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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082836
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/00 20060101AFI20220527BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20220527BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20220527BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20220527BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20220527BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20220527BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220527BHJP
【FI】
B01J37/00 A ZAB
B01J23/887 Z
C07C47/22 G
C07C45/35
C07C57/055 A
C07C51/235
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193965
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥村 成喜
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝紀
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB07
4G169CB63
4G169CB72
4G169CB74
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169FA01
4G169FB06
4G169FB61
4G169FB66
4G169FC02
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC45
4H006AC47
4H006BA02
4H006BA13
4H006BA14
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA30
4H006BA81
4H006BE30
4H006BQ10
4H006BS10
4H039CA62
4H039CA65
4H039CC30
(57)【要約】
【課題】
本発明の製造法による触媒は、機械的強度が高くなるため、実プラントスケールにおいて高所から触媒が充填される際に触媒の破損が少なくなり、破損された触媒が要因となり差圧の上昇および、それに伴う目的生成物の収率低下を低減させられ、また発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性にも向上効果が見られる。
【解決手段】
触媒前駆体顆粒を成形する工程(A)と、前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)と、乾燥された成形体2を焼成する工程(C)を有する触媒の製造方法において、工程(B)の後、5日以内に工程(C)を行うことを特徴とする触媒の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2)で表わされる組成を有する触媒前駆体顆粒を成形する工程(A)と、前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)と、乾燥された成形体2を焼成する工程(C)を有する触媒の製造方法において、工程(B)の後、5日以内に工程(C)を行うことを特徴とする触媒の製造方法。

Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、シリカ、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)

Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Zはニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ意味するものであり、a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
【請求項2】
前記工程(C)に投入される成形体2のうち、工程(B)の後5日以内である成形体2が80質量%より多い含有率である請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
下記式(1)又は(2)で表わされる組成を有する触媒前駆体顆粒を成形する工程(A)と、前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)と、乾燥された成形体2を焼成する工程(C)を有する触媒の製造方法において、成形体2の含水量が1.5質量%~10.5質量%の範囲内であることを特徴とする触媒の製造方法。

Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、シリカ、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)

Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Zはニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ意味するものであり、a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
【請求項4】
下記式(1)又は(2)で表わされる組成を有する乾燥粉体の平均粒子径が10μm以上40μm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
工程(A)が、不活性担体に担持する担持成形工程である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである請求項5に記載の製触媒の造方法。
【請求項7】
触媒が、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合、及び/又は共役ジエン製造用触媒である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸である請求項7に記載の触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高活性であり、高収率で目的物を得られる触媒の製造方法に関するものであり、特に不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸、又は共役ジエンを酸化的に製造する際に有用な、機械的強度の高い触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法や、ブテン類から1,3-ブタジエンを製造する気相接触酸化方法は工業的に広く実施されており、ビスマスおよびモリブデンを主成分とした複合金属酸化物触媒の使用が当業者にとって公知である。
特に、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法に関しては、その収率を向上する手段として多くの報告がなされている(例えば特許文献1、2等)。上記のような手段をもって改良をはかっても、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等の部分酸化反応により対応する不飽和アルデヒド及び/又は不飽和カルボン酸の製造において、さらなる収率の改善が求められている。例えば、目的生成物の収率は、製造に要するプロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等の使用量を左右し製造コストに多大な影響を与える。
【0003】
上述のように触媒の性能としての収率は重要であるが、一方で触媒の機械的強度も重要である。たとえば、特許文献3では触媒の機械的強度を向上させる目的で、生体溶解性無機質繊維を添加する旨が記載されており、これにより機械的強度の向上と人体への有害性の低減を達成している。また、特許文献4ではシラン処理したガラス繊維を添加する旨が記載されており、特許文献3と同様に強度助剤の添加により触媒の機械的強度の向上が達成されている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献は触媒の機械的強度向上を目的に強度助剤を添加することを解決手段としており、この場合触媒の原材料コストの上昇や生産原料品目の増加による煩雑さにつながり、結果として生産コストは上昇する。すなわち、強度助剤なしに触媒の機械的強度を向上できる製法が求められていたが、そのような方法は公知ではなかった。また一般に不均一系触媒の実機製造スケールは、特許文献5の実施例に記載の通り、焼成トレーにて百数十枚を使用し、また連続式トンネル乾燥炉でワンパスでも半日~一日程度は所要するスケールである。他には、特許文献6の実施例に記載の通り、成形工程において1バッチ分の製造でも1000kg近い仕込み量である。すなわち、不均一系触媒の実機製造のスケールは非常に大きく、工程異常に対する対処、品種切り替えや使用機器の洗浄、校正などのメンテナンスのために触媒前駆体(製品ではない触媒の中間体)は、次工程に移るまで数日から十数日、保管されることが当業者にとって公知であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2016/136882号
