(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082794
(43)【公開日】2022-06-02
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
H01G4/30 311E
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 517
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064906
(22)【出願日】2022-04-11
(62)【分割の表示】P 2022504008の分割
【原出願日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2020081191
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020087086
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江崎 聡一郎
(57)【要約】
【解決課題】本発明の第一の目的は、高い耐湿性を有する電子部品の製造方法を提供すること。また、本発明の第二の目的は、高い耐湿性を有することに加え、設計上及び製造上の制約が少なく、製造効率が高い電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】電子部品用被電極形成体を準備する準備工程と、該電子部品用被電極形成体の外表面上に、電極を形成させる電極形成工程と、を有し、該電極形成工程において、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、該電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させること、を特徴とする電子部品の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品用被電極形成体を準備する準備工程と、
該電子部品用被電極形成体の外表面上に、電極を形成させる電極形成工程と、
を有し、
該電極形成工程において、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、該電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記電極形成工程において、ディップ法により、前記電子部品用被電極形成体に、前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布することを特徴とする請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記電子部品用被電極形成体が、セラミック層と内部電極層とからなる積層型電子部品用積層体であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記電子部品用被電極形成体が、陽極と該陽極の表面に形成された誘電体層からなる固体電解コンデンサ用被陰極形成体であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物が、熱硬化性のシリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物であり、
前記電極形成工程において、前記電子部品用被電極形成体に、該熱硬化性のシリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布し、次いで、該導電性樹脂組成物を硬化させることにより、該電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させること、
を特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物が、金属粉末を含有することを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記金属粉末が、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金及びアルミニウムのうちの1種以上の粉末、これらのうちの1種以上を含む合金を含む粉末、銀被覆銅粉末及び銀被覆ニッケル粉末から選ばれる少なくとも1種以上の粉末を含有することを特徴とする請求項6記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記金属粉末が、フレーク状金属粉末を含有し、該金属粉末全体に対する該フレーク状金属粉末の含有割合が20.0質量%以上であることを特徴とする請求項6又は7記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記フレーク状金属粉末のアスペクト比が1.5~50.0であることを特徴とする請求項8記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したときの前記フレーク状金属粉末の数平均粒子径が0.1~20.0μmであることを特徴とする請求項8又は9記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記フレーク状金属粉末の比表面積が0.5~5.0m2/gであることを特徴とする請求項8~10いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記金属粉末が、球状金属粉末を含有し、該金属粉末全体に対する前記球状金属粉末の含有割合が80.0質量%以下であり、該金属粉末全体に対する前記フレーク状金属粉末の含有量が20.0質量%以上であることを特徴とする請求項8~11いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記球状金属粉末の体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.01~7.0μmであることを特徴とする請求項12記載の電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記球状金属粉末の比表面積が0.2~3.0m2/gであることを特徴とする請求項12又は13記載の電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中、樹脂分の含有量が、前記金属粉末100.0質量部に対し、2.5~35.0質量部であることを特徴とする請求項6~14いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中、全樹脂分に対するシリコーン樹脂の含有割合((シリコーン樹脂/全樹脂)×100)が、70.0質量%以上であることを特徴とする請求項6~15いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品用の積層体、固体電解コンデンサ用の被陰極形成体等の電子部品用被電極形成体に、電極を形成させて、電子部品を製造するための電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は、従来よりも過酷な環境で用いられるようになってきているため、電子機器に搭載される電子部品についても、従来よりも過酷な環境で使用しても、故障しないことが求められている。
【0003】
具体的には、例えば、スマートフォンなどのモバイル機器の場合、これらのモバイル機器が落下して衝撃を受けたとしても、基板と電子部品の接続部分にクラックや界面剥離が生じて、基板から電子部品が脱落したり、電子部品自体にクラックが生じたりしないような、高い耐衝撃性が要求される。
【0004】
また、自動車に搭載されている電子機器の場合、これらの電子機器には、走行時の振動により、衝撃を受けたとしても、同様に、基板と電子部品の接続部分にクラックや界面剥離が生じて、基板から電子部品が脱落したり、電子部品自体にクラックが生じたりしないような、高い耐衝撃性が要求される。
【0005】
そこで、特許文献1には、メッキにより形成された下地金属層の上に導電性樹脂層が形成された外部電子電極を備える積層型電子部品が開示されている。この積層型電子部品では、下地金属層の上に導電性樹脂層が形成されていることにより、積層型電子部品が実装されている基板にたわみが生じても、導電性樹脂層が応力を緩和することで、クラックの発生を抑制することができる。
【0006】
導電性樹脂層の形成に用いられる導電性樹脂組成物としては、従来、耐熱性、耐湿性、接着性に優れるエポキシ樹脂を含む導電性樹脂が用いられていた。例えば、特許文献2には、導電性フィラーと、キレート形成物質と、フェノール樹脂と、変性エポキシ樹脂と、ホウ素化合物と、を含む導電性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-295602号公報
