(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082706
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】中耳炎のための光コヒーレンス断層撮影デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220526BHJP
A61B 1/227 20060101ALI20220526BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61B10/00 J
A61B1/227
A61B1/00 526
A61B10/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063286
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2019519968の分割
【原出願日】2017-06-17
(31)【優先権主張番号】15/188,750
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518452607
【氏名又は名称】オトネクサス メディカル テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ チェサヴェイジ
(72)【発明者】
【氏名】マーク モーリング
(57)【要約】
【課題】好適な中耳炎のための光コヒーレンス断層撮影デバイスを提供すること。
【解決手段】鼓膜に隣接する流体の特性評価のためのOCT装置および方法は、測定経路および基準経路を有する、スプリッタに結合される、低コヒーレンス源を有する。基準経路は、長さに関して時間的に変調され、基準経路および測定経路から組み合わせられた信号は、検出器に印加される。検出器は、随意の励起源が鼓膜に印加されると、応答の幅および時間変動を検査し、応答の幅および時間変動は、測定されている鼓膜に隣接する流体の粘度を示す、メトリックを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の中耳炎を診断するためのシステムであって、前記システムは、
基準経路および測定経路に沿って光エネルギーを指向するように構成される干渉計であって、前記測定経路は、鼓膜を備え、前記鼓膜、または、前記鼓膜に隣接する流体のうちの1つまたは複数と相互作用する、干渉計と、
コントローラであって、前記コントローラは、
前記干渉計から検出器信号を受信することと、
前記検出器信号に応答して、膜メトリックを決定することであって、前記膜メトリックは、前記鼓膜の弾性または前記鼓膜に隣接する前記流体の粘度のうちの少なくとも1つを含み、前記患者は、前記膜メトリックに基づく細菌性耳感染またはウイルス性耳感染を有するとして特性評価される、ことと
を行うように構成される、コントローラと、
前記鼓膜または前記鼓膜に隣接する前記流体のうちの前記1つまたは複数に空気媒体を通して指向されるように非接触力を発生させるように構成される励起発生器であって、前記非接触力は、圧力励起を含み、前記励起発生器は、圧力波変調を提供することにより、前記鼓膜の変位を引き起こすように構成され、前記圧力波変調は、前記鼓膜につながる前記患者の外耳道をシールせずに提供される、励起発生器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記患者は、前記非接触力に応答して前記検出器信号に基づく前記細菌性耳感染または前記ウイルス性耳感染を有するとして特性評価される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記膜メトリックは、検出器応答幅、ペデスタル幅、または反射された波長プロファイルのうちの少なくとも1つに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記非接触力は、空気パフを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記干渉計は、光源を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記光源は、発光ダイオードを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記干渉計は、ブロードバンド検出器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記検出器は、複数の出力を発生させるように構成され、各出力は、一意の波長範囲に応答する