付け作業(増し締め作業)を行っている状態を示している。具体的には、手動工具用治具100の工具把持部12によってグリップ部51を把持された手動工具50の口部52がナット31に係合されている。本体部10は前述した伸縮機構により適切な長さに設定され、連接部材19と回動アーム15との成す角度も適切な角度に設定されている。また、可撓部13を湾曲させることにより、連接部材19に対して本体部10を傾動させることができる。
【0029】
図5に示すように、工具把持部12で手動工具50のグリップ部51を把持した手動工具用治具100の握持部11を一方の作業者(図示せず)が手で握って支えた状態で、他方の作業者が手動工具50のグリップ部51の基端側をハンマーHで打撃すれば、手動工具50は安定した姿勢でナット31を締め付けていくので、ハンマーHによる打撃を伴うボルト・ナットの締め付け作業(増し締め作業)を安全且つ効率良く行うことができる。手動工具用治具100の使い方は限定しないので、一人の作業者が片方の手で手動工具用治具100の握持部11を握持して支え、他方の手でグリップ部51の基端側をハンマーHで打撃するような使い方をすることもできる。
【0030】
本実施形態では手動工具50は眼鏡レンチであるが、これに限定するものではなく、工具把持部12でグリップ部を把持可能な手動工具であれば、手動工具用治具100を使用することができるので、汎用性にも優れている。また、可撓部13はその弾力変形性により、衝撃や振動を緩和する作用も発揮するので、ハンマーHの打撃による衝撃や振動が直接、本体部10の握持部11(図1参照)に伝わり難くなり、握持部11を手で握持している作業者の肉体的負担が軽減され、労働環境の向上にも有効である。
【0031】
次に、図6は、手動工具用治具100を使用してボルト・ナットの緩め作業を行っている状態を示している。具体的には、手動工具用治具100の工具把持部12によってグリップ部51を把持された手動工具50の口部52がナット31に係合されている。図6に示すように、手動工具用治具100の工具把持部12で手動工具50のグリップ部51を把持した状態でグリップ部51の基端側をハンマーHで打撃すれば、手動工具50は安定した姿勢でナット31を緩めていくので、ハンマーHによる打撃を伴うボルト・ナットの緩め作業を安全且つ効率良く行うことができる。
【0032】
なお、図1図6に基づいて説明した手動工具用治具100は、本発明に係る手動工具用治具の一例を示すものであり、本発明に係る手動工具用治具は前述した手動工具用治具100に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る手動工具用治具は、ハンマーを用いてボルト・ナットを締め付けたり、緩めたりする作業を行う様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 本体部
10a,16a,17a 先端部
10b,17b 基端部
11 握持部
12 工具把持部
13 可撓部
14 支軸
15 回動アーム
16 基端部材
17 先端部材
18 蝶ネジ
19 連接部材
20 ゴムシート
21,30 ボルト
22,31 ナット
100 手動工具用治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6