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特開2022-82411バウムクーヘン焼成機の制御装置、制御方法及び制御プログラム、並びにバウムクーヘン焼成機
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  • 特開-バウムクーヘン焼成機の制御装置、制御方法及び制御プログラム、並びにバウムクーヘン焼成機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082411
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】バウムクーヘン焼成機の制御装置、制御方法及び制御プログラム、並びにバウムクーヘン焼成機
(51)【国際特許分類】
   A21B 5/04 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
A21B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073303
(22)【出願日】2021-04-23
(62)【分割の表示】P 2021512963の分割
【原出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】592141019
【氏名又は名称】株式会社ユーハイム
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】河本 英雄
(57)【要約】
【課題】オーブンで回転するバウムクーヘンの各層の焼き加減が適切になるよう自動的にバウムクーヘン焼成機を制御する。
【解決手段】焼成機1は、オーブン2と、生地容器4と、回転ロール3とを備える。制御装置は、バウムクーヘンの生地が積層された回転ロール3を、生地塗布位置からオーブン2の焼き位置へ移動させる動作、及びオーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させる動作を制御するコンピュータを備える。コンピュータは、カメラ7から、回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、複数の画像群により示される生地の外周面の焼き色に基づいて、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行するよう構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御装置であって、
バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を回転ロールの生地に塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御するコンピュータを備え、
前記コンピュータは、
前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、
前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行するよう構成される、バウムクーヘン焼成機の制御装置。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて、前記操作者による前記バウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する判断推定処理と、
前記推定された操作者の判断の結果と、前記判断時を含む期間において前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、前記判定処理で用いられる学習済モデルを生成する学習処理とをさらに実行するよう構成される、請求項1に記載のバウムクーヘン焼成機の制御装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記複数の画像を取得する際に、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の回転速度、前記バウムクーヘンの生地の外表面の焼成時間、又は、前記オーブンの温度の少なくとも1つをさらに取得し、
前記判定処理において、前記複数の画像群が示す前記生地の外周面の焼き色に加えて、取得した前記回転速度、前記バウムクーヘンの生地の外表面の焼成時間、又は、前記オーブンの温度の少なくとも1つに基づいて、前記決定を行う、請求項1又は2に記載のバウムクーヘン焼成機の制御装置。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記学習処理において、前記操作者による前記操作の判断時を含む期間における、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の回転速度、前記バウムクーヘンの生地の外表面の焼成時間、又は、前記オーブンの温度の少なくとも1つをさらに用いて、前記学習済モデルを生成する、請求項2に記載のバウムクーヘン焼成機の制御装置。
【請求項5】
前記コンピュータは、前記判定処理において、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の周方向の移動速度、又は前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の前記外周の直径の少なくとも1つを取得し、
前記判定処理において、前記複数の画像群が示す前記生地の外周面の焼き色に加え、取得した前記移動速度又は前記直径の少なくとも1つに基づいて、前記決定を行う、請求項1~4のいずれか1項に記載のバウムクーヘン焼成機の制御装置。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記学習処理において、前記操作者による前記焼き加減の判断時を含む期間における、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の周方向の移動速度、又は、前記バウムクーヘンの生地の外周の直径の少なくとも1つをさらに用いて、前記学習済モデルを生成する、請求項2又は4に記載のバウムクーヘン焼成機の制御装置。
【請求項7】
オーブンと、
生地容器と、
前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールと、
前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラと、
コンピュータを含む制御装置と、を備え、
前記コンピュータは、
バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を前記回転ロールの生地へ塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御するコンピュータであり、
前記コンピュータは、
前記カメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、
前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行するよう構成される、バウムクーヘン焼成機。
【請求項8】
オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御方法であって、
コンピュータが、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を前記回転ロールの生地へ塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御する制御工程を有し、
前記コンピュータは、前記制御工程において、
前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、
前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行する、バウムクーヘン焼成機の制御方法。
