(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082475
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】コイル基板とモータ用コイル基板、モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20220526BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H05K1/03 670
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193531
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】森田 治彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 等
(72)【発明者】
【氏名】加藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】横幕 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久始
(72)【発明者】
【氏名】平澤 貴久
(72)【発明者】
【氏名】村木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】古野 貴之
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB09
5H603CA01
5H603CB01
5H603CB13
5H603CD11
5H603CE06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高効率なモータの提供。
【解決手段】モータ10はコイルCを含む。コイルCは、モータ10の回転方向MRと垂直な第2配線52を有する。そして、第2配線の長さAは所定の範囲以内である。所定の範囲はコイルCの抵抗と第2配線の長さAから求められる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有するフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板上に形成されているコイル、とからなるコイル基板であって、
前記コイルは中央スペースと前記中央スペースを囲む配線で形成され、前記配線のターン数nは複数であって、1ターンのための前記配線は前記第1面上に形成されている第1面上配線と前記第2面上に形成されている第2面上配線と前記フレキシブル基板を貫通するビア導体で形成されていて、前記第1面上配線は第1端と第2端を含み、前記第2面上配線は第3端と第4端を含み、前記ビア導体は前記第2端と前記第3端を繋ぐ第1ビア導体と前記第4端上に形成されている第2ビア導体を含み、前記第2ビア導体は次のターンを形成する前記第1面上配線の前記第1端に至っていて、前記第1面上配線は前記第1端から延びる第1配線と前記第1配線から延びる第2配線と前記第2配線から前記第2端まで延びている第3配線で形成されていて、前記第2面上配線は前記第3端から延びる第4配線と前記第4配線から延びる第5配線と前記第5配線から前記第4端まで延びている第6配線で形成されていて、前記第1配線と前記第2配線、前記第3配線、前記第4配線、前記第5配線、前記第6配線はほぼ真直ぐ延びていて、前記第2配線と前記第5配線はほぼ平行であって、各ターンを形成する前記第2配線のそれぞれはほぼ平行であって、各ターンを形成する前記第5配線のそれぞれはほぼ平行であって、前記第1配線は前記中央スペースを向いている第1側壁と前記第1側壁と反対側の第2側壁を有し、前記第2配線は前記中央スペースを向いている第3側壁と前記第3側壁と反対側の第4側壁を有し、前記第5配線は前記中央スペースを向いている第5側壁と前記第5側壁と反対側の第6側壁を有し、隣接するターンに形成されている前記第2配線間にギャップが形成されていて、1ターンを形成する前記配線が前記第2配線に垂直な2つの直線(第1直線と第2直線)で挟まれると、前記第1直線と前記第2直線間の距離は1ターンの長さLであって、前記第2配線は前記第1配線と前記第3配線間に長さ(第2配線の長さ)Aを有し、前記第2配線は前記第3側壁と前記第4側壁間に幅(第2配線の幅)aを有し、前記コイルは前記第4側壁と前記第5側壁間に幅(第1幅)dを有し、前記コイルは前記第2側壁を含む直線と前記第1直線との間に角度(第1角度)Θを有し、前記配線は厚みtを有し、前記ギャップは幅(ギャップの幅)bを有し、1ターンを形成する前記配線は抵抗Rnを有し、前記配線を形成する材料は電気抵抗率ρを有し、前記抵抗Rnと前記第2配線の長さAとの比(Rn/A)は式(1)を満足し、前記Aが変数Xであって、前記比(Rn/A)が変数Yであって、前記変数XがA1の時、前記変数Yは最小値を示し、前記第2配線の長さAは、0.9×A1以上、1.1×A1以下である。
