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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082835
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】化粧シートの製造方法及び化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20220527BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20220527BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220527BHJP
   B29C 59/16 20060101ALI20220527BHJP
   B44B 5/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B27/16
B32B27/00 E
B29C59/16
B44B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193963
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】河西 優衣
【テーマコード(参考)】
4F100
4F209
【Fターム(参考)】
4F100AK04A
4F100AK07C
4F100AK51B
4F100AK51D
4F100AR00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA13A
4F100EH17C
4F100EH46D
4F100EJ39C
4F100EJ55C
4F100EJ61C
4F100EJ65D
4F100GB08
4F100GB81
4F100HB01C
4F100HB17
4F100HB21C
4F100HB31B
4F100JL10A
4F100JN01C
4F209AA11
4F209AF01
4F209AG01
4F209AG03
4F209AG05
4F209PA15
4F209PB01
4F209PG05
4F209PG14
4F209PH27
4F209PN03
4F209PW37
(57)【要約】
【課題】本発明は、化粧シートの製造方法及び化粧シートに関し、レーザー光を照射し、凹凸であるエンボス部を形成することで、いわゆるエンボスロールを用いたエンボスの賦形を廃止できるようにした化粧シートの製造方法を提供できる。
【解決手段】着色フィルム層20の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層30、透明ポリプロピレン層40を順に形成する第一の工程と、透明ポリプロピレン層40の表面に、レーザー光71を照射することにより、印刷絵柄層30の絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部41を形成する第二の工程と、エンボス部41を形成した表面にコロナ処理を施す第三の工程と、コロナ処理を施した表面に、透明樹脂を塗布してトップコート層を形成する第四の工程と、着色フィルム層20の裏面に、プライマー層60を形成する第五の工程と、を含む。また、レーザー光71は、COレーザーを使用しても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色フィルム層の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、透明ポリプロピレン層を順に形成する第一の工程と、
前記透明ポリプロピレン層の表面に、レーザー光を照射することにより、前記印刷絵柄層の前記絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部を形成する第二の工程と、
前記エンボス部を形成した表面にコロナ処理を施す第三の工程と、
前記コロナ処理を施した表面に、透明樹脂を塗布してトップコート層を形成する第四の工程と、
前記着色フィルム層の裏面に、プライマー層を形成する第五の工程と、を含むことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光は、COレーザーを使用していることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項3】
着色フィルム層の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、透明ポリプロピレン層が順に形成され、
前記着色フィルム層の裏面に、プライマー層が形成された化粧シートであって、
前記透明ポリプロピレン層の表面には、
レーザー光を照射することにより形成された凹凸であり、前記印刷絵柄層の前記絵柄と同調させたエンボス部と、
前記エンボス部を有する表面にコロナ処理を施したコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を有する表面に、透明樹脂を塗布したトップコート層と、を有することを特徴とする化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば室内に使用され、建具・造作材等の表面に貼られ、家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用される化粧シートの製造方法及び化粧シートに関し、透明ポリプロピレン層の表面に、レーザー光を照射し、凹凸であるエンボス部を形成することで、いわゆるエンボスロールを用いたエンボスの賦形を廃止できるようにした化粧シートの製造方法を提供できる。
【背景技術】
【0002】
従来、室内に使用される化粧シートは、建具・造作材などの表面に貼られている。それらのものは家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用されている。
そこに使用されている化粧シートは、燃焼時のガスの問題から近年ではオレフィン系材料のものが主に使用されている。表面の摩耗から絵柄を守るために、化粧シートを複層にし、着色オレフィンシート上に印刷したものの上に、透明のオレフィンシートを貼り合わせたものが広く使われている。