【特許文献2】国際公開WO2016/104232号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モバイル機器や自動車は、湿度の高い環境に晒されることもあるため、モバイル機器や自動車に搭載されている電子部品には、内部に水分が侵入しないように、高い耐湿信頼性が要求される。
【0009】
しかしながら、エポキシ樹脂を樹脂分の主成分とする導電性樹組成物により形成される導電性樹脂層は、ある程度の耐湿性を有するものの、モバイル機器や自動車に用いられる電子部品に要求される高い耐湿性に対しては、不十分であった。
【0010】
また、エポキシ樹脂を樹脂分の主成分とする導電性樹組成物を用いる場合には、エポキシ樹脂にブチラール樹脂を配合して、柔軟性を調節することが必要となる等、設計上の制約が生じ、そのことにより、電子部品の製造上の制約が生じてしまう。
【0011】
従って、本発明の第一の目的は、高い耐湿性を有する電子部品の製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、高い耐湿性を有することに加え、設計上及び製造上の制約が少なく、製造効率が高い電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明者等は、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂層を形成させることにより、エポキシ樹脂を樹脂分の主成分として含有する導電性樹脂組成物を用いる場合に比べ、耐湿性に優れる電子部品が得られること、また、設計上及び製造上の制約を少なくすることができること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明(1)は、電子部品用被電極形成体を準備する準備工程と、
該電子部品用被電極形成体の外表面上に、電極を形成させる電極形成工程と、
を有し、
該電極形成工程において、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、該電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させること、
を特徴とする電子部品の製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(2)は、前記電極形成工程において、ディップ法により、前記電子部品用被電極形成体に、前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布することを特徴とする(1)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(3)は、前記電子部品用被電極形成体が、セラミック層と内部電極層とからなる積層型電子部品用積層体であることを特徴とする(1)又は(2)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(4)は、前記電子部品用被電極形成体が、陽極と該陽極の表面に形成された誘電体層からなる固体電解コンデンサ用被陰極形成体であることを特徴とする(1)又は(2)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(5)は、前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物が、熱硬化性のシリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物であり、
前記電極層形成工程において、前記電子部品用被電極形成体に、該熱硬化性のシリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布し、次いで、該導電性樹脂組成物を硬化させることにより、該電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させること、
を特徴とする(1)~(4)いずれかの電子部品の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(6)は、前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物が、金属粉末を含有することを特徴とする(1)~(5)いずれかの電子部品の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明(7)は、前記金属粉末が、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金、アルミニウム、これらのうちの1種以上を含む合金を含む粉末、銀被覆銅粉末及び銀被覆ニッケル粉末から選ばれる少なくとも1種以上の粉末を含有することを特徴とする(6)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明(8)は、前記金属粉末が、フレーク状金属粉末を含有し、該金属粉末全体に対する該フレーク状金属粉末の含有割合が20.0質量%以上であることを特徴とする(6)又は(7)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明(9)は、前記フレーク状金属粉末のアスペクト比が1.5~50.0であることを特徴とする(8)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0022】
また、本発明(10)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したときの前記フレーク状金属粉末の数平均粒子径が0.1~20.0μmであることを特徴とする(8)又は(9)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0023】
また、本発明(11)は、前記フレーク状金属粉末の比表面積が0.5~5.0m2/gであることを特徴とする(8)~(10)いずれかの電子部品の製造方法を提供するものである。
【0024】
また、本発明(12)は、前記金属粉末が、球状金属粉末を含有し、該金属粉末全体に対する前記球状金属粉末の含有割合が80.0質量%以下であり、該金属粉末全体に対する前記フレーク状金属粉末の含有量が20.0質量%以上であることを特徴とする(8)~(11)いずれかの電子部品の製造方法を提供するものである。
【0025】
また、本発明(13)は、前記球状金属粉末の体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.01~7.0μmであることを特徴とする(12)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0026】
また、本発明(14)は、前記球状金属粉末の比表面積が0.2~3.0m2/gであることを特徴とする(12)又は(13)の電子部品の製造方法を提供するものである。
【0027】
また、本発明(15)は、前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中、樹脂分の含有量が、前記金属粉末100.0質量部に対し、2.5~35.0質量部であることを特徴とする(6)~(14)いずれかの電子部品の製造方法を提供するものである。
【0028】
また、本発明(16)は、前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中、全樹脂分に対するシリコーン樹脂の含有割合((シリコーン樹脂/全樹脂)×100)が、70.0質量%以上であることを特徴とする(6)~(15)いずれかの電子部品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高い耐湿性を有する電子部品の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、高い耐湿性を有することに加え、設計上及び製造上の制約が少なく、製造効率が高い電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】積層型電子部品を示す模式的な斜視図である。
【
図2】基板に搭載されている積層型電子部品を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の電子部品の製造方法は、電子部品用被電極形成体を準備する準備工程と、
該電子部品用被電極形成体の外表面上に、電極を形成させる電極形成工程と
を有し、
該電極形成工程において、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、該電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させること、
を特徴とする電子部品の製造方法である。
【0032】
本発明の電子部品の製造方法の形態例により得られる形態例の電子部品について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、積層型電子部品を示す模式的な斜視図である。