【請求項9】
オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御方法であって、
コンピュータが、
前記バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて、前記操作者による前記バウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する判断推定工程と、
前記推定された操作者の判断の結果と、前記判断時を含む期間において前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、前記判定処理で用いられる学習済モデルを生成する学習工程とを有し、
前記学習済モデルは、コンピュータが、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理で用いられるデータである、バウムクーヘン焼成機の制御方法。
【請求項10】
オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御プログラムあって、
コンピュータに、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を前記回転ロールへ塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御する制御処理を実行させ、
前記制御処理は、
前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、
前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を含む、バウムクーヘン焼成機の制御プログラム。
【請求項11】
オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御プログラムであって、
前記バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて、前記操作者による前記バウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する判断推定処理と、
前記推定された操作者の判断の結果と、前記判断時を含む期間において前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、前記判定処理で用いられる学習済モデルを生成する学習処理とをコンピュータに実行させ、
前記学習済モデルは、前記コンピュータが、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理で用いられるデータである、バウムクーヘン焼成機の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バウムクーヘン焼成機の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バウムクーヘン焼成機は、バウムクーヘンの生地を塗布した回転軸をオーブン内で回転させる。これにより、生地の外周面が一周の全体にわたって略均一に焼き上げられる。外周面が焼き上がると、バウムクーヘン焼成機は、その上からさらに生地を塗布し、オーブン内で回転させる。このように、生地の塗布と、オーブン内での回転による生地の外周面の焼き上げとを繰り返すことで、年輪のような層構造を有するバウムクーヘンが焼き上がる。
【0003】
バウムクーヘンの焼き加減は、品質に大きな影響を与えるため、重要である。従来は、熟練の技術を持った人が、バウムクーヘン焼成機を操作して、適切な焼き加減でバウムクーヘンを焼成していた。
【0004】
例えば、特許第6429138号公報(特許文献1)には、たこ焼きのような穀物粉の生地を略球状に焼成する食品を高品質に自動製造することが可能な食品製造装置が開示されている。この食品製造装置は、生地が注入される凹部が設けられた加熱プレートと、ロボットアームと、撮像部と、制御部を備える。制御部は、画像データを凹部ごとに複数の区画に分割し、区画ごとに生地の画像データから解析された生地の形状及び/又は色に基づいて生地の完成度を判定する。制御部は、優先順位を区画ごとに変更する。制御部は、変更された優先順位に沿ってロボットアームを動作させて生地の接触面との移動及び生地の取り出しを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6429138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、オーブン内での回転するバウムクーヘンの各層の生地の焼き加減を自動的に判断するのが難しい。バウムクーヘン焼成機は、回転ロールに生地に積層し、各層について、回転ロールを回転させながら焼成する。このような構成で、生地の一層ごとの焼成をどのように制御するかが重要になる、バウムクーヘンをおいしく焼き上げるためには、熟練の技を持つ人によるバウムクーヘン焼成機の制御が必要であった。
【0007】
そこで、本願は、オーブンで回転するバウムクーヘンの各層の焼き加減が適切になるよう自動的にバウムクーヘン焼成機を制御できる制御装置、制御方法、制御プログラム、及びバウムクーヘン焼成機を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の制御装置は、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器の生地を前記回転ロールの生地へ塗布する生地塗布位置との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御装置である。前記制御装置は、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御するコンピュータを備える。前記コンピュータは、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行するよう構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、オーブンで回転するバウムクーヘンの各層の焼き加減が適切になるよう自動的にバウムクーヘン焼成機を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の正面図である。
図2図2は、図1に示すバウムクーヘン焼成機の側面図である。
図3図3は、回転ロール3が、生地塗布位置にある状態を示す図である。
図4図4は、コンピュータ8により構成される制御装置の構成例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、コンピュータ8によるバウムクーヘン焼成機1の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、カメラ7の撮影で得られる画像の一例を示す図である。
図7図7は、判定処理に用いるニューラルネットワークの構成例を示す図である。
図8図8は、焼成開始から、焼成終了までに、コンピュータ8が取得する画像群の例を示す図である。
図9図9は、バウムクーヘン焼成機1の焼成動作に基づいて、学習処理のための教師データを収集する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(構成1)
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の制御装置は、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器の生地を前記回転ロールの生地へ塗布する生地塗布位置との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御装置である。前記制御装置は、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御するコンピュータを備える。前記コンピュータは、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行するよう構成される。
