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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082360
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】車両の荷室構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220525BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B62D25/08 L
B60N2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193870
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】久間 陽一
(72)【発明者】
【氏名】三崎 利次
【テーマコード(参考)】
3B087
3D203
【Fターム(参考)】
3B087CA09
3B087CA16
3D203BB07
3D203BB09
3D203BB56
3D203BB74
3D203BB77
3D203BC10
3D203CA53
3D203CA62
3D203CA73
3D203CB04
3D203CB09
3D203CB19
3D203CB21
3D203DA51
3D203DA62
(57)【要約】
【課題】本発明の少なくとも一つの実施形態は、荷室フロアに格納可能な格納式のリヤシートを備える車両の荷室構造であって、リヤホイールハウスを含む荷室の側部に、リヤシートのシートストライカ及び荷室のカーゴフックの両方の設置を、車体重量の増大を抑えて簡単な構造によって成立させることを目的とする。
【解決手段】荷室フロアに格納可能な格納式のリヤシート17を使用状態で固定するロック機構を構成するシートストライカ27と、荷室の荷物を保持するために設けられるカーゴフック41とが、荷室の側部に設置され、シートストライカを車体の側壁に支持するストライカブラケット29と、カーゴフックを車体の側壁に支持するカーゴフックブラケット43と、を備え、ストライカブラケットに、カーゴフックブラケットを一体化して設けたことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能な使用位置から後方に移動されて荷室フロアの凹部に格納可能な格納式のリヤシートを備える車両の荷室構造であって、
前記リヤシートを使用状態で固定するロック機構を構成するシートストライカと、荷室の荷物を保持するために設けられるカーゴフックとが、前記荷室の側部に設置され、
前記シートストライカを車体の側壁に支持するストライカブラケットと、
前記カーゴフックを車体の側壁に支持するカーゴフックブラケットと、を備え、
前記ストライカブラケットに、前記カーゴフックブラケットを一体化して設けたことを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項2】
前記シートストライカの上方に前記カーゴフックが並んで配置され、
前記ストライカブラケットは、前記車体の側壁に沿って上下方向に延び、該側壁に接合される接合面と、荷室側に面して上下方向に延び、前記シートストライカが取り付けられるストライカ取付面と、を有し、
前記カーゴフックブラケットは、前記ストライカ取付面の上部に設けられ、荷室側に面して上下方向に延び、前記カーゴフックが取り付けられるフック取付面を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
前記ストライカブラケットの前記ストライカ取付面の上端部に、前記カーゴフックブラケットの下端部が、ボルト若しくは溶接の一方によって又は両方によって結合され、前記カーゴフックブラケットの左右端部には、上下方向に沿って延びるビードが形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両の荷室構造。
【請求項4】
前記カーゴフックブラケットの前記フック取付面は、前記ストライカ取付面に結合される前記カーゴフックブラケットの下端部よりも車体の側壁側に段差状に形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両の荷室構造。
【請求項5】
前記シートストライカは、前記ストライカブラケットの前記ストライカ取付面にボルトによって結合されるストライカプレートを有し、
