(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082948
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20220527BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220527BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
B60C9/08 J
B60C9/22 C
B60C9/00 D
B60C9/00 G
B60C9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194139
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 照平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA37
3D131BC13
3D131DA09
3D131DA12
3D131DA15
3D131DA16
3D131DA43
3D131DA54
3D131EB11V
3D131EB11X
(57)【要約】
【課題】タイヤ幅方向両側に分割する一対のプライ片を含むカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、剛性の向上とそれに伴う操縦安定性の向上を実現することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア11をそれぞれ有する一対のビード10、一対のサイドウォール20、トレッド30、トレッド30に配置されたベルト40、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されたベルト補強層としてのキャッププライ60、ベルト40のタイヤ径方向内側に配置され、一端51aがベルト40のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端51bがビードコア11で折り返された少なくとも一対の第1のカーカスプライ51、を備え、キャッププライ60はベルト補強層コード60gを含み、ベルト補強層コード60gはアラミド繊維を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアをそれぞれ有する一対のビードと、
前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、
前記トレッドに配置されたベルトと、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に配置されたベルト補強層と、
前記ベルトのタイヤ径方向内側に配置され、一端が前記ベルトのタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端が前記ビードコアで折り返された一対のプライ片を含む第1のカーカスプライと、を備え、
前記ベルト補強層はベルト補強層コードを含み、前記ベルト補強層コードはアラミド繊維を含む、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一対のプライ片の各々の前記ビードコアで折り返された前記他端は、前記ベルトと重複している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルトはベルトコードを含み、前記ベルトコードは、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下の傾斜角で配置されている、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベルト補強層コードのタイヤ周方向に対する傾斜角は、前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角よりも小さく、かつ、前記ベルト補強層コードのタイヤ周方向に対する傾斜角と、前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角とのなす角度が、20°以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ベルト補強層コードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードである、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドは、タイヤ幅方向に並んで設けられた複数の主溝を含むトレッドパターンを有し、
前記一対のプライ片のうちの少なくとも一方の前記一端は、前記トレッドパターンにおけるタイヤ幅方向の最も外側に配置された前記主溝である最外主溝のタイヤ幅方向内側の内壁よりも、タイヤ幅方向内側に位置する、請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記一対のプライ片のうちの少なくとも一方の前記一端は、前記トレッドパターンにおけるタイヤ幅方向中央に最も近い位置に配置された前記主溝である最内主溝のタイヤ幅方向外側の外壁よりも、タイヤ幅方向外側に位置する、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1のカーカスプライのタイヤ径方向内側または外側に配置され、他端が前記一対のビードコアの各々で折り返された少なくとも1つの第2のカーカスプライをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記第1のカーカスプライの前記一対のプライ片の前記他端および前記第2のカーカスプライの前記他端のうちの一方の他端は前記ベルトと重複しており、他方の他端はタイヤ径方向において前記ビードの領域に位置している、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の空気入りタイヤにおいては、一対のビードの間に、タイヤの骨格を形成するカーカスプライが架け渡された内部構造が知られている。