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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082737
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】薬剤分包システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J3/00 310D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063764
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2021019208の分割
【原出願日】2018-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】寺田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】三輪 研人
(57)【要約】
【課題】複数の薬剤払い出し装置を構成要素に含む薬剤分包システムを提供する。
【解決手段】処方情報を保有する上位装置31と、複数台の薬剤払出し装置100、200、300を有し、処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システム30において、薬剤払出し装置100、200、300は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部106と、上位装置31から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部106から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、薬剤払出し装置100、200、300の未処理情報を保有する未処理情報記憶手段を有し、前記未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置100、200、300が決定されることを特徴とする薬剤分包システム30。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の薬剤払出し装置と、薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる処方情報が入力される処方入力手段とを有する薬剤分包システムにおいて、
複数台の薬剤払出し装置の内のいずれかの薬剤払出し装置は、処方入力手段により入力された処方情報を保有する情報保有部を有し、残りの他の薬剤払出し装置は、当該処方情報を保有する情報保有部を有しておらず、
複数台の各々の薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、記憶部と、情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能とを有し、
前記いずれかの薬剤払出し装置の情報保有部に保有する処方情報に基づいて、前記残りの他の薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、
各々の薬剤払出し装置に、未処理情報が記憶部に記憶されており、
未処理情報に応じて、前記いずれかの薬剤払出し装置から前記残りの他の薬剤払出し装置に薬剤排出処理を行う薬剤払出し装置を振り替える機能を有することを特徴とする薬剤分包システム。
【請求項2】
未処理情報は、各々の薬剤払出し装置に不具合が生じていない状態において、各々の薬剤払出し装置に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包システム。
【請求項3】
未処理情報は、各々の薬剤払出し装置に不具合が生じた状態において、各々の薬剤払出し装置に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤分包システム。
【請求項4】
表示装置を備え、表示装置に薬剤排出処理を行う振替先の候補が表示され、
表示装置に表示された振替先の候補から作業者が選択した振替先に対して薬剤排出処理が終了していない処方情報を振り替えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬剤分包システム。
【請求項5】
複数台の薬剤払出し装置の内、少なくとも2以上の薬剤払出し装置の間で相互通信する相互通信機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薬剤分包システム。
【請求項6】
表示装置を備え、
複数台の薬剤払出し装置の内、少なくとも2以上の薬剤払出し装置の間で相互通信する相互通信機能を備え、
前記いずれかの薬剤払出し装置には処方情報に含まれる薬剤を保持しておらず、前記残りの他の薬剤払出し装置に処方情報に含まれる総ての薬剤を保持しているならば、
前記残りの他の薬剤払出し装置の表示装置に、前記いずれかの薬剤払出し装置から前記残りの他の薬剤払出し装置に、薬剤を保持していない薬剤の処方情報を送信することに対しての承認を求める表示がなされ、使用者により他の薬剤払出し装置が決定されると、他の薬剤払出し装置に、薬剤を保持していない薬剤の処方情報が送信されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬剤分包システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の薬剤払い出し装置を備えた薬剤分包システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、薬剤を自動的に分包する薬剤払い出し装置を下記の特許文献1乃至5に開示した。本出願人が開示した薬剤払い出し装置は、散薬を処方箋に応じて自動的に分包することができるものである。