【0003】
これらの化粧シートは主に木目柄や抽象柄のものを使用されることが多いが、着色オレフィンシート上に柄を印刷しただけでは、平坦なシートで本物の木や石のような質感が得られない。
このため、上に貼り合わせる透明オレフィンシートの表面に、木目導管を模した凹凸形状を付与したり、最表層にある表面保護層(トップコート)に艶の高い部分と低い部分を木目導管を模してつけることにより、より本物に近い意匠を再現している。
表面に凹凸形状を付与するには、シート表面に金属腐食などを利用し作製したエンボスロールを使用することが殆どである(特許文献2の段落[0023]~[0026]及び図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-201137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のエンボスロールを建材で使用する化粧シートで用意する場合は、建材で主に使用される3尺、4尺といった1mを超える幅で、更に導管の繰り返し意匠が単調にならないような十分長さのある直径のロールを準備する必要がある。
それらのエンボスロールを様々な樹種で再現するには、相当種類の量のエンボスロールを作製する必要があるという第1の問題点があった。
【0006】
また、エンボスロールが痛んだ場合には、同意匠のロールを再版しなければならなかったり、シート作製時にはそれらのエンボスロールをシートのエンボス毎に交換しなければならず、かなりの時間と労力、又、重量物の取り扱い上安全性にも十分気を配る必要性があるという第2の問題点もあった。
本発明は、上記した第1、第2問題点に鑑み、透明ポリプロピレン層の表面に、レーザー光を照射し、凹凸であるエンボス部を形成することで、いわゆるエンボスロールを用いたエンボスの賦形を廃止できるようにしたものである。
【0007】
その結果、エンボスロールの作製の費用、時間、交換をなくすことができる。
また、エンボスのパターンの変更を、シート作製中でも変更したり、ロール径に左右されない長さのパターン(ピッチ)やランダム形状、絵柄読み込みによるエンボス同調をさせることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る化粧シートの製造方法は、着色フィルム層の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、透明ポリプロピレン層を順に形成する第一の工程と、前記透明ポリプロピレン層の表面に、レーザー光を照射することにより、前記印刷絵柄層の前記絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部を形成する第二の工程と、前記エンボス部を形成した表面にコロナ処理を施す第三の工程と、前記コロナ処理を施した表面に、透明樹脂を塗布してトップコート層を形成する第四の工程と、前記着色フィルム層の裏面に、プライマー層を形成する第五の工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る化粧シートの製造方法は、前記レーザー光は、COレーザーを使用していることを特徴とする。
本発明の一態様に係る化粧シートは、着色フィルム層の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層、透明ポリプロピレン層が順に形成され、前記着色フィルム層の裏面に、プライマー層が形成された化粧シートであって、前記透明ポリプロピレン層の表面には、レーザー光を照射することにより形成された凹凸であり、前記印刷絵柄層の前記絵柄と同調させたエンボス部と、前記エンボス部を有する表面にコロナ処理を施したコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を有する表面に、透明樹脂を塗布したトップコート層と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、透明ポリプロピレン層の表面に、レーザー光を照射し、凹凸であるエンボス部を形成することで、いわゆるエンボスロールを用いたエンボスの賦形を廃止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係わる化粧シートの断面図である。
図2図1に対応し、化粧シートの製造工程を説明するための断面図である。
図3】実施形態1に係わる化粧シートの製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(実施形態1に係わる化粧シート10)
図1中、10は、化粧シートであり、図示しないが、例えば室内に使用され、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)などの表面に貼られ、家や部屋毎に建具・造作材の柄を合わせたりして使用される。
化粧シート10は、図1に示すように、次の各層を含み、各層が(1)から順に形成されている。
【0014】
なお、次の(1)~(5)については後述する。
(1)着色フィルム層20
(2)印刷絵柄層30
(3)透明ポリプロピレン層40
(4)トップコート層50
(5)プライマー層60
なお、化粧シート10の層構造は、上記した(1)~(5)に限定されず、図示しないが、後述するエンボス部41を形成した透明ポリプロピレン層40の表面にコロナ処理を施したコロナ処理部を形成している。
【0015】
なお、化粧シート10の各層は、上記した(1)~(5)に限定されず、図示しないが、プライマー層60の裏面側に、基板を接着し、化粧板としても良いし、或いは、プライマー層60の裏面側に、粘着剤層と、剥離紙とを追加し、化粧タックシートとしても良い。
また、透明ポリプロピレン層40の表面には、図2に示すように、レーザー加工機70から照射されたレーザー光71により、印刷絵柄層30の絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部41を形成している。
【0016】
(化粧シート10の主な特徴)
本実施形態1に係わる化粧シート10の主な特徴は、次の通りである。
(1)本実施形態1に係わる化粧シート10の製造方法は、図3に示すように、次の工程を含む。
(1-1)第一の工程
