(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082757
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】抗-CD3抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220526BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220526BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220526BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220526BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220526BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220526BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220526BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220526BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220526BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220526BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/10
A61K9/19
A61K9/48
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P37/02
A61P29/00
A61P25/00
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022063973
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2019531579の分割
【原出願日】2017-08-29
(31)【優先権主張番号】62/380,652
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519067699
【氏名又は名称】ティジアーナ ライフ サイエンシズ パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】クンワー シャイルバイ
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗-CD3抗体の治療的、診断的及び/又は予防的製剤、及び用量及び投薬レジメン、並びにそのような製剤及び用量及び投薬レジメンを使用する方法に関する。
【解決手段】本発明は、CD3イプシロン鎖(CD3ε)に対して特異的な、モノクローナル抗体、例えば完全ヒトモノクローナル抗体の製剤及び投薬を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗-CD3抗体又はその抗原結合断片、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、トレハロース、及びメチオニンを含有する、経口製剤であって、該抗-CD3抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含み、並びに該製剤は、液体であり、並びに濃度が
a.酢酸ナトリウム三水和物が、10mM~500mMであり;
b.塩化ナトリウムが、10mM~500mMであり;
c.ポリソルベート80が、0.01%~1%(w/v)であり;
d.トレハロースが、5%~25%(w/v)であり;及び
e.メチオニンが、0.1%~0.5%(w/v)である、経口製剤。
【請求項2】
更にEDTAを含有する、請求項1記載の経口製剤。
【請求項3】
0.1mg~10mgである、前記抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量を含有する、請求項1又は2記載の経口製剤。
【請求項4】
前記単位投与量が、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである、請求項3記載の経口製剤。
【請求項5】
EDTAの濃度が、0.01%~1%(w/v)である、請求項2~4のいずれか一項記載の経口製剤。
【請求項6】
請求項1、2、3又は5記載の製剤の凍結乾燥された粉末。
【請求項7】
抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の0.1mg~10mgの単位投与量、25mM酢酸ナトリウム三水和物、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を含有する、液体経口製剤であって、
該抗-CD3抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む、液体経口製剤。
【請求項8】
0.1%EDTA(w/v)を更に含有する、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
前記単位投与量が、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである、請求項7又は8記載の液体経口製剤。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項記載の液体経口製剤の凍結乾燥された粉末。
【請求項11】
前記抗-CD3抗体又は抗原結合断片の比が:
a.ポリソルベート80に対し、1:0.01~0.1(w/w)であり;
b.トレハロースに対し、1:10~50(w/w)であり;
c.メチオニンに対し、1:0.1~0.5(w/w)であり;
d.酢酸ナトリウム三水和物に対し、1:0.1~1.0(w/w)であり;並びに
e.塩化ナトリウムに対し、1:0.5~2.0(w/w)である、請求項1記載の経口製剤。
【請求項12】
前記抗-CD3抗体又は抗原結合断片の比が:
EDTAに対し、1:0.1~0.5(w/w)である、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の0.1mg~10mgの単位投与量、並びに抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき、0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、1.25mgの塩化ナトリウム、0.034mgのポリソルベート80、34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを含有する経口粉末製剤であって、
該抗-CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む、経口粉末製剤。
【請求項14】
抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき0.17mgのEDTAを更に含有する、請求項13記載の経口粉末製剤。
【請求項15】
前記単位投与量が、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである、請求項13記載の経口粉末製剤。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項記載の製剤を含有する腸溶性コーティングされた経口カプセル剤。
【請求項17】
抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の0.1mg~10mgの単位投与量、並びに抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき、0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、1.25mgの塩化ナトリウム、0.034mgのポリソルベート80、34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを含有する、抗-CD3抗体の凍結乾燥された製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤であって、
該抗-CD3抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤。
【請求項18】
前記抗-CD3抗体の凍結乾燥された製剤が、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき0.17mgのEDTAを更に含有する、請求項17記載の腸溶性コーティングされた経口カプセル剤。
【請求項19】
抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の0.1mg~10mgの単位投与量、25mM酢酸ナトリウム三水和物、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を含有する、抗-CD3抗体液体製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤であって、該抗-CD3抗体液体製剤は、0.1%EDTAを更に含有し、及び/又は該抗体は、IgG1アイソタイプを有し、及び
該抗-CD3抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤。
【請求項20】
前記単位投与量が、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである、請求項19記載の腸溶性コーティングされた経口カプセル剤。
【請求項21】
(i)前記抗-CD3抗体が、アミノ酸配列GYGMH(配列番号:1)を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、アミノ酸配列VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号:3)を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、アミノ酸配列QMGYWHFDL(配列番号:4)を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、アミノ酸配列RASQSVSSYLA(配列番号:5)を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、アミノ酸配列DASNRAT(配列番号:6)を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及びアミノ酸配列QQRSNWPPLT(配列番号:7)を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含み、
(ii)前記抗-CD3抗体が、配列番号:8のアミノ酸配列を含む可変重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:9のアミノ酸配列を含む可変軽鎖アミノ酸配列を含み、並びに/又は
(iii)前記製剤が、NF-kBインヒビター、GLP-1又はβ細胞静止化合物、メサラミン又は別の5-ASA薬、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、PPARγアゴニスト、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、DPP-4(グリプチン-シタグリプチン)、脂肪酸合成阻害剤(例えば、セルレニン、ケルセチン、C7、アピゲニン、AICAR)、FXRアゴニスト(例えば、胆汁塩アクチベーター、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸(OIBA、Ocaliva)、フェクサラミン、カフェストール、胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール、コレセレラム)、SGLT2インヒビター(エクス-ダパグリフロジン(HbA1cレベル低下)、抗-IL-6RmAb、抗-TNF抗体(レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、及びヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト))、抗炎症及び/又は免疫抑制化合物(例えば、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロスポリンマイクロエマルジョン)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、ガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、プレドニソン(デルタゾン)及び抗肥満薬からなる群から選択される少なくとも1種の追加の活性物質を更に含有する、請求項1~20のいずれか一項記載の経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤。
【請求項22】
自己免疫疾患、炎症障害、神経変性疾患又は癌の症状を治療又は緩和する方法における使用のための、請求項1~21のいずれか一項記載の経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤であって、該方法は、該経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤を、該治療又は緩和を必要とする対象へ投与することを含む、経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤。
【請求項23】
前記自己免疫疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)、1型糖尿病、2型糖尿病、又は潰瘍性大腸炎(UC)である、請求項22記載の使用のための経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤。
【請求項24】
NF-kBインヒビター、GLP-1又はβ細胞静止化合物、メサラミン又は別の5-ASA薬、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、PPARγアゴニスト、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、DPP-4(グリプチン-シタグリプチン)、脂肪酸合成阻害剤(例えば、セルレニン、ケルセチン、C7、アピゲニン、AICAR)、FXRアゴニスト(例えば、胆汁塩アクチベーター、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸(OIBA、Ocaliva)、フェクサラミン、カフェストール、胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール、コレセレラム)、SGLT2インヒビター(エクス-ダパグリフロジン(HbA1cレベル低下)、抗-IL-6RmAb、抗-TNF抗体(レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、及びヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト))、抗炎症及び/又は免疫抑制化合物(例えば、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロスポリンマイクロエマルジョン)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、ガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、プレドニソン(デルタゾン)及び抗肥満薬:からなる群から選択される少なくとも1種の追加の活性物質を対象へ投与することを更に含む、請求項22記載の使用のための経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤。
【請求項25】
対象における粘膜免疫及び免疫調節を活性化する方法における使用のための、請求項1~24のいずれか一項記載の経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤であって、該方法は、該経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤を、該活性化を必要とする対象へ経口投与することを含む、経口製剤、液体経口製剤、又は経口粉末製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年8月29日に出願された、米国特許出願第62/380,652号の恩恵及び優先権を主張するものであり;その内容は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、抗-CD3抗体の製剤、用量、及び投薬レジメン、並びにそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
T細胞受容体複合体のCD3イプシロンシグナル伝達分子に対する抗体は、免疫抑制薬として及び自己免疫疾患の治療において有用であることが証明された。従って、抗-CD3抗体を調製する改善された方法、抗-CD3抗体を精製する方法、及び抗-CD3抗体を含む医薬製剤は、有用である。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本開示は、特にCD3に対し方向付けられたモノクローナル抗体に関する製剤、用量、及び投薬レジメンを提供する。本開示の製剤は、抗-CD3抗体を含有し、且つこれらの製剤は、本明細書において「抗-CD3抗体製剤」と称される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、経口製剤である。
【0005】
様々な態様において、本発明は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、トレハロース、及びメチオニンを含む製剤を提供する。任意に、本製剤は、EDTAを更に含む。本製剤は、液体又は凍結乾燥された粉末である。本製剤は、単位投与量の抗-CD3抗体又は抗原結合断片を含む。この単位投与量は、例えば、約0.1mg~10mgである。好ましくは、単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0006】
本製剤が液体である場合、酢酸ナトリウム三水和物の濃度は、約10mM~500mMであり;塩化ナトリウムの濃度は、約10mM~500mMであり;ポリソルベート80の濃度は、約0.01%~1%(w/v)であり;トレハロースの濃度は、約5%~50%(w/v)であり;及び、メチオニンの濃度は、約0.01%~1%(w/v)である。EDTAが含まれる場合、EDTAの濃度は、約0.01%~1%(w/v)である。この溶液のpHは、pH4~pH6の範囲である。様々な態様において、本製剤は、カプセル剤などの、経口剤形である。このカプセル剤は、腸溶性コーティングされている。この液体製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含まれる。
【0007】
別の態様において、本発明は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の約0.1mg~10mgの単位投与量、25mM酢酸ナトリウム三水和物、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を有する液体製剤を提供する。任意に、本製剤は、0.1%EDTA(w/v)を更に含む。本単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。この溶液のpHは、pH4~pH6の範囲である。様々な態様において、本製剤は、カプセル剤などの、経口剤形である。このカプセル剤は、腸溶性コーティングされている。この液体製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含まれる。
【0008】
本製剤が、凍結乾燥された粉末である場合、抗-CD3抗体又は抗原結合断片のポリソルベート80に対する比は、約1:0.01~0.1(w/w)であり;抗-CD3抗体又は抗原結合断片のトレハロースに対する比は、約1:10~50(w/w)であり;抗-CD3抗体又は抗原結合断片のメチオニンに対する比は、約1:0.1~0.5(w/w)であり;抗-CD3抗体又は抗原結合断片の酢酸ナトリウム三水和物に対する比は、約1:0.1~1.0(w/w)であり;並びに、抗-CD3抗体又は抗原結合断片の塩化ナトリウムに対する比は、約1:0.5~2.0(w/w)である。EDTAが含まれる場合、抗-CD3抗体又は抗原結合断片のEDTAに対する比は、約1:0.1~0.5(w/w)である。様々な態様において、本製剤は、カプセル剤などの、経口剤形である。このカプセル剤は、腸溶性コーティングされている。
【0009】
別の態様において、本発明は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片約0.1mg~10mgの単位投与量、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき、約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、1.25mgの塩化ナトリウム、0.034mgのポリソルベート80、34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを有する、粉末製剤を提供する。任意に、本粉末製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき、0.17mgのEDTAを更に含む。単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0010】
本発明の製剤のいずれかを含有する腸溶性コーティングされた経口カプセル剤も、本発明に含まれる。
【0011】
更なる態様において、本発明は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の約0.1mg~10mgの単位投与量、並びに抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき、約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、1.25mgの塩化ナトリウム、0.034mgのポリソルベート80、34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを有する、抗-CD3抗体の凍結乾燥された製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤を提供する。任意に、抗-CD3抗体の凍結乾燥された製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき、0.17mgのEDTAを更に含む。単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0012】
更に別の態様において、本発明は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の約0.1mg~10mgの単位投与量、25mM酢酸ナトリウム三水和物、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を有する、抗-CD3抗体液体製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤を提供する。任意に、抗-CD3抗体液体製剤は、0.1%EDTAを更に含む。単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0013】
本発明の抗-CD3の抗体の製剤に従う抗-CD3抗体は、例えば、アミノ酸配列GYGMH(配列番号:1)を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、アミノ酸配列VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号:3)を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、アミノ酸配列QMGYWHFDL(配列番号:4)を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、アミノ酸配列RASQSVSSYLA(配列番号:5)を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、アミノ酸配列DASNRAT(配列番号:6)を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及びアミノ酸配列QQRSNWPPLT(配列番号:7)を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を有する。
