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特開2022-8245二元燃料内燃機関の燃料噴射装置および二元燃料内燃機関
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  • 特開-二元燃料内燃機関の燃料噴射装置および二元燃料内燃機関 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008245
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】二元燃料内燃機関の燃料噴射装置および二元燃料内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20220105BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20220105BHJP
   F02M 47/00 20060101ALI20220105BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20220105BHJP
   F02M 61/14 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F02D19/08
F02D19/06
F02M47/00 A
F02M47/00 E
F02M51/00 A
F02M61/14 310U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021104809
(22)【出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10 2020 116 707.5
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ヴロカ
【テーマコード(参考)】
3G066
3G092
【Fターム(参考)】
3G066AA16
3G066AB02
3G066CC01
3G066CC08U
3G066CC66
3G066CE22
3G092AB01
3G092AC10
3G092BB13
3G092EA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新しいタイプの二元燃料内燃機関の燃料噴射装置と、それを有する内燃機関を提供する。
【解決手段】二元燃料内燃機関のシリンダ12の燃焼室33に燃料を供給するための燃料噴射装置16であって、本体27と、本体のニードルガイド30内で移動可能なノズルニードル28と、本体によって規定され、オリフィス32を介して燃焼室に接続されるニードル燃料チャンバ31とを有し、オリフィスはノズルニードルの第1の位置で開き、第2の位置で閉じ、ニードル燃料チャンバには第1のライン34が接続され、それを介して、燃料がニードル燃料チャンバに導入され、第1のラインとは別の第2のライン35が本体に形成され、第2のラインは一方ではニードルガイドに接続され、他方では燃料噴射装置16の制御弁29の制御室36に接続され、第2のラインを介して、燃料はバリア流体としてニードルガイドに供給され、作動流体として制御チャンバに供給される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二元燃料内燃機関(11)のシリンダ(12)の燃焼室(33)に燃料を供給するために構成された、二元燃料内燃機関(11)の燃料噴射装置(16)であって、
本体(27)と、
前記本体(27)のニードルガイド(30)内に移動可能にガイドされたノズルニードル(28)と、
前記本体(27)によって規定されたニードル燃料チャンバ(31)であって、オリフィス(32)を介してシリンダ(12)の燃焼室(33)に接続することができ、前記オリフィス(32)は、前記ノズルニードル(28)の第1の位置で開き、かつノズルニードル(28)の第2の位置で閉じる、ニードル燃料チャンバ(31)と、
を備え、
前記本体(27)には、ニードル燃料チャンバ(31)に接続された第1のライン(34)が導入され、該第1のライン(34)を介して燃料が前記ニードル燃料チャンバ(31)に導入されることが可能とされ、
前記本体(27)には、前記第1のライン(34)とは別の第2のライン(35)が導入され、該第2のライン(35)は、一方では前記ニードルガイド(30)に接続されるとともに、他方では燃料噴射装置(16)の制御弁(29)の制御チャンバ(36)に接続され、該第2のライン(25)を介して燃料が、前記ニードルガイド(30)にバリア流体として供給され得、かつ制御チャンバ(36)に作動流体として供給され得る、燃料噴射装置。
【請求項2】
前記燃料噴射装置が二元燃料噴射装置であって、
二元燃料内燃機関の第1の運転モードでは、比較的着火しやすい第1の燃料を第1のライン(34)および第2のライン(35)にそれぞれ供給することができ、
