(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082963
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】FC-BGA基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20220527BHJP
【FI】
H01L23/12 501B
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194164
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安達 貴良
(72)【発明者】
【氏名】菅原 賢太
(57)【要約】
【課題】機械的な強度の低下を起こす事無く、FC-BGA基板の熱履歴による反りを抑制可能なFC-BGA基板を提供する。
【解決手段】FC-BGA基板の、フリップチップ面側のビルドアップ層2においては、半導体チップ5の外周とFC-BGA基板の外周によって囲まれた領域の配線層が形成されていない部位に反り防止ビア1が形成されており、ボールグリッドアレイ面のビルドアップ層2´においては、はんだボール(ボールパッド4)が配置されておらず、配線層が形成されていない部位に、電気的に配線層と絶縁された反り防止用ビア1´が形成されている事を特徴とするFC-BGA基板10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と配線層が、交互に積層され、絶縁層に形成されたビアを介して配線層間が接続されたビルドアップ層を表裏面に備えたフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板であって、
一方の面は、アレイ状に配置された半田ボールを介して半導体チップとフリップチップ接続するフリップチップ面となっており、
他方の面は、アレイ状に配置された半田ボールを介してプリント配線基板と接続するボールグリッドアレイ面となっており、
ビルドアップ層の、
フリップチップ面側においては、半導体チップの外周とフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板の外周によって囲まれた領域の配線層が形成されていない部位に、
ボールグリッドアレイ面においては、はんだボールが配置されておらず、配線層が形成されていない部位に、
それぞれ、電気的に配線層と絶縁された反り防止用ビアが形成されている事を特徴とするフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板。
【請求項2】
前記反り防止用ビアが、スタガードビア、スタックビア、フルスタックビアの中から選ばれたいずれか1つ、またはいずれか2つ以上の組み合わせ、からなる事を特徴とする請求項1に記載のフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを実装する薄型の配線基板であるFC-BGA(フリップチップ・ボールグリッドアレイ)基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、搭載する半導体チップの大型化やマルチチップ化に伴い、FC-BGA基板は面積が広くなる傾向がある。
また、積層構造が多層配線化しつつある一方で、高密度配線を実現するため、特に絶縁層は従来よりも薄いものが採用されている。
このような傾向から基板全体としては大型化と薄型化が同時に進んでおり、製造工程を経てえられる配線基板は、従来よりも反りが出やすい傾向がある。
【0003】
特に、FC-BGA基板では、はんだ付けやその他の加熱処理工程で高温に晒される事で、反りが顕在化している。
【0004】
FC-BGA基板が実装する部品である半導体チップまたは実装基板に比べて反りがあると、FC-BGA基板上のはんだボールと半導体チップまたは実装基板の実装部との距離にばらつきがでるため、全てのはんだボールが半導体チップまたは実装基板の実装部に接合できない部分が出る、または、最初に接触したはんだボールがつぶれすぎて隣接するはんだボールと接続してしまい、本来あってはならない接合ができる実装不良が発生する。
【0005】
図2は、はんだボールの実装不良の状況を例示した断面説明図である。