【請求項2】
請求項1のコイル基板であって、前記1ターンを形成する前記配線の平面形状は略六角形である。
【請求項3】
請求項1のコイル基板であって、前記第5配線は前記第4配線と前記第6配線間に長さ(第5配線の長さ)を有し、前記第2配線の長さと前記第5配線の長さは等しい。
【請求項4】
請求項1のコイル基板であって、前記第1角度Θは式(2)を満足する。
【請求項5】
請求項1のコイル基板を巻くことで製造されるモータ用コイル基板
【請求項6】
請求項5のモータ用コイル基板と、
前記モータ用コイル基板内に配置される磁石、とからなるモータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル基板とモータ用コイル基板、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モータ用コイル基板とモータ用コイル基板の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の
図3に示されるコイルの平面形状は、六角形である。形状が六角形なので、コイルの抵抗は辺の長さ等に依存すると考えられる。特許文献1では、辺の長さは自由である。そのため、特許文献1の技術を用いて低抵抗なコイルを提供することが難しいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコイル基板は、第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有するフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板上に形成されているコイル、とを有する。そして、前記コイルは中央スペースと前記中央スペースを囲む配線で形成され、前記配線のターン数nは複数であって、1ターンのための前記配線は前記第1面上に形成されている第1面上配線と前記第2面上に形成されている第2面上配線と前記フレキシブル基板を貫通するビア導体で形成されていて、前記第1面上配線は第1端と第2端を含み、前記第2面上配線は第3端と第4端を含み、前記ビア導体は前記第2端と前記第3端を繋ぐ第1ビア導体と前記第4端上に形成されている第2ビア導体を含み、前記第2ビア導体は次のターンを形成する前記第1面上配線の前記第1端に至っていて、前記第1面上配線は前記第1端から延びる第1配線と前記第1配線から延びる第2配線と前記第2配線から前記第2端まで延びている第3配線で形成されていて、前記第2面上配線は前記第3端から延びる第4配線と前記第4配線から延びる第5配線と前記第5配線から前記第4端まで延びている第6配線で形成されていて、前記第1配線と前記第2配線、前記第3配線、前記第4配線、前記第5配線、前記第6配線はほぼ真直ぐ延びていて、前記第2配線と前記第5配線はほぼ平行であって、各ターンを形成する前記第2配線のそれぞれはほぼ平行であって、各ターンを形成する前記第5配線のそれぞれはほぼ平行であって、前記第1配線は前記中央スペースを向いている第1側壁と前記第1側壁と反対側の第2側壁を有し、前記第2配線は前記中央スペースを向いている第3側壁と前記第3側壁と反対側の第4側壁を有し、前記第5配線は前記中央スペースを向いている第5側壁と前記第5側壁と反対側の第6側壁を有し、隣接するターンに形成されている前記第2配線間にギャップが形成されていて、1ターンを形成する前記配線が前記第2配線に垂直な2つの直線(第1直線と第2直線)で挟まれると、前記第1直線と前記第2直線間の距離は1ターンの長さLであって、前記第2配線は前記第1配線と前記第3配線間に長さ(第2配線の長さ)Aを有し、前記第2配線は前記第3側壁と前記第4側壁間に幅(第2配線の幅)aを有し、前記コイルは前記第4側壁と前記第5側壁間に幅(第1幅)dを有し、前記コイルは前記第2側壁を含む直線と前記第1直線との間に角度(第1角度)Θを有し、前記配線は厚みtを有し、前記ギャップは幅(ギャップの幅)bを有し、1ターンを形成する前記配線は抵抗Rnを有し、前記配線を形成する材料は電気抵抗率ρを有し、前記抵抗Rnと前記第2配線の長さAとの比(Rn/A)は式(1)を満足し、前記Aが変数Xであって、前記比(Rn/A)が変数Yであって、前記変数XがA1の時、前記変数Yは最小値を示し、前記第2配線の長さAは、0.9×A1以上、1.1×A1以下である。
[実施形態の効果]
【0006】
