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特開2022-82983天びんの水平調整作業補助用携帯端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082983
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】天びんの水平調整作業補助用携帯端末装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/00 20060101AFI20220527BHJP
   G01G 3/14 20060101ALI20220527BHJP
   G01G 7/02 20060101ALI20220527BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20220527BHJP
【FI】
G01G23/00 D
G01G3/14
G01G7/02
G06F3/0484
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194188
(22)【出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社A&Dホロンホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】長根 吉一
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA25
5E555AA43
5E555BA06
5E555BB06
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB48
5E555DA02
5E555DB41
5E555DB53
5E555DC13
5E555DC26
5E555DD01
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】拡張現実(AR)を利用して、作業者の熟練度に依存せず、初心者でも容易に、短時間で、天びんの水平調整作業を終了することができるように補助するスマートフォンなどの携帯端末装置を提供する。
【解決手段】スマートフォン31は、カメラ部32と、操作部33と、表示部36と、記憶領域部34と、演算処理部35と、通信部37と、を備え、カメラ部32は、天びんに表示された二次元コードと水準器を撮像して得た画像データを演算処理部35に送り、演算処理部35は、記憶領域部34に格納してあるARデータ39と機種特定データ40を含むアプリケーションソフト38に基づいて、画像データから天びんの機種を特定し、特定した機種がAR表示の対象であれば、画像データの水準器の傾斜表示状態に応じた水平調整作業に対応付けて用意したARデータ39を選択して、このARデータ39を表示部36に送って表示する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量センサを収容したケーシングに、回転体の回転方向及び回転量に応じて昇降動する足コマを備えて高さ調整を行う複数の高さ調整機構と、機種特定情報をコード化した二次元コードと、ARマーカーたる水準器と、を備えてなる天びんにおける水平調整作業を補助する携帯端末装置であって、
この携帯端末装置は、カメラ部と、操作部と、表示部と、記憶領域部と、演算処理部と、通信部と、を備え、
前記カメラ部は、前記二次元コードと前記水準器を撮像して得た画像データを前記演算処理部に送るものであり、
前記操作部は、操作内容を入力するもので、入力された操作内容は前記演算処理部に送られるものであり、
前記記憶領域部は、前記通信部を介して外部から得た天びんの水準器の傾斜表示状態に応じた水平調整作業に対応付けて用意した拡張現実データとこの拡張現実データの表示対象となる天びんの機種を特定する機種特定データとを含むアプリケーションソフトを格納するものであり、
前記演算処理部は、前記アプリケーションソフトに基づいて、前記カメラ部から得た画像データから、天びんの機種を特定し、特定した機種が拡張現実データの表示対象であれば、前記画像データの水準器の傾斜表示状態に応じた水平調整作業に対応付けて用意した拡張現実データを選択して、この拡張現実データを前記表示部に送るものであり、
前記表示部は、前記演算処理部から送られた前記拡張現実データを表示するものである、
天びんの水平調整作業補助用携帯端末装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、水平調整作業が完了したと判断すると、表示部に、作業者にキャリブレーションの実行を求める表示を指示する
