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特開2022-828943次元対象物の形状を測定する装置及び方法
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  • 特開-3次元対象物の形状を測定する装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082894
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】3次元対象物の形状を測定する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194054
(22)【出願日】2020-11-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年6月15日、IEEE Trans.Circuits and Systems for Video Technology(TCSVT),pp.1-10,2020にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】597103528
【氏名又は名称】株式会社ダイワメカニック
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 政宏
(72)【発明者】
【氏名】原川 良介
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 裕也
(72)【発明者】
【氏名】細川 哲夫
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD04
2F065DD09
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG23
2F065HH07
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM06
2F065PP25
2F065QQ04
2F065QQ25
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】3次元対象物の形状を自動的に測定する装置を提供する。
【解決手段】3次元対象物の形状を計測する装置101は、3次元対象物に対して縞模様を投影するプロジェクタ102と、投影された3次元対象物の画像を撮影するカメラ103と、撮影された画像から3次元対象物の高さを計算するプロセッサ104とを備え、投影される縞模様は、干渉し合わないように波長の長さが離れている2つの色相の光からなる通常縞模様と、通常縞模様とは2つの色相の位置が逆になっている反転縞模様とを含み、プロセッサ104は、通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元対象物の形状を計測する方法であって、
前記3次元対象物に対して縞模様を投影するステップと、
前記投影された3次元対象物の画像を撮影するステップと、
前記撮影された画像から前記3次元対象物の高さを計算するステップと
を含み、
前記投影される縞模様は、干渉し合わないように波長の長さが離れている2つの色相の光からなる通常縞模様と、前記通常縞模様とは前記2つの色相の位置が逆になっている反転縞模様とを含み、
前記通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと前記反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、方法。
【請求項2】
前記通常画像の色相チャネルと前記反転画像の色相チャネルとの比較によって取得された二値画像の歪みに基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの色相は、前記投影された縞模様による前記3次元対象物からの鏡面反射の影響を受けないように決定されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つの色相は、HSV色空間に基づく色相である、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記通常画像の色相チャネル及び前記反転画像の色相チャネルを連続的な値を有する関数に変換し、前記通常画像の色相チャネルの前記関数による値と前記反転画像の色相チャネルの前記関数による値との比較に基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記2つの色相に基づいて前記3次元対象物を撮影するための領域を2個(Mは正の整数)の区域に分割するように、前記3次元対象物に対して縞模様を投影するステップをM回実行し、各投影するステップにおける前記通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと前記反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて前記3次元対象物の高さを計算する、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
