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特開2022-82532液体冷却を有するバッテリモジュールまたはバッテリパック関連の、脱ガスダクトを備える金属イオン蓄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082532
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】液体冷却を有するバッテリモジュールまたはバッテリパック関連の、脱ガスダクトを備える金属イオン蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/35 20210101AFI20220526BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20220526BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20220526BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20220526BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220526BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20220526BHJP
   H01M 10/655 20140101ALI20220526BHJP
【FI】
H01M50/35 101
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M50/342 101
H01M10/647
H01M10/643
H01M10/655
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021190162
(22)【出願日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】2011982
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・メー
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・ドゥ・パオリ
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
【Fターム(参考)】
5H012AA01
5H012AA07
5H012BB01
5H012CC08
5H012DD05
5H012FF01
5H031KK08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に液体冷却が行われるとき、モジュールまたはバッテリパックに組み込まれた金属イオン蓄電池から脱ガス流を収集する従来の解決策をさらに改良した、金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【解決手段】長手方向軸Xのハウジング6と、蓄電池の脱ガス用の安全排気口を形成するハウジングの一部分の破断領域と、安全排気口の周りでハウジングの上記部分に固定されまたはハウジングの上記部分と一体に形成された、スティフナを形成する少なくとも1つの剛性部品、およびスティフナの延長上かつスティフナの周りに、ハウジングまたはハウジングに対してそれ自体緊密なスティフナと緊密に配置された可撓部品を備える少なくとも1つのダクト10であり、可撓部品が、直交3軸上で弾性的に変形するように成され、それによって、可撓部品がケーシング11の貫通開口12に挿入され緊密に保持されたとき、3軸上の遊びを相殺するダクト10と、を具備する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池であって、
- 長手方向軸(X)のハウジング(6)と、
- 前記蓄電池の脱ガス用の安全排気口を形成する、前記ハウジングの一部分の破断領域(60)と、
- 前記安全排気口の周りで前記ハウジングの前記一部分に固定されまたは前記ハウジングの前記一部分と一体に形成された、スティフナを形成する少なくとも1つの剛性部品(14)、および前記スティフナの延長上かつ前記スティフナの周りに、前記ハウジングまたは前記ハウジングに対してそれ自体緊密な前記スティフナと緊密に配置された可撓部品(15)を備える少なくとも1つのダクト(10)であって、前記可撓部品が、直交3軸(X、Y、Z)上で弾性的に変形するように成され、それによって、前記可撓部品がモジュールまたはバッテリパックのケーシング(11)の貫通開口(12)に挿入され緊密に保持されたとき、前記直交3軸上の遊びを相殺する、ダクト(10)と、
を具備する金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項2】
前記スティフナおよび前記可撓部品が、単一の一体部品を構成する、請求項1に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項3】
前記スティフナが、前記ハウジングの前記一部分上に直接固定される部品であり、
前記可撓部品(15’)が、前記スティフナにオーバーモールドされる、請求項2に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項4】
前記可撓部品が、前記ハウジングの前記一部分上に直接固定される部品であり、
前記スティフナが、前記可撓部品の内側にオーバーモールドされる少なくとも1つのリング(14.1、14.2)を備える、請求項2に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項5】