第一の工程は、着色フィルム層20の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層30、透明ポリプロピレン層40を順に形成する工程である。
(1-2)第二の工程
第二の工程は、透明ポリプロピレン層40の表面に、レーザー光71を照射することにより、印刷絵柄層30の絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部41を形成する工程である。
【0017】
(1-3)第三の工程
第三の工程は、エンボス部41を形成した表面にコロナ処理を施す工程である。
(1-4)第四の工程
第四の工程は、コロナ処理を施した表面に、透明樹脂を塗布してトップコート層を形成する工程である。
(1-5)第五の工程
第五の工程は、着色フィルム層20の裏面に、プライマー層60を形成する工程である。
【0018】
本実施形態1によれば、いわゆるエンボスロールを用いたエンボスの賦形を廃止できるようにした。
その結果、エンボスロールの作製の費用、時間、交換をなくすことができる。
また、エンボス部41のパターンの変更を、化粧シート10の作製中でも変更したり、ロール径に左右されない長さのパターン(ピッチ)やランダム形状、絵柄の読み込みによるエンボス同調をさせることも可能である。
【0019】
さらに、本実施形態1によれば、エンボス部41を形成した透明ポリプロピレン層40の表面にコロナ処理を施しているので、一般にぬれ性が向上し、同時に印刷特性、コーティング特性、貼り合わせ特性等を改善できる。
なお、コロナ処理と合わせ、コーティングの前処理等の表面処理を施しても良い。
【0020】
(2)本実施形態1に係わる化粧シート10の製造方法は、COレーザーを使用しているので、透明ポリプロピレン層40もレーザー加工に好適であり、固体式レーザー加工機 半導体レーザー加工機等の他2種類の加工機に比較し安価で、化粧シート10の製造費を低減できる。
【0021】
(3)本実施形態1に係わる化粧シート10によれば、いわゆるエンボスロールを用いたエンボスの賦形を廃止できる。
【0022】
(着色フィルム層20)
着色フィルム層20は、図1に示すように、プライマー層60の表面に位置し、印刷方法を用いて形成され、主として隠蔽性を付与する目的で設けられるものである。
着色フィルム層20は、例えばグラビア印刷法により2液ウレタン系樹脂で印刷したものである。
【0023】
(印刷絵柄層30)
印刷絵柄層30は、図1に示すように、着色フィルム層20の表面に位置し、印刷方法を用いて形成され、化粧シート10に意匠性を付与する目的で設けられるものである。
印刷絵柄層30は、例えばグラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷したものである。
印刷方法としては、例えばグラビア印刷法を例示したが、これに限定されず、例えばオフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等の各種の印刷方法の適用可能である。
【0024】
印刷絵柄層30の模様の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、例えば木目柄、石目柄、抽象柄等が一般的である。模様の種類は、上記例示した種類に限定されず、例えば全面ベタ印刷等であっても良い。
印刷方法に用いられる印刷インキとしては、例えば塩酢ビ系インキ(シアン、マゼンタ、イエロー)を用いている。
なお、印刷インキとしては、ウレタン系樹脂を例示したが、これに限定されず、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤等でも良いし、又、充填材、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、乾燥剤等の適宜の添加剤や、溶剤又は希釈剤等と共に、合成樹脂等からなる結着剤中に分散してなるものである。
【0025】
(透明ポリプロピレン層40)
透明ポリプロピレン層40は、化粧シート10の支持体となるものであって、透明オレフィンシートからなる。
透明ポリプロピレン層40は、図2に示すように、透明スキン層42、透明のポリプロピレン製の透明コア層43、透明スキン層42の順に2種3層で製造している。
透明スキン層42は、好ましくは、透明のポリプロピレン系の熱可塑性樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して形成している。また、透明スキン層42には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーが添加することが望ましい。
【0026】
なお、透明ポリプロピレン層40として、2種3層を例示したが、これに限定されず、単層としても良い。透明ポリプロピレン層40を単層とした場合にも、好ましくは、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加し、或いは、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーが添加して形成することが望ましい。
【0027】
(エンボス部41)
透明ポリプロピレン層40の表面には、図2に示すように、レーザー加工機70から照射されたレーザー光71により、印刷絵柄層30の絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部41を形成している。
レーザー光71を照射した箇所は、凹部となり、それ以外が、透明ポリプロピレン層40の平坦な表面が凸部となる。
【0028】
エンボス部41の凹部は、微細溝状に形成され、溝の断面形状が、図2に示すように、例えば矩形に形成される。
なお、溝の断面形状として、矩形を例示したが、これに限定されず、図示しないが、例えばV字状やU字状に形成しても良い。
【0029】
レーザー加工機70は、例えばCOレーザー(炭酸ガスレーザー)を使用している。
例えば、印刷絵柄層30の絵柄が、「木目柄」である場合について説明する。レーザー加工機70は、印刷絵柄層30の「木目柄」に同調させた、例えば「木目導管状」のデータを読み込み、当該データにもとづいて、透明ポリプロピレン層40の表面にレーザー光71を照射する。これにより、透明ポリプロピレン層40の表面に、印刷絵柄層30の「木目柄」に同調した「木目導管状」のエンボス部41を形成する。