【0014】
あるいは抗-CD3の抗体は、配列番号:8のアミノ酸配列を含む可変重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:9のアミノ酸配列を含む可変軽鎖アミノ酸配列を有する。別の態様において、抗-CD3抗体は、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0015】
様々な態様において、本発明の製剤は、少なくとも1種の追加の活性物質を有する。追加の活性物質としては、例えば、NF-kBインヒビター、GLP-1又はβ細胞静止化合物、メサラミン又は別の5-ASA薬、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、PPARγアゴニスト、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、DPP-4(グリプチン-シタグリプチン)、脂肪酸合成阻害剤(例えば、セルレニン、ケルセチン、C7、アピゲニン、AICAR)、FXRアゴニスト(例えば、胆汁塩アクチベーター、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸(OIBA、Ocaliva)、フェクサラミン、カフェストール、胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール、コレセレラム)、SGLT2インヒビター(エクス-ダパグリフロジン(HbA1cレベル低下)、抗-IL-6RmAb、抗-TNF抗体(レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、及びヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト))、抗炎症及び/又は免疫抑制化合物(例えば、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロスポリンマイクロエマルジョン)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、ガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、プレドニソン(デルタゾン)及び抗肥満薬が挙げられる。
【0016】
本発明は更に、本発明の製剤を、それを必要とする対象へ投与することにより、自己免疫疾患、炎症障害、神経変性疾患又は癌の症状を治療又は緩和する方法を提供する。好ましくは、この製剤は、腸溶性-コーティングされた経口カプセル剤である。自己免疫疾患は、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)、1型糖尿病、2型糖尿病、又は潰瘍性大腸炎(UC)である。本方法は更に、少なくとも1種の追加の活性物質を対象へ投与することを含む。この活性物質は例えば、NF-kBインヒビター、GLP-1又はβ細胞静止化合物、メサラミン又は別の5-ASA薬、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、PPARγアゴニスト、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、DPP-4(グリプチン-シタグリプチン)、脂肪酸合成阻害剤(例えば、セルレニン、ケルセチン、C7、アピゲニン、AICAR)、FXRアゴニスト(例えば、胆汁塩アクチベーター、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸(OIBA、Ocaliva)、フェクサラミン、カフェストール、胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール、コレセレラム)、SGLT2インヒビター(エクス-ダパグリフロジン(HbA1cレベル低下)、抗-IL-6RmAb、抗-TNF抗体(レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、及びヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト))、抗炎症及び/又は免疫抑制化合物(例えば、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロスポリンマイクロエマルジョン)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、ガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、プレドニソン(デルタゾン)及び抗肥満薬である。
【0017】
別の態様において、本発明は、抗-CD-3抗体を、それを必要とする対象へ経口投与することを含む、対象における粘膜免疫及び免疫調節を活性化する方法を提供する。例えば、この方法は、本発明の製剤のいずれかを投与することを含む。好ましくは、この製剤は、腸溶性-コーティングされた経口カプセル剤である。
【0018】
更なる態様において、本発明は、抗-CD-3抗体をそれを必要とする対象へ経口投与することを含む、制御性T細胞(Treg)を活性化する方法を提供する。例えば、この方法は、本発明の製剤のいずれかを投与することを含む。好ましくは、この製剤は、腸溶性-コーティングされた経口カプセル剤である。
【0019】
本発明は、単位投与量の抗体又はその抗原結合断片、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を有する抗体液体製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤を、更に提供する。この抗体は、IgG1アイソタイプを有する。
【0020】
本発明はまた、単位投与量の抗体又はその抗原結合断片、並びに抗体又はその抗原結合断片の1mgにつき約34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを有する抗体の凍結乾燥された製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤も提供する。この抗体は、IgG1アイソタイプを有する。別に規定しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されたものと類似した又は同等の方法及び材料を、本発明の実践において使用することができるが、好適な方法及び材料は、以下に説明されている。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が引用により明確に組み込まれている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が、支配するであろう。加えて、本明細書において説明される材料、方法、及び実施例は、単に例証であり、限定を意図するものではない。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明らかとなり且つこれらにより包含されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、NI-0401製剤に対する時間及び温度の影響を示す棒グラフである:SEC-HPLC:総面積(AUC)。
【0023】
【
図2】
図2は、NI-0401製剤に対する時間及び温度の影響を示す棒グラフである:SEC-HPLC:%不純度。
【0024】
【
図3】
図3は、透析され凍結乾燥されたNI-0401製剤イテレーション#2の安定性に対する時間及び温度の作用を示すSDSゲルの写真である:非還元SDS PAGE:T0及びT14。
【0025】
【
図4】
図4は、非透析リード製剤(10%トレハロース)ガラス転移点(tg)の、10%トレハロースと0.1%メチオニン、対、20%トレハロース±EDTAとの比較を示すグラフである;リバースヒートフロー変調のオーバーレイ。
【0026】
【
図5】
図5は、凍結乾燥されたリードNI-0401製剤に対する時間及び温度の作用を示す棒グラフである:SEC-HPLC:%主要ピーク:T14は、50℃で及び4℃、50℃で保持。
【0027】
【
図6】
図6は、NI-0401リード凍結乾燥製剤に対する時間及び温度の作用を示す棒グラフである:SEC-HPLC:総ピークAUC:T14は、50℃及び4℃で保持。
【0028】
【
図7】
図7は、NI-0401凍結乾燥製剤に対する時間及び温度の作用を示す棒グラフである:SEC-HPLC:%総不純度:T14は、50℃及び4℃で保持。
【0029】
【
図8】
図8は、NI-0401凍結乾燥製剤に対する時間及び温度の作用を示す棒グラフである:SEC-HPLC:T0に対するT14の総ピーク回収%。
【0030】
【
図9】
図9は、NI-0401凍結乾燥製剤に対する時間及び温度の作用を示す棒グラフである:SEC-HPLC:T0に対するT14の主要ピーク回収%。
【0031】
【
図10】
図10は、T0及びT14でのリード凍結乾燥製剤の安定性に対する時間及び温度の作用を示すSDSゲルの写真である:非還元SDS-PAGE。
【0032】
【
図11】
図11は、T0及びT14でのリード凍結乾燥製剤の安定性に対する時間及び温度の作用を示すSDSゲルの写真である:還元SDS-PAGE。
【0033】
【
図12】
図12は、T0及びT14でのリード凍結乾燥製剤の安定性に対する時間及び温度の作用を示すIEFゲルの写真である:ゲルIEF。*レーン1、4、8、及び10は、pIマーカー5、10、15及び20ulを装加。
【0034】
【
図13】
図13は、T0-分散(Lyo)での現行のNI-0401製剤の代表的cIEFプロファイル及び解析を示すプロットである。
【0035】
【
図14】
図14は、凍結乾燥後のNI-0401のキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)分析を示すプロットである。cIEFは、工程1において電圧30KVで15分間、及び工程2において電圧30KVで30分間を用いて、実行した。NI-0401のpI値は、~9.25(塩基性)である。
【0036】
【
図15】
図15は、T0及びT14での、リード製剤、対、現行の製剤における、NI-0401不均一集団の分布を示す棒グラフである。
【0037】
【
図16】
図16は、ケーキの外観及び完全性と相関された、SEC-HPLC分析により決定された、フォラルマブの安定性及び純度を示す写真である。アルギニン及びアスコルビン酸塩を含む製剤は、最高の崩壊量、及び材料の喪失を示した。
【0038】
【
図17】
図17は、4℃又は50℃で、T14(凍結乾燥後14日間)での凍結乾燥されたリード製剤のケーキの外観を示す写真である。(1)対照製剤、緩衝液のみ、(2)20%トレハロース+0.1%メチオニン、並びに(3)20%トレハロース+0.1%メチオニン+0.1%EDTA。NI-0401は、トレハロース及びメチオニンを含有する製剤中で、無傷のケーキを示した。より多くの崩壊が、対照製剤において認められた。
【0039】
【
図18】
図18は、凝固点、融点及びガラス転移点のMDSC(変調示差走査熱量測定)決定を示すプロットである。
【0040】
【
図19】
図19A及びB:非還元条件(A)及び還元条件(B)での、凍結乾燥された製剤中のNI-0401のSDS-PAGE分析。4℃又は50℃での、周囲(T0)又は14日間の貯蔵後(T14)での、凍結乾燥サイクル後に、NI-0401抗体の純度の変化は認められなかった。抗体の純度は、98%より大きかったが、T14及び50℃での対照緩衝液中で、純度は、非還元条件下で、85%まで低下した。
【0041】
【
図20】
図20は、抗体の純度を決定するための、SEC-HPLCによる、線形濃度のフォラルマブ(forlaumab)の分析を示す線グラフである。
【0042】
【
図21】
図21A-Cは、T0(A)、4℃でT14(B)及び40℃でT14(C)での、凍結乾燥されたフォラルマブ製剤のSEC-HPLC分析を示す、一連のプロットである。リード製剤は、対照製剤と比べ、不純物を伴わない優れた安定性を示した。
【0043】
【
図22】
図22A-Cは、不純物を検出するために使用した、36.78μg又は6ulの注入での、代表的SEC-HPLCクロマトグラムを示すプロットである。フルスケール(A)。拡大スケール(B)。オーバーレイ(C)。
【0044】
【
図23】
図23A及びBは、凍結乾燥された薬剤が、50℃で14日間、安定していることを示す、クロマトグラフである。フルスケール(A)。拡大スケール(B)。
【0045】
【
図24-1】
図24A-Dは、凍結乾燥後の、フォラルマブリード製剤の純度を示す、一連のクロマトグラフである。両方のリード製剤は、凍結乾燥後に、>98%純度(SEC-HPLC)を示した。
【
図24-2】
図24A-Dは、凍結乾燥後の、フォラルマブリード製剤の純度を示す、一連のクロマトグラフである。両方のリード製剤は、凍結乾燥後に、>98%純度(SEC-HPLC)を示した。
【0046】
【
図25】
図25は、対照製剤及びマンニトール製剤において認められる不純物への、主要ピークのより高い分解を示す、非製剤化フォラルマブのSEC-HPLCを示す、クロマトグラフである。
【0047】
【
図26】
図26は、対照製剤(緩衝液)に対し比較した、リード製剤のガラス転移点を示すグラフである。ガラス転移点-30~37℃は、凍結乾燥されたケーキの崩壊を防止した。凍結乾燥プロセス後の、NI-0401リード製剤のMDSC(変調示差走査熱量測定)分析。様々なアニール温度でのMDSC分析。融点、凝固点及びガラス転移点は、このリード製剤は、凍結乾燥されたケーキの最小の崩壊を有することを指摘しており、その理由は、それらはガラス転移点を上回るからである。
【0048】
【0049】
【
図28】
図28は、PBMCが、NI-0401の様々な製剤又はプラセボ対照により染色されたことを示す、一連のグラフである。
【0050】
【
図29】
図29は、連続4倍希釈では、NI-0401剤1-15が、結合において顕著な差異を示さないことを示す、折れ線グラフである。
【0051】
【
図30】
図30は、NI-0401の異なる製剤の機能を試験するための、刺激プロトコールを示す。
【0052】
【
図31】
図31は、NI-0401の異なる凍結製剤は、類似レベルの増殖を誘導することを示す。
【0053】
【
図32】
図32A-Cは、-80℃又は50℃で貯蔵した凍結乾燥された抗体は、示差的刺激能を示すことを示す、一連の棒グラフである。
【0054】
【
図33】
図33は、本開示の経鼻的抗-CD3抗体製剤に関する、投薬レジメン及び休薬サイクルの概略的表示である。
【0055】
【
図34】
図34は、潰瘍性大腸炎治療のための、本開示の抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の薬剤を使用する併用療法に関する、投薬レジメン及び休薬サイクルの概略的表示である。
【0056】
【
図35】
図35は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療のための、本開示の抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の薬剤を使用する併用療法に関する、投薬レジメン及び休薬サイクルの概略的表示である。
【0057】
【
図36】
図36は、1型糖尿病治療のための、本開示の抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の薬剤を使用する併用療法に関する、投薬レジメン及び休薬サイクルの概略的表示である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
本発明は、CD3イプシロン鎖(CD3ε)に対して特異的な、モノクローナル抗体、例えば完全ヒトモノクローナル抗体の製剤及び投薬を提供する。具体的には、本発明は、標的組織特異的免疫調節に有用な、抗-CD3ε抗体の経口、経鼻及び皮下製剤を提供する。抗-CD3ε抗体の全身(例えば静脈内)投与とは異なり、本発明の製剤は、標的の免疫抑制を最小化する。本発明の製剤の追加の優れた特徴は、投与の標的の性質のためにこれまで可能であったものよりも、より低濃度の抗-CD3抗体を投薬する能力である。本製剤は、自己免疫疾患、炎症障害、神経変性障害及び癌の症状の治療又は緩和に有用である。
【0059】
CD3抗体
【0060】
本発明は、CD3イプシロン鎖(CD3ε)に対し特異的な抗体の製剤を提供する。CD3イプシロン鎖(CD3ε)に特異的な抗体及びその抗原結合断片は、本明細書において、抗-CD3抗体と称し、且つこれらの製剤は、本明細書において「抗-CD3抗体製剤」と称す。当該技術分野において公知のいずれの抗-CD3抗体も、本発明における使用に適している。抗-CD3抗体は、モノクローナル抗体である。
【0061】
例証的抗-CD3抗体は、アミノ酸配列GYGMH(配列番号:1)を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、アミノ酸配列VIWYDGSKKYYVDSVKG(配列番号:3)を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、アミノ酸配列QMGYWHFDL(配列番号:4)を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)、アミノ酸配列RASQSVSSYLA(配列番号:5)を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、アミノ酸配列DASNRAT(配列番号:6)を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及びアミノ酸配列QQRSNWPPLT(配列番号:7)を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む。
【0062】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体は、QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFKFSGYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKKYYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQMGYWHFDLWGRGTLVTVSS(配列番号:8)を含む可変重鎖アミノ酸配列、及びEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPLTFGGGTKVEIK(配列番号:9)を含む可変軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0063】
好ましくは、抗-CD3抗体は:
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFKFSGYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKKYYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQMGYWHFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:10)を含む重鎖アミノ酸配列、及び:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号:11)を含む軽鎖アミノ酸配列を含む。この抗-CD3抗体は、本明細書において、NI-0401、フォラルマブ、又は28F11-AEと称す。(例えば、Dean Y、Depis F、Kosco‐Vilbois M.、“Combination therapies in the context of anti‐CD3 antibodies for the treatment of autoimmune diseases.” Swiss Med Wkly. (2012)参照(この内容はその全体が引用により本明細書中に組み込まれている))。
【0064】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体は、完全ヒト抗体又はヒト化抗体である。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、完全長抗-CD3抗体を含有する。別の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、CD3に特異的に結合する抗体断片を含有する。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、CD3に特異的に結合する完全長抗-CD3抗体及び抗原結合断片の組合せを含有する。
【0065】
一部の実施態様において、CD3に結合する抗体又はその抗原-結合断片は、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、単鎖、Fab断片、F(ab’)2断片、scFv、scAb、dAb、単一ドメイン重鎖抗体、又は単一ドメイン軽鎖抗体である。一部の実施態様において、このようなCD3に結合する抗体又はその抗原-結合断片は、マウス、他の齧歯類、キメラ、ヒト化又は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0066】
任意に、本開示の製剤において使用される抗-CD3抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。典型的には、この変異は、定常領域内である。この変異は、変更されたエフェクター機能を有する抗体を生じる。抗体のエフェクター機能は、Fc受容体又は補体成分などの、エフェクター分子に対する抗体の親和性を変更する、すなわち増強又は減少することにより、変更される。例えば、この変異は、T細胞からのサイトカイン放出を減少することが可能である抗体を生じる。例えば、この変異は、アミノ酸残基234、235、265、もしくは297又はそれらの組合せで、重鎖内にある。好ましくは、この変異は、234、235、265もしくは297位のいずれかのアラニン残基、又は235位のグルタミン酸残基、又はそれらの組合せで生じる。
【0067】
好ましくは、本明細書に提供される抗-CD3抗体は、インビボにおける、1又は複数のサイトカインの重鎖定常領域-介在性放出を防止する、1又は複数の変異を含む。
【0068】
一部の実施態様において、本開示の製剤において使用される抗-CD3抗体又はその抗原結合断片は、完全ヒト抗体である。本明細書において使用される完全ヒトCD3抗体は、例えば、Fc領域におけるL234L235→A234E235変異を含み、その結果抗-CD3抗体曝露時のサイトカイン放出が、有意に減少されるか又は排除される。本明細書に提供される抗-CD3抗体のFc領域におけるL234L235→A234E235変異は、抗-CD3抗体がヒト白血球に曝露された際の、サイトカイン放出を減少又は排除するのに対し、以下に説明された変異は、有意なサイトカイン放出能を維持する。例えば、サイトカイン放出の有意な減少は、Fc領域にL234L235→A234E235変異を有する抗-CD3抗体への曝露時のサイトカインの放出を、1又は複数の以下に説明した変異を有する別の抗-CD3抗体への曝露時のサイトカイン放出のレベルと比較することにより、規定される。Fc領域における他の変異は、例えば、L234L235→A234A235、L235→E235、N297→A297、及びD265→A265を含む。
【0069】
用語「サイトカイン」は、細胞表面上に発現された細胞外受容体に結合し、それにより細胞機能を調節する、当該技術分野において公知の全てのヒトサイトカインを指し、これはIL-2、IFN-γ、TNF-a、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、及びIL-13を含むが、これらに限定されるものではない。
【0070】
製剤
【0071】
本抗-CD3製剤は、以下の範囲の抗-CD3抗体の単位投与量を含有する:約0.1mg~約50mg;約0.1mg~約25mg;又は、0.1mg~約10mg。例えば、この単位投与量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9、9.5、10mg又はそれ以上である。好ましくは、単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0072】
本抗-CD3製剤は、液体であることができる。例えば、この液体製剤は、水性である。あるいは本抗-CD3製剤は、凍結乾燥された粉末である。抗-CD3製剤が凍結乾燥された粉末である場合、加えて増量剤が添加され、凍結乾燥されたケーキに適切な構造を提供することができる。この追加の増量剤は、貯蔵時に凍結乾燥されたケーキの安定性を増大することができる。あるいはこの追加の増量剤は、例えば経口カプセル剤などの剤形の製造を補助することができる。増量剤は、本明細書において説明されており、これは、例えばトレハロース、マンニトール、マルトース、乳糖、ショ糖、ソルビトール、もしくはグリセロールなどのポリオール、デンプン、微晶質セルロース、低含水微晶質セルロース、例えばAvicel又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0073】