前記スティフナが、前記可撓部品を形成する部品(15)とは別個の部品(14)である、請求項1に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項6】
前記スティフナを形成する前記部品(14)が、前記ハウジングの前記一部分上に直接固定され、
前記可撓部品を形成する前記部品(15)が、前記ハウジングの前記一部分上にやはり直接固定される、請求項5に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項7】
前記スティフナが、前記ハウジングの前記一部分上に直接固定される部品であり、
前記可撓部品が、前記スティフナ上に圧力嵌めされる弾性リング(15'’)である、請求項5に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項8】
前記スティフナの上側部分が、前記ダクトの半径方向において正反対に対向する少なくとも2つのラグ(140)であって、前記スティフナから外方へ突出する少なくとも2つのラグ(140)を備える、請求項5~7のいずれか一項に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項9】
前記可撓部品が、
- 基部を形成する固定部分(150)と、
- 前記直交3軸(X、Y、Z)上で弾性的に変形するように適合された少なくとも1つの皺襞部を備える、前記基部の延長上の中央部分(151)と、
- 前記貫通開口(11)に挿入され保持されるように適合された、前記中央部分の延長上のブロック部分(152)と、
を備えるベロー(15)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項10】
前記スティフナが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もしくはポリエーテルイミド(PEI)から選択される高温プラスチック、またはアルミニウムもしくはセラミックから製作される、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項11】
前記可撓部品が、ゴム、ニトリル、またはシリコーンから選択されるエラストマーから製作される、請求項1~10のいずれか一項に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項12】
前記可撓部品が、前記可撓部品の自由端に、前記貫通開口における前記可撓部品の心出しおよび位置決めを行うように適合された、切込みの入った先細端部取付具を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池。
【請求項13】
- 複数の、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池と、
- 前記蓄電池を漬ける熱伝達流体のタンクであって、複数の貫通開口が穿孔され、前記貫通開口のそれぞれに蓄電池ダクトの前記可撓部品が挿入され緊密に保持される、タンクを備える、前記蓄電池を冷却または加熱するための熱伝達流体回路と
を具備するモジュールまたはバッテリパック。
【請求項14】
各蓄電池の前記ダクトの前記可撓部品を緊密に保持するための部材として、貫通開口に挿入された前記可撓部品に圧入される固定フランジ(13)を備える、請求項13に記載のモジュールまたはバッテリパック。
【請求項15】
前記蓄電池の前記排気口を通って放出される可能性のある前記ガスを、前記モジュールまたはバッテリパックの前記ケーシングの外側の空間、特に大気へ、各蓄電池ダクトが排出することができるように、構成された、請求項13または14に記載のモジュールまたはバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電極における金属イオンの挿入または脱離、あるいは言い換えればインターカレーション-デインターカレーションの原理によって作動する金属イオン、具体的にはリチウムイオン電気化学発電機の分野に関する。
【0002】
本発明は、金属イオン蓄電池の異常/偶発的作動の過程において、典型的には熱暴走の場合に生じる脱ガス流の回収を改善することを、特に安全性の点から、主として目指し、より具体的には、蓄電池が、特に液体冷却のために、閉じ込められた状況でモジュールまたはバッテリパックに組み込まれている場合に改善することを目指す。
【0003】
リチウムイオン蓄電池に関して説明されるが、本発明は、あらゆる金属イオンの電気化学蓄電池、すなわちナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンなどにも適用される。
【0004】
本発明は、角柱および円筒形の蓄電池形状、および考え得るあらゆる金属イオン蓄電池形状全体に等しく適用される。
【背景技術】
【0005】
図1および図2に概略的に示されるように、リチウムイオンバッテリまたは蓄電池は、通常、正極またはカソード2と負極またはアノード3との間の電解質構成要素1から構成される少なくとも1つの電気化学セルCと、カソード2に接続された電流マニホールド4と、アノード3に接続された電流マニホールド5と、最後に、密封状態で電気化学セルを収容し、同時に電流マニホールド4、5の一部が貫通するように構成されたパッケージ6とを備える。
【0006】
いくつかのタイプの蓄電池アーキテクチャ形状が知られている。すなわち、
- 米国特許出願公開第2006/0121348号に開示されているような円筒形状と、
- 米国特許第7348098号、米国特許第7338733号に開示されているような角柱形状と、
- 米国特許第2008/060189号、米国特許第2008/0057392号、および米国特許第7335448号に開示されているような積層形状と
である。
【0007】
