(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008252
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】粉塵飛散抑制剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/06 20060101AFI20220105BHJP
C09K 3/22 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L101/06
C09K3/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105058
(22)【出願日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2020109661
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 貫治
(72)【発明者】
【氏名】林 和歩
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA051
4J002AA061
4J002BG071
4J002GT00
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】新規な剤を提供する。
【解決手段】酸基含有ポリマーのエマルションを含有する、粉塵飛散抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基含有ポリマーのエマルションを含有する、粉塵飛散抑制剤。
【請求項2】
酸基含有ポリマーのエマルションを含有する、野積みされた堆積物用の凝固剤。
【請求項3】
粉塵又は堆積物が、製鉄原料である、請求項1又は2記載の剤。
【請求項4】
堆積成分の堆積物であって、酸基含有ポリマーのエマルションを含有する堆積物。
【請求項5】
酸基含有ポリマーのエマルションを堆積成分に散布する、堆積物の製造方法。
【請求項6】
堆積物が野積みされた製鉄原料である、請求項4記載の堆積物又は請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
エマルションの酸価が110mg KOH/g以上である請求項1~6のいずれかに記載の剤、堆積物、又は製造方法。
【請求項8】
酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基及びリン酸基から選択される1種以上である請求項1~7のいずれかに記載の剤、堆積物、又は製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な剤、特に、粉塵飛散抑制剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所や採石場等における鉱物や土砂は、野外に堆積、例えば、野積みされた堆積物として保管されているが、堆積物から粉塵が飛散し、近隣を汚染するという問題がある。
従来、このような粉塵飛散抑制には、水や塩化カルシウム水溶液等の薬剤の散布が行われてきた。
【0003】
このような中、特許文献1には、界面活性剤を、鉱物の粉塵飛散防止に使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規な剤(特に、粉塵飛散抑制剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酸基含有ポリマーのエマルションを使用することにより、粉塵の飛散を抑制しうることなどを見出した。
また、本発明者は、その中でも一態様によれば、高温環境下に曝された後にも粉塵の飛散を抑制しうることなども見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明等に関する。
[1]
酸基含有ポリマーのエマルションを含有する、粉塵飛散抑制剤。
[2]
酸基含有ポリマーのエマルションを含有する、野積みされた堆積物用の凝固剤。
[3]
粉塵又は堆積物が、製鉄原料である、[1]又は[2]記載の剤。
[4]
堆積成分の堆積物であって、酸基含有ポリマーのエマルションを含有する堆積物。
[5]
酸基含有ポリマーのエマルションを堆積成分に散布する、堆積物の製造方法。
[6]
堆積物が野積みされた製鉄原料である、[4]記載の堆積物又は[5]記載の製造方法。
[7]
エマルションの酸価が110mg KOH/g以上である[1]~[6]のいずれかに記載の剤、堆積物、又は製造方法。
[8]
酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基及びリン酸基から選択される1種以上である[1]~[7]のいずれかに記載の剤、堆積物、又は製造方法。
[9]
酸基含有ポリマーのエマルションを用いた、粉塵の飛散抑制方法。
[10]
酸基含有ポリマーのエマルションを用いた、野積みされた堆積物の凝固方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な剤(特に、粉塵飛散抑制剤)を提供できる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、高温環境下に曝された後にも粉塵の飛散を抑制しうるため、夏場等においても粉塵の飛散抑制効果を奏しうる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、堆積成分すなわち、堆積物の構成成分の粉末同士を纏わりやすく凝集性を高めるため、結果として堆積物がベルトコンベア等の搬送設備へ濡れ広がる事(付着する事)を抑制し、堆積物のハンドリング性を向上しうる。