特許文献に開示した薬剤払い出し装置は、容器保管装置と、分配皿と、分配皿の近傍に配置された容器載置装置と、容器移動手段と、薬剤包装装置を有している。容器保管装置には、複数の薬剤容器が保管されており、各薬剤容器には散薬が充填されている。容器載置装置は振動台と、薬剤容器の重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段とを有している。
【0003】
特許文献に開示した薬剤払い出し装置では、上位装置から処方情報が送信され、当該処方情報に基づいて散薬を分包する。
特許文献に開示した薬剤払い出し装置では、容器移動手段によって容器保管装置から必要な薬剤容器を取り出して振動台に載置する。
そして分配皿を回転しつつ、振動台を振動させて薬剤容器から薬剤を少量ずつ分配皿に排出する。同時に重量測定手段によって薬剤容器から排出された薬剤の量を監視し、排出量が所定の量に至ると、振動を停止すると共に分配皿の回転を停止する。
そして分配皿に蒔かれた散薬を一服用分ずつに切りわけて薬剤包装装置に投入し、一服用分ずつ包装する。
【0004】
また特許文献6、7には、特許文献1乃至5とは異なる構造の薬剤払い出し装置が開示されている。特許文献6、7に開示された薬剤払い出し装置についても、薬剤を自動的に分包することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-114281号公報
【特許文献2】特開2018-35001号公報
【特許文献3】特開2017-86874号公報
【特許文献4】特開2016-187544号公報
【特許文献5】特開2016-130972号公報
【特許文献6】特開平7-132135号公報
【特許文献7】特許第6406785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献に開示した薬剤払い出し装置は、散薬の分包作業をほぼ完全に自動化することができ、市場において好評を得ている。
そのため市場において、上記した薬剤払い出し装置を複数台導入したいという要望がある。特に大病院からの要望が強い。
これに対して薬剤払い出し装置は、一台またはシステムを構成する上位装置等と、一台の薬剤払い出し装置で完結するシステムを想定して作られており、複数の薬剤払い出し装置を使用する場合のシステム構成については考えられていなかった。
【0007】
本発明は、上記した事態に対応するものであり、複数の薬剤払い出し装置を構成要素に含む薬剤分包システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために開発された本発明の一つの態様は、複数台の薬剤払出し装置と、薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる処方情報が入力される処方入力手段とを有する薬剤分包システムにおいて、複数台の薬剤払出し装置の内のいずれかの薬剤払出し装置は、処方入力手段により入力された処方情報を保有する情報保有部を有し、残りの他の薬剤払出し装置は、当該処方情報を保有する情報保有部を有しておらず、複数台の各々の薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、記憶部と、情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能とを有し、前記いずれかの薬剤払出し装置の情報保有部に保有する処方情報に基づいて、前記残りの他の薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、各々の薬剤払出し装置に、未処理情報が記憶部に記憶されており、未処理情報に応じて、前記いずれかの薬剤払出し装置から前記残りの他の薬剤払出し装置に薬剤排出処理を行う薬剤払出し装置を振り替える機能を有する薬剤分包システムである。
好ましい態様は、未処理情報は、各々の薬剤払出し装置に不具合が生じていない状態において、各々の薬剤払出し装置に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報である薬剤分包システムである。
さらに好ましい態様は、未処理情報は、各々の薬剤払出し装置に不具合が生じた状態において、各々の薬剤払出し装置に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報である薬剤分包システムである。
さらに好ましい態様は、表示装置を備え、表示装置に薬剤排出処理を行う振替先の候補が表示され、表示装置に表示された振替先の候補から作業者が選択した振替先に対して薬剤排出処理が終了していない処方情報を振り替える薬剤分包システムである。
さらに好ましい態様は、複数台の薬剤払出し装置の内、少なくとも2以上の薬剤払出し装置の間で相互通信する相互通信機能を備えた薬剤分包システムである。
さらに好ましい態様は、表示装置を備え、複数台の薬剤払出し装置の内、少なくとも2以上の薬剤払出し装置の間で相互通信する相互通信機能を備え、前記いずれかの薬剤払出し装置には処方情報に含まれる薬剤を保持しておらず、前記残りの他の薬剤払出し装置に処方情報に含まれる総ての薬剤を保持しているならば、前記残りの他の薬剤払出し装置の表示装置に、前記いずれかの薬剤払出し装置から前記残りの他の薬剤払出し装置に、薬剤を保持していない薬剤の処方情報を送信することに対しての承認を求める表示がなされ、使用者により他の薬剤払出し装置が決定されると、他の薬剤払出し装置に、薬剤を保持していない薬剤の処方情報が送信される薬剤分包システムである。
上記の課題を解決するために開発された本発明の別の態様は、処方情報を保有する情報保有部と、複数の薬剤払出し装置とを有し、処方情報には要求される散薬の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、薬剤払出し装置は、複数種類の散薬を保持する薬剤保持部と、情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて薬剤保持部から必要な散薬を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能とを有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、複数の薬剤払出し装置の各々には、処方情報と処方情報の中で未だに処理が完了していない未処理情報とが記憶されており、受け入れ確認手段により、未処理情報の中で複数の薬剤払出し装置のいずれかで排出処理に渋滞が生じているか否かと未処理案件が無い薬剤払出し装置があるか否かを特定し、判別の結果、排出処理に渋滞が生じ、未処理案件が無い薬剤払出し装置がある場合、渋滞している薬剤払出し装置に既に記憶された処方情報を未処理案件が無い薬剤払出し装置に振り替えられる薬剤分包システムである。