本抗-CD3抗体製剤は、1又は複数の塩(緩衝する塩)、1又は複数のポリオール及び1又は複数の賦形剤を含有する。本発明の製剤はまた、緩衝剤、又は保存剤も含んでよい。本抗-CD3抗体製剤は、溶液中に、pHが約4~8の範囲で;約4~7の範囲で;約4~6の範囲で;約5~6の範囲で;又は、約5.5~6.5の範囲で、緩衝される。好ましくは、pHは5.5である。
【0074】
塩の例は、以下の酸から調製されたものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸など。このような塩はまた、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩など、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩として調製することもできる。緩衝剤の例は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む。
【0075】
本発明の製剤は、緩衝システムを含んでよい。本出願において使用される用語「緩衝液」又は「緩衝システム」は、通常少なくとも1種の他の化合物と組合せて、緩衝能を示す、すなわち当初のpHを比較的わずかに変化するか又は変化せずに、酸又は塩基(アルカリ)のいずれかを限定的に中和する能力を示す溶液中の緩衝システムを提供する化合物を意味する。
【0076】
緩衝液は、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、カルシウム緩衝液、並びにそれらの組合せ及び混合物を含む。ホウ酸緩衝液は、例えば、ホウ酸及びその塩、例えば、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムを含む。ホウ酸緩衝液はまた、溶液中にホウ酸又はその塩を生成する、テトラホウ酸カリウム又はメタホウ酸カリウムなどの化合物を含む。
【0077】
リン酸緩衝システムは、1又は複数の一塩基性リン酸塩、二塩基性リン酸塩などを含む。特に有用なリン酸緩衝液は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のリン酸塩から選択されたものである。好適なリン酸緩衝液の例は、二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、一塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO4)及び一塩基性リン酸カリウム(KH2PO4)の1又は複数を含む。リン酸緩衝液の成分は、リン酸イオンとして計算して、0.01%~0.5%(w/v)の量で使用されることが多い。
【0078】
他の公知の緩衝化合物は、CD3製剤に従い、例えば、クエン酸塩、炭酸水素ナトリウム、トリスなどを任意に添加することができる。この溶液中の他の構成成分は、他の機能を有しつつ、また緩衝能に影響を及ぼすこともできる。例えば、錯化剤として使用されることが多いEDTAは、溶液の緩衝能に対し、注目すべき作用を有し得る。
【0079】
本発明の製剤において使用するのに好ましい塩は、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物及びクエン酸ナトリウムを含む。
【0080】
本発明に従う製剤中の塩の濃度は、約10mM~500mM、約25mM~250mM、約25nM~150mMの間である。
【0081】
酢酸ナトリウム三水和物は、約10mM~100mMの範囲の濃度である。例えば、酢酸ナトリウム三水和物は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100mMである。好ましくは、酢酸ナトリウム三水和物は、25mMである。
【0082】
塩化ナトリウムは、約50mM~500mMの範囲の濃度である。例えば、塩化ナトリウムは、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475又は500mMである。好ましくは、塩化ナトリウムは、濃度約125mMである。
【0083】
クエン酸ナトリウムは、約10mM~100mMの範囲の濃度である。例えば、クエン酸ナトリウムは、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100mMである。好ましくは、クエン酸ナトリウムは、約25~50mMの範囲である。
【0084】
一部の実施態様において、塩は、濃度が約25mm~100mmの範囲の酢酸ナトリウム三水和物、及び濃度が約150mm~500mmの範囲の塩化ナトリウムである。
【0085】
好ましくは、本製剤は、約25mMの酢酸ナトリウム三水和物及び約150mMの塩化ナトリウムを含有する。
【0086】
本製剤は、増量剤及び/又は安定化する賦形剤として、1又は複数のポリオールを含有する。ポリオールは、例えば、トレハロース、マンニトール、マルトース、乳糖、ショ糖、ソルビトール、又はグリセロールである。ポリオールは、約0.1%~50%、又は5%~25%の範囲の濃度である。例えば、ポリオールは、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50%である。
【0087】
一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~50%、又は5%~25%の範囲のトレハロースである。例えば、トレハロースは、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50%である。好ましくは、トレハロースは、濃度が約10%又は約20%である。最も好ましくは、トレハロースは、濃度が約20%である。
【0088】
一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~約10%のグリセロールである。
【0089】
一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~約10%の範囲のマルトースである。
【0090】
本製剤は、抗体凝集を抑制するか又はそうでなければ減少するために、1又は複数の賦形剤及び/又は界面活性剤を含有する。抗体凝集を減少するのに適した賦形剤は、非限定的例として、ポリソルベート20又はポリソルベート80などの界面活性剤を含むが、これらの例に限定されるものではない。一部の実施態様において、ポリソルベート20又はポリソルベート80は、約0.01~1%又は約0.01~0.05%の範囲の濃度で存在する。例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80は、濃度が約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0%である。
【0091】
好ましくは、界面活性剤は、濃度が約0.01~0.05%の範囲のポリソルベート80である。より好ましくは、ポリソルベート80は、0.02%である。
【0092】
本製剤は、抗体酸化を減少するために、1又は複数の賦形剤を含有する。抗体酸化を減少するのに適した賦形剤は、非限定的例として抗酸化剤を含む。抗酸化剤は、例えば、メチオニン、D-アルギニン、BHT又はアスコルビン酸を含む。抗酸化剤は、濃度が約0.01%~1%;0.1%~1%;又は、0.1%~0.5%の範囲で存在する。一部の実施態様において、抗酸化剤は、メチオニンである。一部の実施態様において、メチオニンは、濃度が約0.01%~1%;0.1%~1%;又は、0.1%~0.5%の範囲で存在する。例えば、メチオニンは、濃度約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0%で存在する。好ましくは、メチオニンは、約0.1%である。
【0093】
本製剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの、1又は複数のキレート剤を含有する。キレート剤は、濃度が0.01%~1%;0.1%~1%;又は、0.1%~0.5%の範囲である。例えば、キレート剤は、濃度約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0%で存在する。好ましくは、キレート剤は、濃度約0.1%のEDTAである。
【0094】
一部の実施態様において、本製剤は、安定性を増大するために、1又は複数の賦形剤を含有する。一部の実施態様において、安定性を増大するための賦形剤は、ヒト血清アルブミンである。一部の実施態様において、ヒト血清アルブミンは、約1mg~約5mgの範囲で存在する。
【0095】
一部の実施態様において、本製剤は、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg)、アミノ酸、又はステアリン酸Mgとアミノ酸の両方を含有する。好適なアミノ酸は、例えば、ロイシン、アルギニン、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含む。
【0096】
一部の実施態様において、1又は複数の追加の賦形剤は、Avicel、ポリエチレングリコール(PEG)、又はデンプンなどの、低含水微晶質セルロースである。
【0097】
本発明の製剤に有用な医薬として許容し得る担体及び賦形剤の更なる例は、非限定的に、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、抗-微生物剤、抗酸化剤、及びコーティング剤を含み、例えば:結合剤:トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、他のデンプン、ゼラチン、天然ゴム及び合成ゴム、例えばアカシアゴム、キサンタン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガカント末、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン(例えば、ポビドン、クロスポビドン、コポビドンなど)、メチルセルロース、Methocel、α化デンプン(例えば、Colorcon社から販売されている、STARCH 1500(登録商標)及びSTARCH 1500 LM(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース(FMC社、Marcus Hook、PA、USA)、Emdex、Plasdone、又はそれらの混合物など、充填剤:タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、リン酸水素二カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微晶質セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストロース、フルクトース、ハチミツ、無水乳糖、乳糖一水和物、乳糖とアスパルタム、乳糖とセルロース、乳糖と微晶質セルロース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微晶質セルロース &;グアーガム、糖蜜、ショ糖、又はそれらの混合物など、崩壊剤:アガーアガー、アルギン酸、炭酸カルシウム、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(Explotabなど)、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、他のデンプン、α化デンプン、クレイ、他のアルギン、他のセルロース、ガム(ゲランなど)、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプラスドン、又はそれらの混合物など、滑沢剤:ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、コンプリトール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム(Pruvなど)、植物ベースの脂肪酸滑沢剤、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、サイロイドシリカゲル(AEROSIL 200、W.R. Grace社、ボルチモア、MD USA)、合成シリカの凝集エアロゾル(Deaussa社、ピアノ、TX USA)、熱分解法二酸化ケイ素(CAB-O-SIL、Cabot社、ボストン、MA USA)、又はそれらの混合物など、ケーキング防止剤:ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、又はそれらの混合物など、抗微生物剤:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クレゾール、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール(thimersol)、チモール(thymo)、又はそれらの混合物など、抗酸化剤:アスコルビン酸、BHA、BHT、EDTA、又はそれらの混合物など、並びにコーティング剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、医薬用艶出剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルフタレート、シェラック、ショ糖、二酸化チタン、カルナバワックス、微晶質ワックス、ゲランガム、マルトデキストリン、メタクリレート、微晶質セルロース及びカラゲナン、又はそれらの混合物などが挙げられる。
【0098】
本製剤はまた、他の賦形剤及びその範疇のものを含有することができ、これは非限定的に、プルロニック(登録商標)、ポロキサマー(Lutrol(登録商標)及びポロキサマー188など)、アスコルビン酸、グルタチオン、プロテアーゼインヒビター(例えば、大豆トリプシンインヒビター、有機酸)、pH低下剤、クリーム及びローション(マルトデキストリン及びカラゲナンのような);咀嚼錠剤のための材料(デキストロース、フルクトース、乳糖一水和物、乳糖とアスパルタム、乳糖とセルロース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、微晶質セルロース及びグアーガム、晶質ソルビトールのような);非経口用(マンニトール及びポビドンのような);可塑剤(セバシン酸ジブチル、コーティングのための可塑剤、ポリ酢酸ビニルフタレートのような);粉末滑沢剤(ベヘン酸グリセリルのような);軟ゼラチンカプセル(ソルビトールスペシャル溶液のような);コーティングのための球(シュガー球のような);球形化剤(ベヘン酸グリセリル及び微晶質セルロースのような);懸濁化剤/ゲル化剤(カラゲナン、ゲランガム、マンニトール、微晶質セルロース、ポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、キサンタンガムのような);甘味料(アスパルタム、アスパルタムと乳糖、デキストロース、フルクトース、ハチミツ、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、糖蜜、晶質ソルビトール、ソルビトールスペシャル溶液、ショ糖のような);湿式造粒剤(炭酸カルシウム、無水乳糖、乳糖一水和物、マルトデキストリン、マンニトール、微晶質セルロース、ポビドン、デンプンのような)、カラメル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、チェリークリーム香料及びチェリー香料、無水クエン酸、クエン酸、粉砂糖、D&C赤色33番、D&C黄色10番アルミニウムレーキ、エデト酸二ナトリウム、エチルアルコール15%、FD&C黄色6番アルミニウムレーキ、FD&C青色1番アルミニウムレーキ、FD&C青色1番、FD&C青色2番アルミニウムレーキ、FD&C緑色3番、FD&C赤色40番、FD&C黄色6番アルミニウムレーキ、FD&C黄色6番、FD&C黄色10番、パルミトステアリン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセリル、インジゴカルミン、レシチン、マンニトール、メチル及びプロピルパラベン、グリチルリチン酸一アンモニウム、天然及び人工のオレンジ香料、医薬用艶出剤、ポロキサマー188、ポリデキストロース、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリビドン、プレα化トウモロコシデンプン、α化デンプン、赤色酸化鉄、サッカリンナトリウム、カルボキシメチルエーテルナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ストロベリー香料、合成黒色酸化鉄、合成赤色酸化鉄、二酸化チタン、及び白色ワックスが挙げられる。
【0099】
一部の実施態様において、本抗-CD3製剤は、液体であり、且つ酢酸ナトリウムの濃度は、約10mM~500mMであり;塩化ナトリウムの濃度は、約10mM~500mMであり;ポリソルベート80の濃度は、約0.01%~1%(w/v)であり;トレハロースの濃度は、約5%~50%(w/v)であり;及び、メチオニンの濃度は、0.01%~1%(w/v)である。任意に、本製剤は、EDTAを濃度約0.01%~1%(w/v)で更に含有する。抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量は、約0.1mg~10mgの範囲内である。一部の実施態様において、液体製剤は、凍結乾燥され、粉末を形成する。
【0100】
一部の実施態様において、本抗-CD3製剤は、液体であり、且つ25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約0.1mg~10mgの範囲を含有する。任意に、本製剤は、0.1%EDTA(w/v)を更に含有する。一部の実施態様において、液体製剤は、凍結乾燥され、粉末を形成する。
【0101】
具体的実施態様において、液体抗-CD3製剤は、25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、及び抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量0.5mgを含有している。またこの製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含む。
【0102】
具体的実施態様において、液体抗-CD3製剤は、25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、及び抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量0.25mgを含有している。またこの製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含む。
【0103】
具体的実施態様において、液体抗-CD3製剤は、25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、及び抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量5.0mgを含有している。またこの製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含む。
【0104】
具体的実施態様において、液体抗-CD3製剤は、25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、0.1%EDTA(w/v)、及び抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量0.5mgを含有している。またこの製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含む。
【0105】
具体的実施態様において、液体抗-CD3製剤は、25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、0.1%EDTA(w/v)、及び抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量0.25mgを含有している。またこの製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含む。
【0106】
具体的実施態様において、液体抗-CD3製剤は、25mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、0.1%メチオニン(w/v)、0.1%EDTA(w/v)、及び抗-CD3抗体又は抗原結合断片の単位投与量5.0mgを含有している。またこの製剤の凍結乾燥された粉末も、本発明に含む。
【0107】
一部の実施態様において、本製剤は、抗-CD3抗体又は抗原結合断片のポリソルベート80に対する比が、約1:0.01~0.1(w/w)であり;抗-CD3抗体又は抗原結合断片のトレハロースに対する比が、約1:10~50(w/w)であり;抗-CD3抗体又は抗原結合断片のメチオニンに対する比が、約1:0.1~0.5(w/w)であり;抗-CD3抗体又は抗原結合断片の酢酸ナトリウムに対する比が、約1:0.1~1.0(w/w)であり;並びに、抗-CD3抗体又は抗原結合断片の塩化ナトリウムに対する比が、約1:0.5~2.0(w/w)である:凍結乾燥された粉末である。任意に、本製剤は、抗-CD3抗体又は抗原結合断片のEDTAに対する比が、約1:0.1~0.5(w/w)である、EDTAを更に含む。抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量は、約0.1mg~10mgの範囲内である。
【0108】
一部の実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約0.1mg~10mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。任意に、この粉末製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき0.17mgのEDTAを更に含む。好ましくは、この単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0109】
具体的実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約0.5mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。
【0110】
具体的実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約2.5mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。
【0111】
具体的実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約5mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。
【0112】
具体的実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約0.5mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース、約0.17mg EDTA及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。
【0113】
具体的実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約2.5mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース、約0.17mg EDTA及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。
【0114】
具体的実施態様において、抗-CD3製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約5mg、及び抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース、約0.17mg EDTA及び約0.17mgメチオニンを有する、粉末、例えば凍結乾燥された粉末である。
【0115】
本発明の製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えばカプセル剤)のいずれか)の水分(すなわち水)量は、約7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満である。好ましくは、水分量は、2~5%の範囲であり、より好ましくは水分量は、1~2%の範囲であり、最も好ましくは水分量は、1%未満である。水分量を決定する方法は、当該技術分野において公知であり、例えば水分量は、カールフィッシャー滴定により決定される。
