(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082714
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】標的検出のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220526BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20220526BHJP
C12N 9/22 20060101ALN20220526BHJP
C12N 11/00 20060101ALN20220526BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220526BHJP
C40B 10/00 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6816 Z
C12N9/22
C12N11/00
C12Q1/6869 Z
C40B10/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063363
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2018544143の分割
【原出願日】2017-02-23
(31)【優先権主張番号】62/298,937
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517213223
【氏名又は名称】アーク バイオ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ビー. グーギュッチョン
(72)【発明者】
【氏名】メレディス エル. カーペンター
(72)【発明者】
【氏名】エリック ハーネス
(57)【要約】
【課題】標的検出のための方法および組成物の提供。
【解決手段】標的特異的ガイド核酸および核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を使用する、試料中の標的の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。本発明の方法は、試料由来の核酸を複数のガイド核酸(gNA)-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体と接触させるステップであって、前記複合体は、少なくとも1つの標的へと標的化されており、かつ前記核酸、前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、または前記核酸および前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は標識を含むステップを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年2月23日に出願された米国仮特許出願番号第62/298,937号の優先権の利益を主張しており、この仮特許出願は、その全体が本明細書によって援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
核酸ベースの検出方法は、費用効果が高く、迅速で、感度が高く、かつ正確であるべきである。また、検出プラットフォームは、使用および解釈が単純であり、広範な作動条件(温度、湿度、照明条件、およびインフラストラクチャーへのアクセス等)の下で安定であり、好ましくは携帯可能かつ使い捨て可能であるべきである。(Yagerら、Nature、2
006年、442巻、412~418頁)。さらには、それらは要求される感度および特異性を提供するべきである。(Weiglら、Lab Chip、2008年、8巻、1999~2014頁)。マルチプレックス試験を実行する能力は検出方法および検出デバイスにとって別の重要な必要条件である。
【0003】
核酸配列の検出の使用の一つの適用は病原体の検出である。感染性疾患は世界中で依然として罹患および死亡の主要な原因となっている。従来の標準的な病原体検出方法は、細胞培養、PCRおよび酵素イムノアッセイを含んでおり、これらはしばしば多大な労働力を要し、実行に数時間から数日を要し得る。(Foudehら、Lab Chip、2012年、12
巻、3249~3266頁)。世界保健機関の2004年次報告書では、感染性疾患は、心臓血管疾患に次いで世界中での死亡の二番目に多い原因として特定されている(WHO、世界保健報告2004、ジュネーヴ、2004年)。この問題は、衛生状態が悪く、診断および治療用の集中施設へのアクセスが限られた地域において特に大きい。先進国においてさえ、食品産業、病原体の大発生および性感染疾患に関して対処すべき問題が残されている。政治面では、生物兵器戦争の脅威もまた現実的な可能性として存在する。効果的な病原体の検出および同定は、感染性疾患の予防および治療にとって決定的に重要である。
核酸配列の検出方法には、病原体の検出および同定に加えて、他の適用がある。例えば、毒素の由来となる植物(例えば、リシンを含有するトウゴマ)の検出、またはヒトの同定もしくは腫瘍のシークエンシングの目的での単一ヌクレオチド多型(SNP)の検出は、ほんの二つの例である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yagerら、Nature、2006年、442巻、412~418頁
【非特許文献2】Weiglら、Lab Chip、2008年、8巻、1999~2014頁
【非特許文献3】Foudehら、Lab Chip、2012年、12巻、3249~3266頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、費用効果が高く、迅速で、感度が高く、かつ正確であり、なおかつ広範な作動条件下で実施できる核酸の検出および同定方法を提供することが当該技術分野において必要とされている。この必要性に対処する方法および組成物が、本明細書に提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
ガイドRNA(gRNA)媒介性CRISPR/Cas系タンパク質等の標的特異的ガイド核酸(gNA)媒介性ヌクレアーゼ系タンパク質を使用する、標的核酸の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。
【0007】
一つの態様では、本明細書において、試料中の標的を同定する方法であって、(a)試料由来の核酸を複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体と接触させるステップであって、前記複合体は、少なくとも1つの標的へと標的化されており、かつ前記核酸、前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、または前記核酸および前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は標識を含む、ステップと、(b)前記標識由来の特定のシグナルを検出することによって達成される、前記試料中の前記標的を同定するステップであって、特定のシグナルの存在は、前記核酸への前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合を示す、ステップとを含む方法が提供される。一部の実施形態では、核酸は、標識を含む。一部の実施形態では、標識は、インターカレーター型の標識である。一部の実施形態では、核酸は、接触ステップの前に標識される。一部の実施形態では、核酸は、接触ステップの後に標識される。一部の実施形態では、複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、標識を含む。一部の実施形態では、複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、接触ステップの前に標識される。一部の実施形態では、複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、接触ステップの後に標識される。一部の実施形態では、核酸および複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は、標識される;一部の実施形態では、これらは両方とも、接触ステップの前に標識される;一部の実施形態では、これらは両方とも、接触ステップの後に標識される。一部の実施形態では、核酸は、接触の前に標識され、かつ複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、接触ステップの後に標識される。一部の実施形態では、核酸は、接触ステップの後に標識され、かつ複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、接触ステップの前に標識される。一部の実施形態では、核酸は、第1の標識を含み、かつgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、第2の標識を含み、第1の標識および第2の標識は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)用のドナー/アクセプターペアを含む。一部の実施形態では、接触させるステップが、室温で実行される。一部の実施形態では、同定するステップは、単一のシグナルを検出することを含む。一部の実施形態では、同定するステップは、複数のシグナルを検出することを含む。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、CRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5からなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、活性がないCRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、dCas9である。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、CRISPR/Cas系ニッカーゼタンパク質である。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、オフターゲット結合の低下を呈する。一部の実施形態では、標識は、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団、フルオロフォア、色原体、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、標識は、検出可能な標識である。一部の実施形態では、試料は、臨床試料、法医学的試料、環境試料、メタゲノム試料および食品試料からなる群から選択される。一部の実施形態では、試料は、ヒトに由来する。一部の実施形態では、試料は、接触前に処理されない。一部の実施形態では、核酸、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、または核酸およびgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は、複数の標識を含む。一部の実施形態では、複合体は、複数の標的へと標的化されている。一部の実施形態では、標的は、病原体である。一部の実施形態では、病原体は、表1に記載の病原体から選択される。一部の実施形態では、異なる標的へと標的化された複合体は、異なる標識を含む。一部の実施形態では、異なる標的へと標的化された前記複合体が、同じ標識を含む。一部の実施形態では、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は基材に付着されている。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、基材に付着されている。一部の実施形態では、gNAは、基材に付着されている。一部の実施形態では、核酸は、基材に付着されている。一部の実施形態では、基材はシリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である。一部の実施形態では、基材は、二次元の基材である。一部の実施形態では、基材は、三次元の基材を含む。一部の実施形態では、基材は、チャンバーを含むかまたは円筒状アレイである。一部の実施形態では、gNAまたはgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、既知の順序で基材に付着されている。一部の実施形態では、基材は、再使用可能である。一部の実施形態では、接触は、溶液中で行われる。一部の実施形態では、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、gNAまたは核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、溶液中に存在する。一部の実施形態では、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、少なくとも1つの特異なgNAを含む。一部の実施形態では、核酸は、せん断される。一部の実施形態では、核酸は、増幅される。一部の実施形態では、核酸は、伸長できないヌクレオチドを用いて1または複数の末端において遮断される。一部の実施形態では、核酸は、同定ステップの後にシークエンシングによってさらに分析される。一部の実施形態では、複数の標的は、同時に同定される。一部の実施形態では、方法は、24時間未満で実行される。一部の実施形態では、試料は、事前のスクリーニングステップに供される。一部の実施形態では、試料は、複数の検出ステップに供される。一部の実施形態では、核酸へのgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合は、標的の存在を示す。一部の実施形態では、核酸へのgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合の欠如は、標的が存在しないことを示す。一部の実施形態では、該方法は、小滴を生成するステップをさらに含み、小滴のサブセットは、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含む。一部の実施形態では、小滴のサブセットは、核酸に結合したgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含む。本明細書に提供されているいずれかの実施形態では、試料由来の核酸は、DNAを含む。本明細書に提供されているいずれかの実施形態では、試料由来の核酸は、DNAである。本明細書に提供されているいずれかの実施形態では、試料由来の核酸は、RNAを含む。本明細書に提供されているいずれかの実施形態では、試料由来の核酸は、RNAである。
【0008】
別の態様では、本明細書において、少なくとも1つの標的へと標的化されたガイド核酸(gNA)の収集物であって、複数のgNAが標識を含む、収集物が提供される。一部の実施形態では、収集物は、複数の標的へと標的化されている。一部の実施形態では、標的は、病原体である。一部の実施形態では、病原体は、表1に記載の病原体から選択される。一部の実施形態では、異なる標的へと標的化されているgNAは、異なる標識を含む。一部の実施形態では、異なる標的へと標的化されているgNAは、同じ標識を含む。一部の実施形態では、標識は、検出可能な標識である。一部の実施形態では、標識は、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団、フルオロフォア、色原体、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、gNAは、2つ以上の標識を含む。一部の実施形態では、gNAは、基材に付着されている。一部の実施形態では、基材は、シリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である。一部の実施形態では、基材は、二次元の基材である。一部の実施形態では基材は、三次元の基材を含む。一部の実施形態では、基材は、チャンバーを含むかまたは円筒状アレイである。一部の実施形態では、gNAは、既知の順序で基材に付着されている。一部の実施形態では、基材は、再使用可能である。一部の実施形態では、gNAは、溶液中に存在する。一部の実施形態では、収集物は、少なくとも1つの特異なgNAを含む。一部の実施形態では、gNAは、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化している。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、CRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5からなる群から選択される。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、活性がないCRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、活性がないCRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、dCas9である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、CRISPR/Cas9系ニッカーゼタンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、CRISPR/Cas9系ニッカーゼタンパク質である。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、オフターゲット結合の低下を呈する。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、標識も含む。
【0009】
別の態様では、本明細書において、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の収集物であって、gNAが、少なくとも1つの標的へと標的化されており、かつ複数の複合体が、標識を含む、収集物が提供される。一部の実施形態では、複数のgNAは標識を含む。一部の実施形態では、複数の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、標識を含む。一部の実施形態では、複数のgNAおよび複数の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方が、標識を含む。一部の実施形態では、gNAは、複数の標的へと標的化されている。一部の実施形態では、標的は、病原体である。一部の実施形態では、病原体は、表1に記載の病原体から選択される。一部の実施形態では、異なる標的へと標的化されているgNAは、異なる標識を含む。一部の実施形態では、異なる標的へと標的化されているgNAは、同じ標識を含む。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、異なる標識を含む。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、同じ標識を含む。一部の実施形態では、標識は、検出可能な標識である。一部の実施形態では、標識は、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団、フルオロフォア、色原体、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、複合体は、2つ以上の標識を含む。一部の実施形態では、複合体は、基材に付着されている。一部の実施形態では、gNAは、基材に付着されている。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、基材に付着されている。一部の実施形態では、基材は、シリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である。一部の実施形態では、基材は、二次元の基材である。一部の実施形態では、基材は、三次元の基材である。一部の実施形態では、基材は、チャンバーを含むかまたは円筒状アレイである。一部の実施形態では、複合体は、既知の順序で基材に付着されている。一部の実施形態では、基材は、再使用可能である。一部の実施形態では、複合体は、溶液中に存在する。一部の実施形態では、収集物は、少なくとも1つの特異なgNAを含む。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、CRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5からなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、活性がないCRISPR/Cas系タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、dCas9である。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、CRISPR/Cas系タンパク質は、CRISPR/Cas系ニッカーゼタンパク質である。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、オフターゲット結合の低下を呈する。
【0010】
別の態様では、本明細書に記載されている収集物(collection)および組成物のいずれか一つを含むキットが、本明細書に提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
試料中の標的を同定する方法であって、
a.試料由来の核酸を複数のガイド核酸(gNA)-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体と接触させるステップであって、前記複合体は、少なくとも1つの標的へと標的化されており、かつ前記核酸、前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、または前記核酸および前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は標識を含む、ステップと、
b.前記標識由来の特定のシグナルを検出することによって達成される、前記試料中の前記標的を同定するステップであって、特定のシグナルの存在は、前記核酸への前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合を示す、ステップと
を含む方法。
(項目2)
