(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082422
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】イオン発生装置
(51)【国際特許分類】
H01T 19/04 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
H01T19/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119978
(22)【出願日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2020193268
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304062432
【氏名又は名称】株式会社 リブレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗敬
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徹
(57)【要約】
【課題】イオンや微量のオゾンを遠方まで好適に送ることができるイオン発生装置を提供する。
【解決手段】空気を送るファン11と、ファン11から送られた空気の流路となる風洞円筒23と、風洞円筒23の内部に設けられ電圧が印加される複数の針電極14と、風洞円筒23の出口側に設けられ針電極14よりも低電位となる板状の対抗電極20と、を具備し、針電極14は、それぞれの針先部15が風洞円筒23の出口側に向かうよう平行に設けられ、対抗電極20には、針電極14の延長線上に空気が流れる通過孔21が形成されている。これにより、イオン発生装置から排出されるイオンや微量のオゾンを減衰させることなく室内の遠方まで到達させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を送るファンと、
前記ファンから送られた前記空気の流路となる風洞円筒と、
前記風洞円筒の内部に設けられ電圧が印加される複数の針電極と、
前記風洞円筒の出口側に設けられ前記針電極よりも低電位となる板状の対抗電極と、を具備し、
前記針電極は、それぞれの針先部が前記風洞円筒の出口側に向かうよう平行に設けられ、
前記対抗電極には、前記針電極の延長線上に前記空気が流れる通過孔が形成されていることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記風洞円筒の内径は、前記ファンの外周を覆うファンケーシングの内径に等しいかまたは前記ファンケーシングの内径よりも大きく、
前記針電極は、前記風洞円筒と同軸で前記ファンケーシングの内径よりも小径の円周上に均等配置されていることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記通過孔には、前記通過孔から流出する前記空気の流れをガイドするガイドパイプが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記ガイドパイプは、前記風洞円筒の同一周方向に傾斜し且つ前記風洞円筒の径方向に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載のイオン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生装置に関し、特に、針電極による高電界で生成されるイオンやオゾンを含む空気をファンの送風によって室内に供給するイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中に負イオンを供給する各種のイオン発生装置が知られている。
例えば、特許文献1には、ケーシング内に、複数の羽根及びこれら羽根を放射状に支持する中心部からなる軸流ファンと、この軸流ファンによって生成される気流の下流側に設けられた複数の放電電極と、を備え、放電電極によって生成されるイオンを気流によって噴出させる除電装置が開示されている。
【0003】
また例えば、特許文献2には、ケース内に設けられ空気を流すファンと、ケース内に流入する空気から不純物を除去するプレフィルタと、ファンの下流に設けられて放電する針電極と、針電極の下流に設けられた対向電極と、を有するイオン発生装置が開示されている。
【0004】
