(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082838
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】給紙装置、紙送りロールおよび分離ロール
(51)【国際特許分類】
B65H 3/52 20060101AFI20220527BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20220527BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B65H3/52 330A
B65H5/06 A
F16C13/00 A
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193968
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 和志
(72)【発明者】
【氏名】森 宏之
(72)【発明者】
【氏名】土井 和宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 里志
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩稔
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
3J103
【Fターム(参考)】
3F049AA03
3F049CA01
3F049CA11
3F049DA12
3F049LA01
3F049LB03
3F343FA01
3F343FB01
3F343FC23
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JD09
3F343JD31
3F343JD37
3F343KB05
3J103AA02
3J103AA14
3J103AA23
3J103AA72
3J103AA85
3J103BA41
3J103FA05
3J103GA02
3J103GA57
3J103GA58
3J103GA60
3J103HA02
3J103HA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる給紙装置、紙送りロールおよび分離ロールを提供する。
【解決手段】回転駆動され、用紙を搬送する紙送りロール12と、紙送りロール12に圧接されるとともにトルクリミッターが内蔵され、用紙の重送を抑える分離ロール14は、軸体12a、14aの外周面に形成された発泡弾性体層12b、14bと、発泡弾性体層12b、14bの外周面に形成された表層12c、14cとを有し、発泡弾性体層12b、14bは、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含み、発泡弾性体層12b、14bの気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下であり、表層12c、14cは、表面粗さRzが20μm以上であり、紙送りロール12と分離ロール14の表面のJIS-A硬度の差が5度以上であり、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が1.0以上3.0以下である給紙装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動され、用紙を搬送する紙送りロールと、
前記紙送りロールに圧接されるとともにトルクリミッターが内蔵され、用紙の重送を抑える分離ロールと、を備え、
前記紙送りロールおよび前記分離ロールは、軸体と、前記軸体の外周面に形成された発泡弾性体層と、前記発泡弾性体層の外周面に形成された表層とを有し、
前記発泡弾性体層は、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含み、
前記発泡弾性体層の気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下であり、
前記表層は、表面粗さRzが20μm以上であり、
前記紙送りロールと前記分離ロールの表面のJIS-A硬度の差が5度以上であり、
前記紙送りロールと前記分離ロールの間の摩擦係数が1.0以上3.0以下であることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記紙送りロールおよび前記分離ロールは、それぞれ表面に高さ20~300μmの凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分離ロールは、前記紙送りロールよりも表面粗さRzが大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の紙送りロール。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の分離ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる給紙装置、紙送りロールおよび分離ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、紙送りロールは、例えばゴム架橋体などの弾性材料によって円筒状に形成され、その周面が用紙との接触面となる。紙送りロールの周面には、用紙から発生する紙粉が付着することがある。そして、用紙と繰り返し接触するうちに、紙送りロールの周面には紙粉が蓄積することがある。紙粉が蓄積すると、用紙に対する周面の接触面積が低下し、用紙に対する接触面の摩擦係数が低下する。その結果、用紙の搬送不良を生じることがある。
【0003】
用紙の搬送不良を抑制するために、紙送りロールの周面に凹凸を形成したものが知られている(特許文献1)。例えば特許文献1には、紙送りロールの軸方向と平行に複数本の凸条および凹溝を形成したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-065907号公報
