(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022082984
(43)【公開日】2022-06-03
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220527BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20220527BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20220527BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220527BHJP
B01D 29/46 20060101ALI20220527BHJP
B01D 37/02 20060101ALI20220527BHJP
C02F 9/02 20060101ALI20220527BHJP
C02F 9/04 20060101ALI20220527BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220527BHJP
【FI】
C02F1/44 E
B01D61/14 500
B01D61/16
C02F1/28 D
B01D29/46 C
B01D37/02 B
C02F9/02
C02F9/04
C02F1/52 K
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020194191
(22)【出願日】2020-11-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】595140114
【氏名又は名称】セントラルフィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 秀行
(72)【発明者】
【氏名】宮原 武
【テーマコード(参考)】
4D006
4D015
4D116
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006HA18
4D006HA21
4D006HA41
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4D624DB03
4D624DB05
4D624DB21
(57)【要約】
【課題】アスベストを含む排水を処理する場合であっても、簡便にかつ長期間低コストに排水処理可能な新規な排水処理方法を提供する。
【解決手段】アスベストを含む排水を処理する方法であって、前記排水に凝集剤を添加して凝集物を生成し、沈殿処理する凝集沈殿処理工程、凝集沈殿処理工程で得られた処理水を濾過処理する中間濾過工程、中間濾過工程で得られた処理水を中間タンクに送出し貯留する貯留工程および前記中間タンクに貯留した処理水を限外ろ過膜で濾過処理するとともに、当該濾過処理により得られた残留排水を前記中間タンクに返送する限外濾過工程を有し、前記凝集剤が無機系凝集剤を70~99質量%含むとともに有機系凝集剤を1~30質量%含み、前記限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が線速度で1.0~2.5m/秒間であり、前記中間タンク内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御することを特徴とする排水処理方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストを含む排水を処理する方法であって、
前記排水に凝集剤を添加して凝集物を生成し、沈殿処理する凝集沈殿処理工程、
凝集沈殿処理工程で得られた処理水を濾過処理する中間濾過工程、
中間濾過工程で得られた処理水を中間タンクに送出し貯留する貯留工程および
前記中間タンクに貯留した処理水を限外濾過膜で濾過処理するとともに、当該濾過処理により得られた残留排水を前記中間タンクに返送する限外濾過工程
を有し、
前記凝集剤が無機系凝集剤を70~99質量%含むとともに有機系凝集剤を1~30質量%含み、
前記限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が線速度で1.0~2.5m/秒間であり、
前記中間タンク内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御する
ことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記中間濾過工程で行う濾過処理がダイナミック濾過処理槽またはディスクフィルターを用いて行われる請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記限外濾過工程で得られた濾過水を活性炭と接触させる活性炭処理工程をさらに含む請求項1または請求項2のいずれかに記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アスベストを使用した建築物の老朽化に伴い、その解体作業も増加する傾向にある。
【0003】
アスベストは、蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の無機繊維状鉱物の総称であり、近年まで断熱材等の建築材料として使用されてきた。
しかしながら、現在では、環境等への影響を考慮して、アスベストを含む廃材や排水処理によって発生したアスベストを含む汚泥等は、大気汚染防止法に従い特別管理産業廃棄物(廃アスベスト等)として処理することが求められるようになっている。
【0004】
アスベストを使用した建築物の解体時においても、アスベスト粉塵の飛散防止対策として、アスベストが含まれる建材を湿潤化させたり、解体した建材を高圧水で洗浄するために多量の水が使用されている。
上記湿潤化や洗浄により発生する排水には、アスベストの他、ダイオキシン類や重金属等が混入する場合が考えられ、係る排水からアスベスト等を除去し、排水基準を満たす水質とした上で、環境中へ放出したり、あるいは高圧洗浄水として再利用することが求められるようになっている。
【0005】