図2は、基板に搭載されている積層型電子部品を示す模式的な断面図である。積層型電子部品10は、複数のセラミック層と複数の内部電極層とからなる積層型電子部品用積層体1と、積層型電子部品用積層体1の両端側の外表面に形成され、内部電極層と電気的に接続する外部端子電極2、3と、からなる。外部端子電極2、3は、積層型電子部品用積層体1の外表面上に形成されている金属層4と、金属層4の表面に形成されている導電性樹脂層5と、導電性樹脂層5の表面に形成されているメッキ層6と、からなる。つまり、外部端子電極2、3では、金属層4とメッキ層6との間に、導電性樹脂層5が配置されている。そして、積層型電子部品10は、はんだ7により、基板8に搭載されている。
【0033】
本発明の積層型電子部品の製造方法は、準備工程と、電極形成工程と、を有する。
【0034】
準備工程は、電子部品用被電極形成体を準備する工程である。電子部品用被電極形成体とは、電子部品の製造工程において、電極が形成される対象を指す。電子部品用被電極形成体としては、複数のセラミック層と複数の内部電極層とからなる積層型電子部品用積層体、陽極と該陽極表面に形成された誘電体層からなる固体電解コンデンサ用被陰極形成体、端面電極を備えるチップ抵抗器用被電極形成体等が挙げられる。
【0035】
積層型電子部品用積層体は、複数のセラミック層と複数の内部電極層とからなる。積層型電子部品用積層体では、隣接するセラミック層同士が、それらの間に介在している内部電極層により、接続されている。積層型電子部品用積層体としては、積層セラミックコンデンサ用の積層体、積層セラミックインダクタ用の積層体、圧電アクチュエータ用の積層体等が挙げられる。
【0036】
積層型電子部品用積層体を構成するセラミック層の形成物質としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムカルシウム等が挙げられる。
【0037】
積層型電子部品用積層体を構成する内部電極層の形成物質としては、ニッケル、パラジウム、銀、銅及び金のうちのいずれか、あるいは、これらのうち1種以上を含む合金(例えば、銀とパラジウムとの合金等)が挙げられる。
【0038】
固体電解コンデンサ用被陰極形成体は、陽極と該陽極表面に形成された誘電体層からなる。陽極と誘電体層の形成物質の組合せとしては、タンタルと五酸化タンタル、アルミニウムと酸化アルミニウム、ニオブと五酸化ニオブ等が挙げられる。
【0039】
電極形成工程は、電子部品用被電極形成体の外表面上に、電極を形成させる工程である。なお、本発明において、電子部品用被電極形成体に導電性樹脂層を形成させるとは、電子部品用被電極形成体の表面に、直接導電性樹脂層を形成させる場合と、電子部品用被電極形成体に、先に他の層又は膜(例えば、金属層、導電体層)等を形成させ、その表面に導電性樹脂層を形成させる場合の両方を含む。よって、本発明の電子部品の製造方法により得られる電子部品では、電子部品用被電極形成体の表面に、直接導電性樹脂層が形成されている場合と、電子部品用被電極形成体の間に、他の層又は膜(例えば、金属層、導電体層)等が介在した状態で、導電性樹脂層が形成されている場合の両方がある。
【0040】
電極形成工程において、電極を形成させる位置、方法、電極の厚み、電極の数、電極を構成する金属の種類、電極形成に用いる金属粉末の形状等は、製造目的とする電子部品により適宜選択される。
【0041】
電極形成工程では、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂層を形成させる。
【0042】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、少なくともシリコーン樹脂を含有する。導電性樹脂組成物がシリコーン樹脂を含有することにより、導電性樹脂層の耐湿性が高くなり、膜厚の変化に対する透湿性の変化割合が小さくなり、形成性が高くなるので製造効率が高くなる。シリコーン樹脂としては、熱硬化性のシリコーン樹脂、熱可塑性のシリコーン樹脂が挙げられ、これらのうち、熱硬化性シリコーン樹脂が好ましい。熱硬化性のシリコーン樹脂には、硬化剤を用いなくとも、加熱により硬化する自己硬化型の樹脂と、硬化剤により硬化する硬化剤硬化型の樹脂が挙げられる。自己硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば、反応性官能基としてヒドロキシル基を有し、加熱により脱水縮合反応が進行し、硬化するシリコーン樹脂が挙げられる。また、硬化剤硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば、触媒を添加して加熱されることにより、アルケニル基等の炭化水素基による架橋反応が進行し、硬化するシリコーン樹脂が挙げられる。
【0043】
熱硬化性のシリコーン樹脂としては、特に制限されず、例えば、樹脂の骨格部が、シリコーンオリゴマー、オルガノシロキサン、ジオルガノシロキサン、オルガノポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサン等の構造からなり、且つ、樹脂の骨格部が、1以上の反応性官能基を有するものが挙げられる。硬化性のシリコーン樹脂の骨格部としては、オルガノポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサンが、導電性樹脂層の耐湿性が高くなる点で好ましい。熱硬化性のシリコーン樹脂の骨格部は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0044】
熱硬化性のシリコーン樹脂の反応性官能基としては、特に制限されず、例えば、ヒドロキシ基、アルケニル基、ハイドロジェンシリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基、フェノール基等が挙げられる。熱硬化性のシリコーン樹脂の反応性官能基としては、耐湿性の点ではヒドロキシ基、アルケニル基が好ましく、接着性の点ではエポキシ基が好ましい。
【0045】
熱硬化性のシリコーン樹脂は、反応性官能基以外に、側鎖に、アルキル基、芳香族基等の官能基を有することができる。熱硬化性のシリコーン樹脂の側鎖としては、メチル基、フェニル基が、導電性樹脂層の耐湿性が高くなる点で好ましい。
【0046】
硬化剤硬化型の熱硬化性のシリコーン樹脂の硬化剤としては、特に制限されず、例えば、白金系硬化剤、チタン系硬化剤、アルミ系硬化剤、亜鉛系硬化剤、鉄系硬化剤、リン酸系硬化剤等が挙げられる。熱硬化性のシリコーン樹脂の反応性官能基としてシリコーン樹脂がエポキシ基を有する場合、エポキシ樹脂に用いられる公知の硬化剤を用いることができ、例えば、エチレンジアミン等のアミン系硬化剤、シュウ酸等の有機酸、無水フタル酸等の酸無水物が挙げられる。
【0047】
熱硬化性のシリコーン樹脂の分子量(重量平均分子量Mw)は、特に制限されないが、好ましくは1000~300000、特に好ましくは2000~200000である。
【0048】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、導電性の材料として、金属粉末を含有する。金属粉末としては、例えば、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、パラジウム粉末、白金粉末、金粉末、アルミニウム粉末等を含む粉末、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、金、アルミニウムのうちのいずれか1種以上を含む合金を含む粉末、銀被覆銅粉末、銀被覆ニッケル粉末が挙げられる。
【0049】
金属粉末は、フレーク状金属粉末を含有し、金属粉末全体に対するフレーク状金属粉末の含有割合が、20.0~100.0質量%であることが好ましく、40.0~100.0質量%であることがより好ましく、60.0~100.0質量%であることが特に好ましい。金属粉末全体に対するフレーク状金属粉末の含有割合が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。
【0050】
フレーク状金属粉末のアスペクト比は、好ましくは1.5~50.0、特に好ましくは2.0~30.0、更に好ましくは5.0~20.0である。フレーク状金属粉末のアスペクト比が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。なお、本発明において、フレーク状金属粉末のアスペクト比は、粒子の厚みに対する粒子径(粒子径/厚み)をアスペクト比として、走査型電子顕微鏡(SEM)像観察において任意に選んだ50個の金属粉末のアスペクト比を測定し、その平均値を求めた。