【特許文献2】特開2001-151371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、紙送りロール単体と用紙との間の摩擦係数を問題にしている。一方で、特許文献2には、給送ロールと分離ロールを備えるシート供給装置の発明が提案されている。給送ロールは、シート搬送方向に回転駆動されるロールであり、分離ロールは、給送ロールと同方向に従動回転するものであり、内蔵されるトルクリミッターによりシートの重送を抑えるロールである。特許文献2では、分離ロールの硬度よりも給送ロールの硬度を低硬度とすることで、分離ロールと給送ロールの圧接部において分離ロールと給送ロールの間に微小な滑りが生じるようにし、分離ロールの表面に付着した紙粉を給送ロールがクリーニングして、紙粉による分離ロールの摩擦係数の低下を抑えている。しかしながら、特許文献2の構成だけでは、長期使用後のシートの重送を抑える機能は十分ではなく、長期使用後の紙詰まりを解消できないという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる給紙装置、紙送りロールおよび分離ロールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る給紙装置は、回転駆動され、用紙を搬送する紙送りロールと、前記紙送りロールに圧接されるとともにトルクリミッターが内蔵され、用紙の重送を抑える分離ロールと、を備え、前記紙送りロールおよび前記分離ロールの発泡弾性層は、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含む弾性体で構成され、前記発泡弾性体層の気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下であり、前記発泡弾性体層の外周面に形成された表層の、それぞれの表面粗さRzが20μm以上であり、表面のJIS-A硬度の差が5度以上であり、前記紙送りロールと前記分離ロールの間の摩擦係数が1.0以上3.0以下であることを要旨とする。
【0008】
前記紙送りロールおよび前記分離ロールは、それぞれ表面に高さ20~300μmの凸部を有することが好ましい。前記分離ロールは、前記紙送りロールよりも表面粗さRzが大きいことが好ましい。前記分離ロールは、前記紙送りロールよりも表面の摩擦係数が小さいことが好ましい。
【0009】
そして、本発明に係る紙送りロールは、上記給紙装置に用いられる紙送りロールである。また、本発明に係る分離ロールは、上記給紙装置に用いられる分離ロールである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る給紙装置によれば、紙送りロールおよび分離ロールが、軸体と、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含む発泡弾性層と、前記表層とにより構成され、発泡弾性体層の気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下であり、発泡弾性体層は、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含むことで、気泡の長径と短径の平均アスペクト比を1.2以下にすることができる。そのような気泡を有する発泡弾性体は、表層表面の粗さや凸形状の偏摩耗を防ぐことができる。また、紙送りロール及び分離ロールのそれぞれの表層は、表面粗さRzが20μm以上であり、表層表面のJIS-A硬度の差が5度以上であり、紙送りロールと分離ロールの間の摩擦係数が1.0以上3.0以下であることから、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る給紙装置の模式図である。
【
図2】
図1に示す給紙装置の紙送り動作の図である。
図2(a)は、1枚の用紙がロール間に到着する前の状態を示したものであり、
図2(b)は、1枚の用紙がロール間に到着したときの動作を示したものである。
【
図3】
図1に示す給紙装置の紙送り動作の図である。
図3(a)は、2枚の用紙がロール間に到着する前の状態を示したものであり、
図3(b)は、2枚の用紙がロール間に到着したときの動作を示したものである。
【
図4】
図4(a)は、紙送りロールの一実施形態に係る外観模式図である。
図4(b)は、分離ロールの一実施形態に係る外観模式図である。
【
図5】
図5(a)は、紙送りロールと分離ロールの噛み合い状態を示した拡大図である。
図5(b)は、互いに噛み合う紙送りロールと分離ロールの間で用紙が搬送される状態を示した拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、分離ロールが紙送りロールの表面に食い込む状態を示した拡大図である。
図6(b)は、分離ロールが食い込む紙送りロールと分離ロールの間で用紙が搬送される状態を示した拡大図である。
【
図7】
図7(a)は、表面凹凸が複数の凸部で構成される一例を示した模式断面図である。
図7(b)は、表面凹凸が複数の凹部で構成される一例を示した模式断面図である。
図7(c)は、表面凹凸が複数の凸部と複数の凹部で構成される一例を示した模式断面図である。
【
図8】紙送りロールと分離ロールの間の摩擦係数の測定方法を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る給紙装置について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る給紙装置10は、紙送りロール12(フィードロール)と、分離ロール14(リタードロール)と、を備える。紙送りロール12は、軸体12aと、軸体12aの外周に形成された発泡弾性体層12bと、発泡弾性体層の外周に形成された表層12cと、を有する。分離ロール14は、軸体14aと、軸体14aの外周に形成された発泡弾性体層14bと、発泡弾性体層の外周に形成された表層14cと、を有する。紙送りロール12は、図示しない駆動源(モータ)からの動力を受けて回転駆動され、用紙Pを搬送する機能を有する。分離ロール14は、図示しない付勢部材(ばねなど)により所定の圧力で紙送りロール12に圧接される。また、分離ロール14は、図示しないトルクリミッターが内蔵され、用紙Pの搬送方向(矢印の方向)と反対の方向にブレーキトルクが付与されるように構成されている。
【0014】
搬送される用紙は、給紙カセット16内に積載されている。積載された用紙Pの上面には、引込ロール18(ピックアップロール)の表面が摩擦接触しており、引込ロール18によって、給紙カセット16から紙送りロール12に向けて用紙Pを順に繰り出すように構成されている。引込ロール18は、軸体18aと、軸体18aの外周に形成された弾性体層18bと、を有する。引込ロール18は、図示しない連結部材(ギアやタイミングベルトなど)によって紙送りロール12の駆動に連動して回転するように構成されている。
尚、上記構成は例示であり、上記構成に限定されない。
【0015】
紙送りロール12の回転駆動に伴い、引込ロール18が回転し、給紙カセット16から紙送りロール12に向けて用紙Pが1枚ずつ繰り出される。
図2(a)に示すように、紙送りロール12は、用紙Pが到着する前から回転駆動している。紙送りロール12に圧接される分離ロール14は、紙送りロール12の回転に伴い、紙送りロール12と分離ロール14の間(ロール間)の摩擦力により、ブレーキトルクに逆らって従動回転する。繰り出された1枚の用紙Pがロール間に到着すると、
図2(b)に示すように、ロール間を通って用紙Pが搬出される。
【0016】
給紙カセット16から紙送りロール12に向けて用紙Pが2枚繰り出されたときには、
図3(a)に示すように、用紙P1、P2が到着する前においては、紙送りロール12は回転駆動し、分離ロール14は、紙送りロール12の回転に伴い、ブレーキトルクに逆らって従動回転する。繰り出された2枚の用紙P1、P2がロール間に到着すると、