図2(a)は、配線基板10が、半導体チップ5をフリップチップ実装する面(FCサイドとも記す。)側に反った場合を例示している。この場合は、半導体チップ5の外周側の電極と、配線基板10のFCサイドに配置されたはんだボール6と、は接合する事ができるが、半導体チップ5の内側の電極と、配線基板10のFCサイドに配置されたはんだボール6と、は接合する事ができない。その為、半導体チップ5の内側の電極においては、はんだ接合ができず、未接続部7となり、当該部分が実装不良となる。
【0006】
図2(b)は、逆に、配線基板10が、半導体チップ5をフリップチップ実装する面(FCサイド)側とは逆の面(BGAサイド、とも記す。)側に反った場合を例示している。この場合は、半導体チップ5の内側の電極と、配線基板10のFCサイドに配置されたはんだボール6と接
合する事ができるが、半導体チップ5の外周側の電極と、配線基板10のFCサイドに配置されたはんだボール6と、は接する事ができない。その為、半導体チップ5の外周側の電極においては、はんだ接合ができず、未接続部7が形成される事で実装不良となる。
【0007】
この様なはんだボールとの距離がばらつき、実装不良となる事を防止する為、FC-BGA基板の反りを矯正し、はんだボールとの距離のばらつきを少なくする事によって実装不良を回避しているが、FC-BGA基板の大型化と多層化に伴い、FC-BGA基板の反りを抑制する事が困難になっている。
【0008】
この様なことから、FC-BGA基板の反りを抑制する先行技術として、特許文献1には、半導体素子等の電子部品の実装時などに発生する基板の反りを有効に低減する事を課題とした技術が開示されている。この技術は、複数の配線層が絶縁層を介在させて積層され、該絶縁層に形成されたビアホールを介して層間接続されたビルドアップ多層配線層か
らなるコアレス基板において、配線が形成されていない部分に、厚さ方向に貫通する複数の開口部を形成する事により、基板の反りを回避している。これらの開口部である貫通孔を形成する事により、基板を加熱した時に発生し、基板を反らせる応力の伝達を貫通孔が阻害し、反りの発生を抑制している。
【0009】
しかしながら、貫通孔の部分は中空となる事から、応力の伝達を阻害するほどの貫通孔を形成した基板においては機械的な強度が低下してしまう虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の事情に鑑み、本発明は、機械的な強度の低下を起こす事無く、FC-BGA基板の熱履歴による反りを抑制可能なFC-BGA基板を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁層と配線層が、交互に積層され、絶縁層に形成されたビアを介して配線層間が接続されたビルドアップ層を表裏面に備えたフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板であって、
一方の面は、アレイ状に配置された半田ボールを介して半導体チップとフリップチップ接続するフリップチップ面となっており、
他方の面は、アレイ状に配置された半田ボールを介してプリント配線基板と接続するボールグリッドアレイ面となっており、
ビルドアップ層の、
フリップチップ面側においては、半導体チップの外周とフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板の外周によって囲まれた領域の配線層が形成されていない部位に、
ボールグリッドアレイ面においては、はんだボールが配置されておらず、配線層が形成されていない部位に、
それぞれ、電気的に配線層と絶縁された反り防止用ビアが形成されている事を特徴とするフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記反り防止用ビアが、スタガードビア、スタックビア、フルスタックビアの中から選ばれたいずれか1つ、またはいずれか2つ以上の組み合わせ、からなる事を特徴とする請求項1に記載のフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板によれば、フリップチップ面におけるビルドアップ層においては、半導体チップの外周とフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板の外周によって囲まれた領域の配線層が形成されていない部位に、電気的に配線層と絶縁された反り防止用ビアが形成されている。また、ボールグリッドアレイ面におけるビルドアップ層においては、はんだボールが配置されておらず、且つ配線層が形成されていない部位に、電気的に配線層と絶縁された反り防止用ビアが形成されている。反り防止用ビアは、円筒状の空洞である貫通孔ではなく、絶縁層に形成された貫通孔であるビアに配線層と同じ金属めっきが充填されている。その為、反り防止用ビアを形成しても機械的な強度を低下させる事無く、基板の反りを抑制する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の半導体パッケージ用配線基板を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<FC-BGA基板>