【特許文献2】特開2017-024009号公報
【特許文献3】特開2019-171335号公報
【特許文献4】特開2018-114502号公報
【特許文献5】特許第6033027号公報
【特許文献6】特許第6207346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法や、ブテン類から1,3-ブタジエンを製造する気相接触酸化方法に使用される触媒であって、特に機械的強度が高い触媒の製造方法を提案するものである。そして、本発明の触媒を使用することで、安全に、安定して、低コストで気相接触酸化方法の長期運転が可能となるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの研究によれば、後述する成形体2(乾燥工程後の触媒前駆体)の次工程に移るまでの保管日数を規定することにより最終的な触媒の機械的強度が向上することを発見し、本発明を完成させるに行ったものである。
【0008】
即ち、本発明は、以下1)~8)に関する。
1)
下記式(1)又は(2)で表わされる組成を有する触媒前駆体顆粒を成形する工程(A)と、前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)と、乾燥された成形体2を焼成する工程(C)を有する触媒の製造方法において、工程(B)の後、5日以内に工程(C)を行うことを特徴とする触媒の製造方法。

Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、シリカ、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)

Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Zはニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ意味するものであり、a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
2)
前記工程(C)に投入される成形体2のうち、工程(B)の後5日以内である成形体2が80質量%より多い含有率である上記1)に記載の触媒の製造方法。
3)
下記式(1)又は(2)で表わされる組成を有する触媒前駆体顆粒を成形する工程(A)と、前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)と、乾燥された成形体2を焼成する工程(C)を有する触媒の製造方法において、成形体2の含水量が1.5質量%~10.5質量%の範囲内であることを特徴とする触媒の製造方法。

Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、シリカ、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)

Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Zはニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ意味するものであり、a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
4)
下記式(1)又は(2)で表わされる組成を有する乾燥粉体の平均粒子径が10μm以上40μm以下である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
5)
工程(A)が、不活性担体に担持する担持成形工程である上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
6)
前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである請求項5に記載の製触媒の造方法。
7)
触媒が、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合、及び/又は共役ジエン製造用触媒である上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
8)
不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸である上記7)に記載の触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造法による触媒は、気相接触酸化反応における触媒の機械的強度の向上に非常に有効であり、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する場合や、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造する場合の酸化触媒、酸化脱水素触媒として特に有用である。
特にプロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒドを製造する場合に有効に用いられる。また、本発明の触媒は機械的強度が高くなるため、実プラントスケールにおいて高所から触媒が充填される際に触媒の破損が少なくなり、破損された触媒が要因となり差圧の上昇および、それに伴う目的生成物の収率低下を低減させられ、また発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性にも向上効果が見られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、特に機械的強度の高い触媒の製造方法に関する。
[触媒の製造工程]
本発明の触媒の製造方法では、触媒前駆体顆粒を成形する工程(A)と、前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)および乾燥により得た成形体2を焼成する工程(C)を有することを特徴とする。
ここで、「触媒前駆体顆粒」とは、触媒活性成分原料の混合溶液またはスラリーを乾燥して得られる「乾燥粉体」を、更に予備焼成することで得られる顆粒であり、「予備焼成粉体」または単に「顆粒」と表現する場合もある。
成形工程(A)としては、シリカ等の不活性担体に担持する担持成形と、担体を使用しない非担持成形のいずれの成形方法も採用できる。なお成形工程の具体的方法は後述する。
前記工程(A)によって成形された成形体1を乾燥する工程(B)は、成形体1を調湿された環境により乾燥する方法であり、具体的方法は後述する。なお、乾燥工程(B)は本明細書中、風乾と表現する場合もある。
前記工程(B)によって乾燥された成形体2を焼成する工程(C)は、成形体2を空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200℃以上600℃以下で焼成する工程であり、本明細書中、本焼成と表現する場合もある。
本触媒の製造方法は、上記工程(A)、(B)、(C)以外にも、触媒活性成分原料を混合する調合工程、調合工程で得られたスラリー液を乾燥する乾燥工程、乾燥後焼成を行う予備焼成工程等、必要に応じて各種工程を有する。これらの工程の詳細については後述する。
【0011】
[工程(B)の後5日以内に工程(C)を行う]
本発明の製造方法では、前記工程(B)の後5日以内に工程(C)を行う、すなわち成形体2の保管日数が5日以下であることを特徴とする。保管日数として好ましい順に、4日、3日、2日であり、最も好ましくは1日である。詳細は不明であるが、成形体2の保管日数をなるべく短くすることにより、最終工程である本焼成時の触媒内部のクラックが低減され、特別な強度助剤を添加せずとも触媒の機械的強度が向上することを本発明者らは発見した。保管方法として、成形体2の保管する容器は一般的なビニール袋であればその詳細を問わないが、その材質はアクリル樹脂、ポリスチレン、PET、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂およびこれらのアルミパウチされたものであり、好ましくはポリエチレンまたはアルミパウチされたポリエチレンであり、ビニール袋の厚みもその詳細を問わないが、好ましくは0.01mm以上0.1mm以下となる。保管する容器の別の態様として、箱や蓋つきのパンおよび坩堝が挙げられるが、周囲の雰囲気が混入しないよう封止される容器構造であれば、その詳細を問わない。また、周囲の雰囲気、特に水分が仮に容器内に混入しても、これを除去できるようなガス吸着剤や脱湿剤が設置されたビニール袋および容器も、本発明の範疇に属する。さらに保管時の周囲の環境温度として好ましくは5℃~70℃、下限として好ましい順に10℃、15℃、20℃、上限として好ましい順に60℃、50℃、40℃、30℃となる。保管時の環境湿度として好ましくは相対湿度5%~80%、下限として好ましい順に10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、上限として好ましい順に75%、70%、65%、60%、55%となる。また、保管時の周囲の雰囲気の風速も重要であり、好ましくは1cm/sec、より好ましい順に5cm/sec、10cm/sec、25cm/sec、最も好ましくは50cm/secとなる。