前記ストライカ取付面の上端部に、前記カーゴフックブラケットの下端部が前記ボルトによって結合され、前記ボルトによる締結部において、前記カーゴフックブラケットの下端部を前記ストライカ取付面と前記ストライカプレートとの間に挟んだ状態で前記カーゴフックブラケットの下端部と前記ストライカプレートとが前記ストライカブラケットへ共締めされることを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載の車両の荷室構造。
【請求項6】
前記ストライカブラケットは、前記ストライカ取付面の上端部に車体の側壁側に凹む凹部が形成され、
前記カーゴフックブラケットの下端部が、前記凹部に重ねて結合されることを特徴とする請求項5に記載の車両の荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の荷室構造に関し、特に、荷室に設置されるカーゴフックの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の荷室には、荷物の移動を規制して荷物を安定して固定するために掛け渡されるバンドやロープやネット等を車体側に係止するカーゴフックが車体に設置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホイールハウスインナとリアピラーとの間に連結ガゼットが配置され、その連結ガゼットとフロアパネルとの間にフロアガゼットが配置され、そのフロアガゼットのサブフロアガゼットにカーゴフック(荷室フック)(特許文献2の符号50)を設ける構造が示されている。
【0004】
一方、特許文献2には、車両の最後部の荷室または客室に設置されるリヤシートが、着座姿勢の形態から、シートバックをシートクッションの上に重ね合わせて折り畳んだ形態にした後に、ロック機構を解除して折り畳み形態のリヤシートをリヤシートの支持装置の回転軸を回転中心として跳ね上げて、さらに後方に回転させることによって、折り畳み形態のリヤシートを上下反転させた状態で、車体後部のリヤフロアの収納凹部に収納される構造が示されている。
【0005】
上述の特許文献2のロック機構は、シートクッションの下部に設けられたラッチと、車体に設けられラッチに係合可能なシートストライカと、によって構成され、このロック機構を解除してシートを跳ね上げて後方に回転することができるようになっている。
【0006】
そして、特許文献2には、このロック機構を構成するシートストライカが、左右のリヤホイールハウスの前後方向の略中央部の上部に、若干後傾した姿勢で逆U字形をなして起立して固定されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-161152号公報
【特許文献2】特開2011-57059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
後方回転格納式等の荷室フロアに格納可能なリヤシートを備える車両の荷室においては、上述の特許文献2に示すような、リヤシートのロック機構を構成するシートストライカの設置と、特許文献1に示すような、カーゴフックの設置との両方を、リヤホイールハウスを含めてその周辺の車体構成部材に設置する必要がある。
【0009】
そのため、リヤシートのロック機構のシートストライカと、カーゴフックとの両方の設置を、車体重量の増大を抑えて簡単な構造によって成立させることが望まれる。しかし、特許文献1及び特許文献2のいずれにも、シートストライカ及びカーゴフックの両方の設置を車体重量の増大を抑えて簡単な構造によって成立させることは示されていない。
【0010】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、荷室フロアに格納可能な格納式のリヤシートを備える車両の荷室構造であって、リヤホイールハウスを含む荷室の側部に、リヤシートのシートストライカ及び荷室のカーゴフックの両方の設置を、車体重量の増大を抑えて簡単な構造によって成立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、乗員が着座可能な使用位置から後方に移動されて荷室フロアの凹部に格納可能な格納式のリヤシートを備える車両の荷室構造であって、前記リヤシートを使用状態で固定するロック機構を構成するシートストライカと、前記荷室の荷物を保持するために設けられるカーゴフックとが、前記荷室の側部に設置され、前記シートストライカを車体の側壁に支持するストライカブラケットと、前記カーゴフックを車体の側壁に支持するカーゴフックブラケットと、を備え、前記ストライカブラケットに、前記カーゴフックブラケットを一体化して設けたことを特徴とする。
