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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082424
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド式インダクタンス装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20220525BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01F17/06 A
H01F17/06 F
H01F27/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128370
(22)【出願日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】109140875
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】110203330
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521343529
【氏名又は名称】范雲光
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】范雲光
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070BA14
5E070CA13
5E070CA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コモンモードインダクタ、ディファレンシャルモードインダクタ、非誘導抵抗を形成することができ、更に、電源フィルタの回路のサイズを小型化できるハイブリッド式インダクタンス装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド式インダクタンス装置100において、各湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dの磁気コア110への巻き付け方向は、その隣接する複数の湾曲エリアにおける複数のコイル巻きセットの磁気コアへの巻き付け方向とは異なる。各湾曲エリアにおけるコイル巻きセットは、その隣り合う複数の湾曲エリアにおけるコイル巻きセットと対称である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気コアと、複数のコイル巻きセットとを備え、
前記磁気コアには複数の湾曲エリアが設けられ、
前記複数のコイル巻きセットは、前記湾曲エリアにそれぞれ巻きつけられ、2つの隣り合う前記湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットの間には間隔が設けられ、
前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットの前記磁気コアへの巻き付け方向は、その隣接する前記複数の湾曲エリアにおける前記複数のコイル巻きセットの前記磁気コアへの巻き付け方向とは異なり、
前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットは、その隣り合う前記複数の湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットと対称であることを特徴とする、
ハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項2】
前記各コイル巻きセットは同一のコイルの囲繞数を有することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項3】
前記磁気コアは閉磁気コア又は開磁気コアであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項4】
前記閉磁気コアは円形の磁気コア、楕円形の磁気コア、又は矩形の磁気コアであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項5】
前記磁気コアは自身の中心軸を経て第1のエリアと第2のエリアに区分され、前記第1のエリアに位置する前記複数の湾曲エリアの前記複数のコイル巻きセットは、前記中心軸に基づいて前記第2のエリアに位置する前記複数の湾曲エリアの前記複数のコイル巻きセットとそれぞれ対称となることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項6】
前記第1のエリアの前記複数の湾曲エリアと前記複数のコイル巻きセットの数量は2個であり、前記第2のエリアの前記複数の湾曲エリアと前記複数のコイル巻きセットの数量も2個であることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項7】
前記複数のコイル巻きセットにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは、前記複数の湾曲エリアにおける隣り合う第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、電流が前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットの間の隣り合う一端を経由して前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットの他端へそれぞれ流れたとき、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットはコモンモードインダクタンスを形成することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項8】
前記複数のコイル巻きセットにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは、前記湾曲エリアにおける互いに隣り合わない第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、前記第1のコイル巻きセットの巻き付け方向と前記第2のコイル巻きセットの巻き付け方向は互いに平行となり、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットは、電流がそれぞれ流れることにより同一の磁場方向を生成したとき、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットはディファレンシャルモードインダクタンスを形成することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項9】
前記コイル巻きセットにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは前記複数の湾曲エリアにおける互いに隣り合う第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットの間の互いに隣り合う一端は相互に結合され、電流が前記第1のコイル巻きセットの他端を経て前記第2のコイル巻きセットの他端に流れたとき、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットは非誘導抵抗を形成することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項10】
前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットは複数のコイルを含み、前記複数のコイルはコイルの囲繞、前記磁気コアの頂面から延伸する始端、及び前記磁気コアの底面から延伸する終端をそれぞれ備え、同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数のコイルの囲繞は互いに平行となり、同一の前記コイル巻きセットの前記コイルの前記複数の始端は互いに隣り合い、同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の終端は互いに隣り合い、同一の前記コイル巻きセットの前記コイルは前記磁気コアに対して同一の巻き付け方向となることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項11】
同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数のコイルの囲繞は互いに間隔をあけて排列されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項12】