【0116】
一部の実施態様において、本製剤のオスモル濃度は、約800~950(例えば、約825~925)mOsm/kgである。
【0117】
本発明の抗-CD3抗体製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル)のいずれか)は、約2℃~約4℃、15℃又は外界温度での貯蔵に適している。一部の実施態様において、本製剤は、貯蔵時の水分を減少するために乾燥剤分子篩パックと共に貯蔵される製剤である。一部の実施態様において、本製剤は、貯蔵時の水分を減少するために乾燥剤分子篩パックと共に、容器に、例えばボトル又は他の好適な容器に、貯蔵される。
【0118】
本発明の製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル)のいずれか)は、製剤化された抗体及び他の任意の本製剤の活性物質の化学安定性を提供する。この文脈における「安定性」及び「安定した」は、所定の製造、及び調製、輸送及び貯蔵の条件下での、化学分解、並びに沈降、沈殿、凝集などの物理変化に対する、抗体及び他の任意の活性物質の抵抗を指す。本発明の「安定した」製剤はまた、所定の製造、調製、輸送、及び/又は貯蔵の条件下で、出発量又は参照量の少なくとも90%、95%、98%、99%、又は99.5%を保持することが好ましい。抗体及び他の任意の活性物質の量は、例えば、UV-可視分光光度法及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又はSDS-PAGEなどの、当該技術分野において認められた方法のいずれかを用いて決定することができる。
【0119】
本発明の抗-CD3抗体製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル)のいずれか)は、4℃、15℃、又は外界温度のいずれかで、少なくとも3ヶ月は安定している。本製剤は、4℃又は15℃のいずれかで3ヶ月より長く、例えば、4℃、15℃、又は外界温度のいずれかで、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月及び/又は24ヶ月よりも長く、安定している。
【0120】
本発明の抗-CD3抗体製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル)のいずれか)は、重鎖及び軽鎖として少なくとも90%、91%、92%、95%、95%、97%、985、99%又はそれ以上のIgGの純度を有する。
【0121】
本発明の抗-CD3抗体製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル剤)のいずれか)は、5%、4%、3%、2%、1%未満の総不純度を有する。
【0122】
本発明の抗-CD3抗体製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル)のいずれか)は、最低でも90%、91%、92%、95%、95%、97%、985、99%以上のIgGモノマーを有する。
【0123】
本発明の抗-CD3抗体製剤(液体、凍結乾燥された又は最終剤形(例えば、カプセル)のいずれか)は、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満の総IgG凝集を有する。
【0124】
剤形
【0125】
本発明の製剤は、腸内、非経口、又は経鼻投与のために、具体的に製剤化されてよい。
【0126】
腸内投与、すなわち経口投与に関して、本製剤は、カプセル剤又は錠剤であってよい。非経口投与は、静脈内、皮下、筋肉内、及び関節内投与を含み、且つ密封バイアル又は他の容器中の液体又は凍結乾燥された粉末であってよい。
【0127】
経鼻投与に関して、本製剤は、密封バイアル又は他の好適な容器内のエアロゾルであってよい。
【0128】
本カプセル剤は、軟ゲルカプセル剤又は硬シェルカプセル剤を含む。軟ゲルカプセル剤は、軟ゲル又はゼラチン又はゼラチン様物質である。硬シェルカプセル剤又は軟ゲルカプセル剤は、HPMCカプセルである。カプセル剤、軟ゲル又は硬シェルには、液体抗-CD3製剤、又は粉末化された、例えば凍結乾燥された抗-CD3製剤が充填されてよい。例証的液体及び粉末化された抗-CD3製剤は、先に説明されている。
【0129】
一部の実施態様において、各カプセル剤は、胃の酸性を迂回するのに十分な腸溶性コーティングを含む。任意の好適な腸溶性コーティングは、非限定的例として、pH4又は5以上で抗-CD3抗体を放出する、Eudragit(登録商標)、例えばEudragit(登録商標)L30D/L100-55などの、腸溶性コーティングを含む、経口抗-CD3抗体製剤において使用することができる。
【0130】
一部の実施態様において、経口抗-CD3抗体製剤中の各カプセル剤は、0~2の範囲のサイズ、例えばサイズ0、サイズ1、及び/又はサイズ2を有する、軟ゲル又はゼラチン又はゼラチン-様物質を含む。
【0131】
一部の実施態様において、経口抗-CD3抗体製剤中のカプセル剤は、液体-充填硬カプセル剤(LFHC)である。任意の好適なLFHCは、非限定的例として、Licaps(登録商標)及びCapsugel(登録商標)による他のLFHCを含む、本開示の経口抗-CD3抗体製剤において使用することができる。
【0132】
一部の実施態様において、経口抗-CD3抗体製剤中の各液体-充填カプセル剤は、容積が約1000μL未満、例えば約75μL未満、及び/又は約500μL未満を含む。一部の実施態様において、経口抗-CD3抗体製剤中の各液体-充填カプセル剤は、容積が、約50μL~約1000μL、約100μL~約1000μL、約200μL~約1000μL、約250μL~約1000μL、約50μL~約500μL、約100μL~約500μL、約200μL~約500μL、及び/又は約250μL~約500μLの範囲である。
【0133】
好ましい経口製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約0.1mg~10mg、並びに抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、約1.25mg塩化ナトリウム、約0.034mgポリソルベート80、約34mgトレハロース及び約0.17mgメチオニンを有する抗-CD3抗体の凍結乾燥された製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤を含む。任意に、この腸溶性コーティングされた経口カプセル剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片1mgにつき0.17mgのEDTAを更に含む。単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0134】
別の好ましい経口製剤は、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の単位投与量約0.1mg~10mg、25mM酢酸ナトリウム三水和物、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を含有する、抗-CD3抗体液体製剤を含む、腸溶性コーティングされた経口カプセル剤を含む。任意に、この腸溶性コーティングされた経口カプセル剤は、0.1%EDTAを更に含む。単位投与量は、0.5mg、2.5mg又は5.0mgである。
【0135】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、皮下製剤である。一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、密封バイアル又は他の容器内に収容される。
【0136】
一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体、少なくとも1種の塩、少なくとも1種の界面活性剤、及び製剤を所望の注射容積にするために必要な容積の水を含む。
【0137】
一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体約2mg/mL、約7.31mg塩化ナトリウム、約3.40mg酢酸ナトリウム三水和物、約0.20mgポリソルベート80、及び所望の注射容積のために最大1mlの製剤容積とする量の水を含む。皮下抗-CD3製剤は、約4~6の範囲のpHでなければならない。
【0138】
一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、バイアル又は他の好適な容器内で、冷蔵して、例えば約2℃~約8℃の範囲で、貯蔵される。一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、振盪されない。一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、凍結されない。一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、投与前に希釈される。
【0139】
一部の実施態様において、皮下抗-CD3抗体製剤は、約1mg/60kg体重~約10mg/60kg体重の範囲の投与量で投与される。
【0140】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、経鼻製剤である。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、エアロゾル製剤である。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、1日1回投与に適している。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体のエアロゾルに関して、約0.1mg~約10mgの範囲で1日1回の用量で提供する。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体断片のエアロゾルに関して、約0.1mg~約10mgの範囲で1日1回の用量で提供する。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体のエアロゾルに関して、約0.1mg~約10mgの範囲で1日1回の用量で提供する。
【0141】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、粒子サイズが約1mm~約5mmの範囲を有する粒子集団を含む。
【0142】
粒子製剤の粒子は、直径約1mm~約5mm、例えば直径5mm未満、直径4mm未満、直径3mm未満、直径2mm未満、及び直径約1mmを有する。
【0143】
抗-CD3抗体又はその抗原-結合断片を含有する粒子製剤の粒子は、平均直径約0.1mm~約50mmを有する。抗-CD3抗体又はその抗原-結合断片を含有する粒子製剤の粒子は、平均直径約1mm~約10mm、例えば平均直径10mm未満、平均直径9mm未満、平均直径8mm未満、平均直径7mm未満、平均直径6mm未満、平均直径5mm未満、平均直径4mm未満、平均直径3mm未満、及び平均直径約2mmを有する。一部の実施態様において、これらの粒子は、平均直径約2mm~5mmを有する。一部の実施態様において、これらの粒子は、平均直径2mm~5mmを有し、ここで各粒子は直径約50mm未満である。
【0144】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、完全長抗-CD3抗体を含む。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、CD3に特異的に結合する抗体断片を含む。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、完全長抗-CD3抗体及びCD3に特異的に結合する抗原結合断片の組合せを含む。
【0145】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩を約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。
【0146】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸ナトリウム緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩化ナトリウムを約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。
【0147】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体断片を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩を約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、抗-CD3抗体断片を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸ナトリウム緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩化ナトリウムを約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。
【0148】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、完全長NI-0401抗体を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩を約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、完全長NI-0401抗体を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸ナトリウム緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩化ナトリウムを約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。
【0149】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、NI-0401抗体断片を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩を約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、NI-0401抗体断片を約0.1mg~約10mgの範囲の用量で、クエン酸ナトリウム緩衝液を約25mm~約50mmの範囲の濃度で、及び塩化ナトリウムを約150mmの濃度で含有する溶液を含み、ここでこの溶液は、約4~6の範囲のpHを有する。
【0150】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、安定化賦形剤として、1又は複数のポリオールを含有する。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロースである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトール、及び濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロースである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトール、及び濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトールである。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、安定化賦形剤として1又は複数のポリオール、及び濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールを含む。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロース、及び濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロース、及び濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトール、及び濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトール、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロース、及び濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトール、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロース、及び濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロース、濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトール、及び濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールである。一部の実施態様において、ポリオールは、濃度が約0.1%~約10%の範囲のマンニトール、濃度が約0.1%~約1%の範囲のトレハロース、濃度が約1%~約10%の範囲のソルビトールであり、及びポリオールは、濃度が約1%~約10%の範囲のグリセロールである。
【0151】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、1又は複数の界面活性剤、例えば非限定的例として、ポリソルベート20又はポリソルベート80などを含有する。一部の実施態様において、ポリソルベート20又はポリソルベート80は、約0.01%~約0.05%の範囲の濃度で存在する。
【0152】
一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、約2℃~約4℃での貯蔵に適している。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、密封バイアル又は他の好適な容器内で貯蔵される。一部の実施態様において、経鼻抗-CD3抗体製剤は、密封バイアル又は他の好適な容器内で、約2℃~約4℃で貯蔵される。
【0153】
本開示に従う治療的実体の投与は、改善された移行、送達、耐性などを提供するために、製剤に混入される好適な担体、賦形剤、及び他の物質と共に投与されることは理解されるであろう。多数の適切な製剤は、全ての薬化学者に公知の処方において認めることができる:「レミントン薬科学」(第15版、Mack Publishing Company、イーストン、PA(1975))、特にその中のBlaug、Seymourによる第87章。これらの製剤は、例えば、散剤、泥膏、軟膏、ゼリー、ワックス、油分、脂質、脂質(陽イオン性又は陰イオン性)含有ベシクル(Lipofectin(商標)など)、DNA複合体、無水吸収性泥膏、水中油型及び油中水型乳剤、乳剤カルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固形ゲル、及びカルボワックス含有する半固形混合物を含む。製剤中の活性成分が製剤により失活されないこと及び製剤が投与経路と生理学的に適合しかつ忍容され得ることを条件として、前述の混合物のいずれも、本発明に従う処置及び治療において適している。同じくBaldrick P.、「Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance」、Regul. Toxicol Pharmacol. 32(2):210-8 (2000)、Wang W.、「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals」、Int. J. Pharm. 203(1-2):1-60 (2000)、Charman WN、「Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts」、J Pharm Sci.89(8):967-78 (2000)、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA J Pharm Sci Technol. 52:238-311 (1998)、並びに薬化学者に周知の製剤、賦形剤及び担体に関連した追加情報に関するその中の引用を参照されたい。
【0154】
治療的投与
【0155】
本明細書に開示された抗-CD3抗体製剤を含む、本明細書に提供される治療的製剤は、例えば、自己免疫疾患又は炎症障害などの免疫関連障害に関連した症状を治療又は緩和するために使用される。本明細書に開示された抗-CD3抗体製剤はまた、神経変性障害又は癌に関連した症状を治療又は緩和するために使用される。
【0156】
自己免疫疾患としては、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS、これは自己免疫成分によるウイルス性疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、内耳自己免疫疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルー-ヘルペス状皮膚炎;慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、実験的自己免疫型脳脊髄炎(EAE)、線維筋痛-線維筋炎、グレーヴス病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン-依存型糖尿病(1型糖尿病;2型糖尿病)、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変症、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(全身性進行性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても公知)、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、全身性紅斑性狼瘡、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑及びヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0157】
炎症障害は、例えば、慢性及び急性の炎症障害を含む。炎症障害の例としては、アルツハイマー病、喘息、アトピー性アレルギー、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、気管支喘息、湿疹、糸球体腎炎、移植片対宿主疾患、溶血性貧血、炎症性腸疾患(IBD)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、変形性関節炎、敗血症、卒中、組織及び臓器の移植、血管炎、糖尿病性網膜症並びに人工呼吸器が誘発した肺外傷が挙げられる。
【0158】
抗-CD3抗体の製剤は、自己免疫疾患又は炎症障害などの免疫関連障害、神経変性障害又は癌に罹患した対象へ投与される。自己免疫疾患、炎症障害、神経変性障害又は癌に罹患した対象は、当該技術分野において公知の方法により確定される。例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎又は炎症性腸疾患などの自己免疫疾患に罹患した対象は、免疫状態を評価するために、理学的検査、放射性試験、並びに血液、尿及び糞便の分析などの、様々な臨床試験及び/又は臨床検査室試験を用いて同定される。例として多発性硬化症を罹患した患者は、例えば時間及び空間で播種される(すなわち、少なくとも3ヶ月隔ててCNSの異なる部位で生じる)中枢神経系(CNS)病巣の存在を、磁気共鳴画像法を用いることにより、確定される。関節リウマチに罹患した患者は、例えば、血液試験及び/又はX線もしくは他の画像評価を用いて確定される。1型糖尿病に罹患した患者は、例えば、以下の3種の試験のいずれかが陽性であり、その後異なる日に2回目の試験が陽性である場合に、確定される:(1)糖尿病の症状があり、絶食時血漿グルコースが、126mg/dl以上;(2)糖尿病の症状があり、随時血漿グルコース(日中のいずれかの時点で採取)が200mg/dl以上;又は、(3)2時間間隔で測定した経口糖負荷試験(OGTT)値が、200mg/dl以上(OGTTは、3時間の期間にわたり与えられる)。
【0159】
自己免疫疾患、炎症障害などの免疫関連障害、神経変性障害又は癌を罹患した患者への抗-CD3抗体製剤の投与は、様々な臨床検査室の又は臨床的な結果が達成される場合に、成功と考えられる。例えば、自己免疫疾患又は炎症障害などの免疫関連障害を罹患した患者への抗-CD3抗体製剤の投与は、この障害に関連した1又は複数の症状が、緩和、軽減、阻害されるか、又は状態が更に進行しない、すなわち悪化しない場合に、成功と考えられる。自己免疫疾患又は炎症障害などの免疫関連障害を罹患した患者への抗-CD3抗体製剤の投与は、この障害、例えば自己免疫疾患が、寛解に入ったか、又は状態が更に進行しない、すなわち悪化しない場合に、成功と考えられる。