【0012】
このような構成(1)によれば、ストライカブラケットにカーゴフックブラケットが一体化して設けられて、ストライカブラケット及びカーゴフックブラケットが、車体の側壁に支持されるので、カーゴフックブラケットがストライカブラケットとは別体に独自に車体の側壁に支持される場合に必要とされるカーゴフックブラケット専用の側壁の補強部材や、該補強部材の設置スペースの確保が不要になり、カーゴフックブラケットの取り付け構造が簡素化される。従って、カーゴフックブラケットの小型軽量化が図れて車体重量の増大を抑制できる。
【0013】
(2)幾つかの実施形態では、前記シートストライカの上方に前記カーゴフックが並んで配置され、前記ストライカブラケットは、前記車体の側壁に沿って上下方向に延び、該側壁に接合される接合面と、荷室側に面して上下方向に延び、前記シートストライカが取り付けられるストライカ取付面と、を有し、前記カーゴフックブラケットは、前記ストライカ取付面の上部に設けられ、荷室側に面して上下方向に延び、前記カーゴフックが取り付けられるフック取付面を有する。
【0014】
このような構成(2)によれば、ストライカブラケットを用いてカーゴフックとシートストライカとが上下に位置されて、車体の側壁に取り付けられる。従って、シートストライカとカーゴフックとを車体重量の増大を抑制しつつ、荷室内に設置することができる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、前記ストライカブラケットの前記ストライカ取付面の上端部に、前記カーゴフックブラケットの下端部が、ボルト若しくは溶接の一方によって又は両方によって結合され、前記カーゴフックブラケットの左右端部には、上下方向に沿って延びるビードが形成される。
【0016】
このような構成(3)によれば、ストライカブラケットのストライカ取付面の上端部に、カーゴフックブラケットの下端部が、ボルト若しくは溶接の一方によって又は両方によって結合されるので、ストライカブラケットにカーゴフックブラケットを容易に一体化できる。また、カーゴフックブラケットの左右端部には、上下方向に沿って延びるビードが形成されるので、カーゴフックブラケットの剛性が高められて、カーゴフックに作用する入力荷重をストライカブラケット側に効率よく伝達することができる。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、前記カーゴフックブラケットの前記フック取付面は、前記ストライカ取付面に結合される前記カーゴフックブラケットの下端部よりも車体の側壁側に段差状に形成される。
【0018】
このような構成(4)によれば、カーゴフックブラケットのフック取付面がストライカ取付面に結合される下端部よりも車体の側壁側に段差状に形成されるので、段差形状によってカーゴフックブラケットの剛性を高めることができる。また、フック取付面が車体の側壁側に近づくので取り付けられるカーゴフックの荷室内への突出量を抑えることができる。
【0019】
(5)幾つかの実施形態では、前記シートストライカは、前記ストライカブラケットの前記ストライカ取付面にボルトによって結合されるストライカプレートを有し、前記ストライカ取付面の上端部に、前記カーゴフックブラケットの下端部が前記ボルトによって結合され、前記ボルトによる締結部において、前記カーゴフックブラケットの下端部を前記ストライカ取付面と前記ストライカプレートとの間に挟んだ状態で前記カーゴフックブラケットの下端部と前記ストライカプレートとが前記ストライカブラケットへ共締めされる。
【0020】
このような構成(5)によれば、カーゴフックブラケットの下端部をストライカ取付面とストライカプレートとの間に挟んだ状態でカーゴフックブラケットの下端部とストライカプレートとがストライカブラケットへ共締めされるので、カーゴフックブラケットとストライカブラケットとのボルトによる結合強度が向上し、カーゴフックに作用する入力荷重をストライカブラケット側に効率よく伝達することができる。
【0021】
(6)幾つかの実施形態では、前記ストライカブラケットは、前記ストライカ取付面の上端部に車体の側壁側に凹む凹部が形成され、前記カーゴフックブラケットの下端部が、前記凹部に重ねて結合される。
【0022】