前記核酸が、標識を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記標識が、インターカレーター型の標識である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記核酸が、前記接触ステップの前に標識される、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記核酸が、前記接触ステップの後に標識される、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、CRISPR/Cas系タンパク質である、項目2に記載の方法。
(項目7)
小滴を生成するステップをさらに含み、前記小滴のサブセットが、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含む、項目1から6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記小滴のサブセットが、前記核酸に結合したgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、標識を含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、前記接触ステップの前に標識される、項目9に記載の方法。
(項目11)
複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、前記接触ステップの後に標識される、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記核酸が、標識を含む、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記核酸および前記複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方が、前記接触ステップの前に標識される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記核酸および前記複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方が、前記接触ステップの後に標識される、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記核酸が、接触の前に標識され、かつ前記複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、前記接触ステップの後に標識される、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記核酸が、接触の後に標識され、かつ前記複数の前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、前記接触ステップの前に標識される、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記核酸が、第1の標識を含み、かつ前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、第2の標識を含み、前記第1の標識および前記第2の標識が、蛍光共鳴エネルギー移動用のドナー/アクセプターペアを含む、項目12に記載の方法。
(項目18)
前記接触させるステップが、室温で実行される、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記同定するステップが、単一のシグナルを検出することを含む、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記同定するステップが、複数のシグナルを検出することを含む、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5からなる群から選択されるCRISPR/Cas系タンパク質である、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、dCas9である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質である、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、オフターゲット結合の低下を呈する、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記標識が、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団、フルオロフォア、色原体、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記標識が、検出可能な標識である、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記試料が、臨床試料、法医学的試料、環境試料、メタゲノム試料および食品試料からなる群から選択される、項目1から27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記試料が、ヒトに由来する、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記試料が、前記接触前に処理されない、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記核酸、前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、または前記核酸および前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方が、複数の標識を含む、項目1から30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記複合体が、複数の標的へと標的化されている、項目1から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記標的が、個体である、項目1から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記標的が、病原体である、項目1から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記病原体が、表1に記載の病原体から選択される、項目33に記載の方法。
(項目36)
異なる標的へと標的化された前記複合体が、異なる標識を含む、項目32に記載の方法。
(項目37)
異なる標的へと標的化された前記複合体が、同じ標識を含む、項目32に記載の方法。
(項目38)
前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、基材に付着されている、項目1から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記基材が、シリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記基材が、二次元の基材である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記基材が、三次元の基材を含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記基材が、チャンバーを含むかまたは円筒状アレイである、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、既知の順序で基材に付着されている、項目38に記載の方法。
(項目44)
前記基材が、再使用可能である、項目38から43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、溶液中に存在する、項目1から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が、少なくとも1つの特異なgNAを含む、項目1から45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記接触が、溶液中で行われる、項目1から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記核酸が、基材に付着されている、項目1から37のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記基材が、シリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記核酸が、シークエンシングによってさらに分析される、項目1から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記核酸が、せん断される、項目1から50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記核酸が、増幅される、項目1から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記核酸が、伸長できないヌクレオチドを用いて1または複数の末端において遮断される、項目1から52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
複数の標的が、同時に同定される、項目1から53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
24時間未満で実行される、項目1から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記試料が、事前のスクリーニングステップに供される、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記試料が、複数の検出ステップに供される、項目1から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記核酸へのgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合が、標的の存在を示す、項目1から57のいずれかに記載の方法。
(項目59)
核酸へのgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合の欠如が、標的が存在しないことを示す、項目1から57のいずれかに記載の方法。
(項目60)
前記核酸が、DNAを含む、項目1から59のいずれかに記載の方法。
(項目61)
前記核酸が、DNAである、項目1から59のいずれかに記載の方法。
(項目62)
少なくとも1つの標的へと標的化されたガイド核酸(gNA)の収集物であって、複数の前記gNAが標識を含む、収集物。
(項目63)
複数の標的へと標的化されている、項目62に記載の収集物。
(項目64)
前記標的が、個体である、項目62から63のいずれか一項に記載の収集物。
(項目65)
前記標的が、病原体である、項目62から63のいずれか一項に記載の収集物。
(項目66)
前記病原体が、表1に記載の病原体から選択される、項目65に記載の収集物。
(項目67)
異なる標的へと標的化されている前記gNAが、異なる標識を含む、項目63から66のいずれか一項に記載の収集物。
(項目68)
異なる標的へと標的化されている前記gNAが、同じ標識を含む、項目63から66のいずれか一項に記載の収集物。
(項目69)
前記標識が、検出可能な標識である、項目62から68のいずれか一項に記載の収集物。
(項目70)
前記標識が、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団、フルオロフォア、色原体、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せからなる群から選択される、項目62から69のいずれか一項に記載の収集物。
(項目71)
前記gNAが、2つ以上の標識を含む、項目62から70のいずれか一項に記載の収集物。
(項目72)
前記gNAが、基材に付着されている、項目62から71のいずれか一項に記載の収集物。
(項目73)
前記基材が、シリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である、項目72に記載の収集物。
(項目74)
前記基材が、二次元の基材である、項目73に記載の収集物。
(項目75)
前記基材が、三次元の基材を含む、項目73に記載の収集物。
(項目76)
前記基材が、チャンバーを含むかまたは円筒状アレイである、項目73に記載の収集物。
(項目77)
前記gNAが、既知の順序で基材に付着されている、項目62から76のいずれか一項に記載の収集物。
(項目78)
前記基材が、再使用可能である、項目72から77のいずれか一項に記載の収集物。
(項目79)
前記gNAが、溶液中に存在する、項目62から71のいずれか一項に記載の収集物。
(項目80)
少なくとも1つの特異なgNAを含む、項目62から79のいずれか一項に記載の収集物。
(項目81)
前記gNAが、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化している、項目62から80のいずれか一項に記載の収集物。
(項目82)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、CRISPR/Cas系タンパク質である、項目81に記載の収集物。
(項目83)
前記CRISPR/Cas系タンパク質が、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5からなる群から選択される、項目82に記載の収集物。
(項目84)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である、項目81に記載の収集物。
(項目85)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、dCas9である、項目84に記載の収集物。
(項目86)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質である、項目81に記載の収集物。
(項目87)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、オフターゲット結合の低下を呈する、項目81に記載の収集物。
(項目88)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、標識をさらに含む、項目62から87のいずれか一項に記載の収集物。
(項目89)
ガイド核酸(gNA)-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の収集物であって、前記gNAが、少なくとも1つの標的へと標的化されており、かつ複数の前記複合体が、標識を含む、収集物。
(項目90)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、CRISPR/Cas系タンパク質である、項目89に記載の収集物。
(項目91)
複数の前記gNAが標識を含む、項目89に記載の収集物。
(項目92)
複数の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、標識を含む、項目89に記載の収集物。
(項目93)
複数のgNAおよび複数の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方が、標識を含む、項目89に記載の収集物。
(項目94)
前記gNAが、複数の標的へと標的化されている、項目89から93のいずれか一項に記載の収集物。
(項目95)
前記標的が、個体である、項目89から94のいずれか一項に記載の収集物。
(項目96)
前記標的が、病原体である、項目89から94のいずれか一項に記載の収集物。
(項目97)
前記病原体が、表1に記載の病原体から選択される、項目96に記載の収集物。
(項目98)
異なる標的へと標的化されている前記gNAが、異なる標識を含む、項目89から97のいずれか一項に記載の収集物。
(項目99)
異なる標的へと標的化されている前記gNAが、同じ標識を含む、項目89から97のいずれか一項に記載の収集物。
(項目100)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、異なる標識を含む、項目89から97のいずれか一項に記載の収集物。
(項目101)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、同じ標識を含む、項目89から97のいずれか一項に記載の収集物。
(項目102)
前記標識が、検出可能な標識である、項目89から101のいずれか一項に記載の収集物。
(項目103)
前記標識が、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団、フルオロフォア、色原体、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せからなる群から選択される、項目89から101のいずれか一項に記載の収集物。
(項目104)
前記複合体が、2つ以上の標識を含む、項目89から103のいずれか一項に記載の収集物。
(項目105)
前記複合体が、基材に付着されている、項目89から104のいずれか一項に記載の収集物。
(項目106)
前記gNAが、前記基材に付着されている、項目105に記載の収集物。
(項目107)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、前記基材に付着されている、項目105に記載の収集物。
(項目108)
前記基材が、シリカ、プラスチック、ガラスまたは金属である、項目105に記載の収集物。
(項目109)
前記基材が、二次元の基材である、項目108に記載の収集物。
(項目110)
前記基材が、三次元の基材である、項目108に記載の収集物。
(項目111)
前記基材が、チャンバーを含むかまたは円筒状アレイである、項目108に記載の収集物。
(項目112)
前記複合体が、既知の順序で基材に付着されている、項目89から105のいずれか一項に記載の収集物。
(項目113)
前記基材が、再使用可能である、項目89から112のいずれか一項に記載の収集物。
(項目114)
前記複合体が、溶液中に存在する、項目89から104のいずれか一項に記載の収集物。
(項目115)
少なくとも1つの特異なgNAを含む、項目89から114のいずれか一項に記載の収集物。
(項目116)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5からなる群から選択されるCRISPR/Cas系タンパク質である、項目89から115のいずれか一項に記載の収集物。
(項目117)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である、項目116に記載の収集物。
(項目118)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、dCas9である、項目117に記載の収集物。
(項目119)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質である、項目116に記載の収集物。
(項目120)
前記核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、オフターゲット結合の低下を呈する、項目116に記載の収集物。
(項目121)
項目62から120に記載の収集物のいずれか一つを含むキット。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、gNAが標識される第1のスキーム(左)ならびにgNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方が標識される第2のスキーム(右)を含む、例示的な標識スキームを図解する。この図では、核酸は基材に付着されている。
【0012】
【
図1B】
図1Bは、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的の検出および同定の例示的なスキームを図解しており、試料核酸は基材に付着されており、かつ標識されたgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を基材上に流している。未結合のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を洗い流した後、標的を同定することができる。
【0013】
【
図2】
図2は、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性のマルチプレックス標的検出および同定の例示的なスキームを図解しており、標識されたgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は溶液中に存在している。
【0014】
【
図3】
図3は、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的検出および同定の例示的なスキームを図解しており、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は基材に付着されている。
【0015】
【
図4A】
図4A~4Dは、キャピラリーアレイベースの方式を使用する、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的検出および同定の例示的なスキームを図解する。
図4Aは、ブロックとして見られる、予め定められた様式でキャピラリー内に区画としてパターン化された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を示す。核酸はキャピラリーを通って流される。キャピラリーの特定部分内に結合した核酸-複合体からのシグナルの検出は、目的の標的の存在を示す。
【0016】
【
図4B】
図4A~4Dは、キャピラリーアレイベースの方式を使用する、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的検出および同定の例示的なスキームを図解する。
図4Bは、標識された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が試料核酸と共にプレインキュベートされた後、キャピラリーアレイを通って流される例示的なスキームを図解しており、キャピラリーアレイもまた、キャピラリー内にブロックとして見られる特定の様式でパターン化された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含有している。このスキームにより、より高感度の標的の検出および同定が可能となる。このスキームでは、核酸は、2つの異なる複合体と会合し、捕捉される。