電解質構成要素1は、固体、液体、またはゲル形態であり得る。この最後の形態では、その構成要素は、イオン液タイプの有機電解質で含浸されたポリマー、セラミック、または微多孔性複合材から製作されたセパレータから成り得、そのセパレータは、充電時にはカソードからアノードへ、放電時にはその逆のリチウムイオンの移動を可能にし、それが電流を発生させる。電解質は、一般に、有機溶媒の混合物、たとえばリチウム塩、通常LiPF6が加えられたカーボネートである。
【0008】
正極またはカソード2は、一般にLiFePO4、LiCoO2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2などの複合材であるリチウムカチオン挿入材から構成される。
【0009】
負極またはアノード3は、極めて多くの場合、黒鉛炭素またはLi4TiO5O12(チタン酸塩材)から構成され、また場合によってはシリコンまたはシリコン系の複合材に基づく。
【0010】
正極に接続される電流マニホールド4は、一般に、アルミニウムから製作される。
【0011】
負極に接続される電流マニホールド5は、一般に、銅、ニッケルめっきされた銅、またはアルミニウムから製作される。
【0012】
リチウムイオンバッテリまたは蓄電池は、当然、積み重ねられた複数の電気化学セルを備え得る。
【0013】
従来、Liイオンバッテリまたは蓄電池は、その蓄電池が通常3.6ボルトもの高電圧レベルで作動することを可能にする対の材料をアノードおよびカソードに使用する。
【0014】
目的とする用途のタイプに応じて、目指すのは、薄く可撓性のリチウムイオン蓄電池または剛性の蓄電池のどちらかのリチウムイオン蓄電池を製造することとなる。すなわち、パッケージは、可撓性または剛性のどちらかであり、後者の場合、一種のハウジングを構成する。
【0015】
可撓性パッケージは、通常、接着によって積層された1つまたは複数のポリマーフィルムによって被覆されたアルミニウムの層を積み重ねて構成された多層複合材料から製造される。
【0016】
剛性パッケージとしては、目指す用途が、たとえば耐えるべき圧力が甚だしく高くかつ通常10-8mbar.l/s未満の厳しいレベルの密封度が要求され、または航空宇宙領域のような強力な制約条件を伴う環境において、長寿命が求められる場合に限って使用される。
【0017】
また、従来、使用されている剛性パッケージは、一般に、通常ステンレス鋼(316Lまたは304ステンレス鋼)またはアルミニウム(Al 1050またはAl 3003)あるいはさらにはチタニウムである金属から製作された金属ハウジングから構成される。さらに、アルミニウムが、下記に説明されるように、高い熱伝導率のために一般的に好まれる。
【0018】
大部分の剛性Liイオン蓄電池包装ハウジングの形状は、大部分の蓄電池の電気化学セルが、円筒形の心棒の周りに円筒形状に巻かれるので、円筒形である。角柱形のハウジングも、やはり角柱心棒の周りに巻くことによって既に作られている。
【0019】
高容量Liイオン蓄電池用に通常製造される円筒形態の剛性ハウジングの1つのタイプが、図3に示される。
【0020】
また、角柱形態の剛性ハウジングが、図4に示される。
【0021】
ハウジング6は、円筒側面外被7、一方の端部の底面8、他方の端部のカバー9を備え、底面8とカバー9とは、外被7によって組み合わされる。カバー9は、電極または電流出力端子4、5を支持する。出力端子(電極)の1つ、たとえば正端子4は、カバー9に溶接され、それに対し他方の出力端子、たとえば負端子5は、図示されていないシールを間に置いてカバー9を貫通し、そのシールは、負端子5をカバーから電気的に絶縁する。
【0022】
また、広く製造されているタイプの剛性ハウジングは、プレス加工体とカバーをそれらの周縁で一体にレーザ溶接して構成される。他方で、電流マニホールドは、ハウジングの上面に一部が突出し、端子を形成するブッシングを備え、そのブッシングはバッテリの可視電極とも呼ばれる。
【0023】
Liイオン蓄電池において知られている1つの問題は、蓄電池の電気形成ステップおよび作動中に時々ガスが発生する問題である。
【0024】
したがって、特に異状作動の場合に電気化学蓄電池内部に発生したガスを過剰圧力の場合に放出するための様々な装置が既に存在し、それら装置は、脱ガス装置とも呼ばれる。
【0025】
円筒形式、とりわけ18650形式のLiイオン蓄電池に特に広く使用されている一装置は、破断ラインとも呼ばれる切込み線によって、ハウジング、より具体的にはカバーの一部を弱体化することにある。この破断ラインは、一般に、所定の圧力を超えると貫通するように寸法設定された円板を形成し、それによって、ガスが蓄電池から漏れ出ることが可能になる。破断円板を有するそのような装置は、安全排気口(「脱ガス」用)を形成し、それは、内部圧力を周囲環境の圧力と釣り合う圧力まで低下させることを可能にする。
【0026】
バッテリパックPは、一般に、通常バスバーと呼ばれる接続バーによって、互いに直列または並列に電気的に接続された数千にも及び得る様々な数の蓄電池から構成される。
【0027】
バッテリパックPの一例が、図5に示される。このパックは、互いに直列に接続された同一のLiイオン蓄電池Aからなる2つのモジュールM1、M2から構成され、各モジュールM1、M2は、並列に接続された4列の蓄電池から構成され、各列は、6個に及ぶ数のLiイオン蓄電池から構成される。
【0028】
示されているように、同じ列の2つのLiイオン蓄電池間の機械的および電気的接続は、有利には銅製のねじ止めバスバーB1によって行われ、それぞれが、正端子4を負端子5に接続する。1つの同じモジュールM1またはM2内の蓄電池の2つの列間の並列での接続は、やはり有利には銅製のバスバーB2によって確保される。2つのモジュールM1、M2間の接続は、やはり有利には銅製のバスバーB3によって確保される。
【0029】
