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特開2022-82754VEGFのためのD-ペプチド性化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082754
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】VEGFのためのD-ペプチド性化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20220526BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220526BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220526BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220526BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
A61K38/16
A61K39/395 N
A61K51/08 200
A61K47/60
A61P27/02
A61P9/00
A61P35/00
A61P29/00
A61P9/10 101
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/00
C07K16/18
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063931
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2021559471の分割
【原出願日】2020-03-20
(31)【優先権主張番号】62/865,469
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/822,241
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521437910
【氏名又は名称】リフレクション ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512080756
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
【氏名又は名称原語表記】THE GOVERNING COUNCIL OF THE UNIVERSITY OF TORONTO
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ポール マリネック
(72)【発明者】
【氏名】カイル ランドグラフ
(72)【発明者】
【氏名】ダナ オールト-リッシェ
(72)【発明者】
【氏名】マルチ チャンドラ ウッパラパティ
(72)【発明者】
【氏名】サチデフ シドゥ
(57)【要約】
【課題】VEGFのためのD-ペプチド性化合物の提供。
【解決手段】VEGFに特異的に結合するD-ペプチド性化合物が提供される。また、連結成分を介して連結される二つ以上のドメインを含む多価D-ペプチド性化合物も提供される。多価(例えば、二価、三価、四価など)化合物は、標的タンパク質上の異なる結合部位に特異的に結合し、VEGF標的タンパク質への高い親和性結合、およびVEGF標的タンパク質に対する強力な活性をもたらす、複数の別個のドメインを含みうる。多価化合物での用途があるD-ペプチド性GAドメインおよびZドメインも提供され、そのポリペプチドは、VEGF(例えば、VEGF-A)への特異的結合のための特異性決定モチーフ(SDM)を有する。標的タンパク質はホモ二量体(例えば、VEGF-A)であるため、D-ペプチド性化合物は同様に二量体であってもよく、多価(例えば、二価)D-ペプチド性化合物の二量体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のD‐ペプチド性化合物
【化101】

またはその薬学的に許容可能な塩であって、
p1およびp2はそれぞれ独立して、1または2である、
D‐ペプチド性化合物。
【請求項2】
式(I)において、配列番号119のK アミノ酸残基と、配列番号113のK 19 アミノ酸残基とを連結するリンカーが、式
【化102】

を有する、請求項1に記載のD‐ペプチド性化合物。
【請求項3】
式(I)において、配列番号119のK アミノ酸残基と、配列番号113のK 19 アミノ酸残基とを連結するリンカーが、式
【化103】

を有する、請求項1に記載のD‐ペプチド性化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のD‐ペプチド性化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および
薬学的に許容可能な賦形剤
を含む、医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物は、眼の疾患または状態の治療のために製剤化される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
血管新生に関連する疾患または状態の治療または予防が必要な対象者において血管新生に関連する疾患または状態を治療または予防する方法において使用するための組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のDペプチド性化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記方法は、前記組成物を前記対象に投与することを含む、組成物。
【請求項7】
血管新生に関連する前記疾患または状態が、癌、炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、黄斑変性症、網膜症および皮膚疾患である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
血管新生に関連する前記疾患または状態が、糖尿病性黄斑浮腫(DME)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
血管新生に関連する前記疾患または状態が、滲出型加齢黄斑変性(AMD)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
血管新生に関連する疾患または状態をin vivoで診断または撮像するための方法において使用するための組成物であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のDペプチド性化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
前記方法は、前記組成物を対象に投与すること、および
前記対象者の少なくとも一部を撮像することを含む、
組成物。
【請求項11】
前記撮像が、PET撮像を含み、前記投与が、前記対象者の前記血管系に前記化合物を投与することを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記方法は、細胞受容体による前記化合物の取込みを検出することをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記方法は、前記対象者にベバシズマブを投与することをさらに含み、血管新生と関連する前記疾患または状態が癌である、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年3月22日に出願された米国仮特許出願第62/822,241号明細書、および2019年6月24日に出願された米国仮特許出願第62/865,469号の利益を主張するものであり、当該出願を参照し、その全体を本明細書に組み込む。
【0002】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)は、正常な血管新生、および異常または病理学的な血管新生の両方についての重要な調節因子である。血管新生および血管形成における血管新生因子であることに加えて、VEGFは、内皮細胞生存、血管透過性および血管拡張、単球走化性およびカルシウム流入などの他の生理学的プロセスにおいて、複数の生物学的効果を示す多面的成長因子である。血管新生は、血管内皮細胞が増殖して既存の血管網から新しい血管を形成する重要な細胞事象である。血管新生は、腫瘍、増殖性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、関節リウマチ(RA)、および乾癬などの様々な障害の病因に関連付けられる。血管新生は、ほとんどの原発腫瘍の成長と、それに続く様々な癌の転移に不可欠である。
【0003】
眼液中のVEGF-Aの濃度は、糖尿病性および他の虚血関連の網膜症を有する患者における血管の活性増殖の存在と相関する。さらに、VEGFは、AMDに罹患した患者の脈絡膜新生血管膜に局在する。滲出型AMDは、網膜下での黄色がかった白色の沈着物発生を特徴とする状態である乾燥型AMDが先行し、網膜組織の変動的な薄化および機能不全を伴うが、異常な新しい血管の成長は欠如している。乾燥型AMDは、新しい異常な血管が網膜に侵入すると滲出型AMDに転換する。この異常な新しい血管の成長は脈絡膜血管新生(CNV)と呼ばれる。抗VEGF-A薬は、滲出型AMDの治療に用途がある。
【背景技術】
【0004】
VEGF-A標的療法は、様々な癌の治療に用途がある。ところが、一部の事例では、患者は最終的にそのような療法に対して耐性ができる。VEGF-Aおよびもう一つの追加的な癌標的を標的とする併用療法が、現時点で関心対象となっており、これには例えば、プログラム細胞死1(PD-1)またはプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)がある。例えば、ベバシズマブおよびアテゾリズマブを使用したVEGF-AおよびPD-L1を標的とする併用療法は、PD-L1陽性の転移性腎細胞癌を有する患者において疾患進行または死亡のリスクの減少を示した。
VEGF-Aなどのタンパク質の相互作用を操作する能力は、基礎生物学的研究と治療法および診断法の開発の両方にとって関心対象である。タンパク質リガンドは、高い特異性および親和性を有する結合イベントをもたらす標的分子への複数の接点を有する、大きな結合表面を形成することができる。例えば、抗体は、様々な標的タンパク質に対して特異的かつ緊密な結合リガンドを産生したタンパク質の部類である。さらに、Mandal et al. (“Chemical synthesis and X-ray structure of a heterochiral {D-protein antagonist plus VEGF} protein complex by racemic crystallography”,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 14779-14784 (2012))、およびUppalapati et al. (“A potent D-protein antagonist of VEGF-A is nonimmunogenic, metabolically stable and longer-circulating in vivo”, ACS Chem Biol (2016))に、VEGF-AのDタンパク質拮抗薬の記載がある。当該標的分子の多様性およびタンパク質リガンドの結合特性のため、有用な機能を有する結合タンパク質の調製が関心対象である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mandal et al. (“Chemical synthesis and X-ray structure of a heterochiral {D-protein antagonist plus VEGF} protein complex by racemic crystallography”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 14779-14784 (2012))
【非特許文献2】Uppalapati et al. (“A potent D-protein antagonist of VEGF-A is nonimmunogenic, metabolically stable and longer-circulating in vivo”, ACS Chem Biol (2016))
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に特異的に結合するD-ペプチド性化合物が提供されている。当該化合物は、VEGF-A結合GAドメインを含みうる。当該化合物は、VEGF-A結合Zドメインモチーフを含みうる。また、連結成分を介して連結される当該D-ペプチド性ドメインのうちの二つ以上を含む多価化合物も提供されている。多価(例えば、二価、三価、四価など)D-ペプチド性化合物は、標的タンパク質上の異なる結合部位に特異的に結合し、VEGF標的タンパク質への高い親和性結合、およびVEGF標的タンパク質に対する強力な活性をもたらす、複数の別個のドメインを含みうる。多価化合物での用途があるD-ペプチド性GAドメインおよびZドメインも提供され、そのポリペプチドは、VEGF(例えば、VEGF-A)への特異的結合のための特異性決定モチーフ(SDM)を有する。標的タンパク質はホモ二量体(例えば、VEGF-A)であるため、D-ペプチド性化合物は同様に二量体であってもよく、多価(例えば、二価)D-ペプチド性化合物の二量体を含む。当該D-ペプチド性化合物は、VEGF-A標的への特異的結合が望ましい用途において様々な使用法がある。化合物を使用する方法が提供されており、これには、加齢黄斑変性(AMD)または癌の対象者を治療するための方法など、対象者におけるVEGFに関連する疾患もしくは状態、または対象者における血管新生に関連する疾患もしくは状態を治療するための方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、VEGF-A(空間充填表現)と複合体化された例示的化合物1.1.1(c21a)(白色棒状表現)のX線結晶構造図を示す。VEGF-Aの結合部位残基はピンク色で示す。VEGF-A(8~109)結合部位残基は太字で示している:GQNHHEVVKFMDVYQRSYCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGLECVPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKCECRPKKD(配列番号88)。
図2図2は、Mandal et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 14779-14784 (2012))に記載のあるDタンパク質拮抗薬の構造(マゼンタ棒状表現)にオーバーレイさせたVEGF-A(空間充填表現)と複合体化された例示的化合物1.1.1(c21a) (白色棒状表現) のX線結晶構造のオーバレイを示す。VEGF-Aの結合部位残基はピンク色で示す。構造は、化合物1.1.1(c21a)が、Mandal et al.の化合物と同じ拮抗性部位で結合していることを示す。
図3図3A-3Bは、L-タンパク質GAドメイン、およびVEGF-Aに特異的に結合する例示的なD-ペプチド性化合物の3らせんバンドル構造の並列比較を示す。図3Aは、L-タンパク質GAドメイン(タンパク質データバンク構造1tf0)のX線結晶構造の一つの図と、らせん1~3の配置を示す概略図とを示す。図3Bは、VEGF-A(この図では図示せず)と複合体化された化合物1.1.1(c21a)の類似したX線結晶構造図と、らせん1~3の配置を示す概略図とを示す。
図4図4は、VEGF-A(この図では図示せず)と複合体化された化合物1.1.1(c21a)のX線結晶構造図を示す。らせん1(201)、らせん2(202)、およびらせん3(203)は、未変性GAドメインのアルファ-らせん領域に相当するD-ペプチド性化合物のアルファ-らせん領域である。206は、位置31(f31)のフェニルアラニン残基である。205、207、および210はそれぞれ、位置27(h27)、位置34(h34)、および位置40(h40)のヒスチジン残基である。209は、37位(y37)のチロシン残基である。204および208はそれぞれ、位置26(p26)および位置36(p36)のらせん2-末端プロリン残基である。
図5図5は、例示的なD-ペプチド性化合物(1.1.1(c21a)、棒状表示)と、複合体のX線結晶構造から取り出したVEGF-A(空間充填表現)との間の結合界面を図示したものである。化合物の残基f31(206)は、複合体の結合界面においてVEGF-Aの結合ポケット内に突出する。位置27(205)、位置34(207)、および位置40(210)のヒスチジン残基は、結合界面においてVEGF-Aと追加的な接触をする。残基y37(209)の側鎖は、VEGF-A表面に向かって突出するが、密接はしない。
図6図6A-6Dは、3らせんバンドル構造に基づく当該化合物の構造モデルを示す。図6Aは、未変性GAドメインにおける三つのらせんの配置の概略図を示す。図6Bは、Dペプチド性GAドメインモチーフにおける三つのらせんの配置の概略図を示す。図6Cは、7連子繰返し単位の疎水性充填に基づく、逆平行三本鎖らせんからなるDegradoの構造モデルを示し、7つの残基モチーフ(abcdefg)nは、モチーフの特定の位置において特徴的な残基を有するらせんセグメントを形成する。図6Dは、D-ペプチド3らせんドメインモチーフへのDegradoの7連子繰返しモデルの適応を示す。
図7図7A-7Bは、当該D-ペプチド性化合物の3らせんバンドル構造モデルを示す。図7Aは、GAドメインモチーフに見られるらせん1~3の第一の配置を示す。図7Bは、当該化合物の3らせんバンドルの構造モデルを示す。
図8図8A-8Cは、2らせん複合体構造に基づく当該化合物の構造モデルを示す。図8Aは、GAドメインモチーフに見られるものと一致するらせんA-Bの第一の配置の側面図および上面図を示し、ここでNおよびCは、ペプチド性化合物のN末端およびC末端を示す。図8Bは、VEGF-Aと接触するg-g面を含む当該化合物の2らせん複合体の構造的7連子繰返しモデルを示す。図8Cは、らせんAおよびらせんBによって画定される2らせん複合体7連子繰返しモデル(図8Bを参照)の、溶媒に曝露されたcおよびg位置(青色)内に位置する選択されたVEGF-A接触残基を含むバリアントモチーフを示し、、ここで、h*はヒスチジンまたはその類似体であり、f*はフェニルアラニンまたはその類似体であり、uは非極性アミノ酸残基である。図8Cでは、“_”は、基礎となる足場ドメインの位置を示し、破線は、残基の可能性のあるらせん間での接触または連結の位置を示す。
図9図9A-9Cは、化合物配列を3らせんバンドル構造に関連付ける当該化合物の構造モデルを示す。図9Aは、例示的化合物の7連子繰返しモデルの一部分の三次元表現を示す。化合物1.1.1(c21a)の選択された残基は、VEGF-Aと複合体化された化合物のX線結晶構造と一致する、7連子繰返し単位モデルの位置に割り当てられる。らせん2およびらせん3によって定義される化合物のVEGF-A結合面は、7連子繰返しモデルのg-g面に対応する。図9Bは、3らせんバンドル構造のコアに充填される、赤色で示される7連子レジスタのa残基およびd残基を有する化合物1.1.1(c21a)のX線結晶構造図を示す。図9Cは、三次構造(H1=らせん1、H2=らせん2、H3=らせん3)の7連子繰返しモデルを有する配列の線形アライメントを示し、コア残基は赤色で示され、選択されたVEGF-A接触残基は青色で示されている。図9Aで示されるその構造モデルは、図9Cに示すレジスタに基づき、それぞれのらせん1~3内にあるすべての残基をを示すように延長されうることが理解される。簡略化のために、構造の一部分のみを示す。
図10図10A-10Bは、当該化合物の特異的および一般的な7連子繰返しモデルのさらなる描写を提供する。図10Aは、三次構造の7連子繰返しモデルを有する例示的化合物1.1.1(c21a)の配列のアライメントを示し、3らせんバンドルのらせん間のコア残基の疎水性接触が矢印で示されている。図10Bは、らせん2およびらせん3によって画定されるg-g面(図7Bおよび図8A)の溶媒曝露のc位置およびg位置に位置する、選択されたVEGF-A接触残基を含むバリアントモチーフを示し、式中、h*はヒスチジンまたはその類似体であり、f*はフェニルアラニンまたはその類似体であり、uは非極性アミノ酸残基である。図10Bでは、“_”は、基礎となるる足場ドメインの位置を示し、破線は、3らせんバンドルのらせん間で可能性のあるコア残基の疎水性接触を示す。
図11図11は、VEGF-A(図示せず)との結合複合体から採取した例示的なD-ペプチド性化合物(1.1.1(c21a))のX線結晶構造の一部分の拡大スティック図を示す。断片は、位置26~45にわたる、らせん2-リンカー2-らせん3の領域の一部に対応する。202は、らせん2、203は、らせん3を示し、これらはリンカー2によって結合される。位置32、35、41、および44の疎水性残基は、らせん2-らせん3分子内接触に含まれる。
図12図12は、L-タンパク質GAドメイン(1tf0)のX線結晶構造の一部の拡張リボン図を示す。この図は、位置31~44にわたるらせん2かららせん3領域の一部に対応する。102および103は、それぞれらせん2(202)およびらせん3(203)領域に対応する未変性GAドメイン構造のアルファ-らせん領域である。リンカー2は、連結領域である。らせん2-らせん3の間の分子内疎水性接触の一部である、位置32、35、41および44にある残基が示されており、これは図12に示すものと類似している。
図13図13は、VEGF-Aに対する鏡像ファージディスプレイスクリーニングのために無作為化された配列位置(太字)を含む、タンパク質G(例えば、タンパク質データバンク(PDB)構造1tf0)のGAドメインに基づく、足場ライブラリSCF32の構造描写および基礎となる配列(配列番号2)を示す。
図14図14は、当該GA足場ドメイン(配列番号6-21)から選んだものと、GAドメインコンセンサス配列(配列番号1)のアライメントを示し(Figure 1 of Johansson et al. (“Structure, Specificity, and Mode of Interaction for Bacterial Albumin-binding Modules”, J. Biol. Chem., Vol. 277, No. 10, pp. 8114-8120, 2002)、これは、当該化合物での足場ドメインとしての使用に適応されうる。
図15図15は、GA足場ドメイン(配列番号2)と、例示的なVEGF-A結合化合物:1(配列番号106)、1.1(配列番号22)、1.1.1(配列番号23)、および1.1.1(c21a)(配列番号24)とのアライメントを示す。
図16図16は、例示的化合物1.1.1の融解曲線およびリフォールディング曲線を示す。融解温度を、約50℃と決定した。
図17図17は、例示的なD-ペプチド性化合物(1.1.1(c21a)、スティック表現)とVEGF-A(空間出願表示)との間の二量体複合体のX線結晶構造図を示す。
図18図18A-18Bは、化合物1.1.1(c21a)に対する切断N末端を有する例示的化合物((-)-TIDQW)の設計を示す。図18Aは、例示的なD-ペプチド性化合物(1.1.1(c21a)、スティック表現)とVEGF-A(空間充填表現)との間の複合体のX線結晶構造拡大図を示し、これは、らせん2またはらせん3と接触しないらせん1のN末端残基を示す。一部の事例では、選択されたN末端残基は、安定性または結合親和性の有意な喪失なしに、らせん1から切断されうる。図18Bは、切断された(-)TIDQWと非切断(+)-TIDQW化合物1.1.1(c21a)の構造の並列比較を示す。
図19図19A-19Cは、親和性成熟が実施される、または任意の点変異が組み込まれる化合物中の一連の位置を示す。図19Aおよび19Bは、単離された(図19A)か、またはX線結晶構造から取り出されたVEGF-Aと複合体化された(図19B)か、いずれかの化合物1.1.1(c21a)の図を示す。図19Cは、化合物1.1.1(c21a)の配列(配列番号24)を示し、当該変異を注記している。
図20図20は、複合体の結合界面にあるVEGF-Aの結合ポケット内に突出する黄色で示された位置31にフェニルアラニン(f)残基を有するVEGF-A(空間充填表現)と複合体化された、化合物1.1.1(c21a)(スティック表現)のX線結晶構造拡大図を示す。
図21図21は、VEGF-A結合界面の結合ポケット内に突出するf31残基側鎖の拡大図を示し、ここで、VEGF-Aのフェニル環と隣接残基との間の選択距離は、オングストローム単位で示されている。複合体構造の分析は、様々なフェニルアラニン類似体が、位置31で耐容可能であること、例えば、VEGF-Aの結合ポケットの利用可能な空間(4.6~5.3オングストローム)を占有できるフェニル環の位置3、4、および/または5に置換基を含む類似体であることを示す。
図22図22は、VEGF-A(空間充填表現)と複合体化された化合物1.1.1(c21a)(スティック表現)のX線結晶構造拡大図を示し、選択されたらせん2接点が示されている。205および207は、それぞれ位置27および位置34のヒスチジン残基である。構造は、ヒスチジン34の窒素原子(h34;207)とVEGF-Aの隣接Asp90との間の弱い水素結合(約4.6オングストローム)を示す。209は、VEGF-A表面に向かって突出する37位の化合物のチロシン残基である。複合体構造の分析は、様々なヒスチジン類似体が、位置27および位置34で耐容性があること、例えば、VEGF-Aの表面上の利用可能空間を占有できる、および/またはVEGF-Aの隣接残基に対するよりも強い水素結合(例えば、4.6オングストローム未満の長さ)を形成できる、置換または非置換のアリール環または複素環を含む類似体に耐容性があることを示している。
図23図23は、VEGF-A(空間充填表現)と複合体化された化合物1.1.1(c21a)(スティック表現)のX線結晶構造拡大図を示し、選択されたらせん3接点が示されている。構造は、ヒスチジン40の窒素原子(h40、210)とVEGF-Aの隣接残基Tyr48との間での中強度の水素結合(2.9オングストローム)を示す。複合体構造の分析は、利用可能空間を占有し、VEGF-Aへの水素結合を保持または強化することができる類似体を含めて、様々なヒスチジン類似体が位置40で耐容性があることを示す。
図24図24は、リンカー2の位置37(209)にあるチロシン(y)残基に焦点を合わせた、VEGF-A(シアンのリボン)と複合体化された化合物1.1.1(c21a)(ピンクおよび緑色のスティック表現)のX線結晶構造拡大図を示す。VEGF-A表面上で近接して存在するy37酸素と酸素原子または窒素原子との間の距離(例えば、6.5および7.2オングストローム)が示されており、これは、様々なチロシン類似体が、位置37で耐容性があることを示し、例えば、置換または非置換のアルキル‐アリールまたはアルキル‐ヘテロアリールの伸長側鎖基を含む類似体は、VEGF-Aの隣接残基とのより近接な接触(例えば、疎水性接触および水素結合)ができる。
図25図25は、VEGF-A(空間充填表現)と複合体化された化合物1.1.1(c21a)(スティック表現)のX線結晶構造拡大図を示し、位置27(205)にあるヒスチジン残基(h)に焦点を当てている。構造の分析は、様々な芳香族残基またはヒスチジン類似体が、VEGF-Aの表面上の同じポケットに接触させるために、一部の事例では、望ましい疎水性接触を増加させるために、位置27で利用されうることを示す。また、[リンカー1]領域の位置25(e25、211)にあるグルタミン酸残基も示されており、これはVEGF-Aのペプチド骨格の主鎖カルボニル基への水素結合(2.5オングストローム)を含めて、VEGF-Aと接触する。
図26図26は、D-VEGF-A結合剤のファージディスプレイ鏡像スクリーニング中に同定されたすべてのクローンの選択された位置の配列ロゴを示し、ここで、配列ロゴは、化合物1配列および未変性GAドメイン(GA-wt)の対応する残基と比較して整列されている。
図27図27A-27Bは、L-タンパク質GAドメイン(図27A)およびD-化合物1.1.1(c21a)(図27B)の構造の比較を示し、VEGF-A結合化合物において、らせん2と3の間のアライメント角度が増大することを示す。
図28図28A-28Bは、VEGF-Aホモ二量体に結合したD-ペプチド性化合物11055のX線結晶構造の二つの描写を示す。図28Aは、D-ペプチド性化合物11055が、主に化合物11055のバリアントGAドメインのらせん2(H2)の結合接触を介してVEGF-Aに結合することを示す。図28Bは、図28Aの構造を示し、ここで、D-ペプチド性化合物11055は、VEGF-Aに結合したVEGFR2の構造(ドメイン2およびドメイン3)でオーバーレイされた空間充填モデルで表現されている。オーバーレイは、D-ペプチド性化合物11055が、VEGFR2のドメイン2(D2)のVEGF-Aへの結合を阻害することを示す。
図29図29A-29Bは、化合物11055のバリアントGAドメインの折り畳みを安定化させる特定の位置で、残基のスクリーニングおよび同定をするように設計された親和性成熟ライブラリの構造(図29A)および配列(図29B)の描写を示す。らせん1(H1)と、らせん2(H2)とらせん3(H3)を接続するループとの間の充填界面での変異について、合計7個の残基が選択された。
図30-1】図30A-30Cは、高親和性VEGF-A結合化合物のスクリーニング結果を示し、この化合物は、7位および38位にあるシステイン残基(図30A)および選択された当該バリアント配列(図30B)(配列番号108~113)を有するコンセンサス配列ロゴを含み、VEGF-Aと親化合物11055を対比してのそれらの結合親和性が示されている。図30Cは、親化合物11055(図29A)の構造の拡大図を示し、同定されたバリアントアミノ酸残基位置l7cおよびv38cが黄色で示され、互いに近接していること(ベータCからベータCへのらせん間距離は5.9オングストローム)、それにより、l7cおよびv38cの変異が含まれることで、それらの残基間での安定化したジスルフィド結合が形成されるようになることが示されている。
図30-2】同上。
図31図31A-31Bは、VEGF-A D-ペプチドの活性を示すデータのグラフを示す。図31Aは、VEGFR1結合ELISA中の選択された化合物のVEGF-A拮抗活性を示す。図31Bは、ベバシズマブ対照と比較した、選択された化合物によるVEGFシグナル伝達に応答しての細胞増殖の阻害を示す。
図32図32A-32Bは、親Zドメイン足場に基づくファージディスプレイライブラリの、構造(図32A)および配列(図32B)の描写を示す。10個の位置(X)を、システインを除くすべてのアミノ酸を表現するトリヌクレオチドコドンを伴うクンケル変異誘発を使用した無作為化のために、Zドメインのらせん1~らせん2内で選択した(図32B)。
図33図33A-33Bは、Zドメインファージディスプレイライブラリを使用したVEGF-Aへの結合についての、鏡像ファージディスプレイスクリーニングの結果を示す。図33Aは、VEGF-Aへの結合を提供するコンセンサス配列ロゴを示す。図33Bは、選択された当該バリアントZドメイン配列(配列番号114~118)を、未変性L-VEGF-Aに対するそれらの結合親和性と共に示す。NBは非結合を意味する。
図34図34は、化合物978336および11055の相加的結合を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムを示し、化合物978336(バリアントZドメイン化合物)が、化合物11055(バリアントGAドメイン化合物)の結合部位と重複せずに独立している、VEGF-A上の結合部位に結合することを示す。
図35-1】図35A-35Gは、VEGF-Aホモ二量体に結合したD-ペプチド性化合物978336のX線結晶構造の三つの描写を示す。図35Aは、VEGF-Aのそれらの結合部位に結合した二つの単量体D-ペプチド性化合物978336を示す。図35Bは、図35Aの構造を示し、ここで、D-ペプチド性化合物978336は、VEGF-Aに結合されたVEGFR2の構造(ドメイン2および3)でオーバーレイされた空間充填モデルで表現されている。オーバーレイは、D-ペプチド性化合物978336が、VEGFR2のVEGF-Aに対するドメイン3(D3)の結合を阻害することを示す。図35Cは、赤色で示されたZドメインライブラリから選択されるバリアントアミノ酸残基を有する化合物のVEGF-A結合面を見た、分離した状態での978336の構造を示す。図35Dは、結合部位(上パネル)と接触するバリアントアミノ酸の構成を含む、化合物978336(配列番号117)のタンパク質間接触(上パネル)およびVEGF-A上の結合部位(下パネル)の拡大図を示す。図35E-35Gは、同定されたコンセンサス配列(配列番号158)である、例示的VEGF-A結合化合物978336(配列番号117)の親和性成熟研究(図35F)、および例示的化合物980181(配列番号119)の配列を示す。
図35-2】同上。
図35-3】同上。
図35-4】同上。
図35-5】同上。
図36図36A-36Bは、ビス-マレイミドPEG8リンカー(図36A)を使用して、N末端システイン残基を介して共役結合された化合物11055および978336を含む、例示的二価化合物共役の構造ベースの設計を示す。図36Bは、SPRによって測定されるL-VEGF-Aについて1.7nMの結合親和性を示したビスマレイミドPEG8二官能基との共役を介したN末端からN末端への連結を含む、二価化合物979111の配列を示す。
図37図37A-37Bは、親GAドメイン足場(配列番号2)に基づく、ファージディスプレイライブラリ(配列番号159)の構造(図37A)および配列(図37B)の描写を示す。11個の位置(X)を、システインを除くすべてのアミノ酸を表現するトリヌクレオチドコドンを用いたクンケル変異誘発を使用した無作為化のために、GAドメイン足場のらせん2~らせん3内で選択した。
図38-1】図38A-38Eは、例示的二量体二価(すなわち、テトラドメイン含有)化合物980870および980871の設計、合成および配列を示す。図38Aは、VEGF-Aに結合された例示的化合物11055および978336のX線結晶構造、ならびに例示的二量体二価のVEGF-A結合化合物を生成するためのリンカーの設計の描写を示す。化合物11055の残基k19および化合物978336の残基k7は、例えば、長さ約23オングストローム以上のリンカーを介して、それらの側鎖アミノ基を介して結合することができる。図38Bは、連結されたテトラドメイン化合物980870および980871を調製する際に使用するための合成スキームを示す。D-Praは、-NH-PEG2-CO-リンカーを介して化合物980181のk7のアミン側鎖に連結されたD-プロパルギルグリシン残基である。アジド-CHCONH-PEG2/3-CO-基は、化合物979110のk19のアミン側鎖に連結され、その後、クリックケミストリーを使用してプロパルギル基に共役結合されてドメイン間リンカーを形成する。図38Cは、図38Bのスキームを介して調製された例示的テトラドメイン化合物の配列の描写を示す。図38Dは、GAドメインの残基x19とZドメインの残基x7との間にリンカーLを含む例示的な二価化合物の概略図である。図38Eは、GAドメインとZドメインのC末端残基の間にある第二のリンカーLを含む、例示的な二量体二価化合物の概略図である。
図38-2】同上。
図38-3】同上。
図38-4】同上。
図38-5】同上。
図38-6】同上。
図39図39A-39Bは、一価ドメイン979110および980181およびベバシズマブと比較した、例示的な二量体二価(すなわち、テトラドメイン含有)化合物のVEGF-Aに対する、インビトロ(図39A)および細胞ベース(図39B)での拮抗活性を測定するアッセイの結果のグラフを示す。
図40図40A-40Cは、鏡像ファージディスプレイを使用して開発されたD-タンパク質VEGF-A拮抗薬の活性データを示す。(図40A)滴定可能な結合を示すD-VEGF-A標的に対する、GAドメインおよびZドメインのヒットのファージ滴定ELISA。(図40B)D-VEGF-Aへのファージ結合を置換するための可溶性競合体としてGAドメインヒットに対応する合成L-エナンチオマーを使用したファージ競合ELISA。(図40C) ベバシズマブに対する拮抗活性を示すVEGF-A遮断ELISAにおける合成Dタンパク質RFX-11055およびRFX-978336の滴定。
図41図41A-41Fは、VEGF-Aと複合体化されたDタンパク質RFX-11055およびRFX-978336の構造を示す。(図41Aおよび41B)VEGF-Aホモ二量体(灰色)の遠位端で別個の重複しないエピトープに結合した、RFX-11055(紫色)およびRFX-978336(青色)の概観。(図41Cおよび41D)RFX-11055およびRFX-978336について、選択されたライブラリ残基(オレンジ)と、RFX-11055についてはらせん2およびらせん3内に、RFX-978336についてはらせん1およびらせん2内にあるオリジナルの足場残基(青)と共に描写された、VEGF-Aと接触する界面D-アミノ酸側鎖。VEGF-Aは、静電表面電位と共に示され、プラス(青色)、マイナス(赤色)、および無極疎水性(白色)の接点部位を強調している。(図41E)VEGFR-1受容体(薄いオレンジ色)と複合体化されたVEGF-A(グレー)のこれまでに報告されている結晶構造。VEGFR-1のIgドメイン2および3(D2およびD3)は、VEGF-A(PDBコード:5T89)の受容体係合における分子相互作用を強調するために分離されている(24)。(図41F) VEGF-A阻害の機序としてのD2およびD3との直接的な競合を示すための、VEGF-A/VEGFR-1複合体上のRFX-11055およびRFX-978336のオーバーレイ。
図42図42A-42Cは、RFX-11055およびRFX-978336についての、構造情報に基づく親和性成熟を示す。(図42A)らせん1とらせん2-3結合界面との間の充填を安定化させる、親和性成熟ライブラリの標的である7つの残基(オレンジ)を示す、VEGF-A(灰色)に結合したRFX-11055(紫色)の構造。(図42B)らせん1-2結合界面、および ソフト無作為化ライブラリ用に選択された4つの残基を示す、VEGF-A(灰色)に結合したRFX-978336(青色)の構造。(図42C) ベバシズマブに対する拮抗活性を示すVEGF遮断ELISAにおける親和性成熟Dタンパク質RFX-979110およびRFX-980181の滴定。
図43図43A-43Bは、Dタンパク質ヘテロ二量体VEGF-A拮抗薬のインビトロ活性を示す。(図43A)ベバシズマブおよびVEGFR1-Fc可溶性デコイ受容体と比較した、VEGF-A遮断ELISAにおける親和性成熟Dタンパク質RFX-979110および高親和性ヘテロ二量体RFX-980869の滴定。(図43B)RFX-980869がVEGFR2を介してVEGF-Aシグナル伝達を強力に遮断し、ベバシズマブと同等の効力を有することを示す、細胞活性アッセイ。
図44図44A-44Bは、滲出型AMDのウサギ眼モデルにおけるDタンパク質RFX-980869のインビボ活性を示す。(図44A)それぞれの薬剤について投与後5日目および26日目におけるVEGF-A165誘導性血管漏出の程度を示す、代表的な蛍光眼底血管造影(FA)画像(対照=薬物治療なし)。(図44B)5日目および26日目の個々のFAスコアのプロット。スコア付けは、0=主要血管は直線で、小血管にいくらかの屈曲を伴い、拡張はない、1=主要血管の屈曲と拡張が増える、2=主要血管間に漏出があり、有意な拡張がある、3=主要血管と小血管の間に漏出があり、小血管は依然として目に見える、4=主要血管と軽微の間に漏出があり、小血管が見えにくいか、または全く見えない。N=1群当たりウサギ5匹(10眼)。すべてのデータを、平均±SEMとしてプロット。(**** p < 0.0001、マン・ホイットニー検定)
図45図45A-45Dは、RFX-980869の腫瘍成長阻害活性および免疫原性の欠如を示す。(図45A)RFX-980869およびニボルマブの両方の用量依存的有効性を示す、C57BL6マウスにおけるMC38腫瘍成長曲線。N=6マウス/群。(図45B)15日目の腫瘍体積(*p<0.05、マン・ホイットニー検定)(図45C)抗原特異的血清IgG用のELISAを使用して、22日目の血清サンプルで測定されたMC38腫瘍試験からの抗薬剤抗体。(図45D)BALB/cマウスにおける対応する薬剤の皮下免疫化後42日目の血清から測定された抗薬剤抗体力価。N=5マウス/群。すべてのデータは、平均±SEMとしてプロットされる。
図46図46A-46Cは、Dタンパク質のファージディスプレイライブラリおよび配列を示す。(図46A)パンニングに使用されるGAドメイン足場配列およびライブラリ。GAライブラリ中の下線付きの残基を、完全なアミノ酸多様性についてNNKコドンでハード無作為化した。AMライブラリ中の下線付きの残基を、システインを含む15アミノ酸多様性についてNNCコドンを使用してハード無作為化した。RFX-11055およびRFX-979110の小文字のアミノ酸は、D-アミノ酸を示す。上から下への配列:(配列番号2、配列番号108、配列番号108、配列番号108、配列番号113)(図46B)パンニングに使用されるZドメイン足場の配列およびライブラリ。GAライブラリ中の下線残基を、システインを除いて、各アミノ酸のためのトリヌクレオチドコドンを使用して、全アミノ酸多様性についてハード無作為化した。AMライブラリ中の下線付きの残基を、コドンを使用してソフト無作為化し、各アミノ酸で30%の変異率を組み入れた。RFX-978336およびRFX-980181の小文字のアミノ酸は、D-アミノ酸を示す。上から下への配列:配列番号163、配列番号117、配列番号117、配列番号117、配列番号119)。(図46C)ヘテロ二量体拮抗薬980869のための全D-アミノ酸配列。
図47-1】図47は、Dタンパク質およびベバシズマブについて測定された動的結合パラメータのSPRセンサーグラムを示す。
図47-2】同上。
図47-3】同上。
図48図48は、RFX-978336およびRFX-11055のSPRベースのエピトープマッピングを示す。第一の会合ステップでは、5μMのRFX-978336を使用して、チップ表面上のVEGF-Aを飽和させる。第二の会合ステップでは、1μMのRFX-11055が、5μMのRFX-978336と共に含まれ、VEGF-Aへの相加的結合を示し、RFX-11055の部位がRFX-978336によって遮断されていないことを示している。どちらのDタンパク質も、VEGF-Aからの完全な解離を示す。
図49図49A-49Bは、VEGF-A/VEGFR-1接点の構造特性を示す。(図49A)VEGFR-1(淡いオレンジ色)と複合体化されたVEGF-A(灰色)について解決された以前の構造で、要素(白色は炭素、赤色は酸素、青色は窒素、および黄色は硫黄)によって着色されたVEGFR-1のD2およびD3 Igドメインが接触したVEGF-A上のエピトープを示す(PDB ID:5T89、24)。(図49B)D2ドメインとD3ドメインが、VEGF-Aから180度離れて回転し、静電表面電位が両方の分子に対して示されている、(図49A)の明白な表現。D2およびD3結合部位は丸で囲まれ、D2相互作用の優勢な非極性疎水性性質およびD3相互作用の極性親水性性質を強調している。
図50-1】図50A-50Bは、ヘテロ二量体Dタンパク質RFX-980869の設計および合成を示す。(図50A)VEGF-A(灰色)に結合したRFX-11055(紫色)およびRFX-978336(青色)の構造オーバーレイで、提案されたPEG連結の距離測定値を伴う球体表現でのリジン残基(RFX-11055上のK19およびRFX-978336上のK7)を示す。(図50B)ペプチドと「クリック」ケミストリー官能基を備えたPEG部分とを用いた固相ペプチド合成を使用して、D-タンパク質ヘテロ二量体、RFX-980869を生成するための合成スキーム。
図50-2】同上。
図51図51は、Dタンパク質およびベバシズマブに対するSPR由来動的結合パラメータの概要を記載した表を示す。
図52図52は、非平衡ELISAにおけるVEGF-A121のVEGFR1-Fcへの結合を阻害するDタンパク質およびベバシズマブのIC50値の概要を記載した表を示す。
図53図53は、VEGF/Dタンパク質複合体についてのデータ収集および精密統計を記載した表を示す。
図54図54は、細胞シグナル伝達アッセイにおける平衡結合ELISAへ、およびVEGF-Aシグナル伝達阻害におけるVEGFR1-FcへのVEGF-121A結合を遮断するDタンパク質およびベバシズマブのIC50値の概要を記載した表を示す。
図55図55は、D-ペプチド性ZドメインのVEGF-A結合剤についてファージディスプレイ鏡像スクリーニング中に同定されたすべてのクローンの選択された位置の配列ロゴを示し、ここで配列ロゴは、未変性Zドメイン(Z-wt)の対応する残基と比較して整列される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
多価D-ペプチド結合化合物
上述のように、本開示の態様は、VEGFと高い親和性で特異的に結合する多価D-ペプチド性化合物を含む。本開示は、標的タンパク質上の二つ以上の別個の結合部位でVEGF標的タンパク質に特異的に結合する能力を有する、多価化合物の類を提供する。「多価」という用語は、標的タンパク質分子の二つ以上の別個かつ明確な部位で発生しうる、化合物と標的タンパク質との間の相互作用を指す。多価D-ペプチド性化合物には、標的タンパク質に対して高親和性の結合剤を、および標的タンパク質の機能に対して強力な生物学的効果を、提供するために連動して発生しうる複数の結合相互作用の能力がある。「多量体」という用語は、二つ(すなわち、二量体)、三つ(すなわち、三量体)、またはそれ以上の単量体性ペプチド単位(例えば、ドメイン)を含む化合物を指す。多量体化合物が相同であるとき、各ペプチド単位は、同じ結合特性を有することができ、すなわち、各単量体単位は、VEGF標的タンパク質分子上の同じ結合部位に結合することができる。こうした多量体化合物は、ホモ二量体として自然発生する、または多量体化が可能な標的タンパク質の結合での用途を見出しうる。二量体化合物は、VEGF標的タンパク質ホモ二量体の二つの分子上にある二つの同一の結合部位に同時に結合することができる。一部の実例では、標的タンパク質に応じて、本開示の多価D-ペプチド性化合物は、多量体化されてもよく、例えば、二量体二価D-ペプチド性化合物は、二つの二価D-ペプチド性化合物の二量体を含みうる。特定の事例では、多量体化合物は異種であり、各ペプチド単位(例えば、ドメイン単位または二価単位)は、異なる標的部位またはタンパク質に特異的に結合する。
【0009】
多価ペプチド性化合物は、少なくとも二つのペプチド性ドメインを含み、各ドメインは、結合部位で特異的タンパク質間相互作用の界面を提供するように構成されたバリアントアミノ酸から構成される特異性決定モチーフを有する。複数のペプチド性ドメインが互いに連結されている場合、それらは同時に標的タンパク質と接触し、複数の結合部位で複数の界面を提供することができる。複数のタンパク質-タンパク質結合相互作用は、任意の一つのD-ペプチド性ドメインのみについて達成することが可能であるよりも、有意に高い有効な親和性をもたらすために、アビディティ効果を介して連動的に発生しうる。本開示は、複数の標的結合部位を結合する複数のペプチド性ドメインを産生するために、足場小タンパク質ドメインライブラリを使用した、鏡像ファージディスプレイスクリーニングの使用を開示しており、しかもそのようなドメインは、強いアビディティ効果を示す高親和性の結合剤を産生するのにうまく連結することができる。本発明者らによって実証された多量体化合物は、対応する抗体剤と同等またはそれよりも良好な親和性を有し、インビボでのVEGF標的タンパク質に対する有効な生物活性を提供する。
【0010】
概して、VEGF標的タンパク質は天然起源のLタンパク質であり、化合物はD-ペプチド性化合物である。本明細書に記載されるD-ペプチド性化合物のいずれについても、D-VEGF標的タンパク質に特異的に結合するL-ペプチド性化合物バージョンも本開示に含まれることが理解される。当該ペプチド性化合物を、合成D-VEGF標的タンパク質に結合するための様々な足場ドメインファージディスプレイライブラリの鏡像スクリーニングの方法を使用して部分的に同定した。
【0011】
D-ペプチド性化合物は、タンパク質分解安定性、免疫原性実質的な低下、およびインビボでの長い半減期など、対応するL-ポリペプチドと比較して、治療用途に対して多くの望ましい特性を提供することができる。本開示のD-ペプチド性化合物は、VEGFに対する抗体剤と比較して、概してサイズは有意に小さい。一部の事例では、当該化合物のより小さなサイズおよび特性は、投与経路、組織分布および組織浸透、ならびに抗体系治療剤よりも優れた投与計画を提供する。
【0012】
本開示は、少なくとも第一および第二のD-ペプチド性ドメインを含む多価D-ペプチド性化合物を提供する。第一および第二のD-ペプチド性ドメインは、標的タンパク質の明確な非重複結合部位に特異的に結合することができ、連結成分を介して(例えば、本明細書に記載されるように)互いに連結することができる。連結成分は、標的タンパク質への同時結合または連続結合を可能にするように構成されうる。「連続結合」は、第一のD-ペプチド性ドメインの標的への結合は、たとえ結合が同時に起こらないとしても、第二のD-ペプチド性ドメインによる結合が生じる可能性を増加させることができることを意味する。
【0013】
