(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082852
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20220527BHJP
G02B 6/126 20060101ALI20220527BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
G02B6/12 341
G02B6/126
G02B6/122 311
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020193989
(22)【出願日】2020-11-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513065077
【氏名又は名称】技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡山 秀彰
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB16
2H147AB21
2H147AC05
2H147BB02
2H147BC05
2H147BC13
2H147BE15
2H147CA22
2H147CA23
2H147CB03
2H147DA11
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FC03
(57)【要約】
【課題】構成を複雑にすることなく、それぞれの偏波に対する特性のばらつきを低減する。
【解決手段】支持基板と、支持基板上に形成されるクラッドと、クラッド中に埋設され、支持基板の上面に平行に設けられる、光導波路コアとを備えて構成され、TE(Transverse Electric)偏波の特定の波長を選択する、第1波長選択部と、TM(Transverse Magnetic)偏波とTE偏波の間の偏波変換を行う偏波変換部と、TE偏波の特定の波長を選択する、第2波長選択部とをこの順に直列に配置して構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に形成されるクラッドと、
前記クラッド中に埋設され、前記支持基板の上面に平行に設けられる、光導波路コアとを備える光導波路素子であって、
特定の波長の、TE(Transverse Electric)偏波を選択する、第1波長選択部と、
TM(Transverse Magnetic)偏波とTE偏波の間の偏波変換を行う偏波変換部と、
特定の波長のTE偏波を選択する、第2波長選択部と
をこの順に直列に配置したことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部は、
交互に直列に接続された、n個(nは2以上の整数)のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え、
前記グレーティング部は、特定の波長の0次モードのTE偏波を、1次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の1次モードのTE偏波を、0次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の0次モードのTE偏波の位相を整合させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記偏波変換部において、
前記光導波路コアが、前記基板の上面に直交する深さ方向、及び、前記深さ方向と光の伝播方向に直交する横方向に関して、いずれも非対称である
ことを特徴とする請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記偏波変換部において、
前記光導波路コアは、第1コア及び第2コアを備え、
前記第1コアに沿って、第1偏波変換素子、第1接続部及び第2接続部をこの順に備え、
前記第2コアに沿って、第3接続部、第4接続部及び第2偏波変換素子をこの順に備え、
前記第1偏波変換素子は、0次モードのTM偏波を1次モードのTE偏波に変換し、0次モードのTE偏波をそのまま伝搬させて、前記第1接続部に送り、
前記第1接続部及び前記第3接続部は、前記第1接続部を伝播する0次モードのTE偏波を、前記第2接続部に送り、及び、前記第1接続部を伝播する1次モードのTE偏波を、前記第3接続部を伝播する0次モードのTE偏波として取り出して前記第4接続部に送る、第1方向性結合器を構成し、
前記第2接続部及び前記第4接続部は、前記第2接続部を伝播する0次モードのTE偏波を、前記第4接続部を伝播する1次モードのTE偏波として取り出して前記第2偏波変換素子に送り、前記第4接続部を伝播する1次モードのTE偏波を前記第2偏波変換素子に送る、第2方向性結合器を構成し、
前記第2偏波変換素子は、1次モードのTE偏波を0次モードのTM偏波に変換し、0次モードのTE偏波をそのまま伝搬させて、前記第2波長選択部に送る
ことを特徴とする請求項2に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部は、
交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え
、
前記第1波長選択部は、
前記グレーティング部が、特定の波長の0次モードのTE偏波を、1次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の1次モードのTE偏波を、0次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の0次モードのTE偏波の位相を整合させる
ように構成され、
前記第2波長選択部は、
前記グレーティング部が、特定の波長の1次モードのTE偏波を、2次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の2次モードのTE偏波を、1次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の1次モードのTE偏波の位相を整合させる
ように構成され、
前記偏波変換部は、
0次モードのTE偏波をそのまま伝搬させ、
0次モードのTM偏波を1次モードのTE偏波に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項6】
支持基板と、
前記支持基板上に形成されるクラッドと、
前記クラッド中に埋設され、前記支持基板の上面に平行に設けられる、光導波路コアとを備える光導波路素子であって、
特定の波長のTE偏波を選択する、第1波長選択部と、