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記干渉計は、前記基準経路および前記測定経路の中に前記光エネルギーを分割する第1のスプリッタと、前記基準経路および前記測定経路を組み合わせる第2のスプリッタとを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のスプリッタおよび前記第2のスプリッタは、部分反射ミラーを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のスプリッタおよび前記第2のスプリッタは、光ファイバを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記基準経路の長さまたは前記測定経路の長さは、ミラーに結合される電圧または電流が制御されるアクチュエータを使用して、変調される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記基準経路の長さまたは前記測定経路の長さは、光ファイバに結合されるPZTアクチュエータを使用して、変調される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、複数の既知の生物学的材料のうちの1つのテンプレート応答を記憶するメモリを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記テンプレート応答は、耳垢、健康な鼓膜、炎症を起こした鼓膜、細菌流体、滲出流体、または粘着流体のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、検出器応答に基づいて前記鼓膜の位置または変位のうちの1つまたは複数を決定することと、前記鼓膜の前記決定された位置または変位のうちの前記1つまたは複数に基づく前記細菌性耳感染または前記ウイルス性耳感染を有するとして前記患者を特性評価することとを行うように構成される、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コヒーレンス断層撮影(OCT)に関する。特に、本デバイスは、中耳炎(OM)の診断において使用するためのOCTに関する。
【背景技術】
【0002】
中耳炎は、鼓膜に影響を及ぼす組織炎症および流体圧力を伴う、内耳の一般的疾患である。中耳炎は、概して、治療を伴わずに消散する、ウイルス性感染症、または進行し、聴覚喪失もしくは他の有害かつ不可逆的影響を引き起こし得る、細菌性感染によって生じ得る。残念ながら、現在利用可能な診断デバイスを使用して、ウイルスまたは細菌性感染を区別することは困難であって、2つの根本的感染症のための治療方法は、全く異なる。細菌性感染に関して、抗生物質が、治療選択肢である一方、ウイルス性感染症に関して、感染症は、自己消散する傾向にあって、抗生物質は、非効果的であるだけではなく、抗生物質抵抗をもたらし得、後続細菌性感染を治療する際にあまり効果的ではないものにするであろう。
【0003】
内耳感染症のための決定的診断ツールは、侵襲性手技である、鼓膜切開術であって、滲出物中の感染因子を識別するために、鼓膜の切開、流体の抜去、および顕微鏡下での滲出流体の検査を伴う。本手技からの合併症のため、それは深刻な症例においてのみ使用される。これは、ウイルス性感染症のための抗生物質の処方が、細菌中の抗生物質抵抗の発展を担っていると考えられ、これが、後の人生においてより深刻な結果をもたらし得、有効な結果が伴わない場合、抗生物質を用いたウイルス感染因子の治療が、非効果的であるため、医療施術者にとってジレンマを提示する。中耳炎の診断のための改良された診断ツールが、所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(本発明の目的)
本発明の第1の目的は、鼓膜に隣接する流体タイプの識別のための非侵襲性医療デバイスである。
【0005】
本発明の第2の目的は、鼓膜に隣接する流体の識別のための方法である。
【0006】
本発明の第3の目的は、鼓膜に隣接する薄膜特性の識別のために光コヒーレンス断層撮影を実施するための方法である。
【0007】
本発明の第4の目的は、鼓膜に隣接する流体特性の識別のために光コヒーレンス断層撮影を実施するための装置である。
【0008】
本発明の第5の目的は、圧力励起源を鼓膜に結合することによって、鼓膜および隣接する材料の特性評価のための装置および方法であって、鼓膜は、低コヒーレンスを有する光学源によって、測定経路を通して照明され、低コヒーレント光学源はまた、基準経路およびミラーに結合され、ミラーからの反射および鼓膜からの反射は、総和され、検出器に提示され、基準経路長は、鼓膜を含む範囲にわたって変調され、検出器は、それによって、十分に高率における基準経路長の変調が、圧力励起に応答して、鼓膜位置の推定を可能にし、それによって、鼓膜および隣接する流体の特性評価を提供するように、反射された光学エネルギーを、測定経路を通して鼓膜から、また、基準経路を通してミラーから受信する。