この種のイオン発生装置の機能の一つとして、空気清浄機としての機能がある。空気中の埃やウィルス等の粒子は、イオン発生装置から供給されたイオンにより帯電し、静電力によって周囲の構造物等に付着する。これにより、空気中の埃等が徐々に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-216174号公報
【特許文献2】特開2020-149961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術のイオン発生装置は、イオンによる空気清浄等の性能を高めるために改善すべき点があった。
【0007】
即ち、イオンによる空気清浄等の効果を高めるためには、イオンを対象室内全域に安定的に供給することが求められる。ところが、上記した従来技術のイオン発生装置は、イオンを遠く離れた場所に送ることが難しく、室内の全域にイオンを供給することが困難であった。
【0008】
具体的には、先ず第1に、イオンが構造物に付着して減衰するという問題点がある。即ち、イオン発生装置から送り出されたイオンは、静電力によって、床面、机、椅子等の構造物に吸着される。これにより、空気中のイオン量は、イオン発生装置から1~2mの距離で、速やかに減衰する。
【0009】
第2に、構造物が帯電によりイオンの進行の障壁になるという問題点がある。即ち、周囲の構造物が帯電することにより、帯電電圧による静電力でイオンの移動ルートが曲げられてしまう。場合によっては、反射に近いほどのルート変更が発生することもある。また例えば、温度や湿度の変化等により構造物の帯電が変化すると、イオンの流れ経路も変化する。そのため、場所によってイオン測定量が大きく変化し、安定した量のイオンが得られない。
【0010】
また第3の課題として、イオン発生装置から排出されたイオン同士が互いに反発して分散するという問題点がある。例えば、複数の排出口から吹き出されたイオンは、反発し合って吹き出し方向からそれて広がる。これにより、イオンを吹き出し方向の遠方に到達させることができず、室内の全体にイオンを充満させることは難しい。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イオンや微量のオゾンを遠方まで好適に送ることができるイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のイオン発生装置は、空気を送るファンと、前記ファンから送られた前記空気の流路となる風洞円筒と、前記風洞円筒の内部に設けられ電圧が印加される複数の針電極と、前記風洞円筒の出口側に設けられ前記針電極よりも低電位となる板状の対抗電極と、を具備し、前記針電極は、それぞれの針先部が前記風洞円筒の出口側に向かうよう平行に設けられ、前記対抗電極には、前記針電極の延長線上に前記空気が流れる通過孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のイオン発生装置によれば、空気を送るファンと、ファンから送られた空気の流路となる風洞円筒と、風洞円筒の内部に設けられ電圧が印加される複数の針電極と、風洞円筒の出口側に設けられ針電極よりも低電位となる板状の対抗電極と、を具備し、針電極は、それぞれの針先部が風洞円筒の出口側に向かうよう平行に設けられ、対抗電極には、針電極の延長線上に空気が流れる通過孔が形成されている。これにより、イオン発生装置から排出されるイオンや微量のオゾンを減衰させることなく室内の遠方に送ることができる。
【0014】
具体的には、複数の針電極は、それぞれの針先部が風洞円筒の出口側に向かうよう平行に設けられているので、ファンから送られる気流方向に略沿って延在する。よって、針電極近傍の空気抵抗は小さく、ファンから送られた空気を効率良く流すことができる。
【0015】
そして、対抗電極には、それぞれの針電極に対応して針電極の延長線上に空気が流れる通過孔が形成されている。即ち、対抗電極に通過孔が形成されることにより、複数の針電極と複数の通過孔はそれぞれ対となると共に、複数の針電極にそれぞれ対抗する複数の電極部分が形成される。その結果、個々の針電極と通過孔毎に、好適な気流と共に、イオンと微量のオゾンが好適に生成される。そして、増量されたイオンは、好適な空気流れによって風洞円筒から送り出され、室内の遠方に到達する。
【0016】
また、本発明のイオン発生装置によれば、前記風洞円筒の内径は、前記ファンの外周を覆うファンケーシングの内径に等しいかまたは前記ファンケーシングの内径よりも大きく、前記針電極は、前記風洞円筒と同軸で前記ファンケーシングの内径よりも小径の円周上に均等配置されても良い。このように、ファンケーシングと同じ内径かそれよりも大径の風洞円筒が設けられることにより、空気抵抗の少ない好適な流路が形成される。そして、針電極が円周上に略均等に配置されることにより、複数の針電極に対してそれぞれ好適な気流が得られると共に、通過孔との位置関係も良く対抗電極の形態も良好となって効率的なイオン発生が実現する。