リチウムイオンバッテリの開発および製造において、各新たな要求に特定の各充電/放電プロフィールに関して、市場関係者がどうあろうとも、このプロフィールが、強力かつ安全なバッテリパックを最適に設計するために正確な規模設定(直列/並列電気的、機械的、熱的、および他のアーキテクチャ)を必要とする。
【0030】
リチウム電気化学システムは、セル、モジュール、またはパック規模のいずれでも、所与の繰返し作動プロフィールに関係なく発熱反応を生じる。したがって、単一蓄電池規模では、想定される化学反応の関数として、リチウムイオン蓄電池の最適な作動が、ある温度範囲に制限される。
【0031】
蓄電池は、ガスの発生ならびに爆発および/または火災に至り得る熱暴走が始まるのを防ぐために、蓄電池の温度をハウジング外面で通常一般に70℃未満に制御すべきである。
【0032】
また、蓄電池の作動温度が上昇するほど、蓄電池の寿命が減少するので、温度を70℃未満に維持することにより、蓄電池の寿命を増加させることが可能になる。
【0033】
さらに、一部の蓄電池の化学反応は、周囲温度より十分高い作動温度を必要とし、その結果、蓄電池を最初に予熱することにより、さらには蓄電池をある温度に恒久的に維持することにより、蓄電池の温度レベルを管理することが必要になる。
【0034】
複数のLiイオン蓄電池を有するバッテリまたはバッテリパックにおいて、多少とも異なる蓄電池を直列または並列に接続すると、その結果生じるパックの性能レベルおよび耐久性に影響を及ぼし得る。
【0035】
たとえば電気車両のバッテリパックにおいて、経年変化のばらつきが、蓄電池間の経年変化の不均整または使われ方の差(パックの中心部と周縁部との熱変化、電流勾配など)の結果として、たとえば蓄電池の位置に起因して大きくなり得るというふうに認識される。すなわち、1つの同じパックの蓄電池間で20%程度の健全性SOHの偏差を見ることができる。
【0036】
そこで、パックの早期経年変化を抑制するために、作動温度および蓄電池相互間の温度のばらつきを最適化することが必要である。他の蓄電池より早く経年変化する蓄電池(または複数の蓄電池)は、バッテリパック全体の電気的性能レベルに直接影響を及ぼし得る。
【0037】
モジュールおよびパック規模では、通常たとえば0℃未満において、パックに要求される電力を制限し、蓄電池の劣化を防止するために、BMSによる特定の駆動制御システムを使用することが必要になり得る。
【0038】
ここで、様々な蓄電池の状態(充電状態、健全状態など)を追跡し、高くなり過ぎてはならない電流、不適切な電位(高過ぎまたは低過ぎ)、限界温度などの様々な安全要因を御するために、BMS(「Battery Management System:バッテリマネジメントシステム」の頭字語)が使用され、したがって、BMSの機能は、特に、限界電圧値に達したら直ちに電流の利用を停止することであることを想起されたい。その電圧値は2つの能動挿入物質間の電位差である。したがって、BMSは、限界電圧に達すると直ちに電流利用(充電、放電)を停止する。
【0039】
通常70℃程度の高めの温度を超えると、電気化学反応が、一体化蓄電池群の破壊に至り、蓄電池内部の不具合、通常内部短絡の伝播を引き起こし得、それが、極端な場合、パックを爆発させることがあるので、警戒がやはり必要になる。この場合、蓄電池を保護するためにBMSを使用することがやはり必要である。
【0040】
その結果、バッテリパックは、一般に、電圧を均一化するために高度に有効なBMSを必要とする。
【0041】
他方で、熱的に釣り合いの取れたバッテリパックもやはり必須であることが十分に理解される。
【0042】
バッテリパック内での温度の一様性の確保には困難が生じる。
【0043】
バッテリパック内での温度の一様性を確保する試みに関する1つの既知の解決策は、バッテリパック内に熱伝達流体(気体または液体)を循環させることにある。
【0044】
空気の代わりに冷却液を使用することができる。ただし、コスト、大きさ、および重量増加への考慮が、想定される用途に基づいた主要な事項になり得る。
【0045】
たとえば、空気冷却は、文字通り、蓄電池間の強制換気から構成されるので、最低コストの解決策である。他方、空気冷却の熱性能レベルは、かなり低い交換率およびその低い熱慣性のために、質が低い。すなわち、このタイプの冷却では、最初の蓄電池は、何はともあれ、空気との接触で冷却され、空気温度は上昇する。第2の蓄電池に進むと、空気は温まっており、蓄電池は、最初の蓄電池より熱くなる。最終的に、それによって、温度が一様でない蓄電池群が成立する。
【0046】
液体冷却による解決策が、著しくより効果的である。
【0047】
特に不慮の熱暴走の場合の上述のような蓄電池からの偶発的脱ガス流の制御は、全てのバッテリパックにおいて安全性問題を提起する。これら大量の脱ガス流の総体積は、数十リットルに及び得る。
【0048】
その安全性問題は、液体冷却システムが組み込まれたときにますます確かになる。実際、ガス回路と液体回路の両方を管理しなければならない。
【0049】
特許出願DE102011087198A1は、複数の蓄電池がそれぞれに組み込まれた複数のバッテリモジュールに共通なガス収集システムを有するバッテリパックを開示し、その共通の収集回路は、活性炭素タイプの吸収材がその中に配置された単一のガス用貯蔵領域を備える。開示されたシステムは、ガス発生不具合の隣接する蓄電池への波及の防止が不可能である。
【0050】
また、特許出願DE102013201365A1も、共通のガス収集システムを有するバッテリパックを開示し、そのシステムでは、各蓄電池が、フラップを形成する壁によって暫定的に仕切られ、そのフラップは、圧力を受けて開くことができ、それによってガスを1つの同じマニホールドに流し込み、次いでガスをマニホールドの排気開口を通して外部へ排出する。
【0051】