【0030】
(トップコート層50)
トップコート層50は、トップコートともいい、図1に示すように、透明ポリプロピレン層40の表面側に位置し、印刷方法を用いて形成され、耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設けられる。
トップコート層50としては、エンボス部41を形成した透明ポリプロピレン層40の表面に、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリルウレタン樹脂)を6μmの厚さになるように塗布して形成する。
【0031】
さらに、トップコート層50に、抗ウイルス処理を施している。
抗ウイルス処理としては、トップコート層50に抗ウイルス剤を添加する。抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を使用している。
【0032】
(コロナ処理)
また、トップコート層50の形成に先立ち、エンボス部41を形成した透明ポリプロピレン層40の表面に、コロナ処理を施し、図示しないが。コロナ処理部を形成する。その結果、トップコート層50は、コロナ処理部上に位置する。
コロナ処理により、一般にぬれ性が向上し、同時に印刷特性、コーティング特性、貼り合わせ特性等を改善できる。
なお、コロナ処理と合わせ、コーティングの前処理等の表面処理を施しても良い。
【0033】
(プライマー層60)
プライマー層60は、図1に示すように、透明ポリプロピレン層40の裏面側に位置し、主として接着性改善を目的する。
なお、プライマー層60の機能には、接着性改善のほか、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
プライマー層60は、例えばグラビア印刷法により固形分量が1g/mとなるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
【0034】
(透明コア層43)
透明ポリプロピレン層40は、図面上、透明コア層43、透明スキン層42が別層を形成する様に表現しているが、実際は透明コア層43、透明スキン層42は連続的であり、界面は存在しない単層シートである。
透明コア層43には、例えば透明ポリプロピレン樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを使用する。
【0035】
(透明スキン層42)
透明スキン層42には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーを添加し、透明ポリプロピレン樹脂を使用する。
透明スキン層42:透明コア層43:透明スキン層42が、0.5:9:0.5の厚み比率になるように同時押出し、総厚50μmで透明ポリプロピレン層40を作製する。
【0036】
透明スキン層42、透明コア層43、透明スキン層42の2種3層の各層厚を合計した厚みは、単層の透明ポリプロピレン層40の厚み、例えば70μmと一致させる。もちろん、2種3層を例示したが、これに限定されず、透明ポリプロピレン層40を単層としても良い。
【0037】
(透明コア層43の樹脂材料)
透明コア層43を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シート10で基材層等として用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0038】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0039】
透明コア層43には、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
【0040】
(透明スキン層42の樹脂材料)
透明スキン層42を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、透明コア層43と同様の樹脂材料を用いることができる。
【0041】
(ナノサイズの添加剤等(造核剤))
透明スキン層42には、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーを含み、以下、「ナノサイズの造核剤」ともいう。
ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用されることが好ましい。
また、本実施形態1において、透明スキン層42を構成する樹脂中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていても良い。透明スキン層42は造核剤を含むため結晶化度を向上でき、化粧シート10の耐擦傷性(耐傷性)を向上することができる。
【0042】
(ナノサイズの造核剤の粒径)
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0043】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。
【0044】
この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
【0045】
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。
一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。
このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0046】
透明スキン層42は、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。
造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。
【0047】
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層42の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、透明スキン層42の耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