【
図4C】
図4A~4Dは、キャピラリーアレイベースの方式を使用する、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的検出および同定の例示的なスキームを図解する。
図4Cは、標識された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が試料核酸と共にプレインキュベートされた後、キャピラリーアレイを通って流される例示的なスキームを図解しており、キャピラリーアレイもまた、キャピラリー内にブロックとして見られる特定の様式でパターン化された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含有している。このスキームにより、より高感度の標的の検出および同定が可能となる。このスキームでは、核酸は、2つの異なる複合体と会合し、捕捉される。
【0017】
【
図4D】
図4A~4Dは、キャピラリーアレイベースの方式を使用する、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的検出および同定の例示的なスキームを図解する。
図4Dは、バーコードのような様式で標的を検出できることを示す。核酸-gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の検出シグナルのバンドパターンは、生体試料中の標的の素性を示す「UPCバーコード」として働くことができる。例えば、試料中の異なるE.coli株をバンドパターンにしたがって同定することができる。
【0018】
【
図5】
図5は、小滴ベースのアプローチを使用する、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的同定の例示的なスキームを図解する。
【0019】
【
図6】
図6は、標的の検出用にローリングサークル増幅を利用するための例示的なスキームを図解する。
【0020】
【
図7】
図7は、標的を検出するためにFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用するための例示的なスキームを図解する。
【0021】
【
図8】
図8は、標的核酸を検出するためにFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用するための別の例示的なスキームを図解する。
【0022】
【
図9】
図9は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質を使用する、標的DNAの蛍光標識および検出の例示的なスキームを図解する。
【0023】
【
図10】
図10は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質を使用する、標的核酸のFRET媒介性の検出の例示的なスキームを図解する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
gRNA等の標的特異的(例えば、病原体特異的)ガイド核酸(gNA)、およびCRISPR/Cas系タンパク質等の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を使用する、標的(例えば、病原体)の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。一部の好ましい実施形態では、gNAはgRNAであり、かつ核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、Cas9等のCRISPR/Cas系タンパク質である。gRNAおよびCRISPR/Cas系タンパク質を用いる方法を本明細書中で論じる場合は常に、他の適切な核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質およびgNAを用いる関連方法もまた想定される。
【0025】
本明細書で特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、この発明が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるそれらに類似するまたは同等であるいかなる方法および材料も本発明の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法および材料を記載する。
【0026】
数値範囲は、その範囲を規定する数を含む。
【0027】
本明細書を解釈する目的で、次の定義が適用されるが、適切であれば、単数形で使用されている用語は、複数形も含み、その逆もまた真であり得る。下に示す任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾するならば、示されている定義が優先されるものとする。
【0028】
本明細書で使用するように、単数形である「1つの(a)」、「1つの(an)」および
「その(the)」は、他に断りがなければ、複数形の参照を含む。
【0029】
本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態が、「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」態様および実施形態を含むことが理解される。
【0030】
本明細書で使用する用語「約」は、当技術分野の当業者には直ちに分かる、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における、「約」によるある値またはパラメータの参照は、当該値またはパラメータそれ自体を対象とする実施形態を含む(および記載する)。
【0031】
本明細書で使用する用語「核酸」は、1個または複数の核酸サブユニットを含む分子を指す。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)、ならびにこれらの改変バージョンから選択される1個または複数のサブユニットを含むことができる。核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、これらの組合せまたは誘導体を含む。核酸は、一本鎖および/または二本鎖であってよい。
【0032】
核酸は、「ヌクレオチド」を含み、これは、本明細書で使用するように、プリンおよびピリミジン塩基、ならびにこれらの改変バージョンを含有する部分を含むことが意図される。そのような改変には、メチル化されたプリンまたはピリミジン、アシル化されたプリンまたはピリミジン、アルキル化されたリボースまたは他の複素環が含まれる。さらに、用語「ヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」にはハプテンまたは蛍光標識を含有する部分が含まれ、従来のリボースおよびデオキシリボース糖だけでなく、他の糖も同様に含有することができる。改変ヌクレオシド、改変ヌクレオチドまたは改変ポリヌクレオチドには、例えば、ヒドロキシル基の1つまたは複数がハロゲン原子または脂肪族基で置き換えられるか、エーテル、アミンなどとして官能基化される、糖部分の改変も含まれる。
【0033】
本明細書に記載されている構造的および機能的特徴のいずれかに関して、これらの特徴を決定する方法は、当技術分野で公知である。
【0034】
標的
標的の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。該方法は、標的特異的ガイド核酸(gNA)(ガイドRNA等)および核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質(例えば、Cas9等のCRISPR/Cas系タンパク質)を利用する。標的は核酸を含有し、該核酸が同定および検出用に利用される。
【0035】
想定される標的は、試料中の種または属レベルの検出(例えば、ヒトDNAの存在)、病原体(以下の実例用の実施形態において使用されるようなもの)、単一ヌクレオチド多型(SNP)、挿入、欠失、縦列反復配列または転座(例えば、腫瘍プロファイリング用または遺伝性疾患の診断用)、個体(例えば、ヒト個体)の指標となるマーカー(ヒトSNPまたはSTR等)の同定(例えば、法医学的試料中の個体DNAの同定用)、潜在的な毒素、または動物、真菌および植物(例えば、リシンを含有する、トウゴマの痕跡、食品において使用される原材料)を非限定的に含む。
【0036】
場合によっては、複合試料中に存在する1または複数の対象のゲノムは実質的に同一であり、標準技術を使用して解明することが困難であり得る。場合によっては、1または複数の対象は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.99%、99.999%同一のゲノムを有する。場合によっては、1または複数の対象は、1または複数の異なる微生物株、例えば、1または複数の細菌株、ウイルス株、真菌株等である。
【0037】
標的核酸配列は、1または複数の遺伝子特徴を含み得る。1または複数の遺伝子特徴は、一つの対象を別の対象から区別し得る。本明細書中で言及するような遺伝子特徴は、ゲノム、遺伝子型、ハプロタイプ、クロマチン、染色体、染色体遺伝子座、染色体材料、対立遺伝子、遺伝子、遺伝子クラスター、遺伝子座、遺伝子多型、遺伝子突然変異、単一ヌクレオチド多型(SNP)、制限酵素断片長多型(RFLP)、縦列反復配列多型(variable tandem repeat)(VTR)、コピー数多型(CNV)、マイクロサテライト配列、遺伝子マーカー、配列マーカー、配列タグ部位(STS)、プラスミド、転写単位、転写産物、遺伝子発現レベル、遺伝子発現状態であり得る。標的核酸配列は、本質的に任意の公知の遺伝子特徴を含み得る。
【0038】
病原体標的
病原体の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。病原体は、細菌、ウイルス、真菌、藻または原生動物であり得る。病原体は、真核生物または原核生物であり得る。
【0039】
一部の実施形態では、病原体は細菌である。一実施形態では、病原体は、グラム陰性細菌である。別の実施形態では、病原体は、グラム陽性細菌である。一実施形態では、病原体は、結核を引き起こす細菌である。例示的な実施形態では、病原体は、Mycobacterium tuberculosisである。別の実施形態では、病原体は、Escherichia属の細菌である。別の実施形態では、病原体は、Escherichia coli(E.coli)細菌である。例示的な実施形態では、病原体は、E.coli O157:H7である。例示的な実施形態では、病原体は、E.coli K12である。例示的な実施形態では、病原体は、E.coli S88である。例示的な実施形態では、病原体は、E.coli O45:K1である。
【0040】
一部の実施形態では、病原体は、疾患を引き起こす病原体である。一部の実施形態では、病原体は、食物媒介性の感染症を引き起こす。一部の実施形態では、病原体は、尿路感染症を引き起こす。一部の実施形態では、病原体は、肺炎を引き起こす。一部の実施形態では、病原体は、上気道感染症を引き起こす。一部の実施形態では、病原体は、敗血症または敗血症性ショックを引き起こす。一部の実施形態では、病原体は、胃腸の病気を引き起こす。一部の実施形態では、病原体は、性感染性の病原体である。
【0041】
一部の実施形態では、病原体は、生物兵器として使用されるものである。一部の実施形態では、斯かる病原体は、炭疽菌である。例示的な実施形態では、病原体は、Bacillus anthracisである。例示的な実施形態では、病原体は、Yersinia pestisである。
【0042】
一部の実施形態では、病原体は、真核生物病原体(真核生物体中で病原性)である。
【0043】
一部の実施形態では、病原体は、哺乳動物病原体である(哺乳類生物体中で病原性であり得る)。一部の実施形態では、病原体は、ヒト病原体である。一部の実施形態では、病原体は、霊長類病原体である。一部の実施形態では、病原体は、非霊長類病原体である。一部の実施形態では、病原体は、サル病原体である。一部の実施形態では、病原体は、家畜類(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタまたはロバ)に特異的である。一部の実施形態では、病原体は、家畜動物(例えば、ネコ、イヌ、アレチネズミ、マウスまたはラット)に特異的である。
【0044】
一部の実施形態では、病原体は、哺乳動物寄生生物である。一実施形態では、寄生生物は虫である。別の実施形態では、寄生生物は、マラリアを引き起こす寄生生物である。別の実施形態では、寄生生物は、リーシュマニア症を引き起こす寄生生物である。別の実施形態では、寄生生物はアメーバである。
【0045】
一部の実施形態では、病原体は、非哺乳動物病原体である(非哺乳類生物体中で病原性であり得る)。
【0046】
一部の実施形態では、病原体は、植物病原体である。一部の実施形態では、植物は、コメ、トウモロコシ、小麦、バラ、ブドウ、コーヒー、果実、トマト、ジャガイモまたはワタである。
【0047】
一部の実施形態では、病原体は、鳥類病原体(鳥および他の鳥類生物体中で病原性)である。鳥類生物体は、ニワトリ、シチメンチョウ、カモおよびガンを非限定的に含む。
【0048】
例示的な実施形態では、表1(出典:「Summary of Notifiable Diseases - United States, 2010」CDC、http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5953a1.htm、
アクセス日:2016年2月18日)は、本明細書に提供されている方法および組成物を使用して同定され得る例示的な疾患を引き起こす病原体を提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0049】
標的特異的gNA
標的特異的ガイド核酸(gNA)が本明細書に提供される。これらの標的特異的gNAは、試料中の核酸標的の検出および同定のために利用される。gNAは、結合のために、核酸ガイド化ヌクレアーゼタンパク質をgNAと同族の標的にガイドする。
【0050】
一部の実施形態では、標的特異的gNAは、標識され得る。
【0051】
少なくとも1つの標的へと標的化されたgNAの収集物も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、標的は、病原体である。一部の実施形態では、標的は、SNPである。
【0052】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、単一の標的へと標的化されている。
【0053】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、複数の標的へと標的化されている。
【0054】
一部の実施形態では、収集物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、75、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2500、5000、7500、またはさらには少なくとも10,000の標的へと標的化されたgNAを含む。一部の例示的な実施形態では、収集物は、約1~3、1~5、1~10、1~25、1~50、1~75、1~100、5~10、5~25、5~50、5~75、5~100、10~20、10~25、10~50、10~75、10~100、25~50、25~75、25~100、50~75、50~100、75~100、100~150、100~200、100~300、100~400、100~500、100~600、100~700、100~800、100~900、100~1000、100~200の標的、200~300、200~400、200~500、200~600、200~700、200~800、200~900、200~1000、300~400、300~500、300~600、300~700、300~800、300~900、300~1000、400~500、400~600、400~700、400~800、400~900、400~1000、400~600、400~700、400~800、400~900、400~1000、500~600、500~700、500~800、500~900、500~1000、600~700、600~800、600~900、600~1000、700~800、700~900、700~1000、800~900、800~1000、900~1000、500~1000、500~5000、500~10,000、1000~5000、1000~10,000、またはさらには約5000~10,000の標的へと標的化されたgNAを含む。
【0055】
一部の実施形態では、標的特異的gNAは、標識を含む。
【0056】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、複数の標的へと標的化されており、かつ、それぞれの個々の標的へと標的化されたgNAは、異なる標識を含むか、またはそれぞれの個々の標的へと標的化されたgNAは、複数の標識を含む。
【0057】
一部の実施形態では、収集物中のgNAは、標的生物体のゲノムにわたって106bp毎の、105bp毎の、104bp毎の、103bp毎の、102bp毎の、50bp毎の、25bp毎の、またはそれ未満毎の間隔の標的配列に向けられた標的化配列を含む。
【0058】
一部の実施形態では、収集物中のgNAは、標的生物体のゲノム中の特異な配列に向けられた標的化配列を含む。
【0059】
一部の実施形態では、gNAは、基材に付着されている。一部の実施形態では、gNAは、既知の、参照可能な、または予め定められた順序で基材に付着されている。
【0060】
一部の実施形態では、gNAは、溶液中に存在する。
【0061】
一部の実施形態では、gNAは、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化される。一部の実施形態では、本明細書に提供されているgNAの収集物は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、またはさらには少なくとも20の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質に対する特異性を呈するメンバーを含む。特異的な一実施形態では、本明細書に提供されているgNAの収集物は、dCas9タンパク質、ならびにdeadCpf1、deadCas3、deadCas8a-c、deadCas10、deadCse1、deadCsy1、deadCsn2、deadCas4、deadCsm2およびdeadCm5からなる群から選択される別の活性がないCas/CRISPR系タンパク質に対する特異性を呈するメンバーを含む。
【0062】
一部の実施形態では、少なくとも1つの標的に標的化されるgNAの収集物は、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも2500、少なくとも5000、少なくとも75000、少なくとも10,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも250,000、少なくとも500,000、少なくとも750,000、少なくとも1,000,000、少なくとも2,500,000、少なくとも5,000,000、少なくとも7,500,000、少なくとも10,000,000の特異なgNAを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの標的に標的化されたgNAの収集物は、少なくとも5~10、10~50、50~100、10~100、100~500、100~1000、100~10,000、100~100,000、100~1,000,000、100~10,000,000、1000~10,000、1000~100,000、1000~1,000,000、1000~10,000,000、10,000~100,000、10,000~1,000,000、10,000~10,000,000、100,000~1,000,000、100,000~10,000,000、または1,000,000~10,000,000の特異なgNAを含む。一部の実施形態では、gNAの収集物は、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010の特異なgNAを含む。一部の実施形態では、gNAの収集物は、全部で、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010のgNAを含有する。
【0063】
一部の実施形態では、gNAは、任意のプリンまたはピリミジン(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。一部の実施形態では、gNAは、アデニン、ウラシル、グアニンおよびシトシン(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。一部の実施形態では、gNAは、アデニン、チミン、グアニンおよびシトシン(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。一部の実施形態では、gNAは、アデニン、チミン、グアニン、シトシンおよびウラシル(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。
【0064】
一部の実施形態では、標的特異的gNAは、標的化配列を含む第1のRNA構成成分、および核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質結合性配列を含む第2のRNA構成成分を含む。一部の実施形態では、第1の構成成分はcrRNAを含み、第2の構成成分はtracrRNAを含む。一部の実施形態では、2つの構成成分は、共有結合により結合している。一部の実施形態では、2つの構成成分は、共有結合により結合していない。一部の実施形態では、2つの構成成分は、互いに会合している。
【0065】
病原体特異的gNA
一部の実施形態では、gNAの収集物は、単一の病原体、少なくとも1つの病原体、または複数の病原体へと標的化されている。一部の実施形態では、病原体は、表1に挙げた疾患の1または複数を引き起こすものである。
【0066】