各投影するステップにおける前記通常縞模様及び前記反転縞模様を、グレイコードに従って作成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
3次元対象物の形状を計測する装置であって、
前記3次元対象物に対して縞模様を投影するプロジェクタと、
前記投影された3次元対象物の画像を撮影するカメラと、
前記撮影された画像から前記3次元対象物の高さを計算するプロセッサと
を備え、
前記投影される縞模様は、干渉し合わないように波長の長さが離れている2つの色相の光からなる通常縞模様と、前記通常縞模様とは前記2つの色相の位置が逆になっている反転縞模様とを含み、
前記プロセッサは、前記通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと前記反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記通常画像の色相チャネルと前記反転画像の色相チャネルとの比較によって取得された二値画像の歪みに基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記2つの色相は、前記投影された縞模様による前記3次元対象物からの鏡面反射の影響を受けないように決定されている、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記2つの色相は、HSV色空間に基づく色相である、請求項9~11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記通常画像の色相チャネル及び前記反転画像の色相チャネルを連続的な値を有する関数に変換し、前記通常画像の色相チャネルの前記関数による値と前記反転画像の色相チャネルの前記関数による値との比較に基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記プロジェクタは、前記2つの色相に基づいて前記3次元対象物を撮影するための領域を2個(Mは正の整数)の区域に分割するように、前記3次元対象物に対して縞模様をM回投影し、前記プロセッサは、各投影における前記通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと前記反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、前記3次元対象物の高さを計算する、請求項9~13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記プロジェクタは、各投影における前記通常縞模様及び前記反転縞模様を、グレイコードに従って作成する、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元対象物の形状を自動的に測定する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋食器、器物、等の製造工程は、フォークを例にすると、トリムプレス(外形抜き)、平面研磨、刃抜き・曲げプレス(成形)、端面研磨(コバ擦り・刃擦り)、洗浄の順番で行われる。最終仕上げである端面研磨工程は、ほぼ職人の手作業に依存するが、職人の高齢化及び後継者不足のために年々に人手が不足しており、その結果、大量受注に対応できず、失注する場合もあるので、早急に自動化が求められている。また、端面研磨工程は、プレスした外周を研磨するコバ擦り、フォークの刃溝を研磨する刃擦りの2工程がある。これらは共に職人による手作業で行われ、前者はフォークの外周の法線方向に砥石を一定圧力で押し付けて研磨を行い、後者は薄い回転砥石の間にフォークの溝を差し込んで研磨を行うが、これらは何れも粉塵の吸入、砥石の破損、等によって作業者にとっては危険な作業である。その結果、ロボット等を使用する端面研磨工程の自動化が求められているが、端面研磨工程の自動化の際には、フォークの形状を事前に認識しておく必要がある。
【0003】
特許文献1には、投射方向毎に色合いの異なる、広がりを持ったカラーパターンを空間に投射するカラーパターン投射装置と、そのカラーパターンが投射された物体を撮影するカラー画像撮影装置と、撮影されたカラー画像及び投射パターンの情報から3次元座標を計算する演算装置とを使用して、カラー画像中の任意の点の画像座標と、その点の画像データの色合いから計算によって復元されるプロジェクタ座標とから、アクティブステレオ法又は三角測量法に基づいて物体の3次元座標を計算して求めることによって、物体の3次元形状を計測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-330417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のよる物体の3次元形状を計測する方法においては、連続的に変化する多種類の色相の光を投射することから、ノイズの影