【0012】
上記構成1において、コンピュータは、カメラから、オーブンの焼き位置において回転するバウムクーヘンの生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する。この複数の画像群は、オーブンで焼成されるバウムクーヘンの生地の外周面の周方向全体にわたる情報を含む。コンピュータは、この複数の画像群に示される生地の外周面の焼き色に基づいて、回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判断する。これにより、オーブンで焼成されるバウムクーヘンの外周面の周方向の全体にわたる焼き加減がほどよくなった時に、焼き位置から生地塗布位置へ回転ロールを移動させ、外周面に生地を塗布することができる。すなわち、各層の焼成の度合いが適切になるよう焼成時間が制御される。そのため、オーブンで回転するバウムクーヘンの各層の焼き加減が適切になるよう自動的にバウムクーヘン焼成機を制御できる。
【0013】
上記構成1において、前記コンピュータは、前記判定処理において、機械学習により得られた学習済モデルを用いて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定してもよい。学習済モデルは、例えば、過去の生地の外周面の画像と、その画像に対する焼成度合い(焼き加減)の判断結果とを教師データとする機械学習で生成できる。学習済モデルは、例えば、生地の外周面の画像を入力とし、画像が示す焼き色による焼き加減の判断結果を出力するためのデータとすることができる。
【0014】
前記判定処理では、コンピュータは、学習済モデルを用いて、取得した複数の画像群から焼き加減を判断してもよい。例えば、コンピュータは、複数の画像群の焼き加減を順次判定し、画像から判定される焼き加減が所定条件を満たした時を、回転ロールを焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期と判断することができる。学習済モデルを用いることで、過去の画像に対する焼き加減の判断結果と同様に、焼き加減の判断ができる。これにより、例えば、熟練の技を持つ人の焼き加減の判断を再現することができる。
【0015】
(構成2)
上記構成1において、前記コンピュータは、前記バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて、前記操作者による前記バウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する判断推定処理と、前記推定された操作者の判断の結果と、前記判断時を含む期間において前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、前記判定処理で用いられる学習済モデルを生成する学習処理とをさらに実行するように構成されてもよい。
【0016】
操作者による焼き加減の判断結果と、判断時を含む期間に撮影された複数の画像群を教師データとして用いて機械学習することで、操作者の焼き加減の判断を学習することができる。この機械学習で得られた学習済モデルを用いることで、操作者と同様に、生地の外表面の画像に対する焼き加減を判断することができる。その結果、適切な焼き加減判断に基づいて、生地が積層された回転ロールの焼き位置から生地塗布位置への移動の時期を決定することができる。
【0017】
コンピュータは、前記判断推定処理において、例えば、操作者によるバウムクーヘンの生地が積層された回転ロールを焼き位置から生地塗布位置へ移動させる操作の有無により、操作者の焼き加減の判断を推定してもよい。操作者による、バウムクーヘンの生地が積層された回転ロールを焼き位置から生地塗布位置へ移動させる操作は、操作者が生地の焼き加減が適切と判断した時に行われる。そのため、操作者による移動の操作は、焼き加減の判断結果を示すものである。
【0018】
機械学習は、例えば、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングであってもよい。この場合、学習済モデルは、例えば、画像を入力とし、焼き加減の判断結果(例えば、焼き加減を示す値、又は焼き加減が適切か否か等)を出力するためのデータセットであってもよい。データセットは、例えば、ニューラルネットワークの層間の重みを示すパラメータであって、機械学習によって調整された値のパラメータを含む。なお、機械学習は、ニューラルネットワークを用いたものに限られない。例えば、回帰分析又は決定木等を用いた機械学習により、学習済モデルを生成してもよい。このような機会学習の例として、例えば、線形回帰、サポートベクターマシン、サポートベクター回帰、Elastic Net、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト等の手法が挙げられる。
【0019】
(構成3)
上記構成1又は2において、前記コンピュータは、前記複数の画像を取得する際に、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の回転速度、前記バウムクーヘンの生地の外表面の焼成時間、又は、前記オーブンの温度の少なくとも1つをさらに取得してもよい。前記コンピュータは、前記判定処理において、前記複数の画像群が示す前記生地の外周面の焼き色に加えて、取得した前記回転速度、前記バウムクーヘンの生地の外表面の焼成時間、又は前記オーブンの温度の少なくとも1つに基づいて、前記決定を行ってもよい。このように、回転速度、焼成時間又は温度の少なくとも1つを用いることで、回転速度、焼成時間又は温度の少なくとも1つの焼き加減への影響を考慮した判定が可能になる。その結果、焼き加減がより適切になるように、回転ロールを焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期を制御することができる。
【0020】
前記回転速度は、例えば、回転ロールの回転速度であってもよいし、生地の外表面の周方向の移動速度であってもよい。前記オーブンの温度は、例えば、生地の外表面の表面温度、オーブン内の空気の温度、又は、オーブンの熱源の温度、等であってもよい。生地の外表面の焼成時間は、1層の生地の焼成時間である。例えば、生地塗布位置からオーブンの焼き位置に回転ロールが移動した時点からの経過時間を、焼成時間とすることができる。
【0021】
前記バウムクーヘン焼成機は、前記回転ロールの軸周りの回転を検出する回転センサ、前記オーブンの温度を検出する温度センサ、又は、前記焼成時間を計測するタイマの少なくとも1つを備えてもよい。前記コンピュータは、前記回転センサで検出された回転速度、前記温度センサで検出された温度、又は、前記タイマで計測された焼成時間の少なくとも1つを取得するよう構成されてもよい。
【0022】
(構成4)
上記構成2又は3において、前記コンピュータは、前記学習処理において、前記操作者による前記操作の判断時を含む期間における、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の回転速度、前記バウムクーヘンの生地の外表面の焼成時間、又は、前記オーブンの温度の少なくとも1つをさらに用いて、前記学習済モデルを生成してもよい。このように、生地の外周面の画像に加えて、回転速度、焼成時間又は温度の少なくとも1つを教師データとすることで、より適切な焼き加減判断を可能にする学習済モデルを得ることができる。
【0023】
(構成5)
前記コンピュータは、前記判定処理において、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の周方向の移動速度、又は前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の前記外周の直径の少なくとも1つを取得してもよい。前記コンピュータは、前記判定処理において、前記複数の画像群が示す前記生地の外周面の焼き色に加え、取得した前記移動速度又は前記直径の少なくとも1つに基づいて、前記決定を行ってもよい。