本発明において触媒の機械的強度は、実用上の観点から非常に重要である。実施例で使用している触媒の強度は以下に記載の方法によって求められる磨損度によって評価する。その評価方法は以下の通りである。触媒50gを、内部に一枚の邪魔板を備えた、半径14cmの円筒型回転機に仕込み23rpmで10分間回転させる。その後剥離した粉末をふるいで除去し、残存量を測定した。下式(3)を用いて、剥離した粉末の割合を計算し以降この値を磨損度と表現する。磨損度は小さい方が、強度が高くなるので好ましいが、実用上は3質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.3質量%以下である。
[式(3)]

磨損度(質量%)=100×〔(サンプル質量-ふるい上の残サンプル質量)/サンプル質量〕・・・(3)

その他の機械的強度の評価方法として、錠剤圧縮試験機による圧縮強度が挙げられる。特に触媒内部に貫通穴がある形状(たとえばリング形状)において、磨損度評価では剥離した粉末が貫通穴に残存するため、正確な磨損度評価ができないために有効である。圧縮強度の測定方法は、当業者にとって公知な木屋式硬度計などであればその詳細を問わないが、本発明の実施例においては以下の通りとなる。すなわち、装置としてERWEKA製TBH-425を用い、感度を3N、測定速度を1.0mm/sec、測定メソッドをSpeedとして、100個以上のサンプルの強度の平均値をもって圧縮強度とする。この際、サンプルの位置が好ましくない(たとえば、ロードセルに対し斜めの状態で測定されるなどの)データは棄却する。圧縮強度は高い方が好ましいが、実用上は2.5kgf以上が好ましく、より好ましい順に2.8kgf以上、3.1kgf以上、3.4kgf以上、最も好ましくは3.7kgf以上である。
【0012】
本発明の製造方法では、工程(C)に投入される成形体2のうち、工程(B)の後5日以内である成形体2が80質量%より多い含有率を占める場合が好ましい。
触媒の製造現場においては、工程(B)までの工程を数回繰り返し、成形体2を数バッチ準備した後、全部を併せて工程(C)に投入される方法がよく用いられている。すなわち工程(C)に投入される成形体2は、工程(B)の後に数日~数百日保管されたものの混合物である場合が多い。しかしこの実情は、文献等には表れないことが多く、より良い触媒を製造する為に、成形体2の性状や、保管期間についての情報はほとんど存在していなかった。本発明者らは、以下実施例において示すとおり、その関係を明らかにした。
ここで、工程(C)に投入される成形体2のうち、工程(B)の後5日以内である成形体2が占める割合の下限としては、好ましい順に80質量%、85質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、であり、特に好ましくは95質量%である。上限としては特に制限はなく、100質量%でよい。すなわち、工程(C)に投入される成形体2のうち、工程(B)の後5日以内である成形体2が占める割合として最も好ましくは、95質量%以上100質量%以下である。
【0013】
[工程(C)を行う前の成形体2の含水量が1.5質量%~10.5質量%]
本発明の製造方法では、前記工程(C)を行う前の成形体2の含水量が1.5質量%~10.5質量%の範囲内であることを特徴とする。含水量の好ましい下限として順に、1.7質量%、1.9質量%、2.1質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%であり、含水量の好ましい上限として順に、10.3質量%、10.0質量%、9.7質量%、9.5質量%、9.2質量%である。すなわち、最も好ましい含水量の範囲は、5.5質量%~9.2質量%である。
本発明において含水量とは、対象となる成形体または顆粒を120℃まで昇温する際の質量減少率を意味しており、その測定方法の詳細は当業者にとって公知な範囲内であればその詳細を問わないが、例えば以下の通りである。すなわち、ケット科学研究所製/FD-720を用い、サンプルを1~5g準備して、Autoモード、設定温度を120℃、Biasを0.01%として測定する。測定完了時の質量減少率(単位:質量%)を含水量とする。
【0014】
[組成]
本発明の成形体2は、下記式(1)又は(2)で表される組成を有する。
[化1]
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、カルシウム、シリカ、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0≦e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5、およびi1=各元素の酸化状態によって決まる値である)
【0015】
上記式(1)において、a1=12としたときのb1~h1の好ましい範囲は以下である。
b1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、上限としては好ましい順に、6、5、4、3、2である。すなわちb1として最も好ましい範囲は、0.5以上2以下である。
c1の下限としては好ましい順に、0.2、0.5、0.8、1.0、1.5、1.8、2.0、2.5であり、上限としては好ましい順に、8、7、6、5、4、3.5である。すなわちc1として最も好ましい範囲は、2.5以上3.5以下である。
d1の下限としては好ましい順に、1、2、3、4、5であり、上限としては好ましい順に、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6である。すなわちd1として最も好ましい範囲は、5以上6以下である。
e1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.5、0.8、1.0であり、上限としては好ましい順に、4.5、4、3,5、3、2.5、2、1.8である。すなわちe1として最も好ましい範囲は、1.0以上1.8以下である。
f1の上限としては好ましい順に、1.8、1.5、1.0、0.8、0.5であり、下限としては、0が好ましい。すなわちf1としてより好ましい範囲は、0以上0.5以下であり、0が最も好ましい。
g1の下限としては好ましい順に、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0,07であり、上限としては好ましい順に、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1である。すなわちg1として最も好ましい範囲は、0.07以上0.1以下である。
h1の上限としては好ましい順に、4、3、2、1.8、1.5、1.0、0.8、0.5であり、下限としては、0が好ましい。すなわちh1としてより好ましい範囲は、0以上0.5以下であり、0が最も好ましい。
【0016】
式(1)におけるXとしては、タングステン、アンチモン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、セリウムが好ましく、アンチモン、亜鉛が特に好ましい。
式(1)におけるYとしては、ナトリウム、カリウム、セシウムが好ましく、カリウム、セシウムが更に好ましく、カリウムが特に好ましい。
式(1)におけるZとしては、リンが好ましい。
【0017】
[化2]
Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Zはニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ意味するものであり、a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、モリブデン原子12に対して、a2は0<a2≦10、b2は0≦b2≦10、c2は0<c2≦6、d2は0<d2≦10、e2は0≦e2≦0.5、f2は0≦f2≦1、g2は0≦g2<6を表す。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
【0018】
[乾燥粉体の平均粒子径(D50)が10μm以上40μm以下]
本発明の製造方法に用いられる乾燥粉体は、平均粒子径が10μm以上40μm以下である場合が好ましい。なお、触媒前駆体顆粒および成形体1および成形体2が、平均粒子径が10μm以上40μm以下である場合も同様に好ましい。
平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(セイシン企業社製、商品名「LMS-2000e」)より、湿式条件で分散媒を水(屈折率1.33)、分析モデルを汎用モード、レーザーチャンネルサイズを2000、エミュレーションをオフ設定にし、散乱光強度が9-13の範囲の時に粒子径分布を測定し、その体積平均(メジアン径)として求める。すなわち累積の体積分率が50%となる点の粒子径を意味し、本明細書においてD50と表現する場合もある。また同様に、累積の体積分率が10%となる点の粒径をD10と、累積の体積分率が90%となる点の粒径をD90と表現する。測定方式は湿式または乾式いずれでも良いが、本願実施例では湿式を用いる。
