(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082720
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】含量均一性を改善した製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20220526BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61K31/485
A61K47/26
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063440
(22)【出願日】2022-04-06
(62)【分割の表示】P 2018559514の分割
【原出願日】2017-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2016250513
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100209598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100219841
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 綾子
(72)【発明者】
【氏名】真下 全
(72)【発明者】
【氏名】一尾 俊司
(57)【要約】
【課題】簡便でしかも有効成分の含量均一性が高い製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上、好ましくは20倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を混合することによって、固形製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とする固形製剤の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形製剤の製造方法であって、
(i)有効成分として式(IA):
【化1】
で示される化合物、またはその製薬上許容される塩、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を、20rpm~37rpmで混合する工程、および、
(ii)前記混合物を、溶媒を使用しない直接打錠法または水を使用しない乾式造粒法で圧縮成形する工程、
を含むことを特徴とし、
該有効成分の平均粒子径が5μm以下であり、
該賦形剤の平均粒子径が60μm以上であり、
該賦形剤は、D-マンニトールを含有し、
製剤中の有効成分含量が1重量%以下である、
製剤中の有効成分含量の標準偏差を3%以内とするための、固形製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上、好ましくは20倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を混合する工程を含む固形製剤の製造方法であり、当該製造方法によって、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とすることができる。
【背景技術】
【0002】
低含量の有効成分を含有する製剤、特に錠剤の場合、含量均一性が問題となる。すなわち、低含量の有効成分と添加剤を単純に混合し打錠するという直接打錠法によって錠剤を製造しても、良好な含量均一性の錠剤を製造することは困難である。低含量の有効成分を含有する錠剤を直接打錠法によって製造しなければならない場合、有効成分とともに、添加剤を少量ずつ数段階にわけて混合しなければならず、製造工程が煩雑となる。従って、このような低含量有効成分の錠剤の場合、有効成分と添加剤を造粒して、一旦顆粒を製造し、この顆粒を打錠して錠剤を製造するという顆粒圧縮法で錠剤を製造する場合が多い。
【0003】
顆粒を製造する場合、有効成分及び添加剤を混合し、水等の溶媒で造粒した後、乾燥して製造する場合が多い。しかしながら、有効成分によっては、水等の溶媒によって分解する場合がある。また、水等の溶媒によって、有効成分の結晶形が変わる可能性や顆粒の乾燥工程時によって有効成分が分解する恐れもある。
【0004】
以上のように、水等の溶媒によって有効成分が分解する場合、顆粒圧縮法によって錠剤を製造することは好ましくなく、水等の溶媒を使用しない直接打錠法が好ましい。従って、含量均一性が良好な錠剤を製造することができ、しかも製造工程が煩雑でない直接打錠法が望まれる。
【0005】
低含量の有効成分で、直接打錠法によって製造された錠剤の文献として、特許文献1および2が開示されている。しかし、この文献では、単に有効成分のみの粒子径のみを小さくする、あるいは添加剤のみの粒子径を小さくして、含量均一性を良好にしているが、必ずしも目的の含量均一性を達成できるものではない。
【0006】
低含量で薬効を発揮する有効成分として、オピオイド受容体のアゴニストの副作用軽減剤である6,7-不飽和-7-カルバモイルモルヒナン誘導体がある。特許文献3および4には、当該化合物および当該化合物を製造する方法が開示されている。また、特許文献5には、当該化合物を含有する製剤が開示されている。しかし、特許文献3~5には、含量均一性については一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/072354号パンフレット
【特許文献2】特表2015-530355号公報
【特許文献3】国際公開第2006/126637号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2012/063933号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2013/172297号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、直接打錠法によって、簡便でしかも有効成分の含量均一性が高い製剤の製造方法および製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、有効成分と賦形剤の平均粒子径の差異に着目し、有効成分の量が少量であっても、有効成分の平均粒子径に対し、平均粒子径が15倍以上の賦形剤を混合することによって、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った(以下、本発明で完成するに至った製剤を「本発明製剤」という場合がある。)。
すなわち、
(1)有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤の製造方法、
(2)(i)有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を混合する工程、