請求項1に記載の天びんの水平調整作業補助用携帯端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天びんを水平に設置するための水平調整作業を補助する携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量装置である天びんは、重量加速度方向が一定のときに質量と重力の績を力として検出し、基準分銅の質量を基準に基準分銅に加わる重力と同じ重力が被計量物に加わることを前提として、質量を検出する。したがって、正確な計量を行うために、天びんを設置するときは、重力ベクトルを合わせるための水平調整を行う必要がある。
【0003】
従来、この水平調整は、例えば、天びんの質量センサを収容するケースに設けた複数の足コマのうち適宜な足コマの高さ調節を、回転体の所定方向への回転によって前記足コマを昇降動することで行っている(特許文献1)。そして、前記回転体の所定方向への回転操作は、天びんのケースに設けた水準器が示す水平状態からのズレを確認しながら行うことになる。また、天びんの機種によって足コマの数や回転体の構造が異なるため、作業者が不慣れな場合は当該機種の取扱説明書を参照しながら作業を行う必要がある。このため、水平調整作業は、作業者の熟練度に依存するところが大きく、初心者の場合は調整作業が終了するまでに長時間を要している。
【0004】
ところで、従来、はんだ印刷機、基板検査機などの基板に生産作業を施す基板生産機等の設備機械を床面に設置する際に、水平度の調整作業を作業者の熟練度によらず短時間で終了させるための支援装置が知られている(特許文献2)。この水平度調整支援装置は、底面部に複数の高さ調整機構を有する設備機械に水準器を設置し、この水準器を撮像して得た画像データを処理して、調整すべき高さ調整機構を特定し、この高さ調整機構およびその調整量を表示モニタに表示することで、調整作業を指示するものである。したがって、初心者であっても、前記表示モニタに表示された指示にしたがって作業することにより、短時間で調整作業を終了することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5843999号公報
【特許文献2】特開2012-220444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の水平度調整支援装置は、大型機械の水平度調整作業を支援するものであり、支援装置自体も大型になるため、広い作業空間が必要である。このため、クリーンルームなどの比較的狭い空間で行われる天びんの水平調整作業に使用するには、前記水平度調整支援装置は適していない。このように、従来においては、天びんの水平調整作業を作業者の熟練度に依存せず、初心者でも容易に、短時間で終了することができる水平調整装置が存在しないので、その開発が要望されている。
【0007】
本発明は、上述の要望に応えるためになされたもので、拡張現実(AR:Augmented Reality、以下「AR」という。)を利用して、作業者の熟練度に依存せず、初心者でも容易に、短時間で、天びんの水平調整作業を終了することができるように補助する携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る天びんの水平調整作業補助用携帯端末装置は、質量センサを収容したケーシングに、回転体の回転方向及び回転量に応じて昇降動する足コマを備えて高さ調整を行う複数の高さ調整機構と、機種特定データをコード化した二次元コードと、ARマーカーたる水準器と、を備えてなる天びんにおける水平調整作業を補助する携帯端末装置であって、この携帯端末装置は、カメラ部と、操作部と、表示部と、記憶領域部と、演算処理部と、通信部と、を備え、前記カメラ部は、前記二次元コードと前記水準器を撮像して得た画像データを前記演算処理部に送るものであり、前記操作部は、操作内容を入力するもので、入力された操作内容は前記演算処理部に送られるものであり、前記記憶領域部は、前記通信部を介して外部から得た水準器の傾斜状態に応じた水平調整作業に対応付けて用意したARデータとARデータの表示対象となる機種を特定する機種特定データとを含むアプリケーションソフト(以下「アプリ」という。)を格納するものであり、前記演算処理部は、前記アプリに基づいて、前記カメラ部から得た画像データから天びんの機種を特定し、特定した機種がARデータの表示対象であれば、前記画像データの水準器の傾斜表示状態に応じた水平調整作業に対応付けて用意したARデータを選択して、このARデータを前記表示部に送るものであり、前記表示部は、前記演算処理部から送られたARデータを表示するものである。
【0009】
携帯端末装置の表示部に表示された、天びんの機種に応じた水平調整作業に係るARデータを見ながら作業を行えるので、作業者の熟練度に依存せず、効率よく水平調整作業を行える。
【0010】