【0017】
また、本発明のイオン発生装置によれば、前記通過孔には、前記通過孔から流出する前記空気の流れをガイドするガイドパイプが設けられても良い。これにより、空気が通過孔を通過する際に、カルマン渦による不要の空気抵抗を減ずることができ、更に効率良く、強い流れをビーム状に集中させて送り出すことができる。
【0018】
また、本発明のイオン発生装置によれば、前記ガイドパイプは、前記風洞円筒の同一周方向に傾斜し且つ前記風洞円筒の径方向に傾斜するよう設けられても良い。これにより、傾斜するガイドパイプから効率良く空気を吹き出し、略螺旋状の気流を生成することができる。よって、イオンを含む空気を室内の遠方まで到達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るイオン発生装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るイオン発生装置のイオン発生器の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るイオン発生装置のイオン発生器の針電極ユニット近傍の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るイオン発生装置のイオン発生器の分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るイオン発生装置を示す(A)斜視図、(B)平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るイオン発生装置の背面側を示す斜視図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るイオン発生装置のイオン発生器の斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係るイオン発生装置の対抗電極のガイドパイプ近傍を示す(A)正面図、(B)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るイオン発生装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るイオン発生装置1の概略構成を示す斜視図であり、イオン発生装置1を正面に向かって左斜め上から見た図である。
【0021】
イオン発生装置1は、イオン及び微量のオゾンを生成して室内に供給する装置である。
図1に示すように、イオン発生装置1は、略直方体状の形態を成す本体ケーシング2を有する。本体ケーシング2は、例えば、各種板金材料または合成樹脂材料等から形成されている。
【0022】
本体ケーシング2の内部には、イオンを生成するイオン発生器10と、イオン発生器10にイオンを生成するための高電圧を与える高電圧発生器3と、イオンの供給を制御する制御装置4と、が設けられている。
【0023】
本体ケーシング2の前面には、生成されたイオン及び微量のオゾンを含む空気を室内に送り出す開口である排出口6が形成されている。また、本体ケーシング2の背面には、イオン及びオゾン送り出すための空気を吸引するための開口である吸入口5が形成されている。
【0024】
なお、図示を省略するが、本体ケーシング2の例えば前面には、イオン発生装置1の運転状況や室内の状況等を表示するディスプレイやライト等の各種表示手段が設けられても良い。また、本体ケーシング2の例えば前面には、利用者がイオン発生装置1に操作信号を入力するためのスイッチ等の各種入力手段が設けられても良い。
【0025】
図2は、イオン発生器10の概略構成を示す分解斜視図である。
図2を参照して、イオン発生器10は、空気を送るファン11と、空気の流路となる風洞円筒23と、風洞円筒23の内部に設けられた針電極ユニット13と、風洞円筒23の出口側に設けられた対抗電極20と、を有する。
【0026】
ファン11は、風洞円筒23の内部に空気を送る送風機であり、例えば、軸流送風機であって、略回転軸方向に空気を送り出す。ファン11は、略円筒状の形態を成すファンケーシング12の内部に設けられている。ファンケーシング12は、例えば、空気の吹き出し側が拡径されたベルマウス構造でも良い。
【0027】
針電極ユニット13は、ファン11の下流、即ち吹き出し側であって、風洞円筒23の内部に設けられている。針電極ユニット13は、複数の針電極14と、針電極14を支持する支持部16と、を有する。
【0028】