図3(b)に示すように、分離ロール14は2枚の用紙P1、P2を介して紙送りロール12に接触する状態となる。2枚の用紙P1、P2の間に働く摩擦力は小さいため、ブレーキトルクによって分離ロール14は紙送りロール12の回転には従動せず、停止する。これにより、紙送りロール12に接触する用紙P1は紙送りロール12の回転に伴い、ロール間を通って搬出される一方で、分離ロール14に接触する用紙P2は搬出されない。これにより、用紙Pの重送が抑えられる。
【0017】
紙送りロール12は、表層12cの外周表面に表面凹凸を有する。この表面凹凸によって、紙送りロール12は、表面粗さRz20μm以上に構成されている。紙送りロール12の表層表面粗さRzは、紙送りロール12の表層12cの外周面における表面粗さRzである。紙送りロール12の表面粗さRzは、十点平均粗さであり、JIS B0601(1994)に準拠して測定される。上記表面凹凸は、任意の凹凸で構成することができる。上記表面凹凸は、複数の凸部によって形成されるものであってもよいし、複数の凹部によって形成されるものであってもよいし、シボ形状のような複数の凸部と複数の凹部によって形成されるものであってもよい。
【0018】
また、同様に、分離ロール14は、表層14cの外周表面に表面凹凸を有する。この表面凹凸によって、分離ロール14は、表層表面粗さRz20μm以上に構成されている。分離ロール14の表面粗さRzは、分離ロール14の表層14cの外周面における表面粗さRzである。分離ロール14の表層表面粗さRzは、十点平均粗さであり、JIS B0601(1994)に準拠して測定される。上記表面凹凸は、任意の凹凸で構成することができる。上記表面凹凸は、複数の凸部によって形成されるものであってもよいし、複数の凹部によって形成されるものであってもよいし、シボ形状のような複数の凸部と複数の凹部によって形成されるものであってもよい。
【0019】
図4(a)には、紙送りロール12の一実施形態に係る外観模式図を示す。
図4(a)に示すように、紙送りロール12は、表層12cの外周表面に複数の凸部12dを有する。紙送りロール12の外周面には、複数の凸部12dにより表面凹凸が設けられている。
【0020】
図4(a)では、複数の凸部12dは、半球状の凸部で構成されている。また、
図4(a)では、複数の凸部12dは、発泡弾性体層12bの外周表面に千鳥状に規則正しく配置されている。紙送りロール12の軸方向Xに並ぶ一列目の凸部12dと凸部12dの間に紙送りロール12の軸方向Xに並ぶ二列目の凸部12dが配置され、紙送りロール12の軸方向Xに並ぶ二列目の凸部12dと凸部12dの間に紙送りロール12の軸方向Xに並ぶ三列目の凸部12dが配置され、紙送りロール12の軸方向Xに並ぶ三列目の凸部12dと凸部12dの間に紙送りロール12の軸方向Xに並ぶ四列目の凸部12dが配置されており、凸部12dが互い違いに配列されている。複数の凸部12dは、表層12cの周面において、紙送りロール12の軸方向Xに配列されているが、紙送りロール12の軸方向Xに対し45°の角度の方向にも配列されている。なお、複数の凸部12dは、半球状の凸部に限定されるものではない。また、複数の凸部12dは、規則正しく配置されていなくてもよいし、配列されていなくてもよい。
【0021】
紙送りロール12は、表面粗さRz20μm以上に構成されている。上記表面粗さRzが20μm以上であることで、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みを大きくすることができる。また、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みを大きくするなどの観点から、紙送りロール12の表面粗さRzは、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。一方、紙送りロール12の表面粗さRzは、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みが大きくなりすぎないようにするなどの観点から、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0022】
紙送りロール12において、凸部12dの高さは、紙送りロール12の表面粗さRzを大きくする、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みを大きくするなどの観点から、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。また、凸部12dの高さは、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みが大きくなりすぎないようにするなどの観点から、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0023】
紙送りロール12は、表面のJIS-A硬度が20~80度の範囲内に構成されていることが好ましい。より好ましくは30~70度の範囲内である。紙送りロール12の表面とは、表層12cの外周面である。紙送りロール12の表面硬度は、表層12cの材料構成、表層12cの厚みなどにより調整することができる。紙送りロール12の表面のJIS-A硬度が20度以上であると、摩耗が抑えられやすい。紙送りロール12の表面のJIS-A硬度が80度以下であると、用紙へのダメージ(用紙の削れなど)が抑えられやすく、画質の悪化が抑えられやすい。
【0024】
紙送りロール12の表層12cは、給紙や搬送用のロール全般に用いられる公知のゴム材質を含む未加硫ゴム組成物を加硫して得られる加硫物からなるものである。そのようなゴム材質としては、ポリウレタンゴム、EPDM、塩素化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0025】
ここで、紙送りロール12の表層12cは、発泡弾性体層12bが接合し易いゴム材質を選択することが好ましい。表層12cにポリウレタンゴム、EPDMを選択した場合には、接着剤等を用いる必要がなくなり、製造工程を簡略化してコストを下げることができる。
【0026】
紙送りロールの表層12cに用いられるポリウレタンゴムとしては、未架橋の熱硬化性ウレタンゴムを架橋硬化して得られ、その未架橋の熱硬化性ウレタンゴムの形成材料としては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG),ポリイソシアネート,鎖延長剤,可塑剤等の各成分を含有するものがあげられる。そして、架橋硬化して得られる表層の硬度の調整は、ポリプロピレングリコール(PPG)に対する鎖延長剤および可塑剤の配合割合を調整することにより行われる。
【0027】