本発明のFC-BGA基板について、
図1を用いて説明する。なお、
図1は、コア層4の表裏両面にビルドアップ層2、2´を備えた配線基板10を例示しているが、本発明のFC-BGA基板は、コア層4が無い、所謂コアレス基板であっても構わない。
【0017】
本発明のFC-BGA基板10(以後、単に配線基板10とも記す。)は、コア層3の表裏面に、絶縁層と配線層が、交互に積層され、絶縁層に形成されたビアを介して配線層間が電気的に接続されたビルドアップ層2、2´を備えたフリップチップ・ボールグリッドアレイ基板10である。
【0018】
絶縁層は、電気的な絶縁材料であれば特に限定されないが、ビルドアップ層2、2´を形成する絶縁材料としては、絶縁性樹脂を好適に使用する事ができる。絶縁性樹脂としては、熱硬化型絶縁樹脂を用いることが一般的であるが、熱硬化型絶縁樹脂に代えて、光硬化型絶縁樹脂を用いることでビア形成用の孔をフォトリソグラフィ法にて形成することが可能となる。
【0019】
熱硬化型絶縁性樹脂を絶縁性材料とする場合、基板上に熱硬化型絶縁性樹脂を重ねた状態で、熱プレス装置にて加熱、加圧することで絶縁樹脂層を形成する。そして、ビア形成用の非貫通孔はレーザー加工装置により形成され、レーザー加工時にできた炭化した有機物を除去するデスミア処理を行う。
【0020】
また、熱硬化型絶縁樹脂の代わりに光硬化型絶縁性樹脂を絶縁層とする場合、ドライフィルム化した感光性絶縁性樹脂を基板上に重ねた状態で、ドライラミネート装置にて加熱、加圧することで絶縁性樹脂層を形成する。本発明ではドライフィルムを使用したが、感光性硬化材料、絶縁樹脂、溶剤等を混合して得られた感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光性を損なわない温度範囲で加熱乾燥する事により、絶縁性樹脂層を形成することも可能である。
次に、その感光性樹脂層を所定のパターンを備えたフォトマスクを用いて露光し、現像する事により、目的とするビア形成用の非貫通孔を有する感光性樹脂層を得た。
【0021】
上記、ビア用の非貫通孔を有する絶縁層を形成した後、配線の形成と非貫通孔に導体を充填するため導体層を形成する。本実施例ではセミアディティブ工法を用いた。まず、非貫通孔を含めて、絶縁層の表面を粗化する。次に、無電解銅めっき層を形成後、パターンめっきを行うために、感光性レジストやドライフィルムを用いて、フォトリソ法によりレジストパターンやドライフィルムパターンを形成する。次に、無電解めっき層を電解銅めっきの電極として電解銅めっきを行う事でパターンめっき層を形成する。次に、レジストパターンを剥離除去した後、無電解めっき層をエッチング除去する。この時、同時にパターンめっき層もある程度エッチングされるが、殆どのパターンめっき層は残留する。このパターンめっき層が配線層となる。本実施例ではセミアディティブ工法を用いたが、ビアのサイズ、形状によっては、ビアめっきとセミアディティブ工法により段階的に配線形成を行うことも可能である。
【0022】
この様にして、コア層3の表裏面に、絶縁層と導体層の形成を必要とする層数分を繰り返す事により、ビルドアップ層2、2´を形成する事ができる。
【0023】
ビルドアップ層2、2´の最表面にはソルダーレジスト層が形成され、所定の位置には
んだボールを介して電極接続するための開口部が形成される。
まず、FCサイド(半導体チップ5をフリップチップ接続する面)においては、半導体チップに備えられた電極に対応した形で、接続用電極が配置されており、それらの電極の上部にあるソルダーレジスト層には口部が形成され、ボールバッド上のソルダーレジストが除去されている。
【0024】
一方、BGAサイドにおいても同様に、FC-BGA基板を実装するプリント配線基板に備えられた接続用電極に対応するFC-BGA基板の位置に、ボールパッド4を形成され、その電極の上部にあるソルダーレジスト層には開口部が形成され、ボールパッド4上のソルダーレジストが除去されている。
【0025】
また、本発明のFC-BGA基板10のBGAサイドは、アレイ状に配置された半田ボール4を介してプリント配線基板と接続するボールグリッドアレイ面となっている。このBGAサイドの電極は、プリント配線基板側の電極サイズとピッチに合わせて大きなサイズとなっている。