このような構成(6)によれば、ストライカブラケットは、ストライカ取付面の上端部に車体の側壁側に凹む凹部が形成されるので、ストライカブラケットの剛性を高めることができる。また、この凹部にカーゴフックブラケットの下端部が重ねて結合されるので、フック取付面に取り付けられるカーゴフックの荷室内への突出量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、荷室フロアに格納可能なリヤシートを備える車両において、荷室の側部に、リヤシートのシートストライカ及び荷室のカーゴフックの両方の設置を、車体重量の増大を抑えて簡単な構造によって成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の荷室構造において、車両の後部車体構造の概略を示す後方斜視図である。
図2図1のA部の拡大斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車両の荷室構造において、リヤシート17の平面模式図である。
図4図3のB―B線断面の模式図である。
図5】リヤシート17の格納手順を示す側面模式図である。
図6】カーゴフックブラケットアセンブリ53へのカーゴフック41及びシートストライカ27の組付け状態を示す組立図である。
図7図2のC-C線断面図であり、ストライカプレート37が取り付けられた状態を示す。
図8図7に対応する比較例を示す断面図である。
図9】一体化の他の実施形態を示す図7に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、説明中の上下前後左右の方向は、運転席から乗員が前方を見た方向で定義するものとする。各図中において、「FR」は前方、「LH」は左方、「UPR」は上方を示す。
【0026】
図1~7を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、車両1の後部車体構造を、車両の後端部のバックドア開口3から見た後方斜視図である。
【0027】
図1に示すように、後部車体構造は、車両1の後部に荷室5を形成し、車両前後方向且つ車幅方向に略水平面状に広がるリヤフロアパネル7を有し、リヤフロアパネル7の後端には凹部に形成されたシートパン9を有する。
【0028】
さらに、車両1の側部で車両前後方向且つ上下方向に延びるサイドインナパネル11と、サイドインナパネル11の下部で、車両内方側に膨出して内部に後輪を収容するリヤホイールハウス13と、を有している。
【0029】
また、車両後端で車両後端側壁を構成して、上部を車両前方向に傾斜させたリアピラー15を有し、左右のリアピラー15の間にバックドア開口3が形成されている。なお、図1は、車両1の左側の後部車体を示すが、右側の後部車体も同様の構造である。
【0030】
リヤフロアパネル7は、荷室フロアのみならず車室フロアをも構成している。そして、このリヤフロアパネル7の上方には、車両1の最後部(例えば、3列目シート)のリヤシート17が設置される。このリヤシート17は、乗員が着座可能な使用位置から後方に移動されてリヤフロアパネル7の後端に形成されたシートパン9の凹部内に格納可能な格納式のリヤシートであり、例えば、後述するように後方回転格納式リヤシートである。
【0031】
なお、リヤフロアパネル7、シートパン9、サイドインナパネル11、リヤホイールハウス13等の荷室5を構成するパネル部分は、それぞれ、樹脂製のライニング18によって覆われる(図4参照)。
【0032】
次に、リヤシート17について図3~5を参照して説明する。図3は、リヤシート17の平面模式図であり、図3の下方が車両1の前方を示す。図4は、車両前方から見た図3のB―B線断面模式図であり、図5は、リヤシート17の格納手順を説明する側面模式図である。
【0033】
リヤシート17は、図3~5に示すように左右の着座部及び左右の背もたれ部が、それぞれ左右一体化したベンチタイプのシート構造であるが、左右の着座部及び左右の背もたれ部が、それぞれ分離したセパレートタイプであってもよく、セパレートタイプの場合には、ベンチタイルと同様の後方回転機構によって左右別々に格納される。
【0034】
リヤシート17の着座部を構成するシートクッション17aと、背もたれ部を構成するシートバック17bとは、シートクッション17aの後部に設けられたリクライニング部19によって連結され、シートバック17bはシートクッション17aに対して所定のリクライニング角度に設定される。
【0035】
リクライニング部19は、ヒンジブラケット21を介してリヤフロアパネル7またはリヤホイールハウス13等の車体側にヒンジ中心Pを中心に回転可能に固定されている。また、シートクッション17aの前部には、リヤフロアパネル7上にリヤシート17をロック及びアンロック可能なロック機構23が設けられている。また、リクライニング部19は、左右に設置されて連動して作動するようになっている。なお、ベンチタイプのシート構造であるので、片側だけであってもよい。