平均粒子径(D50)が、10μm以上40μmの範囲外である場合、触媒とした際の性能が安定せず、結果として触媒活性の低下を引き起こす可能性がある。
この平均粒子径(D50)の好ましい範囲の下限は15μmであり、さらに好ましくは20μmであり、特に好ましくは23μmである。また好ましい上限は38μmであり、さらに好ましくは35μmであり、特に好ましくは32μmである。すなわち、平均粒子径として最も好ましい範囲は、23μm以上32μm以下である。
また、本発明に用いられる成形体2は、D10が10μm以上25μm以下である場合が好ましい。D10の下限として更に好ましい順に12μm、13μm、14μm、15μmである。また上限として更に好ましい順に24μm、23μm、22μm、21μm、20μm、19μm、18μmである。すなわちD10として最も好ましくは、15μm以上18μm以下である。
また、本発明に用いられる成形体2は、D90が40μm以上65μm以下である場合が好ましい。D90の下限として更に好ましい順に42μm、45μm、48μm、50μmである。また上限として更に好ましい順に64μm、63μm、62μm、61μm、60μmである。すなわちD90として最も好ましくは、50μm以上60μm以下である。
【0019】
[担持について]
工程(A)が、不活性担体に担持する担持成形工程である場合、すなわち本発明によって得られる触媒が担持触媒である場合、その効果は特に優れたものである。
不活性担体の材質としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、炭化ケイ素、炭化物、およびこれらの混合物など公知の物を使用でき、さらにその粒径、吸水率、機械的強度、各結晶相の結晶化度や混合割合なども特に制限はなく、最終的な触媒の性能、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。担体と予備焼成粉体の混合の割合は、各原料の仕込み質量により、下記式(4)より担持率として算出される。

[式(4)]
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100・・・(4)

上記担持率としての好ましい上限は、80質量%であり、さらに好ましくは60質量%である。
また好ましい下限は、20質量%であり、さらに好ましくは30質量%である。すなわち担持率として最も好ましい範囲は、30質量%以上60質量%以下である。
なお不活性担体としては、シリカ及び/又はアルミナが好ましく、シリカとアルミナの混合物が特に好ましい。
なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成形性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉末100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は10~30質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉末は成形機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。
【0020】
[式(1)で表される組成を有する触媒の製造方法等について]
上記式(1)で表される組成を有する触媒を製造する場合、構成元素の出発原料としては特に制限されるものではないが、例えばモリブデン成分の原料としては三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、パラモリブデン酸アンモニウム、メタモリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸またはその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸またはその塩などを用いることができる。
【0021】
ビスマス成分の原料としては硝酸ビスマス、炭酸ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマスのようなビスマス塩、三酸化ビスマス、金属ビスマスなどを用いることができる。これらの原料は固体のままあるいは水溶液や硝酸溶液、それらの水溶液から生じるビスマス化合物のスラリーとして用いることができるが、硝酸塩、あるいはその溶液、またはその溶液から生じるスラリーを用いることが好ましい。
【0022】
その他の成分元素の出発原料としては、一般にこの種の触媒に使用される金属元素のアンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、次炭酸塩、酢酸塩、塩化物、無機酸、無機酸の塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の塩、硫酸塩、水酸化物、有機酸塩、酸化物またはこれらの混合物を組み合わせて用いればよいが、アンモニウム塩および硝酸塩が好適に用いられる。
【0023】
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。スラリー液は、各活性成分含有化合物と水とを均一に混合して得ることができる。スラリー液における水の使用量は、用いる化合物の全量を完全に溶解できるか、または均一に混合できる量であれば特に制限はない。乾燥方法や乾燥条件を勘案して、水の使用量を適宜決定すれば良い。通常、スラリー調製用化合物の合計質量100質量部に対して、100質量部以上2000質量部以下である。水の量は多くてもよいが、多過ぎると乾燥工程のエネルギーコストが高くなり、又完全に乾燥できない場合も生ずるなどデメリットが多い。
【0024】
上記各成分元素の供給源化合物のスラリー液は上記の各供給源化合物を、(イ)一括して混合する方法、(ロ)一括して混合後、熟成処理する方法、(ハ)段階的に混合する方法、(ニ)段階的に混合・熟成処理を繰り返す方法、および(イ)~(ニ)を組み合わせた方法により調製することが好ましい(調合工程)。ここで、上記熟成とは、「工業原料もしくは半製品を、一定時間、一定温度などの特定条件のもとに処理して、必要とする物理性、化学性の取得、上昇あるいは所定反応の進行などをはかる操作」のことをいう。なお、本発明において、上記の一定時間とは、5分以上24時間以下の範囲をいい、上記の一定温度とは室温以上の水溶液ないし水分散液の沸点以下の範囲をいう。このうち最終的に得られる触媒の活性及び収率の面で好ましいのは(ハ)段階的に混合する方法であり、更に好ましいのは段階的に母液に混合する各原料は全溶した溶液とする方法であり、最も好ましいのはモリブデン原料を調合液またはスラリーとした母液に、アルカリ金属溶液、硝酸塩の各種混合液を混合する方法である。ただし、この工程で必ずしもすべての触媒構成元素を混合する必要はなく、その一部の元素または一部の量を以降の工程で添加してもよい。
【0025】
本発明において、必須活性成分を混合する際に用いられる攪拌機の攪拌翼の形状は特に制約はなく、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、スクリュー翼、アンカー翼、リボン翼、大型格子翼などの任意の攪拌翼を1段あるいは上下方向に同一翼または異種翼を2段以上で使用することができる。また、反応槽内には必要に応じてバッフル(邪魔板)を設置しても良い。
【0026】
次いで、このようにして得られたスラリー液を乾燥する(乾燥工程)。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましく、噴霧方式はディスクタイプが最も好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、本発明においては以下の通りである。
アトマイザーの回転は触媒前駆体顆粒の組成によっても異なるが、好ましくは12,000rpm以上22,000rpm以下である。更に好ましいアトマイザー回転数の上限は、20,000pmであり、特に好ましくは19,000rpmであり、最も好ましくは18,500rpmである。また更に好ましい下限は、14,000rpmであり、特に好ましい下限は15,000rpmであり、最も好ましい下限は16,000rpmである。すなわち最も好ましいアトマイザー回転数の範囲は16,000rpm以上18,500rpm以下である。
また、アトマイザーの回転数は相対遠心加速度によっても表され、12500G以上50000G以下であることが好ましい。より好ましい下限としては、順に15000G、17500G、18500G、19000Gであり、より好ましい上限としては、順に45000G、40000G、37500G、35000G、32500Gである。すなわち最も好ましいアトマイザーの回転数の範囲は19000G以上32500G以下である。
更に噴霧乾燥の噴霧器の入口温度、出口温度も上記パラメーターに影響を与える。入口温度としては、200℃以上350℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に210℃、220℃、230℃、250℃、270℃、280℃であり、より好ましい上限は順に340℃、330℃、320℃、310℃である。すなわち入口温度として最も好ましくは280℃以上310℃以下である。
また、出口温度としては、100℃以上150℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に101℃、102℃、103℃、104℃、105℃であり、より好ましい上限は順に140℃、130℃、120℃である。すなわち入り口温度として最も好ましくは105℃以上120℃以下である。
