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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082863
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】車両用冷凍装置並びに冷凍車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/20 20060101AFI20220527BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60P3/20 Z
B60H1/32 611A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194009
(22)【出願日】2020-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】516173979
【氏名又は名称】株式会社コアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】仁平 志郎
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA07
3L211BA14
3L211DA03
(57)【要約】
【課題】クロスフローファンにおける静圧を確保し、且つ、回転数による振動現象の発生を抑制し得る車両用冷凍装置並びに冷凍車両を提供する。
【解決手段】荷室に嵌設される筐体と、筐体内に設けられ、冷媒を減圧して荷室内の空気を冷却するエバポレータと、筐体内に設けられ、エバポレータから荷室内に向かう風路と、風路に配置され、エバポレータを通じて冷却された空気を荷室内に送風するクロスフローファンと、クロスフローファンからの送風を荷室内へ吐出する送風口と、を備え、送風口は、上壁、両側壁および底壁で囲われ且つ筐体正面から突出して形成されており、送風口における上壁は、略水平状に形成されており、送風口における底壁は、クロスフローファンの軸より下方位置に最低点を有すると共に該軸より上方位置に最高点を有する様に送風方向へ上昇傾斜を有して形成されている構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室に嵌設される筐体と、
前記筐体内に設けられ、冷媒を減圧して前記荷室内の空気を冷却するエバポレータと、
前記筐体内に設けられ、前記エバポレータから前記荷室内に向かう風路と、
前記風路に配置され、前記エバポレータを通じて冷却された空気を前記荷室内に送風するクロスフローファンと、
前記クロスフローファンからの送風を前記荷室内へ吐出する送風口と、を備え、
前記送風口は、上壁、両側壁および底壁で囲われ且つ前記筐体正面から突出して形成されており、
前記送風口における上壁は、略水平状に形成されており、
前記送風口における底壁は、前記クロスフローファンの軸より下方位置に最低点を有すると共に該軸より上方位置に最高点を有する様に送風方向へ上昇傾斜を有して形成されていることを特徴とする車両用冷凍装置。
【請求項2】
前記送風口における底壁の上昇傾斜は、水平線に対し30乃至32度の傾斜角度を有して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍装置。
【請求項3】
前記送風口の基端部は、前記クスフローファンにおける送風口側の端部と水平方向に略同一若しくは若干重なった位置にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍装置。
【請求項4】
前記筐体と送風口における底壁との境界部分において、前記クロスフローファンに周設されている補強リブに対応する箇所に、切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項5】
前記クロスフローファンは、軸方向に短く形成された短軸のクロスフローファン組立体を、軸方向に複数つなげて形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項6】
前記クスフローファンにおける所定中間箇所であって、前記クロスフローファン組立体のつなぎ目に、該クスフローファンの回転軸部材を回動可能に軸支する中間支持部材が備えられていることを特徴とする請求項5に記載の車両用冷凍装置。
【請求項7】
前記クロスフローファンの回転数は、3700乃至3940rpmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項8】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサから吐出される冷媒を冷却して前記エバポレータへ送るコンデンサと、
前記エバポレータから吐出される冷媒を気液分離するアキュームレータと、を備え、
前記コンプレッサ、前記コンデンサおよび前記アキュームレータは、前記荷室外に存する空きスペースに配設されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項9】
キャビンと、荷室と、前記請求項8に記載の車両用冷凍装置を備えた冷凍車両であって、
前記車両用冷凍装置は、前記キャビン背面から前記荷室前壁内面までの幅スペースにおいて、筐体が前記荷室内に突出しない状態で前記荷室の前壁に嵌設されており、
前記コンプレッサ、前記コンデンサおよび前記アキュームレータは、前記荷室外に存する空きスペースに配設されていることを特徴とする冷凍車両。
【請求項10】
12V用または24V用の発電機と、前記発電機によって充電される蓄電池と、を備え、
前記車両用冷凍装置は、前記発電機および蓄電池を電源として駆動されることを特徴とする請求項9に記載の冷凍車両。
【請求項11】
前記荷室内における開閉ドア近傍にエアカーテンが装備されており、
前記開閉ドアの開閉動作に応じて若しくは手動操作により前記エアカーテンによる送風のON/OFF制御が行われることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の冷凍車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷室を冷凍するための車両用冷凍装置、並びに、該車両用冷凍装置を搭載した冷凍車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の荷室内を冷却する冷凍装置を搭載した冷凍車両が存在する。かかる冷凍車両は、荷室内を冷却することが可能であるため、冷凍品や生鮮食品の輸送用として、多く採用されている。