響を受けやすく、また、投射される光の色相によっては物体からの鏡面反射の影響を受けて、正確に物体の3次元座標を計算することができないという問題点がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、3次元対象物の形状を認識することができる、3次元対象物の形状を自動的に測定する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点によれば、3次元対象物の形状を計測する方法が、3次元対象物に対して縞模様を投影するステップと、投影された3次元対象物の画像を撮影するステップと、撮影された画像から3次元対象物の高さを計算するステップとを含み、投影される縞模様が、干渉し合わないように波長の長さが離れている2つの色相の光からなる通常縞模様と、通常縞模様とは2つの色相の位置が逆になっている反転縞模様とを含み、通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0008】
本発明の一具体例によれば、この方法において、通常画像の色相チャネルと反転画像の色相チャネルとの比較によって取得された二値画像の歪みに基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0009】
本発明の一具体例によれば、この方法において、2つの色相が、投影された縞模様による3次元対象物からの鏡面反射の影響を受けないように決定されている。
【0010】
本発明の一具体例によれば、この方法において、2つの色相が、HSV色空間に基づく色相である。
【0011】
本発明の一具体例によれば、この方法において、通常画像の色相チャネル及び反転画像の色相チャネルを連続的な値を有する関数に変換し、通常画像の色相チャネルの関数による値と反転画像の色相チャネルの関数による値との比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0012】
本発明の一具体例によれば、この方法において、2つの色相に基づいて3次元対象物を撮影するための領域を2個(Mは正の整数)の区域に分割するように、3次元対象物に対して縞模様を投影するステップをM回実行し、各投影するステップにおける通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて3次元対象物の高さを計算する。
【0013】
本発明の一具体例によれば、この方法において、各投影するステップにおける通常縞模様及び反転縞模様を、グレイコードに従って作成する。
【0014】
本発明の一具体例によれば、この方法がコンピュータプログラムによって実行される。
【0015】
本発明の別の観点によれば、3次元対象物の形状を計測する装置が、3次元対象物に対して縞模様を投影するプロジェクタと、投影された3次元対象物の画像を撮影するカメラと、撮影された画像から3次元対象物の高さを計算するプロセッサとを備え、投影される縞模様が、干渉し合わないように波長の長さが離れている2つの色相の光からなる通常縞模様と、通常縞模様とは2つの色相の位置が逆になっている反転縞模様とを含み、プロセッサが、通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0016】
本発明の一具体例によれば、この装置において、プロセッサが、通常画像の色相チャネルと反転画像の色相チャネルとの比較によって取得された二値画像の歪みに基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0017】
本発明の一具体例によれば、この装置において、2つの色相が、投影された縞模様による3次元対象物からの鏡面反射の影響を受けないように決定されている。
【0018】
本発明の一具体例によれば、この装置において、2つの色相が、HSV色空間に基づく色相である。
【0019】
本発明の一具体例によれば、この装置において、プロセッサが、通常画像の色相チャネル及び反転画像の色相チャネルを連続的な値を有する関数に変換し、通常画像の色相チャネルの関数による値と反転画像の色相チャネルの関数による値との比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0020】
本発明の一具体例によれば、この装置において、プロセッサが、2つの色相に基づいて3次元対象物を撮影するための領域を2個(Mは正の整数)の区域に分割するように、3次元対象物に対して縞模様をM回投影し、プロセッサは、各投影における通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算する。
【0021】
本発明の一具体例によれば、この装置において、プロジェクタが、各投影における通常縞模様及び反転縞模様を、グレイコードに従って作成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、人間の眼で3次元対象物の形状を確認することなく、自動的に3次元対象物の形状を認識することができる。