ここで、「主成分」とは、透明スキン層42を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料をいう。
【0048】
(造核剤をナノ化する手法)
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。
【0049】
また、液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。更に、気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0050】
(超臨界逆相蒸発法)
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。
超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0051】
また、超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。
つぎに、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。
【0052】
この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などによって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0053】
(造核剤ベシクルを構成する外膜)
造核剤ベシクルを構成する外膜は、例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0054】
(外膜となるその他の物質)
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。
このうち、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0055】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにしても良い。
本実施形態の化粧シート10においては、造核剤ベシクルを、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート10の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
【0056】
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしても良い。
【0057】
(透明スキン層42の特徴)
上述のように、本実施形態1の化粧シート10は、透明スキン層42が樹脂材料と造核剤とを含有する点に特徴を有している。
また、本実施形態1の化粧シート10は、透明スキン層42を形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させる点に特徴を有している。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち透明スキン層42中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果が奏する。一方、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することが、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0058】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート10の前駆体である積層体の状態においても透明スキン層42に高分散されている。
しかしながら、化粧シート10の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり、化学反応する場合がある。
【0059】
このため、化粧シート10の処理工程によって、完成後の化粧シート10における造核剤の外膜が破砕したり、化学反応している状態がばらつき、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。
そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。
【0060】
このように、本開示は、従来に比して、化粧シート10に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0061】
(トップコート層50)
トップコート層50は、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリルウレタン樹脂)を6μmの厚さになるように塗布する。
トップコート層50の表面には、印刷絵柄層30の絵柄と同調させたエンボス部41を形成している。
【0062】
(化粧シート10の製造方法)
化粧シート10は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、図3に示すように、次の通りである。
(1)第一の工程
第一の工程は、着色フィルム層20の表面に、絵柄を印刷した印刷絵柄層30、透明ポリプロピレン層40を順に形成する工程である。
具体的には、着色フィルム層20として、所定の厚さ、例えば厚さ55μで、例えば顔料配合着色ポリエチレンシート(リケンテクノス製)を用いる。
【0063】
着色フィルム層20の表面に、グラビア印刷によって、例えばウレタンインキ(東洋インキ製造製ラミスター)を用いて印刷絵柄層30を形成する。
印刷絵柄層30の上に、透明ポリプロピレン層40(以下、「透明PP層40」ともいう。)して、例えばホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)で、所定の厚さ、例えば厚さ70μmを、押出ラミネートし、表面がフラットなシートを作製する。
【0064】
(2)第二の工程
第二の工程は、透明ポリプロピレン層40の表面に、レーザー光71を照射することにより、印刷絵柄層30の絵柄と同調させた凹凸であるエンボス部41を形成する工程である。