(ii)前記混合物を直接打錠法または乾式造粒法で圧縮成形する工程、
を含むことを特徴とする、上記(1)記載の製造方法、
(3)賦形剤の平均粒子径が、有効成分の平均粒子径に対して20倍以上である上記(1)または(2)記載の固形製剤の製造方法、
(4)製剤中の有効成分含量の標準偏差が3%以内である上記(1)から(3)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(5)製剤中の有効成分含量が10重量%以下である上記(1)から(4)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(6)製剤中の有効成分含量が5重量%以下である上記(5)記載の固形製剤の製造方法、
(7)製剤中の有効成分含量が1重量%以下である上記(5)記載の固形製剤の製造方法、
(8)製剤中の賦形剤含量が50~99.99重量%である上記(1)から(7)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(9)製剤中の賦形剤含量が60~99.99重量%である上記(8)記載の固形製剤の製造方法、
(10)製剤中の賦形剤含量が70~99.99重量%である上記(8)記載の固形製剤の製造方法、
(11)有効成分の平均粒子径が10μm以下である上記(1)から(10)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(12)有効成分の平均粒子径が8μm以下である上記(11)記載の固形製剤の製造方法、
(13)有効成分の平均粒子径が5μm以下である上記(11)記載の固形製剤の製造方法、
(14)賦形剤の平均粒子径が30μm以上である上記(1)から(13)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(15)賦形剤の平均粒子径が45μm以上である上記(14)記載の固形製剤の製造方法、
(16)賦形剤の平均粒子径が60μm以上である上記(14)記載の固形製剤の製造方法、
(17)有効成分の平均粒子径が10μm以下であり、賦形剤の平均粒子径が30μm以上である上記(11)または(14)記載の固形製剤の製造方法、
(18)製剤中の有効成分含量が1%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が5μm以下であり、賦形剤の平均粒子径が60μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して20倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする、製剤中の有効成分含量の標準偏差が3%以内である、上記(1)から(17)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(19)製剤中の有効成分含量が1%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が5μm以下であり、賦形剤の平均粒子径が60μm以上であって、(i)有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して20倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を混合する工程、
(ii)当該混合物を直接打錠法または乾式造粒法で圧縮成形する工程、
を含むことを特徴とする、上記(18)記載の製造方法、
(20)有効成分として水に不安定な化合物を含有する上記(1)から(19)のいずれかに記載の製造方法、
(21)有効成分として式(IA):
【化1】
で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を含有する上記(1)から(20)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(22)有効成分として式(IA) で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩若しくは塩酸塩または当該塩の溶媒和物を含有する上記(21)記載の固形製剤の製造方法、
(23)賦形剤として、糖または糖アルコールを含有する上記(1)から(22)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法、
(24)賦形剤として、D-マンニトールを含有する上記(23)記載の固形製剤の製造方法、
(25)固形製剤が、錠剤、顆粒剤、散剤およびカプセル剤からなる群から選択される1以上である上記(1)から(24)のいずれかに記載の製造方法、
(26)上記(1)から(25)のいずれかに記載の製造方法によって製造された固形製剤、
(27)有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1%以下であり、製剤中の有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤、
(28)製剤中の賦形剤含量が70~99.99重量%である上記(27)記載の固形製剤、
(29)有効成分として式(IA):
【化2】
で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を含有する上記(27)または(28)記載の固形製剤、
の発明に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有効成分の含量均一性が高くなる。本発明の固形製剤の含量を測定した結果、有効成分の含量の標準偏差が5%以下、好ましくは3%以下である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明製剤において、有効成分は、医薬品に用いられるものであればよい。特に、製剤中の有効成分含量が少量である有効成分、あるいは水に不安定な有効成分であれば、本発明の効果を発揮することができる。ここで、「水に不安定な有効成分」とは、水によって分解する有効成分のことをいう。
【0012】
本発明製剤に使用される有効成分としては、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。
【0013】