【0003】
この種の車両に搭載される車両用冷凍装置は、従来、ターボファンやプロペラファンを用いて荷室に冷風を送風している(例えば、特許文献1参照)。一般的に車両用冷凍装置は、運転席の屋根の斜め後方において荷室を構成する前壁等に設置されている。前壁には冷風の導入口が設けられており、導入口を介して車両用冷凍装置に備わるターボファンやプロペラファンからの冷風が荷室に導入され、これにより、荷室が冷却される。
【0004】
車両用冷凍装置に用いられるターボファンは、羽に強度を持たせ易く、ファン自体の性能を安定して発揮することができるものであり、比較的大きな風量を得ることができるという利点を有している。また、車両用冷凍装置に用いられるプロペラファンは、構造が簡易で価格も手頃であり、風量が比較的大きく騒音も比較的小さいという利点を有している。
【0005】
しかしながら、ターボファンを有する車両用冷凍装置では、冷風の吹出し方向が荷室の左側または右側に片寄る傾向にあり、荷室の後部へ向けて真っ直ぐに冷風を送風することが難しかった。例えば、荷室の左側に吹き出された冷風は、荷室の左壁に当たった後、反対側の右壁へ跳ね返り、荷室の後部へ向けて左右の壁間をジグザグに進み易い。このため、荷室内に冷風で冷却されない領域が生じてしまうとともに、荷室の後部まで冷風が行き渡り難く、荷室の温度を均一な低温状態にすることに時間がかかるといった課題があった。特に、荷室の後部にドアがある場合には、ドアの開閉により上昇した荷室の後部の温度を低温状態に戻すまでに時間を要していた。
【0006】
また、プロペラファンを有する車両用冷凍装置では、冷風に渦が生じ易く、荷室に冷風を均一に送風することが難しかった。また、ファン風量がファン中心部では減少し、冷風の到達距離を確保することが難しいため、荷室の後部まで冷風を均一に送風することができなかった。したがって、プロペラファンを有する車両用冷凍装置においても、荷室の温度を均一な低温状態にすることに時間がかかるといった課題があった。なお、風量を確保するためには、比較的径の大きいプロペラファンを用いる必要があるため、装置が大型化するといった課題も生じるものであった。
【0007】
さらに、従来の一般的な車両用冷凍装置は、普通貨物車や大型貨物車など荷室前方の運転席上方に設置スペースがある場合は問題ないが、軽貨物車の様に荷室と運転席の高さに差がほとんどなく、荷室前方の運転席上方に設置スペースが存在しない場合には、荷室内に車両用冷凍装置を設置せざるを得ず、それにより該冷凍装置が荷室内で一定の容量を占めることとなって、積荷の積載量の減少を招いていた。
【0008】
そこで、本出願人は、装置の大型化を回避しつつ、比較的短時間で荷室の温度を均一な低温状態にすることができる車両用冷凍装置を実現すべく、荷室内に冷風を送風するファンとしてクロスフローファンを用い、クロスフローファンの側方の適正な位置に仕切板を配置して風路を仕切ることにより、比較的短い風路でありながらも冷風を荷室内に真っ直ぐに吹き出すことができる車両用冷凍装置を開発し、かかる車両用冷凍装置について従前に特許出願を行った(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、車両用冷凍装置の送風ファンとしてクロスフローファンを採用したことで、静圧確保の点と振動現象、コスト面で新たな問題が生じることとなった。具体的には、クロスフローファンの静圧が確保されず、安定した送風量が得られないといった問題があった。また、クロスフローファンが長尺化することで、回転数によりファンの振動現象が発生してしまうといった問題があった。さらに、冷凍車両専用にクロスフローファンを製作するには、型代等を含め、かなりのコストを要するといった問題があった。
【0010】
そこで、本出願人は、クロスフローファンの形態と送風の向きに着目し、クロスフローファンの短軸化や送風口の向き、クロスフローファンと送風口との適正な位置関係によって静圧を確保し且つ振動抑制を実現し得ないものかとの着想のもと、クロスフローファンにおける静圧確保を実現しつつ振動現象の抑制を図る構造を開発し、本発明に係る「車両用冷凍装置並びに冷凍車両」を提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002-254977号公報
【特許文献2】特開2017-218109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記した種々の問題点に鑑み、クロスフローファンにおける静圧を確保し、且つ、回転数による振動現象の発生を抑制し得る車両用冷凍装置並びに冷凍車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用冷凍装置は、荷室に嵌設される筐体と、筐体内に設けられ、冷媒を減圧して荷室内の空気を冷却するエバポレータと、筐体内に設けられ、エバポレータから荷室内に向かう風路と、風路に配置され、エバポレータを通じて冷却された空気を荷室内に送風するクロスフローファンと、クロスフローファンからの送風を荷室内へ吐出する送風口と、を備え、送風口は、上壁、両側壁および底壁で囲われ且つ筐体正面から突出して形成されており、送風口における上壁は、略水平状に形成されており、送風口における底壁は、クロスフローファンの軸より下方位置に最低点を有すると共に該軸より上方位置に最高点を有する様に送風方向へ上昇傾斜を有して形成されている手段を採る。
【0014】
また、本発明に係る車両用冷凍装置は、前記送風口における底壁の上昇傾斜が、水平線に対し30乃至32度の傾斜角度を有して形成されている手段を採る。
【0015】
さらに、本発明に係る車両用冷凍装置は、前記送風口の基端部が、前記クスフローファンにおける送風口側の端部と水平方向に略同一若しくは若干重なった位置にある手段を採る。
【0016】
またさらに、本発明に係る車両用冷凍装置は、前記筐体と送風口における底壁との境界部分において、前記クロスフローファンに周設されている補強リブに対応する箇所に、切欠部が形成されている手段を採る。
【0017】
さらにまた、本発明に係る車両用冷凍装置は、前記クロスフローファンが、軸方向に短く形成された短軸のクロスフローファン組立体を、軸方向に複数つなげて形成されている手段を採る。
【0018】
このとき、前記クスフローファンにおける所定中間箇所であって、前記クロスフローファン組立体のつなぎ目に、該クスフローファンの回転軸部材を回動可能に軸支する中間支持部材が備えられた手段を採用することも好適である。
【0019】
