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特開2022-82960情報登録支援プログラム、情報登録支援システムおよび情報登録支援方法
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  • 特開-情報登録支援プログラム、情報登録支援システムおよび情報登録支援方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082960
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】情報登録支援プログラム、情報登録支援システムおよび情報登録支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20220527BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194161
(22)【出願日】2020-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】399057182
【氏名又は名称】PSP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】志谷 和紀
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA24
(57)【要約】
【課題】
事前に登録された用語によるデータ入力を支援するための新規な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】
上記課題を解決するために、本発明は、医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援プログラムであって、コンピュータを、入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、として機能させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援プログラムであって、
コンピュータを、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、として機能させる情報登録支援プログラム。
【請求項2】
前記特定手段によって特定された前記特定用語を、前記情報登録における選択肢として入力システムに受け渡す手段として、コンピュータを更に機能させる請求項1に記載の情報登録支援プログラム。
【請求項3】
前記特定手段は、複数の医療文書を学習データとし、前記医療文書に含まれる単語の類似度を推定するために作成されたモデルにより推定される、前記特定用語と前記医療文書に含まれる単語との類似度に基づいて、前記入力文章中の類義語及び対応する前記特定用語を特定する請求項1又は請求項2に記載の情報登録支援プログラム。
【請求項4】
前記モデルは、前記特定用語を含む前記医療文書を学習データとして用いて作成される、請求項3に記載の情報登録支援プログラム。
【請求項5】
前記学習データにおける前記医療文書として内視鏡に関する文書を含み、
前記特定用語はJED用語である、請求項4に記載の情報登録支援プログラム。
【請求項6】
前記モデルは、単語の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて前記類似度が推定される、請求項3から請求項5の何れかに記載の情報登録支援プログラム。
【請求項7】
前記特定手段によって特定された前記類義語及び特定用語について、ユーザからの評価を受け付ける評価手段として、コンピュータを更に機能させ、
前記モデルは、前記評価に基づいて更新される、請求項3から請求項6の何れかに記載の情報登録支援プログラム。
【請求項8】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援システムであって、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、を備える情報登録支援システム。
【請求項9】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援方法であって、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力ステップと、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定ステップと、をコンピュータに実行させる情報登録支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報登録支援プログラム、情報登録支援システムおよび情報登録支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野でデータ活用が進められており、そのためデータの形式を統一させる動きがある。医療分野においても、内視鏡に関する各種の統計や合併症等のデータ管理を目的としたデータベース化が進められており、用語を統一した上で大規模な医療情報に関するデータベースの構築を目指すJED-Projectが知られている。(https://jedproject.jges.net/about/)
【0003】