【0024】
回転ロールの生地の層が増えると、生地の直径も大きくなる。生地の直径が大きくなると、回転ロールの回転速度が同じでも、生地の外周面の周方向の移動速度は速くなる。生地の外周面の周方向の移動速度、又は生地の外周の直径を判定に用いることで、生地の積層による焼成条件の違いを考慮した判定が可能になる。結果として、焼き加減がより適切になるように、回転ロールを焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期を制御することができる。
【0025】
例えば、コンピュータは、生地の外周面の周方向の移動速度を、回転ロールに積層された生地の外周の直径及び回転ロールの回転速度に基づいて算出してもよい。生地の外周の直径は、例えば、回転ロールに積層された生地の径方向の全体が写る画像において、径方向の生地の寸法を計測することで得ることができる。
【0026】
(構成6)
前記コンピュータは、前記学習処理において、前記操作者による前記焼き加減の判断時を含む期間における、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の周方向の移動速度、又は、前記バウムクーヘンの生地の外周の直径の少なくとも1つをさらに用いて、前記学習済モデルを生成してもよい。これにより、生地の積層による焼成条件の違いを反映した学習済モデルを生成することができる。
【0027】
上記構成1~6の制御装置を含むバウムクーヘン焼成機も本発明の実施形態に含まれる。
【0028】
(構成7)
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機は、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールと、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラと、コンピュータを含む制御装置と、を備える。前記コンピュータは、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を前記回転ロールの生地へ塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御するコンピュータである。前記コンピュータは、前記カメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行するよう構成される。
【0029】
上記のバウムクーヘン焼成機において、前記カメラは、前記回転ロールに積層された前記生地の外周面の軸方向における一部を撮影範囲とするよう設置されてもよい。これにより、簡単な構成で、回転するバウムクーヘンの生地の外周面の焼き加減を判断するのに適した画像を得ることができる。
【0030】
前記カメラは、例えば、焼き位置における回転ロールに積層された生地の径方向の全体が写る画像を撮影するよう設置されてもよい。前記コンピュータは、カメラで撮影された画像から切り出された、生地の径方向の一部の画像を取得してもよい。この場合、前記コンピュータは、生地の径方向の一部の画像を用いて、前記判定処理を実行する。生地の径方向の一部の画像を用いることで、生地の径方向全体の画像うち、焼き加減が色としてよく表れた部分の画像を判定に用いることができる。その結果、より適切な判定が可能になる。
【0031】
カメラは、1台でもよいし、複数台設けられてもよい。カメラの光軸は、回転ロールの軸方向に対して交差するよう配置されてもよい。カメラは、例えば、オーブンの外側において、オーブンの窓を通してオーブン内の生地の外表面を撮影するよう配置されてもよい。また、カメラの光軸とオーブンの焼き位置における回転ロールとの相対位置が固定されるようカメラ及び回転ロールが構成されてもよい。これにより、カメラによる焼き位置における生地の撮影条件を固定することができる。また、カメラの光軸と、オーブンの焼き位置における回転ロールに加え、オーブンのヒーターの相対位置が固定されてもよい。
【0032】
上記構成7のバウムクーヘン焼成機は、前記回転ロールを、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間で移動させる移動機構を備えてもよい。移動機構は、例えば、回転ロールの軸を回転可能に支持する支持部材と、支持部材に支持された回転ロールの軸を移動させるアクチュエータを備えてもよい。支持部材は、例えば、可動アーム、又はレール等のガイドであってもよい。アクチュエータは、例えば、モータ、油圧シリンダその他の動力源とすることができる。
【0033】
可動アームは、一方端がピボット軸で、バウムクーヘン焼成機に対して回転可能に支持され、他方端が、回転ロールの回転軸を回転可能に支持するよう構成されてもよい。この場合アクチュエータは、可動アームを、ピボット軸を中心に回転させるモータを含んでもよい。例えば、回転ロールの軸方向の両端部を回転可能に支持する一対の可動アームが設けられてもよい。
【0034】
なお、移動機構による回転ロールをオーブンの焼き位置から生地塗布位置へ移動させる動作は、回転ロール及び生地容器の少なくとも一方を動かして両者を相対的に近づける動作であってもよい。例えば、回転ロールを動かして生地容器へ近づけてもよいし、生地容器を動かして回転ロールに近づけてもよい。
【0035】
移動機構は、前記コンピュータによって制御される。例えば、コンピュータは、移動機構が備えるアクチュエータの駆動を制御することで、回転ロールの、オーブンの焼き位置と生地塗布位置との間の移動を制御することができる。
【0036】
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の制御方法は、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御方法である。前記制御方法は、コンピュータが、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を前記回転ロールの生地へ塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御する制御工程を有する。前記コンピュータは、前記制御工程において、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を実行する。
【0037】
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の制御方法は、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御方法である。前記制御方法は、コンピュータが、前記バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて、前記操作者による前記バウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する判断推定工程と、前記推定された操作者の判断の結果と、前記判断時を含む期間において前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、前記判定処理で用いられる学習済モデルを生成する学習工程とを有する。前記学習済モデルは、コンピュータが、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理で用いられるデータである。
【0038】
