(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082680
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】医薬製剤用PI3Kデルタ選択的抑制剤の改良形態
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20220526BHJP
A61K 31/519 20060101ALN20220526BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
C07D487/04 143
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062937
(22)【出願日】2022-04-05
(62)【分割の表示】P 2020088147の分割
【原出願日】2015-05-26
(31)【優先権主張番号】2596/CHE/2014
(32)【優先日】2014-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】2597/CHE/2014
(32)【優先日】2014-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】512117133
【氏名又は名称】ライゼン・ファーマシューティカルズ・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スワループ・クマール・ヴェンカタ・サティア・ヴァッカランカ
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、経口投与において高められた溶解性及び薬物動態を示す、選択的PI3Kデルタ抑制剤(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-イソプロポキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)-4H-クロメン-4-オン(TGR-1202)のp-トルエンスルホン酸塩(PTSA)を提供することである。
【解決手段】本発明は、約5~約50μm、例えば、約5~約25μmまたは約5~約15μmのd(0.9)を有する、TGR-1202のPTSA塩に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.0、10.1、22.1及び24.5±0.2°2Θでピークを有するXRPDパターンを示し、且つ、5~50μmのd(0.9)を有する、式(I):
【化1】
で表される化合物の結晶p-トルエンスルホン酸塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年5月27日出願のインド国特許出願第2596/CHE/2014号及び2014年5月27日出願の同第2597/CHE/2014号の利益を主張する。上記インド国特許出願は、それぞれ、参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、選択的PI3Kデルタ抑制剤(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-イソプロポキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)-4H-クロメン-4-オン(TGR-1202)のp-トルエンスルホン酸塩(PTSA)の固体形態に関する。また本発明は、その調製方法、それを含有する医薬組成物、及びそれを投与することによる、がんなどのPI3Kキナーゼ介在性疾患または障害の治療方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-イソプロポキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)-4H-クロメン-4-オンとして化学的に知られるTGR-1202は以下の化学構造を有する。
【化1】
【0004】
TGR-1202及びその塩の調製は、国際特許出願第WO2014/006572号及び米国特許出願第2014/0011819号に記載されており、上記特許出願は、それぞれ、参照によって全目的のため全体として本明細書に組み込まれる。TGR-1202は血液学的悪性腫瘍の分野で現在、複数の臨床試験が実施されている治験薬である。
WO2014/006572号及びUS2014/0011819号は、TGR-1202の合成(実施例B1)を記載しており、かつPI3Kのシグナル伝達を抑制、調節及び/または調整する、この分子の治療活性も開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願第WO2014/006572号
【特許文献2】米国特許出願第2014/0011819号
【特許文献3】WO2014/006572号
【特許文献4】US2014/0011819号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、選択的PI3Kデルタ抑制剤(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-イソプロポキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)-4H-クロメン-4-オン(TGR-1202)のp-トルエンスルホン酸塩(PTSA)((S)-2-(1-(4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-イソプロポキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)-4H-クロメン-4-オンー4-メチルベンゼンスルホネート)の新規固体形態に関する。
【0007】
本発明者らは、特定の粒径を有するTGR-1202のPTSA塩の粒子が、経口投与において高められた溶解性及び薬物動態を示すことを発見した。
【0008】
一実施形態において、PTSA塩は、約5~約50μm、例えば、約5~約25μmまたは約5~約15μmのd(0.9)を有する。またPTSA塩は、約1~約10μm、例えば、約2.0~約10μm、約1~約5μmまたは約2.0~約5μmのd(0.5)を有してもよい。PTSA塩は、約0.5~約1.5μm、例えば、約0.5~約1.0μmのd(0.1)を有してもよい。
【0009】
別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約1~約10μm、例えば、約2.0~約10μm、約1~約5μmまたは約2.0~約5μmのd(0.5)を有する。またPTSA塩は、約0.5~約1.5μm、例えば、約0.5~約1.0μmのd(0.1)を有してもよい。PTSA塩は、約5~約50μm、例えば、約5~約25μmまたは約5~約15μmのd(0.9)を有してもよい。
【0010】
さらに別の実施形態において、PTSA塩は、約0.5~約1.5μm、例えば、約0.5~約1.0μmのd(0.1)を有する。またPTSA塩は、約5~約50μm、例えば、約5~約25μmまたは約5~約15μmのd(0.9)を有してもよい。PTSA塩は、約5~約50μm、例えば、約5~約25μmまたは約5~約15μmのd(0.9)を有してもよい。
【0011】
別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、
(i)d(0.1)が約0.5~約1.5μmであり、d(0.5)が約2.0~約10μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約50μmであるか、または
(ii)d(0.1)が約0.5~約1.5μmであり、d(0.5)が約2.0~約5.0μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約50μmであるか、または
(iii)d(0.1)が約0.5~約1.5μmであり、d(0.5)が約2.0~約10μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約25μmであるか、または
(iv)d(0.1)が約0.5~約1.0μmであり、d(0.5)が約2.0~約5μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約15μmである、粒径分布(PSD)を有する。
