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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082565
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】がんを処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20220526BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220526BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220526BHJP
   C07D 401/12 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K39/395 N
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/02
A61K47/20
A61K9/48
G01N33/574 Z
C07D401/12
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022034549
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2018538604の分割
【原出願日】2017-01-23
(31)【優先権主張番号】62/281,962
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518208048
【氏名又は名称】エックス4 ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アルバイト ロバート ディー
(72)【発明者】
【氏名】ラガン ポーラ マリー
(57)【要約】
【課題】転移性黒色腫および非小細胞肺がん等、進行型のがんを有する患者を処置する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】X4P-001が、単独療法として、またはペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される方法に関し、本方法は、比較的少ない毒性による疾患の退縮を含む、驚くべき結果を実証する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置を必要とする患者におけるがんを処置するための方法であって、前記患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【請求項2】
がんが、転移性黒色腫または転移性非小細胞肺がんからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が、免疫チェックポイント阻害剤で以前に処置されたことがある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
免疫チェックポイント阻害剤が、ペンブロリズマブである、請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
患者が、CD8+T細胞密度の増加に有効な量のX4P-001またはその薬学的に許容される塩で処置され、次いで、免疫チェックポイント阻害剤による追加的な処置を受ける、請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
患者から生体試料を得て、疾患関連のバイオマーカーの量を測定するステップをさらに含む、請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
生体試料が、血液試料である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
疾患関連のバイオマーカーが、循環CD8+T細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
X4P-001またはその薬学的に許容される塩が、1日に2回、経口投与される、請求項1から6までのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
免疫チェックポイント阻害剤による処置に対する応答性を、前記処置を受ける患者において増加させるための方法であって、前記患者に、CD8+T細胞密度の増加に有効な量のX4P-001またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む方法。
【請求項11】
(a)X4P-001またはその薬学的に許容される塩 - 組成物の約30~40質量%;
(b)微結晶性セルロース - 組成物の約20~25質量%;
(c)リン酸水素カルシウム二水和物 - 組成物の約30~35質量%;
(d)クロスカルメロースナトリウム - 組成物の約5~10質量%;
(e)ステアリルフマル酸ナトリウム - 組成物の約0.5~2質量%;
(f)コロイド状二酸化ケイ素 - 組成物の約0.1~1.0質量%;および
(g)ラウリル硫酸ナトリウム - 組成物の約0.1~1.0質量%
を含む組成物を含む単位剤形。
【請求項12】
カプセル剤の形態の、請求項11に記載の単位剤形。
【請求項13】
カプセル剤が、約100mgのX4P-001またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項12に記載の単位剤形。
【請求項14】
それを必要とする患者における転移性黒色腫を処置するための方法であって、患者に、請求項11に記載の単位剤形を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【請求項15】
免疫チェックポイント阻害剤が、ペンブロリズマブである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