【0036】
このロック機構23は、シートクッション17aの下部に設けられたラッチ25と、リヤホイールハウス13に設けられ、ラッチ25に係合可能なシートストライカ27とにより構成されており、このロック機構23を解除してシートクッション17aを、ヒンジ中心Pを中心に跳ね上げて後方に回転することができるようになっている。
【0037】
従って、図5の実線で示す通常の使用時には、ロック機構23によってシートクッション17aは、リヤフロアパネル7上にロックされ、リクライニング部19によってシートバック17bはシートクッション17aに対して所定のリクライニング角度に設定されて使用される。
【0038】
一方、図5の点線で示す格納時には、リクライニング部19によってシートバック17bをシートクッション17a側に折り畳んで(図5の矢印K1)、シートクッション17aの上面に重ねる。そして、ロック機構23の解除によって、シートクッション17aのロックが解除されると、折り畳まれた状態でシートクッション17aとシートバック17bとが一体となってヒンジブラケット21のヒンジ中心Pを中心に車両後方側に回転可能になり、シートバック17bを車両前後方向に沿った角度に重ねた状態で車両後方側に回転させて、リヤフロアパネル7の後端に形成されたシートパン9の凹部内に格納される(図5の矢印K2)。
【0039】
ロック機構23を構成するシートストライカ27は、荷室5の側部に設置され、荷室5を構成する車体の側壁、例えば、リヤホイールハウス13に取り付けられるストライカブラケット29によって支持されている。
【0040】
このストライカブラケット29は、図2に示すように、リヤホイールハウス13の側壁の湾曲形状に沿って上下方向に延び、該リヤホイールハウス13の側壁に接合される接合面31と、該接合面31よりさらに荷室5の内側に位置し、荷室5の内側に面して上下方向に延び、シートストライカ27が取り付けられるストライカ取付面33と、を有している。
【0041】
また、ストライカブラケット29は、プレス成形によって一体部品として絞り成形され、絞り形状の開口周縁部が接合面31として形成され、絞り形状の底面部がストライカ取付面33として形成される。従って、ストライカブラケット29をリヤホイールハウス13の側壁に接合することで、上下方向に延びるストライカ取付面33が形成される。なお、リヤホイールハウス13には補強部材のリンフォース30が設けられる(図7)。
【0042】
図6の組立図に示すように、ストライカ取付面33にシートストライカ27が取り付けられる、このシートストライカ27は、略U字形状の金属製の部品からなるストライカ部35と、この略U字形状の両端部が溶接で固定されるストライカプレート37とによって構成されている。従って、ストライカ部35が溶接で固定されたストライカプレート37が、ストライカ取付面33にボルト39a、39bによって締結されることによって、シートストライカ27がストライカ取付面33に取り付けられる。
【0043】
一方、車両1の荷室5には、荷物の移動を規制して荷物を安定して固定するためにバンドやロープやネット等が掛け渡される。そして、バンドやロープやネット等を車体側に係止するカーゴフック41が設けられている。
【0044】
カーゴフック41は、荷室5の側部に設置され、荷室5を構成する車体の側壁、例えば、リヤホイールハウス13に取り付けられるストライカブラケット29に一体化して設けられるカーゴフックブラケット43よって支持されている。
【0045】
このカーゴフックブラケット43は、図2、6に示すように、ストライカブラケット29のストライカ取付面33の上部に設けられ、荷室5側に面して上下方向に延び、カーゴフック41が取り付けられるフック取付面45を有する。
【0046】
図6の組立図に示すように、カーゴフック41は、カーゴフックブラケット43のフック取付面45に取り付けられる。このカーゴフック41は、略U字形状の金属製の棒状部材からなるフック部47と、四角形の開口を有して箱状に形成され、内部にフック部47が固定されるフック支持体49とによって構成されている。そして、フック支持体49の底面が、フック取付面45に植設されたナット52にボルト51を螺合することによってフック取付面45に取り付けられる。
【0047】
以上の一実施形態によれば、ストライカブラケット29にカーゴフックブラケット43が一体化して設けられるので、カーゴフックブラケット43がストライカブラケット29とは別体に独自にリヤホイールハウス13に取り付けられる場合に必要とされるカーゴフックブラケット43専用の取付け部の補強部材や、該補強部材の設置スペースの確保が不要になり、カーゴフックブラケット43の取り付け構造が簡素化される。従って、カーゴフックブラケット43の小型軽量化が図れて車体重量の増大を抑制できる。