滋養強壮保健薬には、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロールなど)、ビタミンB1(ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩など)、ビタミンB2(酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンなど)、ビタミンC(アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウムなど)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなど)のビタミン、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル、タンパク、アミノ酸、オリゴ糖、生薬などが含まれる。解熱鎮痛消炎薬としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、無水カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。
【0014】
向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピンなどが挙げられる。抗不安薬としては、例えばアルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパムなどが例示される。抗うつ薬としては、例えばイミプラミン、塩酸マプロチリン、アンフェタミンなどが例示される。催眠鎮静薬としては、例えばエスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、ペルラピン、フェノバルビタールナトリウムなどが例示される。鎮痙薬には、例えば臭化水素酸スコポラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸パパベリンなどが含まれる。中枢神経作用薬としては、例えばシチコリンなどが例示される。脳代謝改善剤としては、例えば塩酸メクロフェニキセートなどが挙げられる。脳循環改善剤としては、例えばビンポセチンなどが挙げられる。抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、カルバマゼピンなどが挙げられる。交感神経興奮剤としては、例えば塩酸イソプロテレノールなどが挙げられる。胃腸薬には、例えばジアスターゼ、含糖ペプシン、ロートエキス、セルラーゼAP3、リパーゼAP、ケイヒ油などの健胃消化剤、塩化ベルベリン、耐性乳酸菌、ビフィズス菌などの整腸剤などが含まれる。
【0015】
制酸剤としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。抗潰瘍剤としては、例えばランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジンなどが挙げられる。鎮咳去痰剤としては、例えば塩酸クロペラスチン、臭化水素酸デキストロメルトファン、テオフィリン、グァヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、リン酸コデインなどが挙げられる。鎮吐剤としては、例えば塩酸ジフェニドール、メトクロプラミドなどが挙げられる。呼吸促進剤としては、例えば酒石酸レバロルファンなどが挙げられる。気管支拡張剤としては、例えばテオフィリン、硫酸サルブタモールなどが挙げられる。アレルギー用薬としては、アンレキサノクス、セラトロダストなどが挙げられる。歯科口腔用薬としては、例えばオキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、塩酸クロルヘキシジン、リドカインなどが例示される。
【0016】
抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、プロメタジン、塩酸イソチペンジル、dl-マレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。強心剤としては、例えばカフェイン、ジゴキシンなどが挙げられる。不整脈用剤としては、例えば塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、ピンドロールなどが含まれる。利尿薬としては、例えばイソソルピド、フロセミド、ヒドロクロロチアジドなどが挙げられる。血圧降下剤としては、例えば塩酸デラプリル、カプトプリル、塩酸ヒドララジン、塩酸ラベタロール、塩酸マニジピン、カンデサルタンシレキセチル、メチルドパ、ペリンドプリルエルブミンなどが挙げられる。血管収縮剤としては、例えば塩酸フェニレフリンなどが挙げられる。
【0017】
冠血管拡張剤としては、例えば塩酸カルボクロメン、モルシドミン、塩酸ペラパミルなどが挙げられる。末梢血管拡張薬としては、例えばシンナリジンなどが挙げられる。高脂血症用剤としては、例えばセリバスタチンナトリウム、シンバスタチン、プラバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物などが挙げられる。利胆剤としては、例えばデヒドロコール酸、トレピプトンなどが挙げられる。抗生物質には、例えばセファレキシン、セファクロル、アモキシシリン、塩酸ピプメシリナム、塩酸セフォチアムヘキセチル、セファドロキシル、セフィキシム、セフジトレンピボキシル、セフテラムピボキシル、セフポドキシミプロキセチルなどのセフェム系、アンピシリン、シクラシン、ナリジクス酸、エノキサシンなどの合成抗菌剤、カルモナムナトリウムなどのモノバクタム系、ペネム系及びカルバペネム系抗生物質などが挙げられる。
【0018】
化学療法剤としては、例えばスルファメチゾールなどが挙げられる。糖尿病用剤としては、例えばトルブタミド、ボグリボース、塩酸ピオグリタゾン、グリベンクラミド、トログリダゾンなどが挙げられる。骨粗しょう症用剤としては、例えばイプリフラボンなどが挙げられる。骨格筋弛緩薬としては、メトカルバモールなどが挙げられる。鎮けい剤としては、塩酸メクリジン、ジメンヒドリナートなどが挙げられる。抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミンなどが挙げられる。ホルモン剤としては、例えばリオチロニンナトリウム、リン酸デキメタゾンナトリウム、プレドニゾロン、オキセンドロン、酢酸リュープロレリンなどが挙げられる。アルカロイド系麻薬として、アヘン、塩酸モルヒネ、トコン、塩酸オキシコドン、塩酸アヘンアルカロイド、塩酸コカインなどが挙げられる。サルファ剤としては、例えばスルフィソミジン、スルファメチゾールなどが挙げられる。痛風治療薬としては、例えばアロプリノール、コルヒチンなどが挙げられる。血液凝
固阻止剤としては、例えばジクマロールが挙げられる。抗悪性腫瘍剤としては、例えば5-フルオロウラシル、ウラシル、マイトマイシンなどが挙げられる。
【0019】
これらの有効成分は、単独または他の医薬との合剤として使用することができる。また、これらの医薬は、患者の疾患、年齢等に応じて適宜、定められた公知の適量が投与される。
【0020】
なお、有効成分としては、化合物のみではなく、その化合物の製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物も含まれる。