支持部16は、略環状の形態を成し、複数の針電極14を支持している。支持部16は、金属製の板材または棒材等から形成され、ファンケーシング12の内径よりも小径である。
【0029】
図3は、針電極ユニット13の概略構成を示す正面図である。
図2及び
図3を参照して、支持部16は、同軸に形成された複数の輪部を有しても良い。例えば、支持部16は、風洞円筒23と同軸に形成された、径が大きい大輪部17と、径が小さい小輪部18と、を有しても良い。
【0030】
支持部16の大輪部17及び小輪部18には、複数の針電極14が設けられている。針電極14は、電圧が印加されイオン及び微量のオゾンを発生する部材であり、高電圧発生器3に通電可能に接続されている。
【0031】
針電極14は、略針状の形態を成し、それぞれの針先部15が風洞円筒23の出口側に向かうよう平行に設けられている。換言すれば、針電極14は、ファン11の回転軸方向に沿って延在するよう全て同じ方向に設けられている。このような配置により、針電極14は、ファン11から送られる気流方向に略沿って延在することになり、針電極14近傍の空気抵抗が小さく抑えられる。
【0032】
針電極14は、全体として略均等に配置されていることが望ましく、支持部16の大輪部17及び小輪部18にそれぞれ略均等な角度で配置され固定されている。詳述すると、例えば、大輪部17には、8個の針電極14が、略均等な角度、即ち約45度の間隔で配置されている。小輪部18には、4個の針電極14が、略均等な角度、即ち約90度の間隔であり、且つ大輪部17に配置された針電極14に対しては約25.5度オフセットした位置に配置されている。このように、合計12個の針電極14が略均等に配置されることにより、複数の針電極14に対してそれぞれ好適な気流が得られる。
【0033】
なお、図示を省略するが、例えば、大輪部17には、10個の針電極14が、略均等な角度、即ち約36度の間隔で配置され、小輪部18には、5個の針電極14が、略均等な角度、即ち約72度の間隔で配置され、合計15個の針電極14が設けられても良い。針電極14の数及び配置は上記に限定されるものではなく、略均等に配置される他の構成でも良い。
【0034】
図4は、イオン発生器10の概略構成を示す分解斜視図である。
図4を参照して、風洞円筒23は、例えば、板金材料や合成樹脂材料等から形成された略円筒状の部材であり、ファンケーシング12に固定され、ファン11から送られる空気の流路を形成する。
【0035】
風洞円筒23は、ファン11と略同軸に設けられ、風洞円筒23の内径は、ファン11の外周を覆うファンケーシング12の内径に等しいかまたはファンケーシング12の内径よりも大きい。
【0036】
詳しくは、風洞円筒23の内径とファンケーシング12の内径との差は、20mm以下であることが望ましい。これにより、ファンケーシング12と同じ内径かそれよりも大径の風洞円筒23が設けられることにより、カルマン渦等の空気抵抗の原因となる現象を防止することができ、空気抵抗の少ない好適な流路が形成される。
【0037】
風洞円筒23の出口側、即ち針電極14の下流には、対抗電極20が設けられている。対抗電極20は、例えば、接地25に接続されており、針電極14よりも低電位となる。対抗電極20は、板状の形態を成し、風洞円筒23の軸に対して略直交するように配置される。
【0038】
対抗電極20には、針電極14の延長線上に空気が流れる通過孔21が形成されている。通過孔21は、板状の対抗電極20に複数形成され、略均等に設けられた複数の針電極14にそれぞれ対応する位置に形成されている。
【0039】
このように対抗電極20に通過孔21が形成されることにより、複数の針電極14と複数の通過孔21はそれぞれ対となって、複数の針電極14にそれぞれ対抗する複数の電極部分が形成されることになる。その結果、個々の針電極14と通過孔21毎に、イオンと微量のオゾンが好適に生成される。
【0040】
通過孔21は、
図1に示す排出口6につながり、生成されたイオン及び微量のオゾンを含む空気を室内に送り出す吹出口を構成する。このように複数の針電極14及びそれに対応する通過孔21が略均等に設けられる構成により、イオン発生装置1から排出されるイオンや微量のオゾンを減衰させることなく室内の遠方に送ることができる。
【0041】
以上、
図1から
図4を参照して説明したとおり、本実施形態に係るイオン発生装置1は、排出されるイオンや微量のオゾンを遠方まで到達させるという従来技術では困難であった機能を発揮する。
【0042】
