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特開2022-82562車両用位置判定システム、車両用通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082562
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】車両用位置判定システム、車両用通信システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20220526BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20220526BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20220526BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
E05B49/00 K
B60R25/24
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034313
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2017202734の分割
【原出願日】2017-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】大財 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】三治 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 太一
(72)【発明者】
【氏名】中村 和成
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗範
(57)【要約】
【課題】携帯端末の位置を誤判定する恐れを低減可能な車両用位置判定システムを提供する。
【解決手段】車載システムは、車室外に存在する携帯端末90と携帯端末と直接的に無線通信(つまり近距離通信)するための車室外通信機12と、車室内に存在する携帯端末90と携帯端末と近距離通信するための車室内通信機13とを備える。車室外通信機12は、金属製のBピラー24Bの車室外に向いている面の中段部に配置されている。また、車室内通信機13は、センターコンソール付近に配置されている。位置判定部は、車室外強度が車室内強度よりも高い場合には、携帯端末は車室外に存在すると判定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することによって前記携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムであって、
車両の車室内に設置された車室内アンテナを介して、前記携帯端末から送信される前記無線信号を受信する車室内受信部(132)と、
前記車室内受信部が受信した前記無線信号の受信強度を車室内強度として検出する車室内強度検出部(133)と、
車室外から到来する前記無線信号を受信するための車室外アンテナ(121)と、
前記車室外アンテナを介して前記携帯端末から送信される前記無線信号を受信する車室外受信部(122)と、
前記車室外受信部が受信した前記無線信号の受信強度を車室外強度として検出する車室外強度検出部(123)と、
前記車室内強度検出部が検出した前記車室内強度及び前記車室外強度検出部が検出した前記車室外強度に基づいて、前記携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する位置判定部(F5)と、を備え、
前記車室外アンテナは、前記車両の外面部において、前記車両が備える窓部から5cm以内となる領域に配置されており、
前記車室内アンテナは、前記車両の側面部を形成する金属部材を挟んで前記車室外アンテナと対をなす位置には配置されていない車両用位置判定システム。
【請求項2】
ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することによって前記携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムであって、
車両の車室内に設置された車室内アンテナを介して、前記携帯端末から送信される前記無線信号を受信する車室内受信部(132)と、
前記車室内受信部が受信した前記無線信号の受信強度を車室内強度として検出する車室内強度検出部(133)と、
車室外から到来する前記無線信号を受信するための車室外アンテナ(121)と、
前記車室外アンテナを介して前記携帯端末から送信される前記無線信号を受信する車室外受信部(122)と、
前記車室外受信部が受信した前記無線信号の受信強度を車室外強度として検出する車室外強度検出部(123)と、
前記車室内強度検出部が検出した前記車室内強度及び前記車室外強度検出部が検出した前記車室外強度に基づいて、前記携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する位置判定部(F5)と、を備え、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面において窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室内において前記窓部の下端部よりも下側に設けられている車両用位置判定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面において前記窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室内において前記窓部の下端部から前記電波の波長の1倍以上、下側となる位置に設けられている車両用位置判定システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、運転席側のBピラー又はCピラーの外側面において、前記窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、運転席用のドアの車室内側の側面に配置されている車両用位置判定システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室外アンテナが配置された前記ピラーの車室内側の面には設けられておらず、センターコンソール、インストゥルメントパネル、運転席の足元、車室内天井部、及び後部座席のシート内部の何れかに配置されている車両用位置判定システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室外アンテナが配置されたピラーの車室内側の面には設けられていない、車両用位置判定システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、指向性を有するアンテナであって、指向性の中心が車室外に向けられた姿勢で配置されている車両用位置判定システム。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記位置判定部は、前記車室外強度検出部によって検出された前記車室外強度が、前記車室内強度検出部によって検出された前記車室内強度よりも高い場合には前記携帯端末は車室外に存在すると判定するように構成されている車両用位置判定システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記位置判定部の判定結果に基づいて、前記車両が備えるドアの開錠、前記ドアの施錠、及び前記車両の駆動源の始動の少なくとも何れか1つを実施する車両制御部(F6)を備える車両用位置判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されて使用されるシステムであって、ユーザによって携帯される携帯端末から所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することで当該携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のユーザによって携帯される携帯端末と無線通信を実施することで、車両に対する携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムとしての機能を備えた車載装置が開示されている。具体的には、特許文献1に開示の携帯端末は、車両から応答信号の返送を要求するリクエスト信号を受信した場合、当該リクエスト信号のRSSI(Received Signal Strength Indication)を含む応答信号を返送する。車載装置は、携帯端末から返送されてくる応答信号に含まれているRSSIをメモリに保存していく。そして、車載装置は、メモリに保存されている直近5回分のRSSIの平均値が所定の閾値を超過している場合に、携帯端末は車室内に存在すると判定する。一方、直近5回分のRSSIの平均値が閾値以下である場合には車室外に存在すると判定する。