特許文献1には、このようなカーカスプライに関して、タイヤのトレッドの幅方向中央部において不連続となる中抜き部を設けることにより、軽量化、および軽量化に伴う転がり抵抗の低減が図られるとされた空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気入りタイヤでは、軽量化と転がり抵抗低減を図る場合、剛性の低下とそれに伴う操縦安定性の低下を招くおそれがある。しかし、特許文献1に開示された構造には、剛性とそれに伴う操縦安定性について詳細な言及がなく、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ幅方向両側に分割する一対のプライ片を含むカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、剛性の向上とそれに伴う操縦安定性の向上を実現することができる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、ビードコアをそれぞれ有する一対のビードと、前記一対のビードの各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記トレッドに配置されたベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に配置されたベルト補強層と、前記ベルトのタイヤ径方向内側に配置され、一端が前記ベルトのタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端が前記ビードコアで折り返された一対のプライ片を含む第1のカーカスプライと、を備え、前記ベルト補強層はベルト補強層コードを含み、前記ベルト補強層コードはアラミド繊維を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤ幅方向両側に分割する一対のプライ片を含むカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、剛性の向上とそれに伴う操縦安定性の向上を実現することができる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの、タイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る第1のカーカスプライ、ベルトおよびキャッププライ(ベルト補強層)の模式的な展開図である。
【
図4】一実施形態の変形例に係る空気入りタイヤの、タイヤ幅方向の半断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。また、
図2は、
図1のIIで示す部分の拡大図である。タイヤ1の構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、
図1では、右半分の断面を示す。
図1において、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0010】
なお、
図1の断面図は、タイヤ1を図示せぬ標準リムに装着して、規定内圧を充填した無負荷状態である通常内圧時のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。標準リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められたリムである。
【0011】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
なお、後述する
図4についても同様である。
【0012】
図1に示されるように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20間に配置されたトレッド30と、トレッド30に配置されたベルト40と、ベルト40のタイヤ径方向内側において一対のビード10の間に配置された第1のカーカスプライ51と、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ60と、最もタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー70と、トレッド30および一対のサイドウォール20の外表面を構成する外層ゴム90と、を備える。
【0013】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備える。
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延出する、先端先細り形状のゴム部材である。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー12は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
チェーハー13およびリムストリップゴム14については、後述する。
【0014】
サイドウォール20は、第1のカーカスプライ51のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム部21を含む。サイドウォールゴム部21は、タイヤ1の外壁面を構成する。このサイドウォールゴム部21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0015】
トレッド30は、無端状のベルト40およびキャッププライ60と、トレッドゴム部31と、を備える。ベルト40は、第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ60は、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム部31は、キャッププライ60のタイヤ径方向外側に配置されている。