第一および第二のD-ペプチド性ドメインは、互いに異種、すなわち、ドメインが異なるドメインタイプであってもよい。例えば、第一のD-ペプチド性ドメインがバリアントGAドメインで、第二のD-ペプチド性ドメインがバリアントZドメインであってもよく、またはその逆であってもよい。二つの異なる足場ドメインライブラリを使用したVEGFの鏡像ファージディスプレイスクリーニングは、VEGF上の二つの異なる結合部位に向けられたバリアントドメイン結合剤を提供する。
【0014】
多価D-ペプチド性化合物が二つのそのようなドメインのみを含む場合、二価と呼んでもよい。三価、四価、およびより高い多価性も可能である。三価D-ペプチド性化合物は、二つの連結成分を介して直線状に、または単一の三価連結成分を介して、連結された三つのD-ペプチド性ドメインを含みうる。三価D-ペプチド性化合物は、各D-ペプチド性化合物上の二つのシステイン残基間のジスルフィド結合を介して接続された二つの同じ同じD-ペプチド性化合物と、ジスルフィドと結合したD-ペプチド性化合物の一つと、第三のD-ペプチド性化合物との間の連結成分とを含みうる。四価以上の多価化合物は同様に、二価連結成分を介して直線状に、または一つ以上の多価連結成分または分岐連結成分を介して分岐構成で、連結することができる。
連結成分
【0015】
「連結成分」という用語は、当該化合物の二つ以上のD-ペプチド性ドメイン間で共有結合を確立することができる多価部分を網羅することを意味する。時には、連結成分は二価である。あるいは、連結成分は、三価または樹状である。連結成分は、D-ペプチド性ドメインポリペプチドの合成中、または合成後に、例えば、既に折り畳まれている二つ以上のD-ペプチド性ドメインの共役を介して、導入されてもよい。連結成分は、二機能性リンカーを使用した二つのD-ペプチド性ドメインの共役を介して、当該化合物内に導入されてもよい。また、連結成分は、D-ペプチド性ドメインポリペプチドの合成中に組み込まれうるように設計されてもよく、例えば、ここで連結成分はそれ自体がペプチド性であり、アミノ酸残基の配列の固相ペプチド合成(SPPS)を介して調製される。さらに、化学選択官能基および/またはリンカーは、ポリペプチド合成中に導入されて、SPPS後のD-ペプチド性ドメインの簡易共役を提供しうる。
【0016】
任意の好都合な連結基またはリンカーは、当該多価化合物における連結成分として使用するために適応されうる。当該連結基およびリンカー単位は、限定されないが、アミノ酸残基、ポリペプチド、PEGユニット、(PEG)nリンカー(例えば、ここで、nは2~50であり、2~40、2~30、2~20または2~10など)、末端修飾PEG(例えば、-NH(CHO[(CHO](CHCO-、または-NH(CHO[(CHO](CHNH-、または-CO(CHO[(CHO](CHCO-連結基、式中、mは2~6であり、pは1~6であり、nは1~50であり、1~20、1~12または1~6など)、C1-C6アルキルまたは置換C1-C6アルキルリンカー、C2-C12アルキルまたは置換C2-C12アルキルリンカー、スクシニル(例えば、-COCHCHCO-)単位、ジアミノエチレン単位(例えば、-NRCHCHNR-、式中、RはH、アルキルまたは置換アルキル)、-CO(CHCO-、-NR(CHNR-、-CO(CHNR-、-CO(CHO-、-CO(CHS-(式中、mは1~6であり、pは2~6であり、各Rは独立的にH、C(1-6)アルキルまたは置換C(1-6)アルキル)、およびそれらの組み合わせであって、例えば、アミド(例えば、RがC1-C6アルキルである-CONH-または-CONR-)、スルホンアミド、カルバメート、カルボニル(-CO-)、エーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、アミノ(-NH-)などの結合官能基を介して結合されるものを含む。連結成分は、ペプチドであってもよく、例えば、アミノ酸残基の配列を含むリンカーであってもよい。連結成分は、式-(L-(L-(L-(L-(L-のリンカーであってもよく、式中、L~Lはそれぞれ独立的にリンカー単位であり、a、b、c、dおよびeはそれぞれ独立的に0または1であり、またa、b、c、dおよびeの総和は1~5である。本明細書に記載される多量体化合物に示されるように、他のリンカーも可能である。
【0017】
連結成分は、任意の好都合な連結ケミストリーを使用してD-ペプチド性化合物に接続される末端修飾PEGリンカーを含みうる。PEGはポリエチレングリコールである。「末端修飾PEG」という用語は、例えば、別の結合基部分、またはペプチド性化合物の末端もしくは側鎖への共役に適した化学選択官能基を含むように、末端の一方または両方が修飾された、任意の好都合な長さのポリエチレングリコールを指す。実施例のセクションには、D-ペプチド性ドメインの配列中に導入されたシステイン残基など、チオール基に化学選択的に共役結合するための、末端マレイミド官能基を有するいくつかの例示的な末端修飾PEG二機能性リンカーの使用について記載している。D-ペプチド性化合物は、システインまたはリジンなどの多価連結基に接続するための特定の連結または連結ケミストリーを提供できる一つ以上の追加的なアミノ酸残基を含めるために、GAドメインモチーフのN末端および/またはC末端で修飾されうる。
【0018】
連結基を介して当該ペプチド性化合物を連結する際に利用されうる化学選択的反応性官能基は、限定されないが、アミノ基(例えば、N末端アミノ基またはリジン側鎖基)、アジド基、アルキニル基、ホスフィン基、チオール(例えば、システイン残基)、C末端チオエステル、アリールアジド、マレイミド、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、ヒドラジド、PFP-エステル、ヒドロキシメチルホスフィン、ソラレン、イミドエステル、ピリジルジスルフィド、イソシアン酸塩、アミノオキシ-、アルデヒド、ケト、クロロアセチル、ブロモアセチル、およびビニルスルホンを含む。
【0019】
任意の好都合な多価リンカーが、当該多量体に利用されうる。多価とは、リンカーが、本明細書に記載されるように、当該化合物の構成要素、例えばペプチド性ドメインへの付着に適した、二つ以上の末端基または側鎖基を含むことを意味する。一部の事例では、多価リンカーは二価または三価である。一部の実例では、多価リンカーはデンドリマー足場である。任意の好都合なデンドリマー足場が、当該多量体で使用するために適合されうる。デンドリマー足場は、少なくとも一つの分岐点と、オプションのリンカーを介してドメインのN末端またはC末端に接続するために適切な二つ以上の末端とを含む分岐分子である。デンドリマー足場は、二つ以上のドメインの望ましい空間配置を提供するように選択されてもよい。一部の事例では、二つ以上のドメインの空間配置は、VEGF標的タンパク質に対する望ましい結合親和性およびアビディティを提供するように選択される。
【0020】
一部の事例では、多価リンカー基は、第二のペプチド性ドメイン上の適合する官能基に共役結合することができる化学選択的反応性官能基に由来するか、それを含む。特定の事例では、多価リンカー基は、多価結合部分(例えば、ストレプトアビジンまたは抗体)に特異的に結合することができる特異的結合部分(例えば、ビオチンまたはペプチドタグ)である。特定の事例では、多価リンカー基は、第二の化合物の第二の特異的結合部分とホモ二量体またはヘテロ二量体を直接的に形成することができる特異的結合部分である。したがって、一部の事例では、化合物が多価リンカー基を含む当該分子を含む場合、化合物は多量体の一部であってもよい。あるいは、化合物は、一つ以上の他の化合物で直接的に、または多価結合部分への結合を介して間接的に、のいずれかで多量体化することができる単量体であってもよい。
【0021】
例示的な多価D-ペプチド性化合物
本開示は、VEGF-Aを結合する多価化合物を提供する。多価VEGF-A結合化合物は、二価であってもよく、連結成分を介して連結される二つの明確なバリアントドメインを含む(例えば、本明細書に記載されるように)。標的タンパク質上の二つの異なる結合部位のうちの一つに結合する、VEGF-Aに特異的に結合する例示的な単一のD-ペプチド性ドメインが、本明細書に開示されている。図36Aは、標的VEGF-Aに同時に結合するこのような二つの単一ドメインの結晶構造を示す。VEGF-Aの第一の結合部位で結合する、VEGF-A特異的バリアントGAドメインポリペプチドが本明細書に記載されている。一部の事例では、第一の結合部位は、VEGF-Aのアミノ酸側鎖F43、M44、Y47、Y51、N88、D89、L92、I72、K74、M107、I109、Q115およびI117によって定義される。一部の事例では、VEGF-A特異的ポリペプチドは、ロックされたバリアントGAドメインである(例えば、本明細書に記載されるように)。当該VEGF-A特異的D-ペプチドバリアントGAドメインポリペプチドのいずれも、連結成分を介して、標的VEGF-Aの第二かつ明確な結合部位に特異的に結合する第二のD-ペプチド性ドメインに接続することができる。一部の事例では、第二の結合部位は、VEGF-Aのアミノ酸側鎖E90、F62、D67、I69、E70、K110、P111、H112およびQ113によって定義される。例示的GAドメインポリペプチド、化合物11055とは異なる部位で結合する、例示的Zドメインポリペプチドを示す図36Aを参照。拮抗活性をもたらすために、標的結合部位の少なくとも一方または両方が、VEGF-A標的タンパク質上のVEGFR2結合部位と部分的に重複すべきである。例えば、図35Bを参照。
【0022】
VEGF-A結合二価化合物を提供するために、D-ペプチドバリアントZドメインポリペプチドに連結されうるD-ペプチドバリアントGAドメインポリペプチドには、限定されないが、化合物11055、979102および979107-979110、ならびにそのバリアント(例えば、本明細書に記載されるもの)が含まれる。
【0023】
VEGF-A結合二価化合物を提供するために、D-ペプチドバリアントGAドメインポリペプチドに連結されうるD-ペプチドバリアントZドメインポリペプチドには、限定されないが、化合物978333~978337、980181、980174-980180、および981188-981190、ならびにそのバリアント(例えば、本明細書に記載されるもの)が含まれる。
【0024】
図36Aでは、二つのD-ペプチド性ドメインのN末端を接続する、一つの可能性のある連結成分の概略図が示されている。一部の事例では、N末端からN末端へのリンカーは、(PEG)n二機能性リンカーであり、式中、nは、2~20である(4~20または8~20など)(例えば、nは、5、6、7、8、9、10、11または12)。共役を提供するために、任意の好都合な化学選択官能基は、連結されているD-ペプチド性ドメインに組み込まれてもよい。ドメイン間連結は、互換性のある化学選択官能基(例えば、本明細書に記載されるように)を使用して、ペプチド合成後に達成されうる。連結成分はまた、固相ペプチド合成(SPPS)中に、当該多価化合物のD-ペプチド性ポリペプチドに組み込まれてもよい。例えば、図50Bを参照。
【0025】
一部の事例では、N末端からN末端へのリンカーは、ドメインのポリペプチド配列を延長して、ホモ二官能性PEGリンカーを含むマレイミドへの共役を提供するシステイン残基を組み込むことによって導入されうる。例えば、化合物11055および978336はどちらも、追加的なN末端システイン残基で化学的に合成され、これが、N末端からN末端への連結(図36A)を提供するために、従来の方法を使用してビス-マレイミドPEG8リンカーと共役結合された。例えば、表5は、VEGF-Aを高親和性の化合物979111と結合する例示的な二価化合物の詳細を提供する。図50Aは、VEGF-Aに結合したD-ペプチド性ドメイン11055および978336の結晶構造、ならびに、VEGF-Aに結合する様々なバリアントGAドメインおよびZドメインポリペプチドから二価化合物を調製するために利用されうる、代替的なドメイン間リンカー、すなわちバリアントGAドメインのk19からバリアントZドメインのk7までの位置の図を示する。
【0026】
図38Dは、GAドメインの残基x19とZドメインの残基x7との間にリンカーLを含む、例示的な二価化合物の一般的な構造を示す。任意の例示的なD-ペプチド性GAドメイン(例えば、本明細書に記載されるように)およびD-ペプチド性Zドメイン(例えば、本明細書に記載されるように)は、図38Dに示すように、連結成分Lで構成されうる。一部の実施形態では、x19残基およびx7残基はそれぞれ独立的に、リジンおよびオルニチンであり、リンカーは、以下の構造のうちの一つを有する。
【化1】
式中、nおよびmは、独立的に1~12(例えば1~6)であり、p、qおよびrは、それぞれ独立的に0~3(例えば0または1)であり、sは1~6(例えば1~3)である。Lの一部の事例では、n+mは、3、4、または5など、2~6である。Lの一部の事例では、nおよびmは、それぞれ2である。Lの一部の事例では、nおよびmは、それぞれ3である。Lの一部の事例では、p、q、およびrは、それぞれ1である。Lの一部の事例では、pは0である。Lの一部の事例では、qは0である。Lの一部の事例では、rは0である。Lの一部の事例では、sは2である。Lの一部の事例では、sは3である。
【0027】
図38Eは、GAドメインとZドメインのC末端残基の間に第二のリンカーLを含む、例示的な二量体二価化合物の概略図である。図38Bは、二つの二価化合物のZドメインのC末端残基を連結するために使用され、SPPS中に導入することができる、例示的なリンカーLを示す。C末端からC末端へのリンカーは、一つ以上のアミノ酸残基、および一つ以上の連結単位(例えば、本明細書に記載されるもの)を含むことができ、これには、アミノ酸の分岐(例えば、リジン)およびカップリング、例えば、アミノ側鎖およびアルファアミノ基を提供する少なくとも一つの残基が含まれる。C末端からC末端へのリンカーは、一つ以上のアミノ酸残基、および一つ以上の連結単位(例えば、本明細書に記載される通り)を含みうる。一部の事例では、一つ以上の残基を、SPPS中に共有結合を提供するドメインのC末端に導入することができ、それによってタンパク質ドメインは、VEGF標的に同時に結合することができる。
【0028】
例示的な多量体多価D-ペプチド性化合物
本開示の態様は、本明細書に記載される当該バリアントドメインポリペプチドおよび/または二価化合物の任意の二つ以上を含む多量体(例えば、二量体、三量体、または四量体など)D-ペプチド性化合物を含む。本開示の多量体は、二つ以上の相同ドメインまたは二つ以上の相同二価化合物を有する化合物を指しうる。したがって、二価化合物の二量体は、連結成分を介して接続される、本明細書に記載されるいずれか一つの二価化合物の二つの分子を含みうる。標的分子のVEGF-Aは、ホモ二量体であってもよく、相同二量体化合物は、各VEGF-A標的モノマー上の類似部位への結合を提供しうる。例えば、図36Aは、VEGF-A二量体に結合されたドメイン11055の二つの分子とドメイン978336の二つの分子の結晶構造のオーバーレイを示す。4つのドメインを接続する化学的連結を組み込むための例示的な部位が示されている。例示的な連結成分は、図38Bおよび38Cに詳細に示されている。一部の事例では、二価化合物(11055+978336)の二量体化は、ドメインのC末端間のペプチドリンカーを使用して達成される。例えば、表5および図38Cは、例示的なVEGF-A結合二量体二価化合物980870および980871の配列および構成を示すもので、これは、任意の好都合な連結基が、ポリペプチドドメインのC末端に連結されて、SPPS中(図38B)またはSPPS後(例えば、本明細書に記載される通り)のいずれかに、二量体化連結成分が導入されうることを示す。
【0029】
ペプチド性ドメイン
任意の好都合なペプチド性ドメインを、当該化合物で利用することができる。様々な小タンパク質ドメインは、本明細書に記載される標的タンパク質に対する鏡像スクリーニングの方法で使用するために適合されうるファージディスプレイスクリーニングで利用される。当該小ペプチド性ドメインは、30~70残基、40~70残基、40~60残基、45~60残基、50~60残基、または52~58残基など、25~80アミノ酸残基の単鎖ポリペプチド配列からなりうる。ペプチド性ドメインは、1~20キロダルトン(kDa)、例えば2~15kDa、2~10kDa、2~8kDa、3~8kDa、または4~6kDaの分子量(MW)を有しうる。
【0030】
ペプチド性ドメインは、3らせんバンドルドメインとしうる。3らせんバンドルドメインは、二つの平行ならせんと、ループ領域によって結合された一つの逆平行らせんとからなる構造を有する。当該3らせんバンドルドメインには、限定されないが、GAドメイン、Zドメイン、およびアルブミン結合ドメイン(ABD)ドメインが含まれる。
【0031】
本開示に基づいて、構造物の標的結合表面に位置していないペプチド性ドメインモチーフのアミノ酸残基のいくつかは、結果として生じる修飾化合物の三次元構造または標的結合活性に著しい有害な影響を与えることなく、修飾されうることが理解される。このように、いくつかのアミノ酸修飾/変異は、化合物に望ましい特性を付与するために、必要に応じて当該化合物に組み込むことができ、これには、限定されないが、水溶性の増加、化学合成の容易さ、合成の費用、共役部位、らせん間結合部位、安定性、等電点(pI)、凝集抵抗、および/または非特異的結合の低減が含まれる。変異の位置は、標的タンパク質への特異的結合をもたらす、特異性決定モチーフ(SDM)または標的結合ドメインモチーフの基礎となる三次元構造への何らかの破壊を回避または最小化するように選択されてもよい。例えば、結合表面からみてドメイン構造の反対側にある溶媒曝露位置の変異は、望ましいバリアントアミノ酸残基を導入するために、例えば、溶解性を増加させる、または望ましいタンパク質pIを提供する、または共役もしくは連結部位を導入するためになしうる。一部の事例では、標的結合ドメインモチーフの三次元構造に基づいて、変異の位置は、安定性の向上(例えば、構造のコア充填残基へのバリアントアミノ酸の導入を介して)、または結合親和性の増加(例えば、SDMにおけるバリアントアミノ酸の導入を介して)を提供するために選択されうる。一部の実例では、化合物は、VEGF標的タンパク質への結合表面の一部ではない位置で、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上など、2個以上の表面変異を含む。
【0032】
VEGF結合Zドメイン
本開示は、VEGFに特異的に結合するD-ペプチド性Zドメインを提供する。Zドメインは、Zドメインの位置9、位置10、位置13、位置14、位置17、位置24、位置27、位置28、位置32、および/または位置35に位置する、5個以上のバリアントアミノ酸残基(例えば、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のバリアントアミノ酸残基)によって定義される、VEGF特異性決定モチーフ(SDM)を含みうる。様々な基礎となるZドメイン足場またはペプチド性フレームワーク配列を利用して、Zドメインの特徴的な三次元構造を提供することができることが理解される。
【0033】
「Zドメイン」という用語は、タンパク質Aの免疫グロブリンG結合ドメインに関連する3らせんバンドル三次構造を有するペプチド性ドメインを指す。タンパク質データバンク(PDB)では、構造2spzは、例示的なZドメイン構造を提供する。また、未変性Zドメイン構造および非修飾未変性Zドメインの一つの例示的な配列の描写を含む図32Aおよび図32Bも参照のこと。「Zドメイン足場」という用語は、特徴的な3らせんバンドル構造を提供し、当該化合物で使用するために適合されうる、基礎となるZドメイン配列を指す。「バリアントZドメイン」は、標的タンパク質への特異的結合を提供する3らせんバンドル三次構造の選択された位置にバリアントアミノ酸を含むZドメインである。Zドメインモチーフは、概して、次式によって描写されることができる。
[らせん3]-[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん1]
式中、[リンカー1]および[リンカー2]は、独立的に1~10残基のペプチド結合配列であり、[らせん1]、[らせん2]および[らせん3]は、GAドメインについて上述したとおりである。
【0034】
当該Zドメインには、限定されないが、Nygren (“Alternative binding proteins: Affibody binding proteins developed from a small three-helix bundle scaffold”, FEBS Journal 275 (2008)
2668-2676)、US20160200772号、US9,469,670号に
記載があるもの、およびTjhung et al. (Front. Microbiol., 28 April 2015)に記載のある、33残基が最小化されたタンパク質AのZドメインが含まれ、その開示を参照することによりその全体を本書に組み込む。
【0035】
本開示のいくつかの例示的なVEGF-A特異的Zドメインを説明する目的で、図36Bの番号付けされた57の残基足場配列を利用する。一部の実施形態では、D-ペプチド性Zドメインは、次の構造式の3らせんバンドルであり、[らせん1(#8-18)]-[リンカー1(#19-24)]-[らせん2(#25-36)]-[リンカー2 (#37-40)]-[らせん3 (#41-54)]であり、
式中、#は、D-ペプチド性GAドメイン中に含まれるアミノ酸残基の基準位置を示す。らせん1~3は、らせんの末端に延在する一つ以上の追加的な残基を含むように画定されてもよいこと、また、末端に位置する残基は、部分的ならせん状構成を有してもよく、および/または曲がり領域もしくはループ領域の始まりにあってもよいことが理解される。一部の事例では、Zドメインのらせん1は、N末端に一つ以上の追加的なアミノ酸残基、例えば、7位、および任意に6位にらせん状残基をさらに含みうる。一部の事例では、Zドメインのらせん1は、7位のアミノ酸残基をさらに含みうる。一部の事例では、Zドメインは、例えば、らせん1の安定化、3らせんバンドルの安定化、追加的なVEGF結合接触、らせん1の伸長、および第二のドメインまたは当該部分への連結(例えば、本明細書に記載されるように)など、望ましい特性を提供することができる残基N末端から位置8までを含む。一部の事例では、Zドメインは、例えば、らせん3の安定化、3らせんバンドルの安定化、追加的なVEGF結合接触、らせん3の伸長、および第二のドメインまたは当該部分への連結(例えば、本明細書に記載されるように)など、望ましい特性を提供することができる残基C末端から位置54までを含む。
【0036】
D-ペプチド性Zドメイン化合物は、VEGFのアミノ酸側鎖E90、F62、D67、I69、E70、K110、P111、H112およびQ113によって定義される結合部位で、VEGF-Aに特異的に結合することができる。
【0037】
例示的なVEGF-A結合D-ペプチド性Zドメインには、表4に記載され、化合物978333~978337および980181(配列番号114~119)、980174-980180、および981188-981190(配列番号120~129)の配列によって描写されるものが含まれる。本開示に記載される構造および配列バリアントを考慮すると、VEGF-Aへの特異的結合を保持しながら、多数のアミノ酸置換が、例示的化合物の配列に作製されうることが理解される。Zドメインの三次元構造に悪影響を与えることなく可変性が許容されるような、バリアントZドメインの位置を選択することによって、多数のアミノ酸置換が組み込まれうる。
【0038】
したがって、本開示は、1~10個のアミノ酸置換(例えば、1~8個、1~6個、または1~5個の置換、例えば、1個、2、3、4個、または5個のアミノ酸置換)を有する、978333~978337および980181(配列番号114~119)、980174-980180、および981188-981190(配列番号120~129)の配列を含む。1~10個のアミノ酸置換は、例えば、表6によるなど、アミノ酸側鎖の物理的特性に基づく、アミノ酸の置換でもよい。時には、978333~978337および980181(配列番号114~119)、980174-980180および981188-981190(配列番号120~129)の配列のアミノ酸は、表6による類似のアミノ酸で置換される。一部の事例では、置換は、表6による保存的なアミノ酸置換または高度に保存的なアミノ酸置換についての置換である。
【0039】
本開示は、978333~978337および980181(配列番号114~119)、980174-980180、および981188-981190(配列番号120~129)の配列を有する配列と80%以上の配列同一性、例えば、85%以上、87%以上、89%以上、91%以上、93%以上、94%以上、94%以上、96%以上、98%以上などの配列同一性を有する配列によって描写されるVEGF-A結合D-ペプチド性Zドメインを含む。
【0040】
VEGF-A結合D-ペプチド性Zドメインは、図33Aおよび/または図35Fに図示した特異性決定モチーフ(SDM)によって画定されるZドメイン足場の位置9、10、13、14、17、24、27、28、32および35にアミノ酸残基を有しうる。一部の事例では、特異性決定モチーフ(SDM)は、次の配列モチーフによって定義される。
10--w1314--r17------x24--k2728---x32--y35 (配列番号160)
式中、x14、24、28、およびx32はそれぞれ独立的に任意のアミノ酸残基である。SDMの特定の事例では、x14は、l、rおよびtから選択され、x24は、h、i、rおよびvから選択され、x28は、G、rおよびvから選択され、x32は、a、r、h、sおよびtから選択される。特定の事例では、特異性決定モチーフ(SDM)は、次のいずれかである。
10--w1314--r17-----l24--k2728---s32--y35 (配列番号161)、または
10--w1314--r17-----v24--k2728---r32--y35 (配列番号162)。
【0041】
一部の実施形態では、VEGFに特異的に結合するD-ペプチド性化合物は、次式のアミノ酸残基によって定義されるVEGF特異性決定モチーフ(SDM)を含むD-ペプチド性Zドメインを含む。
10--w1314--r17------x24--k2728---x32--y35(配列番号160)
式中、
14は、l、rおよびtから選択され、
24は、h、i、l、r、およびvから選択され、
28は、G、rおよびvから選択され、
32は、a、r、h、sおよびtから選択され、
35は、kまたはyから選択される。
【0042】
VEGF SDMの一部の実施形態では、x14はlである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x14はrである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x14はtである。
【0043】
VEGF SDMの一部の実施形態では、×24は時間である。VEGF SDMの一部の実施形態では、x24はiである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x24はlである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x24はrである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x24はvである。
【0044】
VEGF SDMの一部の実施形態では、x28はGである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x28はrである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x28はvである。
【0045】
VEGF SDMの一部の実施形態では、x32はaである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x32はrである。VEGF SDMの一部の実施形態では、×32はhである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x32はsである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x32はtである。
【0046】
VEGF SDMの一部の実施形態では、x35はkである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x35はyである。
【0047】
一部の実施形態では、VEGF SDMは、次の残基によって定義される。
10--w1314--r17------l24--k2728---s32--y35(配列番号161)
または
10--w1314--r17------v24--k2728---r32--y35(配列番号162)である。
【0048】
GAドメインの一部の実施形態では、SDM残基は、以下のアミノ酸残基によって画定されるペプチド性フレームワーク残基を含む、ペプチド性フレームワーク配列中に含まれる: --n11a--e15i-h18lpnln-e25q--a29fi-s33l- 。
【0049】
一部の実施形態では、GAドメインは、次式のアミノ酸配列に対して80%以上(例えば、85%以上、90%以上、または95%以上)の同一性を有する、SDM含有配列を含む。
10naw1314eir17hlpnlnx24eqk2728afix32sly35(配列番号133)
式中、
14は、l、rおよびtから選択され、
24は、h、i、l、r、およびvから選択され、
28は、G、rおよびvから選択され、
32は、a、r、h、sおよびtから選択され、
35は、kまたはyから選択される。
【0050】
SDM含有配列の一部の実施形態では、x14はlである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x14はrである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x14はtである。
【0051】
SDM含有配列の一部の実施形態では、x24はhである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x24はiである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x24はlである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x24はrである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x24はvである。
【0052】
SDM含有配列の一部の実施形態では、x28はGである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x28はrである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x28はvである。
【0053】
SDM含有配列の一部の実施形態では、x32はaである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x32はrである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x32はhである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x32はsである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x32はtである。
【0054】
SDM含有配列の一部の実施形態では、x35はkである。SDM含有配列の一部の実施形態では、x35はyである。
【0055】
化合物の一部の実施形態では、Zドメインのらせん3(#41~54)は、ペプチド性フレームワーク配列s41anllaeakklnda54(配列番号134)を含む。
【0056】
一部の実施形態では、D-ペプチド性Zドメインは、C末端ペプチド性フレームワーク配列:d36dpsqsanllaeakklndaqapk58(配列番号135)を含む。
【0057】
一部の実施形態では、D-ペプチド性Zドメインは、N末端ペプチド性フレームワーク配列:vdnkfnke(配列番号136)を含む。
【0058】
VEGF結合GAドメイン
「GAドメイン」および「GAドメインモチーフ」という用語は、タンパク質Gのアルブミン結合ドメインに関連する3らせんバンドル三次構造を有するペプチド性ドメインを指す。タンパク質データバンク(PDB)では、構造1tf0は、例示的なGAドメイン構造を提供する。図3、7A-7B、10Aおよび図 10Bは、未変性GAドメイン構造および非修飾未変性GAドメインの一つの例示的な配列の描写を含む。「GAドメイン足場」という用語は、特徴的な3らせんバンドル構造を提供し、当該化合物で使用するために適合されうる、基礎となるペプチド性フレームワーク配列を指す。一部の事例では、GAドメイン足場またはペプチド性フレームワーク配列は、表3に定義されるコンセンサス配列を有する。表3は、当該化合物での使用に適合されうる、例示的なGAドメイン足場配列のリストを提供する。「バリアントGAドメイン」、「VEGF結合GAドメイン」、および「VEGFに結合するGAドメイン」という用語は、互換的に使用され、3らせんバンドル三次構造の選択位置にバリアントアミノ酸を含むGAドメインを指し、それらはまとめてVEGF標的タンパク質への特異的結合を提供する。
【0059】
GAドメインは、以下の構造式によって記述されることができ、
[らせん1]-[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]
式中、[らせん1]、[らせん2]および[らせん3]は、ペプチドリンカー[リンカー1]および[リンカー2]を介して連結された特徴的な3らせんバンドルのらせん領域である。3らせんバンドルでは、[らせん1]、[らせん2]および[らせん3]は、連結されたペプチド領域であり、ここで[らせん2]は、平行アルファらせん[らせん1]および[らせん3]の2らせん複合体に対して実質的に逆平行に構成される。[リンカー1]および[リンカー3]はそれぞれ独立的に、1~10アミノ酸残基の配列を含みうる。一部の事例では、[リンカー1]は[リンカー3]よりも長い。GAドメインは、30~90残基、例えば、30~80残基、40~70残基、45~60残基、45~60残基、または45~55残基などのペプチド性配列であってもよい。特定の例では、GAドメインモチーフは、40~55残基、または45~55残基など、35~55残基のペプチド性配列である。特定の実施形態では、GAドメインモチーフは、45残基、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、または53個の残基のペプチド性配列列である。
【0060】
一部の実施形態では、D-ペプチド性GAドメインは、以下の構造式の3らせんバンドルである。
[らせん1(#6-21)]-[リンカー1(#22-26)]-[らせん2(#27-35)]-[リンカー2 (#36-37) ]-[らせん3 (#38-51]式中、#は、D-ペプチド性GAドメイン中に含まれるアミノ酸残基の基準位置を示し、例えば、図9Cに示す番号付け方式による。
【0061】
当該GAドメインは、Jonsson et al. (Engineering of a femtomolar affinity binding protein to human serum albumin, Protein Engineering, Design & Selection, 21(8), 2008, 515-527)に記載があり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、また、足場の位置25、27、31、34、36、37、39、40、43、44および47にライブラリ変異を有する足場配列(G148-GA3)を有する、GAドメインおよびファージディスプレイライブラリを含む。その他の当該GAドメインは、限定されないが、US6,534,628およびUS6,740,734に記載されるものが含まれ、当該開示は、これらを参照することによりその全体を本書に組み込む。
【0062】
本開示のバリアントGAドメインは、25、27、30、31、34、36、37、39、40および42~48から選択される位置に、5個以上のバリアントアミノ酸残基を含む特異性決定モチーフ(SDM)を有しうる。一部の実例では、特異性決定モチーフ(SDM)は、GAドメインの位置28にバリアントアミノ酸をさらに含む。
【0063】
ロックされたGAドメイン
本開示は、らせん1とらせん3の隣接残基の間のらせん間リンカーまたは架橋を有するバリアントGAドメイン化合物を含む。「ロックされたバリアントGAドメイン」および「ロックされたGAドメイン」という用語は、GAドメインの任意の二つのらせんの間に構造安定化リンカーを含むバリアントGAドメインを指す。時には、連結された隣接残基は、らせん1および3の端部に位置する。図29Aおよび図37Aは、3らせんバンドルにおけるらせん1~3の構成を示すGA足場ドメインの構造を示す。らせん間リンカーは、ドメインの三次元構造において互いに近位にある、ドメインの位置7(らせん1)と位置38(らせん3)のアミノ酸残基間に位置しうる。位置7および位置38は、構造の疎水性コアとの安定した接触をすることができるらせんの端部に位置する残基に面するコアであるとみなしうる。らせん間リンカーは、連結されたアミノ酸残基のアルファ炭素の間で測定される、長さ3~7原子の骨格を有しうる。例えば、二つのシステイン残基間のジスルフィド結合は、二つのシステインアミノ酸残基のアルファ炭素間に長さ4原子の骨格(-CH-S-S-CH-)を提供する。
【0064】
適合する様々な天然および非天然起源のアミノ酸残基は、GAドメインの位置7および38に組み込むことができ、それらは互いに共役結合されて、らせん間リンカーを提供することができる。適合残基としては、限定されないが、エステルまたはチオエステル連結を介して、セリンまたはシステインに連結されたアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩、アミド連鎖を介してオルニチンまたはリジンに連結されたアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩が含まれる。したがって、らせん間リンカーは、C(1~6)アルキル、置換C(1~6)アルキル、-(CHR)-CONH-(CHR)-、および-(CHR)-S-S-(CHR)-から選択される一つ以上の基を含んでもよく、式中、各Rは独立的にH、C(1~6)アルキル、または置換C(1~6)アルキル、およびn+m=2、3、4、または5である。任意の好都合な非天然起源の残基は、位置7および位置38のアミノ酸残基側鎖に、例えば、アジドおよびアルキンタグなどのクリックケミストリータグなど、互換性のある化学選択的タグを組み込むために利用でき、これらはポリペプチド合成後に互いに共役結合することができる。
【0065】
ドメイン内リンカーの組み込みは、VEGF標的タンパク質のために安定性および/または結合親和性の増加をもたらすことができる。一部の事例では、VEGFに対するD-ペプチド性化合物の結合親和性(K)は、ドメイン内リンカーを欠く対照ポリペプチドよりも3倍以上強く(すなわち、Kが3倍低い)、例えば、5倍以上強い、10倍以上強い、30倍以上強い、またはそれ以上に強いなどである。VEGF-Aに特異的に結合する例示的なロックされたバリアントGAドメイン化合物を、以下でより詳細に説明する。
【0066】
バリアントGAドメインポリペプチドは、らせん2およびらせん3と非重複とみなしうる、N末端領域の位置1からおよそ位置6までを含むことができ、これは、この領域が、折り畳まれた3らせんバンドル構造の隣接するらせん2-ループ-らせん3領域との接触に直接関与しないためである(例えば、図32Aを参照)。当該D-ペプチド性化合物では、GAドメインの位置1~5のN末端領域は、任意に配列内に保持し、水溶性、安定性または親和性の増加などの望ましい特性を提供するために最適化することができる。バリアントD-ペプチド性化合物のN末端領域は、化合物の活性に著しい悪影響を及ぼすことなく、置換、修飾、または切断がなされうることが理解される。N末端領域は、当該分子(例えば、本明細書に記載されるように)、または別のD-ペプチド性ドメインもしくは多価化合物(例えば、本明細書に記載されるように)への共役または連結を提供するために修飾されうる。一部の事例では、N末端残基は、らせん1の伸張したらせん構造を提供するらせん性向を有する。あるいは、N末端領域は、らせん1のN末端を安定化させるらせんキャッピング残基を組み込むことができる。一部の事例では、バリアントGAドメイン化合物は、図32Aに示すとおり、親GAドメイン構造に対して1個、2個、3個、4個または5個の残基を切断することで(すなわち、位置1-5の切断)、N末端で切断される。このような場合、当該化合物の番号付け方式は、図32Bに示すように保持される。同様に、らせん3の末端の1個、2個、または3個のC末端残基は、3らせんバンドル構造の安定性および標的結合能に悪影響を与えることなく切断されうる。
【0067】
図29A-29Bは、バリアントGAドメイン化合物の位置1~3、6、7、および37~38に焦点を置いた例示的な親和性成熟ライブラリの設計を示す。図30A-30Bは、c7-c38ジスルフィド架橋およびVEGF-Aに対する結合親和性の改善を有するスクリーニングおよびバリアントGAドメイン化合物の結果を示す。様々なバリアントアミノ酸残基が、化合物のN末端領域の位置1~3で許容される。
【0068】
一部の実施形態では、D-ペプチド性GAドメインは、以下のセグメント(I)~(II)のうち一つ以上(例えば、両方)を含み、
qwx (I)(配列番号142)
3738 (II)
式中、
~xは、任意のD-アミノ酸残基から独立的に選択され、
は、iおよびvから選択され、
37は、sおよびnから選択され、および
およびx38は、アミノ酸残基xおよびx38のアルファ-炭素の間で測定された3~7原子長の骨格を有するドメイン内/らせん間リンカーを介して接続されるアミノ酸残基である。式(I)の一部の実施形態では、x~xは、f、h、i、p、r、y、n、sおよびvから独立的に選択される。式(I)の一部の実施形態では、xはvである。式(II)の一部の実施形態では、x37はnである。
【0069】
ドメイン内/らせん間リンカーは、ジスルフィド架橋、またはxとx 38アミノ酸残基の側鎖間の連結からなることができる。任意の好都合な天然または非天然起源のチオールを含むアミノ酸は、ドメイン内リンカーを提供するために、利用することができる。ジスルフィド結合を介して接続されうるアミノ酸残基×および×38は、システイン-システイン38ジスルフィド、ホモシステイン-システイン38ジスルフィド、システイン-ホモモシステイン38ジスルフィド、およびホモシステイン-ホモシステイン38ジスルフィドを含む。あるいは、ドメイン内/らせん間リンカーは、xアミノ酸残基とx38アミノ酸残基の側鎖間でのアミド結合連結を含みうる。任意の好都合な天然または非天然起源のアミンおよびカルボン酸を含むアミノ酸は、ドメイン内リンカーを提供するために利用することができる。アミド連鎖を介して接続され得るアミノ酸残基xおよびx38は、Asp7-Dap38、Asp7-Dab38、Asp7-Orn38、Glu7-Dap38、Glu7-Dap38およびGlu7-Orn38を含み、式中、Dapは□□□-ジアミノプロピオン酸であり、Dabは□□□-ジアミノ酪酸であり、Ornはオルニチンである。x残基とx38残基の対は、D-アミノ酸残基とすることができる。任意の好都合な化学選択官能基およびその共役は、限定されないが、アジド-アルキン、チオール-マレイミド、チオール-ハロアセチル、チオール-ビニルスルホン、エステル、チオエステル、アミド、エーテルおよびチオエーテルを含む、ドメイン内/らせん間結合を達成するために利用されうる。
【0070】
図13は、スクリーニングで使用されるファージディスプレイライブラリのうちの一つを画定する、基礎となる53残基足場配列(配列番号2)、および足場の位置25、27、28、31、34、36、37、39、40、43、44および47での、太字の変異位置を含む、GAドメインライブラリの描写を示す。足場ドメインライブラリのスクリーニングに由来する、選択されたヒット化合物が同定された。当該化合物は、標的タンパク質と接触し、かつVEGF-Aへの特異的結合を提供する、VEGF-A結合面を提示する、基礎となる足場ドメインを含む。選択されたGAドメインライブラリヒットからの選択された化合物を、追加的な親和性成熟および点変異の研究(例えば、本明細書に記載されるようなもの)の対象とし、例えば、位置26、位置29および位置30のGAドメインモチーフのいくつかの追加的な位置でのバリアントアミノ酸を評価した。VEGF-Aと複合体化されたGAドメイン足場を有する、例示的なD-ペプチド性化合物のX線結晶構造が、本明細書に記載されており、これは当該VEGF-A結合化合物の構造モデルを提供する。
【0071】
D-ペプチドバリアントGAドメイン化合物は、VEGF-Aのアミノ酸側鎖F43、M44、Y47、Y51、N88、D89、L92、I72、K74、M107、I109、Q115およびI117によって定義される結合部位で、VEGF-Aに特異的に結合することができる(図28A-28Bを参照)。
【0072】
一部の事例では、VEGF-A結合モチーフは、互いに接触し、まとめてVEGF-A結合面を画定する、少なくとも二つの逆平行らせん領域[らせんA]および[らせんB]を含む。[らせんA]および[らせんB]の逆平行複合体を含むVEGF-A結合モチーフのその部分は、「2らせん複合体」構造と呼ぶことができる。図8A-8Bは、2らせん複合体構造の7連子繰返し構造モデルを示す。一部の実例では、当該VEGF-A接触残基は、7連子繰返しのcまたはg位置など、2らせん複合体の表面変異位置または境界変異位置に位置することができる。図8Cは、2らせん複合体構造のg-g面上のVEGF-A接触残基の一つの例示的な配置を示す。VEGF-A結合面は、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のVEGF-A接触残基など、4個以上の残基を含んでもよく、ここで残基は、[らせんA]および[らせんB]の両方の残基を含む。特定の事例では、VEGF-A接触残基は、非極性残基、芳香族残基、複素環式残基、および炭素環式残基(例えば、本明細書に記載される通り)から独立的に選択される。2らせん複合体の二つのらせんは、[らせんA]および[らせんB]の実質的に逆平行な構成を維持する任意の好都合な連結を介して接続されうる。一部の事例では、[らせんA]および[らせんB]は、C(らせんA)からN(らせんB)のペプチドリンカーを介して連結される。一部の事例では、[らせんA]および[らせんB]は、C(らせんA)からN(らせんB)のペプチドリンカーを介して連結される。図8Aは、2らせん複合体構造に対して可能な末端連結(青色実線)を示す。
【0073】
2らせん複合体は、限定されないが、溶媒曝露位置での望ましいらせん-らせん充填相互作用または親水性を提供する残基の組み込み、らせん間結合の組み込み、らせん内結合の組み込み、らせんを接続する拘束的な屈曲部またはリンカーの組み込み、および[らせんA]および[らせんB]の両方との接触を安定化することができる第三のペプチド性領域への連結、を含む、任意の好都合な方法によって、さらに安定化されうる。図8B-8Cは、任意の二つの好都合な残基の間に導入しうる様々ならせん間側鎖-側鎖結合(例えば、点線)を図示する。同様に、化合物の構造に望ましい安定性を提供するために、らせん内の側鎖から側鎖への連結、または側鎖から末端への連結の安定化を導入しうる。当該化合物で使用が見出される当該のらせん間およびらせん内の連結には、限定されないが、Cys-Cysジスルフィド結合、ステープル化ペプチド結合、および閉環メタセシスによって調製される連結や、Douse et al. (ACS Chem Biol. 2014 Oct 17;9(10):2204-9)に記載のある連結など、非天然の架橋が含まれる。
【0074】
一部の実施形態では、2らせん複合体は、化合物のVEGF-A結合面の反対側で、[らせんA]および[らせんB]の両方と接触し、これらがまとめて3らせんバンドルを画定する、第三のらせん(Helix C)によって安定化されうる。本明細書で使用される場合、「3らせんバンドル」および「3らせんバンドルモチーフ」という用語は、互換的に使用され、三つの実質的に平行なまたは逆平行なアルファらせんを含む、小さなタンパク質三次構造である3らせんバンドルを指す。三つのらせんは、3らせんバンドル構造において平行-逆平行-平行構成で配置された、連結されたらせん領域の線形配列に基づく。
【0075】