さらに、入口温度と出口温度の差としては、50℃以上140℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に70℃、80℃、90℃、100℃、105℃であり、より好ましい上限は順に135℃、130℃、125℃、120℃である。すなわち入口温度として最も好ましくは105℃以上120℃以下である。
さらに、触媒前駆体顆粒を製法として以下式(5)で与えられるパラメーターSDの範囲は、5以上41以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に10、15、18、20、21であり、より好ましい上限は順に40、38、36、35である。すなわちSDとして最も好ましくは21以上35以下である。

[式(5)]
SD=51.3+0.0766×{(スプレードライヤーの入口温度、単位:℃)―(スプレードライヤーの出口温度、単位:℃)}-0.00173×(アトマイザー回転数、単位:rpm)・・・(5)

乾燥工程により、本発明に用いられる乾燥粉体を得る。
【0027】
上記のようにして得られた乾燥粉体は好ましくは予備焼成し触媒前駆体顆粒を得て、その後触媒前駆体顆粒を成形(工程(A))を経て、乾燥(工程(B))、本焼成(工程(C))することで、成形形状を制御、保持することが可能となり、工業用途として特に機械的強度が優れた触媒が得られ、安定した触媒性能を発現できる。
【0028】
成形(工程(A))は、シリカ等の担体に担持する担持成形と、担体を使用しない非担持成形のいずれの成形方法も採用できる(成形工程)。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。成形品の形状としては、例えば、円柱状、リング状、球状等が運転条件を考慮して適宜選択可能であるが、球状担体、特にシリカやアルミナ等の不活性担体に触媒活性成分を担持した、平均粒径3.0mm以上10.0mm以下、好ましくは平均粒径3.0mm以上8.0mm以下の担持触媒であるとよい。担持方法としては転動造粒法、遠心流動コーティング装置を用いる方法、ウォッシュコート方法等が広く知られており、予備焼成粉末が担体に均一に担持できる方法で有れば特に限定されないが、触媒の製造効率等を考慮した場合、転動造粒法が好ましい。具体的には、固定円筒容器の底部に、平らな、あるいは凹凸のある円盤を有する装置で、円盤を高速で回転させることにより、容器内にチャージされた担体を、担体自体の自転運動と公転運動の繰り返しにより激しく撹拌させ、ここに予備焼成粉体を添加することにより粉体成分を担体に担持させる方法である。なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等がより好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液がさらに好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成形性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉末100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は15~50質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉末は成形機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。また、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。なお、成形において添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。成形工程により、本発明の成形体1を得る。
次に、成形体1を乾燥させることにより、最終的な製品である触媒の強度を向上できる(本発明の風乾工程)。この乾燥の条件としては、成形体1を十分に乾燥でき触媒の機械的強度を担保できるものであれば、その詳細を問わないが、例えば以下が挙げられる。
すなわち、乾燥時間として好ましくは1時間~96時間、下限として好ましい順に3時間、5時間、12時間、24時間、上限として好ましい順に80時間、70時間、60時間、50時間、40時間、30時間である。乾燥時の環境温度として好ましくは5℃~70℃、下限として好ましい順に10℃、15℃、20℃、上限として好ましい順に60℃、50℃、40℃、30℃となる。乾燥時の環境湿度として好ましくは相対湿度5%~80%、下限として好ましい順に10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、上限として好ましい順に75%、70%、65%、60%、55%となる。風乾工程により、本発明の成形体2を得る。また、乾燥時の周囲の雰囲気の風速も重要であり、好ましくは1cm/sec、より好ましい順に5cm/sec、10cm/sec、25cm/sec、最も好ましくは50cm/secとなる。
【0029】
予備焼成方法や予備焼成条件または本焼成方法や本焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。予備焼成や本焼成は、通常、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させない気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。尚、触媒を使用して不飽和アルデヒド、及び/又は不飽和カルボン酸を製造する際の反応条件等に応じて、特に本焼成における最適な条件は異なり、本焼成工程の工程パラメーターすなわち雰囲気中の酸素含有率、最高到達温度や焼成時間等の変更を行うことは当業者にとって公知であるため、本発明の範疇に入るものとする。また、本焼成工程は前述の予備焼成工程よりも後に実施されるものとし、本焼成工程における最高到達温度(本焼温度)は、前述の予備焼成工程における最高到達温度(予備焼成温度)よりも高いものとする。焼成の手法は流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲を選択されるべきである。最後に本焼成を行うことにより最終的な製品としての触媒を得る。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる触媒は、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を製造する為の触媒として使用される場合が好ましく、より好ましくは不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用いることが更に好ましく、プロピレンからアクロレインを製造する為の触媒として用いることが特に好ましい。不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を製造するような発熱反応のプロセスでは、実プラントにおいては反応により生じる発熱で触媒自身が劣化するのを防ぐ目的で、反応管入口側から反応管出口側に向けて活性が高くなるよう異なる触媒種を多層で充填することが当業者にとっては公知である。本発明の触媒は、反応管入り口側および反応管出口側、およびその中間の触媒層のいずれでも使用できるが、たとえば反応管の最も出口側、すなわち反応管内の全触媒層の中で最も高活性な触媒に用いることが最も好ましい。なお、多層充填においては、2層又は3層充填が特に好ましい態様である。
【0031】
[式(2)で表される組成を有する触媒の製造方法等について]
上記式(2)で表される組成を有する触媒を製造する場合には、この種の触媒、例えば酸化物触媒、ヘテロポリ酸又はその塩構造を有する触媒を調製する方法として一般に知られている方法が採用できる。触媒を製造する際に使用できる原料は特に限定されず、種々のものが使用できる。例えば、三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸又はその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸又はその塩などを用いることができる、アンチモン成分原料としては特に制限はないが、三酸化アンチモンもしくは酢酸アンチモンが好ましい。バナジウム、タングステン、銅等、その他の元素の原料としてはそれぞれの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、金属等が使用できる。
【0032】
次いで前記で得られたスラリー液を乾燥し、乾燥粉体とする。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられるが、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の入口のおける温度が140~400℃、出口における温度が70~150℃であり、入口温度が出口温度より高くなる。また、この際得られるスラリー液乾燥体の平均粒径が10~700μmとなるように乾燥するのが好ましい。
【0033】