一部の実施形態では、収集物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、75、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2500、5000、7500、またはさらには少なくとも10,000の病原体へと標的化されたgNAを含む。一部の例示的な実施形態では、収集物は、約1~3、1~5、1~10、1~25、1~50、1~75、1~100、5~10、5~25、5~50、5~75、5~100、10~20、10~25、10~50、10~75、10~100、25~50、25~75、25~100、50~75、50~100、75~100、100~150、100~200、100~300、100~400、100~500、100~600、100~700、100~800、100~900、100~1000、100~200の標的、200~300、200~400、200~500、200~600、200~700、200~800、200~900、200~1000、300~400、300~500、300~600、300~700、300~800、300~900、300~1000、400~500、400~600、400~700、400~800、400~900、400~1000、400~600、400~700、400~800、400~900、400~1000、500~600、500~700、500~800、500~900、500~1000、600~700、600~800、600~900、600~1000、700~800、700~900、700~1000、800~900、800~1000、900~1000、500~1000、500~5000、500~10,000、1000~5000、1000~10,000、またはさらには約5000~10,000の病原体へと標的化されたgNAを含む。
【0067】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、同じ属の複数の病原体へと標的化されている。一部の実施形態では、gNAの収集物は、異なる属の複数の病原体へと標的化されている。
【0068】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、同じ種の複数の病原体へと標的化されている。一部の実施形態では、gNAの収集物は、異なる種の複数の病原体へと標的化されている。
【0069】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、同じ血清型の複数の病原体へと標的化されている。一部の実施形態では、gNAの収集物は、異なる血清型の複数の病原体へと標的化されている。
【0070】
一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、標識を含む。
【0071】
一部の実施形態では、gNAの収集物は、複数の病原体へと標的化されており、かつそれぞれの個々の病原体へと標的化されたgNAは、異なる標識を含むか、またはそれぞれの個々の病原体へと標的化されたgNAは、複数の標識を含む。
【0072】
例示的な実施形態では、gNAの収集物は、5つの病原体へと標的化されており、該病原体は、エボラ、HIV、デング、ジカおよびチクングンヤである。この例示的な収集物では、エボラに特異的なgNAは第1の標識を含み、HIVに特異的なgNAは第2の標識を含み、デングに特異的なgNAは第3の標識を含み、ジカに特異的なgNAは第4の標識を含み、かつチクングンヤに特異的な病原体特異的gNAは第5の標識を含む。
【0073】
一部の実施形態では、収集物中のgNAは、病原体のゲノムにわたって106bp毎の、105bp毎の、104bp毎の、103bp毎の、102bp毎の、50bp毎の、25bp毎の、またはそれ未満毎の間隔の標的配列に向けられた病原体配列を含む。
【0074】
一部の実施形態では、収集物中の病原体特異的gNAは、病原体のゲノム中の特異な配列に向けられた標的化配列を含む。
【0075】
一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、基材に付着されている。一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、既知の、参照可能な、または予め定められた順序で基材に付着されている。
【0076】
一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、溶液中に存在する。
【0077】
一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化される。一部の実施形態では、本明細書に提供されている病原体特異的gNAの収集物は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、またはさらには少なくとも20の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質に対する特異性を呈するメンバーを含む。特異的な一実施形態では、本明細書に提供されている病原体特異的gNAの収集物は、dCas9タンパク質、ならびにdeadCpf1、deadCas3、deadCas8a-c、deadCas10、deadCse1、deadCsy1、deadCsn2、deadCas4、deadCsm2およびdeadCm5からなる群から選択される別の活性がないCas/CRISPR系タンパク質に対する特異性を呈するメンバーを含む。
【0078】
一部の実施形態では、少なくとも1つの病原体特異的に標的化される病原体特異的gNAの収集物は、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも2500、少なくとも5000、少なくとも75000、少なくとも10,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも250,000、少なくとも500,000、少なくとも750,000、少なくとも1,000,000、少なくとも2,500,000、少なくとも5,000,000、少なくとも7,500,000、少なくとも10,000,000の特異な病原体特異的gNAを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの病原体に標的化された病原体特異的gNAの収集物は、少なくとも5~10、10~50、50~100、10~100、100~500、100~1000、100~10,000、100~100,000、100~1,000,000、100~10,000,000、1000~10,000、1000~100,000、1000~1,000,000、1000~10,000,000、10,000~100,000、10,000~1,000,000、10,000~10,000,000、100,000~1,000,000、100,000~10,000,000、または1,000,000~10,000,000の特異な病原体特異的gNAを含む。一部の実施形態では、gNAの収集物は、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010の特異なgNAを含む。一部の実施形態では、gNAの収集物は、全部で、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010の病原体特異的gNAを含有する。
【0079】
一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、任意のプリンまたはピリミジン(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。一部の実施形態では、gNAは、アデニン、ウラシル、グアニンおよびシトシン(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。一部の実施形態では、gNAは、アデニン、チミン、グアニンおよびシトシン(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。一部の実施形態では、gNAは、アデニン、チミン、グアニン、シトシンおよびウラシル(および/またはこれらの改変バージョン)を含む。
【0080】
一部の実施形態では、病原体特異的gNAは、標的化配列を含む第1のRNA構成成分、および核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質結合性配列を含む第2のRNA構成成分を含む。一部の実施形態では、第1の構成成分はcrRNAを含み、第2の構成成分はtracrRNAを含む。一部の実施形態では、2つの構成成分は、共有結合により結合している。一部の実施形態では、2つの構成成分は、共有結合により結合していない。一部の実施形態では、2つの構成成分は、互いに会合している。
【0081】
標的特異的gNAの編成
本明細書に提供される標的特異的gNAは、表面上の領域として編成され得る。例えば、標的特異的gNAは、アレイまたは他の表面もしくは基材(例えば、ビーズ、プレート)上に、スポット、ブロック、ビーズ、小滴、ウェルまたは他の編成構造として編成され得る。gNA集団は、表面上の領域として、例えばウェルまたは小滴等の区画として編成され得る。gNA集団は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と共に編成および配置されて、該編成内における標的への結合を可能とし得る。
【0082】
スポット、ブロック、ビーズ、小滴、ウェルまたは他の編成構造のいずれであっても、所与の領域は、単一の標的化配列を標的にするgNAを含み得る。他の場合には、所与の領域は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの標的化配列を標的にするガイド核酸集団を含み得る。単一の領域内の複数の標的化配列は、それぞれが、同じ標的に対する異なる標的化配列(それぞれが特定種の病原体を同定する異なる標的化配列等)であり得る。他の場合には、単一の領域内の複数の標的化配列は、それぞれが、同じ属の異なるメンバー等の異なる標的に対する標的化配列であり得る。
【0083】
対象特異的領域は、離散的なスポット状またはクラスター状等の、個々に取り扱うことができる(例えば、検出用に個々に取り扱うことができる)方式で表面上に分布させることができる。対象特異的領域に対応する複数のgNAは、gNAの1または複数のセットとして並べることができる。gNAの各セット内で、複数のgNAは同一であり得るか、またはそれらは互いに異なり得る。各セット内で、複数のgNAは、それぞれが対象特異的特徴を含み得る。各セット内の複数のgNAは、一つの対象を別の対象から区別する1または複数の対象特異的特徴を含み得る。場合によっては、対象特異的特徴は、円形、正方形または長方形エリア等の、アレイ上のスポットまたはエリアであり得る。場合によっては、対象特異的特徴は、ビーズであり得る。場合によっては、対象特異的特徴は、特徴特異的タグを用いて標識された一連のgNAであり得る。特徴特異的タグは、例えば、特徴特異的バーコード、または特徴特異的標識用の結合性部位であり得る。一部の例では、特徴は、反復的特徴を有する。一部の例では、反復的特徴は同一である。一部の例では、反復的特徴は、同じ標的ポリヌクレオチドを同定するように設計される。一部の例では、反復的特徴は、同じゲノムを同定するように設計される。一部の例では、反復的特徴は、種内の任意の株を同定するように設計される。場合によっては、反復的特徴は、個体を同定するように設計される。
【0084】
gNAセット内または対象特異的領域内の複数の特異なgNAは、デバイスからのシグナルを検出するために用いられる検出系の分解能より小さいか、またはそれと同等のサイズのエリア内に配置され得る。複数の特異な、順序を定められたgNAに包含されるエリアは、検出系の分解能未満であってもよいし、検出系の分解能に等しくてもよく、あるいは、セット内の少なくとも2つの無作為に順序を定められた特異なgNAに包含されるエリアが検出系の分解能に概ね相当するか、またはそれ未満である限り、全ての特異なgNAに包含されるエリアは、より大きくてもよい。斯かる場合、複数の特異なgNAまたは特徴からのシグナルを収集し、1ピクセルもしくは数ピクセル、または他の分解能要素に統合することができる。斯かるアプローチにより、非同一のガイド核酸を単一の特徴中に集めるのと類似の結果を達成し得る。
【0085】
gNAは、偽陽性を検出するように設計され得る。例えば、gNAの設計は、セット内の個々のgNAが、他のgNAセット中の個々のガイド核酸にミスマッチな1または複数の塩基を有するように設計されているgNAセットを設計することによって為され得る。場合によっては、gNAセットは、相補的である。他の場合には、gNAセットは、非相補的である。別の例では、gNAセットは、複数の類似株を有する対象生物体を検索するように設計され得る。この例では、標的ではないが標的の配列に非常に近いゲノムを有し、1または複数の個々の特異な特徴を有する株が含有する個々の配列を検出するためのgNAセットを加えてもよい。
【0086】
領域は、それぞれが相違してよく、この相違は、異なる数のgNA、異なる種類のgNA、gNAによって標的化された異なる対象特異的特徴、特異なgNAの異なる平均的表現を含有すること等を非限定的に含む。
【0087】
核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質
本開示の方法は、核酸ガイド化ヌクレアーゼを利用する。本明細書で使用する場合、「核酸ガイド化ヌクレアーゼ」は、DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドを切断し、特異性を付与するために1つまたは複数の核酸ガイド核酸(gNA)を使用する任意のヌクレアーゼである。核酸ガイド化ヌクレアーゼには、CRISPR/Cas系タンパク質ならびに非CRISPR/Cas系タンパク質が含まれる。
【0088】
本明細書で提供される核酸ガイド化ヌクレアーゼは、DNAによって誘導されるDNAヌクレアーゼ;DNAによって誘導されるRNAヌクレアーゼ;RNAによって誘導されるDNAヌクレアーゼ;またはRNAによって誘導されるRNAヌクレアーゼであってよい。ヌクレアーゼはエンドヌクレアーゼであり得る。ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼであり得る。一実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼは、核酸ガイド化DNAエンドヌクレアーゼである。一実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼは、核酸ガイド化RNAエンドヌクレアーゼである。
【0089】
核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質結合配列は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系の任意のタンパク質メンバーに結合する核酸配列である。例えば、CRISPR/Cas系タンパク質結合配列は、CRISPR/Cas系の任意のタンパク質メンバーに結合する核酸配列である。
【0090】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼは、CASクラスI I型、CASクラスI III型、CASクラスI IV型、CASクラスII II型およびCASクラスII V型タンパク質からなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、CRISPR I型系、CRISPR II型系およびCRISPR III型系由来のタンパク質を含む、CRISPR/Cas系タンパク質を含む。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼは、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a~c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2、Cm5、Csf1、C2c2およびNgAgoからなる群から選択される。例示的な実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼは、Cas9である。
【0091】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、任意の細菌または古細菌種由来であってよい。
【0092】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Streptococcus thermophiles、Treponema denticola、Francisella tularensis、Pasteurella multocida、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Mycoplasma gallisepticum、Nitratifractor salsuginis、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia
intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum、Sphaerochaeta globus、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus
farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Legionella pneumophila、Suterella wadsworthensisまたはCorynebacter diphtheria由来の核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質)由来であるまたはこれに由来する。
【0093】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、天然に存在するものである。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、操作されたものである。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、単離され、組換えにより製造され、または合成のものである。
【0094】
一部の実施形態では、天然に存在する核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、CRISPR/Cas系タンパク質を含み、該CRISPR/Cas系タンパク質は、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2およびCm5を含む。
【0095】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の操作された例は、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む。「触媒活性がない」または単に「活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質」という用語は、例えば一部のCRISPR/Cas系タンパク質の場合、不活性化されたHNHおよびRuvCヌクレアーゼを有する核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を一般に指す。斯かるタンパク質は、任意の核酸中の標的部位(標的部位はgNAによって決定される)に結合し得るが、該タンパク質は、二本鎖DNAを切断するまたは二本鎖DNAにニックを入れることができない。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系の触媒活性がないタンパク質は、触媒活性がないCas9(dCas9)である。一実施形態では、活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質-gNA複合体は、gNA配列によって決定される標的に結合する。結合した活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、他のマニピュレーションを進める間、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質による切断を防止することができる。
【0096】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の操作された例は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質も含む。核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼは、単一の不活性触媒ドメインを含有する、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の改変バージョンを指す。一実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼは、Cas9ニッカーゼである。Cas9ニッカーゼは、単一の不活性触媒ドメイン、例えば、RuvC-またはHNH-ドメインのいずれかを含有することができる。1個のみの活性ヌクレアーゼドメインにより、核酸ガイド化ヌクレアーゼニッカーゼは、標的DNAの一方の鎖のみを切断し、一本鎖切断または「ニック」を作製する。どちらの突然変異体が使用されるかに応じて、gNAハイブリダイズ鎖または非ハイブリダイズ鎖を切断することができる。反対の鎖を標的とする2個のgNAに結合した核酸ガイド化ヌクレアーゼニッカーゼは、DNAに二本鎖切断を作製し得る。この「二重ニッカーゼ」戦略は、二本鎖切断が形成される前に、両方のgNA核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体(例えば、Cas9/gRNA複合体)が部位に特異的に結合することを必要とするため、切断の特異性を増加させることができる。
【0097】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の操作された例は、標的に類似するが同一でない配列へのオフターゲット結合を低下させるアミノ酸変化を含有する、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の高い特異性の突然変異体も含む。