上記排水を処理する方法として、沈降処理や濾過処理を施した後、精密濾過処理する方法が提案されるようになっている(特許文献1(特開2019-209324号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の方法によれば、排水中のアスベスト等の含有割合を低減して処理水を再利用することができるとされている。
【0008】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、特許文献1に記載されているように、凝集沈殿、砂濾過、活性炭濾過及び精密濾過処理を組み合わせた排水処理装置は、精密濾過フィルターに使用されるろ材の孔径がアスベストよりも大きい為にアスベストが濾過しきれずに漏れると考えられ、また、一定期間排水処理に供した場合に精密濾過フィルターが閉塞してしまい、その交換を頻繁に行う必要が生じることから、排水処理装置の簡便な運転が困難で長期間の運転を行い難いとともに、メンテナンスコストの増大を招き易いことが判明した。
【0009】
上記アスベストの漏れを抑制するために精密濾過フィルターに使用されるろ材として孔径の小さいものを採用することも考えられたが、この場合、精密濾過フィルターが一層閉塞し易くなり、排水処理装置の効果的な運転をより一層行い難くなる。
【0010】
このような状況下、本発明は、アスベストを含む排水を処理する場合であっても、簡便にかつ長期間低コストに排水処理可能な新規な排水処理方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アスベストを含む排水を処理する方法であって、前記排水に凝集剤を添加して凝集物を生成し、沈殿処理する凝集沈殿処理工程、凝集沈殿処理工程で得られた処理水を濾過処理する中間濾過工程、中間濾過工程で得られた処理水を中間タンクに送出し貯留する貯留工程および前記中間タンクに貯留した処理水を限外濾過膜で濾過処理するとともに、当該濾過処理により得られた残留排水を前記中間タンクに返送する限外濾過工程を有し、前記凝集剤が無機系凝集剤を70~99質量%含むとともに有機系凝集剤を1~30質量%含み、前記限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が線速度で1.0~2.5m/秒間であり、前記中間タンク内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御する排水処理方法により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)アスベストを含む排水を処理する方法であって、
前記排水に凝集剤を添加して凝集物を生成し、沈殿処理する凝集沈殿処理工程、
凝集沈殿処理工程で得られた処理水を濾過処理する中間濾過工程、
中間濾過工程で得られた処理水を中間タンクに送出し貯留する貯留工程および
前記中間タンクに貯留した処理水を限外濾過膜で濾過処理するとともに、当該濾過処理により得られた残留排水を前記中間タンクに返送する限外濾過工程
を有し、
前記凝集剤が無機系凝集剤を70~99質量%含むとともに有機系凝集剤を1~30質量%含み、
前記限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が線速度で1.0~2.5m/秒間であり、
前記中間タンク内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御する
ことを特徴とする排水処理方法、
(2)前記中間濾過工程で行う濾過処理がダイナミック濾過処理槽またはディスクフィルターを用いて行われる上記(1)に記載の排水処理方法、および
(3)前記限外濾過工程で得られた濾過水を活性炭と接触させる活性炭処理工程をさらに含む上記(1)または(2)のいずれかに記載の排水処理方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アスベストを含む排水を処理する場合であっても、簡便にかつ長期間低コストに排水処理可能な新規な排水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る方法を実施する排水処理装置の形態例を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る方法を実施する排水処理装置の形態例を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る方法を実施する排水処理装置の形態例を示す模式図である。
【
図4】本発明の比較例に係る方法を説明するための排水処理装置の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る排水処理方法は、
アスベストを含む排水を処理する方法であって、
前記排水に凝集剤を添加して凝集物を生成し、沈殿処理する凝集沈殿処理工程、
凝集沈殿処理工程で得られた処理水を濾過処理する中間濾過工程、
中間濾過工程で得られた処理水を中間タンクに送出し貯留する貯留工程および
前記中間タンクに貯留した処理水を限外濾過膜で濾過処理するとともに、当該濾過処理により得られた残留排水を前記中間タンクに返送する限外濾過工程を有し、
前記凝集剤が無機系凝集剤を70~99質量%含むとともに有機系凝集剤を1~30質量%含み、
前記限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が線速度で1.0~2.5m/秒間であり、
前記中間タンク内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御する
ことを特徴とするものである。
【0016】
以下、本発明に係る排水処理方法について、適宜図面を用いつつ説明するものとする。
【0017】
図1は、本発明に係る方法を実施する排水処理装置の形態例を示す模式図である。
図1に示す形態例に係る排水処理装置は、凝集反応槽13および凝集沈殿槽17と、中間濾過手段Fと、中間タンク36と、限外濾過膜(UF濾過膜)44とを含むものである。
【0018】
<凝集沈殿処理工程>
本発明に係る排水処理方法においては、凝集沈殿処理工程において、排水に凝集剤を添加して凝集物を生成し、沈殿処理する。
【0019】
本発明に係る排水処理方法において、処理対象となる排水(原水)は、アスベスト(石綿)を含むものであり、アスベストとともに、ダイオキシン類、重金属等から選ばれる一種以上を含むものであってもよい。