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の制御プログラムは、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御プログラムある。前記制御プログラムは、コンピュータに、バウムクーヘンの生地が積層された前記回転ロールを、前記生地容器の生地を前記回転ロールへ塗布する生地塗布位置から前記オーブンの焼き位置へ移動させる動作、及び前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる動作を制御する制御処理を実行させる。前記制御処理は、前記回転ロールに積層された前記バウムクーヘンの生地の外周面の一部を撮影するカメラから、前記オーブンの焼き位置において前記回転ロールの回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する画像取得処理と、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理と、を含む。
【0039】
本発明の実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の制御プログラムは、オーブンと、生地容器と、前記オーブンの焼き位置と前記生地容器との間を移動可能な回転ロールとを備えるバウムクーヘン焼成機の制御プログラムである。前記制御プログラムは、前記バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて、前記操作者による前記バウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する判断推定処理と、前記推定された操作者の判断の結果と、前記判断時を含む期間において前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、前記判定処理で用いられる学習済モデルを生成する学習処理とをコンピュータに実行させる。前記学習済モデルは、前記コンピュータが、前記オーブンの焼き位置における前記生地の外周面の少なくとも1周分の前記複数の画像群により示される前記生地の外周面の焼き色に基づいて、前記回転ロールを前記オーブンの焼き位置から前記生地塗布位置へ移動させる時期を決定する判定処理で用いられるデータである。
[実施形態]
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化又は模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0040】
(バウムクーヘン焼成機の構成例)
図1は、本実施形態におけるバウムクーヘン焼成機の正面図である。図2は、図1に示すバウムクーヘン焼成機の側面図である。図1及び図2に示すバウムクーヘン焼成機1は、オーブン2と、バウムクーヘンの生地を積層して回転する回転ロール3と、バウムクーヘンの焼成前の生地を収納する生地容器4と、回転ロール3をオーブンの焼き位置と、生地塗布位置との間で移動させる移動機構(5、6)と、バウムクーヘン焼成機の動作を制御する制御装置を構成するコンピュータ8とを備える。
【0041】
バウムクーヘン焼成機1は、さらに、カメラ7、及び照明72、各種センサ(図1では図示略)を備える。各種センサは、例えば、オーブンの温度を測る温度センサ、回転ロール3に積層されたバウムクーヘンの生地の回転速度を検出する回転センサ、バウムクーヘンの生地の焼成時間を計測するタイマの少なくとも1つを含むことができる。
【0042】
カメラ7は、焼き位置にある回転ロール3に積層されたバウムクーヘンの生地Wの外表面の一部を撮影可能な位置に配置される。カメラ7の光軸は、バウムクーヘンの生地Wの外表面と交差する。カメラ7は、支持部材71に支持される。支持部材71により、カメラ7の光軸と、焼き位置にある回転ロール3の相対位置が固定される。照明72は、カメラ7の撮影範囲に含まれる領域に光を照射する。
【0043】
カメラ7は、バウムクーヘンの生地Wが積層された回転ロール3が少なくとも一周する期間に、複数の外表面の画像を撮影する。カメラ7が、例えば、回転するバウムクーヘンの生地Wの動画を撮影する。これにより、バウムクーヘンの生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群が得られる。
【0044】
オーブン2は加熱炉であり、内部にはヒーター22が設けられる。オーブン2は、開閉可能な窓21を有する。窓21の前には、生地容器4が配置される。生地容器4は、台41の上に載せられる。
【0045】
図1及び図2に示す例では、オーブン2の内部の焼き位置に、回転ロール3に積層されたバウムクーヘンの生地が配置されている。回転ロール3の両端は、一対のアーム5に回転可能に支持される。回転ロール3は、例えば、モータ(図示略)によって回転する。コンピュータ8はこのモータを制御することで、回転ロール3の回転を制御することができる。
【0046】
一対のアーム5は、バウムクーヘン焼成機1に対して、ピボット軸PAを中心に回転可能に取り付けられる。アーム5には、アクチュエータ6が接続される。アクチュエータ6が駆動することで、アーム5が回転する。アクチュエータ6は、例えば、モータである。アクチュエータ6の駆動は、コンピュータ8によって制御される。コンピュータ8は、アクチュエータ6の駆動を制御することで、アーム5の回転を制御する。アーム5の回転を制御することで、回転ロール3の位置が制御される。本例では、アーム5とアクチュエータ6により、回転ロール3の移動機構が構成される。
【0047】
コンピュータ8は、回転ロール3の位置を制御することにより、バウムクーヘンの生地Kが積層された回転ロール3を、生地塗布位置と、オーブン2の焼き位置との間で移動させる。生地塗布位置は、生地容器4の生地を回転ロール3の生地に塗布する位置である。図3は、回転ロール3が、生地塗布位置にある状態を示す図である。生地塗布位置は、生地容器4の上方の位置である。生地塗布位置で回転ロール3が回転することにより、回転ロール3に積層されたバウムクーヘンの生地Kの外周面にさらに生地が塗布される。コンピュータ8による回転ロール3の位置の検出構成は、特に限られない。例えば、回転ロール3又はアーム5の位置を検出する位置検出センサがバウムクーヘン焼成機1に設けられてもよい。或いは、コンピュータ8が、アクチュエータ6の動作に基づき回転ロール3の位置を検出するよう構成されてもよい。
【0048】
コンピュータ8は、回転ロール3を生地塗布位置で少なくとも1周回転させることで、回転ロール3に1層分のバウムクーヘンの生地Kを塗布する。コンピュータ8は、バウムクーヘンの生地Kが塗布された回転ロール3を生地塗布位置からオーブン2の焼き位置へ移動させる。これにより、塗布した1層分の生地の焼成が開始される。
【0049】
コンピュータ8は、カメラ7から、オーブン2の焼き位置において回転ロール3の回転に伴い回転するバウムクーヘンの生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する。コンピュータ8は、カメラ7で撮影された複数の画像群が示すバウムクーヘンの生地の外表面の焼き色に基づいて、焼き加減を判断する。コンピュータ8は、焼き加減の判断結果に基づいて、回転ロール3をオーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期を決定する。これにより、良い焼き加減と判断された場合に、回転ロール3をオーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させることができる。回転ロール3がオーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させることで、焼成が終了する。すなわち、コンピュータ8により、1層分のバウムクーヘンの生地の焼き加減が判断され、適切な焼き加減になるよう1層分の生地の焼成時間が制御される。
【0050】
コンピュータ8は、回転ロール3の位置を制御して、バウムクーヘンの生地を塗布してオーブン2で焼成する動作を、複数回繰り返す。これにより、バウムクーヘンの複数の層の生地が焼成される。各層の焼成では、カメラ7の画像に基づき適切な焼き加減になるよう焼成時間が制御される。
【0051】
(制御装置(コンピュータ)の構成例)