【0160】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療、診断及び/又は予防において使用される。非アルコール性脂肪性肝炎は、アルコール以外の原因に起因した、脂肪肝疾患である。NASHは、貧血;疲労;体重減少;虚弱などの症状に、及び後期においては肝硬変に関連している。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、NASHに罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、NASHの少なくとも1種の症状を軽減する、NASHを治療する、NASHを予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態にNASHが進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0161】
本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、炎症性腸管障害(IBD)の治療、診断及び/又は予防において使用される。IBDは、胃腸(GI)管の組織の慢性炎症及び刺激である。IBDは、痙性腹痛、下痢、直腸出血、発熱及び白血球数上昇などの症状と関連している。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、IBDに罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、IBDの少なくとも1種の症状を軽減する、IBDを治療する、IBDを予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態にIBDが進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0162】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、潰瘍性大腸炎の治療、診断及び/又は予防において使用される。潰瘍性大腸炎は、結腸の慢性炎症及び刺激である。潰瘍性大腸炎は、貧血;疲労;体重減少;食欲減退;直腸出血;体液及び栄養素の喪失;皮膚病巣;関節痛;及び成長阻害(特に小児において)などの症状と関連している。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、潰瘍性大腸炎に罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、潰瘍性大腸炎の少なくとも1種の症状を軽減する、潰瘍性大腸炎を治療する、潰瘍性大腸炎を予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態に潰瘍性大腸炎が進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0163】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、クローン病の治療、診断及び/又は予防において使用される。クローン病は、腸の慢性炎症及び刺激である。クローン病は、腹痛、下痢、体重減少、食欲不振、発熱、寝汗、直腸痛、及び直腸出血などの症状に関連している。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、クローン病に罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、クローン病の少なくとも1種の症状を軽減する、クローン病を治療する、クローン病を予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態にクローン病が進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0164】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、多発性硬化症(MS)の治療、診断及び/又は予防において使用される。MSは、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす慢性の炎症疾患である。MSの症状は、例えば、感覚の変化、視覚の問題、筋肉虚弱、うつ病、協調及び会話の困難、並びに疼痛を含む。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、MSに罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、MSの少なくとも1種の症状を軽減する、MSを治療する、MSを予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態にMSが進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0165】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、狼瘡の治療、診断及び/又は予防において使用される。狼瘡は、患者の体の免疫系が、患者自身の組織及び臓器を攻撃する場合に生じる慢性の炎症性疾患である。狼瘡により引き起こされた炎症は、多くの異なる体のシステムに影響を及ぼし得-これは患者の関節、皮膚、腎臓、血液細胞、脳、心臓及び肺を含む。患者が経験する狼瘡の徴候及び症状は、その疾患により影響を受ける体のシステムにより左右されるであろう。最も一般的な徴候及び症状は以下を含む:疲労及び発熱、関節痛、硬直及び膨潤、頬及び鼻梁を覆う顔面の蝶型発疹、日光暴露により出現するか又は悪化する皮膚病巣(光過敏性)、冷気に当たるか又は緊張時に白色又は青色に変化する指及び爪先(レイノー現象)、息切れ、胸痛、ドライアイ、頭痛、錯乱及び記憶障害。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、狼瘡に罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、狼瘡の少なくとも1種の症状を軽減する、狼瘡を治療する、狼瘡を予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態に狼瘡が進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0166】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、実験的自己免疫型脳脊髄炎(EAE)の治療、診断及び/又は予防において使用される。EAEは、中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす慢性の炎症疾患である。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、EAEの少なくとも1種の症状を軽減する、EAEを治療する、EAEを予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態にEAEが進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0167】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、インスリン-依存型糖尿病(1型糖尿病)の治療、診断及び/又は予防において使用される。1型糖尿病は、ホルモンインスリンの不適切な分泌から生じる、持続性の高血糖症(高い血糖レベル)により特徴付けられる疾患である。1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のインスリン-産生β細胞の喪失により特徴付けられる。1型糖尿病は、自己免疫疾患であり、体の自分の免疫系が、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞を攻撃し、それらを破壊するか、又はインスリン産生を減少もしくは排除するのに十分にそれらに損傷を及ぼす。1型糖尿病の症状は、例えば、喉の渇きの増加、排尿の増加、食欲増加にも係わらず体重減少、悪心、吐気、腹痛、及び疲労を含む。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、1型糖尿病に罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、1型糖尿病の少なくとも1種の症状を軽減する、1型糖尿病を治療する、1型糖尿病を予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態に1型糖尿病が進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0168】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、2型糖尿病の治療、診断及び/又は予防において使用される。2型糖尿病は、高い血糖、インスリン抵抗性、及びインスリンの相対欠乏により特徴付けられる、長期の代謝障害である疾患である。一般的症状は、喉の渇きの増加、頻尿、及び説明のつかない体重減少である。症状はまた、空腹の増大、疲労感、及び治癒しないただれも含むことがある。症状は、ゆっくり現れることが多い。高血糖からの長期合併症は、心疾患、卒中、失明を生じ得る糖尿病性網膜症、腎不全、及び切断に繋がることがある四肢の血流の低下を含み得る。高浸透圧性高血糖状態の突然の発症が生じることがあるが;しかし、ケトアシドーシスは一般的ではない。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、2型糖尿病に罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、2型糖尿病の少なくとも1種の症状を軽減する、2型糖尿病を治療する、2型糖尿病を予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態に2型糖尿病が進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0169】
別の実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、関節リウマチ(RA)の治療、診断及び/又は予防において使用される。関節リウマチは、関節の慢性炎症を引き起こす自己免疫疾患である。関節リウマチはまた、関節の周囲の組織、並びに体の他の臓器の炎症を引き起こし得る。RAは、疲労、食欲不振、微熱(low grade)、筋肉及び関節のうずき、及び硬直などの症状に関連している。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、RAに罹患した、それと診断された、又はその素因がある対象へ投与される。本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、RAの少なくとも1種の症状を軽減する、RAを治療する、RAを予防する、及び/又は対象において更なる疾患状態にRAが進行するのを防止するのに十分である用量で投与される。
【0170】
本発明はまた、免疫関連障害に関連した症状又は臓器移植後の拒絶反応に関連した症状を治療又は緩和する方法を提供する。例えば、本明細書において使用される製剤は、本明細書に提供される自己免疫疾患及び炎症障害のいずれかの症状を治療又は緩和するために使用される。
【0171】
本明細書において使用される治療的製剤はまた、臓器又は組織移植における免疫抑制剤としても使用される。本明細書において使用される「免疫抑制剤」とは、この反応が天然に生じるか又は人工的に引き起こされるかどうか、この反応が先天性免疫系、適応性免疫系、又は両方の一部として生じるかどうかにかかわらず、免疫応答に関与した少なくとも1種の経路の活性の即時の又は遅れた減少につながる、その免疫系に作用する薬剤を指す。これらの免疫抑制性抗-CD3抗体製剤は、臓器又は組織の移植前に、移植時に及び/又は移植後に、対象へ投与される。例えば、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、臓器又は組織移植後の拒絶反応を治療又は予防するために使用される。
【0172】
更に別の本明細書において使用される実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、ヒト個体内の自己反応性抗体の存在の検出の際に、ヒト個体に投与される。そのような自己反応性抗体は、ヒト個体において内在性に発現された1又は複数のタンパク質への結合親和性を持つ抗体として、当該技術分野において公知である。本明細書において使用される一態様において、ヒト個体は、当該技術分野において周知のように、1又は複数の自己免疫疾患に特に関与した自己反応性抗体の存在について試験される。一つの具体的実施態様において、ヒト患者は、インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ及び/又はIA-2タンパク質に対する抗体の存在について試験され、1又は複数のそのような自己反応性抗体が陽性検出された場合には引き続き抗-CD3抗体が投与される。
【0173】
更に別の本明細書において使用される実施態様において、抗-CD3製剤は、粘膜免疫及び免疫調節を活性化するために、ヒト個体へ投与される。
【0174】
抗-CD3抗体製剤は、制御性T細胞(Treg)を活性化するために使用される。
【0175】
本明細書において使用される別の実施態様において、抗-CD3抗体組成物が、ヒト組織への免疫細胞の動員を予防、低下又は減少するために、ヒト対象へ投与される。本明細書において使用される抗-CD3抗体は、ヒト疾患の組織部位への異常な又は制御できない免疫細胞動員に関連した状態を予防及び治療するために、それらを必要とする対象へ投与される。
【0176】
本明細書において使用される別の実施態様において、抗-CD3抗体組成物は、免疫細胞のヒト組織への遊出及び漏出を予防、低下又は減少するために、ヒト対象へ投与される。従って、本明細書において使用される抗-CD3抗体は、ヒト疾患の組織部位への異常な又は制御できない免疫細胞の浸潤に関連した状態を予防及び/又は治療するために投与される。
【0177】
本明細書において使用される別の実施態様において、抗-CD3抗体組成物は、ヒト体内におけるサイトカインの放出により媒介される作用を予防、低下又は減少するために、ヒト対象へ投与される。用語「サイトカイン」は、細胞表面上の細胞外受容体に結合し、これにより細胞機能を調節する、当該技術分野において公知の全てのヒトサイトカインを指し、これはIL-2、IFN-g、TNF-a、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、及びIL-13を含むが、これらに限定されるものではない。
【0178】
本明細書において使用される別の実施態様において、抗-CD3抗体組成物は、ヒト体内で、サイトカイン受容体の放出により媒介される作用を予防、低下又は減少するために、ヒト対象へ投与される。用語「サイトカイン受容体」は、本明細書に規定されたような、1又は複数のサイトカインに結合する、当該技術分野内の全てのヒトサイトカイン受容体を指し、これは前述のサイトカインの受容体を含むが、これらに限定されるものではない。従って、本明細書において使用される抗-CD3抗体は、ヒト体内における1又は複数のサイトカイン受容体の異常な活性化、結合又はライゲーションを通じて媒介される状態を治療及び/又は予防するために投与される。インビボにおける抗-CD3抗体の投与は、そのようなヒト対象内のサイトカイン受容体により媒介された細胞内シグナル伝達を枯渇することが、更に想起される。
【0179】
本明細書において使用される一態様において、抗-CD3抗体組成物は、そこでの膵臓ベータ細胞機能の低下時に、ヒト個体へ投与される。一実施態様において、この個体は、当該技術分野において公知のように、β細胞機能、インスリン分泌又はc-ペプチドレベルについて試験される。引き続き、いずれかの指標の十分な減少へ注目すると、ヒト個体は、そこにおけるβ細胞機能の自己免疫破壊の更なる進行を妨げるのに十分な抗-CD3抗体の投薬レジメンで投与される。
【0180】
好ましくは、本明細書に提供される治療的抗-CD3抗体製剤は、対象へ、経口、皮下又は経鼻投与される。他の投与経路も、企図される。例えば、抗-CD3抗体製剤は、静脈内、筋肉内、又はこれらの投与経路の任意の組合せで投与される。
【0181】
併用療法
【0182】
本抗-CD3抗体製剤は、例えば、化学療法薬、抗炎症薬、及び/又は免疫抑制薬などの、1又は複数の追加の薬剤と組合せて、治療時及び/又は治療後に投与される。
【0183】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、単独の治療的組成物へ製剤化され、及びこの抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、同時に投与される。
【0184】
あるいは、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、互いに個別であり、例えば、各々、個別の治療的組成物に製剤化され、且つ抗-CD3抗体製剤と追加の薬剤は、同時に投与されるか、又は抗-CD3抗体製剤と追加の薬剤は、治療レジメン期間中の異なる時点で投与される。例えば、抗-CD3抗体製剤は追加の薬剤の投与前に投与されるか、抗-CD3抗体製剤は追加の薬剤の投与に続けて投与されるか、又は抗-CD3抗体製剤と追加の薬剤は交互様式で投与される。本明細書に説明されたように、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、単回投与量又は反復投与量で投与される。
【0185】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、同時に投与される。例えば、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、単独の組成物に製剤化されるか、又は2種以上の個別の組成物として投与される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、連続して投与されるか、又は抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、治療レジメン期間中異なる時点で投与され得る。
【0186】
自己免疫疾患、炎症障害、神経変性障害又は癌に罹患した患者への、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤との組み合わせでの抗-CD3抗体製剤の投与は、様々な臨床検査目標又は臨床目標が達成された場合に成功と考えられる。例えば、自己免疫疾患、炎症障害、神経変性障害又は癌に罹患した患者への、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤との組合せでの抗-CD3抗体製剤の投与は、その疾患又は障害に関連した1又は複数の症状が、緩和、軽減、阻害されたか、又は状態が更に進行しない、すなわち悪化しない場合に、成功と考えられる。自己免疫疾患、炎症障害、神経変性障害又は癌に罹患した患者への、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤との組合せでの抗-CD3抗体製剤の投与は、その疾患又は障害が、寛解に入るか、又は状態が更に進行しない、すなわち悪化しない場合に、成功と考えられる。
【0187】
本発明の組成物及び方法と共に使用するのに適した第二の薬剤としては、例えば、NF-kBインヒビター、GLP-1又はβ細胞静止化合物、メサラミン又は別の5-ASA薬、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、PPARγアゴニスト、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、DPP-4(グリプチン-シタグリプチン)、脂肪酸合成阻害剤(例えば、セルレニン、ケルセチン、C7、アピゲニン、AICAR)、FXRアゴニスト(例えば、胆汁塩アクチベーター、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸(OIBA、Ocaliva)、フェクサラミン、カフェストール、胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール、コレセレラム)、SGLT2インヒビター(エクス-ダパグリフロジン(HbA1cレベル低下)、抗-IL-6RmAb、抗-TNF抗体(レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、及びヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト))、抗炎症及び/又は免疫抑制化合物(例えば、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロスポリンマイクロエマルジョン)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、ガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、プレドニソン(デルタゾン)及び抗肥満薬が挙げられる。
【0188】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、潰瘍性大腸炎を治療する際に使用される。一部の実施態様において、潰瘍性大腸炎に関連した根底にある胃の炎症は、抗-CD3抗体製剤の投与前に抑制される。一部の実施態様において、潰瘍性大腸炎に関連した根底にある胃の炎症は、追加の治療薬の投与前に抑制される。一部の実施態様において、潰瘍性大腸炎に関連した根底にある胃の炎症は、抗-CD3抗体製剤及び追加の治療薬の投与前に抑制される。一部の実施態様において、治療される対象は、抗-CD3抗体製剤による治療前に投薬される抗炎症薬により予備治療される。一部の実施態様において、治療される対象は、追加の薬剤による治療前に投薬される抗炎症薬により予備治療される。一部の実施態様において、治療される対象は、抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤による治療前に投薬される抗炎症薬により予備治療される。
【0189】
一部の実施態様において、第二の薬剤は、抗-インターロイキン6R(IL-6R)剤、例えば、抗-IL-6R抗体又はその断片などである。一部の実施態様において、第二の薬剤は、1又は複数の抗炎症薬である。一部の実施態様において、第二の薬剤は、NF-kBインヒビターである。
【0190】
一部の実施態様において、第二の薬剤は、全トランス型レチノイン酸(ATRA)である。ATRAは、腸内で高レベルで生成され、これは粘膜免疫及び免疫寛容において重要な役割を果たす。基本レベルでRAは、免疫細胞の生存及び活性化に必要とされる。ATRAはまた、制御性T細胞(Treg)分化を補助することが分かっている。
【0191】
一部の実施態様において、第二の薬剤は、メサラミン又は別の5-ASA薬である。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤とメサラミン又は別の5-ASA薬を含む併用療法は、治療レジメンを通じて毎日1回投与される。
【0192】
一部の実施態様において、第二の薬剤は、抗-腫瘍壊死因子(TNF)抗体である。任意の好適な抗-TNF抗体又はその抗原-結合断片は、非限定的例としてレミケード(登録商標)及びヒュミラ(登録商標)を含む、本開示の抗-CD3抗体製剤を含有する併用療法において、使用することができる。
【0193】
一部の実施態様において、第二の薬剤は、GLP-1又はβ細胞静止化合物(すなわち、カリウムチャネルオープナーなどの、インスリン放出を減少するかそうでなければ阻害する化合物)である。好適なGLP-1化合物の例は、例えば、公開された米国特許出願第20040037826号に説明されており、且つ好適なβ細胞静止化合物は、公開された米国特許出願第20030235583号に説明されており、これら各々はそれらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0194】
別の実施態様において、免疫関連障害を治療するために使用される抗-CD3抗体製剤は、様々な公知の抗炎症性化合物及び/又は免疫抑制性化合物のいずれかと組合せて投与される。好適な公知の化合物は、メトトレキセート、シクロスポリンA(例えば、シクロスポリンマイクロエマルジョンを含む)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、レミケード(インフリキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)及びヒュミラ(アダリムマブ)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0195】
例えば、関節リウマチの治療において、本明細書において使用される抗-CD3抗体製剤は、コルチコステロイド、メトトレキセート、シクロスポリンA、スタチン、抗-IL-6R抗体、レミケード(インフリキシマブ)、エンブレル(エタネルセプト)及び/又はヒュミラ(アダリムマブ)と、共投与することができる。
