(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082968
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20220527BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194170
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】596165589
【氏名又は名称】学校法人 聖マリアンナ医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 謙三
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】各種疾患の重症度を自動で特定することができる情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システム100において、制御部110は、取得ステップを実行する取得部と、特定ステップを実行する特定部と、を有する。取得ステップでは、第1言動を取得する。特定ステップでは、第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定する。参照情報は、第2言動と疾患の特徴量との関係を示す。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムであって、
取得ステップと、特定ステップとを実行するように構成され、
前記取得ステップでは、第1言動を取得し、
前記特定ステップでは、前記第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定し、ここで、前記参照情報とは、第2言動と前記疾患の特徴量との関係を示す情報である、
情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記参照情報は、前記第2言動から前記疾患の特徴量を学習させた学習済みモデルである、
情報処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理システムにおいて、
前記学習済みモデルは、前記特定ステップで特定した内容とこれに対応する臨床データとを学習させたものである、
情報処理システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記疾患は、脳疾患、神経疾患及び精神疾患の少なくともいずれかである、
情報処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記脳疾患は、脳卒中である、
情報処理システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記特定ステップでは、NIHSS、ABCD2スコア、CHADS2スコア、GCS、JCS、Barthel Index、MMSE、HDS-R、及び病院前脳卒中スケールの少なくともいずれかの評価を特定する、
情報処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報処理システムにおいて、
前記特定ステップでは、NIHSSを特定する、
情報処理システム。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記特定ステップでは、前記第1言動のうち所定の言動を重み付けして、前記疾患の重症度を特定する、
情報処理システム。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記取得ステップでは、診察機器から前記第1言動を取得する、
情報処理システム。
【請求項10】
請求項9に記載の情報処理システムにおいて、
前記診察機器は、VRゴーグル、マイク、カメラ、スマートグラス、スマートウォッチ及びスマートリングの少なくともいずれかである、
情報処理システム。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
受付ステップと、生成ステップとを実行するように構成され、
前記受付ステップでは、前記第1言動を第1端末から受け付け、
前記生成ステップでは、前記特定ステップの結果を第2端末で視認可能な視覚情報を生成する、
情報処理システム。
【請求項12】
情報処理方法であって、
取得ステップと、特定ステップとを備え、
前記取得ステップでは、入力された第1言動を取得し、
前記特定ステップでは、前記第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定し、ここで、前記参照情報とは、第2言動と前記疾患の特徴量との関係を示す情報である、
情報処理方法。
【請求項13】
プログラムであって、
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の情報処理システムにおける各ステップをコンピュータに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
SDMT(Symbol Digit Modalities Test)を使用して、患者が多発性硬化症を患っているかどうかを評価する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る技術は、患者自身がスマートフォンでテストを実施する必要があり、当該患者の身体機能が低下している場合は、必ずしも正しい測定結果が出るとは限らなかった。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、各種疾患の重症度を自動で特定することができる情報処理システムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、情報処理システムが提供される。この情報処理システムは、取得ステップと、特定ステップとを実行するように構成される。取得ステップでは、第1言動を取得する。特定ステップでは、第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定する。参照情報とは、第2言動と疾患の特徴量との関係を示す情報である。
【0007】
上記の開示によれば、各種疾患の重症度を自動で特定できる情報処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
【
図2】情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】制御部110の情報処理を示すアクティビティ図である。