透明PP層40の表面に、レーザー光71である、例えばCOレーザーを照射し、エンボス部41として、例えば木目導管状の凹凸を形成する。この時、レーザー光71で形成する凹凸は、透明ポリプロピレン層40の厚みを超えることがないようにする必要がある。
【0065】
(3)第三の工程
第3の工程は、エンボス部41を形成した表面にコロナ処理を施す工程である。
エンボス部41である凹凸を形成した透明PP層40の表面に、コロナ処理を施す。
(4)第四の工程
第四の工程は、コロナ処理を施した表面に、透明樹脂を塗布してトップコート層50を形成する工程である。
トップコート層50として、例えば、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリルウレタン樹脂)を、所定の厚さ、例えば6μmの厚さになるように塗布する。
【0066】
(5)第五の工程
第五の工程は、着色フィルム層20の裏面に、プライマー層60を形成する工程である。
着色フィルム層20の裏面には、例えばグラビア印刷法により、例えば固形分量が1g/mとなるように、例えばウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層60を塗布し、化粧シート10を製造する。
【実施例0067】
(実施例)
以下に、エンボス部41に関する実施例について、本発明に係る化粧シートの実施例1及び第1比較例1について説明する。
なお、本発明は、下記の実施例1に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
実施例1は、化粧シート10を下記の材料と手順で作製した。
着色フィルム層20としては、厚さ55μの顔料配合着色ポリエチレンシート(リケンテクノス製)を用いた。
着色フィルム層20の表面には、グラビア印刷によってウレタンインキ(東洋インキ製造製ラミスター)を用いて印刷絵柄層30として形成した。
印刷絵柄層30の上には、透明PP層40としてホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)、70μmを押出ラミネートし、表面がフラットなシートを作製した。
透明PP層40の表面には、COレーザー(レーザー光71)を照射し、木目導管状の凹凸であるエンボス部41を形成した。
【0069】
エンボス部41を形成した透明PP層40の表面にコロナ処理を施した。
さらに、トップコート層50としては、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリルウレタン樹脂)を6μmの厚さになるように塗布する。
最後に、着色フィルム層20の裏面には、グラビア印刷法により固形分量が1g/mとなるようにウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層60を塗布し、実施例1の評価シートを作製した。
【0070】
(比較例1)
比較例1は、エンボスロールを使用して、凹凸であるエンボス部を形成した点で実施例1と相違する。
着色フィルム層としては、実施例1と同様に、厚さ55μの顔料配合着色ポリエチレンシート(リケンテクノス製)を用いた。
着色フィルム層の表面には、グラビア印刷によって、ウレタンインキ(東洋インキ製造製ラミスター)を用いて印刷絵柄層として形成した。
印刷絵柄層の上に、透明PP層としてホモポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製)、70μmを押出ラミネートした。
【0071】
その際に、透明PP層の表面形状が木目導管を再現できるよう、押出ラミネートする際に木目導管の凹凸を再現したエンボスロールを使用し、表面に木目導管の凹凸であるエンボス部が付いた透明PP層を形成した。
凹凸であるエンボス部を形成した透明PP層の表面には、コロナ処理を施した。
さらに、トップコート層としては、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィック社製アクリルウレタン樹脂)を6μmの厚さになるように塗布した。
【0072】
最後に、着色フィルム層の裏面には、グラビア印刷法により固形分量が1g/mとなるようにウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層を塗布し、比較例1の評価シートを作製した。
【0073】
(評価方法および評価基準)
上記して作製した評価シートの評価方法は、次の通りである。
(1)繊細性
(2)質感
【0074】
(繊細性)
繊細性の試験は、各評価シートのそれぞれに対して、透明PP層の凹凸であるエンボス部の状態を目視し、評価した。
評価は、「◎」、「○」、「×」の3段階で評価した。
繊細なものを、「◎」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち「○」及び「×」を、不合格とした。
【0075】
(質感)
質感の試験は、各評価シートのそれぞれに対して、透明PP層の凹凸であるエンボス部の状態を目視し、評価した。
評価は、「◎」、「○」、「×」の3段階で評価した。
本物の木目の質感を再現しているものを、「◎」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち「○」及び「×」を、不合格とした。
(評価結果)
評価シートの評価結果は、次の表1の通りである。
【表1】
【0076】
(実施例1及び比較例1)
実施例1及び比較例1の計2枚の評価シートのうち、繊細性及び質感が共に、「◎」で「合格」のものは、実施例1の評価シートだけである。
残る比較例1の評価シートは、繊細性及び質感が共に、「○」であり、「不合格」であった。
【0077】
比較例1は、エンボスロールを使用したことが原因であったものと推測できる。
これに対し、実施例1のものは、エンボスロールで凹凸形状を作製した比較例1と比較し、より繊細な凹凸形状を作製することができ、より本物の質感を再現した化粧シートを作製することができた。
【符号の説明】
【0078】
10 化粧シート
20 着色フィルム層
30 印刷絵柄層
40 透明ポリプロピレン層
41 エンボス部
42 透明スキン層
43 透明コア層
50 トップコート層
60 プライマー層
70 レーザー加工機
71 レーザー光
図1
図2
図3