上記のようにして得られた式(2)で表される組成を有する乾燥粉体は、そのまま被覆用混合物に供することができるが、予め焼成すると成形性が向上する場合があり好ましい(予備焼成工程)。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~350℃、好ましくは150~300℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。このようにして得られた焼成後の固体は成形前に粉砕されることが好ましい。粉砕方法として特に制限はないが、ボールミルを用いると良い。予備焼成工程および/またはその後の粉砕工程により、触媒前駆体顆粒を得る。
【0034】
また、スラリーを調製する際の活性成分を含有する化合物は、必ずしも全ての活性成分を含んでいる必要はなく、一部の成分を下記成形工程前に使用してもよい。
【0035】
上記式(2)で表される組成を有する触媒の形状は特に制約はなく、酸化反応において反応ガスの圧力損失を小さくするために、柱状物、錠剤、リング状、球状等に成形し使用する。このうち選択性の向上や反応熱の除去が期待できることから、不活性担体に触媒活性成分固体を担持し、担持触媒とするのが特に好ましい。この担持は以下に述べる転動造粒法が好ましい。この方法は、例えば固定容器内の底部に、平らなあるいは凹凸のある円盤を有する装置中で、円盤を高速で回転することにより、容器内の担体を自転運動と公転運動の繰返しにより激しく攪拌させ、ここにバインダーと触媒活性成分固体並びに、必要により、これらに他の添加剤例えば成形助剤、強度向上剤を添加した担持用混合物を担体に担持する方法である。バインダーの添加方法は、1)前記担持用混合物に予め混合しておく、2)担持用混合物を固定容器内に添加するのと同時に添加、3)担持用混合物を固定容器内に添加した後に添加、4)担持用混合物を固定容器内に添加する前に添加、5)担持用混合物とバインダーをそれぞれ分割し、2)~4)を適宜組み合わせて全量添加する等の方法が任意に採用しうる。このうち5)においては、例えば担持用混合物の固定容器壁への付着、担持用混合物同士の凝集がなく担体上に所定量が担持されるようオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい。バインダーは、水やエタノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、セルロース類及びエチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、特にグリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。これらバインダーの使用量は、担持用混合物100質量部に対して通常2~60質量部、好ましくは10~50質量部である。
【0036】
上記担持における担体の具体例としては、炭化珪素、アルミナ、シリカアルミナ、ムライト、アランダム等の直径1~15mm、好ましくは2.5~10mmの球形担体等が挙げられる。これら担体は通常は10~70%の空孔率を有するものが用いられる。担体と担持用混合物の割合は通常、担持用混合物/(担持用混合物+担体)=10~75質量%、好ましくは15~60質量%となる量を使用する。担持用混合物の割合が大きい場合、担持触媒の反応活性は大きくなるが、機械的強度が小さくなる傾向にある。逆に、担持用混合物の割合が小さい場合、機械的強度は大きいが、反応活性は小さくなる傾向がある。なお、前記において、必要により使用する成形助剤としては、シリカゲル、珪藻土、アルミナ粉末等が挙げられる。成形助剤の使用量は、触媒活性成分固体100質量部に対して通常1~60質量部である。また、更に必要により触媒活性成分固体及び反応ガスに対して不活性な無機繊維(例えば、セラミックス繊維又はウィスカー等)を強度向上剤として用いることは、触媒の機械的強度の向上に有用であり、ガラス繊維が好ましい。これら繊維の使用量は、触媒活性成分固体100質量部に対して通常1~30質量部である。なお、第一段目の触媒の成形においては、添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。成形工程により、本発明の成形体1を得る。
次に、成形体1を乾燥させることにより、最終的な製品である触媒の強度を向上できる(本発明の風乾工程)。この乾燥の条件としては、成形体1を十分に乾燥でき触媒の機械的強度を担保できるものであれば、その詳細を問わないが、例えば以下が挙げられる。
すなわち、乾燥時間として好ましくは1時間~96時間、下限として好ましい順に3時間、5時間、12時間、24時間、上限として好ましい順に80時間、70時間、60時間、50時間、40時間、30時間である。乾燥時の環境温度として好ましくは5℃~70℃、下限として好ましい順に10℃、15℃、20℃、上限として好ましい順に60℃、50℃、40℃、30℃となる。乾燥時の環境湿度として好ましくは相対湿度5%~80%、下限として好ましい順に10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、上限として好ましい順に75%、70%、65%、60%、55%となる。風乾工程により、本発明の成形体2を得る。また、乾燥時の周囲の雰囲気の風速も重要であり、好ましくは1cm/sec、より好ましい順に5cm/sec、10cm/sec、25cm/sec、最も好ましくは50cm/secとなる。
【0037】
上記のようにして得られた担持触媒(成型体2)はそのまま触媒として気相接触酸化反応に供することができるが、焼成すると触媒活性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~450℃、好ましくは270~420℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。
【0038】
[触媒の使用]
【0039】
本発明の製造方法によって得られる触媒は、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する場合や、炭素原子数4以上のモノオレフィンと分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィンを製造する反応に使用される。特にプロピレンを分子状酸素又は分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化してアクロレイン、アクリル酸を製造する反応に使用する場合において、触媒活性の向上、および収率の向上をすることができ、公知の方法と比較して製品の価格競争力の向上に非常に有効である。また、ホットスポット温度の低減のような発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性にも向上効果が期待できる。更に、本発明の触媒は、環境や最終製品の品質に悪影響の生じる副生成物、たとえば一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO)、アセトアルデヒドや酢酸、ホルムアルデヒドの低減にも有効である。
本発明の製造方法によって得られる触媒について、上記式(1)の組成を有する触媒を第一段目の触媒、すなわち不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用い、上記式(2)の組成を有する触媒を第二段目の触媒、すなわち不飽和カルボン酸化合物を製造する為の触媒として用いることが好ましい。
なお、第一段目、第二段目のいずれにおいても、これら活性成分を含む触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
例えばプロピレンを、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化して、アクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する際に使用する場合において、原料ガスの流通方法は、通常の単流通法でもあるいはリサイクル法でもよく、一般に用いられている条件下で実施することができ特に限定されない。たとえば出発原料物質としてのプロピレンが常温で1~10容量%、好ましくは4~9容量%、分子状酸素が3~20容量%、好ましくは4~18容量%、水蒸気が0~60容量%、好ましくは4~50容量%、二酸化炭素、窒素等の不活性ガスが20~80容量%、好ましくは30~60容量%からなる混合ガスを反応管中に充填した本発明の触媒上に250~450℃で、常圧~10気圧の圧力下で、空間速度300~5000h-1で導入し反応を行う。
【0041】
本発明において触媒活性の向上とは、特に断りがない限り同じ反応浴温度で触媒反応を行って比較をしたときに原料転化率が高いことを指す。
本発明において収率が高いとは、特に断りがない限り、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして酸化反応を行った場合には、対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の合計収率が高いことを指す。また、特に断りがない限り、収率とは後述する有効収率を指す。
本発明において触媒活性成分の構成元素とは、特に断りがない限り、上記触媒製造工程において使用するすべての元素を指すが、本焼工程の最高温度以下にて消失、昇華、揮発、燃焼する原料およびその構成元素は、触媒の活性成分の構成元素に含めないものとする。また、成形工程における成形助剤や担体に含まれるケイ素およびその他の無機材料を構成する元素も、触媒の活性成分の構成元素として含まれないものとする。