同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記コイルの囲繞は互いに重なり合うことを特徴とする請求項10に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項13】
前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットは、前記磁気コアへの巻き付け方向は、その隣り合う前記複数の湾曲エリアにおける前記複数のコイル巻きセットの前記磁気コアへの巻き付け方向と反対となることを特徴とする請求項10に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項14】
前記複数のコイル巻きセットにおける第3のコイル巻きセットと第4のコイル巻きセットは前記複数の湾曲エリアにおける互いに隣り合う第3の湾曲エリアと第4の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記始端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の終端は互いに隣り合い、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の終端と、前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の始端は互いに隣り合うことを特徴とする請求項10に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項15】
電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第1のコイルの前記終端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第3のコイルの前記終端を経由して前記第1のコイルの前記始端と前記第3のコイルの前記始端に流れたとき、前記第1のコイルと前記第3のコイルはコモンモードインダクタンスを形成することを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項16】
電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第2のコイルの前記始端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第3のコイルの前記始端を経由して前記第2のコイルの前記終端と前記第4のコイルの前記終端に流れたとき、前記第2のコイルと前記第4のコイルはコモンモードインダクタンスを形成することを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項17】
電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第1のコイルの前記終端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第4のコイルの前記終端を経由して前記第1のコイルの前記始端と前記第4のコイルの前記始端に流れたとき、前記第1のコイルと前記第4のコイルは前記電流によって同一の磁場方向を生成することにより、ディファレンシャルモードインダクタンスを形成することを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項18】
電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第2のコイルの前記終端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第3のコイルの前記終端を経由して前記第2のコイルの前記始端と前記第3のコイルの前記始端に流れたとき、前記第2のコイルと前記第3のコイルは前記電流によって同一の磁場方向を生成することによりディファレンシャルモードインダクタンスを形成することを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項19】
前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の始端は相互に結合され、電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルのいずれか一つの前記終端から流入したとき、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルは前記電流によって非誘導抵抗を形成することを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【請求項20】
前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の始端は相互に結合し、電流が前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルのいずれか一つの前記終端から流入したとき、前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルは前記電流によって非誘導抵抗を形成することを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド式インダクタンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインダクタンス装置に関し、特にハイブリッド式インダクタンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の発達は目覚ましい。一方、このような電子機器を動作させるには一般に外部電源が必要となる。しかし、電子機器と、これを動作させるための電源との間で電力を供給する際に、ノイズ等の電磁干渉が発生することがある。
このため、電磁干渉を起こさせないようにするために、一般に、電源フィルタ(例えば、line filter)を当該電子機器と電源との間に設置する。
ここで、電源フィルタは、電磁干渉をフィルタリングするために使用されるが、この電源フィルタを構成するための部品には、主にコモンモードインダクタンスとディファレンシャルモードインダクタンスが使われており、他の機能(例えば、電流制限又は減衰する周波数応答を低減させる等)を提供するために使用される主な構成部品としては、非誘導抵抗器が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電源フィルタは小型化と高周波化に対応するものが近年の開発の主流なので、上述したコモンモードインダクタンスとディファレンシャルモードインダクタンスを使用する場合は、磁気コアを別々に提供する必要がある。
しかし、磁気コアを別々に提供してしまうと、電源フィルタの内部空間を広い範囲にわたって占有してしまい、電源フィルタの小型化の要求を満たせなくなってしまう。
更に、異なる磁気コアのコモンモードインダクタンスとディファレンシャルモードインダクタンスを使用すると、コイル巻線の電圧が降下してしまうので、コモンモードインダクタンスとディファレンシャルモードインダクタンスによって、電源フィルタで非誘導抵抗を形成することができなくなってしまう。
本発明は上述の問題に鑑みて、以下のようなハイブリッド式インダクタンス装置を提供することを目的とする。すなわち、単一の磁気コアを用いながらも、コモンモードインダクタ、ディファレンシャルモードインダクタ、非誘導抵抗を形成することができ、更に、電源フィルタの回路のサイズを小型化できるように、電源フィルタが占有する内部スペースを減らして、小型化に対応した電源フィルタのハイブリッド式インダクタンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の問題に鑑みて以下の構成を備える。すなわち、本発明によるハイブリッド式インダクタンス装置は、磁気コアと、複数のコイル巻きセットとを備え、前記磁気コアには複数の湾曲エリアが設けられ、前記複数のコイル巻きセットは、前記湾曲エリアにそれぞれ巻きつけられ、2つの隣り合う前記湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットの間には間隔が設けられ、前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットの前記磁気コアへの巻き付け方向は、その隣接する前記複数の湾曲エリアにおける前記複数のコイル巻きセットの前記磁気コアへの巻き付け方向とは異なり、且つ、前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットは、その隣り合う前記複数の湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットと対称である。
また、前記各コイル巻きセットは同一のコイルの囲繞数を有する。
また、前記磁気コアは閉磁気コア又は開磁気コアである。
また、前記閉磁気コアは円形の磁気コア、楕円形の磁気コア、又は矩形の磁気コアである。