【0012】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、d(0.1)が約0.5~約1.5μmであり、d(0.5)が約2.0~約10μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約50μmである粒径分布(PSD)を有する。
【0013】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、d(0.1)が約0.5~約1.5μmであり、d(0.5)が約2.0~約5.0μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約50μmである粒径分布(PSD)を有する。
【0014】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、d(0.1)が約0.5~約1.0μmであり、d(0.5)が約2.0~約10.0μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約15μmである粒径分布(PSD)を有する。
【0015】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、d(0.1)が約0.5~約1.0μmであり、d(0.5)が約2.0~約5.0μmであり、かつd(0.9)が約5.0~約15μmである粒径分布(PSD)を有する。
【0016】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩の粒子の多くとも5%、多くとも3%、多くとも2%または多くとも1%は、1.0ミクロン未満の粒径を有する。同時に、TGR-1202のPTSA塩の粒子の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%は、100ミクロン未満の粒径を有する。1つの特定の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約10μmのd(0.5)及び約5.0~約50μmのd(0.9)も有する。別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約5.0μmのd(0.5)及び約5.0~約50μmのd(0.9)も有する。さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約10μmのd(0.5)及び約5.0~約25μmのd(0.9)も有する。さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.0μmのd(0.1)、約2.0~約5.0μmのd(0.5)及び約5.0~約15μmのd(0.9)を有する。
【0017】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩の粒子の多くとも5%、多くとも3%、多くとも2%または多くとも1%は、1.0ミクロン未満の粒径を有する。同時に、TGR-1202のPTSA塩の粒子の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%は、50ミクロン未満の粒径を有する。1つの特定の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約10μmのd(0.5)及び約5.0~約50μmのd(0.9)も有する。別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約5.0μmのd(0.5)及び約5.0~約50μmのd(0.9)も有する。さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約10μmのd(0.5)及び約5.0~約25μmのd(0.9)も有する。さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.0μmのd(0.1)、約2.0~約5.0μmのd(0.5)及び約5.0~約15μmのd(0.9)を有する。
【0018】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩の粒子の多くとも5%、多くとも3%、多くとも2%または多くとも1%は、1.0ミクロン未満の粒径を有する。同時に、TGR-1202のPTSA塩の粒子の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%は、25ミクロン未満の粒径を有する。1つの特定の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約10μmのd(0.5)及び約5.0~約25μmのd(0.9)も有する。さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.0μmのd(0.1)、約2.0~約5.0μmのd(0.5)及び約5.0~約15μmのd(0.9)を有する。
【0019】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩の粒子の多くとも5%、多くとも3%、多くとも2%または多くとも1%は、1.0ミクロン未満の粒径を有する。同時に、TGR-1202のPTSA塩の粒子の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%は、15ミクロン未満の粒径を有する。1つの特定の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約10μmのd(0.5)及び約5.0~約25μmのd(0.9)も有する。さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約0.5~約1.0μmのd(0.1)、約2.0~約5.0μmのd(0.5)及び約5.0~約15μmのd(0.9)を有する。
【0020】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、実質的に
図1に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンを示す(以下、形態Aと記載する)。
【0021】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約154℃において特徴的な吸熱ピークを有する示差走査熱量計(DSC)パターンを示す(形態A)。
【0022】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、5.0、10.1、15.9、16.1、16.3、20.0、22.1及び24.4±0.05、0.1または0.2°Θから選択される1つまたはそれ以上のピークを示すXRPDパターンを示す。例えば、塩は、5.01、10.09、15.91、16.13、16.34、20.00、22.06及び24.42±0.05、0.1または0.2°2Θから選択される1つまたはそれ以上のピーク(例えば、2、3、4、5、6、7または8ピーク)を示すXRPDパターンを示し得る。
【0023】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、実質的に
図2に示されるようなXRPDパターンを示す(以下、形態Bと記載する)。
【0024】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、約146℃において特徴的な吸熱ピークを有する示差走査熱量計(DSC)パターンを示す(形態B)。
【0025】
さらに別の実施形態において、TGR-1202のPTSA塩は、5.0、10.1、22.1及び24.5±0.05、0.1または0.2°θから選択される1つまたはそれ以上のピークを示すXRPDパターンを示す。例えば、塩は、5.04、10.13、22.11及び24.45±0.05、0.1または0.2°2θから選択される1つまたはそれ以上のピークを示すXRPDパターンを示し得る。
【0026】
さらに別の実施形態は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~10μmのd(0.5)及び約5~約50μmのd(0.9)によって定義される粒径分布(PSD)を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態Bである。
