(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082443
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】簡易コーヒー抽出具用袋体および簡易コーヒー抽出具パック
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20220525BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20220525BHJP
A47J 31/02 20060101ALI20220525BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B65D81/26 E
B65D85/804 100
A47J31/02
A47J31/06 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186161
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2020193124の分割
【原出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】516340342
【氏名又は名称】株式会社W
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹
【テーマコード(参考)】
3E067
4B104
【Fターム(参考)】
3E067AA05
3E067AB23
3E067BA12A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB26A
3E067CA03
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA24
3E067EA08
3E067EB01
3E067FA01
3E067FB17
3E067FC01
3E067GD02
4B104AA07
4B104BA02
4B104BA43
(57)【要約】
【課題】張らず且つ安価でありながら、小容量のコーヒーが個包装されている簡易コーヒー抽出具を、内部への酸素(外気)の進入を阻止し且つ外部への二酸化炭素の放出を可能にしながら包装することができる簡易コーヒー抽出具用袋体等を提供すること。
【解決手段】簡易コーヒー抽出具用袋体1は、簡易コーヒー抽出具2を包装する簡易コーヒー抽出具用袋体であって、縦および横の長さが80mm以上180mm以下の矩形の平面形状を有し、矩形の少なくとも一縁部に、対向するフィルムを接合することによって形成された幅5mm以上10mm以下の帯状シール部10が設けられ、帯状シール部に、一端が袋体の内部に開口し他端が袋体の外部に開口し、袋体の内部空間を袋体の外部に連通させる少なくとも1本の通気路14が形成され、通気路は対向するフィルムが接合されていない非接合部によって構成され、長さ40mm以上300mm以下、幅0.5mm以上3mm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムによって形成されフィルタに粉状コーヒーが収容された簡易コーヒー抽出具を包装する簡易コーヒー抽出具用袋体であって、
縦および横の長さが80mm以上180mm以下の矩形の平面形状を有し、
前記矩形の少なくとも一縁部に、対向するフィルムを接合することによって形成された幅5mm以上10mm以下の帯状シール部が設けられ、
前記帯状シール部に、一端が前記袋体の内部に開口し他端が前記袋体の外部に開口し、前記袋体の内部空間を前記袋体の外部に連通させる少なくとも1本の通気路が形成され、
該通気路は前記対向するフィルムが接合されていない非接合部によって構成され、長さ40mm以上300mm以下、幅0.5mm以上3mm以下である、
簡易コーヒー抽出具用袋体。
【請求項2】
前記通気路の数が1である、
請求項1に記載の簡易コーヒー抽出具用袋体。
【請求項3】
該通気路が、少なくとも1の折曲がり部分を有している、
請求項1または2に記載の簡易コーヒー抽出具用袋体。
【請求項4】
帯状シール部が、超音波接合により形成された超音波接合部である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の簡易コーヒー抽出具用袋体。
【請求項5】
粉状コーヒーを収容したフィルタ部を含む簡易コーヒー抽出具と、該簡易コーヒー抽出具を包装する袋体とを備えている簡易コーヒー抽出具パックであって、
前記袋体が、縦および横の長さが80mm以上180mm以下の矩形の平面形状を有し、
前記矩形の少なくとも一の縁部に、対向するフィルムを接合することによって形成された幅5mm以上10mm以下の帯状シール部が設けられ、