特定の波長のTE偏波を選択する、第2波長選択部と、
TE偏波の特定の波長を、TM偏波に変換して反射させる第1偏波変換部と、
TM偏波の特定の波長を、TE偏波に変換して反射させる第2偏波変換部と、
前記第1波長選択部が接続される第1入出力端、前記第2波長選択部が接続される第2入出力端、前記第1偏波変換部が接続される第3入出力端、及び、前記第2偏波変換部が接続される第4入出力端を有する偏波分離素子と
を備え、
前記偏波分離素子は、前記第1入出力端に入力された光を偏波分離して、TE偏波及びTM偏波をそれぞれ第3及び第4入出力端から出力し、前記第3及び第4入出力端からそれぞれ入力されたTM偏波及びTE偏波を第2入出力端から出力する
ことを特徴とする光導波路素子。
【請求項7】
前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部は、
交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え、
前記グレーティング部は、特定の波長の0次モードのTE偏波を、1次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の1次モードのTE偏波を、0次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の0次モードのTE偏波の位相を整合させる
ことを特徴とする請求項6に記載の光導波路素子。
【請求項8】
支持基板と、
前記支持基板上に形成されるクラッドと、
前記クラッド中に埋設され、前記支持基板の上面に平行に設けられる、光導波路コアと
を備える光導波路素子であって、
0次モードのTM偏波を1次モードのTE偏波に変換し、0次モードのTE偏波をそのまま伝播させる偏波変換部と、
特定の波長の1次モードのTE偏波を選択する、第1波長選択部と、
特定の波長の0次モードのTE偏波を選択する、第2波長選択部と
をこの順に直列に配置したことを特徴とする光導波路素子。
【請求項9】
前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部は、
交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え、
前記第1波長選択部は、
前記グレーティング部が、特定の波長の1次モードのTE偏波を、2次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の2次モードのTE偏波を、1次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の1次モードのTE偏波の位相を整合させる
ように構成され、
前記第2波長選択部は、
前記グレーティング部が、特定の波長の0次モードのTE偏波を、2次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の2次モードのTE偏波を、0次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の0次モードのTE偏波の位相を整合させる
ように構成され、
前記偏波変換部は、
0次モードのTE偏波をそのまま伝搬させ、
0次モードのTM偏波を1次モードのTE偏波に変換する
ことを特徴とする請求項8に記載の光導波路素子。
【請求項10】
支持基板と、
前記支持基板上に形成されるクラッドと、
前記クラッド中に埋設され、前記支持基板の上面に平行に設けられる、光導波路コアとを備える光導波路素子であって、
0次モードのTM偏波を1次モードのTE偏波に変換し、0次モードのTE偏波をそのまま伝播させる偏波変換部と、
特定の波長の0次モードのTE偏波を選択する、第1波長選択部と、
1次モードのTE偏波を0次モードのTE偏波に変換し、0次モードのTE偏波を1次モードのTE偏波に変換するモード変換部と、
特定の波長の0次モードのTE偏波を選択する、第2波長選択部と
をこの順に直列に配置したことを特徴とする光導波路素子。
【請求項11】
前記第1波長選択部及び前記第2波長選択部は、
交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え、
前記グレーティング部は、特定の波長の0次モードのTE偏波を、2次モードのTE偏波に変換して反射させ、及び、特定の波長の2次モードのTE偏波を、0次モードのTE偏波に変換して反射させ、
前記キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長の0次モードのTE偏波の位相を整合させる
ことを特徴とする請求項10に記載の光導波路素子。
【請求項12】
前記モード変換部が、干渉器で構成される
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の光導波路素子。
【請求項13】
前記モード変換部において、
前記光導波路コアは、第1コア及び第2コアを備え、
前記第1コアに沿って、第1接続部及び第2接続部をこの順に備え、
前記第2コアに沿って、第3接続部及び第4接続部をこの順に備え、
前記第1接続部及び前記第3接続部は、前記第1接続部を伝播する0次モードのTE偏波を、前記第2接続部に送り、及び、前記第1接続部を伝播する1次モードのTE偏波を、前記第3接続部を伝播する0次モードのTE偏波として取り出して前記第4接続部に送る、第1方向性結合器を構成し、
前記第2接続部及び前記第4接続部は、前記第2接続部を伝播する0次モードのTE偏波を、前記第4接続部を伝播する1次モードのTE偏波として取り出して出力し、前記第4接続部を伝播する1次モードのTE偏波を出力する、第2方向性結合器を構成する
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の光導波路素子。
【請求項14】
前記第2波長選択部から出力された光を受光する受光素子をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、1本の光ファイバで異なる複数の波長の光を伝送するために、光の合分波を行う素子に用いて好適な光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加入者系光アクセスシステムとして、受動光ネットワーク(PON:Passive Optcial Network)が主流となっている。PONでは、1つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)が、光ファイバ及びスターカプラを介して接続されていて、1つのOLTを複数のONUが共有する。
【0003】