【0021】
本発明製剤中の有効成分の含量は、薬効を生じるような量であればよい。具体的には、製剤全量に対して、10重量%以下、好ましくは0.001~10重量%、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは0.005~5重量%、特に好ましくは1重量%以下、極めて好ましくは0.01~1重量%以下である。
【0022】
本発明製剤中の有効成分として、好ましくは、式(IA):
【化3】
で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物が用いられる。好ましくは、有効成分として式(IA) で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩若しくは塩酸塩または当該塩の溶媒和物、より好ましくは、有効成分として式(IA) で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物である。
【0023】
式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物、式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩またはそれらの溶媒和物の製法は、国際公開第2006/126637号パンフレットおよび国際公開第2012/063933号パンフレットに開示されている。
【0024】
本発明製剤中の式(IA)で示される化合物、特に式(IA)で示される化合物p-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物の含量は、薬効を生じるような量であればよい。具体的には、製剤全量に対して、10重量%以下、好ましくは0.001~10重量%、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは0.005~5重量%、特に好ましくは1重量%以下、極めて好ましくは0.01~1重量%以下である。
【0025】
本発明製剤において、有効成分の平均粒子径の上限は、有効成分との平均粒子径との関係もあるが、10μm以下、好ましくは8μm以下、より好ましくは5μm以下である。一方、本発明製剤において、有効成分の平均粒子径の下限は、特に制限はないが、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。
【0026】
本発明製剤中の式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましい。
【0027】
本発明製剤は、賦形剤を含有する。賦形剤は、本発明製剤の添加剤のうち、含有割合が最も多い。賦形剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格等に収載されている賦形剤を使用することができる。具体的には、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール類、キシロース、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フラクトース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)ショ糖(シュクロース)、異性化糖、水飴、精製白糖、白糖、精製白糖球状顆粒、無水乳糖、白糖・デンプン球状顆粒等の糖類、半消化体デンプン、ブドウ糖水和物、粉糖、結晶セルロース、プルラン、β-シクロデキストリン、アミノエチルスルホン酸、アメ粉、塩化ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、グルコン酸カルシウム、L-グルタミン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、デキストラン40、デキストリン、乳酸カルシウム、ポビドン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水クエン酸、DL-リンゴ酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、L-アスパラギン酸、アルギン酸、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、クロスポビドン、グリセロリン酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、小麦粉、コムギデンプン、コムギ胚芽粉、小麦胚芽油、米粉、コメデンプン、酢酸フタル酸セルロース、酸化チタン、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、第三リン酸カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、トウモロコシデンプン造粒物、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸二水素カルシウム等が挙げられ、好ましくは乳糖および結晶セルロースである。
【0028】
本発明製剤中の賦形剤の含量は、製剤全量に対し、50~99.99重量%、好ましくは60~99.99重量%、より好ましくは70~99.99重量%である。
【0029】
本発明製剤において、有効成分の平均粒子径と賦形剤の平均粒子径の差によって、含量均一性が高くなる。すなわち、これらの差が大きければ、有効成分含量の標準偏差が小さくなることを見出した。つまり、賦形剤の平均粒子径が有効成分の平均粒子径に対して15倍以上、好ましくは17.5倍以上、より好ましくは20倍以上であれば、有効成分含量の標準偏差が5%以内、好ましくは4%以内、より好ましくは3%以内である。有効成分に対し、賦形剤の平均粒子径が大きく、またその差が大きい場合、有効成分と賦形剤で複合体を形成させることができ、さらに、この複合体の粒子径、形状及び嵩密度などの粉体物性を他の添加剤のものと近似させることによって、粒子間の偏析を抑制し、有効成分の含量の均一性を高めることができると推測される。
【0030】
製剤中における有効成分の含量均一性は、一般的に日本薬局方に収載されている製剤均一性試験法試験で評価される。また、本評価は個々の含量値の標準偏差以外に平均含量を用いて算出された値(判定値)を用いて行われる。一方で、有効成分の分散の程度に絞って評価するには、個々の含量値の標準偏差のみを用いて評価することが妥当と判断した。また,含量値の標準偏差が5%以内であるとき、一般的に製剤均一性試験の基準を満たすことから、有効成分含量の標準偏差が5%以内であることが好ましいと判断した.