またさらに、本発明に係る車両用冷凍装置は、前記クロスフローファンの回転数が、3700乃至3940rpmである手段を採る。
【0020】
そしてまた、本発明に係る車両用冷凍装置は、冷媒を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサから吐出される冷媒を冷却してエバポレータへ送るコンデンサと、エバポレータから吐出される冷媒を気液分離するアキュームレータと、を備え、これらコンプレッサ、コンデンサおよびアキュームレータが、荷室外に存する空きスペースに配設されている手段を採る。
【0021】
また、本発明に係る冷凍車両は、キャビンと、荷室と、前記車両用冷凍装置を備え、該車両用冷凍装置が、キャビン背面から荷室前壁内面までの幅スペースにおいて、筐体が荷室内に突出しない状態で荷室の前壁に嵌設されており、コンプレッサ、コンデンサおよびアキュームレータは、荷室外に存する空きスペースに配設されている手段を採る。
【0022】
さらに、本発明に係る冷凍車両は、12V用または24V用の発電機と、該発電機によって充電される蓄電池と、を備え、前記車両用冷凍装置が、発電機および蓄電池を電源として駆動される手段を採る。
【0023】
またさらに、本発明に係る冷凍車両は、前記荷室内における開閉ドア近傍にエアカーテンが装備されており、開閉ドアの開閉動作に応じて若しくは手動操作により該エアカーテンによる送風のON/OFF制御が行われる手段を採る。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る車両用冷凍装置の主な作用効果として、クロスフローファンにおける静圧及び風量・風圧の確保が実現され、且つ、回転数による振動現象を抑制することが可能であり、これによりエバポレータファンの静圧・風量・風圧の制御が可能であって、荷物の積み下ろし時における開閉ドアからの外気流入による荷室内の温度上昇を即時的に制御して、荷室内を急速に設定温度に到達させることができると共に、荷室温度の均一化を実現し得ることが挙げられる。
【0025】
具体的には、本発明に係る車両用冷凍装置よれば、送風口の形態および配設位置に特徴的な工夫が施されると共に、クロスフローファンの回転数を適正化することで、気密性の高い荷室への送風にも安定した風量を得ることが可能であると共に静圧が充分に確保され、これにより荷室全体に冷風を行き渡らせ易く、比較的短時間で荷室の温度を均一な低温状態にすることが可能になる。
【0026】
また、本発明に係る車両用冷凍装置よれば、クロスフローファンを用いることで、ターボファンやプロペラファンを用いた場合に比べて省スペース化(小型、薄型化)が可能であり、キャビン背面から荷室の前壁内面までの限られた幅スペースに装置を配設することが可能であって、特にキャビンと荷室との空間スペースに限界のある軽車両に対する装置搭載を可能にすると共に、荷室内における装置の設置スペースが不要であって、その分積載量について従来比約20%増を実現し、荷室の有効利用が図られることとなる。
【0027】
さらに、本発明に係る車両用冷凍装置よれば、クロスフローファンの構成として、軸方向に短く形成された短軸のクロスフローファン組立体を軸方向に複数つなげて形成することによって、既存の短軸クロスフローファンをそのまま使用することが可能であって、長尺のクロスフローファンを一体成型するときのような高価な成形型費用を必要とせず、コストの低減を図ることができると共に、つなげる数を変更することによって、種々の大きさの車両用冷凍装置に対応することができ、製品のバリエーションを高めることができる。
【0028】
またさらに、本発明に係る車両用冷凍装置よれば、クロスフローファン組立体を複数つなげた場合において、クスフローファンにおける所定中間箇所に、該クスフローファンの回転軸部材を回動可能に軸支する中間支持部材が備えられることで、回転による振動現象の抑制が図られると共に、静音化にも資することとなる。
【0029】
さらにまた、本発明に係る車両用冷凍装置よれば、クロスフローファンを採用することで、エバポレータコイルを縦方向に薄く成形することが可能であり、冷媒を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサから吐出される冷媒を冷却してエバポレータへ送るコンデンサと、エバポレータから吐出される冷媒を気液分離するアキュームレータ等を、荷室下方に存するスペースその他荷室外の空きスペースに配設することができ、筐体自体の小型化が可能になって荷室内を有効に活用できると共に、荷室下方等の空きスペースの有効活用が図られ、これにより設計の自由度が増し、車両への設置性・採用性の向上が図られる。
【0030】
そしてまた、本発明に係る冷凍車両によれば、キャビン背面から荷室の前壁内面までの限られた幅スペースに車両用冷凍装置が配設され、且つ、コンプレッサ、コンデンサおよびアキュームレータが、荷室外に存する空きスペースに配設されることで、違和感のないスッキリした外観を実現し得る。
【0031】
そしてまた、本発明に係る冷凍車両によれば、12V用または24V用の発電機と、発電機によって充電される蓄電池と、を備え、車両用冷凍装置が、発電機および蓄電池を電源として駆動される態様を採ることによって、既存の発電機を用いて、車両用冷凍装置を作動させることが可能である。
【0032】
またさらに、本発明に係る冷凍車両によれば、荷室内における開閉ドア近傍にエアカーテンが装備され、開閉ドアの開閉動作に応じて該エアカーテンによる送風のON/OFF制御を行うことで、開閉ドアを開放した際における荷室内への外気の流入を遮断・阻止して、これにより荷室内温度の維持が図られ、装置の省エネ運転を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す側断面図である。
図2】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す正面図である。
図3】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す正断面図である。
図4】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す正断面図である。
図5】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す要部断面図である。
図6】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す要部断面図である。
図7】本発明に係る車両用冷凍装置の実施形態を示す構成図である。