また、前記磁気コアは自身の中心軸を経て第1のエリアと第2のエリアに区分され、前記第1のエリアに位置する前記複数の湾曲エリアの前記複数のコイル巻きセットは、前記中心軸に基づいて前記第2のエリアに位置する前記複数の湾曲エリアの前記複数のコイル巻きセットとそれぞれ対称となる。
また、前記第1のエリアの前記複数の湾曲エリアと前記複数のコイル巻きセットの数量は2個であり、前記第2のエリアの前記複数の湾曲エリアと前記複数のコイル巻きセットの数量も2個である。
また、前記複数のコイル巻きセットにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは、前記複数の湾曲エリアにおける隣り合う第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、電流が前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットの間の隣り合う一端を経由して前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットの他端へそれぞれ流れたとき、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットはコモンモードインダクタンスを形成する。
また、前記複数のコイル巻きセットにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは、前記湾曲エリアにおける互いに隣り合わない第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、前記第1のコイル巻きセットの巻き付け方向と前記第2のコイル巻きセットの巻き付け方向は互いに平行となり、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットは、電流がそれぞれ流れることにより同一の磁場方向を生成したとき、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットはディファレンシャルモードインダクタンスを形成する。
また、前記コイル巻きセットにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは前記複数の湾曲エリアにおける互いに隣り合う第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットの間の互いに隣り合う一端は相互に結合され、電流が前記第1のコイル巻きセットの他端を経て前記第2のコイル巻きセットの他端に流れたとき、前記第1のコイル巻きセットと前記第2のコイル巻きセットは非誘導抵抗を形成する。
更に、前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットは複数のコイルを含み、前記複数のコイルはコイルの囲繞、前記磁気コアの頂面から延伸する始端、及び前記磁気コアの底面から延伸する終端をそれぞれ備え、同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数のコイルの囲繞は互いに平行となり、同一の前記コイル巻きセットの前記コイルの前記複数の始端は互いに隣り合い、同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の終端は互いに隣り合い、同一の前記コイル巻きセットの前記コイルは前記磁気コアに対して同一の巻き付け方向となる。
また、同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数のコイルの囲繞は互いに間隔をあけて排列される。
また、同一の前記コイル巻きセットの前記複数のコイルの前記コイルの囲繞は互いに重なり合う。
また、前記各湾曲エリアにおける前記コイル巻きセットは、前記磁気コアへの巻き付け方向は、その隣り合う前記複数の湾曲エリアにおける前記複数のコイル巻きセットの前記磁気コアへの巻き付け方向と反対となる。
また、前記複数のコイル巻きセットにおける第3のコイル巻きセットと第4のコイル巻きセットは前記複数の湾曲エリアにおける互いに隣り合う第3の湾曲エリアと第4の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記始端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の終端は互いに隣り合い、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の終端と、前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の始端は互いに隣り合う。
また、電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第1のコイルの前記終端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第3のコイルの前記終端を経由して前記第1のコイルの前記始端と前記第3のコイルの前記始端に流れたとき、前記第1のコイルと前記第3のコイルはコモンモードインダクタンスを形成する。
また、電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第2のコイルの前記始端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第3のコイルの前記始端を経由して前記第2のコイルの前記終端と前記第4のコイルの前記終端に流れたとき、前記第2のコイルと前記第4のコイルはコモンモードインダクタンスを形成する。
また、電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第1のコイルの前記終端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第4のコイルの前記終端を経由して前記第1のコイルの前記始端と前記第4のコイルの前記始端に流れたとき、前記第1のコイルと前記第4のコイルは前記電流によって同一の磁場方向を生成することにより、ディファレンシャルモードインダクタンスを形成する。
また、電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第2のコイルの前記終端と前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルにおける第3のコイルの前記終端を経由して前記第2のコイルの前記始端と前記第3のコイルの前記始端に流れたとき、前記第2のコイルと前記第3のコイルは前記電流によって同一の磁場方向を生成することによりディファレンシャルモードインダクタンスを形成する。
また、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の始端は相互に結合され、電流が前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルのいずれか一つの前記終端から流入したとき、前記第3のコイル巻きセットの前記複数のコイルは前記電流によって非誘導抵抗を形成する。
また、前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルの前記複数の始端は相互に結合し、電流が前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルのいずれか一つの前記終端から流入したとき、前記第4のコイル巻きセットの前記複数のコイルは前記電流によって非誘導抵抗を形成する。
【発明の効果】
【0005】
以上の様に、本発明の実施形態によれば、単一の磁気コアを用いながらも複数のコイル巻きセットを巻き付け、各コイル巻きセットにおけるコイルを巻き付ける方向を隣接するコイル巻きセットの巻き付け方向と異なるものとする。
そのため、電流が発生すると、異なるコイル巻きセットの組み合わせに応じて、コモンモードインダクタンス、ディファレンシャルモードインダクタンス、又は非誘導抵抗を形成し得る。
そして、電源フィルタが回路上に占めるスペースを減少させることができ、電源フィルタが占める内部空間をも結果として減らせるので、電源フィルタの小型化の要求に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の概略図である。
図2】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の回路図である。
図3】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置のコモンモードノイズを抑制する回路図である。
図4】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置のディファレンシャルモードノイズを抑制する回路図である。
図5】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の非誘導抵抗を抑制する回路図である。