【0003】
なお、上述の携帯端末とは、Bluetooth(登録商標)による通信機能を備える通信端末であり、特許文献1においては携帯端末として、スマートフォンや携帯電話機などが想定されている。これに伴い、車載装置は、Bluetooth(登録商標)に準拠した無線通信を実施するものである。便宜上、以降ではBluetoothなどの、通信範囲が例えば数十メートル程度となる所定の無線通信規格に準拠した通信を近距離通信と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-214316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、近距離通信用のアンテナを車室内に配置した構成において、携帯端末から送信された信号の車載装置での受信強度と、携帯端末の位置との関係性について試験したところ、次のような知見が得られた。
【0006】
携帯端末が車室外に存在する場合、確かに車室外の多くの領域では、車室内アンテナでの受信強度(以降、車室内強度)は相対的に低いレベルとなる。しかしながら、携帯端末が車室外に存在する場合であっても、携帯端末が車両の窓部近傍に存在する場合には、携帯端末からの信号が窓部を介して車室内に入り込みやすく、車室内強度も相対的に高いレベルとなりやすい。加えて、携帯端末が車室内に存在する場合であっても、マルチパスによって生じた複数の電波が互い弱め合うように作用し、車室内強度が、携帯端末を車室内の他の領域に配置した場合よりも相対的に大きく低下しまう場所(以降、低下ポイント)が存在しうる。
【0007】
特許文献1に開示の構成において、携帯端末は車室内に存在すると判定するための閾値(以降、判定用閾値)を十分に小さい値とすれば、携帯端末が低下ポイントに存在する場合であっても、車室内に存在すると判定する可能性を高めることができる。しかしながら、その一方で、携帯端末が実際には車室外に存在する場合であっても、携帯端末は車室内に存在すると誤判定する可能性が高まってしまう。
【0008】
また、特許文献1に開示の構成において判定用閾値を十分に大きい値とすれば、携帯端末が車室外に存在する場合に携帯端末は車室内に存在すると誤判定する可能性が高まってしまう恐れは低減できるが、携帯端末が低下ポイント等の車室内に存在する場合であっても、携帯端末は車室外に存在すると誤判定する可能性が高まってしまう。つまり特許文献1の構成では、実際の位置とは異なる位置に携帯端末が存在すると誤判定してしまう場合がある。
【0009】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、携帯端末の位置を誤判定する恐れを低減可能な車両用位置判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための本開示における第1の車両用位置判定システムは、ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することによって携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムであって、車両の車室内に設置された車室内アンテナを介して、携帯端末から送信される無線信号を受信する車室内受信部(132)と、車室内受信部が受信した無線信号の受信強度を車室内強度として検出する車室内強度検出部(133)と、車室外から到来する無線信号を受信するための車室外アンテナ(121)と、車室外アンテナを介して携帯端末から送信される無線信号を受信する車室外受信部(122)と、車室外受信部が受信した無線信号の受信強度を車室外強度として検出する車室外強度検出部(123)と、車室内強度検出部が検出した車室内強度及び車室外強度検出部が検出した車室外強度に基づいて、携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する位置判定部(F5)と、を備え、車室外アンテナは、車両の外面部において、車両が備える窓部から5cm以内となる領域に配置されており、車室内アンテナは、車両の側面部を形成する金属部材を挟んで車室外アンテナと対をなす位置には配置されていない。
上記目的を達成するための本開示における第2の車両用位置判定システムは、ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することによって携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムであって、車両の車室内に設置された車室内アンテナを介して、携帯端末から送信される無線信号を受信する車室内受信部(132)と、車室内受信部が受信した無線信号の受信強度を車室内強度として検出する車室内強度検出部(133)と、車室外から到来する無線信号を受信するための車室外アンテナ(121)と、車室外アンテナを介して携帯端末から送信される無線信号を受信する車室外受信部(122)と、車室外受信部が受信した無線信号の受信強度を車室外強度として検出する車室外強度検出部(123)と、車室内強度検出部が検出した車室内強度及び車室外強度検出部が検出した車室外強度に基づいて、携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する位置判定部(F5)と、を備え、車室外アンテナは、車両のピラーの外側面において窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、車室内アンテナは、車室内において窓部の下端部よりも下側に設けられている。
【0011】
上記の構成において車室外アンテナは、車室外から車室内への電波の通り道である窓部付近に配置されている。このような構成によれば、車室外に存在する携帯端末からの信号が車室内アンテナで受信される場合には、車室外アンテナでも受信される可能性が高い。加えて、車室外アンテナのほうが車室内アンテナよりも携帯端末に近いため、車室外強度のほうが車室内強度よりも高くなりやすい。つまり、携帯端末が車室外に存在するにも関わらず、車室内強度のほうが車室外強度よりも高くなるといった逆転現象が生じにくい。
【0012】
上記の効果は、携帯端末が車室外の窓部付近に存在する場合も同様である。そして、位置判定部は以上の構成を前提として、車室内強度と車室外強度に基づいて携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する。このような構成によれば携帯端末が車室外に存在するにも関わらず、携帯端末が車室内に存在すると誤判定する恐れを低減することができる。
【0013】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示に係る通信システム100の概略的な構成を示す概念図である。
図2】車両Hvの構成を説明するための図である。
図3】車載システム10の概略的な構成を示すブロック図である。
図4】車室外通信機12の構成を示すブロック図である。
図5】車室外通信機12の搭載位置を説明するための車両Hvの概念的な上面図である。
図6】車室外通信機12の搭載位置を説明するための車両Hvの概念的な側面図である。
図7】車室外通信機12の取付部分の構成を説明するための概念図である。
図8】車室内通信機13の構成を示すブロック図である。
図9】認証ECU11の構成を示す機能ブロック図である。
図10】第1の比較構成の作動を説明するための図である。
図11】本実施形態の効果を説明するための図である。
図12】本実施形態の効果を説明するための図である。
図13】第2比較構成の作動を説明するための図である。
図14】第2比較構成の特性が顕著に表れる場合のボディ形状の一例を示す図である。
図15】車室外通信機12の取り付け位置の変形例を示す図である。
図16】車室外通信機12の取り付け位置の変形例を示す図である。
図17】車室外通信機12の取り付け位置の変形例を示す図である。
図18】指向性アンテナを用いてなる車室外通信機12の取り付け姿勢を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本開示に係る通信システム100の概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すように通信システム100は、車両Hvに搭載された車載システム10と、当該車両Hvのユーザによって携帯される通信端末である携帯端末90と、を備えている。
【0016】