具体的には、排出口6となる複数の通過孔21は、可能な限り略同心円状に略均等に配置されている。これにより、略円筒状の強い流れとなる排出空気流31が形成される。排出空気流31は、横方向への広がりが少なく、略ビーム状の流れが一定方向に保たれたまま遠方まで到達する。
【0043】
このように、排出される空気を直線的な強い気流とすることで、従来技術の課題であった、イオンが構造物へ付着することによる減衰や、構造物の帯電によるイオン障壁に対して打ち勝つことができる。
【0044】
また、排出口6は、略円形状の断面上に略均等に配置された複数の通過孔21から構成されているので、排出口6からの気流は略ビーム状に形成される。これにより、従来技術のような複数のイオン排出口から排出されるイオン同士の反発によるイオン量の分散が抑制され、イオンや微量のオゾンを減衰させることなく遠方まで到達させることができる。
【0045】
なお、図示を省略するが、排出口6には、通過孔21に対応する複数の開口が形成された板状のカバー部材が設けられても良い。カバー部材は、例えば合成樹脂製の板材等から形成され、本体ケーシング2の排出口6に取り付けられる。このような構成により、通過孔21からの好適な空気の吹き出しを阻害することなく、本体ケーシング2の内部にあるイオン発生器10の対抗電極20等に対してイオン発生装置1の外部からの接触を防止することができる。よって、効率的な空気の送り出しが可能であって、且つ安全なイオン発生装置1が得られる。
【0046】
吸入空気流30は、針電極14群全体の外周よりも大きいファン11の回転によってイオン発生器10の内部に吸入される。吸入された空気は、高電圧が印加された針電極ユニット13を経て、接地電位または接地相当の低電位である対抗電極20を介して、最終的に、イオンと微量のオゾンを含む排出空気流31として排出される。
【0047】
前述のとおり、針電極ユニット13には複数の針電極14が接続されている。対抗電極20の複数の通過孔21は、複数の針電極14各々との間で対となり、針電極14と略同心円状に形成されている。その結果、それぞれの針電極14と通過孔21との対によってイオンと微量のオゾンが生成される。
【0048】
針電極14の方向は空気抵抗を最小にするためにファン11の回転軸と略平行となる構成である。即ち、針電極14近傍の空気の流れは、ファン11直後の空気流に対して略同等の方向である。複数の針電極14が略均等な間隔で設けられていることは、イオンやオゾンの発生量を増量するために好適な構成である。
【0049】
風洞円筒23の内径は、ファン11との接続部における空気の流れを円滑にし、カルマン渦等の空気抵抗の原因となる現象を防止するために、ファンケーシング12の口径の外縁と同等以上である。詳しくは、風洞円筒23の内径は、大きくてもファンケーシング12の内径プラス20mm程度である。
【0050】
このような構造により、ファン11から排出された空気の流れは、ファンケーシング12内の流れと略等しく、減衰することなく風洞円筒23の内部を通過して、対抗電極20に略均等な間隔で設けられた通過孔21から、室内へ排出される。排出空気流31は、通過孔21からは、まとまった略円筒状の略ビーム状の形態で排出され、拡散することなく、遠方まで到達する。
【0051】
即ち、このような構造により、風洞円筒23内部の空気抵抗を減じて、略円筒状の形態を成し、密であり、且つ略均一な状態である略ビーム状の排出空気流31を効率良く吹き出すことができる。
【0052】
その結果、従来技術では装置の排出口近傍での平均風速が0.4m/秒程度であったものを、本実施形態に係るイオン発生装置1では1m/秒を容易に超えることが可能となった。このような高風速で強い排出空気流31は、周囲の椅子や机等の構造物の帯電や、これら構造物等が接地電位にされていた場合の吸引に耐えて、遠方まで到達する。直進性が強く、高風速である排出空気流31は、イオン同士が反発して進行方向横に広がる前に、略ビーム状の流れでイオンを遠方に到達させることができる。
【0053】
また、複数の針電極14は、ファン11の回転軸を中心として、円周方向に等間隔な位置に配置されており、通過する空気に対して略均等な影響を与える構造である。上述の例では、針電極14は、2重の略同心円状に配置されている。即ち、外側となる大輪部17の円周上に角度45度毎の配置で等間隔に8個、内側となる小輪部18の円周上に角度90度毎の配置で等間隔に4個、合計12個の針電極14が配置されている。このように、複数の針電極14が略均一に配置されることで、風洞円筒23の内部を通過する空気の流れが、定常的に安定する。
【0054】