特開2010-215019は、蓄電池が互いに平行にその中に配置され保持される保持部を備え、角柱形状の複数の蓄電池1を有するバッテリモジュールを開示する。ゴム製の弾性ジャケットが、各蓄電池の排気口の周り、かつ蓄電池から排出される可能性のあるガスのための排出ダクトと蓄電池のハウジングの上面との間に配置される。弾性ジャケットに埋め込まれた金属インサートが、弾性ジャケットを蓄電池の面に押し付けることを可能にする。この特許出願に開示された構成では、ある所与の蓄電池から排出されたガスは、他の蓄電池およびそれら蓄電池の排気口と必ず接触し、蓄電池から漏れ出したガスの全てが、密閉された共通空間に貯留される。
【0052】
上記の特許出願によるどのシステムも、脱ガス問題に対する個別の解決策、すなわち蓄電池ごとの解決策を提供していない。したがって、それらシステムは、蓄電池のライフサイクル(充電および放電)中の適正な経年変化に必要な機械的補正を考慮しておらず、それは、蓄電池の膨張を助長し、一体化を強く制約する。
【0053】
さらに、提案されたシステムは、コンパクト(低体積/エネルギー密度比)である必要があるモジュールまたはバッテリパックの場合かつ/または冷却剤が蓄電池に直接接触する能動的冷却システムが組み込まれるときには使用不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0121348号明細書
【特許文献2】米国特許第7348098号
【特許文献3】米国特許第7338733号
【特許文献4】米国特許第2008/060189号
【特許文献5】米国特許第2008/0057392号
【特許文献6】米国特許第7335448号
【特許文献7】DE102011087198A1
【特許文献8】DE102013201365A1
【特許文献9】特開2010-215019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
したがって、特に液体冷却が行われるとき、モジュールまたはバッテリパックに組み込まれた金属イオン蓄電池から脱ガス流を収集する解決策をさらに改良する必要がある。
【0056】
そこで、本発明の全体目的は、少なくとも部分的にこの必要性を対象とすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0057】
このために、本発明の主題は、まず第1に、金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池であって、
- 長手方向軸(X)のハウジングと、
- 蓄電池の脱ガス用の安全排気口を形成する、ハウジングの一部分の破断領域と、
- 安全排気口の周りでハウジングの上記部分に緊密に固定されまたはハウジングの上記部分と一体に形成された、スティフナを形成する少なくとも1つの剛性部品、およびスティフナの延長上かつスティフナの周りに、ハウジングまたはハウジングに対してそれ自体緊密なスティフナと緊密に配置された可撓部品を備える少なくとも1つのダクトであり、可撓部品が、直交3軸(X、Y、Z)上で弾性的に変形するように成され、それによって、可撓部品がモジュールまたはバッテリパックのケーシングの貫通開口に挿入され緊密に保持されたとき、3軸上の遊びを相殺する、ダクトと
を具備する金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池である。
【0058】
このように、本発明は、基本的に、モジュールまたはバッテリパックに組み込むことを意図した角柱形状の個々の金属イオン蓄電池であって、上記蓄電池からの脱ガス流をモジュールまたはバッテリパックから外へ安全に排出するために、安全排気口に繋がるダクトを有する金属イオン蓄電池を提供することに関する。
【0059】
本発明による解決策は、モジュールまたはバッテリパックが、閉じ込められた状況にあり、特に液体冷却が行われるとき、より一層有利である。
【0060】
ダクトは、2つの部品、すなわち安全排気口を直接囲むスティフナおよびスティフナの延長上の可撓部品を備える。
【0061】
スティフナは、一方で、排気口の破断領域によって定められる断面積に対応する常に一定値である、排気口出口でのガス通路断面積を保証することを可能にし、破断領域は単なる破断線であり得、排気口自体はベローの基部に包含され、他方で、たとえば熱伝達液体中に完全に漬けて冷却することによって発生する、押圧または圧壊タイプの起こり得る外部から蓄電池への圧迫力の下での可撓部品の健全性を確保することを可能にする。
【0062】
スティフナの材料は、安全排気口を通って排出される可能性のあるガスの性質、温度、圧力に適合するように選択され得る。
【0063】
ダクトの可撓部品は、3軸(X、YおよびZ)上の遊びを相殺することが可能である。遊びは、蓄電池を膨張させる蓄電池の充電および放電サイクルから生じる機械的遊びであり得、その場合その相殺は動的である。遊びは、また、組立遊隙であり得、この場合、相殺は静的である。一般に、遊びは、モジュールまたはバッテリパックのケーシングと各蓄電池を組み立てることに関連する遊びであり得、または繰返し作動における体積変化などの蓄電池の寿命中の蓄電池の形状変化に関連する蓄電池の僅かな移動であり得る。
【0064】
可撓部品は、さらに、モジュールまたはバッテリパックのケーシング内の環境、たとえば冷却剤と接触/適合する。
【0065】
モジュールまたはバッテリパック内の各蓄電池へ組合せダクト(スティフナ/可撓部品)を組み込むことによって、蓄電池のライフサイクル全体に亘って蓄電池間の様々な遊びを相殺することが可能になり、余計な機械的応力を生じない。
【0066】
本発明によるダクトは、安全排気口の形に対応するあらゆる形状、特に円形または楕円断面を考えることが可能であり得る。同様に、本発明を実施することができる蓄電池の形状は、本発明によるダクトによって冷却剤から分離することができる脱ガス排気口を有し、かつ蓄電池同士または他の周囲の構成要素同士の連結システムを阻害することなくそれを行えることを前提として、角柱状、円筒状、またはあらゆる他の形状により得る。