【0051】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したときのフレーク状金属粉末の数平均粒子径は、好ましくは0.1~20.0μm、より好ましくは0.3~15.0μm、更に好ましくは0.5~10.0μm、特に好ましくは1.0~5.0μmである。フレーク状金属粉末の数平均粒子径が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。なお、本発明において、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したときのフレーク状金属粉末の数平均粒子径は、粒子の最長部の径を粒子径として、SEM(走査電子顕微鏡)像観察において任意に選んだ50個の金属粉末の粒子径を測定し、その平均値を数平均粒子径として求めた。
【0052】
フレーク状金属粉末の比表面積は、好ましくは0.5~5.0m2/g、特に好ましくは0.6~4.0m2/gである。フレーク状金属粉末の比表面積が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。
【0053】
金属粉末は、フレーク状金属粉末及び球状金属粉末を含有し、「金属粉末全体に対する球状金属粉末の含有割合が80.0質量%以下であり、且つ、金属粉末全体に対するフレーク状金属粉末の含有量が20.0質量%以上であること」が好ましく、「金属粉末全体に対する球状金属粉末の含有割合が60.0質量%以下であり、且つ、金属粉末全体に対するフレーク状金属粉末の含有量が40.0質量%以上であること」が特に好ましい。フレーク状金属粉末及び球状金属粉末の含有割合が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。
【0054】
球状金属粉末の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、好ましくは0.01~7.0μm、特に好ましくは0.03~5.0μmである。球状金属粉末のD50が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。なお、本発明において、D50については、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、体積基準の積算分率における50%値(D50)を求めた。
【0055】
球状金属粉末の比表面積は、好ましくは0.2~3.0m2/g、特に好ましくは0.3~2.5m2/gである。球状金属粉末の比表面積が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなる。
【0056】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、シリコーン樹脂以外の樹脂を含有してもよい。シリコーン樹脂以外の樹脂としては、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。
【0057】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するシリコーン樹脂の含有割合((シリコーン樹脂/全樹脂分(シリコーン樹脂+シリコーン樹脂以外の樹脂))×100)は、好ましくは70.0質量%以上、より好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上、更に好ましくは95.0質量%以上、特に好ましくは100.0質量%である。導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するシリコーン樹脂の含有割合が上記範囲にあることにより、導電性樹脂層の耐湿性が高くなり、且つ、膜厚の変化に対する透湿量の変化割合を小さくできるので、電子部品の設計上及び製造上の制約を少なくすることができ、成形性を高くすることができるので、製造効率を高くすることができる。
【0058】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するエポキシ樹脂の含有割合((エポキシ樹脂/全樹脂分(シリコーン樹脂+シリコーン樹脂以外の樹脂))×100)は、好ましくは25.0質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは0.0質量%である。導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するエポキシ樹脂の含有割合が上記範囲にあることにより、導電性樹脂層の耐湿性が高くなり、且つ、膜厚の変化に対する透湿量の変化割合を小さくできるので、電子部品の設計上及び製造上の制約を少なくすることができ、また、成形性が高くなるので、製造効率を高くすることができる。
【0059】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するブチラール樹脂の含有割合((ブチラール樹脂/全樹脂分(シリコーン樹脂+シリコーン樹脂以外の樹脂))×100)は、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは0.0質量%である。導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するブチラール樹脂の含有割合が上記範囲にあることにより、導電性樹脂層の耐湿性が高くなり、且つ、膜厚の変化に対する透湿量の変化割合を小さくできるので、電子部品の設計上及び製造上の制約を少なくすることができる。
【0060】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中、樹脂分の含有量(全樹脂分(シリコーン樹脂+シリコーン樹脂以外の樹脂)の含有量)は、金属粉末100.0質量部に対し、好ましくは2.5~35.0質量部、より好ましくは5.0~25.0質量部、更に好ましくは7.0~23.0質量部、特に好ましくは11.0~20.0質量部である。導電性樹脂組成物中の樹脂分の含有量が上記範囲にあることにより、得られる導電性樹脂層の導電性および接着性が高くなり、また、成形において、特にディップ法により導電性樹脂層を形成させる場合に、好適なレオロジーとなる。
【0061】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物が硬化剤を含有する場合、導電性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、導電性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量により、適宜選択されるが、通常、0.01~10.0質量%である。
【0062】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、有機溶媒を含有することができる。有機溶媒としては、特に制限されず、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、セカンダリーブチルアルコール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0063】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、上記成分以外に、必要に応じて、消泡剤、可塑剤、分散剤、レオロジー調整剤等の添加剤を含有することができる。可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、リン酸トリクレシル、塩素化パラフィン、シクロヘキサン1,2ジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)等が挙げられる。レオロジー調整剤としては、シリカ粉末が挙げられる。シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物が、シリカ粉末を含有する場合、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中のシリカ粉末の含有量は、金属粉末100質量部に対して、好ましくは0.0~3.0質量部、特に好ましくは0.0~2.0質量部である。
【0064】
シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物の、前記導電性組成物に角周波数1Hzでひずみ量1%を加えたときの、該ひずみと該ひずみで生じた応力との位相差δの値は、好ましくは32~88°の範囲、より好ましくは43~88°の範囲、より好ましくは45~87°の範囲、より好ましくは47~85°の範囲、特に好ましくは49~83°の範囲、更に好ましくは51~81°の範囲である。導電性樹脂組成物の位相差δの値が上記範囲にあることにより、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂組成物を用いて電極形成させるときの成形性が高くなる。
【0065】