【0196】
ブドウ膜炎の治療において、抗-CD3抗体製剤は、例えばコルチコステロイド、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロホスファミド及び/又はスタチンなどと一緒に投与することができる。同様に、クローン病又は乾癬などの疾患に罹患した患者は、本明細書において使用される抗-CD3抗体組成物並びにレミケード(インフリキシマブ)、抗-IL-6R抗体、及び/又はヒュミラ(アダリムマブ)の組合せで、治療することができる。
【0197】
多発性硬化症の患者は、本明細書において使用される抗-CD3抗体組成物を、例えばガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、抗-IL-6R抗体、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、及び/もしくはプレドニソン(デルタゾン)並びに/又はスタチンと組合せて、受け取ることができる。
【0198】
一実施態様において、本明細書において使用される免疫抑制性抗-CD3抗体製剤は、前述のように、例えば、GLP-1又はβ細胞静止化合物などの第二の薬剤と一緒に投与される。
【0199】
別の実施態様において、これらの免疫抑制性抗-CD3抗体製剤は、様々な公知の抗炎症性化合物及び/又は免疫抑制性化合物のいずれかと組合せて投与される。本明細書で使用される抗-CD3抗体と共に使用するための好適な抗炎症性化合物及び/又は免疫抑制性化合物は、メトトレキセート、シクロスポリンA(例えば、シクロスポリンマイクロエマルジョンを含む)、タクロリムス、コルチコステロイド及びスタチンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0200】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図34に示された投薬レジメンで投与される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図34に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメンは反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図34に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメンは、休薬期間の後反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図34に示された投薬レジメンで投与され、且つこの休薬サイクルは、反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図34に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメン及び休薬サイクルは、反復される。前記実施態様の一部において、第二の薬剤は、ATRA、メサラミン又は他の5-ASA薬、及び抗-TNF抗体又はその抗原結合断片からなる群から選択される。
【0201】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療に使用される。NASHは、過剰な脂肪沈着に起因した重篤な根底をなす肝線維症に関連した自己免疫疾患である。天然の胆汁酸であるケノデオキシコール酸は、ファルネソイドX受容体(FXR)の最も活性のある生理的リガンドであり、これは多くの生理プロセス及び病理プロセスに関与している。オベチコール酸は、ヒト薬物試験において使用される第一のFXRアゴニストである。しかし、OBAの治療的有用性は、患者のサブセットに限定され得る。OBAは、自己免疫疾患を抑制しない。従って、FXRアゴニストの本開示の抗-CD3抗体製剤との組合せは、組合せて投与される場合に、相乗作用を生じる。
【0202】
一部の実施態様において、第二の薬剤はメトホルミンである。一部の実施態様において、第二の薬剤は、投与量約500mg BIDで、44週間の治療で投与されるメトホルミンである。
【0203】
一部の実施態様において、第二の薬剤はペントキシフィリンである。一部の実施態様において、第二の薬剤は、投与量約400mgの1日3回又は約600mg BIDで、52週間の治療で投与されるペントキシフィリンである。
【0204】
一部の実施態様において、第二の薬剤はウルソデオキシコール酸である。一部の実施態様において、第二の薬剤は、投与量約10mg/kg/日~約20mg/kg/日で、52週間の治療で投与される、ウルソデオキシコール酸である。
【0205】
一部の実施態様において、第二の薬剤はオベチコール酸である。一部の実施態様において、第二の薬剤は、投与量約10mg/kg/日~約20mg/kg/日で、52週間の治療で投与される、オベチコール酸である。
【0206】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図35に示された投薬レジメンで投与される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図35に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメンは反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図35に示された投薬レジメンで投与され、且つ休薬期間が反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図35に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメン及び休薬サイクルは、反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図35に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメンは、以下のスケジュールで反復される:5~7日間のオン、21~28日間のオフ。前記実施態様の一部において、第二の薬剤は、メトホルミン、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、オベチコール酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される。前記実施態様の一部において、第二の薬剤は、500mg BIDで、44週間の治療で投与される、メトホルミンである。前記実施態様の一部において、第二の薬剤は、投与量400mgで1日3回又は600mg BIDで、52週間の治療で投与される、ペントキシフィリンである。前記実施態様の一部において、第二の薬剤は、投与量10~20mg/kg/日で、52週間の治療で投与される、ウルソデオキシコール酸である。前記実施態様の一部において、第二の薬剤は、投与量10~20mg/kg/日で、52週間の治療で投与されるオベチコール酸である。
【0207】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、1型糖尿病の治療において使用される。一部の実施態様において、この第二の薬剤は、1型糖尿病及び/又は2型糖尿病の治療において有用な任意の当該技術分野において認められた薬剤である。一部の実施態様において、第二の薬剤はメトホルミンである。一部の実施態様において、第二の薬剤はメトホルミンであり、及びこの抗-CD3抗体製剤は経口製剤である。一部の実施態様において、第二の薬剤はメトホルミンであり、及びこの抗-CD3抗体製剤は経口カプセル製剤である。一部の実施態様において、メトホルミンは、投与量約500mg BIDで投与される。一部の実施態様において、メトホルミンは、投与量約500mg BIDで投与され、及びこの抗-CD3製剤は、併用療法が対象におけるインスリン依存性を低下するような量で投与される。一部の実施態様において、メトホルミンは、投与量約500mg BIDで投与され、及び抗-CD3製剤は、特定の患者集団へ投与される。一部の実施態様において、メトホルミンは、投与量約500mg BIDで投与され、及びこの抗-CD3製剤は、c-ペプチドの血清レベル約0.1nmol/L~約0.4nmol/Lの範囲、HbA1cレベル7%未満、及び/又はインスリン依存性約0.25U/kg/日の範囲を有する患者へ投与される。
【0208】
一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図36に示された投薬レジメンで投与される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図36に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメンは反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図36に示された投薬レジメンで投与され、且つこの休薬サイクルは反復される。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤及び少なくとも第二の治療薬を含む併用療法は、
図36に示された投薬レジメンで投与され、且つこの投薬レジメンと休薬サイクルは、反復される。前記実施態様の一部において、休薬期間は、c-ペプチドの血清レベルの改善及び/又はHbA1cのベースラインからの低下を基にしている。前記実施態様の一部において、第二の薬剤はメトホルミンである。
【0209】
本開示はまた、様々な治療的適用症において抗-CD3抗体製剤を、単独で又は少なくとも1種の追加の薬剤と組合せて、使用する方法も提供する。一部の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、自己免疫疾患及び/又は炎症障害の治療において有用である。
【0210】
一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、自己免疫疾患及び/又は炎症障害を治療する方法において使用される。一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、炎症性腸管障害(IBD)を治療する方法において使用される。一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、移植片対宿主疾患(GvHD)を治療する方法において使用される。一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、NASHを治療する方法において使用される。一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、1型糖尿病を治療する方法において使用される。
【0211】
一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)を治療する方法において使用される。一部の実施態様において、経口の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法において使用される。
【0212】
一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、自己免疫疾患及び/又は炎症障害を治療する方法において使用される。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、IBDを治療する方法において使用される。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、GvHDを治療する方法において使用される。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、1型糖尿病を治療する方法において使用される。
【0213】
一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、単独で又は1もしくは複数の追加の薬剤と組合せて、拒絶反応を阻害し及び/又は対象における移植された生物学的物質の生存を延長する方法において使用される。移植されるべき生物学的物質は、1又は複数の細胞又は細胞型、1又は複数の組織又は組織型、あるいは臓器又はその一部である。例えば、移植されるべき生物学的物質は、同種異系の生物学的物質である。一部の実施態様において、移植されるべき生物学的物質は、島細胞である。一部の実施態様において、島細胞は、同種異系の島細胞である。一部の実施態様において、移植されるべき生物学的物質は、腎臓、膵臓、肝臓、又は腸であるかもしくはこれらに由来している。例えば一部の実施態様において、移植されるべき生物学的物質は、1又は複数の腎細胞であるかもしくはこれに由来する。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、移植時及び/又は移植後に投与される。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤は、1又は複数の追加の薬剤と組合せて、移植時及び/又は移植後に投与される。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、同時に投与される。例えば、皮下の抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、単独の組成物として製剤化されるか、又は2種以上の個別の組成物として投与されることができる。一部の実施態様において、皮下の抗-CD3抗体製剤及び追加の薬剤は、連続して投与される。
【0214】
予防的投与
【0215】
本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤(本明細書において抗体組成物とも称される)は、診断用製剤及び予防用製剤で使用される。一実施態様において、本明細書に提供される抗-CD3抗体製剤は、前述の自己免疫疾患の一つを発症するリスクがある患者へ投与される。1又は複数の前述の自己免疫疾患に対する患者の素因は、遺伝子型、血清型又は生化学のマーカーを使用し、決定することができる。例えば、特定のHLA亜型及び血清学的自己抗体(インスリン、GAD65及びIA-2に対して)は、1型糖尿病の指標である。
【0216】
本明細書に提供される別の実施態様において、抗-CD3抗体製剤は、前述の自己免疫疾患の1又は複数と診断されたヒト個体へ投与される。診断時に、抗-CD3抗体は、自己免疫の作用を和らげる又は逆行するように投与される。そのような例の一つにおいて、1型糖尿病と診断されたヒト個体は、膵臓の機能を回復し且つ膵臓への自己免疫浸潤の損傷を最小化するのに十分な投与量の抗-CD3抗体が投与される。別の実施態様において、関節リウマチと診断されたヒト個体は、四肢の関節への免疫細胞浸潤及びこれの破壊を減少するために、抗-CD3抗体が投与される。
【0217】
好ましくは、本明細書に提供される治療的、診断的及び/又は予防的抗-CD3抗体製剤は、対象へ、静脈内又は皮下に投与される。他の投与経路が、企図される。例えば抗-CD3抗体製剤は、静脈内、皮下、経口、非経口、経鼻、筋肉内、又はこれらの投与経路の任意の組合せで投与される。
【0218】
発明の他の態様
【0219】
別の態様において、本開示は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び/又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより、抗-CD3抗体を精製する方法を提供する。例えば、アフィニティクロマトグラフィーは、プロテインAクロマトグラフィーである。イオン交換クロマトグラフィーは、例えば陰イオン交換クロマトグラフィーである。
【0220】
更なる態様において、本発明は、当該技術分野において公知の治療用抗体の経口製剤を提供する。この製剤は、液体又は凍結乾燥された粉末である。
【0221】
凍結乾燥された製剤は、単位投与量の抗体又はその抗原結合断片、並びに抗体又はその抗原結合断片1mgにつき約34mgトレハロース及び0.17mgメチオニンを含有する。
【0222】
本液体製剤は、単位投与量の抗体又はその抗原結合断片、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を含有する。
【0223】
これらの経口製剤は、カプセル剤、好ましくは腸溶性コーティングされたカプセル剤の形状であることができる。
【0224】
定義
【0225】
別に定義しない限り、本発明に結びつけて使用される科学用語及び技術用語は、当業者に通常理解される意味を有するものとする。更に、別に文脈が必要としない限りは、単数の用語は、複数を含み、且つ複数の用語は、単数を含むものとする。一般に、本明細書記載の細胞及び組織の培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴ-又はポリヌクレオチドの化学、並びにハイブリダイゼーションと結びつけて利用される命名及びそれらの技術は、当該技術分野において周知であり且つ通常使用されるものである。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション)のために使用される。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従い、あるいは当該技術分野における一般的達成として又は本明細書記載のように、実行される。前述の技術及び手順は一般に、当該技術分野において周知の従来の技術に従い、並びに本明細書を通じて引用され且つ考察された様々な一般的及びより具体的な参考文献に説明されたように、実行される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照されたい。本明細書記載の分析化学、合成有機化学、並びに医化学及び薬化学に結びつけて利用される命名、並びにそれらの実験手順手順及び技術は、当該技術分野において周知であり且つ通常使用されるものである。標準技術は、化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤、及び送達、及び患者の治療のために使用される。
【0226】
本開示に従い利用されるように、以下の用語は、別に指摘しない限りは、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0227】
本明細書において使用される用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性がある部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(これと免疫学的に反応する)抗原結合部位を含む分子を指す。このような抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片、並びにFab発現ライブラリーを含むが、これらに限定されるものではない。「特異的に結合する」又は「免疫反応する」は、抗体が、所望の抗原の1又は複数の抗原決定基と反応し、且つ他のポリペプチドとは反応(すなわち結合)しないか、又は他のポリペプチドとはるかに低い親和性(Kd>10-6)で結合することを意味する。
【0228】
基本的な抗体構造単位は、四量体を含むことがわかっている。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一対により構成され、各対は、1個の「軽鎖」(約25kDa)及び1個の「重鎖」(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ-末端部分は、主に抗原の認識に寄与する約100~110又はそれよりも多いアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ-末端部分は、主にエフェクター機能に寄与する定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンとして分類され、且つ、各々、抗体のアイソタイプを、IgM、IgD、IgA、及びIgEとして規定する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12個又はそれよりも多いアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はまた、約10個より多いアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology、第7章(Paul, W.編集、第2版、Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0229】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」(MAb)又は「モノクローナル抗体組成物」は、独自の軽鎖遺伝子産物及び独自の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1分子種のみを含む抗体分子の集団を指す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、この集団の全てにおいて同一である。MAbは、それに関する独自の結合親和性により特徴付けられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能である抗原結合部位を含む。
【0230】
概して、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのいずれかに関連し、これは互いにその分子内に存在する重鎖の性質が異なる。特定のクラスは、加えてIgG1、IgG2及び他のものなどのサブクラスを有する。更にヒトにおいて、軽鎖は、カッパ鎖又はラムダ鎖であってよい。
【0231】
本明細書において使用される用語「エピトープ」は、免疫グロブリン、scFv、又はT細胞受容体に特異的に結合することが可能である任意のタンパク質決定基を含む。用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することが可能である任意のタンパク質決定基を含む。エピトープの決定基は通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子を群別する化学的活性表面からなり、且つ通常特異的三次元構造特徴、並びに特異的電荷特性を有する。抗体は、解離定数が、≦1μM;好ましくは≦100nM、及び最も好ましくは≦10nMである場合に、抗原へ特異的に結合すると称される。
【0232】
本明細書に使用される用語「免疫学的結合」及び「免疫結合特性」及び「特異的結合」は、免疫グロブリン分子と、それについて免疫グロブリンが特異的である抗原の間に生じる種類の非共有的相互作用を指す。免疫結合相互作用の強度、又は親和性は、この相互作用の解離定数(Kd)に関して説明することができ、ここでより小さいKdは、より大きい親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野において周知の方法を用いて定量化される。そのような方法のひとつは、抗原-結合部位/抗原の複合体の形成及び解離の速度を測定することを含み、ここでそれらの速度は、複合体のパートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方向の速度に同等に影響を及ぼす幾何学的パラメータによって左右される。従って、「オンレート定数」(Kon)及び「オフレート定数」(Koff)の両方は、会合及び解離の濃度及び実際の速度を計算することにより、決定することができる(Nature 361:186-87 (1993)参照)。Koff/Kon比は、親和性に関連しない全てのパラメータの相殺を可能にし、且つ解離定数Kdと等しい(一般に、Daviesら、(1990) Annual Rev Biochem 59:439-473参照)。本発明の抗体は、放射性リガンド結合アッセイ又は当業者に公知の類似のアッセイなどのアッセイにより測定される平衡結合定数(Kd)が、≦1μM、好ましくは≦100nM、より好ましくは≦10nM、及び最も好ましくは≦100pM~約1pMである場合に、CD3エピトープに特異的に結合すると称される。
【0233】
保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の可換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びトレオニンであり;アミド-含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;並びに、イオウ-含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0234】