携帯端末90は、通信距離を10メートル以上に設定可能な所定の近距離無線通信規格に準拠した通信(以降、近距離通信とする)を実施する機能を備えた通信端末である。ここでの近距離無線通信規格としては、例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。これらの近距離無線通信規格によれば通信距離は100m程度まで設定可能である。ここでは一例として携帯端末90と車載システム10はBluetooth Low Energyの規格に準拠して通信を実施するように構成されているものとする。
【0017】
なお、携帯端末90と車載システム10は超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)通信で使用されるインパルス信号を用いて無線通信を実施するように構成されていても良い。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ns)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。UWB通信に利用できる周波数帯(以降、UWB帯)としては、3.1GHz~16GHzや、3.4GHz~4.8GHz、7.25GHz~16GHz、22GHz~29GHz等がある。
【0018】
携帯端末90と車載システム10とが無線通信を実施するための規格や、無線通信に使用される電波(以降、システム使用電波)の周波数は適宜選定されればよい。ここでは一例として携帯端末90と車載システム10は2.4GHz帯の電波を用いて通信を実施するものとするがこれに限らない。他の態様としてシステム使用電波は、上述したように2.5GHz~10GHzの電波であってもよい。また、2.4GHz未満の電波であってもよい。データの伝送効率の観点から、システム使用電波の周波数は1GHz以上であることが好ましい。
【0019】
携帯端末90は、上述の近距離通信を実施する機能を備えていればよく、例えばスマートフォンを携帯端末90として用いることができる。もちろん、携帯端末90は、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機、無線タグ等であってもよい。汎用的な通信端末を携帯端末90として採用可能である。また、携帯端末90は、車両Hvの鍵としての機能を備える通信装置(いわゆる車両用の携帯機)であってもよい。
【0020】
携帯端末90は、送信元情報を含む通信パケットを所定の送信間隔で無線送信することで、近距離通信機能を備える周囲の通信端末に対して、自分自身の存在を通知する(つまりアドバタイズする)。送信元情報は、例えば携帯端末90に割り当てられた識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末90とを識別するための情報として機能する。
【0021】
以降では便宜上、アドバイズを目的として定期的に送信される通信パケットのことをアドバタイズパケットと称する。なお、アドバタイズパケットの送信間隔は一定値(例えば100ミリ秒)であってもよいし、携帯端末90の動作状況に応じて可変であってもよい。例えば携帯端末90において近距離通信機能を利用する所定のアプリケーションがフォアグラウンドで動作している場合、送信間隔は相対的に短い時間(例えば50ミリ秒)に設定される。一方、当該アプリケーションがフォアグラウンドで動作していない場合、送信間隔は相対的に長い時間(200ミリ秒)に設定される。
【0022】
車載システム10もまた、上述の近距離通信機能を備えており、携帯端末90から送信されてくる信号(例えばアドバタイズパケット)を受信することによって、携帯端末90が車載システム10と近距離通信可能な範囲内に存在することを検出する。以降では、車載システム10が携帯端末90と近距離通信可能な範囲のことを車両通信エリアとも記載する。
【0023】
なお、車載システム10は、所定のタイミングで携帯端末90に対して応答信号の返送を要求する信号(以降、応答要求信号)送信し、携帯端末90からの応答信号を受信することによって携帯端末90が車載システム10の車両通信エリア内に存在することを検出するように構成されていてもよい。その場合、携帯端末90は、車載システム10から送信される応答要求信号を受信した場合には応答信号を近距離通信で返送するものとする。携帯端末90が送信する信号には、より好ましい態様として、送信元情報が含まれているものとする。
【0024】
<車両Hvの構成について>
まずは、車両Hvの構成について図2を用いて説明する。ここでは一例として車両Hvは自家用車とするが、他の態様として、タクシーや、バス、トラック等であってもよい。乗員の移動以外を主目的とする車両であってもよい。
【0025】
車両Hvが備える種々のボディパネルは金属部材を用いて実現されている。ここでのボディパネルとは、車両Hvの外観形状を提供する部品群である。ボディパネルには、ボディシェルに対して組み付けられるサイドボディパネルや、ルーフパネル、リアエンドパネル、ボンネットパネル、ドアパネル、ピラーなどが含まれる。以降では、種々のボディパネルを組み合わせてなる構成をボディ21と称する。
金属板は電波を反射する性質を有するため、車両Hvのボディパネルはシステム使用電波を反射する。すなわち、車両Hvは、システム使用電波の直進的な伝搬を遮断するボディ21を備える。なお、ボディシェル自体は、鋼板などの金属部材を用いて実現されていても良いし、カーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。ここではより好ましい態様としてボディシェルも金属製とする。
【0026】
また、ここでの遮断とは、理想的には反射であるが、これに限らない。システム使用電波を所定のレベル(以降、目標減衰レベル)以上減衰できる構成が、システム使用電波の伝搬を遮断する構成に相当する。目標減衰レベルは、車室内外で電波の信号強度に有意な差が生じる値とすればよく、例えば5dBとする。車両Hvのボディ21を構成する種々のボディパネルは、カーボン系樹脂を用いて形成されていてもよい。ただし、その場合、ボディの材料となるカーボン系樹脂は、システム使用電波の伝搬を5dB以上減衰させるほど十分にカーボンが充填された組成となっているものとする。
【0027】
また、車両Hvのボディパネルがカーボンを含まない汎用樹脂を用いて形成されている場合であっても、ボディパネルの表面にシステム使用電波の伝搬を遮断する機能を奏する特定の金属パターンが設けられることによって、システム使用電波の伝搬を遮断するように構成されていればよい。システム使用電波の伝搬を遮断する機能を奏する金属パターン(以降、シールドパターン)とは、例えば銀ナノワイヤなどの細線導体をシステム使用電波の12波長以下の間隔で格子状に配置したパターンなどである。ここでの細線とは、線幅が50μm以下のものを指すこととする。
【0028】
また、シールドパターンは、周知のメタ・サーフェス構造を援用して実現することができる。メタ・サーフェス構造は、ユニットセル(Unit Cell)と呼ばれる人工構造を繰り返し配列した構造である。メタ・サーフェス構造によれば特定の周波数帯の電波(ここではシステム使用電波)のみを選択的に反射したり減衰させたり(すなわち遮断)することができる。また、車両Hvのボディ21は、汎用樹脂製のボディの上に、金属粉やカーボン粉末を含む塗料が塗られることによってシステム使用電波の伝搬を遮断するように構成されていてもよい。さらに、システム使用電波の伝搬を遮断するフィルム(以降、シールドフィルム)がボディ21に貼り付けられていてもよい。
【0029】
また、車両Hvは、ルーフパネルによって提供されるルーフ部23を有し、このルーフパネルを支持するための部材である複数のピラーを備える。複数のピラーは、前端から後端に向けて、順に、Aピラー、Bピラー、Cピラーと呼ばれる。ここでは一例として車両Hvは前部座席と後部座席を有する車両であって、ピラーとして、Aピラー24A、Bピラー24B、及びCピラー24Cを備えるものとする。
Aピラー24Aは前部座席の前方に設けられたピラーである。換言すれば、Aピラー24Aは運転者と助手席の斜め前に配置されているピラーである。Bピラー24Bは、前部座席と後部座席の間に設けられたピラーである。Cピラー24Cは後部座席斜め後ろに設けられているピラーである。なお、他の態様として、車両Hvは、前方から4つ目のピラーであるDピラーや、5つめのピラーであるEピラーを備える車両であってもよい。各ピラーの一部又は全部は、高張力鋼鈑等の金属部材を用いて実現されている。なお、他の態様としてピラーは、カーボンファイバー製であっても良いし、樹脂製であってもよい。さらに、種々の材料を組み合わせて実現されていても良い。
【0030】