特に、積層型電子部品用積層体にディップ法により外部電極を形成させるためにシリコーン樹脂を含有する導電性組成物を用いる場合、前述の位相差δの値は特に制限されるものではないが、前述の位相差δの値の下限については、成形性が高くなる点で、45°以上が好ましく、47°以上がより好ましく、49°以上が特に好ましく、50°以上が更に好ましく、51°以上が更に好ましく、また、前述の位相差δの値の上限については、成形性が高くなる点で、87°以下が好ましく、85°以下がより好ましく、83°以下が特に好ましく、81°以下が更に好ましく、80°以下が更に好ましい。なお、上記位相差δの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。また、前述の位相差δの値の範囲としては、成形性が高くなる点で、例えば、好ましくは45~87°の範囲、より好ましくは47~85°の範囲、特に好ましくは49~83°の範囲、更に好ましくは51~81°の範囲が挙げられる。
【0066】
また、特に、固体電解コンデンサ用被陰極形成体にディップ法により陰極を形成させるためにシリコーン樹脂を含有する導電性組成物を用いる場合、前述の位相差δの値は特に制限されるものではないが、前述の位相差δの値の下限については、成形性が高くなる点で、32°以上が好ましく、37°以上がより好ましく、45°以上がより好ましく、47°以上がより好ましく、49°以上が特に好ましく、51°以上が更に好ましく、また、前述の位相差δの値の上限については、成形性が高くなる点で、87°以下が好ましく、85°以下がより好ましく、83°以下が特に好ましく、81°以下が更に好ましく、80°以下が更に好ましい。なお、上記位相差δの上限と下限は、任意に組み合わせることができる。また、前述の位相差δの値の範囲としては、成形性が高くなる点で、例えば、好ましくは32~87°の範囲、より好ましくは37~87°の範囲、より好ましくは45~87°の範囲、より好ましくは47~85°の範囲、特に好ましくは49~83°の範囲、更に好ましくは51~81°の範囲が挙げられる。
【0067】
電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂組成物を用いて電極形成させるときの成形性が高くなる点で、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物の、前記導電性組成物に角周波数1Hzでひずみ量1%を加えたときの、せん断速度40(1/s)における粘度に対するせん断速度0.4(1/s)における粘度の比の下限については、1.4以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上が特に好ましく、また、前記導電性組成物に角周波数1Hzでひずみ量1%を加えたときの、せん断速度40(1/s)における粘度に対するせん断速度0.4(1/s)における粘度の比の上限については、60.0以下が好ましく、30.0以下がより好ましく、20.0以下がより好ましく、15.0以下が特に好ましい。また、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物の、前記導電性組成物に角周波数1Hzでひずみ量1%を加えたときの、せん断速度40(1/s)における粘度に対するせん断速度0.4(1/s)における粘度の比の範囲としては、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂組成物を用いて電極形成させるときの成形性が高くなる点で、例えば、好ましくは1.4~60.0の範囲、より好ましくは1.5~60.0の範囲、より好ましくは1.5~30.0の範囲、より好ましくは2.0~20.0の範囲、より好ましくは2.5~20.0の範囲、特に好ましくは2.5~15.0の範囲、特に好ましくは3.0~15.0の範囲が挙げられる。
【0068】
特に、積層型電子部品用積層体にディップ法により外部電極を形成させるためにシリコーン樹脂を含有する導電性組成物を用いる場合、前述の粘度の比は特に制限されるものではないが、前述の粘度の比の下限については、成形性が高くなる点で、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上が特に好ましく、また、前述の粘度の比の上限については、20.0以下が好ましく、15.0以下がより好ましく、12.0以下が特に好ましい。また、前述の粘度の比の範囲としては、成形性が高くなる点で、例えば、好ましくは1.5~20.0の範囲、より好ましくは2.0~20.0の範囲、特に好ましくは2.5~15.0の範囲、更に好ましくは2.5~12.0の範囲が挙げられる。
【0069】
また、特に、固体電解コンデンサ用被陰極形成体にディップ法により陰極を形成させるためにシリコーン樹脂を含有する導電性組成物を用いる場合、前述の粘度の比は特に制限されるものではないが、前述の粘度の比の下限については、成形性が高くなる点で、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、2.5以上が特に好ましく、また、前述の粘度の比の上限については、60.0以下が好ましく、50.0以下がより好ましく、35.0以下がより好ましく、20.0以下がより好ましく、15.0以下が特に好ましい。また、前述の粘度の比の範囲としては、成形性が高くなる点で、例えば、好ましくは1.5~60.0の範囲、より好ましくは2.0~50.0の範囲、より好ましくは2.0~35.0の範囲、より好ましくは2.0~20.0の範囲、特に好ましくは2.5~15.0の範囲の範囲が挙げられる。
【0070】
電極形成工程では、電子部品用被電極形成体に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を、塗布することにより、電子部品用被電極形成体の所定の位置に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層を形成させ、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を加熱硬化および/または乾燥させることにより、導電性樹脂層を形成させる。
【0071】
電極形成工程では、電子部品用被電極形成体の表面に、直接、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布することより、電子部品用被電極形成体の表面に、直接、導電性樹脂層を形成させることができる。また、電極形成工程では、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂層を形成させる前に、電子部品の種類により、適宜の工程を行うことができる。例えば、積層型電子部品の場合、電極形成工程では、電子部品用被電極形成体の所定の位置に金属層を形成させた後、金属層の表面に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を、塗布すること等により、電子部品用被電極形成体の所定の位置に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層を形成させ、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を硬化させることにより、金属層の表面に、導電性樹脂層を形成させる。また、例えば、固体電解コンデンサの場合、電極形成工程では、固体電解コンデンサ用被陰極形成体の所定の位置にカーボン層からなる導電層を形成させた後、導電層の表面に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を、塗布すること等により、電子部品用被電極形成体の所定の位置に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層を形成させ、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を硬化させることにより、導電層の表面に、導電性樹脂層を形成させる。また、電極形成工程では、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂層を形成させた後に、電子部品の種類により、適宜の工程を有することができる。例えば、積層型電子部品の場合、電極形成工程では、電子部品用被電極形成体の所定の位置に導電性樹脂層を形成させた後、導電性樹脂層の表面に、メッキ層を形成させる。
【0072】
電極形成工程では、電子部品用被電極形成体に、導電性樹脂層を形成させることにより、電極を形成させることができる。つまり、この形態では、導電性樹脂層だけで、電極が構成されている。
【0073】
電極形成工程では、電子部品用被電極形成体に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、導電性樹脂層を形成させるときに、ディップ法により、電子部品用被電極形成体に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布して、電子部品用被電極形成体の所定の位置に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層を形成させることができる。シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、成形性に優れるので、ディップ法で、速やかに、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層を所定の位置に形成させることができる。そのため、本発明の電子部品の製造方法は、ディップ法により、電子部品用被電極形成体に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布することで、製造効率を高くすることできる。