また、対抗電極20は、空気が流れる流路の一部を構成するが、空気を効率良く略均等に通過させるために、単位面積当たりの通過孔21の数が略均等になるように形成されている。なお、上記の説明では、針電極14及び通過孔21の数が12個である例を示したが、針電極14及び通過孔21の数は、これに限定されるものではない。針電極14及び通過孔21が略均等に配置される構成であれば、針電極14及び通過孔21の数は、例えば7個、15個等、その他であっても良い。
【0055】
風洞円筒23の内径は、ファン11の外周径に略等しい。即ち、風洞円筒23の内径は、ファン11から排出される空気の流れに段差がなく、殆ど空気抵抗がないようなサイズに調整されていることが好ましい。
【0056】
針電極ユニット13についても同様に、個々の針電極14が、風洞円筒23の内部で空気の流れを乱さないように、また、流れの強さを弱めないように、適切な略均等の距離を保ち配置されている。これによって、空気がある一部に偏って流れることを防止して渦が発生することを抑制し、空気抵抗を減じることができる。
【0057】
なお、ファン11の回転により排出される気流は渦状を成し、ファン11の外周部近傍の風の流れが強くなる。そのため、ファン11の形状によっては、ファン11の外周部近傍に針電極14が多数配置されても良い。
【0058】
即ち、針電極14は、風洞円筒23の内部の略全域に略均等に配置されるよりも、風洞円筒23の外縁部近傍に集中して配置されても良い。このようにファン11の外周部近傍に多数の針電極14が配置されることは、少ない空気抵抗で、空気流の強さを保ち、空気を排出させるために有効である。
【0059】
具体的には、風洞円筒23の中心側の風の流れが少ない場合には、中心側にある小輪部18の針電極14を省略し、風洞円筒23の内周面に近い大輪部17の針電極14のみとする配置でも良い。
【0060】
また、大輪部17及び小輪部18に針電極14が設けられる構成において、小輪部18の径を大きくして大輪部17に近づけ、全ての針電極14が風洞円筒23の中心側よりも内周面の近くに配置される構成でも良い。
【0061】
前述のとおり、針電極14は、大輪部17及び小輪部18のそれぞれに略均等に配置されているので、針電極14に対応する対抗電極20の通過孔21も略均等に形成されている。そのため、対抗電極20の形態も良好となって効率的なイオン発生が実現する。
そして、イオン発生器10で増量されたイオンは、前述のとおり好適な空気流れによって風洞円筒23から送り出され、室内の遠方に到達する。
【0062】
図5は、イオン発生装置1の概略構成を示す図であり、
図5(A)は側面図、
図5(B)は平面図である。
図5(A)及び
図5(B)を参照して、排出口6は、本体ケーシング2の正面に形成されている。詳しくは、排出口6は、そこから吹き出される排出空気流31が効率良く遠方に到達するよう、本体ケーシング2の上面及び左右側面に近い位置に形成されている。
【0063】
このように排出口6が本体ケーシング2の上面に近い高い位置に設けられることにより、排出空気流31を床面から離し、床面から埃等が舞い上げられることを減らすことができる。即ち、イオン発生装置1から送り出される排出空気流31によって逆に室内の埃が増えてしまうような現象を避けることができる。
【0064】
また、排出空気流31に吸引されて本体ケーシング2の外側を流れる吸引空気流32の位置も床面から離れる。即ち、略ビーム状に流れる空気流全体の位置が床面から離れている。そのため、全体の空気の流れに巻き込まれる床面の埃等を減らすことができる。
【0065】
具体的には、ファン11から送り出される空気の量は、2立方メートル/分程度である。これに対して一般的な空気清浄機の排出空気量は、20立方メートル/分程度である。つまり、イオン発生装置1は、一般的な空気清浄機のように強い風を吹き出す構成ではなく、イオン発生装置1から送り出される空気の量は、一般的な空気清浄機と比して、1/10程度となる。
【0066】
このような構成により、イオン発生装置1は、強風を吹き出して二次的に埃等を舞い上げて再生産することなく、部屋の空気の清浄性を維持することができる。即ち、イオン発生装置1は、ファン11の好適な送風を利用して、イオン及び微量のオゾンを清浄対象の室内に広く供給することができると共に、送風によって構造物等から埃を舞い上げることがない。このようにイオン発生装置1は、イオンを室内に広く拡散させる機能と、埃等の拡散を防止する機能と、を兼ね備えた、機能バランスの優れた装置である。
【0067】
ここで、排出口6が本体ケーシング2の側面や上面から離れていると、本体ケーシング2の外側から流れ込む吸引空気流32が、本体ケーシング2の正面に回り込み、正面の周辺部近傍にカルマン渦を発生させる。その結果、吸引空気流32による渦流が空気抵抗となり、本体ケーシング2から排出された排出空気流31が効率良く略ビーム状に形成されることが阻害される。