図4は、コンピュータ8により構成される制御装置の構成例を示す機能ブロック図である。図4に示す例では、コンピュータ8は、制御部81、画像取得部82、判定部83、判断推定部84、及び学習部85を備える。制御部81は、移動機構(アーム5とアクチュエータ6)を制御する。これにより、制御部81は、バウムクーヘンの生地が積層された回転ロール3を、生地塗布位置からオーブン2の焼き位置へ移動させる動作(焼成を開始する動作)、及び、オーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させる動作(焼成を終了する動作)を制御する。また、制御部81は、回転ロール3の回転を制御する。このようにして、コンピュータ8により、回転ロール3の軸周りの回転、及び、回転ロール3の軸に垂直な方向への移動が制御される。なお、制御部81は、オーブン2のヒーター22を制御してもよい。すなわち、コンピュータ8は、オーブン2を制御することもできる。
【0052】
画像取得部82は、カメラ7から、オーブン2の焼き位置において回転ロール3の回転に伴い回転する生地の外周面を少なくとも1周分を撮影した複数の画像群を取得する。画像取得部82は、例えば、所定周期で撮影された生地の外周面の一部の画像群を、カメラ7から取得する。取得される画像群のそれぞれは、生地の径方向全体が写る画像から生地の径方向の一部を切り取った画像であってもよい。判定部83は、画像取得部82が取得した複数の画像群により示される生地の外周面の焼き色に基づいて、回転ロール3をオーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期を決定する。判定部83は、この決定処理において、学習済モデルを用いることができる。
【0053】
判定部83は、例えば、学習済モデルを用いて、生地の外周面の画像を入力とし、焼き加減の評価値を出力とする処理を実行する。学習済モデルは、過去の生地の外周面の画像と、評価結果とを教師データとして、機械学習をすることにより生成されるデータとすることができる。
【0054】
判断推定部84及び学習部85は、バウムクーヘン焼成機1で行われた焼成の操作とその結果を示すデータを用いて機械学習を実行し、学習済モデルを生成する。判断推定部84は、バウムクーヘン焼成機1に対する操作者の操作に基づいて、操作者によるバウムクーヘンの生地の焼き加減の判断を推定する。学習部85は、推定された操作者の判断の結果と、その判断がされた際の生地の外周面の画像群とを教師データとする機械学習を実行する。教示データとする画像群は、操作者の判断時を含む期間においてオーブン2の焼き位置における生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とすることができる。機械学習により生成される学習済モデルは、コンピュータ8がアクセス可能な記録装置に記録される。
【0055】
コンピュータ8は、バウムクーヘン焼成機1が備える操作受付部に接続されている。操作受付部は、バウムクーヘン焼成機1に対する操作を操作者から受け付ける。操作受付部は、例えば、図1に示す、操作パネル91、及び、操作ボタン92等の操作子等で構成される。操作受付部は、操作者から、例えば、回転ロール3の動作、及びオーブンの温度に対する操作を受け付けることができる。操作受付部が、回転ロール3の動作として、操作者から、回転ロール3を生地塗布位置に移動させる操作、回転ロール3を生地塗布位置からオーブン2の焼き位置に移動させる操作(焼成開始操作)、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置に移動させる操作(焼成終了操作)、回転ロール3の回転速度を制御する操作、等を受け付ける。
【0056】
判断推定部84は、例えば、生地が積層された回転ロール3がオーブン2の焼き位置で回転している時に、操作者が、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置に移動させる操作をしない場合、操作者は、焼き加減が十分でない、すなわち、未焼き上がりであると判断したと推定することができる。この場合、回転ロール3の回転時にカメラ7で撮影された生地の外周面の画像が、未焼き上がりの判断の結果と対応付けて教師データとして記録される。
【0057】
また、判断推定部84は、例えば、生地が積層された回転ロール3がオーブン2の焼き位置で回転している時に、操作者が、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置に移動させる操作をした場合、操作者は、焼き加減が良好であると判断したと推定することができる。この場合、操作時を含む期間において、回転ロール3が少なくとも1周回転する間にカメラ7で撮影された生地の外周面の画像が、良好な焼き上がりの判断の結果と対応付けて教師データとして記録される。
【0058】
図4に示す例では、コンピュータ8は、バウムクーヘン焼成機が備える、温度センサ、回転センサ、及びタイマが接続される。判定部83及び学習部85は、これらのセンサの少なくとも1つで検出される情報を用いて、上記の判定処理又は学習処理を実行することができる。学習処理の具体例については、後述する。
【0059】
温度センサは、例えば、オーブン内の空気の温度を測る温度計であってもよいし、バウムクーヘンの外表面の温度を測る放射温度計であってもよいし、ヒーター22の温度、電流、電圧等の出力値から温度を検出するものであってもよい。
【0060】
回転センサは、例えば、回転ロール3の軸とともに回転する被検出素子の動きを、光、磁気、又は機械的に検出する検出器を備えるものであってもよい。又は、回転センサは、回転ロール3の回転を制御するモータの出力値から、回転ロール3の回転を検出するよう構成されてもよい。
【0061】
タイマは、例えば、コンピュータ8の一部であってもよい。タイマは、例えば、回転ロール3が焼き位置に配置されてからの経過時間を計測することで、焼成時間を計測することができる。
【0062】
制御装置を構成するコンピュータ8は、プロセッサ及びメモリを有する。制御装置は、2以上のコンピュータで構成されてもよい。コンピュータ8によるバウムクーヘン焼成機の制御処理は、プロセッサが、所定のプログラムを実行することで実現できる。コンピュータ8に制御処理を実行させるプログラム及びプログラムを記録した非一時的(non-transitory)な記録媒体も、本発明の実施形態に含まれる。なお、図1に示す例では、コンピュータ8は、バウムクーヘン焼成機1に内蔵される。これに対して、コンピュータ8は、バウムクーヘン焼成機1のオーブン2、回転ロール3、及び移動機構を含む焼成機の部分と、ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。
【0063】
(制御処理例)
図5は、コンピュータ8によるバウムクーヘン焼成機1の制御処理の一例を示すフローチャートである。図5に示す例では、コンピュータ8は、1層分の生地を回転ロール3に塗布して焼成する動作をバウムクーヘン焼成機1にさせる場合の例である。コンピュータ8は、回転ロール3を生地塗布位置で回転させ、1層分の生地を回転ロール3に積層された生地の外周面に塗布する(S1)。塗布後、コンピュータ8は、回転ロール3を生地塗布位置からオーブン2の焼き位置へ移動させる(S2)。これにより、焼成が開始される。焼成工程では、オーブン2の焼き位置において、バウムクーヘンの生地が積層された回転ロール3が回転する。
【0064】
コンピュータ8は、回転ロール3の回転に伴い回転する生地の外周面を撮影した画像をカメラ7から取得する(S3)。図6は、カメラ7の撮影で得られる画像の一例を示す図である。図6に示す例では、カメラ7により、回転ロール3に積層された生地Kの軸方向の一部であって、径方向全体が写る範囲の画像が撮影される。コンピュータ8は、この画像から、生地Kの径方向の中央部A1の画像を切り出して取得する。すなわち、画像に写る生地Kの径方向の端Keを含まない生地の領域の画像が切り出される。これにより、生地の外表面に焼き加減がよく現れている部分の画像を取得できる。例えば、画像に写る生地Kの径方向の端Ke付近の生地の色は、ヒーター22の光等による影響を受けやすい。生地Kの径方向の中央部A1の画像を切り出すことで、ヒーター22の光等の影響の少ない部分の画像を取得することができる。