【0048】
例えば、図8に示す比較例のように、カーゴフックブラケット100が単独でリヤホイールハウス13へ取り付けられる場合には、リヤホイールハウス13への取付け部に、ストライカブラケット29用のリンフォース30以外にカーゴフックブラケット100専用のリンフォース101が必要になり、リンフォース101の設置スペースの確保、及び車体重量の増大を招く問題を有するが、本実施形態では、このような問題が解消される。
【0049】
また、以上の一実施形態によれば、ストライカブラケット29は、リヤホイールハウス13の側壁の湾曲形状に沿って上下方向に延び、該リヤホイールハウス13の側壁に接合される接合面31と、該接合面31よりさらに荷室5の内側に位置し、荷室5の内側に面して上下方向に延び、シートストライカ27が取り付けられるストライカ取付面33と、を有し、さらに、カーゴフックブラケット43は、ストライカ取付面33の上部に設けられ、荷室側に面して上下方向に延び、カーゴフック41が取り付けられるフック取付面45を有する。
【0050】
このような構成によって、ストライカブラケット29を用いてカーゴフック41とシートストライカ27とを上下に並んで配置してリヤホイールハウス13に取り付けることができ、しかも、シートストライカ27とカーゴフック41とを車体重量の増大を抑制しつつ、荷室内に設置することができる。
【0051】
また、以上の一実施形態によれば、ストライカブラケット29は、プレス成形によって一体部品として絞り成形され、リヤホイールハウス13の側壁に沿って固定できる形状であるので、ストライカブラケット29の剛性及びリヤホイールハウス13への取り付け強度が確保でき、カーゴフック41及びシートストライカ27に作用する入力荷重を効率よく車体側に伝達できる。
【0052】
幾つかの実施形態では、図2、6に示すように、ストライカブラケット29にカーゴフックブラケット43を一体化する構成は、ストライカブラケット29とカーゴフックブラケット43との2部品が、ボルト若しくは溶接の一方によって又は両方によって結合され、カーゴフックブラケットアセンブリ53を形成するように構成される。
【0053】
図2、6のように、カーゴフックブラケット43は、上下方向に延びる板状部材からなり、下端部が、ストライカブラケット29のストライカ取付面33の上端部にボルト39a及び溶接(スポット溶接)55の両方によって結合されている。さらに、カーゴフックブラケット43には、板状部材の幅方向の左右両端部に上下方向に沿って延びるビード57が形成されている。
【0054】
カーゴフックブラケット43とストライカブラケット29との結合の際は、治具上でお互いの関係が位置決めされて、位置決め用として溶接(スポット溶接)55が行われ、さらに、カーゴフックブラケット43とストライカブラケット29との結合強度を高めるためにボルト39aによる締結が行われる。
【0055】
なお、位置決め用としての溶接(スポット溶接)55に代えて位置決め用としてボルトを用いてもよく、また、強度確保用としてのボルト39aに代えて溶接(スポット溶接)としてもよい。溶接(スポット溶接)だけで、位置決めと強度確保との両方を行う場合には、スポット溶接はボルト締結より強度的に劣るため、強度確保用としては複数箇所でスポット溶接する必要がある。
【0056】
以上の実施形態によれば、ストライカブラケット29のストライカ取付面33の上端部に、カーゴフックブラケット43の下端部が、ボルト若しくは溶接の一方によって又は両方によって結合されるので、ストライカブラケット29にカーゴフックブラケット43を容易に一体化できカーゴフックブラケットアセンブリ53を形成できる。
【0057】
また、ストライカブラケット29とカーゴフックブラケット43との2部品の結合によってカーゴフックブラケットアセンブリ53を形成するので、シートストライカ27の位置及びカーゴフック41の位置が異なる種々の車種への対応が容易になる。
【0058】
また、リヤホイールハウス13に取り付けられるストライカブラケット29のプレス成形への対応が容易になる。すなわち、プレス成形しやすい形状(絞り成形可能な形状)にストライカブラケット29を設計できるようになるので設計の自由度が増大する。さらに、それぞれのブラケットの形状や板厚を必要強度に応じて適切に設定可能になる。
【0059】