このように車両Hvは全体として、全てのドアが閉じられている場合には、システム使用電波は窓部22を介して車室外から車室内に進入したり、車室内から車室外に漏洩したりするように構成されている。つまり窓部22がシステム使用電波の通り道として作用するように構成されている。ここでの窓部22とは、フロントウインドウや、車両Hvの側面部分に設けられている窓(いわゆるサイドウインドウ)、リアウインドウなどである。
【0031】
なお、他の態様として、車両Hvのドア等に設けられている窓ガラスもまた、システム使用電波の直進的な伝搬を遮断するように構成されていてもよい。ここでの窓ガラスとは、車両Hvに設けられている窓部22に配置される透明な部材であって、その素材は厳密にはガラスでなくともよい。例えばアクリル樹脂等を用いて実現されていても良い。すなわち、ここでの窓ガラスとは、風防として機能する透明な部材である。
【0032】
<車載システム10の構成について>
次に、車載システム10の電気的な構成及び作動について述べる。車載システム10は、図3に示すように、認証ECU11、車室外通信機12、車室内通信機13、タッチセンサ14、施錠ボタン15、始動ボタン16、ボディECU17、及びエンジンECU18を備える。なお、部材名称中のECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。車載システム10が車両用位置判定システムに相当する。
【0033】
車室外通信機12、車室内通信機13、ボディECU17、及びエンジンECU18のそれぞれは、認証ECU11と車両内に構築された通信ネットワーク又は専用の信号線を介して、双方向通信可能に接続されている。また、タッチセンサ14、始動ボタン16、及び施錠ボタン15はそれぞれ、出力信号が直接的又は間接的に認証ECU11に入力されるように構成されている。
【0034】
認証ECU11は、概略的に、車室外通信機12などの他の構成との連携(換言すれば協働)によって、車両Hvに対する携帯端末90の位置を推定し、その推定結果に応じた車両制御を実施するECUである。この認証ECU11は、コンピュータを用いて実現されている。すなわち、認証ECU11は、CPU111や、RAM112、フラッシュメモリ113などを備えている。CPU111は、種々の演算処理を実行する演算処理装置である。RAM112は揮発性の記憶媒体であり、フラッシュメモリ113は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。
【0035】
フラッシュメモリ113には、ユーザが所有する携帯端末90に割り当てられている端末IDが登録されている。便宜上以降では、携帯端末90の端末IDとしてフラッシュメモリ113に登録されている端末IDのことを登録IDとも記載する。また、フラッシュメモリ113には、通常のコンピュータを認証ECU11として機能させるためのプログラム(以降、位置判定プログラム)等が格納されている。なお、上述の位置判定プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPU111が位置判定プログラムを実行することは、位置判定プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
【0036】
この認証ECU11の詳細については別途後述する。なお、車両Hvの走行用電源(例えばイグニッション電源)がオフになっている場合も、認証ECU11には、後述する位置判定処理を実施するために必要十分な電力が車載バッテリから供給されるように構成されている。
【0037】
車室外通信機12は、車室外に存在する携帯端末90と近距離通信するための通信モジュールである。車室外通信機12は、より細かい構成要素として図4に示すように、車室外アンテナ121、送受信部122、強度検出部123、及び通信マイコン124を備える。車室外アンテナ121は、携帯端末90との通信に用いられる周波数帯の電波(つまりシステム使用電波)を送受信するためのアンテナである。本実施形態では一例として車室外アンテナ121は、アンテナ素子の姿勢に対して定まる所定の平面において無指向性(換言すれば等方性)を提供するアンテナ(いわゆる無指向性アンテナ)とする。他の態様として車室外アンテナ121は指向性を備えるものであってもよい。なお、車室外アンテナ121としての無指向性アンテナは、車両水平面において無指向性を提供する姿勢で配置されているものとする。車両水平面とは車両Hvの高さ方向に対して直交する平面である。
【0038】
送受信部122は、車室外アンテナ121で受信した信号を復調し、通信マイコン124に提供する。また、通信マイコン124を介して認証ECU11から入力された信号を変調して、車室外アンテナ121に出力し、電波として放射させる。送受信部122が車室外受信部に相当する。受信信号の増幅率や、送信信号の送信電力によって車室外通信機12にとっての通信エリアが定まる。
車室外通信機12の通信エリアとは、携帯端末90と相互に通信可能な範囲に相当する。つまり、車室外通信機12の通信エリアとは、携帯端末90から送信された信号を車室外通信機12が復調可能なレベルで受信でき、かつ、車室外通信機12が送信した信号が携帯端末90において復調可能な強度を維持して到達する範囲である。送信電力や受信信号の増幅率が大きいほど、車室外通信機12の通信エリアは大きくなる。ここでは一例として車室外通信機12は、車室外アンテナ121から10m以内が通信エリアとなるように構成されているものとする。
【0039】
強度検出部123は、送受信部122が車室外アンテナ121を介して受信した信号の強度を示すデータ(いわゆるRSSI:Received Signal Strength Indication)を逐次出力する構成である。強度検出部123が検出した強度(以降、受信強度)は、受信データに含まれる端末IDと対応付けられて通信マイコン124に逐次提供される。なお、受信強度は、例えば電力の単位[dBm]で表現されればよい。便宜上、受信強度と端末IDとを対応づけたデータを受信強度データと称する。強度検出部123が車室外強度検出部に相当する。
【0040】
通信マイコン124は、認証ECU11とのデータの受け渡しを制御するマイクロコンピュータであり、MPUやRAM等を用いて実現されている。通信マイコン124は、送受信部122から入力された受信データを順次又は認証ECU11からの要求に基づいて認証ECU11に提供する。つまり、送受信部122が受信したデータは、通信マイコン124を介して認証ECU11に提供される。
【0041】
また、通信マイコン124は、強度検出部123から受信強度データを取得すると、図示しないRAMに蓄積していく。逐次取得される受信強度データは、例えば、最新の受信データの受信強度が先頭となるように時系列順にソートされてRAMに保存されれば良い。保存されてから一定時間経過したデータは順次破棄されていけば良い。つまり、受信強度データはRAMに一定時間保持される。通信マイコン124は、認証ECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを提供する。なお、認証ECU11に提供した受信強度データについてはRAMから削除されれば良い。通信マイコン124における受信強度データの保存期間は、適宜設計されれば良い。
【0042】
なお、本実施形態では送受信部122が出力する受信強度データはRAMにいったん保持され、通信マイコン124が認証ECU11からの要求に基づいてRAMに蓄積されている受信強度データを認証ECU11に提供するものとするが、これに限らない。受信強度データは、認証ECU11に逐次提供される構成を採用しても良い。
【0043】
以上の構成を備える車室外通信機12は、車室外に所定の通信エリアを形成するように車両Hvの外面部の所定位置に少なくとも1つ配置されている。ここでの外面部とは、車両Hvにおいて車室外空間に接するボディ部分であって、車両Hvの側面部、背面部、及び前面部が含まれる。ここでは一例として車載システム10は、図5に示すように車室外通信機12として、左側通信機12A及び右側通信機12Bを備える。
【0044】
左側通信機12Aは、図6に示すように車両左側に位置するBピラー24Bの中段部において、車室外側の面に、車両Hvの左側方が見通し内となる姿勢で配置されている。車室外側の面とは、車室内から見て車室外空間が存在する方向に向いている面である。なお、図5図6で左側通信機12Aの位置を明示するために、その大きさを誇張するとともに、斜線のハッチングを施して図示している。
【0045】
Bピラー24Bの中段部とは、Bピラー24Bを車両高さ方向に3等分した際に真ん中に位置する部分に相当する。左側通信機12Aにとって見通し内となる領域とは、左側通信機12Aが送信した信号が直接到達しうる領域である。また、無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、左側通信機12Aにとっての見通し内領域とは、換言すれば、携帯端末90から送信された信号を直接的には受信可能な領域に相当する。なお、無線信号が直接到達する領域とは、略直進的に到達できる領域であって、例えばガラス等の物体を透過して到達する領域も含まれる。