その結果、ベルトコンベア等の搬送設備での堆積物の移動を容易にしうる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、水への溶出性が低いため、雨に曝された場合にも粉塵飛散抑制を効率良く実現しうる。
【0012】
また、従来、堆積物の粉塵飛散抑制には、大量の水を繰り返し散布していたが、本発明の他の態様によれば、水の使用量を低減しうるため、粉塵飛散抑制を効率良く実現しうる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、野積みされた堆積物用の新規な凝固剤を提供できる。このような剤によれば、堆積成分の粉末を纏わりやすくしうるため、野積みさせる前後に堆積物を輸送する工程においても、堆積物の崩れを抑制し、堆積物を効率良く輸送しうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の剤は、酸基含有ポリマーのエマルションを含有する。本発明の剤は、種々の用途に使用することができ、例えば、粉塵飛散抑制剤、野積みされた堆積物用の凝固剤として使用することができる。
【0015】
[酸基含有ポリマーのエマルション]
酸基含有ポリマーのエマルション(以下、単に、「エマルション(A)」という)は、通常、エマルション状態にある酸基含有ポリマー又はポリマー粒子が溶媒中に分散したものである。
【0016】
(酸基含有ポリマー)
酸基含有ポリマー(以下、単に、「ポリマー(B)」という)において、酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。酸基は、1つ又は2つ以上であってよく、異種の酸基を有していてもよい。
また、ポリマー(B)の重合成分すなわち、モノマー成分は、通常、酸基含有モノマーを含む。換言すれば、ポリマー(B)は、酸基含有モノマー由来の構造単位を有するポリマーであってもよい。酸基含有モノマーは、酸基を1つ又は2以上有していてもよく、異種の酸基を有していてもよい。
【0017】
酸基含有モノマーとしては、カルボン酸基含有モノマー[例えば、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の脂肪族不飽和モノカルボン酸)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸)、酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸)]、スルホン酸基含有モノマー[例えば、ビニル系モノマー(例えば、ビニルスルホン酸)、スチレン系モノマー(例えば、スチレンスルホン酸)]、リン酸基含有モノマー{例えば、リン酸モノ乃至トリエステル[例えば、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート]}等が挙げられる。
なお、酸基含有モノマーは、アニオン化されていてもよい。
【0018】
酸基含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらのうち、粉塵飛散抑制や堆積物の凝固性等の観点から、少なくともカルボン酸基含有モノマーを含むことが好ましい。
【0020】
ポリマー(B)の重合成分は、酸基含有モノマー以外の他のモノマーを含んでいてもよい。換言すれば、ポリマー(B)は、他のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。
【0021】
他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート{例えば、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリート、エチル(メタ)アクリート、ブチル(メタ)アクリート等のC1-20アルキル(メタ)アクリート]、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート等のC1-12アルコキシC1-12アルキルメタクリレート]}、脂環式(メタ)アクリレート{例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のC4-20シクロアルキル(メタ)アクリレート]、架橋環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート]}、水酸基含有(メタ)アクリレート{例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2-10アルキル(メタ)アクリレート]}、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、クロロメチルスチレン)、(メタ)アクリルアミド系モノマー[例えば、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N ,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド]、ポリアルキレングリコール鎖含有モノマー[例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリルエステルなどの(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールとのモノエステル]、加水分解性基が結合したシリル基含有モノマー[例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン]、エポキシ基含有モノマー [例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル]、オキサゾリン基含有モノマー(例えば、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-ビニルオキサゾリン)、アジリジン基含有モノマー[例えば、(メタ)アクリル酸-2-アジリジニルエチル、(メタ)アクリロイルアジリジン]、ハロゲン原子含有モノマー(例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0022】