図6】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の概略図である。
図7】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の概略図である。
図8】本発明の実施形態の部分構造の断面図である。
図9】本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照して本発明の実施形態を説明する、ここで、図1は本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の概略図である。
ハイブリッド式インダクタンス装置100は、磁気コア110と複数のコイル巻きセット130A~130Dを含む。ここで、コイル巻きセット130Aは図1から明らかなように複数回コイルが巻き付けられたものである。
磁気コア110は、湾曲エリア111A~111Dを備えている。ここで、湾曲エリア111A等は湾曲している箇所(磁気コア110のカーブしている箇所)にコイルを巻き付けるエリアである。
複数のコイル巻きセット130A~130Dは、それぞれ、複数の湾曲エリア111A~111Dに巻き付けられている。ここで、図1は、それぞれ4つの湾曲エリア111A~111Dと、コイル巻きセット130A~130Dを例として説明する。
なお、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではなく、湾曲エリア111A~111Dとコイル巻きセット130A~130Dの数は4個未満でも5個以上でも差し支えない。
磁気コア110は、例えば、焼結磁性マンガン-亜鉛-酸化鉄、ニッケル-亜鉛-酸化鉄等の酸化鉄の混合物から構成される焼結磁性金属酸化物である。
コイル巻きセット130A~130Dは、磁気コア110を金属線で巻くことによって形成されたコイルの巻線である。なお、金属線は、単芯銅線、多芯銅、ツイストワイヤー等である。
図1に示すように、2つの隣接する湾曲エリア111A~111Dは、磁気コア110の異なる位置に設けられ、且つ互いに重なり合わないように配置される。複数のコイル巻きセット130A~130Dは、それぞれ、各湾曲エリア111A~111Dに巻き付けられる。例えば、図1から明らかなように、コイル巻きセット130Aは、湾曲エリア111Aに巻き付けられている。
コイル巻きセット130Bは、湾曲エリア111Bに巻き付けられ、コイル巻きセット130Cは、湾曲エリア111Cに巻き付けられ、コイル巻きセット130Dは、湾曲エリア111Dに巻き付けられている。
このようにエリア毎に巻き付けられるので、コイル巻きセット130A~130Dは、所定の間隔113をあけるように分離して配置されている。
具体的には、湾曲エリア111Aは、湾曲エリア111Bと湾曲エリア111Cに隣接しており、湾曲エリア111Aに巻き付けられたコイル巻きセット130Aは、湾曲エリア111Bに巻かれたコイル巻きセット130Bと湾曲エリア111Cに巻かれたコイル巻きセット130Cから、それぞれ間隔113の長さの分だけ離間されている。
湾曲エリア111Dは湾曲エリア111Bと湾曲エリア111Cに隣接しており、湾曲エリア111Dに巻き付けられたコイル巻きセット130Dは、湾曲エリア111Bに巻き付けられたコイル巻きセット130Bと湾曲エリア111Cに巻き付けられたコイル巻線130Cから、それぞれ間隔113の長さの分だけ離間されている。
換言すると、隣り合うコイル巻きセット130A~130Dは互いに間に間隔113に相当する長さの分だけ距離をあけて設けられる。すなわち、隣り合うコイル巻きセット130A~130Dはお互いに間隔113に相当する長さだけ間を開けて設けられる。
したがって、2つの隣接する湾曲エリア111A~111Dの間に巻き付けられたコイル巻きセット130A~130D(または隣接するコイル巻きセット130A~130Dの間)は、より低い浮遊容量値を有するので、ハイブリッド式インダクタンス装置100は、優れた高周波フィルタリング機能に加え、低周波フィルタリング機能をいずれも有することができる。
各湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dの磁気コア110の巻き付け方向は、その隣り合う複数の湾曲エリア111A~111Dにおける複数のコイル巻きセット130A~130Dが磁気コア110に対して巻き付ける方向とは異なる。
例えば、湾曲エリア111Aは、湾曲エリア111Bに隣接しており、コイル巻きセット130Aと、コイル巻きセット130Bの巻き付け方向は、磁気コア110上で互いに接近する方向に巻かれている。
湾曲エリア111Aは、湾曲エリア111Cに隣接しており、コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Cの巻き付け方向は、磁気コア110上で互いに離れる方向に巻き付けられている。
換言すると、コイル巻きセット130Aの巻き付け方向は、コイル巻きセット130Bとコイル巻きセット130Cの巻き付け方向とは異なる。
具体的には、図1に示すように、コイル巻きセット130Aは、磁気コア110の左側の中心から、先ずは磁気コア110の上面(頂面)を経て磁気コア110の底面に巻き付けられている。次に、磁気コア110の底面から磁気コア110の上面まで上向きに巻かれており、磁気コア110の上側(すなわち、左下を経由して右上に至るように)巻かれている。
コイル巻きセット130Bは、磁気コア110の右側の中心から、先ずは磁気コア110の上面を経て磁気コア110の底面に巻き付けられる。そして、磁気コア110の底面から磁気コア110の上面へ向けて上向きに巻き付けられ、磁気コア110の上側(すなわち、右下から左上へ)に巻きつけられ、コイル巻きセット130Aに近づく。
コイル巻きセット130Cは、磁気コア110の左側の中央から、先ずは磁気コア110の上面を経て、磁気コア110の底面に至るように巻き付けられる。そして、コイル巻きセット130Aから離れるように、磁気コア110の底面から磁気コア110の上面に至るよう下向きに巻き付けられ、磁気コア110の下側(すなわち、左上から右下)に至るように巻き付けられる。
本実施形態において、図1に示すように、隣り合わない湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dは平行な巻き付け方向とすることができる。
具体的には、湾曲エリア111Aと湾曲エリア111Dは互いに隣り合わないが、コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Dは平行な巻き付け方向とすることができる。
例えば、コイル巻きセット130Dは磁気コア110の右側の中央から、先ずは磁気コア110の上面(頂面)を経て磁気コア110の底面に至るように巻き付けられる。そして、磁気コア100の底面から磁気コア100の頂面に至るように下向きに巻き付けられ、磁気コア100の下側(右上から左下)に至るように巻き付けられることによって、コイル巻きセット130Aの巻き付け方向は左下から右上に至るように巻き付けられる。すなわち、コイル巻きセット130Aの磁気コア110への巻き付け方向と、コイル巻きセット130Dの磁気コア110への巻き付け方向は互いに平行となる。
図1に示すように、各湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dは、互いに隣り合う複数の湾曲エリア111A~111Dにおける複数のコイル巻きセット130A~130Dと対称となる。
例えば、互いに隣り合う湾曲エリア111A~111Dのコイル巻きセット130A~130Dの互いに隣り合う一端は磁気コア110の底面から軸線に沿って外側へ延伸し(もしくは上面から軸線に沿って外側へ延伸する)、隣接していない一端は磁気コア110の上面から軸線に沿って外側へ延伸する(もしくは底面から他の軸線に沿って外側へ延伸する)。
本実施形態において、前記2つの軸線は互いに垂直であっても良い。具体的には、湾曲エリア111Aは、湾曲エリア111Bと湾曲エリア111Cとに互いに隣接する。
湾曲エリア111Aのコイル巻きセット130Aは、湾曲エリア111Bのコイル巻きセット130Bの互いに隣り合う一端(端子TA、TB2)が磁気コア110の底面から磁気コア110の中心軸115Aに沿って外側へ延伸する。
互いに隣り合わない一端(端子TA1、TB1)は磁気コア110の上面から磁気コア110の他の中心軸115Bに沿って外側へ延伸する。
湾曲エリア111Aのコイル巻きセット130Aは、湾曲エリア111Cの互いに隣り合う一端(端子TA1、TC1)が、磁気コア110の上面から中心軸115Bに沿って外向きに延伸し、互いに隣り合わない一端(端子TA2、TC2)は磁気コア110の底面から中心軸115Aに沿って外側へ延伸する。
前記中心軸115Aと中心軸115Bは互いに垂直となり、中心軸115Aと中心軸115Bは磁気コア110の本体と中心点の軸線である。