【0046】
ところで、Bピラー24Bは金属部材で実現されている。つまり、図7に示すように左側通信機12Aから見て車室内側である背面には金属体が存在する。その結果、左側通信機12Aにとって車室内空間の大部分は見通し外となり、車室内に存在する携帯端末90からの信号は受信しにくい。
左側通信機12Aにとっての見通し外領域とは、左側通信機12Aが送信した信号が直接到達しない領域である。左側通信機12Aにとっての見通し外とは、別の観点によれば、無線信号の伝搬経路には可逆性があるため、携帯端末90から送信された信号を直接的には受信できない領域に相当する。なお、携帯端末90が左側通信機12Aの見通し外に存在する場合であっても携帯端末90から送信された信号が、種々の構造物で反射されることによって、左側通信機12Aまで到達することはある。
【0047】
右側通信機12Bは、左側通信機12Aと対をなす車室外通信機12である。右側通信機12Bは、車両Hvの右側の側面部において、左側通信機12Aと反対側となる位置に配置されている。つまり、車両右側のBピラー24Bの中段部において、Bピラー24Bの車室外側の面に、車両Hvの右側方が見通し内となる姿勢で配置されている。以上のように車室外通信機12として左側通信機12A及び右側通信機12Bを備えることにより、車載システム10は車両Hvの側方領域を中心として、車室外に通信エリアを形成する。
【0048】
車室内通信機13もまた、携帯端末90と近距離通信するための通信モジュールである。ただし、前述の車室外通信機12は車室外に存在する携帯端末90と近距離通信することを目的とする通信モジュールであるのに対し、車室内通信機13は、車室内に存在する携帯端末90と通信することを目的とする通信モジュールである。これに伴い、車室内通信機13は、車室外通信機12と設置位置等において相違する。
【0049】
車室内通信機13は、車室内空間が通信エリアとなるように車室内に少なくとも1つ設けられている。車室内通信機13にとっての通信エリアとは、車室外通信機12にとっての通信エリアと同様に、携帯端末90と相互に通信可能な範囲に相当する。前述の車両通信エリアとは、複数の車室外通信機12が形成する通信エリア、及び、少なくともの1つの車室内通信機13が形成する通信エリアを組み合わせてなるエリアである。
【0050】
本実施形態では一例として車室内通信機13は、車室内空間の全域が通信エリアとなるように、センターコンソール付近に配置されているものとする。もちろん、車室内通信機13の設置位置は、これに限らない。車室内通信機13は、インストゥルメントパネルの車幅方向中央部付近において、ドアハンドルと同程度の高さとなる位置に配置されていてもよい。また、車室内通信機13は、センターコンソールとインストゥルメントパネルとの境界付近に配置されていても良い。その他、例えば運転席の足元や、運転席用のドアの車室内側の側面に配置していても良い。また、車室内通信機13は、車室内天井部分の中央に配置してもよい。なお、車室内通信機13は車室内に複数設けられていても良い。例えば、前部座席用の車室内通信機13と、後部座席用の車室内通信機13を備えていても良い。後部座席用の車室内通信機13は、後部座席のシート内部に配置されていても良い。
【0051】
車室内通信機13の通信モジュールとしての具体的な構成は、車室外通信機12と同一とすることができる。すなわち車室内通信機13は、より細かい構成要素として図8に示すように、システム使用電波を送受信するためのアンテナ(以降、車室内アンテナ)131、送受信部132、強度検出部133、及び通信マイコン134を備える。これらの種々の構成の機能は、車室外通信機12が備える構成と同様であるため説明は省略する。強度検出部133が検出した受信強度は、通信マイコン134を介して認証ECU11に提供される。送受信部132が車室内受信部に相当する。強度検出部123が車室内強度検出部に相当する。
【0052】
便宜上以降では、車室外通信機12と車室内通信機13とを区別しない場合には、通信機とも記載する。送受信部122、132についても、これらを互いに区別しない場合には送受信部と記載する。強度検出部123、133や通信マイコン124、134についても同様である。さらに、車室外アンテナ121と車室内アンテナ131とを区別しない場合にはアンテナと記載する。
【0053】
タッチセンサ14は、車両Hvの各ドアハンドルに装備されており、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する。各タッチセンサ14の検出結果は、認証ECU11に逐次出力される。施錠ボタン15は、ユーザが車両Hvのドアを施錠するためのボタンである。車両Hvの各ドアのハンドルに設けられればよい。施錠ボタン15は、ユーザによって押下されると、その旨を示す電気信号を、認証ECU11に出力する。
始動ボタン16は、ユーザが駆動源(例えばエンジン)を始動させるためのプッシュスイッチである。始動ボタン16は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す電気信号を認証ECU11に出力する。なお、ここでは一例として車両Hvは、エンジンを動力源として備える車両とするがこれに限らない。車両Hvは、電気自動車やハイブリッド車であってもよい。車両Hvがモータを駆動源として備える車両である場合には、始動ボタン16は駆動用のモータを始動させるためのスイッチである。
【0054】
ボディECU17は、種々の車載センサや認証ECU11から入力される信号に基づいて、車両Hvに搭載されている種々のアクチュエータを制御するECUである。ここでの車載センサとは、ドア毎に配置されているカーテシスイッチなどである。カーテシスイッチは、ドアの開閉を検出するセンサである。例えばボディECU17は、認証ECU11からの指示に基づいて各ドアのロック機構を構成するドアロックモータに対して所定の制御信号を出力することで、各ドアを施錠したり開錠したりする。エンジンECU18は、車両Hvに搭載されたエンジンの動作を制御するECUである。
【0055】
<認証ECU11の機能について>
次に、図9を用いて認証ECU11の機能について説明する。認証ECU11は、CPU111が上述した位置判定プログラムを実行することで、図9に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、認証ECU11は機能ブロックとして、車両情報取得部F1、送信処理部F2、受信処理部F3、受信強度取得部F4、位置判定部F5、及び車両制御部F6を備えている。
【0056】
なお、認証ECU11が備える機能の一部又は全部は、論理回路等を用いたハードウェアとして実現されていてもよい。ハードウェアとして実現される態様には1つ又は複数のICを用いて実現される態様も含まれる。また、認証ECU11が備える機能ブロックの一部又は全部は、CPU111によるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0057】
車両情報取得部F1は、車両Hvに搭載された種々のセンサやデバイス(例えばタッチセンサ14)から、車両Hvの状態を示す種々の情報(以降、車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドアハンドルへのタッチの有無、始動ボタン16の押下の有無、施錠ボタン15の押下の有無等が該当する。
【0058】
なお、車両情報に含まれる情報は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキセンサの検出結果なども車両情報に含まれる。車両情報取得部F1が取得した車両情報は、取得時刻を示すタイムスタンプが付与されて、RAM112等に保存される。なお、車両情報の保存先はフラッシュメモリ113であってもよい。
【0059】
送信処理部F2は、携帯端末90宛のデータを生成し、車室外通信機12及び車室内通信機13の少なくとも何れか一方に出力する。これにより、所望のデータに対応する信号を電波として送信させる。例えば送信処理部F2は、後述する受信強度取得部F4からの要求に基づいて応答要求信号を生成し、各通信機から送信させる。受信処理部F3は、車室外通信機12及び車室内通信機13のそれぞれから受信データを取得する構成である。
【0060】
受信強度取得部F4は、車室外通信機12及び車室内通信機13のそれぞれから受信強度データを取得する構成である。本実施形態の受信強度取得部F4は、送信処理部F2に対して所定のサンプリング周期で応答要求信号の送信を要求する。これにより所定のサンプリング周期で応答要求信号が各通信機から定期送信される。
【0061】