なお、有効成分と賦形剤を混合した場合に、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%超となってしまう時は、賦形剤として、当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を用い、当該賦形剤を有効成分と混合することにより、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤を得ることができる。また、有効成分として、使用される賦形剤の平均粒子径に対して15分の1以下の平均粒子径を有する有効成分を用い、当該有効成分を賦形剤と混合することにより、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤を得ることができる。
すなわち、本発明は、有効成分と賦形剤を混合した場合に製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%超となるような有効成分に対して、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤を得る上で有用な技術である。
【0031】
本発明製剤において、賦形剤の平均粒子径の下限は、有効成分との平均粒子径との関係もあるが、30μm以上、好ましくは45μm以上、より好ましくは60μm以上である。一方、賦形剤の平均粒子径の上限は、350μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下である。なお、複数の種類の賦形剤を使用する場合、最も平均粒子径の大きな賦形剤の平均粒子径が、有効成分の平均粒子径に対して15倍以上、好ましくは17.5倍以上、より好ましくは20倍以上であれば、有効成分含量の標準偏差が5%以内、好ましくは4%以内、より好ましくは3%以内である。複数の種類の賦形剤を使用する場合、好ましくは、まず、最も平均粒子径の大きな賦形剤と有効成分を混合し、その後、他の賦形剤や添加物を混合する。仮に、最も大きな粒子径の賦形剤の量が少量であっても、有効成分自体が少量、好ましくは、製剤中の有効成分含量が10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下であれば、十分賦形剤と混合し、製剤中の有効成分含量の標準偏差を5%以内とすることができる。
【0032】
本製剤は、崩壊剤を含有してもよい。崩壊剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格等に収載されているものを使用することができる。具体的には、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルメロースカルシウムやカルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、好ましくはクロスカルメロースナトリウムである。
【0033】
本製剤中の崩壊剤の含量は、製剤全量に対し、0.5~30重量%、好ましくは0.75~25重量%、より好ましくは1~20重量%である。
【0034】
本製剤は、滑沢剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格等に収載されている滑沢剤を使用することができる。具体的には、ステアリン酸金属塩、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、含水二酸化ケイ素等が挙げられるが、好ましくはステアリン酸金属塩である。ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられるが、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。
【0035】
滑沢剤の含量は、製剤全量に対し、通常、0.05~10重量%、好ましくは0.075~7.5重量%、より好ましくは0.1~5重量%である。
【0036】
本製剤は、コーティング剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格等に収載されている滑沢剤を使用することができる。具体的には、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVAコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、オパドライ、カルナバロウ、カルボキシビニルポリマー、乾燥メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ステアリルアルコール、セラック、セタノール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、メタクリル酸コポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー等が挙げられるが、好ましくは、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)である。
【0037】
本製剤中のコーティング剤の含量は、製剤全量に対し、通常、0.1~10重量%、好ましくは0.25~7.5重量%、より好ましくは0.5~5重量%である。
【0038】
コーティングの作業を効率よく行うために、コーティング剤中に可塑剤や凝集防止剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されているものを使用することができる。具体的には、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール8000、マクロゴール20000、マクロゴール35000等のマクロゴール(平均分子量1000~35000のポリエチレングリコール)、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ヒマシ油及びタルク等が挙げられる。
【0039】
本製剤は、色素または着色剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格または医薬品添加物規格等に収載されている色素を使用することができる。色素は錠剤中にでも、コーティング層中にでも含有することができる。色素として、具体的には、酸化鉄、タール色素および天然色素等が挙げられる。酸化鉄としては、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等がある。タール色素としては、食用黄色4 号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用青色1 号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色102号、食用赤色2号、食用赤色3号等がある。天然色素としては、ウコン抽出液、β -カロチン、カロチン液、銅クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィル、ハダカムギ緑葉エキス末、裸麦緑葉青汁乾燥粉末、裸麦緑葉抽出エキス等がある。