また、他のモノマーは、側鎖に、下記式(I)
【化1】
(式中、R
1は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基からなる群より選択される1種以上であり、nは、10~300であり、Xは、直接結合、-C(=O)-、又は-C(=O)NH-であり、R
2は、炭素数6~30の炭化水素基を示す。)で表される基を有するモノマー(以下、単に、「他のモノマー(b)」という。)であってもよい。
【0023】
上記式(I)において、nは、好ましくは10~100、より好ましくは20~80、さらに好ましくは40~60、特に好ましくは45~55等であってもよい。
【0024】
上記式(I)において、R2の炭化水素基としては、例えば、直鎖アルキル基(例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基)、分岐アルキル基(例えば、3-メチルヘキシル基、4 ,4-ジエチルオクチル基)、環状アルキル基(例えば、シクロオクチル基、コレスタニル基、ラノスタニル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基)、アルキルアリール基(例えば、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基)等が挙げられる。なお、炭化水素基は、一部が置換されていてもよい。
また、R2の炭素数は、好ましくは8~30、より好ましくは12~20、特に好ましくは16~20等であってもよい。
【0025】
他のモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
ポリマー(B)は、重合成分として、特に、酸基含有ポリマーと、他のモノマーとして脂肪族(メタ)アクリレートを少なくとも含むものであってもよい。
【0027】
ポリマー(B)のモノマー成分(以下、単に、「モノマー成分(a)」という。)全体において、酸基含有モノマーの割合は、粉塵飛散抑制や堆積物の凝固性等の観点から、例えば、5質量%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上等であってもよく、比較的高割合(例えば、50質量%以上)等であってもよい。
【0028】
モノマー成分(a)全体において、酸基含有モノマーの割合の上限値は、例えば、99質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下等であってもよい。
【0029】
なお、これらの上限値と下限値とを適宜組み合わせて適当な範囲(例えば、5~99質量%に限らず、他の上限値と下限値を組み合わせても良い)を設定してもよい。
【0030】
モノマー成分(a)全体において、酸基含有モノマーの割合は、粉塵飛散抑制や堆積物の凝固性等の観点から、例えば、5モル%以上(例えば、10モル%以上)、好ましくは15モル%以上(例えば、20モル%以上)、さらに好ましくは25モル%以上(例えば、30モル%以上)等であってもよく、比較的高割合(例えば、35モル%以上、40モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、65モル%以上、75モル%以上等)等であってもよい。
【0031】
モノマー成分(a)全体において、酸基含有モノマーの割合の上限値は、例えば、99モル%以下(例えば、95モル%以下)、好ましくは90モル%以下(例えば、85モル%以下)、より好ましくは80モル%以下(例えば、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下)等であってもよい。
【0032】
なお、これらの上限値と下限値とを適宜組み合わせて適当な範囲(例えば、5~99モル%に限らず、他の上限値と下限値を組み合わせても良い)を設定してもよい。
【0033】
モノマー成分(a)全体において、他のモノマーの割合は、特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上(例えば、0.5質量%以上)、好ましくは1質量%以上(例えば、1.5質量%以上)、さらに好ましくは2質量%以上(例えば、2.5質量%以上)等であってもよく、比較的高割合(例えば、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上)等であってもよい。
【0034】
モノマー成分(a)全体において、他のモノマーの割合の上限値は、例えば、80質量%以下(例えば、70質量%以下)、好ましくは60質量%以下(例えば、50質量%以下)、より好ましくは45質量%以下(例えば、40質量%以下)等であってもよい。
【0035】
なお、これらの上限値と下限値とを適宜組み合わせて適当な範囲(例えば、5~60質量%に限らず、他の上限値と下限値を組み合わせても良い)を設定してもよい。
【0036】