PONでは、OLTとスターカプラの間において、OLTからONUへ向けた下り通信とONUからOLTに向けた上り通信とが、通常、一本の光ファイバで行われる。このため、下り通信と上り通信とが相互に干渉し合わないように、下り通信に使われる光信号波長と上り通信に使われる光信号波長とを違えている。
【0004】
従って、下り通信と上り通信のそれぞれに使われる互いに波長の異なる光信号を分波し、かつ合波するために合分波素子が必要である。一般に、OLTやONUは、波長の異なる光信号を送受信する機能を実現させるために、合分波素子としての光波長フィルタ、フォトダイオード(PD:Photodiode)、レーザーダイオード(LD:Laser Diode)を空間結合して構成される。
【0005】
空間結合させるためには、光波長フィルタ、PD、LD間で光軸合わせのためのアライメント作業が必要となる。これに対し、この光軸合わせの作業を不要とするため、導波路を利用して構成される光波長フィルタが開発されている。また、この光波長フィルタを形成するにあたり、小型化と量産性に優れることから、シリコン系素材を導波路材料として用いるシリコン(Si)導波路が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
Si導波路では、実質的に光の伝送路となる光導波路コアを、Siを材料として形成する。そして、Siよりも屈折率の低い例えばシリカ等を材料としたクラッドで、光導波路コアの周囲を覆う。このような構成により、光導波路コアとクラッドとの屈折率差が極めて大きくなるため、光導波路コア内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、曲げ半径を例えば1μm程度まで小さくした、小型の曲線導波路を実現することができる。そのため、電子回路と同程度の大きさの光回路を作成することが可能であり、光デバイス全体の小型化に有利である。
【0007】
また、Si導波路では、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の半導体装置の製造過程を流用することが可能である。そのため、チップ上に電子機能回路と光機能回路とを一括形成する光電融合(シリコンフォトニクス)の実現が期待されている。
【0008】
ところで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplex)方式を利用したPONでは、ONUごとに異なる受信波長が割り当てられる。OLTは、各ONUへの下り光信号を、送り先の受信波長に対応した送信波長でそれぞれ生成し、これらを多重して送信する。各ONUは、複数の波長で多重された下り光信号から、自身に割り当てられた受信波長の光信号を選択的に受信する。ONUでは、各々の受信波長の下り光信号を選択的に受信するために、光波長フィルタが使用される。そし
て、光波長フィルタを、上述したSi導波路によって構成する技術が実現されている。
【0009】
Si導波路を用いる光波長フィルタとしては、例えば、マッハツェンダー干渉器を用いたものやアレイ導波路グレーティングを用いたものがある。また、Si導波路を用いる光波長フィルタとして、例えば、リング共振器(例えば、特許文献2~4参照)や、グレーティング型(例えば、特許文献5参照))の光波長フィルタがある。これらの光波長フィルタは、出力波長を可変にでき、素子構造が簡単であるため使いやすいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08-163028号公報
【特許文献2】特開2003-215515号公報
【特許文献3】特開2013-093627号公報
【特許文献4】特開2006-278770号公報
【特許文献5】特開2006-330104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の光波長フィルタは、いずれも特定の偏波のみで動作する。このため、偏波分離して、偏波を揃えてから光波長フィルタに導入する方法がよく用いられる。
【0012】
このように偏波分離する場合、構成が複雑になること、及び、それぞれの偏波に対応して経路が異なることから、特性にばらつきが出る可能性がある。
【0013】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされた。この発明の目的は、同一の経路をそれぞれの偏波が通るようにすることで上述の懸念を低減する光導波路素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するためにこの発明の光導波路素子は、支持基板と、支持基板上に形成されるクラッドと、クラッド中に埋設され、支持基板の上面に平行に設けられる、光導波路コアとを備えて構成され、特定の波長のTE(Transverse Electric)偏波を選択する、第1波長選択部と、TM(Transverse Magnetic)偏波とTE偏波の間の偏波変換を行う偏波変換部と、特定の波長のTE偏波を選択する、第2波長選択部とをこの順に直列に配置して構成される。
【0015】
この発明の光導波路素子の好適実施形態によれば、第1波長選択部及び第2波長選択部は、交互に直列に接続された、n個(nは2以上の整数)のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え、グレーティング部は、特定の波長の、0次モードのTE偏波の光(TE0)を、1次モードのTE偏波の光(TE1)に変換して反射させ、及び、特定の波長のTE1をTE0に変換して反射させ、キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE0の位相を整合させる。
【0016】
さらに、この発明の光導波路素子の好適実施形態によれば、偏波変換部が、光導波路コアが、基板の上面に直交する深さ方向、及び、深さ方向と光の伝播方向に直交する横方向に関して、いずれも非対称である。
【0017】
また、この発明の光導波路素子の他の好適実施形態によれば、偏波変換部において、光導波路コアは、第1コア及び第2コアを備え、第1コアに沿って、第1偏波変換素子、第
1接続部及び第2接続部をこの順に備え、第2コアに沿って、第3接続部、第4接続部及び第2偏波変換素子をこの順に備える。
【0018】
第1偏波変換素子は、0次モードのTM偏波の光(TM0)をTE1に変換し、TE0をそのまま伝搬させて、第1接続部に送る。第1接続部及び第3接続部は、第1接続部を伝播するTE0を、第2接続部に送り、及び、第1接続部を伝播するTE1を、第3接続部を伝播するTE0として取り出して第4接続部に送る、第1方向性結合器を構成する。また、第2接続部及び第4接続部は、第2接続部を伝播するTE0を、第4接続部を伝播するTE1として取り出して第2偏波変換素子に送り、第4接続部を伝播するTE1を第2偏波変換素子に送る、第2方向性結合器を構成する。第2偏波変換素子は、TE1をTM0に変換し、TE0の光をそのまま伝搬させて、第2波長選択部に送る。