JED-Projectでは、あらかじめ決められた用語をシステムに登録してその用語を選択して入力させることにより、用語の表記ゆれの問題解決を目指している。一方で、このような方式でデータの入力を求めると、医師や技師等の担当者は通常の所見作成等の業務に加えてJEDの登録用語によるデータ入力の負担が強いられることになり、ただでさえ多忙な医療現場においてはこのような負担が課題となっていた。
【0004】
ところで、近年では自然言語処理の技術開発が進められており、類語抽出による検索技術等も知られている。例えば特許文献1には、特定の単語の類語を文章中から抽出することで類語を含めた検索を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-234679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、類語を含めた検索を行うことしかできず、指定された用語によるデータ入力の負担を軽減することはできなかった。
【0007】
以上のような現状に鑑みて本発明は、事前に登録された用語によるデータ入力を支援するための新規な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援プログラムであって、コンピュータを、入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、として機能させる。
【0009】
このような構成とすることで、入力文章中に特定用語の類義語が含まれる場合に、入力文章中の類義語と特定用語とを特定することができる。これにより、ユーザが統一された用語として定められる特定用語を用いずに文章を作成した場合に、例えばユーザに特定用語を選択肢として提示したり自動的にデータ収集機関に送信したりすることで、特定用語によるデータ登録の支援を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記特定手段によって特定された前記特定用語を、前記情報登録における選択肢として入力システムに受け渡す手段として、コンピュータを更に機能させる。
このような構成とすることで、ユーザは自らが入力した文章に基づいて提示された特定用語に基づいて簡単にデータ登録を行うことができ、データ入力に係るユーザの負担が大幅に軽減される。特に医療現場においては医師等が所見文を作成するため、その所見文をもとに入力システムにおいて特定用語を選択肢として提示し、選択を受け付けてデータベースに登録することで、もとより必要とされていた業務の中でデータの入力を行うことができる。またユーザによる選択によってデータを登録するため、誤ったデータの登録を防止することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記特定手段は、複数の医療文書を学習データとし、前記医療文書に含まれる単語の類似度を推定するために作成されたモデルにより推定される、前記特定用語と前記医療文書に含まれる単語との類似度に基づいて、前記入力文章中の類義語及び対応する前記特定用語を特定する。
このような構成とすることで、医療文書に特化して作成されたモデルに基づき類義語及び特定用語を特定することができるため、医療現場での利用においてより正確な支援が可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記モデルは、前記特定用語を含む前記医療文書を学習データとして用いて作成される。
このような構成とすることで、特定用語の文章内での特性を要素として含んだ学習が行われ、特定用語の類語抽出における精度が向上する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記学習データにおける前記医療文書として内視鏡に関する文書を含み、前記特定用語はJED用語である。
このような構成とすることで、特に入力文章として内視鏡検査又は内視鏡手術に関する所見文が用いられる場合、入力文章に含まれるJED用語の抽出において精度向上効果が期待できる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記モデルは、単語の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて前記類似度を推定する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記特定手段によって特定された前記類義語及び特定用語について、ユーザからの評価を受け付ける評価手段として、コンピュータを更に機能させ、前記モデルは、前記評価に基づいて更新される。
このような構成とすることで、ユーザの入力によって更に追加学習するため、モデルによる類語及び特定用語の特定精度向上が期待できる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援装置であって、入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、を備える。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援方法であって、入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力ステップと、入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ユーザが自由に入力する文章に基づいて、事前に登録された用語によるデータ入力を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における情報登録支援システムの機能ブロック図である。