【0027】
さらに別の実施形態は、約0.5~約1.5μmのd(0.1)、約2.0~約5μmのd(0.5)及び約5~約25μmのd(0.9)によって定義される粒径分布(PSD)を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態Bである。
【0028】
さらに別の実施形態は、約0.5~約1.0μmのd(0.1)、約2.0~約5μmのd(0.5)及び約5~約15μmのd(0.9)によって定義される粒径分布(PSD)を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態Bである。
【0029】
さらに本発明は、本明細書に記載される実施形態のいずれかによる(例えば、本明細書のいずれかの実施形態によって定義される粒径分布を有する)TGR-1202のPTSA塩及び医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
さらに本発明は、本明細書のいずれかの実施形態に記載されるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B及び医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
さらに本発明は、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B及び医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
別の実施形態は、PI3K関連疾患、障害または状態、例えば、がんなどの増殖性疾患の治療用の医薬組成物での使用に適切な、実質的に
図2に示されるようなXRPDパターンを有するTGR-1202のPTSA塩である。
【0033】
別の実施形態は、PI3K関連疾患、障害または状態、例えば、がんなどの増殖性疾患の治療用の医薬組成物での使用に適切な、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩である。
【0034】
さらに本発明は、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B及び医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、(抗がん剤及び以下に記載の活性剤などの)他の活性剤などの1種またはそれ以上の追加的な活性成分をさらに含んでもよい。
【0035】
さらに本発明は、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩及び医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、(抗がん剤及び以下に記載の活性剤などの)他の活性剤などの1種またはそれ以上の追加的な活性成分をさらに含んでもよい。
【0036】
一実施形態は、本明細書に記載されるTGR-1202のPTSA塩及び1種またはそれ以上の(ヒドロキシプロピルベータデクスなどの)可溶化剤を含む(タブレットなどの)固体経口医薬組成物である。PTSA塩対(ヒドロキシプロピルベータデクスなどの)可溶化剤の重量比は、約1.5:1~約1:1.5の範囲であることが可能である。組成物は、(ヒドロキシプロピルセルロースなどの)懸濁剤、(微晶質セルローなどの)分散剤、(クロスカルメロースナトリウムなどの)崩壊剤、(ステアリン酸マグネシウムなどの)潤滑剤及び上記のいずれかのいずれかの組合せから選択される1種またはそれ以上の賦形剤をさらに含んでもよい。
【0037】
追加的な実施形態において、本明細書のいずれかの実施形態において定義されるPTSA塩は、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%または少なくとも約99.9%の鏡像体過剰率(e.e.)を有する。
【0038】
さらに別の実施形態は、(i)結晶塩が、5.0、10.1、22.1及び24.5±0.2°Θから選択される1つまたはそれ以上のピーク(例えば、2、3または4ピーク)を示すXRPDパターンを示し、かつ(ii)結晶塩が、PTSA塩の他の固体形態を実質的に含まない、TGR-1202の結晶PTSA塩である。
【0039】
さらに別の実施形態は、(i)結晶塩が、5.0、10.1、22.1及び24.5±0.2°Θから選択される1つまたはそれ以上のピーク(例えば、2、3または4ピーク)を示すXRPDパターンを示し、かつ(ii)結晶塩が、5%未満(例えば、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満)のPTSA塩の他の固体形態を含有する、TGR-1202の結晶PTSA塩である。
【0040】
別の態様において、本発明は、TGR-1202の結晶PTSA塩(すなわち、(S)-2-(1-(4-アミノ-3-(3-フルオロ-4-イソプロポキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-6-フルオロ-3-(3-フルオロフェニル)-4H-クロメン-4-オンのp-トルエンスルホン酸塩)の調製方法に関する。一実施形態において、本方法は、TGR-1202のPTSA塩と、ジ-tert-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、エチルtert-ブチルエーテル、メトキシエタン、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピランなどのエーテル溶媒との混合物から溶媒を除去することを含む。混合物は、好ましくは、溶媒を除去する前に、(例えば、3時間、6時間、12時間またはそれ以上の時間)、攪拌される。溶媒は乾燥によって除去されてもよい。1つの好ましい実施形態において、本方法は、TGR-1202のPTSA塩及びエーテル溶媒の混合物を、攪拌すること、ろ過すること及び乾燥することを含む。混合物は、好ましくは、例えば、TGR-1202のPTSA塩をエーテル溶媒中に懸濁することによって形成することができる、懸濁液である。
【0041】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を患者に投与することによる、それを必要とする患者におけるPI3Kデルタの抑制方法に関する。
【0042】
さらに別の実施形態は、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を患者に投与することによる、PI3Kプロテインキナーゼ介在性疾患、障害または状態(例えば、がんまたは他の増殖性疾患または障害)の治療、予防及び/または抑制方法である。
【0043】
さらに別の実施形態は、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を患者に投与することによる、PI3K関連疾患、障害または状態の治療方法である。一実施形態において、投与されるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態Bの量は、PI3Kデルタの抑制によってPI3K関連疾患、障害または状態を治療するために十分である。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することによる、増殖性疾患の治療方法である。一実施形態において、投与されるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態Bの量は、PI3Kデルタの抑制によって増殖性疾患を治療するために十分である。
【0045】
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも1種の他の抗がん剤との組み合わせで(同時または連続的)、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することによる、増殖性疾患の治療方法に関する。一実施形態において、投与されるTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の形態B)の量は、PI3Kデルタの抑制によって増殖性疾患を治療するために(または治療を促進するために)十分である。
【0046】