特に、重合成分が、他のモノマーとして脂肪族(メタ)アクリレートを含有する場合、モノマー成分(a)全体において、脂肪族(メタ)アクリレートの割合は、例えば、10質量%以上(例えば、13質量%以上)、好ましくは15質量%以上(例えば、18質量%以上)、さらに好ましくは20質量%以上(例えば、23質量%以上)等であってもよく、比較的高割合(例えば、25質量%以上、28質量%以上、30質量%以上、33質量%以上、35質量%以上、38質量%以上、40質量%以上等)であってもよい。
また、モノマー成分(a)全体において、脂肪族(メタ)アクリレート割合の上限値は、例えば、80質量%以下(例えば、70質量%以下)、好ましくは60質量%以下(例えば、50質量%以下)、より好ましくは45質量%以下(例えば、40質量%以下)等であってもよい。
【0037】
また、重合成分が、他のモノマーとして他のモノマー(b)を含有する場合、モノマー成分(a)全体において、他のモノマー(b)の割合は、例えば、0.1質量%以上(例えば、0.5質量%以上)、好ましくは1質量%以上(例えば、5質量%以上)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、15質量%以上)等であってもよく、比較的高割合(例えば、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上等)であってもよい。
また、単量体成分(a)全体において、他のモノマー(b)の割合の上限値は、例えば、80質量%以下(例えば、70質量%以下)、好ましくは60質量%以下(例えば、50質量%以下)、より好ましくは45質量%以下(例えば、40質量%以下)等であってもよい。
【0038】
ポリマー(B)のガラス転移温度は、造膜性等の観点から、例えば、-40℃以上、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、特に好ましくは-10℃以上等であってもよい。
また、ポリマー(B)のガラス転移温度の上限値は、例えば、80℃以下、好ましくは75℃以下、より好ましくは65℃以下、特に好ましくは50℃以下等であってもよい。
【0039】
なお、ガラス転移温度は、ポリマーを構成するモノマー成分に使用されているモノマーの単独重合体のガラス転移温度を用いて、
式(I): 1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100 (I)
〔式中、Wmは重合体を構成するモノマー成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmはモノマーmの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度であってもよい。
【0040】
ポリマー(B)の重量平均分子量は、凝集力、凝結力等の観点から、例えば、100万以上、好ましくは300万以上、さらに好ましくは500万以上であってもよい。
ポリマー(B)の重量平均分子量の上限値は、凝集力、凝結力等の観点から、例えば、5000万以下等であってもよい。
【0041】
重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔例えば、東ソー(株)製、品番:HLC-8120GPC、カラム:TSKgel G-5000HXLとTSKgel GMHXL-Lとを直列に使用〕を用いて測定(ポリスチレン換算)してもよいし、静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製 DLS-8000)によって測定してもよい。
【0042】
(エマルション)
エマルション(A)の酸価は、粉塵飛散抑制や堆積物の凝固性等の観点から、例えば、40mg KOH/g以上(例えば、45mg KOH/g以上)、好ましくは50mg KOH/g以上(例えば、55mg KOH/g以上)、より好ましくは60mg KOH/g以上(例えば、65mg KOH/g以上)、特に好ましくは70mg KOH/g以上(例えば、75mg KOH/g以上、80mg KOH/g以上、85mg KOH/g以上、90mg KOH/g以上、95mg KOH/g以上、100mg KOH/g以上、105mg KOH/g以上、110mg KOH/g以上、115mg KOH/g以上)等であってもよい。
また、エマルション(A)の酸価の上限値は、例えば、500mg KOH/g以下(例えば、450mg KOH/g以下)、好ましくは400mg KOH/g以下(例えば、350mg KOH/g以下)、より好ましくは300mg KOH/g以下(例えば、280mg KOH/g以下)等であってもよい。
【0043】
エマルション(A)の酸価は、例えば、自動滴定装置(商品名:COM-555、平沼産業社製)によって樹脂固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を測定してもよい。
【0044】
エマルション(A)の粘度は、エマルションの散布性等の観点から、例えば、10,000mPa・s以下、好ましくは5,000mPa・s以下、さらに好ましくは2,000mPa・s以下、特に好ましくは1,500mPa・s以下であってもよい。
また、エマルション(A)の粘度の下限値は、例えば、10mPa・s以上等であってもよい。
【0045】
エマルション(A)の粘度は、例えば、BM粘度計(東機産業製、品番:TVB-10M)を用い、回転速度30rpmでの25℃における粘度を測定してもよい。
【0046】
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルションの粘度、堆積物に対する含浸性などの観点から、例えば、30nm以上、好ましくは50nm以上等であってもよい。