【0009】
本発明の第6の目的は、測定経路および基準経路を有する、光コヒーレンス断層撮影システムであって、基準経路は、長さにおいて変調され、測定経路および基準経路は、光学スプリッタを通して、低コヒーレンスを有する光学源に結合され、基準光学経路から反射された光学エネルギーおよび測定光学経路から反射された光学エネルギーは、総和され、波長スプリッタに、その後、複数の検出器に提供され、低コヒーレンス光学源の波長スペクトル内の波長のサブ範囲毎に、1つの検出器があって、複数の検出器は、波長特性によって、少なくとも2つの異なる反射材料に関する検出器応答を区別する、コントローラに結合される。
(発明の概要)
【0010】
光コヒーレンス断層撮影(OCT)デバイスは、第1のスプリッタを通して、その後、第2のスプリッタに結合される、光学エネルギーを発生させる低コヒーレンス光学源を有し、第2のスプリッタは、鼓膜への測定光学経路と、また、光学エネルギーを第1のスプリッタに返す、反射体への基準光学経路とを有し、反射された光学エネルギーは、測定光学経路から反射された光学エネルギーに追加される。組み合わせられた反射された光学エネルギーは、次いで、第1のスプリッタに提供され、これは、光学エネルギーを検出器に指向する。反射体は、測定光学経路および基準光学経路の経路長が等しいとき、検出器が、特定の測定経路深度からの光学強度と、随意に、一連の光学スペクトル密度とを提示するように、基準光学経路の軸に沿って変位して空間的に変調される。デバイスが、測定経路が外耳道の中に指向された状態で位置付けられ、基準光学経路の軸に沿った反射体の場所の平行移動を通して、基準光学経路長を変動させることによって、光学エネルギーを鼓膜に指向すると、鼓膜の光学特性およびスペクトル特性の測定が、実施され得る。加えて、外部圧力励起が、印加され、OCT測定の間、鼓膜のインパルスまたは定常状態の周期的励起を提供し、ピーク応答およびピーク応答の関連付けられた時間が、識別され得る。鼓膜の時間的特性および位置変位が、その後、検査され、外部圧力励起に対する鼓膜応答を決定することができる。OCT検出器データからの鼓膜応答の評価が、続いて、特定の粘度または生物膜特性と相関され得る。時間的特性の検査によって、鼓膜に隣接する流体の粘度の推定値が、決定され、粘度が、続いて、治療可能細菌性感染の可能性と相関され得る。
本明細書は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
反射膜に隣接する流体の特性評価のための方法であって、上記方法は、
低コヒーレント光学源を第1のスプリッタに提供することであって、光学エネルギーの一部は、測定経路に指向され、上記光学エネルギーの一部は、基準経路に指向され、
上記基準経路は、時間的に変調された長さを有し、それによって、周期的間隔にわたって基準経路長を変化させ、
上記測定経路は、特性評価されるべき反射膜を含み、上記基準経路は、上記測定経路と実質的に等しい長さを有し、上記基準経路はまた、光学エネルギーを反射させるための反射体を有する、ことと、
上記測定経路から反射された光学エネルギーと、上記基準経路から反射された光学エネルギーを総和し、上記総和された光学エネルギーを検出器に印加することであって、
上記検出器は、基準経路変調器に対する検出器ピーク応答をコントローラに提供し、
上記コントローラは、検出器応答のペデスタル幅および上記検出器ピーク応答の到着時間を検査する、ことと、
現在のピーク検出器応答と前のピーク検出器応答とを比較することと、
鼓膜メトリックを現在のピーク検出器応答および前のピーク検出器応答から形成することであって、上記鼓膜メトリックは、上記ペデスタル幅が増加されると増加し、上記鼓膜メトリックは、上記検出器ピークの到着時間の変動が減少すると増加する、ことと
を含む、方法。
(項目2)
上記基準経路および上記測定経路は、完全反射ミラーおよび部分反射ミラーによって形成される自由空間光学経路である、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記基準経路および上記測定経路は、導波管によって形成される、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記基準経路および上記測定経路は、光ファイバによって形成される、項目1に記載の方法。
(項目5)