図8】本発明に係る車両用冷凍装置の冷凍車両への配設態様を示す側断面図である。
図9】本発明に係る冷凍車両に備わる車両用冷凍装置の駆動態様を示すブロック図である。
図10】本発明に係る冷凍車両の荷室における冷風の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、車両用冷凍装置1の構成として、荷室34に嵌設される筐体2と、筐体2内に設けられ、冷媒を減圧して荷室34内の空気を冷却するエバポレータ3と、筐体2内に設けられ、エバポレータ3から荷室34内に向かう風路2aと、風路2aに配置され、エバポレータ3を通じて冷却された空気を荷室34内に送風するクロスフローファン6と、クロスフローファン6からの送風を荷室34内へ吐出する送風口4と、を備え、送風口4は、上壁4a、両側壁4cおよび底壁4bで囲われ且つ筐体2正面から突出して形成されており、送風口4における上壁4aは、略水平状に形成されており、送風口4における底壁4bは、クロスフローファン6の軸より下方位置に最低点を有すると共に該軸より上方位置に最高点を有する様に送風方向へ上昇傾斜を有して形成されて成ることを最大の特徴とする。
以下、本発明に係る車両用冷凍装置1並びに冷凍車両30の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
尚、本発明は、以下の実施形態で記載された構成態様に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち、同一の作用効果を発揮し得る構造や寸法、形状、材質等の範囲内で、適宜変更し得るものである。
【0036】
図1乃至図7は、本発明に係る車両用冷凍装置1の実施形態を示しており、図1は車両用冷凍装置1の側断面図、図2は車両用冷凍装置1の正面図、図3及び図4は車両用冷凍装置1の正断面図であり、図3は送風口4を取り除いた正断面図、図4は筐体2の正面を取り除いた正断面図である。また、図5及び図6は要部拡大図であり、図5(a)は切欠部4d以外の側断面図、図5(b)は切欠部4dにおける即断面図、図6は風の流れを示す即断面説明図である。さらに、図7は車両用冷凍装置1の構成図である。またさらに、図8乃至図10は、本発明に係る冷凍車両30の実施形態を示しており、図8は車両用冷凍装置1の嵌設態様を示す側断面図、図9は冷凍車両30の駆動態様を示すブロック図、図10は荷室34における冷風の流れを示す模式図である。
本発明に係る車両用冷凍装置1は、主な構成として、筐体2と、エバポレータ3と、風路2aと、クロスフローファン6と、送風口4と、を備えている。
【0037】
筐体2は、図1乃至図4に示す様に、側面視で縦長の略四角形状を呈し、且つ、正面視で略矩形状を呈して、荷室34の前壁に嵌設可能に形成されている。該筐体2内には、冷媒を減圧して荷室34内の空気を冷却するエバポレータ3と、該エバポレータ3から荷室34内に向かう風路2aと、エバポレータ3を通じて冷却された空気を荷室34内に送風するクロスフローファン6と、が適宜配備されている。そして、筐体2における正面上部には、クロスフローファン6からの送風を荷室34内へ吐出する送風口4が形成され、筐体2における正面下部には、荷室34内の空気を筐体2内に取り込む取込口5が備えられている。
【0038】
エバポレータ3は、液状の冷媒を減圧することで気化させ、その際の気化熱によって通過する空気を冷却する熱交換器である。該エバポレータ3は、筐体2内において、少なくとも前記取込口5より上方位置であって、筐体2の上下方向略中央位置に配設されている。このように、本発明では、クロスフローファン6を採用することで、エバポレータ3(エバポレータコイル)を縦方向に薄く成形することが可能である。
尚、筐体2におけるエバポレータ3の下方には、取込口空間2bが形成されている。取込口空間2bは、前記取込口5を介して荷室34と連通しており、クロスフローファン6の作動によって取込口5を通じて荷室34内の空気が取込口空間2bに流入する様になっている。
【0039】
ところで、取込口空間2bにおいて、空気の冷却によるドレン水の発生が想定し得る。そこで、取込口空間2bの下部に、発生したドレン水を貯留するためのドレンパンを配置する態様が好適である。ドレンパンに溜まったドレン水は、ドレンホースを通じて外部に排出される様にする。
【0040】
筐体2におけるエバポレータ3の上方には、風路2aが形成されており、該風路2aにはクロスフローファン6が配置されている。すなわち、クロスフローファン6は、筐体2内における上方であって、エバポレータ3の下流側に配置される。クロスフローファン6は、エバポレータ3を通じて冷却された空気が風路2aを経由した後、送風口4を介して荷室34内に向けて送風する役割をなすもので、図4に示す様に、エバポレータ3の左右方向(長手方向)に沿って、左右方向に長尺に形成されると共に、左右の端部や所定中間箇所には、補強リブ6bが周設されている。クロスフローファン6は、長手方向に貫通する回転軸部材6cを有し、該回転軸部材6cの左端は、モータ7の駆動軸につながっており、該回転軸部材6cの右端は、ベアリング構造等をなす軸受8によって回動可能に軸支されている。
【0041】
かかるクロスフローファン6について、本実施形態では、軸方向に短く形成された短軸のクロスフローファン組立体6aを、軸方向に6個つなげて長尺のクロスフローファン6を構成した場合について図示している。各クロスフローファン組立体6aは、樹脂成形品である。クロスフローファン6は、クロスフローファン組立体6aの隣接する対向部同士を接着剤等を用いて接続することにより容易に長尺化可能である。なお、クロスフローファン組立体6aの軸方向の長さや、つなげる数は、エバポレータ3の大きさ、容量等を考慮して適宜設定することができる。
【0042】
前記の様に短軸のクロスフローファン組立体6aをつなげて長尺のクロスフローファン6を構成した場合に、クスフローファンにおける所定中間箇所であって隣接するクロスフローファン組立体6aのつなぎ目箇所に、中間支持部材9を備える態様を採用し得る。該中間支持部材9は、クスフローファンの回転軸部材6cを回動可能に軸支するものである。回動可能に軸支するための構造としては、ベアリング構造等が考え得る。かかる態様を採用することで、クスフローファンの回転軸部材6cが中間箇所で中間支持部材9によって360°支持されることとなるため、クスフローファンが回転することで生じ得る振動現象が抑制されると共に、回転遠心力によるブレが抑えられることで静音化にも資することとなる。
【0043】