外層ゴム90は、トレッドゴム部31および一対のサイドウォールゴム部21を含んでいる。
【0016】
図3は、
図1において矢視III方向からトレッド30の外表面を構成するトレッドゴム部31を省略してタイヤ1を見たときの、周方向の一部を模式的に示す展開図である。すなわち、
図3においては、ベルト41、42、後述する第1のカーカスプライ51の一対のプライ片51A、および、キャッププライ60が示されている。ベルト41、42は、タイヤ幅方向中央部に配置され、タイヤ幅方向の両側に配置される一対のプライ片51Aの一部を覆っている。キャッププライ60は、タイヤ幅方向中央部において、ベルト41、42を覆うとともに、一対のプライ片51Aの一部を覆っている。
図3においては、ベルト41、42を示すために、キャッププライ60は周方向にさらに破断して示している。
図3においては、タイヤ幅方向Xを紙面左右方向として示し、タイヤ周方向を矢印S2で示している。
【0017】
本実施形態のベルト40は、内側のベルト41と外側のベルト42とを備えた2層構造である。本実施形態では、内側のベルト41のタイヤ幅方向の端部41aが、外側のベルト42の端部42aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。
図3に示されるように、各ベルト41、42は、複数のベルトコード41g、42gをそれぞれ含むベルトである。ベルト40は、タイヤ1のトレッド30を補強する。ベルトコード41g、42gは、スチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のベルトコード41g、42gは、ゴムにより被覆されている。ベルト40を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド30と路面の接地状態が良くなる。なお、ベルト40においては、積層されるベルトは2層に限らない。
【0018】
キャッププライ60は、ベルト40を補強するベルト補強層である。キャッププライ60は、
図3に示されるように、複数のベルト補強層コード60gを含んでいる。ベルト補強層コード60gの材料としては、アラミド繊維を含むものが好ましい。また、本実施形態では、ベルト補強層コード60gは、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードであることがより好ましい。このようなハイブリッドコードは、アラミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせて構成することができる。複数のベルト補強層コード60gは、ゴムにより被覆されている。キャッププライ60を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0019】
トレッドゴム部31は、通常走行時の踏面(路面との接地面)31aを構成する部材である。トレッドゴム部31の踏面31aには、例えば複数の溝で構成されるトレッドパターン32が設けられている。トレッドパターン32は、タイヤ幅方向に並ぶ複数の主溝32A、32Bを有する。なお、
図1に示す主溝32Aは、タイヤ幅方向の最も外側に配置された主溝である最外主溝32Aであり、主溝32Bは、タイヤ幅方向中央に最も近い位置に配置された最内主溝32Bである。
【0020】
第1のカーカスプライ51は、タイヤ1の骨格となる一対のプライ片51Aを含んでいる。第1のカーカスプライ51は、トレッド30のタイヤ幅方向中央部において不連続となる中抜き部50Hを有する。一対のプライ片51Aは、中抜き部50Hを間に挟んでタイヤ幅方向の両側に分割されており、中抜き部50Hのタイヤ幅方向両側に配置される態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0021】
第1のカーカスプライ51の一対のプライ片51Aのそれぞれは、トレッド30に配置された中抜き部50H側の一端51aから、タイヤ径方向内側に延びるプライ本体部51cと、プライ本体部51cからビードコア11で折り返される屈曲部51dと、屈曲部51dからタイヤ径方向外側に延びる折り返し部51eと、を有する。一対のプライ片51Aの対向する一端51aの間に、中抜き部50Hが形成されている。
プライ本体部51c、屈曲部51dおよび折り返し部51eは連続している。プライ本体部51cは、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向内側に配置され、折り返し部51eは、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ幅方向外側に配置されている。ビードコア11およびビードフィラー12以外の部分において、折り返し部51eはプライ本体部51cに重ね合わされている。屈曲部51dは、第1のカーカスプライ51において、タイヤ径方向の最も内側の部分を構成している。
【0022】
第1のカーカスプライ51を構成する一対のプライ片51Aは、
図3に示されるように、タイヤ幅方向に延びる複数のカーカスコード51gを含んでいる。複数のカーカスコード51gは、タイヤ周方向に並んで配列されている。カーカスコード51gは、スチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。カーカスコード51gは、ゴムにより被覆されている。
【0023】
図1に示されるように、第1のカーカスプライ51を構成する一対のプライ片51Aにおいて、一対の一端51aのうちの少なくとも一方は、トレッド30の最外主溝32Aにおけるタイヤ幅方向内側の内壁32cよりも、タイヤ幅方向内側に位置している。また、一対の一端51aのうちの少なくとも一方は、トレッド30の最内主溝32Bにおけるタイヤ幅方向外側の外壁32dよりも、タイヤ幅方向外側に位置している。
【0024】