また、エマルション粒子の平均粒子径の上限値は、例えば、3,000nm以下、好ましくは1,000nm以下等であってもよい。
【0047】
なお、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380〕を用いて測定された体積平均粒子径であってよい。
【0048】
エマルション(A)におけるポリマー(B)の固形分(不揮発分)量は、粉塵飛散抑制や堆積物の凝固性等の観点から、例えば、0.5質量%以上(例えば、1質量%以上)、好ましくは3質量%以上(例えば、5質量%以上)、より好ましくは10質量%以上(例えば、13質量%以上、15質量%以上、17質量%以上、20質量%以上)等であってよく、取り扱い性等の観点から、例えば、60質量%以下、好ましくは50質量%以下等であってもよい。
【0049】
なお、エマルション(A)におけるポリマー(B)の不揮発分量は、例えば、エマルション(A)1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、
式:〔エマルション(A)における不揮発分量(質量%)〕=(〔残渣の質量〕÷〔エマルション(A)1g〕)×100
に基づいて求めることができる。
【0050】
エマルション(A)は、前記のように、ポリマー(B)以外に溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、例えば、水、水を含む溶媒[例えば、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール等のC1-4アルコール)の混合溶媒]等の水性溶媒が挙げられる。
溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エマルション(A)は溶媒に水を含むことが好ましく、水性分散体であることが好ましい。
【0051】
[エマルションの製造方法]
エマルション(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、溶媒中で、ポリマー(B)の原料であるモノマー成分を乳化重合することにより製造してもよい。
【0052】
溶媒としては、例えば、水、水を含む溶媒[例えば、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール等のC1-4アルコール)の混合溶媒]等の水性溶媒が挙げられる。
溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
モノマー成分を乳化重合させる方法としては、特に限定されないが、例えば、乳化剤を含む溶媒に、モノマー成分を滴下などして重合する方法、予め乳化剤によって乳化させておいたモノマー成分を溶媒に滴下などして重合する方法等が挙げられる。
【0054】
なお、溶媒の量は、得られるエマルションに含まれる不揮発分量等を考慮して適宜設定すればよい。
【0055】
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性乳化剤(例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩等)、ノニオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体等)、カチオン性乳化剤(例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等)、両性乳化剤(例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等)、高分子乳化剤(例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性物;(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等)等が挙げられる。
乳化剤は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0056】
乳化剤の使用量は、乳化剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、モノマー成分(a)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上等であってよく、例えば、20質量部以下、好ましくは15質量部以下等であってもよい。
【0057】
重合は、重合開始剤の存在下で行ってもよい。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2- メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2, 2-アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4-アゾビス(4-シ アノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられる。
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、モノマー成分(a)100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上等であってよく、例えば、2質量部以下、好ましくは1質量部以下等であってもよい。
【0059】
重合開始剤の添加方法は、特に限定されないが、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。