さらに別の実施形態は、少なくとも1種の医薬的に許容できる賦形剤と任意に混合された、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、患者のPI3K関連疾患、障害または状態の治療方法である。特定の実施形態において、組成物は、PI3K関連疾患、障害または状態の治療のために、本明細書のいずれかの実施形態によるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の治療有効量を含む。
【0047】
具体的な実施形態は、少なくとも1種の医薬的に許容できる賦形剤と任意に混合された、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)を含む医薬組成物を患者に投与することを含む、患者のがんの治療方法を提供する。特定の実施形態において、組成物は、患者のがんの治療のために、本明細書のいずれかの実施形態によるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の治療有効量を含む。
【0048】
本明細書のいずれかの実施形態によるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)は、限定されないが、以下を含む様々ながんの治療において有用である。
・膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺(小細胞肺がんを含む)、食道、胆嚢、子宮、卵巣、精巣、喉頭、口腔、消化管(例えば、食道、胃、すい臓)、脳、子宮頸部、甲状腺、前立腺、血液及び皮膚(扁平上皮がんを含む)のがん腫を含む、がん腫;
・白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞性リンパ腫、T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーケットリンパ腫を含む、リンパ系造血器腫瘍;
・急性及び慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び前骨髄球性白血病を含む、骨髄系造血器腫瘍;
・線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む、間葉系由来の腫瘍;
・星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫を含む、中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍;ならびに
・黒色腫、精上皮腫、奇形腫、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞腺癌及びカポジ肉腫を含む、他の腫瘍。
【0049】
アポトーシスの活性調節因子としての(結晶形態Bを含む)本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩は、(限定されないが、上記された種類を含む)がんの治療、予防及び抑制において有用である。
【0050】
(結晶形態Bを含む)本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩は、がんの化学予防において有用である。化学予防は、起因変異原事象の阻止、すでに損傷を受けた前がん状態細胞の進行の阻止または主要再発の阻止によって浸潤癌の進行を抑制することを伴う。その形態Bを含むPTSA塩は、腫瘍血管新生及び転移の抑制においても有用である。本発明の一実施形態は、TGR-1202のPTSA塩(例えば、TGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の有効量を投与することによる、患者における腫瘍血管新生または転移の抑制方法である。
【0051】
本発明の別の実施形態は、免疫系関連疾患(例えば、自己免疫疾患)、炎症を伴う疾患または障害(例えば、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、炎症性腸疾患、糸球体腎炎、神経炎症疾患、多発性硬化症、ぶどう膜炎及び免疫系の障害)、がんまたは他の増殖性疾患、肝臓疾患または障害、あるいは腎臓疾患または障害の治療方法である。本方法は、本発明の1種またはそれ以上の化合物の有効量を投与することを含む。
【0052】
本発明の化合物によって治療することができる免疫障害の例には、限定されないが、乾癬、関節リウマチ、脈管炎、炎症性腸疾患、皮膚炎、骨関節炎、ぜんそく、炎症性筋疾患、アレルギー性鼻炎、膣炎、間質性膀胱炎、強皮症、骨粗鬆症、湿疹、同種間または異種間移植(器官、骨髄、幹細胞ならびに他の細胞及び組織)移植拒絶反応、移植片対宿主病、紅斑性狼蒼、炎症性疾患、I型糖尿病、突発性肺線維症(IPF)(あるいは原因不明の線維性肺胞炎(CFA)あるいは突発性線維性間質性肺炎)、肺線維症、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎及び自己免疫甲状腺炎)、重症筋無力症、自己免疫溶血性貧血、多発性硬化症、嚢胞性線維症、慢性再発性肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎が含まれる。
【0053】
さらに別の実施形態は、本発明の化合物の治療有効量を投与することによる、患者の白血病の治療方法である。例えば、本発明の化合物は、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)及び無痛性非ホジキンリンパ腫(I-NHL)の治療に有効である。
【0054】
上記治療方法において、本明細書にいずれかの実施形態に記載のTGR-1202のPTSA塩の結晶形態BなどのTGR-1202のPTSA塩と一緒に、1種またはそれ以上の追加的活性剤を投与することができる。例えば、本明細書にいずれかの実施形態に記載のTGR-1202のPTSA塩は、化学療法、放射線療法、生物学治療、骨髄移植、幹細胞移植または他のいずれかの抗がん治療などの既知の抗がん治療と、あるいは1種またはそれ以上の細胞増殖抑制剤、細胞毒素剤もしくは抗がん剤または標的治療の単独もしくは組み合わせ、例えば、限定されないが、DNA相互作用剤、例えば、フルダラビン、シスプラチン、クロランブシル、ベンダムスチンまたはドキソルビシン;アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド;トポイソメラーゼII抑制剤、例えば、エトポシド;トポイソメラーゼI抑制剤、例えば、CPT-11またはトポテカン;チュブリン相互作用剤、例えば、天然由来または合成によるパクリタキセル、ドセタキセルまたはエポチロン(例えば、イキサベピロン);ホルモン剤、例えば、タモキシフェン;チミジル酸シンターゼ抑制剤、例えば、5-フルオロウラシル;抗代謝剤、例えば、メトトレキセート;他のチロシンキナーゼ抑制剤、例えば、Iressa及びOSI-774;血管新生抑制剤;EGF抑制剤;VEGF抑制剤;CDK抑制剤;SRC抑制剤;c-Kit抑制剤;Her1/2抑制剤、及び成長因子受容体に対するモノクローナル抗体、例えば、アービタックス(EGF)及びハーセプチン(Her2);CD20モノクローナル抗体、例えば、リツキシマブ、ウブリツキシマブ(TGR-1101)、オファツムマブ(HuMax;Intracel)、オクレリズマブ、ベルツズマブ、GA101(オビヌツズマブ)、AME-133v(LY2469298,Applied Molecular Evolution)、オカラツズマブ(Mentrik Biotech)、PRO131921、トシツモマブ、hA20(Immunomedics,Inc.)