【0023】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態としての、3次元対象物の形状を計測する装置の概略図である。
図2】2つの色相に基づく縞模様を作成する方法の概略図である。
図3A】3次元対象物の形状における点群データ及び法線方向のデータの概略図である。
図3B】3次元対象物の形状に沿って等間隔に削減された間引き点群データ及び間引き法線方向のデータの概略図である。
図3C】3次元対象物の形状における曲率又は法線方向のデータの変化量に応じて削減された間引き点群データ及び間引き法線方向のデータの概略図である。
図4図1の3次元対象物の形状を計測する装置によって取得された点群データ及び法線方向のデータを使用して、3次元対象物の形状に沿って多関節ロボットを作動させる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
図1を参照して、本発明の一実施形態としての、3次元対象物の形状を計測する装置101について説明する。装置101は、ステージ106上に配置された3次元対象物に対して縞模様を投影するプロジェクタ102と、投影された3次元対象物の画像を撮影するカメラ103と、撮影された画像から3次元対象物の高さを計算するプロセッサ104とを備える。縞模様が3次元対象物にプロジェクタ102によって投影されると、カメラ103によって撮影される縞模様は、3次元対象物の高さに応じてシフトするように歪んでおり、プロセッサ104は、この縞模様の歪み量から3次元対象物の高さを計算することができる。プロジェクタ102によって投影される縞模様は、2つの色相の光からなる通常縞模様と、通常縞模様とは2つの色相の位置が逆になっている反転縞模様とを含む。2つの色相の光は、干渉し合わないように波長の長さが離れていることが好ましく、例えば、赤色の光及び青色の光からなるが、これに限定されるものではない。また、2つの色相は、投影された縞模様による3次元対象物からの鏡面反射の影響を受けないように決定されてもよい。プロセッサ104は、通常縞模様による撮影からの通常画像の色相チャネルと反転縞模様による撮影からの反転画像の色相チャネルとの比較に基づいて3次元対象物の高さを計算する。通常縞模様による投影に加えて反転縞模様による投影を行うことによって、通常画像における縞模様の歪み量及び反転画像における縞模様の歪み量という2つの歪み量を使用して3次元対象物の高さを計算することができ、頑健に3次元対象物の形状を計測することができる。プロセッサ104の動作は、コンピュータプログラムに従って実行されてもよい。コンピュータプログラムは、プロセッサ104に内蔵されたメモリに記憶されてもよいし、プロセッサが動作する際に、プロセッサ104の外にあるメモリからプロセッサ104に読み出されてもよい。
【0027】
図2を参照して、3次元対象物の形状を測定するための2つの色相に基づく通常縞模様及び反転縞模様を作成する方法について説明する。プロジェクタ102は、投影される縞模様の数に応じて計測分解能を変化させることができる。投影される縞模様の数をM(Mは正の整数)とし、プロジェクタ102が3次元対象物に対してM個の縞模様をそれぞれ投影することによって、3次元対象物を撮影するための領域が、2つの色相による2進数から2個の区域に分割され、各区域が0~2M-1のコードワードによって区別される。バイナリコードの代わりにグレイコードに従って、通常縞模様及び反転縞模様を作成して、3次元対象物を撮影するための領域を2個の区域に分割する。グレイコードは、情報理論において周知のコードであり、ビットエラーの低減に効果的である。グレイコードは下記の式によって画定される。
【数1】

及びbは、それぞれnビットグレイコード及びnビットバイナリコードの最上位ビット(MSB:Most Significant Bit)(1番目のビット)である。gは、nビットグレイコードのi番目のビットであり、bは、nビットバイナリコードのi番目のビットである。下記の式は、排他的論理和演算子である。
【数2】

投影される縞模様の数は、グレイコードのビット数と同じである。図2は、M=3の場合の縞模様を作成する方法の例を示す。第1に、2つの色相に基づいて3次元対象物を撮影するための領域を2個の区域に分割するように、10進数の0~2M-1によって表される2個のコードワードがグレイコードに変換される。第2に、グレイコードによって表された2個のコードワードは、第1のビット、第2のビット、第3のビットのように垂直に整列される。第3に、垂直に整列された2のコードワードが水平に結合される。第4に、ビット列が水平方向に抽出され、0ビット及び1ビットがそれぞれ2つの色相のうちの1つに変換される(例えば、0ビットが青、1ビットが赤に変換される)。2つの色相のシーケンスによって通常縞模様が作成され、通常縞模様から2つの色相の位置を交換することによって反転縞模様が作成される。
【0028】
プロジェクタ102は、作成された通常縞模様及び反転縞模様を3次元対象物に対して投影し、カメラ103は、通常縞模様及び反転縞模様が投影された3次元対象物の画像を撮影する。そして、プロセッサ104は、カメラ103によって撮影された通常画像及び反転画像から、3次元対象物の形状の高さzを計算するための二値画像を下記の式によって作成する。