前記帯状シール部に、一端が前記袋体の内部に開口し他端が前記袋体の外部に開口し、前記袋体の内部空間を前記袋体の外部に連通させる少なくとも1本の通気路が形成され、該通気路は前記対向するフィルムが接合されていない非接合部によって構成され、長さ40mm以上300mm以下、幅0.5mm以上3mm以下である、
ことを特徴とする簡易コーヒー抽出具パック。
【請求項6】
前記通気路の数が1である、
請求項5に記載の簡易コーヒー抽出具パック。
【請求項7】
該通気路が、少なくとも1の折曲がり部分を有している、
請求項5または6に記載の簡易コーヒー抽出具パック。
【請求項8】
帯状シール部が、超音波接合により形成された超音波接合部である、
請求項5~7のいずれか1項に記載の簡易コーヒー抽出具パック。
【請求項9】
内部に窒素ガスが充填されている、
請求項5~8のいずれか1項に記載の簡易コーヒー抽出具パック。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか1項に記載の簡易コーヒー抽出具パックの製造方法であって、
前記簡易コーヒー抽出具を前記袋体に封入するステップと備え、
該封入ステップが、焙煎後に粉体化された前記粉状コーヒーをエイジングするエイジング工程を経ること無く実施される、
簡易コーヒー抽出具パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易コーヒー抽出具用袋体および簡易コーヒー抽出具パックに関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、豆あるいは粉の何れの状態においても、保存中に酸素が触れると品質が悪化するため、保存中は、酸素との接触を極力回避することが好ましい。
【0003】
このため、コーヒーを袋体に入れて保存する場合、袋体内への酸素の侵入を防止する機能を備える必要がある。一方、袋体内で保存されているコーヒーは二酸化炭素を発生させ、袋体を膨張させ破裂させるおそれがある。このため、コーヒーを保存する袋体は、内部で発生した二酸化炭素を外部に放出し、袋体の内圧を適正に維持する機能を備える必要がある。
【0004】
これら相反する機能を両立させるため、コーヒーを保存する袋体に逆止弁を取り付ける方法が知られている。
【0005】
一方、一杯分のコーヒーの粉を収容したフィルタを紙等で形成されたホルダに組み付け、このホルダをカップ等の飲用容器に保持させ、コーヒーの粉にお湯を注いでコーヒーをドリップ抽出するコーヒー入り簡易式ドリッパー(所謂「ドリップコーヒー」)、あるいは、コーヒーの粉を収容したティーパックをお湯に浸漬することによりコーヒーを抽出するコーヒーパックのような簡易コーヒー抽出具が、近年、他用されている。(特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-024700号公報
【特許文献2】特開平07-016157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような簡易コーヒー抽出具を保存する際にも、上記のような、包装用の袋体への酸素の進入を防止し且つ内部からの二酸化炭素の放出を可能にすることが求められる。
【0008】
しかしながら、このような簡易コーヒー抽出具は、一杯分のコーヒーをフィルタあるいはパック内に収容し、これらが1つずつ個別に包装されている。このため、逆止弁のように嵩張り且つ安価ではない部品を個々の包装体に設けることは、収納スペースおよび製造コストの点で現実的ではなく、実施されていなかった。
【0009】
このため、包装体に封入する前に、粉状のコーヒーあるいは簡易コーヒー抽出具を開放空間に放置し、二酸化炭素を放出させるエイジングを行ない、その後に、包装体に封入する方法が採られることもある。
【0010】
しかしながら、エイジングにより、追加の作業工程が発生し、また、保管場所も必要となり、更にコーヒーの風味の劣化も発生する。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、嵩張らず且つ安価でありながら、小容量の粉状のコーヒーが個包装されている簡易コーヒー抽出具を、内部への酸素(外気)の進入を阻止し且つ外部への二酸化炭素の放出を可能にしながら包装することができる簡易コーヒー抽出具用袋体を提供することを目的とする。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、嵩張らず且つ安価でありながら、小容量のコーヒーが個包装されている簡易コーヒー抽出具を、内部への酸素(外気)の進入を阻止し且つ外部への二酸化炭素の放出を可能にしながら包装することができる簡易コーヒー抽出具用袋体と、これに包装された簡易コーヒー抽出具とを含む簡易コーヒー抽出具パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、