低コヒーレンス源は、発光ダイオードである、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記検出器は、光学/電気コンバータである、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記検出器は、複数の波長特有の出力を有する、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記時間的に変調された長さは、ミラーに結合される音声コイルアクチュエータを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
上記時間的に変調された長さは、PZTアクティブ化式変調器である、項目1に記載の方法。
(項目10)
上記複数の波長特有の出力は、検出器応答とテンプレートメモリ内に保存された種々の材料タイプの波長応答との比較のために、上記テンプレートメモリに結合される、項目7に記載の方法。
(項目11)
上記テンプレートメモリ材料タイプのうちの少なくとも1つは、耳垢に関する反射応答である、項目10に記載の方法。
(項目12)
上記耳垢の検出は、ユーザに対し、耳垢検出のインジケーションを発生させる、項目11に記載の方法。
(項目13)
鼓膜の測定のためのデバイスであって、上記デバイスは、
低コヒーレンス光学出力を発生させる光学源と、
第1のスプリッタおよび第2のスプリッタであって、各スプリッタは、コンバイナポート、第1のポート、および第2のポートを有し、各スプリッタは、電力を、上記第1のポートから上記コンバイナポートに、そして上記コンバイナポートから上記第2のポートに結合し、
上記光学源は、上記第1のスプリッタの第1のポートに結合され、
第1のスプリッタのコンバイナポートは、上記第2のスプリッタのコンバイナポートに結合され、
上記第2のスプリッタの第1のポートは、光学エネルギーを、外部光学ポートに、そして特性評価されるべき膜に結合し、上記特性評価されるべき膜から上記第2のスプリッタの第1のポートまでの光学距離は、測定長であり、
上記第2のスプリッタの第2のポートは、測定光学長を中心として変調された光学長を有する光学基準経路に結合され、
それによって、上記外部光学ポートから反射された光学エネルギーは、上記第2のスプリッタのコンバイナポートを通して、上記第1のスプリッタのコンバイナポート、上記第1のスプリッタの第2のポート、および検出器に指向される、スプリッタと、
信号を上記検出器から受信し、現在の検出器応答と前の検出器応答とを比較し、反射メトリックを形成する、コントローラと
を有する、デバイス。
(項目14)
低コヒーレンス源は、発光ダイオードである、項目13に記載のデバイス。
(項目15)
上記検出器は、ブロードバンド検出器である、項目13に記載のデバイス。
(項目16)
上記検出器は、複数の出力を有し、各出力は、一意の波長範囲に応答する、項目13に記載のデバイス。
(項目17)
上記第1のスプリッタおよび第2のスプリッタは、部分反射ミラーである、項目13に記載のデバイス。
(項目18)
上記第1のスプリッタおよび第2のスプリッタは、光ファイバである、項目13に記載のデバイス。
(項目19)
上記コントローラは、検出器応答幅、ペデスタル幅、または反射された波長プロファイルのうちの少なくとも1つに基づいて、滲出メトリックを形成する、項目13に記載のデバイス。
(項目20)
上記基準経路の光学長は、ミラーに結合される電圧または電流が制御されるアクチュエータを使用して変調される、項目13に記載のデバイス。
(項目21)
上記基準経路の光学長は、光ファイバに結合されるPZTアクチュエータを使用して、変調される、項目13に記載のデバイス。
(項目22)
上記ブロードバンド検出器である複数の検出器は、複数の検出器応答と既知の生物学的材料との比較のためのテンプレートメモリを含む、項目15に記載のデバイス。
(項目23)
テンプレートメモリ検出器応答のうちの少なくとも1つは、耳垢、健康な鼓膜、炎症を起こした鼓膜、細菌流体、滲出流体、または粘着流体である、項目22に記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、光コヒーレンス断層撮影特性評価システムのブロック図を示す。
【
図2A】
図2Aは、機械的アクチュエータ変位対アクチュエータ電圧のプロットを示す。
【
図2B】
図2Bは、アクチュエータ電圧または電流によって制御されるにつれた基準経路長のプロットを経時的に示す。
【
図3】
図3は、鼓膜の検査に使用するための光コヒーレンス断層撮影特性評価システムのためのブロック図を示す。
【
図5】
図5Aは、基準長の変調のための例示的励起波形のプロットを示す。
図5Bは、OME等からの流体に隣接する鼓膜に関する検出器信号および正常鼓膜に関する検出器信号を示す。
【
図6】