【0098】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の操作された例は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系融合タンパク質も含む。例えば、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、別のタンパク質、例えば、活性化因子、リプレッサー、ヌクレアーゼ、酵素、蛍光分子、化学的タグ、放射性タグ、またはトランスポサーゼに融合されてよい。例えば、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、EGFPまたはターミナルトランスフェラーゼに融合され得る。
【0099】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、基材に付着されている。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、溶液中に存在する。
【0100】
CRISPR/Cas系核酸ガイド化ヌクレアーゼ
一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質が使用される。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、CRISPR I型系、CRISPR II型系およびCRISPR III型系由来のタンパク質を含む。
【0101】
一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、任意の細菌または古細菌種に由来し得る。
【0102】
一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、単離される、組換えにより産生されるか、または合成による。一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質の例は、天然に存在し得る、天然に存在するバージョンを模倣し得る、または操作されたバージョンであり得る。
【0103】
一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Streptococcus thermophiles、Treponema denticola、Francisella tularensis、Pasteurella multocida、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Mycoplasma gallisepticum、Nitratifractor salsuginis、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum、Sphaerochaeta globus、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Legionella pneumophila、Suterella wadsworthensisまたはCorynebacter diphtheriaからであるか、またはこれらに由来するCRISPR/Cas系タンパク質に由来する。
【0104】
一部の実施形態では、天然に存在するCRISPR/Cas系タンパク質は、CASクラスIタイプI、IIIもしくはIV、またはCASクラスIIタイプIIもしくはVに属することができ、Cas9、Cas3、Cas8a~c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2、Cmr5、Csf1、C2c2およびCpf1を含むことができる。
【0105】
例示的な実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質は、Cas9を含む。
【0106】
「CRISPR/Cas系タンパク質-gNA複合体」は、CRISPR/Cas系タンパク質およびgNA(例えば、gRNAまたはgDNA)を含む複合体を指す。gNAがgRNAである場合、gRNAは2つの分子、すなわち標的とハイブリダイズし、配列特異性を提供する1つのRNA(「crRNA」)、およびcrRNAとハイブリダイズすることが可能である1つのRNA「tracrRNA」で構成することができる。あるいは、ガイドRNAは、crRNAおよびtracrRNA配列を含有する単一の分子(すなわち、gRNA)であってよい。
【0107】
CRISPR/Cas系タンパク質は、野生型CRISPR/Cas系タンパク質と少なくとも60%同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%または90%同一、少なくとも95%同一または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一)であってよい。CRISPR/Cas系タンパク質は、野生型CRISPR/Cas系タンパク質の全ての機能、または、結合活性、ヌクレアーゼ活性およびヌクレアーゼ活性を含む機能のうち1つもしくは一部だけを有することができる。
【0108】
用語「CRISPR/Cas系タンパク質関連gNA」は、gNAを指す。CRISPR/Cas系タンパク質関連gNAは、単離されたNAとして、またはCRISPR/Cas系タンパク質-gNA複合体の一部として存在することができる。
【0109】
Cas9
一部の実施形態では、CRISPR/Cas系タンパク質、核酸ガイド化ヌクレアーゼは、Cas9であるかまたはCas9を含む。本発明のCas9は、単離されるか、組換えで生成されるか、または合成のものであってよい。Cas9は、天然に存在し得る、天然に存在するバージョンを模倣し得る、または操作されたバージョンであり得る。
【0110】
本明細書の実施形態において使用することができるCas9タンパク質の例は、F.A. Ran、L. Cong、W.X. Yan、D. A. Scott、J.S. Gootenberg、A.J. Kriz、B. Zetsche、O. Shalem、X. Wu、K.S. Makarova、E.V. Koonin、P.A. SharpおよびF. Zhang;「In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9」、Nature
520巻、186~191頁(2015年4月9日)doi:10.1038/nature14299、に見出すことができ、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
一部の実施形態では、Cas9は、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Streptococcus thermophiles、Treponema denticola、Francisella tularensis、Pasteurella multocida、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Mycoplasma gallisepticum、Nitratifractor salsuginis、Parvibaculum
lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum、Sphaerochaeta globus、Flavobacterium columnare、Fluviicola
taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Legionella pneumophila、Suterella wadsworthensisまたはCorynebacter diphtheriaに由来するII型CRISPR系である。
【0112】
一部の実施形態では、Cas9は、S.pyogenesに由来するII型CRISPR系であり、PAM配列は、標的特異的ガイド配列の3’末端に直に位置するNGGである。例示的な細菌種からのII型CRISPR系のPAM配列は、以下を含むこともできる:Streptococcus pyogenes(NGG)、Staph aureus(NNGRRT)、Neisseria meningitidis(NNNNGA
TT)、Streptococcus thermophilus(NNAGAA)およびTreponema denticola(NAAAAC)、これらは全て本発明から逸脱することなく使用可能である。
【0113】
例示的な一実施形態では、Cas9配列は、例えば、細菌で発現させ、組換え6Hisタグ付きタンパク質を精製するために、PCRによって再増幅され、次にpET30(EMD biosciencesから)にクローニングされる、pX330プラスミド(Addgeneから入手可能)から得ることができる。
【0114】
「Cas9-gNA複合体」は、Cas9タンパク質およびgNAを含む複合体を指す。Cas9タンパク質は、野生型Cas9タンパク質と、例えばStreptococcus pyogenesのCas9タンパク質と少なくとも60%同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、または90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一)であってよい。Cas9タンパク質は、野生型Cas9タンパク質の全ての機能、または、結合活性、ヌクレアーゼ活性およびヌクレアーゼ活性を含む機能のうち1つもしくは一部だけを有することができる。
【0115】
用語「Cas9関連gNA」は、前記のようなgNAを指す。Cas9関連gNAは、単離されて、またはCas9-gNA複合体の一部として存在することができる。
【0116】
非CRISPR/Cas系の核酸ガイド化ヌクレアーゼ
一部の実施形態では、非CRISPR/Cas系タンパク質が、本明細書で提供される実施形態で使用される。
【0117】
一部の実施形態では、非CRISPR/Cas系タンパク質は、任意の細菌または古細菌種からのものであってよい。
【0118】
一部の実施形態では、非CRISPR/Cas系タンパク質は、単離されるか、組換えで生成されるか、または合成のものである。
【0119】
一部の実施形態では、非CRISPR/Cas系タンパク質は、Aquifex aeolicus、Thermus thermophilus、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Streptococcus thermophiles、Treponema denticola、Francisella tularensis、Pasteurella multocida、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari、Mycoplasma gallisepticum、Nitratifractor salsuginis、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum、Sphaerochaeta globus、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Legionella
pneumophila、Suterella wadsworthensis、Natronobacterium gregoryiまたはCorynebacter diphtheriaからのものであるかまたはそれに由来する。
【0120】
一部の実施形態では、非CRISPR/Cas系タンパク質は、天然に存在し得る、天然に存在するバージョンを模倣し得る、または操作されたバージョンであり得る。
【0121】
一部の実施形態では、天然に存在する非CRISPR/Cas系タンパク質は、NgAgo(Natronobacterium gregoryiからのアルゴノート)である。
【0122】
「非CRISPR/Cas系タンパク質-gNA複合体」は、非CRISPR/Cas系タンパク質およびgNA(例えば、gRNAまたはgDNA)を含む複合体を指す。gNAがgRNAである場合、gRNAは2つの分子、すなわち標的とハイブリダイズし、配列特異性を提供する1つのRNA(「crRNA」)、およびcrRNAとハイブリダイズすることが可能である1つのRNA「tracrRNA」で構成することができる。あるいは、ガイドRNAは、crRNAおよびtracrRNA配列を含有する単一の分子(すなわち、gRNA)であってよい。
【0123】
非CRISPR/Cas系タンパク質は、野生型非CRISPR/Cas系タンパク質と少なくとも60%同一(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、または90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一)であってよい。非CRISPR/Cas系タンパク質は、野生型非CRISPR/Cas系タンパク質の全ての機能、または、結合活性、ヌクレアーゼ活性およびヌクレアーゼ活性を含む機能のうち1つもしくは一部だけを有することができる。
【0124】
用語「非CRISPR/Cas系タンパク質関連gNA」は、gNAを指す。非CRISPR/Cas系タンパク質関連gNAは、単離されたNAとして、または非CRISPR/Cas系タンパク質-gNA複合体の一部として存在することができる。
【0125】
触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼの操作された例には、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas系の核酸ガイド化ヌクレアーゼまたは非CRISPR/Cas系の核酸ガイド化ヌクレアーゼ)が含まれる。用語「触媒活性がない」は、不活性化ヌクレアーゼ、例えば、不活性化HNHおよびRuvCヌクレアーゼを有する核酸ガイド化ヌクレアーゼを一般的に指す。そのようなタンパク質は任意の核酸中の標的部位に結合することができるが(標的部位はgNAによって決定される)、タンパク質は核酸を切断することもニックを入れることもできない。
【0126】
したがって、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼは、未結合の核酸および触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼに結合した断片への混合物の分離を可能にする。例示的な一実施形態では、dCas9/gRNA複合体はgRNA配列によって決定される標的に結合する。dCas9結合はCas9による切断を阻止できるが、他の操作は進行する。
【0127】
別の実施形態では、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼは、トランスポザーゼなどの別の酵素に融合させて、その酵素の活性を特異的部位に標的化させることができる。
【0128】
一部の実施形態では、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼは、dCas9、dCpf1、dCas3、dCas8a~c、dCas10、dCse1、dCsy1、dCsn2、dCas4、dCsm2、dCm5、dCsf1、dC2C2またはdNgAgoである。
【0129】
例示的な一実施形態では、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼタンパク質は、dCas9である。
【0130】
核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼ
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼの操作された例には、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼ(ニッカーゼ-核酸ガイド化ヌクレアーゼと互換的に呼ばれる)が含まれる。
【0131】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼの操作された例には、単一の不活性触媒ドメインを含有する、CRISPR/Cas系ニッカーゼまたは非CRISPR/Cas系ニッカーゼが含まれる。
【0132】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼは、Cas9ニッカーゼ、Cpf1ニッカーゼ、Cas3ニッカーゼ、Cas8a~cニッカーゼ、Cas10ニッカーゼ、Cse1ニッカーゼ、Csy1ニッカーゼ、Csn2ニッカーゼ、Cas4ニッカーゼ、Csm2ニッカーゼ、Cm5ニッカーゼ、Csf1ニッカーゼ、C2C2ニッカーゼまたはNgAgoニッカーゼである。
【0133】
一実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼは、Cas9ニッカーゼである。
【0134】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼは、標的配列に結合するために使用することができる。1つの活性ヌクレアーゼドメインだけのため、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼは、標的DNAの1本の鎖だけを切断し、一本鎖切断または「ニック」を生成する。どの変異体が使用されるかによって、gNAとハイブリダイズした鎖またはハイブリダイズしていない鎖を切断することができる。反対側の鎖を標的にする2つのgNAに結合した核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼは、核酸において二本鎖切断を起こすことができる。この「二重ニッカーゼ」戦略は、両方の核酸ガイド化ヌクレアーゼ/gNA複合体が、二本鎖切断が形成される前の部位で特異的に結合することを必要とするので、切断特異性を増加させる。
【0135】
例示的な実施形態では、Cas9ニッカーゼは、標的配列に結合するために使用することができる。用語「Cas9ニッカーゼ」は、単一の不活性触媒ドメイン、すなわち、RuvC-またはHNH-ドメインを含有する、Cas9タンパク質の改変バージョンを指す。1つの活性ヌクレアーゼドメインだけのため、Cas9ニッカーゼは、標的DNAの1本の鎖だけを切断し、一本鎖切断または「ニック」を生成する。どの変異体が使用されるかによって、ガイドRNAとハイブリダイズした鎖またはハイブリダイズしていない鎖を切断することができる。反対側の鎖を標的にする2つのgRNAに結合したCas9ニッカーゼは、DNAにおいて二本鎖切断を起こす。この「二重ニッカーゼ」戦略は、両方のCas9/gRNA複合体が、二本鎖切断が形成される前の部位で特異的に結合することを必要とするので、切断特異性を増加することができる。
【0136】
DNAの捕捉は、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼを使用して実行することができる。例示的な一実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼであるニッカーゼは二本鎖核酸の1本の鎖を切断し、二本鎖の領域はメチル化ヌクレオチドを含む。
【0137】
解離可能および耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼ
一部の実施形態では、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼが本明細書で提供される方法で使用される(耐熱性のCRISPR/Cas系の核酸ガイド化ヌクレアーゼまたは耐熱性の非CRISPR/Cas系の核酸ガイド化ヌクレアーゼ)。そのような実施形態では、反応温度が上昇し、タンパク質の解離を誘導する。反応温度は低下し、さらなる切断された標的配列の生成を可能にする。一部の実施形態では、少なくとも75℃で少なくとも1分の間維持されるとき、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、少なくとも50%の活性、少なくとも55%の活性、少なくとも60%の活性、少なくとも65%の活性、少なくとも70%の活性、少なくとも75%の活性、少なくとも80%の活性、少なくとも85%の活性、少なくとも90%の活性、少なくとも95%の活性、少なくとも96%の活性、少なくとも97%の活性、少なくとも98%の活性、少なくとも99%の活性または100%の活性を維持する。一部の実施形態では、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、少なくとも75℃で、少なくとも80℃で、少なくとも85℃で、少なくとも90℃で、少なくとも91℃で、少なくとも92℃で、少なくとも93℃で、少なくとも94℃で、少なくとも95℃、96℃で、少なくとも97℃で、少なくとも98℃で、少なくとも99℃で、または少なくとも100℃で少なくとも1分の間維持されるとき、少なくとも50%の活性を維持する。一部の実施形態では、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、少なくとも75℃で少なくとも1分、2分、3分、4分または5分の間維持されるとき、少なくとも50%の活性を維持する。一部の実施形態では、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、温度を上昇させ、25℃~50℃に低下させたとき、少なくとも50%の活性を維持する。一部の実施形態では、温度は、25℃に、30℃に、35℃に、40℃に、45℃に、または50℃に低下させられる。例示的な一実施形態では、耐熱性酵素は、95℃で1分間の後に少なくとも90%の活性を保持する。
【0138】
一部の実施形態では、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、耐熱性Cas9、耐熱性Cpf1、耐熱性Cas3、耐熱性Cas8a~c、耐熱性Cas10、耐熱性Cse1、耐熱性Csy1、耐熱性Csn2、耐熱性Cas4、耐熱性Csm2、耐熱性Cm5、耐熱性Csf1、耐熱性C2C2または耐熱性NgAgoである。
【0139】
一部の実施形態では、耐熱性CRISPR/Cas系タンパク質は、耐熱性Cas9である。
【0140】
耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、単離すること、例えば、高温菌Streptococcus thermophilusおよびPyrococcus furiosusのゲノムにおける配列相同性によって同定することができる。核酸ガイド化ヌクレアーゼ遺伝子は、発現ベクターに次にクローニングすることができる。例示的な一実施形態では、耐熱性のCas9タンパク質は単離される。
【0141】
別の実施形態では、耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼは、非耐熱性の核酸ガイド化ヌクレアーゼのin vitro進化によって得ることができる。核酸ガイド化ヌクレアーゼの配列は、その耐熱性を改善するために変異誘発させられ得る。