【0067】
本発明によるダクトの装着および固定に関しては、たとえば、スティフナおよび適切なら可撓部品を蓄電池ハウジングに接着する方法によること、および可撓部品をモジュールまたはバッテリパックケーシングに固定する様々な可能な解決策、たとえばプラギング、クラッデイング、または他のそのような方法を考えることが可能である。
【0068】
現状では、金属イオン蓄電池をモジュールまたはバッテリパックに組み込むことには問題がある。
【0069】
実際、所与の蓄電池は、一方で製造方式、他方でライフサイクルに関連する大幅な寸法変化を有する可能性のある機械的構成要素である。これら大幅な変化が、機能的結線網に組み込むことを困難にする。
【0070】
これに関して、全ての組立遊隙が加え合わさった場合、モジュールまたはバッテリパックが構成する全体システム内の蓄電池の安全排気口の全ての位置決めを明確に保証することは極めて難しくなる。
【0071】
本発明は、大幅な変化および組立遊隙を克服することを可能にする。これを行うために、本発明は、健全性を保ちながら各軸上で数ミリメートルを超える機械的遊びに耐えることが可能な、安全排気口出口での緊密なダクトによって各蓄電池の脱ガスを個々に確実にする。
【0072】
本発明の場合、ダクトからモジュールまたはバッテリパックケーシングの外側の空間へのガスの放出は、ケーシング内部の空間と比較して際立って大きい空間/容積への放出である。言い換えれば、所与の蓄電池から排出されたガス流は、通常、モジュールまたはバッテリパックの外側の大気と接触させられ、したがって膨張および開放からの強い作用を伴い、その結果これら2つの作用による流れの強い冷却作用を伴う。さらに別の言い方をすれば、現況技術、特に特開2010-215019のように、高温/汚染/加圧流が他の蓄電池またはさらには他の蓄電池の排気口に接触することを制約できない。
【0073】
既に示したように、バッテリモジュールまたはバッテリパックにおいて、各蓄電池は、密閉された共通空間内に滞留させずに、モジュールまたはパックのケーシングからこの放出を可能にするダクト/パイプを個々に有する。それは、密閉された空間は、モジュールまたはパックの他の蓄電池への解放ガスの負のフィードバックの危険性を引き起こし得るので、有利である。それによって、モジュールまたはバッテリパックケーシングの安全性が、各蓄電池のレベルで確保され、ガスが、現況技術、特に特開2010-215019におけるように、共通ダクトのレベルで滞留することはない。したがって、熱暴走の場合の安全性が増加する。
【0074】
結局、序文で引用した現況技術による解決策に勝る本発明による解決策の利点は、多数あり、取り上げることができるものには、
- モジュールまたはバッテリパックの安全性を向上させる、蓄電池の脱ガス能力の個々の処理と、
- 蓄電池からの起こり得る脱ガス流に関連するモジュールまたはバッテリパックの機械的応力が生じないことと、
- モジュールまたはバッテリパックの組立遊撃の相殺およびその組立遊撃に関するかなりの柔軟性と
が含まれる。
【0075】
第1の有利な実施形態によれば、スティフナは、ハウジングの一部分に直接固定される部品であり、可撓部品も、やはりハウジングの一部分に直接固定され、スティフナとは別個の部品である。
【0076】
この第1の実施形態によれば、スティフナの上側部分が、ダクトの半径方向において正反対に対向し、スティフナから外方へ突出する少なくとも2つのラグを備える。
【0077】
蓄電池へのダクトの装着および組込みを簡略化するために、複数のオーバーモールディング製造方法を考えることができる。オーバーモールディングによる製造は、また、大量生産の費用を低減することを可能にすることもできる。
【0078】
すなわち、第1の有利な実施形態によれば、スティフナおよび可撓部品は、単一の一体部品を構成する。
【0079】
第1の実施形態の変形形態によれば、スティフナが、ハウジングの一部分上に直接固定される部品であり、可撓部品が、スティフナにオーバーモールドされる。
【0080】
第1の実施形態の別の変形形態によれば、可撓部品は、ハウジングの一部分上に直接固定される部品であり、スティフナは、可撓部品の内側にオーバーモールドされる少なくとも1つのリングを備える。
【0081】
第2の有利な実施形態によれば、スティフナは、可撓部品を形成する部品とは別個の部品である。
【0082】
この第2の実施形態の第1の変形形態によれば、スティフナを形成する部品は、ハウジングの一部分上に直接固定される部品であり、可撓部品を形成する部品は、ハウジングの一部分上にやはり直接固定される。
【0083】
この第2の実施形態の第1の変形形態によれば、スティフナは、ハウジングの一部分上に直接固定される部品であり、可撓部品は、スティフナ上に圧力嵌めされる弾性リングである。嵌められたリングは、遊び相殺機能を発揮する既存のサイレントブロックタイプであり得る。激しい温度上昇を生じる蓄電池の脱ガスでは、この実施形態は、ダクトの材料および製造方法においてより多様な選択肢を提供する利点を有する。さらに、蓄電池ハウジングへのダクトの組込みおよび接着が、ダクトの機械的強度によって、容易になる。
【0084】
有利な特徴によれば、スティフナの上側部分が、ダクトの半径方向において正反対に対向し、スティフナから外方へ突出する少なくとも2つのラグを備える。有利な変形実施形態によれば、可撓部品は、
- 基部を形成する固定部分と、
- 直交3軸(X、Y、Z)上で弾性的に変形するように適合された少なくとも1つの皺襞部を備える、基部の延長上の中央部分と、
- 貫通開口に挿入され保持されるように適合された、中央部分の延長上のブロック部分と
を備えるベローである。
【0085】