、イブリツモマブ-チウキセタン、BLX-301(Biolex Therapeutics)、レディタクス(Dr.Reddy’s Laboratories)及びPRO70769(WO2004/056312号に記載);他のB細胞標的化モノクローナル抗体、例えば、ベリムマブ、アタシセプトまたは融合タンパク質、例えば、ブリシビモド(blisibimod)及びBR3-Fc;他のモノクローナル抗体、例えば、アレムツズマブ;CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニソン);R-CHOP(リツキシマブ-CHOP);hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメサゾン、メトトレキセート、シタラビン);R-hyperCVAD(リツキシマブ-hyperCVAD);FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);R-FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);ボルテゾミブ及びリツキシマブ;テムシロリムス及びリツキシマブ;テムシロリムス及びVelcade(登録商標);ヨード131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))及びCHOP-CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニソン);R-CVP(リツキシマブ-CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R-ICE(リツキシマブ-ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);FR(フルダラビン、リツキシマブ);ならびにD.T.PACE(デキサメサゾン、サリドマイド、シスプラチン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、エトポシド);ならびに他のタンパク質キナーゼ活性調節因子との(一緒に投与されるか、または連続的に投与される)組み合わせにおいて有用である。
【0055】
本明細書のいずれかの実施形態に記載のTGR-1202のPTSA塩の結晶形態Bは、1種またはそれ以上のステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)または免疫選択的抗炎症剤(ImSAID)との(一緒に投与されるか、または連続的に投与される)組み合わせにおいても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】実施例1に記載のプロセスによって調製されたTGR-1202のPTSA塩(形態A)のXRPDスペクトルである。
【
図2】実施例2に記載のプロセスによって調製されたTGR-1202のPTSA塩(形態B)のXRPDスペクトルである。
【
図3】実施例1に記載のプロセスによって調製されたTGR-1202のPTSA塩(形態A)のDSCトレースである。
【
図4】実施例2に記載のプロセスによって調製されたTGR-1202のPTSA塩(形態B)のDSCトレースである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書で使用される場合、以下の定義は、他に明記される場合を除き、適用されるべきである。
【0058】
本明細書において、分子量などの物理的特性または化学式などの化学的特性に関して範囲が使用される場合、その中の範囲及び具体的な実施形態の全ての組合せ及び部分的組合せが含まれるように意図される。「約」という用語は、数または数値範囲を指す場合、指される数または数値範囲が、実験変動性の範囲内(または統計的実験誤差の範囲内)の近似値であり、したがって、数または数値範囲は、例えば、記載された数または数値範囲の1%~15%で変動し得ることを意味する。「含んでいる(comprising)」という用語(及び「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有する(having)」または「含んでいる(including)」などの関連用語)は、それらの実施形態、例えば、記載された特徴「からなる(consist of)」か、または「から本質的になる(consist essentially of)」いずれかの物質の組成物、組成、方法またはプロセスなどの実施形態を含む。
【0059】
以下の略語及び用語は、全文を通して、示された意味を有する:PI3-K=ホスホイノシチド3-キナーゼ;及びAIDS=後天性免疫不全症候群。
【0060】
本明細書に使用される略語は、他に明記されない限り、化学及び生物学的技術範囲内のそれらの従来の意味を有する。
【0061】
「細胞増殖」という用語は、それによって、分裂の結果として細胞数が変化する現象を示す。この用語は、それによって、細胞形態学が増殖シグナルと矛盾しないで変化する(例えば、サイズが増加する)細胞増殖も包括する。
【0062】
「同時投与」、「組み合わせて投与」という用語及びそれらの文法的同等物は、本明細書で使用される場合、両方の薬剤及び/またはそれらの代謝産物が同時に動物中に存在するように、2種またはそれ以上の薬剤を動物に投与することを包括する。同時投与には、個々の組成物の同時投与、個々の組成物の異なる時間での投与、または両方の薬剤が存在する組成物の投与が含まれる。
【0063】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、限定されないが、疾患の治療を含む意図された用途をもたらすために十分である、本明細書に記載の化合物の量を示す。治療有効量は、(生体外または生体内での)意図された用途、または治療を受ける被験者及び疾患の状態、例えば、被験者の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与の様式など次第で変動し得、当業者は、これを容易に決定することが可能である。この用語は、標的細胞において特定の応答、例えば、血小板粘着及び/または細胞移動の低下を誘発するであろう量に当てはまる。具体的な量は、選択された特定の化合物、従われる投与計画、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、それが投与される組織及びそれが運搬される身体送達系次第で変動するであろう。
【0064】
本明細書で使用される場合、「治療」及び「治療する」とは、限定されないが、治療の利益及び/または予防の利益を含む、有益であるか、または望ましい結果を得るためのアプローチを意味する。治療の利益とは、治療される基礎障害の根絶または改善を意味する。また治療の利益は、患者がなお基礎障害を患い得るにもかかわらず、患者に改善が観察されるように、基礎障害に関連する生理学的症状の1つまたはそれ以上の根絶または改善によって達成される。予防の利益に関しては、この疾患がまだ診断されていないが、特定の疾患を発症する危険がある患者に、または疾患の生理学的症状の1つまたは以上が報告される患者に組成物が投与されてもよい。
【0065】
「治療効果」は、本明細書に使用される場合、上記の治療の利益及び/または予防の利益を包括する用語である。予防効果とは、疾患または状態の出現を遅らせること、または排除すること、疾患または状態の発症を遅らせること、疾患または状態の進行を遅らせること、停止すること、または後退すること、あるいはそれらのいずれかの組合せを含む。
【0066】
「被験者」または「患者」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトなどの動物を意味する。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方において有用となることが可能である。いくつかの実施形態において、患者は哺乳動物であり、かついくつかの実施形態において、患者はヒトである。獣医学的目的に関して、「被験者」及び「患者」という用語には、限定されないが、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ及びヤギを含む家畜;イヌ及びネコなどの伴侶動物;外来種及び/または動物園の動物;マウス、ラット、ウサギ、モルモット及びハムスターを含む実験動物;ならびにニワトリ、ターキー、カモ及びガチョウなどの家禽が含まれる。
【0067】
「放射線療法」とは、医師に既知の方法及び組成物を使用して、アルファ-粒子放出放射性核種(例えば、アクチニウム及びトリウム放射性核種)、低線エネルギー付与(LET)放射線放出体(すなわち、ベータ放出体)、転換電子放出体(例えば、ストロンチウム-89及びサマリウム-153-EDTMP)、または限定されないが、X線、ガンマ線及び中性子を含む高エネルギー放射線などの放射線放出体に患者を暴露することを意味する。
【0068】
「シグナル伝達」は、その間に、細胞内の応答を引き出すために細胞中または細胞内に刺激または抑制シグナルが伝達されるプロセスである。シグナル伝達経路の活性調節因子は、同一の特定のシグナル伝達経路にマップされる1つまたはそれ以上の細胞タンパク質の活性を調整する化合物を指す。活性調節因子は、シグナル分子の活性を増大させ得るか(作動体)、または抑制させ得る(拮抗体)。