一方、折り返し部51eはトレッド30まで延びており、折り返し部51e側の端部であってプライ片51Aの折り返し端である他端51bは、ベルト40(ベルト41、42)と重複するように配置されている。
【0025】
ビード10は、さらにチェーハー13およびリムストリップゴム14を有する。
チェーハー13は、屈曲部51dを含む第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。すなわち、チェーハー13は、タイヤ1のタイヤ径方向内側の端部において、第1のカーカスプライ51におけるプライ本体部51cのタイヤ幅方向内側の外面から、屈曲部51dのタイヤ径方向内側の外面を覆い、折り返し部51eのタイヤ幅方向外側の外面を覆っている。
【0026】
リムストリップゴム14は、チェーハー13および第1のカーカスプライ51の折り返し部51eの、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、サイドウォールゴム部21で覆われている。
【0027】
ビード10、サイドウォール20およびトレッド30において、第1のカーカスプライ51のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー70が設けられている。インナーライナー70は、トレッド30においては、第1のカーカスプライ51の内面および中抜き部50Hにおいてベルト40の内面を覆っている。また、インナーライナー70は、サイドウォール20においては、第1のカーカスプライ51の内面を覆っている。さらに、インナーライナー70は、ビード10においては、第1のカーカスプライ51およびチェーハー13の内面を覆っている。
インナーライナー70は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0028】
本実施形態においては、上述したように、トレッド30のベルト40は、内側のベルト41と外側のベルト42を備えた2層構造である。内側のベルト41は、第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、外側のベルト42は、内側のベルト41のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。本実施形態では、内側のベルト41のタイヤ幅方向の寸法は、外側のベルト42のタイヤ幅方向の寸法よりも大きい。内側のベルト41のタイヤ幅方向の端部41aは、外側のベルト42のタイヤ幅方向の端部42aよりも、タイヤ幅方向外側に位置している。
【0029】
上述したように、本実施形態では、一対のプライ片51Aにおける各折り返し部51e側の他端51bは、それぞれベルト40と重複して配置されている。すなわち、プライ片51Aの他端51bと、ベルト40の少なくとも一部が、タイヤ内腔側からタイヤ外表面側に向かう部材積層方向において重なっている。この重複配置により、第1のカーカスプライ51をベルト40によって保持することができる。
【0030】
詳細には、本実施形態のベルト40(41、42)は、タイヤ幅方向において、内側のベルト41の端部41aよりも外側のベルト42の端部42aが内側に位置しており、プライ片51Aの他端51bは、外側のベルト42の端部42aよりもタイヤ幅方向内側に位置している。したがって、プライ片51Aの他端51bは、ベルト41、42の双方と重複している。また。プライ片51Aの他端51bは、プライ片51Aの中抜き部50H側の一端51aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。さらに、プライ片51Aの他端51bは、キャッププライ60のタイヤ幅方向の端部60aよりもタイヤ幅方向内側に位置している。
【0031】
なお、第1のカーカスプライ51をベルト40によって保持するためには、プライ片51Aの他端51bがベルト40を構成する2つのベルト41、42のいずれかと重複していればよい。すなわち他端51bは、タイヤ幅方向において、ベルト41の端部41aとベルト42の端部42aとの間に位置することにより、内側のベルト41と重複し、かつ、外側のベルト42とは重複していなくてもよい。
【0032】
キャッププライ60は、各端部41a、42aを含むベルト41、42全体を1枚で覆う幅広の部材である。本実施形態のキャッププライ60は1層であるが、2層以上配置されてもよい。
【0033】
図2に示されるように、本実施形態では、ベルト40のタイヤ幅方向外側の両端の部分と、第1のカーカスプライ51の折り返し部51eとの間に、無端状のゴム製パッド80が配置されている。パッド80の断面形状は、偏平な三角形状である。ベルト41、42のタイヤ径方向の端部41a、42aおよびキャッププライ60のタイヤ幅方向の端部60aのタイヤ幅方向の位置は、それぞれパッド80のタイヤ幅方向外側の端部80aとタイヤ幅方向内側の端部80bとの間の領域、つまりパッド80が存在する領域に位置している。なお、パッド80は省略されてもよい。
【0034】
図3に示されるように、ベルト41の構成要素である複数のベルトコード41gのタイヤ周方向に対する傾斜角θ1は、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下である(26°≦θ1≦33°)ことが好ましい。同様に、ベルト42の構成要素である複数のベルトコード42gのタイヤ周方向に対する傾斜角θ2は、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下である(26°≦θ2≦33°)ことが好ましい。すなわち、各ベルト41、42のベルトコード41g、42gは、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下の傾斜角で配置されていることが好ましい。
【0035】