好ましい態様は、複数のそれぞれの薬剤払出し装置の未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が決定される薬剤分包システムである。
上記の課題を解決するために開発された本発明の別の態様は、処方情報を保有する情報保有部と、複数の薬剤払出し装置とを有し、処方情報には要求される散薬の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、薬剤払出し装置は、複数種類の散薬を保持する薬剤保持部と、情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて薬剤保持部から必要な散薬を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能をと有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、複数の薬剤払出し装置の各々には、処方情報と処方情報の中で未だに処理が完了していない未処理情報とが記憶されており、受け入れ確認手段により未処理情報の中で複数の薬剤払出し装置のいずれかで-+排出処理に渋滞が生じているか否かを特定し、排出処理に渋滞が生じている場合、振替先の候補が表示装置に表示され、使用者が振替先の候補を選択すると、記憶された処方情報が他の薬剤払出し装置に振り替えられる薬剤払出し装置である。
好ましい態様は、複数のそれぞれの薬剤払出し装置の未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が決定される薬剤分包システムである。
上記した課題を解決するための態様(関連発明)は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、薬剤払出し装置の未処理情報を保有する未処理情報記憶手段を有し、前記未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が決定される薬剤分包システムである。
【0009】
上記した態様において、未処理情報には、少なくとも次のいずれかが含まれることが望ましい。
(1)未処理案件の処理を行うのに際して排出されるべき未分包の薬剤包装の総数。
(2)未処理案件の処方情報の総数。
(3)未処理案件の処理を行うのに要する所要時間。
(4)未処理案件の処理を行うのに際して排出されるべき薬剤包装の総数。
【0010】
上記した各態様において、未処理情報には、未処理案件の処理を行うのに際して排出されるべき未分包の薬剤包装の総数が含まれ、各薬剤払出し装置の未分包の薬剤包装の総数を比較し、未分包の薬剤包装の総数が最も少ない薬剤払出し装置が新たな案件を処理する薬剤払出し装置となることが望ましい。
【0011】
上記した各態様において、未処理情報には、未処理案件の処理を行うのに際して排出されるべき未分包の薬剤包装の総数と、未処理案件の処方情報の総数が含まれ、各薬剤払出し装置の未分包の薬剤包装の総数を比較して、各薬剤払出し装置の未分包の薬剤包装の総数が同一であった場合には、未処理案件の処方情報の総数が最も少ない薬剤払出し装置が新たな案件を処理する薬剤払出し装置となることが望ましい。
【0012】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様(関連発明)は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、当該受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、前記特定の薬剤払出し装置から、他の薬剤払出し装置に振り替えて薬剤排出処理を行うことが可能であることを特徴とする薬剤分包システムである。
上記した課題を解決するための態様は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、当該受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、表示装置を備え、処方情報を受信した薬剤払出し装置の薬剤排出処理が渋滞したとき、前記表示装置に振替え先の候補が表示され、前記表示装置に表示された振替先の候補から使用者が選択した振替先に、既に前記特定の薬剤払出し装置が受信済みであって、且つ薬剤排出処理が終了していない処方情報が振替えられる薬剤分包システムである。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、当該受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、表示装置を備え、前記表示装置には振替え先候補として、処方情報に含まれるすべての薬剤が薬剤保持部に保持された薬剤払出し装置が表示され、前記表示装置に表示された振替先の候補から使用者が選択した振替先に、既に前記特定の薬剤払出し装置が受信済みであって、且つ薬剤排出処理が終了していない処方情報が振替えられる薬剤分包システムである。
上記した態様において、それぞれの薬剤払出し装置の未処理情報が記憶されており、当該未処理情報は、前記薬剤払出し装置に不具合が生じていない状態において、各薬剤払出し装置に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報であり、それぞれの薬剤払出し装置の前記未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が決定されることが望ましい。