【0142】
標的特異的gNAと核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質との複合体
標的特異的ガイド核酸(gNA)と複合体化した核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が、本明細書に提供される。gNAは、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を標的核酸に向かわせる。核酸ガイド化ヌクレアーゼ系は、RNAガイド化ヌクレアーゼ系であり得る。核酸ガイド化ヌクレアーゼ系は、DNAガイド化ヌクレアーゼ系であり得る。場合によっては、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質をRNA標的に向かわせる標的特異的gNAと複合体化した核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である。場合によっては、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質をDNA標的に向かわせる標的特異的gNAと複合体化した核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である。
【0143】
核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化した標的特異的gNAが、本明細書に提供される。gNAが少なくとも1つの標的へと標的化されている(例えば、病原体特異的gNA)、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の収集物も、本明細書に提供される。
【0144】
一部の実施形態では、複合体は、標識を含む。一部の実施形態では、標識は、検出可能な標識である。
【0145】
一部の実施形態では、複合体の収集物中のgNAは、複数の標的へと標的化されている。
【0146】
一部の実施形態では、複合体は、2以上の標識を含む。
【0147】
一部の実施形態では、複合体は、基材に付着されている。一部の実施形態では、複合体は、既知のまたは予め定められた順序で基材に付着されている。一部の実施形態では、基材は、再使用可能なものである。
【0148】
一部の実施形態では、複合体は、溶液中に存在する。
【0149】
試料
試料中に存在する核酸に基づく、試料中の標的の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。
【0150】
想定される試料は、生物学的試料、臨床試料、法医学的試料、環境試料、メタゲノム試料等を非限定的に含む。
【0151】
一部の実施形態では、試料は、腫瘍組織試料である。
【0152】
一部の実施形態では、試料は、血液、血清、血漿 粘液、毛、尿、糞便、唾液、息、脳脊髄液、リンパ液、組織、皮膚または生検である。
【0153】
一部の実施形態では、試料は、食品試料、例えば、肉、乳製品または作物の試料である。
【0154】
一部の実施形態では、試料は、織物試料である。
【0155】
一部の実施形態では、試料は、土壌試料である。一部の実施形態では、試料は、岩石試料である。一部の実施形態では、試料は、植物試料である。
【0156】
一部の実施形態では、試料は、水試料である。
【0157】
一部の実施形態では、試料は、空気試料である。一部の実施形態では、試料は、空気清浄器に由来する。
【0158】
一部の実施形態では、試料は、加工試料である。一部の実施形態では、試料は、未加工試料である。
【0159】
一部の実施形態では、試料は、DNAを含む。
【0160】
一部の実施形態では、試料は、RNAを含む。一部の実施形態では、試料は、RNAを含み、逆転写されてcDNAを生成する。
【0161】
一部の実施形態では、試料中の核酸は、使用前にせん断される。一部の実施形態では、試料中の核酸は、酵素せん断される。一部の実施形態では、試料中の核酸は、機械せん断される。
【0162】
一部の実施形態では、試料中の核酸(例えば、DNA)は、使用前に増幅される。
【0163】
一部の実施形態では、試料中の核酸(例えば、DNA)は、使用前に環状化される。
【0164】
一部の実施形態では、試料中の核酸(例えば、DNA)は、ローリングサークル増幅(RCA)によって増幅される。
【0165】
一部の実施形態では、試料中の核酸(例えば、DNA)は、等温増幅技術によって増幅され、該等温増幅技術は、ループ媒介性等温増幅(LAMP)、ヘリカーゼ依存性増幅、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)およびリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を非限定的に含む。
【0166】
一般に、同定される標的核酸のサイズは、20bp~109bpに及ぶ。
【0167】
一部の実施形態では、試料中の核酸(例えば、DNA)は、ジデオキシCTP(伸長できないヌクレオチド)を用いて遮断される。一部の実施形態では、試料中の核酸(例えば、DNA)は、伸長できないヌクレオチドを用いて1または複数の末端において遮断される。
【0168】
標識
標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を使用する、標的の検出および同定用の方法および組成物が、本明細書に提供される。該方法は、試料由来の試料中の核酸を標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、核酸は、DNAを含む、またはDNAである。一部の実施形態では、核酸は、RNAを含む、またはRNAである。
【0169】
一部の実施形態では、標的特異的gNAは、標識を含む、または標識され得る。例示に過ぎないが、蛍光RNA結合性色素は、SYBR Green II、OliGreenおよびRiboGreenを非限定的に含む。
【0170】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、標識を含む、または標識され得る(例えば、標識を付着することができる反応性部位を含む)。
【0171】
一部の実施形態では、標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、標識を含むか、または標識され得る。一部の実施形態では、標的特異的gNAは、核酸との接触前に標識され、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、核酸との接触後に標識される。一部の実施形態では、標的特異的gNAは、核酸との接触後に標識され、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、核酸との接触前に標識される。一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方は、核酸との接触前に標識される。一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方は、核酸との接触後に標識される。
【0172】
一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸は、標識を含むか、または標識され得る。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質および核酸は、標識を含むか、または標識され得る。
【0173】
一部の実施形態では、標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体および核酸は、標識を含むか、または標識され得る。
【0174】
一部の実施形態では、同じ標識を使用して、同じ群に属する異なる標的にタグ付けする。例えば、一部の実施形態では、細菌病原体に特異的な全てのgNAは、第1の標識を含み、ウイルス病原体に特異的な全てのgNAは、第2の標識を含み、かつ真菌病原体に特異的な全てのgNAは、第3の標識を含む。
【0175】
一部の実施形態では、異なる標識を使用して、同じ群に属する異なる病原体にタグ付けする。例えば、E.coli細菌に特異的なgNAは、第1の標識を含み、かつB.subtilis細菌に特異的なgNAは、第2の標識を含む。
【0176】
一部の実施形態では、標的特異的gNA102および核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質103を含む複合体は、複数のフルオロフォア、複数の生化学分子(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、HRP)、またはこれらの組合せ等の、複数の標識または複数構成成分の標識を用いて標識される(例えば、
図1Aおよび
図1Bを参照)。場合によっては、標的(例えば、試料DNA101)は、基材104に結合され得る。一部の実施形態では、複数の標識を使用してシグナル増幅カスケードを誘起し得る。一部の実施形態では、標的特異的gNAは、複数構成成分105、106、107のタグを用いて標識される(例えば、
図1Aの100を参照)。一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方は、複数構成成分の標識105、108を用いて標識される(例えば、
図1Aの110を参照)。一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、複数構成成分のタグを用いて標識される(例えば、
図1Bを参照)。
【0177】
一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の両方は、同じ標識を用いて標識される。
【0178】
一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、異なる標識を用いて標識される。一部の実施形態では、例えば基材上での両方の標識の検出および局在性は、gNAと核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質との間で複合体が形成されていることを示す。
【0179】
一部の実施形態では、異なる標的を標的化する複合体は、異なる標識を含む。一部の実施形態では、異なる標的を標的化する複合体は、同じ標識を含むが、既知の順序で基材に付着されている。一部の実施形態では、異なる標的を標的化する複合体は、標識を含まない。
【0180】
一部の実施形態では、核酸は、標識を含む、または標識され得る。
【0181】
一部の実施形態では、核酸標識は、インターカレーター型の標識である。
【0182】
一部の実施形態では、核酸標識は、非特異的な核酸結合性標識である。
【0183】
一部の実施形態では、核酸は、核酸色素標識を含む。好適な発光性核酸色素の例は、EvaGreen色素、GelRed、GelGreen、SYBR Green I(米国特許第5,436,134号および同第5,658,751号)、SYBR GreenEr、SYBR Gold、LC Green、LC Green Plus、BOXTO、BEBO、SYBR DX、SYTO9、SYTOX Blue、SYTOX Green、SYTOX Orange、SYTO色素、POPO-1、POPO-3、BOBO-1、BOBO-3、YOYO-1、YOYO-3、TOTO-1、TOTO-3、PO-PRO-1、BO-PRO-1、YO-PRO-1、TO-PRO-1、JO-PRO-1、PO-PRO-3、LO-PRO-1、BO-PRO-3、YO-PRO-3、TO-PRO-3、TO-PRO-5、エチジウムホモダイマー1、エチジウムホモダイマー2、エチジウムホモダイマー3、ヨウ化プロピジウム、臭化エチジウム、様々なヘキスト色素、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ResoLight、Chromofyおよびアクリジンホモダイマーを非限定的に含む。他の核酸色素は、Lee(1989年)の米国特許第4,883,867号、Yueら(1996年)の米国特許第5,582,977号、Yueら(1994年)の米国特許第5,321,1
30号、Yueら(1995年)の米国特許第5,410,030号、米国特許第5,86
3,753号、ならびに米国特許出願公開第2006/0211028号および同第2008/0145526号に記載されているものを含む。上記で言及した色素の多くは、Invitrogen、Sigma、Biotiumおよび多数の他の企業から市販されている。
【0184】
一部の実施形態では、核酸は、標的特異的ガイドNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体との接触前に標識される。一部の実施形態では、核酸は、標的特異的ガイドNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体との接触後に標識される。
【0185】
一部の実施形態では、標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、核酸との接触前に標識される。一部の実施形態では、標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、核酸との接触後に標識される。
【0186】
一部の実施形態では、核酸および標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は、複合体への核酸の接触前に標識される。一部の実施形態では、核酸および標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は、複合体への核酸の接触後に標識される。
【0187】
一部の実施形態では、核酸の標識およびgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の標識を検出するために異なる方法が利用される。
【0188】
一部の実施形態では、核酸およびgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくシグナル検出用に標識される。例えば、核酸は、YOYO-1インターカレーター色素(ドナー)を用いて標識され得、かつgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、Cy3(アクセプター)を用いて標識され得る。核酸にgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体が結合した(そしてドナー/アクセプターペアが作製された)時に、増感されたCy3の発光が検出可能となる。例示的なドナー部分は、YOYO-1、Cy5、Cy3、DY-630、DiD、Dy-635を非限定的に含み、例示的なアクセプター部分は、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405およびAlexa Fluor(登録商標)430等のAlexa Fluor(登録商標)色素を非限定的に含む。
【0189】
一部の実施形態では、標識は、さらに標識に結合され得る部分である。
【0190】
一部の実施形態では、標識は、検出可能な標識である。
【0191】
想定される標識は、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合性断片、ペプチド、発色団、発光団(lumiphore)、フルオロフォア、色素原、ハプテン、抗原、放射性同位元素、磁性粒
子、金属ナノ粒子、酸化還元活性マーカー基(酸化還元反応を起こすことができる)、アプタマー、結合ペアの一方のメンバーおよびこれらの組合せを非限定的に含む。
【0192】
特異的な実施形態では、標識はフルオロフォアである。フルオロフォアは、ある波長の光を吸収し、異なる波長の光を放出する任意の物質であり得る。典型的なフルオロフォアは、蛍光色素、半導体ナノ結晶、ランタニドキレートおよび蛍光タンパク質を含む。例示的な蛍光色素は、フルオレセイン、6-FAM、ローダミン、Texas Red、テトラメチルローダミン、カルボキシローダミン、カルボキシローダミン6G、カルボキシロドール、カルボキシローダミン110、Cascade Blue、Cascade Yellow、クマリン、Cy2(登録商標、Cy3(登録商標、Cy3.5(登録商標、Cy5(登録商標、Cy5.5(登録商標、Cy-Chrome、フィコエリトリン、PerCP(ペリジニンクロロフィルタンパク質)、PerCP-Cy5.5、JOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)、NED、ROX(5-(および-6)-カルボキシ-X-ローダミン)、HEX、Lucifer Yellow、Marina Blue、Oregon Green 488、Oregon Green 500、Oregon Green 514、Alexa Fluor(登録商標 350、Alexa Fluor(登録商標 430、Alexa
Fluor(登録商標 488、Alexa Fluor(登録商標 532、Alexa Fluor(登録商標 546、Alexa Fluor(登録商標 568、Alexa Fluor(登録商標 594、Alexa Fluor(登録商標 633、Alexa Fluor(登録商標 647、Alexa Fluor(登録商標 660、Alexa Fluor(登録商標 680、7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸、BODIPY FL、BODIPY FL-Br2、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY
576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、Quantum Dots、これらのコンジュゲートおよびこれらの組合せを含む。
【0193】
例示的なランタニドキレートは、ユウロピウムキレート、テルビウムキレートおよびサマリウムキレートを含む。
【0194】
例示的な酵素は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ノイラミニダーゼ(neurarninidase)、細菌ルシフェラーゼ、昆虫ルシフェラーゼおよびシーパンジールシフェラーゼ(Renilla koellikeri)を含み、これらは、当該技術分野で公知の好適な
基質およびアッセイ条件の存在下で検出可能なシグナルを生成できる。
【0195】
例示的なハプテンおよび/または結合ペアのメンバーは、アビジン、ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、ビオチンおよび上記したものを含む。
【0196】
一部の実施形態では、核酸、標的特異的gNA、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質またはgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体は、異なる標識を用いて標識される。
【0197】
一部の実施形態では、例えば基材上での標識の検出および局在性は、gNAと核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質との間で複合体が形成されていることを示す。例示的な実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくシグナル検出用に標識される。斯かる実施形態では、一方の標識はドナー部分であり、かつ他方の標識はアクセプター部分である。例えば、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質の標識は、標的特異的gNAの標識からのシグナルによって消光されない限り(またはその逆)、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質が複合体(ドナー/アクセプターペア)を形成している時に、検出可能である。別のFRETペアは、ドナー部分を含むgNA、およびアクセプター部分を含むgNAである。
【0198】
別のFRETペアは、ドナー部分を含むgNA、およびアクセプター部分を含む核酸(例えば、DNA)である。
【0199】
別のFRETペアは、アクセプター部分を含むgNA、およびドナー部分を含む核酸(例えば、DNA)である。
【0200】
別のFRETペアは、ドナー部分を含む核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質、およびアクセプター部分を含む核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である。
【0201】
別のFRETペアは、ドナー部分を含む核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質、およびアクセプター部分を含む核酸(例えば、DNA)である。
【0202】
別のFRETペアは、ドナー部分を含む核酸(例えば、DNA)、およびアクセプター部分を含む核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質である。
【0203】
一部の実施形態では、gNAのみまたは核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質のみが、FRET標識を含む。
【0204】
FRETの実施形態のための例示的なドナー部分は、YOYO-1、Cy5、Cy3、DY-630、DiD、Dy-635を非限定的に含み、例示的なアクセプター部分は、Alexa Fluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405およびAlexa Fluor(登録商標)430等のAlexa Fluor(登録商標)色素を非限定的に含む。
【0205】
検出
本発明の標識の検出は、当該技術分野で公知の標準的な方法を用いて実行され得る。例えば、検出は、眼によって、可視変色を検出することによって、分光光度計、蛍光リーダーもしくは蛍光顕微鏡を使用することによって達成され得る。一部の実施形態では、検出のために携帯式装置が利用される。一部の実施形態では、シグナル検出は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくものであり、FRETシグナルは、顕微鏡上でFRETチャネルを使用して検出され得る。
【0206】
一部の実施形態では、検出は、複数のステップで実行され得る。一部の実施形態では、検出は、複数の検出系で実行される。
【0207】