紙送りロール12の表層12cは、導電性あるいは半導電性を有するものであってもよいし、導電性あるいは半導電性を有しないものであってもよい。導電性あるいは半導電性を有する発泡弾性体層の体積抵抗率は、102~1015Ω・cm、103~1014Ω・cm、104~1013Ω・cmの範囲などである。紙送りロール12の表層12cが導電性あるいは半導電性を有するものであると、紙送りロール12の表層12cの表面残留電荷を低く抑えて紙粉の付着を抑えやすい。
【0028】
紙送りロール12の表層12cは、低電気抵抗化の観点から、導電剤を含んでいてもよい。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c-TiO2、c-ZnO、c-SnO2(c-は、導電性を意味する。)などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。
【0029】
紙送りロール12の表層12cの厚みは、特に限定されるものではなく、0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0030】
紙送りロール12の発泡弾性体層12bは、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含む材料で構成されている。
【0031】
ここで、ポリシロキサン変性EPDMとは、ケイ素化合物のSiH基がEPDMの分子内にある2重結合に反応し、ケイ素化合物を媒介とした分子間結合が形成された重合体である。付加反応を促進させるための触媒や反応促進剤等を用いてもよいし、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。
【0032】
発泡弾性体用未加硫ゴム組成物は、発泡弾性体を製造するための発泡剤を含んでいる。このような発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物等が挙げられる。
【0033】
ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含み、とは、ポリシロキサン変性EPDMが、ポリシロキサン変性EPDMと他のゴム材料全量に対して60%以上であればよい。
残りの成分として例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)等のエチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム;天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム;ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
発泡弾性体層は、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含むことで、気泡の長径と短径の平均アスペクト比を1.2以下にすることができる。
そのような気泡を有する発泡弾性体は、表層表面の粗さや凸形状の偏摩耗を防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
ポリシロキサン変性EPDMの割合が60%未満だと、アスペクト比が1.2以下にならず、長期使用後に表層表面の粗さや凸形状に編摩耗が発生し、紙搬送性が悪化して、紙詰まりが発生する。
【0034】
紙送りロール12の発泡弾性体層12bの気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、1.0~1.1の範囲である。
紙送りロール12の発泡弾性体層12bの気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下であると、紙の取り込み時と送り出し時に、紙送りロールと分離ロールから用紙に均一に圧力を掛けることができるため、表面粗さや凹凸形状の偏摩耗を防ぐことができ、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
【0035】
紙送りロール12の発泡弾性体層12b、表層12cは、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0036】
紙送りロール12の軸体12aの材料としては、ポリアセタール(POM)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ナイロン等の合成樹脂、または、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料を挙げることができる。軸体12aは、中空状に形成されていても良いし、中実体であっても良い。
【0037】
紙送りロール12の弾性層12bは、軸体12aをロール成形金型の中央部に同軸的に配置し、未架橋のポリシロキサン変性EPDM組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型して軸体12aの外周に発泡弾性体層12bを形成する。表層12cは、前記軸体12aと発泡弾性層12bの形成体を金型の中空部に同軸的に設置し、例えば、未架橋のウレタン組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するなどにより、発泡弾性体層12bの外周に表層12cを形成することができる。成形金型は、その内周面に凸部12dに対応する形状の凹部が形成されたものを用いることができる。発泡弾性体層12cの凸部12dは、例えば、成形金型による型転写によって形成することができる。
【0038】
図4(b)には、分離ロール14の一実施形態に係る外観模式図を示す。
図4(b)に示すように、分離ロール14は、表層14cの外周表面に複数の凸部14dを有する。分離ロール14の外周面には、複数の凸部14dにより表面凹凸が設けられている。
【0039】
図4(b)では、複数の凸部14dは、半球状の凸部で構成されている。また、
図4(b)では、複数の凸部14dは、表層14cの外周表面に千鳥状に規則正しく配置されている。具体的には、分離ロール14の軸方向Xに並ぶ一列目の凸部14dと凸部14dの間に分離ロール14の軸方向Xに並ぶ二列目の凸部14dが配置され、分離ロール14の軸方向Xに並ぶ二列目の凸部14dと凸部14dの間に分離ロール14の軸方向Xに並ぶ三列目の凸部14dが配置され、分離ロール14の軸方向Xに並ぶ三列目の凸部14dと凸部14dの間に分離ロール14の軸方向Xに並ぶ四列目の凸部14dが配置されており、凸部14dが互い違いに配列されている。複数の凸部14dは、表層14cの周面において、分離ロール14の軸方向Xに配列されているが、分離ロール14の軸方向Xに対し45°の角度の方向にも配列されている。なお、複数の凸部14dは、半球状の凸部に限定されるものではない。また、複数の凸部14dは、規則正しく配置されていなくてもよいし、配列されていなくてもよい。
【0040】