【0013】
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様(関連発明)は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、当該受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、薬剤払出し装置の未処理情報を保有する未処理情報記憶手段を有し、当該未処理情報に応じて、薬剤排出処理を行う薬剤払出し装置を振り替えることが可能であることを特徴とする薬剤分包システムである。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、当該受信した薬剤払出し装置が薬剤排出処理を行うものであり、それぞれの薬剤払出し装置の未処理情報が記憶されており、当該未処理情報は、前記薬剤払出し装置に不具合が生じていない状態において、各薬剤払出し装置に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報であり、処方情報が要求する薬剤の種類と、薬剤払出し装置の前記薬剤保持部が保持する薬剤の種類を比較する受け入れ確認手段を有し、使用者の操作に応じて、薬剤排出処理を行う薬剤払出し装置を他の薬剤払出し装置に振り替えるのに際し、処方情報が要求するすべての薬剤を保持している薬剤払出し装置に対して振り替えることができる薬剤分包システムである。
上記した態様において、それぞれの薬剤払出し装置の前記未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が決定されることが望ましい。
【0014】
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様(関連発明)は、処方情報を保有する情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有し、前記処方情報には要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれる薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有し、特定の薬剤払出し装置が処方情報を受信し、前記処方情報を受信した薬剤払出し装置は、自己の薬剤保持部が保有する薬剤によって前記処方情報が要求する薬剤を総て排出することが可能か否かを判断する受け入れ確認機能を備えていることを特徴とする薬剤分包システムである。
【0015】
上記した態様において、前記処方情報が要求する薬剤を総て排出することが不能である場合には、他の薬剤払出し装置に処方情報を回送して他の薬剤払出し装置から前記処方情報が要求する薬剤を排出することが可能であることが望ましい。
【0016】
上記した態様において、前記処方情報が要求する薬剤を総て排出することが不能である場合には、他の薬剤払出し装置が保有する薬剤を参照し、前記処方情報が要求する複数種類の薬剤の内、最も多い種類の薬剤を保有する薬剤払出し装置を特定することが可能であることが望ましい。
【0017】
上記した各態様において、薬剤払出し装置に処方情報を取り込む前に薬剤を総て排出することが可能か否かを判断することが望ましい。
【0018】
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様(関連発明)は、情報保有部と、複数台の薬剤払出し装置を有する薬剤分包システムにおいて、前記薬剤払出し装置は、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分づつ包装し、排出する機能を有し、前記複数台の薬剤払出し装置の内、少なくとも2以上の薬剤払出し装置の間で相互通信する相互通信機能を備えたことを特徴とする薬剤分包システムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薬剤分包システムによると、複数の薬剤払出し装置を効率良く稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の薬剤分包システムの構成を示す概念図である。
図2図1の薬剤分包システムを構成する薬剤払出し装置の内部構造を示す斜視図である。
図3図1の薬剤分包システムを構成する他の薬剤払出し装置の内部構造を示す斜視図である。
図4】薬剤払出し装置で採用する薬剤フィーダーの斜視図である。
図5】薬剤払出し装置の制御装置の構成図である。
図6】共有サーバに記憶された処方情報の説明図であり(a)は、薬剤分包システムを起動した直後における処方情報を示し、(b)は、一定時間経過後における処方情報を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の薬剤分包システム30は、上位システム31と、薬剤払出し装置群32によって構成されている。
上位システム31は、複数の処方入力手段5と、一台の共有サーバー(情報保有部)6によって構成されている。処方入力手段5は、各医師の手元にあるコンピュータである。
共有サーバー6と、処方入力手段5は、LAN7(ローカルエリアネットワーク)によって接続されており、相互通信される。
【0022】
薬剤払出し装置群32は、本実施形態では、3台の薬剤払出し装置100、200、300によって構成されている。もちろん薬剤払出し装置の台数は任意であり、2台であっても4台以上であってもよい。
いずれの薬剤払出し装置100、200、300も、複数種類の薬剤を保持する薬剤保持部と、情報保有部から得られる案件の処方情報に基づいて前記薬剤保持部から必要な薬剤を取り出して一服用分ずつ包装し、排出する薬剤分包機能を有している。
【0023】
薬剤払出し装置100、200、300は、ほぼ同様の構成を有するものであるから、代表して薬剤払出し装置100について説明する。
薬剤払出し装置100は、図4に示すような薬剤フィーダ1を使用して散薬を分配皿116に散薬を投入するものである。
本実施形態の薬剤フィーダ1は、薬剤容器2と、容器載置装置3とが別々のものであり、散薬を分包する際に、両者が結合されて薬剤フィーダ1を構成する。