図6は、鼓膜の測定のための光学導波管システムを示す。
【
図7】
図7は、励起源を伴う、鼓膜の測定のための光学導波管システムを示す。
【
図8A】
図8Aは、反射された応答信号を伴う、変形可能表面または膜に印加される正弦波励起に関するプロットを示す。
【
図8B】
図8Bは、変形可能表面または膜に印加されるステップ励起およびステップ励起に対する応答に関するプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施例による、光コヒーレンス断層撮影(OCT)デバイスのためのブロック図を示す。1つの図面に現れる各参照番号は、異なる図面に提示されるとき、同一機能を有すると理解される。コリメートされた出力を伴う、ブロードバンド発光ダイオード(LED)等の低コヒーレンス源102は、光学エネルギーを経路104に沿って第1の光学スプリッタ106へと発生させ、光学エネルギーは、第2の光学スプリッタ108まで継続し、そこで光学エネルギーは、測定光学経路118および基準光学経路112に分割し、これは、第2のスプリッタ108から、ミラー110へ、そして経路長変調器114への区画を含む。測定光学経路118内の光学エネルギーは、鼓膜120と相互作用し、反射された光学エネルギーは、経路118を介して、検出器に逆伝搬し、そこでミラー110およびスプリッタ108から反射された基準光学経路112からの光学エネルギーによって結合され、組み合わせられた反射された光学エネルギーは、第1のスプリッタ106に、その後、ミラー105に、そして経路122を介して、検出器124に伝搬する。検出器124は、経路122上の検出された光学エネルギーの強度に対応する電気信号を発生させ、これは、鼓膜から反射された光学エネルギーのための経路長が、基準光学経路と正確に同一長であるとき、定常状態最大値であって、基準光学経路長が、経路長変調器114を経時的に作動させる等によって、ある範囲にわたって掃引される場合、一時的最大値である。各タイプの反射膜は、特性検出器信号を生じるであろう。例えば、基準経路長が、健康な鼓膜等の薄い膜境界を通して横断するにつれて、単一ピークが、鼓膜の単一反射領域に対応する結果となるであろう。基準経路長が、1つの低粘度感染性滲出物を含有するもの等の流体耳を通る場合、鼓膜反射の初期ピークは、続いて、反射された信号の光学減衰から降下する振幅を伴う、延長反射の領域を発生させるであろう。基準経路長が、細菌性感染を伴う鼓膜を通して横断する場合、細菌薄膜が、鼓膜の反対表面上に存在し得、これは、より大きい軸方向反射範囲を生じ、その後、高散乱係数および対応する増加された減衰を示す、ペデスタルが続き得る。加えて、鼓膜の背後の3つのタイプの流体粘度(空気対薄い流体対濃い流体)は、鼓膜上で発生された圧力励起に対して異なるように応答するであろう。故に、基準光学経路長および随意に鼓膜に隣接する圧力を変調させ、検出器出力信号の性質および励起圧力に対する応答を検査し、鼓膜に隣接する流体の有無、鼓膜に隣接する細菌等の生物膜の有無、および鼓膜に隣接する流体の粘度を決定することが可能であって、全て、検出器出力に提示されるような測定光学経路上の鼓膜の移動から生じる。
【0013】
本発明の一実施例では、経路長変調器114は、特性評価されるべき鼓膜115の移動の領域に対応する、
図1の126aから126dまでの測定経路長に対応する距離だけ、基準経路長を変動させる。変調器114が、基準経路長を増加させるにつれて、検出器に送達される信号は、領域126dにより近くなり、変調器114が、基準経路長の距離を減少させるとき、検出器に送達される領域信号は、領域126a内にある。
【0014】
図2Aは、アクチュエータ電圧または電流と経路長変調器114の軸方向変位との間の例示的関係を示し、これは、ミラー114に結合され、112の光学軸を中心としてミラーを変調させる、音声コイルアクチュエータのための音声コイルドライバであり得る、機械的ドライバ回路116によって駆動される。ドライバおよび経路長変調器114のタイプは、経路長変調器114を変位させるためのエネルギーが、移動するミラーの場合のように、経路長変調器114の質量に関連するため、変位変調の最高周波数に依存する。ミラーおよびアクチュエータは、より低い反射体質量および対応してより高速のミラー応答のための微小電気機械システム(MEMS)であってもよい。ミラーの使用に限定されず、種々の他の経路長変調器を利用することが可能であり得る。
【0015】
図2Bは、アクチュエータ電圧を段階的様式で発生させる、コントローラ117を示し、アクチュエータは、各深度において一時的に停止する。例えば、増加されるアクチュエータ駆動が、T1からT2までのより長い基準経路長をもたらす場合、アクチュエータ電圧は、