転移性黒色腫が、切除可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者が、転移性黒色腫の一部または全ての除去のための外科手術を受けたことがある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
転移性黒色腫が、切除不能である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを処置するための方法、特に、切除可能なおよび切除不能な黒色腫等、進行型黒色腫を有する患者の処置のための方法に関する。
関連出願の相互参照
本願は、その全体を参照により本明細書に組み込む、2016年1月22日に出願された米国特許仮出願第USSN62/281,962号に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
皮膚悪性黒色腫は、米国における男性に5番目に多いがん、および女性に6番目に多いがんであり、2015年には推定73,870例の新症例および9,940例の死亡が予想される。早期に発見された場合、黒色腫は、高度に治癒可能であり、10年全生存率は、原発性黒色腫の完全外科的切除後に、ステージI黒色腫では95%、ステージII黒色腫では45~77%に近づく。しかし、外科的処置は、全ての進行型黒色腫患者に実行可能ではない場合がある。切除不能なまたは転移性の疾患を有する患者は、免疫療法(例えば、抗PD-1および抗CTLA-4抗体等、チェックポイント阻害剤(CPI))および標的療法(例えば、公知の遺伝的突然変異を有する患者のためのBRAFおよび/またはMEK阻害剤)を含む全身性処置を受ける。チェックポイント阻害剤免疫療法および標的療法の両方が、無増悪生存期間および全生存期間を延長する。
さらに、原発性黒色腫の完全切除を受けた患者の30%は、疾患の局所的、移行中(in-transit)および/または結節性再発を発症するであろう。加えて、黒色腫患者の10%は、結節性転移を呈する。このようなステージIII患者の間で、完全外科的除去は、切除可能な疾患の患者のための主な処置である;しかし、外科手術後の再発のリスクは、非常に高い。高用量インターフェロン-αおよび抗CTLA-4抗体イピリムマブ等、免疫調節薬による補助療法は、切除可能なステージIIIの黒色腫を有する患者における無再発生存期間を改善することを示した。全生存期間におけるこれらの補助処置の影響は、確立されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
術前補助(neoadjuvant)化学および免疫療法の利益が、いくつかの手術可能がんにおいて実証された。補助療法と比較して、局所的および局部的に進行型のがんを有する患者における術前補助療法は、いくつかの潜在的利益を有する:
・ 原発性および転移性腫瘍のサイズ低下は、断端陰性切除を達成する確率を増加させる。
・ 血管およびリンパ管を無傷に保ちつつ、潜在的に有効な全身療法への腫瘍曝露が増加される。
・ 術前補助療法に続く腫瘍組織の術前および術中試料の収集は、腫瘍細胞、腫瘍微小環境(TME)および免疫系における治療法の効果のリアルタイムのin vivo評価を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
CXCR4(C-X-Cケモカイン受容体4型)は、正常幹細胞、造血幹細胞(HSC)、成熟リンパ球および線維芽細胞を含む、広範囲の細胞型において発現されるケモカイン受容体である[1]。CXCL12(以前は、SDF-1αと称された)は、CXCR4の唯一のリガンドである。CXCL12/CXCR4軸の主要生理的機能は、胚発生中(CXCR4-/-ノックアウト胚は、子宮内で死亡する)ならびにその後の傷害および炎症に対する応答の両方における幹細胞の遊走を含む。増加しつつある証拠は、悪性病変におけるCXCR4/CXCL12の複数の潜在的役割を示す。一方または両方の因子の直接的発現が、いくつかの腫瘍型において観察された。CXCL12は、がん関連線維芽細胞(CAF)によって発現され、多くの場合、TMEにおいて高レベルで存在する。乳房、卵巣、腎臓、肺および黒色腫を含む広範囲の腫瘍型の臨床試験において、CXCR4/CXCL12の発現は、予後不良に、ならびにCXCL12発現の部位であるリンパ節、肺、肝臓および脳への転移リスク増加に関連付けられた[2]。CXCR4は、黒色腫細胞、特に、黒色腫幹細胞を表すと考えられるCD133+集団において頻繁に発現され[2、3]、in vitro実験およびマウスモデルは、CXCL12が、これらの細胞に対して走化性であることを実証した[4]。
【0005】
ペンブロリズマブは、PD-1と、そのリガンドのPD-L1およびPD-L2との間の相互作用を遮断するヒト化IgG4カッパーモノクローナル抗体である[11]。これは、チェックポイントモジュレーター(CPM)と称される新興クラスの免疫療法剤に属する。これらの薬剤は、複数の種類の悪性病変において、感染および他の状況における免疫系の過剰活性化を防止するための「チェックポイント」として正常には作用する対抗調節(counter-regulatory)機構を活用することにより、腫瘍が、宿主抗腫瘍免疫応答を抑制するという観察に基づき開発された。黒色腫の場合、PD-L1は、TME中の細胞によって発現され、CD8+エフェクターT細胞における膜会合受容体であるPD-1に係合し、細胞傷害性T細胞の殺傷能力を低下させる阻害性シグナル伝達を誘発する。
【0006】
ペンブロリズマブは現在、切除不能なまたは転移性黒色腫の処置のためにFDAに承認されている。第3相治験において、客観的奏効率は、イピリムマブの12%と比較して、33%であった(P<0.001)[11]。以前の試験における処置前および処置中の腫瘍試料の解析は、臨床応答が、腫瘍実質(中央)におけるCD8+T細胞の密度の増加に関連した一方、疾患進行が、これらの細胞の持続的な低レベルに関連したことを実証した[12]。膵臓腺癌の自然発症(autochthonous)マウスモデルにおいて、抗PD-L1の投与にもかかわらず起こる持続的腫瘍成長は同様に、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞が、末梢循環におけるその存在にもかかわらず、TMEに進入できないことに関連付けられた[7]。この免疫抑制された表現型は、CAFによるCXCL12産生に関連付けられた。さらに、CXCR4アンタゴニスト(AMD3100)の投与は、がん細胞の間での急速なT細胞蓄積を誘導し、抗PD-L1と組み合わせると、腫瘍成長を相乗的に減少させた。