【0024】
本実施形態の薬剤払出し装置100は、筐体101によって囲まれており、その内部は、薬剤棚部領域102と、薬剤分割領域103と、薬剤包装領域105に分かれている。
【0025】
薬剤棚部領域102には、薬剤容器2を設置する容器保管装置(薬剤保持部)106が設けられている。容器保管装置106は、縦型のドラム部材107を有し、ドラム部材107の外周面に複数の容器設置部108が設けられたものである。
【0026】
薬剤棚部領域102から薬剤分割領域103に至る領域に、容器移動手段110が設けられている。容器移動手段110は、ロボットである。
【0027】
薬剤分割領域103は、散薬分配装置が内蔵された領域であり、2個の分配皿116が設置されている。薬剤分割領域(散薬分配装置)103の2個の分配皿116の周辺に容器載置装置3が複数設置されている。
薬剤分割領域103には、他に、公知の掻出装置120が設けられている。なお本実施形態では、薬剤分割領域103に分配皿116が2基搭載されているが、分配皿116が1基のものもある。
【0028】
薬剤包装領域105には、薬剤包装装置122が内蔵されている。薬剤包装装置122は、公知のそれと同様に、薬剤を一服用分づつ包装する機械であり、公知の様に、分包紙供給装置、分包装置によって構成されている。また包装部に薬剤を投入する散薬投入ホッパ123が設けられている。
【0029】
本実施形態の薬剤フィーダ1は、薬剤容器2と、容器載置装置3とが別々のものであり、散薬を分包する際に、両者が結合されて薬剤フィーダ1を構成する。
薬剤容器2は容器保管装置106に保管され、散薬は、薬剤容器2内に貯留されている。本実施形態では、容器移動手段110のハンド部113で薬剤容器2を保持し、薬剤容器2を移動し、図4の様に容器載置装置3に載置する。
【0030】
そして加振手段51に一定周波数の電流を通電して振動を発生させ、この振動によって振動台50を振動させる。
また振動開始と前後して分配皿116を回転させる。
振動開始と前後して、薬剤容器2の重量が重量測定手段(図示しない)で測定される。
【0031】
振動台50が振動を開始すると、薬剤容器2が振動し、薬剤容器2に貯留された散薬が、薬剤排出部13側に向かって移動し、薬剤容器2の薬剤排出部13に至り、下の分配皿116の溝に入る。
【0032】
散薬が薬剤容器2の薬剤排出部13から落下中、薬剤容器2の現在の重量(現重量g)が、重量測定手段55によって監視され続けている。そして振動台50に設置直後の薬剤容器2の原重量Gと、現重量gとを比較し、散薬の落下量H(Gマイナスg)を常時演算している。
そして散薬の総落下量Hが所望の重量となったところで、振動台50の振動を停止する。
その後、容器移動手段110が自動的に動作し、薬剤容器2が薬剤棚部領域102のドラム部材107に戻される。
【0033】
複数の散薬が処方されている場合は、上記した工程を繰り返し、他の散薬を分配皿116に投入する。
総ての種類の散薬が分配皿116に投入されると、掻出装置120を分配皿116に入れて、分配皿116を所定の角度ずつ回転し、掻出装置120の前に一定量の散薬を集めて分配皿116から掻きだし、薬剤包装装置122で一服用分ずつ包装する。
【0034】
各薬剤払出し装置100、200、300は、いずれも表示装置33、35、36と、制御装置45、46、47を備えている。
表示装置33、35、36は、タッチパネルであって入力装置を兼ねている。
【0035】
制御装置45、46、47は、いずれも図示しないCPU及び記憶手段を有し、図5の様に、薬剤払出し装置100、200、300内の機器を制御する機器制御手段、通信手段、未処理情報記憶手段、比較手段及び受け入れ確認手段を備えている。
未処理情報記憶手段には、各薬剤払出し装置100、200、300に入力された処方情報の中で、未だに処理が完了していないものの情報(未処理情報)が記憶されている。
【0036】
本実施形態では、未処理情報として、次の2種類の情報が記憶されている。
(1)未処理案件の処理を行うのに際して排出されるべき未分包の薬剤包装の総数(以下、残包数と称する)。
(2)未処理案件の処方情報の総数(以下、未処理案件数と称する)。
【0037】
ここで、「残包数」とは、今後、当該薬剤払出し装置100、200、300が作成して排出する予定の薬剤包装の数である。
例えば、患者Aに対する処方箋が、一日3回服用する薬が4日分処方されているならば、当該処方箋に基づく薬剤包装の総数は、「3*4=12」の12包である。また患者Bに対する処方箋が、一日2回服用する薬が21日分処方されているならば、当該処方箋に基づく薬剤包装の総数は「2*21=42」の42包である。
患者Aに対する薬剤包装と、患者Bに対する薬剤包装が未着手であるならば、「残包数」は、12包プラス42包の合計54包である。
仮に患者Aに対する薬剤包装作業が中途であり、10包が既に分包されている場合には、「残包数」は、44包となる。
【0038】
「未処理案件数」は、先の例で説明すると、患者Aに対する処方箋の処理と、患者Bに対する処方箋の処理の合計であり、2件である。
【0039】
比較手段は、自己の未処理情報と、他の薬剤払出し装置100、200、300の未処理情報を比較する手段である。
【0040】
受け入れ確認手段は、処方情報が要求する薬剤の種類と、自己の薬剤払出し装置100、200、300の容器保管装置106に保有する薬剤の種類を比較する手段である。
【0041】
本実施形態では、3台の薬剤払出し装置100、200、300の通信手段が、LAN8で接続されており、3台の薬剤払出し装置100、200、300の間で相互通信される。また上位システム31と、薬剤払出し装置100、200、300の間もLAN10で接続されており、上位システム31と薬剤払出し装置群32の間でも相互通信される。
【0042】
次に、薬剤分包システムの機能について説明する。
前記した様に処方入力手段5は、各医師の手元にあり、各医師が患者の状態に応じて必要な薬剤を決定し、処方を入力する。