DeGrado et al. (Analysis and design of three-stranded coiled coils and three-helix bundles”, Folding & Design 1998, 3: R29-R40)は、三本鎖コイルドコイルおよび3らせんバンドルの集合体のためのモデルを提供し、その開示はその全文を参照し本書に組込む。3らせんバンドルは、非極性コアにおいて互いに規則的な接触を有するらせんを接続するループを有する、一本鎖構造でありうる。構造の三つのらせんは、斜体a~g、すなわち(abcdefg)中の文字によって示される、およそ7つの残基の反復モチーフを示すことができる。7連子指定a、c、d、e、fおよびgは、特定のアミノ酸の単一文字コードではなく、むしろ7連子配列内の位置に対応する。非極性残基は、疎水性安定化をもたらすために構造の中心に充填される側鎖基を含む、7連子の位置aおよびdで発生しうる。非極性aおよびd残基は、層状に充填されうる。一部の事例では、荷電側鎖は、界面のeおよびg位置で生じてもよく、その側鎖の非極性部分が疎水性コアを遮蔽し、極性部分が静電または水素結合相互作用に関わりうる。一部の事例では、溶媒曝露位置bおよびcは、極性残基によって占有されうる。一部の実例では、位置fは、高度に溶媒曝露的であり、極性残基または荷電残基によって占有されうる。図6Dは、二つの平行らせんと一つの逆平行らせんを示す、3らせんバンドルのDペプチド性7連子繰返しモデルを示す。一部の事例では、らせん2および3の複合表面によって形成されるg-g面の残基は、VEGF-Aの表面と相互作用し、特異的結合を提供するよう構成されるVEGF-A接触残基を含むように修飾される。図6Dに図示した構造モデルの2らせん複合体バージョンが可能であることが理解され、これについては図8Bに示す。任意の好都合な安定化要素を、当該化合物(例えば、本明細書に記載されるように)で利用して、二つのらせんの望ましい配置を維持し、VEGF-Aへの特異的結合を提供するVEGF-A結合残基を提示することができる。当該化合物は、3らせんバンドル三次構造を有するVEGF-A結合GAドメインモチーフを有してもよく、その中にバリアントアミノ酸残基が組み込まれ、VEGF-Aに特異的に結合することができる結合表面を提供する。図1~2は、例示的なペプチド性化合物とVEGF-Aとの間の結合界面を図示する。図3Aおよび図3Bは、L-タンパク質GAドメインと例示的なD-ペプチド性化合物の3らせんバンドルX線結晶構造の並列比較を示す。図3Aおよび図3Bの比較は、ペプチド性化合物が、親GAドメインの基本的な3らせんバンドル構造モチーフを保持することができることを示す。特定の事例では、化合物のアルファらせん構造は、未変性GA足場ドメインと実質的に同一である。修飾バリアントアミノ酸は、GA足場ドメイン中に存在しないらせん2領域の末端に、らせん末端残基を含みうる。らせん2領域のバリアントアミノ酸はまた、三つ以上のVEGF-A接触残基、例えば、芳香族アミノ酸残基を含みうる。図4は、例示的なVEGF-A結合化合物のらせん2領域の位置26および位置36(p26;204およびp36;208)でのらせん末端プロリン残基、ならびに位置31(f31;206)でフェニルアラニンと、位置27および位置34(h27;205およびh34;207)でヒスチジン残基と接触するVEGF-Aを示す。
【0076】
本明細書に記載される化合物の特定の実施形態では、番号付け方式は、例えば、特定の当該バリアントアミノ酸残基がGA足場ドメインに組み込まれる位置など、化合物の構造および/または配列における特定の位置を指すための、利便性および単純性のために利用される。この番号付け方式は、図13に図示した53残基のGA足場ドメイン用に利用されたものに基づく。任意の好都合なアライメント法を使用して、当該化合物の特定の実施形態を図15の参照番号付け方式と比較し、番号付けされた位置を、例えば、本明細書に記載されるモチーフまたは構造モデル内の位置など、当該アミノ酸残基に割り当てることができることが理解される。図14は、様々な当該GA足場ドメイン配列の例示的なアライメントを示しており、その任意の一つは、当該化合物の基礎となる親配列として機能しうる。図14はまた、図13の番号付け方式に対する配列も参照する。さらに、図13の1~53の番号付け方式は、線形化合物配列のアミノ酸残基の総数もしくは長さを決定する点、または特定の化合物のありとあらゆる残基を定義する点において、限定するものではないことが理解される。
【0077】
一部の事例では、当該化合物は、N末端切断(例えば、位置1から)、C末端切断(例えば、位置53から)、欠失(例えば、親配列の任意の好都合な位置での単一の残基位置)、挿入(例えば、二つの特定の位置の間の1個、2個、3個、またはそれ以上の隣接する残基)などの番号付き親配列に対する一つ以上のバリエーションを含む。特定の事例では、当該化合物に組み込まれるこうしたバリエーションは、標的への特異的結合を提供する3らせんバンドルの三次元構造を実質的に保存している。当該化合物は、例えば、以下の実施形態に記載されるように、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、または15個以上の位置など、親構造または配列の一つ以上の位置におけるバリアントアミノ酸をさらに含みうる。
【0078】
本明細書に記載されるように、当該化合物は、3らせんバンドル構造を有してもよく、ここで、[らせん2]および[らせん3]の特定の位置に位置する特定の溶媒曝露バリアントアミノ酸は、VEGF-Aと接触を形成することができる。一部の事例では、追加的な接触が、[リンカー2]および/または[リンカー1]の特定の残基で起こってもよい。図1は、例示的なペプチド性化合物と、複合体のX線結晶構造から取り込まれたVEGF-Aとの間の結合界面を示す。特定の事例では、[らせん2]、[らせん3]、[リンカー2]および/または[リンカー1]の追加的な位置に位置するバリアントアミノ酸は、修飾された3らせんバンドル構造の望ましい安定化を提供する。例えば、図4では、例示的な[らせん2]末端残基が示されており(例えば、プロリン残基204および208)、これは一部の事例では、望ましい安定化の増加を[らせん2]に与えることができる。特定の例では、修飾された3らせんバンドルの疎水性コアは、親GA足場ドメインのものと実質的に同じアミノ酸残基によって画定される。例えば、図11は、[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]構造の例示的なD-ペプチド性化合物の一部の拡大図を示しており、これには、[らせん2]の隣接する疎水性残基i32(イソロイシン、位置32)およびa35(アラニン、位置35)、ならびに望ましい分子内疎水性接触を提供する[らせん3]の隣接する疎水性残基v41(バリン、位置41)およびl44(ロイシン、位置44)が含まれる。図12では、未変性L-ペプチド性GAドメインの類似の領域の拡大図が示されており、ここで類似残基I32(イソロイシン、位置32)、A35(アラニン、位置35)、V41(バリン、位置41)およびL44(ロイシン、位置44)は、GA足場ドメインの3らせんバンドル構造の特徴である類似の望ましい分子内疎水性接触を提供する。
【0079】
図6Cは、逆平行三本鎖らせん構造のDegradoモデルを示す。繰返し7連子単位に基づく逆平行三本鎖らせんのDegradoモデルは、本明細書では、当該化合物配列モチーフを、VEGF-A結合表面を含む当該化合物の修飾された3らせんバンドル構造に関連する構造モデルを提供するように適合される。3らせんバンドルのこの構造モデルは、未変性GAドメイン(例えば、図3A)および例示的なVEGF-A結合化合物(図3B)のX線結晶構造と一貫性がある。図9Aおよび9Cは、例示的化合物1.1.1(c21a)に適用されるモデルを示し、ここで化合物配列のアミノ酸残基(図9C)は、X線構造(図9B)と一貫性がある、7連子繰返しモデルの様々な位置と関連するか、構造的に整列する。図9Aのモデルを、VEGF-Aと複合体化された化合物のX線構造(例えば、図5および図20の図を参照)と比較したものは、例示的化合物のVEGF-A結合表面が、らせん2およびらせん3によって画定されるg-g面(図9A)に位置することを示す。選択されたアミノ酸残基は、当該化合物のVEGF-A結合表面に位置してもよく、VEGF-Aと相互作用するように構成されてもよい(例えば、らせん2およびらせん3によって画定されるg-g面の溶媒曝露されたc位置および/またはg位置に位置する)。
【0080】
当該化合物の疎水性コアは、[らせん3]の対応するdおよびa残基と接触する[らせん2]のdおよびa残基を含みうる。図6Bおよび図10Aは、3らせんバンドルのらせん間での、コア残基の疎水性接触が図示されている、7連子繰返しモデルとの、例示的化合物1.1.1(c21a)のアライメントを示す。これは、図11に示す[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]領域の部分構造と一貫性があり、これには、[らせん2]の隣接する疎水性残基i32(イソロイシン、位置32)およびa35(アラニン、位置35)、ならびに望ましい分子内疎水性接触を提供する[らせん3]の隣接する疎水性残基v41(バリン、位置41)およびl44(ロイシン、位置44)が含まれる。このモデル(例えば、図9Aに示すもの)では、正確には平行でないらせん2およびらせん3のアライメントが許容される(すなわち、らせん間角度は0度より大きく、例えば、本明細書に記載されるように、また図27に描写されているように)ことが理解される。
【0081】
図5および図27に示すように、一部の事例では、らせん2および3は、らせんの方向に対して実質的に逆平行の構成を有しうるが、これらのらせんは、らせんの長さにわたり相互に何か所か接触するが、らせんの軸は、約10度以上、約15度以上、約20度以上、約25度以上、約30度以上など、0度より大きい角度の軸と整列することができる。したがって、当該化合物の一部の例では、リンカー2は、リンカー1よりも短く、その結果、らせん2とらせん3の間の角度は、らせんのリンカー2接続から測定される。一部の事例では、らせんのリンカー2末端から最も離れている「a」および「d」残基は、部分的に溶媒曝露される、および/またはVEGF-Aと接触できる可能性が高い。
【0082】
特定の例では、当該化合物は、らせん2とらせん3の間の角度の増大、例えば、約10度以上、または約15度以上など、約5度以上の増大をもたらす、らせん末端残基を含む。例えば、図27A図27Bを比較して参照。
【0083】
一部の実施形態では、[らせん2]は、7連子繰返し配列[c]を含み、[らせん3]は、7連子繰返し配列[e]を含み、個々の7連子繰返し残基は番号付けすることができる。[らせん2]および[らせん3]のこの配置の特定の事例では、残基d、aおよびdの[らせん2]は残基a、dおよびaと相互作用し、[らせん3]の構造安定化相互作用のネットワークを形成する。特定の事例では、[らせん2]の残基c、gおよびc、および[らせん3]の残基gはそれぞれ独立的に、VEGF-Aと接触するよう構成される芳香族、複素環式または炭素環式残基である。
【0084】
当該化合物のVEGF-A結合表面は、残基がVEGF-Aと相互作用するよう表面上に構成されている7連子繰返しモデルのcおよびg位置に位置する芳香族アミノ酸残基の構成によって画定されうる。一部の事例では、VEGF-A結合表面は、2個以上、3個以上の芳香族アミノ酸残基、例えば、7連子繰返し配列のc位置およびg位置に位置する4個以上、または5個以上の芳香族アミノ酸残基を含む。図8Dおよび図10Bは、VEGF-Aを結合することができる[らせん2]および[らせん3]のc残基およびg残基の構成を含むバリアントドメインモチーフの実施形態を図示する。特定の事例では、VEGF-A結合表面は、図10Bに示すように、7連子繰返しのc位置およびg位置で、例えば、らせん3の残基cおよび/またはgで、非極性アミノ酸残基である、追加的な非芳香族アミノ酸残基を含む。特定の事例では、VEGF-A結合表面は、7連子繰返しのc位置およびg位置で、例えば、らせん3のcおよび/またはg残基で、水素結合が可能な極性アミノ酸残基である、追加的な非芳香族アミノ酸残基を含む。本開示に基づいて、構造物のVEGF-A結合表面に位置していないGAドメインモチーフのアミノ酸残基のいくつかは、結果として生じる修飾化合物のVEGF-A結合活性に有害な影響を与えることなく、修飾されうることが理解される。
【0085】
式(I)の一部の実施形態では、[らせん2]は、次式の配列を含む。
ΛjxxΛjxΛj(配列番号143)
(II)
式中、各「Λ」は独立的にD-芳香族アミノ酸であり、各jは独立的に疎水性残基であり、各xは独立的にアミノ酸残基である。式(II)で使用が見出される当該芳香族アミノ酸には、限定されないが、h、f、yおよびw、ならびにその置換バージョンが含まれる。式(II)の一部の例では、第一のΛは、h、f、またはyである。第二のΛ残基は、アリール環、ヘテロアリール環、置換アリール環、または置換ヘテロアリール環(例えば、Arがアリールまたは置換アリールである、式-CH-Arの側鎖を有する残基)を
含む芳香族残基であってもよい。式(II)の一部の例では、第二のΛは、fもしくはy、またはその置換バージョンである。第二のΛ残基は、VEGF-Aタンパク質と相互作用するように、GAドメインモチーフ構造の結合表面上に構成されてもよく、例えば、図20および21に示すVEGF-Aの表面上の深いポケット内に突出する。式(II)の一部の例では、第二のΛは、fまたはその置換バージョンである。式(II)の一部の例では、第三のΛは、ヘテロアリール環または置換ヘテロアリール環を含む芳香族残基(例えば、VEGF-Aと水素結合することができる側鎖基を含む芳香族残基)である。式(II)の一部の例では、各jは、v、i、aおよびlから独立的に選択される。式(II)の一部の例では、第一のj残基は、バリンである。式(II)の一部の実施形態では、[らせん2]は、式:hv xxΛjxΛjの配列を含む。
【0086】
式(I)および(II)の一部の実施形態では、[らせん2]は、式(III)の配列を含む。
h*jxxf*jxh*j(配列番号151)
(III)
式中、
各h*は、独立的にヒスチジンまたはその類似体であり、
f*は、フェニルアラニンまたはその類似体であり、
各jは、独立的に疎水性残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0087】
式(III)の一部の実施形態では、[らせん2]は、式hvxxf*jxh*jの配列を含む。式(III)の残基f*は、VEGF-Aタンパク質と相互作用するように、GAドメインモチーフ構造の結合表面上に構成されてもよく、例えば、図21に示すVEGF-Aの表面上の深いポケット内に突出する。図20は、例示的化合物1.1.1(c21a)のらせん2の残基f31(フェニルアラニン、位置31)が標識され、VEGF-Aの表面上のポケット内に突出することが示されている、複合体のX線構造の広範な図を示す。図21は、VEGF-A結合界面のポケット内に突出するよう構成されるf31の拡大図を示す。フェニルアラニンフェニル環の原子とVEGF-Aの隣接残基との間で選択された距離は、オングストローム単位で示されている。結晶構造の分析は、f31が含むものと同じ深いポケット内に突出し、一部の事例では、VEGF-Aポケットとの望ましい疎水性接触を増大させるために、3らせんバンドル構造上のその位置で様々な芳香族残基が利用されうることを示す。特定の事例では、フェニルアラニン類似体は、フェニル環上に置換基を含む。式(III)の一部の例では、f*はフェニルアラニンである。式(III)の一部の例では、f*はフェニルアラニンの置換誘導体である。当該フェニルアラニン誘導体には、限定されないが、4-ハロゲン置換フェニルアラニン(例えば、4-クロロ、または4-フルオロ)、3-ハロゲン置換フェニルアラニン(例えば、クロロ、ブロモまたはフルオロ)、3,5-ハロゲン二置換フェニルアラニン(例えば、クロロまたはフルオロ)、3,4-ハロゲン二置換フェニルアラニン(例えば、クロロまたはフルオロ)、4-メチル置換フェニルアラニン)、4-トリフルオロメチル-フェニルアラニン、および4-エチル置換フェニルアラニンが含まれる。位置31のフェニルアラニン類似体を含む様々な化合物が調製され、活性であることを示した。
【0088】
図22および図25は、VEGF-A表面と接触する例示的化合物1.1.1(c21a)の残基h27(205)の拡大図を示す。結晶構造の分析は、様々な芳香族残基またはヒスチジン類似体が、3らせんバンドル構造上の位置27で利用されて、h27が有するものと同じ表面ポケットと接触し、一部の事例では、VEGF-A表面との望ましい接触を増大させることができることを示す。式(III)の一部の例では、第一のh*はヒスチジン、例えば、位置27の残基である。式(III)の一部の例では、第一および/または第二のh*は、ヒスチジン類似体(例えば、アルキル-シクロアルキル基を含む側鎖を有する残基、例えば-アルキル-シクロペンチルもしくはアルキル-シクロヘキシル、またはその置換バージョン)である。式(III)の一部の例では、第一のh*は、主にVEGFと疎水性接触することができる芳香族残基である。式(III)の一部の例では、第一のh*はfまたはyである。
【0089】
図22は、VEGF-A表面と接触する例示的化合物1.1.1(c21a)の残基h34(207)の拡大図を示す。複合体構造の分析は、様々なヒスチジン類似体が、位置34で耐容性があること、例えば、VEGF-Aの表面上の利用可能空間を占有できる、および/またはVEGF-Aの隣接残基に対するよりも強い水素結合(例えば、4.6オングストローム未満の長さ)を形成できる、置換または非置換のアリール環または複素環を含む類似体に耐容性があることを示している。式(III)の一部の例では、第二のh*はヒスチジン、例えば、位置34の残基である。式(III)の一部の事例では、第二のh*は、VEGFと水素結合することができる芳香族残基である。式(III)の一部の実施形態では、第二のh*は、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリール環を含む芳香族残基(例えば、VEGF-Aと水素結合することができる側鎖基を含む芳香族残基)である。
【0090】
式(II)および(III)の特定の実施形態では、h*27、f*31、およびh*34はそれぞれバリアント残基である。式(II)および(III)の特定の実施形態では、j28およびx29はそれぞれバリアント残基である。式(II)および(III)の特定の実施形態では、j28、x29およびx30はそれぞれバリアント残基である。式(II)および(III)の一部の例では、各jは、v、i、aおよびlから独立的に選択される。式(II)および(III)の一部の例では、第一のj残基は、バリンである。一部の事例では、式(II)および(III)の7連子繰返しレジスタは、b'a'gfedcbaである。
【0091】
式(III)の一部の実施形態では、[らせん2]は、3らせんバンドルの位置26から位置36までの、以下のらせんモチーフによって記述される。
26h*jxxf*jxh*jz36 (配列番号144)
(IV)
式中、各h*、f*、各jおよび各xは、上記に定義されるとおりであり、z26およびz36はそれぞれ独立的にらせん末端残基である。一部の事例では、らせん末端残基は、構造のらせん状残基とはみなされず、単に[らせん2]領域の末端および回転またはループ構造の始まりを定義するに過ぎないことが理解される。f*残基および各h*残基は、GAドメインモチーフ構造の結合表面上に構成されて、例えば、本明細書に記載されるように、標的VEGF-Aタンパク質と特異的に接触することができる。式(IV)の一部の実施形態では、[らせん2]は、式:z26hvxxf*jxh*jp36 (配列番号145)の配列を含む。
【0092】
「らせん末端残基」という用語は、類似アラニン残基に対してらせん構造を形成するための高い遊離エネルギーペナルティを有するアミノ酸残基を指す。一部の事例では、高い遊離エネルギーらせんペナルティは、らせん傾向値と呼ばれ、PaceおよびScholtzの方法による定義では0.5kcal/mol以上であり、値が高いと、ペナルティの増えることを示す(A Helix Propensity Scale Based on Experimental Studies of Peptides and Proteins, Biophysical Journal Volume 75 July 1998 422-427)。一部の事例では、らせん末端残基は、0.5以上(kcal/mol)、例えば、0.55以上、0.60以上、0.65以上、または0.70以上などの、らせん傾向値を有する天然起源の残基である。例えば、表1に示すように、プロリンは、3.16kcal/molのらせん傾向値を有し、グリシンは、1.00kcal/molのらせん傾向値を有する。非天然起源のらせん末端残基のらせん傾向値は、構造類似体である側鎖基を有する最も近い天然起源の残基の値を使用することによって推定されうる。式(IV)の一部の例では、らせん末端残基z26およびz36は、d、n、Gおよびpから独立的に選択される。式(IV)の一部の例では、らせん末端残基は、d、G、およびpから独立的に選択される。式(IV)の一部の例では、らせん末端残基はGおよびpから独立的に選択される。式(IV)の一部の例では、らせん末端残基z26およびz36はそれぞれpである。式(IV)の一部の例では、z36はpである。
天然起源のアミノ酸アルファらせん傾向
【表1】
*遊離エネルギーの推定差は、任意にゼロとして設定されるAlanineに対して、アルファらせん構成での残基当たりのkcal/molで推定される。高い数ほど(プラス値の遊離エネルギーが大きいほど)、より好ましくない。一部の事例では、隣接残基の同一性に応じて、これらの平均値からの逸脱が可能である。
【0093】
式(IV)の特定の実施形態では、z26は、フレームワーク残基、例えば、足場ドメインモチーフの残基に対応する残基である。式(IV)の特定の事例では、z26はバリアント残基であり、例えば、配列番号1~21のうち一つ以上など、足場ドメインモチーフの対応する残基とは異なる残基である。式(IV)の特定の例では、z36はバリアント残基である。式(IV)の特定の実施形態では、h*27、*31、およびh*34はそれぞれバリアント残基である。式(IV)の一部の実施形態では、j28およびx29はそれぞれバリアント残基である。式(IV)の一部の例では、j28、x29、およびx30はそれぞれバリアント残基である。式(IV)の特定の実施形態では、h*27は、h、y、およびfから選択される。式(IV)の特定の実施形態では、h*34は、h、yおよびfから選択される。
【0094】
化合物の一部の実施形態では、[らせん2]は、次式の配列によって定義される。
26hjjxfjhjp37 (配列番号93)
(V)
式中、各jは独立的に疎水性残基であり、各xはアミノ酸残基である。特定の例では、各jは、a、i、f、lおよびvから独立的に選択される残基である。特定の事例では、各jは、a、i、lおよびvから独立的に選択される残基である。特定の事例では、各jは、a、iおよびvから独立的に選択される残基である。式(V)の特定の事例では、j28はvである。式(V)の特定の例では、j29は、a、lまたはvである。式(V)の一部の実施形態では、j29はiである。式(V)の一部の例では、j32はiである。式(V)の特定の事例では、j36はaである。式(V)の特定の例では、x30は極性残基である。式(V)の一部の事例では、x33は極性残基である。式(V)の特定の実施形態では、×30および×33は独立的に、d、e、k、n、r、s、tおよびqから選択される。式(V)の特定の例では、x30およびx33は独立的に、sおよびnから選択される。式(V)の特定の事例では、x30はsである。式(V)の一部の事例では、×33はnである。式(V)の一部の実施形態では、[らせん2]は、式p26hvjxfjxhjp37(配列番号137)の配列を含む。
【0095】
化合物の一部の実施形態では、[らせん2]は、式(VI)の配列によって定義され、
26hvj2930fix33haz37(配列番号94)
(VI)
式中、
26は、d、pおよびGから選択され、
29は、fおよびiから選択され、
30は、nおよびsから選択され、
33は、nおよびsから選択され、
37は、pおよびGから選択される。
【0096】
式(VI)の一部の事例では、z26はpである。式(VI)の一部の例では、j29はiである。式(VI)の特定の事例では、x30はsである。式(VI)の一部の実施形態では、x33はnである。式(VI)の一部の例では、z37はpである。
【0097】
化合物の一部の例では、[らせん2]は、以下から選択される配列によって定義され、
a) phvj2930fix33hap (VII)(配列番号95)、式中、j29はfおよびiから選択され、x30およびx33は独立的に極性アミノ酸残基であり、
b)a)で定義される式(VII)の配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列、例えば、a)で定義される配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
a)で定義される式(VII)の配列の一部の例では、x30、およびx33は、n、s、d、e、およびkから独立的に選択される。a)で定義される式(VII)の配列の一部の例では、j29はiである。a)で定義される式(VII)の配列の一部の例では、x30はsまたはnである。a)で定義される式(VII)の配列の一部の例では、x33はnである。a)で定義される式(VII)の配列の一部の例では、j29はiであり、x30はsまたはnであり、x33はnである。
【0098】
化合物の一部の実施形態では、[らせん2]は、配列番号74の配列に対して66%以上の同一性を有し、例えば配列番号74の配列に対して77%以上の同一性または88%以上の同一性を有する。
【0099】
式(I)の一部の実施形態では、[らせん3]は、次式の配列を含む。
Λjxujxxuj(配列番号146)
(VIII)
式中、各「Λ」は独立的にD-芳香族アミノ酸であり、各jは独立的に疎水性残基であり、各uは独立的に非極性アミノ酸残基であり、各xは独立的にアミノ酸残基である。一部の事例では、式(VIII)の7連子繰返しレジスタは、edcbag'f'e'd'である。式(VIII)の一部の例では、Λは、ヘテロアリール環または置換ヘテロアリール環を含む芳香族残基(例えば、VEGF-Aと水素結合することができる側鎖基を含む芳香族残基)である。ある特定の例では、Λはヒスチジンまたはその置換バージョンである。図23は、例示的化合物のh40(210)の窒素原子と、VEGF-Aの隣接したTyr48との間での中強度の水素結合(2.9オングストローム)を示す。複合体構造の分析は、利用可能空間を占有し、VEGF-Aへの水素結合を保持または強化することができる類似体を含めて、様々なヒスチジン類似体が位置40で耐容性があることを示す。式(VIII)の一部の例では、各uは独立的に、H、低級アルキル、および置換された低級アルキルから選択される側鎖を有する非極性残基である。式(VIII)の一部の例では、各uは、Gおよびaから独立的に選択される。式(VIII)の一部の例では、第一のuはGである。式(VIII)の一部の例では、第二のuはaである。特定の例では、各jは、a、i、f、lおよびvから独立的に選択される残基である。特定の事例では、各jは、a、i、lおよびvから独立的に選択される残基である。式(VIII)の特定の実施形態では、j28はvである。式(VIII)の特定の実施形態では、j29は、a、lまたはvである。
【0100】
式(I)または(VIII)の一部の実施形態では、[らせん3]は式(IX)の配列を含む。
38xh*jxujxxujx49(配列番号96)
(IX)
式中、j、x、uは上記で定義されるとおりであり、h*はヒスチジンまたはその類似体である。一部の事例では、式(IX)の7連子繰返しレジスタは、gfedcbag'f'e'd'c'である。式(IX)の一部の例では、h*はヒスチジンである。式(IX)の
一部の例では、h*は、ヒスチジン類似体(例えば、アルキル-シクロアルキル基を含む側鎖を有する残基、例えば-アルキル-シクロペンチルもしくはアルキル-シクロヘキシル、またはその置換バージョン)である。式(IX)の一部の例では、h*は置換ヒスチジンである。式(XI)の一部の例では、u43はGである。式(IX)の一部の例では、u47はaである。式(IX)の一部の例では、x38はvである。式(IX)の一部の例では、x39はsである。式(IX)の特定の例では、各jは、a、i、f、lおよびvから独立的に選択される残基である。式(IX)の特定の実施形態では、j41は、vである。式(IX)の一部の例では、j44は、lである。式(IX)の一部の例では、j48はiである。式(IX)の一部の例では、x51は疎水性残基である。式(IX)の一部の例では、x51はaである。式(IX)の一部の例では、x42はnである。式(IX)の一部の例では、×45は、kまたはrである。式(IX)の一部の例では、×45はkである。式(IX)の一部の例では、x46はnである。式(IX)の一部の例では、x49はlである。式(IX)の一部の例では、らせん3は、残基のC末端配列でキャップされる。ある特定の例では、式(IX)のらせん3は、追加的な残基×50×51を含み、xはアミノ酸残基である。一部の事例では、x50はkまたはrである。式(IX)の一部の例では、x50はkであり、x51はaである。式(IX)の一部の例では、x50はeであり、x51はdである。式(IX)の一部の例では、x50はGであり、x51はrである。特定の例では、式(IX)のらせん3は、配列番号85~87のうち一つから選択されたC末端領域を含む。一部の事例では、[らせん3]は、gfedcbag'f'e'd'c'b'a'の7連子繰返しレジスタを含む。様々な切断(例えば、
1個、2個または3個の残基の切断)および伸長(例えば、1個、2個、3個、またはそれ以上の残基の伸長)は、例えば、図9Bに示すように、3らせんバンドル構造またはバリアントドメインを著しく破壊することなく、[らせん3]のC末端で使用されうることが理解される。
【0101】
式(IX)の一部の例では、[らせん3]は、以下から選択される配列によって定義される。
a) x3839hvx42Glx4546aix49 (X) (配列番号97)であって、式中、x38は、v、e、k、rから選択され、x39、x42およびx46は、極性アミノ酸残基から独立的に選択され、x45およびx49は、l、k、rおよびeから独立的に選択されるもの、および
b)a)で定義される式(X)の配列に対して75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、例えば、a)で定義される配列に対して83%以上の同一性または91%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
【0102】
式(IX)の一部の例では、[らせん3]は、以下から選択される配列によって定義される。
a) x3839hvx42Glx4546aix4950a(XI) (配列番号98)であって、式中、x38は、v、e、k、rから選択され、x39、x42、x46およびx50は、極性アミノ酸残基から独立的に選択され、x45およびx49は、l、k、rおよびeから独立的に選択されるもの、および
b) a)で定義される式(XI)の配列に対して78%以上の同一性を有するアミノ酸配列、例えば、a)で定義される配列に対して85%以上の同一性、または92%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
【0103】
式(X)~(XI)の一部の例では、x39、42、x46、およびx50は、n、s、d、e、およびkから独立的に選択される。式(X)~(XI)の一部の例では、x38はvである。式(X)~(XI)の一部の例では、x45はkである。式(X)~(XI)の一部の例では、x49はlである。式(X)~(XI)の一部の例では、x39はsである。式(X)~(XI)の一部の例では、x42はnである。式(X)~(XI)の一部の例では、x46はnである。式(XI)の一部の例では、x50はkである。
【0104】
化合物の一部の実施形態では、[らせん3]は、配列番号79の配列に対して65%以上の同一性を有し、例えば配列番号79の配列に対して、75%以上の同一性、83%以上の同一性、または91%以上の同一性を有する。化合物の一部の実施形態では、[らせん3]は、配列番号82の配列に対して70%以上の同一性を有し、例えば配列番号82の配列に対して、78%以上の同一性、85%以上の同一性、または92%以上の同一性を有する。
【0105】
式(I)では、[リンカー2]は、[らせん2]と[らせん3]を結合し、VEGF-Aの表面と随意に追加的に接触させることができるペプチドリンカーである。[リンカー2]は任意の好都合な長さとすることができる。一部の事例では、[リンカー2]は、[リンカー1]よりも短いリンカーである。[らせん2]に隣接する[リンカー2]のN末端残基は、例えば本明細書に記載されるように、らせん末端残基とみなすことができる。一部の事例では、[らせん3]に隣接する[リンカー2]のC末端残基は、例えば本明細書に記載されるように、らせん末端残基とみなすことができる。一部の事例では、[リンカー2]は、例えば3以下または2以下など、4以下のアミノ酸残基を含みうる。一部の実例では、[リンカー2]は、未変性GA足場ドメインの対応するらせん接続ループ領域と同じ数の残基を有する。式(I)の特定の実施形態では、[リンカー2]は、zxであり、式中、zは、らせん2末端残基であり、xは、アミノ酸残基である。[リンカー2]の一部の例では、zはpまたはGである。[リンカー2]の一部の例では、zはpである。[リンカー2]の一部の例では、xはVEGF-A接触残基である。[リンカー2]の一部の例では、xは芳香族残基である。[リンカー2]の一部の例では、xは、w残基もしくはh残基、またはその置換バージョンである。[リンカー2]の一部の例では、xはチロシンまたはその類似体である。特定の例では、[リンカー2]は、例えば、本明細書に記載されるように、修飾されたらせん2かららせん3のらせん間角度(すなわち、らせんの軸間の角度)を提供する、らせん末端プロリン残基を含む。図27を参照。
【0106】
チロシン類似体は、リンカー2の位置37に組み込まれてもよく、例えば、VEGF-Aの隣接残基とより緊密な接触(例えば、疎水性接触および/または水素結合)をすることができる置換または非置換のアルキル-アリールまたはアルキル-ヘテロアリール伸長側鎖基を含む類似体が組み込まれてもよい。図23は、化合物(1.1.1(c21a))とVEGF-Aとの間の結合界面を描写し、VEGF-A表面に向かって突出する残基y37(209)のフェノール酸素が、隣接するVEGF-A残基から6.5~7.2オングストローム離れていることを示す。一部の事例では、xは、次式の側鎖を有するチロシン類似体である。-(CH-Ar、式中、nは1、2、3、または4であり、Arはアリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールである。xの特定の例では、Arは置換フェニルである。xの特定の例では、Arは置換フェニルであり、nは2または3である。xの特定の例では、Arは、VEGF-Aの隣接残基に水素結合するように構成された、水素結合ドナーまたは受容体含有基で置換されたフェニルである。
【0107】
式(I)の一部の実施形態では、[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]は、VEGF-A結合表面を画定する式(XII)の配列を含む。
26h*jxxf*jxh*jzy*xxh*jxujxxujx49(配列番号99)
(XII)
式中、
各zは、らせん末端残基であり、
y*は、チロシンまたはその類似体であり、
各h*は、独立的にヒスチジンまたはその類似体であり、
f*は、フェニルアラニンまたはその類似体であり、
各uは独立的に、非極性残基である。
各jは、独立的に疎水性残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0108】
特定の例では、式(XII)のらせん3は、追加的な残基×50×51を含み、xはアミノ酸残基である。一部の事例では、x50はkまたはrである。拡張式(XII)の一部の例では、x50はkであり、x51はaである。拡張式(XII)の一部の事例では、x50はeであり、x51はdである。式(XII)の特定の例では、x50はGであり、x51はrである。特定の例では、式(XII)のらせん3は、配列番号85~87のうち一つから選択されたC末端領域を含む。拡張式(XII)の一部の実施形態では、x51はフレームワーク残基である。拡張式(XII)の一部の実施形態では、x51は、非極性残基(u)である。拡張式(XII)の一部の実施形態では、x51は疎水性残基である。
【0109】
化合物の一部の実施形態では、[らせん2]-[リンカー 2]-[らせん3]は、配列番号80の配列に対して70%以上の同一性を有する。例えば、配列番号80の配列に対して、75%以上の同一性、83%以上の同一性、87%以上の同一性、91%以上の同一性、または95%以上の同一性を有する。化合物の一部の実施形態では、[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]は、配列番号83の配列に対して70%以上の同一性を有し、例えば、配列番号83の配列に対して80%以上の同一性、84%以上の同一性、88%以上の同一性、92%以上の同一性、または96%以上の同一性を有する。
【0110】
式(I)の特定の例では、[リンカー1]は式の配列を含む。
z(x)x’z(配列番号147)
(XIII)
式中、x’は極性残基であり、各xはアミノ酸であり、nは1~6の整数であり、各zは独立的に、らせん末端残基であり、例えば、第一のzは、らせん1-末端残基であり、第二のzは、らせん2-末端残基である。特定の例では、x’は、VEGF-Aに水素結合することができる極性残基である。一部の事例では、x’は、d、e、n、q、オルニチン、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、およびシトルリンから選択される。特定の事例では、nは1、2または3である。式(XIII)の特定の例では、[リンカー1]は式(XIV)の配列を有し、
z(x)e*z(配列番号148)
(XIV)
式中、各xはアミノ酸であり、nは1、2、3であり、各zは、独立的にらせん末端残基であり、e*は、グルタミン酸またはその類似体である。式(XIII)および(XIV)のの一部の例では、各zは、Gおよびpから選択される。式(XIII)および(XIV)の一部の例では、nは2である。
【0111】
式(I)の特定の例では、[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]は、次式の配列を含む。
22xxe*zh*jxxf*jxh*jzy*xxh*jxujxxujxxx51(配列番号100)
(XV)
式中、
e*は、グルタミン酸またはその類似体であり、
各zは、独立的に、らせん末端残基であり、
y*は、チロシンまたはその類似体であり、
各jは、独立的に疎水性残基であり、
各uは、独立的に非極性アミノ酸残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
式(I)、(XII)および(XV)の一部の例では、[らせん2]は式(XVI)の配列によって定義される:
26hj28xxfj32xhj3536 (配列番号101)
(XVI)
式中、
26は、d、pおよびGから選択され、
36は、pおよびGから選択され、
28、j32およびj35は、それぞれ独立的に疎水性残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
特定の例では、j28、32、およびj35は、配列番号1~21から選択されるGA足場ドメインの対応する残基である。一部の事例では、j28、32、およびj35は、a、i、l、およびvから独立的に選択される。
【0112】
式(I)、(XII)、(XV)、および(XVI)の一部の例では、[らせん2]は、a)phvx2930fix33hap(XVII)(配列番号102)から選択される配列によって定義される。
式中、x29は、fおよびiから選択され、x30およびx33は、極性アミノ酸残基から独立的に選択され、
b)a)で定義される式(XVII)の配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列(例えば、90%以上の同一性)。
【0113】
式(XVI)-(XVII)の一部の例では、x30およびx33は、n、s、d、eおよびkから独立的に選択される。式(XVI)-(XVII)の一部の例では、x29はiである。式(XVI)-(XVII)の一部の例では、x30はsまたはnである。式(XVI)-(XVII)の一部の例では、x33はnである。式(XVI)~(XVII)の一部の例では、x29はiであり、x30はsまたはnであり、x33はnである。
【0114】
式(I)、(XII)および(XV)の一部の例では、[らせん3]は式(XVIII)の配列によって定義される:
xxhj41xuj44xxuj48xxx51(配列番号103)
(XVIII)
式中、
41、j44、およびj48は、それぞれ独立的に疎水性残基であり、
各uは、独立的に非極性アミノ酸残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0115】
一部の事例では、x50はkまたはrである。式(XVIII)の一部の例では、x50はkであり、x51はaである。式(XVIII)の一部の例では、x50はeであり、x51はdである。式(XVIII)の一部の例では、x50はGであり、x51はrである。特定の例では、式(XVIII)のらせん3は、配列番号85~87の一つから選択されるC末端領域を含む。式(XVIII)の一部の実施形態では、x51は、フレームワーク残基である。式(XVIII)の一部の実施形態では、x51は、非極性残基(u)である。式(XVIII)の一部の実施形態では、x51は疎水性残基である。式(XVIII)の一部の実施形態では、j41、j44およびj48は、a、i、lおよびvから独立的に選択される。式(XVIII)の一部の実施形態では、j41、j44およびj48は、配列番号1~21から選択されるGA足場ドメインの対応する残基である。
【0116】
式(I)、(XII)、および(XV)の一部の例では、[らせん3]は、 x3839hvx42Glx4546aix4950a (XIX)(配列番号104)から選択される配列によって定義される。
式中、
38は、v、e、k、rから選択され、
39、x42、x46、およびx50は、極性アミノ酸残基から独立的に選択され、
45およびx49は、l、k、rおよびeから独立的に選択され、
b)a)で定義される式(XIX)の配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列(例えば、90%以上の同一性)。
【0117】
式(XIX)の一部の例では、×39、×42、×46および×50は、n、s、d、eおよびkから独立的に選択される。式(XIX)の一部の例では、x38はvである。式(XIX)の一部の例では、x45はkである。式(XIX)の一部の例では、x49はlである。式(XIX)の一部の例では、x39はsである。式(XIX)の一部の例では、x42はnである。式(XIX)の一部の例では、x46はnである。式(XIX)の一部の例では、x50はkである。
【0118】
特定の事例では、[らせん1]は、l..a10ke.ai.elk..21のコンセンサス配列を含み、ここで、位置8、9、13、16、20および21の残基は、表3のGAドメイン配列の対応する残基のいずれか一つによって定義される。特定の事例では、[らせん1]は、llknakedaiaelkk20の配列に対して、66%以上の同一性、例えば、73%以上、80%以上、86%以上、または93%以上の同一性を有する15残基の配列からなる。
【0119】
化合物の一部の実施形態では、[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]は、配列番号81の配列に対して70%以上の同一性を有し、例えば、配列番号81の配列に対して、78%以上の同一性、82%以上の同一性、85%以上の同一性、89%以上の同一性、92%以上の同一性、または96%以上の同一性を有する。化合物の一部の実施形態では、[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]は、配列番号84の配列に対して70%以上の同一性を有し、例えば、配列番号84の配列に対して80%以上の同一性、83%以上の同一性、86%以上の同一性、90%以上の同一性、93%以上の同一性、または96%以上の同一性を有する。
【0120】
当該GAドメインの任意の好都合なN末端アルファらせんセグメントを、当該化合物での使用に適合させることができる。一部の事例では、[らせん1]は、およそ位置6からおよそ位置20までのN末端残基の配列を含む。図18Bは、3らせんバンドルを安定化させる化合物の分子内疎水性接触に著しい悪影響を及ぼすことなく、残基1~5が化合物から除去されうる、例示的化合物のN末端切断誘導体を示す。特定の場合、当該化合物は、本明細書に記載される番号付けシステム1~53と比較して、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個の残基など、6個以下の残基によってN末端で切断される。特定の例では、当該化合物の位置1~5の残基のうちの一つ以上は、欠失または修飾のいずれかであり、例えば、らせんキャッピング、水溶性の増加、または当該分子(例えば、本明細書に記載されるように)への連結などの、得られた化合物に望ましい特性を付与する。
【0121】
特定の事例では、[らせん1]は、l..a10ke.ai.elk... 21 (配列番号105)のコンセンサス配列を含み、ここで、位置8、9、13、16、20および21の残基は、配列番号2-21の配列の対応する残基のいずれか一つによって定義される。特定の事例では、[らせん1]は、llknakedaiaelkk20(配列番号74)の配列に対して、66%以上の同一性、例えば、73%以上、80%以上、86%以上、または93%以上の同一性を有する15残基の配列からなる。
【0122】
本明細書では、ペプチド性フレームワーク残基の基礎となる配列に含まれるバリアントアミノ酸残基の構成によって定義される、VEGF特異性決定モチーフ(SDM)を有するD-ペプチド性GAドメインが記載されている。本開示に基づいて、任意のSDMおよびペプチド性フレームワーク残基/配列のバリエーションもまた、本開示によって包含されることが理解される。一部の実施形態では、GAドメインは、50%以上、60%以上、65%以上、70%以上、例えば75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上の同一性を、本明細書に定義されるSDM残基および/またはペプチド性フレームワーク残基の実施形態のいずれか一つと共に有するVEGF SDMを含む。一部の実施形態では、GAドメインは、本明細書に定義されるSDM残基および/またはペプチド性フレームワーク残基の実施形態のうちのいずれか一つに対して1~5個の、例えば、1~4個、または1~3個のアミノ酸残基置換(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個の置換)を有するVEGF SDMを含む。特定の実施形態では、1~3個のアミノ酸残基置換は、表6に従って、類似、保存的、または高度に保存されたアミノ酸残基置換から選択される。
【0123】
VEGFに特異的に結合するD-ペプチド性化合物の一部の実施形態では、D-ペプチド性GAドメインは、以下のアミノ酸残基によって定義されるVEGF特異性決定モチーフ(SDM)を含み、
25phvisf--h34-p3637-s39 --G43---a47
(配列番号149)
式中、x37は、s、n、およびyから選択される。VEGF SDMの一部の実施形態では、x37はsである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x37はnである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x37はyである。
【0124】
一部の実施形態では、VEGF SDMは、以下の残基によってさらに定義される。
-----------------e25phvisf--h34-p363738sh --G43---a47(配列番号150)
式中、x37は、sおよびnから選択される。VEGF SDMの一部の実施形態では、x37はsである。VEGF SDMの一部の実施形態では、x37はnである。
【0125】
GAドメインの一部の実施形態では、らせん1(#6-21)は、ペプチド性フレームワーク配列:xknakedaiaelkka21(配列番号138)を含む。
式中、xは、l、v、およびiから選択され、xは、lおよびcから選択される。
【0126】
らせん1の一部の実施形態では、x6はlである。らせん1の一部の実施形態では、xはvである。らせん1の一部の実施形態では、xはiである。
【0127】
一部の実施形態では、GAドメインは、以下のN末端ペプチド性フレームワーク配列を含む。
qwxknakedaiaelkkaGit24(配列番号139)
式中、
は、t、y、f、i、i、pおよびrから選択され、
は、i、h、n、p、およびsから選択され、
は、d、i、およびvから選択され、
は、l、v、およびiから選択され、および
は、lおよびcから選択される。
【0128】
ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはtである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはyである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはfである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはiである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはpである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはrである。
【0129】
ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはiである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはhである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはnである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはpである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはsである。