二元燃料内燃機関の第2の運転モードでは、前記第1の燃料を第2のライン(35)に供給し、かつ、比較的着火しにくい第2の燃料を第1のライン(34)に供給し得る、請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記第2のライン(35)がチョーク(37)を介して前記制御弁(29)の前記制御チャンバ(36)に接続されている、請求項1または2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記ニードルガイド(30)は、前記ニードル燃料チャンバ(31)と前記制御弁(29)の前記制御チャンバ(36)との間に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記ニードルガイド(30)と前記制御チャンバ(36)との間にばねチャンバ(38)が配置され、該ばねチャンバ(38)内にばね(39)が受けられ、該ばねが、前記ノズルニードル(28)を前記第2の位置に押圧する、請求項4に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
二元燃料内燃機関(11)であって、
第1の運転モードで第1の液体燃料を、かつ第2の運転モードで第2の液体燃料を燃焼させることができる複数のシリンダ(12)と、
各シリンダー(12)に対して少なくとも1つの主噴射装置(16)を含む主噴射システムであって、該主噴射システムを介して、前記第1の液体燃料を前記第1の運転モードで前記シリンダ(12)に、かつ前記第2の液体燃料を前記第2の運転モードで前記シリンダ(12)に供給することができ、各主噴射装置(16)は請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料噴射装置である、主噴射システムと、
各シリンダー(12)に対して少なくとも1つのパイロット噴射装置(23)を含むパイロット噴射システムであって、該パイロット噴射システムを介して、第2の運転モードにおいて、第2の液体燃料を点火するための前記第1の液体燃料を該内燃機関の前記シリンダー(12)に供給することができる、パイロット噴射システムと、
を備えてなる、二元燃料内燃機関(11)。
【請求項7】
前記主噴射システムと前記パイロット噴射システムとが、前記第2の運転モードにおいて、前記パイロット噴射システムから放出される第1の液体燃料が作動流体およびバリア液としてそれぞれの主噴射器(16)に供給され得るように接続される、請求項6に記載の二元燃料内燃機関(11)。
【請求項8】
各パイロット噴射装置(23)の上流で、分岐ライン(25)が前記パイロット噴射システムからそれぞれ分岐し、各主噴射装置(16)の前記第2のライン(35)に通じている、請求項6または7に記載の二元燃料内燃機関(11)。
【請求項9】
各分岐ライン(25)内の圧力を制限するために、各分岐ライン(25)に減圧弁(26)がそれぞれ組み込まれている、請求項8に記載の二元燃料内燃機関(11)。
【請求項10】
前記主噴射システムが主ポンプ(17)を備え、該主ポンプを介して、前記第1の運転モードにおいて前記第1の液体燃料を前記シリンダー(12)に供給することができ、かつ、前記第2の運転モードにおいて前記第2の液体燃料を前記シリンダー(12)に供給することができ、
前記パイロット噴射システムがパイロットポンプ(24)を備え、該パイロットポンプを介して、第2の運転モードにおいて、前記第2の液体燃料に点火するための前記第1の液体燃料を前記シリンダ(12)に供給することができ、
シャトル弁(22)が、前記第1の運転モードでは、前記主ポンプ(17)を前記第1の燃料のための第1の燃料タンク(18)に接続し、前記第2の運転モードでは、前記主ポンプ(17)を第2の燃料のための第2の燃料タンク(18)に接続する、請求項6から9のいずれか一項に記載の二元燃料内燃機関(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二元燃料内燃機関の燃料噴射装置に関する。本発明はさらに、二元燃料内燃機関に関する。
【0002】
本明細書に存在する本発明は、シリンダが、少なくとも140mm、特に少なくとも175mmのピストン直径を有する、いわゆる大型エンジンまたは大型内燃機関の分野に関する。そのような大型内燃機関は、例えば船舶用エンジンである。
【背景技術】
【0003】
船舶用エンジンとしての二重燃料内燃機関は既に知られている。実際に知られている二元燃料内燃機関は、液体燃料を燃焼する第1の運転モードと、気体燃料または別の液体燃料を燃焼する第2の運転モードで運転することができる。
【0004】
特許文献1から、二元燃料噴射装置を備えた二元燃料内燃機関が知られている。それぞれの燃料は、個別の燃料ポンプを介して二元燃料噴射装置の方向に送られる。さらに、個別のシールおよび潤滑油システムが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許公開第102017123315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここから開始し、本発明は、新しいタイプの二元燃料内燃機関の燃料噴射装置、およびそのような燃料噴射装置を有する二元燃料内燃機関を提供するという目的に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は請求項1による燃料噴射装置によって解決される。