フィルムによって形成されフィルタに粉状コーヒーが収容された簡易コーヒー抽出具を包装する簡易コーヒー抽出具用袋体であって、
縦および横の長さが80mm以上180mm以下の矩形の平面形状を有し、
前記矩形の少なくとも一縁部に、対向するフィルムを接合することによって形成された幅5mm以上10mm以下の帯状シール部が設けられ、
前記帯状シール部に、一端が前記袋体の内部に開口し他端が前記袋体の外部に開口し、前記袋体の内部空間を前記袋体の外部に連通させる少なくとも1本の通気路が形成され、
該通気路は前記対向するフィルムが接合されていない非接合部によって構成され、長さ40mm以上300mm以下、幅0.5mm以上3mm以下である、
簡易コーヒー抽出具用袋体が提供される。
【0014】
このような構成によれば、帯状シール部に設けられた通気路によって、外部から袋体内への外気(酸素)の進入を阻止しつつ、袋体内で発生した二酸化炭素を袋体外に排出することが可能となる。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば
前記通気路の数が1である。
【0016】
このような構成によれば、通気路および通気路が形成されている帯状シール部の構成が簡単な構成となるので、容易且つ安価に袋体を製造することができる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、
該通気路が、少なくとも1の折曲がり部分を有している。
【0018】
このような構成によれば、通気路に設けられた折曲がり部分により、袋体の外部からの外気(酸素)の進入を効果的に阻止できる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様によれば、
帯状シール部が、超音波接合により形成された超音波接合部である。
【0020】
このような構成によれば、帯状シール部が超音波接合により形成されるので、帯状シール部に対向するフィルムが接合されていない非接合部を容易に形成できる。
【0021】
本発明の他の態様によれば、
粉状コーヒーを収容したフィルタ部を含む簡易コーヒー抽出具と、該簡易コーヒー抽出具を包装する袋体とを備えている簡易コーヒー抽出具パックであって、
前記袋体が、縦および横の長さが80mm以上180mm以下の矩形の平面形状を有し、
前記矩形の少なくとも一の縁部に、対向するフィルムを接合することによって形成された幅5mm以上10mm以下の帯状シール部が設けられ、
前記帯状シール部に、一端が前記袋体の内部に開口し他端が前記袋体の外部に開口し、前記袋体の内部空間を前記袋体の外部に連通させる少なくとも1本の通気路が形成され、該通気路は前記対向するフィルムが接合されていない非接合部によって構成され、長さ40mm以上300mm以下、幅0.5mm以上3mm以下である、
ことを特徴とする簡易コーヒー抽出具パックが提供される。
【0022】
このような構成によれば、帯状シール部に設けられた通気路によって、外部から袋体内への外気(酸素)の進入を阻止しつつ、袋体内で粉状コーヒーから発生した二酸化炭素を袋体外に排出することが可能となる。
【0023】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記通気路の数が1である。
【0024】
このような構成によれば、通気路および通気路が形成されている帯状シール部の構成が簡単な構成となるので、容易且つ安価に袋体を製造することができる。
【0025】
本発明の他の好ましい態様によれば、
該通気路が、少なくとも1の折曲がり部分を有している。
【0026】
このような構成によれば、通気路に設けられた折曲がり部分により、袋体の外部からの外気(酸素)の進入を効果的に阻止できる。
【0027】
本発明の他の好ましい態様によれば、
帯状シール部が、超音波接合により形成された超音波接合部である。
【0028】
このような構成によれば、帯状シール部が超音波接合により形成されるので、帯状シール部に対向するフィルムが接合されていない非接合部を容易に形成できる。
【0029】
本発明の他の好ましい態様によれば、
内部に窒素ガスが充填されている。
【0030】
本発明の態様によれば、
上記いずれかの簡易コーヒー抽出具パックの製造方法であって、
前記簡易コーヒー抽出具を前記袋体に封入するステップと備え、
該封入ステップが、焙煎後に粉体化された前記粉状コーヒーをエイジングするエイジング工程を経ること無く実施される、
簡易コーヒー抽出具パックの製造方法が提供される。
【0031】