本実施形態においては、図1に示すように、隣り合う湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dは同一の囲繞数を有する。ここで、同一のコイルの囲繞数を有するとは、コイル巻きセット130A~130Dはそれぞれ巻き付けられる回数が同じ回数であるという意味である。
隣り合う湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dは相互に対称である。このため、相互に同一の囲繞数を有する。
例えば、湾曲エリア111Aは、湾曲エリア111Bと湾曲エリア111Cに互いに隣り合う。コイル巻きセット130Aと、コイル巻きセット130Bと、コイル巻きセット130Cのコイルの巻き付けられる回数(囲繞数)は5回である。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、コイルの囲繞数が5回より多く又は5回より少なくても良い。
湾曲エリア111Dは、湾曲エリア111Bと湾曲エリア111Cに隣接しており、コイル巻きセット130D、コイル巻きセット130B、及びコイル巻きセット130Cの巻数は5回であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、コイルを巻き付ける回数は5回より多くても5回より少なくてもよい。
また、本実施形態において、湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dはいずれも同じ回数巻き付けられている。
本実施形態では、磁気コア110は、閉磁気コア又は開磁気コアによって構成される。本実施形態では、磁気コア110が閉磁気コアである場合、閉磁気コアは、円形の磁気コア、楕円形の磁気コア、矩形の磁気コア、EE型磁気コア又はその他の形状の閉磁気コアによって実現される。
本実施形態において、図1に示すように、磁気コア110は自身の中心軸115A、115Bで、第1のエリア1151と第2のエリア1153に区分される。
ここで、説明の便宜上、中心軸115Aで分割された磁気コア110の第1のエリア1151と第2のエリア1153のみが図1に示され、ここにて説明する。
第1のエリア1151の湾曲エリア111A、111Cのコイル巻きセット130A、130Cは、中心軸115Aに基づいて第2のエリア1153に位置する湾曲エリア111B、111Dのコイル巻きセット130B、130Dと対称となる。
具体的には、第1のエリア1151に位置する湾曲エリア111Aは、中心軸115Aに基づいて、第2のエリア1153に位置する湾曲エリア111Bと対称となり、第1のエリア1151に位置する湾曲エリア111Cは中心軸115Aに基づいて、第2のエリア1153に位置する湾曲エリア111Dと対称となる。
換言すると、湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dの中心軸115Aに接近した一端(端子TA2、TB2、TC2、TD2)は磁気コア110の底面から中心軸115Aに沿って外向きに延伸し、湾曲エリア111A~111Dにおけるコイル巻きセット130A~130Dの中心軸115Aから離れた他端(端子TA1、TB2、TC2、TD2)は磁気コア110の底面から中心軸115Aに沿って外向きに延伸することにより、湾曲エリア111Aのコイル巻きセット130Aは中心軸115Aに基づいて湾曲エリア111Bのコイル巻きセット130Bと対称となり、湾曲エリア111Cのコイル巻きセット130Cは中心軸115Aに基づいて湾曲エリア111Dのコイル巻きセット130Dと対称となる。
本実施形態では、図1に示すように、第1のエリア1151の湾曲エリア111A、111Cとコイル巻きセット130A、130Cの数量は2個である。第2のエリア1153の湾曲エリア111B、111Dとコイル巻きセット130B、130Dの数量は2個である。結果として、異なるコイル巻きセット130A~130Dを組み合わせることにより、ハイブリッド式インダクタンス装置100が異なる機能を提供することができる。ここで、異なる機能とは、例えばコモンモードインダクタンス、ディファレンシャルモードインダクタンス、又は非誘導抵抗の機能を提供し得る。
本実施形態では、図1に示すように、端子TA1~TD2は、外部電気回路部品に結合し又は電気信号を送受信するためのコイル巻きセット130A~130Dである。
端子TB1、TB2はコイル巻きセット130Bの外部接続用のポートである。端子TC1、TC2はコイル巻きセット130Cの外部接続用のポートである。
端子TD1、TD2はコイル巻きセット130Dの外部接続用のポートであり、その結果、コイル巻きセット130A~130Dは、端子TA1~TD2を介して対応する回路部品に接続され、又は電気信号を送受信できるので、ハイブリッド式インダクタンス装置100は、様々な回路構造に適用することができる。
【0008】
次に、図1図3を参照して本発明の実施形態を説明する。ここで、図2は本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の回路図であり、図3は本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置のコモンモードノイズを抑制する回路図である。
本実施形態において、コイル巻きセット130A~130Dにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは、湾曲エリア111A~111Dにおいて隣り合う第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられ、電流が第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットに隣接する端部を経由して第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットの他端に電流が流れるとき、第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットはコモンモードインダクタンスを形成する。
例えば、コイル巻きセット130A、コイル巻きセット130C、湾曲エリア111A、及び湾曲エリア111Cは、第1のコイル巻きセット、第2のコイル巻きセット、第1の湾曲エリア、及び第2の湾曲エリアを示すために使用される。端子TA1は、電源200のプラス端子201の正の電源信号V+に結合される。
端子TC1は、電源200のマイナス端子203のマイナスの電源信号V-に結合される。つまり、電源200のマイナス端子203からマイナスの電源信号が出力される。
端子TA2は、外部のフィルタリング回路(以下、外部回路300と称する)の入力端子(以下、第1の入力端子301と称する)に結合されている。
端子TC2は、外部回路300の他の入力端子(以下、第2の入力端子303と称する)に結合されている。
外部回路300が基準接地信号GNDに結合されている場合(例えば、外部回路300のケース、又はシェルが接地されている場合)、外部回路300と接続された基準接地信号GNDの間には浮遊容量Cが存在するので、電源200のプラスの電源信号V+とマイナスの電源信号V-と基準接地信号GNDの間にはノイズ信号(例えばコモンモードノイズ)が発生する。
このため、コモンモードノイズが発生したとき、電流(例えば、コモンモード電流、すなわち、電源200のプラス端子201が浮遊容量Cによって生成する迷走電流の電流方向A1(図3において一点鎖線で表示)は、電源200の負のマイナス端子203が浮遊容量Cによって生成する迷走電流の電流方向A2(図3において二点鎖線で表示している)と等しい。)は端子TA1を経てコイル巻きセット130Aの端子TA2に流れることにより、外部回路300の基準接地信号GNDを経て電源200に戻る。
更に電流は、端子TC1を経てコイル巻きセット130Cの端子TC2に流れ込み、外部回路300の基準接地信号GNDを経て電源200へ戻り、コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Cは同じ方向の磁場を生成することにより、コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Cのインダクタンスを増強する。
更に、電流はコモンモード電流を抑制するインダクタンスを増強する。換言すると、この時のコイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Cとでコモンモードインダクタンスを形成し、ノイズを除去する効果を実現する。
【0009】
次に、図1図2図4を参照して説明する。図4は本発明の実施形態による差動モードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)を抑制する回路である。
本実施形態において、コイル巻きセット130A~130Dにおける第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは湾曲エリア111A~111Dにおける隣り合っていない第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられる。