【0008】
この燃料噴射装置は、二元燃料内燃機関のシリンダの燃焼室に液体燃料を供給するよう構成されている。この燃料噴射装置は、本体と、該本体のニードルガイド内に移動可能にガイドされたノズルニードルと、前記本体によって規定されるニードル燃料チャンバであって、オリフィスを介してシリンダの燃焼室に接続することができ、前記オリフィスは、前記ノズルニードルの第1の位置で開きかつノズルニードルの第2の位置で閉じている、ニードル燃料チャンバと、を備える。
【0009】
前記本体には、ニードル燃料チャンバに接続された第1のラインが導入され、該第1のラインを介して燃料が前記ニードル燃料チャンバに導入されることが可能とされている。
【0010】
さらに、前記第1のラインとは別の第2のラインが該燃料噴射装置の前記本体に導入され、該第2のラインは、一方では前記ニードルガイドに接続されるとともに、他方では燃料噴射装置の制御弁の制御チャンバに接続され、該第2のラインを介して燃料が、前記ニードルガイドにバリア流体として供給され得、かつ制御チャンバに作動流体として供給され得る。
【0011】
本発明による燃料噴射装置は、液体燃料を燃焼する二元燃料内燃機関のそれぞれのシリンダの燃焼室への特に有利な燃料噴射を可能にする。二元燃料内燃機関の運転モードでは、燃料は、燃料噴射装置を介して、それぞれのシリンダの燃焼室に噴射することができ、この運転モードでは、優先的に別の燃料、すなわち別の運転モードで各シリンダの各燃焼室に導入される燃料が、バリア流体および作動流体として機能する。これにより、燃料噴射装置の構造が特に簡単なものとなる。
【0012】
さらなる展開では、この燃料噴射装置は二元燃料噴射装置であり、二元燃料内燃機関の第1の運転モードでは、比較的着火しやすい第1の燃料を第1のラインおよび第2のラインにそれぞれ供給することができ、かつ、二元燃料内燃機関の第2の運転モードでは、前記第1の燃料を第2のラインに供給し、比較的着火しにくい第2の燃料を第1のラインに供給することができる。そのような二元燃料噴射装置は特に好ましく、二元燃料内燃機関の特に単純な構造を可能にする。
【0013】
本発明のさらなる発展によれば、第2のラインは、チョークを介して制御弁の制御室に接続されている。これは、それぞれの燃料を制御弁の制御室に供給する上で好ましい。
【0014】
本発明による二元燃料内燃機関は請求項6に規定されている。
【0015】
本発明の好ましいさらなる展開は、従属請求項および以下の説明から明らかにされる。本発明の例示的な実施形態は、これに限定されることなく、図面を参照して詳細に説明される。図は以下の通り。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】二元燃料内燃機関を備える船舶推進システムの模式図である。
図2】二元燃料内燃機関のシリンダの部分を示した図である。
図3】二元燃料内燃機関の燃料噴射装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、複数のシリンダ12を有する二元燃料内燃機関11を含む船舶推進システム10を、極めて模式的に示したものである。
【0018】
シリンダ12内で燃料が燃焼される。燃料は、二元燃料内燃機関11の第1の運転モードでは第1の液体燃料であり、二元燃料内燃機関11の第2の運転モードでは第2の液体燃料である。それぞれの燃料の燃焼中に、二元燃料内燃機関11は駆動力を生成し、それは図1において発電機13を駆動するために利用される。発電機13では電気エネルギーが生成され、船舶のプロペラ14を駆動するのに役立てられる。
【0019】
さらに、図1は、二元燃料内燃機関11の燃料供給システム15を示している。図2および図3は、燃料供給システム15のさらなるアセンブリを示している。燃料供給システム15によって、それぞれの液体燃料が、それぞれの運転モードで、二重燃料内燃機関11のシリンダ12に供給され得る。二元燃料内燃機関11のこの燃料供給システム15は、主噴射システムおよびパイロット噴射システムを備えている。
【0020】
各シリンダ12について少なくとも1つの主噴射装置16を含む主噴射システム(図2および図3参照)によって、第1の運転モードでは比較的着火容易な第1の液体燃料を、第2の運転モードでは比較的着火しにくい第2の液体燃料を、シリンダ12に供給することができる。主噴射装置16によって、第1の運転モードで第1の液体燃料をそれぞれのシリンダ12に噴射し、第2の運転モードで第2の液体燃料を同シリンダ12に噴射することができる。コスト上の理由から、二元燃料内燃機関のそれぞれのシリンダ12に、第1の運転モードで第1の液体燃料を注入し、第2の運転モードで第2の液体燃料を同じ種噴射装置16を介して注入することが好ましいが、各シリンダ12が2種の液体燃料のそれぞれに対応する別個の主噴射装置を有することも可能である。