本明細書で考察したように、抗体又は免疫グロブリン分子のアミノ酸配列の小さい変動は、アミノ酸配列内の変動が、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、及び最も好ましくは99%を維持することを条件として、本発明により包含されるように企図される。特に、保存的アミノ酸交換が、企図される。保存的交換は、それらの側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、一般にファミリーに分類される:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり;(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり;(3)非-極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、並びに(4)非帯電極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、及びトレオニンを含む。疎水性アミノ酸は、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン及びバリンを含む。他のアミノ酸のファミリーは、(i)脂肪族-ヒドロキシファミリーである、セリン及びトレオニン;(ii)アミド含有ファミリーである、アスパラギン及びグルタミン;(iii)脂肪族ファミリーである、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;並びに、(iv)芳香族ファミリーである、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンである。
【0235】
用語「物質」は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、又は生物学的材料から作製された抽出物を意味するように、本明細書において使用される。
【0236】
用語患者は、ヒト対象及び獣医学対象を含む。
【0237】
本開示はまた、Fv、Fab、Fab’、及びF(ab’)2抗-CD3抗体断片、単鎖抗-CD3抗体、二重特異性抗-CD3抗体、ヘテロ複合性抗-CD3抗体、三重特異性抗体、免疫複合体及びそれらの断片を含む。
【0238】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原への結合特異性を有する抗体である。本場合において、結合特異性の一方は、CD3についてである。第二の結合標的は、任意の他の抗原であってよく、有利には、細胞-表面タンパク質又は受容体又は受容体サブユニットである。
【0239】
本明細書に引用された全ての刊行物及び特許文書は、そのような刊行物又は文書が各々、具体的且つ個別に引用として本明細書に組み込まれることが指摘されているように、引用により本明細書中に組み込まれている。刊行物及び特許文書の引用は、いずれかが関連のある先行技術であることの承認として意図されるものではなく、またそれらの内容又は日付に関する何らかの承認を構成するものでもない。記載された表記によりここで説明されている開示で、当業者は、本開示は様々な実施態様で実践され得ること、並びに前述の説明及び以下の実施例は、後続の請求項を例証するがこれを限定する目的ではないことを認めるであろう。
【実施例0240】
実施例1:投薬
【0241】
動物モデルデータは、本開示の経口抗-CD3製剤の好適な投与量は、約15mcg/マウス20g体重、又は各マウスについておよそ750mcg/kgであることを示した。体表面積を基にしたヒト等価用量への換算係数は、12.3である。従って、ヒト等価用量は、3.67mg/60kg体重となる。ヒト対象は、抗-CD3抗体0.1mg~10mgを受け取るであろう。
【0242】
動物データは、皮下投与量は、経口抗-CD3製剤の投与量よりも少なくとも2倍より高いことが必要であることを明らかにしている。従って、本開示の皮下抗-CD3製剤の投与量範囲は、約1mg/60kg体重~60kg体重までの範囲である。
【0243】
実施例2:経口製剤における使用のための凍結乾燥したNI-0401/CD3抗体剤形製造のための一般的方法
【0244】
これらの試験の目的は、NI0401の経口投薬製剤を開発することであった。具体的には、この試験の目的は、NI-0401/CD3抗体の凍結乾燥された剤形を製造することであった。NI0401の凍結乾燥された形状は、カプセル内の経口製剤の活性成分であろう。
【0245】
凍結乾燥可能な製剤は、増量剤及び安定剤に関する賦形剤スクリーニング、それに続くT0及びT14での安定性評価により開発された。簡単に述べると、実現可能性評価を、以下にまとめたように行った:
○イテレーション1:増量剤によるスクリーニング、並びにT0及びT14での安定性分析:トレハロース、ショ糖、マンニトール及び乳糖などの増量剤を使用した。
○イテレーション2:安定剤によるスクリーニング、並びに安定性分析:メチオニン、アルギニン、アスコルビン酸ナトリウム及びEDTAなどの安定剤を、イテレーション#1から選択された増量剤トレハロースと組合せて使用した。
・イテレーション#2(増量剤としてトレハロース、安定剤としてメチオニン±EDTA含有)から選択されたリード製剤についての、MDSCを使用するガラス転移点(Tg)の決定。
○イテレーション3:リード製剤の凍結乾燥、並びにT0及び14(50℃及び4℃)での14日間短期安定性分析。
【0246】
材料及び方法
【0247】
透析
【0248】
透析は、既知の分子量カットオフ値を持つ半透膜を通る選択的拡散により、関心対象のタンパク質を含む水性緩衝液との交換を促進する。この技術に使用したメンブレンは、細孔サイズが異なる。
【0249】
25mM酢酸ナトリウム/125mM NaCl/0.02%w/vポリソルベート中のNI-0401の試料アリコートを、Slide-A-Lyzer(登録商標)透析カセット(MWカットオフ値10,000の3~12mL)内に採取した。次に試料を、緩衝液500mLによる最初の3回の緩衝液交換により(~1時間の間隔で)、2~8℃に予め平衡とした塩化ナトリウムを含まない25mM酢酸ナトリウム/0.02%w/vポリソルベートを含有する緩衝液0.5リットルに対して、透析し、試料から塩化ナトリウムを除去した。透析した試料を、カセットから収集し、Tizianaにより提供された1mg/mLの理論的吸光度はA280nmで1.52であることを基に、NI-0401試料の濃度を、Nano Drop分光計を使用するUV分光法により、希釈せずに評価した。
【0250】
pH
【0251】
NI-0401製剤試料又はプラセボのpHを、Ross PerpHecTマイクロ電極、モデル8220BNWPを装備した、Thermo Scientific社のオリオンスターモデルA211 pHメーターを用いて測定した。緩衝液調製に関して、三極管電極を使用し、pHを測定した(Thermo Scientific、US Gel-filled Ultra Triode Electrodes)。この計器は、各使用前に、pH4、7及び10緩衝液を用いて基準化した。
【0252】
A280
【0253】
A280法の検証のために、SoftMAX Pro 6.4を装備した、Molecular DynamicsによるSpectraMax Plus 384システムを使用する、UV分光法により評価した。経路長セット1cmを持つ標準石英キュベット(Starna Cells)を、A280分析のために使用した。96ウェル石英プレートの全てのウェルに、水200μlを充填し、標準水チェックを使用し、280nm、252及び330で測定した。1×PBS緩衝液を、全ての希釈に及びブランク緩衝液として使用した。5.9mg/mLのNI-0401ストック溶液を、1×PBSを用いて、1.5mLチューブへ、1.2mg/mLとなるよう希釈した。このストック溶液を用いて、以下の希釈液を作製した:1.0、0.8、0.6、0.4、0.2、及び0.1mg/mL。全ての希釈液は、個別のマイクロ遠心管内に作製し、数秒間ボルテックス混合した。6つ組で行った1.0mg/mL以外は、各希釈は3つ組で行った。試料分析のための標的濃度は、1mg/mLで選択した。6つ組の希釈液で、100%標的濃度で、イントラ精度及びインター精度を得た。これらの標準希釈液を、96ウェル石英プレートへ、各々200μlで移した。希釈液の入ったプレートを、波長280nm、及び330nmで測定した。330nmでのバックグラウンドを、A280から減算し、次にこの値を、直線性、精度及び正確度について分析した。
【0254】
SDS-PAGE
【0255】
NI-0401純度/安定性は、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を、還元条件及び非還元条件下で用いて決定した。試料を、4~12%ビス-トリスゲル上で分析した。還元分析のための試料は、βメルカプトエタノールの存在下で還元し、4~12%ビス-トリスゲル上で分離させた。この方法は、タンパク質純度の概算における精度及び直線性を確立するために、3つの異なる負荷で、3個のゲルを泳動することにより、検証した。各ゲルの直線性は、GS800デンシトメーターQuantity Oneソフトウェアを利用して、決定した。
【0256】
SEC-HPLC
【0257】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)法は、連続3日間にわたり、直線性、正確度及び精度について検証した。Tizianaは、~6.5mg/mL(6.0±0.6mg/mL)で、NI-0401試料を提供し、これを本方法検証のための標準として使用した。
【0258】
MDSC
【0259】
MDSCは、リード(液体)製剤のガラス転移(Tg)温度を決定及び比較するために使用した。MDSCは、試料と不活性基準物質は両方共同時に線形及び正弦曲線の温度プログラムに供されるので、試料と不活性基準物質の間の熱流の差異を測定する。工程中の試料の熱挙動は、示差走査熱量測定により実行した。
【0260】
MDSC試験に関して、非透析/透析NI-0401タンパク質試料を、1バイアルにつき2.5mgでアリコート化した。液体製剤30μLを、Tゼロ受皿に積載し、Tゼロ密封蓋を圧着した。Tゼロ密封蓋を圧着した空のTゼロ受皿を、参照として使用した。試料を、Tゼロ受皿にリード製剤30μLを配置し、且つ気密に封止することにより、試験した。空の受皿は、参照として使用した。ガラス転移点(Tg)及び共融点(Teu)を、以下に列挙した方法パラメータを用いて評価した。
NI0401のTg及びTeuを決定するために使用したMDSC方法パラメータ
60秒毎に穏やかに±1℃
5分間の定温
1℃/分で-60℃までの傾斜
サイクル1の終点をマーク
5分間の定温
1℃/分で25℃までの傾斜
サイクル1の終点をマーク。
NI-0401のTgに対するアニール作用を決定するために使用したMDSC方法パラメータ
25℃で平衡
60秒毎に穏やかに±1℃
5分間の定温
1℃/分で-60℃までの傾斜
5分間の定温
1℃/分で-22/24/26℃までの傾斜
5分間の定温
1℃/分で-60℃までの傾斜
5分間の定温
1℃/分で20℃までの傾斜
サイクル1の終点をマーク。
【0261】
カールフィッシャー
【0262】
水分量は、Mettler Toledo DO305乾燥炉を備えた、Mettler Toledo DL36 KF電量計を用いて、決定した。この装置は、KF-炉についてハイドラナール水標準により検量した(Sigma, 34784, Lot# SZBD 226AV)。凍結乾燥されたケーキの入ったバイアルを、乾燥炉内で、100℃で加熱し、且つ発生した水蒸気を、ハイドラナール(Sigma, 34836, Lot# SZBE 2830V)において電量測定により滴定した。凍結乾燥されたケーキの入ったバイアルを、炉内で加熱し、試料中の残存水蒸気を、陰極液及び陽極液の入った容器内で泡立たせ、そこで水は、ヨウ素による二酸化イオウの酸化を引き起こした。生成したヨウ素の量、従って水の量を、その反応時に流れる電気の量から計算した。生成された水の量及び試料中の凍結乾燥されたケーキ重量を除算し、水分量(%)を計算した。
【0263】
オスモル濃度
【0264】
オスモル濃度測定は、20μLのEase Eject(商標)サンプラーを装備した、凝固点マイクロ浸透圧計を用いて行った。測定の単位は、オスモル濃度(mOsm/kg H2O)として表現された、純粋な溶媒1kg中の溶質のミリモルである。この計器は、50mOsm/kg(3MA005)及び850mOsm/kg(3MA085)検量標準により検量され、且つ分析前に、290mOsm/kg Clinitorol(登録商標)対照参照溶液(3MA029)により検証される。試料試験は、標準作業手順(SOP):DV-02-023に従い実施した。NI-0401製剤のオスモル濃度は、凝固点法で降下により測定した。
【0265】
ゲル等電点電気泳動法(IEF)
【0266】
NI0401製剤のpHは、その安定性及び生体活性に重要である。NI-0401の正味荷電は、その等電点(PI)ではゼロであり、PI以下のpHでは正であり、及びPI以上のpHでは負である。溶解度は、PIで最低である。pHの選択は、溶解度のみではなく安定性及び結合特性によっても成される。従って最大の溶解度及び安定性に関して折り合ったpHが、製剤開発のために選択されるべきである。
【0267】
NI-0401試料を、IEF試料緩衝液(pH3~10)中に作製し、試料を、pH勾配マーカーと共に、IEF垂直スラブゲル(pH3~10)上に直接加熱せずに装加した。陽極及び陰極泳動緩衝液を調製し、ゲル条件で泳動した(Life Technologies Novexプレキャストゲル電気泳動マニュアル#IM-1002に記載されたように)。これらのゲルは、100Vで1時間、200Vで1時間、500Vで30分間泳動した。ゲルを泳動した後、ゲルを、12%トリクロロ酢酸(TCA)で30分間固定し、30分毎にDI水を交換しながら2時間かけて洗浄し、12%TCAを除去した。次にゲルを、単純な青色染色により染色した。
【0268】
キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)
【0269】
非定量キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)法を、確認目的のためのみに、使用した。cIEFは、ニュートラルキャピラリーを使用する、プロテオームPA-800タンパク質特徴決定システムにより行った。pIマーカー4.1、5.5、7.0、9.5、及び10.0は、pI対時間の直線検量のために、試料にスパイクした。分析のための試料を、6mg/mL NI-0401の10μLを、3M尿素-cIEFゲルの200μL、Pharmalyte 3-10キャリア両性電解質12.0μL、陰極安定剤20.0μL、陽極安定剤2.0μL及び5種のpIマーカーの各々2.0μLを含有する混合液240μLへ添加することにより調製した。これらの内容物を、15秒間ボルテックス混合し、分析前に、10,000rpmで5分間遠心した。
【0270】
凍結乾燥パラメータ:イテレーション#1及び2
【0271】
NI-0401分散(lyo)製剤を、NI0401タンパク質試料を、様々な増量剤及び安定剤によりスパイクすることにより調製した。増量剤及び安定剤の添加後、全ての製剤及び緩衝液のpHを測定し、且つpHを~5.5±0.05に調節した。イテレーション1及び2製剤の凍結乾燥のために、製剤2.5mgでアリコート化したバイアルを、トレーの中央に配置し、各々、FTS Lyo Star II凍結乾燥機内で、表1-2に示したパラメータを用いて凍結乾燥した。凍結乾燥の完了後、バイアルを、窒素を600,000mtorrになるよう戻し充填し、封止した。バイアルを、設定圧力に到達した後、棚から取り出した。バイアルを、アルミニウム圧着キャップにより即座に密封し、大気の混入を防ぎ且つバイアルからのN2の放出を防止した。全ての凍結乾燥されたバイアルを、T0で分析し、且つバイアルを、T14での分析のために、50℃でインキュベーションした(12日間であったイテレーション#1は除く)。対応する液体製剤はまた、50℃で14日間保持した(12日間であったイテレーション#1は除く)。
【0272】
凍結乾燥パラメータ:イテレーション#3
【0273】
NI-0401リード分散製剤は、NI-0401タンパク質試料により、pH:5.59で、増量剤としての20%トレハロース及び安定剤としての0.1%メチオニン±0.1%EDTAと共に調製した。0.1%メチオニンの添加(0.3M/4.44%ストックから)は、pHを変更しなかった。しかし、EDTAの添加(0.5Mストックから)は、pHを5.59から5.9へと変化し、これは1N HClによりpH~5.5に調節した。NI0401試料は、1バイアルにつき~2.5mgでアリコート化した。リード製剤のためのプラセボは、NI-0401試料なしで調製した。リード製剤の凍結乾燥のために、リード製剤を含むバイアルを、各プラセボ緩衝液~400ulを充填したバイアル(20)と共に、中央の棚に配置した。凍結乾燥棚の残りの空間は、1バイアルにつき水1mlを含有するバイアルで満たした。各製剤の1バイアル及び各プラセボの1バイアルを使用し、凍結乾燥機内に温度プローブを挿入することにより、温度プロファイルをチェックした。
【0274】
実施例3:NI-0401の凍結乾燥実現可能性の評価
【0275】
現行のNI-0401製剤であるNI-0401は、25mM酢酸ナトリウムpH5.5、125mM塩化ナトリウム及び0.02%(w/v)ポリソルベート80を含有する緩衝液中~6.0mg/mLであり、その目的は、同じ製剤内の抗体の凍結乾燥を評価することであった。塩化ナトリウムの存在のため、結晶性賦形剤は、タンパク質/抗体の凍結乾燥時に常に懸念され、その理由は凍結乾燥工程時にアニールされない限りは、経時的に水吸収するというその固有の性質のためである。従って賦形剤スクリーニングは、現行の製剤(非透析製剤)がそのままでの、増量剤及び安定剤のスパイク、並びにまた透析による製剤の塩化ナトリウムの除去(透析製剤)及びその後増量剤及び安定剤のスパイクの試験に関与した。
【0276】
非透析/透析NI-0401製剤の、2種の製剤セットが存在した。全てのイテレーションに関して、2.5mgを凍結乾燥した。透析NI-0401製剤に関して、NI-0401試料は、製剤緩衝液から塩類を除去するために透析し、これは一次乾燥プロセス時の共融点を除き、且つNI-0401凍結乾燥製剤による大気の水分吸収を避けるために行った。これらの製剤は、T0又はT14で分析した。
【0277】
Tゼロ安定性(T0)に関して製剤は、凍結乾燥直後に分析した。
【0278】
14日目安定性(T14)に関して製剤は、50℃でインキュベーションした。
【0279】
T0及びT14で、製剤は、ケーキの外観、再構成時間、液体試料の外観、A280、pH、SDS-PAGE及びSEC-HPLCについて分析した。
【0280】
最高の安定性及び最低レベルの不純度を示す増量剤/安定剤を含む製剤は、安定性データを基にリード製剤として同定した。
【0281】
実施例4:イテレーション1:増量剤を含むスクリーニング
【0282】
製剤のリスト
【0283】
NI-0401製剤の凍結乾燥は、塩化ナトリウム含有及び非含有の、酢酸ナトリウムを含有するpH5.5の現行の製剤緩衝液中で評価し、目的は、T0及びT14でのNI-0401試料の安定性に対する、結晶性塩の作用を理解することであった。従って、NI-0401は、塩化ナトリウムを含まない、0.02%w/vポリソルベートを含有する25mM酢酸ナトリウム緩衝液に対して透析した。
【0284】
異なる増量剤(表4)を濃度2.5mg/バイアルで含む非透析/透析NI-0401製剤を、凍結乾燥し、次に0日目(T0)及び12日目(T12)に50℃で評価し、対照製剤を参照し、時間及び温度による製剤の安定性を理解し、T0及びT14での安定性結果を、表5-6にまとめた。
【0285】
ケーキ外観及び再構成時間
【0286】
凍結乾燥製剤及び液体製剤を、T0及びT12(50℃でT12日間インキュベーション)での安定性について分析した。凍結乾燥後、そのケーキ外観は、非透析/透析対照分散製剤を除いて、全ての製剤について非晶質であった(表5)。全ての分散製剤及び液体製剤は、混濁しているマンニトール及び乳糖を含有する分散製剤を除いて、透明であった(表5及び6)。
【0287】
A280
【0288】
このデータは、製剤の乳白光のためマンニトールを含有するT12製剤を除いて(表5及び6)、イテレーション#1製剤のタンパク質濃度は、~5.4から6.1mg/mLであり、T0又はT12後のいずれかのタンパク質濃度に有意差はないことを示した。
【0289】
SEC-HPLC
【0290】
全ての製剤によるSEC-HPLC分析は、11.9分のRTにシフトして溶出した乳糖を含有する非透析分散製剤を除いて、主要ピークRT(約12.4±0.2)に変化を示さなかった。
【0291】
非透析及び透析T0分散製剤及び液体製剤によるSEC-HPLC分析は、主要ピーク反応は、総反応の約99%であることを示し、これは、製剤の凍結乾燥時に有意な影響はないことを示唆している。T0及びT12凍結乾燥製剤の中で、トレハロース及び乳糖を含有するNI-0401製剤は、最高純度を示した(各々、主要ピーク反応の>99%の回収)。しかし、乳糖を含有する製剤は、主要ピーク保持時間をシフトした。T12での総ピーク面積の最低の回復が、マンニトールを含有する製剤について認められた(表5-6)。トレハロースを含有するT0及びT12製剤は、対照製剤を含む他の製剤と比べ、少ない%不純度を示した(表5及び6)。全ての液体製剤は、50℃でより高度に分解する傾向があり、且つ分散製剤と比べ、T12時点で、より高い%不純度を示す(表5及び6)。
【0292】
SDS-PAGE
【0293】
製剤の%純度に関するSDS-PAGEゲル分析データは、表16に示している。トレハロースを含有する非透析/透析の分散製剤は、低レベルの不純度を示し、対照製剤と比べ、T0及びT12で、非還元及び還元ゲル上で、各々、%純度>98.6%及び>97%であった。乳糖を含有する非透析/透析分散NI0401製剤は、非還元及び還元ゲル上で、タンパク質移動度のシフトを示した。T12での透析した分散製剤は、非透析分散製剤と比べ、非還元及び還元ゲル上で、より大きい%純度を示した。T0及びT12でのマンニトールを含有する非透析/透析の分散製剤は、非常に低い回収(80~87%回収)を示し、これは非還元ゲル上のより高い%不純度を示し、このことはSEC-HPLCデータと一致している。
【0294】
TizianaのSDS-APGE法を使用する、液体製剤によるSDS-PAGE分析の定量分析は、非還元ゲル上での、T0液体製剤と比べて、T12での液体製剤のより高い分解を示した。更に乳糖を含有する液体製剤は、移動度のシフトを示した。トレハロースを含有する液体製剤は、他の製剤と比べてより高い%純度を示した。
【0295】
これらの結果を基に、透析を伴う又は伴わない、10%トレハロースを含有する製剤を、異なる安定剤との組合せをスクリーニングするために、イテレーション#2のために選択した。
【0296】
SEC分析は、トレハロースを含有するT0及びT12製剤について、対照製剤を含む他の製剤と比べ、高い%純度及び低い%不純度を示した。
【0297】
SEC分析は、全ての液体製剤は、高いLMW分解の傾向があり、これは50℃で12日間(T12)保持した場合、凍結乾燥製剤と比べ、高い%不純度を示すことを同定した。
【0298】
SEC分析は、中でもトレハロース及び乳糖を含有するT12凍結乾燥製剤が最高の純度を示したことを示した。しかしこの乳糖を含有する製剤は、主要ピーク保持時間をシフトした。
【0299】
非透析/透析製剤に関する非還元及び還元ゲル分析により、トレハロース及び乳糖を含有する製剤は、最高のタンパク質純度を、低い不純度と共に示した。T12での製剤は、T0での製剤と比べ、より高い不純度を示し、これはSEC-HPLCデータと一致した。
【0300】
乳糖は、還元及び非還元ゲルの両方で、タンパク質の移動度のシフトを示した。非透析/透析製剤の中で、マンニトールを含有する製剤は、ゲル分析上での低い純度/回収を示した。
【0301】
T12でのマンニトールを含有する製剤を除いて、T0又はT12後のいずれかで、製剤のタンパク質濃度に有意差は認められなかった。マンニトールを含有する凍結乾燥製剤は、低い溶解度を示した。
【0302】
実施例4:イテレーション2:様々な安定剤によるスクリーニング
【0303】
非透析又は透析NI-0401試料を、安定剤と共に凍結乾燥し、目的は、増量剤として10%トレハロースを使用する凍結乾燥NI-0401製剤の安定性に対する、安定剤の作用を理解することであった。
【0304】
製剤のリスト
【0305】
イテレーション#2に関して、増量剤として10%トレハロースを使用し異なる安定剤を伴う非透析/透析NI-0401製剤を、表7にまとめている。この製剤試験に関して、非透析/透析試料は、液体製剤/凍結乾燥製剤について2.5mg/バイアルでアリコート化した。凍結乾燥後、非透析/透析の液体製剤及び分散製剤を、50℃で14(T14)日間維持して又はT0で直ちに分析した。製剤の安定性は、A280、SDS-PAGE及びSEC-HPLCを用いて分析し、且つ結果を以下に示した。表8及び9は、イテレーション#2製剤の安定性分析結果のまとめを示している。
【0306】
ケーキ外観及び再構成時間
【0307】
表8は、全ての製剤について非晶質である、T0及び50℃で14日間インキュベーション後の、凍結乾燥されたケーキの外観を示している。ケーキの崩壊は、透析製剤と比べ、非透析製剤においてより高く(表8)、且つ崩壊は、アルギニンを含有する非透析/透析製剤において、ほぼ80~90%であった。アスコルビン酸ナトリウムを含有する透析製剤もまた、80~90%の崩壊を示した(表18)。
【0308】