分離ロール14は、表面粗さRz20μm以上に構成されている。上記表面粗さRzが20μm以上であることで、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みを大きくすることができる。また、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みを大きくするなどの観点から、分離ロール14の表面粗さRzは、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。一方、分離ロール14の表面粗さRzは、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みが大きくなりすぎないようにするなどの観点から、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0041】
分離ロール14において、凸部14dの高さは、分離ロール14の表面粗さRzを大きくする、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みを大きくするなどの観点から、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。また、凸部14dの高さは、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みが大きくなりすぎないようにするなどの観点から、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0042】
分離ロール14は、表面のJIS-A硬度が20~80度の範囲内に構成されていることが好ましい。より好ましくは30~70度の範囲内である。分離ロール14の表面とは、表層14cの外周面である。分離ロール14の表面硬度は、表層14cの材料構成、表層14cの厚みなどにより調整することができる。分離ロール14の表面のJIS-A硬度が20度以上であると、摩耗が抑えられやすい。分離ロール14の表面のJIS-A硬度が80度以下であると、用紙へのダメージ(用紙の削れなど)が抑えられやすく、画質の悪化が抑えられやすい。
【0043】
分離ロール14の表層14cは、給紙や搬送用のロール全般に用いられる公知のゴム材質を含む未加硫ゴム組成物を加硫して得られる加硫物からなるものである。そのようなゴム材質としては、ポリウレタンゴム、EPDM、塩素化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0044】
ここで、分離ロール14の表層14cは、発泡弾性体層12bおよび発泡弾性層14bが接合し易いゴム材質を選択することが好ましい。表層14cにポリウレタンゴム、EPDMを選択した場合には、接着剤等を用いる必要がなくなり、製造工程を簡略化してコストを下げることができる。
【0045】
分離ロールの表層14cに用いられるポリウレタンゴムとしては、未架橋の熱硬化性ウレタンゴムを架橋硬化して得られ、その未架橋の熱硬化性ウレタンゴムの形成材料としては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG),ポリイソシアネート,鎖延長剤,可塑剤等の各成分を含有するものがあげられる。そして、架橋硬化して得られる表層の硬度の調整は、ポリプロピレングリコール(PPG)に対する鎖延長剤および可塑剤の配合割合を調整することにより行われる。
【0046】
分離ロール14の表層14cは、導電性あるいは半導電性を有するものであってもよいし、導電性あるいは半導電性を有しないものであってもよい。導電性あるいは半導電性を有する表層の体積抵抗率は、102~1015Ω・cm、103~1014Ω・cm、104~1013Ω・cmの範囲などである。分離ロール14の表層14cが導電性あるいは半導電性を有するものであると、分離ロール14の表層14cの表面残留電荷を低く抑えて紙粉の付着を抑えやすい。
【0047】
分離ロール14の表層14cは、低電気抵抗化の観点から、導電剤を含んでいてもよい。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、c-TiO2、c-ZnO、c-SnO2(c-は、導電性を意味する。)などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。
【0048】
分離ロール14の表層14cの厚みは、特に限定されるものではなく、0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0049】
分離ロール14の発泡弾性体層14bは、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含む材料で構成されている。
【0050】
ここで、ポリシロキサン変性EPDMとは、ケイ素化合物のSiH基がEPDMの分子内にある2重結合に反応し、ケイ素化合物を媒介とした分子間結合が形成された重合体である。付加反応を促進させるための触媒や反応促進剤等を用いてもよいし、必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。
【0051】
発泡弾性体用未加硫ゴム組成物は、発泡弾性体を製造するための発泡剤を含んでいる。このような発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物等が挙げられる。
【0052】
ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含み、とは、ポリシロキサン変性EPDMが、ポリシロキサン変性EPDMと他のゴム材料全量に対して60%以上であればよい。
残りの成分として例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、エチレン・プロピレンランダム共重合体(EPR)等のエチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム;天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のイソプレン系ゴム;ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等の共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
発泡弾性体層は、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含むことで、気泡の長径と短径の平均アスペクト比を1.2以下にすることができる。そのような気泡を有する発泡弾性体は、表層表面の粗さや凸形状の偏摩耗を防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
ポリシロキサン変性EPDMの割合が60%未満だと、アスペクト比が1.2以下にならず、長期使用後に表層表面の粗さや凸形状に編摩耗が発生し、紙搬送性が悪化して、紙詰まりが発生する。
【0053】