本実施形態では、ベルトコード41gは、タイヤ周方向に対して例えば30°の傾斜角で配置されている(θ1=30°)。同様に、ベルトコード42gは、タイヤ周方に対して例えば30°の傾斜角で配置されている(θ2=30°)。ここで、傾斜角度θ1、θ2は、絶対値で示されている。そのため、図示の例では、ベルトコード41g、42gは、互いに交差するように配置されているが、傾斜角は同じ30°となっている。
【0036】
また、キャッププライ60のベルト補強層コード60gは、タイヤ周方向に沿っている。すなわち、補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角は0°である。このように補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角は、ベルトコード41g、42gのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1、θ2(=30°)よりも小さいことが好ましい。そして、ベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角(0°)と、ベルトコード41gのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1とのなす角度θ3、および、ベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角(0°)と、ベルトコード42gのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2とのなす角度θ4は、いずれも20°以上であることが好ましい。
【0037】
以上説明した本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0038】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア11をそれぞれ有する一対のビード10と、一対のビード10の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、トレッド30に配置されたベルト40と、ベルト40のタイヤ径方向外側に配置されたベルト補強層としてのキャッププライ60と、ベルト40のタイヤ径方向内側に配置され、一端51aがベルト40のタイヤ幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に配置され、他端51bがビードコア11で折り返された一対のプライ片51Aを含む第1のカーカスプライ51と、を備え、キャッププライ60はベルト補強層コード60gを含み、ベルト補強層コード60gはアラミド繊維を含む。
【0039】
これにより、軽量化およびそれに伴う転がり抵抗の低減と、キャッププライ60のベルト補強層コード60gがアラミド繊維を含むことによる剛性向上に伴う高速走行時の操縦安定性の向上との両立が図られる。
【0040】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、第1のカーカスプライ51を構成する一対のプライ片51Aの各々のビードコア11で折り返された他端51bは、ベルト40と重複していることが好ましい。
【0041】
これにより、第1のカーカスプライ51はベルト40によって強固に保持され、剛性向上に伴って操縦安定性を向上させることができる。
また、折り返し部51e側の他端51bをプライ片51A自体に貼り付けることができ、第1のカーカスプライ51を安定した位置に配置することができる。
【0042】
(3)本実施形態に係るタイヤ1においては、ベルト40を構成する各ベルト41、42はベルトコード41g、42gをそれぞれ含み、ベルトコード41g、42gは、タイヤ周方向に対して26°以上33°以下の傾斜角で配置されていることが好ましい。
【0043】
ベルトコード41g、42gをタイヤ周方向に沿って(タイヤ周方向に対して0°の傾斜角で)配置すると、剛性が最も高くなり、傾斜角が大きくなるほど剛性が低下する。本実施形態では、ベルトコード41g、42gの傾斜角をタイヤ周方向に対して26°以上33°以下の範囲に設定することにより、適度な剛性に伴う操縦安定性と、柔軟性による乗り心地の良さとを、バランスよく得ることができる。
【0044】
(4)本実施形態に係るタイヤ1においては、キャッププライ60のベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角は、ベルト41、42のベルトコード41g、42gのタイヤ周方向に対する傾斜角よりも小さく、かつ、ベルト補強層コード60gのタイヤ周方向に対する傾斜角と、ベルトコード41g、42gのタイヤ周方向に対する傾斜角とのなす角度が、20°以上であることが好ましい。
【0045】
これにより、適度な剛性に伴う操縦安定性と、柔軟性による乗り心地の良さとを、バランスよく得ることができる。
【0046】
(5)本実施形態に係るタイヤ1においては、キャッププライ60のベルト補強層コード60gは、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードであることが好ましい。
【0047】
これにより、キャッププライ60によるベルト40の補強効果ならびに耐久性がより向上し、中抜き部50Hが設けられることによって軽量化されたタイヤ1においても、剛性向上に伴う高速走行時の操縦安定性をより向上させることができる。また、アラミド繊維とナイロン繊維とを有するハイブリッドコードは、ゴムとの接着性に優れ、ベルト補強層コード60gがトレッドゴム部31から分離するセパレーションが抑制される。
【0048】
(6)本実施形態に係るタイヤ1において、トレッド30は、タイヤ幅方向に並んで設けられた複数の主溝32A、32Bを含むトレッドパターン32を有し、第1のカーカスプライ51の、一対のプライ片51Aのうちの少なくとも一方の一端51aは、トレッドパターン32におけるタイヤ幅方向の最も外側に配置された最外主溝32Aのタイヤ幅方向内側の内壁32cよりも、タイヤ幅方向内側に位置することが好ましい。