【0060】
なお、重合反応は、必要に応じて、還元剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム)、重合開始剤の分解剤(例えば、硫酸第一鉄などの遷移金属塩)、連鎖移動剤[例えば、チオール基を有する化合物(例えば、tert-ドデシルメルカプタン)]、pH緩衝剤、キレート剤等の存在下で行ってもよい。
【0061】
重合の際の雰囲気は、特に限定されないが、重合効率などの観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0062】
重合温度は、特に限定されないが、例えば、50~100℃、好ましくは60~95℃であってもよい。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
【0063】
重合時間は、特に限定されず、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1時間以上(例えば、1~24時間)、好ましくは2~12時間(例えば、2~9時間)程度であってもよい。
【0064】
[剤]
本発明の剤、特に、粉塵飛散抑制剤、野積みされた堆積物用の凝固剤は、通常、上述したポリマー(B)のエマルションであるエマルション(A)を含有する。
本発明の剤を、粉塵を含む堆積物(以下、堆積物(C1))に散布もしくは混合等することにより、粉塵の飛散を抑制しうる。堆積物(C1)は、粉塵のみの堆積物であってもよいし、粉塵を少なくとも含む堆積物、例えば、粉塵以外の塊も含む堆積物であってもよい。
また、本発明の剤を、野積みされた堆積物(以下、堆積物(C2))に散布もしくは混合等をすることにより、野積みされた堆積物を凝固させうる。堆積物(C2)は、上記した堆積物(C1)と同様のものであってもよい。
堆積物に含まれる粉塵の量は、粉塵の種類等にもよるが、堆積物100質量部に対し、例えば、0.1質量部以上であってもよく、10質量部以上、30質量部以上であってもよい。
堆積物に含まれる粉塵の量は、堆積物100質量部に対し、例えば、30質量部以下であってもよく、10質量部以下、1質量部以下であってもよい。
製鉄原料として石炭が用いられる場合は、堆積物に含まれる粉塵の量は、堆積物100質量部に対し、例えば、0.1質量部以上であってもよく、10質量部以上、30質量部以上であってもよく、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下、1質量部以下であってもよい。
製鉄原料として鉄鉱石が用いられる場合は、堆積物に含まれる粉塵の量は、堆積物100質量部に対し、例えば、0.1質量部以上であってもよく、10質量部以上、30質量部以上であってもよく、30質量部以下であってもよく、10質量部以下、1質量部以下であってもよい。
【0065】
粉塵の粒径としては、粉塵の種類にもよるが、例えば、5,000μm以下、好ましくは1,000μm以下等であってもよい。
【0066】
堆積物(C1)又は堆積物(C2)の種類としては、特に限定されないが、例えば、鉱物(例えば、鉄鉱石、銅鉱石、ニッケル鉱石、その他金属鉱石、スラグ、石灰石等)、炭素質物質(例えば、石炭、コークス等)、土、砂、土砂等が挙げられる。また、堆積物(C1)又は堆積物(C2)は、例えば、鉄鉱石、スラグ、石灰石、石炭、コークス等の製鉄原料であってもよい。また、堆積物(C1)又は堆積物(C2)は、塩基性であってもよい。
堆積物(C1)又は堆積物(C2)は、1種又は2種以上であってもよい。
堆積物(C1)又は堆積物(C2)としては、代表的には、例えば、鉄鉱石の山、石炭の山等が挙げられる。例えば、鉄鉱石の山は、通常、鉄鉱石のみで形成されていてよい。
なお、堆積物(C1)は、野積みされた物が好ましい。
【0067】
堆積物(C1)又は堆積物(C2)の高さ、すなわち、最大高さは、例えば、5m以上、好ましくは10m以上であってもよい。
【0068】
堆積物(C1)又は堆積物(C2)の幅、すなわち、最大幅は、例えば、5m以上、好ましくは30m以上であってもよい。
【0069】
堆積物(C1)又は堆積物(C2)の重さは、堆積物の種類にもよるが、例えば、鉄鉱石の場合、数千t~1万t程度であってもよい。
【0070】
堆積物(C1)又は堆積物(C2)は、堆積物の種類にもよるが、粒径が、例えば、15mm以上(例えば、10mm以上)、好ましくは5mm以上(例えば、3mm以上)、より好ましくは1mm以上等の堆積成分を含んでいてもよい。
【0071】
堆積物(C1)又は堆積物(C2)は、堆積物全量に対する含水率、又は、吸水率が、例えば、0.01質量%以上、好ましくは5質量%以上であってもよい。
また、堆積物(C1)又は堆積物(C2)は、堆積物全量に対する含水率が、例えば、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
なお、含水率は、堆積物全量に対して、例えば、105℃で2時間加熱後に放出される水の割合であってよい。
【0072】
本発明の剤は、ポリマー(B)の割合が、粉塵飛散抑制や堆積物の凝固性等の観点から、堆積物(C1)又は堆積物(C2)100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上(例えば、0.05質量部超、0.06質量部以上、0.07部以上)、好ましくは0.08質量部以上(例えば、0.09質量部以上)、より好ましくは0.1質量部以上(例えば、0.11質量部以上、0.12質量部以上、0.13質量部以上、0.14質量部以上)、特に好ましくは0.15質量部以上(例えば、0.16質量部以上、0.17質量部以上、0.18質量部以上、0.19質量部以上)等となるように使用してもよく、比較的高い割合(例えば、0.2質量部以上、0.3質量部以上、0.4質量部以上、0.5質量部以上、0.6質量部以上、0.7質量部以上、0.8質量部以上、0.9質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、5質量部以上、7質量部以上、10質量部以上等)となるように使用してもよい。