このような排水(原水)としては、アスベストを使用した公営住宅、病院、学校、焼却設備等の建築物の解体工事の際に発生するものを挙げることができ、具体的には、アスベストが含まれる建材を湿潤化したり、解体した建材を高圧水で洗浄する際に発生するものの他、アスベストが含まれる建築材料を高圧水により洗浄剥離したり切断したりする際に発生するものを挙げることができる。
上記排水(原水)としては、特に焼却設備等の解体時に発生する、アスベストとともにダイオキシン類や重金属等を含むものが挙げられる。
【0020】
上述したように、アスベストは、蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の無機繊維状鉱物であり、アスベストとしては、クリソタイル(温石綿、白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト(直閃石綿)、トレモライト(透角閃石綿)、アクチノライト(陽起石綿)等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0021】
本発明に係る排水処理方法において、凝集剤は、無機系凝集剤を70~99質量%含むものであり、80~99質量%含むものが好ましく、90~99質量%含むものがより好ましい。
【0022】
本発明に係る排水処理方法において、無機系凝集剤を構成する無機成分としては、二酸化珪素(SiO2)、二酸化硫黄(SO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、塩化鉄、カオリナイト、ベントナイト等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0023】
本発明に係る排水処理方法において、凝集剤は、有機系凝集剤を1~30質量%含むものであり、1~20質量%含むものが好ましく、1~10質量%含むものがより好ましい。
【0024】
本発明に係る排水処理方法においては、凝集剤として、無機系凝集剤および有機系凝集剤を各々所定割合含有するものを使用する。
凝集剤が無機系凝集剤を所定割合含むことにより、マイナスの電荷を有するSS(浮遊物質)成分を電気的に中和して互いの粒子の引力ないしはファンデルワールス力により微小サイズのマイクロフロックを形成することができ、凝集剤が有機系凝集凝集剤を所定割合含むことにより、形成したマイクロフロックを互いに結合させ、さらに大きなサイズのフロックを形成することができる。
本発明に係る排水処理方法においては、無機系凝集剤及び有機系凝集剤の含有割合を上記範囲内に制御することで生成するフロックの凝集状態が制御され、中間濾過工程で得られる処理水の濁度を0~40度に容易に低減することができる。
【0025】
本発明に係る排水処理方法において、有機系凝集剤を構成する有機高分子としては、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアクリルアミド系、ポリアミン系、ポリジシアンジアミド系等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ソーダ系、ポリアクリルアミド系等のアニオン性高分子凝集剤、ポリアクリルアミド系のノニオン性高分子凝集剤、アミン系等の低分子有機凝集剤等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0026】
本発明に係る排水処理方法において、凝集剤の添加量は特に制限されないが、通常、300~800mg/Lである。
また、凝集剤の添加時における排水のpHも特に制限されず、適宜決定すればよい。
本発明に係る排水処理方法において、凝集剤の添加および添加後の凝集物の生成は、撹拌下で行うことが好ましい。
【0027】
本発明に係る排水処理方法において、凝集沈殿処理工程で添加する凝集剤の種類、凝集剤の添加量、撹拌条件、処理対象となる排水のpHは、ジャーテストを行い、凝集フロックの沈降速度や上澄み水の状態が所望範囲に制御される条件を適宜見出すことで、決定することが好ましい。
【0028】
本発明に係る排水処理方法においては、
図1に例示するように、例えば、凝集反応槽13に対し、原水(排水)7を供給するとともに、凝集剤供給機10から凝集剤を供給し、攪拌機15で攪拌した後、凝集反応水16として凝集沈殿槽17に送出する。
図1に例示するように、凝集沈殿槽17中に送出された凝集反応水18は攪拌機19で攪拌されながら凝集した汚泥と上澄水に分離され、上澄水は凝集処理水として(後述する)中間濾過手段Fに送出され、沈降分離した凝集汚泥は、一定間隔で開く汚泥引抜き弁21を通じて汚泥引抜きポンプにより汚泥として引き抜かれる。
【0029】
<中間濾過工程>
本発明に係る排水処理方法においては、中間濾過工程において、凝集沈殿処理工程で得られた処理水(凝集処理水)を濾過処理する。
【0030】
本発明に係る排水処理方法においては、中間濾過工程で行う濾過処理がダイナミック濾過処理槽またはディスクフィルターを用いて行われることが好ましい。
【0031】
中間濾過工程で行う濾過処理がダイナミック濾過処理槽またはディスクフィルターにより行われる場合、ダイナミック濾過処理槽またはディスクフィルターとしては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。
【0032】
ダイナミック濾過処理槽とは、目の粗い不織布、織布、金属メッシュ等からなる通水性シート製の膜(ダイナミックフィルター)表面に、架橋現象を利用して濁水中のSS(浮遊物質)成分によるケーキ層(フロック層)を形成し、このケーキ層のフィルター作用により、濁水中のSS成分を分離除去する濾過装置である。
【0033】
ダイナミック濾過処理槽としては、ダイナミックフィルターとして、粗大なフロックをろ過し、マイクロフロックを通過させるフィルターを有し、一定時間ろ過した後に閉塞したフィルターを洗浄することでフィルターに付着したフロックを分離して処理槽の底へ沈降させ、沈降したフロックを汚泥として槽外へ排出させ得る構造を有するものが好ましい。
【0034】
ダイナミック濾過処理槽は、長時間濾過による閉塞が発生し難く、目詰まり防止を考慮する必要がない点で、有効な濾過手段である。
【0035】
また、ディスクフィルターとは、表面に溝が設けられたディスクを積み重ね、積み重ねたディスクの隙間によって濁水中のSS(浮遊物質)成分を濾過する濾過装置である。ディスクフィルターにおいては、積層するディスクに応じて種々の目開きのものを選定することができる。