また、カーゴフックブラケット43は、上下方向に延びる板状部材からなるので、簡単な形状のため製造容易である。また、板状部材であっても、カーゴフックブラケット43には、板状部材の幅方向の両端部に上下方向に沿って延びるビード57が形成されるので、カーゴフックブラケット43の剛性が高められて、カーゴフック41に作用する入力荷重をストライカブラケット29側に効率よく伝達できる。
【0060】
幾つかの実施形態では、図2、7に示すように、カーゴフックブラケット43のフック取付面45は、ストライカ取付面33に結合されるカーゴフックブラケット43の下端部よりもリヤホイールハウス13側に段差状に形成される。
【0061】
すなわち、カーゴフックブラケット43は、カーゴフックブラケット43の下端部とフック取付面45との間に段差部58を有し、フック取付面45がカーゴフックブラケット43の下端部よりもリヤホイールハウス13側に近づくように段差状に形成されている。
【0062】
以上の実施形態によれば、段差部58によってカーゴフックブラケット43の剛性を高めることができる。また、フック取付面45がリヤホイールハウス13側に近づくので、取り付けられるカーゴフック41の荷室5内への突出量を抑えることができる。
【0063】
幾つかの実施形態では、図6、7に示すように、シートストライカ27は、ストライカブラケット29のストライカ取付面33にボルト39a、39bによって結合されるストライカプレート37を有し、ストライカブラケット29のストライカ取付面33の上端部に、カーゴフックブラケット43の下端部がボルト39aによって結合され、このボルト39aによる締結部において、カーゴフックブラケット43の下端部をストライカ取付面33の上端部とストライカプレート37の上取付部37aとの間に挟んだ状態で、カーゴフックブラケット43の下端部とストライカプレート37の上取付部37aとがストライカブラケット29へ共締めされる。
【0064】
図6は、シートストライカ27及びカーゴフック41が、カーゴフックブラケットアセンブリ53へ組立てられる状態を示す組立図である。
【0065】
図6に示すように、シートストライカ27のストライカ取付面33への取り付けは、ストライカプレート37の上取付部37a及び下取付部37bのそれぞれのボルト孔に挿入されるボルト39a、39bによって取り付けられる。上取付部37aへのボルト39aは、カーゴフックブラケット43の下端部をストライカブラケット29へ結合する機能も有している。
【0066】
この共締め状態を、図7の断面図に示す。図7は、図2のC-C線断面図であり、ストライカブラケット29に植設されたナット59aに、ボルト39aを螺合することによって、カーゴフックブラケット43の下端部をストライカ取付面33の上端部とストライカプレート37の上取付部37aとの間に挟んだ状態で、カーゴフックブラケット43の下端部とストライカプレート37の上取付部37aとが、ストライカブラケット29に共締めされる。
【0067】
また、ストライカプレート37の下取付部37bは、ストライカブラケット29に植設されたナット59bに、ボルト39bの締結によって取付けられる。
【0068】
一方、図6の組立図において、カーゴフック41は、カーゴフックブラケット43のフック取付面45にボルト51よって取り付けられる。ボルト51による締結の際には、フック支持体49の底面からフック取付面45側に突出した不図示の回止ピンが、回止孔61に嵌合して位置決めされる。
【0069】
以上の実施形態によれば、カーゴフックブラケット43の下端部をストライカ取付面33の上端部とストライカプレート37の上取付部37aとの間に挟んだ状態で、カーゴフックブラケット43の下端部とストライカプレート37の上取付部37aとがストライカブラケット29へ共締めされるので、カーゴフックブラケット43とストライカブラケット29とのボルト39a、39bによる結合強度が向上し、カーゴフック41に作用する入力荷重をストライカブラケット29側に効率よく伝達することができる。
【0070】
また、カーゴフックブラケット43の下端部をストライカ取付面33の上端部とストライカプレート37の上取付部37aとの間に挟んだ状態で、カーゴフックブラケット43の下端部とストライカプレート37の上取付部37aとがストライカブラケット29へ共締めされるので、カーゴフックブラケット43の下端部を締結する専用のボルトを省略できるようになり、カーゴフックブラケット43とストライカブラケット29との2部品から構成されるカーゴフックブラケットアセンブリ53を簡素化でき、車体の軽量化に寄与できる。
【0071】