また受信強度取得部F4は、応答要求信号の送信を要求してから所定の応答待機時間経過したタイミングで、各通信機に対して、受信強度データの提供を要求する。応答待機時間は、送信処理部F2が応答要求信号を送信してから受信処理部F3が携帯端末90からの応答信号を受信するまでにかかる時間に応じて決定されるパラメータである。
受信強度取得部F4は、車室外通信機12から提供された受信強度データの中に携帯端末90から送信された信号の受信強度が含まれている場合には、その受信強度を車室外強度としてRAM112に保存する。なお、左側通信機12Aから取得した受信強度のデータと、右側通信機12Bから取得した受信強度のデータは区別して保存されればよい。
【0062】
同様に、受信強度取得部F4は、車室内通信機13から提供された受信強度データの中に、携帯端末90から送信された信号の受信強度が含まれている場合には、その受信強度を車室内強度としてRAM112に保存する。つまり、各通信機(換言すれば各アンテナ)での受信強度は、通信機毎に区別して取り扱われる。受信強度取得部F4は、携帯端末90から送信されてくる信号の各アンテナでの受信強度を取得する構成に相当する。
【0063】
なお、或る受信信号の受信強度が携帯端末90から送信された信号の受信強度であるか否かは、当該受信強度と対応付けられている端末ID、及び、登録IDに基づいて判定することができる。携帯端末90以外からの信号の受信強度は破棄されれば良い。携帯端末90以外からの信号の受信強度を破棄する処理は、通信機内で実施されても良い。その場合、通信機にも携帯端末90の端末IDが登録されているものとする。複数の携帯端末90が車載システム10に登録されている場合であって、かつ、複数の携帯端末90からの受信強度を取得できている場合には、受信強度取得部F4は各携帯端末90の受信強度を端末ID毎に区別して保存していけばよい。
【0064】
位置判定部F5は、受信強度取得部F4が取得した携帯端末90の受信強度に基づいて、携帯端末90の位置を判定する構成である。例えば位置判定部F5は、受信強度取得部F4が取得した車室外強度と、車室内強度を比較して、車室外強度が車室内強度よりも高い場合には、携帯端末90は車室外に存在すると判定する。一方、車室内強度が車室外強度よりも高い場合には、携帯端末90は車室内に存在すると判定する。位置判定部F5の判定結果は車両制御部F6に提供される。
【0065】
なお、左側通信機12A及び右側通信機12Bの両方で携帯端末90からの信号を受信できている場合には、各車室外通信機12に対応する複数の車室外強度のうち、高い方の値を、車室内強度との比較対象として採用すれば良い。左側通信機12A及び右側通信機12Bの両方で携帯端末90からの信号を受信できている場合とは、すなわち、車室外強度として、複数の車室外通信機12のそれぞれにおける車室外強度を取得できている場合に相当する。
なお、本実施形態では一例として、認証ECU11は、応答要求信号を送信することによって携帯端末90から送信される応答信号の受信強度を取得し、当該受信強度を用いて位置判定処理を実施することとするが、これに限らない。携帯端末90が所定の信号(例えばアドタイズパケット)を逐次送信するように構成されている場合には、当該定期的に送信される信号の受信強度を用いて携帯端末90の位置を判定してもよい。
【0066】
車両制御部F6は、位置判定部F5の判定結果と、車両Hvに対するユーザ操作に基づいて、当該ユーザ操作に応じた車両制御を実施する構成である。例えば車両制御部F6は、車両Hvのドアが施錠されており、且つ、位置判定部F5によって携帯端末90は車室外の車室外に存在すると判定されているときに、タッチセンサ14によってユーザによるハンドルにタッチする操作が検出された場合には、ドアロックモータと連携してドアを開錠する。また、例えばエンジンが停止しており、且つ、位置判定部F5によって携帯端末90が車室内に存在すると判定されているときに、始動ボタン16がユーザによって押下された場合には、エンジンECU18と連携してエンジンを始動させる。その他、車両制御部F6が実施する車両制御の内容は、ユーザの操作内容や車両Hvの状態と合わせて適宜設計されれば良い。
【0067】
なお、車両制御の実行条件には、別途、ユーザが正規のユーザであるか否かの認証を実施した結果も用いられることが好ましい。つまり、ユーザの認証が成功している場合にのみ、車両制御を実施するように構成されていることが好ましい。ユーザの認証自体は、ユーザの指紋や虹彩、静脈パターンなどの生体情報を用いて実施されれば良い。また、ユーザ自体を直接認証せずに、携帯端末90を認証することによって、間接的にユーザを認証してもよい。無線通信による携帯端末90の認証は、チャレンジレスポンス方式など、周知の方式に則って実施されれば良い。ユーザの認証を行う機能(以降、ユーザ認証機能)は認証ECU11が備えていても良いし、別のECUが備えていても良い。
【0068】
<本実施形態の効果について>
ここでは、第1の比較構成を導入して本実施形態の効果について説明する。ここでの第1の比較構成とは、特許文献1と同様に、車室内通信機での受信強度と、1つの判定用閾値の比較によって携帯端末90が車室外に存在するか否かを判定する構成である。第1の比較構成では、車室内強度が判定用閾値以上である場合に携帯端末は車室内に存在すると判定し、RSSIの平均強度が判定用閾値未満である場合に携帯端末は車室外に存在すると判定する。
このような第1の比較構成において判定用閾値の設定値が低すぎると、携帯端末が実際には車室外に存在するにも関わらず、車室内に存在すると誤判定する恐れが高まる。例えば、車室内の全エリアにおいて携帯端末が車室内に存在すると判定できるほど十分に判定用閾値を低い値に設定すると、図10に示すように、携帯端末が実際には車室外に存在するにも関わらず、車室内に存在すると誤判定してしまう地点が幾つか発生してしまう。一方、第1の比較構成において判定用閾値の設定値が高すぎると、携帯端末が実際には車室内に存在するにも関わらず、車室外に存在すると誤判定する恐れが高まる。したがって、第1の比較構成では、それらの事情を鑑みて、判定用閾値を、誤判定が生じにくい値に設定する必要がある。
【0069】
対して、本実施形態の構成によれば、車室内強度と車室外強度の比較によって携帯端末90が車室内に存在するか否かを判定する。つまり、判定用閾値を設定しなくとも良い。そのため、判定用閾値の設計する際の困難さが生じない。
【0070】
また、本実施形態では、車室外通信機12は窓枠付近、すなわち、車室外から車室内への電波の通り道沿いに配置されているため、車室外に存在する携帯端末90からの信号が車室内通信機13で受信される場合には、車室外通信機12でも受信される可能性が高い。加えて、車室外通信機12のほうが車室内通信機13よりも携帯端末90に近いため、車室外強度のほうが車室内強度よりも高くなりやすい。
【0071】
なお、車室外に存在する携帯端末90からの信号が車室内通信機13で受信される場合とは、図11に示すように携帯端末90が車室外の窓部22付近に存在する場合である。具体的には、例えば衣服の胸ポケットに携帯端末90を収容しているユーザがドアの近傍に立っている場合である。つまり、ユーザが、携帯端末90を衣服の胸ポケットに収容している状態でドアハンドルに手をかける際には、車室外に存在する携帯端末90からの信号が車室内通信機13で受信されるやすい。
【0072】
しかしながら、上述の通り、車室外通信機12のほうが車室内通信機13よりも携帯端末90に近いため、車室外に存在する携帯端末90からの信号が車室内通信機13で受信される場合であっても、車室外強度のほうが車室内強度よりも高くなる。つまり、携帯端末90が車室外に存在するにも関わらずに車室内に存在すると誤判定の恐れを低減できる。
【0073】
なお、図12に示すようにユーザが窓部22の下端部よりも下方に携帯端末90が位置する所持態様で携帯端末90を所持している場合には、車室内通信機13の見通し外に携帯端末90が存在するため、車室内通信機13は携帯端末90からの信号を直接的には受信できない。携帯端末90が車室外の窓部22の下端部よりも下方に存在する場合において、車室内通信機13が受信する携帯端末90からの信号とは、ルーフ部23の車室内側の面などで反射された信号(以降、反射波)である。
【0074】
これに対して、車室外通信機12は、携帯端末90が車室外の窓部22の下端部よりも下方に存在する場合であっても、携帯端末90からの無線信号を直接的に受信可能である。なお、携帯端末90からの無線信号を直接的に受信する態様には、人体や衣服を透過して受信する態様も含まれる。当然、他の物体で反射されずに直接的に伝搬してきた信号(以降、直接波)の受信強度のほうが、他の物体で反射された信号(つまり反射波)の受信強度よりも大きくなることが期待される。また、車室外通信機12は窓枠付近、すなわち、車室外から車室内への電波の通り道沿いに配置されているため、車室外に存在する携帯端末90からの信号が車室内通信機13で受信される場合には、車室外通信機12でも受信される可能性が高い。