【
図4】情報処理システム100による画面表示の例を示す図である。
【
図5】情報処理システム100による画面表示の例を示す図である。
【
図8】測定項目「消去現象と注意障害」の概要を示す図である。
【
図9】NIHSSスコアの測定結果を示す図である。
【
図10】情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
【0014】
1.情報処理システム100の構成
図1は、情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、情報処理システム100は、制御部110、記憶部120、表示情報生成部130、入力受付部140及び通信部150を備える。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等であって、情報処理システム100の全体を制御する。記憶部120は、種々のプログラム及びデータを記憶するものであり、例えばメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0015】
また、記憶部120は、制御部110がプログラムに基づき処理を実行する際に用いるデータ等を記憶する。そして、記憶部120に記憶されているプログラムに基づいて制御部110が処理を実行することにより、後述する各種処理が実現される。すなわち、当該プログラムは、情報処理システム100における各部をコンピュータに実行させる。なお、記憶部120に関して、少なくとも一部の情報が記憶部120以外の外部サーバに記憶されていてもよいし、複数の端末にブロックチェーン技術等を用いて分散して記憶されていてもよい。
【0016】
表示情報生成部130は、テキスト、画像(静止画及び動画を含む)を表示するものであり、任意のディスプレイに表示する情報を生成する。入力受付部140は、情報処理システム100に種々の情報を入力するものであり、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等から入力される信号を受け付ける。通信部150は、NIC(Network Interface Card)等であって、情報処理システム100をネットワークに接続し、有線接続又は無線接続により他の装置又は構成要素とデータ通信可能に構成される。なお、情報処理システム100は、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。
【0017】
2.情報処理システム100の機能構成
図2は、情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部110は、取得部111と、特定部112とを備える。取得部111は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。取得部111は、取得ステップを実行するように構成される。取得ステップは、第1言動を取得するステップである。ここで、第1言動とは、患者から取得した音声、四肢の動き、眼球運動、感覚及び顔の動き等を示す。また、取得するとは、例えば、第1言動を記憶部120(例えばRAMやHDD)に記憶すること、又は、第1言動を、通信部150を経由して他の端末に送信し、当該端末で一時記憶すること等を示す。
【0018】
特定部112は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。特定部112は、特定ステップを実行するように構成される。特定ステップは、第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定する。ここで、参照情報とは、第2言動と疾患の特徴量との関係を示す情報であって、ルックアップテーブル、関数、数理モデル、学習済みモデル等を示す。また、第2言動とは、予め取得された言動(音声、四肢の動き、眼球運動、感覚及び顔の動き等)であって、医師によって疾患の重症度の判断がなされた言動を示す。なお、第1実施形態では、参照情報は、第2言動から疾患の特徴量を学習させた学習済みモデル121として説明する。学習済みモデル121は、記憶部120に記憶されている。
【0019】
ここで、疾患は、脳疾患、神経疾患及び精神疾患の少なくともいずれかであってもよい。脳疾患は、例えば、脳卒中、認知症、水頭症、高次脳機能障害等を示す。神経疾患は、例えば、多発性硬化症、視神経脊髄炎、重症筋無力症等を示す。精神疾患は、例えば、うつ病、強迫性障害、睡眠障害、適応障害等を示す。第1実施形態では、疾患として脳疾患を取り上げ、特に脳卒中の場合について説明する。
【0020】
また、特定するとは、例えば、予め記憶部120(例えばROMやHDD)にルックアップテーブルが記憶されており、制御部110が記憶部120から当該ルックアップテーブルを読み出して特定されること、予め記憶部120(例えばROMやHDD)に関数が記憶されており、当該関数に対して第1言動から得られる特徴量を入力することで特定されること、予め記憶部120(例えばROMやHDD)に数理モデルが記憶されており、当該数理モデルに対して第1言動から得られる特徴量を入力することで特定されること、又は、第2言動と疾患の特徴量とを学習させた学習済みモデルに基づいて、当該学習済みモデルに対して第1言動から得られる特徴量を入力することで特定されること等を示す。
【0021】
特定部112は、第1言動のうち所定の言動を重み付けして、疾患の重症度を特定してもよい。疾患の種類によっては、複数の第1言動のうち所定の言動(1又は2以上)を重み付けした方が、より正確に疾患の重症度を特定できる場合がある。また、NIHSSスコアの場合、夜間に測定した場合は昼間に測定した場合に比べてスコアが悪くなる傾向があるため、測定時間に応じて言動の重み付けを変更してもよい。これにより、さらに正確に疾患の重症度を特定できるため、様々な疾患に対応することができる。
【0022】
また、学習済みモデル121は、特定部112で特定した内容とこれに対応する臨床データとを学習させたものであってもよい。すなわち、学習済みモデル121は、精度向上のためにさらにデータを積み重ねてもよい。臨床データは、患者の状態(年齢、性別、BMI、血圧等)と医師の診断内容とを突合させたデータのことを示す。
【0023】