【0068】
そのため、排出口6から本体ケーシング2の側面までの距離、及び排出口6から本体ケーシング2の上面までの距離は、短い方が良い。即ち、排出口6の周囲縁部は、正面の周囲エッジ部に近い方が良い。
【0069】
イオン発生装置1において、排出口6から本体ケーシング2の側面までの距離及び上面までの距離は、好ましくは、50mm以下、更に好ましくは、30mm以下である。更に好ましくは、排出口6から本体ケーシング2の側面までの距離及び上面までの距離は、約0mmであっても良い。即ち、排出口6は、その周囲縁部が本体ケーシング2の側面及び上面と同位置になるよう形成されても良い。
【0070】
このように、空気を吹き出す排出口6が、本体ケーシング2の側面及び上面との距離が短くなるように形成されることにより、本体ケーシング2の外側を流れる吸引空気流32による空気抵抗の増加が抑えられる。
【0071】
排出口6の外周縁部から本体ケーシング2の側面及び上面までの距離が約0mmとなるよう形成されることにより、本体ケーシング2の外面を回り込むような吸引空気流32による空気抵抗の影響を極力減ずることができる。
【0072】
また、図示を省略するが、本体ケーシング2の正面の周囲辺部、即ち角部は、R面取り状に形成されても良い。具体的には、例えば、R30程度、即ち半径30mm程度のR曲面形状が形成されても良い。このように本体ケーシング2の正面の周囲辺部にR面取り形状が形成されることにより、本体ケーシング2の外面を流れて排出空気流31に合流する吸引空気流32によるカルマン渦の発生を抑えて、空気抵抗の増加を抑制することができる。
【0073】
なお、上記のように、本体ケーシング2の正面の周囲辺部にR面取りが施されている場合、排出口6からR面取りの正面側終端部までの距離は、好ましくは、50mm以下、更に好ましくは、30mm以下、更に好ましくは、約0mmである。
【0074】
イオン発生装置1では、風洞円筒23内部の空気の流れ抵抗を減じ、排出口6から効率良く屋内に空気を排出することができる。また、イオン発生装置1では、排出空気流31及び吸引空気流32を好適に合流させて略ビーム状とすることで、排出口6から排出される空気を径方向に拡散させずに直進的に遠方まで到達させることができる。
【0075】
上述の如く、本実施形態に係るイオン発生装置1では、空気の排出口6が、本体ケーシング2の正面であって上面に近い位置に形成されている。このような構成より、渦量の発生が抑えられ空気抵抗の増大が抑制される。そして、床や棚等の底面から埃等を気流と一緒に舞い上げてしまうことや、生成されたイオンが床や棚の底面に吸着されてしまうこと、及びイオンが帯電物に急反発する等の影響を抑えることができる。
【0076】
図6は、イオン発生装置1の概略構成を示す斜視図であり、イオン発生装置1を背面に向かって右斜め上から見た図である。
図6を参照して、本体ケーシング2の背面には、複数の吸入口5が形成されている。
吸入口5は、室内からイオン発生装置1の内部に空気を吸入する開口であり、本体ケーシング2の背面の略全域に略均等に配列されるよう形成されている。
【0077】
このように複数の吸入口5が背面の略全体に形成されていることにより、吸入口5の開口面積を大きく確保することができる。よって、吸入口5は、空気抵抗が小さく、大量の空気を効率良く吸入することができ、これにより、イオン発生装置1は、前面の排出口6から大量の空気を吹き出し、強力な排出空気流31を形成することができる。
【0078】
また、吸入口5の内側、即ち本体ケーシング2の内部には、埃等を除去するためのフィルタ24が設けられても良い。詳しくは、フィルタ24は、吸入口5の内側であって、イオン発生器10の上流側に配置される。
【0079】
前述のとおり、イオン発生装置1は、吸入口5が本体ケーシング2の背面の略全域に形成されているので、大面積のフィルタ24を設けることができる。そして、吸入口5は、略均等な間隔で配列されているので、フィルタ24の全面積を有効に利用して吸引空気から埃等を除去することができる。
【0080】
次に、
図7及び
図8を参照して、実施形態を変形した例として、イオン発生装置101のイオン発生器110及びイオン発生装置201のイオン発生器210について詳細に説明する。なお、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
図7は、イオン発生装置101のイオン発生器110の斜視図である。
図7に示すように、イオン発生器110の対抗電極20に形成された通過孔21には、通過孔21から流出する空気の流れをガイドするガイドパイプ22が設けられても良い。