【0073】
また、本発明の剤は、ポリマー(B)の割合が、コスト、環境負荷等の観点から、堆積物(C1)又は堆積物(C2)100質量部に対して、例えば、30質量部以下、(好ましくは、25質量部以下)、好ましくは20質量部以下(例えば、10質量部以下)、より好ましくは5質量部以下(例えば、3質量部以下、1質量部以下)等となるように使用してもよい。
【0074】
[堆積物]
本発明は、ポリマー(B)のエマルションであるエマルション(A)を含有する堆積物(以下、堆積物(D))も包含する。堆積物(D)は、堆積成分、すなわち、堆積物の構成成分の堆積物であってよい。
堆積物(D)は、野積みされた物であってもよいし、野積み前後の輸送工程における物であってもよい。
堆積物(D)、又は、堆積物(D)の堆積成分の種類や大きさは、上記例示の堆積物(C1)又は堆積物(C2)と同様のものであってよい。
【0075】
堆積物(D)全体において、ポリマー(B)の割合は、例えば、0.01質量%以上(例えば、0.05質量%超、0.06質量%以上、0.07質量%以上)、好ましくは0.08質量%以上(例えば、0.09質量%以上)、より好ましくは0.1質量%以上(例えば、0.11質量%以上、0.12質量%以上、0.13質量%以上、0.14質量%以上)、特に好ましくは0.15質量%以上(例えば、0.16質量%以上、0.17質量%以上、0.18質量%以上、0.19質量%以上)等となるように使用してもよく、比較的高い割合(例えば、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上等)等であってもよい。
【0076】
また、堆積物(D)全体において、ポリマー(B)の割合の上限値は、例えば、30質量%以下(例えば、25質量%以下)、好ましくは20質量%以下(例えば、10質量%以下)、より好ましくは5質量%以下(例えば、3質量%以下、1質量%以下)等であってもよい。
【0077】
[堆積物の製造方法]
上記堆積物(D)は、ポリマー(B)のエマルションであるエマルション(A)を堆積成分、すなわち、堆積物の構成成分に散布もしくは混合等することにより、得ることができる。すなわち、本発明は、ポリマー(B)のエマルション(A)を堆積成分、すなわち堆積物の構成成分に散布する、堆積物の製造方法も包含する。
【0078】
エマルション(A)を堆積成分に散布する方法としては、特に限定されないが、例えば、散水車、スプレー、シャワーノズル、塩化ビニルパイプ、スプリンクラー等の各種(滴下)散布装置を使用してもよい。
【0079】
散布方法としては、吐出口から棒状に散布(ベタ掛け)してもよく、堆積物に対する付着効率が高まり、粉塵抑制効果が高まる等の観点から、細かいシャワーリングを好適に使用してもよい。
また、散布時に塩基と混合して、散布してもよい。
【0080】
エマルション(A)を堆積成分に散布するタイミングとしては、如何なるタイミングでも良く、野積み前および、野積み前の堆積物をベルトコンベア輸送中に散布してもよいし、野積み作業中でもよい。また野積み後の堆積物に散布しても良い。
【0081】
剤は、水を含む形態(例えば、水を含むエマルション(A)、エマルション(A)の水希釈液等)であるのが好ましい。例えば、散布においては、水を含むエマルション(A)又はエマルション(A)の水希釈液を散布することが好ましい。
エマルション(A)(又は剤)におけるエマルション(A)の固形分、すなわちエマルション(A)及び乳化剤の固形分の濃度は、効率良く散布できることや、粉塵飛散抑制、堆積物の凝固性等の観点から、例えば、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上等であってもよい。
また、エマルション(A)(又は剤)における固形分濃度は、効率良く散布できる等の観点から、例えば、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下等であってもよい。
エマルション(A)(又は剤)における固形分濃度は、比較的高い濃度(例えば、40質量%以上等)であってもよいし、比較的低い濃度(例えば、20質量%以下等)であってもよい。なお、散布においては、比較的高い固形分濃度のエマルション(A)(又は剤)を、水等によって希釈して散布してもよい。
【0082】
エマルション(A)(又は剤)の粘度は、効率良く散布できることや、粉塵飛散抑制、堆積物の凝固性等の観点から、例えば、0mPa・s以上、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上等であってもよい。
また、エマルション(A)(又は剤)の粘度は、効率良く散布できる等の観点から、例えば、5,000mPa・s以下、好ましくは2,000mPa・s以下、より好ましくは1,000mPa・s以下等であってもよい。
【0083】
なお、エマルション(A)(又は剤)の粘度は、例えば、BM粘度計(東機産業製、品番:TVB-10M)を用い、回転速度30rpmでの25℃における粘度を測定してもよい。
【0084】
エマルション(A)の散布は、堆積成分に対するポリマー(B)の割合が、上記例示の堆積物(C1)又は堆積物(C2)に対する割合と同様の範囲となるように行ってもよい。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明に含まれる。