【0130】
ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはdである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはiである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはvである。
【0131】
ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはlである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはvである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはiである。
【0132】
ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはlである。ペプチド性フレームワーク配列の一部の実施形態では、xはcである。
【0133】
一部の実施形態では、D-ペプチド性GAドメインは、C末端のペプチド性フレームワーク配列:ilkaha(配列番号140)を含む。
【0134】
一部の実施形態では、D-ペプチド性GAドメインは、以下の配列を含む。
qwxknakedaiaelkkagitephvisfinhapx3738shvnGlknailkaha53(配列番号141)
式中、
は、t、y、f、i、i、pおよびrから選択され、
は、i、h、n、p、およびsから選択され、
は、d、i、およびvから選択され、
は、l、v、およびiから選択され、
は、lおよびcから選択され、
37は、t、y、n、およびsから選択され、
38は、vおよびcから選択され、
39は、eおよびsから選択され、
40は、hおよびeから選択され、
43は、gおよびaから選択され、
47は、aおよびeから選択される。
一部の実施形態では、xはtである。一部の実施形態では、xはyである。一部の実施形態では、xはfである。一部の実施形態では、xはiである。一部の実施形態では、xはpである。一部の実施形態では、xはrである。一部の実施形態では、xはiである。一部の実施形態では、xはhである。一部の実施形態では、xはnである。一部の実施形態では、xはpである。一部の実施形態では、xはsである。一部の実施形態では、xはdである。一部の実施形態では、xはiである。一部の実施形態では、xはvである。一部の実施形態では、xはlである。一部の実施形態では、xはvである。一部の実施形態では、xはiである。一部の実施形態では、xはlである。一部の実施形態では、xはcである。一部の実施形態では、x37はtである。一部の実施形態では、x37はyである。一部の実施形態では、x37はnである。一部の実施形態では、x37はsである。一部の実施形態では、x38はvである。一部の実施形態では、x38はcである。一部の実施形態では、x39はeである。一部の実施形態では、x39はsである。一部の実施形態では、x40はhである。一部の実施形態では、x40はeである。一部の実施形態では、x43はgである。一部の実施形態では、x43はaである。一部の実施形態では、x47はaである。一部の実施形態では、x47はeである。
【0135】
一部の実施形態では、D-ペプチド性化合物は、化合物11055、979102、および979107-979110(配列番号108~113)のうちの一つから選択される配列を含む。
【0136】
一部の実施形態では、D-ペプチド性化合物は、化合物11055、979102、および979107-979110(配列番号108~113)のうちの一つと80%以上(例えば、90%以上)の同一性を有する配列を含む。
【0137】
一部の実施形態では、D-ペプチド性化合物は、化合物11055、979102および979107-979110(配列番号108~113)のうちの一つに対する、1~10個のアミノ酸残基置換(例えば、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個であって、1個または2個などのアミノ酸残基置換)を有する配列を含む。特定の実施形態では、1~10個のアミノ酸残基置換は、例えば、表6に従って、類似の保存的で高度に保存されたアミノ酸残基置換から選択される。
【0138】
GA足場ドメイン
本開示に基づいて、構造物のVEGF-A結合表面に位置していないGAドメインモチーフのアミノ酸残基のいくつかは、結果として生じる修飾化合物のVEGF-A結合活性に有害な影響を与えることなく、修飾されうることが理解される。したがって、任意の好都合なアミノ酸を当該化合物に組み込み、所望の特性を付与することができ、これには、限定されないが、水溶性の増大、化学合成の容易さ、コスト、生体共役反応部位、安定性、pI、凝集、非特異的結合の減少、および/または第二の標的タンパク質への特異的結合が含まれる。変異の位置は、VEGF-A結合GAドメインモチーフの構造への任意の破壊、または標的VEGF-Aタンパク質への特異的結合を最小化するように、例えば、VEGF-A結合表面から構造の対向する側上の位置を選択することによって、選択されうる。一部の実例では、化合物は、標的VEGF-Aタンパク質への結合表面の一部ではない位置で、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上など、2個以上の表面変異を含む。
【0139】
例えば、一部の事例では、らせん1のc残基、f残基、およびb残基、ならびにらせん2および3のc残基、およびf残基のうちの一つ以上は、これらの残基がVEGF-A結合および溶媒曝露に直接関与しないため、修飾することができる(図3Bの7連子モデルを参照)。特定の事例では、バリアントアミノ酸残基は、例えば、既知の天然起源タンパク質における、類似位置での既知のアミノ酸の発生率に従って、特定の7連子繰返し位置で当該化合物に組み込むために選択されうる。表2は、バリアントアミノ酸残基、例えば、5%以上、10%以上、またはさらにそれ以上など、2%以上の発生率を有するアミノ酸残基を選択するために利用されうる、三本鎖コイルドコイルの7連子位置に対するアミノ酸発生率のリストを提供する。一部の事例では、表面変異は、残基を極性残基に変異させること、例えば、化合物に望ましい溶解性を付与するものを含む。一部の事例では、表面変異は、残基を荷電残基に変異させること、例えば、化合物に望ましい溶解性を付与するものを含む。一部の事例では、表面変異は、残基を塩基性残基(例えば、kまたはh)に変異させることを含む。一部の事例では、表面変異は、残基を酸性残基(例えば、dまたはe)に変異させること、例えば、化合物に望ましいpIを付与するものを含む。
三本鎖コイルドコイルの7連子位置でのアミノ酸発生率*
【表2】
* Mは、特定のアミノ酸が7連子位置で発見された総回数である。Nは、その7連子位置でカウントされる残基の総数である。DeGrad et al.の表3を参照。
【0140】
一部の事例では、当該ペプチド性化合物は、GA足場ドメインに基づいてファージディスプレイライブラリから選択され、(例えば、追加的な親和性成熟および/または点変異を介して)GA足場ドメインと統合されたいくつかのバリアントアミノ酸を含むように、さらに開発される。バリアントモチーフは、バリアントアミノ酸を含み、当該化合物のVEGF-A結合表面を画定することができる。配列番号25は、例示的化合物1.1.1(c21a)のバリアントモチーフを示す。当該化合物のVEGF-A結合表面の態様は、上記に記載されている。バリアントドメインが組み込まれる3らせんバンドル足場構造を提供するために、様々な基礎となるGA足場ドメイン配列が当該化合物において利用されうることが理解される。当該化合物の構造は、バリアントドメインとフレームワークドメインの組み合わせによって画定されうる。当該化合物の配列は、バリアント残基とフレームワーク残基の組み合わせによって画定されうる。したがって、一部の例では、構造または配列モチーフのフレームワーク残基は、足場ドメイン構造または配列の対応する残基によって画定されうる。
【0141】
例えば、足場SCF32(配列番号2)および化合物1.1.1(c21a)(配列番号24)の比較によって、バリアントモチーフ(配列番号25)およびフレームワークドメイン(配列番号26)がもたらされる。バリアントモチーフの態様を本明細書に記載する。様々な修飾が、3らせんバンドル構造またはVEGF-A結合表面に有意な悪影響を及ぼすことなく、フレームワークドメインに組み込まれうることが理解される。図3および図4は、当該化合物の7連子繰返し構造モデル上の例示的な配列およびモチーフのアライメントを示す。溶媒曝露され、疎水性コア相互作用に関与しないらせん1の残基は、限定されないが、極性残基を含む任意の好都合なアミノ酸残基でもよい。一部の事例では、当該化合物のらせん1のb残基、c残基、および/またはf残基(例えば、図6B参照)は、化合物のVEGF-A結合活性に悪影響を及ぼすことなく変化させることができ、特定の事例では、望ましい特性を提供する。一部の事例では、らせん1のe残基およびg残基も変化させることができる。特定の実施形態では、らせん2および/またはらせん3のf残基は、化合物のVEGF-A結合活性に悪影響を及ぼすことなく変化させることができ、特定の事例では、望ましい特性を提供する。特定の例では、切断または伸長などのC末端修飾が、らせん3に含まれてもよい(例えば、らせん3の位置50~53に位置する残基で、図10Aを参照)。当該化合物は、配列番号2~21のうち一つによって定義されるフレームワークドメインモチーフを有しうる。一部の事例では、化合物のフレームワークドメインモチーフは、配列番号1により画定される。
【0142】
一部の事例では、GA足場ドメインの疎水性コア(例えば、図7Bに示した7連子繰返しモデルのa残基およびd残基)の修飾は、これらの残基が、3らせんバンドルを安定化させる、らせん‐らせん疎水性接触に関与するため、あまり望ましくない。しかしながら、様々な非極性残基または疎水性残基には、当該化合物の3らせんバンドルの疎水性コアでの用途を見出すことができる。図9A-9Cは、例示的化合物の配列および構造を示しており、らせん間疎水性相互作用を形成することができる、7連子繰返しモデルのa残基およびd残基の構成は、赤色で示されている。特定の例では、らせん領域の末端に位置するらせん3の7連子繰返しのC末端e残基は、例えば、らせんキャッピング、らせん切断、または連結基への伸長を提供するために修飾されうる。特定の例では、らせん領域の末端に位置する、1個、2個またはそれ以上のらせん1の7連子繰返し(例えば、図10AのN末端残基)は、例えば、らせんキャッピング、らせん切断、または連結基への伸長を提供するために修飾されてもよい。特定の実施形態では、当該化合物のa残基およびd残基は、配列番号1~21のいずれかの対応する疎水性コアから選択されてもよい。
【0143】
特定の例では、[らせん2]のaおよびd残基はそれぞれ、当該化合物の修飾された3らせんバンドル構造に安定性を付与することができる残基である。特定の事例では、当該化合物のa残基およびd残基のうちの一つ以上、例えば、[らせん2]の位置28、32および35で、部分的に化合物の疎水性コアを画定する分子内接触を提供する。[らせん2]の特定の実施形態では、各aおよびd残基は、独立的に疎水性残基である。[らせん2]の特定の事例では、各aおよびd残基は、a、i、f、m、lおよびvから選択される。[らせん2]の一部の実施形態では、各aおよびd残基は、a、i、f、lおよびvから選択される。[らせん2]の特定の例では、各aおよびd残基は、a、i、lおよびvから選択される。[らせん2]の一部の例では、位置32および35でのaおよびd残基は、足場ドメインの一部である(例えば、足場ドメインモチーフの対応する残基と同じ同一性を有するフレームワーク残基)。
【0144】
特定の例では、VEGF-Aと接触する構造のg-g面に最も近い[らせん2]および[らせん3]の「d」残基は、タンパク質と接触することができる。このような場合、VEGF-Aが接触する「d」残基を、境界残基と呼ぶことができる。当然のことながら、
【0145】
表3は、例示的な足場ドメイン、例示的化合物、および例示的な当該化合物領域の配列のリストを示す。式(I)~(XIX)の一部の実施形態では、残基は、表3に記載される配列番号22~71のうちの一つの同じ位置に位置する残基に対応する。式(I)の特定の実施形態では、化合物は、配列番号22-71の一つに対して、88%以上、90%以上、92%以上、94%以上、96%以上、または98%以上の同一性など、85%以上の同一性を有する残基の配列を含む。一部の事例では、配列同一性の比較は、同じ長さ、例えば、48残基、49残基、50残基、51残基、52残基、または53残基の長さを有する配列領域に基づく。これらの当該化合物は、標的VEGF-Aタンパク質との接触に関与しないGAドメインモチーフの表面位置に残基を組み込むようにさらに変異させることができる。残基は、結果的な修飾化合物に望ましい特性(例えば、本明細書に記載されるように)を付与するように選択することができる。
足場および当該化合物の配列
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
VEGFに結合する例示的なD-ペプチド性ZドメインおよびGAドメイン
【表4-1】
【表4-2】
例示的な多価VEGF結合D-ペプチド性化合物
【表5-1】
【表5-2】
【0146】
本開示の態様は、化合物(例えば、本明細書に記載されるような)、その塩(例えば、薬学的に許容可能な塩)、および/またはその溶媒和化合物もしくは水和物形態を含む。本開示によって、あらゆる順列の塩、溶媒和物、および水和物が包含されることが意図されていることが理解される。一部の実施形態では、当該化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で提供される。アミンおよび/または窒素含有ヘテロリル基を含有する化合物は、本質的におそらく塩基性であり、したがって、任意の数の無機酸および有機酸と反応して、薬学的に許容可能な酸付加塩を形成しうる。こうした塩を形成するために一般的に用いられる酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、ならびにpara-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸塩、para-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸などの有機酸のほか、関連する無機酸および有機酸が含まれる。したがって、このような薬学的に許容可能な塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素、リン酸二水素、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-l,4-ジオエート、ヘキシン-l,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、馬尿酸塩、グルコン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびこれに類する塩を含む。特定の特定の実施形態では、薬学的に許容可能な酸付加塩は、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されるもの、ならびにフマル酸およびマレイン酸などの有機酸で形成されるものを含む。
【0147】
化合物の特性
当該多価化合物のバリアントD-ペプチド性ドメインは、高い機能的親和性(例えば、平衡解離定数(K))および特異性(例えば、300nM以下であって、100nM以下、30nM以下、10nM以下、3nM以下、1nM以下、300pM以下、さらにはそれ以下など)のタンパク質-タンパク質相互作用を形成するために適切なサイズの結合表面積を画定しうる。バリアントD-ペプチド性ドメインはそれぞれ、600~1800Å2、例えば800~1600Å、1000~1400Å、1100~1300Å、または約1200Åの表面積を含んでもよい。
【0148】
一部の事例では、多価D-ペプチド性化合物は、標的タンパク質の第一および第二の-ペプチド性ドメインのみのそれぞれの結合親和性よりも、例えば30倍以上、100倍以上、300倍以上、1000倍以上、またはそれ以上など、10倍以上強い結合親和性(KD)で標的タンパク質に特異的に結合する。標的タンパク質のペプチド性化合物の親和性は、SPR結合アッセイまたはELISA結合アッセイELISA結合アッセイ(例えば、本明細書に記載されるように)を使用するなど、任意の好都合な方法によって決定することができる。特定の事例では、多価D-ペプチド性化合物は、1nM以下、300pM以下、100pM以下など、3nM以下の標的タンパク質に対する結合親和性(K)を有し、標的タンパク質に対する第一および第二のD-ペプチド性ドメイン単独での結合親和性は、それぞれ独立的に100nM以上、例えば200nM以上、300nM以上、400nM以上、500nM以上、または1uM以上である。多価D-ペプチド性化合物全体の有効結合親和性は、望ましい生物学的効力および/またはインビボ半減期などの他の特性を提供するように最適化されうる。標的結合部位に対して特定の個々の親和性を有する個々のD-ペプチド性ドメインを選択することによって、必要に応じて、多価D-ペプチド性化合物の全体的機能的親和性を最適化することができる。
【0149】
化合物の効力は、本明細書の実験セクションに記載されるIC50を測定するELISAアッセイを介してなど、任意の好都合なアッセイを使用して評価することができる。一部の実例では、当該多価化合物は、第一および第二のD-ペプチド性ドメインのみの各々の効力よりも、少なくとも30倍、少なくとも100倍、少なくとも300倍、少なくとも1000倍など、少なくとも10倍は強力である標的タンパク質に対するインビトロ拮抗活性を有する。
【0150】
特定の実施形態では、当該ペプチド性化合物は、例えば、SPR結合アッセイまたはELISAアッセイによって決定されるような、高い親和性でVEGF-A標的タンパク質に特異的に結合する。当該化合物は、1uM以下のVEGF-Aに対する親和性を示してもよく、例えば、300nM以下、100nM以下、30nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下、1nM以下、600pM以下、300pM以下、またはさらにそれ以下である。
【0151】
当該D-ペプチド性化合物は、例えば、VEGF-Aタンパク質に対する化合物の親和性を、参照タンパク質(例えば、アルブミンタンパク質)と比較して、VEGF-Aに対して、例えば、30:1以上、100:1以上、300:1以上、1000:1以上、またはさらにそれ以上など、5:1以上、10:1以上の特異性を示しうる。一部の事例では、特異性は、例えば、10以上、10以上、10以上、またはさらにそれ以上など、10以上の倍率での結合親和性の差異でもよい。一部の事例では、ペプチド性化合物は、タンパク質フォールディング、プロテアーゼ安定性、熱安定性、医薬製剤との適合性など、任意の望ましい特性に対して最適化されてもよい。任意の好都合な方法、例えば、構造活性相関(SAR)解析、親和性成熟法、またはファージディスプレイ法などを使用して、D-ペプチド性化合物を選択してもよい。
【0152】
また、高い熱安定性を有するD-ペプチド性化合物も提供される。一部の事例では、高い熱安定性を有する化合物は、60℃以上、70℃以上、80℃以上、さらには90℃以上など、50℃以上の融解温度を有する。また、高いプロテアーゼ安定性を有するD-ペプチド性化合物も提供されている。当該D-ペプチド性化合物は、プロテアーゼに対して耐性があり、長い血清半減期および/または唾液半減期を有することができる。また、インビボでの長い半減期を有するD-ペプチド性化合物も提供されている。本明細書で使用される場合、「半減期」は、時間ゼロでの元の効力、活性、および有効濃度の半分など、化合物の効力、活性、または有効濃度が元のレベルの半分になる測定されたパラメータについて必要な時間を指す。したがって、ポリペプチド分子の効力、活性、または有効濃度などのパラメータは、概して経時的に測定される。本明細書の目的で、半減期は、インビトロまたはインビボで測定することができる。一部の事例では、ペプチド性化合物は、2時間以上、6時間以上、12時間以上、1日以上、2日以上、7日以上、またはそれ以上の長さなど、1時間以上の半減期を有する。ヒト血液中の安定性は、例えば、化合物をヒトEDTA血液中または血清中で指定された時間インキュベートし、混合物のサンプルを急冷して、化合物の量および/または活性について、例えばHPLC-MSによって、例えば本明細書に記載される活性アッセイによって、試料を分析することにより、任意の好都合な方法によって測定されうる。
【0153】
また、例えば、非免疫原性など、低い免疫原性を有するD-ペプチド性化合物も提供されている。特定の実施形態では、D-ペプチド性化合物は、L-ペプチド性化合物と比較して、低い免疫原性を有する。ある特定の実施形態では、D-ペプチド性化合物は、Dintzis et al., ”A Comparison of the Immunogenicity of a Pair of Enantiomeric Proteins” Proteins: Structure, Function, and Genetics 16:306-308
(1993)に記載のあるものなど、免疫原性アッセイで、L-ペプチド性化合物と比較して、免疫原性が10%以下、20%以下、30%以下、40%以下、50%以下、70%以下、または90%以下である。
【0154】
また、親和性成熟によるVEGF-Aに対する結合親和性および特異性について最適化されたD-ペプチド性化合物、例えば、VEGF-Aに結合する親化合物に基づく第二世代のD-ペプチド性化合物も提供される。一部の実施形態では、当該化合物の親和性成熟は、バリアントアミノ酸位置の一部分を固定位置として保持することを含むことができ、残りのバリアントアミノ酸位置は、各位置で最適なアミノ酸を選択するように変化する。親D-ペプチド性化合物は、親和性成熟化合物用の足場として選択されてもよい。一部の事例では、親のバリアントアミノ酸位置の限定されたサブセットでの変異を含む多数の親和性成熟化合物が調製され、一方で、残りのバリアント位置は固定位置として保持される。変異の位置は、足場配列を通してタイル状に並べられて、全てのバリアント位置の変異が表現され、多様な範囲のアミノ酸が全ての位置(例えば、20個の天然起源アミノ酸すべて)で置換されるように、一連の化合物が生成されてもよい。一つ以上のアミノ酸の欠失または挿入を含む変異が、親和性成熟化合物のバリアント位置に含まれてもよい。親和性成熟化合物は、例えば、ファージディスプレイライブラリスクリーニングなどの任意の好都合な方法を使用して調製・スクリーニングされて、例えば、標的分子に対する結合親和性の増加、タンパク質フォールディング、プロテアーゼ安定性、熱安定性、医薬製剤との適合性などの改善された特性を有する第二世代化合物を特定することができる。
【0155】
一部の実施形態では、当該化合物の親和性成熟は、親化合物の可変領域中のバリアントアミノ酸位置のほとんどまたは全てを固定位置として保持すること、およびこれらの可変領域に隣接した位置に隣接的な変異を導入することを含みうる。そのような変異は、元のGA足場ドメイン内の、それまで固定位置であると考えられていた親化合物内の位置に導入されうる。こうした変異は、タンパク質フォールディング、プロテアーゼ安定性、熱安定性、医薬製剤との適合性など、任意の望ましい特性に対して化合物バリアントを最適化するために使用されうる。
【0156】
本開示の態様は、化合物(例えば、本明細書に記載されるような)、その塩(例えば、薬学的に許容可能な塩)、および/またはその溶媒和物、水和物および/またはプロドラッグ形態を含む。塩、溶媒和物、水和物、およびプロドラッグのすべての配列が、本開示によって包含されることを意味することが理解される。
【0157】
一部の実施形態では、当該化合物、またはそのプロドラッグ形態は、薬学的に許容可能な塩の形態で提供される。アミンまたは窒素含有ヘテロリル基を含有する化合物は、本質的におそらく塩基性であり、したがって、任意の数の無機酸および有機酸と反応して、薬学的に許容可能な酸付加塩を形成しうる。こうした塩を形成するために一般的に用いられる酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、ならびにpara-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸塩、para-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、および酢酸などの有機酸のほか、関連する無機酸および有機酸が含まれる。したがって、このような薬学的に許容可能な塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素、リン酸二水素、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-l,4-ジオエート、ヘキシン-l,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、馬尿酸塩、グルコン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびこれに類する塩を含む。特定の特定の実施形態では、薬学的に許容可能な酸付加塩は、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸で形成されるもの、ならびにフマル酸およびマレイン酸などの有機酸で形成されるものを含む。
【0158】
多量体化合物
任意の好都合なD-ペプチド性化合物(例えば、本明細書に記載される通り)は、多量体化されて、D-ペプチド性化合物の多量体を提供しうる。特定の実施形態では、多量体は、2個(例えば、二量体)、3個(例えば、三量体)、または4個以上の化合物(例えば、四量体またはデンドリマーなど)などの二つ以上のD-ペプチド性化合物を含む。一部の事例では、多量体は式によって記述される:
Y-(GA)
式中、Yは多価連結基であり、nは1より大きい整数であり、GAは、GAドメインモチーフ(例えば、本明細書に記載される通り)を含むD-ペプチド性化合物である。特定の事例では、nは2である。特定の事例では、nは3である。
【0159】
特定の事例では、多量体は式のうちの一つの二量体である:
【化2】
式中、各GAは独立的に、D-ペプチド性化合物であり(例えば、本明細書に記載されるように)、Yは、化合物のN末端(N-GA)またはC末端(GA-C)に接続されたリンカーである。特定の事例では、二量体は、各々がVEGF-Aに特異的に結合する二つの同一のGAドメインモチーフのホモ二量体である。特定の例では、二量体はヘテロ二量体である。ヘテロ二量体は、各々、VEGF-Aに特異的に結合する二つの別個のGAドメインモチーフの二量体、または当該D-ペプチド性化合物と第二のD-ペプチド性結合ドメインの二量体とすることができる。
【0160】
任意の好都合な連結基を、当該マルチマーで利用することができる。「リンカー」、「連結」、および「連結基」という用語は、互換的に使用され、二つ以上の化合物を共有結合する連結部分を指す。一部の事例では、リンカーは二価である。特定の事例では、リンカーは分岐または三価の連結基である。一部の事例では、リンカーは、長さが200原子以下(例えば、100原子以下、80原子以下、60原子以下、50原子以下、40原子以下、30原子以下、またはさらには20原子以下)の直鎖または分岐の骨格を有する。連結部分は、二つの基、または長さ1~200原子、例えば、長さ約1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、100、150、または200個の炭素原子の直鎖または分岐鎖を結合する共有結合であってもよく、リンカーは、直鎖、分岐鎖、環状または単一の原子であってもよい。特定の事例では、リンカー骨格の1個、2個、3個、4個、または5個以上の炭素原子が、硫黄、窒素、または酸素ヘテロ原子で任意に置換されてもよい。ある特定の例では、リンカーがPEG基を含む場合、リンカー骨格のそのセグメントの3原子毎に酸素で置換される。骨格原子間の結合は、飽和または不飽和であってもよく、通常、1個、2個、または3個を超えないの不飽和結合がリンカー骨格中に存在する。リンカーは、一つ以上の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を含みうる。リンカーは、限定されないが、オリゴ(エチレングリコール)、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、アミド、炭酸塩、カルバメート、三級アミン、アルキルであって、直鎖または分岐状であってもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、nブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)などを含みうる。リンカー骨格は、環状基、例えば、アリール基、複素環基、またはシクロアルキル基を含んでもよく、ここで、環状基の2個以上の原子、例えば、2個、3個、または4個の原子が骨格中に含まれる。リンカーは、切断可能であっても、または切断不能であってもよい。リンカーは、例えば、残基の連結配列などのペプチドであってもよい。
【0161】
Yは、限定されないが、アミノ酸残基、PEG、修飾PEG(例えば、-NH(CHO[(CHO](CHCO-連結基(式中、mは2~6であり、pは1~6であり、nは1~50である)、C2-C12アルキルリンカー、-CO-CH2CH2CO単位、およびその組合せ(例えば、アミド結合、スルホンアミド結合、カルバメート、エーテル結合、エステル結合、または-NH-など、官能基を介して連結)を含む、任意の好都合な基またはリンカー単位を含むことができる。一部の実例では、Yはペプチド性である。一部の実施形態では、Yは、-(L1)a-(L2)b-(L3)c-(L4)d-(L5)e-を含むリンカーであり、L1、L2、L3、L4、およびL5はそれぞれリンカー単位であり、a、b、c、dおよびeはそれぞれ独立的に0または1であり、a、b、c、dおよびeの総和は1~5である。本明細書に記載される多量体化合物に示されるように、他のリンカーも可能である。
【0162】
一部の実例では、Yは、任意の好都合な連結ケミストリーを使用してD-ペプチド性化合物に接続される修飾PEGリンカーを含む。PEGは、ポリエチレングリコールまたは修飾ポリエチレングリコールである。修飾PEGとは、末端の一方もしくは両方が、例えば、別の結合基部分、またはペプチド性化合物の末端もしくは側鎖への共役に適した化学選択官能基を含むように修飾される、ポリエチレングリコール、または任意の好都合な長さを意味する。表9および実施例のセクションでは、化合物のN末端またはC末端のいずれかを介して接続される化合物1.1.1(c21a)のいくつかの例示的なホモ二量体を記載する。D-ペプチド性化合物は、GAドメインモチーフのN末端および/またはC末端で修飾されて、システインまたはリジンなどのY基に連結するための、特定の連鎖または連結ケミストリーを提供することができる一つ以上の追加的なアミノ酸残基を含みうる。
【0163】
連結基を介して当該ペプチド性化合物を連結する際に利用されうる化学選択的反応性官能基は、限定されないが、アミノ基(例えば、N末端アミノ基またはリジン側鎖基)、アジド基、アルキニル基、ホスフィン基、チオール(例えば、システイン残基)、C末端チオエステル、アリールアジド、マレイミド、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、ヒドラジド、PFP-エステル、ヒドロキシメチルホスフィン、ソラレン、イミドエステル、ピリジルジスルフィド、イソシアン酸塩、アミノオキシ-、アルデヒド、ケト、クロロアセチル、ブロモアセチル、およびビニルスルホンを含む。
【0164】
任意の好都合な多価リンカーが、当該多量体に利用されうる。多価とは、リンカーが、例えば本明細書に記載されるように、当該化合物への付着に適した二つ以上の末端基を含むことを意味する。一部の事例では、多価リンカーは二価または三価である。一部の実例では、多価リンカーYはデンドリマー足場である。任意の好都合なデンドリマー足場が、当該多量体で使用するために適合されうる。デンドリマー足場は、少なくとも一つの分岐点と、オプションのリンカーを介してGAドメインモチーフのN末端またはC末端に接続するために適切な二つ以上の末端とを含む分岐分子である。デンドリマー足場は、二つ以上のGAドメインモチーフの望ましい空間配置を提供するように選択されてもよい。一部の事例では、二つ以上のGAドメインモチーフの空間配置は、標的タンパク質に対する望ましい結合親和性およびアビディティを提供するように選択される。図17は、二つのVEGF-A分子と二つの化合物を含む複合体を含む、化合物1.1.1(c21a)のX線結晶構造を示す。図示した構造の図では、N末端(約60オングストローム)とC末端(約70オングストローム)との間の距離は、点線で示されている。一部の事例では、二量体は、約60オングストローム以上の長さのN-N結合Y基を含む。一部の事例では、二量体は、約70オングストローム以上の長さのC-C連結Y基を含む。
【0165】
一部の事例では、D-ペプチド性化合物はそれぞれ独立的に、特異的結合部分(例えば、ビオチンまたはペプチドタグ)を含み、ここで、D-ペプチド性化合物は、特異的結合部分を特異的に結合する多価結合部分(例えば、ストレプトアビジン、アビジンまたは抗体)を介して互いに結合することができる。一部の実施形態では、二つ以上のD-ペプチド性化合物は、例えば、上述のように、各々がビオチン部分である特異的結合部分を含む。特定の実施形態では、特異的結合部分は、任意のリンカーを介して、化合物のN末端またはC末端のいずれかに結合される末端ビオチン部分である。特定の事例では、末端ビオチン部分は、ビオチン-(Gly)-であり、式中、nは1~6またはビオチン-Ahx-(Ahx=6-アミノヘキサン酸残基)である。
【0166】
修飾化合物
任意の好都合な当該の分子または部分は、当該D-ペプチド性化合物に結合されてもよい。当該分子は、ペプチド性または非ペプチド性、天然起源または合成であってもよい。当該化合物と併用するのに適した当該分子には、限定されないが、追加的なタンパク質ドメイン、ポリペプチドまたはアミノ酸残基、ペプチドタグ、特異的結合部分、ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー部分、炭水化物、デキストランまたはポリアクリレート、リンカー、半減期延長部分、薬剤、毒素、検出可能標識および固体支持体が含まれる。一部の事例では、当該分子は、結果として生じるペプチド性化合物に、限定されないが、水溶性の増大、化学合成の容易さ、費用、生体共役反応部位、安定性、等電点(pI)、凝集、非特異的結合の減少、および/または本明細書に記載される第二の標的タンパク質への特異的結合など(例えば、本明細書に記載したように)を含む、強化および/または修飾された特性および機能を付与しうる。
【0167】
本明細書に記載されるVEGF-A結合GAドメインモチーフ配列のいずれか一つの一部の実施形態では、モチーフは、配列のN末端および/またはC末端に、例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、またはさらにそれ以上の追加的な残基など、一つ以上の追加的な残基を含むように伸長されてもよい。こうした追加的な残基は、VEGF-A結合相互作用を提供しないが、GAドメインモチーフの一部とみなされうる。任意の好都合な残基は、VEGF-A結合GAドメインモチーフのN末端および/またはC末端に含められて、水溶性基、二量体化または多量体化のための連鎖、標識または特異的結合部分と結合するための連鎖など、望ましい特性または基を提供しうる。
【0168】
一部の事例では、当該修飾化合物は次式で描写される。
X-L-Z
式中、XはVEGF-A結合GAドメインモチーフ(例えば、本明細書に記載されるように)であり、Lは任意の連結基であり、Zは当該分子であり、任意の好都合な位置でXに結合される(例えば、N末端、C末端、または標的への結合に関与しない表面残基の側鎖を介して)。
【0169】
D-ペプチド性化合物は、一つ以上の当該分子、例えば、N末端部分および/またはC末端部分を含みうる。一部の実例では、当該分子は、N末端残基のアルファ-アミノ基を介して共有結合されるか、またはC末端残基のアルファ-カルボン酸基に共有結合される。他の実例では、当該分子は、残基の側鎖基を介して(例えば、c、k、dまたはe残基を介して)モチーフに付加される。
【0170】
当該分子は、ポリペプチドまたはタンパク質ドメインを含みうる。当該ポリペプチドおよびタンパク質ドメインには、限定されないが、gDタグ、c-Mycエピトープ、FLAGタグ、Hisタグ、蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ベータ-ガラクトシダーゼタンパク質、GST、アルブミン、免疫グロブリン、Fcドメインまたは類似の抗体様断片、ロイシンジッパーモチーフ、コイルドコイルドメイン、疎水性領域、親水性領域、二つ以上の多量体形成ドメインの間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールを含むポリペプチド、「空洞への隆起」ドメインと、ベータラクトグロブリン、またはその断片が含まれる。
【0171】
当該分子は、半減期延長部分を含みうる。「半減期延長部分」という用語は、当該化合物に共有結合または共役結合された、薬学的に許容可能な部分、ドメイン、または「ビヒクル」を指し、非共役結合形態の当該化合物と比較して、当該化合物のインビボでのタンパク質分解または他の活性低減化学修飾を防止または緩和する、半減期または他の薬物動態特性を増加させる(例えば、吸収速度)、毒性を低減する、溶解性を改善する、当該標的に対する当該化合物の生物活性および/または標的選択性を増大させる、製作可能性を高める、および/または当該化合物の免疫原性を減少させる。
【0172】
特定の実施形態では、半減期延長部分は、免疫グロブリン(例えば、IgG)または血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA))などの血清タンパク質に結合するポリペプチドである。ポリエチレングリコールは、有用な半減期延長部分の一例である。例示的な半減期延長部分は、ポリアルキレングリコール部分(例えば、PEG)、血清アルブミンまたはその断片、トランスフェリン受容体またはそのトランスフェリン結合部分、インビボで半減期を延長するポリペプチドの結合部位を含む部分のほか、エチレングリコールの共重合体、プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン共重合体、ポリアミノ酸(例えば、ポリリシン)、デキストランn-ビニルピロリドン、ポリn-ビニルピロリドン、プロピレングリコールホモポリマー、酸化プロピレン重合体、エチレンオキシドポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、直鎖または分岐の糖側鎖、ポリシアル酸、ポリアセタール、長鎖脂肪酸、長鎖疎水性脂肪族基、免疫グロブリンFcドメイン(例えば、米国特許 第6,660,843号を参照)、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、例えば、米国特許第6,926,898号および米国特許出願公開第2005/0054051号、米国特許第 第6,887,470号を参照)、トランスチレチン(TTR、例えば、US
2003/0195154、2003/0191056を参照)、またはチロキシン結合グロブリン(TBG)を含む。
【0173】
半減期の延長はまた、例えば、Gilbert S. Banker and Christopher T. Rhodes, Sustained and controlled release drug delivery systemによって記載されるように、当該化合物の制御された投与形態または徐放性投与形態を介して達成されうる。Modern Pharmaceutics, Fourth Edition, Revised and Expanded, Marcel Dekker, New
York, 2002, 11に記載。これは、リポソームおよび薬物-ポリマー共役を含む様々な製剤を介して達成されうる。
【0174】
特定の実施形態では、半減期延長部分は脂肪酸である。任意の好都合脂肪酸が、当該修飾化合物で使用されうる。例えば、Chae et al., “The fatty acid conjugated exendin-4 analogs for type 2 antidiabetic therapeutics”, J. Control Release. 2010 May 21;144(1):10-6を参照。
【0175】
特定の実施形態では、化合物は、特異的結合部分を含むように修飾される。特異的結合部分は、それに相補的な第二の部分に特異的に結合することができる部分である。一部の事例では、特異的結合部分は、少なくとも10‐7Mの親和性(例えば、30nM以下、10nM以下、3nM以下、1nM以下、300pM以下、または100pM以下など、100nM以下のKによって測定された場合など)で相補的な第二の部分に結合する。特異的結合部分の相補的結合部分の対には、限定されないが、リガンドおよび受容体、抗体および抗原、相補ポリヌクレオチド、相補タンパク質ホモ二量体またはヘテロ二量体、アプタマーおよび小分子、ポリヒスチジンタグおよびニッケル、ならびに化学選択性反応性基(例えば、チオール)および求電子性基(例えば、反応性チオール付加がマイケル付加を起こしうる)が含まれる。特異的結合対は、オリジナルの特異的結合メンバーの類似体、誘導体、および断片を含みうる。例えば、タンパク質抗原に対する抗体は、エピトープが存在する限り、ペプチド断片、化学的に合成された、標識タンパク質、誘導体化タンパク質なども認識しうる。特異的結合部分としての用途が見出される当該タンパク質ドメインには、限定されないが、Fcドメインまたは類似の抗体様断片、ロイシンジッパーモチーフ、コイルドコイルドメイン、疎水性領域、親水性領域、二つ以上の多量体化ドメインの間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールを含むポリペプチド、または「空洞への隆起」ドメイン(例えば、WO 94/10308、米国特許第5,731,168号、Lovejoy et al.(1993)、Science 259:1288-1293、Harbury et al.(1993)、Science 262:1401-05、Harbury et al.(1994)、Nature 371:80-83、Hakansson et al.(1999)、Structure 7: 255~64を参照)が含まれる。
【0176】
特定の実施形態では、当該分子は、標的タンパク質に特異的に結合する連結された特異的結合部分である。連結された特異的結合部分は、抗体、抗体断片、アプタマー、または第二のD-ペプチド性結合ドメインであってもよい。連結された特異的結合部分は、任意の好都合な標的タンパク質、例えば、当該治療方法でVEGF-Aと併せて標的にすることが望ましい標的タンパク質に特異的に結合することができる。当該標的タンパク質には、限定されないが、PDGF(例えば、PDGF-B)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、EGF、EGFR、Her2、PD-1、PD-L1、OX-40、およびLAG3が含まれる。特定の例では、連結された特異的結合部分は、PDGF-Bを標的とする第二のD-ペプチド性結合ドメインである。
【0177】
特定の実施形態では、特異的結合部分は、ビオチン部分などの親和性タグである。例示的なビオチン部分には、ビオチン、デスチオビオチン、オキシビオチン、2’-イミノビオチン、ジアミノビオチン、ビオチンスルホキシド、ビオシチンなどが含まれる。一部の事例では、ビオチン部分は、固定化アビジン、ニュートラアビジン、またはストレプトアビジンを含有するクロマトグラフィー支持体に高親和性で特異的に結合する能力を有する。ビオチン部分は、少なくとも10‐8Mの親和性でストレプトアビジンに結合することができる。一部の事例では、単量体アビジン支持体は、中程度の親和性を有するビオチン含有化合物に特異的に結合するために使用することができ、それによって、非ビオチン化ポリペプチドが洗い流された後、支持体から(例えば、2mMのビオチン溶液で)結合した化合物を後で競合的に溶出させることができる。特定の例では、ビオチン部分は、溶液中のアビジン、ニュートラアビジン、またはストレプトアビジンに結合して、例えば、アビジン、ニュートラビジン、またはストレプトアビジンを有するD-ペプチド性化合物の二量体、または四量体複合体など、多量体化合物を形成することができる。ビオチン部分は、リンカー、例えば、─LC-ビオチン、─LC-LC-ビオチン、─SLC-ビオチン、または ─PEG-ビオチンを含むことができ、式中、nは3~12である(Pierce Biotechnologyから市販)。
【0178】
特定の実施形態では、化合物は、検出可能標識を含むように修飾される。検出可能標識の例としては、対象ペプチド性化合物の存在を直接的および間接的の両方で測定できるようにする標識が含まれる。化合物の直接測定を可能にする標識の例としては、放射標識、フルオロフォア、色素、ビーズ、ナノ粒子(例えば、量子ドット)、化学発光体、コロイド粒子、常磁性標識などが含まれる。放射性標識は、35S、14C、125I、H、64Cuおよび131Iなどの放射性同位体を含んでもよい。当該化合物は、Current Protocols in Immunology, Volumes 1 and 2, Coligen et al., Ed. Wiley-Interscience, New York, N.Y., Pubs. (1991)に記載のあるものなど、任意の好都合な技術を使用して、放射性同位体で標識化されてもよく、また放射能は、シンチレーション計数または陽電子放射を使用して測定することができる。修飾化合物の存在の間接的な測定を可能にする検出可能標識の例には、基質が着色生成物または蛍光生成物を提供しうる酵素が含まれる。例えば、化合物は、適切な基質の添加後に検出可能な生成物シグナルを提供することができる共有結合酵素を含みうる。酵素を化合物に共有結合する代わりに、化合物は、酵素に共役結合された特異的結合対の第二のメンバーと特異的に結合する特異的結合対の第一のメンバーを含んでもよく、例えば、化合物はビオチンに共有結合され、酵素はストレプトアビジンに共役結合されてもよい。共役で使用するための適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。市販されていない場合、このような酵素共役体は、任意の好都合な技術によって容易に生成されうる。
【0179】
特定の実施形態では、検出可能標識はフルオロフォアである。「フルオロフォア」という用語は、選択された波長を有する光で励起されたとき、異なる波長の光を放射する分子を指し、これは、励起後に直ちにまたは遅延して光を放射しうる。フルオロフォアは、限定されないが、フルオレセイン色素、例えば、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2’,4’,1,4,-テトラクロロフルオレセイン(TET)、2’,4’,5’,7’,1,4’-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、および2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、シアニン色素(例えば、Cy3、CY5、Cy5.5、QUASARTM色素など)、ダンシル誘導体、ローダミン色素(例えば、6-カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、CAL FLUOR色素、テトラプロパノ-6-カルボキシローダミン(ROX)を含む。BODIPYフルオロフォア、ALEXA色素、オレゴングリーン、ピレン、ペリレン、ベンゾピレン、スクアリン色素、クマリン色素、発光性遷移金属、およびランタニド複合体、および類似のもの。フルオロフォアという用語は、このような色素のエキシマーおよびエキシプレックスを含む。
【0180】
一部の実施形態では、化合物は、放射標識などの検出可能標識を含む。特定の実施形態では、PET、SPECTおよび/またはMR撮像での使用に適した放射標識である。特定の実施形態では、放射標識はPET撮像標識である。特定の事例では、化合物は、18F、64Cu、68Ga、111In、99mTcまたは86Yで放射標識される。
【0181】
検出可能標識は、任意の好都合な位置で、任意の好都合なケミストリーを介して、ペプチド性化合物に付着されうる。当該の方法および材料には、限定されないが、USP 8,545,809、Meares et al., 1984, Acc Chem Res 17:202-209、Scheinberg et al., 1982, Science 215:1511-13、Miller et al., 2008, Angew Chem Int Ed 47:8998-9033、Shirrmacher et al., 2007, Bioconj Chem 18:2085-89、Hohne et al., 2008, Bioconj Chem 19:1871-79、Ting et al., 2008, Fluorine Chem 129:349-58に記載のあるものが含まれ、Poethko et al. (J.