ところで、前記中間支持部材9を備えることで、長尺化したクロスフローファンが分断されることとなる。このとき、かかるクロスフローファンの分断箇所からも空気を吸い込むこととなり、その後の送風も分断されて送風谷間(送風されない部分)が発生することが想定され、かかる送風谷間を解消あるいは最小限に抑制するためには、分断箇所の間隙を可能な限り小さくすることが望まれる。故に中間支持部材9は、その素材及び厚幅について特に限定するものではないが、回転軸部材6cの回転を軸支し且つ振動抑制作用を奏し得るための強度を有する程度において、最小の厚幅となるよう成形及び素材選択することが好適である。
【0044】
尚、風路2a内において、図示の様に、クロスフローファン6から所定間隔を空けて該クロスフローファン6の外周面に対応した曲面状をなすケーシング2cを備える態様が好適である。かかるケーシング2cを備えることで、筐体2の角部における空気溜まりを無くすと共に、クロスフローファン6の回転で生じる送風のスムーズな流れを創出すべく機能する。
【0045】
クロスフローファン6を作動させた際の回転数については、取り付けられる冷凍車両30における荷室34の容量や必要風量、動圧・静圧の調整等を考慮して適宜調節すれば足り、特に限定するものではないが、回転数と振動現象との関係に鑑みると、クロスフローファン6の回転数として3700乃至3940rpmの範囲内とすることが望ましく、この回転域であれば振動現象は発生し難い。
【0046】
送風口4は、筐体2における正面上部に形成されるもので、上壁4a、両側壁4cおよび底壁4bで囲われ、且つ、筐体2正面から突出して形成されている。かかる送風口4における上壁4aは、筐体2上面が荷室34側へ延出する態様で略水平状に形成されている。また、送風口4における底壁4bは、クロスフローファン6の軸より下方位置に最低点を有すると共に、該軸より上方位置に最高点を有する様に、送風方向へ上昇傾斜を有して形成され、具体的には、図5(a)に示す様に、底壁4bの基端部がクロスフローファン6の軸より下方位置に存し、底壁4bの先端部がクロスフローファン6の軸より上方位置に存することで、基端部から先端部にかけて上昇傾斜を有して形成されている。尚、送風口4における底壁4bの基端部を、クロスフローファン6の軸より下方位置に配設するのは、クロスフローファン6からの送風をエバポレータ3方向へ戻さずに全て荷室34へ送風できるようにするためである。
【0047】
このように、送風口4が送風方向へ徐々に窄まって形成されることで、クロスフローファン6からの送風動圧を高め、気密性の高い荷室34に対しても安定した風量を得ることが可能であると共に、荷室34内の静圧も充分に確保されることとなって、これにより荷室34の後部に向けた冷風の到達距離を確保すると共に、荷室34全体に冷風を行き渡らせることが可能となる。かかる送風口4の先端部を窄める形態について、上壁4aを下降傾斜させるのではなく低壁を上昇傾斜させるのは、荷室34への送風が冷風であることに関連する。すなわち、荷室34に送風された冷風は、自らの低い温度のために荷室34内にて下降することとなるが、荷室34全体に冷風を行き渡らせるためには、荷室34内で直ぐに下降を始める冷風と遅く下降する冷風並びにその中間で下降する冷風との量的バランスが非常に大事であり、それ故、送風口4の低壁を上昇傾斜させることで、送風口4から水平および水平より上昇側へ冷風が吐出されることとなって、バランスの良い冷風の下降態様が得られることとなる。
【0048】
低壁の上昇傾斜の傾斜角度θについては、水平線に対し30乃至32度の範囲内とすることが好適である。傾斜角度θを30度より低く設定した場合、荷室34へ吐出する際の送風動圧が弱まって必要風量を得られず、あるいは、必要風量を得るためにクロスフローファン6の回転数を上げる必要が生じることとなる。また、傾斜角度θを32度より高く設定した場合には、送風動圧が強くなり過ぎて荷室34の中央から前方側への冷風の下降が得られないことが想定される。
【0049】
送風口4における基端部の位置について、図5(a)に示すように、クスフローファンにおける送風口4側の端部と、水平方向に略同一若しくは若干重なった状態で位置している。かかる態様を採用する理由は、底壁4bの基端部がクロスフローファン6の軸より下方位置に配設される理由と同様であり、すなわち、クロスフローファン6からの送風をエバポレータ3方向へ戻さずに全て荷室34へ送風できるようにするためである。
【0050】
ところで、前述の通り、クロスフローファン6の所定箇所には、クロスフローファン6の本体より円周外方へ突出した補強リブ6bが周設されている。そこで、送風口4の配設態様について、低壁がクロスフローファン6の軸より下方位置に配設され、且つ、基端部がクスフローファンにおける送風口4側の端部と水平方向に若干重なった位置に配設されている場合に、筐体2と送風口4における底壁4bとの境界部分に補強リブ6bが接触してしまい、クロスフローファン6の回転が阻害されてしまうことが想定される。そこで、筐体2と送風口4における底壁4bとの境界部分におけるクロスフローファン6に周設されている補強リブ6bに対応する箇所に、図示の通り切欠部4dを形成する態様が考え得る。該切欠部4dは、図5(b)に示す様に、筐体2および送風口4の底壁4bを貫通して荷室34と連通しており、また、図2図3に示す様に、送風口4の幅全体からすれば切欠部4dの幅の総和は若干量であるため、クロスフローファン6からの送風が該切欠部4dから漏出したとしても、荷室34の冷却および静圧確保には特に問題とならない。
【0051】
車両用冷凍装置1は、その機能を有効にすべく、筐体2外にコンプレッサ10と、コンデンサ12と、アキュームレータ14と、を備えている。コンプレッサ10は、アキュームレータ14により気液分離された冷媒のうち気化分を吸入して圧縮し、コンデンサ12へ吐出する装置である。コンデンサ12は、コンプレッサ10から吐出される冷媒を冷却することで液化した後、エバポレータ3へ送る装置である。アキュームレータ14は、エバポレータ3から吐出される気液混合状態の冷媒を吸入し、気液分離した後に気化分のみコンプレッサ10へ送気する装置である。
【0052】
以上の構成から成る本発明に係る車両用冷凍装置1は、キャビン32と荷室34とを備えたトラック型車両の荷室34に対して取り付けられることで、冷凍車両30として機能する。具体的には、図8に示すように、キャビン32の後方となる荷室34の前壁にブラケットを介して筐体2が嵌設されており、また、コンプレッサ10とコンデンサ12およびアキュームレータ14は、筐体2外の例えば荷室34下方に存する空きスペースに配設されている。尚、荷室34の壁厚によっては、筐体2を嵌設した際に壁厚内に収まりきらずに、筐体2の背面側の一部が荷室34外のキャビン32との隙間空間に突出した状態となって、外気の影響を受けることで動作不良を生じる場合が想定される。そこで、図示のように筐体2の突出部分を断熱材36にて被覆することが好適であり、これにより外気を遮って適正な動作に資することとなる。