ここで、第1のコイル巻きセットの巻き付け方向と第2のコイル巻きセットの巻き付け方向は互いに平行であり、第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットが、それぞれ電流によって同一の磁場方向を生成したとき、第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは差動モードインダクタンスを形成する。
例えば、コイル巻きセット130A、コイル巻きセット130D、湾曲エリア111A、及び湾曲エリア111Dは、第1のコイル巻きセット、第2のコイル巻きセット、第1の湾曲エリア、及び第2の湾曲エリアを示すために使用される。
端子TA1は電源200のプラス端子のプラス電源信号V+に結合され、端子TD2は電源200のマイナス端子203のマイナスの電源信号V-に結合され、端子TA2は外部回路300の第1の入力端子301に結合され、端子TD1は外部回路300の第2の入力端子に結合される。
電源線の信号(プラスの電源信号V+とマイナスの電源信号V-)の間にはノイズが発生し、且つこのノイズ(すなわち差動モードノイズ)は一般に電源線に直列に接続される。
差動モードノイズが発生したとき、電流(例えば差動電流、すなわち差動電流のノイズ電流の電流方向A3(図4における二点鎖線で示す)は、電源200の電流の電流方向A4(図4において一点鎖線で示す))が端子TA1を経てコイル巻きセット130Aの端子TA2に流れ込むことによって、外部回路300を経る。
そして、外部回路300から端子TD1を経てコイル巻きセット130Dの端子TD2に流れ込み、平行な巻き付け方向を有するコイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130D(例えば、コイル巻きセット130Aの巻き付け方向が左下から右上で、コイル巻きセット130Dの巻き付け方向が右上から左下)は、同じ方向の磁場(すなわち同一の磁場方向)を生成するので、コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Dのインダクタンス、すなわち、差動モード電流を抑制するインダクタンス(コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Dは、差動モードインダクタンスを形成する)を増強することができ、ノイズを除去する効果を実現し得る。
【0010】
次に、図1図2図5を参照して本発明の実施形態を説明する。ここで図5は本発明による非誘導抵抗用の回路である。
本実施形態では、コイル巻きセット130A~130Dの第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは、それぞれ、湾曲エリア111A~111Dに隣接する第1の湾曲エリアと第2の湾曲エリアに巻き付けられる。
第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットの間の隣り合う一端は相互に結合され、電流が第1のコイル巻きセットの他端から第2のコイル巻きセットの他端へ流れたとき、第1のコイル巻きセットと第2のコイル巻きセットは非誘導抵抗を形成する。
具体的には、コイル巻きセット130A、コイル巻きセット130B、湾曲エリア111A、及び湾曲エリア111Bを例にとり、第1のコイル巻きセット、第2のコイル巻きセット、第1の湾曲エリア、第2の湾曲エリアを説明する。
端子TA1は電源のプラス端子のプラスの電源信号V+に結合され、端子TB1は外部回路300の第1の入力端子301に結合される。
外部回路300に対して流す電流を制限したり、その減衰させたい周波数応答(例えば、負荷を増加させる等)等を低下させたりしたいとき、端子TA2を端子TB2に結合し(すなわち、端子TA2と端子TB2を短絡させる)、電流は端子TA1を経てコイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Bを流れた後、外部回路300へ流れる。
コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Bは相互に反対方向の磁場を発生させるので、磁場は相互に消滅させあい、誘導性リアクタンスは発生しない。
換言すると、このときのコイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Bはインダクタンス抵抗(例えばコイルの抵抗値しか有さない。)を有さず、もしくは、漏れインダクタンスが生成するほんの僅かなインダクタンスがあるにすぎない。
コイル巻きセット130Aとコイル巻きセット130Bは実質的な非誘導抵抗を形成し、外部回路300が必要な機能(例えば電流制限や減衰させる周波数応答等を低減させる)を提供し得る。
本実施形態において、前記電流は直流電流若しくは交流電流である。換言すると、ハイブリッド式インダクタンス装置100は直流電源でも交流電源でも使用できる。本実施形態において、ハイブリッド式インダクタンス装置100はπ型フィルタ又はT型フィルタであっても良い。
【0011】
図6を参照して説明する。ここで、本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の概略図である。
本実施形態において、各湾曲エリア111E~111Fにおけるコイル巻きセット130E~130Fは複数のコイルを含む。ただし、本発明はこれには限られず、各湾曲エリア111E~111Fにおけるコイル巻きセット130E~130Fは一個のコイルのみを含んでも差し支えない。
各コイルは複数のコイル囲繞と、磁気コア110の上面から延伸する始端と、磁気コア110の底面から延伸する終端を備える。具体的には、図6に示すように、湾曲エリア111Eのコイル巻きセット130Eは第1のコイル巻きセット131Eと第2のコイル巻きセット132を含む。
湾曲エリア111Fのコイル巻きセット130Fは第3のコイル巻きセット131Fと第4のコイル巻きセット132Fを含む。図6は湾曲エリアが2個のコイルのみを含む様に図示しているが、本発明はこれには限られず、湾曲エリアは1個または2個以上のコイルを含んでいても差し支えない。
第1のコイル巻きセット131Eは複数の第1のコイル囲繞1311Eと、磁気コア110から上面へ延伸する第1の始端TE1と、磁気コア110の底面から延伸する第1の終端TE2を備える。
第2のコイル巻きセット132Eは複数の第2のコイル囲繞1321E、磁気コア110の上面から延伸する第2の始端TE3と、磁気コア110の底面から延伸する第2の終端TE4を備える。
第3のコイル131Fは、複数の第3のコイル囲繞1311Fと、磁気コア110の上から延伸する第3の始端TF1と、磁気コア110の底面から延伸する第3の終端TF2を備える。
第4のコイル132Fは、複数の第4のコイル囲繞1321Fと、磁気コア110の上から延伸する第4の始端TF3と、磁気コア110の底面から延伸する第4の終端TF4を備える。
本実施形態において、同一のコイル巻きセットのコイルの始端は、該コイル巻きセットの一の端子を形成するために統合される。同一のコイル巻きセットのコイルの終端は該コイル巻きセットの他の端子を形成するために統合される。
本実施形態において、同一のコイル巻きセットのコイルの始端は互いに隣り合う。また、同一のコイル巻きセットのコイルの終端も互いに隣り合う。具体例は図6を参照して説明する。
すなわち、図6に示すように、第1の始端TE1と第2の始端TE3はいずれも湾曲エリア111Eの左側に位置し、第1の終端TE2と第2の終端TE4はいずれも湾曲エリア111Eの右側に位置する。
第3の始端TF1と第4の始端TF3はいずれも湾曲エリア111Fの右端に位置する。第3の終端TF2と第4の終端TF4はいずれも湾曲エリア111Fの左端に位置する。
本実施形態において、同一のコイル巻きセットのコイルは磁気コア110が同一の巻き付け方向に巻き付けられる。
具体的には、図6に示すように、コイル巻きセット130Eの第1のコイル131Eと第2のコイル132Eはいずれも、第1の始端TE1と第2の始端TE3から開始し、先ずは磁気コア110の上面から磁気コアの底面へ巻き付けられる。
そして、磁気コア110の底面から磁気コア110の上面へ巻き付けられ、湾曲エリア111Eの左端に沿って湾曲エリア111Eの右端へ巻き付けられる(要するに左側から右側へ)ことにより、第1の終端TE2と第2の終端TE4が結束する。
コイル巻きセット130Fの第3のコイル131Fと第4のコイル132Fの巻き付け方向は、いずれも第3の始端TF1と第4の始端TF3から始まり、先ずは磁気コア110の上面から磁気コア110の底面へ巻き付けられる。
続いて、磁気コア110の底面から磁気コア110の上面へ巻き付けられ、湾曲エリア111Fの右側に沿って湾曲エリア111Fの左端へ巻き付けられる(ようするに、右から左へ)ことにより、第3の終端TF2と第4の終端TF4が結束する。