図2】本発明の実施形態におけるモデル作成に係る手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態におけるユーザからの入力文章の受け付けから、類義語及び特定用語に対する評価の受け付けまでの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、事前に登録された特定用語の類義語が入力文章中に含まれる場合に、当該類義語と特定用語を特定することで、特定用語によるデータ登録を支援するものである。特に本実施形態では、機械学習の技術を用いて作成されたモデルによって文章中における単語の特徴量を算出し、それに基づく単語同士の類似度を推定することで類義語を判断する。これにより、例えば入力文章に基づき特定された特定用語の中から選択を受け付けてデータ登録を行ったりすることで、ユーザが自由に入力した文章から容易に特定用語によるデータ登録ができるよう支援することが可能となる。
【0021】
より具体的には、特定用語を含む複数の文章を学習データとして用いて、その文章中における単語をベクトル化することができるモデルを作成する。機械学習の手法としてはWord2Vec等の周知の手法を用いることができる。このように作成されたモデルでは、文章中の単語のベクトルによって、単語の類似度を計算することができ、これによって、文章における単語の使われ方をもとに、学習データ中の特定用語との類似度が高いことばを類義語として特定することができる。
【0022】
以下、図面を用いて、本発明の情報登録支援システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0023】
例えば、本実施形態では情報登録支援装置の構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、コンピュータプログラム、本実施形態における各手段を複数の装置に配置したシステム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。
【0024】
本実施形態では、情報登録支援装置が、ユーザによって入力された内視鏡検査や手術に関する所見文を取得し、所見文を入力文章として用いる。また特定用語としてはJEDデータ登録に用いられるJED用語が事前に登録されており、情報登録支援装置は所見文に含まれるJED用語の類義語、及び対応するJED用語を特定する。そして特定したJED用語及び類義語を、JEDデータ登録を行うための入力システムに受け渡すことにより、例えば入力システムにおいてJED用語を選択肢として提示することができる。
【0025】
図1は、本実施形態の情報登録支援システムの機能構成を示す図である。本実施形態の情報登録支援システムは、情報登録支援装置1と、モデル作成装置2と、入力システム3と、データベースDBと、がネットワークNWを介して通信可能に構成される。情報登録支援装置1は入力文章に基づいて特定単語を特定するサーバとして機能する装置であり、類義語及び特定用語の特定処理を実行する。またモデル作成装置2は、複数の医療文書を学習データとしてモデルを作成する。入力システム3は、ユーザからの入力を受け付けて、データベースDBにデータを登録するためのシステムである。
【0026】
データベースDBは、入力システム3を介して、あらかじめ定められた特定用語により形式の統一されたデータを収集し管理する。本実施形態のデータベースDBは、内視鏡関連のデータ収集を行う機関が管理するデータベースであり、入力システム3がユーザにより選択された特定用語、即ちJED用語を、ネットワークNWを介してデータベースDBに送信することで、ユーザによるデータ登録を支援する。
【0027】
情報登録支援装置1としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、PC(Personal Computer)等の任意のコンピュータ装置を利用することができる。その他、スマートフォンやタブレット型端末を情報登録支援装置1として利用してもよい。モデル作成装置2やデータベースDBとの間で各種情報の入力及び送受信を行うための専用のアプリケーションや、専用のウェブページにアクセスするためのブラウザアプリケーション等が記憶装置に記憶され、演算装置が各種の処理を実行することで、任意のコンピュータ装置が本発明の情報登録支援装置1として機能する。
【0028】
モデル作成装置2としては、演算装置、記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、一般的なコンピュータ装置を利用することができる。なお本実施形態のモデル作成装置2は、任意のコンピュータを情報登録支援装置1として機能させるための情報登録支援プログラムをユーザの端末に送信するサーバ装置として機能する。なおモデル作成装置2が備える各手段を、情報登録支援装置1が備え、情報登録支援装置1がモデル作成装置2を兼ねる構成としてもよい。
【0029】
入力システム3は、ユーザが操作する端末を含む、1以上のコンピュータ装置により構成される。各コンピュータ装置としては、情報登録支援装置1やモデル作成装置2と同様に、演算装置、記憶装置、情報登録支援装置1及びデータベースDBにアクセスするためのネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、一般的なコンピュータ装置を利用することができる。
【0030】