【0026】
フリップチップ面側(
図1(a)に示したFCサイド)のビルドアップ層2においては、半導体チップ5(
図1(b)参照)の外周と、フリップチップ・ボールグリッドアレイ基板10(
図1(b)においては、単に配線基板10と記載した。)の外周によって囲まれた領域において、ビルドアップ層の配線層が形成されていない部位に、電気的にビルドアップ層の配線層と電気的に絶縁された反り防止用ビア1が形成されている。
【0027】
この反り防止用ビア1については、
図1(a)の左側に、その断面図を例示した。反り防止用ビア1は、その断面図に示した様な、ビルドアップ層2の全層に一直線上に連なって積層されたフルスタックビアであっても良いし、ビルドアップ層の厚さ方向に、ビアの上にビアを重ねたスタックビアであっても良いし、層毎に位置をずらせてビアを形成したスタガードビアであっても構わない。更には、これらのいずれか1種類のビアではなく、いずれか2種類を組み合わせたものであっても良いし、3種類全てを含むものであっても構わない。
【0028】
一方、FCサイドとは反対側の、ボールグリッドアレイ面(
図1(c)に示したBGAサイド)においては、はんだボール(ボールパッド4)が配置されておらず、配線層が形成されていない部位に、電気的に配線層と絶縁された反り防止用ビア1´が形成されている。
【0029】
この反り防止用ビア1´については、
図1(c)の左側に、その断面図を例示した。反り防止用ビア1´は、その断面図に示した様な、ビルドアップ層2´の全層に一直線上に連なって積層されたフルスタックビアであっても良いし、ビルドアップ層の厚さ方向に、ビアの上にビアを重ねたスタックビアであっても良いし、層毎に位置をずらせてビアを形成したスタガードビアであっても構わない。更には、これらのいずれか1種類のビアではなく、いずれか2種類を組み合わせたものであっても良いし、3種類全てを含むものであっても構わない。
なお、配線基板10が、コア層3を有している場合は、コア層3とビルドアップ層2´の全層に跨って積層されたフルスタックビア、スタックビア、スタガードビアとしても良い。
【0030】
この反り防止用ビア1、1´は、非貫通孔内が導体で充填された、フィルドビア構造となっている。
【0031】
以上で説明した様に、配線基板10のFCサイド(フリップチップ面、FC面)のビル
ドアップ層2において、半導体チップの外周と配線基板の外周によって囲まれた領域の配線層が形成されていない部位に反り防止ビア1を備え、BGAサイド(ボールグリッドアレイ面、BGA面)のビルドアップ層2´において、はんだボール(ボールパッド4)が配置されておらず、ビルドアップ層2´の内部においても配線層が形成されていない部位に、反り防止ビア1´を備える事により、配線基板10に加熱処理が行なわれても、配線基板10が反る事を抑制し、接続不良の発生を防止する事が可能となる。
【0032】
<FC-BGA基板の製造方法>
次に、本発明のFC-BGA基板の製造方法について説明する。
【0033】
本発明のFC-BGA基板の製造方法は、従来のFC-BGA基板の製造方法と基本的には同じ製造方法によって製造する事が可能である。
【0034】
例えば、コア層を備えているFC-BGA基板においては、まずコア層となる薄型のプリント配線基板を準備する。次に、その薄型のプリント配線基板の表裏面にビルドアップ工法を用いてビルドアップ層を形成する事によってFC-BGA基板することができる。
【0035】
本発明のFC-BGA基板の製造方法においては、従来のFC-BGA基板の製造方法におけるビルドアップ層のビア形成時に、従来のビアに加えて、反り防止用ビアを形成する。
【0036】
なお、反り防止用ビアとして、フルスタックビアを採用する場合、コア層を含めて全層に連なるフルスタックビアとする場合は、コア層となる薄型のプリント配線基板を製造する際に、所定の位置に非貫通孔を形成し、非貫通孔の内部に導体を充填するか、または非貫通孔の内壁面にめっき層を形成した後、非通孔の中空部を絶縁樹脂で充填しておく。
【0037】
またコア層の無いFC-BGA基板における反り防止用ビアは、コア層があるビルドアップ基板と同様に、従来のFC-BGA基板の製造方法におけるビルドアップ層のビア形成時に、従来のビアに加えて、反り防止用ビアを形成すれば良い。
【符号の説明】
【0038】
1、1´・・・反り防止ビア
2、2´・・・ビルドアップ層
3・・・コア層
4・・・ボールパッド(BGAサイドのはんだボール)
5・・・半導体チップ
6・・・はんだボール
7・・・未接続部
10・・・配線基板(FC-BGA基板)