【0007】
複数の観察は、CXCL12/CXCR4軸を、血管新生阻害剤に対する腫瘍応答性の欠如(または損失)(「血管新生エスケープ」とも称される)に対する寄与に関係づける。動物のがんモデルにおいて、CXCR4機能への干渉は、腫瘍微小環境(TME)を破壊し、腫瘍血行再建の排除[19、20]およびTreg細胞に対するCD8+T細胞の比の増加[19、21、22]を含む複数の機構による免疫攻撃に腫瘍を晒すことが実証された。これらの効果は、異種移植、同系およびトランスジェニック、がんモデルにおける有意に減少された腫瘍負荷および増加された全生存期間をもたらす[19、21、20]。
【0008】
AMD11070と以前に命名されたX4P-001は、強力な、経口で生体利用可能なCXCR4アンタゴニストであり[23]、これは、固形および液体腫瘍モデルにおける活性を実証し[24および未発表データ]、以前に、総計71名の健康なボランティア[23、25、26]およびHIV感染した対象[27、28]が関与した(AMD070およびAMD11070の名称において)第1および2a相治験が為された。これらの試験は、最大400mgのBIDを3.5日間(健康なボランティア)および200mgのBIDを8~10日間(健康なボランティアおよびHIV患者)の経口投与の忍容性が良く、有害事象または臨床的に有意な実験室変化のパターンが見られなかったことを実証した。これらの試験は、循環白血球細胞(WBC)における用量および濃度関連の変化;ならびに高い組織浸透率を示唆する高い分布容積(VL)による、薬力学的活性も実証した。
【0009】
プレリキサホル(AMD3100と以前に命名され、現在、Mozobil(登録商標)として販売)は、現在FDAに承認されている唯一のCXCR4アンタゴニストである。プレリキサホルは、皮下注射によって投与され、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)を有する患者における収集およびその後の自家移植のため、末梢血に造血幹細胞(HSC)を動員するための顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)と組み合わせた使用のために承認される。
X4P-001およびプレリキサホルの両方が、黒色腫、腎細胞癌および卵巣がんのマウスモデルにおいて試験され、減少した転移および増加した全生存期間を含む、有意な抗腫瘍活性を実証した[6]。処置効果は、TMEにおける骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の存在減少と、腫瘍特異的CD-8+エフェクター細胞の存在増加に関連付けられた[7、8]。
いずれか特定の理論に制約されることは望まないが、X4P-001の投与は、黒色腫の腫瘍細胞の間でCD8+T細胞の密度を増加させ、X4P-001がペンブロリズマブと組み合わせて与えられた場合、この効果は持続されると考えられる。X4P-001は、身体において忍容性が良く、頑強な抗腫瘍免疫応答を開始する身体の能力を増加し得るため、複数の腫瘍型におけるチェックポイントモジュレーターと組み合わせたX4P-001の投与は、客観的奏効率、耐久性のある長期応答の頻度および全生存期間を実質的に増加させることができる。
【0010】
CXCR4標的化薬物は、骨髄および他の正常増殖細胞集団における細胞周期停止を誘導するとは予想されないため、このような結果が、比較的少ない毒性で達成されるとさらに考えられる。したがって、本発明は、CXCR4阻害剤AMD11070(X4P-001)の低毒性、ならびにMDSC輸送、分化およびRCCにおける腫瘍細胞遺伝子発現における効果を利用して、処置成績における有意な利点を提供する。
現在、X4P-001によるCXCR4拮抗作用が、複数の機序によって進行型黒色腫および他のがんを有する患者における有意な処置利益をもたらし得る、有意な効果をもたらすことが判明した。ある特定の実施形態において、X4P-001の投与は、CD8+T細胞の密度を増加させ、これにより、抗腫瘍免疫攻撃の増加をもたらす。ある特定の実施形態において、X4P-001の投与はその上、新血管新生および腫瘍血管供給の減少を持続し;CXCR4およびその唯一のリガンド、CXCL12の両方の腫瘍による発現増加の自己分泌効果に干渉し、これにより、がん細胞転移を潜在的に低下させる。
【0011】
本発明において、転移性黒色腫等の黒色腫または転移性非小細胞肺がん等の肺がんを含む、進行型のがんを有する患者は、単一薬剤(単独療法)として、またはペンブロリズマブ等の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせてのいずれかで、X4P-001により処置される。ペンブロリズマブは、プログラム細胞死1受容体(PD-1)に結合し、受容体が阻害性リガンドPDL-1に結合するのを防止し、免疫チェックポイント阻害剤を吹き替えた(dubbed)宿主抗腫瘍免疫応答を抑制する腫瘍の能力を無効化する、PD-1に対する抗体である。
いずれか特定の理論に制約されることは望まないが、2種の医薬を組み合わせることにより、患者の処置成績が、頑強な抗腫瘍免疫応答を開始する身体の能力を増加させることによりさらに改善され得ると考えられる。
【0012】
一部の実施形態において、X4P-001またはその薬学的に許容される塩は、絶食状態で患者に投与される。
一部の実施形態において、本発明は、固形腫瘍、特に黒色腫として現れるがんを有する患者を処置するための方法を提供する。一部の実施形態において、患者は、切除可能な黒色腫を有し、これは、患者の黒色腫が、外科手術によって除去されることに対して感受性と思われることを意味する。他の実施形態において、患者は、切除不能な黒色腫を有し、これは、外科手術によって除去されることに対して感受性でないと思われてきたことを意味する。