さらに、脳卒中の重症度を特定する場合、特定部112は、NIHSS、ABCD2スコア、CHADS2スコア、GCS、JCS、Barthel Index、MMSE、HDS-R、及び病院前脳卒中スケールの少なくともいずれかの評価を特定してもよい。ここで、病院前脳卒中スケールとは、救急隊等が実施する脳卒中重症度評価スケールであって、脳卒中の発症から来院までの診療支援として活用する脳卒中重症度評価スケールのことを示す。病院前脳卒中スケールは、例えば、CPSS、MPSS、KPSS及びSPSSが挙げられる。第1実施形態では、特にNIHSSを特定する場合について説明する。
【0024】
ここで、NIHSSの特徴について説明する。NIHSSは、脳卒中重症度評価スケールの一つである。NIHSSは、例えば、脳梗塞の治療法であるt-PA静注療法の前後に施行される。t-PA静注療法では、t-PA静注療法前、t-PA静注療法開始からt-PA静注療法後2時間までは15分ごと、t-PA静注療法後2時間から8時間までは30分ごと、t-PA静注療法後8時間から24時間までは1時間ごとにNIHSSを施行するように管理指針が出ている。
【0025】
しかしながら、NIHSSは、属人的な評価であるため、評価者(医療従事者)によって測定結果にばらつきが生じることがある。また、同じ評価者であっても、特に再現性が乏しい評価項目については測定結果にばらつきが生じやすい。NIHSSには再現性が求められるため、NIHSSの評価経験が少ない評価者であっても、測定結果にばらつきや誤差が生じることを防止する必要がある。そこで、第1実施形態に係る情報処理システム100を好適に使用することができる。
【0026】
3.情報処理
図3は、制御部110の情報処理を示すアクティビティ図である。制御部110は、取得部111が第1言動を取得したと判断すると(A110)、学習済みモデル121を読み出す(A120)。次に、制御部110は、取得した第1言動を読み出す(A130)。なお、制御部110は、第1言動を読みだした後に学習済みモデル121を読み出してもよいし、学習済みモデル121の読み出しと第1言動の読み出しとを同時に行ってもよい。次に、特定部112は、第1言動と学習済みモデル121とに基づいて、脳卒中の重症度を特定する(A140)。
【0027】
以上をまとめると、情報処理方法は、取得ステップと、特定ステップとを備える。取得ステップでは、入力された第1言動を取得する。特定ステップでは、第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定する。参照情報とは、第2言動と疾患の特徴量との関係を示す情報である。
【0028】
4.具体例
次に、
図4~
図9を用いて、情報処理システム100による画面表示の例を示す。
図4に示すように、情報処理システム100を起動させると、どの評価方法を使用して脳卒中の重症度を特定するかを選択する画面が表示される。第1実施形態では、NIHSSが選択された場合について説明する。そして、「次へ」ボタン310が押されると、
図5に示すように、患者に装着される診察機器が表示される。
図5では、患者に装着される診察機器として、VRゴーグル、ヘッドフォン、マイク、刺激電極、カメラ及び通知ボタンが表示されている。第1実施形態では、取得部111は、診察機器から第1言動を取得するように構成される。第1言動を取得する診察機器は、VRゴーグル、マイク、カメラ、スマートグラス、スマートウォッチ及びスマートリングの少なくともいずれかであればよい。
【0029】
そして、「装着済み」ボタン320が押されると、NIHSSの自動測定が開始される。VRゴーグルに仮想医師が表示され、動きと音声を使って診察が開始される。
図6は、測定項目「注視」の概要を示す図である。注視を測定する場合、VRゴーグルに物体を表示し、ヘッドフォンから「これを目で追ってください」の音声を流し、物体を移動させる。取得部111は、視点測定機器が装着されたVRゴーグルから患者の目の動き、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、患者の目の動きに基づいて、注視の程度を特定する。
【0030】
図7は、測定項目「視野」の概要を示す図である。視野を測定する場合、VRゴーグルの視野の中央に物体を表示させ、VRゴーグルの視野の片側、例えば、右側を隠した状態とする。そして、ヘッドフォンから「中央の物体を見ていてください」の音声を流し、VRゴーグルの視野の反対側、例えば、左側で光340を点滅させる。そして、「光が確認できたら通知ボタンを押してください」の音声を流す。取得部111は、通知ボタンから患者の応答、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、患者の応答に基づいて、視野の程度を特定する。
【0031】
図8は、測定項目「消去現象と注意障害」の概要を示す図である。消去現象と注意障害を測定する場合、VRゴーグルにいくつかの模様を表記し、ヘッドフォンから「画面には何が見えますか」の音声を流す。そして、これに対する患者からの回答をマイクで収集する。また、刺激電極から電気刺激を行い、ヘッドフォンから「今はどっちに電流が流れていますか」の音声を流す。そして、これに対する患者からの回答をマイクで収集する。取得部111は、マイクから患者の回答、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、患者の回答に基づいて、消去現象と注意障害の程度を特定する。
【0032】
また、他にも、構音障害、四肢の動き、眼球運動、感覚、顔の動き等を測定することができる。構音障害を測定する場合、ヘッドフォンから「今日は何月何日ですか」の音声を流す。そして、患者からの回答をマイクで収集する。取得部111は、マイクから患者の回答、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、患者からの回答の抑揚や聞き取れるか等に基づいて、構音障害の程度を特定する。
【0033】
四肢の動きを測定する場合、ヘッドフォンから「手足を動かしてください」の音声を流す。そして、患者の動きをカメラで撮影する。取得部111は、カメラから患者の四肢の動き、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、患者の四肢の動きに基づいて、四肢の運動麻痺や失調の程度を特定する。眼球運動を測定する場合、VRゴーグルに例えば所定のウェブサイトを表示する。取得部111は、視点測定機器が装着されたVRゴーグルから患者の目の動き、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、患者がどのように目を動かしているかに基づいて、眼球運動の程度を特定する。
【0034】