【0036】
ディスクフィルターとしては、粗大なフロックをろ過し、マイクロフロックを通過させるフィルターを有し、一定時間ろ過した後で閉塞した濾材を逆洗処理することでフィルターに付着したフロックを分離し、逆洗水として排出させる構造を有するものが好ましい。
【0037】
ディスクフィルターはディスクによって濾過処理を行うため、耐久性に優れ、安定した濾過処理を長期間実現することができる。
【0038】
本発明に係る排水処理方法においては、
図1に例示するように、例えば、中間濾過手段Fに対し凝集処理水29を送出して濾過処理することにより、清澄な中間濾過処理水33を得ることができる。
図1に例示するように、中間濾過処理水33は、(後述する)中間タンク36に送出され、分離した汚泥は、汚泥引抜き弁62を通じて外部に引き抜かれる。
【0039】
本発明に係る排水処理方法において、中間濾過工程で行う濾過処理がダイナミック濾過処理槽により行われる場合、処理槽内のダイナミックフィルターは定期的に超音波洗浄処理することが好ましい。
ダイナミック濾過処理槽中に浸漬しているダイナミックフィルターは、被処理水(凝集処理水)を濾過し、ダイナミックフィルター濾過水を生成するが、一定量のダイナミックフィルター濾過水を生成するとダイナミックフィルターが閉塞してしまう。
このダイナミックフィルターの閉塞を解除するために、超音波洗浄機とダイナミック濾過処理槽中に設置する超音波振動子から発生する超音波振動をダイナミックフィルターに伝達することによりダイナミックフィルターの濾材に詰まっている凝集フロック、ダスト等を剥離してダイナミックフィルターの閉塞を解除することができる。
ダイナミックフィルターの濾材から剥離除去された凝集フロック、ダスト等は、汚泥引抜き弁より外部へ送出すればよい。
【0040】
また、本発明に係る排水処理方法において、中間濾過工程で行う濾過処理がディスクフィルターにより行われる場合、ディスクフィルターは定期的に逆洗処理することが好ましい。
ディスクフィルターは、被処理水(凝集処理水)を濾過し、ディスクフィルター濾過水を生成するが、一定量のディスクフィルター濾過水を生成するとディスクフィルターが閉塞してしまう。
ディスクフィルターの閉塞を解除するために、例えば、後述する
図3に示すように、逆洗ポンプ51により、膜ろ過水52を、逆洗水送水弁58、逆洗水送水管66、逆洗水送水管67、ディスクフィルター63を備えたろ過水送水部へ送出し、ディスクフィルター63のろ材に付着した粗大フロックを分離させ、分離した粗大フロックを逆洗水とともに逆洗水排水管68、逆洗水排水弁69を通り、洗浄水75として、汚泥貯留ノッチタンク24へ戻されることにより、ディスクフィルターの閉塞を解除する方法を挙げることができる。
排出されたディスクフィルター逆洗水は、外部へ送出される。
なお、ダイナミックフィルターやディスクフィルターの洗浄を行う場合、排水処理装置全体を停止することになることから、ダイナミックフィルターやディスクフィルターの洗浄は、後述する限外濾過膜の逆洗操作と同じタイミングで行うことが好ましい。
【0041】
<中間タンクに貯留する貯留工程>
本発明に係る排水処理方法においては、貯留工程において、中間濾過工程で得られた処理水を中間タンクに送出し貯留する。
図1に示す例においては、上記中間濾過手段Fで濾過処理された中間濾過処理水33を中間タンク36に送出し、中間濾過処理水37として一定量貯留する。
【0042】
<限外濾過工程>
本発明に係る排水処理方法においては、限外濾過工程において、前記中間タンクに貯留した処理水を限外ろ過膜で濾過処理するとともに、当該濾過処理により得られた残留排水を前記中間タンクに返送する。
【0043】
限外濾過膜とは、逆浸透膜より大きく精密ろ過膜よりも小さい孔径を有し、分画分子量が10,000~500,000となる分離膜である。
【0044】
限外濾過膜の材質は、特に限定されないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等の有機材料、ステンレス等の金属、又はセラミック等無機材料から選ばれる一種以上を挙げることができ、有機材料が好ましい。
【0045】
使用する限外濾過膜の形態は特に限定されるものではなく、スパイラル型、中空糸型、チューブラー型、平膜型のいずれであってもよい。
【0046】
本発明に係る排水処理方法で使用される限外濾過膜としては、ポリエーテルスルホンを構成材とし、分画分子量が30,000~150,000である中空糸型分離膜が好ましく、内圧型であるものがより好ましい。
【0047】
なお、本出願書類において、限外濾過膜の分画分子量は、分子量の異なる数種類の溶質を用いて阻止率を測定し、分子量と阻止率の関係を示す分画曲線を作成し、その分画曲線から求められる阻止率が90%となる分子量を意味し、市販品である場合には、上記方法により測定される限外濾過膜メーカーにより提示される値を意味する。
【0048】
本発明に係る排水処理方法においては、限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が、線速度で1.0~ 2.5m/秒間であり、線速度で1.0~2.0m/秒間であることが好ましく、線速度で1.0~1.5m/秒間であることがより好ましい。
【0049】
なお、上記線速度は、限外濾過膜へ通水する被処理水の流量(m3/秒間)を限外濾過膜の断面積(m2)で除した値を意味する。
【0050】
通常、排水処理時に限外濾過膜に通水する際の処理速度は、線速度で0.5~0.7m/秒間程度であるが、本発明に係る排水処理方法においては、限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度を上記範囲内とし、通常よりも早めにすることにより、限外濾過膜の目詰まりを抑制しつつ長期間容易に排水処理することができる。
一方、限外濾過膜で被処理水を濾過する際の処理速度が2.5m/秒間を超えると、限外濾過膜は閉塞され難くなるものの、エネルギーコストが増大するとともに、限外濾過膜の耐圧限界を超え易くなる。
【0051】
本発明に係る排水処理方法においては、
図1に例示するように、例えば、中間タンク36に貯留した中間濾過処理水37を限外濾過膜(UF濾過膜)44で濾過処理することにより、膜濃縮水(残留排水)46と膜濾過水45に分離する。
【0052】