一部の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者における黒色腫または非小細胞肺がん等、進行型がんを処置するための方法であって、X4P-001、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは組成物を投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、患者は、免疫チェックポイント阻害剤を以前に投与された。一部の実施形態において、患者は、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck)、イピリムマブ(ipilumumab)(Yervoy(登録商標)、Bristol-Myers Squibb);ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)およびアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech)からなる群から選択される免疫チェックポイント阻害剤を以前に投与された。
【0013】
ある特定の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法であって、前記患者に、X4P-001を免疫療法薬、特に、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態において、X4P-001およびチェックポイント阻害剤は、同時にまたは逐次に投与される。ある特定の実施形態において、X4P-001は、免疫チェックポイント阻害剤による初回投薬に先立ち投与される。ある特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、X4P-001による初回投薬に先立ち投与される。
【0014】
ある特定の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1アンタゴニスト、PD-L1アンタゴニストおよびCTLA-4アンタゴニストから選択される。一部の実施形態において、X4P-001は、イピリムマブ(Yervoy(登録商標)、Bristol-Myers Squibb);アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech);ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)およびペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck)からなる群から選択される免疫療法薬と組み合わせて投与される。本発明の特定の実施形態において、X4P-001は、MK-3475として以前に公知のペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck)と組み合わせて投与される。
【0015】
開発中の他の免疫チェックポイント阻害剤が、X4P-001と組み合わせた使用に適する場合もある。そのようなものとして、非小細胞肺がんおよび進行型尿路上皮癌等の進行型膀胱がんのために臨床治験中の、ならびに外科手術後にがんが復帰するのを防止するための補助療法としての、PD-L1に対するIgG1アイソタイプの完全にヒト化された操作抗体である、MPDL3280Aとしても公知のアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech/Roche);転移性乳がん、多発性骨髄腫、食道がん、骨髄異形成症候群、小細胞肺がん、頭頸部がん、腎がん、神経膠芽腫、リンパ腫および固形悪性病変のために臨床治験中の、MEDI4736としても公知のデュルバルマブ(Astra-Zeneca);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および多発性骨髄腫のために臨床治験中の、PD-1に結合する抗体である、CT-011としても公知のピディリズマブ(CureTech);非小細胞肺がん、メルケル細胞癌、中皮腫、固形腫瘍、腎がん、卵巣がん、膀胱がん、頭頸部がんおよび胃がんのために臨床治験中の、完全にヒトIgG1抗PD-L1抗体である、MSB0010718C)としても公知のアベルマブ(Pfizer/Merck KGaA);ならびに非小細胞肺がん、黒色腫、トリプルネガティブ乳がんおよび進行型または転移性固形腫瘍のために臨床治験中の、PD-1に結合する阻害性抗体である、PDR001(Novartis)が挙げられる。
【0016】
ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標)、Merck)は、プログラム細胞死(PD-1)受容体を標的とするヒト化抗体である。ペンブロリズマブの構造および他の特性は、その開示をこれにより本明細書に組み込む、2016年1月18日にアクセスされた、http://www.drugbank.ca/drugs/DB09037に明示されている。ペンブロリズマブは、切除不能な黒色腫および転移性黒色腫、ならびにその腫瘍がPD-1を発現し、他の化学療法剤による処置が失敗した患者における転移性非小細胞肺がんの処置における使用のために承認されている。その上、ペンブロリズマブは、固形腫瘍、胸部腫瘍、胸腺上皮腫瘍、胸腺癌、白血病、卵巣がん、食道がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、唾液腺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、尿路上皮がん、子宮内膜がん、膀胱がん、子宮頸部がん、ホルモン抵抗性前立腺がん、精巣がん、トリプルネガティブ乳がん、腎細胞および腎臓がん、膵臓腺癌および膵がん、胃腺癌、胃腸および胃がん;脳腫瘍、悪性グリオーマ、神経膠芽腫、ニューロブラストーマ、リンパ腫、肉腫、中皮腫、呼吸器乳頭腫、骨髄異形成症候群ならびに多発性骨髄腫を含む、他の腫瘍学適応症における可能な処置として検査または言及された。