感覚を測定する場合、患者の四肢に装着された刺激電極から電気刺激を行い、ヘッドフォンから「左右どちらの方が痛みを感じますか」の音声を流す。そして、患者からの回答をマイクで収集する。取得部111は、マイクから患者の回答、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、痛みの左右差に基づいて、四肢の感覚の障害の程度を特定する。顔の動きを測定する場合、カメラを用いて患者の正面から顔面を撮影する。取得部111は、カメラから患者の顔面の左右差、すなわち第1言動を取得する。特定部112は、顔面の左右差に基づいて、顔面麻痺の程度を特定する。
【0035】
図9は、NIHSSスコアの測定結果を示す図である。
図9では、各測定項目についてそれぞれ点数が表示され、これらの合計点が表示されている。また、参考のために、前回の合計点も表示されている。「結果を確認する」ボタン330をクリックすると、取得した動画や音声を確認することができる。また、各測定項目の点数が違う場合は、当該点数を直接訂正することができる。
【0036】
第1実施形態によれば、各種疾患の重症度を自動で特定することができるため、測定している間、医師等の医療従事者は、他の業務を行うことができる。すなわち、医療従事者は、測定している間、患者から離れることができるため、時間を有効活用することができる。
【0037】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と重複する部分の説明は適宜省略する。
【0038】
図10は、情報処理システム100の機能構成を示すブロック図である。
図10に示すように、制御部110は、受付部113と、生成部114とを備える。受付部113は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。受付部113は、受付ステップを実行するように構成される。受付ステップは、第1言動を第1端末210から受け付けるステップである。第1端末210は、例えば、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。ここで、受け付けるとは、例えば、第1端末210で取得した第1言動を、通信部150を経由して受信すること、又は、第1端末210で取得した第1言動が記録された記録媒体から、当該第1言動を読み出して記憶部120(例えばRAMやHDD)に記憶すること等を示す。
【0039】
生成部114は、ソフトウェア(記憶部120に記憶されている)による情報処理がハードウェア(制御部110)によって具体的に実現されているものである。生成部114は、生成ステップを実行するように構成される。生成ステップは、特定部112の結果を第2端末220で視認可能な視覚情報を生成するステップである。第2端末220は、例えば、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。ここで、生成するとは、例えば、記憶部120(例えばRAMやHDD)に記憶されている疾患の重症度の特定結果について、第2端末220に表示させる際における画面、画像、レンダリング情報等の視覚情報を生成することを示す。なお、第1端末210と第2端末220とは、同一の端末であってもよい。
【0040】
第2実施形態によれば、患者は、自身の第2端末220で疾患の重症度を確認することができるため、時間や場所に拘束されることなく自身の体調を気にかけることができる。すなわち、患者に対して自身の疾患に対する意識付けを図ることができる。
【0041】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記情報処理システムにおいて、前記参照情報は、前記第2言動から前記疾患の特徴量を学習させた学習済みモデルである、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記学習済みモデルは、前記特定ステップで特定した内容とこれに対応する臨床データとを学習させたものである、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記疾患は、脳疾患、神経疾患及び精神疾患の少なくともいずれかである、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記脳疾患は、脳卒中である、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記特定ステップでは、NIHSS、ABCD2スコア、CHADS2スコア、GCS、JCS、BarthelIndex、MMSE、HDS-R、及び病院前脳卒中スケールの少なくともいずれかの評価を特定する、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記特定ステップでは、NIHSSを特定する、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記特定ステップでは、前記第1言動のうち所定の言動を重み付けして、前記疾患の重症度を特定する、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記取得ステップでは、診察機器から前記第1言動を取得する、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、前記診察機器は、VRゴーグル、マイク、カメラ、スマートグラス、スマートウォッチ及びスマートリングの少なくともいずれかである、情報処理システム。
前記情報処理システムにおいて、受付ステップと、生成ステップとを実行するように構成され、前記受付ステップでは、前記第1言動を第1端末から受け付け、前記生成ステップでは、前記特定ステップの結果を第2端末で視認可能な視覚情報を生成する、情報処理システム。
情報処理方法であって、取得ステップと、特定ステップとを備え、前記取得ステップでは、入力された第1言動を取得し、前記特定ステップでは、前記第1言動と参照情報とに基づいて、疾患の重症度を特定し、ここで、前記参照情報とは、第2言動と前記疾患の特徴量との関係を示す情報である、情報処理方法。
プログラムであって、前記情報処理システムにおける各ステップをコンピュータに実行させるための、プログラム。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0042】
100 :情報処理システム
110 :制御部
111 :取得部
112 :特定部
113 :受付部
114 :生成部
120 :記憶部
121 :モデル
130 :表示情報生成部
140 :入力受付部
150 :通信部
210 :第1端末
220 :第2端末
310 :「次へ」ボタン
320 :「装着済み」ボタン
330 :「結果を確認する」ボタン
340 :光