【0053】
尚、キャビン32内のインパネには、車両用冷凍装置1のオンオフ操作や温度調節等を行うためのコントローラ23が備わる。また、トラック型車両の車体には、冷凍機用発電機21が備わる。荷室34には、冷凍食品等の荷物が収容される。荷室34の後部には、荷物を搬入または搬出するためのドアが設けられている。コントローラ23には、ディスプレイや操作スイッチ、操作レバー等が備わる。ディスプレイには、車両用冷凍装置1の作動状態を表示、冷凍機用蓄電池22の充電状態に関する表示、荷室34内の温度表示、車両に関する情報、例えば、燃費等に関する走行情報を表示することも可能である。
【0054】
次に本実施形態の車両用冷凍装置1の冷凍サイクルについて、図7を参照して説明する。
車両用冷凍装置1は、筐体2内に装備されたエバポレータ3と、筐体2外に装備されたコンプレッサ10とコンデンサ12およびアキュームレータ14とが、配管16によって適宜接続されることで、冷却運転可能な冷凍サイクルを構成している。冷凍サイクル内には、熱の授受を行うための作動流体として冷媒が充填されている。冷媒としては、地球温暖化係数の大きいHFC(ハイドロフルオロカーボン)系混合冷媒として、R404AやR407C等が使用されている。
【0055】
車両用冷凍装置1の運転時には、矢印で示す様に、筐体2外のコンプレッサ10で圧縮された高温・高圧のガス状冷媒がコンデンサ12に流れ、外気(空気)と熱交換することで凝縮し、高圧の液状冷媒となる。液状冷媒は、コンデンサ12から配管16を通じて筐体2内のエバポレータ3に流れ、エバポレータ3で液状冷媒は、クロスフローファン6によって荷室34から取り込まれた空気と熱交換することで蒸発してガス状に気化する。エバポレータ3でガス状となった冷媒は、配管16を通じて筐体2外のアキュームレータ14に吸入されることとなるが、このときエバポレータ3で蒸発しきれなかった液状のままの冷媒が、ガス状冷媒と一緒に気液混合状態でアキュームレータ14へ送られることとなる。アキュームレータ14では、気液混合状態の冷媒を気液分離すると共に、そのうちガス状冷媒のみをコンプレッサ10へ送気することで、再びガス状冷媒がコンプレッサ10での圧縮に供される。
【0056】
尚、エバポレータ3には、温水コイルが取り付けられている。温水コイルには、車両のエンジン20の熱で暖められた水が供給される。温水コイルへの水の供給は、主としてエバポレータ3に付着した霜を除霜する場合のほか、荷室34を加温する場合に行われる。荷室34を加温することで、寒冷地などにおける物流に対しても好適に対応することができる。かかる温水コイルは、必ずしも装着を必要とするものではなく、除霜運転を他の方法によって行ってもよい。例えば、エバポレータ3に冷凍機用蓄電池22等で駆動する電気コイルを取り付け、これにより除霜運転を行ってもよい。また、コンプレッサ10の吐出口に通じる配管16に冷媒経路分岐用の電磁弁を設け、この電磁弁にエバポレータ3の入口側に通じるバイバス配管16を施設してもよい。この場合には、電磁弁を作動させることにより高温高圧の冷媒をエバポレータ3に直接流入することができ、エバポレータ3の除霜を行うことができる。電磁弁の作動制御は、エバポレータ3等に設置したセンサー等に基づいて制御可能にすることができる。さらに、温水コイルに代えて、前記した電気コイル等を用いたり、四路切替弁等を用いて加温運転(暖房運転)可能な冷凍サイクルを構成したりして、加温を行ってもよい。
【0057】
次に、車両用冷凍装置1の電源について説明する。図9は、車両用冷凍装置1を駆動するための駆動システムを示したブロック図である。
図9に示す様に、車両用冷凍装置1は、冷凍機用発電機21で発電された12Vまたは24Vの電力を冷凍機用蓄電池22に充電し、冷凍機用蓄電池22の電力で駆動される。車両用冷凍装置1は、冷凍機用蓄電池22との間に介設されたコントローラ23の設定に基づいて、オンオフ制御や温度コントロール制御がなされる。なお、冷凍機用蓄電池22を介することなく、冷凍機用発電機21で車両用冷凍装置1を直接駆動する様に構成してもよい。
【0058】
冷凍機用発電機21は、車両のエンジン20により駆動されて、12Vまたは24Vを発電する。冷凍機用発電機21は、車載用発電機24と別製品であり、車載用発電機24で発電された電力は、車両用蓄電池25に充電され、車両電源として供される。尚、発電機設置コストを削減すべく、車両に既存の車載用発電機24にて冷凍機用発電機21を代用させることも可能であり、該車載用発電機24で発電された電力を変圧装置等を介して冷凍機用蓄電池22に充電する様に構成してもよい。また、冷凍機用蓄電池22を介することなく、冷凍機用発電機21や車載用発電機24で発電された電力で直接的に車両用冷凍装置1を駆動してもよい。また、200V電源や外部の施設(物流施設、駐車施設等)から電力の供給を受けて車両用冷凍装置1を駆動してもよい。この場合には、冷凍車両30の荷室34を保管庫(繁忙期の商品保管庫等)として利用することもできる。
【0059】
図10に、本実施形態の車両用冷凍装置1から吹き出された冷風の様子を模式的に示す。図示の様に、クロスフローファン6により吹き出された冷風は、荷室34の天井壁に沿って荷室34の後部に略真っ直ぐに進む。冷風は荷室34の空気よりも重たいため、真っ直ぐ吹き出されて後部に進む過程で、その一部が天井壁近くから床部に向けて流れる。この作用により、冷風が後部に向けて到達しつつ荷室34内が好適に冷却されることとなる。そして、荷室34の後部まで到達した冷風は、後壁に当たって床部へ流れ、その後、床部を伝って前壁に流れ、車両用冷凍装置1に吸い込まれる。この過程でも、冷風が荷室34内全体を効果的に冷却する。
【0060】
尚、図示していないが、荷室34内における開閉ドア近傍に、エアカーテンを装備する態様が考え得る。かかるエアカーテンは、開閉ドアを開放した際における荷室34内への外気の流入を遮断・阻止するためのものである。従来は、開閉ドアを開放した際に荷室34内の冷気を外界へ逃がさない様、ビニルシート等の遮閉幕が開閉ドアの内側に備えられたりしていたが、かかる遮閉幕では、積荷の積み下ろしに際し開閉を要したり積荷が引っ掛かるなど、物理的に積み下ろしの邪魔となっていた。そこで、開閉ドア近傍にエアカーテンを装備することで、かかる物理的な障壁を排除し、積み下ろし作業の簡便性向上に資することとなる。
【0061】