また、前記演算処理部を、水平調整作業が完了したと判断すると、表示部に、作業者にキャリブレーションの実行を求める表示を指示するよう構成すると、天びんの水平状態での使用前に必要な較正を、作業者が忘れることなく行うことができ、正確な計量につながる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者の熟練度に依存することなく、短時間で確実に、水平調整作業を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の対象となる天びんの一実施形態を示す斜視図。
図2】同じく高さ調整機構を示す分解斜視図。
図3】同じく高さ調整機構の縦断面図。
図4】本発明に係る携帯端末装置の一実施形態の内部構成を示すブロック図。
図5】同じく機種特定動作を示すフローチャート。
図6】同じくAR表示動作を示すフローチャート。
図7】同じく表示部のAR表示状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて説明する。はじめに、本発明の対象となる天びんについて説明する。
【0014】
図1に示すように、天びん1は、電磁平衡式やロードセル式などの質量センサ(図示省略)が収容されたケーシング2と、前記質量センサと連結されて試料が載置される秤量皿3とを有する。前記ケーシング2は、上ケーシング2aと下ケーシング2bが篏合されてなり、上ケーシング2aの前方傾斜部には表示パネル4とARマーカーである水準器5が設けられ、また、前記天びん1の機種特定情報である型番と製造番号をコード化して示す二次元コード21が設けられている。前記水準器5は、透視可能な球面形容器の中に密閉した液体中を移動する気泡(以下「水平玉」という。)の位置で、ケーシング2の水平状態に対する傾斜方向及び傾斜量を示すものであり、容器中央部に表示された円に水平玉5aが対応すると、ケーシング2、すなわち天びん1が水平状態にあることを示す(図7参照)。
【0015】
天びん1は、後方中央部に上ケース2aから下方に突出形成してなる固定足(図示せず)と、前方傾斜部の左右両側にそれぞれ設けた高さ調整機構である足コマユニット6,6(図7参照)とによって、設置面に三点支持されている。そして、各足コマユニット6,6により高さ調整され、この高さ調整によって水平調整する。各足コマユニット6,6は、下ケース2bの両側部にそれぞれ形成した凹入部7(一方のみ図示)に対応位置して、上ケース2aに固定されている。
【0016】
ここで、一方の足コマユニット6について説明するが、他方の足コマユニット6も同一構成である。図2に示すように、足コマユニット6は、足コマ8と、回転体9と、ハウジング10とからなる。
【0017】
図2で理解できるように、足コマ8は、設置面に当接する足部11と、この足部11から上方に延出する足コマ軸12からなる。前記足部11はほぼ円柱状で、下端部は徐々に縮径する円錐台状に形成し、周面の対向する部分に一対の平面部11a,11aを設けている。また、足コマ軸12の周面には、図では明らかでないが、雄ねじ部を形成するとともに、前記足部11の平面部11a,11aと周方向に90度ずれた位置に一対の平面部12a,12aを設けている。図3に示すように、足部11には下面から篏合穴が形成され、この篏合穴に設置面との摩擦抵抗を高めるためにゴム栓13を篏合している。
【0018】
図2及び図3に示すように、回転体9は、底面が開放された中空円盤状であり、図では明らかでないが、上部内周面に足コマ軸12の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部を設けている。また、前記回転体9の外周面には、指がかりをよくするために周方向に等間隔を置いて上下に伸びる凹部9aを設けている。そして、前記回転体9を時計方向に回転すると天びん1の前記回転体9と同一側は上昇し、前記回転体9を反時計方向に回転すると天びん1の前記回転体9と同一側は下降するものである。
【0019】
同じく図2及び3に示すように、ハウジング10は、螺合した状態の足コマ8と回転体9をケーシング2に取り付けるためのものであり、本体部14と、上リブ15と、下リブ16とからなる。本体部14は、水平方向断面がほぼ楕円形状に形成され、回転体9を収容する中央スペース17を有している。中央スペース17の裏側開口部17bは、表側開口部17aよりも大きく形成され、裏側開口部17bから回転体9を中央スペース17内に配置し、表側開口部17aから露出する回転体9の外周面を作業者の指で操作して、この回転体9を所定方向に回転する。上リブ15と下リブ16は、本体部14のほぼ中心部に形成され、足コマ8を挿通するガイド孔として機能する。
【0020】
上リブ15の内周面には、周方向に等間隔に一対の平面部が形成され、これら平面部は足コマ軸12の各平面部12a,12aと一致して回り止めとして機能する。また、下リブ16の内周面には、周方向に等間隔に一対の平面部が形成され、これら平面部は足部11の各平面部11a,11aと一致して回り止めとして機能する。