【0040】
本製剤は、さらに必要であれば、上述以外の添加剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格および食品添加物公定書に収載されている添加剤を使用することができる。また、これらの添加剤の含量は、任意の割合でよい。上述以外の添加剤としては、具体的には、結合剤、香料、流動化剤、矯味剤等が挙げられる。
結合剤として、具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、アラビアゴム、アラビアゴム末、ゼラチン、カンテン、デキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース等が挙げられる。
香料として、具体的には、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられる。
流動化剤として、具体的には、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、タルク等が挙げられる。
矯味剤として、具体的には、アスパルテーム、スクラロース、グリシン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、希塩酸、クエン酸およびその塩、無水クエン酸、L-グルタミン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、酢酸、酒石酸およびその塩、炭酸水素ナトリウム、フマル酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、氷酢酸、イノシン酸二ナトリウム、ハチミツ等が挙げられる。
【0041】
本発明製剤は、固形製剤であればよい。具体的には、顆粒剤、細粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤等であればよいが、好ましくは顆粒剤または錠剤である。
【0042】
本発明製剤のうち顆粒剤の製造方法は、有効成分の含量均一性がよく、しかも有効成分が分解しない製造方法であれば、特に制限されないが、具体的には、有効成分、崩壊剤、賦形剤等の添加剤を混合して、混合末を製造後、当該混合末を造粒する方法であり、好ましくは水を使用しないで圧縮成形する乾式造粒法、破砕造粒法、溶融造粒法である。また、顆粒剤を製造後、当該顆粒剤にコーティング剤を被覆することによって、顆粒剤を被覆することもできる。有効成分や添加剤等を混合する機械として、V型混合機やコンテナブレンダーを使用することができる。また、造粒する機械としては、乾式破砕造粒機、破砕造粒機、溶融押出造粒機を使用することができる。
【0043】
本発明製剤のうち錠剤の製造方法は、有効成分の含量均一性がよく、しかも有効成分が分解しない製造方法であれば、特に制限されないが、具体的には、有効成分、崩壊剤、賦形剤等の添加剤を混合して、混合末を製造後、当該混合末を打錠機で打錠する直接打錠法である。有効成分や添加剤等を混合する機械として、V型混合機やコンテナブレンダーを使用することができる。また、打錠機としては、単発打錠機、ロータリー式打錠機等を使用することができる。
【0044】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分の平均粒子径が10μm以下であり、賦形剤の平均粒子径30μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とすることができる。
【0045】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分の平均粒子径が8μm以下であり、賦形剤の平均粒子径45μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して17.5倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とすることができる。
【0046】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分の平均粒子径が5μm以下であり、賦形剤の平均粒子径60μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して20倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とすることができる。
【0047】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分含量が10%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が10μm以下であり、賦形剤の平均粒子径30μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とすることができる。
【0048】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分含量が5%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が8μm以下であり、賦形剤の平均粒子径45μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して17.5倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が4%以内とすることができる。
【0049】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分含量が1%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が5μm以下であり、賦形剤の平均粒子径60μm以上であって、当該有効成分の平均粒子径に対して20倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が3%以内とすることができる。
【0050】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分含量が10%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が10μm以下であり、賦形剤の平均粒子径30μm以上であって、(i)有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程、(ii)当該混合物を直接打錠法または乾式造粒法で圧縮成形する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内とすることができる。