【0074】
電極形成工程の第一の形態(以下、電極形成工程(1)とも記載する。)は、電子部品用被電極形成体が、セラミック層と内部電極層とからなる積層型電子部品用積層体の場合の電極形成工程である。そして、電極形成工程(1)は、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、積層型電子部品用積層体の外表面に導電性樹脂層を形成させる導電性樹脂層形成工程(1A)を、少なくとも有する。電極形成工程(1)としては、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、積層型電子部品用積層体の外表面に導電性樹脂層を形成させる導電性樹脂層形成工程(1A)を有していれば、特に制限されず、例えば、少なくとも、金属層形成工程と、導電性樹脂層形成工程(1A)と、メッキ層形成工程と、からなる電極形成工程(1)が挙げられる。
【0075】
電極形成工程(1A)は、電子部品用被電極形成体が、セラミック層と内部電極層とからなる積層型電子部品用積層体の場合の電極形成工程である。電極形成工程(1A)は、少なくとも、金属層形成工程と、導電性樹脂層形成工程(1A)と、メッキ層形成工程と、からなる。
【0076】
金属層形成工程は、積層型電子部品用積層体の外表面上に、内部電極層と電気的に接続する金属層を形成させる工程である。金属層を形成する金属としては、Cu、Ag、Pd、Ni、Sn、Al、Au、Pt等の少なくとも1種、または、これらのうち1種以上を含む合金が挙げられる。金属層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、ディップ法、メッキ法、ロール塗布法、スクリーン印刷法、スパッタ法が挙げられる。金属層の厚み、形状、位置、数等は、適宜選択される。
【0077】
導電性樹脂層形成工程(1A)は、金属層形成工程を行い形成させた金属層の表面に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、導電性樹脂層を形成させる工程である。
【0078】
導電性樹脂層形成工程(1A)では、金属層形成工程を行い形成させた金属層の表面に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布することにより、金属層の表面に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層を形成させ、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を硬化させることにより、導電性樹脂層を形成させる。シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、ディップ法、スクリーン印刷法、ロール塗布法が挙げられる。これらのうち、ディップ法が好ましい。シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物層の厚み、形状、位置、数等は、適宜選択される。
【0079】
メッキ層形成工程は、導電性樹脂層の表面に、メッキ層を形成させる工程である。メッキ層を形成する金属としては、Ni、Cu、Sn、Ag、Au等の少なくとも1種、または、これらのうち1種以上を含む合金が挙げられる。メッキ層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、電解メッキ、無電解メッキが挙げられる。メッキ層の厚み、形状、位置、数等は、適宜選択される。
【0080】
電極形成工程の第二の形態(以下、電極形成工程(2)とも記載する。)は、電子部品用被電極形成体が、固体電解コンデンサ用被陰極形成体である場合の電極形成工程である。そして、電極形成工程(2)は、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、固体電解コンデンサ用被陰極形成体の外表面に導電性樹脂層を形成させる導電性樹脂層形成工程(2A)を、少なくとも有する。電極形成工程(2)としては、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて、固体電解コンデンサ用被陰極形成体の外表面に導電性樹脂層を形成させる導電性樹脂層形成工程(2A)を有していれば、特に制限されず、例えば、少なくとも、固体電解質層形成工程と、カーボン層形成工程と、導電性樹脂層形成工程(2A)と、からなる電極形成工程(2)が挙げられる。
【0081】
固体電解質層形成工程は、固体電解コンデンサ用被陰極形成体の外表面上に、固体電解質層を形成する工程である。固体電解質層を形成する方法としては、特に制限されず、化学的方法により製造される公知の固体電解質で形成でき、固体電解質としては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子が挙げられる。
【0082】
カーボン層形成工程は、固体電解質層上にカーボン層を形成する工程である。カーボン層を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、樹脂と、溶剤と、カーボン粉末を含有するカーボンペーストを、ディップ法により固体電解質層上に塗布後、乾燥および/または硬化させる方法が挙げられる。カーボン粉末に特に制限はないが、グラファイト粉末が好ましい。
【0083】
導電性樹脂層形成工程(2A)は、カーボン層上にシリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて導電性樹脂層を形成する工程である。導電性樹脂層を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、ディップ法、スクリーン印刷法、ロール塗布法等により、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布し、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。
【0084】
電極形成工程の他の形態としては、電子部品用被電極形成体が、端面電極を備えるチップ抵抗器用被電極形成体である場合の電極形成工程(3)が挙げられる。電極形成工程(3)は、少なくとも、端面電極上に導電性樹脂層を形成する工程を有する。導電性樹脂層を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、ディップ法、スクリーン印刷法、ロール塗布法等により、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布し、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。端面電極を備えるチップ抵抗器用被電極形成体は、例えば、絶縁基板と、絶縁基板上に形成された一対の上面電極と、一対の上面電極間に形成された抵抗体と、一対の上面電極の一部と抵抗体を覆うように形成された保護層と、絶縁基板の端面に形成された端面電極を備える。
【0085】
電極形成工程の他の形態としては、電子部品用被電極形成体が、基板である場合の電極形成工程(4)が挙げられる。前記電極形成工程(4)は、少なくとも、基板上に導電性樹脂層を形成する工程を有する。導電性樹脂層を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又は、ディスペンサー印刷により、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布し、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性組成物を硬化させる方法が挙げられる。基板としては、例えば、アルミナ基板、ガラスエポキシ基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板が挙げられる。
【0086】
電極形成工程の他の形態としては、電子部品用被電極形成体が、フィルムである場合の電極形成工程(5)が挙げられる。前記電極形成工程(5)は、少なくとも、フィルム上に導電性樹脂層を形成する工程を有する。導電性樹脂層を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又は、ディスペンサー印刷により、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を塗布し、次いで、シリコーン樹脂を含有する導電性組成物を硬化させる方法が挙げられる。フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、PETフィルムが挙げられる。