【0069】
生理活性物質に適用される「選択的抑制」または「選択的に抑制する」という用語は、標的との直接的または間接的な相互作用によって、オフターゲットシグナル活性と比較して、標的シグナル活性を選択的に減少させる薬剤の能力を指す。
【0070】
本明細書に使用される場合、「PI3-キナーゼデルタ選択的抑制剤」及び「PI3-キナーゼδ選択的抑制剤」という用語は、一般に、PI3K系統群(アルファ、ベータ及びガンマ)の他のアイソザイムよりも効果的にPI3-キナーゼδアイソザイムの活性を抑制する化合物を示す。例えば、PI3-キナーゼδ選択的抑制剤は、残りの他のI型PI3-キナーゼ(すなわち、アルファ、ベータ及びガンマ)に関する抑制剤のIC50よりも少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍またはそれよりも低い、デルタI型PI3-キナーゼに関する50%抑制濃度(IC50)を示す化合物を指し得る。
【0071】
PI3-キナーゼδの抑制は、様々な状態、例えば、限定されないが、自己免疫疾患、アレルギー性疾患及び関節炎疾患を含む炎症反応によって特徴づけられる状態の治療において治療の利益を有し得る。重要なことに、PI3-キナーゼδの抑制作用は、生存能力及び生殖力などの生物学的機能に影響を与えるとは思われない。
【0072】
本明細書に使用される場合、「炎症反応」は、赤み、ほてり、腫れ及び痛み(すなわち、炎症)によって特徴づけられて、そして典型的に組織の損傷または破壊を伴う。炎症反応は、通常、組織の損傷または破壊によって引き起こされる局在的な防御反応であり、有害な薬剤及び損傷を受けた組織の両方を破壊、希釈または遮断(隔離)するように機能する。炎症反応は、特に、白血球の流入及び/または白血球(例えば、好中球)走化作用と関連する。炎症反応は、病原生物及びウィルスによる感染から、ならびに心筋梗塞または卒中後の外傷または再潅流、異種抗原に対する免疫反応及び自己免疫疾患などの非感染性手段から生じ得る。本発明による方法及び化合物による治療に受けることが出来る炎症反応は、特異的防衛システムの反応と関連する状態、ならびに非特異的防衛システムの反応と関連する状態を包括する。
【0073】
本発明の治療方法は、炎症細胞活性化と関連する状態の治療方法を含む。「炎症細胞活性化」は、増殖細胞応答の刺激(限定されないが、サイトカイン、坑原または自己抗体を含む)による誘導、可溶性メディエーター(限定されないが、サイトカイン、酸素ラジカル、酵素、プロスタノイドまたはバソアクティブアミンを含む)の生産、あるいは炎症細胞(限定されないが、単核細胞、大食細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、顆粒球(好中球、塩基好性及びエオシン好性を含む多形核白血球)肥満細胞、樹状細胞、ランゲルハンス細胞及び内皮細胞を含む)中の(限定されないが、主要な組織適合性抗原または細胞接着分子を含む)新規または増加数のメディエーターの細胞表面発現を指す。これらの細胞におけるこれらの表現型の1つまたは組合せの活性化は、炎症状態の開始、永続または悪化に寄与する可能性があることを当業者は理解するであろう。
【0074】
「自己免疫疾患」とは、本明細書に使用される場合、組織の損傷が体成分に対する体液性または細胞性応答と関連する障害のいずれの群も指す。
【0075】
「移植拒絶反応」とは、本明細書に使用される場合、(移植及び周辺組織の機能の損失、痛み、腫れ、白血球増加症及び血小板減少によって特徴づけられる器官または細胞(例えば、骨髄)を含む)移植組織に対する免疫反応を指す。
【0076】
「アレルギー性疾患」とは、本明細書に使用される場合、アレルギー反応に起因するいずれの症状、組織損傷または組織機能損失も指す。
【0077】
「関節炎疾患」とは、本明細書に使用される場合、様々な病因に起因する関節の炎症障害によって特徴づけられるいずれの疾患も指す。
【0078】
「皮膚炎」とは、本明細書に使用される場合、様々な病因に起因する皮膚の炎症によって特徴づけられる皮膚の疾患の大系統群のいずれも指す。
【0079】
粉末または粒状材料または流体中に分散された粒子の「粒度分布」という用語は、本明細書に使用される場合、径によって分類された存在する粒子の相対量を定義する値または数学的関数の一覧である。d(0.1)、d(0.5)及びd(0.9)は、測定された粒子の10%、50%及び90%が、示された径以下であることを示す。例えば、d(0.1)=3、d(0.5)=10及びd(0.9)=100の値は、粒子の10%が3μm以下であり、50%が10μm以下であり、かつ90%が100μm以下であったことを意味する。
【0080】
用語d(0.1)、d(0.5)及びd(0.9)は、試料の全粒子の合計の10%、50%または90%を通過させることができる単一の概念的なふるいのメッシュ径を指す。したがって、d(0.1)=2~100μmは、試料の最小粒子の10%を定義する粒径範囲の上限が2μm~100μmの間にあることを示す。したがって、全粒子の10%が、この場合、2μm~100μmの最大径を有することを意味するd(0.1)以下の粒径を有する。
【0081】
医薬組成物
本発明は、本明細書に記載されるTGR-1202のPTSA塩及び1種またはそれ以上の医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。例えば、TGR-1202のPTSA塩は、本明細書に記載される粒径分布及び/または本明細書に記載される結晶特性を有し得る。
【0082】
一態様において、本発明は、本明細書のいずれかの実施形態によるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B(例えば、本明細書のいずれかの実施形態によって定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)及び1種またはそれ以上の医薬的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、医薬組成物は、本明細書のいずれかの実施形態によるTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B(例えば、本明細書のいずれかの実施形態において定義される粒径分布を有するTGR-1202のPTSA塩の結晶形態B)の治療有効量を含む。医薬組成物は、本明細書に記載される1種またはそれ以上の追加的活性成分を含んでもよい。
【0083】
賦形剤は、希釈剤、充てん剤、塩、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、分散剤、懸濁剤、湿潤剤、徐放マトリックス、着色剤、香料、緩衝剤、安定剤、可溶化剤及びそれらの組合せから選択されてもよい。
【0084】
本発明の医薬組成物は、単独で、あるいは1種またはそれ以上の他の活性剤と組み合わせて投与されることができる。所望である場合、主題化合物及び他の薬剤は製剤中に混合されていてもよく、あるいは両方の成分が、別々に組み合わせて、または同時にそれらを使用するために、別個の調剤中に調合されてもよい。
【0085】
本明細書に記載されるTGR-1202のPTSA塩及び医薬組成物は、経口、経口腔、鼻腔内、局所的(例えば、経皮)、十二指腸内、非経口(静脈内、動脈内、筋肉内、血管内、腹腔内、または注射もしくは点滴によってを含む)、皮内、乳腺内、くも膜下腔内、眼内、眼球内、肺内(例えば、エアロゾル化薬物)または皮下(長期放出のためのデポット投与、例えば、脾膜、脳または角膜下包埋を含む)、舌下、肛門内、直腸内、膣内、あるいは外科移植(例えば、脾膜、脳または角膜下包埋)などの作用部位へのTGR-1202の送達を可能にするいずれの経路によっても投与することができる。
【0086】
組成物を、固体、半固体、液体または気体形態で投与することができるか、あるいは凍結乾燥形態などの乾燥粉末であってもよい。医薬組成物は、例えば、カプセル、サッシェ、カシェ、ゼラチン、ペーパー、タブレット、座薬、ペレット、ピル、トローチ及びロゼンジなどの固体剤形を含む、送達に都合のよい形態でパッケージされることができる。パッケージの種類は、一般に、投与の望ましい経路次第であろう。移植可能な持続性放出製剤は、経皮製剤としても考えられる。
【0087】