有利には、スティフナは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)もしくはポリエーテルイミド(PEI)から選択される高温プラスチック、またはアルミニウムもしくはセラミックから製作される。
【0086】
やはり有利には、可撓部品は、ゴム、ニトリル、またはシリコーンから選択されるエラストマーから製作される。
【0087】
有利な変形実施形態によれば、可撓部品は、自由端に、貫通開口における可撓部品の心出しおよび位置決めを行うように適合された、切込みの入った先細端部取付具を備える。
【0088】
本発明の別の主題は、
- 上記に説明したような複数の金属イオン電気化学バッテリまたは蓄電池と、
- 蓄電池を漬ける熱伝達流体のタンクであって、複数の貫通開口が穿孔され、その貫通開口のそれぞれに蓄電池ダクトの可撓部品が挿入され緊密に保持される、タンクを備える、蓄電池を冷却または加熱するための熱伝達流体回路と
を具備するモジュールまたはバッテリパックである。
【0089】
モジュールまたはバッテリパックは、有利には、各蓄電池のダクトの可撓部品を緊密に保持するための部材として、貫通開口に挿入された可撓部品に圧入される固定フランジを備える。
【0090】
有利な実施形態によれば、モジュールまたはバッテリパックは、各蓄電池ダクトが、蓄電池の排気口を通って放出される可能性のあるガスを、モジュールまたはバッテリパックのケーシングの外側の空間、特に大気へ、排出することができるように、構成される。この場合、ケーシングは、一連の蓄電池がその中に固定され保持される、モジュールまたはバッテリパックの全体外被であることは明らかである。
【0091】
他の利点および特徴が、添付図面を参照して、例示的かつ非限定的に示される詳細な説明を読むことにより、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】リチウムイオン蓄電池の様々な要素を示す分解透視概略図である。
図2】現況技術による、可撓性パッケージを有するリチウムイオン蓄電池の前面図である。
図3】円筒形のハウジングで構成される剛性パッケージを有する現況技術によるリチウムイオン蓄電池の透視図である。
図4】角柱形のハウジングで構成される剛性パッケージを有する現況技術によるリチウムイオン蓄電池の透視図である。
図5】現況技術による円筒形状のリチウムイオン蓄電池の、バッテリパックを形成する、バスバーによる組立体の透視図である。
図6】本発明による角柱形状のリチウムイオン蓄電池をバッテリパックケーシング内に装着する例の透視図である。
図7】本発明によるダクトが設けられた蓄電池を詳細に示す、図6の長手方向部分断面図である。
図8】安全排気口を示す、本発明による角柱形状のリチウムイオン蓄電池の上面図である。
図9】本発明による、蓄電池に固定されたダクトの第1の実施形態の透視図である。
図10図9によるダクトの可撓部品の透視図である。
図11図9によるダクトの剛性部品の透視図である。
図12】本発明によるダクトの第2の実施形態の透視図である。
図13】本発明によるダクトの第3の実施形態の透視図である。
図14】本発明によるダクトの第4の実施形態の透視図である。
図15図9に戻り、本発明によるダクトの可撓部品によって囲まれた剛性部品を示す透明図である。
図16図15によるダクトの変形形態の透視図である。
図17】切込みの入った先細端部取付具が配置された、本発明によるダクトの可撓部品の変形形態の透視図である。
図18図17による切込みの入った先細端部取付具を用いてそれぞれの蓄電池がケーシングに配置されたバッテリパックの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
図1図5は、現況技術による可撓性パッケージおよび蓄電池ハウジングならびにバッテリパックを有するLiイオン蓄電池の様々な例に関する。これら図1図5は、序文において既に触れられており、したがって以降さらに論じられることはない。
【0094】
明瞭化のために、現況技術と本発明とによる同じ要素を示す参照符号は、全ての図1図18について使用される。
【0095】
本出願を通して、用語「低い」、「高い」、「下方」、「上方」、「底部」、および「上部」は、本発明による金属イオン蓄電池をバッテリパック内に垂直に配置することに関するものと理解されたい。
【0096】
図6および図7は、本発明によるダクト10を有する長手方向軸Xの角柱形状のLiイオン蓄電池が、バッテリパックケーシング11に差し込まれているところを示す。
【0097】
ケーシング11は、熱伝達液体のタンクのケーシングであり、その液体の中に、本発明によるLiイオン蓄電池が少なくとも部分的に漬けられる。
【0098】
図示されるように、ダクト10は、貫通開口12に挿入され、固定フランジ13を用いてプラグ挿入方式(plugging method)により蓄電池と共に貫通開口12内に保持される。
【0099】
より具体的には、ダクト10は、安全排気口60の周りで、蓄電池ハウジング6のカバー9に緊密に固定されたスティフナ14を形成する剛性部品を備える。スティフナ14の断面は、排気口60の断面に対応し、それによって、蓄電池の製造業者によって決定されたガス流の通路の断面を満足し確保することが可能になる。
【0100】
スティフナ14は、PEEKまたはPEIタイプの高温テクニカルプラスチックから製作することができる。スティフナ14は、安全排気口60の周りでハウジングのカバー9に直接接着することができる。
【0101】
ダクト10は、さらに、スティフナ14の延長上およびスティフナ14の周りに緊密に配置された可撓部品15を備える。
【0102】
図6および図7に示されるように、可撓部品15の一方の端部は、ハウジング6のカバー9および/またはスティフナ14に直接固定され、他方の端部は、貫通開口12に挿入され、その貫通開口12に圧入される固定フランジ13によってその貫通開口12内に保持される。
【0103】