【0087】
本発明の電子部品の製造方法では、導電性樹脂層の形成に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いるため、樹脂分の主成分として、エポキシ樹脂を用いる導電性樹脂組成物に比べ、得られる導電性樹脂層の耐湿性が高くなり、また、樹脂分として、ブチラール樹脂を多く含む導電性樹脂組成物に比べ、得られる導電性樹脂層の耐熱性が高くなる。
【0088】
更に、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いて得られる導電性樹脂層は、エポキシ樹脂を主成分とし且つブチラールを含有する導電性樹脂組成物から得られる導電性樹脂層に比べ、膜厚の変化に対する透湿量の変化割合が小さい。
【0089】
本発明の電子部品の製造方法では、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いており、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物は、固体電解コンデンサ用被陰極形成体等に塗布することにより導電性樹脂層を形成させる場合に、良好な成形性を有しており、また、積層型電子部品用積層体等にディップ法によって導電性樹脂層を形成させる場合にも、前述の粘度の比等のレオロジーを調節することで、良好な成形性を発揮する。よって、本発明の電子部品の製造方法は、導電性樹脂層の成形性に優れる。
【0090】
導電性樹脂層の形成対象に形成させる導電性樹脂層の膜厚は、電子部品の種類により様々である。そして、膜厚が薄くなると、透湿量は増加するので、導電性樹脂層中の樹脂比率を高くするなどして、透湿量の増加分をカバーする必要が生じる。そうすると、膜厚の変化に対する透湿量の変化割合が大きいほど、透湿量の増加量が大きくなくなるので、透湿量の増加分をカバーするための対策が多く必要となってくる。そのため、得られる導電性樹脂層の膜厚の変化に対する透湿量の変化割合が大きいもの、すなわち、エポキシ樹脂を主成分とし且つブチラールを含有する導電性樹脂組成物を用いる製造方法の場合、電子部品の設計の制約が大きくなってしまい、それに伴って、導電性樹脂層を形成させる際の製造上の制約が大きくなってしまう。それに対して、得られる導電性樹脂層の膜厚の変化に対する透湿量の変化割合が小さいもの、すなわち、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いる本発明の電子部品の製造方法は、電子部品の設計の制約が小さいので、それに伴う導電性樹脂層を形成させる際の製造上の制約を小さくすることができる。
【0091】
以下、本発明を具体的な実験例に基づき説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例0092】
<球状銀粉末の製造>
先ず、特公昭63-31522号に記載されている噴霧熱分解法に基づいて、表1に記載された銀粉末を準備した。すなわち、銀粉末1については、銀塩を溶解させた水溶液を噴霧熱分解し、捕集した銀粉末を分級処理して、D50の値を調節した。
なお、得られた銀粉末について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、体積基準の積算分率における50%値(D50)を求めた。また、BET法により比表面積を測定した。
<フレーク状銀粉の製造方法>
前述の方法で球状銀粉を製造し、得られた球状の銀粉を、滑剤としてステアリン酸を用いてボールミルで粉砕してフレーク状銀粉を製造した。SEM(走査電子顕微鏡)像観察において任意に選んだ50個の銀粉末の粒子径及びアスペクト比を測定し、その平均値を求めた。また、BET法により比表面積を測定した。
<銀コート銅フレーク粉>
球状の銅粉(三井金属製、型番:MA-CO3K)90質量部に対して10質量部の比率となるように銀で被覆した銀コート銅粉を製造し、得られた銀コート銅粉を、滑剤としてパルミチン酸を用いてボールミルで粉砕してフレーク状銀コート銅粉を製造した。SEM像観察において任意に選んだ50個の銀粉末の粒子径及びアスペクト比を測定し、その平均値を求めた。また、BET法により比表面積を測定した。
【0093】
<導電性樹脂組成物の調製>
表1及び表2に示す配合割合で、金属粉、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂を配合し、導電性樹脂組成物を調製した。
・金属粉1
球状銀粉、D50:2.3μm、比表面積:0.5m2/g
・金属粉2
フレーク状銀粉、アスペクト比:30、数平均粒子径:6.0μm、比表面積:1.0m2/g
・金属粉3
フレーク状銀コート銅粉、アスペクト比:20、D50:8.0μm、比表面積:1.5m2/g
・シリコーン樹脂1
熱硬化性シリコーン樹脂、自己硬化型、信越化学工業株式会社社製、型番:ES-1001N、反応性官能基:水酸基、エポキシ基
・エポキシ樹脂1
熱硬化性エポキシ樹脂、DIC社製、型番:EXA4816
・ブチラール樹脂1
ブチラール樹脂、積水化学工業社製、型番:KS-10
・シリカ粉末1
ヒュームドシリカ、トクヤマ社製、型番:HM-20L
なお、以下表中の樹脂の量は、溶剤を除く樹脂自体の量を指す。
【0094】
(実施例1~8)
<導電性樹脂組成物の製造>
シリコーン樹脂1を樹脂固形分として135質量部とベンジルアルコール(ゴードー社製)を165質量部混合し、130℃、30Pa、1時間の条件で、溶剤置換を行い、樹脂液を得た。得られた樹脂液と、金属粉1と、金属粉2とを、表1に記載の比率で混合後、三本ロールミル(井上製作所製)用いて混錬し、ペースト状の組成物を得た。
得られたペースト状の組成物をベンジルアルコール希釈し、25℃、せん断速度4(1/s)における粘度が30Pa・sとなるよう調整した上で、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
(実施例9~13、比較例1~4)
シリコーン樹脂1を樹脂固形分として135質量部とベンジルアルコール(ゴードー社製)を165質量部混合し、130℃、30Pa、1時間の条件で、溶剤置換を行い、樹脂液を得た。得られた樹脂液と、金属粉3と、エポキシ樹脂1とを、表2に記載の比率で混合後、三本ロールミル(井上製作所製)用いて混錬し、ペースト状の組成物を得た。
得られたペースト状の組成物をベンジルアルコール希釈し、25℃、せん断速度4(1/s)における粘度が30Pa・sとなるよう調整した上で、以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0096】
<性能評価>
(粘度比)
導電性樹脂組成物の粘度を、回転粘度計(ブルックフィールド社製、型番:HADV-II+Pro)を用いて、25℃において、せん断速度0.4(1/s)およびせん断速度40(1/s)の条件で測定した。せん断速度40(1/s)の粘度に対するせん断速度0.4(1/s)の粘度の比を粘度比として算出した。
【0097】
(位相差δ)
レオメーター(TA instrument社製、型番:AR2000)を用いて、25℃、角周波数1Hz、ひずみ量1%の条件で、直径40mmのパラレルプレートを使用して測定し、導電性樹脂組成物の位相差δの値を得た。
【0098】
(透湿量)
導電性樹脂組成物をPETフィルム上に厚さ250μmでキャスティングし、200℃、60分の条件で硬化させて硬化膜を得た。得られた硬化膜を直径7.5mmの円形に切り出し、シリカゲル2gが入った5mlガラス瓶に蓋をするように接着剤で固定した。その後、精製水を100ml入れた750ml容器内に前記硬化膜が精製水に接触しないように上記ガラス瓶を入れ密閉した状態で、65℃に設定した乾燥機に入れて15時間静置した。乾燥機に入れる前と入れた後のガラス瓶の重量を測定し、重量増加分を透湿量とした。透湿量が、160mgを超えるものを「評点:1、不合格、使用不可、耐湿性が極めて低い」、80.0mgを超え160mg以下のものを「評点:2、不合格、使用不可、耐湿性が低い」、40.0mgを超え80.0mg以下のものを「評点3:合格、使用可」、20.0mgを超え40.0mg以下のものを「評点4:合格、使用可、耐湿性が高い」、20.0mg以下のものを「評点5:合格、使用可、耐湿性が極めて高い」とした。
【0099】
(伸び率)
導電性樹脂組成物をPETフィルム上に厚さ250μmでキャスティングし、200℃、60分の条件で硬化させて硬化膜を得た。得られた硬化膜を幅5mmの長方形に切り出し、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、型番:DMA-7100)を用いて長軸方向に9.8Nの引張り荷重をかけたときの塗膜長さを測定した。加重をかける前の長さ10mmに対する、荷重をかけたときに伸張した長さの比率を算出し、伸び率とした。
【0100】
(比抵抗)