投与されるTGR-1202のPTSA塩の量は、治療される哺乳動物、障害または状態の重症度、投与経路、化合物の性質及び処方する医者の裁量次第である。しかしながら、有効薬量は、単一または分割用量で、1日あたり体重1kgあたり約0.001~約100mgの範囲であり、好ましくは約1~約35mg/kg/日の範囲である。70kgのヒトの場合、これは、約0.05~7g/日、好ましくは約0.05~約2.5g/日となるであろう。本明細書に記載されるTGR-1202のPTSA塩の有効量は、単一または複数回投与(例えば、1日2回または3回)で投与されてもよい。
【0088】
本明細書に記載されるTGR-1202のPTSA塩は、1種またはそれ以上の抗がん剤(例えば、化学療法剤)、治療抗体及び放射線療法と組み合わせて使用されてもよい。
【0089】
本明細書に記載されるTGR-1202のPTSA塩は、脳脊髄炎、ぜんそく及び本明細書に記載の他の疾患などの炎症症状を緩和するように作用する他の薬剤と組み合わせて調合または投与されてもよい。これらの薬剤としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が含まれる。
【0090】
様々な医薬組成物の調製については、当該技術において既知である。例えば、Anderson,Philip O.;Knoben,James E.;Troutman,William G.編,Handbook of Clinical DrugData,第10版,McGraw-Hill,2002;Pratt及びTaylor編,Principles of Drug Action,第3版,Churchill Livingston,New York,1990;Katzung編,Basic and Clinical Pharmacology,第9版,McGraw Hill,2003;Goodman及びGilman編,The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,McGraw Hill,2001;Remingtons Pharmaceutical Sciences,第20版,Lippincott Williams & Wilkins.,2000;Martindale,The Extra Pharmacopoeia,第32版(The Pharmaceutical Press,London,1999)を参照のこと。これらは、参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0091】
一実施形態において、本明細書に記載のTGR-1202のPTSA塩は、約20~5,000ng/mLの血中化合物濃度を生じ、かつそのような濃度が投与の約6~24時間後の期間維持されるように選択された用量で投与される。別の特定の実施形態において、用量サイズ及び頻度は、約50~2,500ng/mLの血中化合物濃度を達成し、そして投与時間から約6~24時間の期間、その濃度を維持するように選択される。いくつかの実施形態において、用量サイズ及び頻度は、投与後に約100~1,500ng/mLの血中TGR-1202濃度を達成するように選択される。いくつかの実施形態において、用量サイズ及び頻度は、投与時間から約6~24時間の期間、約100~750ng/mLの血中TGR-1202濃度を達成するように選択される。さらなる実施形態において、用量サイズ及び頻度は、少なくとも約300ng/mLであり、かつ約10,000ng/mLを超えないTGR-1202のPTSA塩のCmax血漿濃度を達成するように選択される。
【0092】
治療方法
本発明は、限定されないが、1種またはそれ以上のPI3キナーゼの機能不全と関連する疾患を含む疾患状態を治療するために本発明の化合物及び医薬組成物を使用する方法も提供する。
【0093】
PI3δキナーゼ活性によって介在される状態及び障害の詳細な記載は、例えば、国際公開第WO2001/81346号、同第WO2010/123931号、同第WO2010/0111432号及び同第WO2010/057048号、ならびに米国特許出願第2005/043239号に記載されている。上記特許のそれぞれは、全ての目的に関して、参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0094】
本明細書に提供される治療方法は、被験者に、本発明の化合物の治療有効量を投与することを含む。一実施形態において、本発明は、哺乳動物の自己免疫疾患を含む炎症障害を治療する方法を提供する。この方法は、上記哺乳動物に、本発明の化合物の治療有効量を投与することを含む。
【0095】
本発明の治療方法が、人間医学及び獣医学の分野で有用であることは理解されるであろう。したがって、治療される個体は、哺乳動物、好ましくはヒトまたは他の動物であってもよい。獣医学的目的では、個体は、限定されないが、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ及びヤギを含む家畜;イヌ及びネコなどの伴侶動物;外来種及び/または動物園の動物;マウス、ラット、ウサギ、モルモット及びハムスターを含む実験動物;ならびにニワトリ、ターキー、カモ及びガチョウなどの家禽が含まれる。
【0096】
本発明は、本発明の化合物またはその医薬的に許容できる塩の治療有効量を上記哺乳動物に投与することを含む、被験者の過剰増殖性障害の治療方法にも関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、急性骨髄性白血病、胸腺、脳、肺、りん状細胞、皮膚、目、網膜胚種細胞腫、眼内黒色腫、口腔及び口咽頭、膀胱、胃、膵臓、膀胱、乳房、頸部、頭部、首部、腎細胞、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺、結腸直腸、食道、精巣、婦人科、甲状腺、CNS、PNS、AIDS-関連(例えば、リンパ腫及びカポジ肉腫)またはウィルス誘発がんなどのがんの治療に関する。いくつかの実施形態において、上記方法は、皮膚の良性過形成(例えば、乾癬)、再狭窄または前立腺(例えば、良性前立腺肥大(BPH))などの非がん性過剰増殖性障害の治療に関する。
【実施例0097】
以下に提供する実施例及び調剤によって、本発明の化合物及び組成物の調製方法を説明及び実証する。本発明の範囲は、以下の実施例及び調剤の範囲によって、いずれかの様式で限定されることがないことは理解されるべきである。
【0098】
以下の測定パラメーターを使用して、Cu LFF X線管(45kV、40mA)を備えたX’PertPRO MPD回折計上でXPRDパターンが得られた。
走査モード:連続
PSDモード:走査
PSD長さ:2.12o2θ
走査範囲:2.5~40o2θ
ステップサイズ:0.017/ステップ
走査ステップ時間:12.065秒
発散スリットタイプ:自動
単色入射ビーム:なし
回転:あり
【0099】
DSCスペクトルは、DSCQ2000 V24.11 Build124上で得た。
【0100】
実施例1:TGR-1202のPTSA塩(形態A)の調製
【化2】
56.8リットルのアセトンを含む反応器に、7100gのTGR-1202を充填し、そして周囲温度で攪拌した。4680gのp-トルエンスルホン酸を添加し、そして反応混合物を約6時間、60~65℃の温度で加熱した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去し、湿潤残渣を得た。湿潤残渣を脱気して、20℃未満まで冷却した。次いで、約142リットルのジエチルエーテルを添加し、そして得られた混合物を一晩攪拌し、次いで、ろ過すると固体物質が得られ、これをジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥させて、固体物質を得た。固体物質をジエチルエーテル中に再懸濁し、6時間攪拌し、次いで、ろ過して固体物質を得、これを続いて、56.8リットルのアセトン中に溶解し、HiFlowベッドを通してろ過し、そして減圧下で濃縮した。得られた残渣物質を水と一緒に一晩攪拌し、次いで、ろ過し、真空乾燥して、6600gのTGR-1202のPTSA塩を得た。HPLC:99.21%及びキラル純度99.64:0.36(S:R)。
【0101】
実施例2:TGR-1202のPTSA塩(形態B)の調製
【化3】