図1の変位位置126aに対応する202aであり得、他の電圧202b、202c、および202dは、それぞれ、126b、126c、および126dの鼓膜に隣接する位置に対応し得る。
【0016】
図3は、単一測定出力を提供するように配列される要素を伴う、例示的OCT鼓膜特性評価システム302を示す。自由空間光学(光ファイバ等の導波管内に閉じ込められない、光学エネルギー)の場合、
図1および3のシステムスプリッタおよびコンバイナは、部分反射ミラーである。
図3に示される主要要素は、
図1の同一機能要素に対応する。基準光学経路の再配列によって、システムの要素は、示されるように、封入されてもよい。
【0017】
本発明の一実施例では、検出器124は、トータルの印加される光学強度に応答し、特性応答を有する、単一の全波長光学検出器であってもよい。本発明の別の実施例では、検出器124は、各反射された光学波長が別個に検出され得るように、単一波長フィルタまたは色彩スプリッタおよび複数の検出器要素を含んでもよい。
図4は、色彩検出器124Aに進入する、コリメートされた光学エネルギー122を示し、そこで屈折プリズム124Bによって異なる波長に分裂され、これは、波長λ1、λ2、λ3、λ4を線形または2D検出器124C上に分離し、次いで、波長別に反射された光学エネルギーに関する強度マップを提供することが可能である。波長の個々の検出は、波長吸収の識別特性が特定のタイプの細菌または鼓膜病理学に特有である場合、有用であり得る。検出器応答のスペクトルは、典型的には、数mmを上回る深度測定能力を伴うOCTシステムのためのIR範囲内であり得る、反射された光学エネルギー応答に調整される。本発明の一実施例では、種々の生物学的材料に関する検出器スペクトル応答は、メモリ内に維持され、複数の光学検出器からの応答の重畳と比較される。例えば、耳垢(耳滓)、健康な鼓膜、炎症を起こした鼓膜(血液が注入された鼓膜)、細菌流体、滲出流体、および粘着流体の光学反射特性は、テンプレートメモリ内に維持され、データ入手の軸方向深度にわたって測定された鼓膜応答のスペクトル分布と比較されてもよい。基準光学経路長の範囲にわたる各軸方向深度における検出器応答が、次いで、コントローラによって、テンプレートメモリスペクトルパターンのそれぞれのスペクトル特性と比較されることができ、コントローラは、波長およびテンプレートメモリのコンテンツ毎に、検出器応答を検査し、本決定に基づいて、測定経路反射を提供する材料のタイプを推定する。耳垢に関するスペクトルパターンの検出は、検出器応答からの耳垢スペクトル応答の減算をもたらし得、および/またはユーザに、耳滓が応答において検出されたことのインジケーションをもたらし得、ユーザは、鼓膜の異なる領域内の測定光学経路をポイントすることによって排除し得る。
【0018】
光コヒーレンス断層撮影の軸方向分解能は、光学波長の割合であるため、撮像されている構造がそれぞれ、わずか100ミクロン軸方向厚である場合でも、光学スペクトルに基づいて、構造のそれぞれを別個に特性評価することが可能である。システムの軸方向分解能は、測定軸に沿って、かつ鼓膜の軸方向範囲にわたって、非常に狭い光学ビームに高空間エネルギーを提供することによって改良され得る。
【0019】
図5Aおよび5Bは、鼓膜の位置の経時的検出において使用するための本発明の実施例を示す。コントローラ117は、経路長変調器による使用のための三角波形502を発生させ、これは、光学エネルギーを鼓膜に指向し、これは、それに隣接する流体を有し得、流体は、特定の粘度を有し得、これは、細菌性感染の進行の間、増加することが公知であり得る。細菌性感染は、具体的光学反射特性を伴って、生物学的薄膜を鼓膜等の膜の表面上に提供することが公知である。光学信号は、外側外耳道を通して特性評価されるべき鼓膜に向かって指向され、
図5Bの検出器応答は、
図3のコントローラ117によって検査される。波形の第1のセット509は、時間ドメイン応答を示し、これは、第1の反射界面における鼓膜によって提供される鋭的反射光学界面の強い反射と関連付けられた初期ピーク507を含み、鼓膜の背後の流体もまた、傾きペデスタル508として示される、深度に伴って減衰する、信号を発生させる。ペデスタル508の存在は、鼓膜の背後の流体の存在を示す。これは、波形522のピーク等、正常鼓膜に関する応答の第2のセット511と対照的であり得、これは、反射流体が鼓膜の背後に存在しないため、比較的に狭く、短縮された持続時間520である。
【0020】