【数3】

H,nor(x,y)は、撮影された通常画像の座標(x,y)の色相チャネルであり、IH,rev(x,y)は、撮影された反転画像の座標(x,y)の色相チャネルであり、bin(x,y)は、座標(x,y)の二値画像の値である。プロセッサ104は、撮影された通常画像の色相チャネルIH,nor(x,y)と撮影された反転画像の色相チャネルIH,rev(x,y)とを比較し、通常画像の色相チャネルIH,nor(x,y)が反転画像の色相チャネルIH,rev(x,y)より大きい場合には、座標(x,y)の二値画像の値bin(x,y)は1に画定され、通常画像の色相チャネルIH,nor(x,y)が反転画像の色相チャネルIH,rev(x,y)以下である場合には、座標(x,y)の二値画像の値bin(x,y)は0に画定される。少なくとも3次元対象物に関連する座標(x,y)において、通常画像の色相チャネルIH,nor(x,y)と反転画像の色相チャネルIH,rev(x,y)とを比較することによって二値画像を作成する。プロジェクタ102による通常縞模様及び反転縞模様の3次元対象物に対する投影はM回実行され、プロセッサ104は、各投影においてカメラ103によって撮影された通常縞模様による通常画像及び反転縞模様による反転画像から二値画像を作成する。このように作成されたM個の二値画像は、3次元対象物がステージ106上にない場合に撮影された通常縞模様による通常画像及び反転縞模様による反転画像から作成された二値画像より3次元対象物の高さzに応じて歪んでおり、プロセッサ104は、このように作成されたM個の二値画像の歪みに基づいて3次元対象物の高さzを計算する。
【0029】
カメラ103によって撮影された3次元対象物のRGB色空間の画像から上記のように二値画像を作成して、3次元対象物の高さzを計算してもよい。しかし、HSV(色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value))色空間は、色相が輝度とは無関係であるので、3次元対象物からの鏡面反射による露光の変化に対して頑健であるので好ましい。従って、露光の変化による影響を低減するために、HSV色空間の色相を使用してもよい。撮影された3次元対象物のRGB色空間の画像を、HSV色空間の画像に下記の式によって変換する。
【数4】

RGBはRGB色空間の画像であり、IHSVは、HSV色空間の画像である。fspaceは、RGB色空間をHSV色空間に変換する関数である。Iは画像の色相チャネルであり、fchannelは、HSV色空間の画像から色相チャネルのみを抽出し、色相チャネルを0~1の範囲に正規化する関数である。一般的に、色相チャネルが増加すると、表される色は、赤(0)、黄(1/6)、緑(1/3)、青(2/3)、赤(1)のように周期的に変化する。しかし、赤に近い色相チャネルの場合、Iは0又は1に近い値であるので、Iの値は不安定になる。この問題を解決するために、Iに下記の式を適用する。
【数5】

(x,y)は、座標(x,y)での色相チャネルIであり、0~1に正規化された色相チャネルIは、-1~1の範囲の余弦値I’に変換される。0又は1に近い値である赤に近い色相チャネルの場合であっても、連続的になるように1に近い値に変換されて安定する。これによって、色相チャネルの情報を効果的に利用することができる。そして、プロセッサ104は、カメラ103によって撮影された通常画像及び反転画像から、上記の式を使用して、3次元対象物の形状の高さzを計算するための二値画像を下記の式によって作成する。
【数6】

I’H,nor(x,y)は、撮影された通常画像の座標(x,y)の色相チャネルの余弦値であり、I’H,rev(x,y)は、撮影された反転画像の座標(x,y)の色相チャネルの余弦値であり、bin(x,y)は、座標(x,y)の余弦値による二値画像の値である。プロセッサ104は、撮影された通常画像の色相チャネルの余弦値I’H,nor(x,y)と撮影された反転画像の色相チャネルの余弦値I’H,rev(x,y)とを比較し、通常画像の色相チャネルの余弦値I’H,nor(x,y)が反転画像の色相チャネルの余弦値I’H,rev(x,y)より大きい場合には、座標(x,y)の二値画像の値bin(x,y)は1に画定され、通常画像の色相チャネルの余弦値I’H,nor(x,y)が反転画像の色相チャネルの余弦値I’H,rev(x,y)以下である場合には、座標(x,y)の二値画像の値bin(x,y)は0に画定される。少なくとも3次元対象物に関連する座標(x,y)において、通常画像の色相チャネルの余弦値I’H,nor(x,y)と反転画像の色相チャネルの余弦値I’H,rev(x,y)とを比較することによって二値画像を作成する。このように色相チャネルの余弦値を使用することによって、3次元対象物に縞模様を投影する際に発生する鏡面反射による測定誤差を低減することができる。また、上記と同様に、プロジェクタ102による通常縞模様及び反転縞模様の3次元対象物に対する投影はM回実行され、プロセッサ104は、各投影においてカメラ103によって撮影された通常縞模様による通常画像及び反転縞模様による反転画像から二値画像を作成する。このように作成されたM個の二値画像は、3次元対象物がステージ106上にない場合に撮影された通常縞模様による通常画像及び反転縞模様による反転画像から作成された二値画像より3次元対象物の高さzに応じて歪んでおり、プロセッサ104は、このように作成されたM個の二値画像の歪みに基づいて3次元対象物の高さzを計算する。