本発明に係る排水処理方法においては、限外濾過処理により得られた膜濃縮水(残留排水)を前記中間タンクに返送する。
図1に示す例において、膜濾過水45は、膜濾過水送水弁60で規定の流量に調整しつつ再利用タンク49に送出して一定量貯留するとともに、限外濾過処理により得られた膜濃縮水(残留排水)46を中間タンク36に返送する。
再利用タンク49に貯留した処理水56は、放流されまたは再利用に供されるか、後述する活性炭処理工程にさらに供されることになる。
【0053】
本発明に係る排水処理方法においては、中間タンク内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御する。
本発明に係る排水処理方法においては、中間タンク内の被処理水の濁度が40~100度になるように制御することが好ましい。
上記中間タンク内の被処理水の濁度は、中間タンクから適宜汚泥を引き抜くことにより調整することができる。
【0054】
なお、本出願書類において、被処理水の濁度は、「平成15年厚生労働省令第101号および平成15年厚生労働省告示第261号」に規定する方法により測定される値を意味する。
【0055】
本発明に係る排水処理方法においては、中間タンク内の被処理水の濁度が上記範囲内になるように制御することにより、限外濾過膜の目詰まりを抑制しつつ長期間容易に排水処理することができる。
中間タンク内の被処理水の濁度が40度未満である場合、後工程である限外濾過工程における限外濾過膜への負荷を低減できるものの、原水の状態によってはそもそも被処理水の濁度をそこまで低減することができなかったり、前工程である凝集沈殿処理工程及び中間ろ過工程における負荷が大きくなり、場合によっては能力向上が求められることから、経済的な運転が困難になる。
【0056】
図1に示す例においては、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程および(4)限外濾過工程を連続的に行いつつ、中間タンク36内の濁度が上記範囲内になるように制御する。
すなわち、中間タンク36内の被処理水の濁度を濁度計38および濁度計センサー部39で計測し、濁度が上記範囲内となる様に、汚泥・膜濃縮水引抜き弁40および汚泥・膜濃縮水引抜きポンプ41により汚泥・膜濃縮水を引き抜き、新鮮な中間濾過処理水33を供給することで中間タンク36中の被処理水の濁度を調整する。
【0057】
本発明に係る排水処理方法において、限外濾過膜は定期的に逆洗処理することが好ましい。
限外濾過膜は、被処理水(中間濾過処理水)を濾過し、膜濾過水を生成するが、一定量の膜濾過水を生成すると限外濾過膜は閉塞してしまう。
限外濾過膜の閉塞を解除するために、再利用タンクに貯留した膜濾過水を逆洗水送水ポンプにより送水し、逆洗水送水弁を通過して限外濾過膜の膜濾過水の出口側から供給し、限外濾過膜の中間濾過処理水の入口側から排出し膜逆洗水として排出することで、限外濾過膜を閉塞させていた凝集フロック、ダスト等を剥離し排出し、限外濾過膜の閉塞を解除することができる。
排出された膜逆洗水は、適宜、外部へ送出される。
限外濾過膜の逆洗操作時、限外濾過膜の洗浄効果を上げ、殺菌する目的で、逆洗水に一定濃度の次亜塩素酸水を供給することが好ましい。
【0058】
<活性炭処理工程>
本発明に係る排水処理方法は、限外濾過工程で得られた濾過水を活性炭と接触させる活性炭処理工程をさらに含むものであってもよい。
【0059】
本発明に係る排水処理方法において、活性炭としては種々の活性炭を使用することができ、例えば、鉱物系材料(褐炭、れき青炭等の石炭;石油;石炭ピッチ等)、植物系材料(木材、竹、果実殻(やし殻等)等)、高分子材料(ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、セルロース、再生セルロース等)等から選ばれる一種以上を原料とするものが挙げられる。
活性炭は、上記原料を必要に応じて炭化又は不融化した後、賦活処理することにより得ることができる。
なお、炭化方法、不融化方法、賦活方法等は、特には限定されず、従来公知の方法を利用することができる。例えば、賦活は、炭素原料を水蒸気や二酸化炭素等からなる賦活ガス中で、500~1000℃程度で熱処理するガス賦活法、炭素原料をリン酸、塩化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等からなる賦活剤と混合し、300℃~800℃程度で熱処理する化学的賦活法等により実施することができる。
【0060】
活性炭の形状も特に制限されず、粉体、繊維状、ペレット状、粒状、ハニカム状、ペーパー状等の任意の形態のものを使用することができる。
【0061】
活性炭の比表面積は、特に制限されないが、例えば、BET比表面積が、100~3500m2/gであるものが好ましく、300~2000m2/gであるものがより好ましく、500~1500m2/gであるものがさらに好ましい。
【0062】
本発明に係る排水処理方法が、活性炭処理工程をさらに含むものである場合、被処理水中に溶存するダイオキシン類や重金属成分等を効果的に吸着除去することができる。
【0063】
図1に示す例においては、再利用タンク49に一定量貯留した膜濾過水50は、膜濾過水52として逆洗水送水ポンプ51により活性炭タンク送水弁59を通過して活性炭を収容したタンク53に送出され、膜濾過水52内に残留する溶解したダイオキシン、重金属成分を活性炭にて吸着除去し、活性炭処理水54として再利用タンク55に送出して一定量貯留する。
再利用タンク55に貯留した処理水56は、放流されまたは再利用に供される。
【0064】
なお、
図1に示す排水処理装置の構成は、本発明に係る排水処理方法を実施する装置の一例であり、
図1に示す例の他に、適宜配管やタンク等を設けたものであってもよい。
【0065】
本発明によれば、アスベストを含む排水を処理する場合であっても、簡便にかつ長期間低コストに排水処理可能な新規な排水処理方法を提供することができる。
【実施例0066】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0067】
(実施例1)
図2に示す排水処理装置を用いて、アスベスト等を含む実排水を排水処理した。
(1)凝集沈殿処理工程
今回使用する凝集剤は、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製SuperZ D-110である。本凝集剤は、無機成分(二酸化珪素(SiO