本実施形態の情報登録支援装置1は、取得手段11と、特定手段12と、出力手段13と、評価手段14と、モデル記憶手段15と、を備える。なおこれらの手段の一部又は全部が外部のサーバ装置に備えられてもよい。この場合、ユーザの端末は各種の入出力を行うための装置として機能し、ユーザはネットワークNWを介して本発明を利用する。即ち、ユーザの端末を介して文章の入力を受け付けてサーバ装置に送信し、サーバ装置が上述の各手段によって処理した結果をユーザの端末に送信して表示させることで、ユーザによるデータの登録を支援する形態であってもよい。
【0031】
取得手段11は、入力文章として所見文を取得する。具体的には、入力システム3に対してユーザが所見文を入力、又は事前に作成された所見文のデータを選択し、入力システム3がその所見文を情報登録支援装置1に送信して、取得手段11が所見文を取得する。
【0032】
特定手段12は、事前に登録される特定用語の類義語が入力文章中に含まれる場合に、入寮文章中の類義語及び対応する特定用語を特定する。具体的には、モデル記憶手段15に記憶されたモデルにより、入力文章中の単語の単語ベクトルを算出し、それに基づき複数の特定用語との類似度を推定する。この類似度が閾値を上回る単語を、当該特定用語の類義語として、特定用語及び類義語の組み合わせを特定する。そして類義語及び特定用語の組み合わせを出力手段13に受け渡す。
【0033】
出力手段13は、特定手段12によって特定された特定用語を、ネットワークNWを介して入力システム3に送信する。ここで本実施形態では、特定用語だけでなく入力文章に含まれていた類義語も入力システム3に送信する。
【0034】
評価手段14は、入力システム3を介した特定用語の選択を、類義語及び特定用語に対するユーザからの評価として受け付けて、モデル記憶手段15に記憶されたモデルを更新する。具体的には、選択された特定用語と類義語との類似度が高くなり、選択されなかった特定用語と対応する類義語との類似度が低くなるよう、モデルのパラメータを調整する。なお入力文章において類義語が抽出されなかった場合や、特定手段12により特定された特定用語以外をユーザが指定した場合には、指定された単語(特定用語)の類義語が入力文章中に含まれるものとしてモデルのパラメータを調整する。この場合には、ユーザが指定した特定用語に対応する、入力文章中の類義語をユーザに指定させ、それに基づいてモデルのパラメータ調整を行ってもよい。
【0035】
モデル記憶手段15は、モデル作成装置2によって作成されたモデルを記憶する。ここで記憶されるモデルは、評価手段14により更新される。また本実施形態では、モデル記憶手段15がモデルをユーザ毎に記憶しておき、ユーザ毎に評価手段14がモデルを更新する。これにより、ユーザが評価を行うことでモデル記憶手段15にはユーザ毎に学習を重ねたモデルが記憶され、各ユーザの癖等も考慮した適切な類義語及び特定用語の特定ができるようになる。
【0036】
モデル作成装置2は、モデル作成手段21及び記憶手段22を備える。本実施形態では、モデル作成手段21が、特定用語を含む医療文書を学習データとして、モデルを作成する。このモデルにおいて医療文書に含まれる単語の特徴量が算出され、特徴量に基づいて単語同士の類似度が推定される。
【0037】
作成されたモデルは記憶手段22に記憶される。記憶手段22は、モデル作成手段21が作成したモデルの他に、学習データや、情報登録支援プログラム等を記憶している。
【0038】
入力システム3は、ユーザからの入力を受け付ける為のキーボード、マイク、カメラ等による入力手段31と、ユーザに対してデータ入力画面を表示するためのディスプレイやスピーカー、ネットワークNWへの接続手段等の出力手段32と、ユーザの入力に応じてデータベースDBにデータを登録する登録手段33と、を備える。
【0039】
図2は、本実施形態におけるモデル作成に係る処理手順を示すフローチャートである。まずステップS11において、学習データとして医療文書を収集する。ここでの収集は、自動化してもよいし、任意の文書を人手で集めてもよい。
【0040】
学習データとして用いる医療文書としては、利用時に入力システム3に入力される文章と同種のもの、即ち本実施形態では内視鏡検査又は手術に関する所見文であることが好ましい。特に本発明では、特定用語の類義語を特定することが目的であるため、複数の医療文書により構成される学習データの中で、全ての特定用語がそれぞれ少なくとも1回以上現れるように学習データを選択することが好ましい。
【0041】
次にステップS12では、収集した文書を利用して学習データを作成する。医療文書をそのまま学習データとして用いてもよいが、ここでは学習精度向上のために、全角、半角の表記を統一したり、不要な副詞や形容詞、記号を削除したりして前処理を行った学習データを作成する。
【0042】
そしてステップS13で、学習データを用いてニューラルネットワークモデルの作成を行う。モデル作成においては、単語ベクトル算出に用いられる任意の手法を用いることができ、単語とその周辺語の関係について学習を行う、Skip-gram法やCBOW(Continuous Bag-of-words)法が好ましく用いられる。これらは文章中の単語の並びに基づき単語の特徴をベクトル化する手法であり、同じような意味や使われ方をする単語は、同じような単語の並びで現れる、という思想から、似た単語ベクトルを持つ単語は似た意味、あるいは似た使われ方をする単語、即ち類義語等であると推定することが行われている。
【0043】