【0030】
なお、上記では色相チャネルIは余弦値I’に変換されたが、色相チャネルIは、プロセッサ104によって0~1の範囲で連続的な値を有する関数によって変換されてもよく、選択される2つの色相に応じて、例えば、正弦関数、三角波関数、等のような周期的な関数によって変換されてもよい。プロセッサ104は、通常画像の色相チャネルIH,nor(x,y)の関数による値と反転画像の色相チャネルIH,rev(x,y)の関数による値との比較に基づいて、3次元対象物の高さを計算してもよい。
【0031】
プロセッサ104は、3次元対象物の高さを下記の式の関数によって計算する。
【数7】

zは3次元対象物の高さであり、a、a、及びaは下記の校正フェーズにおいて計算された係数であり、sは二値画像の歪み量である。3次元対象物の高さを計算するために、第1に、上記のように、3次元対象物に対して縞模様を投影し、二値画像を作成して、3次元対象物の3点についての縞模様の歪み量s、s、及びs、並びに3次元対象物の高さz、z、及びzをそれぞれ測定する(標本フェーズ)。第2に、標本フェーズにおいて取得された歪み量s、s、及びs、並びに3次元対象物の高さz、z、及びzをそれぞれ上記の式に代入して3つの方程式による連立方程式を作成し、連立方程式を解くことによって係数a、a、及びaを取得する(校正フェーズ)。取得された係数a、a、及びaを上記の式に代入し、二値画像から取得された3次元対象物の任意の座標(x,y)の縞模様の歪み量から、3次元対象物の任意の座標(x,y)における高さzを計算する(測定フェーズ)。このようにして、プロセッサ104は、3次元対象物の横方向の位置x、縦方向の位置yに対する高さzを計算することによって、3次元対象物の形状を認識するための3次元対象物の形状の点群データを取得する。なお、上記では係数は3つであるが、それより多くてもよく、係数の数に応じて標本フェーズで測定する点の数を増やし、校正フェーズで係数の数に応じた連立方程式を解いて係数を取得してもよい。
【0032】
プロセッサ104は、上記のように取得された点群データをメモリ105に記憶させる。また、プロセッサ104は、3次元対象物の形状の各点に対応する点群データをメモリ105から取得する。プロセッサ104は、図3Aに示すように、3次元対象物201の形状の各点に関連付けて、点群データ202を3次元対象物の形状に対する法線方向のデータ203に変換する。プロセッサ104は、このように変換することによって取得された法線方向のデータ203をメモリ105に送信し、3次元対象物の形状の対応する点に関連付けて、各法線方向のデータ203をメモリ105に記憶させる。法線方向のデータ203は、3次元対象物201の表面の各点から3次元対象物201の表面に対する法線方向に延伸する、3次元のベクトルデータである。なお、メモリ105は、プロセッサ104に内蔵されていてもよいし、プロセッサ104の外にあってもよい。また、プロセッサ104の動作は、コンピュータプログラムに従って実行されてもよい。コンピュータプログラムは、メモリ105に記憶されてもよい。
【0033】
上記のように取得された点群データ202は、非常にデータ量が多い場合があり、メモリ105の多くの部分を占有し、送信する際に時間を要する。プロセッサ104は、3次元対象物201の形状における所定の距離に応じて、点群データ202及び法線方向のデータ203を削減してもよい。例えば、図3Bに示すように、プロセッサ104は、3次元対象物201の形状に沿って等間隔に点群データ202及び法線方向のデータ203を削減して、間引き点群データ204及び間引き法線方向のデータ205を作成してもよい。
【0034】
また、プロセッサ104は、3次元対象物201の形状の各点における曲率に応じて点群データ202及び法線方向のデータ203を削減してもよい。図3Aに示すように、3次元対象物201の左側部分は、3次元対象物201の形状において曲率が大きい一方で、3次元対象物201の右側部分は、3次元対象物201の形状において曲率が小さい。曲率が小さい部分は、3次元対象物201の形状がほとんど変化せず、法線方向のデータ203もほとんど変化しない。例えば、図3Cに示すように、曲率が所定の値より小さい部分においては、法線方向のデータを削減し、更には削減された法線方向のデータに関連付けられた点群データも削減して、間引き点群データ204及び間引き法線方向のデータ205を作成してもよい。なお、この小さい部分においては、同じ間引き法線方向のデータ205を使用してもよい。
【0035】