2)、二酸化硫黄(SO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化カリウム(K
2O)、酸化ナトリウム(Na
2O))からなる無機系凝集剤を99質量%、有機高分子成分からなる有機系凝集剤を1質量%の割合となる様に、特別に調整したものである。
なお、無機系凝集剤を70~99質量%、有機高分子成分からなる有機系凝集剤を1~30質量%の範囲となる様に調整した凝集剤も適用可能である。
図2に示すように、本実施例においては、最初に原水(焼却炉解体工事にて発生したアスベストを含む排水)100を汚泥貯留ノッチタンク24に送出した。
汚泥貯留ノッチタンク24中には原水(排水)25を収容し、水量が一定量になった後に原水送水ポンプ101により原水槽2に送出した。
原水槽2には原水(排水)3が収容され、水量が一定値になった後で原水送水ポンプ4により攪拌槽8に送出した。
原水送水ポンプ4により送水された原水5は、pH測定器12で測定されフィードバックされた値に基づいてpH調整用薬剤供給機6によりpH調整された後、pH値が調整された原水7として攪拌槽8に送出した。
攪拌槽8中においては、pH調整された原水7と凝集剤供給機10から供給された凝集剤11とを攪拌機15にて攪拌混合し、混合水9として貯留した。
次いで、混合水9が凝集反応槽13に送出され攪拌機15で攪拌しながら凝集反応水14として貯留され、一定時間滞留した後に凝集反応水16として凝集沈殿槽17に送出した。
凝集沈殿槽17中に送出された凝集反応水18は攪拌機19で攪拌されながら凝集した汚泥と上澄水に分離され、上澄水は凝集処理水20として凝集処理槽26に送出され、沈降分離した凝集汚泥は、一定間隔で開く汚泥引抜き弁21を通じて汚泥引抜きポンプ22により汚泥23として引き抜かれ、汚泥貯留ノッチタンク24に送出した。
上述した凝集剤を使用することで、以下に説明する中間濾過工程で得られる濾過水の濁度を0~40度に容易に低減することができる。
【0068】
(2)中間濾過工程(ダイナミックフィルター濾過処理工程)
次いで、上記凝集処理水20に対しダイナミック濾過処理槽により中間濾過を施した。
すなわち、凝集処理槽26に一定量貯められた凝集処理水27を、凝集処理水送水ポンプ28にて凝集処理水29としてダイナミック濾過処理槽30に送出し、この際、過剰な凝集処理水75についてはダイナミック濾過処理槽30に設けられたオーバフロー回収部より凝集処理槽26に返送した。
ダイナミック濾過処理槽30中の凝集処理水31に対し、ダイナミックフィルター32(濾過精度20~40μmの金属メッシュ)により濾過処理を施した。
ダイナミックフィルターの濾過膜を濾過精度20~40μmの金属メッシュとすることで(細孔の大きさを20~40μmとすることで)、中間濾過工程で定期的に行う超音波洗浄を良好に実施することができる。
上記濾過処理により、凝集沈殿槽17で分離しきれない微少な凝集フロックをダイナミックフィルター32で分離し、清澄水(ダイナミックフィルター濾過水33)を得た。
【0069】
(3)中間タンクへの貯留工程
上記ダイナミック濾過処理槽で濾過処理された清澄水を中間タンク36に送出し、ダイナミックフィルター濾過水37として一定量貯留した。
【0070】
(4)限外濾過工程
中間タンク36に貯留したダイナミックフィルター濾過水37を膜ポンプ42で加圧して限外濾過膜(UF濾過膜)44に送水し、膜濃縮水(残留排水)46と膜濾過水45に分離した。
本実施例においては、上記限外濾過膜(UF濾過膜)44として、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製、FN20FUS1582を1本使用した。本限外濾過膜は、分画分子量が150,000、膜材質がポリエーテルスルホン(PES)、有効膜面積が16m2、中空糸径が0.8mm、初期濾過水量は23.5m3/時間/本(膜間差圧0.1MPa)であるものである。
上記分画分子量150,000の限外濾過膜は膜の孔径が0.01μmであるものに相当し、これに対し処理対象となるアスベストの繊維1本は直径が0.02~0.35μm、長さが5μm程度であるため、アスベストの繊維は限外濾過膜(UF濾過膜)44を通過することなく濾過処理される。
上記限外濾過膜(UF濾過膜)44としては、分画分子量が6,000であるもの(膜の孔径が0.001μmであるもの)等も使用することができる。
上記限外濾過膜44による分離処理においては、限外濾過膜44内の線速度が1.0m/秒間~2.5m/秒間となるように、限外濾過膜44内の循環水すなわち膜濃縮水46の水量を濃縮水送水弁70により調整した。限外濾過膜44内の線速度が1.0m/秒間の場合、限外濾過膜44内の循環水すなわち膜濃縮水46の水量は10.6m3/時間/本(限外濾過膜1本あたり10.6m3/時間)、限外濾過膜44内の線速度が2.5m/秒間の場合、限外濾過膜44内の循環水すなわち膜濃縮水46の水量は26.5m3/時間/本(限外濾過膜1本あたり26.5m3/時間)、膜濾過水45の水量は限外濾過膜44内の線速度に関わらず0.4m3/時間/本(限外濾過膜1本あたり0.4m3/時間)である。
限外濾過膜44内の線速度を上記範囲内に制御することにより、エネルギーコストの増大を抑制し、本実施例で使用した限外濾過膜の耐圧性の限界値(最大膜間差圧0.3MPa)未満に抑制しつつ、限外濾過膜の目詰まりを抑制しつつ長期間容易に排水処理することが可能となる。
膜濾過水45は、膜濾過水送水弁60で規定の流量に調整しつつ再利用タンク49に送出して一定量貯留するとともに、膜濃縮水(残留排水)46は中間タンク36に返送した。
本実施例においては、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程および(4)限外濾過工程を連続的に行いつつ、中間タンク36内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御した。
すなわち、中間タンク36内の被処理水の濁度を濁度計38および濁度計センサー部39で計測し、濁度が40~180度となる様に、汚泥・膜濃縮水引抜き弁40および汚泥・膜濃縮水引抜きポンプ41により汚泥・膜濃縮水を引き抜き、新鮮なダイナミックフィルター濾過水33を供給することで中間タンク36中の被処理水の濁度を調整した。