分離ロール14の発泡弾性体層14bの気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、1.0~1.1の範囲である。
分離ロール14の発泡弾性体層14bの気泡の長径と短径の平均アスペクト比が1.2以下であると、紙の取り込み時と送り出し時に、紙送りロールと分離ロールから用紙に均一に圧力を掛けることができるため、表面粗さや凹凸形状の偏摩耗を防ぐことができ、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
【0054】
分離ロール14の発泡弾性体層14b、表層14cは、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0055】
分離ロール14の軸体14aの材料としては、ポリアセタール(POM)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ナイロン等の合成樹脂、または、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料を挙げることができる。軸体14aは、中空状に形成されていても良いし、中実体であっても良い。
【0056】
分離ロール14の弾性層14bは、軸体14aをロール成形金型の中央部に同軸的に配置し、未架橋のポリシロキサン変性EPDM組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型して軸体14aの外周に発泡弾性体層14bを形成する。表層14cは、前記軸体14aと発泡弾性層14bの形成体を金型の中空部に同軸的に設置し、例えば、未架橋のウレタン組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するなどにより、発泡弾性体層14bの外周に表層14cを形成することができる。成形金型は、その内周面に凸部14dに対応する形状の凹部が形成されたものを用いることができる。発泡弾性体層14cの凸部14dは、例えば、成形金型による型転写によって形成することができる。
【0057】
上記するように、紙送りロール12と分離ロール14は、それぞれ表層12c、14cの外周表面に複数の凸部12d、14dを有する。このため、紙送りロール12と分離ロール14は、
図5(a)に示すように、紙送りロール12の表層12cの外周表面と分離ロール14の表層14cの外周表面が、紙送りロール12の凸部12dと分離ロール14の凸部14dによって噛み合う状態となる。そして、紙送りロール12と分離ロール14は、それぞれ表面粗さRzが20μm以上である。このため、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みは、大きいものとなる。そうすると、
図5(b)に示すように、用紙Pの搬送時には、用紙Pが紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みの間に配置され、用紙Pには紙送りロール12の凸部12dや分離ロール14の凸部14dから押圧力を受けて変形が生じる。このアンカー効果により、用紙Pの搬送性(用紙Pの搬送方向への推進力)が向上する。また、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みが大きいと、紙送りロール12や分離ロール14の表面に紙粉が付着しても、噛み込みの影響で、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が低下しにくい。
【0058】
そして、紙送りロール12および分離ロール14は、表面のJIS-A硬度の差が5度以上に構成されている。紙送りロール12と分離ロール14の表面硬度が異なり、分離ロール14が紙送りロール12に圧接されることから、
図6(a)に示すように、一方が他方の表面に食い込む形となる(
図6(a)では、分離ロール14が紙送りロール12の表面に食い込む形で示している。)。これにより、紙送りロール12と分離ロール14のニップ面積(接触面積)が大きくなり、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が大きくなる。そして、
図6(b)に示すように、一方が他方の表面に食い込む状態にある紙送りロール12と分離ロール14の間に用紙Pが配置されることから、紙送りロール12と用紙Pとの間の接触面積および分離ロール14と用紙Pとの間の接触面積も大きくなる。これにより、用紙Pの搬送性(用紙Pの搬送方向への推進力)が向上する。このような効果は、上記硬度差5度以上において、発揮される。
【0059】
紙送りロール12と分離ロール14の表面硬度差は、用紙Pの搬送性の向上の観点から、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは15度以上である。一方、紙送りロール12や分離ロール14の摩耗が抑えられやすいなどの観点から、紙送りロール12と分離ロール14の表面硬度差は、より好ましくは50度以下、さらに好ましくは40度以下である。
【0060】
紙送りロール12と分離ロール14は、いずれのロールの表面硬度が高くてもよいが、用紙の重送が抑えられやすいなどの観点から、分離ロール14が紙送りロール12よりも表面硬度が大きいことが好ましい。
【0061】
そして、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数は、1.0以上3.0以下に構成されている。上記摩擦係数が1.0以上であることで、用紙Pの搬送性(用紙Pの搬送方向への推進力)が向上する。また、この観点から、上記摩擦係数は、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。一方、上記摩擦係数が3.0超であると、上記摩擦係数が大きすぎて、用紙Pが紙送りロール12と分離ロール14の間に詰まりやすくなる。そして、上記摩擦係数を小さく抑える観点から、上記摩擦係数は、より好ましくは2.7以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0062】
紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数は、紙送りロール12の表層12cの材料構成、紙送りロール12の表層12cの厚み、紙送りロール12の表層12cの凸部12dの構成、紙送りロール12の表面粗さRz、分離ロール14の表層14cの材料構成、分離ロール14の表層14cの厚み、分離ロール14の表層14cの凸部14dの構成、分離ロール14の表面粗さRz、紙送りロール12と分離ロール14の硬度差などを調整することにより、所望の範囲に設定することができる。
【0063】
給紙装置10において、分離ロール14は、全体の耐久性が向上するなどの観点から、紙送りロール12よりも表面粗さRzが大きいことが好ましい。
【0064】