本発明の付加的実施形態では、鼓膜自体は、経時的に変調される、空気パフまたは空気圧源等の外部励起源によって変調されてもよい。外部圧力励起源が、提供され、圧力励起が、例えば、鼓膜の1%未満変位を提供するように選択された場合、ピーク光学信号の相対的時間的位置は、鼓膜の位置を示すであろう。システムのリフレッシュレートは、先行技術超音波デバイスの音響ではなく、光学であるため、鼓膜の照会速度は、経路長変調器114の変調率によってのみ限定され、これは、超音波システムより数倍高速であり得る。加えて、光学干渉法に依拠する、光学システムの軸方向分解能は、超音波システムの軸方向分解能をはるかに上回り、これは、変換器リングダウンによって支配される。加えて、空気と鼓膜との間の音響インピーダンス境界が、非常に大きいため、鼓膜を越えた構造までの超音波の超音波透過深度は、非常に限定される。対照的に、空気から鼓膜までの光学屈折率比は、本境界を横断した超音波屈折率比より何倍も低く、したがって、界面における光学エネルギー損失は、より低い。光学透過は、主に、鼓膜および鼓膜界面を越えた構造と関連付けられた散乱損失によって境界され、これらの損失は、部分的に、非常に高い光学エネルギーを使用することによって、軽減され得、これは、デューティサイクル変調でパルス化され、鼓膜に印加される平均電力を合理的平均電力範囲内に維持する。
【0021】
図6は、光コヒーレンス断層撮影システム600の光ファイバ実施例を示す。コントローラ618は、種々のサブシステムを協調させ、これは、低コヒーレンス源602を有効にすることを含み、該低コヒーレンス源は、光学エネルギーを光ファイバ604に結合し、該光ファイバは、本光学エネルギーを、その後、第1のスプリッタ606に送達し、その後、光ファイバ608および第2のスプリッタ610に送達する。第2のスプリッタ610からの光学エネルギーは、2つの経路に指向され、一方は、長さLmeas615を伴う、鼓膜までの測定経路612であって、他方は、長さLrefを伴い、代替として、ミラー状研磨端部または光学反射終端であり得る、開放反射ファイバ端部619の中に終端する、基準光学経路617であって、光学経路617は、PZT変調器614の周囲に巻着される光ファイバを含み、これは、励起電圧がPZTに印加されると、寸法形状および直径を変化させる。PZT変調器614が、正弦波または方形波励起をフィードされると、PZT変調器614は、直径を増加および減少させ、それによって、可変長Lrefを提供する。PZT変調器614はまた、周波数100Khzを超える高速ファイバ長変調が可能である。当技術分野において公知の他のファイバ長変調器も、Lref経路上の光ファイバの長さを急速に変化させるために使用されてもよく、PZT変調器614は、参照のためだけに示される。Lmeas経路およびLref経路からの組み合わせられた光学エネルギーは、第2のスプリッタ610に到達し、ファイバ608上に戻り、PZT変調器614から反射され、かつ鼓膜650から反射された光学エネルギーの総和を構成する。組み合わせられた光学エネルギーは、第1のスプリッタ606への経路608を辿って、ファイバ620を通して、検出器622まで進行し、そこでコヒーレント光学エネルギーは、重畳および減算され、適宜、検出器622出力を形成し、これは、分析のために、コントローラ618にフィードされる。コントローラ618はまた、
図5Aの電圧または電流波形502等のPZT変調器励起電圧616を発生させ、また、低コヒーレンス源602を有効にするための信号を発生させ、検出器622応答の分析を実施し得、これは、検出器622の波長応答にわたる単一強度値または
図4のセンサによって提供される個々の波長出力であり得る。コントローラは、Lref変調機能と組み合わせて、検出器応答に作用し、流体が鼓膜に隣接して存在する可能性に相関され得る、滲出メトリックを決定し、また、鼓膜に隣接する流体の粘度のインジケーションを提供する。
【0022】
図7は、好ましくは、鼓膜への印加のために、50デカパスカル(daPa)を下回るピーク圧力で音声コイルアクチュエータまたは他の圧力源によって作動される、微細な圧力変化を送達する、外部鼓膜励起発生器704を伴う、
図6の拡張を示す。PZT変調器614による基準経路長の変調は、励起発生器704の最高周波数コンテンツを少なくとも2倍超える率であって、ナイキストサンプリング要件を満たす。
【0023】
本発明の一実施例では、基準経路長は、連続して動作する第1の変調器および第2の変調器によって変調され、第1の変調器は、大きいが、比較的低速な基準経路長変化を提供し、第2の変調器は、小さいが、比較的高速な基準経路長変化を提供する。このように、第1の変調器は、鼓膜に中心を合わせられる等、OCT検査の領域を着目領域内に設置可能であって、第2の変調器は、圧力励起に応答した鼓膜移動の推定のために、経路長を迅速に変動させ、経路長の高変化率(故に、高サンプリングレート)を提供することが可能である。
【0024】
図1および3では115として、
図6および7では650として示される鼓膜では、鼓膜は、遠位頂点(