【0075】
よって、図12に示すようにユーザが窓部22の下端部よりも下方に携帯端末90が位置する所持態様で携帯端末90を所持している場合であっても、携帯端末90が車室外に存在するにも関わらずに車室内に存在すると誤判定の恐れを低減できる。なお、携帯端末90が窓部22の下端部よりも下方に位置する場合とは、例えばユーザが携帯端末90を手提げ鞄や、ズボンのポケットに収容している場合である。
【0076】
ところで、車室外強度と車室内強度の比較によって携帯端末90の位置を判定するための他の構成(以降、第2比較構成)としては、図13に示すように、ドアハンドルの内部に車室外通信機12を配置した構成が考えられる。
【0077】
しかしながら、一般的に近距離通信で使用される電波は2.4GHzなどの高周波信号であって、300kHz以下の低周波数(いわゆるLF:Low Frequency)帯の電波よりも直進性が強い。つまり、回り込み(換言すれば回折)による伝搬が生じにくい。
また、車室外通信機12は、指向性が車両水平面と略平行となる姿勢で配置されることが好ましい。そのような取り付け姿勢によれば、通信エリアを車両周辺に広く形成でき、ユーザが車両に接近している過程における携帯端末90と近距離通信を実施可能となるためである。なお、指向性が車両水平面と略平行となる配置態様には、無指向性アンテナにおいて無指向性を提供する平面が車両水平面と平行となるように配置されている態様も含まれる。ただし、そのような取り付け姿勢においては車室外通信機12の上方向の感度は劣化してしまう。
さらに、ドアハンドルの内部に車室外通信機12を配置した態様では、携帯端末90が車室外の窓部22付近に存在する場合において、携帯端末90から車室外通信機12までの距離が、本実施形態の構成に比べて長くなり、受信強度が小さい値となりやすい。
【0078】
以上の事情を鑑みると、第2比較構成では、窓部付近が車室外通信機12にとって見通し外領域となりやすい。また、そのような傾向は、図14に示すように、窓部22の下側端部221とドアハンドルとの間に凸部211が形成されたボディ形状となっている場合には顕著となる。凸部211は、ボディ21において車室外通信機12よりも車幅方向外側(換言すれば車室外側)に飛び出た部分である。
【0079】
その結果、携帯端末90が車室外の窓部22付近に存在する場合、第2比較構成では車室外強度が相対的に低くなりやすい。故に、携帯端末90が車室外の窓部22付近に存在する場合、車室外強度と車室内強度の大小関係が逆転する可能性が相対的に高くなり、携帯端末90が車室外に存在するにも関わらずに車室内に存在すると誤判定の恐れを高くなる。
【0080】
対して本実施形態では、車室外通信機12は窓枠付近、すなわち、車室外から車室内への電波の通り道沿いに配置されているため、車室外強度が車室内強度よりも低くなる可能性は小さく、第2比較構成よりも携帯端末90の位置を誤判定する恐れを低減できる。また、第2比較構成では車室外通信機12にとっての見通し内領域はボディ形状の影響を受けすい一方、本実施形態では第2比較構成ほど車両Hvのボディ形状の影響を受けない。故に、本実施形態は種々の車両モデルへの適用に好適であるといえる。
【0081】
また、ドアハンドルに車室外通信機12を設けた構成では、ユーザがドアハンドルに手をかけている場合、携帯端末90からの信号がユーザの手によって減衰されて、車室外強度が一層劣化してしまう恐れがある。対して本実施形態の構成では、ユーザがドアハンドルに手をかけている場合であっても、ユーザの手によって携帯端末90からの信号が減衰される恐れはない。よって、本実施形態は、タッチセンサ14によってユーザがドアハンドルを触れていることを検出したことをトリガとして携帯端末90の位置を推定する構成においても好適であると言える。
【0082】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
【0083】
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
【0084】
[変形例1]
上述した実施形態では、Bピラー24Bの中段部に車室外通信機12を配置した態様を開示したがこれに限らない。車室外通信機12の搭載位置は、Bピラー24Bの下段部や上段部であってもよい。Bピラー24Bの下段部とは、Bピラー24Bを車両高さ方向に3等分してなる3つの区画のうち、下側に位置する部分に相当する。Bピラー24Bの上段部とは、Bピラー24Bを車両高さ方向に3等分してなる3つの区画のうち、上側に位置する部分に相当する。
【0085】
また、車室外通信機12の搭載位置は、図15に示すようにAピラー24Aであってもよい。Aピラー24Aにおける車室外通信機12の具体的な設置位置は中段部が好ましいが、下段部や上段部であってもよい。さらに、車室外通信機12の搭載位置はCピラー24Cであってもよい。その他、車室外通信機12は、Aピラー24AとBピラー24B、Aピラー24AとCピラー24Cなど、複数のピラーに配置されていても良い。種々のピラーは、車両Hvの外面部において車両Hvの窓部22の近傍と見なすことができる所定領域に存在する部材に該当する。
【0086】
[変形例2]
車室外通信機12の搭載位置は、図16及び図17に示すように、ルーフ部23の端部のうち、車両左側の端部である左側ルーフ端部231、及び、車両右側の端部である右側ルーフ端部232のそれぞれに配置されていても良い。
【0087】
左側ルーフ端部231は、ルーフ部23と車両Hvの左側の側面部との境界に相当する領域である。左側ルーフ端部231は、ルーフ部23の左側の側面部分に相当する。また、左側ルーフ端部231は、別の観点によれば、車両Hvの左側に設けられているドアの上端部が接する部分に相当する。さらに、左側ルーフ端部231は、車両Hvの左側の側面部において、車両Hvの左側に設けられている窓部22の上側に位置する部分に相当する。
【0088】
右側ルーフ端部232は、ルーフ部23と車両Hvの右側の側面部との境界に相当する領域である。右側ルーフ端部232は、ルーフ部23の右側の側面部分に相当する。また、右側ルーフ端部232は、別の観点によれば車両Hvの右側に設けられているドアの上端部が接する部分に相当する。さらに、右側ルーフ端部232は、車両Hvの右側の側面部において、車両Hvの右側に設けられている窓部22の上側に位置する部分に相当する。
【0089】
つまり、車室外通信機12は、ルーフ部23と側面部との境界部分に相当する領域に配置されていてもよい。そのような態様において、車室外アンテナ121として無指向性アンテナを採用する場合には、車室外通信機12は、ルーフ部23と側面部との境界部分に相当する領域のうち、金属部材が配置されている部分の車室外側に配置されることが好ましい。また、上記の位置に車室外通信機12を配置する場合には、指向性の中心が車両水平面よりも数°~30°程度、下方を向く姿勢で取り付けられることが好ましい。
【0090】
以上の構成によっても上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、左側ルーフ端部231や右側ルーフ端部232は、車両Hvの外面部において、窓部22の上側端部からの距離が、窓部22の近傍と見なすことができる予め設定されている距離以内となる部分に相当する。窓部22の近傍と見なすことができる距離は、適宜設計されればよく、例えば10cmなどに設定される。また、窓部22の近傍と見なすことができる距離は、例えばシステム使用電波の波長の1倍程度に設定しても良い。仮にシステム使用電波として2.4GHz帯の電波を採用する場合には、2.4GHzの電波の波長は約12.5cmであるため、窓部22の近傍と見なすことができる距離は12.5cmに設定されればよい。もちろん、窓部22の近傍と見なすことができる距離は5cmなどであってもよい。
【0091】
[変形例3]
上述した実施形や種々の変形例では、窓部22からの距離が、窓部22の近傍と見なすことができる所定距離以内となる領域(以降、窓部近傍領域)のなかでも、更に、金属部材が配置されている部分の車室外側に車室外通信機12を配置されるものとしたが、これに限らない。
【0092】
車室外アンテナ121が指向性アンテナである場合には、窓部近傍領域において、図18に示すように車室外アンテナ121の指向性の中心が車室外に向く姿勢で配置されればよく、車室外通信機12が取り付けられる部分の素材は金属でなくとも良い。このような構成によれば、Cピラー24Cが樹脂製であっても車室外通信機12の取り付け先として採用することができる。図18はCピラー24Cに対する車室外通信機12の取り付け姿勢及び指向性を概念的に示す図であって、Cピラー24C等を車両Hvの上方から見た時の図である。図18中の一点鎖線の楕円が車室外通信機12の指向性を表しており、一点鎖線の矢印は指向性の中心を示している。窓部近傍領域は、車両Hvの外面部において窓部22の近傍と見なすことができる所定領域に相当する。