Nucl. Med. 2004; 45: 892-902)の標識化方法では、まず、4-[18F]フルオロベンズアルデヒドが合成・精製され(Wilson et al,J.Labeled Compounds and Radiopharm. 1990;XXVIII:1189-1199)、次にペプチドに共役結合され、スクシンイミジル[18F]フルオロ安息香酸塩(SFB)(例えば、Vaidyanathan et al., 1992, Int. J. Rad. Appl. Instrum. B 19:275)、その他のアシル化合物(Tada et al., 1989, Labeled Compd. Radiopharm. XXVII:1317、Wester et al., 1996, Nucl. Med. Biol. 23:365、Guhlke et al., 1994, Nucl. Med. Biol 21:819)、
またはクリックケミストリー付加物(Li et al., 2007, Bioconj Chem. 18:1987)で標識化される。
【0182】
任意の好都合な合成方法または生体共役方法が、当該修飾D-ペプチド性化合物を調製する際に利用されうる。特定の事例では、検出可能標識は、任意のリンカーを介して化合物に接続される。特定の実施形態では、検出可能標識は、化合物のN末端に接続される。特定の実施形態では、検出可能標識は、化合物のC末端に接続される。特定の実施形態では、検出可能標識は、化合物の非末端残基、例えば側鎖部分を介して結合される。特定の実施形態では、検出可能標識は、任意のリンカーを介して化合物のN末端ペプチド伸長部分に接続される。一部の事例では、N末端ペプチド伸長部分は、放射標識含有部分の適合官能基と反応することができる反応性官能基を含むように修飾される。任意の好都合な反応性官能基、ケミストリー、および放射標識含有部分は、検出可能標識を化合物に付加するために利用されてもよく、例えば、限定されないが、クリックケミストリー、アジド、アルキン、シクロオクチン、銅を含まないクリックケミストリー、ニトロン、キレート基(例えば、DOTA、TETA、NOTA、NODA-NODA、(tert-ブチル)NODA、NETA、C-NETA、L-NETA、S-NETA、NODA-MPAA、およびNODA-MPAEMから選択される)、プロパルギル-グリシン残基が含まれる。
【0183】
特定の例では、当該分子は、第二の活性薬剤、例えば、当該治療方法での標的化VEGF-Aと併せての用途がある活性薬剤または薬物である。特定の例では、当該分子は、小分子、化学療法剤、抗体、抗体断片、アプタマー、またはLタンパク質である。一部の実施形態では、化合物は、医薬(例えば、タンパク質、核酸、有機小分子など)として有用な部分を含むように修飾される。例示的な医薬タンパク質としては、例えば、サイトカイン、抗体、ケモカイン、成長因子、インターロイキン、細胞表面タンパク質、細胞外ドメイン、細胞表面受容体、細胞毒などが含まれる。例示的な小分子医薬品には、小分子毒素または治療薬が含まれる。
【0184】
任意の好都合な治療剤または診断用薬(例えば、本明細書に記載されるように)を、D-ペプチド性化合物に共役結合することができる。限定されないが、抗癌剤、抗増殖剤、細胞毒性薬剤、および化学療法剤を含む様々な治療剤を、併用療法と題するセクションに以下に記載しており、そのどれもが、当該修飾化合物での使用に適合させることができる。例示的な当該化学療法剤には、例えば、ゲムシタビン、ドセタキセル、ブレオマイシン、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、トラメチニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トラスツズマブ、Ado-トラスツズマブエムタンシン、リツキシマブ、イピリムマブ、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、メトトレキサート、ドキソルビシン、アブラキサン、フォルフィリノックス、シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル、Teysumo、パクリタキセル、プレドニゾン、レボチロキシン、ペメトレキセド、ナビトクラックス、ABT-199が含まれる。ADCでの用途がある任意の例示的細胞毒性薬剤は、当該修飾D-ペプチド性化合物での使用に適合されうる。関心のCytotoic剤には、限定されないが、オーリスタチン(例えば、MMAE、MMAF)、メイタンシン、ドラスタチン、カリチアマイシン、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、センタナマイシン(ML-970、インドールカルボキサミド)、ドキソルビシン、α‐アマニチン、およびその誘導体および類似体が含まれる。特定の実施形態では、化合物は、細胞透過性ペプチド(例えば、tat)を含み得る。細胞透過性ペプチドは、分子の細胞取込を促進しうる。任意の好都合なタグポリペプチド、およびそれらのそれぞれの抗体を使用してもよい。例としては、ポリヒスチジン(poly-his)タグまたはポリヒスチジン-グリシン(poly-his-gly)タグ、インフルエンザHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field et al., Mol. Cell. Biol. 8:2159-2165 (1988)]、c-mycタグおよびそれへの8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)]、および単純ヘルペスウイルス糖タンパク質
D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]が含まれる。他のタグポリペプチドとしては、Flag-ペプチド[Hopp et al., BioTechnology 6:1204-1210 (1988)]、KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science 255:192-194 (1992)]、チューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Chem. 266:15163-15166 (1991)]、およびT7遺伝子
10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
U.S.A. 87:6393-6397 (1990)]が含まれる。
【0185】
特定の実施形態では、化合物は、細胞透過性ペプチド(例えば、tat)を含みうる。細胞透過性ペプチドは、分子の細胞取込を促進しうる。任意の好都合なタグポリペプチド、およびそれらのそれぞれの抗体を使用してもよい。例としては、ポリヒスチジン(poly-his)タグまたはポリヒスチジン-グリシン(poly-his-gly)タグ、インフルエンザHAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field et al., Mol. Cell. Biol. 8:2159-2165 (1988)]、c-mycタグおよびそれへの8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)]、および単純ヘルペスウイルス糖タンパク質
D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]が含まれる。他のタグポリペプチドとしては、Flag-ペプチド[Hopp et al., BioTechnology 6:1204-1210 (1988)]、KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science 255:192-194 (1992)]、チューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Chem. 266:15163-15166 (1991)]、およびT7遺伝子
10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
U.S.A. 87:6393-6397 (1990)]が含まれる。
【0186】
当該分子は、任意の好都合な方法を介して、当該修飾化合物に付加されてもよい。一部の事例では、当該分子は、共有結合的共役を介して、末端アミノ酸残基、例えば、アミノ末端またはカルボン酸末端に付加される。当該分子は、単結合を介して、または好適なリンカー、例えば、PEGリンカー、一つ以上のアミノ酸を含むペプチドリンカー、または飽和炭化水素リンカーを介して、ペプチド性GAドメインモチーフに付加されてもよい。様々なリンカー(例えば、本明細書に記載されるように)は、当該修飾化合物における用途がある。任意の好都合な試薬および方法を使用して、当該分子を当該GAドメインモチーフに含めてもよく、これには例えば、G.T.Hermanson, “Bioconjugate Techniques”
Academic Press, 2nd Ed., 2008に記載のある共役方法、固相ペプチド合成方法、
または融合タンパク質発現方法がある。修飾化合物を産生するために、任意選択のリンカーを介してドメインを共有結合するのに使用されうる官能基には、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アミノなどが含まれる。当該分子および/またはGAドメインモチーフ上の特定の部分は、都合の良い保護基を使用して保護されてもよく、例えば、Green & Wuts,
Protective Groups in Organic Synthesis (John Wiley & Sons) 3rd Ed. (1999)を参照。GAドメインモチーフへの特定の当該分子および付加部位は、例えば、標的VEGF-Aタンパク質に対して、望ましい結合活性に実質的に悪影響を及ぼさないように選択されてもよい。
【0187】
当該分子は、ペプチドであってもよい。当該分子は、限定されないが、ビオチン部分および/またはリンカーを含む一つ以上の非ペプチド基をさらに含みうることが理解される。任意の好都合なタンパク質ドメインを、当該修飾ペプチド性化合物中の当該分子として適合させ、利用することができる。当該タンパク質ドメインには、限定されないが、任意の有用な血清タンパク質、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、例えば、米国特許第6,926,898号および米国特許出願公開第2005/0054051号、米国特許第6,887,470号を参照)、トランスフェリン受容体またはそのトランスフェリン結合部分、免疫グロブリン(例えば、IgG)、免疫グロブリンFcドメイン(例えば、米国特許第6,660,843号を参照)、トランスチレチン(TTR;例えば、US 2003/0195154、2003/0191056を参照)、チロキシン結合グロブリン(TBG)、またはその断片が含まれる。
【0188】
多量体形成基は、例えば、二つ以上の化合物間の結合を媒介することによって(例えば、多価結合部分を介して直接的または間接的に)、または共有結合を介して二つ以上の化合物を接続することによって、多量体(例えば、二量体、三量体、またはデンドリマー)を形成することができる、任意の好都合な基である。一部の事例では、多量体形成基Zは、第二のD-ペプチド性化合物上の適合する官能基に共役結合する化学選択的反応性官能基である。他の場合では、多量体形成基は、多価結合部分(例えば、ストレプトアビジンまたは抗体)に特異的に結合する特異的結合部分(例えば、ビオチンまたはペプチドタグ)である。一部の事例では、化合物は多量体形成基を含み、まだ多量体形成されていない単量体である。
【0189】
当該ペプチド性化合物中に含めるための化学選択的反応性官能基には、限定されないが、アジド基、アルキニル基、ホスフィン基、システイン残基、C末端チオエステル、アリールアジド、マレイミド、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-エステル、ヒドラジド、PFP-エステル、ヒドロキシメチルホスフィン、ソラレン、イミドエステル、ピリジルジスルフィド、イソシアン酸塩、アミノオキシ-、アルデヒド、ケト、クロロアセチル、ブロモアセチル、およびビニルスルホンが含まれる。
【0190】
ポリヌクレオチド
また、本明細書に記載される当該ペプチド性化合物に対応する配列をコードするポリヌクレオチドも提供される。ポリヌクレオチドは、D-VEGF-A標的タンパク質に特異的に結合するL-ペプチド性化合物をコードしてもよい。
【0191】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、30~80残基、40~70残基、45~60残基、45~60残基、または45~55残基を含むペプチド性化合物をコードする。ある特定の例では、ポリヌクレオチドは、40~55残基、または45~55残基などの35~55残基のペプチド性化合物配列をコードする。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、45残基、46残基、47残基、48残基、49残基、50残基、51残基、52残基、または53残基のペプチド性化合物配列をコードする。
【0192】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、タンパク質発現系で発現されうるL-ペプチド性化合物をコードする核酸配列を含む複製可能な発現ベクターである。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、遺伝子融合をコードする核酸配列を含む複製可能な発現ベクターであり、遺伝子融合は、ウイルスコートタンパク質のすべてまたは一部に融合されたL-ペプチド性化合物を含む融合タンパク質をコードする。
【0193】
特定の実施形態では、当該ポリヌクレオチドは、細胞ベースの、または無細胞の表示システムで発現・表示されることができる。任意の好都合な表示方法を使用して、細胞ベースの表示技術および無細胞表示技術など、当該ポリヌクレオチドによってコードされるL-ペプチド性化合物を表示してもよい。特定の実施形態では、細胞ベースの表示技術は、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、および哺乳類細胞ディスプレイを含む。特定の実施形態では、無細胞表示技術は、mRNAディスプレイおよびリボソームディスプレイを含む。
【0194】
方法
本明細書に記載される化合物は、様々な方法で採用されうる。こうした方法の一つは、VEGF-Aの結合に適した条件下で、当該化合物をVEGF-A標的タンパク質と接触させて、複合体を産生することを含む。一部の実施形態では、方法は、D-ペプチド性化合物を対象者に投与することを含み、ここで化合物は、対象者内でVEGF-Aに結合する。
【0195】
当該化合物は、10%~100%の範囲、例えば、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上で、そのVEGF-A標的の少なくとも一つの活性を阻害しうる。特定のアッセイでは、当該化合物は、IC50が1×10-5M以下(例えば、1×10-6M以下、1×10-7M以下、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10‐10M以下、または1×10-11M以下)で、そのVEGF-A標的を阻害することができる。特定のアッセイでは、当該化合物は、1×10-6M以下のIC20(例えば、500nM以下、200nM以下、100nM以下、30nM以下、10nM以下、3nM以下、または1nM以下)で、そのVEGF-A標的を阻害しうる。特定のアッセイでは、当該化合物は、IC10が1×10-6M以下(例えば、500nM以下、200nM以下、100nM以下、30nM以下、10nM以下、3nM以下、または1nM以下)で、そのVEGF-A標的を阻害しうる。マウスが用いられるアッセイでは、当該化合物は、1g/マウス未満(例えば、1ng/マウス~約1g/マウス)のED50を有しうる。
【0196】
一部の実施形態では、主題の方法は、標的分子に高親和性で特異的に結合する当該化合物に試料を接触させることを含む、インビトロ方法である。特定の実施形態では、試料は、標的分子を含有する疑いがあるもので、当該方法は、化合物が標的分子に特異的に結合するかどうかを評価することをさらに含む。特定の実施形態では、標的分子は、天然起源Lタンパク質であり、化合物はD-ペプチド性である。特定の実施形態では、当該化合物は、例えば、蛍光標識などの標識を含む修飾化合物であり、当該方法は、例えば、サンプル中に標識が存在する場合に、光学検出を使用して標識を検出することをさらに含む。特定の実施形態では、化合物は、化合物に結合しない任意の試料が(例えば、洗浄によって)除去されうるように、支持体を用いて修飾される。特異的に結合された標的タンパク質が存在する場合には、標識化された標的特異的プローブの結合を使用したり、蛍光タンパク質反応性試薬を使用したりするなど、任意の好都合な手段を使用して検出されうる。当該方法の別の実施形態では、試料は、標的タンパク質を含有することが知られている。特定の実施形態では、標的VEGF-Aタンパク質は合成Dタンパク質であり、化合物はL-ペプチド性である。特定の実施形態では、標的VEGF-Aタンパク質はLタンパク質であり、化合物はD-ペプチド性である。
【0197】
特定の実施形態では、当該化合物は、VEGF-Aの存在下で細胞と接触させてもよく、細胞のVEGF-A応答表現型がモニターされる。例示的VEGF-Aアッセイには、単離タンパク質を無細胞系で使用したアッセイ、培養細胞を使用したインビトロアッセイ、またはインビボアッセイが含まれる。例示的VEGF-Aアッセイとしては、限定されないが、受容体チロシンキナーゼ阻害アッセイ(例えば、Cancer Research June 15,
2006; 66:6025-6032を参照)、インビトロHUVEC増殖アッセイ(FASEB Journal
2006; 20: 2027-2035; Wells et al., Biochemistry 1998, 37, 17754-17764)、インビボ固形腫瘍疾患アッセイ(USPN 6,811,779)、およびインビボ血管新生アッセイ(FASEB Journal 2006; 20: 2027-2035)が挙げられる。これらの
アッセイの説明を、参照し本書に組込む。これらの方法に採用されうるプロトコルは多数あり、限定されないが、無細胞アッセイ(例えば、結合アッセイ)、細胞表現型が測定される細胞アッセイ(例えば、遺伝子発現アッセイ)、および特定の動物が関与するインビボアッセイ(特定の実施形態では、標的に関連する状態についての動物モデルであってもよい)が含まれる。特定の事例では、アッセイは、血管新生アッセイであってもよい。特定の実施形態では、標的タンパク質は、VEGF-Aであり、当該化合物は、VEGF-A依存性血管新生を阻害する。特定の実施形態では、標的タンパク質は、VEGF-Aであり、当該化合物は、VEGF-A依存性細胞増殖を阻害する。ある特定の例では、標的タンパク質はVEGF-Aであり、化合物はVEGFR2のリン酸化を阻害する。
【0198】
一部の実施形態では、当該方法は、インビボであり、標的分子に高い親和性で特異的に結合するD-ペプチド性化合物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態では、化合物は、医薬調製物として投与される。様々な対象者が、当該方法に従って治療可能である。一般的に、このような対象者は、これらの用語が、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジーおよびサル)を含む、哺乳綱に属する生物を記述するために広く使用される、「哺乳動物」または「哺乳類」である。一部の実施形態では、対象者はヒトである。対象者は、(例えば、本明細書に記載されるように)対象者内での血管新生に関連する疾患または状態の治療の予防を必要とする対象者とすることができる。
【0199】
当該化合物は、VEGF-Aに結合し、それを阻害することができ、したがって、血管新生に関連する疾患および状態の治療、インビボ診断および撮像に有用でありうる。「血管新生に関連する疾患および状態」という用語は、本明細書で言及される疾患および状態を含むが、これらに限定されない。これに関して、WO 98/47541にも記載がある。血管新生に関連する疾患および状態には、例えば、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌または卵巣癌などの異なる形態の癌および転移が含まれる。その他の血管新生に関連する疾患および状態は、炎症(例えば、慢性炎症)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチおよび歯肉炎である。さらなる血管新生に関連する疾患および状態は、動静脈奇形、星状細胞腫、星状細胞腫、絨毛癌、神経膠芽細胞腫、神経膠腫、血管腫(小児、毛細血管)、肝細胞腫、増殖性子宮内膜、虚血心筋、子宮内膜症、カポジ肉腫、黄斑変性症、黒色腫、神経芽細胞腫、閉塞性末梢動脈疾患、変形関節症、乾癬、網膜症(糖尿病性、増殖性)、強皮症、精上皮腫および潰瘍性大腸炎である。一部の事例では、血管新生に関連する疾患または状態は、癌(例えば、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌または卵巣癌)、炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、黄斑変性症および網膜症である。特に関心が高いのは、糖尿病性黄斑浮腫(DME)または加齢黄斑変性症(AMD)の治療である。
【0200】
VEGF-A結合当該化合物は、様々な腫瘍性および非腫瘍性の疾患および障害の治療に有用である。治療に適している新生物および関連状態には、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝癌、卵巣癌、卵胞膜細胞腫、男性胚腫、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭頚部癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経膠芽細胞腫、シュワン細胞腫、乏突起細胞腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症関連の異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど) およびメグズ症候群である。
【0201】
治療に適している非腫瘍性病態としては、関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性および他の増殖性網膜症が含まれ、例えば、未熟児網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、加齢黄斑変性症、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜およびその他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水、心膜液貯留(心膜炎に関連するものなど) および胸水がある。
【0202】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、哺乳動物(ヒトなど)などの、患者における疾患または医学的状態を治療すること、またはその治療を意味し、(a)対象者の予防的治療など、疾患または医学的状態の発生の予防、(b)患者の疾患または医学的状態の排除する、または退縮を引き起こすなど、疾患または医学的状態を改善すること、(c)例えば、患者における疾患または医学的状態の進展を遅らせるか、または停止させるなど、疾患または医学的状態を抑制すること、または(d)患者における疾患または医学的状態の症状を軽減することを含む。したがって、治療はまた、対象がもはや病的状態、または少なくとも病的状態を特徴付ける症状を患わないように、症状を少なくとも患わないように、病的状態、または少なくともそれに関連する症状が、完全に阻害(例えば、発生を予防)される、または停止(例えば、終結)される。治療はまた、例えば、上述のように、疾患状態の代理マーカーの調節の形態で顕在化しうる。
【0203】
本開示の態様は、滲出型加齢黄斑変性(AMD)などのAMDを予防または治療する方法を含む。加齢黄斑変性症(AMD)は、高齢者人口における重度の視力障害の主要な原因である。滲出型のAMDは、脈絡膜血管新生および網膜色素上皮細胞剥離によって特徴付けられる。脈絡膜血管新生は予後の劇的な悪化と関連しているため、当該VEGF結合化合物は、AMDの重症度の低減での用途がある。特定の例では、対象者は、乾燥型AMDに罹患している患者であり、当該方法による化合物の投与は、対象者における滲出型AMDの発生を防止または重症度を低減する。
【0204】
特定の実施形態では、当該方法は、VEGF-A結合化合物などの化合物を投与してから、その標的タンパク質に結合した後で化合物を検出することを含む。一部の方法では、同じ化合物が、治療化合物と診断化合物の両方としての役目を果たすことができる。
【0205】
本開示のVEGF-A結合化合物は、VEGF-Aタンパク質またはその断片の除去、阻害、または低減によって改善、寛解、阻害、または予防される任意の疾患または状態を治療するために治療的に有用である。
【0206】
一部の実施形態では、当該方法は、対象者において血管新生を調節する方法であり、その方法は、有効量の、VEGF-Aタンパク質と高い親和性で特異的に結合する当該化合物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態では、方法は、対象者における疾患状態の存在を診断することをさらに含む。特定の実施形態では、疾患状態は、血管新生の増強によって治療されうる状態である。特定の実施形態では、疾患状態は、血管新生の減少によって治療されうる状態である。特定の実施形態では、当該方法は、血管新生を阻害する方法であり、化合物はVEGF-A拮抗薬である。
【0207】
一部の実施形態では、当該方法は、細胞増殖性疾患状態に罹患している対象者を治療する方法であり、その方法は、対象者が細胞増殖性疾患状態について治療されるように、有効量の、VEGF-Aタンパク質に高親和性で特異的に結合する当該化合物を対象者に投与することを含む。
【0208】
一部の実施形態では、当該方法は、対象者における腫瘍成長を阻害する方法であり、その方法は、有効量の、VEGF-Aタンパク質と高い親和性で特異的に結合する当該化合物を対象者に投与することを含む。特定の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。特定の実施形態では、腫瘍は非固形腫瘍である。
【0209】
投与される化合物の量は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、またはビヒクルに関連して所望の効果を生じるのに十分な量である任意の都合の良い方法を使用して決定することができる。本開示の単位投与形態の仕様は、用いられる特定の化合物、達成される効果、および対象者内での各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0210】
一部の実施形態では、有効量の当該化合物は、約50ng/ml~約50μg/ml(例えば、約50ng/ml~約40μg/ml、約30ng/ml~約20μg/ml、約50ng/ml~約10μg/ml、約50ng/ml~約1μg/ml、約50ng/ml~約800ng/ml、約50ng/ml~約700ng/ml、約50ng/ml~約600ng/ml、約50ng/ml~約500ng/ml、約50ng/ml~約400ng/ml、約60ng/ml~約400ng/ml、約70ng/ml~約300ng/ml、約60ng/ml~約100ng/ml、約65ng/ml~約85ng/ml、約70ng/ml~約90ng/ml、約200ng/ml~約900ng/ml、約200ng/ml~約800ng/ml、約200ng/ml~約700ng/ml、約200ng/ml~約600ng/ml、約200ng/ml~約500ng/ml、約200ng/ml~約400ng/ml、または約200ng/ml~約300ng/ml)である。
【0211】
一部の実施形態では、有効量の当該化合物は、約10pg~約100mgの範囲の量であり、例えば、約10pg~約50pg、約50pg~約150pg、約150pg~約250pg、約250pg~約500pg、約500pg~約750pg、約750pg~約1ng、約1ng~約10ng、約10ng~約50ng、約50ng~約150n、約150ng~約250ng、約250ng~約500ng、約500ng~約750ng、約750ng~約1μg、約1μg~約10μg、約10μg~約50μg、約50μg~約150μg、約150μg~約250μg、約250μg~約500μg、約500μg~約750μg、約750μg~約1mg、約1mg~約50mg、約1mg~約100mg、または約50mg~約100mgの範囲の量である。量は、単回用量であってもよく、または総一日量であってもよい。総一日量は、10pg~100mgの範囲とすることができ、または100mg~約500mgの範囲とすることができ、または500mg~約1000mgの範囲とすることができる。
【0212】
一部の実施形態では、当該化合物が単回投与される。その他の実施形態では、当該化合物が複数回投与される。複数回の用量が一定期間にわたって投与される場合、D-ペプチド性化合物は、1日2回(qid)、1日1回(qd)、隔日(qod)、3日毎、週3回(tiw)、または週2回(biw)、ある期間にわたって投与される。例えば、化合物は、1日~約2年以上の期間にわたり、qid、qd、qod、tiw、またはbiwで投与される。例えば、化合物は、様々な要因に応じて、1週間、2週間、一か月、2か月、6か月、1年、2年、またはそれ以上の期間にわたり、前述の任意の頻度で投与される。
【0213】
治療方法が有効かどうかを判断するために、任意の様々な方法を使用できる。例えば、当該方法を用いて治療を受けた個体から得られた生体試料を、血管新生の存在および/または程度について検定することができる。対象者に対する治療方法の有効性の評価は、任意の好都合な方法を使用して、治療前、治療中、および/または治療後に対象者を評価することを含みうる。当該方法の態様は、治療に対する対象者の治療反応を評価するステップをさらに含む。
【0214】
一部の実施形態では、方法は、治療される当該疾患または状態(例えば、本明細書に記載されるように)に関連する対象者の一つ以上の症状を診断または評価することを含む、対象者の状態の評価を含む。一部の実施形態では、本方法は、対象者から生体試料を取得することと、例えば、当該疾患または状態(例えば、本明細書に記載される通り)に関連する血管新生の存在のために、試料を検定すること、とを含む。試料は、細胞試料であってもよい。一部の事例では、試料は生検である。当該方法の評価ステップは、任意の好都合な方法を使用して、当該化合物の投与の前、最中、および/または後に1回以上実施することができる。
【0215】
一部の事例では、当該化合物またはその塩は、例えば、本明細書に定義されるように、特に、例えばPETによる、血管新生に関連する疾患または状態のインビボ診断または撮像で、医学における用途がある。特定の実施形態では、化合物は、検出可能標識を含む修飾化合物であり、本方法は、対象者における標識の検出をさらに含む。標識の選択は、検出手段に依存する。任意の好都合な標識化および検出システムを、当該方法に使用することができ、例えば、Baker, “The whole picture,” Nature, 463, 2010, p977-980を参照のこと。特定の実施形態では、化合物は、光学検出に適した蛍光標識を含む。特定の実施形態では、化合物は、陽電子放射断層撮影(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)を使用した検出のための放射標識を含む。一部の事例では、化合物は、断層検出に適した常磁性標識を含む。当該化合物は、上述のように標識化されてもよいが、一部の方法では、化合物は標識化されず、二次的な標識化剤が撮像に使用される。特定の実施形態では、当該方法は、標識化された座位の数、サイズ、および/または強度を、対応するベースライン値と比較することによる、対象者における疾患状態の診断を含む。ベースライン値は、疾患のない対象者集団の平均レベル、または同じ対象者で決定されたそれまでのレベルを表すことができる。
【0216】
一部の事例では、放射性標識化合物は、望ましいシグナルを発生させるのに十分な量が、PET撮像のための対象者に投与されてもよい。特定の例では、放射性核種の用量は、0.01~100mCi、例えば0.1~50mCi、または1~20mCiであり、これは体重70kgでは十分である。したがって、放射性標識化合物は、任意の好都合な生理学的に許容可能な担体または賦形剤を使用して投与するために製剤化されうる。例えば、化合物は、任意に薬学的に許容可能な賦形剤を添加して、水性媒体中に懸濁または溶解されてもよく、結果として生じる溶液または懸濁液はその後で滅菌される。また、インビボ撮像、例えば、血管新生に関連する疾患または状態の撮像などのPET撮像の方法で使用するための放射性医薬品の製造用に、本明細書に記載される放射性標識化合物またはその塩も提供されており、これには、人体または動物の体への放射性医薬品の投与、および前記体の少なくとも一部の画像の生成を伴う。
【0217】
一部の実施形態では、方法は、例えば、放射性医薬品を前記体(例えば、血管系)に投与し、前記放射性医薬品が分布した前記身体の少なくとも一部の画像をPETを使用して生成することを含む、血管新生に関連する疾患または状態のインビボでの診断または撮像のための方法であり、ここで前記放射性医薬品は、放射性標識化合物またはその塩を含む。
【0218】
一部の実施形態では、方法は、血管新生(例えば、癌)に関連する状態と戦うために、人体または動物の体内での治療の効果を薬剤(例えば、細胞毒性薬剤)で監視する方法であり、前記方法は、前記身体に放射性標識化合物またはその塩を投与し、細胞受容体(内皮細胞受容体などで、例えば、alpha.v.beta.3受容体)による化合物の取込みを検出することを含み、前記投与および検出が随意に繰り返して、例えば、前記薬剤での治療前、治療中および治療後に行われる。
【0219】
一部の実施形態では、方法は、血管新生に関連する疾患または状態のインビボでの診断または撮像のための方法であり、対象者にD-ペプチド性化合物を投与すること、および対象者のうち少なくとも一部を撮像することを含む。特定の実施形態では、撮像は、PET撮像を含み、投与は、対象者の血管系に化合物を投与することを含む。一部の実例では、方法は、細胞受容体による化合物の取り込みを検出することをさらに含む。特定の例では、標的はVEGF-Aであり、対象者はヒトである。特定の実施形態では、方法は、治療用抗体、例えば、アバスチンを対象者に投与することを含み、ここで疾患または状態は、癌に関連する状態である。
【0220】
当該方法は、特定の細胞、組織、または血清中の標的タンパク質の発現を、インビトロまたはインビボで検出するための診断方法であってもよい。一部の事例では、当該方法は、対象者における標的タンパク質のインビボ撮像のための方法である。方法は、標的タンパク質に関連する疾患状態の症状を呈する対象者に化合物を投与することを含みうる。一部の事例では、対象者は無症候性である。当該方法は、それまでに疾患と診断された対象者における疾患進行および/または治療に対する応答を監視することをさらに含みうる。
【0221】
当該VEGF-A結合化合物は、親和性精製剤として使用されてもよい。このプロセスでは、化合物は、任意の好都合な方法を使用して、Sephadex樹脂またはろ紙などの固相上に固定される。当該VEGF-A結合化合物を、精製されるVEGF-Aタンパク質(またはその断片)を含有するサンプルと接触させ、その後、VEGFタンパク質を除く、固定化化合物に結合されるサンプル中の実質的にすべての物質を除去する適切な溶媒で、支持体を洗浄する。最後に、支持体は、固定化化合物からVEGF-Aタンパク質を放出するグリシン緩衝液、pH 5.0などの別の適切な溶媒で洗浄される。
【0222】
当該VEGF-A結合化合物はまた、VEGF-Aタンパク質の診断アッセイ、例えば、特定の細胞、組織、または血清におけるその発現の検出に有用でありうる。こうした診断方法は、癌診断に有用でありうる。診断用途については、当該化合物は、上述のように修飾されてもよい。
【0223】
併用療法
一部の実施形態では、当該化合物は、一つ以上の追加的な活性薬剤または療法と組み合わせて投与されてもよい。当該方法によって標的化される疾患を治療するために有用な化合物を含む、任意の好都合な薬剤が利用されうる。「薬剤」、「化合物」、および「薬剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。追加的な活性薬剤または療法としては、限定されないが、小分子、抗体、抗体断片、アプタマー、Lタンパク質、第二の標的結合分子(第二のDペプチド性化合物など)、化学療法剤、外科手術、カテーテル装置、および放射線が含まれる。併用療法は、当該化合物および一つ以上の追加的な薬剤を含有する単一医薬用量製剤の投与、ならびに当該化合物およびそれ自体が別個の医薬用量製剤である一つ以上の追加的な薬剤の投与を含む。例えば、当該化合物および細胞毒性薬剤、化学療法剤、または成長阻害剤が、複合製剤などの単一用量組成物でまとめて患者に投与されてもよく、または各薬剤は、別個の剤形で投与されてもよい。別個の剤形が使用される場合、当該化合物および一つ以上の追加的な薬剤は、同時に、または別々に時差的に(例えば、順次に)投与することができる。
【0224】
「同時投与」および「と組み合わせて」という用語は、特定の時間制限なく、同時、同時発生的、または順次のいずれかで、二つ以上の治療薬(例えば、D-ペプチド性化合物および第二の薬剤)を投与することを含む。一つの実施形態では、薬剤は、細胞内または対象者の体内に同時に存在するか、または同時にその生物学的もしくは治療効果を発揮する。一つの実施形態では、治療剤は、同じ組成物または単位投与形態である。その他の実施形態では、治療剤は、別個の組成物または単位投与形態である。特定の実施形態では、第一の薬剤(例えば、D-ペプチド性化合物)は、第二の治療剤の投与前(例えば、数分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、同時に、または投与後 (例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、12週間後)に投与されうる。
【0225】
本開示の医薬組成物と公知の治療薬剤の「併用投与」とは、公知の薬剤および本開示の組成物の両方が治療効果を有することになる時に、D-ペプチド性化合物および第二の薬剤を投与することを意味する。こうした併用投与は、当該D-ペプチド性化合物の投与に関して、薬剤の同時投与(すなわち同時に)、前の投与、または後の投与が関与しうる。二つの薬剤の投与経路は異なっていてもよく、代表的な投与経路は以下でより詳細に記載される。当業者であれば、本開示の特定の薬剤および化合物に対する適切な投与のタイミング、順序、および用量を決定することは困難ではない。
【0226】
一部の実施形態では、化合物(例えば、当該D-ペプチド性化合物および第二の薬剤)は、例えば、互いの12時間以内、互いの6時間以内、互いの3時間以内、または互いの1時間以内など、互いに24時間以内に対象者に投与される。特定の実施形態では、化合物は、互いに1時間以内に投与される。特定の実施形態では、化合物は実質的に同時に投与される。実質的に同時に投与されることは、化合物は、互いに約10分以内、例えば、5分以内、または1分以内など、対象者に投与されることを意味する。
【0227】
また、当該化合物および第二の活性薬剤の医薬調製物も提供される。薬学的投与形態では、化合物は、その薬学的に許容可能な塩の形態で投与されてもよく、または単独で、もしくは適切な会合で、ならびに他の薬学的に活性化合物との組み合わせで使用されてもよい。
【0228】
1日当たり体重約0.01mg~約140mg/kg程度の用量レベルは、代表的な実施形態において有用であり、または代替的に患者1人当たり1日当たり約0.5mg~約7gが有用である。当業者であれば、用量レベルは、特定の化合物、症状の重症度、および対象者の副作用に対する感受性の関数として変化しうることを容易に理解するであろう。所与の化合物の用量は、様々な手段によって当業者によって容易に決定可能である。
【0229】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わされうる活性成分の量は、治療対象の宿主および特定の投与形態に応じて変化する。例えば、ヒトの経口投与が意図される製剤は、0.5mg~5gの活性薬剤を含有してもよく、これは、合計組成物の約5~約95パーセントで変化しうる、適量かつ好都合な量の担体材料と化合物化されてもよい。単位剤形は概して、約1mg~約500mgの有効成分、例えば25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、または1000mgを含有する。
【0230】
ところが、当然のことながら、任意の特定の患者の特定の用量レベルは、治療を受ける特定の疾患の年齢、体重、全般的健康、性別、食事療法、投与時間、投与経路、排泄率、複合製剤、および重症度を含む様々な要因に依存する。
【0231】
任意の好都合な第二の薬剤は、当該方法において用途が考えられる。一部の事例では、第二の活性薬剤は、血小板由来成長因子(PDGF)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、EGF、EGFR、Her2、PD-1、PD-L1、OX-40、LAG3、Ang2、IL-1、IL-6、およびIL-17から選択される標的タンパク質に特異的に結合する。第二の活性薬剤には、ペグプレラニブ(Fovista)、ラニビズマブ(Lucentis)、トラスツズマブ(Herceptin)、ベバシズマブ(Avastin)、アフリベルセプト(Eylea)、ニボルマブ,アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブおよびペムブロリズマブを含むがこれに限定されない。
【0232】
癌の治療については、当該化合物は、タキサン、ヌクレオシド類似体、ステロイド、アントラサイクリン、甲状腺ホルモン補充薬、チミジル酸標的薬剤、キメラ抗原受容体/T細胞療法、キメラ抗原受容体/NK細胞療法、アポトーシス調節因子阻害剤(例えば、B細胞性CLL/リンパ腫2(BCL-2)BCL-2様1(BCL-XL)阻害剤、CARP-1/CCAR1(細胞分裂周期およびアポトーシス調節因子1)阻害剤、コロニー刺激因子-1受容体(CSF1R)阻害剤、CD47阻害剤、癌ワクチン(例えば、Th17-誘発樹状細胞ワクチン)、および他の細胞療法からなる群から選択される化学療法剤と組み合わせて投与される。特定の化学療法剤には、例えば、ゲムシタビン、ドセタキセル、ブレオマイシン、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、トラメチニブ、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トラスツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、リツキシマブ、イピリムマブ、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、メトトレキサート、ドキソルビシン、アブラキサン、フォルフィリノックス、シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル、Teysumo、パクリタキセル、プレドニゾン、レボチロキシン、ペメトレキセド、ナビトクラックス、ABT-199が含まれる。
【0233】
癌(例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、またはホジキンリンパ腫などのリンパ腫)の治療のために、当該化合物を免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて投与することができる。任意の好都合なチェックポイント阻害剤は、限定されないが、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)阻害剤、プログラム死1(PD-1)阻害剤、およびPD-L1阻害剤を含めて、利用することができる。例示的な当該チェックポイント阻害剤には限定されないが、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、およびニボルマブが含まれる。特定の実施形態では、癌および/または炎症性疾患の治療のために、当該化合物は、コロニー刺激因子-1受容体(CSF1R)阻害剤と組み合わせて投与することができる。当該CSF1R阻害剤には、限定されないが、エマクツズマブが含まれる。
【0234】
任意の好都合な癌ワクチン療法および薬剤を、当該免疫調節ポリペプチド組成物および方法と組み合わせて使用することができる。癌(例えば、卵巣癌)の治療のために、当該化合物は、ワクチン接種療法、例えば、Th1/Th17免疫を促進する樹状細胞(DC)ワクチン接種剤と組み合わせて投与することができる。Th17細胞浸潤は、卵巣癌患者の全生存期間の顕著な延長と相関する。一部の事例では、免疫調節性ポリペプチドは、Th17誘発ワクチン接種と組み合わせたアジュバント治療としての用途がある。
【0235】
また、CARP-1/CCAR1(細胞分裂周期およびアポトーシス調節因子1)阻害剤であって、限定されないが、Rishi et al., Journal of Biomedical Nanotechnology, Volume 11, Number 9, September 2015, pp. 1608-1627(20)に記載のあるものなど、およびCD47阻害剤であって、限定されないが、Hu5F9-G4などの抗CD47抗体剤を含むものなど、である薬剤も対象である。
【0236】
有用性
本発明の化合物は、例えば、上述のように、様々な用途での使用法がある。当該用途としては、限定されないが、治療用途、研究用途、およびスクリーニング用途が含まれる。これらの異なる各用途は、下記に、より詳細に検討する。
【0237】
治療用途
当該化合物は、様々な治療用途での利用法がある。当該治療用途には、標的の活性が疾患進行の原因または複合因子である用途が含まれる。このように、当該化合物は、宿主における標的活性の調節が望ましい様々な異なる条件の治療における利用法がある。
【0238】
当該化合物は、その標的であるVEGF-Aに関連する障害の治療に有用である。本発明の化合物で治療されうる疾患状態の例は、上記に記載されている。
【0239】
特定の実施形態では、疾患状態には、限定されないが、癌、血管新生および転移の阻害、変形関節症の痛み、慢性腰痛、癌関連疼痛、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、特発性肺線維症(IPF)、および移植角膜の移植片生存が含まれる。
【0240】
一つの実施形態では、本開示は、VEGF-A関連状態のために対象者を治療する方法を提供する。本方法は、概して、VEGF-A関連障害を有する対象者に、VEGF-A関連障害の少なくとも一つの症状を治療するために有効な量の当該化合物を投与することを伴う。VEGF-Aに関連する状態は、一般的に、血管内皮細胞増殖、血管透過性、損傷・脳卒中・腫瘍に関連する脳浮腫などの浮腫または炎症、乾癬または関節炎などの炎症性障害に関連する浮腫(関節リウマチを含む)、喘息、熱傷に関連する全身浮腫、腫瘍・炎症・外傷に関連する腹水および胸水、慢性気道炎症、毛細管漏出症候群、敗血症、タンパク質漏れの増加に関連する腎臓病、加齢黄斑変性症や糖尿病性網膜症などの眼障害、を特徴とする。そのような状態には、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、および腎癌が含まれる。
【0241】
研究用途
当該化合物および方法には、様々な研究用途での用途がある。当該化合物および方法は、限定されないが、血管新生、炎症、細胞増殖、代謝、転写の調節、およびリン酸化の調節を含む、様々な生物学的プロセスを調節する際の標的タンパク質の役割を分析するために使用されうる。抗体などの他の標的タンパク質結合分子は、生物学的研究の同様の分野で同様に有用であった。例えば、Sidhu and Fellhouse, “Synthetic therapeutic antibodies,” Nature Chemical Biology, 2006, 2(12), 682-688を参照。こうし
た方法は、当該化合物および方法の様々な研究用途で使用するために容易に修飾されうる。
【0242】
診断用途
当該化合物および方法は、限定されないが、臨床診断薬、例えば、インビトロ診断薬またはインビボ腫瘍撮像剤の開発を含む、様々な診断用途での利用法がある。こうした用途は、疾患状態の診断または診断の確認、またはその感受性に有用である。本方法はまた、それまでに疾患が診断された患者における疾患進行および/または治療に対する応答を監視するためにも有用である。
【0243】
当該診断用途には、上述の病態など、疾患状態の診断が含まれ、これには、限定されないが、癌、血管新生および転移の阻害、変形関節症の疼痛、慢性腰痛、癌関連疼痛、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、特発性肺線維症(IPF)、および移植角膜の移植片生存を含む。一部の方法では、同じ化合物が、治療化合物と診断化合物の両方としての役目を果たすことができる。
【0244】
アプタマーや抗体などの他の標的タンパク質結合分子も、臨床診断薬の開発における利用法がある。こうした方法は、当該化合物および方法の様々な診断用途で使用するために容易に修飾することができ、例えば、Jayasena, “Aptamers: An Emerging Class of Molecules That Rival Antibodies in Diagnostics,” Clinical Chemistry,
1999, 45, 1628-1650を参照。
【0245】
医薬調製物
また、医薬調製物も提供される。医薬調製物は、薬学的に許容可能なビヒクル中に存在する化合物(単独または一つ以上の追加的な活性薬剤の存在下のどちらも)を含む組成物である。「薬学的に許容可能な」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されたか、またはヒトなどの哺乳動物における使用のために米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「賦形剤」という用語は、本発明の化合物が哺乳動物への投与のために製剤化される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。こうした医薬ビヒクルは、石油、動物、植物、またはピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの合成起源のものを含む、水および油などの液体であってもよい。医薬ビヒクルは、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉ペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などでありうる。さらに、助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤および着色剤が使用されうる。哺乳動物に投与されるとき、本発明の化合物および組成物、ならびに薬学的に許容可能なビヒクル、賦形剤、または希釈剤は、滅菌されていてもよい。一部の実例では、本発明の化合物が、水、生理食塩水、および水性デキストロースおよびグリセロール溶液などの静脈内に投与されるとき、水性媒体はビヒクルとして用いられる。
【0246】
医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、小球、ロゼンジ、粉末剤、果粒剤、シロップ剤、エリキシル剤、溶液、懸濁液、乳濁液、坐剤、またはその徐放性形態、または哺乳動物への投与に適した任意の他の形態の形態を取ることができる。一部の実例では、医薬組成物は、ヒトへの経口投与または静脈内投与に適合した医薬組成物として、日常的な手順に従って、投与のために製剤化される。好適な医薬ビヒクルの実施例およびその製剤方法は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Alfonso R. Gennaro
ed., Mack Publishing Co. Easton, Pa., 19th ed., 1995, Chapters 86, 87, 88, 91, and 92に記載があり、参照し本明細書に組込む。
【0247】
賦形剤の選択は、組成物を投与するために使用される特定の方法だけでなく、特定の化合物によって部分的に決定される。したがって、本発明の医薬組成物の、様々な適切な製剤がある。
【0248】
本開示の化合物の投与は、全身的または局所的でありうる。特定の実施形態では、哺乳動物への投与は、本発明の化合物の全身放出(例えば、血流内へ)をもたらす。投与方法は、経口、口腔内、舌下、および直腸などの経腸経路、経皮および皮内などの局所投与、ならびに非経口投与を含みうる。適切な非経口経路には、皮下注射針またはカテーテルを介した注射、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、動脈内、脳室内、髄腔内、および前房内の注射など、ならびに膣内直腸、または経鼻投与などの非注射経路が含まれる。特定の実施形態では、本発明の化合物および組成物は、経口投与される。特定の実施形態では、治療を必要とする領域に本発明の一つ以上の化合物を局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、外科手術中の局所注入によって、局所塗布、例えば、手術後の創傷包帯と併せて、注射によって、カテーテルによって、座薬によって、またはインプラントによって達成されてもよく、前記インプラントは、多孔性、非多孔性、またはゼラチン質材料であり、シアラスティック膜、または繊維などの膜を含む。
【0249】
当該化合物は、植物性油または他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、より高い脂肪族酸またはプロピレングリコールのエステルなど、水性または非水性溶媒中で、また望ましい場合、溶解剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および防腐剤などの従来的な添加剤と共に、それらを溶解、懸濁、または乳化することによって、注射用の調製物に製剤化することができる。
【0250】