エアカーテンは、荷室34内における開閉ドア近傍に装備されるもので、具体的には、開閉ドアの内側上方から下方へ向け送風される様、該開閉ドアの内側上方位置に装備される。かかるエアカーテンの具体的構造については、特に限定するものではないが、荷室34内の占有容積を最小に抑制すべく、本発明に係る車両用冷凍装置1と同様、クロスフローファンによる構造のものが好適である。このとき、エアカーテンにはエバポレータ等の装備は不要で、荷室34の冷気をそのままの状態で単に上方から下方へ送風する構成態様で足りる。該エアカーテンは、開閉ドアの開閉動作に応じて、送風のON/OFF制御が行われる態様となっている。すなわち、開閉ドアを閉じている時は、送風不要であるためOFF制御され、開閉ドアを開放した時のみ、外気の流入を遮断・阻止するためにON制御される態様である。かかる態様を採用することで、エアカーテンの省エネ運転を実現しつつ、効果的に荷室34内温度の維持が図られる。尚、かかるエアカーテンのON/OFF制御は、開閉ドアの開閉動作に応じて自動的に制御される態様のほか、必要に応じて手動操作で制御する態様を取り入れることも可能であり、例えば荷室34内における冷気の早期循環を所望して、開閉ドアを閉じている間にも手動で一時的に作動させる態様も採用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両用冷凍装置において、気密性の高い荷室への送風に安定した風量を得ることが可能であると共に、静圧が充分に確保され、また、比較的短時間で荷室の温度を均一な低温状態にすることが可能であり、さらには、小型化を実現して比較的空きスペースの少ない軽車両等への搭載も充分に実現可能である。よって、本発明に係る「車両用冷凍装置並びに冷凍車両」の産業上の利用可能性は高いものと思料する。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用冷凍装置
2 筐体
2a 風路
2b 取込口空間
2c ケーシング
3 エバポレータ
4 送風口
4a 上壁
4b 底壁
4c 側壁
4d 切欠部
5 取込口
6 クロスフローファン
6a クロスフローファン組立体
6b 補強リブ
6c 回転軸部材
7 モータ
8 軸受
9 中間支持部材
10 コンプレッサ
12 コンデンサ
14 アキュームレータ
16 配管
20 エンジン
21 冷凍機用発電機
22 冷凍機用蓄電池
23 コントローラ
24 車載用発電機
25 車両用蓄電池
30 冷凍車両
32 キャビン
34 荷室
36 断熱材
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室に嵌設される筐体と、
前記筐体内に設けられ、冷媒を減圧して前記荷室内の空気を冷却するエバポレータと、
前記筐体内に設けられ、前記エバポレータから前記荷室内に向かう風路と、
前記風路に配置され、前記エバポレータを通じて冷却された空気を前記荷室内に送風するクロスフローファンと、
前記クロスフローファンからの送風を前記荷室内へ吐出する送風口と、を備え、
前記送風口は、上壁、両側壁および底壁で囲われ且つ前記筐体正面から突出して形成されており、
前記送風口における上壁は、略水平状に形成されており、
前記送風口における底壁は、前記クロスフローファンの軸より下方位置に最低点である基端部を有すると共に該軸より上方位置に最高点である先端部を有する様に送風方向へ基端部から先端部にかけて上昇傾斜を有して形成され
前記送風口の基端部は、前記クロスフローファンにおける送風口側の端部と水平方向に略同一若しくは若干重なった位置にあり、
前記筐体と送風口における底壁との境界部分において、前記クロスフローファンに周設されている補強リブに対応する箇所に、切欠部が形成されていることを特徴とする車両用冷凍装置。
【請求項2】
前記送風口における底壁の上昇傾斜は、水平線に対し30乃至32度の傾斜角度を有して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍装置。
【請求項3】
前記クロスフローファンは、軸方向に短く形成された短軸のクロスフローファン組立体を、軸方向に複数つなげて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍装置。
【請求項4】
前記クスフローファンにおける所定中間箇所であって、前記クロスフローファン組立体のつなぎ目に、該クスフローファンの回転軸部材を回動可能に軸支する中間支持部材が備えられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用冷凍装置。
【請求項5】
前記クロスフローファンの回転数は、3700乃至3940rpmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項6】
冷媒を圧縮するコンプレッサと、
前記コンプレッサから吐出される冷媒を冷却して前記エバポレータへ送るコンデンサと、
前記エバポレータから吐出される冷媒を気液分離するアキュームレータと、を備え、
前記コンプレッサ、前記コンデンサおよび前記アキュームレータは、前記荷室外に存する空きスペースに配設されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用冷凍装置。
【請求項7】
キャビンと、荷室と、前記請求項6に記載の車両用冷凍装置を備えた冷凍車両であって、
前記車両用冷凍装置は、前記キャビン背面から前記荷室前壁内面までの幅スペースにおいて、筐体が前記荷室内に突出しない状態で前記荷室の前壁に嵌設されており、
前記コンプレッサ、前記コンデンサおよび前記アキュームレータは、前記荷室外に存する空きスペースに配設されていることを特徴とする冷凍車両。
【請求項8】
12V用または24V用の発電機と、前記発電機によって充電される蓄電池と、を備え、
前記車両用冷凍装置は、前記発電機および蓄電池を電源として駆動されることを特徴とする請求項7に記載の冷凍車両。
【請求項9】
前記荷室内における開閉ドア近傍にエアカーテンが装備されており、
前記開閉ドアの開閉動作に応じて若しくは手動操作により前記エアカーテンによる送風のON/OFF制御が行われることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の冷凍車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
さらに、本発明に係る車両用冷凍装置は、前記送風口の基端部が、前記クスフローファンにおける送風口側の端部と水平方向に略同一若しくは若干重なった位置にある手段を採る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