【0093】
[変形例4]
以上、車室外通信機12をピラーなどの、サイドウインドウ付近に設ける態様を開示したが、これに限らない。フロントウインドウ付近に設けても良いし、リアウインドウ付近に設けても良い。
【符号の説明】
【0094】
10 車載システム、11 認証ECU、12・12A・12B 車室外通信機、121
車室外通信機、122 送受信部、123 強度検出部、13 車室内通信機、131
車室内アンテナ、132 送受信部、133 強度検出部、21 ボディ、22 窓部、23 ルーフ部、24A Aピラー、24B Bピラー、24C Cピラー、90 携帯端末、211 凸部、221 下側端部、231 左側ルーフ端部、232 右側ルーフ端部、F5 位置判定部、F6 車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することによって前記携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムであって、
車両の車室内に設置された車室内アンテナを介して、前記携帯端末から送信される前記無線信号を受信する車室内受信部(132)と、
前記車室内受信部が受信した前記無線信号の受信強度を車室内強度として検出する車室内強度検出部(133)と、
車室外から到来する前記無線信号を受信するための車室外アンテナ(121)と、
前記車室外アンテナを介して前記携帯端末から送信される前記無線信号を受信する車室外受信部(122)と、
前記車室外受信部が受信した前記無線信号の受信強度を車室外強度として検出する車室外強度検出部(123)と、
前記車室内強度検出部が検出した前記車室内強度及び前記車室外強度検出部が検出した前記車室外強度に基づいて、前記携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する位置判定部(F5)と、を備え、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面において窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室内において前記窓部の下端部よりも下側に設けられている車両用位置判定システム。
【請求項2】
請求項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面において前記窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室内において前記窓部の下端部から前記電波の波長の1倍以上、下側となる位置に設けられている車両用位置判定システム。
【請求項3】
請求項又はに記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、運転席側のBピラー又はCピラーの外側面において、前記窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、運転席用のドアの車室内側の側面に配置されている車両用位置判定システム。
【請求項4】
請求項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室外アンテナが配置された前記ピラーの車室内側の面には設けられておらず、センターコンソール、インストゥルメントパネル、運転席の足元、及び後部座席のシート内部の何れかに配置されている車両用位置判定システム。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、前記車両のピラーの外側面に配置されているとともに、
前記車室内アンテナは、車室外アンテナが配置されたピラーの車室内側の面には設けられていない、車両用位置判定システム。
【請求項6】
請求項1からの何れか1項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記車室外アンテナは、指向性を有するアンテナであって、指向性の中心が車室外に向けられた姿勢で配置されている車両用位置判定システム。
【請求項7】
請求項1からの何れか1項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記位置判定部は、前記車室外強度検出部によって検出された前記車室外強度が、前記車室内強度検出部によって検出された前記車室内強度よりも高い場合には前記携帯端末は車室外に存在すると判定するように構成されている車両用位置判定システム。
【請求項8】
請求項1からの何れか1項に記載の車両用位置判定システムであって、
前記位置判定部の判定結果に基づいて、前記車両が備えるドアの開錠、前記ドアの施錠、及び前記車両の駆動源の始動の少なくとも何れか1つを実施する車両制御部(F6)を備える車両用位置判定システム。
【請求項9】
ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号の受信状況に基づいて車両に対する前記携帯端末の位置判定処理を行う車載電子制御装置と接続されて使用される車両通信システムであって、
前記携帯端末からの前記無線信号を受信するための通信機として、
前記車両のピラーの外側面において窓部の下端部よりも上側となる位置に配置された前記通信機である車室外通信機(12)と、
室内において前記窓部の下端部よりも下側に設けられた前記通信機である車室内通信機(13)と、を少なくとも1つずつ含み、
前記車室外通信機と前記車室内通信機はそれぞれ、
前記無線信号を受信するためのアンテナ及び前記無線信号の受信強度を検出する強度検出部を含み、前記車載電子制御装置からの指示に基づき、検出されている前記受信強度を示すデータを前記車載電子制御装置に向けて出力するように構成されている車両用通信システム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、車両に搭載されて使用されるシステムであって、ユーザによって携帯される携帯端末から所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することで当該携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システム、及びそれに用いられる車両用通信システムに関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、携帯端末の位置を誤判定する恐れを低減可能な車両用位置判定システム、車両用通信システムを提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
その目的を達成するための本開示における車両用位置判定システムは、ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号を受信することによって携帯端末の位置を推定する車両用位置判定システムであって、車両の車室内に設置された車室内アンテナを介して、携帯端末から送信される無線信号を受信する車室内受信部(132)と、車室内受信部が受信した無線信号の受信強度を車室内強度として検出する車室内強度検出部(133)と、車室外から到来する無線信号を受信するための車室外アンテナ(121)と、車室外アンテナを介して携帯端末から送信される無線信号を受信する車室外受信部(122)と、車室外受信部が受信した無線信号の受信強度を車室外強度として検出する車室外強度検出部(123)と、車室内強度検出部が検出した車室内強度及び車室外強度検出部が検出した車室外強度に基づいて、携帯端末が車室外に存在するか否かを判定する位置判定部(F5)と、を備え、車室外アンテナは、車両のピラーの外側面において窓部の下端部よりも上側となる位置に配置されているとともに、車室内アンテナは、車室内において窓部の下端部よりも下側に設けられている。
また、上記目的を達成するための車両用通信システムは、ユーザによって携帯される携帯端末から1GHz以上の所定の周波数帯の電波を用いて送信される無線信号の受信状況に基づいて位置判定を行う車載電子制御装置と接続されて使用される通信システムであって、携帯端末からの無線信号を受信するための通信機として、車両のピラーの外側面において窓部の下端部よりも上側となる位置に配置された通信機である車室外通信機(12)と、室内において窓部の下端部よりも下側に設けられた通信機である車室内通信機(13)と、を少なくとも1つずつ含み、車室外通信機と車室内通信機はそれぞれ、無線信号を受信するためのアンテナ及び無線信号の受信強度を検出する強度検出部(133)を含み、車載電子制御装置からの指示に基づき、検出されている受信強度を示すデータを車載電子制御装置に向けて出力するように構成されている。