このような構成によれば、時間を要し更に粉状コーヒーの風味等の品質を低下させるエイジングが不要となるので、簡易コーヒー抽出具パックの製造が容易且つ迅速に行なわれるとともに、簡易コーヒー抽出具内のコーヒーの品質低下も回避できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、嵩張らず且つ安価でありながら、小容量のコーヒーが個包装されている簡易コーヒー抽出具を、内部への酸素(外気)の進入を阻止し且つ外部への二酸化炭素の放出を可能にしながら包装することができる簡易コーヒー抽出具用袋体が提供される。
【0033】
本発明の他の態様によれば、嵩張らず且つ安価でありながら、小容量のコーヒーが個包装されている簡易コーヒー抽出具を、内部への酸素(外気)の進入を阻止し且つ外部への二酸化炭素の放出を可能にしながら包装することができる簡易コーヒー抽出具用袋体と、これに包装された簡易コーヒー抽出具とを含む簡易コーヒー抽出具パックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態の簡易コーヒー抽出具用の袋体の模式的な斜視図である。
【
図2】袋体に収容される簡易コーヒー抽出具(ドリップコーヒー)を使用状態(展開状態)で示す模式的な斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の袋体の通気路の構成を説明する模式的な拡大図である。
【
図4】変形例の通気路の平面形状を示す図面である。
【
図5】変形例の通気路の平面形状を示す図面である。
【
図6】変形例の通気路の平面形状を示す図面である。
【
図7】本実施形態の製造方法の超音波溶着法に用いる溶着装置(超音波接合機)の構成を模式的に示す図面である。
【
図8】超音波接合装置で使用されるアンビルの表面を示す模式的な斜視図である。
【
図9】簡易コーヒー抽出具パック1’を示す模式的な図面である。
【
図10】本発明の他の実施形態の簡易コーヒー抽出具用の袋体の模式的な斜視図である。
【
図11】本発明の実施例の評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好ましい実施形態の簡易コーヒー抽出具用の袋体1について説明する。
図1は、本実施形態の簡易コーヒー抽出具用の袋体1の模式的な斜視図であり、
図2は、袋体1に収容される簡易コーヒー抽出具の一例である簡易コーヒー抽出具(ドリップコーヒー)2を使用状態(展開状態)で示す模式的な斜視図である。
なお、本願では、明確化のため、図面中の各要素の寸法、比率等は正確に表わされていない。
【0036】
図2に示されているように、本実施形態の袋体1に包装される簡易コーヒー抽出具2は、粉状に挽かれた1杯分(例えば、4ないし20グラム程度)のコーヒー4を収容したフィルタ部6と、このフィルタ部6をカップ等の飲用容器に対して取付けるための保持部8とを有し、保持部8によって飲用容器に対して固定され、フィルタ部6の粉状コーヒー4にお湯を注いでコーヒーをドリップ抽出するコーヒー抽出具である。上述のように、この簡易コーヒー抽出具は、「ドリップコーヒー」等と称され取引されている。
【0037】
尚、本発明の「簡易コーヒー抽出具」には、
図2に示す本実施形態の所謂「ドリップコーヒー」の他、粉状に挽かれた1杯分の粉状コーヒーがティーパック等に使用されるパックに収容され、このパックをお湯に浸漬することによりコーヒーを抽出するコーヒーパックのような1杯分の粉状に挽いたコーヒーからコーヒーを抽出する簡易コーヒー抽出具等の他の簡易コーヒー抽出具も含まれる。
【0038】
本実施形態の袋体1は、簡易コーヒー抽出具2のような簡易コーヒー抽出具を1つずつ個別に包装するために使用される袋体である。
図1では、内部に未展開状態の簡易コーヒー抽出具2を収容し上縁が未接合で上端が開口した状態に袋体1を示している。なお、本発明の袋体には、
図1に示すような上端が開口した未完成の袋体の他、上端および下端が開口した未完成の袋体、簡易コーヒー抽出具を収容して上端が閉鎖された袋体も含まれる。
【0039】
本実施形態の袋体1は、横長いバリアフィルムを幅方向中央で折り曲げてバリアフィルムの両側縁を互いに対向するように重ね合わせ、上下端と、フィルムが対向するように重ね合わされている側(一側)の側端とをシールすることによって形成された略矩形の平面形状の袋体である。
【0040】
袋体1の一側端部は、袋体1の一側縁の全長にわたって延びる帯状シール部10とされ、下端はボトムシール部12とされる。なお、本実施形態では、袋体1の内部に簡易コーヒー抽出具2を収容した後、上端がシールされ密封される。
【0041】
袋体1を構成するフィルムとしては、バリアフィルムが好ましい。バリアフィルムの具体例としてシリカ、アルミナ、アルミニウムのいずれかを蒸着したポリマーフィルム、金属箔層などの公知のフィルムが挙げられる。また、バリアフィルムと他のフィルムを積層した積層フィルムを用いることもできる。さらに紙素材とバリアコーティング層、ヒートシール層を積層したバリア紙も好ましく使用できる。