本実施形態において、同一のコイル巻きセットのコイルのコイル囲繞は平行である。例えば、図6に示すように、第1のコイル131Eの各第1のコイル囲繞1311Eは、それぞれ第2のコイル132Eの各第2のコイル囲繞1321Eと平行となる。
第3のコイルの131Fの各第3のコイル囲繞は第4のコイル132Fの各第4のコイル囲繞1321Fとそれぞれ平行となる。
本実施形態では、同じコイル巻きセットのコイルのコイル囲繞は互いに間隔を開けて排列されている。
具体的には、図6に示すように、湾曲エリア111Fの左端から右端(要するに左から右)に至り、第1のコイル囲繞1311Eと第2のコイル囲繞1321Eの排列順序は「第1のコイル囲繞1311E、第2のコイル囲繞1321E、第1のコイル囲繞1311E、第2のコイル囲繞1321E、第1のコイル囲繞1311E、第2のコイル囲繞1321E・・・・等」である。
湾曲エリア111Fの右端から左端(すなわち右から左)に至り、第3のコイル囲繞1311Fと第4のコイル囲繞1321Fの排列順序は「第4のコイル囲繞1321F、第3のコイル囲繞1311F、第4のコイル囲繞1321F、第3のコイル囲繞1311F、第4のコイル囲繞1321F、第3のコイル囲繞1311F・・・・等」である。
【0012】
次に、図7図8を参照して本発明の実施形態を説明する。ここで、図7は本発明の実施形態を示すハイブリッド式インダクタンス装置の概略図であり、図8は本発明の実施形態の部分構造の断面図である。
本実施形態において、同一のコイル巻きセットのコイルのコイル囲繞は互いに重なり合う、例えば、コイル巻きセット130Eの第1のコイル131Eと第2のコイル132Eは一緒に統合されることによって単一の多芯の線によって実現できる。
コイル巻きセット130Fの第3のコイル131Fと第4のコイル132Fが一緒に統合されることによって単一の多芯の線によって実現されたとき、第1のコイル囲繞1311Eは第2のコイル囲繞1321Eの上で重なり合い、もしくは第2のコイル囲繞1321Eの下で重なり合い、第3のコイル囲繞1311Fは第3のコイル囲繞1321Fの上で重なり合い、若しくは第4のコイル囲繞1321Fの下で重なり合う。
図8に示すように、部分構造35は第1のコイル囲繞1311E、第2のコイル囲繞1321Eを備え、図8から分かるように、第1のコイル囲繞1311Eが第2のコイル囲繞1321E上で重なり合う。
本実施形態において、コイル巻きセット130Eの第1のコイル131Eと第2のコイル132Eは一緒に統合されることによって単一の多芯の線を実現できる。
このため、第1の始端TE1と第2の始端TE3が重なり合い、第1の終端TE2と第2の終端TE4が重なりあう。
例えば、第1の始端TE1は第2の始端TE3上で重なり合い、もしくは第2の始端TE3の下で重なり合い、且つ第1の終端TE2は第2の終端TE4上で重なり合い、或は第2の終端TE4の下で重なり合う。
第1の始端TE1、第2の始端TE3、第1の終端TE2、及び第2の終端TE4と似たものとして、第3の始端TF1と第4の始端が重なり合い、第3の終端TF2と第4の終端TF4が重なり合う。
つまり、同一のコイル巻きセットのコイルの始端は互いに重なり合い、同一のコイル巻きセットのコイルの終端と互いに重なり合う。
本実施形態において、各湾曲エリアにおけるコイル巻きセットは磁気コア110に対する巻き付け方向が、その隣り合う湾曲エリアにおけるコイル巻きセットが磁気コア110に対して巻き付けられる方向と異なる。
具体的には、図6に示すように、湾曲エリア111Eと湾曲エリア111Fは隣り合い、コイル巻きセット130Eの第1のコイル131Eと第2のコイル132Eは第1の方向D1に沿って湾曲エリア111Eに巻き付けられる。
コイル巻きセット130Fの第3のコイル131と第4のコイル132Fは第2の方向D2に沿って湾曲エリア111Fに巻き付けられる。
第1の方向D1と第2の方向D2は互いに反対となる方向である。例えば、第1の方向D1が、湾曲エリア111Eの左端から湾曲エリア111Eの右端の方向への方向(要するに、左から右へ)であり、第2の方向D2は湾曲エリア111Fの右端から湾曲エリア111Fの左端への方向(要するに右から左へ)である。
本実施形態において、同一のコイル巻きセットのコイルのコイル囲繞は同一の囲繞数(要するに、コイルを巻き付ける回数が一緒)である。
例えば、第1のコイル囲繞1311Eと第2のコイル囲繞1321Eはいずれも4回である。第3のコイル1311Fと第4のコイル囲繞1321Fはいずれも4回である。
ただし、本発明はこれに限られることなくコイルを巻く回数については実際の要請に基づいて適宜調整しても差し支えない。このようにして、ハイブリッド式インダクタンス装置100はノイズ(コモンモードノイズ又は差動モードノイズ)の抑制を高めることにより、電流を制限する等の効果を発揮し得る。
図6に示すように、本実施形態において、コイル巻きセットにおける第3のコイル巻きセットと第4のコイル巻きセットは湾曲エリアにおいて互いに隣り合う第3の湾曲エリアと第4の湾曲エリアにそれぞれ巻き付けられる。
第3のコイル巻きセットのコイルの始端と第4のコイル巻きセットのコイルの終端は互いに隣り合い、第3のコイル巻きセットのコイルの終端と第4のコイル巻きセットのコイルの始端は互いに隣り合う。
以下の実施形態は、コイル巻きセット130E、コイル巻きセット130F、湾曲エリア111E、及び湾曲エリア111Fを以って、第3のコイル巻きセット、第4のコイル巻きセット、第3の湾曲エリア、第4の湾曲エリアを説明する。
具体的には、湾曲エリア111Eの左端は湾曲エリア111Fの左端と隣り合う(具体的には、湾曲エリア111Eの左端と湾曲エリア111Fの左端は間隔113で隔てられる)。
湾曲エリア111Eの右端は湾曲エリア111Fの右端(具体的には、湾曲エリア111Eの右端と湾曲エリア111Fの右端は間隔113で隔てられている)と隣り合い、第1の始端TE1と第2の始端TE3は湾曲エリア111Eの左端に位置する。
第3の終端TF2と第4の終端TF4は湾曲エリア111Fの左端に位置するため、第1の始端TE1と第2の始端TE3は、第3の終端TF2と第4の終端TF4と隣り合う。
同じようなケースとして、第1の終端TE2と第2の終端TE4は湾曲エリア111Eの右端に位置し、第3の始端TF1と第4の始端TF3は湾曲エリア111Fの右端に位置する。
このため、第1の終端TE2と第2の終端TE4は、第3の始端TF1と第4の始端TF3と互いに隣り合う。
本実施形態において、図6に示すように、第1の始端TE1、第2の始端TE3、第3の始端TF1、及び第4の始端TF3は同一軸線(以下、第1の軸線L1と称する。)上に位置し、第1の終端TE2、第2の終端TE4、第3の終端TF2、第4の終端は同一軸線(以下第2の軸線L2という。)上に位置する。また、第1の軸線L1と第2の軸線L2は相互に垂直となる(直交する)。
始端(すなわち、第1の始端TE1、第2の始端TE3、第3の始端TF1、及び第4の始端TF3)、及び終端(すなわち、第1の終端TE2、第2の終端TE4、第3の終端TF2、及び第4の終端TF4)はコイル(すなわち、第1のコイル131E、第2のコイル132E、第3のコイル131F、第4のコイル132F)は外部回路の部品と連接するのに用いられ、又は外部回路との間で信号を入出力する際に利用される。
例えば、第1の始端TE1と第1の終端TE2は第1のコイル131Eの外部接続端子である。第2の始端TE3と第2の終端TE4は第2のコイル132Eの外部接続端子である。
第3の始端TF1と第3の終端TF2は第3のコイル131Fの外部接続端子である。第4の始端TF3と第4の終端TF4は第3のコイル132Fの外部接続端子である。
このため、コイルは始端と終端を経て対応する回路部品と接続され、又は電気信号を送受信でき、ハイブリッド式インダクタンス装置100は複数の種類の回路構造において使用することができる。
ここで、始端と終端は、コイル巻き線の始まりと終わりであって、電流が流れる方向を制限するものではない。
【0013】
図3図6図9を参照して本発明の実施形態を説明する。図9は本発明のハイブリッド式インダクタンス装置100の回路図である。
電流が第3のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130E)のコイルにおける第1のコイル(すなわち、第1のコイル131E)の終端(すなわち、第1の終端TE2)と第4のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130F)のコイルにおける第3のコイル(すなわち、第3のコイル131F)の終端(すなわち、第3の終端TF2)を経由して、第1のコイルの始端(すなわち、第1の始端TE1)と第3のコイルの始端(すなわち、第3の始端TF1)に流れたとき、第1のコイルと第3のコイルはコモンモードインダクタンスを形成する。
具体的には、第1のコイル131Eの第1の終端TE2は電源のプラス端子201のプラスの電源信号V+と結合し、第3のコイル131Fの第3の終端TF2は電源200のマイナス端子203のマイナス電源信号V-に結合される。