【0017】
切除不能なまたは転移性の黒色腫の第3相治験において、客観的奏効率は、イピリムマブの12%と比較して、33%であった(P<0.001)[11]。以前の試験における処置前および処置中の腫瘍試料の解析は、臨床応答が、腫瘍実質(中央)におけるCD8+T細胞の密度の増加に関連した一方、疾患進行が、これらの細胞の持続的な低レベルに関連したことを実証した[12]。膵臓腺癌の自然発症マウスモデルにおいて、抗PD-L1の投与にもかかわらず起こる持続的腫瘍成長は同様に、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞が、末梢循環におけるその存在にもかかわらず、TMEに進入できないことに関連付けられた[7]。この免疫抑制された表現型は、CAFによるCXCL12産生に関連付けられた。黒色腫の腫瘍細胞の間でのCD8+T細胞の密度を増加させることにより、複数の腫瘍型におけるペンブロリズマブまたは他のチェックポイントモジュレーターと組み合わせたX4P-001の投与は、客観的奏効率、耐久性のある長期応答の頻度および全生存期間を実質的に増加させることができる。
【0018】
切除不能なまたは転移性黒色腫に関するその現在の調剤ラベル(prescribed labeling)において、ペンブロリズマブに推奨される投与過程は、3週間毎の30分間にわたる静脈内注入としての2mg/kgである。臨床医の裁量の下、個々の忍容性に応じて、ペンブロリズマブの処方される用量は、21日毎に10mg/kgまたは14日毎に10mg/kgまで増加され得る。臨床医の裁量の下、処方情報が提供される警告と共に、ペンブロリズマブの投与が中断されてよいか、または有意な有害効果の場合は用量が低下される。
【0019】
一部の実施形態において、本発明は、患者における転移性黒色腫を処置するための方法であって、患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、黒色腫は、切除可能かつ転移性である。他の実施形態において、黒色腫は、切除不能かつ転移性である。一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブである。
一部の実施形態において、本発明は、患者における切除可能な転移性黒色腫を処置するための方法であって、患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法を提供する。本発明に従った処置の完了後に、切除外科手術を行うことができる。他の実施形態において、本発明は、患者における切除不能な転移性黒色腫を処置するための方法であって、患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブである。本発明に従った処置の完了後に、患者は、処置臨床医の裁量に従って、ペンブロリズマブによる標準治療(SOC)の治療法または別の治療法を受け続けることができ、このような処置は、X4P-001によるさらなる処置を含むことができる。
【0020】
一部の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者における難治性がんを処置するための方法であって、前記患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含む方法を提供する。
一部の実施形態において、難治性がんは、PD-L1を発現し、白金含有化学療法の後に疾患進行を示す、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)である。一部の実施形態において、難治性がんは、転移性NSCLCであり、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブである。
一部の実施形態において、提供される方法は、絶食状態の患者にX4P-001またはその薬学的に許容される塩を投与するステップと、絶食または摂食状態のいずれかの患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与するステップとを含む。
【0021】
ある特定の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法であって、前記患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含み、患者から生体試料を得て、疾患関連のバイオマーカーの量を測定するステップをさらに含む方法を提供する。一部の実施形態において、生体試料は、血液試料である。ある特定の実施形態において、疾患関連のバイオマーカーは、循環CD8+細胞、ならびに/またはPD-1および/もしくはPDL-1の血漿レベルである。
ある特定の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者における黒色腫または非小細胞肺がん等、進行型がんを処置するための方法であって、前記患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩をペンブロリズマブと組み合わせて投与するステップを含み、患者から生体試料を得て、疾患関連のバイオマーカーの量を測定するステップをさらに含む方法を提供する。一部の実施形態において、生体試料は、血液試料である。
ある特定の実施形態において、疾患関連のバイオマーカーは、循環CD8+細胞、ならびに/またはPD-1および/もしくはPDL-1の血漿レベルである。
【0022】
本発明の他の実施形態において、X4P-001またはその薬学的に許容される塩は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される。免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1またはCTLA-4に対する抗体となることができる。ある特定の実施形態において、免疫チェックポイントアンタゴニストは、ペンブロリズマブ、ニボルマブおよびイピリムマブからなる群から選択される。