特にタンク内の熱伝達液体によって、押圧または圧潰タイプの機械的応力を受ける可撓部品15の健全性が、スティフナ14によって確保される。
【0104】
可撓部品15は、ゴム、ニトリル、シリコーンなどのエラストマーから製作することができる。
【0105】
本発明によれば、可撓部品15は、直交3軸(X、Y、Z)上で弾性的に変形させられるように適合され、それによって、これら3軸上の遊びを相殺する。遊びは、モジュールまたはバッテリパックのケーシングに各蓄電池を組み込むことに関連する遊びであり得、または繰返し作動における体積変化などの蓄電池のライフタイム中の蓄電池の形状変化に関連する蓄電池の僅かな移動に関連する遊びであり得る。
【0106】
例として、可撓部品15は、X、Y軸上で+/-1.5mm、Z軸上で0~2mmの起こり得る変形によって寸法設定され得る。
【0107】
ダクト10それ自体、およびダクト10がそれらから形成されるダクト10の2つの部品14、15が、図9図11に示される。
【0108】
スティフナ14は、上側部分に、ダクトの半径方向において正反対に対向し、スティフナ14から外方へ突出する2つのラグ140を備える。これらラグ140の機能は、ケーシング内部の環境、より具体的にはバッテリパックの液体冷却に関連する様々な起こり得る応力下での可撓部品15の変形(圧潰)を抑制することである。
【0109】
可撓部品を形成する部品15は、3つの隣接部分150、151、152を備えるベローである。
【0110】
ベローの基部を形成する環状部分150は、ハウジング6のカバー9またはスティフナ14への接着面として働く。接着は、カバー9上に接着剤の筋を堆積することによって行われ、環状部分150が、この接着剤の筋に押し付けられる。
【0111】
基部150の延長上の中央部分151は、3軸X、Y、Z上の遊びを相殺することがその機能である適正寸法の皺襞部を備える。
【0112】
中央部分151の延長上の上側部分152は、ケーシング11の貫通開口12にベロー14を挿入しブロックすることを可能にする。
【0113】
ダクトの装着および組込みを簡略化し、また、製造コストを大幅に低減するために、オーバーモールディングに基づく脱ガスダクト10の様々な他の実施形態を考えることができる。
【0114】
図12は、スティフナ14上に直接オーバーモールドされた可撓部品15’を示す。この図12において見えるスティフナ14の上縁部に設けられた穴は、オーバーモールドされる部品15’の可撓材を取り付けるためのダイとして働く。
【0115】
図13は、スティフナ14を形成する2つの剛性リング14.1、14.2をベロー15の直接内側にオーバーモールドしたところを示す。
【0116】
図14は、スティフナ14が、高さ全体に亘って、すなわちハウジング6のカバー9から貫通開口の上側部分まで延在し、可撓部品を形成するサイレントブロックタイプの弾性リング15’’が、スティフナ14の上側部分の周りに圧力嵌めされる実施形態を示す。
【0117】
ベロー15がスティフナ14を完全に取り巻く実施形態では、正反対側に対向する小さな横木の形の2つの矩形ラグ140(図15)、またはより多数の局部的ラグ140(図16)を設けることができる。
【0118】
図17および図18に示されるように、バッテリパックのケーシング11の閉鎖時にベロー15の位置決めを容易にするために、切込みの入った先細端部取付具16をベロー15の上端部に装着することが可能である。この先細端部取付具16は、ケーシング11の貫通開口12を通るベロー15の心出しおよび位置決めを可能にする。
【0119】
位置決めが行われると、先細端部取付具16が容易に切り離され、それによって、ダクト10がケーシング11の外側に顔を出すことができ、特に固定フランジ13をプラグ挿入方式で用いて、最終固定が可能になる。
【0120】
この方式の結果、ダクト10が外側に顔を出すことによって、安全排気口が、外部の大気に触れる。
【0121】
本発明は、今説明したばかりの例に限定されることはなく、特に、示された例の諸特徴は、示されていない変形形態において互いに組み合わせることができる。
【0122】
本発明の範囲から決して逸脱することなく、他の変形形態および改良形態を考案することができる。
【0123】
示された例では、安全排気口は楕円断面を有するが、あらゆる他の排気口断面、したがってダクト断面を考えることが可能であり、特に円筒断面が可能である。
【0124】
また、安全排気口周りの本発明によるダクトは、上記のように、2つの異なる部品から構成することができる一方、ダクトは、好ましくは単一の材料から製作される単一の部品として完璧に製造することができ、ハウジングに直接緊密に固定される。単一部品の場合、材料の選択および部品の寸法設定は、ダクト自体の脱ガスおよび冷却剤に関する健全性、ならびに遊びを相殺する十分な柔軟性の両方を保証するように行うべきである。通常、材料は、局所的に剛性をより高くするために局所的に厚くしたある程度のグレードのゴムであり得る。
【符号の説明】
【0125】
1 電解質構成要素
2 正極またはカソード
3 負極またはアノード
4 電流マニホールド、正端子
5 電流マニホールド、負端子
6 パッケージ、ハウジング
7 円筒側面外被
8 底面
9 カバー
10 ダクト
11 バッテリパックケーシング
12 貫通開口
13 固定フランジ
14 スティフナ
15 可撓部品、ベロー
14.1 剛性リング
14.2 剛性リング
15’ オーバーモールドされた可撓部品
15’’ 弾性リング
16 先細端部取付具
60 安全排気口
140 ラグ
150 隣接部分、環状部分
151 隣接部分、中央部分
152 隣接部分、上側部分
A Liイオン蓄電池
B1 バスバー
B2 バスバー
B3 バスバー
C 電気化学的セル
M1 モジュール
M2 モジュール
P バッテリパック
X 長手方向軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】