以上に示す給紙装置10では、紙送りロール12と分離ロール14の発泡弾性体層が、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含むことで、気泡の長径と短径の平均アスペクト比を1.2以下にすることができる。そのような気泡を有する発泡弾性体は、表層表面の粗さや凸形状の偏摩耗を防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられる。
また、給紙装置10では、紙送りロール12と分離ロール14がそれぞれ表面粗さRz20μm以上であることで、紙送りロール12と分離ロール14の噛み込みが大きいものとなり、用紙Pの搬送性(用紙Pの搬送方向への推進力)が向上する。さらに、紙送りロール12や分離ロール14の表面に紙粉が付着しても、大きい噛み込みの影響で、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が低下しにくい。そして、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が低下しにくいため、紙送りロール12と分離ロール14の間がすべりにくくなる。また、紙送りロール12と分離ロール14の、表面のJIS-A硬度差が5度以上であることで、紙送りロール12と分離ロール14のニップ面積(接触面積)が大きくなり、用紙Pの搬送性(用紙Pの搬送方向への推進力)が向上する。さらに、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が大きくなるため、紙送りロール12と分離ロール14の間がすべりにくくなる。さらに、紙送りロール12と分離ロール14の間の摩擦係数が1.0以上3.0以下であることで、紙送りロール12と分離ロール14の間がすべりにくくなる。これらが互いに作用することで、用紙Pの搬送性(用紙Pの搬送方向への推進力)が向上し、紙送りロール12と分離ロール14の間がすべりにくくなる結果、長期使用後の紙詰まりが抑えられる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0066】
図4(a)の紙送りロール12は、複数の凸部12dにより表層12cの外周表面に表面凹凸が設けられているが、上記表面凹凸は、任意の凹凸で構成することができる。上記表面凹凸は、
図7(a)に示すように、複数の凸部21によって形成されるものであってもよいし、
図7(b)に示すように、複数の凹部22によって形成されるものであってもよいし、
図7(c)に示すように、シボ形状のような複数の凸部23と複数の凹部24によって形成されるものであってもよい。シボ形状とは、シワ模様をいう。シボ形状は、放電加工などで内面を加工された成形金型を用いて形成することができる。シボ形状としては、皮革(ウロコ)、梨地、木目、岩目、砂目、布目、絹目、筋目(ヘアライン)、幾何学模様などが挙げられる。
【0067】
同様に、
図4(b)の分離ロール14は、複数の凸部14dにより表層14cの外周表面に表面凹凸が設けられているが、上記表面凹凸は、任意の凹凸で構成することができる。上記表面凹凸は、
図7(a)に示すように、複数の凸部21によって形成されるものであってもよいし、
図7(b)に示すように、複数の凹部22によって形成されるものであってもよいし、
図7(c)に示すように、シボ形状のような複数の凸部23と複数の凹部24によって形成されるものであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、紙送りロール12および分離ロール14の複数の凸部12d、14dは半球状とされているが、複数の凸部12d、14dの形状は、半球状の凸部に限定されず、種々の形状のものであってもよい。なお、球状とは、略球状であり、曲面を有する球状に近い形状のものであればよい。球状とは、真球状、楕円球状が含まれる。半球状とは、球の中心を通る面で切断された球の半分の形状のものや、球の中心を通らない面で切断された、球の半分よりも大きい形状のもの、球の半分よりも小さい形状のものも含まれる。凸部12d、14dが半球状であると、用紙Pとの接触面が曲面なので、比較的紙粉の発生が抑えられ、また、紙送り性能にも優れる。
【0069】
凸部12d、14dの形状としては、不定形、柱体、錐体、球台、楔形などが挙げられる。柱体としては、円柱体、楕円柱体、角柱体(四角柱体、五角柱体など)、扇形柱体、D形柱体、ギア形柱体などが挙げられる。また、柱体の頭部が斜面状、曲面状に切り取られたような形状の截頭柱体(截頭円柱体、截頭角柱体など)であってもよい。錐体としては、円錐体、楕円錐体、角錐体(四角錐体、五角錐体など)などが挙げられる。また、錐体の頭部が平面状(錐台)、斜面状、曲面状に切り取られたような形状の截頭錐体(截頭円錐体、截頭角錐体など)であってもよい。球台は、球体が二つの平行な平面で切り取られたような形状の立体である。球面が二つの平行な平面に交わるときに、これら二平面に挟まれた球面の部分が球帯であり、球帯とこれらの二平面で囲まれた立体が球台である。球台の二平面のうちの一方の平面は球の中心を通る面であってもよいし、球台の二平面の両方が球の中心を通らない面であってもよい。球台の二平面は、平面に近い面であればよく、例えば球帯よりも曲率半径の大きい曲面であってもよい。また、円柱体、楕円柱体、角柱体、扇形柱体、D形柱体、ギア形柱体、錐台、球台の各上底(上側平面)は、研磨面であってもよい。研磨面は、各上底を研磨することにより形成することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、紙送りロール12および分離ロール14の複数の凸部12d、14dは、表層12c、14cの周面に千鳥状に配置されているが、複数の凸部12d、14dは、表層12c、14cの周面に、均一に分布・配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。また、配列するように配置されていてもよい。凸部12d、14dが表層12c、14cの周面に沿って配列していると、列と列の間に溝が形成され、発生した紙粉の逃げ道となって紙粉を排出しやすい。凸部12d、14dは、表層12c、14cの周面に沿って周方向に配列していてもよいし、周方向とは異なる方向に配列していてもよい。周方向とは異なる方向とは、表層12c、14cの周面に沿って周方向に対し所定の角度の方向に沿って配列している形態などをいう。また、凸部12d、14dは、表層12c、14cの周面に沿ってらせん状に配列してもよい。
【実施例0071】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0072】
(発泡弾性体層の材料)
<材料1>
ポリシロキサン変性EPDM(信越化学工業製「SPE-1731U」)100質量部に、充填材として炭酸カルシウム(備北粉化製「BF300」)50質量部と、架橋剤として硫黄(鶴見化学「粉末硫黄」)2質量部と、加硫促進剤(大内新興化学製「ノクセラーDM」)2質量部、加硫促進剤(大内新興化学製「ノクセラーTET」)1質量部、酸化亜鉛(三井金属製「酸化亜鉛2種」)5質量部およびステアリン酸(日本油脂製「つばき」)1質量部と、パラフィン系可塑剤(出光興産製「PW-90」)100質量部と、発泡剤(松本油脂製薬製「F-50」)1質量部と、を6インチロールで混練することにより得た。