一部の実施形態において、本発明は、それを必要とする患者におけるがんを処置する方法であって、前記患者に、X4P-001またはその薬学的に許容される塩を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与するステップを含み、X4P-001またはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント阻害剤が、相乗的に作用する、方法を提供する。当業者であれば、活性薬剤(X4P-001および免疫チェックポイント阻害剤等)の組合せが相加的を超える効果を生じる場合、活性薬剤が、相乗的に作用することを認めるであろう。一部の実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブである。
【0023】
投薬量および製剤
X4P-001は、次の特色を有するCXCR4アンタゴニストである:分子式C21H27N5;分子量349.48amu;外観、白色から淡黄色の固体;溶解性:X4P-001は、pH範囲3.0~8.0において溶け易く(>100mg/mL)、pH9.0でやや溶けにくく(10.7mg/mL)、pH10.0で溶けにくい(2.0mg/mL)。X4P-001は、水にごく僅かにしか溶けず;融点は108.9°ΔCである。
X4P-001の化学構造を下に描写する。
【0024】
【化1】
ある特定の実施形態において、X4P-001を含有する組成物は、約200mg~約1200mgの量を毎日経口投与される。ある特定の実施形態において、投薬組成物は、およそ12時間離して分割された投薬量で1日2回与えることができる。他の実施形態において、投薬組成物は、1日1回与えることができる。X4P-001の終末相半減期は概して、約12~約24時間の間またはおよそ14.5時間であると決定された。経口投与のための投薬量は、1日に1回または2回、約100mg~約1200mgとなることができる。ある特定の実施形態において、本発明において有用なX4P-001の投薬量は、毎日、約200mg~約600mgである。他の実施形態において、本発明において有用なX4P-001の投薬量は、毎日、約400mg~約800mg、約600mg~約1000mgまたは約800mg~約1200mgに及び得る。ある特定の実施形態において、本発明は、約10mg、約20mg、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mgまたは約1600mgのX4P-001の量の投与を含む。
【0025】
一部の実施形態において、提供される方法は、患者にX4P-001を含む薬学的に許容される組成物を投与するステップを含み、この組成物は、経口投与のために製剤化されている。ある特定の実施形態において、組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態で経口投与のために製剤化されている。一部の実施形態において、X4P-001を含む組成物は、カプセル剤の形態で経口投与のために製剤化されている。
【0026】
ある特定の実施形態において、提供される方法は、患者に、100~1200mgのX4P-001活性成分と;1種または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む1個または複数のカプセル剤を投与するステップを含む。
ある特定の実施形態において、本発明は、X4P-001またはその薬学的に許容される塩、1種または複数の希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動補助剤(flow aid)および湿潤剤を含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明は、10~1200mgのX4P-001またはその薬学的に許容される塩、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム二水和物、クロスカルメロースナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム(sodium stearyl fumarate)、コロイド状二酸化ケイ素およびラウリル硫酸ナトリウムを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本発明は、10~200mgのX4P-001またはその薬学的に許容される塩、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム二水和物、クロスカルメロースナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素およびラウリル硫酸ナトリウムを含む組成物を含む単位剤形を提供する。ある特定の実施形態において、本発明は、約10mg、約20mg、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約400mg、約450mg、約500mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mgまたは約1600mgの量で存在するX4P-001またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を含む単位剤形を提供する。一部の実施形態において、提供される組成物(または単位剤形)は、1日に1回、1日に2回、1日に3回または1日に4回、患者に投与される。一部の実施形態において、提供される組成物(または単位剤形)は、1日に1回または1日に2回、患者に投与される。
【0027】
一部の実施形態において、本発明は、
(a)X4P-001またはその薬学的に許容される塩 - 組成物の約30~40質量%;
(b)微結晶性セルロース - 組成物の約20~25質量%;
(c)リン酸水素カルシウム二水和物 - 組成物の約30~35質量%;