【0019】
また、この発明の光導波路素子の他の好適実施形態によれば、第1波長選択部は、グレーティング部が、特定の波長のTE0を、TE1に変換して反射させ、及び、特定の波長のTE1を、TE0に変換して反射させ、キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE0の位相を整合させるように構成される。また、第2波長選択部は、グレーティング部が、特定の波長のTE1を、2次モードのTE偏波(TE2)に変換して反射させ、及び、特定の波長のTE2を、TE1に変換して反射させ、キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE1の位相を整合させるように構成される。偏波変換部は、TE0をそのまま伝搬させ、TM0をTE1に変換する。
【0020】
また、この発明の光導波路素子は、特定の波長のTE偏波を選択する、第1波長選択部と、特定の波長のTE偏波を選択する、第2波長選択部と、特定の波長のTE偏波を、TM偏波に変換して反射させる第1偏波変換部と、特定の波長のTM偏波を、TE偏波に変換して反射させる第2偏波変換部と、第1波長選択部が接続される第1入出力端、第2波長選択部が接続される第2入出力端、第1偏波変換部が接続される第3入出力端、及び、第2偏波変換部が接続される第4入出力端を有する偏波分離素子とを備えて構成されてもよい。偏波分離素子は、第1入出力端に入力された光を偏波分離して、TE偏波及びTM偏波をそれぞれ第3及び第4入出力端から出力し、第3及び第4入出力端からそれぞれ入力されたTM偏波及びTE偏波を第2入出力端から出力する構成にされてもよい。
【0021】
また、この発明の光導波路素子の他の好適実施形態によれば、第1波長選択部及び第2波長選択部は、交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備え、グレーティング部は、特定の波長のTE0を、TE1に変換して反射し、及び、特定の波長のTE1を、TE0に変換して反射させ、キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE0の位相を整合させる。
【0022】
また、この発明の光導波路素子は、TM0をTE1に変換し、TE0をそのまま伝播させる偏波変換部と、特定の波長のTE1を選択する、第1波長選択部と、特定の波長のTE0を選択する、第2波長選択部とをこの順に直列に配置して構成されてもよい。
【0023】
この発明の光導波路素子の好適実施形態によれば、第1波長選択部及び第2波長選択部は、交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備えて構成される。
【0024】
第1波長選択部は、グレーティング部が、特定の波長のTE1を、TE2に変換して反射させ、及び、特定の波長のTE2を、TE1に変換して反射させ、キャビティ部が、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE1の位相を整合させるように構成される。また、第2波長選択部は、グレーティング部が、特定の波長のTE0を、TE2に変換して反射させ、及び、特定の波長のTE2を、TE0に変換して反射させ、キャビティ部が
、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE0の位相を整合させるように構成される。偏波変換部は、TE0をそのまま伝搬させ、TM0をTE1に変換する。
【0025】
また、この発明の光導波路素子は、TM0をTE1に変換し、TE0をそのまま伝播させる偏波変換部と、特定の波長のTE0を選択する、第1波長選択部と、TE1をTE0に変換し、TE0をTE1に変換するモード変換部と、特定の波長のTE0を選択する、第2波長選択部とをこの順に直列に配置して構成されてもよい。
【0026】
この発明の光導波路素子の好適実施形態によれば、第1波長選択部及び第2波長選択部は、交互に直列に接続された、n個のグレーティング部とn-1個のキャビティ部とを備えて構成される。グレーティング部は、特定の波長のTE0を、TE2に変換して反射させ、及び、特定の波長のTE2を、TE0に変換して反射させ、キャビティ部は、当該キャビティ部を伝播する、特定の波長のTE0の位相を整合させる。
【0027】
この発明の光導波路素子の好適実施形態によれば、モード変換部が、干渉器で構成される。また、この発明の光導波路素子の他の好適実施形態によれば、モード変換部が、モード変換部において、前記光導波路コアは、第1コア及び第2コアを備え、第1コアに沿って、第1接続部及び第2接続部をこの順に備え、第2コアに沿って、第3接続部及び第4接続部をこの順に備え、第1接続部及び第3接続部は、第1接続部を伝播するTE0を、第2接続部に送り、及び、第1接続部を伝播するTE1を、第3接続部を伝播するTE0として取り出して第4接続部に送る、第1方向性結合器を構成する。また、第2接続部及び第4接続部は、第2接続部を伝播するTE0を、第4接続部を伝播するTE1として取り出して出力し、第4接続部を伝播するTE1を出力する、第2方向性結合器を構成する。
【0028】
また、この発明の光導波路素子のさらなる好適実施形態によれば、第2波長選択部から出力された光は、受光素子で受光される。
【発明の効果】
【0029】
この発明の光導波路素子によれば、同一の経路をそれぞれの偏波が通るようにすることで、構成が複雑になること、及び、それぞれの偏波に対応して経路が異なることによる特性のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1光導波路素子を説明するための模式図である。
【
図2】第2光導波路素子を説明するための模式図である。
【
図3】第3光導波路素子を説明するための模式図である。
【
図4】第4光導波路素子を説明するための模式図である。
【
図5】第5光導波路素子を説明するための模式図である。
【
図6】第6光導波路素子を説明するための模式図である。
【
図7】第7光導波路素子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0032】
(第1光導波路素子)
図1を参照して、この発明の第1実施形態に係る光導波路素子(以下、第1光導波路素子とも称する)を説明する。
図1は、第1光導波路素子を説明するための模式図である。
図1(A)は、第1光導波路素子の概略平面図である。