中間タンク36内の被処理水の濁度が40度未満である場合、後工程である限外濾過工程における限外濾過膜への負荷を低減できるものの、原水の状態によってはそもそも被処理水の濁度をそこまで低減することができなかったり、前工程である凝集沈殿処理工程及び中間ろ過工程における負荷が大きくなり、能力向上が求められるため、経済的な運転が困難になる。
【0071】
本実施例において、原水3、凝集処理水29および膜(UF膜等)濾過水45における各アスベスト濃度の測定結果を表1に示す。
上記アスベスト濃度は、原水3、凝集処理水29または膜(UF膜等)濾過水45を試料水として、メンブランフィルター(孔径0.4μm)に通水しろ過処理したときに、メンブランフィルター上に残ったアスベスト繊維を位相差顕微鏡で計数し、下記(1)式により算出した。
アスベスト濃度:F=(A×N)/(a×n×V)・・・(1)
F:アスベスト濃度(f/L)
A:メンブランフィルター有効ろ過面積(cm2)
N:計測したアスベスト繊維数の合計(f)
a:位相差顕微鏡の視野の面積(cm2)
n:計測した位相差顕微鏡の視野数
V:通水量(L)
【0072】
【0073】
表1に示すように、本実施例においては、アスベスト濃度が2,900,000,000(f/L)である原水3を処理することにより、膜(UF膜等)濾過水45中のアスベスト濃度を0(f/L)(未検出)まで低減し得ることが分かる。
また、本実施例で得られた膜(UF膜等)濾過水45において、水質汚濁防止法にて規定されている一律排水基準[カドミウム及びその化合物、シアン化合物、有機燐化合物 、鉛及びその化合物、六価クロム化合物、砒素及びその化合物、水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物、アルキル水銀化合物、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,3-ジクロロプロペン、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、ベンゼン、セレン及びその化合物、ほう素及びその化合物、ふっ素及びその化合物、アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物、1,4-ジオキサン]及び生活環境項目[水素イオン濃度(水素指数)(pH)、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質量(SS)、ノルマルヘキサン抽出物質含有量(鉱油類含有量)、ノルマルヘキサン抽出物質含有量(動植物油脂類含有量)、フェノール類含有量、銅含有量、亜鉛含有量、溶解性鉄含有量、溶解性マンガン含有量、クロム含有量、大腸菌群数、窒素含有量、燐含有量]の各測定項目値について測定したところ、何れも排水基準以下であった。
【0074】
(5)活性炭処理工程
再利用タンク49に一定量貯留した膜濾過水50は、膜濾過水52として逆洗水送水ポンプ51により活性炭タンク送水弁59を通過して活性炭を収容したタンク53に送出し、膜濾過水52内に残留する溶解したダイオキシン、重金属成分を活性炭にて吸着除去し、活性炭処理水54として再利用タンク55に送出して一定量貯留した。再利用タンク55に貯留した処理水56は、放流されまたは再利用に供される。
【0075】
本実施例においては、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程、(4)限外濾過工程および(5)活性炭処理工程を連続的に30分間実施した後、排水処理装置を停止し、ダイナミック濾過膜(ダイナミックフィルター)の超音波洗浄処理を2分間、限外濾過膜の逆洗処理を30秒間行った。
【0076】
すなわち、ダイナミックフィルター32の閉塞を解除するために、超音波洗浄機34とダイナミック濾過処理槽30の中に設置する超音波振動子35から発生する超音波振動をダイナミックフィルター32に伝達することによりダイナミックフィルター32の濾材に詰まっている凝集フロック、ダスト等を剥離させてダイナミックフィルター32の閉塞を解除した。ダイナミックフィルター32の濾材から剥離除去された凝集フロック、ダスト等は、汚泥引抜き弁62より汚泥処理槽26へ送出した。
また、限外濾過膜44の閉塞を解除するために、再利用タンク49に貯留した膜濾過水50を逆洗水送水ポンプ51により送水し、逆洗水送水弁58を通過し限外濾過膜44の膜濾過水45の出口側から供給し、限外濾過膜44のダイナミックフィルターろ過水43の入口側から排出し、限外濾過膜逆洗水73、74として汚泥貯留ノッチタンク24へ排出することで、限外濾過膜44を閉塞させていた凝集フロック、ダスト等を剥離し排出し、限外濾過膜44の閉塞を解除した。
限外濾過膜44の逆洗操作時、活性炭タンク送水弁59は閉、膜濾過水送水弁60は閉、濃縮水送水弁70は閉となる。
また、限外濾過膜44の逆洗操作時、限外濾過膜44の洗浄効果を上げ、殺菌する目的で、逆洗水57に次亜塩素酸水供給機61より一定濃度の次亜塩素酸水を供給した。
【0077】
上記排水処理を1,056時間行ったが、限外濾過膜44は詰まり等を生じることなく連続して使用することができた。
【0078】
(実施例2)
図3に示す排水処理装置を用いて、アスベスト等を含む実排水を排水処理した。
図3に示す排水処理装置は、
図2に示す排水処理装置において、ダイナミック濾過処理槽30に代えてディスクフィルター63を有する点において相違し、その他の装置構成は共通するものであり、
図3に付した符号番号も、
図2に示す符号番号に共通するものである。
(1)凝集沈殿処理工程
実施例1の(1)凝集沈殿処理工程と同様にして排水処理を行った。
(2)中間濾過工程(ディスクフィルター処理工程)
次いで、(1)凝集沈殿処理工程で得られた凝集処理水20に対しディスクフィルター63により中間濾過を施した。
すなわち、凝集処理槽26に一定量貯められた凝集処理水27を、凝集処理水送水ポンプ28にて凝集処理水29としてディスクフィルター63に送出する一方で、逆洗ポンプ51より膜ろ過水52を送水し、逆洗水送水弁58、逆洗水送水管66、逆洗水送水管67、ディスクフィルター63のろ過水送水部へ送り、ディスクフィルター63のろ材に付着した粗大フロックを分離させ、分離した粗大フロックを逆洗水とともに逆洗水排水管68、逆洗水排水弁69を通り、洗浄水75として、凝集処理槽26へ戻すことにより濾過処理を施した。