Skip-gram法では、ある単語を入力した時、その周辺にどのような単語が現れやすいかを予測することをタスクとして、医療文書を正解のデータとして与えることで学習を行う。より具体的には、入力として医療文書中のある単語を、出力としてその周辺語を与えることにより、ある単語に対するその周辺語の確率を学習させる。
【0044】
CBOW法では、周辺の語の順序に基づいて、中心の単語を予測することをタスクとして、医療文書を正解のデータとして与えることで学習を行う。より具体的には、入力として医療文書中のある単語の周辺語を、出力としてその単語を与えることにより、周辺語からある単語が現れる確率を学習させる。
【0045】
この学習の過程で、医療文書に含まれる単語が、ニューラルネットワークにおいてベクトルとして表現される。そして、学習データに基づき学習済のモデルに、更に追加の学習データとして入力文章を与えたときに、入力文章中の単語の単語ベクトルと、事前に登録された特定用語の単語ベクトルと、の類似度を、単語同士の類似度とみなして推定することができる。
【0046】
そして学習が完了すると、ステップS14において、記憶手段22にモデルが格納される。このようにして作成されたモデルが、情報登録支援装置1に送信されてモデル記憶手段15に記憶される。なお本実施形態では、Skip-gram法とCBOW法の両方でそれぞれモデルを作成し、記憶手段22に格納する。そして後述する特定手段12による特定時には、これらのモデルの両方でそれぞれ特定用語との類似度を推定し、類似度が高い方の結果を採用して、何れかのモデルにおいて閾値を超える類似度が推定された単語を、特定手段12が類義語として特定する。
【0047】
次に、図3を参照して、上記のように作成したモデルを用いてデータ登録を支援する際の処理の流れを説明する。図3は、ユーザからの入力文章の受付から、類義語及び特定用語に対する評価の受付までの処理手順を示すフローチャートである。ここでデータベースDBに登録されるJEDデータは、基本情報、所見、診断、処置、病理結果の項目を含んでおり、このうち基本情報以外の情報が、統一されたJED用語によって登録される。本実施形態の入力システム3は、患者や検査に関する基本情報を病院内のデータベース等から取得し、所見、診断、処置、病理結果に関する情報については、情報登録支援装置1に所見文を送信することで、JED用語による入力を支援する。
【0048】
まずステップS21では、取得手段11が、入力システム3を介して所見文を取得する。具体的には、入力システム3が、ユーザに対して入力画面を表示し、ユーザによる所見文の入力及びJEDデータの登録に必要な情報の指定を受け付ける。なおここでは、入力手段31によって直接ユーザに所見文を入力させてもよいし、図示しない病院内のデータベース等に登録された所見文を、ユーザによって指定させてもよい。なおここでの入力においては、キーボード等による文字入力の他、音声認識技術を利用した入力や、ユーザの目を撮影して視線の推定により文字を入力する視線入力等を採用してもよい。
【0049】
入力システム3において所見文が入力されると、取得手段11が入力された所見文を受け付けて特定手段12に受け渡し、ステップS22に進む。ステップS22では、特定手段12が、モデル記憶手段15に記憶されたモデルに、入力された所見文を学習させる。ここで本実施形態では、Skip-gram法により作成されたモデルと、CBOW法により作成されたモデルと、の両方に対してそれぞれ所見文を学習させる。なお本実施形態ではユーザ毎にモデルが記憶されており、ステップS22では本発明を使用しているユーザに対応したモデルが選択される。
【0050】
そして特定手段12は、ステップS22の学習により計算された単語ベクトルをもとに、事前にモデル記憶手段15に登録されるJED用語(特定用語)と、所見文に含まれる単語との類似度をステップS23において推定する。
【0051】
そしてJED用語との類似度が、事前に設定された閾値を超える単語を、当該JED用語の類義語と判断し、特定手段12が類義語及び当該JED用語の組み合わせを特定する(ステップS24)。
【0052】
そして特定手段12が特定した類義語及びJED用語の組み合わせを出力手段13に受け渡し、出力手段13が入力システム3に類義語及びJED用語を送信する(図3のステップS25)。ここで本実施形態では入力システム3が、特定された類義語及びJED用語を対応付けて表示する。これにより、本発明の情報登録支援装置1がJED登録すべきと判断した言葉をユーザが容易に確認できる。
【0053】
そしてステップS26では、入力システム3が、受信したJED用語を入力データの選択肢として表示し、ユーザによる選択を受け付けて、選択されたJED用語によるデータを登録手段33がデータベースDBに送信する。ここで送信される情報は上述の通り、基本情報、所見、診断、処置、病理結果を含む情報であり、このうち所見、診断、処置、病理結果の各々について、入力システム3が受信したJED用語を選択肢として提示して選択を受け付ける。データベースDBは、これらの情報を受信すると、ステップS27でJEDデータを登録する。
【0054】
また入力システム3は、ユーザによるJED用語の指定結果を情報登録支援装置1にも送信し、これを受信した評価手段14は、ユーザによるJED用語の選択を、類義語とJED用語の組み合わせに対する評価とみなす。すなわち、JED用語が選択された場合には、対応する類義語は当該JED用語の類義語として適切であったと推測できる。従って、選択されたJED用語と対応する類義語との類似度が上がるように、モデルにおける単語ベクトルの調整を行うことで更なる学習が行われる。このように更なる学習が行われたモデルは、ユーザ毎に区別してモデル記憶手段15に記憶される。