例示的な実施形態では、2ステップ検出が実行される。この実施形態では、溶液中の標識が最初に検出され(例えば、色の変化)、試料に対してさらなる検出ステップが必要とされることを示す。
【0208】
基材
本発明は、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を使用する、標的の検出および同定用の方法および組成物を提供する。この目的に有用な様々な基材が、本明細書に提供される。
【0209】
一部の実施形態では、標的特異的gNAは、基材に付着されている。一部の実施形態では、標的特異的gNAは、既知の/予め定められた/参照可能な順序で基材に付着されている。
【0210】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、基材に付着されている。
【0211】
一部の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含む複合体は、基材に付着されている。
【0212】
一部の実施形態では、標的を同定するために同定される核酸は、基材に付着されている。本明細書に提供されている一部の実施形態では、標的核酸は、DNAを含む、またはDNAである。本明細書に提供されている一部の実施形態では、標的核酸は、RNAを含む、またはRNAである。
【0213】
gNA、核酸、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質またはこれらを含む複合体は、無作為ではない化学的または物理的相互作用を通じて基材と会合している場合、基材に付着されている。一部の実施形態では、付着は、共有結合を通じたものである。一部の実施形態では、核酸は、基材表面上のカルボキシル分子に可逆的に結合している。
【0214】
基材は、ガラス、プラスチック、シリコン、シリカベースの材料、官能化ポリスチレン、官能化ポリエチレングリコール、官能化有機ポリマー、ニトロセルロースまたはナイロン膜、紙、綿および合成に適した材料でできていてよい。基材は、平坦である必要はない。
【0215】
一部の実施形態では、基材は、2次元アレイである。一部の実施形態では、2次元アレイは、平坦である。一部の実施形態では、2次元アレイは、平坦でなく、例えば、アレイは、波状アレイである。
【0216】
基材は、球形(例えば、ビーズ)を含む任意の型の形状を含む。基材に付着される材料は、基材の任意の部分に付着されてよい(例えば、多孔性基材材料の内側部分に付着されてよい)。
【0217】
一部の実施形態では、基材は、3次元アレイ、例えば、マイクロスフェアである。
【0218】
一部の実施形態では、マイクロスフェアは、磁性である。一部の実施形態では、マイクロスフェアは、ガラスである。一部の実施形態では、マイクロスフェアは、ポリスチレンでできている。一部の実施形態では、マイクロスフェアは、シリカベースである。
【0219】
一部の実施形態では、基材は、内側表面を有するアレイであり、例えば、ストロー、チューブ、キャピラリー、円柱状またはマイクロ流体チャンバーアレイである。一部の実施形態では、基材は、複数のストロー、キャピラリー、チューブ、シリンダーまたはチャンバーを含む。一部の実施形態では、基材の外側表面は、試料核酸または標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体につながれている。一部の実施形態では、基材の内側表面は、試料核酸または標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体につながれている。一部の実施形態では、基材の外側表面および内側表面の両方は、試料核酸または標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体につながれている。
【0220】
gNA、核酸、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質または複合体は、リンカーを介して基材に付着され得る。リンカーは、一つの末端において基材に付着可能であり、かつ他の末端においてgNA、核酸、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質または複合体に付着可能である化学的部分である。リンカーは、2つの実体を連結または結合するが、個々の連結される実体のいずれかの一部分ではない、原子または分子を含む。一般に、リンカー分子は、1~500個の直線状に接続された化学結合を含有するオリゴマー鎖部分である。一部の実施形態では、リンカーは、PEGリンカー、I-Linker(商標)(Integrated DNA Technologies)修飾因子、アミノ修飾因子、チオール修飾因子(thiol modiers)等を含有する。一部の実施形態では、gNAまたは核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を基材表面に付着するために光解離性リンカーが使用され、光の照射により複合体は解放され得る。一部の実施形態では、複合体は、リンカーの部位における酵素消化または化学分解によって解放される。
【0221】
一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質に対する抗体で被覆された基材を使用すること、または基材上に核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を直接的に固定化すること等によって、複合体は、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を介して基材に付着される。
【0222】
一部の実施形態では、核酸は、既知の順序で基材に付着される。
【0223】
一部の実施形態では、gNAは、基材上でin vitroで転写された後、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化される。
【0224】
一部の実施形態では、基材は、再使用可能なものである。斯かる実施形態では、基材は、既知の順序で基材に付着された標的特異的gNAまたは標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体を含み得る。gNAおよびgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、所与の基材上に、スポット、ブロック、ビーズ、小滴、ウェルまたは他の編成構造として編成され得る。一部の実施形態では、核酸は、引き剥がされ、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体は、再利用のために残される。
【0225】
基材は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、75、80、90、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2500、5000、7500、またはさらには少なくとも10,000の標的に由来するgNAを含有し得る。一部の例示的な実施形態では、基材は、約1~3、1~5、1~10、1~25、1~50、1~75、1~100、5~10、5~25、5~50、5~75、5~100、10~20、10~25、10~50、10~75、10~100、25~50、25~75、25~100、50~75、50~100、75~100、100~150、100~200、100~300、100~400、100~500、100~600、100~700、100~800、100~900、100~1000、100~200、200~300、200~400、200~500、200~600、200~700、200~800、200~900、200~1000、300~400、300~500、300~600、300~700、300~800、300~900、300~1000、400~500、400~600、400~700、400~800、400~900、400~1000、400~600、400~700、400~800、400~900、400~1000、500~600、500~700、500~800、500~900、500~1000、600~700、600~800、600~900、600~1000、700~800、700~900、700~1000、800~900、800~1000、900~1000、500~1000、500~5000、500~10,000、1000~5000、1000~10,000の標的、またはさらには約5000~10,000の標的へと標的化されたgNAを含む。
【0226】
基材は、基材に付着された少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1000、少なくとも2500、少なくとも5000、少なくとも75000、少なくとも10,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも250,000、少なくとも500,000、少なくとも750,000、少なくとも1,000,000、少なくとも2,500,000、少なくとも5,000,000、少なくとも7,500,000、少なくとも10,000,000の特異なgNAを含み得る。一部の実施形態では、基材は、基材に付着された少なくとも5~10、10~50、50~100、10~100、100~500、100~1000、100~10,000、100~100,000、100~1,000,000、100~10,000,000、1000~10,000、1000~100,000、1000~1,000,000、1000~10,000,000、10,000~100,000、10,000~1,000,000、10,000~10,000,000、100,000~1,000,000、100,000~10,000,000、または1,000,000~10,000,000の特異なgNAを含む。一部の実施形態では、基材は、基材に付着した少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010 の特異なgNAを含む。
【0227】
本発明の方法
標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を使用する、標的(すなわち、標的核酸、標的DNAおよび/または標的RNA)を検出および同定するための方法が、本明細書に提供される。
【0228】
具体的には、試料中の標的を同定する方法が本明細書に提供され、方法は、(a)試料由来の核酸を複数のgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体と接触させるステップであって、複合体は、少なくとも1つの標的へと標的化されており、かつ核酸、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、または核酸およびgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の両方は標識を含む、ステップと、(b)標識由来の特定のシグナルを検出することによって達成される、試料中の標的を同定するステップであって、特定のシグナルの存在は、核酸へのgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体の結合を示す、ステップとを含む。本明細書に提供される場合、標的の核酸は、DNA、RNA、またはこれら2つの混合物であり得る。
【0229】
本発明の方法は、任意の操作条件下で実行され得る。例えば、該方法は、0℃~100℃において実行され得る。一部の実施形態では、該方法は、0℃、25℃、37℃、50℃、72℃、またはさらには100℃において実行される。例示的な実施形態では、該方法は、室温において実行される。例示的な実施形態では、該方法は、50℃~80℃の温度範囲において実行される。
【0230】
本発明の方法は、10分以内で、15分以内で、30分以内で、60分以内で、90分以内で、120分以内で、150分以内で、180分以内で、210分以内で、240分以内で、270分以内で、300分以内で、330分以内で、360分以内で、7時間以内で、8時間以内で、9時間以内で、10時間以内で、11時間以内で、12時間以内で、15時間以内で、20時間以内で、24時間以内でまたは36時間以内で、実行され得る。
【0231】
本発明の方法の具体的実施形態を、以下の例示的なスキームとして順次論じる。例示的なスキームは、標的核酸がDNAを含む本発明の実施形態の実例であることに留意すべきである。これは実例に過ぎないこと、および本明細書に提供される方法および組成物は、標的核酸がDNA、RNAを含む、またはDNAおよびRNAの混合物を含む場合の標的同定に適用可能であることを理解すべきである。
【0232】
本明細書に記載し、提供する通り、標的核酸(例えば、DNA)、gNA(例えば、gRNA)、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質(例えば、CRISPR/Cas系タンパク質)、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体、またはこれらの組合せは、標識(例えば、105、106、107、108)を含み得る。これは、例えば
図1Aに図解されている。パネル100は、gNA102が標識される実施形態を図解する。パネル110は、gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質103の両方が標識されるスキームを図解する。この図では、同定すべき標的核酸(例えば、DNA)101は、基材104に付着されている。ここおよび下記において、一部の実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、突然変異体である触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質、例えばdCas9であり得る。この突然変異体は、標的DNAに結合するがそれを切断せずに、シークエンシング等の下流の適用のためにDNAをインタクトなままとするので、この突然変異体の使用は有利であり得る。触媒活性がある核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、切断後に標的核酸の一部分に結合したままであり得るので、用いられ得る。
【0233】
図1Bは、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質媒介性の標的同定の例示的な実施形態を図解する。この実施形態では、標的核酸(例えば、DNA)101は、目的の試料から単離および精製され、基材104に付着される(例えば、ステップ120を参照)。次いで、標識されたgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体109を基材上に流す(例えば、ステップ130を参照)。図解の目的のためのこの例示的なスキームでは、gNAは3つの標的に向けられており、標的の一つに特異的なgNAの各セットは、異なる標識105、106、107を含む。DNAおよび複合体を結合させた後、未結合の複合体を洗い流す(例えば、ステップ140を参照)。標識からのシグナルを読み取り、標的(単数または複数)を同定する。一部の実施形態では、複合体が結合したDNAをさらなる分析のために回収することができる。例えば、DNAを基材から引き剥がすことができ、複合体に結合したDNAを核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質に対する抗体を使用して精製し、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を変性させることによって回収し、次いでDNAシークエンシング等の下流の分析に供することができる。
【0234】
図2に示す別の例示的な実施形態では、目的の試料から核酸(例えば、DNA)を単離し、任意選択で精製する。標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む複合体の収集物と共に溶液中で室温においてDNAをインキュベートする210。この実施形態では、標的特異的gNAは、標識を含む。
図2におけるこの例示的な実施形態の絵では、複合体の収集物は、3つの標的に特異的なgNAを含み、3つの異なる標識105、106、107を含む。複合体は、試料中の標的DNAに結合する。DNAは、任意選択で、複合体を加える前または後にビーズに結合させることができる。未結合の複合体は、検出前に洗浄除去することができる220。試料中の標的DNAは、標識の存在によって検出することができる。複合体が結合したDNAは、追加的な下流の分析のためにさらに回収することができる。例えば、複合体に結合したDNAを、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質に対する抗体を使用して精製し、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を変性させることによって回収し、そしてDNAシークエンシング、SNP分析、ジェノタイピングまたは他の分析等の下流の分析に供することができる。
【0235】
別の例示的な実施形態では、標的検出方法は、初期標的スクリーニングステップを含む。一部の実施形態では、試料を得、核酸色素を用いてそれを染色する。これにより、任意の核酸が試料中に存在するかどうかの初期決定が可能となる。他の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む第1の検出用マーカー(HRP等)で標識された複合体と共に試料を室温でインキュベートすることによる初期スクリーニングに試料を供する。未結合の複合体を洗浄除去する。HRP用の基質を加え、さらにインキュベートする。試料が標的核酸(例えば、DNA)を含有すれば、色が変化する。斯かる迅速な初期スクリーニングステップにより、いずれの試料がより詳細な同定のためのさらなる処理を必要とするかを決定することができる。一部の実施形態では、試料中の標的DNAのさらなる同定を引き続いて行う。この複数スクリーニングの文脈では、複数構成成分のタグは特に有用であり、例えば、複合体は、初期検出用にHRP標識を、そしてより詳細な同定用にフルオロフォア標識を含有し得る。
【0236】
別の例示的な実施形態(
図3)では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む複合体は、既知の、参照可能な、かつ予め定められた順序で基材に付着される。gNAを基材に付着した後に核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化させることもできるし、あるいは核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を基材に付着した後にgNAと複合体化させることもできる。
図3に描くのは、gNAを基材104に付着した後に核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質と複合体化させて複合体109を形成させる実施形態である(例えば、ステップ310を参照)。目的の試料から単離された核酸(例えば、DNA)101を(例えば、室温で)基材上に流す(例えば、ステップ320を参照)。未結合のDNAを洗い流し(例えば、ステップ330を参照)、基材上の複合体に結合した標的DNAをシグナルの検出位置にしたがって同定する。一部の実施形態では、基材上に流す前にDNA試料を核酸色素301を用いて染色する。一部の実施形態では、複合体が結合したDNAを核酸色素301を用いて染色する(例えば、ステップ340を参照)。標的特異的gNAは、基材上の既知の位置に配置されているので、シグナルの位置は、標的の素性を示す。一部の実施形態では、gNA、複合体または核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、FRETペアの第1のフルオロフォアを含み、かつDNAは、FRETペアの第2のフルオロフォアを用いて染色される。この実施形態では、ドナー/アクセプターペアの相互作用がある時のみ、シグナルが検出される。一部の実施形態では、標的DNAは回収され、さらに分析される。その後、結合したDNAを基材から取り外し、さらに分析することができる。
【0237】
例えば
図4A~4Dに示す一つの特定の実施形態では、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む複合体は、領域またはブロック(401、402、403、404、405、406)として見られる特定のパターンを有する区画としてキャピラリー、チャネル、または他のフローシステム400(例えば、ストロー、チューブ、チャンバーフローセルまたは円筒状アレイ)内につながれている。目的の試料由来の単離および精製された核酸(例えば、DNA)407をキャピラリーを通して流し、未結合のDNAを洗い流した後、チューブの全長または部分長に沿った色変化の出現が、目的の標的の存在を示す(
図4Aを参照)。一部の実施形態では、未結合のDNAの洗い流しは、例えば取り付けたピペットバルブ(bulb)を用いてキャピラリー内で行うことができる。一部の実施形態では、単離および精製されたDNAは、キャピラリーに流す前に標識される。一部の実施形態では、単離および精製されたDNAは、キャピラリー内につながれた複合体への結合後に核酸色素を用いて染色される。
【0238】
図4Bおよび
図4Cは、標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体408を試料DNA407と共にプレインキュベートした後、アレイ上に領域またはブロック(401、402、403、404、405、406)としてパターン化された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体も含有するキャピラリーアレイ400にそれを通過させる例示的なスキームを図解する。このスキームは、標的のより高感度の検出および同定を可能とする。この場合、gNA核酸ガイド化ヌクレアーゼ系408を試料と共にインキュベートし、標的核酸(例えば、DNA)407が試料中に存在すれば、gNA核酸ガイド化ヌクレアーゼ408はそれに結合する。次いで、この試料DNAおよび結合したgNA核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体410を、標的DNAに向けられた共有結合的に連結されたgNA核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体411のキャピラリーアレイと共にさらにインキュベートする。次いで、これらの表面に結合したgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体は、任意の標的DNA上にあるそれらの標的を見つけ、それらに結合し、またこの過程において、DNAに結合した初期gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体を捕捉する。一部の実施形態では、この系は、複数の関連する標識を有する大きい断片を捕捉することができる。検出は、アッセイフォーマットの全体または特定部分の色変化によって読み取ることができる。この例では、キャピラリーアレイを縞模様で示している。これらの縞模様は、目には一つの色または複数の色として見え得る。縞模様が目には一つの色として見える場合、分光計下でのより高感度の検出を使用して詳細な縞模様パターンを調べることができる。