図1(A)では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
図1(B)は、第1光導波路素子の動作を説明するための模式図である。
図1(C)は、第1光導波路素子の切断端面を示す図である。また、ここでは、光導波路素子の光伝搬方向に沿った方向を長さ方向とする。また、支持基板の上面に直交する方向を厚み方向とする。また、長さ方向及び厚み方向に直交する方向を幅方向とする。
【0033】
光導波路素子100は、支持基板10、クラッド20、及び、光導波路コア30を備えて構成されている。
【0034】
支持基板10は、例えば単結晶Siを材料とした平板状体で構成されている。
【0035】
クラッド20は、支持基板10上に、支持基板10の上面を被覆して形成されている。クラッド20は、例えば酸化シリコン(SiO2)を材料として形成されている。
【0036】
光導波路コア30は、支持基板10の上面に平行に、クラッド20中に埋設されている。光導波路コア30は、SiO2のクラッド20の屈折率(1.45)よりも高い屈折率(3.5)を有する、例えばシリコン(Si)を材料として形成されている。その結果、光導波路コア30は、光の伝送路として機能し、光導波路コア30に入力された光は、光導波路コア30の平面形状に応じた伝搬方向に伝搬する。
【0037】
光導波路コア30の厚みは、深さ方向でシングルモード条件を達成できる値である、200~400nmであることが望ましい。
【0038】
ここで、光導波路コア30を伝搬する光が支持基板10へ逃げるのを防止するために、光導波路コア30は、支持基板10から少なくとも1μm以上離間して形成されているのが好ましい。
【0039】
この光導波路素子は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板を利用することによって、簡易に製造することができる。以下、
図1(C)に示す光導波路素子の製造方法の一例を説明する。
【0040】
先ず、支持基板層、SiO2層、及びSi層が順次積層されて構成されたSOI基板を用意する。次に、例えばドライエッチングを行い、Si層をパターニングする。この結果、支持基板10としての支持基板層上にSiO2層が積層され、さらにSiO2層上に光導波路コア30が形成された構造体を得ることができる。なお、後述するように、光導波路コア30には、厚みの大きい部分と、小さい部分とがある。従って、ドライエッチングは、例えば、2段階で行われる。
【0041】
次に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、SiO2層上に、SiO2を、光導波路コア30を被覆して形成する。その結果、クラッド20によって光導波路コア30が包含され、光導波路素子が得られる。
【0042】
また、クラッド20上には、ヒータ電極40が設けられる。ヒータ電極40に電流を流すことで発熱させ、光導波路コアとその周囲のクラッドで構成される光導波路の屈折率を変化させることができる。ヒータ電極40の形成方法については、任意好適な従来公知の方法を用いればよく、ここでは説明を省略する。
【0043】
なお、ここでは、Si導波路の光導波路素子の例を説明したが、化合物半導体を用いても実現可能である。
【0044】
第1光導波路素子は、第1波長選択部120、偏波変換部140及び第2波長選択部160をこの順に直列に配置して構成される。
【0045】
第1波長選択部120には、入力導波路110から、0次モードのTE偏波(TE0)及び0次モードのTM偏波(TM0)を含む入力光が入力される。入力導波路110は、TE0及びTM0が伝播する幅及び厚さで構成される。入力導波路110と、第1波長選択部120のグレーティング部122との接続箇所での損失を低減するために、入力導波路110と第1波長選択部120は、テーパ導波路112を介して接続されるのがよい。
【0046】
第1波長選択部120は、入力導波路110と接続された側(一方の側)から入力された入力光に対し、特定の波長のTE0を選択して、偏波変換部130と接続された側(他方の側)から出力する。また、第1波長選択部120は、一方の側から入力されたTM0をそのまま伝播させて他方の側から出力する。
【0047】
第1波長選択部120は、n個(nは2以上の整数)のグレーティング部122と、n-1個のキャビティ部128とが交互に直列に接続されて構成される。
【0048】
グレーティング部122は、特定の波長λのTE0を、1次モードのTE偏波(TE1)に変換して反射させる。また、グレーティング部122は、特定の波長λのTE1をTE10に変換して反射させる。各グレーティング部120のグレーティングの突出部126a及び126bの周期は、反射すべき波長λに対して以下の式(1)を満たすように設計される。
【0049】
2π/Λ=2π(n0+n1)/λ ・・・(1)
ここで、グレーティング周期をΛ、TE0に対する等価屈折率をn0、TE1に対する等価屈折率n1としている。
【0050】
グレーティング部122は、基部124と突出部126a及び126bとを一体的に含んで構成されている。基部124は、グレーティング部122の長さ方向に延在して形成されている。また、基部124は、長さ方向の両端から中央に向かって連続的に幅が縮小する。従って、基部124は、長さ方向の両端において2つの最大幅、及び中央において1つの最小幅を有する。換言すれば、基部124は、連続的に幅が縮小する部分と連続的に幅が拡大する部分とが、1つずつ長さ方向に沿ってこの順に連結されて構成されている。
【0051】
突出部126aは、基部124の一方の側面に周期的に複数形成されている。突出部126bは、基部124の他方の側面に周期的に複数形成されている。TE0とTE1の変換を行うために、これら突出部126a及び126bは、基部124を挟んで反対称となる位置に形成されている。突出部126a及び126bの周期Λは、反射すべき波長λに対して上式(1)が成立するように設計される。
【0052】
また、突出部126a及び126bの突出量(突出部126a及び126bの幅方向の寸法)Dには少なくとも2以上の値がある。ここでは、基部124の長さ方向における中央付近に形成されている突出部126a及び126bほど、突出量が大きく、長さ方向の両端付近に形成されている突出部126a及び126bほど、突出量が小さい。
【0053】
このように、基部124の幅を中央に向かって縮小させ、かつ、突出部126a及び126bの突出量Dに異なる値を持たせた結果、グレーティング部122は、長さ方向(光伝播方向)の各位置における等価屈折率を一定にすることができる。これにより、グレーティング部122を透過する光のピークの形状が崩れるのを防止できる。なお、突出量Dの変化量は、反射すべき波長λ及び所望する透過特性に応じて設計される。