上記濾過処理により、凝集沈殿槽17で分離しきれない微少な凝集フロックをディスクフィルター63で分離し、清澄水(ディスクフィルター濾過水64)を得た。
【0079】
(3)中間タンクへの貯留工程
上記ディスクフィルター63で濾過処理された清澄水を中間タンク36に送出し、ディスクフィルター濾過水37として一定量貯留した。
【0080】
(4)限外濾過工程
本実施例においては、上記限外濾過膜(UF濾過膜)44として、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製、FN20FUS1582を2本使用した。
中間タンク36に貯留したディスクフィルター濾過水37を実施例1(4)限外濾過工程と同様にして、線速度で1.0m/秒間~2.5m/秒間の処理速度で濾過処理することにより、膜濃縮水(残留排水)46と膜濾過水45に分離した。
膜濾過水45は、膜濾過水送水弁60で規定の流量に調整しつつ再利用タンク49に送出して一定量貯留するとともに、膜濃縮水(残留排水)46は中間タンク36に返送した。
本実施例においては、実施例1と同様に、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程および(4)限外濾過工程を連続的に行いつつ、中間タンク36内の被処理水の濁度が40~180度になるように制御した。
すなわち、中間タンク36内の被処理水の濁度を濁度計38および濁度計センサー部39で計測し、濁度が40~180度となる様に、汚泥・膜濃縮水引抜き弁40および汚泥・膜濃縮水引抜きポンプ41により汚泥・膜濃縮水を引き抜き、新鮮なダイナミックフィルター濾過水33を供給することで中間タンク36中の被処理水の濁度を調整した。
【0081】
本実施例において、膜(UF膜等)濾過水45におけるアスベスト濃度を実施例1と同様に測定したところ、アスベスト濃度は0(f/L)(未検出)に低減されていた。
【0082】
また、本実施例で得られたアスベスト濃度を0(f/L)(未検出)まで低減した膜(UF膜等)濾過水45において、実施例1と同様に、水質汚濁防止法にて規定されている一律排水基準及び生活環境項目の各測定項目値の各測定項目値について測定したところ、何れも排水基準以下であった。
【0083】
(5)活性炭処理工程
再利用タンク49に一定量貯留した膜濾過水50は、実施例1(5)活性炭処理工程と同様に処理して活性炭処理水54として再利用タンク55に送出して一定量貯留した。再利用タンク55に貯留した処理水56は、放流されまたは再利用に供される。
【0084】
本実施例においては、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程、(4)限外濾過工程および(5)活性炭処理工程を連続的に30分間実施した後、排水処理装置を停止し、ディスクフィルターの逆洗を30秒間、限外濾過膜の逆洗処理を30秒間行った。
【0085】
上記排水処理を1,112時間行ったが、限外濾過膜44は詰まり等を生じることなく連続して使用することができた。
【0086】
(比較例1)
図4に示す排水処理装置を用いて、アスベスト等を含む実排水を排水処理した。
図4に示す排水処理装置は、
図2に示す排水処理装置において、濁度計38、47を設けていない点を除けば、その他の装置構成は共通するものであり、
図4に付した符号番号も、
図2に示す符号番号に共通するものである。
【0087】
(1)凝集沈殿処理工程
実施例1において、凝集剤として、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製商品名メムフロックP001(硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、炭酸ナトリウム、無機粉体、錯体化合物、有機化合物の混合体であり、無機系凝集剤を65質量%、有機系凝集剤を35質量%の割合で含むもの)を用いた以外は、実施例1の(1)凝集沈殿処理工程と同様にして排水処理を行った。
【0088】
(2)中間濾過工程(ダイナミックフィルター濾過処理工程)
次いで、実施例1の(2)中間濾過工程と同様にして排水処理を行った。
【0089】
(3)中間タンクへの貯留工程
その後、実施例1(3)中間タンクへの貯留工程と同様の処理を行った。
【0090】
(4)限外濾過工程
次いで、実施例1(4)限外濾過工程において、限外濾過膜(UF濾過膜)44として、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製、FN20FUS1582を2本使用するとともに、限外濾過膜44による分離処理において、限外濾過膜44内の線速度が0.5m/秒間となるように、限外濾過膜44内の循環水すなわち膜濃縮水46の水量を濃縮水送水弁70により0.03MPaゲージ圧に調整した以外は、実施例1(4)と同様に処理した。
この場合、限外濾過膜44内の循環水すなわち膜濃縮水46の水量は11.8m3/時間、5.9m3/時間/本(限外濾過膜1本あたり5.9m3/時間)、膜濾過水45の水量は0.8m3/時間、0.4m3/時間/本(限外濾過膜1本あたり0.4m3/時間)であった。
【0091】
本比較例においては、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程および(4)限外濾過工程を連続的に行い、このとき、中間タンク36内の被処理水の濁度を測定すると300~900度であった。
【0092】
(5)活性炭処理工程
その後、実施例1(5)活性炭処理工程と同様の処理を行った。
【0093】
本比較例においては、実施例1と同様に、上記(1)凝集沈殿処理工程、(2)中間濾過工程、(3)中間タンクへの貯留工程、(4)限外濾過工程および(5)活性炭処理工程を連続的に30分間実施した後、排水処理装置を停止し、ダイナミック濾過膜(ダイナミックフィルター)の超音波洗浄処理を2分間、限外濾過膜の逆洗処理を30秒間行った。
【0094】
本実施例で得られた膜(UF膜等)濾過水45を実施例1と同様に測定したところ、アスベスト濃度が0(f/L)(未検出)まで低減され、水質汚濁防止法で規定されている一律排水基準及び生活環境項目の各測定項目値の各測定項目値が何れも排水基準以下であった。
しかしながら、本比較例においては、50時間運転後に限外濾過膜44において洗浄工程では回復しない詰まり等を発生したため、限外濾過膜44を新しく交換し、以後限外濾過膜の交換を繰り返しながら498時間運転するに止まった。