入力された処方情報は、上位システム31の共有サーバー6に蓄積されてゆく。処方情報には、要求される薬剤の種類と数量に関する情報が含まれている。勿論、処方情報には、他に数量や服用時期等の情報が含まれている。
【0043】
本実施形態では、薬剤払出し装置群32の薬剤払出し装置100、200、300が、共有サーバー6を参照し、共有サーバー6から処方情報を得る。
例えば、図6(a)の様に、薬剤分包システム30を起動したときに、共有サーバー6に処方情報が1番から10番まで蓄積されているならば、処方情報1番を薬剤払出し装置100が取得し、処方情報2番を薬剤払出し装置200が取得し、処方情報3番を薬剤払出し装置300が取得する。
そして各薬剤払出し装置100、200、300は、それぞれ取得した処方情報に基づいて、自動的に対象となる薬剤が充填された薬剤容器2を決定し、薬剤容器2から分配皿116に薬剤が投入された後、分割され、包装されていく。
【0044】
続く処方情報4番については、各薬剤払出し装置100、200、300の未処理情報に基づいて取得する薬剤払出し装置100、200、300が変わる。
本実施形態では、一定時間ごとに各薬剤払出し装置100、200、300が共有サーバー6を参照する。またこれと前後して、各薬剤払出し装置100、200、300は、相互通信によって、他の薬剤払出し装置100、200、300の未処理情報記憶手段を参照し、比較手段によって自己の未処理情報と比較する。
【0045】
本実施形態では、最初に残包数が比較される。例えば、薬剤払出し装置100が取得した処方情報1番の薬剤包装の総数が9であり、薬剤払出し装置200が取得した処方情報2番の薬剤包装の総数が20であり、薬剤払出し装置300が取得した処方情報3番の薬剤包装の総数が8であると仮定する。そしていずれの薬剤払出し装置100、200、300も分配皿116に対する薬剤投入が完了しておらず、薬剤包装を一包も分包していないと仮定する。
この仮定に基づくと、薬剤払出し装置300の残包数が最も少なく、薬剤払出し装置300が次の処方情報4番を取得する。そして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が薬剤払出し装置300に決定される。
【0046】
現実の制御方法は、前記した様に、一定時間ごとに各薬剤払出し装置100、200、300が共有サーバー6を参照している。例えば、薬剤払出し装置100が共有サーバー6を参照する際に、自己の残包数と他の薬剤払出し装置200、300の残包数を参照して比較する。
いまだ分包が開始されていないと仮定すると、自己の残包数は9であり、薬剤払出し装置300の残包数は8であるから、自己よりも残包数が少ない薬剤払出し装置300が存在する。
この場合には、自己の薬剤払出し装置100に、次の処方情報4番を取り込まない。
【0047】
同様に、薬剤払出し装置200が共有サーバー6を参照する際に、自己の残包数と他の薬剤払出し装置100、300の残包数を参照して比較する。
いまだ分包が開始されていないと仮定すると、自己の残包数は20であり、薬剤払出し装置300の残包数は8であるから、自己よりも残包数が少ない薬剤払出し装置300が存在する。
この場合には、自己の薬剤払出し装置200に、次の処方情報4番を取り込まない。
【0048】
同様に、薬剤払出し装置300が共有サーバー6を参照する際に、自己の残包数と他の薬剤払出し装置100、200の残包数を参照して比較する。
いまだ分包が開始されていないと仮定すると、自己の残包数は8であり、薬剤払出し装置100の残包数は9であり、薬剤払出し装置200の残包数は20であるから、自己よりも残包数が少ない薬剤払出し装置は存在しない。
この場合には、自己の薬剤払出し装置300に、次の処方情報4番が取り込まれ、新たな案件たる処方情報4番の案件を処理する薬剤払出し装置が薬剤払出し装置300に決定される。
【0049】
この状態においても、いずれの薬剤払出し装置100、200、300も分配皿116に対する薬剤投入が一案件も完了しておらず、薬剤包装を一包も排出していないと仮定する。
この状態においては、薬剤払出し装置100の残包数は9であり、薬剤払出し装置200の残包数は20であり、薬剤払出し装置300の残包数は16である。
そのため次の処方情報5番は、最も残包数が少ない薬剤払出し装置100に取り込まれる。
【0050】
この状態においても、いずれの薬剤払出し装置100、200、300も分配皿116に対する薬剤投入が一案件も完了しておらず、薬剤包装を一包も排出していないと仮定する。
この状態においては、薬剤払出し装置100の残包数は15であり、薬剤払出し装置200の残包数は20であり、薬剤払出し装置300の残包数は16である。
そのため次の処方情報6番は、最も残包数が少ない薬剤払出し装置100に取り込まれる。即ちこの場合は、連続して同じ薬剤払出し装置100に新たな案件たる処方情報6番が取り込まれる。
【0051】
こうして共有サーバー6に記憶された処方情報(1番から10番)が薬剤払出し装置100、200、300に分配され、それぞれの薬剤払出し装置100、200、300で、順番に分包処理が行われる。
ある程度の時間が経過し、図6(b)に示す様に、共有サーバー6に新たに処方情報11番が入力された場合は、その時に最も残包数が少なくなっている薬剤払出し装置100、200、300が新たな処方情報11番を取り込むにこととなる。
例えば、薬剤払出し装置100には、処方情報が3件入力され、薬剤払出し装置200には、処方情報が2件入力され、薬剤払出し装置300には、処方情報が5件入力された実績があったとしても、処理が進んでいて、薬剤払出し装置100の残包数が30包、薬剤払出し装置200の残包数が40包、薬剤払出し装置300の残包数が10包であるならば、最も残包数が少ない薬剤払出し装置300が処方情報11番を取り込む。即ち新たな案件たる処方情報11番を処理する装置が薬剤払出し装置300に決定される。
【0052】
また薬剤払出し装置100、200、300が共有サーバー6を参照する際に、自己の残包数と他の薬剤払出し装置100、200の残包数を比較した結果、残包数が同数であって、他のいずれよりも少ない場合は、未処理案件数を比較する。