図1および3の119、
図6および7の651)を伴う円錐形形状を有することが分かり、これは、耳鼻咽喉学では、「光の円錐」として公知であって、これは、臨床検査の間、入射光学エネルギーに対する法線表面を提供する、鼓膜の唯一の領域であるためである。同様に、先行技術システムの超音波源を使用するとき、光領域の円錐は、有意な反射された信号エネルギーを提供する、鼓膜の唯一の部分である。本発明の光学システムは、表面から反射された光学エネルギーに作用し、これは、散乱された光学エネルギーのために、入射ビームに対して法線方向である必要はなく、それによって、超音波システムに優る別の利点を提供する。
【0025】
図8Aは、100daPa(デカパスカル)p-pによって鼓膜または表面圧力の局所領域を変調させるために十分な体積を変位させる音声コイルダイヤフラムアクチュエータを使用して印加される正弦波波形821等、鼓膜に印加される励起発生器704からの例示的正弦波圧力励起を示す。亜音速(20Hzを下回る)周波数は、励起表面の周囲の局所領域をシールすることを要求し得る一方、可聴周波数(20Hz~20kHzの範囲内)および超可聴周波数(20kHzを上回る)は、特性評価されるべき鼓膜につながる外耳道をシールせずに、発生器704からの可聴波として十分に伝搬され得る。正弦波圧力励起821は、表面の変調をもたらし、これは、プロット832として示され、表面位置における変調は、同一量の関連付けられたLref経路長の変化に対応する。波形832の各離散円形は、Lref経路長および鼓膜位置の変化に対応する、OCT測定システム700からのサンプル点を表し、各点332は、1つのそのようなサンプルを表す。本発明の一例示的実施形態では、一連の正弦波変調励起821周波数が、印加され、それぞれ、異なる周期822を伴い、応答830の遅延およびLrefのピーク変化は、組み合わせて使用され、鼓膜の延性もしくは弾性、流体粘度、または他の鼓膜もしくは流体性質を推定する。本実施例では、鼓膜の変位と基準経路の経路長の関連付けられた変化との間には、1:1関係が存在し、これは、ピーク応答をもたらす。例えば、
図5Bのスケールが、0、-0.5mm、-1mm、-0.5mm、0mm、0.5mm等のシーケンスである場合、これは、これらの同一距離の鼓膜の対応する変位を表す。プロット832に示されるように、種々のサイクル時間822を伴って、一連の可聴および亜可聴トーンを印加し、Lrefの変化を測定することによって、鼓膜の変位を推定し、鼓膜の背後の流体の粘度または弾性等の周波数依存特性を抽出することが可能である。例えば、流体の変化する密度または粘度と関連付けられた例示的弾性メトリック測定は、段階変化に関する表面もしくは膜応答時間874の関連付けられた変化または正弦波周波数に関する位相遅延830であり得る。このように、表面の周波数ドメイン応答は、一連の励起821を使用して、一連の表面応答832を測定することによって成され得る。
図6および7の基準経路変調器614または
図3のミラー114は、鼓膜を含むように基準経路長の中心を合わせ、第1の経路長変調器と、基準経路長を急速に変動させ、鼓膜の軸方向移動の適正なサンプリングを提供する、第2の経路長変調器とを含んでもよい。
【0026】
図8Aは、一連のそのような励起において提供され、一連の測定から表面変位の位相対周波数応答プロットを発生させ得る、正弦波励起を示すが、
図8Bは、
図8Aの時間ドメインステップ応答均等物を示し、50daPaピークの表面ステップ圧力励起862が、鼓膜に印加され、これは、測定された鼓膜変位シーケンス872を発生させる。同様に、変位応答プロット872のための時間遅延874および振幅応答(0.5mmとして示される)に基づいて、表面応答を特性評価することも可能である。
【0027】
本発明の一実施例では、赤外線範囲源等の別個の低コヒーレンス光学源102または602が、透過深度増加のために使用され、別個の可視源(図示せず)が、鼓膜上の測定光学経路をポイントしながら、特性評価されている鼓膜の領域を示すために同軸方向に使用される。光学源102または602は、散乱を低減させ、それによって、透過の付加的深度を提供する、赤外線源であってもよい。本発明の別の実施例では、低コヒーレンス光学源102または602は、可視光学源であって、それによって、着目鼓膜領域の照明と、また、前述のように、鼓膜の変位の測定との両方を提供する。
【0028】
本実施例は、本発明を理解するために提供され、本発明は、種々の異なる方法において、光学エネルギーを伝搬するための異なるタイプの導波管、ならびに異なる光学源、光学検出器、および基準経路長Lrefを変調させる方法を使用して、実践されてもよいことを理解されたい。本発明の範囲は、以下の請求項によって説明される。
【外国語明細書】