【0042】
袋体1に用いるフィルムは、厚さが、15μm以上150μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましい。フィルムの厚さが15μm未満の場合、袋体の強度が不充分になるおそれがあり、150μmを超えるとコスト上、不利になる場合がある。袋体1に用いるフィルムは、透明であっても不透明であってもよいが、日光による内容物の劣化を防止するため不透明な包装フィルムを用いることが好ましい。また、意匠性を高めるために表面に印刷を施したフィルムでもよい。
【0043】
袋体1のサイズは、縦と横のそれぞれの辺の長さが共に80mm以上180mm以下であるが、90mm以上160mm以下であることが好ましい。一辺の長さを80mm以上とすることで、内部に簡易コーヒー抽出具を収容することが可能となる。一方、180mm以下とすることで、内部に収容した簡易コーヒー抽出具内の粉状のコーヒーから発生する二酸化炭素で袋体の内部空間に満たすことができる。
【0044】
本実施形態の袋体1では、側端の帯状シール部10は、対向するフィルム同士が超音波接合されることによって形成された超音波シール部である。また、下端のボトムシール部12、および上端のトップシール(図示せず)はヒートシールによって形成されたヒートシール部である。
【0045】
袋体1の側縁の帯状シール部10は、幅(W)が5mm以上10mm以下であることが好ましく、6mm以上9mm以下がより好ましい。帯状シール部10の幅の幅を5mm以上とすることで、強度を保つことが可能になり、10mm以下とすることで、超音波による均一な接合が可能になる。
【0046】
袋体1のボトムシール部12、簡易コーヒー抽出具2等を収容した後に上端に例えばヒートシールで形成されるトップシール部は、形状や幅に制限はないが、幅は5mm以上10mm以下に設定されるのが一般的である。
【0047】
帯状シール部10には、1本の通気路14が設けられている。対向するフィルム同士が超音波音波接合されている帯状シール部10に設けられた、フィルム同士が接合されていない非接合部によって形成されたトンネル状部分である。
【0048】
図3は、通気路14の構成を説明する模式的な拡大図である。
図3に示されているように、本実施形態の袋体1では、通気路14は、略W字状に延びている。
【0049】
通気路14は、一端16が袋体1の内部に開口し他端18が袋体1の外部に開口し、袋体1の内部空間を袋体1の外部に連通させている。
【0050】
通気路14の長さは、40mm以上300mm以下に設定されている。また、通気路14の長さは、50mm以上280mm以下が好ましく、70mm以上250mm以下がより好ましい。長さを40mm以上とすることで、袋体1内への酸素の侵入を充分に抑制することが可能になり、300mm以下とすることで、袋体1からの二酸化炭素の適切な排出が可能になる。
【0051】
通気路14の長さとは、略一定幅の通気路14の中心軸に沿って計測した一端16から他端18までの長さを意味する。
【0052】
本実施形態の袋体1では、通気路14の幅は、0.5mm以上3mm以下に設定されている。
通気路14の幅は、0.6mm以上2mm以下が好ましく、0.7mm以上1.5mm以下がより好ましい。通気路の幅が0.5mm未満の場合、均一な幅の通気路を形成することが困難になる場合がある。また、幅が3mmを超えると、二酸化炭素の適切な排出が難しくなる場合がある。
【0053】
上述したように、本実施形態の袋体1では、通気路14は、平面視で略W字状に延びる形状を有している。従って、通気路14には、
図3に示されるように、折曲がり部20、22、24、26が、4箇所、中間部分に設けられている。
【0054】
詳細には、通気路14は、中間部分で、長さ10mm~20mm、幅0.7mm~1.5mmの5本の直線部分28、30、32、34、36が、折曲がり部20、22、24、26を介して、150~175度の角度を成して折れ曲がるように接続されている。この中間部分の外方には、折曲がり部38、40を介して延びる長さ3mmの端部分42、44が設けられている。
【0055】
図4は、変形例の通気路46の平面形状を示す図面である。
通気路46は、中間部分で、長さ25mm~40mm、幅0.7mm~1.5mmの2本の直線状部分48、50が、折曲がり部分52を介して、略178~160度の角度を成して、折れ曲がるように、接続されている。この中間部分の外方には、折曲がり部54、56を介して延びる長さ3mmの端部分58、60が設けられている。
【0056】
図5は、変形例の通気路62の平面形状を示す図面である。