例えば、薬剤払出し装置100の残包数が20であり、未処理案件数が3案件であると仮定する。薬剤払出し装置200の残包数が30であり、未処理案件数が3案件であると仮定する。薬剤払出し装置300の残包数が20であり、未処理案件数が2案件であると仮定する。
【0053】
この条件下で仮に薬剤払出し装置100が共有サーバー6を参照し、自己の残包数と他の薬剤払出し装置200、300の残包数を比較すると、残包数は、薬剤払出し装置300と同数であるが、未処理案件数が薬剤払出し装置300よりも多い。この場合には、自己の薬剤払出し装置100に、次の処方情報を取り込まない。
また薬剤払出し装置200が共有サーバー6を参照し、自己の残包数と他の薬剤払出し装置100、300の残包数を比較すると、残包数が他の薬剤払出し装置100、300よりも多いので、次の処方情報を取り込まない。
薬剤払出し装置300が共有サーバー6を参照し、自己の残包数と他の薬剤払出し装置100、200の残包数を比較すると、残包数は、剤払出し装置100と同数であり、且つ未処理案件数が剤払出し装置100よりも少ない。この場合には、自己の薬剤払出し装置300に、次の処方情報が取り込まれる。
【0054】
処方情報は、原則として上記した規則に則って各薬剤払出し装置100、200、300に取り込まれ、それぞれの薬剤払出し装置100、200、300で処理されるが、一旦取り込まれて制御装置45、46、47に記憶された処方情報を他の薬剤払出し装置100、200、300に振り替えて処理される場合もある。
例えば処方情報が、上記した規則に則って各薬剤払出し装置100、200、300に取り込まれたが、いずれかの薬剤払出し装置100、200、300が、薬剤の排出に長時間を要する場合もある。
即ち前記した規則は、一包の薬剤を分包するのに要する時間が考慮されていないので、薬剤の排出に長時間を要するケースが起き得る。
例えば、処方情報1番は、1種類の散薬が処方されているのに対し、処方情報2番は、3種類の散薬が処方されている様な場合がある。
3種類の散薬が処方されている場合には、薬剤容器2の取り出しと、排出を3回繰り返して、分配皿116に3種類の散薬を積み重ねることとなり、薬剤の投入工程に長時間を要する。
この様な処方が連続すると、排出処理が渋滞し、他に比べて相当に長時間を要することとなる。
また装置に何らかの不具合が生じて、排出処理が渋滞する場合もある。例えば、作業の途中で薬剤の欠品が発生したり、分包紙の紙切れ、あるいは何らかのエラーが生じて分包工程が中断してしまう場合もある。
【0055】
この様な場合には、他の薬剤払出し装置100、200、300に既に入力された処方情報が振り替えられる。
例えば、一台の薬剤払出し装置100、200、300の処理が渋滞し、且つ他に残包数や未処理案件数が無い薬剤払出し装置100、200、300がある場合には、未処理案件数が無い薬剤払出し装置100、200、300に渋滞している薬剤払出し装置100、200、300に既に入力された処方情報が他の薬剤払出し装置100、200、300に振り替えられる。
【0056】
この時、渋滞している薬剤払出し装置100、200、300の表示装置33、35、36に、振替先の候補が表示される。また振り替えの承認を求める表示が表示装置33、35、36に現れる。薬剤師がタッチパネルに触れる等によって、承認の信号を入力すると、既に入力された処方情報が他の薬剤払出し装置100、200、300に振り替えられる。
【0057】
また本実施形態の薬剤分包システム30では、共有サーバー6から各薬剤払出し装置100、200、300に処方情報を取り込む際に、当該処方を処理できるか否かを受け入れ確認手段で確認する。
即ち、各薬剤払出し装置100、200、300の容器保管装置106に保持できる薬剤容器2の数には限りがある。仮に処方箋に書かれた薬剤に容器保管装置106で保管されていない薬剤が含まれている場合もある。
そこで本実施形態では、共有サーバー6から各薬剤払出し装置100、200、300に処方情報を取り込む前に、処方情報に含まれている薬剤と、容器保管装置106が保持している薬剤を受け入れ確認手段で比較する。
そして容器保管装置106が保持していない薬剤が処方情報に含まれている場合には、その旨を表示装置33、35、36に表示する。
【0058】
また相互通信によって、他の薬剤払出し装置100、200、300が処方情報に含まれる総ての薬剤を保持しているならば、その薬剤払出し装置100、200、300を表示装置33、35、36に表示する。
そしてその薬剤払出し装置100、200、300に処方情報を送信することに対して承認を求める表示がなされる。薬剤師が表示装置33、35、36のタッチパネルに触れる等によって、承認の信号を入力すると、処方情報に含まれる総ての薬剤を保持している薬剤払出し装置100、200、300に、処方情報が回送される。
【0059】
また処方情報に含まれる総ての薬剤を保持している薬剤払出し装置100、200、300が無い場合は、その旨を表示装置33、35、36に表示する。
そして処方情報に含まれる薬剤と、保有する薬剤との重複が多い順に薬剤払出し装置100、200、300が表示される。
この様にして、処方情報が要求する複数種類の薬剤の内、最も多い種類の薬剤を保有する薬剤払出し装置100、200、300が特定される。
【0060】
上記した本実施形態の薬剤分包システム30では、上位システム31と薬剤払出し装置100、200、300の間がLAN10で接続されており、相互可能である。そのためいずれかの薬剤払出し装置100、200、300が故障していたり、電源が投入されていないという情報も上位システム31で得ることができる。
【0061】
以上説明した実施形態では、処理情報を共有サーバー6から各薬剤払出し装置100、200、300に取り込む際に、残包数を優先的に比較し、これが同じである場合には、二次的に未処理案件数を比較して、情報取り込みの可否を決定した。
これに代わって、未処理案件数を比較して、情報取り込みの可否を決定してもよい。また未処理案件の処理を行うのに要する所要時間を比較してもよい。