一部の実施形態では、経口投与に適した製剤は、(a)水または生理食塩水などの希釈剤に溶解された有効量の化合物などの液体溶液、(b)各々が固体または顆粒として所定量の活性成分を含有するカプセル剤、サシェまたは錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、および(d)適切な乳濁液を含みうる。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、および薬理学的に互換性のある賦形剤のうちの一つ以上を含みうる。ロゼンジ形態は、風味中の活性成分、通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント、ならびにゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシア、乳濁液、ゲルなどの不活性塩基中の活性成分を含むパステル剤、および本明細書に記載される活性成分、例えば賦形剤に加えて含有されるものを含みうる。
【0251】
当該製剤は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にすることができる。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴霧剤中に配置することができる。これらはまた、ネブライザまたはアトマイザで使用するための非圧力調製物のための医薬品として製剤化されてもよい。
【0252】
一部の実施形態では、非経口投与に適した製剤には、意図されたレシピエントの血液で製剤を等張させる抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬を含みうる、水性および非水性の等張性滅菌注射液、ならびに懸濁化剤、溶解剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含みうる、水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数回用量の密封容器で提示することができ、使用直前に、注射のために滅菌液体賦形剤(例えば、水)の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即座の注射溶液および懸濁液は、前述の種類の無菌粉末剤、果粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0253】
局所投与に適した製剤は、適切な担体などの活性成分に加えて、クリーム、ゲル、ペースト、または泡として提示されうる。一部の実施形態では、局所用製剤は、構造剤、増粘剤またはゲル化剤、ならびに軟化剤または潤滑剤から選択される一つ以上の成分を含有する。頻繁に使用される構造剤は、ステアリルアルコール、グリセリルエーテルもしくはエステル、およびオリゴ(エチレンオキシド)エーテルもしくはそのエステルなどの長鎖アルコールを含む。増粘剤およびゲル化剤には、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸のポリマーおよびそのエステル、ポリアクリルアミド、ならびに寒天、カラゲナン、ゼラチン、およびグアーガムなどの天然起源の増粘剤が含まれる。軟化物の例としては、トリグリセリドエステル、脂肪酸エステルおよびアミドや、蜜ろう、鯨ろう、またはカルナウバろうなどのワックスや、レシチンなどのリン脂質や、ステロールおよびそれらの脂肪酸エステルが含まれる。局所製剤は、他の成分、例えば、収斂薬、芳香剤、色素、皮膚浸透促進剤、日焼け止め剤(例えば、サンブロック剤)などをさらに含みうる。
【0254】
本開示の化合物はまた、経口投与のために製剤化されてもよい。経口医薬製剤については、適切な賦形剤は、マンニトール、ラクトース、グルコース、スクロース、デンプン、セルロース、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、および/または炭酸マグネシウムなど、医薬グレードの担体を含む。経口液体製剤での使用については、組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、またはシロップ剤として調製されてもよく、例えば、水性生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、またはエタノール、好ましくは水または生理食塩水などの水性担体での水分補給に適した固体または液体形態で供給されてもよい。望ましい場合、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、または緩衝剤などの少量の無毒性補助物質を含有してもよい。本発明の化合物はまた、従来利用可能なものなど、既存の栄養補助成分配合物に組み込まれてもよく、これには、ハーブエキスも含まれうる。
【0255】
シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液などの経口投与または直腸投与のための単位剤形が提供されてもよく、各用量単位、例えば、茶さじ量、食さじ量、錠剤または坐剤は、一つ以上の阻害剤を含有する組成物の所定量を含有する。同様に、注射または静脈内投与のための単位投与形態は、滅菌水、生理食塩水、または別の薬学的に許容可能な担体中の溶液として、組成物中の阻害剤を含みうる。
【0256】
本明細書で使用される場合、「単位投与形態」という用語は、ヒトおよび動物対象者のための単位用量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体またはビヒクルに関連して望ましい効果を生じるのに十分な量で計算された、所定量の本発明の化合物を含有する。本発明の新規単位投与形態の仕様は、用いられる特定の化合物、達成される効果、および宿主内での各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0257】
用量レベルは、特定の化合物、送達ビヒクルの性質などの関数として変化しうる。所与の化合物に対する望ましい投与量は、様々な手段によって容易に決定可能である。
【0258】
本発明の文脈において、動物、特にヒトに投与される用量は、例えば、下記でより詳細に記載するように、妥当な時間枠にわたって、動物において予防または治療反応をもたらすのに十分であるべきである。用量は、使用される特定の化合物の強度、動物の状態、および動物の体重、ならびに疾患の重症度および疾患の段階を含む様々な要因に依存する。用量のサイズはまた、特定の化合物の投与に付随しうる有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。
【0259】
薬学的投与形態では、化合物は、遊離塩基、その薬学的に許容可能な塩の形態で、または単独で、もしくは適切な会合で投与されてもよく、ならびに他の薬学的に活性化合物との組み合わせで使用されてもよい。
【0260】
一部の実施形態では、医薬組成物は、標的タンパク質に高親和性で特異的に結合する当該化合物、および薬学的に許容可能なビヒクルを含む。特定の実施形態では、標的タンパク質はVEGFタンパク質であり、当該化合物はVEGF拮抗薬である。
【0261】
キット
また、本開示の化合物を含むキットも提供される。本開示のキットは、化合物の一つ以上の用量、および任意に一つ以上の追加的な活性薬剤の一つ以上の用量を含みうる。好都合にも、製剤は単位用量フォーマットで提供されうる。こうしたキットには、製剤(例えば、単位用量)を含有する容器に加えて、本発明の方法における当該製剤の使用、例えば、病原性血管新生に関連する細胞状態を治療するために、当該単位用量を使用するための説明書を記述する、情報パッケージ挿入物がある。キットという用語は、パッケージ化された活性薬剤を指す。一部の実施形態では、当該システムまたはキットは、血管新生に関連する疾患または状態(例えば、本明細書に記載される)について、対象者を治療するために有効な量の当該化合物の用量(例えば、本明細書に記載されるように)および第二の活性薬剤の用量(例えば、本明細書に記載されるように)を含む。
【0262】
上述の構成要素に加えて、当該キットは、例えば、当該方法を実施するために、キットの構成要素を使用するための説明書をさらに含みうる。説明書は、概して適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基質上に印刷されてもよい。そのため、説明書は、キットの容器またはその構成要素(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに関連する)などのラベルに、キット内にパッケージ挿入物として存在してもよい。その他の実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、ハードディスクドライブ(HDD)、ポータブルフラッシュドライブ上に存在する電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の説明書は、キット中に存在せず、例えば、インターネットを介するなど、遠隔ソースから説明書を取得するための手段が提供される。この実施形態の例は、説明書を閲覧できる、および/または説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は、適切な基質上に記録される。
【0263】
一部の実施形態では、キットは、当該医薬組成物の第一の用量と、当該医薬組成物の第二の用量とを含む。特定の実施形態では、キットは、第二の血管新生調節剤をさらに含む。
【0264】
当然のことながら、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、そのため、変化しうる。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものであるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記述するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0265】
値の範囲が提供される場合、文脈によって別途明確に指示されない限り、その範囲の上限と下限の間に介在する各値は、その下限の単位の10分の1に至るまで、また、その表示された範囲内に表示されたその他任意の値もしくは介在する値は、本発明内に包含されることが理解される。より小さなこれらの範囲の上限および下限は、独立的に、その小さな範囲に含まれてもよく、また表示された範囲内に特定的に除外された限界がない限り、本発明内に包含される。記載の範囲が、限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0266】
特定の範囲は、本明細書では、「約」という用語が先行する数値と共に提示される。「約」という用語は、本明細書では、それが先行する正確な数、ならびにその用語が先行する数に近接する数であるか、または概ねその数である数に対して、文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数値が、具体的に列挙された数値に近接するか、または概ねその数であるかを判定するにあたり、未列挙の近接する数または概ねその数である数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数値と実質的に同等な数値を提供する数でありうる。
【0267】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および学術用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実践または試験には、本明細書に記載されるものと類似または同等な任意の方法および材料も使用することができるが、代表的な例示的方法および材料についてここで説明する。
【0268】
本明細書において引用される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が、参照により組み込まれるものとして、具体的かつ個別に示されているかのごとく、参照により本明細書に援用され、その刊行物は引用される方法および/または材料を開示および記述するために本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであり、先行発明によって、本発明がこうした刊行物を先行する資格を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、実際の公表日とは異なる場合があり、それらは個別に確認する必要がある場合がある。
【0269】
本明細書で使用される場合、および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって別途明確に指示されない限り、複数の参照を含むことが注目されるべきである。さらに、選択が自由な任意の要素を除外するために、請求項が起草されうることが注目される。したがって、この陳述は、請求要素の列挙、または「負」の制限の使用に関連して、「単に」、「唯一」などの排他的用語を使用するための先行事項としての役割を果たすことを意図している。
【0270】
本開示を読むことで、当業者には明らかであるように、本明細書に説明および図示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離したり、またはそれらと組み合わせることができる、別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0271】
装置および方法は、文法的な流動性のために機能的説明とともに説明されているが、特許請求の範囲は、35 U.S.C. §112に基づき明示的に定められている場合を除き、いかなる方法でも、「手段」もしくは「ステップ」の制限の構造によって、必然的に制限されるものとは解釈されるべきでなく、司法上の均等物の原則に基づき、請求の範囲によって提供される、定義の意味および均等物の完全な範囲が許容されるべきであり、また、請求の範囲が35 U.S.C. §112に基づき明示的に策定されている場合、35 U.S.C. §112に基づき完全な法定の均等物が許容されるべきである。
【0272】
定義
「ペプチド性」という用語は、主としてポリペプチドとして互いに連結されたアミノ酸残基からなる部分を指す。「ペプチド性」という用語は、従来のポリペプチド配列の1個
、2個、またはそれ以上の残基が、ペプチド模倣体で置換された化合物を含むことを意味する。ペプチド模倣体は、ペプチドまたはアミノ酸残基を模倣するよう設計された低分子有機基である。ペプチド性部分のペプチド模倣基は、従来のポリペプチド骨格に連結された非天然起源または合成の骨格基、および任意の好都合な当該アミノ酸残基の側鎖基を模倣する任意の側鎖基を含みうる。一部の実施形態では、主としてアミノ酸残基からなるペプチド性化合物は、ペプチド模倣部分で置換された親ポリペプチド配列の10個のアミノ酸残基当たり2個以下の残基を有する。任意の好都合なペプチド模倣基およびペプチド模倣ケミストリーは、当該ペプチド性化合物において利用が可能である。ペプチド性という用語はまた、二つ以上の当該ペプチド性化合物が共有結合している多量体ペプチド性化合物をも含むことを意味する。ペプチド性という用語はまた、非タンパク質性部分が化合物に共有結合している修飾ペプチド性化合物をも含むことを意味する。
【0273】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指すために、互換的に使用される。別途具体的に指示のない限り、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、遺伝的にコードされたアミノ酸およびコードされていないアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されたアミノ酸または誘導体化されたアミノ酸、ならびに修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含みうる。この用語は、一つ以上の従来的なアミノ酸が非天然起源アミノ酸または合成アミノ酸で置換されたポリペプチドを含む。ポリペプチドは、任意の長さであってもよく、例えば、2個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、10個以上のアミノ酸、20個以上のアミノ酸、30個以上のアミノ酸、40個以上のアミノ酸、50個以上のアミノ酸、60個以上のアミノ酸、100個以上のアミノ酸、300個以上のアミノ酸、500個以上のアミノ酸、または1000個以上のアミノ酸であってもよい。
【0274】
本明細書に描写されるポリペプチド配列およびモチーフについては、別途記載がない限り、大文字コードはL-アミノ酸残基を指し、小文字コードはD-アミノ酸残基を指す。アミノ酸残基のグリシンは、GまたはGlyとして表される。「a」はアラニンである。「c」はシステインである。「d」はアスパラギン酸である。「e」はグルタミン酸である。「f」はフェニルアラニンである。「h」はヒスチジンである。「i」はイソロイシンである。「k」はリジンである。「l」はロイシンである。「m」はメチオニンである。「n」はアスパラギンである。「o」はオルニチンである。「p」はプロリンである。「q」はグルタミンである。「r」はアルギニンである。「s」はセリンである。「t」はトレオニンである。「v」はバリンである。「w」はトリプトファンである。「y」はチロシンである。本明細書に記載される任意の配列およびモチーフ、例えば、VEGF-Aに特異的に結合するペプチド性化合物を画定する配列については、VEGF-Aの鏡像に特異的に結合する鏡像化合物も包含されることが理解される。本開示は、当該化合物、例えば、L-VEGF-Aに特異的に結合するD-VEGF-AおよびD-ペプチド性化合物に特異的に結合するL-ペプチド性化合物の両方のバージョンを包含することを意味する。D-VEGF-Aタンパク質は、主に様々なインビトロ用途において標的化されうる一方で、L-VEGF-Aタンパク質は、様々なインビトロ用途および/またはインビボ用途に対して標的化されうることが理解される。
【0275】
アミノ酸残基の「類似体」という用語は、参照アミノ酸残基の側鎖基の構造的および/または機能的な類似体である側鎖基を有する残基を指す。一部の実例では、アミノ酸類似体は、一つ以上の天然アミノ酸の骨格構造、および/または側鎖構造を共有し、その差異は、分子中の一つ以上の修飾基である。こうした修飾には、限定されないが、関連する原子(Sなど)に対する原子(Nなど)の置換、基(メチル基、もしくはヒドロキシル基など)または原子(F、Cl、もしくはBrなど)の付加、基の欠失、共有結合の置換(単結合を二重結合になど)、またはそれらの組み合わせが含まれうる。例えば、アミノ酸類似体は、アルファ-ヒドロキシ酸、およびアルファ-アミノ酸等を含んでもよい。一部の事例では、アミノ酸残基の類似体は、アミノ酸の置換バージョンである。アミノ酸残基の「置換バージョン」という用語は、参照アミノ酸残基の側鎖中に存在しない側鎖基上に一つ以上の追加的な置換基を含む側鎖基を有する残基を指す。
【0276】
「芳香族アミノ酸」および「芳香族残基」という用語は、互換的に使用され、側鎖基がアリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリール基を含むアミノ酸残基を指す。一部の事例では、側鎖基は、アリール-アルキル、置換アリール-アルキル、ヘテロアリール-アルキル、または置換ヘテロアリール-アルキル基である。この用語は、天然起源および非天然起源のアルファアミノ酸を含むことが意図される。天然起源の当該芳香族残基には、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびヒスチジンが含まれる。
【0277】
「炭素環式アミノ酸」および「炭素環式残基」という用語は、互換的に使用され、側鎖基がアリール基または飽和炭素環式基を含むアミノ酸残基を指す。一部の事例では、側鎖基は、シクロアルキル-アルキル基または置換シクロアルキル-アルキル基である。当該非天然起源の側鎖基には、限定されないが、シクロヘキシル-CH-、シクロペンチル-CH、シクロヘキシル-(CH- 、およびシクロペンチル--(CH-が含まれる。
【0278】
「複素環式アミノ酸」および「複素環式残基」という用語は、互換的に使用され、側鎖基がヘテロアリール基または飽和複素環式基などの複素環式基を含むアミノ酸残基を指す。一部の事例では、側鎖基は、ヘテロ環アルキル基または置換ヘテロ環アルキル基である。この用語は、天然起源および非天然起源のアルファアミノ酸を含むことが意図される。天然起源の当該複素環式残基には、トリプトファンおよびヒスチジンが含まれる。
【0279】
「非極性アミノ酸残基」および「非極性残基」という用語は、水素(すなわち、G)または非極性基である側鎖を含むアミノ酸残基を指す。一部の事例では、非極性アミノ酸側鎖は疎水性基である。この用語は、天然起源および非天然起源のアルファアミノ酸を含むことが意図される。天然起源の当該非極性アミノ酸残基は、天然起源の疎水性残基を含む。
【0280】
「疎水性アミノ酸」および「疎水性残基」という用語は、互換的に使用され、側鎖基が疎水性基であるアミノ酸残基を指す。この用語は、天然起源および非天然起源のアルファアミノ酸を含むことが意図される。天然起源の当該疎水性残基には、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、およびバリンが含まれる。
【0281】
「極性アミノ酸」および「極性残基」という用語は互換的に使用され、側鎖基が極性基または荷電基を含むアミノ酸残基を指す。特定の事例では、極性基は、水素結合ドナーまたは受容体であることができる。この用語は、天然起源および非天然起源のアルファアミノ酸を含むことが意図される。天然起源の当該極性残基には、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、およびトリプトファンが含まれる。
【0282】
「足場」および「足場ドメイン」という用語は、互換的に使用され、当該ペプチド性化合物が生成された、または当該ペプチド性化合物が例えば、配列アライメント法または構造アライメント法を介して比較することができる参照ペプチド性フレームワークモチーフを指す。足場ドメインの構造モチーフは、天然起源のタンパク質ドメイン構造に基づくことができる。特定のタンパク質ドメイン構造モチーフについては、いくつかの関連する基礎となる配列が利用可能であることがあり、そのうち任意の一つが、足場ドメインの特定の三次元構造を提供することができる。足場ドメインは、特徴的なコンセンサス配列モチーフの観点から定義することができる。図14は、GA足場ドメインの3らせんバンドル構造モチーフを提供する、天然起源の16個の関連するタンパク質ドメイン配列のアライメントおよび比較に基づく、GA足場ドメインに対する可能性のある一つのコンセンサス配列を示す。
【0283】
「親アミノ酸配列」、「親配列」および「親ポリペプチド」という用語は、そこからバリアントペプチド性化合物が発生し、それに対してバリアントペプチド性化合物が比較されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。親ポリペプチドは、本明細書に開示される修飾またはバリアントアミノ酸のうちの一つ以上を欠失し、本明細書に開示されるバリアントペプチド性化合物と比較して機能が異なることがある。親ポリペプチドは、未変性ドメイン配列(例えば、配列番号2~21)、既存のアミノ酸配列修飾(例えば、安定性または溶解性の増加など、ドメインに望ましい物理的特性を付与することが知られている、任意の好都合な点変異または切断など)を有する天然ドメイン足場配列、または非天然起源のコンセンサス配列(例えば、いくつかの当該天然ドメインに基づくコンセンサスモチーフの配列、図14を参照)でもよい。
【0284】
「対応する残基」および「~に対応する残基」という用語は、例えば、図13に示すGAドメイン番号付け方式によって定義されるように、変異体および親配列の等価の位置に位置するアミノ酸残基を意味するために使用される。図13の番号付け方式は、当該化合物の配列に含まれなければならない残基の最小数または最大数を定義することを意図するものではないことが理解される。53の残基番号付け方式に基づく当該化合物は、3らせんバンドル構造モチーフを保持するのに十分な任意の好都合数の残基を含みうる。一部の事例では、当該化合物は、N末端切断配列および/またはC末端切断配列(例えば、本明細書に記載される通り)を含む、53個未満の残基を含む。
【0285】
「バリアントアミノ酸」および「バリアント残基」という用語は、互換的に使用され、基礎となる足場ドメインと比較して、修飾または変異される当該化合物の特定の残基を指す。バリアント残基は、標的に特異的に結合する望ましいドメインモチーフ構造を提供するために、(例えば、鏡像スクリーニング、親和性成熟および/または点変異を介して)選択された残基を包含する。化合物が、足場ドメインと比較して特定の位置でのアミノ酸変異またはアミノ酸修飾を含む場合、それらの特定の位置に位置するペプチド性化合物のアミノ酸残基は、「バリアントアミノ酸」と称される。こうしたバリアントアミノ酸は、標的タンパク質への特異的結合、水溶性の増加、化学合成の容易さ、代謝安定性など、結果として生じるペプチド性化合物に異なる機能を付与しうる。本開示の態様は、GA足場ドメインに基づいてファージディスプレイライブラリから選択され、(例えば、追加的な親和性成熟および/または点変異を介して)さらに開発され、そのため、GA足場ドメインと統合されたいくつかのバリアントアミノ酸を含む、ペプチド性化合物を含む。
【0286】
「バリアントドメイン」および「バリアントモチーフ」という用語は、足場ドメインの特定の位置に組み込まれたバリアントアミノ酸の配置を指す。バリアントモチーフは、残基の連続配列および/または不連続配列を包含しうる。バリアントモチーフは、化合物構造の一つの面に位置するバリアントアミノ酸を包含しうる。バリアントドメインは、基礎となる足場ドメイン構造または配列に組み込まれるか、またはそれらと一体化されるとみなされうる。当該化合物において、足場ドメインは、安定的な三次元タンパク質構造モチーフ、例えば、天然起源のタンパク質ドメインを提供することができ、一方でバリアントドメインは、標的タンパク質を特異的に結合することができる構造の修飾表面での、特徴的な最小数のバリアント残基の配置によって定義することができる。
【0287】
「フレームワーク残基」という用語は、バリアントアミノ酸ではないペプチド性化合物の足場ドメインの残留アミノ酸残基を指す。したがって、フレームワーク残基からなる構造または配列モチーフは、基礎となる足場ドメイン構造または配列の残基の対応する配置によって画定される。当該化合物の配列および構造は、バリアント残基とフレームワーク残基の組み合わせによって画定されうる。
【0288】
「変異」という用語は、足場配列などの参照配列に対するアミノ酸残基またはヌクレオチド残基の欠失、挿入、または置換を指す。
【0289】
「ドメイン」という用語は、アミノ酸残基の連続的または不連続的な配列を指す。ドメインは、一つ以上の領域またはセグメントを含みうる。「領域」および「セグメント」という用語は、互換的に使用され、一部の事例では、特定の二次的な構造的特徴を画定しうるアミノ酸残基の連続配列を指す。
【0290】
「非コア変異」という用語は、構造の疎水性コアの一部ではない構造内の位置に位置するペプチド性化合物のアミノ酸変異を指す。ペプチド性化合物の疎水性コア中のアミノ酸残基は、著しく溶媒曝露されるのではなく、分子内疎水性接触を形成する傾向がある。疎水性コア残基の特定に使用される方法論は、Dahiyat et al.(“Probing the role of packing specificity in protein design,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
1997, 94, 10172-10177)に記載があり、ここで、PDB構造は、どの側鎖がそれらの表面積の10%未満を溶媒に曝露するかを計算するために使用された。一部の事例では、Degradoの7連子繰返しモデル(DeGrado et al. “Analysis and design of three-stranded coiled coils and three-helix bundles”, Folding & Design 1998, 3: R29-R40)は、図6に図示したように、疎水性コアの「a」および「d」残基を画定するために使用されうる。こうした方法は、GAドメイン足場と共に使用するために修飾されうる。
【0291】
「表面変異」という用語は、溶媒曝露された構造内の位置に位置する足場ドメインでのアミノ酸変異を指す。D-ペプチド性化合物の表面位置でのこうしたバリアントアミノ酸残基は、そのような相互作用が起こるか否かにかかわらず、標的分子と直接相互作用することができる。一部の事例では、Degradoの7連子繰返しモデルは、図6に示すように、高度に溶媒曝露される「c」および「g」残基を画定するために使用されうる。
【0292】
「境界変異」という用語は、疎水性コアと溶媒曝露表面との間の境界にある構造内の位置に位置する、足場中のアミノ酸変異を指す。ペプチド性化合物の境界位置でのこうしたバリアントアミノ酸残基は、このような相互作用が起こるか否かにかかわらず、部分的に疎水性コア残基と接触し、および/または部分的に溶媒曝露し、標的分子との何らかの相互作用をしうる。構造のコア残基、表面残基、および境界残基を記述するための一つの基準は、Mayo et al. Nature Structural Biology, 5(6), 1998, 470-475に記載がある。一部の事例では、図6および7Bに示すように、Degradoの7連子繰返しモデルを利用して、少なくとも部分的に溶媒曝露された「c」および「g」残基を画定することができる。こうした方法および基準は、当該化合物と共に使用するために修正することができる。
【0293】
「連結配列」という用語は、二つのペプチドモチーフまたは領域を接続するアミノ酸残基の連続配列、またはその類似体を指す。特定の事例では、連結配列は、二つの逆平行らせん領域を接続するループまたは方向転換領域(例えば、本明細書に記載される通り)である。
【0294】
「安定」という用語は、例えば標的タンパク質への結合など、その通常の機能的活性の少なくとも一つを保持するように、特定の温度で生理学的条件下で折り畳まれた状態を維持することができる化合物を指す。化合物の安定性は、標準方法を使用して決定することができる。例えば、化合物の「熱安定性」は、熱溶融物(Tm)温度を測定することによって決定することができる。Tmは、化合物の半分が展開される温度を摂氏で表す。一部の実例では、Tmが高いほど、化合物はより安定している。
【0295】
「類似」、「保存的」、および「高度に保存的」という用語の付いたアミノ酸置換は、以下の表6に示すように定義される。アミノ酸残基置換が類似しているか、保存的であるか、または高度に保存的であるかの判定は、ポリペプチド骨格ではなく、アミノ酸残基の側鎖に基づくことができる。
アミノ酸置換の分類
【表6-1】
【表6-2】
【0296】
「特異性決定モチーフ」は、バリアント足場ドメインの特定の位置で組み込まれたバリアントアミノ酸の配置を指し、標的タンパク質へのバリアントドメインの特異的結合を提供する。モチーフは、残基の連続配列および/または不連続配列を包含してもよい。モチーフは、化合物構造の一方の面に位置し、標的タンパク質を接触させることができるバリアントアミノ酸を包含してもよく、または標的との接触を提供しないが、むしろ標的への結合を強化する天然ドメイン構造に対する修飾を提供するバリアント残基を包含してもよい。モチーフは、基礎となる足場ドメイン構造または配列、例えば、天然起源のGAドメインまたはZドメインの3らせんバンドルに組み込まれるか、またはそれらと統合されるとみなされうる。
【0297】
標的タンパク質のエピトープまたは結合部位に「特異的に結合する」化合物は、当技術分野で周知の用語であり、こうした特異的または優先的な結合を決定する方法も当技術分野で周知である。化合物は、代替の細胞もしくは物質とよりも、特定の細胞もしくは物質(標的タンパク質)と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより大きな親和性で会合する場合に、「特異的結合」を示す。D-ペプチド性化合物は、他の物質と結合するよりも、高い親和性で、高いアビディティで、より簡単に、および/またはより長い持続時間にわたり結合する場合に、標的に「特異的に結合」する。例えば、VEGFエピトープまたは部位に特異的にまたは優先的に結合する化合物は、他のVEGFエピトープまたは非VEGFエピトープに結合するよりも、高い親和性で、高いアビディティで、より簡単に、および/またはより長い持続時間にわたり、このエピトープまたは部位に結合する抗体である。また、この定義を読むことによって、例えば、第一の標的に特異的にまたは優先的に結合する化合物は、第二の標的に特異的にまたは優先的に結合してもよく、または結合しなくてもよいことも理解される。そのため、「特異的結合」は、必ずしも排他的な結合を必要としない(含めることはできる)。一般的に、必ずしもではないが、結合への言及は、特異的結合を意味する。
【0298】
化合物は、一つ以上の不斉中心を含んでもよく、従って、絶対立体化学の観点から、アミノ酸およびポリペプチドについて、(R)-もしくは(S)-もしくは(D)-もしくは(L)-として定義されうるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性形状を生じうる。本開示は、こうした全ての可能性のある異性体、ならびにそれらのラセミ形態、ジアステレオマー形態、および光学的に純粋な形態を含むことが意図されている。本明細書に記載される化合物が、オレフィン二重結合または幾何学的非対称の他の中心を含有する場合、かつ別途指定がない限り、化合物がEおよびZの幾何学的異性体の両方を含むことが意図される。同様に、全ての互変異性体も含有されることが意図されている。
【0299】
「標的タンパク質」という用語は、標的ファミリーの全メンバー、ならびにその断片およびエナンチオマー、ならびにそのタンパク質模倣体を指す。本明細書に記載される当該標的タンパク質は、別途明示的な記載がない限り、標的ファミリーの全メンバー、ならびにその断片およびエナンチオマー、ならびにそのタンパク質模倣体を含むことが意図される。標的タンパク質は、治療標的または診断標的などの任意の当該タンパク質であってもよい。「標的タンパク質」という用語は、任意の好都合な組み換え体発現方法を使用して、または任意の好都合な合成方法を使用して調製されうる、または、商業的に購入される、組換え分子および合成分子、ならびに標的分子を含有する融合タンパク質、ならびに合成Lタンパク質またはDタンパク質を含むことが意図される。
【0300】
本明細書において使用される場合、「VEGF」またはその未省略形の「血管内皮成長因子」という用語は、VEGF遺伝子によってコードされるタンパク質産物を指す。VEGFという用語には、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-EなどのVEGFファミリーのすべてのメンバー、およびその断片とエナンチオマーが含まれる。用語VEGFは、任意の好都合な組み換え体発現方法を使用して、または任意の好都合な合成方法を使用して調製されうる、または、商業的に購入(例えば、R & D Systems、カタログ番号210-TA、ミネソタ州ミネアポリス)される、組換えおよび合成VEGF分子、ならびにVEGF分子を含有する融合タンパク質、ならびに合成L-タンパク質または合成D-タンパク質を含むことが意図される。VEGFは、血管形成(胚性循環系の新規形成)と血管新生(既存の血管系からの血管の成長)の両方に関与し、リンパ脈管新生として知られる過程においてリンパ管の成長にも関与しうる。VEGFファミリーのメンバーは、細胞表面上のチロシンキナーゼ受容体(VEGFR)に結合することにより細胞応答を刺激し、それにより二量体化し、リン酸基転移を介して活性化される。VEGF受容体は、7つのイムノグロブリン様ドメインを含む細胞外部分、単一の膜貫通型スパン領域、および分裂チロシンキナーゼドメインを含む細胞内部分を有する。VEGF-Aは、VEGFR-1(Flt-1)およびVEGFR-2(KDR/Flk-1)に結合する。VEGFR-2は、VEGFに対する細胞応答のいくつかを媒介すると考えられる。VEGF、その生物活性、およびその受容体は十分に研究されており、Matsumoto et al. (VEGF receptor signal transduction Sci STKE.
2001:RE21)、およびMarti et al (Angiogenesis in ischemic disease. Thromb
Haemost. 1999 Suppl 1:44-52)に記載がある。例示的なVEGFのアミノ酸配列は
、NCBIのGenbankデータベースにあり、VEGFタンパク質および様々な疾患および病態におけるそれらの役割の詳細な説明は、NCBIのOnline Mendelian Inheritance in Manデータベースにある。
例示的な実施形態
【0301】
本開示の態様は、以下に記載される項目および例示的な実施形態で具体化される。
【0302】
第1項。 VEGF-Aに特異的に結合するD-ペプチド性化合物であって、化合物がGB1ドメイン足場を含まないことを条件とする、D-ペプチド性化合物。
【0303】
第2項。 非極性残基、芳香族残基、複素環式残基および炭素環式残基から独立的に選択される6個以上のVEGF-A接触残基を含むVEGF-A結合面を合わせて画定する、少なくとも二つの逆平行らせん領域[らせんA]および[らせんB]を含むVEGF-A結合2らせん複合体を含む、第1項のD-ペプチド性化合物。
【0304】
第3項。 [らせんA]および[らせんB]がそれぞれ、7連子繰返し配列(abcdefg)を含み、6個以上のVEGF-A接触残基が、7連子繰返し配列のcおよびg位置に位置付けられる、第2項のD-ペプチド性化合物。
【0305】
第4項。 第1項に記載のD-ペプチド性化合物であって、
それぞれ7連子繰返し配列(abcdefg)を含み、実質的にa残基およびd残基を含む疎水性コアを画定するように構成されたらせん領域[らせん1]、[らせん2]、および[らせん3]を含む、VEGF-A結合3らせんバンドルを含み、
[らせん2]および[らせん3]が、互いに逆平行を構成し、非極性、芳香族、複素環式、および炭素環式残基から独立的に選択される6個以上のVEGF-A接触残基を含む、前記3らせんバンドルのVEGF-A結合g-g面を合わせて画定する、第1項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0306】
第5項。 3らせんバンドルが、式(I)のGAドメインモチーフであり、
[らせん1]-[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]
(I)
[リンカー1]および[リンカー2]が独立的に、1~10残基のペプチド結合配列である、第4項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0307】
第6項。 6個以上のVEGF-A接触アミノ酸残基が、VEGF-Aに接触するように構成され、g-g面のcおよびgの溶媒曝露位置に位置付けられる4個以上の芳香族アミノ酸残基を含む、第4~5項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0308】
第7項。 [らせん2]が、7連子繰返し配列[c]を含み、[らせん3]が、7連子繰返し配列[e]を含み、
[らせん2]の残基d, aおよびdが、[らせん3]の残基a, dおよびaと相互作用し、
[らせん2]の残基c, gおよびc、ならびに[らせん3]の残基gが、それぞれ独立的に、芳香族、複素環式、または炭素環式残基である、第4~6項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0309】
第8項。 VEGF-A結合表面が、らせんAおよびらせんBの7連子繰返し配列のcおよびg位置に位置するVEGF-A接触残基の以下の構成を含み、
【化3】
式中、
各h*は、独立的にヒスチジンまたはその類似体であり、
f*は、フェニルアラニンまたはその類似体であり、
各uは、独立的に、非極性アミノ酸残基である、第2~7項のいずれか一つに記載のD-ペプチド性化合物。
【0310】
第9項。 第4~5項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、
[らせん2]は次式であり、
h*jxxf*jxh*j(配列番号151)
[らせん3]は次式であり、
h*jxujxxuj (配列番号152)
式中、
各h*は、独立的にヒスチジンまたはその類似体であり、
f*は、フェニルアラニンまたはその類似体であり、
各uは、独立的に、非極性アミノ酸残基であり、
各jは、独立的に疎水性残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0311】
第10項。 第9項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[らせん2]が、次式の配列によって定義される。
zh*jxxf*jxh*jz(配列番号153)
式中、各zは独立的に、らせん末端残基である。
【0312】
第11項。 各らせん末端残基(z)が、d、pおよびGから独立的に選択される、第10項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0313】
第12項。 [リンカー2]が、2アミノ酸残基以下の長さであり、チロシン残基またはその類似体を含む、第5~11項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0314】
第13項。 第5~12項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]が、次式の配列を含む。
zh*jxxf*jxh*jzy*xxh*jxujxxujx(配列番号154)
式中、
y*は、チロシンまたはその類似体であり、
各h*は、独立的にヒスチジンまたはその類似体であり、
f*は、フェニルアラニンまたはその類似体であり、
各uは、独立的に、非極性アミノ酸残基であり、
各jは、独立的に疎水性残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0315】
第14項。 第5~13項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[リンカー1]が、次式の配列を有する。
z(x)e*z(配列番号148)
式中、
各xはアミノ酸であり、nは1、2、または3であり、
各zは独立的に、らせん末端残基(例えば、Gまたはp)であり、
e*は、グルタミン酸またはその類似体である。
【0316】
第15項。 第5~14項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[リンカー1]-[らせん2]-[リンカー2]-[らせん3]が、次式の配列を含む。
zxxe*zh*jxxf*jxh*jzy*xxh*jxujxxujx(配列番号155)
式中、
e*は、グルタミン酸またはその類似体であり、
各zは、独立的に、らせん末端残基であり、
y*は、チロシンまたはその類似体であり、
各jは、独立的に疎水性残基であり、
各uは、独立的に非極性アミノ酸残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0317】
第16項。 第4~15項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[らせん2]は、次式の配列によって定義される。
26hj28xxfj32xhj3536 (配列番号101)。
式中、
26は、d、pおよびGから選択され、
36は、pおよびGから選択され、
28、j32およびj35は、それぞれ独立的に疎水性残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0318】
第17項。 j28、j32およびj35が、a、i、lおよびvから独立的に選択される、段落16に記載のD-ペプチド性化合物。
【0319】
第18項。 j28、j32およびj35が、2019年6月24日に出願された米国特許出願公開第62/865,469号の配列番号1~21のいずれか一つから選択される、GA足場ドメインの対応する残基である、第17項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0320】
第19項。 第4~18項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[らせん2]が、次のうちから選択される配列によって定義される。
a) phvx2930fix33hap(配列番号102)
式中、
29は、fおよびiから選択され、
30およびx33は、極性アミノ酸残基から独立的に選択される、配列と、
b)a)で定義される配列に対して80%以上の同一性(例えば、2残基変化)を有するアミノ酸配列。
【0321】
第20項。 第19項に記載のD-ペプチド性化合物であって、
29は、iであり、
30は、sまたはnであり、
33はnである。
【0322】
第21項。 第4~20項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、[らせん3]は、次式の配列によって定義される。
xxhj41xuj44xxuj48xxx(配列番号103)
式中、
41、j44、およびj48は、それぞれ独立的に疎水性残基であり、
各uは、独立的に非極性アミノ酸残基であり、
各xは、独立的にアミノ酸残基である。
【0323】
第22項。 j41、j44およびj48は、a、i、lおよびvから独立的に選択される、第21項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0324】
第23項。 j41、j44およびj48が、2019年6月24日に出願された米国第62/865,469号の配列番号1~21から選択されるGA足場ドメインの対応する残基である、第21項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0325】
第24項。 段落21に記載のD-ペプチド性化合物であって、[らせん3]が、次のうちから選択される配列によって定義される。
a) x3839hvx42Glx4546aix4950a(配列番号98)
式中、
38は、v、e、k、rから選択され、
39、x42、46およびx50は、親水性アミノ酸残基(例えば、n、s、d、eおよびk)から独立的に選択され、および
45およびx49は、l、k、rおよびeから独立的に選択され、
b)a)で定義される配列に対して80%以上の同一性(例えば、2残基変化)を有するアミノ酸配列。
【0326】
第25項。 x38はvであり、x39はsであり、x42はnであり、x45はkであり、x46はnであり、x49はlであり、x50はkである、第24項のD-ペプチド性化合物。
【0327】
第26項。 段落4-25のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、化合物のVEGF-A結合ドメインが、参照GA足場配列に対して6個以上のバリアントアミノ酸残基を含み、6個以上のバリアントアミノ酸が、位置25のe、位置26のp、位置27のh、位置28のv、位置29のi、位置30のs、位置31のf、位置34のh、位置36のp、位置37のy、位置39のs、位置40のh、位置43のG、および位置47のaから選択される。
【0328】
第27項。 化合物が、位置26のp、位置31のf、および位置36のpを含む、第26項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0329】
第28項。 化合物が、位置26のp、位置29のi、位置30のsといったバリアントアミノ酸を含む、第26項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0330】
第29項。 化合物が、位置27、位置34、および位置40にhを含む、段落26~28のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0331】
第30項。 化合物が、位置43のG、および位置47のAを含む、第26~29項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0332】
第31項。 化合物が位置28のvを含む、第26~30項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0333】
第32項。 第1~31項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物であって、化合物が、
a) llknakedaiaelkkcGitephvisfinhapyvshvnGlknailkaと、
b)a)で定義される配列に対して85%以上の同一性を有するアミノ酸配列、から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0334】
第33項。 [らせん1]が、a) llknakedaiaelkka21(配列番号74)、およびb) a)で定義される配列と75%以上の同一性を有するアミノ酸配列、から選択される配列を含む、第4~32項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0335】
第34項。 化合物が、a) G22itephvisfinhapyvshvnGlknailka51(配列番号84)、およびb) a)で定義される配列に対して75%以上の同一性を有する アミノ酸配列から選択される配列を含む、第1~33項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0336】
第35項。 化合物が、a) llknakedaiaelkkaGit.......in.a..v.vn..kn.ilka51(配列番号156)、およびb) a)で定義される配列に対して88%以上の同一性を有するアミノ酸配列、から選択されるペプチド性フレームワーク配列を含む、第1~34項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0337】
第36項。 化合物が、a) tidqwllknakedaiaelkkaGit.......in.a..v.vn..kn.ilkaha53(配列番号157)、およびb) a)で定義される配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列、から選択されるペプチド性フレームワーク配列を含む、第1~35項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0338】
第37項。 化合物が、2019年6月24日に出願された米国特許出願公開第62/865,469号の配列番号22~71から選択される配列を含む、第1~36項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0339】
第38項。 連結された非タンパク質性ポリマー部分をさらに含む、第1~37項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0340】
第39項。 連結された特異的結合部分をさらに含む、第1~37項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0341】
第40項。 連結された特異的結合部分が、第二のD-ペプチド性結合ドメインである、第39項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0342】
第41項。 化合物が、VEGF結合GAドメインの多量体構成を含む、第39~40項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0343】
第42項。 化合物が、ホモ二量体であり、連結された二つVEGF-A結合GAドメインを含む、第40~41項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0344】
第43項。 VEGF-A結合GAドメインが、ポリマーリンカーを介してN末端残基によって接続される、第42項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0345】
第44項。 VEGF-A結合GAドメインモチーフが、ペプチドリンカーを介してN末端残基によって接続される、第42項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0346】
第45項。 化合物が、ヘテロ二量体である、第40~41項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0347】
第46項。 第二のD-ペプチド性結合ドメインが、PDGF、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、EGF、EGFR、Her2、Her3、PD-1、PD-L1、CTLA4、OX-40、DR3、Ang-2、LAG3、HSA、およびIgから選択される標的タンパク質に特異的に結合する、第45項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0348】
第47項。 化合物が、100nM以下(例えば、30nM以下、10nM以下、3nM以下、1nM以下など)のK値でVEGF-Aタンパク質に特異的に結合する、第1~46項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0349】
第48項。 VEGF結合GAドメインが、45~60残基(例えば、46~55残基、50~54残基など)を含む、第1~47項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
【0350】
第49項。 第1~48項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【0351】
第50条。 組成物が、眼の疾患または状態の治療のために製剤化される、第49項の医薬組成物。
【0352】
第51項。 対象者において血管新生に関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、その方法が、それを必要とする対象者に、第1~48項のいずれか一項に従い、有効量の化合物を、または第49~50項のいずれか一項に従い、有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0353】
第52項。 血管新生に関連する疾患または状態が、癌(例えば、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌または卵巣癌)、炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、黄斑変性症、網膜症および皮膚疾患(例えば、酒さ)である、第51項に記載の方法。
【0354】
第53項。 血管新生に関連する疾患または状態が、糖尿病性黄斑浮腫(DME)である、第51項に記載の方法。
【0355】
第54項。 血管新生に関連する疾患または状態が、滲出型加齢黄斑変性(AMD)である、第51項に記載の方法。
【0356】
第55項。 有効量の第二の活性薬剤を対象者に投与することをさらに含む、第51~54項のいずれか一項に記載の方法。
【0357】