本発明においてホットスポット温度とは、多管式反応管内の長軸方向に熱電対を設置し、測定される触媒充填層内の温度分布の最高温度であり、反応浴温度とは反応管の発熱を冷却する目的で使用される熱媒の設定温度である。上記温度分布の測定の点数には特に制限はないが、例えば触媒充填長を均等に10から1000に分割する。
本発明において不飽和アルデヒドおよび不飽和アルデヒド化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのアルデヒドを有する有機化合物であり、たとえばアクロレイン、メタクロレインである。本発明において不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのカルボキシ基、またはそのエステル基を有する有機化合物であり、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチルである。本発明において共役ジエンとは、1つの単結合によって二重結合が隔てられ化学的に共役したジエンであり、たとえば1,3-ブタジエンである。
【実施例0042】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0043】
[実施例1](触媒1-1の調製)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.27質量部を純水2.4質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄40質量部、硝酸コバルト86質量部及び硝酸ニッケル30質量部を60℃に加温した純水83質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス18質量部を60℃に加温した純水19質量部に硝酸(60質量%)4.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。なお、この乾燥粉体のD10は19μm、D50は35μm、D90は59μmであった。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:2.1:6.3:2.2:0.06)250質量部に対して12.5質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が60質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を20℃、相対湿度50~60%の環境(特別に調温、調湿はしていない室内環境)で16時間乾燥させ、成形体2を得た。こうして得られた粒径4.9mmの成形体2を2日間、0.05mm厚のビニール袋2重収袋にて保管後、570℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒1-1を得た。触媒1-1の磨損度は0.4%であった。
【0044】
[実施例2](触媒2-1の調製)
実施例1で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:2.1:6.3:2.2:0.06)250質量部に対して12.5質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を20℃、相対湿度50~60%の環境で16時間乾燥させ、成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.05mm厚のビニール袋2重収袋にて保管後、545℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒2-1を得た。触媒2-1の磨損度は0.3%であった。
【0045】
[実施例3](触媒3-1の調製)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.37質量部を純水3.5質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄34質量部、硝酸コバルト81質量部及び硝酸ニッケル44質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス21質量部を60℃に加温した純水24質量部に硝酸(60質量%)5.8質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。なお、この乾燥粉体のD10は19μm、D50は37μm、D90は64μmであった。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)20質量部に対して1.0質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液8.0質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度45~55%の環境で24時間乾燥させ、含水量が2.2質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を2日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒3-1を得た。触媒3-1の磨損度は0.4%であった。
【0046】
[実施例4](触媒4-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)3質量部に対して0.15質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液1.1質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度45~55%の環境で24時間乾燥させ、成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を3日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒4-1を得た。触媒4-1の磨損度は0.5%であった。
【0047】
[実施例5](触媒5-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)20質量部に対して1.0質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液8.5質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒5-1を得た。触媒5-1の磨損度は0.2%であった。
【0048】
[比較例1](触媒1-2の調製)
実施例1で得られた成形体2を792日間、0.05mm厚のビニール袋2重収袋にて保管後、実施例1と同様の条件で本焼成を行い、触媒1-2を得た。触媒1-2の磨損度は21.2%であった。
【0049】
[比較例2](触媒2-2の調製)
実施例2で得られた成形体2を457日間、0.05mm厚のビニール袋2重収袋にて保管後、実施例2と同様の条件で本焼成を行い、触媒2-2を得た。触媒2-2の磨損度は4.4%であった。
【0050】
[比較例3](触媒4-2の調製)
実施例4で得られた成形体2を379日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、実施例4と同様の条件で本焼成を行い、触媒4-2を得た。触媒4-2の磨損度は1.8%であった。
【0051】
[比較例4](触媒5-2の調製)
実施例5で得られた成形体2を112日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、実施例5と同様の条件で本焼成を行い、触媒5-2を得た。触媒5-2の磨損度は16.4%であった。
【0052】
【表1】
【0053】
以上の結果より本発明の製造方法により、成形体2の保管日数が短いほど最終的な触媒の機械的強度が向上し、従来技術である強度助剤を添加せずとも保管日数を管理することにより高い触媒強度を示すことが可能であることが、明らかとなった。
【0054】
[実施例6](触媒6-1の調製)
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.29質量部を純水2.6質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄41質量部、硝酸コバルト98質量部及び硝酸ニッケル47質量部を60℃に加温した純水99質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス14質量部を60℃に加温した純水15質量部に硝酸(60質量%)3.2質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.6:2.2:7.1:3.5:0.07)20質量部に対して1.0質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液9.0質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~65%の環境で24時間乾燥させ、含水量が5.9質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を2日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、530℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒6-1を得た。触媒6-1の磨損度は0.2%であった。