これらの製剤の液体外観は、沈殿のために曇って見える、アルギニンを含有する分散製剤及び液体製剤並びにアスコルビン酸ナトリウムを含有する液体製剤を除いて、透明であった(表8及び9)。アスコルビン酸塩を含有する液体製剤は、アスコルビン酸のデヒドロアスコルビン酸への酸化のために、黄味を帯び始めた。
【0309】
A280
【0310】
製剤の沈殿/混濁に起因したタンパク質濃度の変動を示した、10%Tre-アルギニン(*)を含む凍結乾燥された非透析/透析製剤を除いて、様々な分散/液体製剤の中で、タンパク質回収において有意な変化は存在しなかった。10%Tre-アスコルビン酸Na(*#)を含有する液体又は凍結乾燥された非透析/透析の製剤は、A280アッセイによるアスコルビン酸塩の干渉に起因した、非常に高いタンパク質濃度を示した(表18-19)。
【0311】
SEC-HPLC
【0312】
非透析及び透析T0及びT14分散製剤及び液体製剤によるSEC-HPLCデータは、主要ピーク反応は、約96~98%であること(表8-9)を示し、これは、アルギニンを含む製剤以外は、製剤の凍結乾燥時に有意な影響はないことを示唆している。アルギニンを含有する製剤に関する主要ピーク反応は、97%未満であり、各々、T0で27%~97%、及びT14で35~81%の範囲であり、これはタンパク質の沈殿に起因した(表8-9)。EDTAを含む製剤に関する総反応のわずかな減少は、カラムに注入された低いタンパク質濃度によるものである。
【0313】
アルギニンを含有する液体製剤及び分散製剤はまた、最高の%不純度を示した。メチオニン、アスコルビン酸Na及びEDTAを含有する製剤は、最低の%総不純度を示した(表8-9)。トレハロース又はトレハロース-メチオニンを含有する非透析/透析製剤は、主要ピークRTにおいて有意な変化を示さなかった。しかし、T0及びT14でのアルギニン又はEDTAを含有する透析したNI-0401製剤によるSEC-HPLC分析は、0.15~0.35の保持時間のシフトを示した。予想されたように、液体製剤は、分散液体製剤と比べより高い不純度を示し、且つ回収は、約96~99%であった(表8-9)。
【0314】
SDS-PAGE
【0315】
イテレーション#2製剤は、製剤の純度を決定するために、非還元条件及び還元条件下で、SDS-PAGEにより分析した。還元及び非還元ゲルによる全ての製剤に対する画像及び定量分析は、表10に示している。メチオニン及びEDTAを含有する非透析/透析製剤は、高い純度及び低レベルの不純度を示し(表10)、これは非還元ゲル上で純度>99%及び還元ゲル上で>95%を示した。T14でのアルギニン及びアスコルビン酸ナトリウムを含有する非透析/透析液体製剤は、沈殿に起因した、非常に低い回収を示し(表10)、これはSEC-HPLCデータと一致している。
【0316】
TizianaのSDS-PAGE法を使用する、液体製剤によるSDS-PAGE分析の定量分析は、非還元ゲル上での、T0液体製剤と比べて、T14での液体製剤のより高い分解を示した。更にアルギニンを含有する液体製剤は、より高い不純度を示した。メチオニン/EDTAを伴うトレハロースを含有する液体製剤は、他の製剤と比べてより高い%純度を示した。
【0317】
SEC分析は、Met±EDTAと共に10%トレハロースを含有するT0及びT14非透析製剤について、他の製剤と比べ、高い%純度及び低い%不純度を示した。T0及びT14で、アルギニンと共に10%トレハロースを含有する製剤は、最高の不純度及び最低の回収を示した。
【0318】
SEC分析は、全ての液体製剤は、高いLMW分解の傾向があり、これは50℃で14日間(T14)保持した場合、分散製剤と比べ、高い%不純度を示すことを同定した。
【0319】
T0及びT14での、アルギニン又はEDTAを含有する透析NI-0401製剤によるSEC-HPLC分析は、保持時間0.15~0.35のシフトを示した。
【0320】
非透析/透析製剤に関する非還元及び還元ゲル分析により、Met±EDTA/アスコルビン酸ナトリウムと共に10%トレハロースを含有する製剤は、最高のタンパク質純度を、低い不純度と共に示した。全ての液体製剤は、分散製剤と比べ、高い不純度を示した。非透析/透析製剤の中で、アルギニン及びアスコルビン酸ナトリウムを含有する製剤は、低い純度/回収を示した。
【0321】
T0及びT12でのアルギニンを含有する製剤及びT14でアスコルビン酸ナトリウムを含有する製剤を除いて、T0又はT12後のいずれかで、製剤のタンパク質濃度に有意差は認められなかった。アスコルビン酸ナトリウムを含有する製剤は、T14で、黄色に見えた。
【0322】
イテレーション#2スクリーニングからの安定性データを基に、EDTAを含む又は含まない、10%トレハロース及び0.1%Metを含有する非透析製剤は、MDSC分析を使用するTgの分析のために、イテレーション#2について選択した。
【0323】
実施例5:イテレーション#2スクリーニングからのリード製剤に対するMDSC分析
【0324】
T0及びT14でのイテレーション#2製剤による安定性分析を基に、選択された非透析NI-0401のためのリード製剤は、0.1%メチオニン±EDTAを伴う10%トレハロースであった。リード製剤に対する改変された(modulated)DSCを行い、凍結乾燥プロセスの間にガラス転移点(Tg)以下で製剤の一次乾燥温度を設定するために、製剤のガラス転移点を決定した。
【0325】
製剤のリスト
【0326】
MDSC試験のために、非透析及び透析NI-0401液体製剤及び凍結乾燥製剤を、増量剤として10%又は20%トレハロースを使用し、異なる安定剤と共に、調製し、且つ試料を、2.5mg/バイアルでアリコート化した。MDSC試験に使用した製剤は、表11にまとめ、且つMDSC分析は、液体製剤30μLにおいてパラメータを用いて行い、Tゼロ受皿に積載し、Tゼロ密封蓋を圧着した。Tゼロ密封蓋を圧着した空の受皿は、参照として使用した。
【0327】
リード製剤についてのTgの決定
【0328】
MDSCを、非透析/透析リード製剤及び現行の製剤について行い、ガラス転移点(Tg)を含む熱事象を決定した。MDSC分析の結果は、表12にまとめている。表12に示したように、現行の製剤に対するMDSCは、リード製剤(非透析/透析)中に、0.1%メチオニンと一緒に存在する10%トレハロースの存在により完全に除去される共融点を示した。しかし、非透析製剤中の塩化ナトリウムの存在は、ガラス転移点を-32℃から-37℃へ低下した。0.1%Metを含む非透析製剤及び透析製剤のTgは、各々、-36.88℃及び-31.87℃で認められた。
【0329】
様々なアニール温度でのTgの決定
【0330】
次に、MDSCを、非透析リード製剤について、異なるアニール温度で行った。リード製剤について転移点は-37℃であるので、温度及び圧力を制御しながらの凍結乾燥の一次乾燥プロセス工程時の崩壊温度-37℃又はそれ以下で生成物温度を維持することは困難であるので、ガラス転移点を低下させるように試みた。並びに貯蔵温度が-37℃以下である場合には、総凍結乾燥時間はより長くなり、且つ経費効果が悪い。表12に示したように、異なるアニール温度での、リード製剤(10%トレハロース及び0.1%メチオニンを含む非透析製剤)におけるMDSCは、非透析リード製剤のガラス転移点(-37℃のTg)において、大きな変化を示さなかった。
【0331】
10%及び20%トレハロースを含むリード製剤に対するTgの決定
【0332】
異なる温度でのアニールプロセスは、ガラス転移点を低下せず、従ってより高量のトレハロースを含有する製剤を、Tgの低下について評価した。更に、MDSC分析は、20%トレハロース及び0.1%EDTAを含有する製剤と、10%トレハロース及び0.1%メチオニンを含有するリード製剤の間で、有意差を示さなかった。加えて、10%トレハロース-無し/10%トレハロース-0.1%メチオニン/20%トレハロース+0.1%EDTAを含む、非透析NI0401試料間で、クロマトグラム(SEC-HPLC)の保持時間において観察される変化は存在しなかった。表12に示したように、増大するトレハロース(10%から20%まで)を含むリード製剤(0.1%メチオニンを含有する非透析製剤)に対するMDSCは、Tgを~2(℃)だけ低下させ、このことは凍結乾燥プロセスにとって望ましく、従って0.1%メチオニン±0.1%EDTAと共に、20%トレハロースを含有するこの製剤を、10%トレハロースを含む製剤の代わりに、最終イテレーションのために選択した。
【0333】
増量剤としての10%トレハロースの添加は、0.1%メチオニンを含有する非透析リード製剤中のNaClの存在により引き起こされた共融点を除いた。
【0334】
アニール温度の変化は、リード製剤のTgに作用を示さなかった。
【0335】
10%から20%までのトレハロース濃度の増加は、0.1%メチオニンを含有するリード製剤のTgを、-36℃から-34℃まで低下させ、これは、凍結乾燥プロセスにとって望ましい。20%トレハロースを含むリード製剤へのEDTAの添加は、Tgに作用を有さなかった。
【0336】
EDTAを含む及び含まない、20%トレハロース及び0.1%Metを含有する製剤に対するMDSC分析は、Tgの~-34.6℃を示し、これは凍結乾燥プロセスにとって望ましい。
【0337】
EDTAを含む及び含まない、20%トレハロース及び0.1%Metを含有する製剤は、イテレーション#3のためのリード製剤として選択した(表13)。
【0338】
実施例6:イテレーション#3の凍結乾燥及びリード製剤の安定性分析
【0339】
イテレーション#2からの安定性分析及びMDSCの結果を基に、20%トレハロースと0.1%メチオニンを含有する非透析NI-0401製剤を、最終の凍結乾燥サイクル並びにT0及びT14での短期安定性評価のために選択した。この分析は、カールフィッシャーによる残留水含量、外観、再構成時間、A280、SEC-HPLC及びSDS-Pageによる純度、オスモル濃度、%水分量、ゲルIEF及びcIEFを含んだ。最終イテレーション#3の結果は、以下に示し、且つ安定性分析データのまとめは、表14に示している。
【0340】
ケーキ外観及び再構成時間
【0341】
比較的多くの崩壊を示した対照製剤以外は、全てのイテレーション#3リード製剤は、無傷のケーキを示した。全ての製剤は、1分未満で溶解し、且つ対照製剤が50℃で、わずかに混濁していた(遠心し且つ更なる安定性分析において使用した)ことを除いて、全ての製剤は、透明であった。
【0342】
pH
【0343】
再構成後及び分散前の様々な分散製剤のpHは、表14に示している。このデータは、pH値は、トレハロースを含有するリード製剤について5.5から5.9まで、トレハロースを含有しない現行の製剤について5.5から7.6まで変化したことを示した。凍結乾燥後のpHの変化の理由は、凍結乾燥プロセス時の、現行の製剤における酢酸の蒸発により、これは現行の製剤についてより顕著である。増量剤及び安定剤の存在は、リード製剤におけるpHの安定化を補助する。
【0344】
A280
【0345】
異なる製剤のタンパク質濃度を、表14に示している。様々な製剤のタンパク質濃度(mg/mL)は、Tizianaにより提供されたA280nmで1mg/mLの理論的吸光度は1.52であるということを基に、Nano Drop分光光度計を用い、希釈せずに、測定した。20%トレハロース添加後のタンパク質濃度のわずかな減少は、20%トレハロースの添加後の容積の増加によるものである。このデータは、現行の製剤についてのわずかな沈殿に起因した50℃での変化を除いて、製剤の4℃又は50℃で14日間のインキュベーション後の、タンパク質濃度の有意な変化は示さなかった。
【0346】
水分量(%)
【0347】
現行の製剤と共に、様々なリード製剤の水分量を、Mettler Toledo DL36 KF電量計を用いて決定し、且つ結果を表14に示している。Met/Met+EDTAを含有するリード製剤の水分量は、各々、3.34%及び2.32%であった。これらの製剤の4℃及び50℃の両方での14日間のインキュベーション後に、水分量の有意な変化は存在しなかった。
【0348】
オスモル濃度
【0349】
再構成後の様々な分散製剤のオスモル濃度は、表14に示している。このデータは、予想されるように、トレハロースを含有するリード製剤は高張であり、且つ現行の製剤は等張であることを示した。これらの製剤の4℃及び50℃で14日間のインキュベーション後、オスモル濃度に変化は存在しなかった。
【0350】
SEC-HPLC
【0351】
NI-0401製剤の%主要ピーク反応、総面積反応(AUC)を、%不純度と共に、SEC-HPLC分析を使用し評価し、且つ結果を、
図5-9及び表14に示している。NI-0401を含む全ての製剤に関して主要面積反応(AUC及び%)は、
図5に表示している。T0及びT14分散リード製剤による全般的データで、主要ピーク反応は、総ピーク反応の約99.90%であり(
図5)、これはリード製剤の凍結乾燥に対し有意な影響がないことを示唆している。しかし、50℃/4℃で維持された対照製剤は、より低い主要ピーク反応、それぞれ、82%及び98%を示した(
図5)。T14(50℃)で対照製剤の%主要ピーク回収の減少は、試料のわずかな混濁/沈殿のためであった。保持時間15~17分の間で認められたピークは、塩/メチオニン/EDTAの緩衝液/製剤中に存在する成分のためであった。
【0352】
T14での全ての製剤に関するクロマトグラムは、50℃及び4℃のいずれかで保持された主要ピークRTの有意な変化を示さなかった。
【0353】
トレハロースを含む製剤のスパイクは、濃度のわずかな減少を生じ、従って、トレハロース及びMet/Met+EDTAを含む製剤について、T0/T14のいずれか(4℃)で、主要ピーク反応及び総反応においてより低い反応を生じた(
図6)。メチオニン/Met+EDTAを含有する製剤は、対照製剤と比べ、少ない%総不純度を示した(
図7)。50℃でのT14対照製剤は、4℃で保持したT14対照製剤と比べ、不純度の最高レベルを示した(
図7)。T14製剤の%総ピーク回収又は%主要ピーク回収は、T0製剤と比べ、影響を受けない(
図8-9)。
【0354】
SDS-PAGE
【0355】
50℃/4℃のいずれかで保持された、トレハロース及びメチオニン/トレハロース、メチオニン及びEDTAを含有するT0及びT14リード分散製剤は、非還元及び還元ゲル上で、対照製剤と比べ、各々、99.3%及び98.5%を超えるより高い純度を示した(表15-16;
図10-11)。50℃でのT14対照製剤は、4℃で保持されたT14対照製剤と比べ、不純度の最高レベルを示した(表15-16;
図10-11)。T0及びT14での、還元及び非還元ゲル上での、リード製剤の%純度において認められる有意な変化は存在しなかった(表15-16;
図10-11)。
【0356】
IEFゲル分析
【0357】
NI-0401試料に対するIEFゲル分析のための試験を、検証していない方法を用い、定性的に試料のpIを知るために実行した。
図12に示したように、対照製剤T14分散(50℃)及びNI-0401参照標準の様々な濃度を、IEFゲル上に装加し且つ分析した。9.5を上回るpIマーカーは、ゲル上で完全には分解しなかったので、試料のおおよそのpI>9.0を示す試料の高いpIに起因したウェル近傍での試料の集束が認められる。
【0358】
対照製剤及びNI0401参照標準によるIEFゲル分析は、試料はウェル近傍に保持されるので、NI0401試料のpIは、IEFゲル上で分離するには、余りにも高い(pI>9)ことを示しており、他のリード製剤についてのゲルIEFに関する更なる分析は、続行しなかった。まとめると、対照NI-0401製剤によるIEFゲル分析は、NI0401試料のpIはおおよそ~9.25であることを示している。
【0359】
cIEF分析
【0360】
NI0410製剤の不均一性を理解するために、リードT0及びT14製剤を、CIEFにより分析した。NI-0401のpIを定性的に確認するために、cIEFを利用し、且つNI0401の代表的プロファイルを以下に示し(
図13)、現行の製剤NI-0401試料の不均一な集団は、塩基性ピーク(>9.27~9.45の間のpI)、酸性ピーク(主要ピークpIと比較し<9.3~8.60の間)及び主要ピーク集団(~9.25~9.37の間のpI)である。このデータは、様々な製剤におけるNI-0401試料の酸性、塩基性及び主要ピーク集団のpIを基に分析した。キャピラリー等電点は、製剤を4℃又は50℃のいずれかで14日間保持した後の、リード製剤の中のNI-0401の主要ピークと比較して、主要ピーク、塩基性ピーク及び相対酸性ピーク集団のpIにおいて、有意差は存在しないことを明らかにしている。しかし、T14-50℃で、対照又は現行の製剤において、主要ピーク比は減少し、且つ相対酸性ピーク比は増加し、このことは、脱アミド化を示唆している(
図15)。対照/現行の製剤の脱アミド化におけるこの増加は、凍結乾燥後の製剤のpHの増加(~5.5から7.5まで)に起因し得る。
【0361】
結論
【0362】
リード製剤に関する分析試験は、20%トレハロース、0.1%メチオニンを含有する、25mM酢酸ナトリウムpH5.5、125mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート80の緩衝液中のリード製剤、すなわちNI-0401の;並びに、20%トレハロース、0.1%メチオニン、0.1%EDTAを含有する、25mM酢酸ナトリウムpH5.5、125mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート80の緩衝液中のNI-0401の両方の安定性を確認する。
【0363】
SEC分析は、T0及びT14で、Met±EDTAと共に10%トレハロースを含有するリード製剤に関して、現行の製剤と比較して、高い%純度及び低い%不純度を示した。リード製剤の%主要ピーク回収は、T0及びT14で、対照製剤と比較して、>97%であった。
【0364】
リード製剤に対する非還元及び還元ゲル分析は、Met±EDTAと共に10%トレハロースを含有する製剤は、最高タンパク質純度を有することを示した。対照製剤は、より多くの%不純度を有した。
【0365】
T14、50℃での現行の製剤を除いて、T0又はT14後のいずれかで、製剤のタンパク質濃度の有意差は、認められなかった。
【0366】
現行の製剤のpHは、5.5から7.5まで変化し、リード製剤pHは、5.5から5.9まで変化した。
【0367】
全ての製剤によりT0及びT14で、オスモル濃度又は%水分量の変化は認められなかった。
【0368】
NI0401対照製剤(T0-分散)に関するIEF-ゲル分析は、>9.25のpIを示し、且つこの試料は、明確な分離を伴わずに、ゲルのウェル近傍に保持された。
【0369】
cIEF分析は、T0及びT14でのリード製剤中のNI-0401試料の主要ピーク、塩基性ピーク及び相対酸性集団のpI間で、有意差を示さなかった。
【0370】
cIEF分析は、T14-50℃で、NI-0401現行の製剤における変化を示し、ここで主要ピーク比は減少し、相対酸性ピーク比は増加し、これはT14-50℃での対照製剤の脱アミド化を示唆している。
【0371】
まとめ
【0372】
増量剤及び安定剤による賦形剤スクリーニングからの累積データ、及び安定性プロファイルを基に、NI-0401/CD3抗体の経口凍結乾燥投薬のために開発された最終リード製剤は、以下である:
【0373】
20%トレハロース、0.1%メチオニンを含有する、25mM酢酸ナトリウムpH5.5、125mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート80の緩衝液中のNI-0401、並びに20%トレハロース、0.1%メチオニン、及び0.1%EDTAを含有する、25mM酢酸ナトリウムpH5.5、125mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)ポリソルベート80の緩衝液中のNI-0401。
【0374】
実施例7:原発性胆汁性肝硬変症(PBC)の短期治療及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の長期治療における抗-CD3製剤の評価
【0375】
ここで示された試験は、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)の短期治療及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の長期治療における、抗-CD3製剤の使用を評価するために設計されている。
【0376】
これらの試験において、抗-CD3製剤は、1日1回7日間経口投与され、引き続き休薬する反復サイクルである。本試験は、21名の患者を含み、そのうちの7名は、プラセボを受け取り、及びそのうちの14名は、経口の抗-CD3抗体製剤を、用量5mg/日で受け取る。これらの試験において、安全量を決定するために、健常志願者は、以下の投与量を受け取る:0.5mg、1.0mg、2.5mg、5mg、10mgを1日1回7日間。この投薬レジメンは、8~12週間継続し、PBCに関する免疫学的バイオマーカー及び/又は臨床エンドポイントについて以下の中間解析を行った。この投薬レジメンは、オン及びオフ投薬の反復サイクルで継続する。これらの試験において、経口の抗-CD3抗体製剤は、アジュバント又はATRA又は抗炎症薬又は他の好適な第二薬剤と組合せてよい。これらの試験において、オベチコール酸は、経口の抗-CD3抗体とは別に投与されてよい。
【0377】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0378】
他の実施態様
本開示は、それらの詳細な説明と結びつけて説明されているが、前述の説明は、開示の範囲を例証はするが、限定はしないことが意図されており、開示の範囲は、添付された請求項の範囲により限定される。他の態様、利点及び改変は、以下の請求項の範囲内である。
自己免疫疾患、炎症障害、神経変性疾患又は癌の症状を治療又は緩和する方法であって、それを必要とする対象へ、配列番号:10のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列、及び配列番号:11のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列、酢酸ナトリウム三水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、トレハロース、及びメチオニンを含む、抗-CD3抗体製剤を経口投与することを含む、方法。
前記自己免疫疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、クローン病、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)、1型糖尿病、2型糖尿病、又は潰瘍性大腸炎(UC)である、請求項1記載の方法。
前記製剤が、抗-CD3抗体又はその抗原結合断片の約0.1mg~10mgの単位投与量、25mM酢酸ナトリウム三水和物、125mM塩化ナトリウム、0.02%ポリソルベート80(w/v)、20%トレハロース(w/v)、及び0.1%メチオニン(w/v)を含む、請求項4記載の方法。
前記製剤が、抗-CD3抗体の約0.1mg~10mgの単位投与量、並びに抗-CD3抗体の1mgにつき、約0.58mgの酢酸ナトリウム三水和物、1.25mgの塩化ナトリウム、0.034mgのポリソルベート80、34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを含有する、請求項5記載の方法。
前記製剤が、抗体の単位投与量、並びに抗-CD3抗体の1mgにつき、約34mgのトレハロース及び0.17mgのメチオニンを含有する抗体の凍結乾燥製剤を含む、請求項1記載の方法。
NF-kBインヒビター、GLP-1又はβ細胞静止化合物、メサラミン又は別の5-ASA薬、ペントキシフィリン、ウルソデオキシコール酸、PPARγアゴニスト、全トランス型レチノイン酸(ATRA)、DPP-4(グリプチン-シタグリプチン)、脂肪酸合成阻害剤(例えば、セルレニン、ケルセチン、C7、アピゲニン、AICAR)、FXRアゴニスト(例えば、胆汁塩アクチベーター、ケノデオキシコール酸、オベチコール酸(OIBA、Ocaliva)、フェクサラミン、カフェストール、胆汁酸吸着剤(コレスチラミン、コレスチポール、コレセレラム)、SGLT2インヒビター(エクス-ダパグリフロジン(HbA1cレベル低下)、抗-IL-6RmAb、抗-TNF抗体(レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)、及びヒュミラ(登録商標)(アダリムマブ)、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト))、抗炎症及び/又は免疫抑制化合物(例えば、メトトレキセート、シクロスポリンA、シクロスポリンマイクロエマルジョン)、タクロリムス、コルチコステロイド、スタチン、インターフェロンβ、ガラティラメル酢酸塩(コパクソン)、インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1a(レビフ)、インターフェロンβ-1b(ベタセロン又はベタフェロン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、デキサメタゾン(デカドロン)、メチルプレドニゾロン(デポ-メドロール(登録商標))、プレドニソン(デルタゾン)及び抗肥満薬:からなる群から選択される少なくとも1種の追加の活性物質を対象へ投与することを更に含む、請求項1記載の方法。