第56項。 第二の活性薬剤が、D-ペプチド性化合物である、第55項に記載の方法。
【0358】
第57項。 第二の活性薬剤は、小分子、化学療法剤、抗体、抗体断片、アプタマー、またはLタンパク質である、第55項に記載の方法。
【0359】
第58項。 第二の活性薬剤が、血小板由来成長因子(PDGF)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、EGF、EGFR、Her2、Her3、PD-1、PD-L1、CTLA4、OX-40、DR3、LAG3、Ang2、IL-1、IL-6、およびIL-17から選択される標的タンパク質に特異的に結合する、第55~57項のいずれか一項に記載の方法。
【0360】
第59項。 第二の活性薬剤が、PDGF-Bに特異的に結合する、第55項に記載の方法。
【0361】
第60項。 第二の活性薬剤が、ペグプレラニブ(Fovista)、ラニビズマブ(Lucentis)、トラスツズマブ(Herceptin)、ベバシズマブ(Avastin)、アフリベルセプト(Eylea)、ニボルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、およびペムブロリズマブから選択される、第55項に記載の方法。
【0362】
第61項。 血管新生に関連する疾患または状態のインビボでの診断または撮像のための方法であって、第1~49項のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物を対象者に投与することと、対象者の少なくとも一部を撮像することと、を含む、方法。
【0363】
第62項。 前記撮像が、PET撮像を含み、前記投与が、前記対象者の前記血管系に前記化合物を投与することを含む、第61項に記載の方法。
【0364】
第63項。 細胞受容体による前記化合物の取込みを検出することをさらに含む、第61項に記載の方法。
【0365】
第64項。 対象者にアバスチンを投与することをさらに含み、疾患または状態が、癌に関連する状態である、第61項に記載の方法。
【0366】
以下の実施例は、限定するものとしてではなく、例証として提供されるものである。
【実施例0367】
以下の実施例は、本発明の作製方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、発明者が発明として見なすものの範囲を限定することを意図しておらず、また以下の実験がすべて、または実施される唯一の実験であることを表すことは意図していない。使用した数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するために努力がなされているが、いくらかの実験誤差および逸脱を考慮に入れるべきである。別途示されていない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0368】
分子生化学および細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., HaRBor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds.,
John Wiley & Sons 1999)、Protein Methods (Bollag et al., John Wiley
& Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds.,
Academic Press 1999)、Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual (I. Lefkovits ed., Academic Press
1997); and Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998)に記載があり、その開示
を参照し本書に組込む。本開示の中で言及される方法、またはそれに関連する方法のための試薬、クローニングベクター、細胞、およびキットは、BioRad、Agilent
Technologies、Thermo Fisher Scientific、Sigma-Aldrich、New England Biolabs(NEB)、Takara Bio USA, Inc.などの商業ベンダーほか、例えばAddgene, Inc.、American Type Culture Collection(ATCC)などのリポジトリから入手可能である。
【0369】
(実施例1) D-ペプチド性化合物の選択
当該化合物は、WO2014/140882(Uppalapati et al.)に記載される方法を使用して、合成D-VEGF-A標的タンパク質への結合のための足場GAドメインファージディスプレイライブラリの鏡像スクリーニングを介して同定された。図13は、基礎となる53残基足場配列(配列番号2)、および足場の位置25、27、28、31、34、36、37、39、40、43、44および47での、太字の変異位置を含む、GAドメインライブラリの描写を示し、その位置は、ファージディスプレイライブラリ内のバリエーションを画定する。
【0370】
手短に、5ug/mlのD-VEGFAをNUNC Maxisorpプレートに被覆した。ブロッキング後、GAドメインライブラリを含む8つの足場ライブラリのプールを、空のウェル上で枯渇させた後にプレートに追加した。結合ファージを、OmniMax2 T1R細胞中で夜通し溶出して増幅させた。ラウンド3および4では、ラウンド2で溶出濃度が高すぎたため、約1×1013 cfu/mlの標準濃度と比較して、低濃度の増幅ファージプール(約5×1011 cfu/ml)を使用した。いくつかのヒットが、GAドメインライブラリからの17個の異なる配列を含む様々なライブラリから得られた。クローン間の配列同一性に基づいて、化合物1を含む三つの代表的なクローン(図15を参照)を、さらなる最適化のために選択した。化合物1は、親和性成熟のためのp3-融合ベクターへのクローン化の際に、D-VEGFAへの結合を保持した。
【0371】
親和性成熟の第1ラウンドについては、ソフト無作為化戦略(Fairbrother
et.al, 1998)を利用して、無作為化位置25、27、28、31、34、36、37、39、40、43、44および47の各々をコードするポリヌクレオチドをハンドミックスした塩基でドープし、その結果、未変性ヌクレオチドが70%で基礎となり、他の三つのヌクレオチドが10%の頻度で発生するようにした。これにより、これらの位置の各々で化合物1の親配列に見られるアミノ酸の40%の確率での保持が可能となる。親和性成熟ライブラリを、以下のGAドメインオリジナル配列由来のオリゴヌクレオチドおよびssDNAをテンプレートとして使用して、部位特異的変異誘導プロトコル(Fellouse et.al.)によって構築した。
AAGGCTGGTATCACC (N4)(N2)(N4) GAC (N2)(N1)(N4) (N3)(N4)(N4) TTCAAC (N4)(N4)(N4) ATCAAT (N4)(N1)(N4) GCG (N2)(N2)(N4) (N4)(N1)(N4) GTG (N4)(N2)(N4) (N3)(N1)(N4) GTTAAC (N3)(N2)(N1) (N2)(N4)(N3) AAGAAC (N3)(N1)(N3) ATCCTGAAAGCTCAC(配列番号130)
ここで、N1は、70%A、10%C、10%G、および10%Tの混合である。
N2は、10%A、70%C、10%G、および10%Tの混合である
N3は、10%A、10%C、70%G、および10%Tの混合である。
N4は、10%A、10%C、10%G、および70%Tの混合である。
【0372】
標準手順(Fellouse et.al.)を使用して、親和性成熟ライブラリをD-VEGFAに対してパンニングし、ラウンド3からの24クローンを分析し、競合ELISAを実施してそれらを親和性でランク付けした。化合物1.1を、このリストから当該クローンとして選択した。すべてのクローンの選択された位置の配列ロゴを、化合物1および未変性GAドメイン(GA-wt)と比較して図26に示す。この研究では、位置27、位置28、位置31、位置36、および位置44は、His27、Val28、Phe31、Pro36、およびLeu44として、すべてのクローンで高度に保存または保持された。芳香族残基His、TyrおよびPheは、位置34で優勢であった。His残基またはAsp残基は、位置40で優勢であった。GluまたはAlaは、位置47で優勢であった。
【0373】
親和性成熟の第二のラウンドを実施して、化合物1.1の親和性および安定性を向上させた。Pro残基が位置36で大幅に保存されたことを考えると、骨格立体配座の変化は、コア残基それぞれを有するらせん2の配向を変化させ、選択された化合物1.1の安定性に影響を与える可能性がある。その上、C末端近くの表面曝露残基は、追加的な接触を形成することができる。したがって、コアおよび表面曝露位置を含む以下の位置を、さらなる最適化のために選択した。位置15、18、19、21、23、25、26、28、29、30、47、48、49、50、51および52。再度、部位特異的変異誘発のために、以下のオリゴヌクレオチドを用いた、ソフト無作為化戦略を使用した。
GCGAAAGAAGATGCT (N1)(N4)(N4) GCAGAA (N2)(N4)(N2) (N1)(N1)(N1) AAG (N2)(N2)(N4) GGT (N1)(N4)(N2) ACC (N2)(N1)(N1) (N2)(N1)(N2) CAT (N2)(N4)(N4) (N4)(N4)(N2) (N1)(N1)(N2) TTTATCAATCACGCGC(配列番号131)
GTTAACGGGCTGAAGAAC (N2)(N2)(N2) (N1)(N4)(N2) (N2)(N4)(N2) (N1)(N1)(N1) (N2)(N2)(N4) (N2)(N1)(N2) GCCGGGAGCTCTGGAG(配列番号132)
【0374】
ライブラリを構築し、修正されたプロトコルを用いてD-VEGFAに対してパンニングした。D-VEGF-Aが高度に安定であり、3Mのグアニジン塩酸塩(GuHCl)でさえも倍率を保持することから、低~中濃度の変性剤の存在下での結合剤の選択は、親和性および安定性が改善されたクローンに対して同時に選択することができると仮定された。本手順では、ライブラリまたは増幅ファージプールを、選択の各ラウンドに対して、変性剤グアニジン塩酸塩(GuHCl)の様々な濃度で、PBT緩衝液(PBS、0.2%BSA、0.05%Tween(登録商標)20)中で再懸濁した。ファージを、37℃で2時間インキュベートして、平衡化させた。また選択も37℃で実施された。以下の条件が各ラウンドで使用された。
【表14】
【0375】
親和性成熟の4ラウンド後、いくつかのクローンを配列決定し、化合物1.1.1を、競合ELISAアッセイを用いた評価により当該クローンとして選択した。Cys21をバイスタンダー変異として同定し、Alaに戻して(例えば、ジスルフィド二量体化の可能性を排除するために)、当該リード化合物である化合物1.1.1(C21A)が得られた。
【0376】
さらに、WO2014/140882(Uppalapati et al.)によって記載されている、様々な足場ファージディスプレイライブラリを、合成D-VEGF-A標的タンパク質への結合についてスクリーニングした。いくつかの足場ドメインライブラリは、ファージディスプレイスクリーニング研究中にヒットクローンを産生し、当該VEGF-Aに特異的に結合するD-ペプチド性化合物が、様々な基礎となる足場ドメインのうちの一つを有しうることを示唆する。最初に、GAドメイン足場ライブラリからのヒットクローンを、さらなる調査のために選択した。
D-VEGFAへのヒットを生成した足場リスト
【表7-1】
【表7-2】
【0377】
(実施例2) D-ペプチド性化合物の合成および折り畳み
選択された化合物を、従来のFmoc固相ペプチド合成方法を使用して合成・精製した。一部の事例では、追加的な点変異を、例えば、本明細書に記載されるように含めた。化合物を緩衝剤中で折り畳み、本明細書に記載されるようにVEGF-A阻害活性について評価した。
【0378】
(実施例3) VEGF-A複合体のX線結晶構造
L-VEGF-Aと複合体化された化合物1.1.1(C A)のX線結晶構造を得た。図1は、VEGF-A(空間充填表現)と複合体化された例示的化合物1.1.1(c21a)(白色棒状表現)のX線結晶構造図を示す。複合体は二量体である。図1および図2では、化合物に接触するVEGF-Aの結合部位残基がピンク色で示されている。VEGF-A(8~109)結合部位残基は太字で示している:GQNHHEVVKFMDVYQRSYCHPIETLVDIFQEYPDEIEYIFKPSCVPLMRCGGCCNDEGLECVPTEESNITMQIMRIKPHQGQHIGEMSFLQHNKCECRPKKD(配列番号88);
【0379】
式中、二量体中の単一結合部位が、下記の残基によって定義される。
鎖A:KFMDVYQRSY(配列番号89)およびNDEGL(配列番号90)、および
鎖B:YIFKP(配列番号91)およびIMRIKPHQGQHI(配列番号92)。
【0380】
(実施例4) 選択された化合物の効力を評価する
VEGF-Aに対する当該化合物の結合親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して測定した。
例示的なL-ペプチド性化合物のD-VEGF-A結合親和性
【表8】
【0381】
当該化合物を、競合ファージELISAアッセイでVEGF-A結合について評価した。
例示的Lペプチド性化合物のD-VEGF-A結合活性
【表9-1】
【表9-2】
【0382】
当該化合物を、OctetアッセイでVEGF-A:VEGFR1の阻害について評価した。例示的な状態:10nMでのVEGF-A、濃度nMでの阻害剤、VEGF-A:VEGFR1 K=25pM。
VEGF-A: 例示的なD-ペプチド性化合物のVEGFR1阻害活性
【表10】
VEGF-A: 例示的なD-ペプチド性化合物のVEGFR1阻害活性
【表11】
【0383】
(実施例5) 二量体化合物の調製および評価
修飾化合物1.1.1(c21a)の一連の二量体を、システインマレイミドまたはジスルフィド共役ケミストリーを使用して、化合物のN末端またはC末端のいずれかに、様々なPEG系リンカーを共役することによって、様々な長さのリンカーを有するように調製した。化合物のC末端またはN末端のいずれかにシステイン残基が組み込まれ、二官能性修飾PEGリンカーを用いたシステイン-マレイミド共役ケミストリーを介して二量体化が達成された。例示的な二量体化合物の構造を以下に示す。
【化4】
【0384】
得られた二量体化合物を、オクテットアッセイでVEGF-A阻害活性について検定した。
OctetアッセイによるVEGFR1受容体へのVEGF-A結合の阻害
【表12-1】
【表12-2】
条件:10nMでのVEGF-A、20nM(または25nM*)での阻害剤、VEGF-A:VEGFR1 K=25pM。
100%=100nMのPEG11リンカーとC-C-連結した(1.1.1(c21a))二量体
【0385】
(実施例6) フェニルアラニン31および/またはチロシン37アミノ酸類似体を含む合成点変異の調製および評価
図21および24に示すX線結晶構造の分析に基づいて、フェニルアラニン31およびチロシン37の様々な非天然起源アミノ酸類似体を、例示的化合物1.1.1(c21a)への組み込みのために選択した。化合物1.1.1(c21a)-PEG6 N~Nの連結二量体の一連の類似体を、本明細書に記載される方法に従って調製した。化合物の活性は、以下の条件下で阻害アッセイで評価される。表13は、20nMでのVEGF-A参照化合物1.1.1(c21a)-PEG6 N対N結合二量体に対する、20nMの化合物、10nMのVEGF-Aでの阻害率を示す。
合成点変異を有する1.1.1(c21a)-PEG6 N-N二量体類似体化合物の活性
【表13-1】
【表13-2】
【0386】
(実施例7) VEGF-AのD‐ペプチド性拮抗薬の親和性最適化
GAドメインライブラリの鏡像ファージディスプレイスクリーニングを使用して、D-ペプチド性VEGF-A拮抗薬を特定した。Uppalapati et al.により2018年6月21日に出願され、かつ題名「D-ペプチド性VEGF-A結合化合物および使用方法」を有する、米国特許出願公開第62/688,272号を参照のこと。例示的化合物11055(図3B)、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定される、31nMのVEGF-A結合親和性を示す。これは、臨床的に承認されたVEGF-A拮抗薬であるベバシズマブ(Avastin)よりも有意に弱く、VEGF-Aへのサブナノモル結合を示し、in vivoでその生物活性を遮断することができる。本開示は、VEGF-Aの強力な拮抗薬である、11055の高親和性バリアントを提供するファージディスプレイに基づく親和性成熟の使用について説明する。
【0387】
11055の高親和性バリアントを設計するために、pIII融合ファージディスプレイライブラリを、VEGF-Aに結合した化合物11055のX線結晶構造の分析に基づいて設計した。2.3オングストローム分解能構造を、ハンギングドロップ法を使用して、VEGF-Aと複合体化された11055で解決した。回折品質の結晶を、0.1MのトリスpH8.5、0.2Mの塩化カルシウム、18%w/vのPEG4000中で成長させた。構造を、分子置換によって解決した。結晶構造は、VEGF-Aホモ二量体に結合された11055の二つの分子を示し、ここでVEGF-A単量体上の同一の結合部位を占め、これらの部位は、VEGF-AのVEGFR2受容体結合部位と重複している(図28Aおよび28B)。
【0388】
この構造に基づいて、ライブラリは、バリアントGAドメインの3らせん構造をさらに安定化するように設計した。らせん1(H1)と、らせん2(H2)およびらせん3(H3)を接続するループとの間の充填界面で、無作為化のために合計7個のアミノ酸残基を選択した(図29A)。クンケル変異誘発を使用して、ライブラリを調製し、同時に15個の可能性のあるAA置換を表すNNC縮重コドンでそれぞれの選択された残基を無作為化した(図29B)。結果として生じるファージライブラリは、1×1010超の個々のバリアントを含み、鏡像ファージディスプレイ方法を使用して、再折り畳みされたD-VEGF-A標的への結合についてスクリーニングした。例えば、Mandal et al., PNAS (2012), 109(37), 14779-14784を参照のこと。簡潔に述べると、ビオチン化D-VEGF-A標的に対して、4ラウンドのパンニングを実施した。各ラウンドについて、ファージライブラリをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の標的と共にインキュベートし、ストレプトアビジン被覆ビーズ上で捕捉した標的結合ファージを洗浄し、次ラウンドの感染およびファージ増幅用に溶出した。各ラウンド中、結合されたファージクローンは、ますます厳しい温度および洗浄条件に曝露され、標的に対する高親和性の結合剤を生成するために選択圧を増加させた。第四ラウンドの選択後、個別のファージクローンが配列決定され、バリアントGAドメインの位置7と位置38に二つの固定システイン残基、および位置1、位置2、位置3、位置4、位置6、および位置37に好ましいアミノ酸残基を含有する好ましいコンセンサスモチーフが同定された(図30A)。
【0389】
上述のX線結晶構造に基づき(図29A)、位置7および位置38のシステイン変異は、側鎖スルフヒドリル基を、分子内ジスルフィド結合を形成するのに十分に近接した範囲内に配置するようである(図30C)。三次元構造のこの分析は、コンセンサスモチーフの結果に示す位置7および位置38で対になったシステインの固定保存と一貫性がある(図30A)。5つの代表的なバリアント(配列番号21~25)を、D-エナンチオマーとして合成し、天然L-VEGF-Aに対するそれらの結合親和性を、SPRを使用して測定した(図30B)。バリアント979110は、最も高いVEGF-A親和性を有し、平衡解離定数(K)の測定値は3.6nMであった。したがって、親和性最適化により、VEGF結合は11055の約10倍に改善された。
【0390】
親和性成熟D-ペプチド性化合物を、それらの拮抗活性を測定するために、VEGF-A遮断ELISAで特徴解析した。ここで、VEGFR1-Fc融合物を、PBS中、1ug/mLで、Maxisorpプレート上で夜通し被覆した。1nMのビオチン化-VEGF-Aを拮抗薬滴定と混合し、ビオチン化-VEGF-AのVEGFR1-Fcへの結合をストレプトアビジン-HRPで検出した。バリアント化合物979110は、VEGFR1へのVEGF-A結合を遮断し、このアッセイでの阻害定数(IC50)3.5nMを示したが、これは、11055(52nM)よりも14.8倍優れており、結合親和性の改善と一貫性がある(図31A)。
【0391】
HUVEC細胞増殖アッセイを使用して、VEGF-Aシグナル伝達を遮断するDペプチド性化合物の能力を評価した。ここで、HUVEC細胞増殖は、組換え体VEGF-Aの存在下で増大し、VEGF-Aシグナル伝達を遮断する拮抗薬化合物は、HUVEC細胞増殖を低減させる。HUVECアッセイにおける化合物979110の見かけのIC50は131nMであり、これは親化合物11055よりも4倍強力であるが、ベバシズマブ(Avastin)よりも185倍弱いままである(図31B)。これらのデータは、11055と比較し979110のた結合親和性の改善は、ベバシズマブ(Avastin)に匹敵する効力でインビボでのVEGF-A生物学的活性を遮断するのには十分ではない可能性を示唆している。
【0392】
(実施例8A) VEGF-A上の重複していないエピトープに対するD-ペプチド性拮抗薬のエンジニアリング
VEGF受容体と複合体化されたVEGF-Aの構造、VEGFR1およびVEGFR2は、利用可能であり、VEGFR1またはVEGFR2のIg様ドメインと、VEGF-Aホモ二量体上の二つの同一の結合部位との間の多価相互作用を明らかにする(Markovic-Mueller et al., Structure (2017), 25, 341-352)(Brozzo et al., Blood (2012), 119(7), 1781-1788.)。VEGFR2を有する化合物11055/VEG
F-A複合体構造のオーバーレイは、11055結合エピトープとVEGFR2のIg様ドメインのうちの一つとの間の有意な重複を強調し(ドメイン2、D2)(図28B)、11055の拮抗活性との一貫性がある(図31A)。ところが、VEGFR2の第二のIg様ドメイン(ドメイン3、D3)は、11055結合部位とは別個のVEGF-A上の追加的な結合部位に結合する(図28B)。我々は、VEGF-A上のVEGFR2 D3結合部位に結合することになる第二のD-ペプチド性拮抗薬を設計し、それによって、11055とは独立して追加的な受容体結合部位を遮断するようにした。
【0393】
Zドメイン足場に基づいて、新規ファージディスプレイライブラリを、M13ファージへのpVIII融合として生成した。10個の位置を、システインを除くすべてのアミノ酸を表現するトリヌクレオチドコドンを伴うクンケル変異誘発を使用した無作為化のために、Zドメイン内で選択した(図32Aおよび図32B)。結果として生じるライブラリを、鏡像ファージディスプレイ方法を使用して、再折り畳みされたD-VEGF-A標的への結合についてスクリーニングした。簡潔に述べると、ビオチン化D-VEGF-Aに対する3ラウンドのパンニングを、しだいに厳しくなる洗浄条件下で行った。第3ラウンドの後、ファージプールをpIII融合に移し、ファージ粒子上のコピー数を減少させ、移されたファージに追加2回のパンニングを行った。P3上の最終ラウンドの選択の後、個々のファージクローンが配列決定され、それぞれ位置9、位置10、位置13、位置17、位置27、および位置35で固定アミノ酸W、D、W、R、K、およびYを含有する好ましいコンセンサスモチーフが同定された(図33A)。代表的な5つのバリアントD-ペプチド性化合物を合成し(配列番号26~31)、未変性L-VEGF-Aに対するそれらの結合親和性を、SPRを使用して測定した(図33B)。バリアント978336は、最も高いVEGF-A親和性を有し、Kの測定値は500nMであった。SPRを使用したエピトープマッピングを実施して、化合物978336および化合物11055がVEGF-A上の重複しない結合部位に結合しているかどうかを判定した。ここで、ビオチン化VEGF-AをSPRチップ上に捕捉し、その結合部位を飽和させるために、5μMの化合物978336を第一の会合ステップで結合させた。第二の会合ステップでは、5μMの化合物978336を1μM 11055と混合し、定常状態結合の変化を測定した。センサーグラムデータは、化合物978336の飽和応答レベルを超えた化合物11055の結合による応答単位の増加を示し、化合物978336および11055の相加的結合を示す(図34)。最後に、VEGF-A遮断ELISAにおいて、化合物978336は、VEGF-AとVEGFR1との間の相互作用を拮抗することができ、IC50の測定値は935 nMであった(図31A)。これらのデータは、978336が、11055部位から独立した重複していないエピトープに結合すること、およびVEGF-A拮抗薬であることを示す。
【0394】
化合物978336のVEGF-A結合部位をさらに特徴解析するために、978336と複合体化されたL-VEGF-Aの2.9オングストローム分解能結晶構造を解決した。回折品質の結晶を、ハンギングドロップ法を使用して、0.1Mビス-トリス、pH5.5、0.15Mの塩化マグネシウム、25%w/vのPEG 3350中で成長させた。構造を、分子置換によって解決した。978336の二つの分子を、単一のVEGF-Aホモ二量体上の同一の結合部位に結合させた(図35A)。構造によって、化合物978336が、VEGF-A上のD3結合部位と直接重複することが明らかになり(図35B)、11055および978336は、それぞれVEGF-A上のD2およびD3部位の両方を直接遮断する重複していないエピトープを有することが確認される(図28Bおよび35B)。
【0395】
(実施例8B) 化合物978336の親和性成熟スクリーニング
構造ベースの親和性成熟方法を使用して、化合物978336のVEGF-A結合親和性を改善した。図6Aで画定されたVEGF-A結合ポリペプチドのコンセンサス配列に基づき、4つの残基位置(14、24、28、および32)は、強力なコンセンサスが欠失し、有意な変動が示された(すなわち、r14、l24、r28、およびs32)。VEGF-Aに結合した978336の結晶構造(図35E)において、これら4つの残基は、埋設界面接触ではなかったが、概して、最適化されていない相互作用を弱くするようである。具体的には、残基r14およびs28は、VEGFと直接は接触せず、l24は酸性パッチの近くに位置する疎水性側鎖であり、r28は任意の酸性側鎖から離れすぎて、最適な塩架橋を形成することができない(4オングストローム未満)。これらの部位を、クンケル変異誘発を用いたソフト無作為化のために選択した(図35Gのx位置を参照)。結果として生じるpIIIファージライブラリ(配列番号158)を、上述のような類似の高厳密性の条件を使用してパンニングして、D-VEGF-Aに対する改善された結合剤を特定した。選択の第3ラウンドの後、親化合物978336(配列番号117)と比較して、二つの優勢な変異L24VおよびS32Rを含有する、好ましいコンセンサスモチーフが同定された(図35F)。代表的なクローン、バリアントZドメイン980181(図35G、配列番号119)を、新しいD-タンパク質結合剤として合成し、SPRで測定して66 nMのVEGF-A親和性が示された(図35G)。したがって、親和性最適化により、親化合物978336の約8倍だけVEGF結合親和性が改善された。
【0396】
(実施例9) VEGF-Aの二価D‐ペプチド性拮抗薬
D‐ペプチド性拮抗薬化合物11055および978336がVEGF-A上の非重複エピトープに結合し、D2およびD3結合部位の両方を直接遮断するものとして、標的への結合および拮抗活性についての全体的な効果を評価するために、化合物11055および978336の化学的に連結された共役を設計した。化合物11055および978336はどちらも、追加的なN末端システイン残基で化学的に合成され、これが、N末端からN末端への連結(図36A)を提供するために、従来の方法を使用してビス-マレイミドPEG8リンカーと共役結合された。
【化5】
ビス-Mal-PEG(n)二機能性リンカー、式中、nは3、6、または8である。
【0397】
新しいヘテロ二量体、化合物979111は、SPRで測定して1.7 nMのVEGF-A結合親和性が示された(図9B)。これは、二つの独立した結合剤を単一のヘテロ二量体に連結させることで、結果的に、どちらの結合剤単独よりも高い親和性を有する分子をもたらす、アビディティ効果と一貫性がある。重要なことに、HUVEC細胞増殖アッセイにおいて、ヘテロ二量体979111は、Avastinと類似のVEGF-A遮断活性を示した。VEGFシグナル伝達に対する細胞増殖阻害のIC50は、979111については1.1nMであり、Avastinについては0.7nMであり、11055に比べて500倍超の改善を表す(図31B)。これらの結果をまとめると、VEGF-Aのヘテロ二量体D-ペプチド性拮抗薬は、細胞ベースのアッセイでシグナル伝達活性を効果的に遮断し、VEGF拮抗薬として治療能力を有することが示されている。
【0398】
(実施例10) VEGF-AのテトラドメインD-ペプチド性拮抗薬
D-ペプチド性化合物の親和性および力価の両方をさらに改善するために、単量体D-タンパク質拮抗薬の二量体二価拮抗薬への化学的結合のためのスキームを考案した。概念上、二つの980181ポリペプチドは、それらの炭素末端を介して互いに繋がれ、次いでポリペプチド979110は、二量体中の980181ポリペプチドの各々に部位特異的に共役されて、VEGF受容体係合を模倣するテトラドメインDタンパク質を提供する。図38Aは、VEGF-A二量体に結合された化合物11055および978336の両方の構造のオーバーレイを示し、ここでドメインの化学結合のための例示的な部位は、PEG誘導体を使用して示されている(図38A)。具体的には、978336炭素末端は、互いに約15オングストローム以内であり、二つのリジン側鎖、11055のk19および978336のk7は、約23オングストローム以内である。
【0399】
固相ペプチド合成を使用して二つの成分を並列に合成し、シングルクリック共役ステップで最終精製のために完全テトラドメイン化合物を集合する、合成戦略が開発された(図38B)。D-タンパク質979110を、リシン19から延びるPEG2-アジド誘導体またはPEG3-アジド誘導体のいずれかを含有する単量体として合成し、c7-c38間の酸化分子内ジスルフィド結合である。980181は、aa炭素末端結合リンカー樹脂から合成され、合成中にホモ二量体が生成された。さらに、PEG2-アルキン誘導体をリジン7に組み込み、979110への共役を促進させた。最終共役ステップでは、979110の二つのコピーを、クリックケミストリーを使用して980181ホモ二量体に連結して、PEG2/PEG2(980870)またはPEG3/PEG2(980871)のリンカー長の組み合わせのいずれかで、テトラドメインD-タンパク質誘導体が得られた(図38C)。四量体Dタンパク質のSPR滴定は超高結合親和性を示し、K測定値は、980870では0.32nM、980871では0.42nMであった。
【0400】
D-タンパク質テトラドメイン化合物は、VEGF-Aへのサブナノモル結合が可能なため、VEGF-Aのサブナノモル濃度および長期インキュベーション平衡結合条件を使用して、その拮抗活性のより正確な特徴解析を、VEGF-A/VEGFR1遮断ELISAで得ることができる。具体的には、150pMのVEGF-Aを拮抗薬滴定をしながら夜通しインキュベートし、次いでプレート被覆されたVEGFR1-Fc上で5時間インキュベートして、任意の遊離VEGF-Aを受容体に結合させた。これらの条件下で、親和性成熟単量体979110は、7nMのIC50を有し、一方でD-タンパク質テトラドメイン化合物は、それらのサブナノモル結合親和性と一致して、強力なIC50である128 pM(980870)および163 pM(980871)を示した(図39A)。重要なことに、D-タンパク質テトラドメイン化合物は、701pMのIC50を有するベバシズマブよりも約4倍強力であり、可溶性デコイVEGFR1-Fc(IC50は220pM)よりもわずかに良好であった。
【0401】
これらの所見をVEGFシグナル伝達阻害に翻訳するために、293個のルシフェラーゼレポーター細胞株で、VEGFR2シグナル伝達のための細胞ベースのアッセイを使用した。ここで、VEGF-Aは、293個の細胞でVEGFR2シグナル伝達を活性化し、機能的な読出しとしてルシフェラーゼ発現をもたらす。この系におけるVEGF-Aシグナル伝達の阻害は、ルシフェラーゼシグナルの喪失をもたらす。ELISA条件を模倣する試みにおいて、150pMのVEGF-Aを使用して、測定可能なルシフェラーゼシグナルを誘発させ、拮抗薬を滴定してこの活性を遮断した。ここで、979110は6.1nMのIC50を示し、一方でテトラドメインD-タンパク質は、インビトロELISAの結果と非常によく一致して、180pM(980870)および90pM(980871)のサブナノモルIC50を示した(図39B)。さらに、この設定では、Dタンパク質テトラドメイン化合物は、VEGFの活性を遮断するベバシズマブ(IC50/530 pM)よりも3~6倍強力であり、抗体様活性を達成する合成Dタンパク質の可能性を実証した。
【0402】
(実施例11) 血管内皮成長因子の強力な非免疫原性D-タンパク質拮抗薬は、網膜血管漏出を防止し、腫瘍成長を阻害する
化学的に合成されたDタンパク質は、抗体様効力を有するVEGFシグナル伝達を遮断し、眼疾患モデルおよび腫瘍疾患モデルにおいて有効性を示し、液性抗薬物抗体反応を回避する。
【0403】
鏡像ファージディスプレイおよび構造誘導最適化を使用して、受容体模倣メカニズムを使用したVEGF-Aに拮抗する完全合成Dタンパク質を設計した。鏡像D-VEGF-Aに対するファージパンニングは、正準の受容体相互作用部位を結合する独立したタンパク質を産生した。結晶構造は、親和性の成熟および化学結合の設計を誘導し、天然VEGF-Aに強く結合したヘテロ二量体Dタンパク質を産生し、ピコモル濃度でシグナル伝達活性を阻害する。本明細書に記載されるD-タンパク質VEGF拮抗薬は、全化学合成により調製され、滲出型加齢黄斑変性のウサギ眼モデルにおける血管漏出を防止し、MC38同系マウス腫瘍モデルにおける腫瘍成長を遅らせ、治療中または皮下免疫化後に非免疫原性であった。
【0404】
本文:
D-タンパク質は、D-アミノ酸およびアキラル性アミノ酸グリシンから全体が構成された鏡像分子である。Dタンパク質は、内因性プロテアーゼによる消化に抵抗し、免疫学的提示(1、4、8)に必要なペプチドへの断片化を回避し、強力なアジュバント中で乳化されて皮下注射(1、2)によって繰り返し投与される時でさえ、免疫応答を刺激しないという報告がある。
【0405】
本明細書に記載されるVEGFの拮抗薬は、滲出型AMDのウサギ眼モデルにおいて、VEGF-Aによって誘発される血管漏出を完全に遮断することができた。さらに、ヒトおよびマウスのVEGF-Aに対する異種間活性は、MC38同系マウスモデルにおける腫瘍成長阻害の実証、および治療後の免疫原性の欠如を可能にした。さらに、アジュバント中で乳化させた当社のDタンパク質拮抗薬を用いた反復的な皮下免疫化後に、液性抗体応答は完全に不在であった。
【0406】
鏡像タンパク質ファージディスプレイ
多価Dタンパク質拮抗薬を開発するために、VEGF-A上の非重複エピトープに対するタンパク質結合剤を同定した。それぞれ細菌タンパク質Gおよびタンパク質Aに由来する53-残基GAドメインおよび58-残基Zドメインタンパク質(22、23)は、その高い安定性、小さなサイズ、および化学合成の容易さから、ファージディスプレイのための二つの異なる3らせんバンドル足場として選択された。M13ファージディスプレイライブラリを、それぞれ10および12のハード無作為化ライブラリ位置を含むZドメイン足場およびGAドメイン足場用に生成された(図46A-46C)。標的D-VEGF-A(8~109)のビオチン化形態を全化学合成により調製し、各ファージライブラリを、しだいに厳しくなる標的濃度および洗浄条件下(Sup方法)で、D-VEGF-A-ビオチンに対して個別にパンニングした。定性結合ELISAでは、コンセンサスを表すファージクローンは、濃度依存的な様式でD-VEGF-Aに結合したGAドメインおよびZドメインの両方に対してヒットする(図40A)。GA結合剤は、Lタンパク質として合成され、Dタンパク質としてヒットを合成する前に可逆的結合を確認するために、ファージ競合ELISAにおいて競合体として利用された。GA結合剤は、280nMのIC50でその親ファージクローンのD-VEGF-Aへの結合を直接遮断したが、Zドメインのファージクローンの結合には影響を及ぼさず(図40B)、VEGF-A上の二つのタンパク質が独立したエピトープを標的にしたことが示唆された。
【0407】
GAおよびZドメインヒットの両方を、D-タンパク質として合成し(それぞれRFX-11055およびRFX-978336)、VEGF-Aの天然Lタンパク質形態への結合剤としてさらに特徴解析した。表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してL-VEGF-Aに対して実施されたD-タンパク質結合剤の滴定は、GAドメイン結合剤RFX-11055に対する43nMおよびZドメイン結合剤RFX-978336に対する168nMの結合親和性を明らかにし(図47および図51)、D-エナンチオマーが特異的結合活性を保持していたことを実証した。さらに、SPRベースのエピトープマッピング研究は、RFX-11055およびRFX-978336がVEGF-Aへの同時結合および相加的結合能力を有することを示し(図48)、それらが独立エピトープおよび非重複エピトープに結合したことが確認された。
【0408】
VEGF-Aシグナル伝達の拮抗薬は、対称性VEGF-Aホモ二量体(16、24)の界面に形成された二つの結合部位との相互作用を、VEGF受容体が遮断しないようにする必要がある。VEGF拮抗を評価するために、プレート上にコーティングされたVEGFR1-Fcへのビオチン化VEGF-A121アイソフォーム121(VEGF-A121-biot)の結合を測定する、非平衡VEGF-A121遮断ELISAを使用した(Sup方法)。RFX-11055およびRFX-978336の両方が、それぞれ見かけのIC50値が52nMおよび935nMで、VEGF-A121のVEGFR1への結合の阻害を示した(図40Cおよび図52)。これらのDタンパク質は、明らかな阻害活性を示した。
【0409】
Dタンパク質VEGF-A拮抗薬の構造情報に基づく親和性成熟
Dタンパク質拮抗薬のさらなる最適化を誘導するために、RFX-11055およびRFX-978336と複合体化されたVEGF-Aの、それぞれ2.3Åおよび2.9Åの二つの独立した結晶構造を解決した(図53)。いずれの場合も、Dタンパク質は、VEGF-Aの遠位端の結合部位と対称的に相互作用する(図41Aおよび図41B)。RFX-11055は、パンニング(h27、v28、f31、h34、p36、y37、h40、l44およびa47)を通して選択された疎水性残基および極性残基を主に利用して、VEGF-A上の約800 A2の表面積と相互作用する(図41C)。対照的に、Dタンパク質RFX-978336は、塩基性の高い接点(r14、r17、k27およびr28)を用いて、VEGF-A上の酸性パッチと相互作用し、いくつかの極性接点(w9、w13およびy35)に加えて、最終的に小さめの約450 A2の表面積を含む(図41D)。VEGFR1およびVEGFR2と複合体化されたVEGF-Aの構造、ならびにホモ二量体マルチIgドメイン受容体とVEGF-Aとの間に形成される相互作用の詳細が記載されている(16、24)。具体的には、受容体Ig様ドメイン2および3(D2およびD3)は、C2対称性を有するホモ二量体VEGF-Aタンパク質分子の遠位端上の二つの同一の部位に結合する(図41E)。RFX-11055結合およびRFX-978336を有するVEGF-A/VEGFR1構造のオーバーレイは、VEGFR1のD2およびD3とD-タンパク質の直接的な重複を強調し、受容体結合阻害の競合メカニズムを明らかにする(図41F)。興味深いことに、RFX-11055による疎水性接触、およびRFX-978336による極性接触の優勢な使用は、D2およびD3によって作られたVEGF-Aとの特定の相互作用の性質を厳密に模倣するものである(図49A-49B)。
【0410】
RFX-11055の3らせんバンドル構造に基づいて、N末端らせん1とらせん2~3ループとの間の充填を安定化するように、7残基のソフト無作為化ライブラリを設計した(図42A)。クンケル変異誘発を使用して、システインを含む15個の可能性のある置換を表すNNC縮重コドンでそれぞれの選択された残基を、同時に無作為化した(図29B)。D-VEGF-Aに対する競合タンパク質としてL-RFX-11055を使用した、4ラウンドの高ストリンジェンシーのパンニングの後、位置L7および位置V38に二つの固定システイン残基を含有するコンセンサスモチーフが同定された(図46A-46C)。位置7および位置38の保存されたシステイン変異は、側鎖スルフヒドリル基を近傍に配置して、分子内ジスルフィド結合を形成するものとみられる。酸化ジスルフィド結合を有するDタンパク質として合成されたコンセンサスバリアントRFX-979110は、SPRによる結合親和性が2.3nMであり、RFX-11055と比較して19倍の親和性改善を示した(図47および図51)。
【0411】
RFX-978336の親和性成熟は、ソフト無作為化を使用したさらなる調査のために、最初のパンニングから最小限の保存を示すVEGF-A接触残基の選択に関係した。合計4個の残基が選択され、クンケル変異誘発を使用して各残基をソフト無作為化した(図42Bおよび図46A-46C)。高ストリンジェンシーのパンニングの類似したアプローチを、合成L-RFX-978336を競合体として用いて採用した。3ラウンドの選択の後、L24V変異およびS32R変異を含有する好ましいコンセンサスモチーフが同定された(図42B)。ZドメインコンセンサスバリアントRFX-980181をD‐タンパク質として合成し、結合親和性の測定値は18nMが示されたが、これはRFX-978336と比較して9倍の親和性の改善を表す(図47および図51)。
【0412】
親和性成熟D-タンパク質を、非平衡VEGF-A121遮断ELISAで評価し、それらの拮抗活性を測定した。RFX-979110は、VEGFR1-FcへのVEGF-A121の結合を遮断し、IC50は3.5nMであり、RFX-11055と比較して15倍の改善を示すとともに、このアッセイにおいてIC50が1.8nMであったベバシズマブの効力に接近している(図42Cおよび図52)。RFX-979110とは対照的に、RFX-980181に対する改善された結合親和性は、その拮抗活性に効果を示さなかった(IC50は1,658nMであり、同じアッセイで測定されたオリジナルのリードRFX-978336の実験的な不確かさの範囲内であった(図52)を参照)。従前の研究がVEGF-AのVEGFR1結合が主に高親和性D2ドメイン(15)によって駆動されることを示したことを考えると、D3ドメイン部位の遮断が、全体的な受容体係合に付随的効果を有するというのが適切な説明である。
【0413】
VEGF-Aシグナル伝達のヘテロ二量体Dタンパク質拮抗薬の全化学合成
単量体D-タンパク質の親和性および効力は、それらを化学的に連結することによって強化され、VEGF受容体D2ドメインとD3ドメインとVEGF-Aとの相互作用を再現した。VEGF-Aに結合したRFX-11055およびRFX-978336の構造、ならびにRFX-979110およびRFX-980181とのそれらの類似性に基づいて、クリック反応を使用して、それぞれ化学修飾されたリジン側鎖K19およびK7を介して、部位特異的結合をそれらの間で行い、天然受容体係合を模倣するように設計されたヘテロ二量体Dタンパク質構築物を生成した(図50Aおよび図50B)。全化学合成を採用することにより、RFX-979110は、Lys19の側鎖から延びるPEG3-アジド誘導体を含有する単量体として、Cys7-Cys38間の分子内ジスルフィド結合を用いて合成された。D-タンパク質RFX-980181を、RFX-980181内に組み込まれたPEG2-アルキン誘導体でLys7の側鎖上で合成し、PEG-アジ化物を備えたRFX-979110への共役を促進させた。最終連結ステップにおいて、RFX-979110を、クリックケミストリーを使用してRFX-980181と反応させて、13kDaのヘテロ二量体Dタンパク質(RFX-980869)がPEG3/PEG2リンカーと共に産生された(補足方法、図46Cおよび50B)。RFX-980869は、化学合成および精製後のLC/MSスペクトルによって特徴付けされた
【0414】
ヘテロ二量体Dタンパク質RFX-980869のSPR滴定は、超高結合親和性を示し、KD測定値は0.07nMで、0.16nMでのベバシズマブのものと類似したものであった(図47および図51)。ベバシズマブ抗体は、同様の条件下で滴定されて、サブナノモル濃度範囲における親和性を正確に決定するための測定の限界に達したと結論付けられた。観察された異常に高い結合親和性は、個々のD-タンパク質のヘテロ二量体への化学結合によって可能になる多価相互作用と一致したものである。
【0415】
その拮抗活性をさらに特徴解析するために、VEGF-A121/VEGFR1遮断ELISAを採用して、長期インキュベーション平衡結合条件下でのVEGF-A121のサブナノモル濃度を使用した(補足的方法)。これらの条件下で、親和性成熟単量体RFX-979110のIC50は7.6nMで、一方で、Dタンパク質ヘテロ二量体のIC50は0.31nMであり、SPRによって測定される親和性と合理的に一致する(図43Aおよび図54)。特に、Dタンパク質ヘテロ二量体のIC50値は、ベバシズマブよりも低く(IC50は0.70nM)、可溶性デコイ受容体VEGFR1-Fcと類似しており、IC50値は0.23nMであった。合成ヘテロ二量体および可溶性デコイ受容体について測定されたIC50値は、アッセイ中のVEGF-A121の濃度に接近するもので、このアッセイで測定できる値よりも高い効力を示す。
【0416】
これらのDタンパク質拮抗薬のVEGFシグナル伝達に対する効果を実証するために、VEGFR2受容体活性化によって駆動される細胞ベースのルシフェラーゼレポーターアッセイを使用した。このアッセイでは、150pMのVEGF-AがVEGFR2シグナル伝達を活性化し、ルシフェラーゼ発現の増加を引き起こし、一方でVEGF-Aの阻害はルシフェラーゼ発現の減少をもたらす。単量体Dタンパク質RFX-979110は、6.1nMのIC50を有し、一方でヘテロ二量体Dタンパク質RFX-980869は、VEGFR2シグナル伝達の遮断においてベバシズマブ(IC50は0.53nM)に相当する0.49nMのサブナノモルIC50値を示した(図43Bおよび図54)。要約すると、これらのデータは、全化学合成を使用した単量体Dタンパク質の化学結合が、VEGF-Aとその受容体との間での非常に高い親和性の相互作用を妨害することができるヘテロ二量体をもたらしたことを実証している。
【0417】
RFX-980869は、インビボで強力な活性を示し、非免疫原性である
RFX-980869の活性を、滲出型AMDのウサギ眼モデルおよび同系マウス腫瘍モデルで調査し、眼疾患および腫瘍疾患の両方における用途をそれぞれ実証した。滲出型AMDのウサギ眼モデルでは、外因性VEGF-A165による硝子体内負荷は、蛍光眼底血管造影(FA)を使用してモニタリングできる網膜の血管漏出を誘発する。VEGF-A遮断は、眼内へのフルオレセインの拡散性漏出を防止することができ、これは有効性の尺度としての役割を果たす。ここでは、RFX-980869を、アフリベルセプトと比較して、用量依存的有効性および耐久性について試験した。RFX-980869を0.25mgまたは1.0mg/眼で単回硝子体内投与した後、ウサギは1カ月間に2回(2日目および23日目)、外因性VEGF-Aで負荷をかけ、3日後(5日目および26日目)に眼を検査した。特に、0.25mgまたは1mgのいずれかでのRFX-980869の単回投与は、両方のVEGF負荷後に対照眼で観察された血管漏出を有意に遮断することができた(図43C)。さらに、26日目に、1.0mgのRFX-980869の用量が、1.0mgのアフリベルセプトと同等に血管漏出を完全に遮断し、0.25mgの用量は、フルオレセイン漏出および血管屈曲の増加によって特徴付けられる有効性の減少が示された(図43C)。これらの結果は、26日目(図44A-44B)の研究に関与したすべての眼からのFA画像の詳細な検査とスコアリングによって確認され、RFX-980869を用いた治療の用量依存性の明確な持続性が実証された。
【0418】
RFX-980869の腫瘍成長阻害能力を評価するために、RFX-980869とマウスVEGF-Aとの交差反応性(データは示さず)の研究を行い、同系MC38マウス腫瘍モデルを使用した。MC38結腸癌腫瘍は、ヒトPD-1用に遺伝子導入したC57BL6マウスにおいて確立され、治療開始前に82mm3に達した。同系MC38腫瘍モデルにおけるVEGF-A拮抗薬の有効性について公表された先行文献を見つけることができなかったため、ニボルマブを正の対照として使用した。RFX-980869を6mg/kg、2週間毎日投与したところ、ニボルマブを3mg/kg、隔週投与した場合と類似した腫瘍成長の阻害が示された(図44A)。2mg/kgのRFX-980869および1mg/kgのニボルマブは、ビヒクル対照群に対して腫瘍成長阻害を示さず、この設定において二つの処置の用量依存的有効性が確認された。1日1回のRFX-980869投与の終了後の15日目に、腫瘍成長阻害は、RFX-980869では6mg/kgで31%であり、ニボルマブでは3mg/kgで48%であった(図44B)。
【0419】
ヘテロ二量体Dタンパク質拮抗薬の非免疫原性の可能性を強調するために、腫瘍試験の終了時に抗薬物抗体(ADA)についてマウス血清を分析した。この完全免疫適合マウス腫瘍モデルでは、低用量および高用量の両方のRFX-980869治療群からの血漿は、RFX-980869に対するIgG力価応答の完全な欠如を示し、一方でニボルマブ治療群は飽和レベルのIgG力価であった(図45C)。したがって、両薬剤は完全に異種抗原であるにもかかわらず、ニボルマブのみが強いADA反応を誘発した。腫瘍成長阻害の異なる機序を考慮して、非免疫原性がRFX-980869の固有の性質であるかどうかを判断するために、アジュバント中で乳化させたRFX-980869、ニボルマブ、またはベバシズマブのうちいずれかを反復的に皮下注射することによって、マウスを直接的に免疫化する別の試験を実施した。モノクローナル抗体を用いた免疫化は、42日後、強力なIgG力価を発生したが、RFX-980869は液性抗体応答が全くなかった(図45D)。まとめると、インビボの結果は、眼および腫瘍の両方の設定における当社の合成VEGF-A拮抗薬の強力な活性を示すだけでなく、免疫原性の欠如に関してモノクローナル抗体に対する明確な差別化も示している。
【0420】
考察
鏡像タンパク質ファージディスプレイおよび構造誘導最適化を使用して、VEGF-A上のD2およびD3結合部位を占有したDタンパク質拮抗薬に、二つの異なる3らせんバンドルを独立的に成熟させた(図41F)。単量体の側鎖選択的な化学結合を介して、結果として生じる13kDaのDタンパク質は、約1,250のÅ2を結合することができた。
【0421】
VEGF-Aの表面積は、ピコモル親和性を達成しつつ、VEGF受容体結合と非常に類似したメカニズムを再現する。VEGF-A上の4つの受容体相互作用部位すべてを遮断することによって、VEGF-Aの結果的な中和は、インビボでの代謝回転とクリアランスの時間尺度では不可逆的である可能性が高い。受容体デコイメカニズムを利用してVEGF-Aを遮断するアフリベルセプト(25、26)と同様に、本明細書に記載されるヘテロ二量体Dタンパク質VEGF拮抗薬も、受容体模倣体を用い、ずっと小さな化学的に合成されたDタンパク質フォーマットではあるものの、VEGF-A上の全てのVEGF受容体結合部位を遮断する。
【0422】
本明細書に記載されるヘテロ二量体D-タンパク質VEGF拮抗薬は、ブロルシズマブの半分のサイズであり、PBS(pH7.4)に容易に可溶性であり、高用量製剤に適している。その小さなサイズから、網膜への浸透が改善され、眼から離れた後での全身的なクリアランスが迅速である。その上、タンパク質分解安定性の増加および免疫原性の欠如を含むその特性は、治療反応の持続性、炎症の低減、および長期の慢性治療によるADAの不在といった、さらなる利点を提供する。
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【0460】
材料および方法
タンパク質合成試薬
Fmoc-D-アミノ酸は、Chengdu Zhengyuan Company,
LtdおよびChengdu Chengnuo New-Tech Company
, Ltd.から購入した。Fmoc-D-Ile-OHは、Chemimpex International, Inc.から購入した。Fmoc-D-プロパルギルグリシン(Fmoc-D-Pra-OH)は、Haiyu Biochemから購入した。MBHA樹脂は、Sunresin New Materials Co. Ltd.(西安)から購入した。Rink Amideリンカーは、Chengdu Tachem Company, Ltd.から購入した。クロロ-(2-Cl)-トリチル樹脂は、Tianjin Nankai Hecheng Science and Technology Company, Ltd.から購入した。Fmoc-NH2(PEG)n-COOHおよび他のPEGリンカーは、Biomatrik Inc.から購入した。2-アジド酢酸は、Amatek Scientific Company Ltd.から購入した。アスコルビン酸ナトリウムは、TCI(Shanghai) Ltd.から購入した。硫酸銅五水和物(CuSO4・5H2O)は、Energy Chemicalから購入した。
【0461】
D-VEGF-A合成およびリフォールディング
D-VEGF-Aポリペプチド鎖(COOH酸、残基8-109(33))は、固相ペプチド合成(SPPS)および天然化学ライゲーションを使用して化学的に合成し、以前の研究から適合された方法を使用して、折り畳んで、タンパク質共有結合ホモ二量体を形成した(21)。1: Gly1-to-D-Tyr18、2: D-Cys19-toD-Arg49、3: D-
【0462】