8リットルのアセトンを含有する反応器に、1000gのTGR-1202を充填し、そして周囲温度で攪拌した。次いで、666gのp-トルエンスルホン酸を添加し、そして反応混合物を約6時間、60~65℃の温度で加熱した。減圧下での蒸留によって溶媒を除去し、湿潤残渣を得た。湿潤残渣を脱気して、20℃未満まで冷却した。約20リットルのジエチルエーテルを添加し、そして得られた混合物を一晩攪拌し、次いで、ろ過すると固体物質が得られ、これをジエチルエーテルで洗浄し、そして真空下で乾燥させて、固体物質を得た。次いで、この固体物質を真空乾燥して、1150gのTGR-1202のPTSA塩を得た。HPLC:99.33%及びキラル純度99.61:0.39(S:R)。
【0102】
表1に、実施例1及び2の生成物のXRPDパターンピーク及び相対ピーク強度を記載する。
【表1-1】
【表1-2】
【0103】
表1Aに、実施例1及び2で調製したPTSA塩のDSC吸熱を記載する。
【表2】
【0104】
実施例3:粒径分析
実施例1及び2で調製したTGR-1202のPTSA塩の粒径(PSD)分析は、Scirocco2000乾燥粉末システムを用いるMalvern Master Sizer 2000を使用して以下の通りに実行された。器具のパラメーターは以下の通りであった。
・粒子RI:1.50
・吸収指数:0.1
・減衰率範囲:1~5%
・分析モデル:汎用
・感度:正常
・空気圧:2.0バール
・供給量:30%
・試料測定時間:6秒
・バックグラウンド測定時間:6秒
・測定サイクルの数:1
【0105】
手順:5gのTGR-1202を試料測定セル(すなわち、Scirocco 2000)に移し、そして空気流を開始した。レーザー強度を70%以上持続した。測定を開始し、そして限界内の減衰率を達成するために、振動供給量を増加した。減衰率が限界内に含まれたら、測定を記録した。分析を3回実行し、そして提供された結果は3回の実験の平均である。
【0106】
実施例1及び2の生成物の粒径分配(PSD)を表2に示す。
【表3】
【0107】
実施例4:TGR-1202のPTSA塩のタブレット形成
実施例1及び2のTGR-1202のPTSA塩200mg(遊離塩基形態として計算される)を含有するタブレットコアを、それらの溶解特性を研究するために調製した。これらの製剤を、それぞれ、実施例4a及び4bと記載する。実施例1及び2で調製したTGR-1202のPTSA塩の粒径分配は、実施例3に提供される。
【0108】
実施例4a:実施例1で調製したTGR-1202のPTSA塩を含有する6種の異なるタブレットを調製した(T1、T2、T3、T3、T5及びT6)。
【0109】
実施例4b:実施例2で調製したTGR-1202のPTSA塩を含有する6種の異なるタブレットを調製した(T1、T2、T3、T3、T5及びT6)。
【0110】
使用した装置:使用したタブレット形成装置を表3に示す。
【表4】
【0111】
タブレットの調製:タブレットの製剤を表4に示す。
【表5】
【0112】
製造プロセス:タブレットは以下の通りに調製した。
1.製剤に必要とされる原材料量を調合する。
2.#40メッシュに通して、ヒドロキシプロピルベータデクス、クロスカルメロースナトリウム及び微晶質セルロースと一緒にAPIをふるいがけし、インプロセスバルク容器または二重ポリエチレンバッグに回収する。
3.計量したヒドロキシプロピルセルロース(Klucel LF)を撹拌下、ステンレス鋼容器中で純水に溶解し、透明溶液(結合剤溶液)を得る。
4.ステップ2のブレンドを、急速混合粉砕機(RMG)に入れ、そしてチョッパーをオフにして、低インペラー速度で8分間混合する。
5.ステップ4のブレンドを、ステップ3からの結合剤溶液とともに粒状化する。適切な粘稠度の顆粒を得るため、必要であれば、追加の水を添加する。必要であれば、追加の混練を実行する。粒状化の間、必要であれば、断続的な廃棄を実行する。
6.乾燥減量(LOD)が3.0%w/w未満になるまで、65℃以下のインレット温度で流動床乾燥器(FBD)中で湿潤物質を乾燥させる。必要であれば、断続的な廃棄を実行する。
7.ステップ6の乾燥顆粒を24#シーブに通し、そして別々にふるいがけされた顆粒を回収する。24#で残った顆粒を、1.0mmのステンレス鋼スクリーンを備えたマルチミルを通して、ナイフで促進して高速で粉砕する。粉砕された顆粒を回収し、そして振動ふるい上に備えられた24#シーブを通してふるいがけする。別々のポリバッグに、24#を通過した顆粒を回収する。
8.必要であれば、24#で残った顆粒にステップ7を再び繰り返す。インプロセスバルク容器または二重ポリエチレンバッグに回収する。
9.#40を通してクロスカルメロースナトリウムをふるいがけし、そして8分間12rpmにおいてContaブレンダー中でステップの顆粒と混合する。
10.#60メッシュを通してステアリン酸マグネシウムをふるいがけし、そして3分間12rpmにおいてContaブレンダーでステップ9のブレンドと混合する。
11.二重のポリエチレンバッグ中に、潤滑化顆粒を抜き取る。潤滑化顆粒の重量を測定し、そして記録する。
12.670.00mg/tabの平均重量で、17.8×8.8mmの楕円形パンチで潤滑化ブレンドを圧縮する。
【0113】
実施例4bのタブレットにのみ、以下に記載されるコーティング手順を実行した。
13.コーティング溶液調製:計量された精製水を、メカニカルスターラーを備えた容器に移す。45分間連続的に攪拌及び混合しながら、Opadry II Brown 40L565004を精製水中に分散する。100#シーブまたはナイロン布を通して、得られた懸濁液をろ過する。
14.圧縮されたタブレットをコーティングパンに入れ、そして必要とされる重量増加(2.5~3.5%)が得られるまでコーティングを継続する。
【0114】
実施例4a及び4bのタブレットのインプロセスチェック(IPC)データを、それぞれ表5及び6に示す。
【表6】
【表7】
【0115】
なお、経口摂取されるタブレットが利用可能な治療の最も有効な手段の1つである。このような剤形の有効性は、体循環への吸収の前に、消化管の流体に薬剤が溶解することに依拠する。タブレットの溶解速度は、したがって、その性能に関連する。
【0116】
実施例4a及び4bからのコアの溶解は、次のパラメーターを使用して実行された。1%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む0.1N HCl水溶液900ml、USP装置1によるパドル装置、毎分100ラウンドのパドル速度及び6回の実行(n=6)。pH1を有する媒体中での溶解の基準は、120分で75%以上(Q=75)である。溶解の結果を以下の表7に示す。
【表8】
【0117】
実施例5
薬物動態
タブレット(実施例4a及び4b)の経口による生物学的利用能は、ヒトの健康なボランティアで評価された。薬物動態研究のためのプロトコルを以下に提供する。
【0118】
全ての健康な被験者は、投与前一晩(12時間)断食し、そして試験製剤の投与後4.0時間まで断食を継続した。試験製剤(タブレット)は、実施例4a及び4bの通りに調製した。血液試料を採取し、そして凝固防止剤を含有するマイクロ遠心分離管中に入れた。直ちに血液試料に遠心分離処理を行い、そして分離した血漿試料を-80℃未満で冷凍し、そして分析まで貯蔵した。全ての試料中の試験品目の血漿濃度は、LC-MS/MSによって分析した。薬物動態パラメーター(すなわち、Cmax、AUC0-t、Tmax及びt1/2)を推測した。
【0119】
実施例2に従って調製したTGR-1202のPTSA塩を含むタブレット組成物は、実施例1に従って調製したTGR-1202のPTSA塩を含むタブレット組成物よりも、約2.5倍高いC
max及び約1.9倍大きい曲線下面積(AUC)を示した。結果を以下の表8に示す。
【表9】
【0120】
本明細書では特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理及び応用の例示のみであることは理解されるであろう。したがって、上記された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示された実施形態に多数の変更を行ってよいこと、及び他のアレンジを考案してもよいことは理解されるであろう。添付の請求の範囲が本発明の範囲を定義し、そしてこれらの請求の範囲内の方法及び構造ならびにそれらの同等物がそれによって包括されることが意図される。
【0121】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願が、参照によって本明細書に組み込まれることが具体的かつ個々に示されるのような範囲まで、参照によって本明細書に組み込まれる。