通気路62は、中間部分で、長さ50mm~100mm、幅0.7mm~1.5mmの3本の直線状部分64、66、68が、折曲がり部分70、72を介して、略0度の角度を成して、折れ曲がる(即ちUターンする)ように順次に接続されている。この中間部分の外方には、折曲がり部74、76を介して延びる長さ3mmの端部分78、80が設けられている。
【0057】
通気路の形状(平面視の形状)には特に制限はないが、少なくとも1か所の折曲がり部分を持つことが好ましい。尚、本発明でいう折曲がり部分とは、通気路の略直線形状の部分が内角178度以下の角度をなすように折れ曲がっている部分のことを言う。折曲がり部分を設けることで、より効果的に酸素の侵入を抑制することができる。また。限られた長さの帯状シール部に長い通気路を形成する上でも有利である。しかしながら、折曲がり部が無い構成でもよい。
【0058】
図6は、中間部分に折曲がり部分が設けられていない通気路82の平面形状を示す図面である。
通気路82は、中間部分で、中間部分には折曲がり部が形成されていない。
この通気路82は、中間部分が、長さ50mm~100mm、幅0.7mm~1.5mmの1本の直線状部分84によって形成され、この中間部分の外方には、折曲がり部86、88を介して延びる長さ3mmの端部分90、92が設けられている。
【0059】
次に、本実施態様の袋体1の製造方法について説明する。この製造方法では、長方形状のフィルムの2つの側端部が重ね合わされ超音波溶着法で接合され、通気路を有する帯状シール部が形成される。
【0060】
まず、この製造方法で通気路を有する帯状シール部を形成するために用いる溶着装置の構成について説明する。
図7は、本実施形態の製造方法の超音波溶着法に用いる溶着装置(超音波接合機)100の構成を模式的に示す図面である。
【0061】
図7に示されているように、超音波接合機100は、50Hzまたは60Hzの商用電気を15~70KHz程度の高周波信号に変換する超音波発振機102と、この信号を機械的振動に変換するコンバータ104と、この機械的振動を増幅するブースター106と、増幅された振動を溶着対象(フィルム)108に伝えるホーン110、ホーン110との間でフィルム108の2つの端部を挟持するアンビル112とにより構成されている。
【0062】
アンビル112は図示しない駆動装置により駆動される。ホーン110とアンビル112の間には図示しない加圧装置により20Nから1000N程度の圧力がかけられる。加圧時間はおよそ0.1秒から5秒程度である。
【0063】
超音波接合装置では、ホーンまたはアンビルのいずれかの表面に通気路14の形状に対応する溝部が設けられている。溝部を設けるのはホーンとアンビルのいずれでもよいが、耐久性や超音波振動の安定性の観点から、本実施形態に超音波接合装置100では、アンビル112に溝部が設けられている。
【0064】
図8は、超音波接合装置100で使用されるアンビル112の表面を示す模式的な斜視図である。
アンビル112の表面114には、非接合部(通気路14等)を形成するための溝部116が形成されている。溝部116の寸法形状は、袋体1の通気路の長さと幅等に応じて決定される。
【0065】
例えば、溝部116の深さは、0.2mm以上1.0mm以下に設定されているが、0.25mm以上0.8mm以下が好ましく、0.3mm以上0.5mm以下がより好ましい。溝部の深さが0.2mm未満であると帯状シール部の強度が不充分になる場合があり、1.0mmを超えると溝部116の縁部でフィルムが切れてしまい、うまく接合できない場合がある。
【0066】
溝部116の断面形状は、矩形状、半円状、三角形状などの任意の形状でよいが、三角形状が好ましい。溝部116の断面形状を三角形状とすることで、超音波接合中に、溝部116の縁部でフィルムが切れてしまうことを防止できる。
【0067】
アンビル112の表面114の縁部を面取りしてもよい。面取りをすることで、超音波接合中に、この部分でフィルムが切れてしまうことを防止することができる。
【0068】
次に、本実施形態の袋体1の製造方法について、説明する。本実施形態の袋体1の製造方法では、袋体1を製造すると同時に、簡易コーヒー抽出具が袋体1内に封入されている簡易コーヒー抽出具パックも同時に製造される。
【0069】
まず、矩形状あるは長尺状のフィルムの側縁を重ね合わせ、この部分を上述した超音波接合装置100によってシールし通気路を有する帯状シール部を形成し、フィルムを筒状の部材を成形する。
【0070】
次いで、筒状の部材に筒状の部材を幅方向に横断するシール部(ボトムシールに相当)を形成し、上端が開口した内部空間を形成する。この内部空間に、簡易コーヒー抽出具を収容する。さらに、必要に応じて内部空間に窒素ガス等を充填し、内部空間の上端をヒートシール94等によって封止し、簡易コーヒー抽出具パック1’(
図9)とする。
【0071】