【0051】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分含量が5%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が8μm以下であり、賦形剤の平均粒子径45μm以上であって、(i)有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して17.5倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程、(ii)当該混合物を直接打錠法または乾式造粒法で圧縮成形する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が4%以内とすることができる。
【0052】
本発明製剤の製造方法として、製剤中の有効成分含量が1%以下であり、当該有効成分の平均粒子径が5μm以下であり、賦形剤の平均粒子径60μm以上であって、(i)有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して20倍以上の平均粒子径を有する当該賦形剤を混合する工程、(ii)当該混合物を直接打錠法または乾式造粒法で圧縮成形する工程を含むことを特徴とする製造方法であれば、製剤中の有効成分含量の標準偏差が3%以内とすることができる。
【0053】
本発明製剤の製造方法によって、製剤中の有効成分含量の標準偏差が5%以内、好ましくは3%以内の固形製剤を製造することができる。
【0054】
本発明製剤の処方として、具体的には、有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が10重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤、好ましくは、有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が5重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が4%以内である固形製剤、より好ましくは、有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤である。
【0055】
本発明製剤の処方として、具体的には、有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および50~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が10重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤、好ましくは、有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および60~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が5重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が4%以内である固形製剤、より好ましくは、有効成分として水に不安定な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および70~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤である。
【0056】
本発明製剤の処方として、具体的には、有効成分として式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が10重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤、好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が5重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が4%以内である固形製剤、より好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤である。
【0057】
本発明製剤の処方として、具体的には、有効成分として式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および50~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が10重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤、好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および60~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が5重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が4%以内である固形製剤、より好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物および70~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤である。
【0058】
本発明製剤の処方として、具体的には、有効成分として式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が10重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤、好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物または当該塩の溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が5重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が4%以内である固形製剤、より好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物および賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤である。
【0059】