<材料2>
ポリシロキサン変性EPDMからEPDM(住友化学製「エスプレン670F」に変更した以外は、材料1と同様に調整した。
【0073】
実施例1~7,10(分離ロールのみ)11(紙送りロールのみ)、比較例1~6
(成形金型の調整)
内径20mmの円筒形の外層用成型金型を準備した。準備した外層用成形金型の内周面に対して、放電加工機(三菱電機社製「DIAX VX10」)による放電加工を行った。上記放電加工は、成形される表層の表面に高さ100μmの凸形状を付与するために行った。上記放電加工の条件により、成形される表層の表面粗さRzを調整した。
【0074】
(紙送りロール、分離ロールの作製)
実施例1~7,10(分離ロールのみ)、11(紙送りロールのみ)、比較例1~6では、内径12mmの円筒形の内層用成型金型に直径6mmのマンドレルを装着した。この金型内に、内層用のポリシロキサン変性EPDM組成物を加圧注入した。その後、金型を150℃で加熱することにより、内層用のポリシロキサン変性EPDM組成物を発泡させるとともに架橋させ、発泡ゴムからなる内層を形成した。加熱後、マンドレルの外周を被覆するように内層が設けられた成形体を金型から取り出した。
【0075】
続いて、上記成形金型の調整で得られた内径20mmの円筒形の金型に、上記で得られた内層を装着した。この金型内に、上記で調製した液状のウレタンゴム組成物を流し込んだ。その後、金型を120℃で加熱することによりウレタンゴム組成物を硬化させ、ウレタンゴムからなる外層を形成した。加熱後、内層の外周に外層が形成された円筒状の成形体を金型から取り出した。最後に、円筒状の成形体の孔に金属製のシャフトを圧入して挿通することで、実施例1~7,10(分離ロールのみ)、11(紙送りロールのみ)、比較例1~6の給紙ローラを作製した。
【0076】
実施例8,9,10(紙送りロールのみ)、11(分離ロールのみ)、比較例7では、成形される表層の凸部高さがそれぞれ、20μm(実施例8)、300μm(実施例9)、20μm(実施例10(紙送りロールのみ)及び、実施例11(分離ロールのみ))、10μm(比較例7)となるように、上記成形金型の放電加工の条件を調整した。
【0077】
上記実施例、比較例の紙送りロール、分離ロールの摩擦係数は、材料組成、により調整した。
【0078】
作製した紙送りロールおよび分離ロールを用い、耐久性の評価をした。その結果をロール構成とともに表に示す。
【0079】
(平均アスペクト比の測定)
実施例及び比較例のポリシロキサン変性EPDM発泡体に対して、軸体方向と垂直方向の断面における気泡の長径と短径のアスペクト比(長径/短径)を測定した。アスペクト比は、光学顕微鏡で軸体方向と垂直な断面における気泡の断面形状を撮影し、20個の気泡の縦(軸体と垂直方向)と横(軸体と平行方向)の寸法を計測し、20個の気泡に対してそれぞれ平均し、縦の平均値/横の平均値をアスペクト比とした。
【0080】
(摩擦係数の測定)
ロール間摩擦係数は、
図8に示すように、回転自在に設けられた紙送りロール1(軸体半径r1=6mm、ロール半径r2=10mm)に対し、回転しないように固定された分離ロール2(軸体半径6mm、ロール半径10mm)を荷重N=300gfで圧接し、紙送りロール1の軸体1aに巻き付けた紐3の端にロードセル4を取付け、紐3が水平になるようにして、180mm/secの速度で紐3を引っ張り、その引張力Fを測定することにより、算出した。ロール間摩擦係数μは、以下の式(1)から算出した。
μ=(F×r1/r2)/N ・・・(1)
【0081】
(表面硬度の測定)
紙送りロールの表面硬度は、紙送りロールの表層表面のJIS-A硬度とした。同様に、分離ロールの表面硬度は、分離ロールの表層表面のJIS-A硬度とした。ロール間硬度差は、分離ロールの表層表面のJIS-A硬度と紙送りロールの表層表面のJIS-A硬度の差で表した。
【0082】
(表面粗さの測定)
紙送りロールの表面粗さRzは、紙送りロールの表層表面の表面粗さRzとした。同様に、分離ロールの表面粗さRzは、分離ロールの表層表面の表面粗さRzとした。表面粗さRzは、十点平均粗さであり、JIS B0601(1994)に準拠して測定した。
【0083】
(耐久性の評価)
紙送りロールおよび分離ロールを、FRR方式の給紙システムを持った市販の複写機に組み込み、紙送り性の評価を行った。用紙には市販のPPC用紙を用い、30万枚通紙を行い、紙詰まりの発生回数を測定した。紙詰まりの発生回数が1回以下のものを「A」、紙詰まりの発生回数が2回以上4回以下のものを「B」、紙詰まりの発生回数が5回以上6回以下のものを「C」、紙詰まりの発生回数が7回以上10回以下のものを「D」、紙詰まりの発生回数が11回以上のものを「E」とした。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
比較例1~3は、発泡弾性体層の材料がポリシロキサン変性EPDMでは無いため、発泡弾性層のアスペクト比が1.2以下では無く、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例4は、紙送りロールと分離ロールのロール間摩擦係数が1.0未満であり、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例5は、紙送りロールと分離ロールのロール間摩擦係数が3.0超であり、紙送りロールと分離ロールの噛み込みが強く、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例6は、紙送りロールと分離ロールのロール間硬度差が5度未満で小さく、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。比較例7は、紙送りロールと分離ロールの表面粗さRzが20μm未満で小さく、30万枚通紙の耐久試験において、紙詰まりが多かった。
【0088】
実施例および比較例によれば、紙送りロールおよび分離ロールが、ポリシロキサン変性EPDMを主成分として含む発泡弾性体層であることで、気泡の長径と短径の平均アスペクト比を1.2以下にすることができる。
紙送りロールおよび分離ロールが、それぞれ表面がポリウレタンで構成され、それぞれ表面粗さRzが20μm以上であり、表面のJIS-A硬度の差が5度以上であり、紙送りロールと分離ロールの間の摩擦係数が1.0以上3.0以下であると、30万枚通紙の耐久試験において紙詰まりが抑えられ、そのような気泡を有する発泡弾性体は、表層表面の粗さや凸形状の偏摩耗を防ぐことができる。その結果、長期使用後であっても紙搬送性に優れ、紙詰まりが抑えられることがわかる。
【0089】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。