【0049】
これにより、高い剛性を確保できる。すなわち、トレッド30の主溝32Aは凹形状を有するため、タイヤ1の加硫成形の際には金型から押圧されて形成され、したがって、最外主溝32Aの内壁32cよりもタイヤ幅方向内側にプライ片51Aの一端51aを配置することで、加硫成形の際に金型からの押圧力を受けてプライ片51Aを強固に保持できる。その結果、剛性の向上、およびそれに伴う操縦安定性の向上を図ることができる。
【0050】
(7)本実施形態に係るタイヤ1において、トレッド30は、タイヤ幅方向に並んで設けられた複数の主溝32A、32Bを含むトレッドパターン32を有し、第1のカーカスプライ51の、一対のプライ片51Aのうちの少なくとも一方の一端51aは、トレッドパターン32におけるタイヤ幅方向中央に最も近い位置に配置された最内主溝32Bのタイヤ幅方向外側の外壁32dよりも、タイヤ幅方向外側に位置することが好ましい。
【0051】
これにより、プライ片51Aの一端51aは、タイヤ幅方向において、タイヤ幅方向に並ぶ主溝32Aと主溝32Bとの間に位置するため、上述の加硫成形の際にプライ片51Aが強固に保持される。その結果、剛性の向上、およびそれに伴う操縦安定性の向上を図ることができる。
【0052】
次に、
図4を参照して本発明の変形例について説明する。なお、以下の説明では上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略し、上記実施形態との相違点のみを説明する。
【0053】
図4に示される変形例においては、カーカスプライとして、第1のカーカスプライ51の他に、さらに第2のカーカスプライ52を含んでいる。第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51のように中抜き部50Hは有しておらず、一対のビード10の間に架け渡されている。
【0054】
第2のカーカスプライ52は、トレッド30において第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向内側に配置され、中抜き部50Hに配置されるセンター部52aを有している。第2のカーカスプライ52は、センター部52aから、サイドウォール20に沿ってタイヤ径方向内側に延びるプライ本体部52cと、ビードコア11の周囲で折り返される屈曲部52dと、屈曲部52dから、タイヤ径方向外側に延びる折り返し部52eと、を有する。折り返し部52eは、ビードフィラー12のタイヤ径方向外側の端部12aよりもタイヤ径方向内側の付近まで延びている。すなわち、第2のカーカスプライ52のタイヤ幅方向の他端52bは、ビード10のタイヤ径方向の領域内に位置している。
なお、第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51の外側に配置されていてもよい。
【0055】
(8)この変形例に係るタイヤ1においては、第1のカーカスプライ51以外の他のカーカスプライとして、第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向内側に配置され、一対のビードコア11の各々で折り返された少なくとも1つの第2のカーカスプライ52をさらに備えている。
【0056】
これにより、カーカスプライが第1のカーカスプライ51のみからなる上記実施形態に比べて、カーカスプライの数が増加したことにより剛性が向上するため、操縦安定性をより向上させることができる。
【0057】
(9)また、第1のカーカスプライ51の一対のプライ片51Aおよび第2のカーカスプライ52のうち、第1のカーカスプライ51のプライ片51Aの他端51bは、ベルト40と重複しており、第2のカーカスプライ52の折り返し部52e側の他端52bは、ビード10のタイヤ径方向の領域内に位置している。
【0058】
これにより、第2のカーカスプライ52によりビード10が補強されつつ、第1のカーカスプライ51はベルト40によって強固に保持され、剛性向上に伴って操縦安定性を向上させることができる。
【0059】
なお、上記変形例において、第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51と同様に、中抜き部を有していてもよい。
なお、第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51と同様に、折り返し部52eがトレッド30まで延び、他端52bがベルト40と重複していてもよい。
なお、第2のカーカスプライ52は、第1のカーカスプライ51のタイヤ径方向外側に配置されていてもよく、また、タイヤ径方向の内側および外側の両方に少なくとも1つずつ配置されていてもよい。
【0060】
以上、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
例えば、3つ以上のカーカスプライを備え、そのうちの少なくとも1つが中抜き部を有する態様、すなわちタイヤ幅方向の中央部が空いており、タイヤ幅方向の両側に分割された一対のプライ片を含む態様であってよい。また、3つ以上のカーカスプライのうちの少なくとも1つのカーカスプライの折り返し部がトレッド30まで延びており、その端部(上記実施形態での他端51bに相当)が、ベルト40に重複する態様であってよい。
【符号の説明】
【0061】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 ビード
11 ビードコア
20 サイドウォール
30 トレッド
32 トレッドパターン
32A 最外主溝(主溝)
32B 最内主溝(主溝)
32c 内壁
32d 外壁
40、41、42 ベルト
41g、42g ベルトコード
51 第1のカーカスプライ
51A プライ片
51a プライ片の一端
51b プライ片の他端
52 第2のカーカスプライ
52b 第2のカーカスプライの他端
60 キャッププライ(ベルト補強層)
60g ベルト補強層コード