【0055】
[比較例5](触媒7-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)20質量部に対して1.0質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液8.8質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で24時間乾燥させ、含水量が11.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒7-1を得た。触媒7-1の磨損度は2.1%であった。
【0056】
[比較例6](触媒7-2の調製)
比較例5で得られた成形体2をさらに27℃、相対湿度45~55%の環境で24時間乾燥させ、含水量が1.3質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒7-2を得た。触媒7-2の磨損度は2.8%であった。
【0057】
【表2】
【0058】
[実施例7](触媒8-1の調製)
実施例6で得られた予備焼成粉体10質量部に対して1.0質量部のアクリル系セルロース助剤を添加し、イオン交換水4.0質量部を加え十分混錬した後、二軸スクリュー式押出成形機にて外径6.5mm、内径2.0mm、長さ10mmのリング形状になるよう成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~65%の環境で16時間乾燥させた。こうして得られた成形体2を3日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管後、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒8-1を得た。触媒8-1の圧縮強度は3.9kgfであった。
【0059】
[比較例7](触媒8-2の調製)
実施例6で得られた成形体2を92日間、27℃、相対湿度50~65%の環境で保管後、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒8-2を得た。触媒8-2の圧縮強度は2.3kgfであった。
【0060】
【表3】
【0061】
以上の結果より本発明の製造方法により、従来技術である強度助剤を添加せずとも、(1)保管日数を管理することにより最終製品である触媒が高い触媒強度を示すこと、(2)成形体2の含水量として最適な範囲があり、これを適切に管理することにより最終製品である触媒が高い触媒強度を示すこと、が明らかとなった。
【0062】
[実施例8](触媒9-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-9-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-9-2を得た。成型体2-9-1を50質量%、成形体2-9-2を50質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒9-1を得た。触媒9-1の磨損度は0.4%であった。
【0063】
[実施例9](触媒10-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-10-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-10-2を得た。成型体2-10-1を1質量%、成形体2-10-2を99質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒10-1を得た。触媒10-1の磨損度は0.6%であった。
【0064】
[実施例10](触媒11-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-11-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-11-2を得た。成型体2-11-1を2質量%、成形体2-11-2を98質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒11-1を得た。触媒11-1の磨損度は0.3%であった。
【0065】
[実施例11](触媒12-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-12-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-12-2を得た。成型体2-12-1を5質量%、成形体2-12-2を95質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒12-1を得た。触媒12-1の磨損度は0.6%であった。
【0066】
[実施例12](触媒13-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-13-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-13-2を得た。成型体2-13-1を10質量%、成形体2-13-2を90質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒13-1を得た。触媒13-1の磨損度は1.3%であった。
【0067】
[比較例8](触媒14-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-14-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-14-2を得た。成型体2-14-1を50質量%、成形体2-14-2を50質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒14-1を得た。触媒14-1の磨損度は4.2%であった。
【0068】
[比較例9](触媒15-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-15-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-15-2を得た。成型体2-15-1を20質量%、成形体2-14-2を80質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒15-1を得た。触媒15-1の磨損度は2.1%であった。
【0069】
[比較例10](触媒16-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-16-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-16-2を得た。成型体2-16-1を50質量%、成形体2-16-2を50質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒16-1を得た。触媒16-1の磨損度は2.4%であった。
【0070】
[比較例11](触媒17-1の調製)
実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を140日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-17-1を得た。別ロットとして、実施例3で得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:1.8:5.9:3.2:0.08)200質量部に対して10質量部の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液85質量部を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形し、成形体1を得た。この成形体1を27℃、相対湿度50~70%の環境で40時間乾燥させ、含水量が9.0質量%の成形体2を得た。こうして得られた粒径5.3mmの成形体2を1日間、0.03mm厚のビニール袋にて保管し、成形体2-17-2を得た。成型体2-17-1を50質量%、成形体2-17-2を50質量%分として混合し、得られた成形体を515℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒17-1を得た。触媒17-1の磨損度は3.5%であった。
【0071】
【表4】
【0072】
以上の結果より本発明の製造方法により、成形体2において保管日数が長いものと短いものを混合して製品としての触媒を作る際、磨損度の観点からこの混合の割合には最適値があり、これを制御した触媒が高い触媒強度を示すこと、が明らかとなった。従来、このように複数ロットの触媒を混合すること自体は公知であったが、これらの混合の割合と機械的強度の関係が本願により明らかになったと言える。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の触媒の製造方法を使用することにより、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を酸化的に製造する場合に、機械的強度が高い触媒を得ることが可能である。