また同様に、プロセッサ104は、3次元対象物201の形状における法線方向のデータ203の変化量に応じて、点群データ202及び法線方向のデータ203を削減してもよい。図3Aに示すように、3次元対象物201の左側部分は、3次元対象物201の形状において法線方向のデータ203が大きく変化する一方で、3次元対象物201の右側部分は、3次元対象物201の形状において法線方向のデータ203がほとんど変化しない。例えば、図3Cに示すように、法線方向のデータ203の変化量が所定の値より小さい部分においては、法線方向のデータを削減し、更には削減された法線方向のデータに関連付けられた点群データも削減して、間引き点群データ204及び間引き法線方向のデータ205を作成してもよい。なお、この小さい部分においては、同じ間引き法線方向のデータ205を使用してもよい。
【0036】
プロセッサ104は、点群データ202及び法線方向のデータ203を削減することによって作成された間引き点群データ204及び間引き法線方向のデータ205をメモリ105に記憶させる。
【0037】
3次元対象物の形状を計測する装置101によって取得された点群データ202及び法線方向のデータ203、又は間引き点群データ204及び間引き法線方向のデータ205は、図4に示す3次元対象物201の形状に沿って多関節ロボットを作動させる装置301によって使用されてもよい。装置301は、3次元対象物の形状を計測する装置101を備える計測器302と、3次元対象物の形状に沿って自動的に作動する多関節ロボット303とを備える。3次元対象物の形状の点群データ(x,y,z)は、3次元対象物の形状である表面を表すための3次元の位置情報であり、点群データに基づいて、多関節ロボット303は、3次元対象物の形状に沿って自動的に作動することができる。なお、多関節ロボット303は、例えば、6軸垂直多関節ロボットであってもよいが、これに限定されない。
【0038】
装置301は、コントローラ304を更に備え、コントローラ304は、計測器302によって取得された3次元対象物の形状の点群データ、及び3次元対象物の形状の対応する点に関連付けられた法線方向のデータ(v,v,v)を受信する。法線方向のデータは、例えば、3次元対象物の表面の各点から3次元対象物の表面に対する法線方向に延伸する、大きさが1に規格化された3次元のベクトルデータである。コントローラ304は、法線方向のデータに基づいて、法線方向から多関節ロボット303の先端部305を3次元対象物に接触させるように多関節ロボット303を作動させる。多関節ロボット303の先端部305には、3次元対象物に対して研磨、バリ取り、及びビード取りのうちの少なくとも1つを実行することができる工具が取り付けられており、3次元対象物を特定の場所に固定して、コントローラ304は、法線方向から工具が取り付けられた多関節ロボット303の先端部305を固定された3次元対象物に接触させて、多関節ロボット303の先端部305に、3次元対象物に対して研磨、バリ取り、及びビード取りのうちの少なくとも1つを実行させることができる。また、多関節ロボット303の先端部305に3次元対象物を取り付け、研磨、バリ取り、及びビード取りのうちの少なくとも1つを実行することができる工具を特定の場所に固定して、コントローラ304は、法線方向から3次元対象物が取り付けられた多関節ロボット303の先端部305を固定された工具に接触させて、多関節ロボット303の先端部305に、3次元対象物に対して研磨、バリ取り、及びビード取りのうちの少なくとも1つを実行させてもよい。コントローラ304の動作は、コンピュータプログラムに従って実行されてもよい。コンピュータプログラムは、コントローラ304に内蔵されたメモリに記憶されてもよいし、コントローラ304が動作する際に、コントローラ304の外にあるメモリからコントローラ304に読み出されてもよい。
【0039】
3次元対象物としては、例えば、スプーン、フォーク、ナイフ、等のカトラリー、ピンセット、メス、トング、ペンチ、ニッパのような食卓用製品、医療用製品、台所用製品、作業用製品、等であってもよく、鋳造製品、鍛造製品、溶接製品、等であってもよい。多関節ロボット303の先端部305は、プレス機による打抜き加工後のカトラリー等の3次元対象物を法線方向から接触させて研磨することができる。また、多関節ロボット303の先端部305は、鋳造加工後のプラスチック成形品、鍛造加工後の作業工具類、自動車部品、等の3次元対象物を法線方向から接触させてバリ取りをすることができる。また、多関節ロボット303の先端部305は、溶接加工後の3次元対象物のビード取りをすることができる。
【0040】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0041】
101 3次元対象物の形状を計測する装置
102 プロジェクタ
103 カメラ
104 プロセッサ
105 メモリ
106 ステージ
201 3次元対象物
202 点群データ
203 法線方向のデータ
204 間引き点群データ
205 間引き法線方向データ
301 多関節ロボットを作動させる装置
302 計測器
303 多関節ロボット
304 コントローラ
305 先端部
306 力覚センサ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4