(d)クロスカルメロースナトリウム - 組成物の約5~10質量%;
(e)ステアリルフマル酸ナトリウム - 組成物の約0.5~2質量%;
(f)コロイド状二酸化ケイ素 - 組成物の約0.1~1.0質量%;および
(g)ラウリル硫酸ナトリウム - 組成物の約0.1~1.0質量%
を含む組成物を含む単位剤形を提供する。
【0028】
一部の実施形態において、本発明は、
(a)X4P-001またはその薬学的に許容される塩 - 組成物の約37質量%;
(b)微結晶性セルロース - 組成物の約23質量%;
(c)リン酸水素カルシウム二水和物 - 組成物の約32質量%;
(d)クロスカルメロースナトリウム - 組成物の約6質量%;
(e)ステアリルフマル酸ナトリウム - 組成物の約1質量%;
(f)コロイド状二酸化ケイ素 - 組成物の約0.3質量%;および
(g)ラウリル硫酸ナトリウム - 組成物の約0.5質量%
を含む組成物を含む単位剤形を提供する。
【0029】
ペンブロリズマブは、切除不能なもしくは転移性黒色腫または転移性非小細胞肺がんの処置のためにFDAによって承認されており、一般に、3週間毎に1回、30分間にわたる静脈内注入として2mg/kgの投薬量で投与される。一般に、本発明において有用なペンブロリズマブまたは他の免疫チェックポイント阻害剤の量は、処置されている患者のサイズ、体重、年齢および状態、障害または状態の重症度、ならびに処方医師の裁量に依存するであろう。
例えば、特定の疾患または状態を処置する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましくなる場合があるため、そのうち少なくとも1種が本発明に従った化合物を含有する2種以上の医薬組成物を、組成物の同時投与に適したキットの形態で便利に組み合わせることができることは、本発明の範囲内である。よって、一部の実施形態において、本発明は、そのうち少なくとも1種が本発明の化合物を含有する2種以上の別々の医薬組成物と、容器、分割ボトルまたは分割ホイルパケット等、前記組成物を別々に保持するための手段とを含むキットを提供する。このようなキットの例は、錠剤、カプセル剤等の包装に使用される馴染みのあるブリスターパックである。
【0030】
本発明のキットは、異なる剤形、例えば、経口および非経口的な投与、異なる投薬量間隔での別々の組成物の投与、または互いに対する別々の組成物の用量設定に特に適している。コンプライアンスを支援するために、キットは典型的に、投与のための指示を含み、記憶補助装置を備えることができる。
後述の例は、本発明をより詳細に説明する。次の調製物および例は、当業者が、本発明をより明確に理解および実施することができるように示されている。しかし、本発明は、例証されている実施形態によって範囲が限定されず、例証されている実施形態は、単に本発明の単一の態様の説明として意図されており、機能的に均等な方法は、本発明の範囲内である。実際に、本明細書に記載されているものに加えて、本発明の様々な修正が、前述および添付の図面から、当業者には明らかとなるであろう。このような修正は、添付の特許請求の範囲内に収まると意図される。
本明細書に引用されている各文書の内容は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【実施例0031】
(実施例1)
CD8+T細胞の測定
本発明の有効性の評価は、一部には、CD8+T細胞集団の測定によって為すことができる。T-浸潤性リンパ球(TIL)等、CD8+T細胞の密度の増大または増加は、腫瘍認識と、最終的に腫瘍退縮の増加に役立つことができる。Dudley et al., (2010) Clin. Cancer Research, 16:6122-6131。CD8+T細胞は、Herr et al., (1996), J. Immunol. Methods 191:131-142; Herr et al., (1997) J. Immunol. Methods 203:141-152; and Scheibenbogen et al., (2000) J Immunol. Methods 244:81-89に記載されている方法を利用して検出、単離および定量化することができる。これらの刊行物のそれぞれの全開示を、これにより参照により本明細書に組み込む。
【0032】
(実施例2)
固形腫瘍を有する患者における応答を評価するための判断基準
処置に対する固形腫瘍を有する患者の応答は、その全開示をこれにより参照により本明細書に組み込む、RECIST 1.1, Eisenhauer et al., (2009) Eur. J. Cancer, 45:228-247に表記されている判断基準を使用して評価することができる。
【0033】
(実施例3)
ヒト黒色腫異種移植モデル
ヒトCD8+エフェクターT細胞の存在における本発明の効果、腫瘍微小環境におけるTregの蓄積、および最終的に転移性黒色腫における効果を評価するために、Spranger et al. (2013) Sci. Transl. Med., 5:200ra116に記載されている通り、ヒト黒色腫異種移植モデルを使用することができる。
【0034】
(実施例4)
臨床処置レジメン - 切除可能なまたは切除不能な転移性黒色腫
単独療法としての、またはペンブロリズマブ等のチェックポイント阻害剤と組み合わせた、X4P-001による処置は、3週間または9週間サイクル等、サイクルで実行することができる。ある特定の実施形態において、サイクルは、9週間の長さである。毎日200mg~1200mgの決定された用量のX4P-001は、1日1回または1日2回の分割用量のいずれかで経口投与される。患者は、投薬スケジュールおよび投薬時間近くの食物または飲料に関する要件の両方に関して指示される。
投薬スケジュール。一日用量は、朝一番に服用される。用量が分割される場合、次のガイドラインに従って、第1の一日用量は、朝に服用され、第2の一日用量は、およそ12時間後に服用される:
投薬は、各日±2時間で同じ時間に為されるべきである。
1日2回投薬に関して、連続的用量間の間隔は、<9時間や、>15時間となるべきではない。間隔が>15時間となる場合、用量を省略し、次の用量で通常スケジュールを再開するべきである。