実施形態によれば、1mm当たりの抵抗が低くなるように、コイルの配線を形成する1辺(第2配線)の長さが決められる。そのため、実施形態は、低抵抗なコイルを提供することができる。実施形態は、高効率なコイル基板を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(A)は実施形態のモータの模式図であり、
図1(B)は実施形態のモータ用コイル基板の模式図であり、
図1(C)はコイルの平面図であり、
図1(D)は1ターンを形成する配線の平面図である。
【
図2】
図2(A)は実施形態のコイル基板の平面図であり、
図2(B)は2ターンのための配線を示す平面図である。
【
図3】配線の長さ(mm)と1mm当たりの抵抗間の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
図2(A)に示されるコイル基板120が準備される。コイル基板120は、第1面Fと第1面Fと反対側の第2面Sとを有するフレキシブル基板22とフレキシブル基板22上のコイルCで形成される。
図2(A)はコイル基板120の第1面Fを示す。
図2(A)では、コイルCは省略されている。コイルCは
図1(C)に示されている。コイル基板120を巻くことで、
図1(B)に示されるモータ用コイル基板20が得られる。例えば、コイル基板120は筒状に巻かれる。モータ用コイル基板20は空洞AHの周りに巻かれる。例えば、モータ用コイル基板20の形状は円筒である。巻く回数Nは、2以上、3以下である。
図1(B)は模式図である。
【0009】
図1(A)に示されるように、モータ用コイル基板20内に磁石48を配置することで、モータ10が得られる。
図1(A)は模式図である。モータ用コイル基板20は、空洞AHを介し磁石48の周りに配置されている。
図1(B)中の矢印MRはモータ10の回転方向を示す。モータ10の例は、ブラシレスモータである。実施形態では、磁石48が回転するが、モータ用コイル基板20が回転してもよい。
【0010】
図2(A)に示されるように、フレキシブル基板22は、短辺20Sと長辺20Lとを有する。フレキシブル基板22は、一端22Lと一端22Lと反対側の他端22Rを有する。一端22Lは短辺20Sを兼ねる。長辺20Lは上辺20LUと上辺20LUと反対側の下辺20LDを有する。
【0011】
図1(C)にコイルCの例が示される。コイルCは中央スペースSCと中央スペースSCを囲む配線wで形成される。そして、配線wは外端OEと内端IEを有する。配線wは外端OEと内端IEとの間に形成されている。コイルCを形成する配線wは渦巻き状に形成されている。
【0012】
図1(C)と
図1(D)に示されるように、配線wは、複数の第1面上配線5Fと複数の第2面上配線5Sと複数のビア導体VAを含む。これらを繋げることで、配線wが形成される。第1面上配線5Fは第1面F上に形成されている。第2面上配線5Sは第2面S上に形成されている。ビア導体VAはフレキシブル基板22を貫通している。第1面上配線5Fと第2面上配線5Sはビア導体VAを介して接続されている。1つの第1面上配線5Fと1つの第2面上配線5Sと1つのビア導体VAは、ほぼ1ターンのコイルを形成する。1ターンを形成する配線wの内、第1面上配線5Fは一端22Lに近く、第2面上配線5Sは他端22Rに近い。複数のビア導体VAは第1ビア導体VA1と第2ビア導体VA2に分けられる。第1ビア導体VA1は下辺20LDに近く、第2ビア導体VA2は上辺20LUに近い。第1面上配線5Fと第2面上配線5Sとビア導体VAは、第1面上配線5F、第1ビア導体VA1、第2面上配線5S、第2ビア導体VA2の順で繋がっている。第2ビア導体VA2を介し隣接するターンを形成する配線wが接続される。
【0013】
図1(D)は1ターンのコイルを示す。
第1面上配線5Fは第1端E1と第2端E2を含む。第1端E1は上辺20LUに近く、第2端E2は下辺20LDに近い。第2面上配線5Sは第3端E3と第4端E4を含む。第3端E3は下辺20LDに近く、第4端E4は上辺20LUに近い。第1ビア導体VA1は、第2端E2と第3端E3を繋ぐ。第2ビア導体VA2は第4端E4上に形成される。第2ビア導体VA2は、次のターンを形成する第1面上配線5Fの第1端E1に至っている。第2ビア導体VA2は隣接するターンを形成する配線wを接続する。第1面上配線5Fは第1端E1から延びる第1配線51と第1配線51から延びる第2配線52と第2配線52から第2端E2まで延びている第3配線53で形成されている。第2面上配線5Sは第3端E3から延びる第4配線54と第4配線54から延びる第5配線55と第5配線55から第4端E4まで延びている第6配線56で形成されている。第1配線51と第2配線52、第3配線53、第4配線54、第5配線55、第6配線56はほぼ真直ぐ延びている。第2配線52と第5配線55はほぼ平行である。
【0014】