【0054】
キャビティ部128は、図のように一定幅で形成されるとは限らない。キャビティ部128の幅は、TE0及びTE1を伝播させることができるように設定される。
【0055】
キャビティ部128は、このキャビティ部128を伝播する光のうち、特定の波長のTE0の位相を整合させる。キャビティ部128の長さは、位相整合させる波長に応じて設計される。なお、電極40を用いてキャビティ部128に熱を与えることにより、位相整合させる波長を変化させることができる。
【0056】
2つのグレーティング部122と、その間に設けられたキャビティ部128とは、リング共振器と等価な波長フィルタとして機能する。この場合、グレーティング部122が、リング共振器の方向性結合器部分に対応する。また、キャビティ部128が、リング共振器のリング導波路部分に対応する。
【0057】
ここで、グレーティング部122及びキャビティ部128を多段に接続することによって、光の波長ピークのフラットトップ特性を向上させることができる。
図1は、nが3の場合、すなわち、二段に接続した例を示している。
【0058】
第1波長選択部120から出力された、特定の波長のTE0と、TM0は、第1接続導波路130を経て、偏波変換部140に送られる。この第1接続導波路130は、入力導波路110と同様に、TE0及びTM0が伝播する幅及び厚さで構成される。第1接続導波路130と、第1波長選択部120及び偏波変換部140との接続部分での損失を低減するために、第1接続導波路130と、第1波長選択部120及び偏波変換部140とは、それぞれ、テーパ導波路132及び134を介して接続されるのがよい。
【0059】
偏波変換部140は、TM偏波とTE偏波の間の偏波変換を行う。すなわち、偏波変換部140において、特定の波長のTE0は、特定の波長のTM0に変換され、TM0はTE0に変換される。偏波変換部140において変換された、特定の波長のTM0と、TE0は、第2波長選択部160に送られる。
【0060】
偏波変換部140は、TM偏波とTE偏波の間の偏波変換を行うために、厚み方向及び幅方向の両方で非対称な構造となっている。この厚み方向及び幅方向の両方で非対称な構造は、例えば、光の伝播方向に沿って延在する基部144の片側に、基部よりも厚みの小さいテラス導波路146が設けられる構造によって得られる。
【0061】
偏波変換部140から出力された、特定の波長のTM0と、TE0は、第2接続導波路150を経て、第2波長選択部160に送られる。この第2接続導波路150は、第1接続導波路130と同様に構成される。なお、第2接続導波路150と、偏波変換部140及び第2波長選択部160との接続部分での損失を低減するために、第2接続導波路150と、偏波変換部140及び第2波長選択部160とは、それぞれ、テーパ導波路152及び154を介して接続されるのがよい。
【0062】
第2波長選択部160には、偏波変換部140から、TE0と特定の波長のTM0が入力される。第2波長選択部160は、TE0の特定の波長を選択する。第2波長選択部160は、特定の波長のTM0をそのまま伝播させる。
【0063】
第2波長選択部160で選択された特定の波長のTE0と、第2波長選択部160を伝搬する特定の波長のTM0は、例えば、出力導波路170を経て、受光素子180に送られる。第2波長選択部160は、第1波長選択部120と同じ構成及び機能とすることができるので、ここでは、重複する説明を省略する。出力導波路170は、入力導波路110と同様に、TE偏波及びTM偏波が伝播する幅及び厚さで構成される。
【0064】
受光素子180は、例えば、フォトダイオード(PD)で構成され、特定の波長のTE0及びTM0を電気信号に変換する。
【0065】
第1光導波路素子によれば、TE偏波及びTM偏波が同一の経路を通るので、光導波路素子の構成が複雑になることを抑制し、かつ、それぞれの偏波に対する特性のばらつきを低減できる。
【0066】
(第2光導波路素子)
図2を参照して、この発明の第2実施形態に係る光導波路素子(以下、第2光導波路素子とも称する)を説明する。
図2は、第2光導波路素子を説明するための模式図である。
図2では、光導波路コアの平面形状を示している。ここで、第2光導波路素子は、偏波変換部の構成が第1光導波路素子と異なっている。偏波変換部以外の構成は、第1光導波路素子と同様なので、図示及び重複する説明を省略する。
【0067】
偏波変換部において、光導波路コアは、第1コア及び第2コアを備える。偏波変換部は、第1コアに沿って、第1偏波変換素子242、第1接続部252、及び、第2接続部254をこの順に備える。また、第2コアに沿って、第3接続部256、第4接続部258、及び、第2偏波変換素子262をこの順に備える。なお、第1偏波変換素子242、第1接続部252、及び、第2接続部254の間を接続する接続導波路や、第3接続部256、第4接続部258、及び、第2偏波変換素子262を接続する接続導波路、あるいは、テーパ導波路については、説明を省略する。
【0068】
第1偏波変換素子242は、TM0をTE1に変換し、TE0をそのまま伝搬させて、第1接続部252に送る。第1偏波変換素子242は、TE0及びTM0を伝播させる幅から、TE1を伝播させる幅まで、幅が順次拡大するテーパ導波路構造の基部244を有している。光の伝播方向に沿って延在する基部244の両側に、基部244よりも厚みの小さいテラス導波路246が設けられている。このテラス導波路246により、厚み方向が非対称になるので、TE偏波とTM偏波の間の結合が生じる。
【0069】
この結果、この第1偏波変換素子242に入力されたTE0はそのまま第1偏波変換素子242を伝搬して第1接続部252に送られる。一方、TM0は、TE1に変換されて、このTE1も第1接続部252に送られる。
【0070】
第1接続部252と第3接続部256とは、方向性結合器を構成する。第1接続部252は、TE1を伝播させる幅で構成される。第3接続部256は、TE0を伝播させる幅まで順次幅が拡大するテーパ構造で構成される。第1接続部252を伝播するTE1と、第3接続部256を伝播するTE0とが位相整合するように設計すれば、第1接続部252を伝播するTE1は、第3接続部256にTE0として移行する。第1接続部252を伝播するTE0は、第2接続部254に送られる。また、第3接続部256を伝播するTE0は、第4接続部258に送られる。
【0071】
第2接続部254と第4接続部258とは、方向性結合器を構成する。第4接続部258は、第1接続部252と同様に、TE1を伝播させる幅で構成される。第2接続部25
4は、TE0を伝播させる幅から順次幅が縮小するテーパ構造で構成される。
【0072】