【実施例0086】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は断りのない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0087】
〔粉塵抑制〕
含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石110部を使って高さ3~10cm、幅5~15cmの山を作り、当該鉄鉱石の山に対して、各試料10部の溶液を霧吹きで散布した。試料を塗布した山に対して、扇風機(松下精工株式会社製 F-C301H)の「強」で送風し、重量変化量(飛散量)を測定した。
【0088】
初期粉塵飛散量
鉄鉱石に試料を散布した直後に試験し、以下基準で評価した。
(評価基準)
◎:重量損失が0.6%未満
○:重量損失が0.6~3%未満
△:重量損失が3~10%未満
×:重量損失が10%以上
【0089】
50℃で24時間乾燥後の粉塵飛散量
鉄鉱石に試料を散布し、50℃で24時間乾燥後のサンプルを試験し、以下基準で評価した。
(評価基準)
◎:重量損失が0.6%未満
○:重量損失が0.6~3%未満
△:重量損失が3~10%未満
×:重量損失が10%以上
【0090】
〔鉄鉱石粉末指触〕
上記粉塵抑制で作成した50℃で24時間乾燥後の各試料を指触し、以下基準で評価した。
(評価基準)
○:鉄鉱石粉末が纏り硬い
△:鉄鉱石粉末が纏っているが簡単に崩れてばらける
×:鉄鉱石粉末が纏っていない
【0091】
〔溶出試験〕
含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石100部に対して、各試料を10部添加して、よく掻き混ぜた(試料の固形重量をW0とする)。150℃で1時間乾燥し初期重量(W1)を測定した。初期重量を測定した各試料に対して、脱イオン水200部で洗浄し、ろ紙(ADVANTEC社製円形定性ろ紙No131 目開き3μm)でろ過して含水した試料を回収し、さらに150℃2時間で乾燥後の重量(W2)を測定した。
以下の式で算出した値を溶出量W(%)として、評価した。
W={(W1-W2)/W0}×100
【0092】
(評価基準)
○:溶出率が10%未満
△:溶出率が10%以上30%未満
×:溶出率が30%以上
【0093】
(実施例1)
ポリカルボン酸系エマルションWR-517(株式会社日本触媒製 固形分30%、酸価245mg KOH/g)を固形分5%になるように脱イオン水で希釈して試料を調製した。目開き1mmの篩に掛けた含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石110部に、上記固形分5%に調整した試料を10部添加して上記評価に供した。
【0094】
(実施例2~4)
固形分調整以外は実施例1と同様に行った。
【0095】
(実施例5)
含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石を目開き5mmの篩で分級したことと、固形分調整以外は、実施例1と同様に行った。
【0096】
(実施例6)
ポリカルボン酸系エマルションWR-650(株式会社日本触媒製 固形分30%、酸価255mg KOH/g)を固形分30%で用いた以外は実施例1と同様に行った。
【0097】
(実施例7~10)
以下のポリカルボン酸系エマルションを固形分30%で用いた以外は実施例1と同様に行った。
実施例7:ポリカルボン酸系エマルションWR-517-A(株式会社日本触媒製 固形分30%、酸価275mg KOH/g)
実施例8:ポリカルボン酸系エマルションWR-517-B(株式会社日本触媒製 固形分30%、酸価120mg KOH/g)
実施例9:ポリカルボン酸系エマルションWR-517-C(株式会社日本触媒製 固形分30%、酸価145mg KOH/g)
実施例10:ポリカルボン酸系エマルションWR-517-D(株式会社日本触媒製 固形分30%、酸価115mg KOH/g)
【0098】
(比較例1)
含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石に試料を何も用いず評価に供した。
【0099】
(比較例2)
含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石110部に脱イオン水10部を添加して評価に供した。
【0100】
(比較例3)
PEG1000(株式会社ADEKA製 Mw1000のポリエチレグリコール)を脱イオン水で溶解させ固形分30%に調整し、含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石110部に対して10部添加して評価に供した。
【0101】
(比較例4)
塩化カルシウム(林純薬工業製 一級試薬)を脱イオン水で溶解させ固形分5%に調整し、含水率10%のブラジル産カラジャス鉄鉱石110部に対して10部添加して評価に供した。
【0102】
(比較例5~8)
塩化カルシウムの固形分調整以外は比較例4と同様に行った。
【0103】
これらの結果等をまとめたものを表1及び表2に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
表1に示すように、実施例では、初期の粉塵飛散量と高温環境下に曝された後の粉塵飛散量を抑制できた。また、実施例では、高温環境下に曝された後の方が、初期より粉塵飛散量を抑制できた。
また、実施例では、鉄鉱石粉末が纏わりやすく、崩れにくかった。
さらに、実施例では、水中への試料の溶出量が少なかった。