食物に関する制限。吸収は、食物によって影響され、患者は、次の通りに指示されることになる:
朝の用量に関して
- 投薬時間まで深夜後は食物または飲料(水を除く)なし
- 投薬後2時間は食物または飲料(水を除く)なし。
第2の一日用量に関して、該当する場合
- 投薬前1時間は食物または飲料(水を除く)なし
- 投薬後2時間は食物または飲料(水を除く)なし。
【0035】
ペンブロリズマブは、調剤ラベル情報と一貫して投与される。X4P-001およびペンブロリズマブによる随伴性処置は、1日目のX4P-001の毎日投与で始まり投与することができる。ペンブロリズマブによる初期処置は、4および7週目来診において診療所で30分間にわたり静脈内注入によって投与される2mg/kgである。患者は、自身の臨床医の承認により、ペンブロリズマブの投薬スケジュールまたは投薬量を変動することができる。
X4P-001および/またはペンブロリズマブの投薬は、必要に応じて臨床医によって調整することができる。X4P-001および/またはペンブロリズマブの用量は、臨床医の判断に従って低減させることができる。ペンブロリズマブと組み合わせてX4P-001を受ける患者が、グレード>2における有害事象を経験する場合、X4P-001および/またはペンブロリズマブの用量は、臨床医の判断に従って低減させることができる。患者が、処置の最初の4週間を成功裏に、すなわち、グレード2を超えるいかなる有害事象も経験することなく完了する場合、X4P-001および/またはペンブロリズマブの一日用量は、臨床医の判断と一貫して増加させることができる。
【0036】
X4P-001およびペンブロリズマブによる併用処置後の、切除可能な転移性黒色腫を有する患者は典型的には、完全切除、または可能な限り完全な切除を受け、再発に関してモニターされ続けることができる、および/または標準治療(SOC)処置を受け続けることができる。これは、ペンブロリズマブの継続的使用を意味することができる、または臨床医の裁量下での他の何らかの処置を意味することができる。処置後の切除不能な転移性黒色腫を有する患者は、SOC処置を受け続けるであろう。このようなSOC処置は、ペンブロリズマブありまたはなしの、X4P-001のさらに別のレジメンを含んでも含まなくてもよい。
【0037】
処置に対する応答および疾患状態の評価
患者が切除可能な疾患を有するかを確認するために、患者のベースライン放射線学的評価を行う。処置の終わりに、同じモダリティを使用して、反復イメージングが実行されることになる。
初期評価において、患者は、ステージIII(いずれかのサブステージ)またはステージIV(単離された皮膚転移のみによる)を含む悪性黒色腫を有すると診断される。患者は、臨床的に生検されることになるものを含む皮膚性/皮下病変に関して評価される。
【0038】
≧3mmの皮膚性/皮下病変は、研究者によって臨床的に評価され、これは、病変の数、分布および記述を含む(例えば、結節状、一般的(popular)、斑状、色素性等)。皮膚性病変のサイズは、事象のスケジュールに示される通りに得られる病変の写真(定規と患者試験識別および日付を含む)を使用して決定される。リンパ節は、各来診時に試験され、触知できる結節の場所およびサイズが記録される。
皮膚性/皮下疾患の臨床評価は、1日目、4週目および7週目のそれぞれにおいて、新たな徴候、症状または実験室所見に基づき、示される通りに行われる。評価は、身体検査(リンパ節を含む)ならびに患者試験番号および日付と共にマークされた定規を含むあらゆる皮膚性病変の写真を含むであろう。
腫瘍生検試料は、ルーチン組織学的検査により評価され、腫瘍細胞マーカー(例えば、CD-133)および免疫関連のバイオマーカー(下表を参照)に関して解析されて、炎症性細胞浸潤物および腫瘍細胞におけるCXCR4拮抗作用の効果を決定する。
【0039】
【表1】
黒色腫を有する患者は、黒色腫腫瘍実質において1300±1700(平均±SD)CD8+T細胞/mm-2の間を示すと予想される。
【0040】
薬物動態評価
希望に応じて、X4P-001およびペンブロリズマブの血漿レベルに関する血液試料の薬物動態評価を行うことができる。血液試料は、スケジュール通りに収集される。例えば、試料は、1日目、4週目および7週目に採取することができる。試料は、MS/MS検出による逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用して、X4P-001濃度に関して解析される。この生体分析方法の検証される範囲は、血漿において30~3,000ng/mLである。
【0041】
1日目の初回測定は、ベースラインとして指定される。4週目および7週目に、CD8+T細胞の測定が為され、ベースラインと比較される。
一次比較は、前処置生検vs.4週目およびEOT生検における、腫瘍微小環境中の特異的細胞表現型の密度である。CD8+T細胞/mm-2は、処置に先立ち黒色腫の腫瘍実質において測定される。黒色腫を有する患者は、処置に先立ち黒色腫の腫瘍実質において1300±1700(平均±SD)CD8+T細胞/mm-2の間を示すと予想される。ベースラインと比較して、4週目の100%増加(平均2600細胞/mm-2)は、肯定的な応答であると考慮される。
二次解析は、(a)4週目vs.EOT生検における細胞表現型の比較、(b)末梢血単核細胞(PBMC)の間での表現型および血清バイオマーカーレベルの経時的な変化を含む。正規分布した連続型変数は、必要に応じてt検定およびANOVA/ANCOVAを使用して解析される。その結果が正規分布しない変数は、ノンパラメトリック統計学によって解析される。フィッシャー直接検定は、カテゴリー変数に使用される。
【0042】
ペンブロリズマブの薬物動態評価は、その全開示をこれにより特に参照により本明細書に組み込む、Patnaik et al. (2015) Clin. Cancer Res. 21:4286-4293に記載されているもの等の技法を使用して達成することができる。
【0043】
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