【0021】
ハウジング10の上面には、ネジ挿通孔18,18が設けられ、これらネジ挿通孔18,18に対応してハウジング10内には左右のネジスペース19,19が形成されている。これらネジスペース19,19から固定ネジ20,20がネジ挿通孔18,18を挿通して上ケーシング2aの図示していないネジ穴に螺合することで、ハウジング10は上ケーシング2aに固定される。なお、図3に示すように、足コマ軸12の頂部端には、回転体9の回し過ぎで足コマ8がハウジング10から離脱するという万一の場合を防ぐために、抜け止め用のワッシャー22を設けている。
【0022】
続いて、本発明に係る携帯端末装置であるスマートフォンの一実施形態を図4に基づいて説明する。スマートフォン(以下「スマホ」という。)31は、カメラ部32と、操作部33と、記憶領域部34と、演算処理部35と、表示部36と、通信部37と、を備えている。
【0023】
カメラ部32は、例えばCCD等の光電変換素子と、その制御回路等からなり、天びん1の上ケーシング2aに設けた二次元コード21と水準器5を撮像して得た画像データを演算処理部35に送るものである。
【0024】
操作部33は、例えば電源キー、数字キー、文字キー、発信キー等のキースイッチが表示されたタッチパネルからなり、所望のキースイッチにタッチして操作内容を入力するものでる。この入力された操作内容は演算処理部35に送られる。
【0025】
記憶領域部34は、通信部37を介して外部、例えばアプリストアから得たAR表示用のアプリ38を格納する。このアプリ38は、特定機種の天びんの水準器5の傾斜状態、すなわち水平玉5aの位置に応じた水平調整作業に対応付けて用意されたARデータ39と、天びんの機種を特定するための機種特定データ40を含んでいる。前記機種特定データ40は、AR表示の対象となる機種を示すデータであり、前記機種は複数の場合と、一種類の場合とがある。また、機種によって高さ調整機構の構造や設置位置、あるいは設置数が異なるため、前記ARデータ39は前記機種に合わせた内容になっている。
【0026】
演算処理部35は、アプリ38に基づいて、カメラ部32から得た二次元コード21の画像データから、天びん1の機種を特定して、この機種がAR表示の対象であるか否かを機種特定データ40に含まれているか否かにより判断する一方、表示対象の機種であれば、画像データの水準器5の傾斜表示状態、すなわち水平玉5aの位置に応じた水平調整作業に対応付けて用意されたARデータ39を選択して、このARデータ39を表示部36に送るものである。
【0027】
表示部36は、例えば液晶パネルからなり、演算処理部35から送られたARデータ39を表示するものである。
【0028】
通信部37は、無線通信システムを捕捉し、通信ネットワークを介して、外部に各種データを送信し、外部から各種データを受信するものである。アプリ38は水平調整を行う作業者が、この通信部37を介してあらかじめアップロードされている既知のアプリストアからダウンロードする。
【0029】
続いて、ARを利用した水平調整作業について説明する。まず、天びん1がAR表示の対象となる機種か識別する動作を図5のフローチャートを参照して説明する。作業者はスマホ31にあらかじめダウンロードしておいたアプリ38を起動し(ステップ101)、カメラ部32で二次元コード21を撮像する。撮像された二次元コード21は、画像データとして演算処理部35に送られ、演算処理部35は、この画像データから天びん1の機種と製造番号を識別する(ステップ102)。次いで演算処理部35は、記憶領域部34から機種特定データ40を呼び出して、機種特定データ40に含まれている機種と前記識別した機種が一致するか判断し、不一致であればAR表示の対象ではないので処理動作を終了する(ステップ103)。一方、ステップ103で一致すると判断すれば、AR処理動作に移る(ステップ104)。
【0030】
続いて、AR処理動作及びこれにともなう水平調整作業を、図6のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の一連の動作は演算処理部35の制御によってなされるものである。作業者が、カメラ部32で水平玉の状態が解かるように真上から水準器5を撮像すると、撮像された水準器5は画像データとして演算処理部35に送られる。演算処理部35は、画像データから水平玉5aの位置を識別して(ステップ201)、特定された機種の前記水平玉5aの位置に応じた水平調整作業に対応付けて用意したARデータ39を記憶領域部34から選択して呼び出し、このARデータを表示部36に送って表示する(ステップ202)。
【0031】