幾つかの実施形態では、図6、7に示すように、ストライカブラケット29は、ストライカ取付面33の上端部にリヤホイールハウス13側に凹む凹部62が形成され、カーゴフックブラケット43の下端部が、凹部62に重ねて結合される。この凹部62に重ねて結合されるカーゴフックブラケット43の下端部が、ストライカ取付面33の上端部とストライカプレート37の上取付部37aとの間に挟まれ、上述の実施形態で説明したように共締めされる(図7)。
【0072】
以上の実施形態によれば、ストライカブラケット29は、ストライカ取付面33の上端部にリヤホイールハウス13側に凹む凹部62が形成されるので、ストライカブラケット29の剛性を高めることができる。また、この凹部62にカーゴフックブラケット43の下端部が重ねて結合されるので、フック取付面45に取り付けられるカーゴフック41の荷室5内への突出量を抑えることができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、図9に示すように、ストライカブラケット29にカーゴフックブラケット43を一体化して設ける構成は、ストライカブラケット63の1部品によって構成され、ストライカブラケット63の一部にカーゴフックブラケット65が形成される。すなわち、図9のように、ストライカブラケット63のストライカ取付面67の上方に連続して延びる部分にカーゴフックブラケット65が形成される。その他の構成は、図2、6に示す実施形態と同様である。
【0074】
既に説明した図2、6のようなストライカブラケット29とカーゴフックブラケット43との2部品が結合されてカーゴフックブラケットアセンブリ53を形成する構成においては、ストライカブラケット29の上端部からリヤホイールハウス13の上面に向かうリヤホイールハウス13側の内角θ1は鈍角であり、絞り成形が容易である。
【0075】
しかし、図9に示す実施形態においては、ストライカ取付面67が上方に連続して延びることから、ストライカブラケット63の上端部からリヤホイールハウス13の上面に向かうリヤホイールハウス13側の内角θ2は鋭角になる場合が多い。この場合には、ストライカブラケット63をプレス成形によって一体部品として絞り成形しにくい形状となる。
【0076】
従って、図9に2点鎖線で示すように、リヤホイールハウス69の膨出部の高さを高くして、リヤホイールハウス69側の内角θ2が鈍角になるようにして、ストライカブラケット63をプレス成形によって一体部品として絞り成形しやすい形状とする必要がある。
【0077】
以上の実施形態によれば、カーゴフックブラケット65とストライカブラケット63との一体化が、ストライカブラケット63の1部品によって構成されるため、ストライカブラケット29とカーゴフックブラケット43との2部品が結合されてカーゴフックブラケットアセンブリ53を形成する構成に比べて、2部品を結合させる溶接やボルトによる締結作業か不要で、プレス成形によって一体に成形することが可能である。従って、製造容易であり生産効率が向上する。
【0078】
また、ストライカブラケット63の1部品によって構成されるため、2部品による場合には、ストライカブラケット29とカーゴフックブラケット43との締結強度やカーゴフックブラケット43の剛性等を考慮する必要があるが、これらを考慮する必要がなく安定した強度が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、荷室フロアに格納可能なリヤシートを備える車両において、荷室の側部に、リヤシートのシートストライカ及び荷室のカーゴフックの両方の設置を、車体重量の増大を抑えて簡単な構造によって成立させることができるので、車両の荷室構造への利用に適している。
【符号の説明】
【0080】
1 車両
5 荷室
7 リヤフロアパネル
9 シートパン
11 サイドインナパネル
13 リヤホイールハウス
15 リアピラー
17 リヤシート
17a シートクッション
17b シートバック
23 ロック機構
25 ラッチ
27 シートストライカ
29、63 ストライカブラケット
30 リンフォース
31 接合面
33、67 ストライカ取付面
35 ストライカ部
37 ストライカプレート
37a ストライカプレートの上取付部
37b ストライカプレートの下取付部
39a、39b、51 ボルト
41 カーゴフック
43、65 カーゴフックブラケット
45 フック取付面
47 フック部
49 フック支持体
52、59a、59b ナット
53 カーゴフックブラケットアセンブリ
55 溶接
57 ビード
58 段差部
61 回止孔
62 凹部
θ1、θ2 内角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9