第4接続部258を伝播するTE1と、第2接続部254を伝播するTE0が位相整合するように設計すれば、第2接続部254を伝播するTE0は、第4接続部258に移行してTE1として伝播する。第4接続部258を伝播する、TE0及びTE1は、第2偏波変換素子262に送られる。
【0073】
第2偏波変換素子262は、第1偏波変換素子242と同様に構成され、入力側及び出力側を反転して設けられる。従って、第2偏波変換素子262に送られた、TE0は、そのまま第2偏波変換素子262を伝播して、第2波長選択部に送られ、TE1は、TM0に変換されて、第2波長選択部に送られる。
【0074】
このように、第2光導波路素子も、第1光導波路素子と同様に機能する。
【0075】
(第3光導波路素子)
図3を参照して、この発明の第3実施形態に係る光導波路素子(以下、第3光導波路素子とも称する)を説明する。
図3は、第3光導波路素子を説明するための模式図である。
図3(A)は、第3光導波路素子の概略平面図である。
図3(A)では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
図3(B)は、第3光導波路素子の動作を説明するための模式図である。
【0076】
第3光導波路素子は、偏波変換部340及び第2波長選択部360の構成が第1光導波路素子と異なっている。それ以外の構成は、第1光導波路素子と同様なので、重複する説明を省略する。
【0077】
偏波変換部340は、
図2を参照して説明した、第2光導波路素子が備える第1偏波変換素子と同様に構成される。
【0078】
偏波変換部340は、TM偏波とTE偏波の間の偏波変換を行う。すなわち、特定の波長のTE0は、偏波変換部をそのまま伝播し、TM0はTE1に変換される。偏波変換部において変換された、特定の波長のTE0と、TE1は、第2波長選択部に送られる。
【0079】
第2波長選択部360は、n個のグレーティング部と、n-1個のキャビティ部とが交互に直列に接続されて構成される。
【0080】
グレーティング部は、特定の波長λのTE1を、2次モードのTE偏波(TE2)に変換して反射させる。また、グレーティング部は、特定の波長λのTE2を、TE1に変換して反射させる。ここでは、キャビティ部が、一定幅で形成される例を示している。キャビティ部の幅は、0次モード~2次モードのTE偏波、すなわち、TE0~TE2を伝播させることができるように設定される。キャビティ部は、このキャビティ部を伝播する光のうち、特定の波長のTE1の位相を整合させる。
【0081】
第2波長選択部360から出力された、TE0と、TE1は、出力導波路370を経て、受光素子380に送られる。
【0082】
(第4光導波路素子)
図4を参照して、この発明の第4実施形態に係る光導波路素子(以下、第4光導波路素子とも称する)を説明する。
図4は、第4光導波路素子を説明するための模式図である。
図4は、光導波路素子の概略平面図である。
図4では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
【0083】
第4光導波路素子は、第1波長選択部420と、第2波長選択部470と、第1偏波変換部450と、第2偏波変換部460と、偏波分離素子440とを備えて構成される。
【0084】
第1波長選択部420及び第2波長選択部470は、第1光導波路素子の第1波長選択部120及び第2波長選択部160と同様に構成されるので、ここでは、重複する説明を省略する。
【0085】
第1偏波変換部450は、TE偏波を、TM偏波に変換して反射させる。また、第2偏波変換部460は、TM偏波を、TE偏波に変換して反射させる。第1偏波変換部450及び第2偏波変換部460は、横方向が反対称であり、厚み方向が非対称であるグレーティング構造を備えて構成することができる。
【0086】
偏波分離素子440は、第1~第4入出力端442、444、446及び448を有している。第1入出力端442は、第1波長選択部420に接続されている。第2入出力端444は、第2波長選択部470に接続されている。第3入出力端446は、第1偏波変換部450に接続されている。また、第4入出力端448は、第2偏波変換部460に接続されている。
【0087】
第1波長選択部420から出力された、特定の波長のTE0と、TM0は、偏波分離素子440に送られる。TE0は、第3入出力端446から出力されて、第1偏波変換部450に送られる。そして、第1偏波変換部450は、TE0をTM0に変換して反射させる。TM0は偏波分離素子440の第3入出力端446に入力される。第3入出力端446に入力されたTM0は、第2入出力端444から出力されて、第2波長選択部470に送られる。一方、TM0は、偏波分離素子440第4入出力端448から出力されて、第2偏波変換部470に送られる。そして、第2偏波変換部470は、TM0をTE0に変換して反射させる。TE0は偏波分離素子440の第4入出力端448に入力される。第4入出力端448に入力されたTE0は、偏波分離素子440の第2入出力端44から出力されて、第2波長選択部470に送られる。
【0088】
その後の動作は、第1光導波路素子と同様なので重複する説明を省略する。すなわち、この第4光導波路素子は、偏波分離素子、第1偏波変換部及び第2偏波変換部が、第1光導波路素子の偏波変換部と同様の機能を奏する。
【0089】
(第5光導波路素子)
図5を参照して、この発明の第5実施形態に係る光導波路素子(以下、第5光導波路素子とも称する)を説明する。
図5は、第5光導波路素子の偏波変換部を説明するための模式図である。
図5(A)は、光導波路素子の概略平面図である。
図5(A)では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
図5(B)は、第5光導波路素子の動作を説明するための模式図である。
【0090】
第5光導波路素子は、偏波変換部520、第1波長選択部530及び第2波長選択部540をこの順に直列に配置して構成される。
【0091】
偏波変換部520は、第3光導波路素子の偏波変換部と同様に構成され、同様に動作する。すなわち、TE0は、偏波変換部520をそのまま伝播し、TM0はTE1に変換される。TE0と、偏波変換部520において変換されたTE1は、第1波長選択部530に送られる。
【0092】
第1波長選択部530は、第3光導波路素子の第2波長選択部と同様に構成され、同様
に動作する。すなわち、第1波長選択部530は、n個のグレーティング部と、n-1個のキャビティ部とが交互に直列に接続されて構成される。
【0093】
グレーティング部は、特定の波長λのTE1を、TE2に変換して反射させる。また、グレーティング部は、特定の波長λのTE2を、TE1に変換して反射させる。キャビティ部65は、一定幅で形成される。キャビティ部65の幅は、0次モード~2次モードのTE偏波を伝播させることができるように設定される。キャビティ部は、このキャビティ部を伝播する光のうち、特定の波長のTE1の位相を整合させる。