【0021】
図示の実施形態は、第1の液体燃料を噴射する第1の運転モードと、第2の液体燃料をシリンダに注入する第2の運転モードとで同じ主燃料噴射装置16が利用される、好ましい例である。
【0022】
図2によれば、それぞれの液体燃料は、主ポンプ17を介してそれぞれの主噴射装置16に供給される。したがって主ポンプ17は、第1の運転モードでは第1の液体燃料を、第2の運転モードでは第2の液体燃料をそれぞれの主噴射装置16に向けて供給する。
【0023】
図1は、第1の液体燃料を保持するための第1の燃料タンク18、および、第2の液体燃料を保持するための第2の燃料タンク19を示している。第1の燃料タンク18は、第1の燃料ライン20を介し、また第2の燃料タンク19は第2の燃料ライン21を介して、主ポンプ17に、すなわちシャトル弁22を介して接続することができる。
【0024】
第1の運転モードでは、シャトル弁22は、第1の燃料18を二元燃料内燃機関11のシリンダ12に供給するために、第1の燃料タンク18または第1の燃料ライン20を主噴射システムの主ポンプ17に接続する。この第1の運転モードでは、シャトル弁22は、第2の燃料タンク19を主噴射システムの主ポンプ17から分離する。
【0025】
対照的に、第2の運転モードでは、第2の燃料を二元燃料内燃機関11のシリンダ12に供給するために、シャトル弁22は、第2の燃料タンク19を第2の燃料ライン21を介して主噴射システムの主ポンプ17に接続する切替え位置をとる。よって、この第2の運転モードでは、第1の燃料タンク18は主噴射システムの主ポンプ17から分離される。
【0026】
既に説明したように、第1の液体燃料は比較的着火性に優れ、第2の液体燃料は比較的着火性に劣る。第2の運転モードにおいてそれぞれのシリンダ12の領域において第2の液体燃料に点火するために、二元燃料内燃機関は、各シリンダ12に対して、少なくとも1つのパイロット噴射装置23を含むパイロット噴射システムを備える。
【0027】
パイロット噴射システムによって、第2の運転モードにおいて第2の液体燃料に点火するための第1の液体燃料を内燃機関のシリンダ12に供給することができる。したがって、パイロット噴射システムは、各シリンダ12の少なくとも1つのパイロット噴射器23に加えてパイロットポンプ24を備え、第2の運転モードでは、このパイロットポンプを介して、それぞれのパイロット噴射装置23には、第1の燃料タンク18から放出される第1の液体燃料が供給される。第1の燃料タンク18からは、さらなる燃料ライン40がシリンダ12の方向に延び、このさらなる燃料ライン40にはパイロットポンプ24が接続されている。
【0028】
二元燃料内燃機関11の場合の図2から明らかなように、主噴射システムとパイロット噴射システムは結合されている。この結合は、第2の運転モードにおいて、各シリンダ12に対して少なくとも1つのパイロット噴射器23およびパイロットポンプ24を有するパイロット噴射システムから発して、第1の液体燃料が主噴射システムのそれぞれの主噴射器16に供給されるようになされる。またここで、第1の液体燃料は、それぞれの主噴射器16の領域において作動流体およびバリア流体として機能する。したがって、図2は分岐ライン25を示している。分岐ライン25は、それぞれのパイロット噴射器23の上流でパイロット噴射システムから分岐して、各シリンダ12の主噴射システムの各主噴射器16に到り、各主噴射器16の領域で主噴射システムに接続されている。第2の運転モードにおいて、第1の液体燃料を作動流体およびバリア流体として主噴射システムのそれぞれの主噴射器16に供給するために、分岐ライン25は、パイロット噴射システムの供給方向から見て、パイロットポンプ24の下流およびそれぞれのパイロット噴射装置23の上流でパイロット噴射システムから分岐している。
【0029】
第2の運転モードでは、パイロット噴射システムから主噴射システムにつながるそれぞれの分岐ライン25内には所定の圧力が存在し、その圧力は、好ましく定義された圧力オフセットによって各主噴射装置16の領域内の圧力よりも大きい。これにより、第2の運転モードにおいては、第1の液体燃料が各主噴射器16に常に確実に供給される。
【0030】
図2では、示されるように、減圧器26が分岐ライン25に組み込まれている。これが、該減圧器26の下流において分岐ライン25内の圧力を規定レベルに制限する。
【0031】
比較的着火しやすい第1の液体燃料は、好ましくは100μmから300μm、より好ましくは100μmから200μmの潤滑性WSDを有する液体燃料である。比較的着火しにくい第2の液体燃料は、好ましくは、300μmから820μm、より好ましくは400μmから820μmの潤滑性WSDを有する液体燃料である。優先的には、第1の液体燃料はディーゼル燃料である。優先的には、第2の液体燃料はエタノールまたはメタノールである。
【0032】