第1のコイル131Eの第1の始端TE1は外部回路300の第1の入力端子301と接続される。第3のコイル131Fの第3の始端TF1は外部回路300の第2の入力端子303と接続される。
コモンモードノイズが発生したとき、コモンモードノイズ電流は第1の終端TE2を経て第1のコイル131Eの第1の始端TE1へ流れることにより、外部回路300の基準接地信号GND経を経て電源200に戻る。
また、第3の終端TF2は第3のコイル131Fの第3の始端TF1に流れることにより、外部回路300の基準接地信号GNDを経て電源200に戻る。
第1の巻き線131Eと第3の巻き線131Fは同一方向の磁場を発生し、第1のコイル131Eと第3のコイル131のインダクタンスを増強する。これはすなわち、コモンモード電流のインダクタンス(すなわち、この時の第1のコイル131Eと第3のコイル131Fはコモンモードインダクタンスを形成する)の抑制を増強し、ノイズを除去する効果を実現する。
同じ要領で、本実施形態において、電流は第3のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130E)におけるコイルの第2のコイル(すなわち、第2のコイル132E)の始端(すなわち、第2の始端TE3)と第4のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130F)のコイルにおける第4のコイル(すなわち、第4のコイル132F)の始端(すなわち、第4の始端TF3)を経て、第2のコイルの終端(すなわち、第2の終端TE4)と第4のコイルの終端(すなわち、第4の終端TF4)に流れたとき、第2のコイルと第4のコイルはコモンモードインダクタンスを形成する。
このため、第2のコイル132Eと第4のコイル132Fは、第1のコイル131Eと第3のコイル131Fと同様の方法でコモンモードインダクタンスを形成する。なお、コモンモードインダクタンスを形成する方法は先にも述べたので省略する。
【0014】
図4図6図9を参照して説明する。電流が第3のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130E)のコイルにおける第1のコイル(すなわち、第1のコイル131E)の終端(すなわち、第1の終端TE2)と第4のコイル巻きセット(すなわち、第4のコイル巻きセット130F)のコイルにおける第4のコイル(すなわち、第4のコイル132)の終端(すなわち、第4の終端TF4)を経て第1のコイルの始端(すなわち、第1の始端TE1)と第4のコイルの始端(すなわち、第4の始端TE3)に流れたとき、第1のコイルと第4のコイルは電流によって、同一の磁場方向を形成することにより、差動(ディファレンシャル)モードインダクタンスを形成する。
具体的には、第1の終端TE2は電源200のプラス端子201のプラスの電源信号V+と結合し、第4の始端TF3は電源のマイナス端子203のマイナスの電源信号V-と結合し、第1の始端TE1は外部回路300の第1の入力端子301と結合し、第4の終端TF4は外部回路300の第2の入力端子303に接続される。
ディファレンシャルノイズが発生したとき、ディファレンシャルノイズ電流が第1の終端TE2を経て第1のコイル131Eの第1の始端TE1に流れることにより外部回路に流れ、外部回路300から第4の終端TF4を経て第4のコイル132Fの第4の始端TF3に流れ、第1のコイル131Eと第4のコイル132Fに同一の同じ方向の磁場(すなわち、同一の磁場方向を生成する)を生成させる。
これによって、第1のコイル131Eと第4のコイル132Fのインダクタンスの量が増強され、ディファレンシャル電流のインダクタンス(換言すると、このときの第1のコイル131Eと第4のコイル132はディファレンシャルモードインダクタンスを形成する)の抑制が増強され、これによりノイズを除去する効果が得られる。
同様にして、本実施形態において、電流は第3のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130E)のコイルにおける第2のコイル(第2のコイル132E)の終端と第4のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130F)のコイルにおける第3のコイル(すなわち、第3のコイル131F)の終端(第3の終端TF2)を経て、第2のコイルの始端(すなわち、第2の始端TE3)と第3のコイルの始端(第3の始端TF1)に流れたとき、第2のコイルと第3のコイルは電流によって同一の磁場方向を形成し、ディファレンシャルモードインダクタンスを形成する。
このとき、第2のコイル132Eと第3のコイル131Fは、第1のコイル131Eと第4のコイル132Fと同様にして、ディファレンシャルモードインダクタンスを形成するが、この形成方法は既に述べたのでここでは省略する。
【0015】
図5図6図9を参照して説明する。第3のコイル巻きセット(コイル巻きセット130E)のコイル(すなわち、第1のコイル131Eと第2のコイル132E)の始端(すなわち、第1の始端TE1と第2の始端TE3)が相互に結合し、電流が第3のコイル巻きセットのコイルの中のいずれか一つの終端(例えば、第1の終端TE2若しくは第2の終端TE4)に流れたとき、第3のコイル巻きセットのコイルは電流によって非誘導抵抗を形成する。
具体的には、第1の終端TE2は電源200のプラス端子201のプラスの電源信号V+に結合され、第2の終端TE4は外部回路300の第1の入力端子301に結合される。
外部回路300に対して電流を制限し、その減衰する周波数応答(例えばその負荷が増加する)が低下したとき、第1の始端TE1を、第2の始端TE3(すなわち、第1の始端TE1と第2の始端TE3が短絡する)に結合する。
このとき、電流は第1の終端TE2を経て第1のコイル131Eと第2のコイル132Eに流れた後、外部回路300に流れる。
第1のコイル131Eと第2のコイル132は互いに反対方向となる磁場を生成するので、磁場は誘導性リアクタンスを生成することなく互いに打ち消し合う。
換言すると、第1のコイル131Eと第2のコイル132Eは誘導性リアクタンスがない抵抗(コイルの抵抗値のみがある)であり、又は微小の漏れインダクタンスによって引き起こされるインダクタンスのみが僅かに存在する。
第1のコイル131Eと第2のコイル132Eは、外部回路300が必要とする効能(電流制限や減衰させる周波数応答等)に適用させるために、実質的な非誘導抵抗を形成する。
同様にして、本実施形態において、第4のコイル巻きセット(すなわち、コイル巻きセット130F)のコイル(第3のコイル131Fと第4のコイル132F)の始端(すなわち、第3の始端TF1と第4の始端TF3)は相互に結合される。
電流は第4のコイル巻きセットのコイルのいずれか一つの終端(例えば第3の終端TF2若しくは第4の終端TF4)から流れ込んだとき、第4のコイル巻きセットのコイルは電流によって非誘導抵抗を形成する。
このように、第3のコイル131Fと第4のコイル132Fは、第1のコイル131Eと第2のコイル132Eと同様にして、非誘導抵抗を形成するが、この方法については既に説明したので省略する。
ハイブリッド式インダクタンス装置100は簡単なコイル巻きセット構造を具備し、これにより、巻線機の自動巻きにより、製品の生産効率を向上させ、コイル巻きセット間の相互干渉を低減することができる。
このため、第1の実施形態のように、単一の磁気コアに対して複数のコイル巻きセットを巻き付けて、各コイル巻きセットの巻き付け方向を異ならせて、その隣り合うコイル巻きセットの巻き付け方向を異なる方向とする。
このようにすることにより、電流が生成されたとき、異なるコイル巻きセットの組み合わせに基づいて、コモンモードインダクタンス、ディファレンシャルモードインダクタンス、非誘導抵抗を形成し、電源のフィルタ回路の大きさを小さくすることができ、電源フィルタの内部空間が占めるスペースを小さくすることができ、電源フィルタの小型化の要求を満たすことができる。
【符号の説明】
【0016】
100 ハイブリッド式インダクタンス装置
110 磁器コア
111A~111F 湾曲エリア
113 間隔
115A~115B 中心軸
1151 第1のエリア
1153 第2のエリア
130A~130F コイル巻きセット
131E 第1のコイル
1311E 第1のコイル囲繞
TE1 第1の始端
TE2 第1の終端
132E 第2のコイル
1321E 第2のコイル囲繞
TE3 第2の始端
TE4 第2の終端
131F 第3のコイル
1311F 第3のコイル囲繞
TF1 第3の始端
TF2 第3の終端
132F 第4のコイル
1321F 第4のコイル囲繞
TF3 第4の始端
TF4 第4の終端
35 部分構造
L1 第1の軸線
L2 第2の軸線
200 電源
201 プラス端子
V+ プラスの電源信号
203 マイナス端子
V- マイナスの電源信号
300 外部回路
301 第1の入力端子
303 第2の入力端子
C 浮遊容量
GND 基準接地信号
A1~A4 電流方向
D1 第1の方向
D2 第2の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9