このとき、前記クスフローファンにおける所定中間箇所であって、前記クロスフローファン組立体のつなぎ目に、該クスフローファンの回転軸部材を回動可能に軸支する中間支持部材が備えられた手段を採用することも好適である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
またさらに、本発明に係る車両用冷凍装置よれば、クロスフローファン組立体を複数つなげた場合において、クスフローファンにおける所定中間箇所に、該クスフローファンの回転軸部材を回動可能に軸支する中間支持部材が備えられることで、回転による振動現象の抑制が図られると共に、静音化にも資することとなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本発明は、車両用冷凍装置1の構成として、荷室34に嵌設される筐体2と、筐体2内に設けられ、冷媒を減圧して荷室34内の空気を冷却するエバポレータ3と、筐体2内に設けられ、エバポレータ3から荷室34内に向かう風路2aと、風路2aに配置され、エバポレータ3を通じて冷却された空気を荷室34内に送風するクロスフローファン6と、クロスフローファン6からの送風を荷室34内へ吐出する送風口4と、を備え、送風口4は、上壁4a、両側壁4cおよび底壁4bで囲われ且つ筐体2正面から突出して形成されており、送風口4における上壁4aは、略水平状に形成されており、送風口4における底壁4bは、クロスフローファン6の軸より下方位置に最低点である基端部を有すると共に該軸より上方位置に最高点である先端部を有する様に送風方向へ基端部から先端部にかけて上昇傾斜を有して形成され、送風口4の基端部は、クロスフローファン6における送風口側の端部と水平方向に略同一若しくは若干重なった位置にあり、筐体2と送風口4における底壁4bとの境界部分において、クロスフローファン6に周設されている補強リブ6bに対応する箇所に、切欠部4dが形成されて成ることを最大の特徴とする。
以下、本発明に係る車両用冷凍装置1並びに冷凍車両30の実施形態について、図面を参照して説明する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
前記の様に短軸のクロスフローファン組立体6aをつなげて長尺のクロスフローファン6を構成した場合に、クスフローファンにおける所定中間箇所であって隣接するクロスフローファン組立体6aのつなぎ目箇所に、中間支持部材9を備える態様を採用し得る。該中間支持部材9は、クスフローファンの回転軸部材6cを回動可能に軸支するものである。回動可能に軸支するための構造としては、ベアリング構造等が考え得る。かかる態様を採用することで、クスフローファンの回転軸部材6cが中間箇所で中間支持部材9によって360°支持されることとなるため、クスフローファンが回転することで生じ得る振動現象が抑制されると共に、回転遠心力によるブレが抑えられることで静音化にも資することとなる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
このように、送風口4が送風方向へ徐々に窄まって形成されることで、クロスフローファン6からの送風動圧を高め、気密性の高い荷室34に対しても安定した風量を得ることが可能であると共に、荷室34内の静圧も充分に確保されることとなって、これにより荷室34の後部に向けた冷風の到達距離を確保すると共に、荷室34全体に冷風を行き渡らせることが可能となる。かかる送風口4の先端部を窄める形態について、上壁4aを下降傾斜させるのではなく底壁4bを上昇傾斜させるのは、荷室34への送風が冷風であることに関連する。すなわち、荷室34に送風された冷風は、自らの低い温度のために荷室34内にて下降することとなるが、荷室34全体に冷風を行き渡らせるためには、荷室34内で直ぐに下降を始める冷風と遅く下降する冷風並びにその中間で下降する冷風との量的バランスが非常に大事であり、それ故、送風口4の底壁4bを上昇傾斜させることで、送風口4から水平および水平より上昇側へ冷風が吐出されることとなって、バランスの良い冷風の下降態様が得られることとなる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
底壁4bの上昇傾斜の傾斜角度θについては、水平線に対し30乃至32度の範囲内とすることが好適である。傾斜角度θを30度より低く設定した場合、荷室34へ吐出する際の送風動圧が弱まって必要風量を得られず、あるいは、必要風量を得るためにクロスフローファン6の回転数を上げる必要が生じることとなる。また、傾斜角度θを32度より高く設定した場合には、送風動圧が強くなり過ぎて荷室34の中央から前方側への冷風の下降が得られないことが想定される。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
送風口4における基端部の位置について、図5(a)に示すように、クスフローファンにおける送風口4側の端部と、水平方向に略同一若しくは若干重なった状態で位置している。かかる態様を採用する理由は、底壁4bの基端部がクロスフローファン6の軸より下方位置に配設される理由と同様であり、すなわち、クロスフローファン6からの送風をエバポレータ3方向へ戻さずに全て荷室34へ送風できるようにするためである。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
ところで、前述の通り、クロスフローファン6の所定箇所には、クロスフローファン6の本体より円周外方へ突出した補強リブ6bが周設されている。そこで、送風口4の配設態様について、底壁4bがクロスフローファン6の軸より下方位置に配設され、且つ、基端部がクスフローファンにおける送風口4側の端部と水平方向に若干重なった位置に配設されている場合に、筐体2と送風口4における底壁4bとの境界部分に補強リブ6bが接触してしまい、クロスフローファン6の回転が阻害されてしまうことが想定される。そこで、筐体2と送風口4における底壁4bとの境界部分におけるクロスフローファン6に周設されている補強リブ6bに対応する箇所に、図示の通り切欠部4dを形成する態様が考え得る。該切欠部4dは、図5(b)に示す様に、筐体2および送風口4の底壁4bを貫通して荷室34と連通しており、また、図2図3に示す様に、送風口4の幅全体からすれば切欠部4dの幅の総和は若干量であるため、クロスフローファン6からの送風が該切欠部4dから漏出したとしても、荷室34の冷却および静圧確保には特に問題とならない。