本発明製剤の処方として、具体的には、有効成分として式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物および50~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が10重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が5%以内である固形製剤、好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物および60~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が5重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が4%以内である固形製剤、より好ましくは、有効成分として式(IA)で示される化合物のp-トルエンスルホン酸塩または当該塩の溶媒和物および70~99.99重量%の賦形剤を含有し、製剤中の有効成分含量が1重量%以下であり、有効成分含量の標準偏差が3%以内である固形製剤である。
【0060】
錠剤の形状としては、どのような形状も採用することができ、具体的には、丸形、楕円形、球形、棒状型、ドーナツ型の形状の錠剤とすることができる。また、積層錠、有核錠などであってもよいが、好ましくは製造法が簡便な単層錠が好ましい。さらには、識別性向上のためのマーク、文字などの刻印さらには分割用の割線を付けてもよい。
【実施例0061】
以下、実施例、比較例および参考例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(1)含量均一性に及ぼす有効成分および賦形剤の平均粒子径の影響
有効成分の含量均一性に及ぼす有効成分および賦形剤の平均粒子径の影響を検討した。含量均一性とは、顆粒剤や錠剤などの製剤中において、有効成分が偏析することなく、含有されているかを示すものである。有効成分として、式(IA)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩、賦形剤としてD-マンニトール(Roquette社製またはMerck社製)を使用した。表1の種々の平均粒子径の有効成分と賦形剤を表1の重量%で配合した粉末を混合した後に,圧縮成形した錠剤の有効成分含量を以下の方法で求め、その結果からそれらの標準偏差を求めた。
実施例1,2及び比較例1で用いた錠剤は、以下の条件で製造した。式(IA)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩3.906g(式(IA)の化合物として3g)とD-マンニトール2366g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース600gを30メッシュの金網で3回篩過した後、V型混合機(有効容積8L)を用いて37rpmで33分間混合する。混合物に30メッシュの金網で篩過したステアリン酸マグネシウム30gを加え37rpmで5分間混合する。また,得られた混合物をロータリー打錠機(菊水製作所製RTM-S30K-2S型)を用いて圧縮成形して錠剤を製造した。
実施例3で用いた錠剤は、以下の条件で製造した。式(IA)の化合物のp-トルエンスルホン酸塩234.4g(式(IA)の化合物として180g)とD-マンニトール96,430g、クロスカルメロースナトリウム1,080gを30メッシュの金網で1回篩過した後、V型混合機(有効容積273L)を用いて20rpmで27分間混合する。混合物に30メッシュの金網で篩過したステアリン酸マグネシウム540gを加え20rpmで2.7分間混合する。また,得られた混合物をロータリー打錠機(菊水製作所製LIBRA2)を用いて圧縮成形して錠剤を製造した。
有効成分の平均粒子径(体積平均粒子径)は、HELOS(H1086)& ROSOS(日本レーザー社製)の粒度測定機を用いて、焦点距離100 mm及び分散圧2barとし、以下の条件で測定した。
HELOS (Laser diffraction unit)
Type : HELOS(H1086)
レンズ : R3
測定レンジ : 0.5-175μm
トリガー条件 : 2s-100ms-k15-0.5%-0.2%
計算モード : HRLD (5.3.0.0)
RODOS (Dispersing system)
フィーダー : VIBRI
分散圧 : 2.00bar
真空度 : 100mbar
送り : 50.00%
回転 : 30.00%
密度 : 1.00g/cm3
形状計数 : 1.00
また、賦形剤の平均粒子径(体積平均粒子径)はHELOS(H1086)& ROSOS(日本レーザー社製)の粒度測定機を用いて焦点距離100 mm及び分散圧3barの条件で評価した。
HELOS (Laser diffraction unit)
Type : HELOS(H1086)
レンズ : R5
測定レンジ : 0.5-875μm
トリガー条件 : 2s-100ms-conc-1.0%-1.0%
計算モード : HRLD (5.8.0.0)
RODOS (Dispersing system)
フィーダー : VIBRI
分散圧 : 3.00bar
真空度 : 134mbar
送り : 45.00%
回転 : 20.00%
密度 : 1.00g/cm3
形状計数 : 1.00
(含量の標準偏差の測定法)
実施例1、2及び比較例1は、打錠開始時及び終了時を含め打錠工程中に一定間隔で合計4回にわたって、サンプルをそれぞれ10錠、合計40錠抜き取り、それら製剤について、下記に示す試験法でそれらの含量を測定した。
実施例3は、同様に打錠開始時及び終了時を含め打錠工程中に一定間隔で合計25回にわたって、サンプルをそれぞれ3錠、合計75錠抜き取り、それら製剤について、下記に示す試験法でそれらの含量を測定した。
有効成分の式(IA)化合物の含量測定法は、HPLC法(波長:240nm、カラム:L-column ODS(充填剤5μm、4.6×250mm、化学物質評価研究機構製)、カラム温度:45℃、移動相:pH5.5の20mmol/Lリン酸塩緩衝液/アセトニトリル混液(13:7)、流量:1.0mL/分)によって測定した。
【0062】
(結果)
【表1】
*:式(IA)化合物のp-トルエンスルホン酸塩の量として記載
有効成分とD-マンニトールの平均粒子径の比が18.9であった実施例3において、有効成分含量の標準偏差は0.8%と5%以下であった。実施例1および2の有効成分とD-マンニトールの平均粒子径の比は、実施例3の18.9よりも大きかったが、いずれの製剤も含量の標準偏差は5%以下であった。一方、比較例1の有効成分とD-マンニトールの平均粒子径の比は、10未満であり、含量の標準偏差は5%よりも大きくなり、含量均一性は低かった。従って、有効成分に対する賦形剤の平均粒子径が15倍以上であれば、含量の標準偏差が5%以下になることが明らかとなった。
有効成分、および当該有効成分の平均粒子径に対して15倍以上、好ましくは20倍以上の平均粒子径を有する賦形剤を混合することによって、含量均一性が良好な固形製剤、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤およびカプセル剤を製造することができる。本発明製剤の製造方法は、煩雑ではないので、製剤製造の作業効率も高い。