【0082】
ガイドパイプ22は、略円筒状の形態を成し、対抗電極20の空気排出側に複数設けられている。各々のガイドパイプ22は、対応する通過孔21と略同軸に設けられている。ガイドパイプ22の内径は、通過孔21の直径と略同一である。
【0083】
このようなガイドパイプ22が設けられることにより、空気が通過孔21を通過する際に、カルマン渦の発生による不要の空気抵抗を減ずることができる。よって、イオン発生装置101は、更に効率良く、強い流れを略ビーム状に集中させて遠方まで送り出すことができる。
【0084】
図8は、イオン発生装置201の対抗電極20の概略構成を示す図であり、
図8(A)は正面図、
図8(B)は側面図である。
図8(A)及び
図8(B)を参照して、イオン発生器210のガイドパイプ22は、風洞円筒23の同一周方向に傾斜し、且つ風洞円筒23の径方向に傾斜するよう設けられても良い。
【0085】
具体的には、ガイドパイプ22は、イオン発生装置201の風洞円筒23の軸方向、即ち排出口6から吹き出された排出空気流31の室内における総合的な進行方向に対して微小な角度で傾斜している。
【0086】
詳しくは、ガイドパイプ22は、排出口6につながる先端側が内側を向くよう、即ち風洞円筒23の径方向内側に向かって傾斜すると共に、風洞円筒23の同一の周方向に傾斜しており、その傾斜角度は、例えば、5度以下であり、好ましくは、2~3度である。
【0087】
このような構成により、傾斜するガイドパイプ22から効率良く空気を吹き出し、略螺旋状の気流を生成することができる。即ち、排出口6につながる傾斜したガイドパイプ22から吹き出される排出空気流31は、それぞれが略螺旋状の軌跡を描くように緩やかな渦を形成しながら前進し、全体的にまとまり良く1つの強力な略ビーム状の流れが形成される。
【0088】
これにより、イオン発生器210から排出される空気の流れが、効率良く略ビーム状の形態となって、遠方まで到達し、この気流と共にイオン及び微量のオゾンが対象室内の遠方に供給される。
【0089】
なお、上記の例として、
図8には、4個のガイドパイプ22が図示されているが、ガイドパイプ22の数はこれに限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、12個のガイドパイプ22が設けられても良い。ガイドパイプ22は、針電極14及び対抗電極20の通過孔21に対応して、任意の個数設けられる。
【0090】
以上説明の如く、本実施形態に係るイオン発生装置1、101、201は、強力な送風が行われる一般的な空気清浄機のように室内に埃等が再生産されるほどの強風を発生させるものではない。イオン発生装置1、101、201は、室内に埃等を舞い上げるほどの強い風を送ることなくイオンを対象室内の奥まで供給する空気清浄機能を実現することができる。
【0091】
そして、イオン発生装置1、101、201は、好適に構成されたイオン発生器10、110、210、本体ケーシング2及び排出口6により、空気抵抗による損失の少ない略ビーム状の空気の流れが形成される。
【0092】
その結果、排出される空気の流れによって床面等から埃等が舞い上がることなく、部屋の遠方まで、イオンと微量のオゾンを含む空気を到達させることができる。よって、従来技術では不可能であった埃等の除去及び除菌環境の維持が可能となる。
【0093】
特に、イオン発生装置1、101、201は、室内全体にイオン及び微量なオゾンを供給することができるので、従来技術にはない優れた効果が得られる。即ち、イオン発生装置1、101、201は、イオンのみを室内に供給する構成ではなく、イオン及び微量なオゾンを含む混合ガスを対象室内の全体に供給することができることを特徴とする。
【0094】
イオン発生装置1、101、201は、イオンと微量のオゾンの混合ガスを、周囲の構造物等に吸着されて効果が減ずることなく、室内全体に供給することができ、室内に充満しているウィルス等をもれなく除去することができる。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1、101、201 イオン発生装置
2 本体ケーシング
3 高電圧発生器
4 制御装置
5 吸入口
6 排出口
10、110、210 イオン発生器
11 ファン
12 ファンケーシング
13 針電極ユニット
14 針電極
15 針先部
16 支持部
17 大輪部
18 小輪部
20 対抗電極
21 通過孔
22 ガイドパイプ
23 風洞円筒
24 フィルタ
25 接地
30 吸入空気流
31 排出空気流
32 吸引空気流