【0055】
なお入力文章において類義語が抽出されなかった場合や、特定手段12により特定された特定用語以外をユーザが指定した場合には、指定された単語(特定用語)の類義語が入力文章中に含まれるものとしてモデルのパラメータを調整する。この場合には、ユーザが指定した特定用語に対応する入力文章中の類義語をユーザに指定させ、それに基づいてモデルのパラメータ調整を行ってもよい。これにより、JED用語の選択を行うたびに、ユーザ毎にモデルが更新される。従って、繰り返し使われることで、各ユーザの癖等を反映してより高い精度で類義語を特定できるようになる効果が期待できる。
【符号の説明】
【0056】
1 :情報登録支援装置
2 :モデル作成装置
3 :入力システム
11 :取得手段
12 :特定手段
13 :出力手段
14 :評価手段
15 :モデル記憶手段
21 :モデル作成手段
22 :記憶手段
31 :入力手段
32 :出力手段
33 :登録手段
NW :ネットワーク
DB :データベース
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援プログラムであって、
コンピュータを、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記特定用語を、前記情報登録における選択肢として入力システムに受け渡す手段と、として機能させる情報登録支援プログラム。
【請求項2】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援プログラムであって、
コンピュータを、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、として機能させ
前記特定手段は、複数の医療文書を学習データとし、前記医療文書に含まれる単語の類似度を推定するために作成されたモデルにより推定される、前記特定用語と前記医療文書に含まれる単語との類似度に基づいて、前記入力文章中の類義語及び対応する前記特定用語を特定する情報登録支援プログラム。
【請求項3】
前記モデルは、前記特定用語を含む前記医療文書を学習データとして用いて作成される、請求項2に記載の情報登録支援プログラム。
【請求項4】
前記学習データにおける前記医療文書として内視鏡に関する文書を含み、
前記特定用語はJED用語である、請求項3に記載の情報登録支援プログラム。
【請求項5】
前記モデルは、単語の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて前記類似度が推定される、請求項2から請求項4の何れかに記載の情報登録支援プログラム。
【請求項6】
前記特定手段によって特定された前記類義語及び特定用語について、ユーザからの評価を受け付ける評価手段として、コンピュータを更に機能させ、
前記モデルは、前記評価に基づいて更新される、請求項2から請求項5の何れかに記載の情報登録支援プログラム。
【請求項7】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援システムであって、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記特定用語を、前記情報登録における選択肢として入力システムに受け渡す手段と、を備える情報登録支援システム。
【請求項8】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援システムであって、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力手段と、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定手段と、を備え
前記特定手段は、複数の医療文書を学習データとし、前記医療文書に含まれる単語の類似度を推定するために作成されたモデルにより推定される、前記特定用語と前記医療文書に含まれる単語との類似度に基づいて、前記入力文章中の類義語及び対応する前記特定用語を特定する情報登録支援システム。
【請求項9】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援方法であって、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力ステップと、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定ステップと、
前記特定手段によって特定された前記特定用語を、前記情報登録における選択肢として入力システムに受け渡すステップと、をコンピュータに実行させる情報登録支援方法。
【請求項10】
医療情報の登録に関し、文章に基づいて、事前に定められる特定用語による情報登録を支援するための情報登録支援方法であって、
入力画面を介して文章の入力を受け付ける入力ステップと、
入力文章中に、事前に登録される前記特定用語の類義語が含まれる場合に、前記入力文章中の当該類義語及び対応する前記特定用語を特定する特定ステップと、をコンピュータに実行させ
前記特定ステップでは、複数の医療文書を学習データとし、前記医療文書に含まれる単語の類似度を推定するために作成されたモデルにより推定される、前記特定用語と前記医療文書に含まれる単語との類似度に基づいて、前記入力文章中の類義語及び対応する前記特定用語を特定する情報登録支援方法。