袋体の内部空間に収容される簡易コーヒー抽出具は、内部の粉状のコーヒーが、後述するエイジングを経ていないものである。即ち、コーヒー豆を挽いて粉状にされたコーヒーが、速やかに、簡易コーヒー抽出具パックに封入されることになる。
【0072】
従来の簡易コーヒー抽出具パックの製造では、簡易コーヒー抽出具パックの保存中に、内部の粉状コーヒーが発生させる二酸化炭素によって包装材が膨張することを防止するため、コーヒー豆を挽いた後、これを一定期間、空気あるいは窒素ガス中に放置し、二酸化炭素を放出させるエイジング工程を経て、包装体への封入を行なっていた。
【0073】
このエイジングは、時間を要するのみならず、コーヒーの風味等を低下させるという問題があった。
しかしながら、本実施形態の袋体1では、内部で発生した二酸化炭素が通気路を通して排出されるので、上記簡易コーヒー抽出具パックの製造方法のようにエイジングを省略しても、包装材の膨張が発生することがない。
【0074】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0075】
本発明の折曲がり部には、頂部が鋭く曲がる折曲がり部、円弧状を描くように曲がる折曲がり部が含まれる。
【0076】
上記実施形態の袋体1では、通気路は、1本であったが、複数本の通気路が設けられた袋体でもよい。複数本の通気路を設けることにより、袋体内で発生した二酸化炭素の排出がより容易となる。
【0077】
上記実施形態の袋体1は、1枚のフィルムを折り曲げて形成されたが、2枚のフィルムを重ね合わせて、両側並び上下端をシールして形成した袋体でもよい(
図10)。この場合、帯状シール部10とは反対のシール部96は、ヒートシールで封止されるのが好ましい。
【実施例0078】
次に本発明の実施例を説明する。
【0079】
(実施例1)
バリアフィルム(PETフィルム/アルミ蒸着バリア(VMPET)フィルム/無延伸ポリプロピレンの積層フィルム )を二つに折り、縦110mm、横100cmの袋体を形成した。
袋体の縦の部分には本発明の帯状接合部を形成した。この部分に
図1に示す通気路14を設けた。
【0080】
帯状接合部は
図7の装置を用いた超音波接合法で形成した。アンビルとしては、
図8に示された表面に溝部が形成されたものを用い、ホーンは、アンビルとの対向面が平滑なものを用いた。溝部は断面が三角形で深さが0.4mmの溝部である。接合は荷重800N、時間0.5秒間という条件で行った。袋体の底部は全面をヒートシールして密閉した。
【0081】
・帯状接合部の幅:7mm (フィルムの端部に形成)
・通気路の形状:
図3
・通気路の幅:0.5mm
・通気路の長さ:100mm
・通気路の数:1個
【0082】
コーヒーとしてはコーヒー豆(グァテマラ ピーベリー)をローストした後、エイジングを行わずに用いた。このコーヒー7gを充填したドリップバッグを作成した。このドリップバッグを上記袋体に収納した。
次いでチッ素ボンベを用いて袋体内部をチッ素ガスで満たした。その後、速やかに上端の開口部をヒートシールにより6mm幅でシールした。
以上のようにしてドリップコーヒーパック(簡易コーヒー抽出具パック)を作成した。
【0083】
(比較例1)
サイドシール部を全面接合として、密封形態とした以外は実施例1と同様にして比較例1を実施した。
【0084】
(実施例2~17、比較例2~7)
通気路の位置、通気路の形状、通気路の数、通気路の幅、通気路の長さを表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~17、比較例2~7を実施した。
ただし、比較例2については均一な通気路を形成できなかったので、評価は行わなかった。
【0085】
作成したドリップコーヒーパックを20℃の温度で保管して下記の評価を行った。
【0086】
<袋体の膨らみ具合>
作成後7日目にドリップコーヒーの膨らみ具合を目視で観察した。
A ドリップコーヒーの膨らみが全くない
B ドリップコーヒーが極わずかに膨らんでいる
C ドリップコーヒーの膨らみがはっきりわかる
D ドリップコーヒーが著しく膨らんでいる
【0087】
<袋体内の酸素濃度>
ドリップコーヒー作成後30日目に袋体内の酸素濃度を測定した。
酸素濃度
A 酸素濃度2体積%未満
B 酸素濃度2体積%以上、3体積%未満
C 酸素濃度3体積%以上、10体積%未満
D 酸素濃度10体積%以上
【0088】
袋体の膨らみについては実用上Bレベル以上が許容される。また酸素濃度についても実用上Bレベル以上が許容される。評価結果を
図11の表に示す。
図11から明らかなように、比較例1、6は膨らみが著しく、比較例3、4、5、7は酸素濃度が許容範囲を超えている。また、比較例2は均一な通気路を形成できなかった。これに対して実施例は膨らみと酸素濃度の両方が良好である。