本実施形態では、残包数の中に、処理中であって既に排出済みの薬包の数を除外したが、残包数の中に処理中であって排出済みの薬包の数を参入してもよい。未処理案件の処理を行うのに際して排出されるべき薬剤包装の総数を基準として情報取り込みの可否を決定してもよい。
【0062】
以上説明した実施形態では、各薬剤払出し装置100、200、300が未処理情報記憶手段を備えているが、共有サーバー6あるいは上位システム31が未処理情報記憶手段を持っていてもよい。
【0063】
上記した実施形態では、薬剤払出し装置100、200、300側から、共有サーバー6の情報を参照しに行く構成であるが、共有サーバー6あるいは上位システム31から、薬剤払出し装置100、200、300に処理すべき案件を振り分けてもよい。
この場合においても、各薬剤払出し装置100、200、300の未処理情報を条件の一つとして新たな案件を処理する薬剤払出し装置が決定される。
また共有サーバー6あるいは上位システム31から、薬剤払出し装置100、200、300に処理すべき案件を振り分ける場合には、仮に、薬剤払出し装置100、200、300のいずれかが故障していたり、電源が投入されていない場合は、故障等がある薬剤払出し装置100、200、300を除いて振り分けることとなる。
故障が解消したり、電源が回復した場合には、共有サーバー6あるいは上位システム31にその情報が伝わり、直ちに故障が回復した薬剤払出し装置100、200、300を含めた振り分けに切り換えられる。
【0064】
以上説明した実施形態は、薬剤払出し装置100、200、300として特許文献1乃至5に開示した形式のものを例示した。この形式の薬剤払出し装置100、200、300は、特定の散薬が収容された薬剤容器2を有し、当該薬剤容器2を分配皿116の近傍に移動し、薬剤容器2から直接的に配皿116に散薬を投入するものである。
【0065】
本発明の薬剤分包システム30は、この形式の薬剤払出し装置100、200、300に限定されるものではなく、例えば特許文献6、7に開示された様な薬剤払出し装置を採用することもできる。
特許文献6、7に開示された様な薬剤払出し装置では、秤量容器を薬剤容器の近傍に移動して薬剤容器から秤量容器に薬剤を投入する。同時に、秤量容器に投入された薬剤の量が秤量装置で秤量される。そして秤量容器が分配皿116の近傍に移動され、分配皿116の近傍に配されたフィーダに投入され、フィーダを介して散薬が分配皿116に投入される。秤量容器は所定の場所に戻される。
【0066】
以上説明した実施形態では、各薬剤払出し装置100、200、300は、いずれも散薬を分包するものであるが、錠剤等の固形薬剤を払い出す装置が混じっていてもよい。
【0067】
また前記した薬剤払出し装置100、200、300は、いずれも薬剤を自動的に分包する機能を備えた全自動式の薬剤払出し装置であるが、薬剤分包システム30に、一部を手動で行う旧来の散薬分包装置を含めてもよい。
旧来の散薬分包装置とは、前記した薬剤容器2の様な散薬の薬種ごとの専用薬剤容器(薬剤カセットと称される場合もある)を備えず、薬剤師が処方量を秤量装置で秤量し、本体装置に投入した後、自動で分割、分包するタイプの装置(以下、自動散薬分割分包装置と称する)である。
そして全自動式の薬剤払出し装置で処理できない薬剤がある場合には、その旨を表示し、当該処方情報を旧来の自動散薬分割分包装置に送信し、当該装置で散薬を分包してもよい。
【0068】
以上説明したシステムの動作は、通常時の動作を説明したものであるが、特に急いで分包を行う必要がある様な案件を優先して行なうことが可能であることが望ましい。
【0069】
以上説明した薬剤分包システム30によると、システムに属する薬剤払出し装置100、200、300にかかる負荷が均一化する。そのため特定の薬剤払出し装置100、200、300による分包作業が渋滞するという様な不具合が生じにくく、全体的に作業の終了が早くなる。
【0070】
以上説明した実施形態の薬剤分包システム30は、上位システム31と、薬剤払出し装置群32によって構成されており、上位システム31の共有サーバー6が情報保有部として機能する。本発明は、この構成に限定されるものではなく、他の装置を情報保有部としてもよい。
即ち上位システム31の他のコンピュータ等を情報保有部としてもよい。サーバーを、薬剤払出し装置群32に設けて情報保有部としてもよい。薬剤払出し装置群32に設けられた他の機器(コンピュータ等)を情報保有部としてもよい。情報保有部と薬剤払出し装置100、200、300が並列的に接続されていてもよい。また薬剤払出し装置100、200、300の内のいずれかの制御装置45、46、47の記憶手段を情報保有部として使用してもよい。
またクラウドサーバーを情報保有部としてもよい。
【0071】
薬剤払出し装置100、200、300で処理できない薬剤を含む処方情報については、予め上位システム31で選別し、薬剤払出し装置100、200、300に入力する処方情報から除いておいてもよい。除かれた処方情報は、旧来の自動散薬分割分包装置に送信され、当該自動散薬分割分包装置で散薬を分包することが推奨される。
上位システム31と、各薬剤払出し装置(全自動式の薬剤払出し装置)100、200、300は、個別に起動・停止することができることとし、薬剤払出し装置100、200、300が起動していない場合や、故障している場合には、上位システム31で旧来の自動散薬分割分包装置に処方情報を振り分けてもよい。
例えば、薬剤払出し装置(全自動式の薬剤払出し装置)100、200、300から停止信号や、故障発生信号を上位システム31に送信し、上位システム31はこの信号を受けて、旧来の自動散薬分割分包装置に処方情報を送信する。
薬剤払出し装置100、200、300が起動すると、処方情報の送信先を切り替え、処方情報を薬剤払出し装置100、200、300に送信する。
【符号の説明】
【0072】
5 処方入力手段
6 共有サーバー
30 薬剤分包システム
31 上位システム(上位装置)
33、35、36 表示装置
45、46、47 制御装置
100、200、300 薬剤払出し装置
106 容器保管装置(薬剤保持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6