【0094】
第2波長選択部540は、n個のグレーティング部と、n-1個のキャビティ部とが交互に直列に接続されて構成される。
【0095】
グレーティング部は、特定の波長λのTE0を、TE2に変換して反射させる。また、グレーティング部は、特定の波長λのTE2を、TE0に変換して反射させる。この場合、グレーティング部では、偶数次数から偶数次数への変換がなされるため、突出部は、基部を挟んで対称となる位置に形成されている。
【0096】
ここでは、キャビティ部が、一定幅で形成される例を示している。キャビティ部の幅は、0次モード~2次モードのTE偏波を伝播させることができるように設定される。キャビティ部は、このキャビティ部を伝播する光のうち、特定の波長のTE0の位相を整合させる。
【0097】
(第6光導波路素子)
図6を参照して、この発明の第6実施形態に係る光導波路素子(以下、第6光導波路素子とも称する)を説明する。
図6は、第6光導波路素子を説明するための模式図である。
図6(A)は、第6光導波路素子の概略平面図である。
図6(A)では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
図6(B)は、第6光導波路素子の動作を説明するための模式図である。
【0098】
第6光導波路素子は、偏波変換部620、第1波長選択部630、モード変換部640及び第2波長選択部650をこの順に直列に配置して構成される。
【0099】
偏波変換部620は、第3光導波路素子の偏波変換部と同様に構成され、同様に動作する。すなわち、TE0は、偏波変換部620をそのまま伝播し、TM0はTE1に変換される。TE0と、偏波変換部620において変換されたTE1は、第1波長選択部630に送られる。
【0100】
第1波長選択部630は、第5光導波路素子の第2波長選択部と同様に構成され、同様に動作する。すなわち、第1波長選択部630は、n個のグレーティング部と、n-1個のキャビティ部とが交互に直列に接続されて構成される。
【0101】
グレーティング部は、特定の波長λのTE0を、TE2に変換して反射させる。また、グレーティング部は、特定の波長λのTE2を、TE0に変換して反射させる。ここでは、キャビティ部が、一定幅で形成される例を示している。キャビティ部の幅は、0次モード~2次モードのTE偏波を伝播させることができるように設定される。
【0102】
モード変換部640は、TE1をTE0に変換し、TE0をTE1に変換する。第6光導波路素子では、モード変換部640が干渉器で構成されている。
【0103】
第2波長選択部650は、n個のグレーティング部と、n-1個のキャビティ部とが交
互に直列に接続されて構成される。
【0104】
グレーティング部は、特定の波長λのTE0を、TE2に変換して反射させる。また、グレーティング部は、特定の波長λのTE2を、TE0に変換して反射させる。キャビティ部は、一定幅で形成される。キャビティ部の幅は、0次モード~2次モードのTE偏波を伝播させることができるように設定される。この場合、グレーティング部では、偶数次数から偶数次数への変換がなされるため、突出部は、基部を挟んで対称となる位置に形成されている。
【0105】
(第7光導波路素子)
図7を参照して、この発明の第7実施形態に係る光導波路素子(以下、第7光導波路素子とも称する)を説明する。
図7は、第7光導波路素子を説明するための模式図である。
図7は、光導波路素子を説明するための概略平面図である。
図7では、光導波路コアの平面形状を示し、他の構成要素を省略して示してある。
【0106】
第7光導波路素子は、モード変換部の構成が第6光導波路素子と異なっている。モード変換部以外の構成は、第6光導波路素子と同様なので、重複する説明を省略する。
【0107】
モード変換部641は、方向性結合器を備えて構成される。モード変換部641において、光導波路コアは、第1コア及び第2コアを備える。
【0108】
第1コアに沿って、第1接続部642及び第2接続部644をこの順に備える。また、第2コアに沿って、第3接続部646及び第4接続部648をこの順に備える。
【0109】
第1接続部642と第3接続部646とは、方向性結合器を構成する。第1接続部642は、TE1を伝播させる幅で構成される。第3接続部646は、TE0を伝播させる幅まで順次幅が拡大するテーパ構造で構成される。第1接続部642を伝播するTE1と、第3接続部646を伝播するTE0が位相整合するように設計すれば、第1接続部642を伝播するTE1は、TE0として第3接続部646に移行して伝播する。第1接続部642を伝播するTE0は、第2接続部644に送られる。また、第3接続部646を伝播する、TE0は、第4接続部648に送られる。
【0110】
第2接続部644と第4接続部648とは、方向性結合器を構成する。第4接続部648は、第1接続部642と同様に、TE1を伝播させる幅で構成される。第2接続部644は、TE0を伝播させる幅から順次幅が縮小するテーパ構造で構成される。
【0111】
第4接続部648を伝播するTE1と、第2接続部644を伝播するTE0が位相整合するように設計すれば、第2接続部644を伝播するTE0は、TE1として第4接続部に移行して伝播する。第4接続部648を伝播する、TE0及びTE1は、第2波長選択部650に送られる。
【0112】
このように、第7光導波路素子も、第6光導波路素子と同様に機能する。なお、第7光導波路素子は、干渉計での干渉条件を考える必要がないので、第6光導波路素子に比べて、設計が簡単で、動作が安定する。
【符号の説明】
【0113】
10 支持基板
20 クラッド
30 光導波路コア
40 電極
110、310、410、510 入力導波路
112、132、134、152、154 テーパ導波路
120、320、420、530、630 第1波長選択部
122 グレーティング部
124、144、244、344 基部
126 突出部
128 キャビティ部
130 第1接続導波路
140、340、520、620 偏波変換部
146、246、346 テラス導波路
150 第2接続導波路
160、360、470、540、650 第2波長選択部
170、370、570,670、680 出力導波路
180、380、480、580 受光素子
242 第1偏波変換素子
252、642 第1接続部
254、644 第2接続部
256、646 第3接続部
258、648 第4接続部
262 第2偏波変換素子
330 接続導波路
440 偏波分離素子
450、460 偏波変換部
640、641 モード変換部