【0239】
別の実施形態では、
図4Dは、バーコード型の様式で病原体を検出できることを示す。このスキームでは、一つのパターンのブロックまたはバンドは一つの特定のサブタイプまたは種を示し、別のパターンは別のサブタイプまたは種を示す。例えば、一つのバンドパターンまたは色は、Bacillus等の病原体の属を示し得、他のバンドは、Bacillus anthracisのバンド、Bacillus cereusのバンド等というように、病原体の種のより狭い定義をさらに示し得る。あるいは、例えば、一つのバンドは、E.coliの種(例えば、E.coli O157:H7、E.coli K12、E.coli S88(O45:K1))を示し得、残りのバンドは、gNAの異なる特異なパターンによって株をさらに定義し得る(例えば、
図4Dを参照)。このバンドパターンを使用して、UPCバーコードと同様に、病原体の素性を狭めることができる。病原性および抵抗性等のある特定の特徴に特異的なバンドを使用することもできる。
【0240】
別の例示的な実施形態(
図5)では、目的の試料から単離および精製されたDNA501を核酸色素502を用いて染色し、標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む標識された複合体503と共にインキュベートする。核酸(例えば、DNA)および複合体の混合物を例えば小滴またはウェル中に分割する。小滴は、DNAおよび複合体混合物を、小滴を生成する油と合わせ、流体を小滴生成用デバイス(例えば、マイクロ流体のカートリッジ)に移すことによって形成することができる。10
2~10
10個の単分散のナノリットルサイズの小滴のエマルジョンを生成することができる。集団中の所与の小滴は、空であり得504(場合によっては、得られるほとんどの小滴は空である)、所与の小滴は一つのDNAを含有し得505、所与の小滴は、一つの複合体を含有し得506、または所与の小滴は、複合体が結合した一つのDNAを含有し得る507。標識された複合体および核酸色素で染色されたDNAの両方からのシグナル508の検出は、目的の標的DNAの存在を示す。一部の実施形態では、該手順は、QX200(商標)Droplet Digital(商標)PCR System(Bio-Rad)、RaindanceのRaindrop(商標)システム、または他のピコ、ナノもしくはマイクロリットルの小滴形成システム上で実行される。一部の実施形態では、標識された複合体および核酸色素で染色されたDNAの両方からのシグナルを含有する小滴を回収し、結合したDNAを、シークエンシングおよびクローニング等のさらなる下流の分析のために回収する。
【0241】
別の例示的な実施形態(
図6を参照)では、目的の試料から単離および精製された核酸(例えば、DNA)601を環状化し、ローリングサークル増幅(RCA)602によって増幅する。次いで、RCAの生成物603を標的特異的gNAおよび核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質を含む複合体と共にインキュベートする。gNAは、標識された核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質をRCA生成物上の複数コピーの標的に向かわせることにより、一つの標識605でRCA生成物を標識する。一実施形態では、複合体は基材表面に結合されており、RCA生成物は基材上に流される。別の実施形態では、RCA生成物は基材に付着されており、複合体はRCA生成物上に洗い流される。別の実施形態では、検出は溶液中で行われる。結合時に、検出された標識に基づいて標的の素性を検出する。
【0242】
図7は、標的核酸(例えば、DNA)を検出するためにFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用するための例示的なスキームを図解する。この実施形態では、標識された標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体701を表面702に付着する。次いで、DNA703を複合体に結合させる。未結合のDNAを洗い流す。YOYO-1等のインターカレーター型色素704をDNAに会合させ、このDNAがFRETを介してエネルギー705を複合体上の標識707に移動させることができる。このエネルギー移動706は、2つの複合体が近くに来たときにも起こることができ、例えば、2つの触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系(例えば、dCas9)タンパク質が同じ局所領域へと標的化されたときに、それらはFRETペアとして作用するのに十分なほど近くにあり得る。別の実施形態では、DNA断片の末端近くに結合した標識されたgNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ複合体は、別の断片の末端上の標識にエネルギーをFRET移動させ得る。
【0243】
別の例示的な実施形態(
図8)では、標的特異的gNAは、標的近傍位置(例えば、10bp未満だけ離れている)に結合し、かつフルオロフォアのFRETペアのそれぞれ一方で別々に標識されたペアとして、設計および生成される。試料は、標的核酸(例えば、DNA)801および非標的核酸(例えば、DNA)802を含有し得る。gNAの第1のサブセット803は、FRET用のドナーフルオロフォアである第1のフルオロフォアで標識され、かつgNAの第2のサブセット804は、アクセプターフルオロフォアである第2のフルオロフォアで標識される。例えば、FRETペアは、Alexa Fluor594およびAlexa Fluor647の標識をそれぞれ含み得る。一例では、gNAは、触媒活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質805(例えば、dCas9)と複合体化され、DNA試料と合わせられる。2つのgNAが、近接する標的DNAに結合した場合806、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアは、FRETを可能とするのに十分なほど近接する。活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系-gNA複合体は、近接したペア中の標的DNAに結合し、第1のフルオロフォアおよび第2のフルオロフォアのペア間でFRETが起こるのを可能とする。次いで、試料にドナーフルオロフォアの励起波長809を照射し、アクセプターの発光波長810において発光をモニタリングする。FRETシグナルは、試料中の標的DNAの存在を反映する。標的へのgNAの結合がない場合809、アクセプターの発光波長のシグナルは生成されない。非特異的な単一のgNA結合および反応溶液単独では、FRETシグナルは生成されない。無関係な標的への活性がない核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ガイドNAのまれな非特異的な結合808は、DNAへの単一のgNAの結合をもたらすに過ぎず、FRETを生じない。同様に、溶液中のフルオロフォアは、継続的には近接しないので、反応溶液からのFRETシグナルは起こらない(または測定可能なFRETシグナルは起こらない)。よって、斯かるアッセイを1チューブの形式で実行することができる。斯かるアッセイは、低濃度試料(例えば、5%未満の標的DNA)中の標的DNAの検出を含む適用のために有用であり得る。
【0244】
図9は、ニッカーゼ核酸ガイド化ヌクレアーゼ(例えば、ニッカーゼCas9)を使用する標的核酸(例えば、DNA)の蛍光標識のスキームを図解する。一例(例えば、
図9を参照)では、近接(例えば、約10bp未満だけ離れている)するペアとして標的DNA901に結合するように標的特異的gNA903を設計する。試料は、非標的DNA902も含有し得る。gNAを核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質904と複合体化させ、DNA試料と合わせる。例示的な核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質は、D10A突然変異を含むニッカーゼCas9であり、これはDNAの一鎖を切断することしかできず、よって二本鎖切断ではなくニックを生じさせる。この例では、DNA試料の3’末端が、ジデオキシCTP等の伸長できないヌクレオチドを用いて遮断されている(図中の「B」)。DNAを反応溶液から回収する。ニッカーゼ-gNA複合体は、標的DNA上に2つの近位にあるニックを生成して二本鎖切断を生成し得る905。2つのニックが近接(例えば、約10bpまたはそれ未満)している場合、二本鎖切断が生じる。これらの二本鎖切断は、ターミナルトランスフェラーゼを使用するフルオロフォアを用いた末端標識用の唯一の基質である。次いで、試料をターミナルトランスフェラーゼおよび蛍光標識されたdCTPと共にインキュベートする。非標的DNAは、ニックがないままであり得る906。無関係な標的へのニッカーゼ-ガイドNA複合体のまれな非特異的な結合907は、DNAへの単一のガイドの結合をもたらすに過ぎないため、DNAへの単一のニックをもたらし、このDNAはターミナルトランスフェラーゼの基質とはならない。蛍光908を測定することにより、試料中の標的DNAの同定および定量を可能とすることができる。DNAクリーニングおよび濃縮キット(例えば、Zymo research)を使用してDNAを回収することができる。
【0245】
一部の実施形態(例えば、
図10を参照)では、近接(例えば、約10bp未満だけ離れている)するペアとして標的核酸(例えば、DNA)901に結合するように標的特異的gNA903を設計する。試料は、非標的DNA902も含有し得る。DNA試料の3’末端は、ジデオキシCTP等の伸長できないヌクレオチドを用いて遮断される(図中の「B」)。これらのgNAを、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系ニッカーゼタンパク質904と複合体化し、DNA試料に加え、ニッカーゼ-gNA複合体との全ての結合性部位においてDNA中にニックを生じさせる。2つのニックが近接(例えば、約10bpまたはそれ未満)している場合、二本鎖切断が生じる1005。蛍光ドナーとして作用するDNA結合性色素1008を用いてDNA試料全体を標識する。二本鎖は、切断されるが、例えばターミナルトランスフェラーゼを使用することによるアクセプターフルオロフォア1009を用いた末端標識用の唯一の基質である。DNA全体にわたって導入されるドナー標識に対する標的部位のみに導入されるアクセプター標識の近接性により、アクセプターフルオロフォアのFRETおよび発光が生じ1010、DNA試料中の標的DNAの定量が可能となる。標的へのgNAの結合がない場合1006、ニック形成は起こらないため、アクセプターフルオロフォアは付着されない。無関係な標的へのgNA-ニッカーゼ複合体のまれな非特異的な結合1007は、DNAへの単一の複合体の結合を生じさせるに過ぎないため、DNAへの単一のニックを生じさせ、これはターミナルトランスフェラーゼの基質として働かない。DNA全体にわたって導入されるドナー標識に対する標的部位のみに導入されるアクセプター標識の近接性により、アクセプターフルオロフォアのFRETおよび発光が生じ、DNA試料中の標的DNAの定量が可能となる。無関係な標的へのgNA-ニッカーゼ複合体のまれな非特異的な結合は、DNAへの単一の複合体の結合を生じさせるに過ぎないため、DNAへの単一のニックを生じさせ、これはターミナルトランスフェラーゼの基質として働かない。ドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアの近接性により、FRETが生じ得、これを測定してDNA試料中の標的DNAの量が算出される。溶液中のフルオロフォアおよびDNA上のドナーフルオロフォアは継続的には近接しないため、反応溶液からのFRETシグナルは起こらない(またはFRETシグナルは無視できる程度である)。よって、この実施形態および上記の他のFRETベースの実施形態は、洗浄を伴わない1チューブの形式で実行できる可能性があるため、これらのアプローチは迅速な処理および検出のために有利である。斯かるアッセイは、低濃度試料(例えば、5%未満の標的DNA)中の標的DNAの検出を含む適用のために有用であり得る。代替的な実施形態は、アクセプターフルオロフォアおよびドナーフルオロフォアの位置を交換した類似のアプローチを含む。
【0246】
核酸は、拡散に加えて様々な手段によって、基材と近接させられ得る。電気泳動および/または流体の流れを使用して表面においてまた表面の近くにおいて核酸を濃縮することができる。他の技術を用いることもできる。例えば、表面は、その表面の全体または一部にわたって(例えば、特徴において)疎水性表面化学を有することができ、疎水性部分を用いて標的核酸をタグ付けして、核酸が表面の疎水性領域へのエネルギー的選好性を有するようにすることができる。別の例では、磁性粒子を用いて標的核酸をタグ付けすることができ、そして磁場を使用して標的核酸をアレイ表面へ導くことができる。
【0247】
体積排除性化合物(volume-excluding compounds)を使用して、試料DNA等の試料
核酸を効果的に濃縮することもできる。体積排除剤(volume excluder)を使用して、体積排除剤が占める液体体積から試料物質を排除することにより、残りの液体体積中に試料物質を濃縮することができる。この機序は、基材への試料核酸のハイブリダイゼーション等による、試料物質の捕捉または結合を加速させるのを助けることができる。例えば、体積排除剤をハイブリダイゼーション緩衝液中に含めてハイブリダイゼーションの反応速度を向上させることができる。体積排除剤は、例えばビーズまたはポリマーであり得、硫酸デキストラン、フィコールおよびポリエチレングリコールを非限定的に含む。体積排除剤は、高分子量ポリマーであり得る。体積排除剤は、負に帯電していてもよく、これにより例えば、体積排除剤への核酸の結合を低減し得る。
【0248】
キットおよび製品
本出願は、キットを提供し、該キットは、標的特異的gNA、標的特異的gNAの収集物、標識された標的特異的gNA、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質(例えば、CRISPR/Cas系タンパク質)と複合体化した標的特異的gNA、基材に付着された標的特異的gNA、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質(例えば、CRISPR/Cas系タンパク質)と複合体化し、かつ基材に付着された標的特異的gNA、病原体特異的gNA、病原体特異的gNAの収集物、標識された病原体特異的gNA、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質(例えば、CRISPR/Cas系タンパク質)と複合体化した病原体特異的gNA、基材に付着された病原体特異的gNA、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質(例えば、CRISPR/Cas系タンパク質)と複合体化し、かつ基材に付着された病原体特異的gNA、基材等に限定されない本明細書に記載されているいずれか1または複数の組成物および収集物を含む。一実施形態では、核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質は、Cas9である。
【0249】
本出願はまた、組成物およびキットを提供し、該組成物および該キットは、本明細書に記載されている、標的特異的gNAおよび標的特異的gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体(例えば、gNA-核酸ガイド化ヌクレアーゼ系タンパク質複合体)を作製し、標識し、または基材に付着する方法を実行するためのあらゆる必須の試薬および説明書を含む。試薬は、検出に必要な色素および蛍光性ヌクレオチドを含み得る。
【0250】
本明細書に提供される検出および同定方法の実行前および実行後の情報をモニタリングするコンピューターソフトウェアも、本明細書に提供される。
【0251】
以下の実施例は実例の目的のために含めたものであり、本発明の範囲を限定する意図ではない。
【実施例0252】
(実施例1)
臨床試料中の病原体の検出
この実施例では、臨床試料(例えば、血液、スワブ、脳脊髄液)を得、(例えば、Qiagen Blood DNAまたはRNA抽出キットを使用して)DNAまたはRNAを抽出する。RNAを抽出したら、標準的な方法を使用してそれをcDNAに変換する。任意選択で、酵素的または機械的手段を使用してDNAをせん断することができる。次いで、dCas9と複合体化した病原体特異的なgRNAを既知の特定の順序で含有する基材にDNAを注ぐ。比色計または蛍光の読み取りにより、存在する病原体の種類(例えば、エボラ、HIV、Mycobacterium tuberculosis等)を決定する。検出器において使用される特定のgRNAライブラリーを用意することにより、異なる場合(例えば、肺炎、尿路感染症、食物媒介性の感染症)において病原体を検出することができる。検出器の迅速な読み取りは、培養またはRT-PCR等の標準的な方法と比べて試料収集と診断との間の時間を短縮し、検出を現場(例えば、大発生の場所にある現地)で実行することができる。標的DNAを基材から溶出した後、シークエンシングして病原体に関する追加の情報を得ることもできる。
【0253】
(実施例2)
環境試料中の生物兵器(病原体)の検出
この実施例では、環境試料(例えば、空気清浄器、土壌試料、表面スワブ)を得、(例えば、MO Bio Soil DNA抽出キットを使用して)DNAまたはRNAを抽出する。RNAを抽出したら、標準的な方法を使用してそれをcDNAに変換する。任意選択で、酵素的または機械的手段を使用してDNAをせん断することができる。次いで、一連の潜在的な生物兵器剤を標的化するgRNAを含有する基材にDNAを注ぎ、比色計または蛍光の読み取りにより、存在する病原性生物兵器の種類(例えば、Bacillus anthracis、Yersinia pestis)を決定する。検出器の迅速な読み取りは、RT-PCR等の標準的な方法と比べて試料収集と脅威の検出との間の時間を短縮し、検出を現場(例えば、現地)で実行することができる。標的DNAを基材から溶出した後、シークエンシングして病原体に関する追加の情報を得ることもできる。
【0254】
(実施例3)
毒性植物起源
この実施例では、生物兵器毒素の試料を得、(例えば、MO Bio Soil DNA抽出キットを使用して)DNAまたはRNAを抽出する。RNAを抽出したら、標準的な方法を使用してそれをcDNAに変換する。任意選択で、酵素的または機械的手段を使用してDNAをせん断することができる。次いで、一連の潜在的な毒素剤を標的化するgRNAを含有する基材にDNAを注ぐ。例えば、毒素がリシンであれば、トウゴマそれ自体の亜種により、毒素ならびにあり得る亜種およびトウゴマの起源の場所の迅速な同定を可能とし得る。
【0255】
(実施例4)
製造物の検証およびバーコード化
製造物に特異的なgRNAを作製して、材料の異なるロットまたは起源を同定し得、それにより製造物の起源を追跡し得る。例えば、ベークド製品が複数の原料国の原材料を含有すること、または牛肉試料に馬肉が混ざっていることがあり得る。位置特異的なgRNAのアレイは、施行機関に対して製造物のバルク原材料の位置を教え得る。それはまた、製造物パッケージ上のDNAマーカーを同定することによって、当該国に密輸入された模造品の検出にも有用であり得る。
【0256】
(実施例5)
ヒトの同定
この実施例では、ヒトDNAを含有する試料(例えば、法医学的試料)を得、(例えば、QIAmp DNA Micro kitのキットを使用して)DNAを抽出する。任意選択で、酵素的または機械的手段を使用してDNAをせん断することができる。次いで、ヒトの同定用に選択した一連のSNPを標的化するgRNAを含有する基材にDNAを注ぎ、比色計または蛍光の読み取りを、各個体に特異となるように選択し得る。異なるSNPの対立遺伝子がgRNAの差次的な結合を生じるようにgRNAを選択する。検出器の迅速な読み取りは、PCRおよびキャピラリー電気泳動等の標準的な方法と比べて試料収集と疑わしい者の同定との間の時間を短縮し、検出を現場(例えば、現地)で実行することができる。標的DNAを基材から溶出した後、シークエンシングして個体に関する追加の情報(例えば、表現型の情報)を得ることもできる。
【0257】
(実施例6)
腫瘍DNAの突然変異の検出
この実施例では、がんのDNAを含有する試料(例えば、腫瘍試料)を得、(例えば、Qiagen DNeasy tissue kitを使用して)DNAを抽出する。任意選択で、酵素的または機械的手段を使用してDNAをせん断することができる。次いで、がんにおいてよく見られる一連の突然変異の部位を標的化するgRNAを含有する基材にDNAを注ぎ、比色計または蛍光の読み取りを、各変異に特異となるように選択し得る。異なるSNPの対立遺伝子がgRNAの差次的な結合を生じるようにgRNAを選択する。検出器の迅速な読み取りは、エクソームシークエンシング等の標準的な方法と比べて試料収集と腫瘍プロファイリングとの間の時間を短縮し、検出を現場(例えば、診療所)で実行することができる。標的DNAを基材から溶出した後、シークエンシングして追加の情報を得ることもできる。
【0258】
記載した発明をその特定の実施形態に関して説明したが、本発明の真の精神および範囲から離れることなく、様々な変更を行うことができ、また同等物で置き換えることができることが当業者によって理解されるはずである。加えて、特定の状況、材料、組成物、プロセス、処理ステップ(単数または複数)を記載された発明の目的たる精神および範囲に適応させるために、多くの改変が為され得る。全てのそのような改変は、本明細書に添付する特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0259】
本明細書中で参照した特許、特許出願、特許出願公開、学術論文およびプロトコールは、参照することによって、全ての目的のためにそれらの全体が組み込まれる。