導電性樹脂組成物をスライドガラス基板上に幅1cm、長さ5cm、厚さ50μmでキャスティングし、200℃、60分の条件で硬化させて硬化膜を得た。デジタルマルチメータ(Keithley Instruments社製、KEITHLEY2002)を用いて4端子法により硬化膜表面の抵抗を測定し、得られた値と試料厚さから比抵抗を算出した。
【0101】
(密着強度)
導電性樹脂組成物をスライドガラス基板上に厚さ50μmでキャスティングし、直径3mmのアルミシリンダーをのせて、200℃、60分の条件で硬化させた。ボンドテスター(西進商事社製、型番:SS-30WD)を用いて0.5mm/sの速さで垂直方向に引張り、破断したときの値を計測した。
【0102】
【0103】
【表2】
*シリコーン樹脂含有割合:シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中の全樹脂分に対するシリコーン樹脂の含有割合(%)((シリコーン樹脂/全樹脂分(シリコーン樹脂+シリコーン樹脂以外の樹脂))×100)
【0104】
表1及び表2の結果より、実施例1~13は、透湿量が少ない導電性樹脂層が得られており、且つ、導電性樹脂層に求められる密着強度を有しているので、シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いることにより、エポキシ樹脂を樹脂分として33.3質量%以上含有する導電性樹脂組成物を用いる場合に比べ、高い耐湿性を有する電子部品を製造することが可能であることがわかった。
【0105】
(参考例1)
実施例4と同様の方法でペースト状の組成物を得た。得られたペースト状の組成物をベンジルアルコール希釈し、25℃、せん断速度4(1/s)における粘度が30Pa・sとなるよう調整した。
次いで、導電性樹脂組成物をPETフィルム上にキャスティングする際の厚さを調節し、硬化膜の膜厚を表3に示す通りとしたこと以外は、上記と同様に透湿性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0106】
【0107】
(実施例15~26)
シリコーン樹脂1を樹脂固形分として135質量部とベンジルアルコール(ゴードー社製)を165質量部混合し、130℃、30Pa、1時間の条件で、溶剤置換を行い、樹脂液を得た。得られた樹脂液と、金属粉1と、金属粉2と、シリカ粉末1と、ベンジルアルコールとを、表5及び表6に記載の比率で混合後、三本ロールミル(井上製作所製)用いて混錬し、ペースト状の組成物を得た。
得られた組成物をベンジルアルコールで希釈し、25℃、せん断速度4(1/s)における粘度が4Pa・sとなるよう調整した上で、上記評価を行った。その結果を表5及び表6に示す。
【0108】
(実施例27~31)
シリコーン樹脂1を樹脂固形分として135質量部とベンジルアルコール(ゴードー社製)を165質量部混合し、130℃、30Pa、1時間の条件で、溶剤置換を行い、樹脂液を得た。得られた樹脂液と、金属粉1と、金属粉2とを、表7に記載の比率で混合後、三本ロールミル(井上製作所製)用いて混錬し、ペースト状の組成物を得た。
得られた組成物をベンジルアルコールで希釈し、25℃、せん断速度4(1/s)における粘度が40Pa・sとなるよう調整した上で、上記評価を行った。その結果を表7に示す。
【0109】
(実施例32~35)
シリコーン樹脂1を樹脂固形分として135質量部とベンジルアルコール(ゴードー社製)を165質量部混合し、130℃、30Pa、1時間の条件で、溶剤置換を行い、樹脂液を得た。得られた樹脂液と、金属粉1と、金属粉2とを、表8に記載の比率で混合後、三本ロールミル(井上製作所製)用いて混錬し、ペースト状の組成物を得た。
得られた組成物をベンジルアルコールで希釈し、25℃、せん断速度4(1/s)における粘度が30Pa・sとなるよう調整した上で、上記評価を行った。その結果を表8に示す。
【0110】
(塗布性評価1)
<積層型電子部品の製造>
被電極形成体として、縦3.2mm、横2.5mm、高さ2.5mmの、
図1に示すような略直方体の、チタン酸バリウムを含む誘電体層とニッケルを含む内部電極層が複数層積層された積層体を準備した。
上記積層体の両端面に、縦方向を鉛直方向にして、ディップ法により銅粉末を含む導電性樹脂組成物を塗布後、大気雰囲気、150℃の条件で10分保持した。その後、窒素雰囲気において、780℃になるまで50℃/分の昇温速度で昇温し、780℃に到達後、15分間保持することで銅端子を形成した。
積層体の両端面に形成された銅端子に、縦方向を鉛直方向にして、ディップ法により、表4又は表8に記載の導電性樹脂組成物を塗布し、大気雰囲気、200℃の条件で60分間保持することで塗布した導電性樹脂組成物を硬化させ、前述の銅端子上に導電性樹脂層を形成した。
更に、導電性樹脂層上にニッケルメッキを層形成し、ニッケルメッキ層上にスズメッキ層を形成することで、積層型電子部品として積層セラミックコンデンサを作製した。
<製造性の評価>
上記積層型電子部品の鉛直方向に沿う断面をSEMで観察し、積層体の端面のコーナー部における導電性樹脂層の厚み(端面コーナー厚み)と、積層体の端面部における導電性樹脂層の厚み(端面厚み)を計測した。積層体のコーナー部において、メッキ層と導電性樹脂層の境界から導電性樹脂層と下地層(銅端子)の境界までの距離が最も短い部分の長さを端面コーナー厚みとした。また、積層体の端面部において、導電性樹脂層とメッキ層の境界から積層体に向かって垂線を引いたときの導電性樹脂層と下地層(銅端子)の境界までの距離が最も長い部分の長さを端面厚みとした。端面コーナー厚みが2.5μm未満及び/又は端面厚みが300μm超のものを「評点:1、不合格、使用不可、製造性に劣る」、端面コーナー厚みが5.0μm以上、且つ、端面厚みが200μm以下のものを「評点:3、合格、使用可、製造性に優れる」、それら以外を「評点:2、合格、使用可、製造性が良好である」として評価を行ったところ、導電性樹脂層の形状は表4又は表8に示す結果となった。
【0111】
(塗布性評価2)
<固体電解コンデンサの製造>
被電極形成体として、縦0.5mm、横3.7mm、高さ5.4mmの、略直方体の、タンタルからなる陽極と、陽極表面に形成された五酸化タンタルからなる誘電体層からなる被陰極形成体を準備した。
上記被陰極形成体上に固体電解質層を形成し、固体電解質層上にカーボン層を形成した後、高さ方向を鉛直方向にして、ディップ法により、表5又は表6に記載の導電性樹脂組成物をカーボン層上に塗布し、大気雰囲気、170℃の条件で60分間保持することで塗布した導電性樹脂組成物を硬化させ、導電性樹脂層を形成した。
その後、端子に接続し、樹脂モールド法により樹脂外層を形成して固体電解コンデンサとしてタンタルコンデンサを作製した。
<製造性の評価>
上記固体電解コンデンサの水平断面をSEMで観察し、被陰極形成体の側面のコーナー部における導電性樹脂層の厚み(側面コーナー厚み)と、被陰極形成体の側面部における導電性樹脂層の厚み(側面厚み)を計測した。被陰極形成体のコーナー部において、樹脂外層と導電性樹脂層の境界から導電性樹脂層と下地層(被陰極形成体)の境界までの距離が最も短い部分の長さを側面コーナー厚みとした。また、被陰極形成体の側面部において、樹脂外層と導電性樹脂層の境界から導電性樹脂層と下地層(被陰極形成体)の境界までの距離が最も長い部分の長さを側面厚みとした。側面コーナー厚みが5μm以上且つ側面厚みが20μm以下のものを「評点:3、合格、使用可、製造性に優れる」、側面コーナー厚みが2.5μm未満及び/又は側面厚みが40μm超のものを「評点:1、不合格、使用不可、製造性に劣る」、それら以外を「評点:2、合格、使用可、製造性が良好である」として評価を行ったところ、導電性樹脂層の形状は表5又は表6に示す結果となった。
【0112】
(塗布性評価3)
<スクリーン印刷による導電性樹脂層の形成>
アルミナ基板(1インチ角)を準備した。この基板上に、表7に記載の導電性組成物を線幅150μmでスクリーン印刷し、大気雰囲気、200℃の条件で60分間保持することで印刷した導電性組成物を硬化させ、導電性樹脂層を形成した。
<導電性樹脂層の形状の評価>
上記導電性樹脂層を形成後、ニジミやカスレが見られず形状が良好であったものを「評点:3、合格、使用可、成形性に優れる」、若干のニジミやカスレが見られたが使用が可能なレベルであったものを「評点:2、合格、使用可」、ニジミやカスレが顕著に見られ使用が不可能なレベルであったものを「評点:1、不合格、使用不可、成形性に劣る」として評価を行ったところ、導電性樹脂層の形状は表7に示す結果となった。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
前記金属粉末が、球状金属粉末を含有し、該金属粉末全体に対する前記球状金属粉末の含有割合が80.0質量%以下であり、該金属粉末全体に対する前記フレーク状金属粉末の含有量が20.0質量%以上であることを特徴とする請求項9~12いずれか1項記載の電子部品の製造方法。
前記シリコーン樹脂を含有する導電性樹脂組成物中、全樹脂分に対するシリコーン樹脂の含有割合((シリコーン樹脂/全樹脂)×100)が、70.0質量%以上であることを特徴とする請求項1~17いずれか1項記載の電子部品の製造方法。