【0065】
コンピュータ8は、画像の取得と同期して、センサデータを取得する(S4)。センサデータは、例えば、温度センサ(放射温度計)で検出されたバウムクーヘンの外表面の表面温度を含む。また、センサデータとして、タイマで計測された焼成時間が取得される。焼成時間は、焼成開始からの経過時間である。
【0066】
コンピュータ8は、学習済モデルを用いて、S3で取得した画像及びS4で取得したセンサデータに基づく、焼き加減の判定値を決定する(S5)。すなわち、コンピュータ8は、画像の示す生地外表面の焼き色、及び、生地の表面温度、及び焼成時間に基づいて、焼き加減を判定する。学習済モデルは、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングにより生成されたデータとすることができる。すなわち、コンピュータ8は、ニューラルネットワークを用いた人工知能技術を使って、画像及びセンサデータから、焼き加減を判定することができる。
【0067】
図7は、判定処理に用いるニューラルネットワークの構成例を示す図である。図7に示す例では、カラーカメラ画像からバウムクーヘン表面の部分が切り出される。切り出された画像は、畳み込みニューラルネットワークLS1に入力される。畳み込みニューラルネットワークLS1、32個のパラメータ(特徴量)を出力する。また、焼成時間とバウムクーヘンの表面温度の値は、一例としてユニット数5の全結合層L1に入力される。この全結合層L1は、5個のパラメータを出力する。32個のパラメータと5個のパラメータは、連結され、さらに、全結合層L2に入力される。この全結合層L2からの出力は、次の全結合層L3に入力され、この全結合層L3から判定値(例えば、0~1)が出力される。
【0068】
図7に示す例では、カメラの画像が、畳み込みニューラルネットワークに入力され、センサデータが、全結合層に入力される。畳み込みニューラルネットワークを経た画像特徴量と、全結合層を経たセンサデータのパラメータは、連結されてさらに全結合層に入力される。この全結合層とさら他の全結合層を経て、焼き加減の判定値が出力される。このように、機械学習のモデルは、入力された画像を特徴量に変換する畳み込みニューラルネットワークと、センサデータを入力する第1入力層と、画像の特徴量とセンサデータの入力層の出力とを結合したパラメータを入力する第2入力層と、第2入力層の出力をさらに変換する層とを有する構成とすることができる。このように、画像とセンサデータを結合するニューラルネットワークの構成を用いることで、画像及びセンサデータに基づく焼き加減の判定ができる。なお、判定処理で用いられるニューラルネットワークの構成は、図7に示す例に限られない。例えば、全結合層の層数、パラメータの数は、必要に応じて適宜設定することができる。また、全結合層L1に入力されるセンサデータも、図7の例に限られない。例えば、回転ロール3の回転速度、オーブンの温度、又は焼成時間の少なくとも1つの値が、全結合層L1に入力されてもよい。
【0069】
コンピュータ8は、S5で決定した焼き加減の判定値が所定の条件を満たす場合(S6でYES)、回転ロール3をオーブン2の焼き位置から生地塗布位置へ移動させ、焼成終了する。コンピュータ8は、例えば、判定地が予め決められたしきい値以上である場合に、焼き上がりと判断し、オーブンからバウムクーヘンを取り出す動作を移動機構にさせる。
【0070】
コンピュータ8は、S5で決定した焼き加減の判定値が所定の条件を満たさない場合(S6でNO)、S3に戻って、画像を取得し、S4~S6の処理を繰り返す。図5に示す例では、複数の画像群のそれぞれに対して、焼き加減の判定処理が実行される。これにより、回転ロール3が少なくとも1周する間に撮影された複数の画像群に対して、焼き加減の判定、及び、判定に基づく焼成終了の判断処理が実行される。
【0071】
図8は、焼成開始から、焼成終了までに、コンピュータ8が取得する画像群の例を示す図である。例えば、焼成開始後、所定周期(例えば、0.5秒ごと)に1枚の画像がカメラ7で撮影される。コンピュータ8は、カメラ7で撮影された画像を順次取得する。図8に示す例では、n枚の画像G1~Gnが取得される。画像G1~G(n-1)では、焼き加減の判定値が条件を満たさず、n枚目の画像Gnで、焼き加減の判定値が条件を満たす。n枚目の画像Gnを取得した時点で、焼成が終了される。
【0072】
なお、上記例では、画像1枚ごとに、焼き加減判定及び焼成終了判断を実行しているが、複数の画像について、焼き加減及び焼成終了を判断してもよい。
【0073】
また、上記例では、センサデータとして、焼成時間と温度が取得される。コンピュータ8は、センサデータとして、回転ロールに積層されたバウムクーヘンの生地の回転速度を取得してもよい。コンピュータ8は、図5のS4において、回転センサで検出された回転ロール3の回転速度を取得することができる。コンピュータ8は、画像と回転速度に基づいて焼き加減を判定してもよい。また、コンピュータ8は、カメラ7の画像と回転速度から、バウムクーヘンの生地の外周面の周方向の移動速度を取得することができる。
【0074】
例えば、図6に示す画像から、回転ロール3に積層された生地の外周の直径D1を計測することができる。画像から得られる直径D1と、回転センサから得られる回転ロール3の回転速度を用いて、生地の外周面の周方向の移動速度を計算することができる。コンピュータ8が、生地の外周面の周方向の移動速度と、画像とを用いて、焼き加減を判定してもよい。これにより、生地の積層量による焼成条件の変化を加味した判定が可能になる。また、コンピュータ8は、直径D1と画像とを用いて、焼き加減判定をしてもよい。この場合も、生地の積層量による焼成条件の変化を加味した判定が可能になる。
【0075】
(学習処理例)
図9は、バウムクーヘン焼成機1の焼成動作に基づいて、学習処理のための教師データを収集する処理の一例を示すフローチャートである。図9に示す例では、バウムクーヘン焼成機1が、操作者の操作に従って、1層分の生地を回転ロール3に塗布して焼成する場合の例である。バウムクーヘン焼成機1は、操作者の操作に従って、回転ロール3を生地塗布位置で回転させ、1層分の生地を回転ロール3に積層された生地の外周面に塗布する(S11)。塗布後、操作者の操作により、回転ロール3が生地塗布位置からオーブン2の焼き位置へ移動する(S12)。これにより、焼成が開始される。焼成工程では、オーブン2の焼き位置において、バウムクーヘンの生地が積層された回転ロール3が回転する。
【0076】
コンピュータ8は、回転ロール3の回転に伴い回転する生地の外周面を撮影した画像をカメラ7から取得する(S13)。画像の取得処理は、例えば、図5のS3と同様に実行することができる。コンピュータ8は、画像の取得と同期して、センサデータを取得する(S14)。センサデータは、図5のS5で取得されるデータと同じセンサのデータが取得される。
【0077】
バウムクーヘン焼成機1は、バウムクーヘンの焼成中、焼成終了の操作を受け付ける(S15)。具体的には、生地が積層された回転ロール3がオーブン2の焼き位置で回転している期間は、操作者は、いつでも、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置へ移動させる操作をバウムクーヘン焼成機1に対して行うことができる。操作者が、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置へ移動させる操作を行うと、焼成は終了する。
【0078】
焼成中に、一定期間、操作者からの焼成終了の操作がない場合(S16でNO)、コンピュータ8は、操作者が未焼き上がりと判断したと推定する。この場合、コンピュータ8は、未焼き上がりの判定結果と、S13で取得した画像、及びS14で取得したセンサデータを対応付けて、教師データとして記録装置に記録する。その後、コンピュータ8は、再度、S13の画像取得処理を実行し、S14~S16の処理を繰り返す。例えば、回転ロール3が少なくとも1周する期間に撮影された複数の画像群のそれぞれに対して、S13~S16の処理が実行される。