Cys50-toD-Asp102に対応する個々のペプチド断片を、段階的SPPS用に標準的なFmoc化学プロトコルを使用して合成した。断片1および2をNHNH-(2-Cl)トリチル-樹脂上で合成し、断片3を予め装填されたWang樹脂から合成した。簡潔に述べると、予め装填されたFmoc-アミノアシル-Wang樹脂を、まずDMF(10mL/g)で1時間膨潤させ、次いで20%ピペリジン/DMF(30分)で処理してFmoc基を除去し、DMFで再び洗浄した(5回)。それぞれ3当量の保護アミノ酸(DMF中0.4M)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)の予め活性化した溶液を樹脂に追加することにより、Fmoc-D-アミノ酸残基を結合させた。1~2時間後、ニンヒドリン試験により、反応が完了したことが示され、樹脂をDMF(3回)で洗浄した。Fmoc基を除去するために、ピペリジン(DMF中20%)を樹脂に30分間添加した。最後のFmoc基を除去した後、樹脂をDMF(3回)およびMeOH(2回)で洗浄し、真空下で乾燥させてから、取り出して85%TFA、5%チオアニソール、5%EDT、2.5%フェノールおよび2.5%の切断用の水に入れた。2時間後、樹脂をTFAで洗浄し、溶出されたペプチドを、泡立つ窒素ガスにより濃縮した。粗製ペプチドを、低温のエーテルで沈殿させ、遠心分離によりペレット化し、低温のエーテルで2回洗浄してから、真空下で乾燥させた。ペプチド残基を水に溶解し、分取逆相HPLCにより精製し、HPLCおよびMSにより分析した。
【0463】
D-ペプチド-ヒドラジド断片とD-Cys-ペプチド断片との間のライゲーションを以下のとおり行った:D-ペプチド-ヒドラジドを緩衝液A(6MのGnHCl、pH3.0を含有する、0.2Mリン酸ナトリウム)中に溶解し、氷塩浴中で-15℃に冷却し、磁気攪拌器によって穏やかに攪拌した。NaNO(7当量)を加え、溶液を20分間攪拌して、D-ペプチド-ヒドラジドをペプチド-アジドに酸化させた。4-メルカプトフェニル酢酸(MPAA)(50当量)を、緩衝液B(6MのGnHCl、pH7.0を含有する0.2Mリン酸ナトリウム)中に溶解した溶液を、新たに形成されたD-ペプチド-アジ化物(等量)を含有する溶液に急速に添加して、余剰のNaNOを除去し、ペプチド-アジ化物をペプチド-MPAAチオエステルに変換した。次に、D-Cys-ペプチドを緩衝液B(等量)に入れたの溶液を、新たに形成されたペプチド-MPAAチオエステルを含有する溶液に加えた。そして反応混合物を、NaOHを用いてpH7に調整し、夜通しでの天然化学ライゲーションを開始させた。分析RP-HPLCにより、反応の進捗を完了までモニタリングしてから、TCEPにより処理した後でHPLC精製をした。
【0464】
連結されたペプチド生成物の精製を、CXTHLC6000/Hanbon NU3000調製システムで、Phenomenex C18/YMC C4シリカ上、寸法21.2×250mm/20.0×250mmのカラムを用いて行った。粗製ペプチドを調製カラムに装填し、溶媒A(0.1%TFAの水溶液)中の、溶媒B(0.1%TFAの80%アセトニトリル溶液)の濃度を浅勾配で増加させながら、毎分5mLの流量で溶出した。精製された標的ペプチドを含有する画分を、分析LC-MSにより同定し、合わせて、凍結乾燥させた。
【0465】
最終的な線形D-VEGF-Aペプチドを、グルタチオン還元(2mM)/グルタチオン酸化(0.4mM)酸化還元対を含有する水性Gu・HCl(0.15M)中、pH8.4で折り畳み、5日間攪拌して完了させた(21)。折り畳まれたD-VEGF-AをRP-HPLCにより精製した。
【0466】
ファージディスプレイライブラリおよびパンニング
以前に説明した方法(34)により、無感作GAドメインおよびZドメインの足場ライブラリを、N末端遺伝子8主要コートタンパク質への融合物として構築した。所望のライブラリ位置の無作為化(図46A-46C)を、トリヌクレオチドオリゴを含むクンケル変異誘発(35)を使用して実施し、システインを除く全ての天然アミノ酸の組み込みをさせた。結果として生じるライブラリには、1010超の固有のメンバーが含まれていた。親和性成熟ライブラリについて、それぞれ標的NNCまたはソフト無作為化オリゴを使用して、RFX-11055またはRFX-978336親配列上でクンケル変異誘発を行った。親和性成熟の標的となる位置が図S1で強調表示されている。
【0467】
すべてのファージ選択を、以前に確立されたプロトコル(34)に従って実行した。簡潔に述べると、ペプチドライブラリを用いた選択は、ストレプトアビジン被覆磁気ビーズ(Promega社)で捕捉されたビオチン化D-VEGFを使用して行われた。最初に、D-VEGFの量を減少させながら(2.0mM、1.0mM、および0.5mM)、3ラウンドの選択を完了した。次いでファージプールを、N末端遺伝子3マイナーコートタンパク質ディスプレイベクターに移し、さらにD-VEGFの量を減少させながら(200nM、100nM、および50nM)、かつ洗浄時間を延長しながら、3ラウンドのパンニングを施した。次いで、個々のファージクローンを配列解析のために送付した。
【0468】
D-タンパク質結合剤の合成
親和性成熟Dタンパク質RFX-979110およびRFX-98018のポリペプチド鎖(図46A-46C)を、Rink Amide MBHA樹脂上でFmocケミストリー段階的SPPSにより手動で調製した。アミノ酸の側鎖保護は以下の通りであった:D-Arg(Pbf)、D-Asp(OtBu)、D-Glu(OtBu)、D-Asn(Trt)、D-Gln(Trt)、D-Ser(tBu)、D-Thr(tBu)、D-Tyr(tBu)、D-His(Trt)、D-Lys(Boc)、D-T-Trp(Boc)。D-ポリペプチドの鎖集合が完了し、最終的なFmoc基が除去された後、結果として生じるD-ペプチドは、その側鎖を脱保護し、同時に2.5%トリイソプロピルシランおよび2.5%HOを含有するTFAで2.5時間、室温で処理することによって、樹脂支持体から切断された。粗製D-ポリペプチド生成物を、濾過により樹脂から回収し、沈殿させ、冷却ジエチルエーテルで粉砕してから、真空下で乾燥させた。D-ポリペプチド鎖は、溶解時に適切な緩衝液中で自発的に折り畳まれ、機能性Dタンパク質結合分子が生成された。
【0469】
D-タンパク質ヘテロ二量体の合成
ステップ1:アジド-PEG3D-979110樹脂の調製。
Fmoc-アミノアシル-Rink Amide MBHA樹脂をDMF(10~15mL/g樹脂)中で1時間膨潤させた。懸濁液を濾過し、20%ピペリジンを含有するDMF中に交換し、連続的な窒素ガス灌流下で0.5時間、室温で維持した。次いで、樹脂をDMFで5回洗浄した。Fmoc-D-アミノ酸-OH、DIC、HOBtおよびDMFを樹脂に添加した。懸濁液を室温で1時間保持し、その間に窒素流を泡立たせた。ニンヒドリン試験を使用して、完了までカップリング反応を監視した。親和性成熟Dタンパク質RFX-979110に対応する残りのD-アミノ酸を、ペプチジル樹脂に順次結合させた。アジド-PEG3-COOHを、Lys19の一級アミンに結合させた。保護され
たRFX-979110ポリペプチド鎖のアミノ酸配列の集合が完了した後、20%ピペリジンを含有するDMFで処理することによって、最終的なFmoc基を除去した。ペプチジル-樹脂を、DMF(5回)、MeOH(2回)、DCM(2回)、およびMeOH(2回)で洗浄し、次いで真空下で夜通し乾燥させた。
【0470】
ステップ2:アジド-PEG3D-979110-樹脂の切断および脱保護。
切断溶液(TFA/チオアニソール/EDT/フェノール/HO = 87.5/5/2.5/2.5/2.5/2.5 v/v、10mL/gペプチド樹脂)を、乾燥アジド-PEG3-D-979110-樹脂に添加した。懸濁液を3時間振とうさせ、濾過し
、濾液を回収した。低温のエーテルを濾液に加えてペプチドを沈殿させ、これを遠心分離により回収した。白色沈殿物をエーテルで2回洗浄し、次いで真空下で夜通し乾燥させて、白色固体の粗製アジド-PEG3-D-979110が得られた。
【0471】
ステップ3:酸化および精製。粗製アジド-PEG3-D-979110を、I を使用して酸化した。
簡潔に述べると、ペプチド(23.5mg)を、11mLの30% ACNに溶解し、330μLのCHCOOHと混合した。I/MeOH溶液を、混合物が淡黄色になるまで滴下し、次いでアスコルビン酸ナトリウム水溶液を滴下して、過剰Iをクエンチした。酸化アジド-PEG3-D-979110の精製を、CXTH LC6000/Hanbon NU3000調製システムで、Phenomenex C18シリカ上、寸法21.2×250mmのカラムを用いて行った。粗製ペプチドを調製カラムに装填し、溶媒A(0.1%TFAの水溶液)中の、溶媒B(0.1%TFAの80%アセトニトリル水溶液)の濃度を浅勾配で増加させながら、毎分5mLの流量で溶出した。純粋な標的ペプチドを含有する画分を、分析LC-MSにより同定し、まとめて凍結乾燥して、(アルキニル-PEG2)-D-980181とのその後のクリック反応用の精製アジド-PEG3-D-979110が得られた。
【0472】
ステップ4:アルキニル-PEG2D-980181樹脂の調製。
Fmoc-アミノアシル-Rink Amide MBHA樹脂をDMF(10~15mL/g樹脂)中で1時間膨潤させた。懸濁液を濾過し、20%ピペリジンを含有するDMF中に交換し、連続的な窒素ガス灌流下で0.5時間、室温で維持した。次いで、樹脂をDMFで5回洗浄した。Fmoc-D-アミノ酸-OH、DIC、HOBtおよびDMFを樹脂に添加した。懸濁液を室温で1時間保持し、その間に窒素流を泡立たせた。ニンヒドリン試験を使用して、完了までカップリング反応を監視した。親和性成熟Dタンパク質980181ポリペプチド鎖に対応する残りのD-アミノ酸を、順次添加した。アルキニル-PEG2-COOHを、Lys7の一級アミンに結合させた。保護されたRFX-
979181ポリペプチド鎖のアミノ酸配列の集合が完了した後、20%ピペリジンを含有するDMFで処理することによって、最終的なFmoc基を除去した。
【0473】
ペプチジル-樹脂を、DMF(5回)、MeOH(2回)、DCM(2回)、およびMeOH(2回)で洗浄し、次いで真空下で夜通し乾燥させた。
【0474】
ステップ5:アルキニル-PEG2D-980181の切断および脱保護。
切断溶液(TFA/TIS/HO 95/2.5/2.5v/v、10mL/gペプチド樹脂)をアルキニル-PEG2-D-980181ホモ二量体樹脂に添加した。混合物を3時間振とうし、濾液を回収した。低温のエーテルを濾液に加えてペプチドを沈殿させ、これを遠心分離により回収した。白色沈殿物をエーテルで2回洗浄し、次いで真空下で夜通し乾燥させて、白色固体の粗製アルキニル-PEG2-D-980181ホモ二量体が得られた。
【0475】
ステップ6:精製。
粗アルキニル-PEG2-D-980181ホモ二量体の精製を、CXTH LC6000/Hanbon NU3000調製システムで、YMC C4シリカ上、寸法21.2×250mmのカラムを用いて行った。粗製ペプチドを調製カラムに装填し、溶媒A(0.1%TFAの水溶液)中の、溶媒B(0.1%TFAの80%アセトニトリル水溶液)の濃度を浅勾配で増加させながら、毎分10mLの流量で溶出した。純粋な標的ペプチドを含有する画分を、分析LCMSにより同定し、まとめて、凍結乾燥して、アジド-PEGn-D-979110とのクリック反応用の精製アルキニル-PEG2-D-980181ホモ二量体が得られた。
【0476】
ステップ7:クリック反応および精製。
アジド-PEG3-D-979110およびアルキニル-PEG2-D-980181をエタノール:HO(v/v、1:1)に溶解し、次いで0.2MのCuSOを反応混合物に添加し、続いて0.2Mのアスコルビン酸ナトリウムを添加し、反応混合物を30℃で2時間攪拌した。反応混合物を、さらなる後処理を行うことなくRP-HPLC上に装填し、上述のように勾配溶出により精製した。望ましい生成物を含有する画分を、LCMSによって同定し、まとめて、凍結乾燥した。質量観測値(LC-MS): 13174.0 Da、質量計算値(平均同位体組成): 13176.8 Da。
【0477】
D-タンパク質のLC-MS分析
分析RP-HPLCを、HP 1090システムで、Waters C4/Phenomenex C18シリカカラム(4.6×150mm、3.5μm/4.6×150mm、5.0μm粒子サイズ)を用いて、1.0mL/分の流量(50℃のカラム温度)で行った。ペプチドを、水/0.1%TFA(溶媒A)と80%のアセトニトリルの水/0.1%TFA(溶媒B)の勾配1.0%B/分を用いて、カラムから溶出した。ペプチドのかたまりが、Agilent 6120 LC/MSDイオントラップを使用したインラインエレクトロスプレーMS検出によって得られた。
【0478】
表面プラズモン共鳴親和性測定
表面プラズモン共鳴(SPR)結合測定を、Biacore S200(GE)上で行った。ビオチン化VEGF-A(8~109)をビオチンCAPtureチップ(GE)上に固定し、段階希釈のD-タンパク質を、緩衝液流(10mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl、0.05%のP20)中で、30uL/分でチップ上に流した。会合反応は、RFX-11055、-978336、-979110、および-980181で60秒、またRFX-980869で120秒であった。解離反応を、120秒(RFX-11055、-978336、-979110、-980181)または360秒(RFX-980869)のいずれかについて、緩衝液流中で行った。すべての測定を、25℃で実施した。SPRデータは、複数の独立した滴定を表す。キネティックフィットを、Biacoreソフトウェアで、グローバル単一部位結合モデルを使用して実施した。
【0479】
結晶構造解析のためのVEGF-Aの発現および精製
VEGF-A(8~109)ポリペプチド鎖の遺伝子配列を、発現ベクターpET21b内にクローニングし、N末端にHisタグおよびTEV切断部位配列を追加した。組換えプラスミドを、アンピシリン(100ug/ml)で補充されたLB培地中で増殖した大腸菌BL21-Goldに形質転換し、Hisタグ付きタンパク質の発現を、16℃で夜通し、0.3mMのイソプロピル-b-D-チオガラクトシド(IPTG)により誘発させた。細胞を遠心分離により採取し、次いで-80℃で保存した。
【0480】
30Lの培養物からのペレット化細胞を、1L緩衝液A(20mMのトリス、pH8.0、400mMのNaCl)中に再懸濁させ、次いで高圧均質化を通過させた(3サイクル)。上清からのHisタグ付きタンパク質を、Ni-NTA樹脂カラム(30ml)上で捕捉した。カラムを、20mMイミダゾールを含有する20CVの緩衝液A、5CVの緩衝液C(20mMトリス、pH8.0、1M NaCl)、および50mMイミダゾールを含有する10CVの緩衝液Aで洗浄した。His-タグ付き-TEV部位-VEGF-Aタンパク質を、緩衝液A(5CV)中の高濃度のイミダゾール(0.25M)で溶出した。溶出したタンパク質を、1:20の比率(TEV:タンパク質)でTEVプロテアーゼで消化し、4℃で夜通し、5L緩衝液(20mM Tris、pH8.0、50mM NaCl)に対して透析した。切断された試料を、第二のNi-NTAカラムに装填して、遊離Hisタグを除去した。溶出されたVEGF-Aタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーにより、リソースQカラム(6ml)上でさらに精製した。緩衝液Aで平衡化したHiLoad 16/60 Superdex 75pgカラムを使用して、最終的なSEC研磨工程を実施した。単分散VEGF-Aピーク画分を、280nmでの吸光度により同定し、まとめて緩衝液A中で10~15mg/mLまで濃縮した。最終的に精製されたVEGF-A(8~109)タンパク質は、SDS-PAGE分析により評価したとき、95%純粋であり、分子量は直接注入MSにより確認した。
【0481】
VEGF-A/D-タンパク質複合体の結晶構造解析
VEGF-A/RFX-11055複合体。VEGF-A/RFX-11055用の結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散により18℃で成長させた。液滴は、0.8 μLのVEGF-A/D-タンパク質複合体(2.72mg/mlのVEGF-Aおよび0.5mMのRFX-11055)と、0.2Mの塩化カルシウム、0.1MのトリスpH8.5、18%のw/vのPEG4000を含有する0.8 μLの結晶化溶液を、1:1で混合したもので構成された。結晶を、結晶化溶液と20%(v/v)グリセロールとを含有する凍結防止溶液に浸し、液体窒素中で急速凍結した。回折データを、上海シンクロトロン放射施設のビームラインBL19U1から2.31オングストロームの分解能まで収集し、XDSを使用して、空間群P2で処理した。構造を、検索モデルとしてVEGF構造(PDB ID:3QTK)を有するPhaserを用いて、分子置換によって解決した。初期モデル上での構造精密化とモデル構築を、Refmac5とCootの間で繰り返し行った。非対称ユニットには、{VEGF-A plus RFX-11055}複合体のコピーが二つある。詳細なデータ処理および構造精密統計が図53にリストされている。
【0482】
VEGF-A/RFX-978336複合体。
VEGF-A/RFX-978336用の結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散により18℃で成長させた。液滴は、0.8 μLのVEGF-A/D-タンパク質複合体(5.44mg/mlのVEGF-Aおよび0.46mMのRFX-978336)と、0.15Mの塩化マグネシウム、0.1MのトリスpH5.5、25%のw/vのPEG3350を含有する0.8 μLの結晶化溶液を、1:1で混合したもので構成された。結晶を、結晶化溶液と10%(v/v)グリセロールとを含有する凍結防止溶液に浸し、液体窒素中で急速凍結した。回折データをALSビームライン8.3.1から2.9オングストロームの分解能で収集し、XDSを使用して空間群P2でインデックス付けした。構造を、検索モデルとしてVEGF構造(PDB ID:3QTK)を有するPhaserを用いて、分子置換によって解決した。初期モデル上での構造精密化とモデル構築を、Refmac5とCootの間で繰り返し行った。非対称ユニットには、{VEGF_A plus RFX-978336}複合体のコピーが4つある。詳細なデータ処理および構造精密統計が図53にリストされている。すべての構造画像は、Pymol(Schrodinger社)を使用してレンダリングされた。
【0483】
VEGF-A121/VEGFR1-Fc結合ELISA
ビオチン化ヒトVEGF-A121(アイソフォーム121)は、Acro Biosystems(カタログ番号VE1-H82E7)から購入した。VEGFR-1-Fcは、R&D Systems(カタログ番号3516-FL-050)から購入した。
【0484】
ベバシズマブは、Genentech Inc.によって製造された。(ロット番号3067997)。すべての場合において、1ug/mLのVEGFR1-Fcを、4℃で夜通し、MaxiSorpプレート上で被覆した。翌日、被覆ウェルを、室温で振とうしながら、Super Block(Rockland社)で2時間遮断した。非平衡ELISAについては、Dタンパク質およびベバシズマブの滴定を、1.0nMのビオチン化VEGF-A121で30分間インキュベートし、その後、遮断されたVEGFR1-Fc被覆ウェルに添加した。
【0485】
拮抗薬/VEGF-A121混合物を、室温で振とうしながら、VEGFR1-Fcウェル上で1時間インキュベートし、洗浄緩衝液(PBS、0.05% Tween(登録商標) 20)で3回洗浄し、結合されたビオチン化VEGF-A121をストレプトアビジン-HRP(ThermoFisher社)で検出した。平衡結合ELISAについては、Dタンパク質、ベバシズマブ、および溶解性VEGFR1-Fcの滴定を、0.15nMのビオチン化VEGF-A121で、4℃で夜通しインキュベートし、その後、遮断されたVEGFR1-Fc被覆ウェルに添加した。拮抗薬/VEGF-A121混合物を、VEGFR1-Fcウェル上で室温で振とうしながら、5時間インキュベートし、上記のように成長させた。プロットされたデータは、三つ揃いの測定値の平均±標準偏差である。IC50値は、Prism(GraphPad)を使用して3パラメータ当てはめから導出され、報告されたエラーは、当てはめから導出される。
【0486】
VEGF細胞シグナル伝達アッセイ
VEGF細胞シグナル伝達の測定は、VEGF Bioassay(Promega社)を使用して行った。簡潔に述べると、HEK293細胞は、ルシフェラーゼ応答要素(KDR/NFAT-RE HEK293)に結合されたVEGFR-2を発現するように改変した。VEGFR-2を介したVEGFシグナル伝達は、生物発光を使用して定量化できるルシフェラーゼの発現を媒介する。プレートに載せた細胞を、0.15nMのVEGF-A165と、Dタンパク質またはベバシズマブ滴定の存在下で37℃で、5%のCOで6時間インキュベートする。インキュベーション後、Bio-Gloを製造業者のプロトコルに従ってウェルに加え、相対発光単位(RLU)を、PerkinElmer
2300 Enspire Multimodeプレートリーダー上で測定した。プロットされたデータは、三つ揃いの測定値の平均±標準偏差である。IC50値は、Prism(GraphPad)を使用して3パラメータ当てはめから導出され、報告されたエラーは、当てはめから導出される。
【0487】
ウサギ滲出型AMDモデル
Dutch Beltedウサギ(1.5~2.5kg)をWestern Oregon Rabbit Companyから購入した。アフリベルセプトをRegeneron Pharmaceuticalsから購入した。0日目に、ウサギを治療群(群当たりN=5)に無作為化し、ベースライン眼科検査を行ってから、RFX-980869(0.25mgまたは1.0mg)またはアイリーア(1.0mg)の単回硝子体内注射(眼当たり25uL)をした。ウサギは、2日目および23日目に、両眼に1μgのVEGF-A165で負荷をかけた。5日目および26日目に、蛍光眼底血管造影を両眼で実施し、血管漏出を評価するために画像を撮影した。FA画像に基づく血管漏出のスコアリングを、5日目および26日目に行った(図44B
【0488】
C57BL6マウスにおけるMC38同系腫瘍モデル
ヒトPD-1(12~13週)用に遺伝子導入したメスC57BL6マウスは、Beijing Biocytogen Co.から購入した。Nivolumabは、Bristol Myers Squibb(ロット番号#AAY1999)から購入した。MC38腫瘍細胞(1×106個)を右前脇腹に皮下移植し、平均体積が82mm3になるまで腫瘍を確立させた。マウスは、治療開始が始まった0日目に治療群(群当たりN=6)に無作為化された。RFX-980869を2mg/kgまたは6mg/kgで毎日、2週間(14用量)にわたり腹腔内(i.p.)注射し、ニボルマブを1mg/kgまたは3mg/kgで、2週間に1回、6用量にわたり腹腔内(i.p.)注射した。すべてのデータは、平均±SEMとしてプロットされる。
【0489】
BALB/cマウスにおける皮下免疫化
アジュバントは、TiterMaxから購入した。ベバシズマブは、Genentech/Rocheから購入した。メスBALB/cマウス(6~8週間)を、0日目に免疫群に無作為化した(群当たりn=5)。0、21、35日目に、抗原25μgの皮下注射により免疫化を実施した。抗原は、0日目に注射用アジュバント(TiterMax)中で乳化され、21日目および35日目にPBSで投与された。血清プレブリードを、免疫化前の0、21、35日目に行った。最大力価応答用の最終的な出血を42日目に採取した。
【0490】
特定の実施形態は、説明および実施例によって、理解の明瞭さを目的として、ある程度詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正がなされうることは、本発明の教示に照らして容易に理解される。
【0491】
したがって、前述は、本発明の原理を単に例示するに過ぎない。本明細書に明示的に説明または示されていないが、本発明の原理を具体化し、その精神および範囲内に含まれる様々な改作が考案されうる。さらに、本明細書に列挙されるすべての実施例および条件付き文言は、本発明の原理および発明者によって当技術分野を促進するために貢献する概念を理解する際に、読者を助けることを主に意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態ならびにそれらの特定の実施例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的な等価物の両方を包含することが意図されている。さらに、かかる等価物は、現在公知の等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明される例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
VEGFに特異的に結合する多価D‐ペプチド性化合物であって、
VEGFの第一の結合部位に特異的に結合する能力を有するD-ペプチド性Zドメインと、
VEGFの第二の結合部位に特異的に結合する能力を有するD-ペプチド性GAドメインとを含む、D‐ペプチド性化合物。
(項目2)
前記第一の結合部位が、VEGFのアミノ酸側鎖E90、F62、D67、I69、E70、K110、P111、H112およびQ113を含み、
前記第二の結合部位が、VEGFの前記アミノ酸側鎖F43、M44、Y47、Y51、N88、D89、L92、I72、K74、M107、I109、Q115およびI117を含み、
前記第一および第二の結合部位がそれぞれ、前記VEGF標的タンパク質上のVEGFR2結合部位と少なくとも部分的に重複する、項目1に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目3)
前記D-ペプチド性Zドメインが、9、10、13、14、17、24、27、28、32、および35から選択される位置に、5個以上のバリアントアミノ酸残基(例えば、6個、7個、8個、9個または10個など、6個以上)を含むVEGF特異性決定モチーフ(SDM)を含む、項目1または2に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目4)
前記D-ペプチド性Zドメインが、項目30~41のいずれか一項に記載のものである、項目2に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目5)
前記D-ペプチド性GAドメインが、25、27、30、31、34、36、37、39、40、および42~48から選択される位置に、5個以上(例えば、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、または16個)のバリアントアミノ酸残基を含む、VEGF特異性決定モチーフ(SDM)を含む、項目1~3のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目6)
前記D-ペプチド性GAドメインが、項目42~60のいずれか一項に記載のものである、項目4に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目7)
前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインを共有結合する連結成分をさらに含む、項目1~3のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目8)
前記連結成分が、前記D-ペプチド性Zドメインの末端アミノ酸残基を、前記D-ペプチド性GAドメインの末端アミノ酸残基(例えば、N末端からN末端へのリンカーまたはC末端からC末端へのリンカー)に接続するリンカーである、項目7に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目9)
前記連結成分が、N末端からN末端へのリンカーである、項目8に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目10)
前記N末端からN末端へのリンカーが、前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインのN末端アミノ酸残基を接続する(PEG) 個の二機能性リンカーであり、式中、nは2~20である(例えば、nは5、6、7、8、9、10、11または12である)、項目9に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目11)
前記連結成分が、
前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインが前記標的タンパク質に同時に結合された時に互いに近接している、前記D-ペプチド性Zドメインのアミノ酸側鎖と、前記D-ペプチド性GAドメインの末端アミノ酸残基とを接続するリンカーであるか、または
前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインが前記標的タンパク質に同時に結合される時に互いに近接している、前記D-ペプチド性Zドメインの末端アミノ酸残基と、前記D-ペプチド性GAドメインのアミノ酸側鎖とを接続するリンカーである、項目7に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目12)
前記連結成分が、前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインが同時に前記VEGFに結合されるときに互いに近接している、前記D-ペプチド性Zドメインのアミノ酸側鎖と、前記D-ペプチド性GAドメインのアミノ酸側鎖とを接続するリンカーである、項目11に記載のDペプチド性化合物。
(項目13)
前記リンカーが、前記D-ペプチド性Zドメインの位置7のアミノ酸残基の側鎖と、前記D-ペプチド性GAドメインの19位のアミノ酸残基の側鎖とを接続する、項目12に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目14)
前記D-ペプチド性GAドメインとZドメインが、前記D-ペプチド性Zドメインのk 残基と、前記D-ペプチド性GAドメインのk 19 残基との間でリンカーを介して接続される、項目13に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目15)
前記連結成分が、前記D-ペプチド性Zドメインの前記N末端を、前記D-ペプチド性GAドメインの近位残基(例えば、k 19 、k 20 またはk 50 残基)の側鎖に接続する、項目6~14のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目16)
前記D-ペプチド性GAドメインが、前記ドメインの7位と38位にある近位アミノ酸残基の間にらせん間リンカーを含む、項目1~15のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目17)
前記らせん間リンカーが、前記近位アミノ酸残基のアルファ-炭素間で測定される、3~7原子長の骨格を有する、項目16に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目18)
前記らせん間リンカーが、C (1-6) アルキル、置換C (1-6) アルキル、-(CHR) -CONH-(CHR) -、および-(CHR) -S-S-(CHR) -から選択される一つ以上の基を含み、各Rが独立的にH、C (1-6) アルキル、または置換C (1-6) アルキルであり、n+m = 0~5(例えば、n+m = 2、3、4または5)である、項目16または17のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目19)
前記連結成分が、前記D-ペプチド性GAドメインおよびZドメインを連結するように構成され、それによって前記ドメインが、VEGF-Aに同時に結合することができる、項目7~18のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目20)
前記連結成分が、アミノ酸残基、ポリペプチド、(PEG) リンカー(例えば、nは2~50、3-50、4-50、6~50または6~20)、修飾PEG部分、C (1-6) アルキルリンカー、置換C (1-6) アルキルリンカー、-CO(CH CO-、-NR(CH NR-、-CO(CH NR-、-CO(CH O-、-CO(CH S-、および連結された化学選択官能基(例えば、-CONH-、-OCONH-、クリックケミストリー共役(1,2,3-トリアゾールなど)、マレイミド-チオール共役チオスクシンイミド、ハロアセチル-チオール共役チオエーテル、など)から選択される一つ以上の基を含み、式中、mは1~6であり、pは2~6であり、各Rは独立的にH、C (1-6) アルキルまたは置換C (1-6) アルキルである、項目7~19のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目21)
前記化合物が二価である、項目1~20のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目22)
前記化合物が三価である、項目1~20のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目23)
前記化合物が四価である、項目1~20のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目24)
前記化合物が、前記第一のD-ペプチド性Zドメインと相同な第二のD-ペプチド性Zドメインをさらに含む、項目1~23のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目25)
前記化合物が、前記第一のD-ペプチド性GAドメインと相同な第二のD-ペプチド性GAドメインをさらに含む、項目1~24のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目26)
前記化合物が、各々前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインを含む二つの二価D-ペプチド性化合物の二量体として構成された四つのD-ペプチド性ドメインを含む、項目23~25のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目27)
各二価D-ペプチド性化合物の前記D-ペプチド性ZドメインおよびGAドメインが、前記D-ペプチド性Zドメインのk 残基と、前記D-ペプチド性GAドメインのk 19 残基との間にあるリンカーを介して接続される、項目26に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目28)
前記リンカーが、次式であり、
【化6】

式中、nおよびmは独立的に1~6(例えば、1、2または3)である、項目17に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目29)
前記二つの二価D-ペプチド性化合物が、前記二価D-ペプチド性化合物の前記D-ペプチド性ZドメインのC末端アミノ酸残基間にあるリンカーを介して共有結合している、項目28に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目30)
前記C末端からC末端へのリンカーが、次式を含み、
*-アラニン-リシン(-)*)
式中、各-*は、D-ペプチド性ドメインへの連結である、項目29に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目31)
VEGFに特異的に結合するD-ペプチド性化合物であって、
D-ペプチド性Zドメインであって、
a) 以下のアミノ酸残基によって定義されるVEGF特異性決定モチーフ(SDM)、
10 --w 13 14 --r 17 ------x 24 --k 27 28 ---x 32 --y 35 (配列番号160)
式中、
14 は、l、rおよびtから選択され、
24 は、h、i、l、r、およびvから選択され、
28 は、G、rおよびvから選択され、
32 は、a、r、h、sおよびtから選択され、
35 は、kまたはyから選択され、
b) (a)で定義される前記SDM残基と80%以上(例えば、90%以上)の同一性を有するVEGF SDM、または
c) (a)で定義される前記SDM残基に対して1~3個のアミノ酸残基置換を有するVEGF SDMであって、前記1~3個のアミノ酸残基置換が、
i) 表6による類似のアミノ酸残基置換、
ii) 表6による保存的アミノ酸残基置換、
iii) 表6による高度に保存されたアミノ酸残基置換、および
iv) 図33Aで定義されたモチーフによるアミノ酸残基置換、から選択されるもの、を含む、D-ペプチド性化合物。
(項目32)
(a)で定義される前記SDM残基が、
10 --w 13 14 --r 17 ------l 24 --k 27 28 ---s 32 --y 35 (配列番号161)
または
10 --w 13 14 --r 17 ------v 24 --k 27 28 ---r 32 --y 35 (配列番号162)である、項目31に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目33)
前記VEGF SDMが、以下の残基、
10 --w 13 14 --r 17 ------l 24 --k 27 28 ---s 32 --y 35 (配列番号161)
または
10 --w 13 14 --r 17 ------v 24 --k 27 28 ---r 32 --y 35 (配列番号162)によって選択される、項目31に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目34)
前記SDM残基が、
a) 以下のアミノ酸残基によって定義されるペプチド性フレームワーク残基、
--n 11 a--e 15 i-h 18 lpnln-e 25 q---a 29 fi-s 33 l- 、
b) (a)で定義される残基と80%以上(例えば、90%以上)の同一性を有するペプチド性フレームワーク残基、または
c) (a)で定義される残基に対して1~3個のアミノ酸残基置換を有するペプチド性フレームワーク残基であって、前記1~3個のアミノ酸残基置換が、
i) 表6による類似のアミノ酸残基置換、
ii) 表6による保存的アミノ酸残基置換、および
iii) 表6による高度に保存されたアミノ酸残基置換、から選択されるものを含むペプチド性フレームワーク配列内に含まれる、項目43~57のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目35)
以下のアミノ酸配列に対して80%以上(例えば、85%以上、90%以上、または95%以上)の同一性を有するSDM含有配列を含み、
10 naw 13 14 eir 17 hlpnlnx 24 eqk 27 28 afix 32 sly 35 (配列番号133)
式中、
14 は、l、rおよびtから選択され、
24 は、h、i、l、r、およびvから選択され、
28 は、G、rおよびvから選択され、
32 は、a、r、h、sおよびtから選択され、
35 は、kまたはyから選択される、項目31~34のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目36)
前記D-ペプチド性Zドメインが、3らせんバンドルの構造式:
[らせん1 (#8-18) ]-[リンカー1 (#19-24) ]-[らせん2 (#25-36) ]-[リンカー2 (#37-40) ]-[らせん3 (#41-54) ]であり、
式中、
#は、D-ペプチド性GAドメイン中に含まれるアミノ酸残基の基準位置を示し、および
らせん3 (#41~54) は、
a) s 41 anllaeakklnda 54 (配列番号134)、
b) (a)に記載される前記配列と70%以上(例えば、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上)の同一性を有する配列、または
c) (a)に記載される配列に対して1~5個のアミノ酸残基置換を有する配列であって、前記1~5個のアミノ酸残基置換が、
i) 表6による類似のアミノ酸残基置換、
ii) 表6による保存的アミノ酸残基置換、および
iii) 表6による高度に保存されたアミノ酸残基置換、から選択されるペプチド性フレームワーク配列を含む、項目43~57のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目37)
前記D-ペプチド性Zドメインが、
a) d 36 dpsqsanllaeakklndaqapk 58 (配列番号135)、および
b) (a)に記載される配列に対して70%以上(例えば、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上)の同一性を有する配列、から選択されるC末端ペプチド性フレームワーク配列をさらに含む、項目31~36のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目38)
前記D-ペプチド性Zドメインが、
a) v dnkfnke (配列番号136)、および
b) (a)に記載される前記配列に対して60%以上(例えば、75%以上、85%以上)の同一性を有する配列、から選択されるN末端ペプチド性フレームワーク配列を含む、項目31~37のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目39)
(a) 化合物978333~978337(配列番号114~118)、980181(配列番号119)、980174~980180(配列番号120~126)、および981188~981190(配列番号127~129)のうちの一つから選択される配列、
(b) (a)で定義される配列と80%以上の配列同一性を有する配列、または
(c) (a)で定義される配列に対して1~10個のアミノ酸置換を有する配列であって、前記1~10個のアミノ酸置換が、
i)表6による類似のアミノ酸置換、
ii)表6による保存的アミノ酸置換、または
iii)表6による高度に保存的なアミノ酸置換であるもの、を含む、項目31~38のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目40)
化合物978333~978337および980181(配列番号114~119)のうちの一つのアミノ酸配列を含む、項目39に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目41)
前記化合物が二量体である、項目31~40のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目42)
前記化合物が、前記第一のD-ペプチド性Zドメインと相同な第二のD-ペプチド性Zドメインをさらに含む、項目31~40のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目43)
VEGFに特異的に結合するD-ペプチド性化合物であって、
D-ペプチド性GAドメインであって、
a)以下のアミノ酸残基によって定義されるVEGF特異性決定モチーフ(SDM)、
25 phvisf--h 34 -p 36 37 -s 39 --G 43 ---a 47 (配列番号149)
式中、x 37 は、s、n、およびyから選択され、
b) (a)で定義される前記SDM残基と80%以上(例えば、90%以上)の同一性を有するVEGF SDM、または
c) (a)で定義される前記SDM残基に対して1~3個のアミノ酸残基置換を有するVEGF SDMであって、前記1~3個のアミノ酸残基置換が、
i) 表6による類似のアミノ酸残基置換、
ii) 表6による保存的アミノ酸残基置換、
iii) 表6による高度に保存されたアミノ酸残基置換、および
iv) 図26に定義されるモチーフによるアミノ酸残基置換、を含む、D-ペプチド性化合物。
(項目44)
(a)で定義される前記VEGF SDMが、以下の残基によってさらに定義され、
-----------------e 25 phvisf--h 34 -p 36 37 38 sh --G 43 ---a 47 (配列番号150)
式中、x 37 は、sおよびnから選択される。項目43に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目45)
以下のセグメント(I)-(II)をさらに含み、
qwx (I)
37 38 (II)
式中、
~x は、任意のD-アミノ酸残基から独立的に選択され、
は、iおよびvから選択され、
37 は、sおよびnから選択され、および
およびx 38 は、アミノ酸残基x およびx 38 のアルファ-炭素の間で測定された3~7原子長の骨格を有するドメイン内リンカーを介して接続されるアミノ酸残基である、項目43または44に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目46)
x1~x が、f、h、i、p、r、y、n、sおよびvから独立的に選択される、項目45に記載の -ペプチド性化合物。
(項目47)
x6がvである、項目45または46に記載の -ペプチド性化合物。
(項目48)
x37がnである、項目44~47のいずれか一項に記載の -ペプチド性化合物。
(項目49)
前記x およびx 38 のアミノ酸残基が、ジスルフィドドメイン内結合を介して接続され、
システイン -システイン 38 ジスルフィド、
ホモシステイン -システイン 38 ジスルフィド、
システイン -ホモシステイン 38 ジスルフィド、および
ホモシステイン -ホモシステイン 38 ジスルフィド、から選択される、項目44~48のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目50)
x7およびx 38 がそれぞれシステインであり、前記ドメイン内リンカーが、前記c とc 38 のアミノ酸残基の間にジスルフィド結合を含む、項目49に記載の -ペプチド性化合物。
(項目51)
前記ドメイン内リンカーが、前記x7アミノ酸残基とx 38 アミノ酸残基の側鎖の間にアミド結合連結を含む、項目45~50のいずれか一項に記載の -ペプチド性化合物。
(項目52)
前記アミド結合連鎖が、以下の対のx とx 38 D-アミノ酸残基のうちの一つであり、
アスパラギン酸7およびDap38、
アスパラギン酸7およびDab38、
アスパラギン酸7およびオルニチン-38、
グルタミン酸7およびDap38、
グルタミン酸7およびDap38、および
グルタミン酸7およびオルニチン38、
式中、Dapは□□□-ジアミノプロピオン酸であり、Dabは□□□-ジアミノ酪酸である、項目51に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目53)
前記ドメイン内リンカーを欠く対照化合物よりも3倍以上強い(すなわち、3倍低いKD)VEGFに対する結合親和性(K )を有する、項目45~52のいずれか一項に記載の -ペプチド性化合物。
(項目54)
前記D-ペプチド性GAドメインが、3らせんバンドルの構造式を含み、
[らせん1 (#6-21) ]-[リンカー1 (#22-26) ]-[らせん2 (#27-35) ]-[リンカー2 (#36-37) ]-[らせん3 (#38-51)
式中、
#は、D-ペプチド性GAドメイン中に含まれるアミノ酸残基の基準位置を示し、および
らせん1 (#6-21) は、以下から選択されるペプチド性フレームワーク配列を含み、
a) x knakedaiaelkka 21 (配列番号138)
式中、
は、l、v、およびiから選択され、および
は、lおよびcから選択され、および
b) (a)で定義される配列に対して、70%以上(例えば、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上)の同一性を有する配列と、を含む、項目43~53のいずれか一項に記載の -ペプチド性化合物。
(項目55)
前記D-ペプチド性GAドメインが、
a) x qwx knakedaiaelkkaGit 24 (配列番号139)
式中、
は、t、y、f、i、i、pおよびrから選択され、
は、i、h、n、p、およびsから選択され、
は、d、i、およびvから選択され、
は、l、v、およびiから選択され、および
は、lおよびcから選択され、および
b) (a)で定義される配列に対して、70%以上(例えば、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上)の同一性を有する配列、から選択されるN末端ペプチド性フレームワーク配列を含む、項目43~53のいずれか一項に記載の -ペプチド性化合物。
(項目56)
前記D-ペプチド性GAドメインが、
a) ilkaha(配列番号140)、および
b) (a)で定義される配列に対して50%以上(例えば、65%以上、または80%以上)の同一性を有する配列、から選択されるC末端ペプチド性フレームワーク配列を含む、項目43~55のいずれか一項に記載の -ペプチド性化合物。
(項目57)
前記D-ペプチド性GAドメインが、配列:
qwx knakedaiaelkkagitephvisfinhapx 37 38 shvnGlknailkaha 53 (配列番号141)
式中、
は、t、y、f、i、i、pおよびrから選択され、
は、i、h、n、p、およびsから選択され、
は、d、i、およびvから選択され、
は、l、v、およびiから選択され、
は、lおよびcから選択され、
37 は、t、y、n、およびsから選択され、
38 は、vおよびcから選択され、
39 は、eおよびsから選択され、
40 は、hおよびeから選択され、
43 は、gおよびaから選択され、
47 は、aおよびeから選択される、項目56に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目58)
(a) 化合物11055、979102、および979107-979110(配列番号108~113)のうちの一つから選択される配列か、
b) (a)で定義される前記配列と80%以上(例えば、90%以上)の同一性を有する配列か、
c) (a)で定義される配列に対して1~10個のアミノ酸残基置換を有する配列かを含み、前記1~10個のアミノ酸残基置換が、
i) 表6による類似のアミノ酸残基置換、
ii) 表6による保存的アミノ酸残基置換、および
iii) 表6による高度に保存されたアミノ酸残基置換、から選択される、項目43~57のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目59)
化合物11055、979102および979107-979110(配列番号108~113)のうちの一つを含む、項目58に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目60)
前記第一のD-ペプチド性GAドメインと相同な第二のD-ペプチド性GAドメインをさらに含む、項目43~59のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目61)
前記化合物が二量体である、項目43~59のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物。
(項目62)
医薬組成物であって、
項目1~61のいずれか一項に記載のD-ペプチド性化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および
薬学的に許容可能な賦形剤と、を含む、医薬組成物。
(項目63)
前記組成物が、眼の疾患または状態の治療のために製剤化される、項目62に記載の医薬組成物。
(項目64)
対象者において血管新生に関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、前記方法が、それを必要とする対象者に、項目1~60のいずれか一項に従い、有効量のVEGFに特異的に結合するDペプチド性化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、方法。
(項目65)
血管新生に関連する前記疾患または状態が、癌(例えば、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌または卵巣癌)、炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、黄斑変性症、網膜症および皮膚疾患(例えば、酒さ)である、項目64に記載の方法。
(項目66)
血管新生に関連する前記疾患または状態が、糖尿病性黄斑浮腫(DME)である、項目64に記載の方法。
(項目67)
血管新生に関連する前記疾患または状態が、滲出型加齢黄斑変性(AMD)である、項目64に記載の方法。
(項目68)
有効量の第二の活性薬剤を対象者に併用投与することをさらに含む、項目64~67のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記第二の活性薬剤が、D-ペプチド性化合物である、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記第二の活性薬剤が、小分子、化学療法剤、抗体、抗体断片、アプタマー、およびLタンパク質から選択される、項目68に記載の方法。
(項目71)
前記第二の活性薬剤が、血小板由来成長因子(PDGF)、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、EGF、EGFR、Her2、Her3、PD-1、PD-L1、CTLA4、OX-40、DR3、LAG3、Ang2、IL-1、IL-6、FcRn、CD3、IL-17、およびBCMAから選択される標的タンパク質に特異的に結合する、項目68~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記第二の活性薬剤剤が、ペグプレラニブ(Fovista)、ラニビズマブ(Lucentis)、トラスツズマブ(Herceptin)、ベバシズマブ(Avastin)、アフリベルセプト(Eylea)、ニボルマブ(Opdivo)、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、およびペムブロリズマブ(Keytruda)から選択される、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記第二の活性薬剤が、PD-1の拮抗薬であるD-ペプチド性化合物である、項目68に記載の方法。
(項目74)
血管新生に関連する疾患または状態をインビボで診断または撮像するための方法であって、
項目1~60のいずれか一項に記載のVEGFに特異的に結合するDペプチド性化合物を対象者に投与することと、
前記対象者の少なくとも一部を撮像することと、を含む、方法。
(項目75)
前記撮像が、PET撮像を含み、前記投与が、前記対象者の前記血管系に前記化合物を投与することを含む、項目74に記載の方法。
(項目76)
細胞受容体による前記化合物の取込みを検出することをさらに含む、項目74に記載の方法。
(項目77)
前記対象者にベバシズマブを投与することをさらに含む、項目74に記載の方法であって、血管新生と関連する前記疾患または状態が癌である、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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【配列表】
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【外国語明細書】