図1(C)に示されるように各ターンを形成する第2配線52のそれぞれはほぼ平行である。各ターンを形成する第5配線55のそれぞれはほぼ平行である。モータ用コイル基板20内では、第2配線52とモータ10の回転方向MRとの間の角度はほぼ90度である。モータ用コイル基板20内では、第2配線52を流れる電流の向きとモータ10の回転方向MRとの間の角度はほぼ90度である。
【0015】
図2(B)はコイルの平面図を示す。
図2(B)は2ターンを形成する配線wを示す。
図2(B)に示されるように、1ターンのための配線wの平面形状はほぼ六角形である。第1配線51は中央スペースSCを向いている第1側壁sw1と第1側壁sw1と反対側の第2側壁sw2を有する。第2配線52は中央スペースSCを向いている第3側壁ws3と第3側壁sw3と反対側の第4側壁sw4を有する。第5配線55は中央スペースSCを向いている第5側壁sw5と第5側壁sw5と反対側の第6側壁を有する。隣接するターンを形成する第1配線51間に第1ギャップG1が形成されている。隣接するターンを形成する第2配線52間に第2ギャップG2が形成されている。隣接するターンを形成する第3配線53間に第3ギャップG3が形成されている。隣接するターンを形成する第4配線54間に第4ギャップG4が形成されている。隣接するターンを形成する第5配線55間に第5ギャップG5が形成されている。隣接するターンを形成する第6配線56間に第6ギャップG6が形成されている。実施形態のコイルCでは、第1ギャップG1と第2ギャップG2、第3ギャップG3、第4ギャップG4、第5ギャップG5、第6ギャップG6の幅はほぼ等しい。
【0016】
1ターンを形成する配線wが第2配線52に垂直な2つの直線(第1直線L1と第2直線L2)で挟まれると、第1直線L1と第2直線L2間の距離は1ターンの長さLである。第2配線52は第1配線51と第3配線53間に長さ(第2配線の長さ)Aを有する。第2配線52は第3側壁sw3と前記第4側壁sw4間に幅(第2配線の幅)aを有する。コイルCは第4側壁sw4と第5側壁sw5間に幅(第1幅)dを有する。コイルCは第2側壁sw2を含む直線と第1直線L1との間に角度(第1角度)Θを有する。第1配線51と第2配線との間の境界と第1直線L1は平行である。そのため、
図2(B)では、第1角度Θは第1配線51と第2配線52との間の境界を含む直線と第2側壁sw2との間に描かれている。配線wは厚みtを有する。第2ギャップG2は幅(ギャップの幅)bを有する。1ターンを形成する配線wは抵抗Rnを有する。配線を形成する材料は電気抵抗率ρを有する。コイルCを形成する配線wのターン数は複数である。ターン数はnで表される。
【0017】
第1配線51と第2配線52との間の境界を含む直線と第1直線L1はほぼ平行である。第2配線52と第3配線53との間の境界を含む直線と第1直線L1はほぼ平行である。第4配線54と第5配線55との間の境界を含む直線と第1直線L1はほぼ平行である。第5配線55と第6配線56との間の境界を含む直線と第1直線L1はほぼ平行である。
【0018】
抵抗Rnと第2配線の長さAとの比(Rn/A)は式1を満足する。第1角度Θは式2を満足する。第2配線の長さAが変数Xであって、比(Rn/A)が変数Yである。第2配線の長さAと比(Rn/A)との関係がX-Y平面に示される。
図3は第2配線の長さAと比(Rn/A)との関係を示す。変数XがA1の時、変数Yは最小値を示す。即ち、長さA1は第2配線の長さAの最適値(最適な長さ)である。第2配線の長さAが0.9×A1以上、1.1×A1以下であると、低抵抗なコイルCを提供することができる。高効率なコイル基板120を提供することができる。
[式1]
[式2]
【0019】
図3のX軸の単位はmmであって、Y軸の単位はΩ/mmである。
図3に示されるように、第2配線の長さAが大きくなるにつれて、一端、比(Rn/A)が小さくなる。そして、第2配線の長さAが所定の値を超えると、比(Rn/A)が大きくなる。第2配線の長さAが所定の範囲以内であると、
図3は、1mm当たりの抵抗を小さくすることができることを示している。第2配線の長さAが長さA1であるとき、比(Rn/A)が最小値を示す。そして、第2配線の長さAの所定の範囲は、0.9×A1以上、1.1×A1である。第2配線の長さAが所定の範囲以内であると、コイルCの抵抗を小さくすることができる。高効率なコイル基板120を提供することができる。高効率なモータ用コイル基板10を提供することができる。高効率なモータ10を提供することができる。
【符号の説明】
【0020】
20 モータ用コイル基板
22 フレキシブル基板
48 磁石
5F 第1面上配線
5S 第2面上配線
52 第2配線
55 第5配線
120 コイル基板
C コイル
SC 中央スペース
VA ビア導体