双方の運転モードでそれぞれの液体燃料を燃焼する二重燃料内燃機関11において、第2の運転モードの第1の液体燃料は、一方では第2の液体燃料に点火するために機能し、他方では、各主噴射器16の領域で作動流体およびバリア流体として機能する。したがって、各シリンダ12の主噴射装置16およびパイロット噴射装置23は、第2の運転モードにおいて第1の液体燃料を、一方では、それぞれのパイロット噴射装置23を介してそれぞれのシリンダ12に導入される点火流体として、他方では、各シリンダの主噴射装置16の領域における作動流体およびバリア流体として、利用する。
【0033】
図3は、本発明に従って構成された、二元燃料内燃機関11の主噴射装置16の概略断面図である。
【0034】
燃料噴射装置16は、好ましくは、複数の部分からなる本体27、ノズルニードル28、および制御弁29を備える。
【0035】
ノズルニードル28は、本体27のニードルガイド30内を移動可能に案内される。本体27は、ニードル燃料チャンバ31を規定している。このニードル燃料チャンバ31は、オリフィス32を介して、各シリンダ12の燃焼室33に接続することができる。ノズルニードル28は、第1の位置ではオリフィス32を閉じ、第2の位置ではオリフィス32を開く。
【0036】
本体27には第1のライン34が導入されている。この第1のライン34を介して、燃料をニードル燃料チャンバ31に供給することができる。
【0037】
主噴射装置16が二元燃料内燃エンジン11の二元燃料噴射装置であるここで示した実施形態では、第1の燃料タンク18から放出される比較的着火しやすい第1の燃料は、主ポンプ17を介し、二元燃料内燃機関11の第1の運転モードにおいては第1のライン34を介して、主噴射装置16のニードル燃料チャンバ31に供給することができる。二元燃料内燃機関11の第2の運転モードでは、第2の燃料タンク19から放出される比較的着火しにくい燃料を、メインポンプ17を介して、主噴射装置16のニードル燃料チャンバ31に、第1のライン34を介して供給することができる。上で説明したように、この点に関し、シャトル弁22はそれぞれの切り替え位置をとる。
【0038】
第1のライン34に加えて、第1のライン34とは別の第2のライン35が、本体27に導入されている。この第2のライン35によって、二元燃料内燃エンジン11の第2の運転モードにおいて、第1の燃料は、一方ではニードルガイド30に、他方では主噴射装置16の制御弁29の制御チャンバ36に供給することができる。パイロット噴射システムから放出される第1の燃料は、図2に示される分岐ライン25を介して供給することができる。分岐ライン25は、第1の燃料を、パイロットポンプ24の下流およびパイロット噴射装置23の上流で、主噴射装置16の方向、すなわち同主噴射装置の第2のライン35の方向に、分岐する。第2のライン35を介してニードルガイド30に供給される第1の燃料は、そこでバリア流体として機能する。第1のライン35を介して制御弁29の制御チャンバ36に供給されるそのこの第1の燃料は、そこで作動流体として機能する。作動流体として機能するこの燃料は、制御室36につながるチョーク37を介して制御室36に供給することができる。
【0039】
図2に関連して既に説明したように、分岐ライン25の圧力、したがって第2のライン35の圧力は、第1のライン34の圧力よりも大きい。したがって、ニードルガイド30の領域内のバリア流体を介して、特に有利なバリア効果が提供される。
【0040】
したがって、第2のライン35を介して本発明による燃料噴射器内で伝導される燃料は、一方ではバリア流体として、他方では作動流体として機能する。これにより、燃料噴射装置16と、該燃料噴射装置16を備える二元燃料内燃機関11の特に単純な構造が可能になる。第2の燃料がシリンダ12で燃焼される第2の運転モードでは、燃焼される第2の燃料と、バリア流体および作動流体として機能する第1の燃料との間の単純な分離が可能である。
【0041】
図3によれば、ニードルガイド30は、ニードル燃料チャンバ31と制御弁29の制御チャンバ36との間に配置されている。
【0042】
ニードルガイド30と制御チャンバ36との間にはばねチャンバ38が配置されてばね39を受けており、このばね39がノズルニードル28を第2の位置に押し付ける。
【0043】
本発明は、シリンダが少なくとも140mm、特に少なくとも175mmのピストン直径を有する、いわゆる大型エンジンまたは大型内燃機関の分野に特に適用される。そのような大型の内燃機関は、例えば、船舶用エンジンである。本発明では、これらは、二元燃料内燃機関として具体化される。
【符号の説明】
【0044】
10 船体推進システム
11 二元燃料内燃機関
12 シリンダ
13 発電機
14 船舶プロペラ
15 燃料供給システム
16 主噴射装置
17 主ポンプ
18,19 燃料タンク
20,21 燃料ライン
22 シャトル弁
23 パイロット噴射装置
24 パイロットポンプ
25 分岐ライン
26 減圧器
27 本体
28 ノズルニードル
29 制御弁
30 ニードルガイド
31 ニードル燃料チャンバ
32 オリフィス
33 燃焼室
34,35 ライン
36 制御チャンバ
37 チョーク
38 ばねチャンバ
40 燃料ライン
図1
図2
図3
【外国語明細書】