ここで例えば、水平玉5aの位置が中央からまっすぐ左側にある場合のAR表示は、図7に示すように、天びん1の水準器5が写った表示部36であるスマホ画面36aに、水平玉51aが中央からまっすぐ左側に位置する水準器拡大表示51と、足コマ8の位置表示81,82と、操作すべき足コマ8の位置表示81の近傍で回転方向を示す矢印表示91と、「手前右側の足コマを時計方向に回します。」という指示表示92と、機種を特定する型番及び製造番号からなる機種特定表示93が表示される。
【0032】
作業者がスマホ画面36aの指示表示92にしたがって、天びん1の手前右側の足コマ8の回転体9を時計方向に回すと、天びん1の右側が上昇し、水平玉5aは水準器5の中央に向けて移動する。この水平玉5aの位置変化を検出すると(ステップ203)、スマホ画面36aのAR表示を切り替える必要があるか否か判断する(ステップ204)。水平玉5aが移動しても、依然として中央から左側に位置している場合は、AR表示を切り替えないでステップ203に戻る。一方、水平玉5aが移動して、中央、あるいは中央から右側に位置している場合は、ステップ204でAR表示を切り替える必要があると判断し、前記水平玉5aの位置に応じた水平調整作業に対応付けて用意したARデータ39を記憶領域部34から選択して呼び出し、この選択したARデータ39を表示部36に送って(ステップ205)、今までの表示に変えて新たに表示する(ステップ206)。
【0033】
この新たなAR表示としては、図示していないが、水平玉5aが中央から右に位置している場合は、水平玉51aが中央から右側に位置する水準器拡大表示51と、足コマ8の位置表示81,82と、操作すべき足コマ8の位置表示81の近傍で回転方向(図7の矢印表示91と反対方向)を示す矢印表示と、「手前右側の足コマを反時計方向に回します。」という指示表示92と、機種特定表示93が表示される。なお、このAR表示は、操作すべき足コマ8を上述とは異なる手前左側の足コマ82とし、回転方向を時計方向として矢印表示するとともに、「手前左側の足コマを時計方向に回します。」という指示表示92と、機種特定表示93を表示するものでもよい。そして、ステップ207で水平調整が終わっていないと判断されると、ステップ203に戻り、上述したステップ207までの各ステップの動作を繰り返す。したがって、作業者は、スマホ画面36aの指示にしたがい、操作すべき足コマ8の回転体9を回転して、水平玉5aが中央に位置するようにすればよい。
【0034】
一方、ステップ206で水平玉5aが中央に位置している場合のAR表示としては、図示していないが、水平玉51aが中央に位置する水準器拡大表示51と、足コマ8の位置表示81,82と、「水平調整が完了しました。」という指示表示92と、機種特定表示93が表示される。そして、ステップ207で水平調整が完了したと判断されると、ステップ208に進み、「キャリブレーションを実行して下さい。」という指示表示をスマホ画面36aに表示して処理動作を終了する。作業者はスマホ画面36aの前記指示表示にしたがい、水平調整が終了した天びん1のキャリブレーション作業を行う。天びん1が傾いていると、本来の質量値よりも表示値が軽くなるため、傾斜状態でキャリブレーション作業をしても、適正な値が表示されない。このため、天びん1を水平調整した後に、キャリブレーション作業を行う必要があり、作業者がこれを失念しないよう指示して、正確な計量を目指すものである。
【0035】
上述したように、演算処理部35は、天びん1の機種を特定したうえ、水平玉5aの位置に応じた水平調整作業に対応付けて用意したAR表示をARデータ39から選択して、スマホ画面36aに表示するので、作業者はこのスマホ画面36aに表示されたAR表示を見ることで、熟練度にかかわらず確実で効率的な水平調整作業を行うことができる。
【0036】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、携帯端末装置としては、スマホ31のほか、
カメラ機能を備えたタブレット型コンピュータでもよい。また、天びん1の足コマユニット6の数や、設置位置は上述した例に限らず種々変更可能である。さらに、AR表示としては、回転体9の回転方向に加えて、回転量を表示してもよく、この場合は、指示した回転量だけ回転された時点でAR表示を切り替えるよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 天びん
2 ケーシング
5 水準器
6 足コマユニット
8 足コマ
9 回転体
10 ハウジング
21 二次元コード
31 スマートフォン
32 カメラ部
33 操作部
34 記憶領域部
35 演算処理部
36 表示部
36a 表示画面
37 通信部
38 アプリケーションソフト
39 ARデータ
40 機種特定データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7