【0079】
焼成中に、操作者からの焼成終了の操作がある場合(S16でYES)、コンピュータ8は、操作者が良好な焼き加減と判断したと推定する。この場合、コンピュータ8は、良好な焼き加減の判定結果と、S13で取得した画像、及びS14で取得したセンサデータを対応付けて、教師データとして記録装置に記録する。焼成終了の操作は、回転ロール3を焼き位置から生地塗布位置へ移動させる操作である。回転ロール3が焼き位置から移動すると焼成は終了する(S18)。
【0080】
図9に示す処理により、回転ロール3に積層されて回転する生地の外表面の少なくとも1周分の複数の画像群が、焼き加減の判定結果と対応付けられて記録される。コンピュータ8の学習部85は、複数の画像群と対応付けられた焼き加減の判定結果を教師データとして、機械学習を実行して、学習済モデルを生成する。機械学習は、これに限られないが、例えば、図7に示す構成のニューラルネットワークを用いたディープラーニングにより実行することができる。
【0081】
例えば、ニューラルネットワークのモデルを用いる場合の学習処理例について説明する。学習部85は、学習前のモデルに対して教師データの画像及びセンサデータを入力して得られる学習前モデルの出力(判定結果)と、教師データの判定結果とを照合して、より一致度が高くなるように、層間の重み付けを調整する。例えば、図7に示す構成のモデルの場合、畳み込みニューラルネットワークLS1に、教師データとして記録された画像が入力され、全結合層L1に、その画像に対応づけて記録されたセンサデータ(例えば、焼成時間と表面温度)が入力される。この入力に対するモデルの出力結果(判定値)が、入力した画像に対応付けられた教師データの判定結果と照合される。モデルの出力と教師データの一致度が高くなるよう、ニューラルネットワークの各層間の重み付けパラメータが調整される。多数の画像の教師データを用いて、モデルの重み付けパラメータを調整する学習処理が実行される。学習処理により重みが調整されたモデルが学習済モデルとなる。
【0082】
なお、コンピュータ8の学習処理は、ニューラルネットワークを用いた機械学習に限られない。例えば、回帰分析又は決定木等を用いたその他の機械学習が用いられてもよい。
【0083】
コンピュータ8は、例えば、熟練の技を持つ職人がバウムクーヘン焼成機1を操作してバウムクーヘンを焼成する際に、操作から推定される判断結果と、判断の際の画像とセンサデータとを対応付けて教師データとして記録することができる。このような職人の操作による焼成について記録された教師データを用いて機械学習することで、この職人と同じ焼成時間の制御を可能にする学習済モデルを生成することができる。
【0084】
(その他の変形例)
上記例では、カメラ7の画像を用いた焼き加減の判定に基づく制御の対象は、焼成時間(回転ロールの焼き位置からの移動時期)であるが、コンピュータ8の制御対象はこれに限られない。例えば、カメラ7で撮影された、オーブンの焼き位置におけるバウムクーヘンの生地の外周面の少なくとも1周分の複数の画像群に基づいて、回転ロール3の回転速度、又は、オーブンの温度の少なくとも1つを制御することができる。この場合、コンピュータ8は、機械学習により生成された学習済モデルを用いて、複数の画像群に基づく、回転速度又はオーブンの温度の少なくとも1つの制御を決定することができる。学習済モデルは、例えば、生地の外周面の画像を入力とし、回転速度又はオーブン温度の少なくとも1つの制御情報を出力とする処理を実行するためのデータセットであってもよい。コンピュータ8は、操作者のバウムクーヘン焼成機の操作による焼成中に検出される回転速度又はオーブン温度の少なくとも1つと、カメラ7の画像とを教師データとして、上記の学習モデルを生成することができる。
【0085】
例えば、コンピュータ8は、カメラ7で撮影された画像が示す生地の直径の時間変化、又は、軸方向における直径の変化(外周面の凹凸形状)に応じて、回転ロール3の回転速度を調整してもよい。或いは、コンピュータ8は、画像に基づき判定される焼き加減に応じて、オーブン2のヒーター22の火力を調整してもよい。
【0086】
コンピュータ8は、複数の画像群に加えて、画像群の取得の際に取得した回転速度、焼成時間、又は、オーブンの温度の少なくとも1つに基づいて、回転速度又はオーブンの温度の少なくとも1つの制御を決定してもよい。この決定処理には、学習済モデルとして、回転速度、焼成時間、又は、オーブンの温度の少なくとも1つと、生地の外表面の画像とを入力として、制御情報を出力とするためのデータセットが用いられてもよい。また、コンピュータ8は、操作者のバウムクーヘン焼成機の操作に基づき、このような学習済モデルを生成してもよい。コンピュータ8は、例えば、操作者による回転速度、及びオーブンの温度の少なくとも1つの操作を検出し、操作の検出時を含む期間に撮影された生地の外周面の画像群と、検出した操作とを教師データとして、学習済みモデルを生成することができる。検出する操作の例として、例えば、回転ロール3の回転速度を調整する操作、又は、オーブン2の温度を調整する操作等が挙げられる。
【0087】
また、コンピュータ8が、判定処理に用いるセンサデータは、上記例に挙げた、回転速度、オーブンの温度、及び、焼成時間に限られない。これらのうちの1つ又は2つが、判定処理に用いられてもよい。また、これら以外のセンサデータが判定処理に用いられてもよい。例えば、カメラ7の画像に加えて回転ロール3の回転速度を用いて判定処理を実行することで、回転速度による焼成条件の変化を考慮した判定が可能になる。また、カメラ7の画像に加えてオーブンの温度を用いて判定処理を実行することで、オーブンの温度による焼成条件の変化を考慮した判定が可能になる。また、カメラ7の画像に加えて焼成時間を用いて判定処理を実行することで、焼成時間の変化を考慮した判定が可能になる。
【0088】
また、バウムクーヘンの生地に関する生地情報が判定処理に用いられてもよい。生地情報は、例えば、塗布前の生地容器の生地の温度、生地の種類(例えば、プレーン、チョコ、抹茶、コーヒー、いちご等、生地の含有物による種類も含む)、生地重量、生地体積、又は、生地密度の少なくとも1つを含んでもよい。例えば、コンピュータ8は、カメラ7から生地の外表面の複数の画像を取得する際に、生地に関する生地情報をさらに取得してもよい。この場合、コンピュータ8は、判定処理において、複数の画像群が示す生地の外周面の焼き色に加え、取得した生地情報に基づいて、回転ロール3をオーブンの焼き位置から生地塗布位置へ移動させる時期を決定する。
【0089】
この決定処理には、学習済モデルが用いられてもよい。学習モデルは、例えば、生地の外周面の画像を入力とし、画像が示す焼き色による焼き加減の判断結果を出力するためのデータとすることができる。コンピュータ8は、バウムクーヘン焼成機に対する操作者の操作に基づいて推定された操作者の焼き加減判断の結果と、生地情報と、判断時を含む期間においてオーブンの焼き位置における生地の外周面の少なくとも1周分を撮影した複数の画像群とを教師データとして用いた機械学習により、学習済モデルを生成することができる。
【0090】
バウムクーヘン焼成機1は、生地情報を取得する入力部又はセンサを備えてもよい。コンピュータ8は、入力部又はセンサから生地情報を取得することができる。例えば、生地容器4の生地の重量を測る重量センサ、生地容器4の生地の温度を測る生地温度センサ、生地容器4の生地の体積を測る体積センサの少なくとも1つがバウムクーヘン焼成機1に設けられてもよい。或いは、生地情報の入力を操作者から受け付けるインタフェースである入力部がバウムクーヘン焼成機1に設けられてもよい。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。
【符号の説明】
【0092】
1:バウムクーヘン焼成機、2:オーブン、3:回転ロール、4:生地容器、5:アーム、6:アクチュエータ、7:カメラ
図1
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